(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165498
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ゴルフ練習器具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
A63B69/36 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070850
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】513308505
【氏名又は名称】井本 満
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】井本 満
(57)【要約】
【課題】オンプレーンの向きの正しいトップと、そこからの正しいダウンスイングのフォームを身につけることのできるゴルフ練習器具を提供する。
【解決手段】ゴルフ練習器具は、グリップ練習用具1のシャフト部に取付けられる。ゴルフ練習器具は、シャフト部に着脱自在に取付けるための取付部材10と、取付部材10におけるヒンジ軸31に対してヒンジ接続された板部材20とを備えている。板部材20には、板部材20から取付部材10に跨る弾性部材40から、その先端側がシャフト部に向かう方向の力がはたらいている。トップでシャフト部の向きがオンプレーンとなると、板部材20がシャフト部の真下に入って、その先端側がシャフト部から離れる。そこから、正しいフォームでダウンスイングをすると、板部材20がシャフト部に当たって音が鳴る。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブのシャフトにおける、グリップとの接続部分から20cm以内の任意の箇所に、前記シャフトの軸回りの任意の角度を維持した状態で、着脱自在な取付けを行うことのできる取付部材と、
前記取付部材が前記シャフトに取付けられたときに、前記シャフトにその一面である当接面が沿うようになっているとともに、その基端側が、前記シャフトの長さ方向に垂直で且つ前記当接面に平行な軸を介して前記取付部材にヒンジ接続され、且つその先端側が前記グリップと逆側に伸びる板状の板部材と、
前記取付部材が前記シャフトに取付けられたときに、前記板部材の先端側が前記シャフトに当接する向きの力を前記板部材に与える、前記取付部材と前記板部材とに跨って配された弾性部材と、
を備えているゴルフ練習器具であって、
前記取付部材は、ユーザが前記ゴルフクラブの前記グリップを握って構えたときに、前記板部材の前記当接面が前記シャフトの上側の面に沿うような角度で前記シャフトに取付けられるとともに、
前記板部材は、
前記取付部材が取付けられたシャフトの真下に位置する状態となったときに、その自重により前記弾性部材から与えられる力に抗して前記軸を中心として回転することによって、その先端側が前記シャフトから離れるようになっており、
且つ、トップの位置で前記シャフトの真下に前記板部材が位置した後に、ユーザが、左腕リードで右肘を真下に下げるように前記ゴルフクラブをダウンスイングすると、前記板部材の前記当接面が前記シャフトに勢いよく当たることにより音が生じるようになっている、
ゴルフ練習器具。
【請求項2】
前記板部材における前記当接面の反対側の面に、水準器が取付けられている、
請求項1記載のゴルフ練習器具。
【請求項3】
前記板部材の前記当接面が、弾性を有する材料でできた被覆層によって被覆されている、
請求項1記載のゴルフ練習器具。
【請求項4】
前記板部材の先端側が前記シャフトから最も離れたときに、前記板部材と前記シャフトとがなす角度が、10°から35°の間の所定の角度である、
請求項1記載のゴルフ練習器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ練習器具に関し、特にはゴルフクラブのスイングの過程におけるトップの位置におけるゴルフクラブのシャフトの正しい向きと、トップからの正しいダウンスイングの軌道を身につけるのに役立つゴルフ練習器具に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中でゴルフが人気を博している。ゴルフは、プロゴルファーのプレイが観戦の対象ともなるが、自らプレイするアマチュアゴルファーも数多く存在する。
もちろん多くのゴルファーにとって、スコアを縮めるのが究極の夢であり目標であるが、そのために必要な飛距離アップとショットの正確性の向上が、その手前の夢であり目標である。したがって、多くのゴルファーは、ゴルフクラブをスイングする際の正しいフォームを身につけることに腐心する。
多くのゴルファーはそのような欲求を強く抱くので、その手助けとなるような様々なゴルフ練習器具が提案され、既に公知或いは周知になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゴルフスイングのフォームの中でゴルファーを悩ませるものの一つにトップでのゴルフクラブのシャフトの向きがある。トップとは、ゴルファーがゴルフクラブをスイングするときにおいて、テークバックからダウンスイングに移る間における、最も高い位置でゴルフクラブが静止する位置、或いはその時点を意味する。
トップでのシャフトの向きが正しくないと、フェイスの向きがスクェアでなくなるという事態が生じやすくなるため、打出したボールの軌道が安定しない原因や、飛距離が伸びない原因となり得る。また、トップでのシャフトの向きが正しくとも、そこから正しいダウンスイングを行えないことも、打出したボールの軌道が安定しない原因や、飛距離が伸びない原因となり得る。
【0004】
しかしながら、ゴルファーが、ゴルフスイングにおける正しいトップでのシャフトの向きと、そこからの正しいダウンスイングを身につけるのは難しい。一般的なゴルフ練習器具は、ゴルフのスイングの全行程を練習するためのものとされるのが通常であり、ゴルフスイングの一部である、ゴルフスイングにおける正しいトップでのシャフトの向きと、そこからの正しいダウンスイングの練習に特に着目したものは本願発明者が知る限り存在していない。
もちろん他の練習器具によってゴルフスイングの全行程を正しく習得することができれば、トップでのシャフトの向きと、そこからのダウンスイングも正しく習得されることになるが、本願発明者の見解によれば、トップからダウンスイングにかけての一連の流れは、ボールをヒットする直前のゴルフクラブの動きに直結するため、トップでのシャフトの向きと、そこからのダウンスイングを正しく身につけることができたのであれば、ゴルフスイング全体の正しいフォームを習得するために要する時間が短くなる。
他方、トップでのシャフトの向きと、そこからのダウンスイングとを正しく身につけようとしてゴルファーがゴルフスイングの練習をするのであれば、今自分がしたスイングが、正しいものであったのか否かを直感的に判断できることが必要となる。しかしながら、そのようなことまでを可能とするゴルフ練習器具は、本願発明者が知る限り存在していない。
【0005】
本願発明は、トップでのシャフトの向きと、そこからのダウンスイングとを正しく習得するための練習をゴルファーが行えるようにするためのゴルフ練習器具であって、練習中のゴルファー(そのゴルフ練習器具のユーザ)が、今行ったスイングにおけるトップの位置及びそのときのシャフトの向きと、そこからのダウンスイングとが正しいものであったのか否かを直感的に判断することができるようにするものを提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、このゴルフ練習器具によってユーザが身につけるべき、正しいトップでのシャフトの向きの定義を行う。なお、本願に登場するユーザはすべて、右打ちであるものとする。
トップでのシャフトの向きには、シャフトの向きがボールの後側から見て、ターゲットの左側を指すレイドオフ、ターゲットをまっすぐ指すオンプレーン、ターゲットの右側を指すシャフトクロスがある。
レイドオフの場合であれば、いわゆるアウトサイドインのスイングとなり、ボールは、ターゲットにむかつて左に打ち出され、フェイスの向きによってプルフック、プル、フェードとなる。
シャフトクロスの場合であれば、いわゆるインサイドアウトのスイングとなり、ボールは、ターゲットに向かって右に打ち出され、フェイスの向きによってドロー、プッシュアウト、プッシュスライスとなる。
オンプレーンの場合にはレイドオフとシャフトクロスとの中間であり、ボールをインパクトする際に、ゴルフクラブのヘッドがボールに対してスクェアとなるため、左右へのボールの曲がりが少なくなる。
これらのうち、特に初心者が基本として身につけるべきは、ゴルフクラブのヘッドがボールに対してスクェアに当たり、最も癖のないボールを打つことができるオンプレーンであると本願発明者は考える。したがって、本願では、トップでの正しいシャフトの向きは、ターゲットを真っ直ぐ指す向きであると定義する。
つまり、本願発明のゴルフ練習器具は、それを用いることで、トップにおけるシャフトの向きがターゲットを真っ直ぐ指すようなスイングのフォームを身につけることができるものとされている。
【0007】
本願発明のゴルフ練習器具は、ゴルフクラブのシャフトにおける、グリップとの接続部分から20cm以内の任意の箇所に、前記シャフトの軸回りの任意の角度を維持した状態で、着脱自在な取付けを行うことのできる取付部材と、前記取付部材が前記シャフトに取付けられたときに、前記シャフトにその一面である当接面が沿うようになっているとともに、その基端側が、前記シャフトの長さ方向に垂直で且つ前記当接面に平行な軸を介して前記取付部材にヒンジ接続され、且つその先端側が前記グリップと逆側に伸びる板状の板部材と、前記取付部材が前記シャフトに取付けられたときに、前記板部材の先端側が前記シャフトに当接する向きの力を前記板部材に与える、前記取付部材と前記板部材とに跨って配された弾性部材と、を備えているゴルフ練習器具である。
そして、このゴルフ練習器具における前記取付部材は、ユーザが前記ゴルフクラブの前記グリップを握って構えたときに、前記板部材の前記当接面が前記シャフトの上側の面に沿うような角度で前記シャフトに取付けられる。
また、前記板部材は、前記取付部材が取付けられたシャフトの真下に位置する状態となったときに、その自重により前記弾性部材から与えられる力に抗して前記軸を中心として回転することによって、その先端側が前記シャフトから離れるようになっており、且つ、トップの位置で前記シャフトの真下に前記板部材が位置した後に、ユーザが、左腕リードで右肘を真下に下げるように前記ゴルフクラブをダウンスイングすると、前記板部材の前記当接面が前記シャフトに勢いよく当たることにより音が生じるようになっている。
【0008】
本願のゴルフ練習器具では、基本的に、取付部材と、板部材と、弾性部材を有するという極めて単純な構成が採用される。
取付部材は、ゴルフクラブのシャフトに対して、着脱自在な取付けをなすものである。取付部材によるシャフトへの着脱自在な固定は、シャフトの軸周りの角度を任意のものとすることができるようにされている。より具体的には、本願のゴルフ練習器具をゴルフクラブのシャフトへ取付ける場合には、ユーザがゴルフクラブのグリップを握って構えたときに、板部材の当接面がシャフトの上側の面に沿うような角度となるようにする。また、取付部材がゴルフクラブに取付けられる位置は、取付部材からゴルフクラブのグリップまでの距離(シャフトに沿った距離)が20cm以内、例えば、後述するヒンジ接続の軸からグリップまでの距離が20cm以内となるようにする。
取付部材によって任意のゴルフクラブのシャフトへの取付けが可能なので、本願のゴルフ練習器具は、ユーザが持つ、使い慣れたゴルフクラブに取付けて用いることができる。これは、このゴルフ練習器具を用いて行う素振りその他の練習が、実践的なものとなることを意味する。もっとも、取付部材を取付けることのできるゴルフクラブのシャフトは、よく知られているように、断面円形の棒状体である。したがって、ゴルフクラブのシャフトに取付け可能とされている本願発明のゴルフ練習器具における取付部材は、ゴルフクラブのシャフト以外の断面円形の棒状体にも当然に、着脱自在な取付けをなすことができる。例えば、ゴルフクラブよりも短いグリップ練習用具(ゴルフクラブのグリップを模した部分に、10cmから15cm程度の長さのシャフト相当の部品が取付けられたもの。多くは樹脂の一体成型品かその内部に金属製の棒を仕込んだものである。)のシャフト相当の部品に、取付部材を取付けることも可能である。つまり、そのようなグリップ練習用具に本願発明のゴルフ練習器具を取付けた状態で、素振りを行い、正しいゴルフスイングを身につける、という使用方法でも本願のゴルフ練習器具は使用可能である。
取付部材は、例えば、多少の弾性を与えられた、金属製、或いは樹脂製の断面Cの字型の部品であって、その開放された部分の両端を押し広げ、Cの字の内部の空間にゴルフクラブのシャフトを押し込み、シャフトの外面にCの字型の部品の内面を強く当接させることにより、シャフトに対して着脱自在な取付けをなすようなものとすることができる。
板部材は、例えば細長い矩形形状の、板状の部品であって、取付部材がシャフトに取付けられたときに、その長さ方向がシャフトに沿うような状態で配されることになる。板部材の大きな面積の2つの面のうち、シャフトに沿う面が当接面である。板部材の基端側は、取付部材にヒンジ接続されている。ヒンジに含まれる、板部材が取付部材に対して回転運動する場合の軸は、シャフトの長さ方向に垂直で且つ当接面に平行である。したがって、板部材は、その軸を中心として、当接面をシャフトに対向させた状態で、板部材の先端側をシャフトに近づかせたり、シャフトから離反させたりするようにして回転可能となっている。この場合、軸は、部品として存在する必要はない。例えば、取付部材と、板部材とを樹脂製の一体ものとするとともに、軸に相当する部分を薄く且つ折り曲げ可能とすることにより、板部材を取付部材に対して回転可能とするなどしてもよい。また、板部材と取付部材とを、折曲げ可能なテープによって例えば接着により接続することにより、軸に相当するテープ部分で板部材を取付部材に対して回転可能とするなどしてもよい。部品としての軸が存在しないそのような構成でも、本願で言うヒンジ接続に含まれるものとする。
弾性部材は、前記取付部材が前記シャフトに取付けられたときに、板部材の先端側が前記シャフトに当接する向きの力を前記板部材に与える。弾性部材が板部材に与える上記方向の力は、取付部材がシャフトに取付けられたか否かに関わらず、板部材に与えられる。弾性部材は例えばばねであり、典型的にはねじりコイルばねである。
【0009】
このゴルフ練習器具は、上述したように、取付部材を、ゴルフクラブのシャフト(或いは、グリップ練習用具におけるゴルフクラブのシャフトを模した部分でも良い。)のグリップとの接続部分から、20cm以内の場所に取付けて用いられる。これも既に述べたように、そのとき、ユーザがゴルフクラブのグリップを握って構えたときに、板部材の当接面がシャフトの上側の面に沿うような角度に位置決めされた状態で、取付部材はシャフトに取付けられる。
その状態で、ユーザは、実際にボールを打つか、素振りを行う。ゴルフ練習器具が取付けられるのが、グリップ練習用具である場合には、ユーザが行うのは素振りとなる。
【0010】
ここで、ゴルフクラブのスイングの正しいフォームについて説明する。以下に説明するフォームは、ボディーターン(body turn)などと称される体幹の回転を利用したフォームである。
ユーザは、まず、ゴルフクラブを握って前傾し、いわゆる構え(アドレス)の状態を取る。このときユーザは、右脇も左脇も締めた状態とする。
ここからテークバックが始まる。
ユーザは、そのまま、右脇も左脇も締めたまま、右股関節を45°撚り(この「45°」は、「理想的には45°」を意味し、実際は、「45°程度」を意味する。以下も、何らかの関節を「45°」撚る、回転させる等いうときには、同じ意味である。)、更に上体を45°右側に撚ることにより、都合、ボールの飛ぶ方向に対して、上体を真後ろに向ける。このとき、理想的には、ゴルフクラブのシャフトは、ボールの飛ぶ方向に対して真後ろを向いており、略水平である。
その状態から、両手を真上に引き上げることにより、ゴルフクラブのフェイスがスクェアな状態を保ったままでトップの姿勢を取る。トップの姿勢を取る前の段階で右腕を引き上げ始めると右脇が開く。トップの姿勢をとったとき、シャフトは、理想的には、ターゲットを真っ直ぐ指しており、オンプレーンの状態になっている。また、理想的には、シャフトは水平かそれに近い状態となっている。
トップの姿勢を取ったユーザは、続けてダウンスイングを開始する。
ダウンスイングを行う場合、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締め、更に左股関節を45°撚った状態で仮想のボールを打ち、そしてゴルフクラブのシャフトを、ボールの射出方向に向けている。このときは、まだ、左脇の下は締まった状態である。
そして、そのままユーザはフォロースルーの動作を行う。
フォロースルーでは、ユーザは、上体を更に左方向に45°撚ることによって、仮想のボールの飛ぶ方向に上半身を向けるとともに、左腕を引き上げる。このとき、左脇の下が開く。最終的に左腕の上腕部は略水平となるようにし、フィニッシュの姿勢を作る。
【0011】
上述のような正しいフォームでトップを作ったとする。
そのときのトップの向きはオンプレーンの状態にある。そうすると、ゴルフクラブのフェイスはスクェアな状態を保っており、構えの状態でゴルフクラブのシャフトの真上に位置していた板部材は、シャフトの真下に位置した状態となる。
そうすると、当然に板部材には下向きに重力がはたらく。その重力によって、板部材は、弾性部材からの力に抗して、ヒンジ接続の軸を中心として回転する。それにより、板部材の先端側が、シャフトから幾らか離れた状態となる。本願発明におけるゴルフ練習器具では、板部材の重さ及び形状と、弾性部材からはたらく力とが、板部材が上述したような動きを行うように、予め調整されている。
そこからユーザが、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締める或いは勢いよく引き下げると、少なくともダウンスイングが始まった瞬間において、シャフトは真下に勢いよく引き下げられることになる。そうすると、その先端がシャフトから離れた板部材には慣性力がはたらくので、シャフトから離れた板部材の先端側は、シャフトの方向に向けて移動を開始する。そうすると、板部材は、板部材の先端側がシャフトに近づく方向で、ヒンジ接続の軸を中心として回転し、その当接面が、勢いよくシャフトに当たる。それにより、シャフトから音が放たれる。そして、上述したように、ユーザは、フォロースルーからフィニッシュまでの動作を、必要に応じて行う。
板部材がシャフトに勢いよく当たったときに生じた音を聞くことによってユーザは、そのときに自分が行ったスイングのうち、少なくともトップのときのシャフトの向きがオンプレーンになっていたことと、ダウンスイングが正しく行われていたことを知ることができる。
【0012】
上述の音によりユーザが、そのときに自分が行ったスイングのうち、少なくともトップのときのシャフトの向きがオンプレーンになっていたことと、ダウンスイングが正しく行われていたことを知ることができるのは、以下の理由による。
まず、トップの姿勢をとったときにおけるシャフトの向きがターゲットより左側を指すレイドオフとなっている場合、人間の身体の構造上、ユーザの右腕と左腕の肘から先の部分である前腕は時計回りに回転しており、したがって、板部材はシャフトの真下に来ていない。極端な話、板部材がシャフトの真横に位置していることを考えれば容易に理解できるであろうが、この状態では、板部材に対してかかる重力は、ヒンジ接続の軸に沿った方向にはたらくから、板部材がヒンジ接続の軸を中心として回転して、板部材の先端側がシャフトから離れることがないか、板部材の先端側がシャフトから離れるにしても、板部材の先端側がシャフトから離れる距離が、板部材がシャフトの真下にあるときよりも小さくなる。
その状態からユーザが、仮に正しいフォームのダウンスイングを行ったとしても、板部材の先端側がシャフトから離れていないか、少なくとも十分には離れていないので、板部材の先端側がシャフトから離れていないのであれば板部材がシャフトに当たるという現象が生じないから音が生じないし、また、板部材の先端側が僅かにシャフトから離れていたとしても、板部材がシャフトに当たったことにより生じる音は、トップでのシャフトの向きがオンプレーンの状態にあったときと比して小さくなる。
また、トップの姿勢をとったときにおけるシャフトの向きがターゲットより右側を指すシャフトクロスとなっている場合、人間の身体の構造上、ユーザの右腕と左腕の前腕は反時計回りに回転しており、したがって、板部材はシャフトの真下に来ていない。したがって、この場合にも、トップでのシャフトの向きがレイドオフとなっている場合と同様に、板部材の先端側がシャフトから離れることがないか、板部材の先端側がシャフトから離れるにしても、板部材の先端側がシャフトから離れる距離が、板部材がシャフトの真下にあるときよりも小さくなる。
したがって、シャフトクロスとなっているトップの状態から、仮に正しいフォームのダウンスイングを行ったとしても、トップでのシャフトの向きがレイドオフであった場合と同様に、音が生じないか、仮に生じるにしても、トップでのシャフトの向きがオンプレーンの状態にあったときと比して小さくなる。
また、仮に、トップでのシャフトの向きがオンプレーンの状態であったとしても、ユーザがダウンスイングを行ったときのフォームが、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締める或いは勢いよく引き下げるというものでなく、例えば、上体を戻すことなく、腕だけでゴルフクラブをスイングしようとするような場合には、ダウンスイングが始まった瞬間においてシャフトが真下に勢いよく引き下げられるという動きが生じないので、その先端がシャフトから離れた板部材にはたらく慣性力が、上述のごとき正しいダウンスイングが行われた場合と比して小さくなる。そうすると、板部材の当接面がシャフトに当たったとしても、そのときの勢いはダウンスイングが正しいときと比して小さくなるから、板部材がシャフトに当たることによって生じる音も当然に小さくなる。もちろん、トップでのシャフトの向きが、レイドオフやシャフトクロスとなっていたときにおいて、正しいフォームでのダウンスイングが行われた場合であっても、板部材の当接面がシャフトに当たることによる、音は生じないか、仮に生じるにしても小さい。
以上の説明から明らかなように、本願発明におけるゴルフ練習器具を用いて素振り乃至ボールを打つ場合において、大きな音が生じるのは、トップのときのシャフトの向きがオンプレーンになっているという条件と、ダウンスイングが正しく行われていたという条件との双方が充足されたときのみである。
したがって、スイングを行ったときに生じる音の大きさによって、ユーザは、自分が今行ったスイングにおいて、トップのときのシャフトの向きがオンプレーンになっており、且つダウンスイングが正しく行われていたか、ということを直感的に判断することができることになる。しかも、正しいスイングが行われたときに生じる大きな音は、実際にボールを打つときに生じる打撃音に通じ、ユーザに一種の爽快感を与える。実際には、音に加えて、板部材がゴルフクラブのシャフトに当たると、それによる衝撃が生じるが、その衝撃は、実際にボールを打つときに生じる感触に似通っているから、これによってもユーザは、一種の爽快感を得られる。それにより、このゴルフ練習器具は、ユーザに、繰返し練習を行わせるための動機づけを強く与えるものともなり得る。
【0013】
なお、以上での説明は、トップでのシャフトの向きのみを問題としていた。
ところで、トップの問題には、シャフトの向きのみならず、グリップの高さという問題もある。ゴルフスイングのフォームの中でのトップでのグリップの高さは、上から、アップライト、ノーマル、フラットである。
アップライトの場合には、グリップの位置が頭の上、高く上がりスイング軌道が急角度に入り、ボールをインパクトする際にアウトサイドインのスイングになりやすいため、ボールは、ターゲットにむかつて左に打ち出され、フェイスの向きによってプルフック、プル、フェードとなる。
他方、フラットの場合には、グリップが背中の後方に位置し、ボールをインパクトするタイミングでインサイドアウトのスイングとなりやすいため、ボールは、ターゲットに向かって右に打ち出され、フェイスの向きによってドロー、プッシュアウト、プッシュスライスとなる。
それらに比して、ノーマルの場合にはグリップは、シャフトとほぼ同じくらいの高さで右肩の上やや後ろに位置する。そうするとダウンスイングのスイング軌道に正しく入ることができ、インパクトでクラブのフェイスがスクェアに入りターゲットに向かってボールが真っすぐに飛ぶ。
したがって、トップでのグリップの高さは、ノーマルとするのが、特にゴルフ初心者にとっては、向いている。
そして、トップでのグリップの高さがアップライトのときや、フラットのときには、トップでのシャフトの向きがオンプレーンにはなりにくい。したがって、本願発明のゴルフ練習器具を用いて、ダウンスイングのときに大きな音が鳴るように、トップでのシャフトの向きと、ダウンスイング時のフォームとを矯正すれば、トップでのグリップの高さも、多くの場合ノーマルに矯正される。
加えて、トップの位置に到達したときのシャフトの向きとグリップの高さが正しく矯正されたということは、そこに至るまでのテークバックでの正しいシャフトの向き(或いは動き)も、ユーザは身につけることができる。
【0014】
上述したように、本願発明のゴルフ練習器具は、基本的に、取付部材、板部材、及び弾性部材から構成される。もっとも、これらは本願発明のゴルフ練習器具における基本構成であり、これらに加えて、他の構成をゴルフ練習器具が備えていても良い。
例えば、本願発明のゴルフ練習器具の前記板部材における前記当接面の反対側の面には、水準器が取付けられていてもよい。
上述したように、正しいゴルフスイングのフォームでは、構えの状態からテークバックを開始したときに、右脇も左脇も締めたまま、右股関節を45°撚り、更に上体を45°右側に撚ることにより、都合、ボールの飛ぶ方向に対して、上体を真後ろに向けるという動作がある。この動作が終わったとき、これも既に説明したように、理想的には、ゴルフクラブのシャフトは、ボールの飛ぶ方向に対して真後ろを向いており、略水平である。
このときにゴルフクラブのシャフトが正しく後方を向き、且つ水平になっているとき、板部材の当接面の裏側の面は、真上を向いている。したがって、水準器が真上を向いており、且つ水平であることを示しているのであれば、ユーザは、水準器を目視することにより、そこまでの、つまりテークバックの途中までの自らのフォームが正しいものであるか否かを判断することができることになる。
なお、本願発明におけるゴルフ練習器具では、板部材の重さ及び形状と、弾性部材からはたらく力とが、シャフトの真下に位置する板部材の先端側が、弾性部材からの力に抗してシャフトから離れるように調整されていると説明した。仮に、板部材に水準器が取付けられているのであれば、水準器も含めた板部材の重さ及び形状と、弾性部材からはたらく力とが、シャフトの真下に位置する板部材の先端側が、弾性部材からの力に抗してシャフトから離れるように調整されている必要があるのは当然である。
【0015】
上述したように、本願発明のゴルフ練習器具では、板部材の当接面がシャフトに当たるときに生じる音の大小若しくは音が生じないということにより、ユーザがそのとき行ったスイングにおけるトップでのシャフトの向きと、ダウンスイングの正しさとを、ユーザが判断することができる。
かかる原理からすると、板部材の当接面がシャフトにある程度以上の勢いを持って、例えば、何度も当たることが必要不可欠である。しかしながら、そのような板部材とシャフトの衝突が何度も繰り返されると、それにより、ゴルフクラブのシャフトが傷むおそれがある。そのようなことを防止するのであれば、前記板部材の前記当接面が、弾性を有する材料でできた被覆層によって被覆されているという構成を採用すれば良い。
仮にそのようにしたのであれば、弾性を有する被覆層がシャフトに当たることになるので、被覆層がないときよりも板部材がシャフトに当たることによって生じる音は小さくなるものの、シャフトの傷みは小さくなる。被覆層は、例えば、硬化したときに弾性を持つ塗料を当接面に塗ることによって形成されても良いし、弾性を持つ素材でできたシートを、当接面に貼り付けることによって形成されても良い。
上述したように、本願発明によるゴルフ練習器具の使用時において、トップでのシャフトの向きが正しいときには、板部材の先端側がゴルフクラブのシャフトから離れた状態となる。つまり、板部材とゴルフクラブのシャフトには、取付部材、より詳細には、板部材と取付部材とを接続するヒンジ接続の軸を頂点とした、ある角度がつく。この角度があまりに大きいと、その後のダウンスイング時におけるフォームが正しいものであっても、板部材がヒンジ接続の軸を中心とした回転を行わず、板部材がゴルフクラブのシャフトに勢いよく当たらないという現象も生じうる。そうすると、板部材の当接面がシャフトに当たるときに生じる音の大小若しくは音が生じないということに応じて、ユーザがそのとき行ったスイングにおけるトップでのシャフトの向きと、ダウンスイングの正しさとを、ユーザが判断することができなくなるおそれがある。
そのようなことが無いようにするのであれば、前記板部材の先端側が前記シャフトから最も離れたときに、前記板部材と前記シャフトとがなす角度が、10°から35°の間の所定の角度とすれば良い。この、板部材とシャフトがなす角度の最大値は、更に、15°から30°とするのが好ましい。この程度板部材がシャフトから離れていると、シャフトに板部材が当たったときに音が良く鳴る。
板部材とシャフトがなす角度の最大値を10°から35°、或いは15°から30°の間の所定の角度とするための原理を、本願発明者は2つ提案する。
1つ目は、ゴルフ練習器具における板部材(板部材に、板部材とともに取付部材に対して回転する他の部材(例えば、水準器)が取付けられているのであれば、板部材にそれら他の部材を加えたもの全体)に対して重力からはたらくトルクによって、板部材が取付部材に対して回転する最大の角度が上述のようになるように、予め、板部材(或いは板部材+他の部材)の重量と、弾性部材が板部材に与える力との比率を適切に調整しておくことである。
2つ目は、1つ目の場合よりも弾性部材が板部材に与える力を同じか小さくしておくとともに、取付部材と板部材の少なくとも一方に、取付部材に対していた部材が上述の角度よりも回転しようとしたときにそれを妨げるストッパを設けておくことである。取付部材が所定の範囲でしか板部材に対して回転しないようにするためのストッパは、公知或いは周知技術から適当に選択することにより、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態によるゴルフ練習器具を後方から見た場合の斜視図。
【
図2】
図1に示したゴルフ練習器具を側方から見た場合の斜視図。
【
図4】
図1に示したゴルフ練習器具において、取付部材に対する板部材の角度を変えた場合の側面図。
【
図5】
図1に示したゴルフ練習器具を、グリップ練習用具に取付けた状態を示す側面図。
【
図6】正しいフォームで素振りを行う際の、構えを取る直前の状態を示す正面図。
【
図7】正しいフォームで素振りを行う際の、テークバックの途中の状態を示す正面図。
【
図8】正しいフォームで素振りを行う際の、トップの状態を示す正面図。
【
図9】正しいフォームで素振りを行う際の、フィニッシュの状態を示す正面図。
【
図10】
図1に示したゴルフ練習器具を取付けたグリップ練習用具を用いて素振りを行う際の、シャフト部の向きがオンプレーンとなっているトップの状態を示す図。
【
図11】
図1に示したゴルフ練習器具を取付けたグリップ練習用具を用いて素振りを行う際の、シャフト部の向きがシャフトクロスとなっているトップの状態を示す図。
【
図12】当接面に被覆層を取付けた場合における、ゴルフ練習器具の側面図。
【
図13】取付部材にストッパを設けた場合における、ゴルフ練習器具の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
この実施形態におけるゴルフ練習器具を後方から見た場合の斜視図を
図1に、側方から見た場合の斜視図を
図2に示す。
これには限られないが、特に断りの無い限り、ゴルフ練習器具を構成する各部品はすべて樹脂である。
この実施形態におけるゴルフ練習器具は、取付部材10を備えている。取付部材10は、ゴルフクラブのシャフトに対して着脱自在な取付けをなすための部材である。取付部材50の取付けの対象となるゴルフクラブのシャフトは、よく知られているように、断面円形の棒状体である。したがって、ゴルフクラブのシャフトに取付け可能とされている取付部材10であれば、当然に、ゴルフクラブのシャフトに相当する太さとされた、ゴルフクラブのシャフト以外の断面円形の棒状体にも着脱自在な取付けをなすことができる。
この実施形態におけるゴルフ練習器具の取付部材10は、例えば、
図1に示したように、断面略Cの字型の形状をしている。略Cの字型の取付部材10の内側には、略円筒形の内部空間11があり、また、内部空間11は、略Cの字型の取付部材10の一部、この実施形態では、
図1における下側の部分で、外部に向けて開放されている。内部空間11が作る略円筒形の内部空間の直径は、取付部材10が取付けられることが予定されたゴルフクラブのシャフトの直径よりも幾らか小さくなるように設計されている。
適当な樹脂によって作られた取付部材10には適度な弾性が与えられており、内部空間11が外部に向けて開放されている
図1における下側の両先端12同士を押し広げてから、その先端12同士の間にゴルフクラブのシャフトを押し込むことによって、取付部材10をゴルフクラブのシャフトに対して着脱自在に取付けることができる。ゴルフクラブのシャフトが取付部材10の内部空間11に押し込まれると、略Cの字型の取付部材10はその弾性によって元の形状に戻ろうとするので、その力によって取付部材10は、ゴルフクラブのシャフトを外側から締め付ける。それにより、取付部材10は、後述するようにゴルフクラブがスイングされたとしても、ゴルフクラブのシャフトの長さ方向に移動しないし、シャフトの軸回りに回転もしない。
なお、取付部材10は、後述する板部材の基端側がゴルフクラブのグリップ側に位置するようにして、且つ取付部材10からゴルフクラブのグリップまでの距離(より正確には、後述するヒンジ軸からグリップまでの距離)が、20cm以内好ましくは、10cm以内となるようにして、ゴルフクラブのシャフトに取付けられるようになっている。また、取付部材10は、取付部材10のシャフトの軸回りの角度を任意に位置決めした状態で、ゴルフクラブのシャフトに対して取付けることができるようになっている。取付部材10のシャフトの軸に対する位置決めは、取付部材10をゴルフクラブのシャフトに取付ける際に行っても良いし、取付部材10とシャフトの間に生じる摩擦力を超える力が必要となるが、取付部材10を上述のようにしてゴルフクラブのシャフトに取付けてから行っても良い。
この実施形態では、取付部材10は上述のような断面略Cの字型の部品としたが、取付部材10は、ゴルフクラブのシャフトに対する着脱自在な固定を、ゴルフクラブのグリップから取付部材10における後述するヒンジ軸までの距離が20cm以内となるようにしつつ、シャフトの軸周りの角度を任意に位置決めした状態で行えれば十分である。
したがって、取付部材10は、上述した構成に限られない。例えば、取付部材10は、面ファスナをその先端に備えたベルトを含んでおり、ゴルフクラブのシャフトを一周させたベルトの先端の面ファスナを、ベルトの基端付近に固定することによって、ゴルフクラブのシャフトに着脱自在に取付けられるようなものとなっていても構わない。この場合には、ベルトによって締め付けられたシャフトとベルトとが、着脱自在に固定される。
【0019】
取付部材10には、板部材20が接続されている。
板部材20は、板状体である。この実施形態における板部材20は、細長い形状であり、これには限られないが、矩形である。後述するように、板部材20は、取付部材10がゴルフクラブのシャフトに取付けられた場合に、シャフトの長さ方向にその長手方向が沿うようになっている。
板部材20の大きな面積の2つの面のうち、
図1、
図2において下側に位置するのが、当接面21である。当接面21は、取付部材10がゴルフクラブのシャフトに取付けられたときに、ゴルフクラブのシャフトに対向し、この実施形態では、その長手方向の全長か、少なくともその先端が、シャフトに当接した状態となるようになっている。
板部材20の基端側(
図1における手前側、
図2における左側)は、取付部材10に対してヒンジ接続されている。板部材20と取付部材10とをヒンジ接続するための軸であるヒンジ軸31は、板部材20の長手方向に垂直で、且つ当接面21に対して平行である。ヒンジ軸31は、例えば、一本の棒状体とすることができるが、例えば、板部材20の両側からそれぞれ突き出した、一直線上に位置する2つの凸部によりこれを形成することもできる。板部材20は、
図3、
図4に示したように、ヒンジ軸31を回転の軸として、取付部材10に対して回転可能となっている。
【0020】
また、ゴルフ練習器具は、取付部材10と板部材20とに跨る弾性部材40を備えている。弾性部材40は、取付部材10がゴルフクラブのシャフトに取付けられたときにおいて板部材20の先端側がシャフトに当接する方向の力を常に、板部材20に対して与えるためのものである。
弾性部材40は例えば金属製のばねであり、この実施形態では、これには限られないが、弾性部材40は、ねじりコイルばねである。ねじりコイルばねである弾性部材40は、
図3、4に示したように(弾性部材40は本来ゴルフ練習器具の外部からは見えないが、
図3、4ではゴルフ練習器具の内部にある弾性部材40を、理解の容易のために敢えて実線で描いてある。)、一連の針金でできたコイル部41と2本の脚部42、43とを備えている。コイル部41では針金がコイル状に巻かれており、その両端が、脚部42、43である。そして、脚部42の例えば先端が取付部材10に、脚部43の例えば先端が板部材20にそれぞれ固定されているか、少なくともそれらが取付部材10或いは板部材20に対して力を加えるべきときには、係止されるようになっている。
そして、弾性部材40から板部材20には、常に、
図4に示された状態から、
図3に示された状態に戻ろうとする、或いは、ヒンジ軸31を中心として時計回りに回転しようとする力がはたらくようになっている。したがって、外力が無い状態であれば、板部材20と弾性部材40との位置関係は、
図3に示された状態となるようになっている。
上述したように、板部材20は、ヒンジ軸31を回転の軸として、取付部材10に対して回転可能となっているが、この回転を可能とするには、弾性部材40から板部材20にはたらく力よりも大きな力を板部材20にはたらかせることが必要である。
【0021】
必ずしも必須ではないが、この実施形態では、板部材20の、当接面21とは反対側の面には、水準器50が設けられている。水平であるか否かを判定するための道具である水準器は、公知或いは周知であり、市販もされている。水準器50は、公知或いは周知の、又は市販の適当なものを利用すれば良い。
この実施形態の水準器50は、透明な円筒形状のシリンダ51を備えている。シリンダの中には、液体53が封入されており、また、液体53の中には液体53に溶け込まない気体52が封入されている。水準器50を用いると、よく知られているように、シリンダ51越しに見える気体52の位置によって、シリンダ51が水平であるか、それともシリンダ51の長手方向におけるどちら側に傾いているかということを、ユーザは知ることができる。
【0022】
次に、以上で説明したゴルフ練習器具の使用方法、及び動作を説明する。
このゴルフ練習器具を使用する場合には、ユーザは、ゴルフ練習器具を、ユーザが持っているゴルフクラブのシャフトか、或いはゴルフクラブに見立てることのできる棒状体の、ゴルフクラブのシャフトに相当する部分に取付ける。
ここでは、
図5に示したような、グリップ練習用具1に、ゴルフ練習器具の取付部材10を取付ける。グリップ練習用具1は、
図5に示したように、その全長が、20~40cm程度の棒状体で、ゴルフクラブのグリップを模したグリップ部Gと、ゴルフクラブのシャフトを模したシャフト部Sとを組合せて構成されている。グリップ練習用具1は、樹脂製の一体ものであるのが通例であり、必要に応じて、ウェイト調整のための金属製の棒がその内部に仕込まれている。
グリップ練習用具は、公知或いは周知であり、市販もされている。例えば、ダイヤ株式会社が製造販売するグリップ練習用具(商品名:ダイヤモデルグリップ(商標)401、製品型番:AS-401L)や、株式会社タバタが製造販売するグリップ練習用具(商品名:パーフェクトグリップ(商標)、製品型番:GV0342 BR)が、この実施形態のゴルフ練習器具を取付けることのできる、市販されているグリップ練習用具1の例である。
ゴルフ練習器具は、グリップ練習用具1のシャフト部Sに対して着脱自在に取付けられる。
かかる取付けは、取付部材10における内部空間11が外部に開放されている部分の両側に位置する両先端12同士を押し広げてから、両先端12の間を介して内部空間11に、グリップ練習用具1のシャフト部Sを押し込む。シャフト部Sが、取付部材10の内部空間11に押し込まれると、略Cの字型の取付部材10がシャフト部Sを締付けるため、それによりシャフト部Sに対する取付部材10の取付けが終了する。
取付部材10がシャフト部Sに取付けられたとき、板部材20の基端側がグリップ部G寄りに位置するようにする。また、取付部材10から、より詳細にはヒンジ軸31から、グリップ部Gまでの距離が20cm以下、好ましくは10cm以下となるようにする。図示した例では、グリップ部Gから取付部材10までの、より詳細にはヒンジ軸31までの距離は、これには限られないが、5cm内外である。
また、取付部材10がシャフト部Sに取付けられたとき、板部材20が、後述するようにユーザが構えの姿勢を取ったときにおけるシャフト部Sの真上(上面)に位置するようにする。つまり、シャフト部Sの軸に対してそのような角度を保つような状態で、取付部材10は、シャフト部Sに対して取付けられる。
取付部材10のシャフト部Sの軸に対する角度の調整は、既に述べたように、取付部材10を一旦シャフト部Sに対して取付けた後に行っても良い。
このようにして取付部材10によって、グリップ練習用具1のシャフト部Sに対して取付けられたゴルフ練習器具は、後述するようにして、あたかもゴルフクラブをスイングするかの如くスイングされたとしても、シャフト部Sの長さ方向に移動しないし、シャフト部Sの軸回りに回転もしない。
もっとも、このようなことが保証されるのは、内部空間11の内面がシャフト部Sに与える締め付け力が十分な場合である。例えば、取付部材10が作る内部空間11の直径が、シャフト部Sの直径に比してそれ程小さくない場合には、締め付け力が不十分となり、グリップ練習用具1で素振りを行ったときに、ゴルフ練習器具が、グリップ練習用具1のシャフト部Sに対してずれてしまうことも考えられる。そのようなことを防ぐために、例えば、ゴルフ練習器具が取付けられるゴルフクラブ等のシャフトの太さに応じて、ゴルフ練習器具の取付部材10における内部空間11の直径に、何種類かのバリエーションを設けておくことも可能である。
【0023】
次に、ユーザは、ゴルフ練習器具を取付けたグリップ練習用具1を用いて素振りを行う。ゴルフ練習器具が取付けられたのがゴルフクラブである場合には、ユーザは、ゴルフクラブで素振りを行っても良いし、実際にボールを打っても良い。
【0024】
正しいフォームについて、
図6~9を用いて簡単に説明する。なお、
図6~9では、グリップ練習用具1には、ゴルフ練習器具が取付けられていない。
構えを取るときユーザは、グリップ練習用具1のグリップ部Gを握って仮想のボールに正対し、肩幅かそれよりも若干広い程度の足幅を取って前傾する。このとき、ユーザは、右脇も左脇も締めた状態とする。
図6において、Uの符号を付した破線が、ユーザが構えたときにおけるシャフト部Sの上面を示している。
ここからテークバックが始まる。
ユーザは、構えの状態から、右脇も左脇も締めたまま、右股関節を45°更に上体を45°右側に撚ることにより、都合、ボールの飛ぶ方向に対して、上体を真後ろに向ける。このとき、理想的には、ゴルフクラブのシャフトは、ボールの飛ぶ方向(
図7の右側)に対して真後ろ(
図7の左側)を向いており、略水平である(
図7)。
次にユーザは、
図7に示した状態から、両手を真上に引き上げることにより、ゴルフクラブのフェイス(仮想のフェイス)がスクェアな状態を保ったままでトップの姿勢を取る(
図8)。
トップの姿勢を取る前の段階まで、ユーザは、右脇、左脇ともに締めた状態とし、トップの姿勢を取る前の段階で右腕を引き上げる。右腕を引き上げるのは、右脇が締まったままだとゴルフクラブがインサイドに引かれて、ゴルフクラブのヘッドがスイングプレーンを外れ、トップの位置が低くなり過ぎるからである。右腕を引き上げ始めると、ここで初めて右脇が開く。
図8に示したトップの姿勢を取ったユーザは、続けてダウンスイングを開始する。
ダウンスイングを行う場合、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締め、或いは右肘を下方に引き、更に左股関節を45°撚った状態で仮想のボールを打ち、そしてゴルフクラブのシャフトを、ボールの射出方向に向けていく。このときは、まだ、左脇の下は締まった状態である。
そして、そのままユーザはフォロースルーの動作を行う。
フォロースルーでは、ユーザは、上体を更に左方向に45°撚ることによって、仮想のボールの飛ぶ方向に上半身を向けるとともに、左腕を引き上げる。このとき、左脇の下が開く。最終的に左腕の上腕部は略水平となるようにし、フィニッシュの姿勢を作る(
図9)。
【0025】
このような正しいフォームでのスイングを行えているか否かをユーザは次のようにして知ることができる。
まず、構えの状態からテークバックが開始されてしばらくたった、
図7の時点でのフォームの正しさについてである。このとき、ユーザのスイングのフォームが正しいのであれば、ゴルフクラブのシャフトを模しているグリップ練習用具1のシャフト部Sは、ボールの飛ぶ方向に対して真後ろを向いており、略水平である。更にいうなら、ゴルフクラブのヘッドのフェイスが、正しくスクェアな状態を保っているのであれば、構えた状態におけるシャフト部Sの真上に位置していた板部材20は、水平なシャフト部Sの真上に相変わらず位置しているはずである。
この時点で例えば、ユーザは、水準器50を目視する。水準器50のシリンダ51が軸回りに回転しておらず、水平な板部材20の真上に位置しており、且つシリンダ51が長さ方向で傾いていないということを水準器50を見ることによって確認することができれば、ユーザは、この時点における自分のスイングが正しいフォームに基づくと判断することができる。
【0026】
次いで、
図8で示されたトップでの話である。
トップの向きが、ターゲットを真っ直ぐ指すオンプレーンの状態にあったとする(
図10)。そうすると、グリップ練習用具1のフェイスはスクェアな状態を保っており、構えの状態でグリップ練習用具1のシャフト部Sの真上に位置していた板部材20は、シャフト部Sの真下に位置した状態となる。
そうすると、当然に板部材20には下向きに重力がはたらく。その重力によって、板部材20は、弾性部材40からの力に抗して、ヒンジ軸31を中心として回転する。それにより、板部材20の先端側が、シャフト部Sから幾らか離れた状態となる。ゴルフ練習器具では、水準器50と併せた板部材20の重さ及び形状と、弾性部材40からはたらく力とが、板部材20が上述したような動きを行うように、予め調整されている。水準器50が存在しない場合には、板部材20の重さ及び形状と、弾性部材40からはたらく力とが、板部材20が上述したような動きを行うように、予め調整しておけば良い。
また、上述の調整は、シャフト部Sの真下に位置することによりその先端側がシャフト部Sから最も離れたときにおける、板部材20とシャフト部Sとがなす角度(つまり、板部材20とシャフト部Sとがなす角度の最大値)が、10°から35°の間の所定の角度となるようにしておくことができ、必ずしもこの限りではないが、この実施形態ではそうされている。この板部材20とシャフト部Sとがなす角度の最大値は、15°から30°の間の所定の角度とすることが更に好ましく、この実施形態ではそうされている。
図10で示した例では、板部材20はシャフト部Sの真下に位置しているものの、シャフト部Sは先端側に向けてやや、上がるように斜めになっている。このときの板部材20とシャフト部Sとがなす角度αは、20°弱である。トップの位置で、例えば、シャフト部Sが水平に近づくと、板部材20にはたらくヒンジ軸31を中心としたトルクが大きくなるので、板部材20とシャフト部Sとがなす角度は、
図10の場合よりも大きくなる。この角度は、板部材20がシャフト部Sの真下に位置しているときにおいて、シャフト部Sが略水平となっているときに最大となる。そのときの板部材20とシャフト部Sとがなす角度が、この実施形態では、10°から35°の間、好ましくは15°から30°の間の所定の角度となるようになっているのである。
つまり、この場合には、グリップ練習用具1がトップの位置に到達して止まった場合において、シャフト部Sの傾斜の方向や、軸回りの角度によって上述の角度αが変化するところ、最大となる上述の角度αが、15°から30°の間となるように、板部材20(或いは板部材20と水準器50)の形状及び重さと、弾性部材40が板部材20に与える力(つまりは、弾性部材40のバネ係数)との関係とが、調整されているのである。
他方、板部材20に弾性部材40が与える力が上記の関係よりもより弱かったり、小さかったりしても、シャフト部Sと板部材20とがなす最大の角度αを、15°から30°の間の所定の角度とすることが可能である。そのためには、例えば、
図13に示したようなストッパ70を用いる。なお、
図13には、水準器50が描かれていないが、既に述べたように水準器50はそもそも存在しなくても良い。このストッパ70は、板部材20が取付部材10に対してヒンジ軸31を中心として回転した場合において、板部材20とシャフト部Sの角度が、α以上の角度となるのを妨げる機能を有している。具体的には、ストッパ70は、取付部材10に設けられた円柱状の部材であり、板部材20が、板部材20とシャフト部Sがなす角度がαの位置まで回転したときに、板部材20に対して板部材20の回転方向の反対側から当接し、ストッパ70に係止された板部材20が、それ以上の回転を行うのを妨げるようになっている。
図13に示した例では、ストッパ70は、取付部材10の
図13の上側に取付けられているが、もちろんこれはこの限りではないし、その形状も円柱状である必要はない。ストッパ70は、上述の機能が保証される限り取付部材10と板部材20のいずれに設けられていても良いし、双方にわたって設けられていても良い。
そこからユーザが、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締める或いは勢いよく引き下げると、少なくともダウンスイングが始まった瞬間において、シャフト部Sは真下に勢いよく引き下げられることになる。そうすると、その先端がシャフト部Sから離れた板部材20には慣性力がはたらくので、シャフト部Sから離れた板部材20の先端側は、シャフト部Sに近づく方向で移動を開始する。そうすると、板部材20は、板部材20の先端側がシャフト部Sに近づく方向で、ヒンジ軸31を中心として回転し、その当接面21が、勢いよくシャフト部Sに当たる。板部材20と、シャフト部Sとがなす角度が小さ過ぎると、勢いが付く前に板部材20の当接面21がシャフト部Sに当たってしまうから、両者が当たったときに生じる音が小さくなる。他方、板部材20とシャフト部Sとがなす角度が大き過ぎると、ダウンスイング時にシャフト部Sが下方に引き下げられても、板部材20がシャフト部Sに向かって動く速度が小さくなるなどして、両者が当たったときに生じる音が小さくなる。板部材20とシャフト部Sとがなす角度が最大で上述のように10°から35°の間の角度となるように、より好ましくは、15°から30°の間の角度となるように調整されていれば、板部材20がシャフト部Sに当たったときに生じる音や、衝撃は、大きくなる。
板部材20がシャフト部Sに勢いよく当たることにより、シャフト部Sから音が放たれる。そして、上述したように、ユーザは、フォロースルーから、
図9に示したフィニッシュまでの動作を、必要に応じて行う。
板部材20がシャフト部Sに勢いよく当たったときに生じた音を聞くことによって、また、板部材20がシャフト部Sに当たったときの衝撃を感じることによって、ユーザは、そのときに自分が行ったスイングのうち、少なくともトップのときのシャフト部Sの向きがオンプレーンになっていたことと、ダウンスイングが正しく行われていたことを知ることができる。
なお、板部材20の当接面21が繰返しシャフト部Sに当たることにより、シャフト部Sが傷むおそれがある。グリップ練習用具1のシャフト部Sが多少傷んでも問題ないであろうが、高価なことが多いゴルフクラブのシャフトにゴルフ練習器具が取付けられている場合であれば、板部材20の当接面21が繰返しゴルフクラブのシャフトに当たってシャフトが傷むことは避けたいであろう。そのようなシャフトの傷みを防止するのであれば、
図12に示したように、当接面21の少なくとも一部、例えば、少なくともシャフトに当たる範囲に、弾性材料による被覆層22を設けることが可能である。被覆層22は、例えば、硬化したときに弾性を持つ塗料を当接面21に塗ることによって形成されても良いし、弾性を持つ素材でできたシートを、当接面21に貼り付けることによって形成されても良い。いずれにせよ、そのようにして構成される被覆層22は、公知或いは周知である。被覆層22は、例えば、ゴムにより構成される。
【0027】
他方、トップの姿勢をとったときにおけるシャフト部Sの向きがターゲットより左側を指すレイドオフとなっている場合、人間の身体の構造上、ユーザの右腕と左腕の肘から先の部分である前腕は時計回りに回転しており、したがって、板部材20はシャフト部Sの真下に来ていない。極端な話、板部材20がシャフト部Sの真横に位置していることを考えれば容易に理解できるであろうが、この状態では、板部材20に対してかかる重力は、ヒンジ軸31に沿った方向にはたらくから、板部材20がヒンジ接続のヒンジ軸31を中心として回転して、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れることがないか、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れるにしても、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れる距離が、板部材20がシャフト部Sの真下にあるときよりも小さくなる。
その状態からユーザが、仮に正しいフォームのダウンスイングを行ったとしても、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れていないか、少なくとも十分には離れていないので、板部材20がシャフト部Sに当たることによって生じる音が生じないか、トップでのシャフト部Sの向きがオンプレーンの状態にあったときと比して小さくなる。
また、トップの姿勢をとったときにおけるシャフト部Sの向きがターゲットより右側を指すシャフトクロスとなっている場合、人間の身体の構造上、ユーザの右腕と左腕の前腕は反時計回りに回転しており、したがって、板部材20はシャフト部Sの真下に来ていない。したがって、この場合にも、トップでのシャフト部Sの向きがレイドオフとなっている場合と同様に、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れることがないか、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れるにしても、板部材20の先端側がシャフト部Sから離れる距離が、板部材20がシャフト部Sの真下にあるときよりも小さくなる。
したがって、シャフトクロスとなっているトップの状態から、仮に正しいフォームのダウンスイングを行ったとしても、トップでのシャフト部Sの向きがレイドオフであった場合と同様に、音が生じないか、仮に生じるにしても、トップでのシャフト部Sの向きがオンプレーンの状態にあったときと比して小さくなる。
また、仮に、トップでのシャフト部Sの向きがオンプレーンの状態であったとしても、ユーザがダウンスイングを行ったときのフォームが、右股関節と、上体とを戻しながら、左腕リードで右肘を下方に締める或いは勢いよく引き下げるというものでなく、例えば、上体を戻すことなく、腕だけでグリップ練習用具1をスイングしようとするような場合には、ダウンスイングが始まった瞬間においてシャフト部Sが真下に勢いよく引き下げられるという動きが生じないので、その先端がシャフト部Sから離れた板部材20にはたらく慣性力が、上述のごとき正しいダウンスイングが行われた場合と比して小さくなる。そうすると、板部材20の当接面21がシャフト部Sに当たったとしても、そのときの勢いはダウンスイングが正しいときと比して小さくなるから、板部材20がシャフト部Sに当たることによって生じる音も当然に小さくなる。もちろん、トップでのシャフトの向きが、レイドオフやシャフトクロスとなっていたときにおいて、正しいフォームでのダウンスイングが行われた場合であっても、板部材20の当接面21がシャフト部Sに当たることによる、音は生じないか、仮に生じるにしても小さい。
図11に示したのは、シャフト部Sがやや手前側に傾いており、トップでのシャフト部Sの向きがシャフトクロスとなっている場合である。
図11に示した例では、シャフト部Sがかなり立っているので板部材20にはたらくヒンジ軸31を中心としたトルクが小さいから、板部材20の先端側は、弾性部材40からの力によって、シャフト部Sに当接したままである。また、仮にシャフト部Sが、平面視した場合の向きをそのままに、水平に近づいたとしても、板部材20は、シャフト部Sの真下ではなく、斜め下に位置することになるので、そのときにおいても弾性部材40からの力によって、板部材20の先端側は、シャフト部Sから離れないか、離れるにしても、板部材20とシャフト部Sとがなす角度が、例えば、10°ない程度となる。そのような状態から、正しいフォームでダウンスイングを行ったとしても、板部材20がシャフト部Sに当たることによって生じる音は、生じないか、少なくとも、
図10の状態から正しいフォームでダウンスイングを行った場合に比して小さい。
【0028】
したがって、スイングを行ったときに生じる音(或いは音と衝撃)の大きさによって、ユーザは、自分が今行ったスイングにおいて、トップのときのシャフト部Sの向きがオンプレーンになっており、且つダウンスイングが正しく行われていたか、ということを直感的に判断することができることになる。
また、トップでのシャフトの向きをオンプレーンにしようとするのであれば、もちろん、体格や身体の柔軟性によっても差はあるものの、多くのユーザにとって、グリップの向きをノーマルとするのが比較的楽である。したがって、トップでのシャフトの向きをオンプレーンとすることができれば、トップでのグリップの高さが同時にノーマルに矯正される可能性が高い。
【0029】
練習が終わるなどして不要となったら、ユーザは、ゴルフ練習器具を、グリップ練習用具1から取り外す。
この実施形態の場合であれば、例えば、ゴルフ練習器具の取付部材10を一方の手で、グリップ練習用具1を他方の手で持って、グリップ練習用具1をグリップ部Gの方向に引くことによって、取付部材10の内部空間11から、グリップ練習用具1のシャフト部Sを引き抜くことができる。
ゴルフクラブのシャフトにゴルフ練習器具が取付けられていたのであれば、内部空間11が外部に向けて開放されている
図1における下側の両先端12同士を押し広げて、その隙間から取付部材10の内部空間11に位置していたシャフトを引き抜けば良い。
【符号の説明】
【0030】
1 グリップ練習用具
10 取付部材
20 板部材
31 ヒンジ軸
40 弾性部材
G グリップ部
S シャフト部