(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165506
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】前処理装置、前処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 3/06 20060101AFI20221025BHJP
C12Q 1/24 20060101ALI20221025BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221025BHJP
C12N 1/02 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
C12M3/06
C12Q1/24
G01N33/48 H
C12N1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070866
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 祐士
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045BA08
2G045BB04
2G045CA25
2G045HB02
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ05
4B063QS10
4B063QS12
4B063QS39
4B065AA57X
4B065BA21
4B065BD18
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】微生物の回収を自動化することを可能にする技術を提供すること。
【解決手段】回収装置1では、第1濾過器100を用いて、試料容器700内の液体試料から血球などの除去対象が除去され、第2濾過器200を用いて、当該液体試料から微生物が濾別される。コントローラ2は、センサ710が気泡を検出したことに応じて、第1切替器610に流路を封鎖させる。第2濾過器200の第2接続部204から第1接続部202に向けて培地が流される。これにより、第2濾過器200で濾別された微生物が培地とともに回収容器460で回収される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血球を含む液体試料を収容する試料容器と、
前記試料容器内の液体試料から血球を除去するための第1フィルタを含む第1濾過器と、
液体試料中に含まれ得る微生物を捕捉するための第2フィルタ、ならびに、前記第2フィルタを挟んで互いに対向する第1接続部および第2接続部を有する、第2濾過器と、を備え、
前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高く、
前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して前記試料容器および前記第1濾過器と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して、前記第2濾過器から排出される廃液を受ける廃液回収部と接続させる、第1流路と、
前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して、前記第2フィルタを洗浄するための洗浄液を収容する洗浄液収容部と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して前記廃液回収部と接続させる、第2流路と、
前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して、前記第2フィルタに捕捉された微生物を回収するための回収液を収容する回収液収容部と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して前記第2濾過器を通過した回収液を収容する回収部と接続させる、第3流路と、
前記第1流路の前記第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第1流路を封鎖する封鎖用要素と、を備える液体試料の前処理装置。
【請求項2】
前記封鎖用要素は、
前記第1流路の前記第2濾過器より上流において気泡の有無を検出する気泡センサと、
前記第1流路の前記第2濾過器より上流の所定の部分の開閉を切り替える切替部と、
前記気泡センサが気泡を検出したことに応じて、前記切替部に前記所定の部分を閉じさせるように制御信号を送信するコントローラと、を含む、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項3】
前記封鎖用要素は、
前記試料容器における液体試料の残量を検出するセンサと、
前記第1流路の前記第2濾過器より上流の所定の部分の開閉を切り替える切替部と、
前記センサが前記残量が予め定められた値以下となったことを検出したことに応じて、前記切替部に前記所定の部分を閉じさせるコントローラと、を含む、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項4】
前記試料容器は、前記試料容器内の液体試料を前記第1流路に流入させる開口を有し、
前記封鎖用要素は、前記試料容器における液体試料の残量の減少に応じて、前記開口を塞ぐように状態が変化する部材を含む、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項5】
前記回収液は、前記微生物の培養に用いるための液体培地である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の前処理装置。
【請求項6】
試料容器に収容された液体試料から、第1フィルタを利用して除去対象を除去し、第2フィルタを利用して前記第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを備え、
前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高く、
前記微生物を濾別するステップは、前記第2フィルタの一方側に前記第1フィルタの前記濾液を供給することと、前記第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含み、
前記微生物を濾別するステップにおいて前記第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第2フィルタと前記試料容器との間の流路を封鎖するステップと、
前記第2フィルタの前記一方側に洗浄液を供給し、前記第2フィルタの前記他方側から廃液を受けることにより、前記第2フィルタを洗浄するステップと、
前記第2フィルタの前記他方側に回収液を供給し、前記第2フィルタの前記一方側から回収液を受けることにより、前記第2フィルタから微生物を回収するステップと、をさらに備える、前処理方法。
【請求項7】
第1フィルタおよび第2フィルタを含む前処理装置を制御するコンピュータに実行されることにより、前記コンピュータに、
試料容器に収容された液体試料から、前記第1フィルタを利用して除去対象を除去し、前記第2フィルタを利用して前記第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを実行させ、
前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高く、
前記微生物を濾別するステップは、前記第2フィルタの一方側に前記第1フィルタの前記濾液を供給することと、前記第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含み、
コンピュータに、
前記微生物を濾別するステップにおいて前記第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第2フィルタと前記試料容器との間の流路を封鎖するステップと、
前記第2フィルタの前記一方側に洗浄液を供給し、前記第2フィルタの前記他方側から廃液を受けることにより、前記第2フィルタを洗浄するステップと、
前記第2フィルタの前記他方側に回収液を供給し、前記第2フィルタの前記一方側から回収液を受けることにより、前記第2フィルタから微生物を回収するステップと、をさらに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料の前処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料の前処理方法について種々検討がなされている。たとえば、血液中に含まれる菌などの微生物を特定するにあたり、測定の障害となる血球成分を除去し、微生物を回収して、回収した微生物を培養する方法が知られている。このような方法の一例として、非特許文献1は、血液培養液に細胞溶解液を加えて血球等の細胞膜を溶解した後、フィルタで濾過し、当該フィルタの上に回収された物質を綿棒で刮ぎ取ることで、血液培養液中の菌などを回収する方法を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Amy Fothergill, Vyjayanti Kasinathan, Jay Hyman, John Walsh, Tim Drake, and Yun F. (Wayne) Wanga, "Journal of Clinical Microbiology", 51, 805-809 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示された方法は、微生物を綿棒で刮ぎ取るという人の手による作業が必要であり、自動化に向いていなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、微生物の回収を自動化することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の前処理装置は、血球を含む液体試料を収容する試料容器と、試料容器内の液体試料から血球を除去するための第1フィルタを含む第1濾過器と、液体試料中に含まれ得る微生物を捕捉するための第2フィルタ、ならびに、第2フィルタを挟んで互いに対向する第1接続部および第2接続部を有する、第2濾過器と、を備える。第2フィルタのバブルポイントは、第1フィルタのバブルポイントより高い。本開示の前処理装置は、第2濾過器を、第1接続部を介して試料容器および第1濾過器と接続させ、かつ、第2濾過器を、第2接続部を介して、第2濾過器から排出される廃液を受ける廃液回収部と接続させる、第1流路をさらに備える。本開示の前処理装置は、第2濾過器を、第1接続部を介して、第2フィルタを洗浄するための洗浄液を収容する洗浄液収容部と接続させ、かつ、第2濾過器を、第2接続部を介して廃液回収部と接続させる、第2流路をさらに備える。本開示の前処理装置は、第2濾過器を、第2接続部を介して、第2フィルタに捕捉された微生物を回収するための回収液を収容する回収液収容部と接続させ、かつ、第2濾過器を、第1接続部を介して第2濾過器を通過した回収液を収容する回収部と接続させる、第3流路をさらに備える。本開示の前処理装置は、第1流路の第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、第1流路を封鎖する封鎖用要素をさらに備える。
【0007】
本開示の前処理方法は、試料容器に収容された液体試料から、第1フィルタを利用して除去対象を除去し、第2フィルタを利用して第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを備える。第2フィルタのバブルポイントは、第1フィルタのバブルポイントより高い。微生物を濾別するステップは、第2フィルタの一方側に第1フィルタの濾液を供給することと、第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含む。本開示の前処理方法は、微生物を濾別するステップにおいて第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、第2フィルタと試料容器との間の流路を封鎖するステップをさらに備える。本開示の前処理方法は、第2フィルタの一方側に洗浄液を供給し、第2フィルタの他方側から廃液を受けることにより、第2フィルタを洗浄するステップをさらに備える。本開示の前処理方法は、第2フィルタの他方側に回収液を供給し、第2フィルタの一方側から回収液を受けることにより、第2フィルタから微生物を回収するステップをさらに備える。
【0008】
本開示のプログラムは、本開示のプログラムは、第1フィルタおよび第2フィルタを含む前処理装置を制御するコンピュータに実行されることにより、コンピュータに、試料容器に収容された液体試料から、第1フィルタを利用して除去対象を除去し、第2フィルタを利用して第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを実行させる。第2フィルタのバブルポイントは、第1フィルタのバブルポイントより高い。微生物を濾別するステップは、第2フィルタの一方側に第1フィルタの濾液を供給することと、第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含む。本開示のプログラムは、コンピュータに、微生物を濾別するステップにおいて第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、第2フィルタと試料容器との間の流路を封鎖するステップをさらに実行させる。本開示のプログラムは、コンピュータに、第2フィルタの一方側に洗浄液を供給し、第2フィルタの他方側から廃液を受けることにより、第2フィルタを洗浄するステップをさらに実行させる。本開示のプログラムは、コンピュータに、第2フィルタの他方側に回収液を供給し、第2フィルタの一方側から回収液を受けることにより、第2フィルタから微生物を回収するステップをさらに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の前処理装置、前処理方法、およびプログラムによれば、回収液が流れる力で微生物を第2濾過器から分離して回収することができるため、微生物の回収の自動化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】第1フィルタ120における液体試料の濾過における血球および回収対象の微生物の移動を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態1に係る前処理装置10を用いた微生物回収方法のフローの一例を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示された微生物回収方法を前処理装置10において実現するためにコントローラ2が実行する処理の一例を示す図である。
【
図5】実施形態2にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態3にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図8】試料容器700において液体試料が無くなった状態を示す図である。
【
図9】実施形態4に係る前処理装置の概略斜視図である。
【
図10】実施形態4に係る前処理装置の回収装置部分の構成を模式的に示す図である。
【
図12】
図11に示した筐体からカバーを外した状態を示す概略斜視図である。
【
図14】
図9に示した収容体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、図中の斜線は、液体成分を示す。
【0012】
本開示にかかる前処理装置は、たとえば、血液中の微生物を特定する際の前処理工程に利用される。また、本開示にかかる前処理装置は、全量濾過方式で液体試料を濾過するための装置である。また、本開示にかかる前処理装置は、血液中の微生物を得ることを目的としているという性質上、ディスポーザブルであることが好ましい。本開示において回収対象とされる微生物は、たとえば、細菌および真菌などの菌、ウィルス、ならびにカビなどである。
【0013】
[実施形態1]
<前処理装置の構成>
図1は、実施形態1にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。
図1に示されるように、前処理装置10は、回収装置1と、回収装置1を制御するコントローラ2とを含む。コントローラ2は、回収装置1を制御するための演算を実行するプロセッサ21と、回収装置1の各種の要素との通信のためのインターフェース22、および、プロセッサ21の演算に利用されるプログラムおよび/またはデータを格納する記憶装置23とを含む。
【0014】
回収装置1は、試料容器700と、第1濾過器100と、洗浄液容器480と、第1切替器610と、第2切替器620と、第2濾過器200と、培地容器440と、第3切替器630と、廃液容器420と、回収容器460とを含む。
【0015】
第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれは、回収装置1において形成される流路を切り替え、たとえば、三方活栓等によって実現される。回収装置1は、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれを回転させるモータを含む。コントローラ2は、各モータの駆動を制御することにより、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれの状態を制御する。なお、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれは、手動の操作を必要とする切替器であってもよい。
【0016】
試料容器700は、液体試料800を収容する。
図1では、液体試料800は、液面801を有する。
【0017】
第1濾過器100は、液体試料から血球等の細胞膜を除去するための第1フィルタ120を含む。第1フィルタ120の構成については後述する。
【0018】
洗浄液容器480は、後述する第2フィルタ220を洗浄するための洗浄液を収容する。洗浄液は、たとえば、回収対象の微生物を死滅させることのないpHに調整された緩衝液であってもよい。一実現例では、洗浄液は、pH7.2に調整された20mMリン酸ナトリウムバッファである。前処理装置は、洗浄液容器を含む必要はなく、外部の洗浄液容器から洗浄液を供給されてもよい。
【0019】
第2濾過器200は、微生物を回収するための第2フィルタ220を含み、さらに、第1接続部202および第2接続部204を含む。第1接続部202および第2接続部204は、第2フィルタ220を挟んで互いに対向する。
【0020】
培地容器440は、培地441を収容する。培地441は、微生物の培養に用いるための液体培地である。培地441の種類は、回収装置1において回収対象とされる微生物の種類に応じて選択される。培地441の一例は、ミュラー・ヒントン培地である。前処理装置は、培地容器を含む必要はなく、外部の培地容器から培地を供給されてもよい。
【0021】
廃液容器420は、廃液を収容する。廃液容器420の上部には吸引部422が設けられている。図示していないものの、吸引部422にはチューブ等を介して真空ポンプが接続されている。真空ポンプが駆動されると、廃液容器420内が減圧される。廃液容器420は、廃液回収部の一例である。前処理装置は、廃液容器を含む必要はなく、外部の廃液容器に向けて廃液を排出するように構成されていてもよい。
【0022】
回収容器460は、第2濾過器200の第2フィルタ220から回収される微生物を収容する。回収装置1は、回収容器460を収容する吸引ボックス462をさらに含む。吸引ボックス462の側面には吸引部464が設けられている。図示していないものの、吸引部464にはチューブ等を介して真空ポンプが接続されている。真空ポンプが駆動されると、吸引ボックス462内が減圧される。
【0023】
回収装置1は、試料路510、試料路512、廃液路514、培地路516、回収路518、および洗浄路520をさらに含む。試料路510は、試料容器700を第1濾過器100に接続させる。試料路512は、第1濾過器100を、第1切替器610および第2切替器620を介して、第2濾過器200の第1接続部202に接続させる。廃液路514は、第3切替器630を介して、第2濾過器200の第2接続部204および培地容器440を廃液容器420に接続させる。培地路516は、第3切替器630および廃液路514を介して、培地容器440を廃液容器420に接続させる。回収路518は、第2切替器620を介して、第2濾過器200の第1接続部202を回収容器460に接続させる。洗浄路520は、第1切替器610および第2切替器620を介して、洗浄液容器480を第2濾過器200の第1接続部202に接続させる。
【0024】
試料路510には、センサ710が設けられている。センサ710は、たとえば気泡センサであってもよい。センサ710は、試料路510のうち、センサ710が取り付けられた部分における溶液の有無を検出し、検出出力をコントローラ2へ出力する。
【0025】
<第1フィルタ120>
図2は、第1フィルタ120における液体試料の濾過における血球および回収対象の微生物の移動を模式的に示す図である。
【0026】
図2に示されるように、第1フィルタ120は、第1層121および第2層122を含む。第2層122は、第1層121の下流側(試料路512が接続されている側)に設けられている。第1層121は、第2層122の上に重ねて配置されている。そのため、試料路512側から吸引されると、第1層121は、第2層122に密着する。
【0027】
第1層121は、血球および血球よりも小さい成分を透過可能に構成されている。血球および血球よりも小さい回収対象の微生物を含む全血などの液体試料を第1層121で濾過した場合、微生物は血球よりも先に透過する。なお、微生物のうちの少なくとも一部が血球よりも先に第1層121を透過すればよく、血球の一部が微生物の一部よりも先に第1層121を透過してもよい。
【0028】
第1層121は、血球および血球よりも小さい成分を透過可能に構成されており、かつ、微生物を血球よりも先に透過させる性質を有するものであればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。
【0029】
第1層121は、血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉する機構を有する。血球を一時的に捕捉する機構を有するフィルタとしては、具体的には、深層濾過用のフィルタなどが挙げられる。第1層121は、血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉しつつも、血球に対して推進力をかけ続けた場合に、当該経路を血球が抜けて、血球が第1層121を透過する程度の径の経路を有する。
【0030】
血球の成分は、主に、白血球と赤血球とから構成されている。白血球は、粒子径が10~15μm程度と、比較的大きい粒子である。赤血球は、粒子径が7~8μm程度である。血液中において、白血球および赤血球のうち、赤血球の数が最も多い。そのため、第1層121の経路は、好ましくは、白血球、および赤血球のうち、少なくとも赤血球を三次元的に、かつ一時的に捕捉しつつ、透過させることのできる程度の径を有していることが好ましい。具体的には、第1層121は、少なくとも、7μmより大きい径の経路を有している。また、他の観点から、第1層121は、粒子保持能が2.7μmである。
【0031】
なお、第1層121は、血液中に含まれる粒子径が2μm程度の血小板を三次元的にかつ、一時的に捕捉できるような大きさの孔を有していてもよい。
【0032】
深層濾過用のフィルタは、たとえば、繊維状の素材を押し固めて作られるデプスフィルタ、または多孔質構造を有する多孔質膜である。
【0033】
第1層121の材質は、ガラス、樹脂、金属、セラミックス等のいかなる材料により構成されていてもよい。血球が吸着し、吸着した血球により経路が塞がれてしまうことを考慮すると、第1層121の材質は、血球を吸着したとしても脱着するものである。たとえば、第1層121は、ガラス繊維フィルタ、またはセルロースフィルタである。
【0034】
第2層122は、血球をサイズ選択的に捕捉し、かつ、微生物をサイズ選択的に透過させる。具体的には、第2層122は、血球よりも小さく、微生物よりも大きい径の孔を有する。たとえば、第2層122のフィルタ径は、血球のうち、少なくとも赤血球の大きさ以上の成分を除去することが可能な大きさの径であって、たとえば、2μm以上6μm以下である。なお、「血球をサイズ選択的に捕捉し、かつ、微生物をサイズ選択的に透過させる」とは、血球が濾材の孔に捕捉されるのに対して、微生物は濾材の孔に捕捉されることなく透過することを意味する。なお、微生物が慣性力により直進し、濾材に衝突して一時的に捕捉されてもよい。
【0035】
第2層122は、血球を除去できればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。なお、第2層122として表面濾過用のフィルタを採用すると、深層濾過用のフィルタを用いる場合に比べて血球を確実に除去することができ、濾液に血球が混入する可能性を下げることができる。
【0036】
第2層122の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホン、セルロース混合エステル、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0037】
<第1フィルタ120による血球の除去>
次に、再度
図2を参照して、第1フィルタ120による、液体試料からの血球の除去について説明する。
【0038】
図2の例では、液体試料800は、血球820および微生物840を含む。微生物840の大きさは、血球820よりも小さい。微生物が菌である場合、微生物840の大きさは1μm程度である。
【0039】
液体試料800は、たとえば、患者から採取した血液を培養した後の試料である。液体試料800は、血液を別の溶液で希釈したものであってもよい。
【0040】
図2中のグラフは、第1フィルタ120(第1層121および第2層122)の厚み方向の濃度分布の一例を示す。実線で示したグラフは、血球の濃度分布を示す。破線で示したグラフは、微生物の濃度分布を示す。
図2中、一部、符号を省略している。
【0041】
図2には、(状態1)~(状態4)が示される。(状態1)は、濾過前のタイミングの状態を表す。(状態2)および(状態3)は、濾過途中のタイミングの状態を示す。(状態4)は、濾過後の状態を示す。すなわち、第1フィルタ120近傍の状態は、(状態1)~(状態4)の順に変化する。
【0042】
(状態1)として示されるように、濾過前において、血球820および微生物840は、いずれも、液体試料800中に分散している。
【0043】
吸引されて濾過が始まると、液体試料800は、まず、第1層121を透過する。このとき、血球820は、第1層121の経路内で濾材に衝突して一時的に捕捉される。これに対して、血球820よりも小さい微生物840は、血球820に比べて第1層121の経路内で一時的に捕捉されにくい。その結果、(状態2)および(状態3)として示されるように、時間の経過とともに、液体試料800において、血球820と微生物840とが分離し、血球820よりも微生物840が先行する。したがって、微生物840が血球820よりも先に第2層122に到達する。
【0044】
そして、(状態4)として示されるように、第1層121に血球820が残った状態で、第2層122を用いた第2濾過が行われる。第2層122では、微生物840のみがサイズ選択的に透過される。これにより、微生物840を残しつつ血球820が除去された濾液を得られる。
【0045】
図2の例では、第1層121で液体試料800を濾過することで液体試料800の移動方向に対して血球820よりも微生物840の方が先行した状態を作りだす。液体試料800の移動方向に対して血球820よりも微生物840の方が先行した状態で液体試料800を第2層122で濾過することで、第2層122上に血球820が堆積して目詰まりが起こる前に微生物840が第2層122を透過することになる。その結果、液体試料800中の微生物840を効率的に回収しつつ、血球820を除去することができる。
【0046】
第1層121の厚みは、たとえば、血球820の膜透過速度と微生物840の膜透過速度との差に応じて設計され得る。より具体的には、第1層121の厚みは、微生物840が第2層122を透過してから第2層122上に血球820が堆積するように、血球820と微生物840とが分離されるように設計されればよい。一例では、第1層121は、1.3mm以上の厚みを有する。
【0047】
なお、液体試料800の全量を濾過し終わったタイミングで、血球820が第2層122に到達していないような構成であってもよく、また、血球820の全部または一部が到達しているような構成であってもよい。第1層121で第1濾過を液体試料800に行うことで、血球820よりも微生物840を先行させた状態を作りだし、その状態のまま、微生物840をサイズ選択的に透過させることで、第2濾過中に目詰まりを起こすことなく、血球が除去された濾液を得られればよい。
【0048】
以上のように、第1フィルタ120は、微生物840が血球820よりも先に第2層122を透過するように設計されている。これにより、血球820により第2層122が目詰まりを起こす前に、微生物840が第2層122を透過できる。したがって、濾液内に効率的に微生物を残すことができる。前処理装置10は、微生物の回収効率を良くする構成を有するため、回収した微生物を培養して所定の数まで育てるまでに必要な時間を短縮することができる。
【0049】
<第2フィルタ220>
第2濾過器200の第2フィルタ220は、回収したい微生物の大きさに応じて設計される。たとえば、第1接続部202から第2接続部204に向かって液体試料800を流すと、第2フィルタ220によって液体試料800から微生物を濾別することができる。前処理装置10は、第2濾過器200で濾別された微生物を培地441で直接回収する構成を有することにより、微生物の回収効率を良くすることができる。前処理装置10は、微生物の回収効率をよくする構成を有するため、回収した微生物を培養して所定の数まで育てるまでに必要な時間を短縮することができる。
【0050】
第2フィルタ220は、回収したい微生物を濾別できればよく、表面濾過用のフィルタであっても、深層濾過用のフィルタであってもよい。なお、第2フィルタ220として表面濾過用のフィルタが採用された場合、微生物が第2フィルタ220の上に堆積する一方、第2フィルタ220として深層濾過用のフィルタを採用すると、フィルタ内部で微生物が捕捉される。そのため、第2フィルタ220として表面濾過用のフィルタが採用された方が、深層濾過用のフィルタが採用された場合に比べて、微生物を回収しやすいことが予想される。
【0051】
回収したい微生物が菌である場合、第2フィルタ220は、たとえば、一般的な滅菌フィルタであって、公称孔径が0.2~3.00μmのフィルタである。
【0052】
回収装置1では、第1フィルタ120および第2フィルタ220を上述した条件に従って設計しようとした場合、第2フィルタ220のバブルポイントは、第1フィルタ120(第1層121および第2層122を総称したもの)のバブルポイントより高くなる傾向がある。一例では、第1フィルタ120のバブルポイントが20kPa程度であるのに対し、第2フィルタ220のバブルポイントは50kPa程度である。
【0053】
<回収方法>
図3は、実施形態1に係る前処理装置10を用いた微生物回収方法のフローの一例を概略的に示す図である。
図3には、微生物回収方法における3つの段階(ステップSA1,SA2,SA3)が示される。
図3を参照して、微生物回収方法のフローを説明する。
【0054】
(微生物の濾別)
まず、ステップSA1として示されるように、液体試料800から微生物840が濾別される。ステップSA1では、第2濾過器200は、試料路512および廃液路514に接続されている。すなわち、第1切替器610および第2切替器620は、第2濾過器200の第1接続部202を試料路512に接続させるように制御され、また、第3切替器630は、第2濾過器200の第2接続部204を廃液路514に接続させるように制御される。
【0055】
本明細書では、ステップSA1で回収装置1において形成される流路を「第1流路」と称する。第1流路に従うと、液体試料800は、試料容器700、試料路510、第1濾過器100(第1フィルタ120)、試料路512、第1切替器610、第2切替器620、第2濾過器200(第1接続部202、第2フィルタ220、第2接続部204)、第3切替器630、および、廃液路514を、順に通過し、廃液容器420に収容される。
【0056】
この状態で、真空ポンプの駆動により廃液容器420内が減圧されると、試料容器700内の液体試料800は、吸引されて、第1濾過器100および第2濾過器200を通過する。これにより、第1濾過器100で、液体試料から血球などの除去対象の物質を除去され(ステップSA1-1)、第2濾過器200で、液体試料800から微生物840が濾別される(ステップSA1-2)。
【0057】
(第1流路の封鎖)
前処理装置10において第1流路が形成されている状態で、センサ710が試料路510において溶液が無くなったことを検出すると、コントローラ2は、第1流路を封鎖する(ステップSA1-3)。一例では、コントローラ2は、第1切替器610に、第1接続部202を試料路512から遮断するように制御することによって第1流路を封鎖する。
【0058】
第1流路では、センサ710は、第2濾過器200(第1接続部202)より上流に配置されている。センサ710が試料路510において溶液が無くなったことを検出したことに応じて第1流路が封鎖されることにより、第2濾過器200に、第1接続部202を介して空気が流れ込むことが回避される。
【0059】
第1流路の封鎖では、回収装置1において形成される流路が、第1流路から後述する第2流路に変更されてもよい。
【0060】
(洗浄)
次に、ステップSA2として示されるように、第2濾過器200が、洗浄液容器480内の洗浄液で洗浄される。ステップSA2では、第2濾過器200は、洗浄路520および廃液路514に接続されている。すなわち、第1切替器610は、第1接続部202を試料路512から切り離し、かつ、第1接続部202を洗浄路520と接続させるように、制御される。第2切替器620は、第1接続部202を洗浄路520に接続させるように制御される。第3切替器630は、第2接続部204を廃液路514に接続させるように制御される。
【0061】
本明細書では、ステップSA2で回収装置1において形成される流路を「第2流路」と称する。第2流路に従うと、洗浄液481は、洗浄液容器480、洗浄路520、第1切替器610、第2切替器620、第2濾過器200(第1接続部202、第2フィルタ220、第2接続部204)、第3切替器630、および、廃液路514を、順に通過し、廃液容器420に収容される。
【0062】
ステップSA2では、第2流路が形成された状態で、真空ポンプの駆動により廃液容器420内が減圧される。これにより、洗浄液容器480内の洗浄液481は、吸引されて、第2濾過器200を通過する。これにより、第2濾過器200内の第2フィルタ220が洗浄液481で洗浄される。
【0063】
(微生物の回収)
次に、ステップSA3として示されるように、第2濾過器200で濾別された微生物840が、培地441とともに回収される。ステップSA3では、第2濾過器200は、培地容器440および回収容器460に接続されている。すなわち、第3切替器630は、第2接続部204を培地路516に接続させるように制御される。第2切替器620は、第1接続部202を回収路518に接続させるように制御される。
【0064】
本明細書では、ステップSA3で回収装置1において形成される流路を「第3流路」と称する。第3流路に従うと、培地441は、培地容器440、培地路516、第3切替器630、第2濾過器200(第2接続部204、第2フィルタ220、第1接続部202)、および、回収路518を、順に通過し、回収容器460に収容される。
【0065】
ステップSA3では、第3流路が形成された状態で、真空ポンプの駆動により吸引ボックス462内が減圧される。これにより、培地容器440内の培地441は、吸引されて、第2濾過器200を通過する。これにより、第2濾過器200内の第2フィルタ220上に堆積した微生物が、培地441とともに、回収容器460に回収される。
【0066】
図3に示された例では、ステップSA1における微生物の濾別、ステップSA2における第2フィルタ220の洗浄、ステップSA3における微生物の回収のそれぞれは、減圧によって促進された。すなわち、上記濾別では、廃液容器420の減圧によって、液体試料800の吸引が促進される。上記洗浄では、廃液容器420の減圧によって、洗浄液481の流れが促進される。上記回収では、回収容器460の減圧によって、培地441の流れが促進される。
【0067】
なお、上記濾別、洗浄、および、回収のそれぞれは、加圧によって促進されてもよい。たとえば、上記濾別では、廃液容器420の減圧に代えて、または、廃液容器420の減圧に加えて、試料容器700が加圧されることによって液体試料800の吸引が促進されてもよい。たとえば、上記洗浄では、廃液容器420の減圧に代えて、または、廃液容器420の減圧に加えて、洗浄液容器480の加圧によって洗浄液481の流れが促進されてもよい。たとえば、上記回収では、回収容器460の減圧に加えて、または、回収容器460の減圧に加えて、培地容器440の加圧によって培地441の流れが促進されてもよい。
【0068】
<処理の流れ>
図4は、
図3においてステップSA1~SA3として示された微生物回収方法を前処理装置10において実現するためにコントローラ2が実行する処理の一例を示す図である。一実現例では、コントローラ2は、プロセッサ21が所与のプログラムを実行することによって、
図4の処理を実施する。
【0069】
ステップS100にて、コントローラ2は、回収装置1に第1流路(
図3のステップSA1)を形成させる。より具体的には、コントローラ2は、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれのモータを、第1流路を形成するように駆動する。
【0070】
ステップS102にて、コントローラ2は、廃液容器420に接続された真空ポンプに向けて駆動を指示することにより、ステップSA1の濾別のために液体試料800を吸引する。
【0071】
ステップS104にて、コントローラ2は、センサ710が試料路510において気泡を検出したか否かを判断する。コントローラ2は、センサ710によって気泡が検出されたこと判断するまでステップS104の制御を繰り返す(ステップS104にてNO)。コントローラ2は、センサ710によって気泡が検出されたと判断すると(ステップS104にてYES)、ステップS106へ制御を進める。
【0072】
ステップS106にて、コントローラ2は、第1流路を封鎖する。
【0073】
ステップS108にて、コントローラ2は、回収装置1に第2流路(
図3のステップSA2)を形成させる。より具体的には、コントローラ2は、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれのモータを、第2流路を形成するように駆動する。
【0074】
図4の処理では、ステップS106とステップS108とが同時に実行されてもよい。すなわち、コントローラ2は、ステップS106において、第1流路を封鎖することによって第2流路を形成してもよい。第2流路では、第1接続部202と試料路512との間の流路が遮断されることによって、第2濾過器200が試料容器700から切り離され、これにより、第1流路は封鎖される。したがって、第1流路の封鎖と第2流路の形成は同時に実現され得る。
【0075】
ステップS110にて、コントローラ2は、廃液容器420に接続された真空ポンプに向けて駆動を指示することにより、ステップSA2の洗浄のために洗浄液481を吸引する。予め定められた時間または量の吸引が実施された後、コントローラ2は、ステップS112へ制御を進める。
【0076】
ステップS112にて、コントローラ2は、回収装置1に第3流路(
図3のステップSA3)を形成させる。より具体的には、コントローラ2は、第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630のそれぞれのモータを、第3流路を形成するように駆動する。
【0077】
ステップSS114にて、コントローラ2は、吸引ボックス462に接続された真空ポンプに向けて駆動を指示することにより、ステップSA3の回収のために培地441を吸引する。予め定められた時間または量の吸引が実施された後、コントローラ2は、
図4の処理を終了させる。
【0078】
試料路510に気泡が混入したことが検出されると、第1流路が封鎖される。これにより、第2濾過器200に空気が混入して第2フィルタ220の上部に空気が入る、という事態が回避され得る。
【0079】
回収装置1では、試料容器700において液体試料800が無くなると、試料路510に気泡が混入する。したがって、センサ710が気泡を検出することは、第1流路の第2濾過器200より上流における液体試料800の残量の減少(たとえば、残量が予め定められた値を下回ったこと)を検出することを意味する。
図4の処理では、コントローラ2は、センサ710が気泡を検出したことに応じて、第1切替器610に第1流路を封鎖させる。この意味において、前処理装置10では、センサ710、コントローラ2、および、第1切替器610は、封鎖用要素の一例である。第1流路において、第1切替器610によって流路を切り替えられる部分が「所定の部分」の一例である。
【0080】
[実施形態2]
図5は、実施形態2にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。実施形態1の前処理装置10の回収装置1と比較して、実施形態2の前処理装置10Aの回収装置1Aは、センサ710の代わりに、センサ711を含む。センサ711は、試料容器700における液体試料800の残量を検出する。センサ711は、たとえば、試料容器700における液体試料800の液面が、下降して、予め定められた値に到達したか否かを検出する。すなわち、センサ711は、試料容器700における液体試料800の残量が予め定められた以下となったことを検出する。センサ711は、検出出力をコントローラ2へ送信する。
【0081】
図6は、
図4の処理の変形例の一例を示す図である。
図6の処理は、
図4の処理と比較して、ステップS104の代わりにステップS104Aを含む。コントローラ2は、ステップS102の後、ステップS104Aへ制御を進める。
【0082】
ステップS104Aにおいて、コントローラ2は、センサ711によって、試料容器700における液体試料800の残量が予め定められた値に到達したことが検出されたか否かを判断する。コントローラ2は、当該残量が予め定められた値に到達したことが検出されたと判断するまでステップS104Aの制御を繰り返す(ステップS104AにてNO)。コントローラ2は、当該残量が予め定められた値に到達したことが検出されたと判断すると、ステップS106にて、第1流路を封鎖させる。
【0083】
以上説明された実施形態2では、試料容器700における液体試料800の残量の減少に応じて、第1流路が封鎖される。すなわち、実施形態2では、実施形態1と比較して、センサ710の位置より上流での検出結果に従って第1流路が封鎖される。これにより、より確実に、第2濾過器200に空気が混入して第2フィルタ220の上部に空気が入る、という事態が回避され得る。
【0084】
[実施形態3]
図7は、実施形態3にかかる前処理装置の全体構成を模式的に示す図である。実施形態1の前処理装置10と比較して、実施形態3の前処理装置10Bは、コントローラ2およびセンサ710を含まず、フロートバルブ712を含む。
図7には、試料容器700における開口700Aが示されている。試料容器700は、開口700Aで、試料路510と連結される。試料容器700に収容された液体試料800は、開口700Aを介して試料路510に流入する。
【0085】
図8は、試料容器700において液体試料が無くなった状態を示す図である。
図8に示されるように、フロートバルブ712は、試料容器700において液体試料上に浮いており、液面とともに移動し、液体試料が無くなると開口700Aを塞ぐ。
【0086】
実施形態3では、フロートバルブ712は、試料容器における液体試料の残量の減少(たとえば、残量が予め定められた値以下となったこと)に応じて開口700Aを塞ぐように状態が変化する部材の一例である。なお、この部材は、開口700Aにおいて設けられた逆止弁として実現されてもよい。
【0087】
[実施形態4]
<前処理装置の構成>
図9は、実施形態4に係る前処理装置の概略斜視図である。実施形態4にかかる前処理装置10Cは、実施形態1の前処理装置10と比較して、筐体910および収容体920をさらに含む。
図9では、4つの前処理装置10Cが一体となったユニットが開示されており、一部、符号を省略している。
【0088】
図10は、実施形態4に係る前処理装置の回収装置部分の構成を模式的に示す図である。実施形態4の前処理装置10Cを構成する回収装置1Cでは、第1流路等の流路の少なくとも一部(試料路512、廃液路514、培地路516、回収路518,および洗浄路520のうち、後述する開口を横切る部分)が可塑性を有する材料によって構成される。そして、回収装置1Cは、実施形態1の第1切替器610、第2切替器620、および第3切替器630の代わりに、5個のピンチバルブ991~995を含む。ピンチバルブ991~995のそれぞれは、流路の上記部分を圧迫することによって当該チューブ内の溶液の流れを遮断する。ピンチバルブ991~995のそれぞれは、圧迫を解消することにより、流路の上記部分における溶液の流れを許容する。すなわち、ピンチバルブ991~995のそれぞれは、流路の上記部分を開閉する。コントローラ2は、ピンチバルブ991~995のそれぞれの開閉を制御する。
【0089】
回収装置1Cは、吸引路522、第1コネクタ720、および第2コネクタ740をさらに含む。回収装置1Cは、実施形態1の廃液容器420および吸引ボックス462の代わりに、廃液容器420Aを含む。廃液容器420Aは、吸引部422Aを含む。吸引部422Aには真空ポンプが接続されている。真空ポンプが駆動されると、廃液容器420A内が減圧される。
【0090】
第2濾過器200の第1接続部202は、チューブ202Aおよび第1コネクタ720を介して、試料路512、回収路518、および洗浄路520に接続されている。
【0091】
試料路512と第1接続部202との合流点(第1コネクタ720との接続点)は、洗浄路520と第1接続部202との合流点(第1コネクタ720との接続点)よりも第2濾過器200に近いことが好ましい。このように構成することで、洗浄液481による洗浄において、第1コネクタ720内に残った液体試料800がより確実に洗い流され、培地441へのコンタミネーションの発生を防止できる。
【0092】
回収路518と第1接続部202との合流点(第1コネクタ720との接続点)を、洗浄路520と第1接続部202との合流点(第1コネクタ720との接続点)よりも第2濾過器200に近い場所に配置してもよい。このように構成することで、培地441は、液体試料800が通った流路のうち、少なくとも洗浄液481が通った流路を通過することになるため、培地441へのコンタミネーションの発生を防止できる。
【0093】
第2濾過器200の第2接続部204は、チューブ204Aおよび第2コネクタ740を介して、廃液路514および培地路516に接続される。
【0094】
第1コネクタ720および第2コネクタ740のそれぞれは、流路を切り替える機能は備えておらず、流路を分岐するための機能を有しているに過ぎない。第1接続部202および第2接続部204のそれぞれは、第1接続部および第2接続部のそれぞれの一例である。第1接続部および第2接続部から延びる流路が分岐される限り、分岐の方法は、第1コネクタ720および第2コネクタ740を設けることに限られない。
【0095】
<第1~第3流路の形成>
図10の回収装置1Cにおける第1~第3流路(
図3)の形成について説明する。
【0096】
(第1流路)
第1流路を形成するために、回収装置1Cでは、ピンチバルブ991,994が開かれ、ピンチバルブ992,993,995が閉じられる。
【0097】
第1流路が形成された状態で廃液容器420A内が減圧されると、試料容器700内の液体試料800が、第1濾過器100および第2濾過器200で濾過される。
【0098】
(第2流路)
第2流路を形成するために、回収装置1Cでは、ピンチバルブ993,994が開かれ、ピンチバルブ991,992,995が閉じられる。
【0099】
第2流路が形成された状態で廃液容器420A内が減圧されると、第2濾過器200内の第2フィルタ220が洗浄液481で洗浄される。
【0100】
(第3流路)
第3流路を形成するために、回収装置1Cでは、ピンチバルブ992,995が開かれ、ピンチバルブ991,993,994が閉じられる。
【0101】
第3流路が形成された状態で廃液容器420A内が減圧されると、第2フィルタ220上に堆積した微生物が、培地441とともに、回収容器460に回収される。
【0102】
<第1流路の封鎖>
図10の回収装置1Cでは、少なくともピンチバルブ991が閉じられることにより、第1流路が封鎖される。なお、第2流路(または第3流路)が形成された状態でも、第1流路は封鎖される。
【0103】
実施形態4では、センサ710(および/またはセンサ711)の検出出力に応じて、コントローラ2はピンチバルブ911を閉じることにより、第1流路を封鎖することができる。この意味において、実施形態4では、センサ710(および/またはセンサ711)、ピンチバルブ911、および、コントローラ2によって、封鎖用要素が構成される。
【0104】
<筐体の構成>
図11は、
図9に示した筐体の概略斜視図である。
図12は、
図11に示した筐体からカバーを外した状態を示す概略斜視図である。
図13は、
図11に示した筐体の概略背面図である。なお、
図11には、カバー914によって隠れている一部分を破線で示している。また、
図12には、図示を簡略化するため、各容器および濾過器を繋ぐ流路については、記載を省略している。
【0105】
図11を参照して、筐体910は、本体912と本体912に取り付けられるカバー914とを含む。カバー914には、接続部142と、液体試料800を入れるための注入口144とが形成されている。
【0106】
筐体910には、接続部142と対向する位置に接続部466(
図12参照)が配置されている。接続部466には、回収路518および吸引路522が固定されている。
【0107】
回収容器460は、一端が開口しており、接続部466に着脱可能に構成されている。回収容器460は、接続部142を通して筐体910に挿入可能な大きさを有しており、接続部142を通して筐体910に配置されている接続部466に取り付けたり、あるいは、接続部466から取り外したりできる。これにより、回収容器460は、筐体910に着脱可能に支持される。
【0108】
また、筐体910には、カバー914に形成された注入口144と対向する位置に試料容器700が配置されている。そのため、注入口144から注入された液体試料800は、試料容器700に収容される。
【0109】
図11および
図12に示すように、回収容器460の少なくとも一部は、筐体910から露出している。一方、試料容器700、第1濾過器100、第2濾過器200、廃液容器420A、培地容器440、洗浄液容器480(図示を省略)、およびこれらの各部を繋ぐ流路は、すべて、筐体910内に収容される。そのため、人の手が触れる箇所を必要最小限に抑えることができ、コンタミネーションが生じにくく、また、液体試料800からの感染を防ぐことができる。
【0110】
図12を参照して、本体912には、試料容器700、第1濾過器100、第2濾過器200、廃液容器420A、培地容器440、洗浄液容器480、および接続部466が配置されている。
【0111】
図13を参照して、本体912の背面には、5つの接続部931~935が形成されている。回収路518は、接続部931を横切るように本体912に配置されている。洗浄路520は、接続部932を横切るように本体912に配置されている。試料路512は、接続部933を横切るように本体912に配置されている。培地路516は、接続部934を横切るように本体912に配置されている。廃液路514は、接続部935を横切るように本体912に配置されている。
【0112】
回収路518、洗浄路520、試料路512、培地路516、廃液路514のうち、少なくとも、各接続部931~935を横切る部分は、可塑性を有する管によって構成されている。
【0113】
<収容体の構成>
図14は、
図9に示した収容体を示す概略斜視図である。
図14を参照して、収容体920には、ピンチバルブ991~995および吸引チューブ424Aが配置されている。吸引部422A(
図10および
図12)は、吸引チューブ424Aを介して、真空ポンプに接続される。
【0114】
ピンチバルブ992,993,991,995,994のそれぞれは、収容体920に筐体910を取り付けたときに、接続部931,932,933,934,935のそれぞれが形成されている本体912の背面と対向する面に配置されている。
【0115】
このように配置されていることで、収容体920に筐体910を取り付けたときに、ピンチバルブ992によって、接続部931を横切る回収路518が挟み込まれる。
【0116】
同様に、ピンチバルブ993によって、接続部932を横切る洗浄路520が挟み込まれる。ピンチバルブ991によって、接続部933を横切る試料路512が挟み込まれる。ピンチバルブ995によって、接続部934を横切る培地路516が挟み込まれる。ピンチバルブ994によって、接続部935を横切る廃液路514が挟み込まれる。
【0117】
以上のように収容体920および筐体910が構成されていることで、収容体920に筐体910を取り付けたときに、
図10に示すように、各流路に所望の切替器が取り付けられることになる。
【0118】
また、吸引チューブ424Aは、収容体920に筐体910を取り付けたときに、筐体910に収容された廃液容器420Aの吸引部422Aが位置する面(底面)と対向する位置に設けられている。これにより、収容体920に筐体910を取り付けたときに、吸引チューブ424Aを吸引部422Aに取り付けることができる。
【0119】
流路を切り替えるための切替器(ピンチバルブ991~995)は、微生物の回収を自動化するにあたり、コントローラ2による制御が必要である。一方、切替器によって切り替えられる各流路は、液体試料800等によって汚染され、繰り返し利用しにくく、使用の度に廃棄されることが好ましい。
【0120】
そのため、切替器と流路とを一体で形成した場合、流路と合わせて切替器も廃棄する必要があり、複数回利用する場合に、切替器とコントローラ2との接続とを都度行う必要が生じる、またはコストがかさむ等の課題が生じる。
【0121】
実施形態4にかかる前処理装置10Cは、流路を切り替えるための切替器(ピンチバルブ991~995)が、流路を外から挟み込むように構成されている。そのため、切替器と流路とを別体にすることができる。これにより、微生物の回収を自動化するにあたり、コントローラによる制御が求められる部品と、液体試料800等によって汚染される部品とを分けることができ、複数回利用するにあたってのユーザビリティが向上する。
【0122】
また、実施形態4にかかる前処理装置10Cは、流路を切り替えるための各切替器が、収容体920に筐体910を取り付けたときに、対応する流路に取り付けられるように、収容体920に配置されている。そのため、ユーザは、再利用のできない筐体910を収容体920に取り付けたり、取り外したりするだけで、前処理装置10Cを利用することができる。
【0123】
実施形態4にかかる前処理装置10Cにおいて、試料容器700、第1濾過器100、第2濾過器200、廃液容器420A、培地容器440、洗浄液容器480、およびこれらの各部を繋ぐ流路のすべてが筐体910内に収容されているものとした。なお、各部を繋ぐ流路のうち、少なくとも、各切替器が取り付けられる部分(管)だけが筐体910内に配置されていればよい。また、廃液容器420A、培地容器440、および洗浄液容器480は、筐体910に収容されている必要はない。たとえば、廃液容器420A、培地容器440、および洗浄液容器480は、筐体910および収容体920とは別体で構成されていてもよい。また、廃液容器420A、培地容器440、および洗浄液容器480は、収容体920に設けられていてもよい。
【0124】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0125】
(第1項) 一態様にかかる前処理装置は、血球を含む液体試料を収容する試料容器と、前記試料容器内の液体試料から血球を除去するための第1フィルタを含む第1濾過器と、液体試料中に含まれ得る微生物を捕捉するための第2フィルタ、ならびに、前記第2フィルタを挟んで互いに対向する第1接続部および第2接続部を有する、第2濾過器と、を備える。前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高い。一態様にかかる前処理装置は、前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して前記試料容器および前記第1濾過器と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して、前記第2濾過器から排出される廃液を受ける廃液回収部と接続させる、第1流路と、前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して、前記第2フィルタを洗浄するための洗浄液を収容する洗浄液収容部と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して前記廃液回収部と接続させる、第2流路と、前記第2濾過器を、前記第2接続部を介して、前記第2フィルタに捕捉された微生物を回収するための回収液を収容する回収液収容部と接続させ、かつ、前記第2濾過器を、前記第1接続部を介して前記第2濾過器を通過した回収液を収容する回収部と接続させる、第3流路と、前記第1流路の前記第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第1流路を封鎖する封鎖用要素と、を備える。
【0126】
第1項に記載の前処理装置は、第1流路において試料容器から液体試料を流すことで微生物を第2濾過器で濾別したのち、第2流路において第2濾過器の第2フィルタを洗浄し、さらに、第3流路において回収液を第2濾過器に向けて流すことで、第2濾過器で濾別された微生物を回収液とともに回収できる。これにより、第1項に記載の前処理装置によれば、回収液が流れる力で微生物を第2濾過器から分離して回収でき、微生物の回収の自動化を可能にする。
【0127】
第1項に記載の前処理装置は、また、第1フィルタを利用して試料容器内の液体試料から血球を除去し、第1フィルタよりバブルポイントが高い第2フィルタを利用して第1フィルタの濾液から微生物を濾別する。第1項に記載の前処理装置は、さらに、第1流路の第2濾過器より上流における試料容器の残量の減少に応じて、第1流路を封鎖する封鎖用要素を含む。これにより、第1流路において、試料容器が空になったことにより第2濾過器に空気が混入し、第2フィルタの第1接続部側が空気で満たされる、という事態が回避され得る。
【0128】
液体試料の組成は、一定ではないことが想定される。これにより、液体試料の粘度が一定ではなく、第1流路を流れる液体試料の流速が一定ではなく、したがって、複数回の前処理のそれぞれにおいて試料容器に収容される液体試料の量を一定にしたとしても、試料容器からの液体試料の供給が開始されてから試料容器が空になるまでの時間は、各回の前処理ごとに異なることが想定される。この点において、第1項に記載の前処理装置によれば、第1流路の第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、第1流路が封鎖される。これにより、液体試料の組成が変化した場合でも、確実に、第2フィルタの第1接続部側が空気で満たされる事態が回避され得る。
【0129】
(第2項) 前記封鎖用要素は、前記第1流路の前記第2濾過器より上流において気泡の有無を検出する気泡センサと、前記第1流路の前記第2濾過器より上流の所定の部分の開閉を切り替える切替部と、前記気泡センサが気泡を検出したことに応じて、前記切替部に前記所定の部分を閉じさせるように制御信号を送信するコントローラと、を含んでいてもよい。
【0130】
第2項に記載の前処理装置によれば、気泡センサの検出出力に応じたコントローラの制御に従って第2濾過器より上流の所定の部分が閉じられるため、より確実に、第2フィルタの第1接続部側が空気で満たされる、という事態が回避され得る。
【0131】
(第3項) 第1項に記載の前処理装置において、前記封鎖用要素は、前記試料容器における液体試料の残量を検出するセンサと、前記第1流路の前記第2濾過器より上流の所定の部分の開閉を切り替える切替部と、前記センサが前記残量が予め定められた値以下となったことを検出したことに応じて、前記切替部に前記所定の部分を閉じさせるコントローラと、を含んでいてもよい。
【0132】
第3項に記載の前処理装置によれば、センサの検出出力に応じたコントローラの制御に従って第2濾過器より上流の所定の部分が閉じられるため、より確実に、第2フィルタの第1接続部側が空気で満たされる、という事態が回避され得る。
【0133】
(第4項) 第1項に記載の前処理装置において、前記試料容器は、前記試料容器内の液体試料を前記第1流路に流入させる開口を有し、前記封鎖用要素は、前記試料容器における液体試料の残量の減少に応じて、前記開口を塞ぐように状態が変化する部材を含んでいてもよい。
【0134】
第4項に記載の前処理装置によれば、部材の状態の変化によって試料容器の開口が塞がれるため、第2フィルタの第1接続部側が空気で満たされる、という事態がコントローラ等の電力消費を要することなく回避され得る。
【0135】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載の前処理装置において、前記回収液は、前記微生物の培養に用いるための液体培地であってもよい。
【0136】
第5項に記載の前処理装置によれば、第2濾過器で濾別された微生物を回収液とともに回収したのち、回収した溶液をそのまま培養に用いることができる。また、微生物が培養に用いる液体培地で直接回収されるため、微生物の回収効率を良くすることができる。
【0137】
(第6項) 一態様にかかる前処理方法は、試料容器に収容された液体試料から、第1フィルタを利用して除去対象を除去し、第2フィルタを利用して前記第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを備える。前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高い。前記微生物を濾別するステップは、前記第2フィルタの一方側に前記第1フィルタの前記濾液を供給することと、前記第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含む。一態様にかかる前処理方法は、前記微生物を濾別するステップにおいて前記第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第2濾過器と前記試料容器との間の流路を封鎖するステップと、前記第2フィルタの前記一方側に洗浄液を供給し、前記第2フィルタの前記他方側から廃液を受けることにより、前記第2フィルタを洗浄するステップと、前記第2フィルタの前記他方側に回収液を供給し、前記第2フィルタの前記一方側から回収液を受けることにより、前記第2フィルタから微生物を回収するステップと、をさらに備える。
【0138】
第6項に記載の前処理方法は、第1流路において試料容器から液体試料を流すことで微生物を第2フィルタで濾別したのち、第2流路において第2フィルタを洗浄し、さらに、第3流路において回収液を第2フィルタに向けて流すことで、第2フィルタで濾別された微生物を回収液とともに回収できる。これにより、第6項に記載の前処理方法によれば、回収液が流れる力で微生物を第2フィルタから分離して回収でき、微生物の回収の自動化を可能にする。
【0139】
第6項に記載の前処理方法は、また、第1フィルタを利用して試料容器内の液体試料から除去対象を除去し、第1フィルタよりバブルポイントが高い第2フィルタを利用して第1フィルタの濾液から微生物を濾別する。第6項に記載の前処理方法は、さらに、第1流路の第2フィルタより上流における試料容器の残量の減少に応じて、第1流路を封鎖する。これにより、第1流路において、試料容器が空になったことにより第2フィルタに空気が混入し、第2フィルタの一方側が空気で満たされる、という事態が回避され得る。
【0140】
液体試料の組成は、一定ではないことが想定される。これにより、液体試料の粘度が一定ではなく、第1流路を流れる液体試料の流速が一定ではなく、したがって、複数回の前処理のそれぞれにおいて試料容器に収容される液体試料の量を一定にしたとしても、試料容器からの液体試料の供給が開始されてから試料容器が空になるまでの時間は、各回の前処理ごとに異なることが想定される。この点において、第6項に記載の前処理方法によれば、第1流路の第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、第1流路が封鎖される。これにより、液体試料の組成が変化した場合でも、確実に、第2フィルタの一方側が空気で満たされる事態が回避され得る。
【0141】
(第7項) 一態様にかかるプログラムは、第1フィルタおよび第2フィルタを含む前処理装置を制御するコンピュータに実行されることにより、前記コンピュータに、試料容器に収容された液体試料から、前記第1フィルタを利用して除去対象を除去し、前記第2フィルタを利用して前記第1フィルタの濾液から微生物を濾別するステップを実行させる。前記第2フィルタのバブルポイントは、前記第1フィルタのバブルポイントより高い。前記微生物を濾別するステップは、前記第2フィルタの一方側に前記第1フィルタの前記濾液を供給することと、前記第2フィルタの他方側から廃液を受けることと、を含む。一態様にかかるプログラムは、コンピュータに、さらに、前記微生物を濾別するステップにおいて前記第2濾過器より上流における液体試料の残量の減少に応じて、前記第2濾過器と前記試料容器との間の流路を封鎖するステップと、前記第2フィルタの前記一方側に洗浄液を供給し、前記第2フィルタの前記他方側から廃液を受けることにより、前記第2フィルタを洗浄するステップと、前記第2フィルタの前記他方側に回収液を供給し、前記第2フィルタの前記一方側から回収液を受けることにより、前記第2フィルタから微生物を回収するステップと、を実行させる。
【0142】
第7項に記載のプログラムは、コンピュータに、第1流路において試料容器から液体試料を流すことで微生物を第2フィルタで濾別させたのち、第2流路において第2フィルタを洗浄させ、さらに、第3流路において回収液を第2フィルタに向けて流すことで、第2フィルタで濾別された微生物を回収液とともに回収させる。これにより、第7項に記載のプログラムによれば、回収液が流れる力で微生物を第2フィルタから分離して回収でき、微生物の回収の自動化を可能にする。
【0143】
第7項に記載のプログラムは、また、コンピュータに、第1フィルタを利用して試料容器内の液体試料から除去対象を除去させ、第1フィルタよりバブルポイントが高い第2フィルタを利用して第1フィルタの濾液から微生物を濾別させる。第7項に記載のプログラムは、さらに、コンピュータに、第1流路の第2フィルタより上流における試料容器の残量が予め定められた値を下回ったことに応じて、第1流路を封鎖させる。これにより、第1流路において、試料容器が空になったことにより第2フィルタに空気が混入し、第2フィルタの一方側が空気で満たされる、という事態が回避され得る。
【0144】
液体試料の組成は、一定ではないことが想定される。これにより、液体試料の粘度が一定ではなく、第1流路を流れる液体試料の流速が一定ではなく、したがって、複数回の前処理のそれぞれにおいて試料容器に収容される液体試料の量を一定にしたとしても、試料容器からの液体試料の供給が開始されてから試料容器が空になるまでの時間は、各回の前処理ごとに異なることが想定される。この点において、第7項に記載のプログラムによれば、コンピュータは、第1流路の第2フィルタより上流における液体試料の残量の減少に応じて、第1流路を封鎖する。これにより、液体試料の組成が変化した場合でも、確実に、第2フィルタの一方側が空気で満たされる事態が回避され得る。
【0145】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
1,1A,1C 回収装置、2 コントローラ、10,10A,10B,10C 前処理装置、21 プロセッサ、100 第1濾過器、120 第1フィルタ、121 第1層、122 第2層、200 第2濾過器、202 第1接続部、202A,204A チューブ、204 第2接続部、220 第2フィルタ、420,420A 廃液容器、422,422A,464 吸引部、424A 吸引チューブ、440 培地容器、441 培地、460 回収容器、462 吸引ボックス、466 接続部、480 洗浄液容器、481 洗浄液、510,512 試料路、514 廃液路、516 培地路、518 回収路、520 洗浄路、522 吸引路、610 第1切替器、620 第2切替器、630 第3切替器、700 試料容器、700A 開口、710,711 センサ、712 フロートバルブ、720 第1コネクタ、740 第2コネクタ、800 液体試料、801 液面、820 血球、840 微生物、910 筐体、911,991,992,993,994,995 ピンチバルブ、912 本体、914 カバー、920 収容体。