(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165496
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】機械学習を用いた振動減衰装置の特性分析装置、特性分析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/04 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
G01M17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070847
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内田 俊
(72)【発明者】
【氏名】宮内 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】速水 悟
(72)【発明者】
【氏名】山下 純矢
(72)【発明者】
【氏名】松井 彩華
(72)【発明者】
【氏名】朝日 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田村 哲嗣
(57)【要約】
【課題】振動減衰装置の特性を適切に分析する。
【解決手段】特性分析装置100は、第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルNを取得するAIモデル取得部82と、第2振動減衰装置の一方側における加速度の入力測定値と、第2振動減衰装置の他方側における加速度の出力測定値とを取得する測定値取得部84と、入力測定値をスペクトログラムとしてAIモデルNに入力して、第2振動減衰装置の他方側における加速度の出力予測値のスペクトログラムを取得する予測値取得部86と、出力予測値のスペクトログラムと出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成する特性情報生成部88と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するAIモデル取得部と、
第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得する測定値取得部と、
前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得する予測値取得部と、
前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成する特性情報生成部と、
を含む、
機械学習を用いた振動減衰装置の特性分析装置。
【請求項2】
車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するステップと、
第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得するステップと、
前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得するステップと、
前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成するステップと、
を含む、
特性分析方法。
【請求項3】
車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するステップと、
第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得するステップと、
前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得するステップと、
前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成するステップと、
を、コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習を用いた振動減衰装置の特性分析装置、特性分析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに設けられ、振動を減衰する振動減衰装置が知られている。例えば特許文献1には、車両が正常に走行している場合の上下振動に関するデータを、機械学習を用いて特定する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習を用いて振動減衰装置の特性を適切に分析するには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、振動減衰装置の特性を適切に分析可能な、機械学習を用いた振動減衰装置の特性分析装置、特性分析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る機械学習を用いた振動減衰装置の特性分析装置は、車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するAIモデル取得部と、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得する測定値取得部と、前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得する予測値取得部と、前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成する特性情報生成部と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る特性分析方法は、車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するステップと、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得するステップと、前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得するステップと、前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、車両の車体と車輪の間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、前記第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルを取得するステップと、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得するステップと、前記入力測定値をスペクトログラムとして前記AIモデルに入力して、前記第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得するステップと、前記出力予測値のスペクトログラムと前記出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、前記第2振動減衰装置の前記第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成するステップと、を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動減衰装置の特性を適切に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る振動減衰装置の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る振動減衰装置の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る特性分析装置の模式的なブロック図である。
【
図4】
図4は、AIモデル用の画像データを説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、AIモデルの概念的な模式図である。
【
図7】
図7は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(振動減衰装置)
本実施形態に係る特性分析装置100は、機械学習を用いて振動減衰装置の特性を分析する。以下、振動減衰装置の構成の一例を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る振動減衰装置の模式図であり、
図2は、本実施形態に係る振動減衰装置の模式的な断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る振動減衰装置1は、車両Vの車体BDと車輪TR(車輪TRに接続される車軸)との間に設けられ、減衰力を発生させて車体BDの振動を抑制する装置である。ただし振動減衰装置1は、車両用であることに限られず、任意の機構に用いられてよい。
【0014】
図2に示すように、本実施形態に係る振動減衰装置1は、シリンダ10と、シリンダ10に摺動可能に挿入されるピストン20(バルブピストン)と、シリンダ10に進退自在に挿入されるピストンロッド30と、シリンダ10内に設けられるベースバルブ40とを備える。ピストンロッド30は、ピストン20に連結され、シリンダ10の外部へ延出する。
【0015】
シリンダ10は、内部に作動流体Oが封入されている。作動流体Oは、本実施形態では油であるが、水など任意の流体であってよい。シリンダ10には、インナーチューブ12と、アウターチューブ14と、ベアリング16と、オイルシール18とを有する。インナーチューブ12は、筒状の部材である。アウターチューブ14は、筒状の部材であり、インナーチューブ12の外周面(側面)を囲うように設けられている。ベアリング16は、ピストンロッド30を摺動可能に支持するガイドブッシュである。オイルシール18は、作動流体Oなどをシールしつつ、ピストンロッド30を摺動可能に支持する。
【0016】
以上が本実施形態に係る振動減衰装置1であるが、振動減衰装置1の構成は以上の例に限られない。例えば以上の説明では、いわゆるツインチューブショックアブソーバであったが、それに限られず、いわゆるモノチューブショックアブソーバであってもよい。
【0017】
(特性分析装置)
図3は、本実施形態に係る特性分析装置の模式的なブロック図である。特性分析装置100は、コンピュータであるともいえ、入力部70と、出力部72と、通信部74と、記憶部76と、制御部78とを備える。入力部70は、ユーザの操作(入力)を受け付けるユーザインターフェースであり、例えばマウスやキーボードなどであってよい。出力部72は、情報を出力する装置であり、例えばディスプレイなどであってよい。通信部74は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。特性分析装置100は、無線通信で外部の装置と通信を行うが、有線通信でもよく、通信方式は任意であってよい。
【0018】
記憶部76は、制御部78の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つを含む。記憶部76が記憶する制御部78用のプログラムは、特性分析装置100が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。また、記憶部76は、AI(Artificial Interigence)における学習モデルである、AIモデルNを記憶している。
【0019】
制御部78は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部78は、学習部80と、AIモデル取得部82と、測定値取得部84と、予測値取得部86と、特性情報生成部88とを含む。制御部78は、記憶部76からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、学習部80とAIモデル取得部82と測定値取得部84と予測値取得部86と特性情報生成部88とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部78は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、学習部80とAIモデル取得部82と測定値取得部84と予測値取得部86と特性情報生成部88との処理の少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0020】
(学習部)
学習部80は、学習前のAIモデルNを機械学習させて、学習済みのAIモデルNを生成する。学習部80は、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いと、第1振動減衰装置の振動源とは反対側における振動度合いとの対応関係を、AIモデルNに機械学習させる。ここで、第1振動減衰装置とは、AIモデルNに機械学習させる基準となる振動減衰装置1である。また、第1振動減衰装置の振動源側とは、第1振動減衰装置の振動源(本実施形態では車輪TR)に近い位置を指し、第1振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも振動源側の位置(ばね下の位置)といえる。本実施形態では、第1振動減衰装置の振動源側は、第1振動減衰装置のシリンダ10を指してよい。また、振動度合いとは、振動の度合いを指すパラメータであれば任意のパラメータであってよいが、本実施形態では加速度である。すなわち、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いとは、第1振動減衰装置のばね下の加速度を指すといえる。一方、第1振動減衰装置の振動源とは反対側とは、第1振動減衰装置の振動源(本実施形態では車輪TR)から遠い側を指し、第1振動減衰装置の振動を減衰する機構に対して振動源と反対側の位置(ばね上の位置)といえる。本実施形態では、第1振動減衰装置の振動源と反対側は、第1振動減衰装置のピストンロッド30を指してよい。すなわち、第1振動減衰装置の振動源とは反対側における振動度合いとは、第1振動減衰装置のばね上の加速度を指すといえる。以下、第1振動減衰装置の振動源とは反対側のことを、適宜、第1振動減衰装置の減衰側と記載する。
【0021】
学習部80は、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合い(ここでは加速度)の測定値を、未学習のAIモデルへの入力用の教師データとして取得し、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合い(ここでは加速度)の測定値を、未学習のAIモデルからの出力データに教える解となる出力用の教師データとして取得する。以下、教師データについてより具体的に説明する。
【0022】
本実施形態では、第1振動減衰装置を搭載した車両Vに、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合い(ここでは加速度)を検出する第1センサS1と、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合い(ここでは加速度)を検出する第2センサS2とを取り付けて、車両Vを実際に走行させる。そして、車両Vの走行中の、第1振動減衰装置の振動源側における所定時間毎の加速度を、第1センサS1に検出させ、車両Vの走行中の、第1振動減衰装置の減衰側における所定時間毎の加速度を、第2センサS2に検出させる。学習部80は、第1センサS1及び第2センサS2の検出結果が記録される装置(データロガー)から、通信部74を介して、第1センサS1及び第2センサS2の検出結果を取得して、教師データとして用いる。なお、第1センサS1は、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いを検出可能であれば任意の位置に取り付けられてよいが、例えば、第1振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも車輪側の位置(例えばシリンダ10)に取り付けられる。また、第2センサS2は、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合いを検出可能であれば任意の位置に取り付けられてよいが、例えば、第1振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも車輪と反対側の位置(例えばピストンロッド30)に取り付けられる。また、第1センサS1及び第2センサS2に検出を行わせる際の、車両Vの走行条件は、例えば試験用のコースを所定の速度で走行するなど、任意に設定されてよい。
【0023】
図4は、AIモデル用の画像データを説明するための模式図である。本実施形態では、学習部80は、第1センサS1及び第2センサS2が検出した所定時間毎の加速度の波形データを、時間及び周波数毎の加速度を示す画像データ(スペクトログラム)に変換して、教師データとする。すなわち、加速度の波形は、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理することにより、周波数毎の加速度を示すデータに変換できる。従って、第1センサS1及び第2センサS2が検出した所定時間毎の加速度の波形データは、
図4の例に示すように、時間毎の加速度のデータを周波数毎に区分して、時間及び周波数毎の加速度を示すデータに変換できる。すなわち、学習部80は、第1センサS1が検出した所定時間毎の加速度の波形データについて、FFT処理により時間毎の加速度のデータを周波数毎に区分して、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを生成する。すなわち、学習部80は、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度を、時間をX軸として周波数をY軸とする二次元座標系における、座標(画素)毎の階調値に設定することで、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを生成する。同様に、学習部80は、第2センサS2が検出した所定時間毎の加速度の波形データについて、FFT処理により時間毎の加速度のデータを周波数毎に区分して、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを生成する。すなわち、学習部80は、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度を、時間をX軸として周波数をY軸とする二次元座標系における、座標(画素)毎の階調値に設定することで、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを生成する。なお、
図4は、画像データの一例を示しており、加速度が階調値(例えば輝度)で表される2次元画像(スペクトログラム)である。
【0024】
学習部80は、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを、未学習のAIモデルへの入力用の教師データとし、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度を示す画像データを、未学習のAIモデルNへの出力用の教師データとする。学習部80は、入力用の教師データと出力用の教師データとを未学習のAIモデルに入力して、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いと、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合いとの対応関係を、AIモデルNに機械学習させる。より詳しくは、学習部80は、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度と、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度との対応関係を、AIモデルNに機械学習させる。
【0025】
図5は、AIモデルNの概念的な模式図である。学習部80は、教師データを用いてAIモデルにおける重み係数及びバイアス値を設定することで、機械学習済みのAIモデルNを生成する。すなわち、AIモデルNは、学習部80によって重み係数及びバイアス値が学習されたモデルであるといえる。AIモデルNは、ディープラーニングによって学習された学習モデルであり、ディープラーニングによって学習された、ばね下スペクトログラムからばね上スペクトログラムを再構成するモデル(ニューラルネットワーク)と、変数とで構成される。ディープラーニングは、機械学習のうちの1つの手法であり、狭義には例えば4層以上のニューラルネットワークから構成される。本実施形態の例では、AIモデルNは、CNN(Conventional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルであり、
図5に示すように、例えば、複数の畳み込み層及び複数のプーリング層を含むエンコーダ層MN1及びデコーダ層MN2を備える。AIモデルNは、入力データINが入力された場合に、エンコーダ層MN1及びデコーダ層MN2で演算を行って、出力データONを出力する。
【0026】
学習部80は、以上のようにして未学習のAIモデルを学習させて、学習済みのAIモデルNを生成する。学習済みのAIモデルNは、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いと、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合いとの対応関係を機械学習したモデルとなる。より詳しくは、学習済みのAIモデルNは、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度と、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度との対応関係を機械学習したモデルとなる。
【0027】
なお、本実施形態では、CNNに適する画像データで学習を行わせて、AIモデルNを使用する際にも画像データを入力するため、AIモデルNの予測精度を向上させることができる。ただし、本実施形態では、時間及び周波数毎の加速度を示す画像データをAIモデルN用の教師データとして用いることに限られず、第1振動減衰装置の振動源側及び減衰側における振動度合いを示す任意のデータを、AIモデルN用の教師データとして用いてよい。また、AIモデルNは、CNNモデルに限られず、任意の方式のAIモデルであってもよい。
【0028】
(第2振動減衰装置について)
AIモデルNは、第1振動減衰装置の振動源側の振動度合いと減衰側の振動度合いとの対応関係を学習しているため、第1振動減衰装置の振動源側の振動度合いが入力されると、第1振動減衰装置の減衰側における未知の振動度合いを予測できる。それに加えて、本実施形態の特性分析装置100は、第1振動減衰装置について機械学習したAIモデルNを用いて、第1振動減衰装置とは別の第2振動減衰装置の特性を分析するものである。第2振動減衰装置は、特性分析の対象となる振動減衰装置1であり、第1振動減衰装置とは仕様が異なる。本実施形態では、第2振動減衰装置は、第1振動減衰装置と、作動流体Oの仕様が異なる。ただし、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いは、作動流体Oであることに限られず、任意のものであってよいが、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置とは、シリンダ10内における摩擦力に影響を及ぼす仕様が異なることが好ましい。例えば、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置とは、作動流体Oの仕様、オイルシール18の仕様、ベアリング16の仕様、ピストン20の仕様、及びバルブ(ベースバルブ40)の仕様の、少なくとも1つが異なることが好ましい。また、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いは、1種類であることが好ましい。なお、ここでの仕様とは、作動流体Oであれば、物性を指し、オイルシール18、ベアリング16、ピストン20、及びバルブなどの部品であれば、形状、寸法、および材料の少なくとも1つを指してよい。
【0029】
以下、特性分析装置100による第2振動減衰装置の特性の分析について具体的に説明する。
【0030】
AIモデル取得部82は、学習部80によって学習された、学習済みのAIモデルNを取得する。例えば、AIモデル取得部82は、記憶部76から、学習済みのAIモデルNを読み出す。なお、例えばAIモデルNの学習が別の装置によって行われている場合には、AIモデル取得部82は、通信部74を介して、その装置から学習済みのAIモデルNを取得してもよい。
【0031】
(測定値取得部)
測定値取得部84は、第2振動減衰装置の振動源側における振動度合い(ここでは加速度)の測定値と、第2振動減衰装置の減衰側(振動源とは反対側)における振動度合い(ここでは加速度)の測定値とを取得する。第2振動減衰装置の振動源側とは、第2振動減衰装置の振動源(本実施形態では車輪)に近い位置を指し、第2振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも振動源側の位置(ばね下の位置)といえる。本実施形態では、第2振動減衰装置の振動源側は、第2振動減衰装置のシリンダ10を指してよい。また、第2振動減衰装置の減衰側(振動源とは反対側)とは、第2振動減衰装置の振動源(本実施形態では車輪)から遠い側を指し、第2振動減衰装置の振動を減衰する機構に対して振動源と反対側の位置(ばね上の位置)といえる。本実施形態では、第2振動減衰装置の減衰側は、第1振動減衰装置のピストンロッド30を指してよい。
【0032】
本実施形態では、第2振動減衰装置を搭載した車両Vに、第2振動減衰装置の振動源側における振動度合い(ここでは加速度)を検出する第1センサS1と、第2振動減衰装置の減衰側における振動度合い(ここでは加速度)を検出する第2センサS2とを取り付けて、車両Vを実際に走行させる。そして、車両Vの走行中の、第2振動減衰装置の振動源側における所定時間毎の加速度を、第1センサS1に検出させ、車両Vの走行中の、第2振動減衰装置の減衰側における所定時間毎の加速度を、第2センサS2に検出させる。測定値取得部84は、第1センサS1及び第2センサS2の検出結果が記録される装置(データロガー)から、通信部74を介して、第1センサS1及び第2センサS2の検出結果を取得する。なお、第1センサS1は、第2振動減衰装置の振動源側における振動度合いを検出可能であれば任意の位置に取り付けられてよいが、例えば、第2振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも車輪側の位置(例えばシリンダ10)に取り付けられる。また、第2センサS2は、第2振動減衰装置の減衰側における振動度合いを検出可能であれば任意の位置に取り付けられてよいが、例えば、第2振動減衰装置の振動を減衰する機構よりも車輪と反対側の位置(例えばピストンロッド30)に取り付けられる。また、第1センサS1及び第2センサS2に検出を行わせる際の、車両Vの走行条件は、例えば試験用のコースを所定の速度で走行するなど、任意に設定されてよい。ただし、第1振動減衰装置の振動度合いを検出する際の、第1センサS1及び第2センサS2の取り付け位置、車両Vの仕様、及び車両Vの走行条件は、第1振動減衰装置の振動度合いを検出した際と同じであることが好ましい。
【0033】
以下、測定値取得部84が取得した第2振動減衰装置の振動源側における振動度合いの測定値を、適宜、入力測定値と記載し、測定値取得部84が取得した第2振動減衰装置の減衰側における振動度合いの測定値を、適宜、出力測定値と記載する。
【0034】
(予測値取得部)
予測値取得部86は、測定値取得部84が取得した入力測定値を、学習済みのAIモデルNに入力する。AIモデルNにおいては、入力測定値が入力データとして入力されて、演算が実行される。その結果、AIモデルNからは、第2振動減衰装置の減衰側(振動源とは反対側)における振動度合いの予測値である、出力予測値が、出力データとして出力される。これにより、予測値取得部86は、出力予測値を取得する。このように、AIモデルNは、入力測定値が入力されると出力予測値が出力される学習済みのプログラムであるともいえる。
【0035】
より詳しくは、本実施形態では、予測値取得部86は、測定値取得部84が取得した入力測定値に基づき、AIモデルNに入力するための入力データを生成する。具体的には、予測値取得部86は、第1センサS1が検出した所定時間毎の加速度の波形データ(時間毎の入力測定値)について、FFT処理により時間毎の加速度のデータを周波数毎に区分して、第2振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度の測定値を示す入力画像データ(入力測定値のスペクトログラム)を生成する。すなわち、予測値取得部86は、第2振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度の測定値を、時間をX軸として周波数をY軸とする二次元座標系における、座標(画素)毎の階調値に設定することで、入力画像データを生成する。
【0036】
予測値取得部86は、入力画像データを、入力データとしてAIモデルNに入力する。AIモデルNでは、演算が実行されて、第2振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の予測値を示す出力画像データ(出力予測値のスペクトログラム)が、出力データとして出力される。これにより、予測値取得部86は、出力画像データを取得する。なお、出力画像データは、第2振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の予測値(出力予測値)を、時間をX軸として周波数をY軸とする二次元座標系における、座標(画素)毎の階調値としたデータを指す。
【0037】
(特性情報生成部)
特性情報生成部88は、出力予測値(第2振動減衰装置の減衰側における加速度の予測値)と出力測定値(第2振動減衰装置の減衰側における加速度の測定値)との差分に基づき、特性情報を生成する。特性情報とは、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する振動度合いの違いを示す情報である。すなわち、AIモデルNは第1振動減衰装置の振動度合いを学習したものであるため、AIモデルNによって算出される第2振動減衰装置の振動度合いの出力予測値は、第1振動減衰装置と第2振動減衰装置との特徴が近い場合には、出力測定値と近い値になることが想定される。そのため、出力予測値と出力測定値との差分は、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する振動度合いの違いを表す指標になるといえる。従って、特性情報生成部88は、出力予測値と出力測定値との差分から、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する振動度合いの違いを示す特性情報を生成できる。このように、出力予測値と出力測定値との差分から特性情報を生成することで、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いが振動度合いに及ぼす影響を、適切に抽出でき、第2振動減衰装置の特性を適切に分析できる。これにより、例えば振動減衰装置の開発を補助できる。なお、第1振動減衰装置及び第2振動減衰装置の減衰側の測定値を解析することでも、仕様の違いが振動度合いに及ぼす影響を推定できる可能性があるが、測定時の条件の誤差などの影響により、仕様に違いが振動度合いに及ぼす影響だけを適切に抽出できない場合がある。それに対し、本実施形態では、出力予測値を用いることで、測定時の条件の誤差などを吸収して、仕様の違いが振動度合いに及ぼす影響を適切に抽出できる。
【0038】
より詳しくは、本実施形態では、特性情報生成部88は、AIモデルNが算出した出力画像データを取得する。また、特性情報生成部88は、第2センサS2が検出した所定時間毎の加速度の波形データ(時間毎の出力測定値)について、FFT処理により時間毎の加速度のデータを周波数毎に区分して、第2振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の測定値を示す測定画像データ(出力測定値のスペクトログラム)を生成する。測定画像データは、第2振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の測定値(出力測定値)を、時間をX軸として周波数をY軸とする二次元座標系における、座標(画素)毎の階調値としたデータを指す。特性情報生成部88は、出力画像データと測定画像データとの差分に基づき、特性情報を生成する。より詳しくは、特性情報生成部88は、出力画像データにおける出力予測値と、測定画像データにおける出力測定値との差分値を、座標毎に算出する。特性情報生成部88は、座標毎の出力予測値と出力測定値との差分値に基づき、特性情報を生成する。ここでの座標は、時間及び周波数毎に区分されるため、特性情報は、周波数毎の出力予測値と出力測定値との差分を示すデータといえる。このように、周波数毎の出力予測値と出力測定値との差分から特性情報を生成することで、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いに起因して振動度合いの差が大きくなる周波数帯を抽出できる。また、例えば検出が難しかった高周波の周波数帯での振動度合いの差分も適切に抽出できる。
【0039】
図6は、特性情報の一例を示す図である。特性情報は、出力予測値と出力測定値との差分値を示すデータそのものであってもよいが、出力予測値と出力測定値との差分値に基づき生成されるデータであってもよい。例えば、特性情報生成部88は、第1振動減衰装置の振動源側の測定値をAIモデルNに入力して取得した第1振動減衰装置の振動源側の予測値のデータと、第2振動減衰装置の振動源側の測定値をAIモデルNに入力して取得した第2振動減衰装置の振動源側の予測値のデータとを比較する情報を、特性情報としてもよい。この場合例えば、特性情報生成部88は、第1振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度の測定値を示す画像データをAIモデルNに入力して、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の予測値を示す画像データを取得する。そして、特性情報生成部88は、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の予測値と、第1振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の加速度の測定値との差分を算出して、それに基づき、第1振動減衰装置の減衰側の予測値と測定値との差分を周波数毎に示すデータを、第1特性情報として生成する。そして、特性情報生成部88は、周波数毎の出力予測値と出力測定値との差分を示すデータを、第2特性情報として、第1特性情報と第2特性情報とを含む情報を、特性情報とする。
図6の例では、線分L1が第1特性情報の例を示し、線分L2が第2特性情報の例を示している。このように第1特性情報と第2特性情報とを含ませることで、例えば、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いに起因して振動度合いの差が大きくなる周波数帯を、より適切に抽出できる。
【0040】
特性情報生成部88は、生成した特性情報を、出力部72に出力させてもよいし、別の装置に出力(送信)してもよい。
【0041】
(処理フロー)
以上説明した特性分析装置100の処理のフローを説明する。
図7は、特性分析装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図7に示すように、特性分析装置100は、AIモデル取得部82により、学習済みのAIモデルNを取得し(ステップS10)、測定値取得部84により、入力測定値(第2振動減衰装置の振動源側における振動度合いの測定値)と、出力測定値(第2振動減衰装置の減衰側における振動度合いの測定値)とを取得する(ステップS12)。特性分析装置100は、予測値取得部86により、入力画像データ(第2振動減衰装置の振動源側における時間及び周波数毎の加速度の測定値)を生成し、入力画像データをAIモデルNに入力し(ステップS14)、出力画像データ(第2振動減衰装置の減衰側における時間及び周波数毎の出力予測値)を取得する(ステップS16)。特性分析装置100は、特性情報生成部88により、出力予測値と出力測定値との差分に基づき、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する振動度合いの違いを示す特性情報を生成する(ステップS18)。
【0042】
なお、以上の説明では、振動源側(ばね下側)をAIモデルNの入力データとし、減衰側(ばね上側)をAIモデルNからの出力データとしていたが、それに限られず、逆に、減衰側(ばね上側)をAIモデルNの入力データとし、振動源側(ばね下側)をAIモデルNからの出力データとしてもよい。この場合、第1振動減衰装置の減衰側の振動度合いを入力データとして第1振動減衰装置の振動源側の振動度合いを出力データとする教師データで、AIモデルNに学習させる。そして、第2振動減衰装置の減衰側の振動度合いを学習済みのAIモデルNに入力して、第2振動減衰装置の振動源側の振動度合いの予測値を出力データとして取得する。
【0043】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る特性分析装置100は、機械学習を用いて振動減衰装置の特性を分析するものであり、AIモデル取得部82と、測定値取得部84と、予測値取得部86と、特性情報生成部88とを含む。AIモデル取得部82は、車両Vの車体BDと車輪TRの間に設けられる第1振動減衰装置のばね下側における加速度のスペクトログラムと、第1振動減衰装置のばね上側における加速度のスペクトログラムとの対応関係を機械学習させたAIモデルNを取得する。測定値取得部84は、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの一方側における加速度の測定値である入力測定値と、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の測定値である出力測定値とを取得する。予測値取得部86は、入力測定値をスペクトログラムとしてAIモデルNに入力して、第2振動減衰装置のばね下側及びばね上側のうちの他方側における加速度の予測値である出力予測値のスペクトログラムを取得する。特性情報生成部88は、出力予測値のスペクトログラムと出力測定値のスペクトログラムとの差分に基づき、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する加速度のスペクトログラムの違いを示す特性情報を生成する。
【0044】
特性分析装置100は、第1振動減衰装置のデータを用いて機械学習したAIモデルNを用いて、第2振動減衰装置の出力予測値を取得する。そして、特性分析装置100は、第2振動減衰装置の出力予測値と、第2振動減衰装置の出力測定値との差分から特性情報を生成する。従って、この特性情報は、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いが振動度合いに及ぼす影響を示す情報となり、第2振動減衰装置の特性を適切に分析することが可能となる。これにより、例えば振動減衰装置の開発を補助できる。さらに言えば、出力予測値を用いることで、測定時の条件の誤差などを吸収して、仕様の違いが振動度合いに及ぼす影響を適切に抽出できる。例えば、ユーザは、第1振動減衰装置が搭載された車両と第2振動減衰装置が搭載された車両とを乗り比べて、乗り心地の違いから、振動減衰装置を選択する場合がある。このような場合に、本実施形態で生成した特性情報をユーザに提示することで、乗り心地の違いを客観的にも明確にして、振動減衰装置の選択を補助することができる。また、従来においても、第1振動減衰装置の振動度合いの測定値と、第2振動減衰装置の振動度合いの測定値とを比較したデータをユーザに提供することはできたが、ドライバーの運転のくせ(例えば修正舵をきるときに振動が発生してしまう)、ドライバーの体重、気温、風などの外部環境で偶然振動が発生することがあり、結果としてノイズ要素が含まれたデータとなり、精度が低くなるおそれがあった。それに対し、本実施形態では、AIモデルNを用いて特性情報を生成することで、大量のデータから特徴的なものだけを抽出し、特徴的でないものは排除することができるので、ノイズ要素の影響を低減して、精度の高いデータを提供できる。
【0045】
また、AIモデルNは、時間及び周波数毎の、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いを示す画像データと、時間及び周波数毎の、第1振動減衰装置の減衰側における振動度合いを示す画像データとの対応関係を機械学習したものであることが好ましい。予測値取得部86は、時間及び周波数毎の入力測定値を示す入力画像データをAIモデルNに入力して、時間及び周波数毎の出力測予測値を示す出力画像データを取得することが好ましい。このように画像データをAIモデルN用のデータとして用いることで、周波数毎の出力予測値の予測精度を向上させて、第2振動減衰装置の特性を適切に分析することが可能となる。
【0046】
また、特性情報取得部88は、出力画像データにおける時間及び周波数毎の出力予測値と、時間及び周波数毎の出力測定値との差分に基づき、特性情報を生成することで、特性情報に、第2振動減衰装置の第1振動減衰装置に対する、周波数毎の振動度合いの違いを示す情報を含ませることが好ましい。このように周波数毎の振動度合いの違いを特性情報に含ませることで、第2振動減衰装置と第1振動減衰装置との仕様の違いに起因して振動度合いの差が大きくなる周波数帯を、適切に抽出できる。
【0047】
また、振動度合いは、加速度であることが好ましい。加速度を振動度合いとすることで、第2振動減衰装置の特性を適切に分析することが可能となる。
【0048】
また、第2振動減衰装置は、第1振動減衰装置に対して、摩擦力に影響を及ぼす仕様が異なることが好ましい。摩擦力は、振動減衰装置の操舵性や接地感などの乗り心地に影響を及ぼすが、摩擦力がどのように振動減衰装置の特性に影響することで、結果として乗り心地に影響するかは分析が難しい。それに対して、本実施形態のように、AIモデルNを用いて特性情報を生成することで、仕様の違いが振動度合いの違いに及ぼす影響を適切に抽出して、摩擦力による振動減衰装置の特性の影響を、適切に分析することが可能となる。
【0049】
また、第2振動減衰装置は、第1振動減衰装置に対して、作動流体O、オイルシール18、ベアリング16、ピストン20、及びバルブ(ベースバルブ40)の少なくとも1つが異なることが好ましい。本実施形態によると、これらの仕様の違いによる振動減衰装置の特性の影響を、適切に分析することが可能となる。
【0050】
また、AIモデルNは、第1振動減衰装置の振動源側における振動度合いの測定値と、第1振動減衰装置の減衰側(振動源とは反対側)における振動度合いの測定値とを教師データとして、対応関係を機械学習したものである。測定値をAIモデルの教師データとすることで、AIモデルの予測精度を向上できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 振動減衰装置
80 学習部
82 AIモデル取得部
84 測定値取得部
86 予測値取得部
88 特性情報生成部
100 特性分析装置
N AIモデル