(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165512
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】製造システム
(51)【国際特許分類】
B05B 13/04 20060101AFI20221025BHJP
B05B 1/00 20060101ALI20221025BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20221025BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221025BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221025BHJP
B26D 5/00 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B1/00 Z
B05C11/00
B05C11/10
B41J2/01 123
B41J2/01 129
B26D5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070876
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】美齊津 拓秀
(72)【発明者】
【氏名】大井 弘義
【テーマコード(参考)】
2C056
3C024
4F033
4F035
4F042
【Fターム(参考)】
2C056FA15
2C056FD20
2C056HA44
3C024AA06
4F033AA01
4F033AA15
4F033BA03
4F033CA11
4F033DA01
4F033EA02
4F033EA03
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4F033HA01
4F033LA01
4F033LA13
4F035AA03
4F035AA04
4F035CA05
4F035CB27
4F035CC02
4F035CD05
4F035CD18
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042DB01
4F042DB41
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】樹脂等で形成される基材に印刷およびコーティング剤の塗布を行って所定の製品を製造するための製造システムにおいて、製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能な製造システムを提供する。
【解決手段】製造システム1の塗布装置3では、コーティング剤を噴射するノズルが第1方向に1回移動すると、第1方向を長手方向とする直線状のコーティング剤である直線状コーティング剤が基材に塗布される。上位制御装置7は、印刷装置4で基材に印刷される画像のデータである画像データに基づいて、塗布装置3で基材にコーティング剤を塗布するための塗布データを作成しており、塗布データには、基材に直線状コーティング剤を塗布するための第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射範囲のデータと第2方向における直線状コーティング剤の塗布間隔のデータとが含まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に印刷を行う印刷機構と、前記基材にコーティング剤を塗布する塗布機構と、前記印刷機構および前記塗布機構が電気的に接続される上位制御装置とを備え、
上下方向に直交する所定の方向を第1方向とし、上下方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とすると、
前記塗布機構は、前記基材に向かって下側に前記コーティング剤を噴射するノズルと、前記基材が載置されるテーブルと、前記ノズルが搭載されるキャリッジと、前記テーブルに対して第1方向に前記キャリッジを相対的に往復移動させる第1移動機構と、前記テーブルに対して第2方向に前記キャリッジを相対的に往復移動させる第2移動機構とを備え、
前記コーティング剤を噴射する前記ノズルが前記第1移動機構によって前記テーブルに対して第1方向に1回相対的に移動すると、第1方向を長手方向とする直線状の前記コーティング剤である直線状コーティング剤が前記基材に塗布され、
第2方向において一定間隔で塗布される複数の前記直線状コーティング剤によって前記基材にコーティング層が形成され、
前記上位制御装置は、前記印刷機構で前記基材に印刷される画像のデータである画像データに基づいて、前記塗布機構で前記基材に前記コーティング剤を塗布するための塗布データであって、前記基材に前記直線状コーティング剤を塗布するための第1方向における前記ノズルからの前記コーティング剤の噴射範囲のデータと第2方向における前記直線状コーティング剤の塗布間隔のデータとを含む前記塗布データを作成することを特徴とする製造システム。
【請求項2】
前記上位制御装置には、前記基材の厚さが入力可能となっており、
前記上位制御装置は、前記上位制御装置に入力された前記基材の厚さと前記画像データとに基づいて前記塗布データを作成することを特徴とする請求項1記載の製造システム。
【請求項3】
前記上位制御装置では、前記ノズルの種類が選択可能となっており、
前記上位制御装置は、選択された前記ノズルの種類と前記画像データとに基づいて前記塗布データを作成することを特徴とする請求項1または2記載の製造システム。
【請求項4】
前記ノズルは、第1方向における前記キャリッジの移動速度が一定になると、前記コーティング剤の噴射を開始し、
前記上位制御装置には、第1方向における前記ノズルからの前記コーティング剤の噴射位置と、第1方向における前記基材への前記コーティング剤の塗布位置との第1方向のずれを補正するための塗布ずれ補正値が入力可能となっており、
前記上位制御装置は、前記上位制御装置に入力された前記塗布ずれ補正値と前記画像データとに基づいて前記塗布データを作成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製造システム。
【請求項5】
前記印刷機構と前記塗布機構とが別々の装置となっており、
前記塗布機構の数は、前記印刷機構の数よりも少なくなっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製造システム。
【請求項6】
前記印刷機構と前記塗布機構とが別々の装置となっており、
前記塗布機構は、前記印刷機構で印刷が行われた後の前記基材に前記コーティング剤を塗布し、
前記印刷機構は、前記塗布機構において前記基材を位置合わせするための位置合わせ用マークを前記基材に印刷することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の製造システム。
【請求項7】
前記印刷機構は、複数色のインクによって前記基材に印刷を行い、
前記塗布機構は、単色の前記コーティング剤を前記基材に塗布することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の製造システム。
【請求項8】
前記塗布機構は、透明な前記コーティング剤を前記基材に塗布することを特徴とする請求項7記載の製造システム。
【請求項9】
前記印刷機構は、紫外線硬化型のインクによって前記基材に印刷を行い、
前記塗布機構は、紫外線硬化型の前記コーティング剤を前記基材に塗布することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の製造システム。
【請求項10】
前記コーティング剤が硬化した後の前記基材を所定形状に切断する切断機構を備え、
前記切断機構は、前記上位制御装置に電気的に接続され、
前記上位制御装置は、前記切断機構で前記基材を切断するための切断データを前記画像データに基づいて作成することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の製造システム。
【請求項11】
前記上位制御装置は、前記切断データに基づいて前記塗布データを作成することを特徴とする請求項10記載の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂等で形成される基材に印刷およびコーティング剤の塗布を行って所定の製品を製造するための製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂等で形成される基材と、基材の一方の面に形成される複数の凸部と、凸部を覆うオーバーコート層とを備える加飾構造体が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の加飾構造体では、凸部は、たとえば、インクジェット方式によって凸部用インクを印刷した後、印刷した凸部用インクを硬化させることで形成されている。また、オーバーコート層は、たとえば、スプレー方式またはインクジェット方式によってコーティング剤を塗布した後、塗布したコーティング剤を硬化させることで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、樹脂等で形成される基材に印刷およびコーティング剤の塗布を行って所定の製品を製造するための製造システムを開発している。この製造システムは、基材に印刷を行う印刷機構と、基材にコーティング剤を塗布する塗布機構とを備えている。塗布機構は、たとえば、基材の表面に施された印刷を保護するコーティング層を形成するためにコーティング剤を基材に塗布する。特許文献1に記載されているように、基材にコーティング剤を塗布する方法として、従来、スプレー方式とインクジェット方式とが知られているが、インクジェット方式の場合、コーティング剤の粘度が高くなると、インクジェットヘッドからコーティング剤を吐出することができなくなる。
【0005】
すなわち、コーティング剤の粘度が高くなると、インクジェット方式では、基材にコーティング剤を塗布することができなくなる。そのため、基材にコーティング剤を塗布する方法として、インクジェット方式を採用すると、使用できるコーティング剤が制限されて、塗布機構の汎用性が低下する。一方、スプレー方式の場合には、コーティング剤の粘度が高くなっても、基材にコーティング剤を塗布することが可能である。そのため、本願発明者は、基材にコーティング剤を塗布する方法として、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式を採用することにした。
【0006】
この製造システムで製品を製造する場合には、印刷機構で基材に印刷を行うための印刷データと、塗布機構で基材にコーティング剤を塗布するための塗布データとが必要になる。すなわち、この製造システムでは、製品を製造するためのデータとして、少なくとも印刷データと塗布データとを含むデータを作成する必要があるが、ユーザにとって、このデータの作成作業は容易であることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明の課題は、樹脂等で形成される基材に印刷およびコーティング剤の塗布を行って所定の製品を製造するための製造システムにおいて、製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能な製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の製造システムは、基材に印刷を行う印刷機構と、基材にコーティング剤を塗布する塗布機構と、印刷機構および塗布機構が電気的に接続される上位制御装置とを備え、上下方向に直交する所定の方向を第1方向とし、上下方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とすると、塗布機構は、基材に向かって下側にコーティング剤を噴射するノズルと、基材が載置されるテーブルと、ノズルが搭載されるキャリッジと、テーブルに対して第1方向にキャリッジを相対的に往復移動させる第1移動機構と、テーブルに対して第2方向にキャリッジを相対的に往復移動させる第2移動機構とを備え、コーティング剤を噴射するノズルが第1移動機構によってテーブルに対して第1方向に1回相対的に移動すると、第1方向を長手方向とする直線状のコーティング剤である直線状コーティング剤が基材に塗布され、第2方向において一定間隔で塗布される複数の直線状コーティング剤によって基材にコーティング層が形成され、上位制御装置は、印刷機構で基材に印刷される画像のデータである画像データに基づいて、塗布機構で基材にコーティング剤を塗布するための塗布データであって、基材に直線状コーティング剤を塗布するための第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射範囲のデータと第2方向における直線状コーティング剤の塗布間隔のデータとを含む塗布データを作成することを特徴とする。
【0009】
本発明の製造システムでは、上位制御装置は、印刷機構で基材に印刷される画像のデータである画像データに基づいて、塗布機構で基材にコーティング剤を塗布するための塗布データであって、基材に直線状コーティング剤を塗布するための第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射範囲のデータと第2方向における直線状コーティング剤の塗布間隔のデータとを含む塗布データを作成している。すなわち、本発明では、上位制御装置は、画像データに基づいて塗布データを自動で作成しており、ユーザは塗布データを作成する必要がない。そのため、本発明の製造システムでは、製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能になる。
【0010】
本発明において、上位制御装置には、基材の厚さが入力可能となっており、上位制御装置は、上位制御装置に入力された基材の厚さと画像データとに基づいて塗布データを作成することが好ましい。基材の厚さによって基材とノズルとの距離が変動するため、基材の厚さが変わると直線状コーティング剤の第2方向の幅が変動して第2方向における直線状コーティング剤の適切な塗布間隔が変動することがあるが、このように構成すると、基材の厚さが変わっても、上位制御装置において適切な塗布データを作成することが可能になる。
【0011】
本発明において、上位制御装置では、ノズルの種類が選択可能となっており、上位制御装置は、選択されたノズルの種類と画像データとに基づいて塗布データを作成することが好ましい。ノズルの種類によって直線状コーティング剤の第2方向の幅が変動して第2方向における直線状コーティング剤の適切な塗布間隔が変動することがあるが、このように構成すると、ノズルの種類が変わっても、上位制御装置において適切な塗布データを作成することが可能になる。
【0012】
本発明において、ノズルは、第1方向におけるキャリッジの移動速度が一定になると、コーティング剤の噴射を開始し、上位制御装置には、第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射位置と、第1方向における基材へのコーティング剤の塗布位置との第1方向のずれを補正するための塗布ずれ補正値が入力可能となっており、上位制御装置は、上位制御装置に入力された塗布ずれ補正値と画像データとに基づいて塗布データを作成することが好ましい。
【0013】
このように構成すると、第1方向におけるキャリッジの移動速度が一定になったときにノズルがコーティング剤の噴射を開始するため、第1方向における直線状コーティング剤の塗布厚のばらつきを抑制することが可能になる。また、キャリッジが第1方向に移動しながらノズルがコーティング剤を噴射すると、第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射位置と第1方向における基材へのコーティング剤の塗布位置とが第1方向においてずれるが、このように構成すると、上位制御装置が、第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射位置と第1方向における基材へのコーティング剤の塗布位置とのずれを補正するための塗布ずれ補正値と画像データとに基づいて塗布データを作成するため、第1方向における直線状コーティング剤の塗布位置のずれを抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、印刷機構と塗布機構とが別々の装置となっており、塗布機構の数は、印刷機構の数よりも少なくなっている。
【0015】
本発明において、たとえば、印刷機構と塗布機構とが別々の装置となっており、塗布機構は、印刷機構で印刷が行われた後の基材にコーティング剤を塗布し、印刷機構は、塗布機構において基材を位置合わせするための位置合わせ用マークを基材に印刷する。この場合には、印刷機構と塗布機構とが別々の装置となっていても、位置合わせ用マークを用いて、塗布機構において基材を位置合わせすることが可能になる。したがって、基材の、印刷が行われた部分と、基材の、コーティング剤が塗布される部分とのずれを抑制することが可能になる。
【0016】
本発明において、たとえば、印刷機構は、複数色のインクによって基材に印刷を行い、塗布機構は、単色のコーティング剤を基材に塗布する。また、本発明において、たとえば、塗布機構は、透明なコーティング剤を基材に塗布する。また、本発明において、たとえば、印刷機構は、紫外線硬化型のインクによって基材に印刷を行い、塗布機構は、紫外線硬化型のコーティング剤を基材に塗布する。
【0017】
本発明において、製造システムは、コーティング剤が硬化した後の基材を所定形状に切断する切断機構を備え、切断機構は、上位制御装置に電気的に接続され、上位制御装置は、切断機構で基材を切断するための切断データを画像データに基づいて作成することが好ましい。このように構成すると、上位制御装置が画像データに基づいて切断データを自動で作成しており、ユーザは切断データを作成する必要がない。したがって、コーティング剤が硬化した後の基材が切断機構によって所定形状に切断される場合であっても、製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能になる。
【0018】
本発明において、上位制御装置は、切断データに基づいて塗布データを作成することが好ましい。このように構成すると、上位制御装置において切断データを使用せずに塗布データを作成する場合と比較して、上位制御装置でのデータの作成処理を簡素化することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、樹脂等で形成される基材に印刷およびコーティング剤の塗布を行って所定の製品を製造するための製造システムにおいて、製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる製造システムのブロック図である。
【
図2】
図1に示す塗布装置の構成を説明するための図である。
【
図3】
図2に示すノズルの構成を説明するための断面図である。
【
図4】
図2に示す塗布装置でコーティング剤を塗布するときに、第1方向におけるノズルからのコーティング剤の噴射位置と第1方向における基材へのコーティング剤の塗布位置とに第1方向のずれが発生することを説明するための図である。
【
図5】
図1に示す上位制御装置が有するディスプレイの表示の一例を示す図である。
【
図6】
図1に示す印刷装置によって基材に印刷された画像等の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示す上位制御装置での塗布データの作成方法を説明するための図である。
【
図8】
図1に示す上位制御装置での塗布データの作成方法を説明するための図である。
【
図9】
図1に示す上位制御装置での塗布データの作成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(製造システムの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる製造システム1のブロック図である。
【0023】
本形態の製造システム1は、基材2(
図2参照)を用いて所定の製品を製造するためのシステムである。製造システム1では、たとえば、キーホルダーで使用されるキーホルダー用のプレート等が製造される。基材2は、樹脂、金属、ガラス、紙または布帛等の様々な材料で形成される。本形態の基材2は、アクリル樹脂やABS樹脂等の硬質の樹脂で形成されている。また、本形態の基材2は、平板状に形成されている。
【0024】
製造システム1は、基材2にコーティング剤を塗布する塗布機構としての塗布装置3と、基材2に印刷を行う印刷機構としての印刷装置4と、基材2に塗布されたコーティング剤を硬化させる硬化装置5と、コーティング剤が硬化した後の基材2を所定形状に切断する切断機構としての切断装置6と、塗布装置3、印刷装置4および切断装置6が電気的に接続される上位制御装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)7とを備えている。本形態では、印刷装置4は、塗布装置3でコーティング剤が塗布される前の基材2に印刷を行う。すなわち、塗布装置3は、印刷装置4で印刷が行われた後の基材2にコーティング剤を塗布する。また、本形態では、塗布装置3と印刷装置4と硬化装置5と切断装置6とが別々の装置となっている。
【0025】
印刷装置4は、インクジェットプリンタである。印刷装置4は、たとえば、基材2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、キャリッジを主走査方向へ移動させるキャリッジ駆動機構と、基材2が載置されるテーブルと、テーブルに対してキャリッジを副走査方向へ相対的に移動させる移動機構とを備えている。また、印刷装置4は、印刷装置4を制御する制御部を備えている。この制御部は、PC7に電気的に接続されており、PC7からの制御指令に基づいて印刷装置4を制御する。印刷装置4は、複数色のインクによって基材2に印刷を行う。また、印刷装置4は、紫外線硬化型のインクによって基材2に印刷を行う。
【0026】
なお、印刷装置4では、水性顔料インク、ラテックスインク、顔料内包樹脂分散インク等の水性インク(水性系のインク)や、有機溶剤を溶媒として用いるソルベントインク(溶剤インク)等のような、蒸発乾燥型のインクや、紫外線硬化型のインク(UVインク)や、溶剤添加UVインク(ソルベントUVインク、SUVインク)等のエネルギー線硬化型のインクなど各種のインクを用いることが可能であるが、樹脂製の基材2に対して好適に適用されるのは紫外線硬化型のインクであるため、印刷装置4で使用されるインクは、紫外線硬化型のインクであることが好ましい。また、印刷装置4で使用されるインクは、ラジカル重合型またはカチオン重合型の紫外線硬化型のインクであることがより好ましい。
【0027】
また、基材2がアクリル樹脂の場合、印刷装置4で使用されるインクは、アクリル系の単官能および多官能のモノマーまたはオリゴマーを用いたインクであることが好ましい。また、塗布装置3で塗布されるコーティング剤がアクリル系のコーティング剤である場合には、印刷装置4で使用されるインクは、多官能モノマーおよびオリゴマーの割合が高いインクであることがより好ましい。多官能モノマーおよびオリゴマーの割合が高いインクとしては、たとえば、株式会社ミマキエンジニアリング社製のLH-100、LUS-120といった紫外線硬化型のインクがある。
【0028】
切断装置6は、レーザ光によって基材2を切断するレーザカッターである。切断装置6は、たとえば、基材2に向かってレーザ光を射出するレーザ発光部と、基材2が載置されるテーブルと、上下方向(鉛直方向)に直交するとともに互いに直交する2方向へテーブルに対してレーザ発光部を相対的に移動させる移動機構とを備えている。また、切断装置6は、切断装置6を制御する制御部を備えている。この制御部は、PC7に電気的に接続されており、PC7からの制御指令に基づいて切断装置6を制御する。また、切断装置6は、基材2に印刷される後述の位置合わせ用マークMを検知するための光学式の検知機構(図示省略)を備えている。なお、切断装置6は、カッタ刃によって基材2を切断しても良い。この場合には、切断装置6は、レーザ発光部に代えて、カッタ刃を備えている。
【0029】
塗布装置3は、印刷装置4によって基材2に施された印刷を保護するために、少なくとも基材2に施された印刷の上にコーティング剤を塗布する。塗布装置3は、単色のコーティング剤を基材2に塗布する。本形態では、塗布装置3は、透明なコーティング剤を基材2に塗布する。また、塗布装置3は、紫外線硬化型のコーティング剤を基材2に塗布する。たとえば、塗布装置3は、ラジカル重合型またはカチオン重合型の紫外線硬化型のコーティング剤を基材2に塗布する。また、基材2がアクリル樹脂で形成されている場合には、塗布装置3は、アクリル系のコーティング剤を塗布する。塗布装置3のより具体的な構成については後述する。
【0030】
硬化装置5は、基材2に塗布されたコーティング剤に紫外線を照射する紫外線照射器を備えている。紫外線照射器は、コーティング剤が塗布された基材2に上側から紫外線を照射する。硬化装置5によって硬化させられたコーティング剤はコーティング層となる。すなわち、基材2に塗布されたコーティング剤に紫外線が照射されると、基材2にコーティング層が形成される。基材2に形成されるコーティング層の厚さは、10~40μmとなっている。本形態では、比較的硬度の高いコーティング層が基材2に形成される。
【0031】
1台の塗布装置3によって1枚の基材2にコーティング剤を塗布するときにかかる時間は、1台の印刷装置4によって1枚の基材2に印刷を行うときにかかる時間の半分以下となっている。そのため、本形態の製造システム1は、たとえば、
図1に示すように、2台の印刷装置4と1台の塗布装置3と1台の硬化装置5と1台の切断装置6とによって構成されており、2台の印刷装置4によって印刷が行われた基材2が1台の塗布装置3に供給される。すなわち、製造システム1において、塗布装置3の数は、印刷装置4の数よりも少なくなっている。
【0032】
(塗布装置の構成)
図2は、
図1に示す塗布装置3の構成を説明するための図である。
図3は、
図2に示すノズル13の構成を説明するための断面図である。
【0033】
塗布装置3は、基材2が載置されるテーブル12と、基材2に向かって下側にコーティング剤を噴射するノズル13と、ノズル13が取り付けられる塗布ヘッド14と、ノズル13および塗布ヘッド14が搭載されるキャリッジ15と、キャリッジ15を移動可能に保持するYバー16とを備えている。また、塗布装置3は、塗布装置3を制御する制御部を備えている。この制御部は、PC7に電気的に接続されており、PC7からの制御指令に基づいて塗布装置3を制御する。塗布装置3は、ノズル13からコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材2にコーティング剤を塗布する。以下の説明では、上下方向(
図2のZ方向)に直交する
図2のY方向を左右方向とし、上下方向と左右方向とに直交する
図2のX方向を前後方向とする。
【0034】
塗布ヘッド14は、キャリッジ15に対して上下方向への往復移動が可能となるようにキャリッジ15に保持されている。Yバー16は、左右方向に細長い略直方体状に形成されている。キャリッジ15は、Yバー16に対して左右方向への往復移動が可能となるようにYバー16に保持されている。ノズル13、塗布ヘッド14、キャリッジ15およびYバー16は、テーブル12の上側に配置されている。Yバー16は、テーブル12に対して前後方向へ相対移動可能となっている。
【0035】
塗布装置3は、キャリッジ15に対して塗布ヘッド14を昇降させる昇降機構20を備えている。また、塗布装置3は、Yバー16に対して左右方向にキャリッジ15を往復移動させる移動機構21と、テーブル12に対して前後方向にYバー16を往復移動させる移動機構22を備えている。すなわち、塗布装置3は、テーブル12に対して左右方向にキャリッジ15を相対的に往復移動させる移動機構21と、テーブル12に対して前後方向にキャリッジ15を相対的に往復移動させる移動機構22とを備えている。本形態の左右方向(Y方向)は、上下方向に直交する所定の方向である第1方向となっており、前後方向(X方向)は、上下方向と第1方向とに直交する方向である第2方向となっている。また、本形態の移動機構21は第1移動機構であり、移動機構22は第2移動機構である。
【0036】
また、塗布装置3は、テーブル12に載置される基材2の位置合わせを行うためのレーザポインタ(図示省略)を備えている。このレーザポインタは、キャリッジ15に搭載されている。昇降機構20は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力を塗布ヘッド14に伝達するためのボールねじ等の動力伝達機構とを備えている。移動機構21は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力をキャリッジ15に伝達するためのプーリおよびベルト等の動力伝達機構とを備えている。移動機構22は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力をYバー16に伝達するためのボールねじ等の動力伝達機構とを備えている。
【0037】
ノズル13は、コーティング剤と圧縮空気とを外部で混合して噴射する外部混合型の2流体ノズルである。
図3に示すように、ノズル13の内部には、コーティング剤の供給路13aと、圧縮空気の供給路13bとが形成されている。供給路13bは、たとえば、供給路13aを囲む環状に形成されている。供給路13bには、圧縮空気を供給するコンプレッサー等の圧縮空気供給源(図示省略)が接続されている。ノズル13は、塗布ヘッド14に着脱可能に取り付けられている。本形態では、ノズル13として、噴射口が円形状となっている丸型のノズル13や、噴射口が長円形状または楕円形状となっている平型のノズル13等の各種のノズルを使用することが可能になっている。
【0038】
テーブル12に載置される基材2の上面とノズル13の下端面との上下方向の距離(ギャップ)は、2~30mmに設定される。ただし、基材2の上面とノズル13の下端面との距離は、5~20mmに設定されることが好ましい。ノズル13は、停止しているキャリッジ15が移動を開始した後、キャリッジ15の移動速度(具体的には、左右方向の移動速度)が一定になると、コーティング剤の噴射を開始する。すなわち、ノズル13は、停止しているノズル13がキャリッジ15と一緒に移動を開始した後、ノズル13の移動速度が一定になると、コーティング剤の噴射を開始する。ノズル13に供給されるコーティング剤の粘度は、15~150mPaとなっている。
【0039】
基材2に形成されるコーティング層の厚さ(膜厚)を確保するために、ノズル13から噴射される単位時間当たりのコーティング剤の噴射量は、0.1ml/min以上となっている。ただし、ノズル13から噴射される単位時間当たりのコーティング剤の噴射量は、0.5ml/min以上となっていることが好ましく、1.0ml/min以上となっていることがより好ましい。また、コーティング剤のはみ出しを最小限に留めるために、ノズル13から噴射される単位時間当たりのコーティング剤の噴射量は、30ml/min以下となっている。ただし、ノズル13から噴射される単位時間当たりのコーティング剤の噴射量は、10ml/min以下となっていることが好ましく、5ml/min以下となっていることがより好ましい。
【0040】
塗布装置3では、コーティング剤を噴射するノズル13がキャリッジ15と一緒に移動機構21によってテーブル12に対して左右方向に1回移動すると、左右方向を長手方向とする直線状のコーティング剤である直線状コーティング剤CAが基材2に塗布される。直線状コーティング剤CAは、直前に塗布された直線状コーティング剤CAに対して、前後方向においてずれた位置に塗布される。本形態では、前後方向において一定間隔で塗布される複数の直線状コーティング剤CAによって基材2にコーティング層が形成される。直線状コーティング剤CAの前後方向の幅は、1mm~30mmとなっている。ただし、直線状コーティング剤CAの前後方向の幅は、5mm~20mmとなっていることが好ましい。
【0041】
なお、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量は、ノズル13へのコーティング剤の供給圧が一定であれば、ノズル13から噴射されるコーティング剤の粘度に応じて変動する。また、ノズル13から噴射されるコーティング剤の粘度は、ノズル13から噴射されるコーティング剤の温度に応じて変動する。すなわち、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量は、ノズル13へのコーティング剤の供給圧が一定であれば、ノズル13から噴射されるコーティング剤の温度に応じて変動する。本形態では、ノズル13から噴射されるコーティング剤の温度にかかわらず、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になるように、コーティング剤の温度を測定する温度センサの検知結果とPC7に予め記憶されたデータベースとに基づいて、ノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が制御されている。
【0042】
(画像データ、塗布データおよび切断データの作成方法)
図4は、
図2に示す塗布装置3でコーティング剤を塗布するときに、左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射位置と左右方向における基材2へのコーティング剤の塗布位置とに左右方向のずれが発生することを説明するための図である。
図5は、
図1に示すPC7が有するディスプレイ24の表示の一例を示す図である。
図6は、
図1に示す印刷装置4によって基材2に印刷された画像F等の一例を示す図である。
図7~
図9は、
図1に示すPC7での塗布データD2の作成方法を説明するための図である。
【0043】
PC7は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ24を備えている(
図5参照)。PC7には、印刷装置4で基材2に印刷される画像F(
図6参照)のデータである画像データD1を作成するための画像作成用のソフトウエアがインストールされている。また、PC7には、塗布装置3で基材2にコーティング剤を塗布するための塗布データD2(
図7(D)参照)と、切断装置6で基材2を切断するための切断データD3とを作成するための塗布切断用のソフトウエアがインストールされている。
【0044】
本形態では、塗布装置3および切断装置6において基材2を位置合わせするための位置合わせ用マークM(
図6参照)が印刷装置4で基材2に印刷される。位置合わせ用マークMのデータである位置合わせ用データD4は、塗布切断用のソフトウエアを用いて作成される。また、PC7には、印刷装置4を制御するためのソフトウエア(プリンタドライバ)と、塗布装置3を制御するためのソフトウエアと、切断装置6を制御するためのソフトウエアとがインストールされている。
【0045】
PC7には、基材2に塗布されるコーティング剤の種類と、基材2の材質と、ノズル13の種類と、基材2に形成されるコーティング層の厚さ(膜厚)と、テーブル12に載置される基材2の上面とノズル13の下端面との上下方向の距離とがデータベースとして予め記憶(登録)されており、PC7では、これらの情報を選択可能となっている。ユーザは、塗布切断用のソフトウエアを利用してディスプレイ24の表示を確認しながら、これらの情報を選択する。また、PC7には、基材2の厚さと、基材2へのコーティング剤の塗布範囲を拡大または縮小するためのコーティング用オフセット値とが入力可能となっている。ユーザは、塗布切断用のソフトウエアを利用してディスプレイ24の表示を確認しながら、基材2の厚さおよびコーティング用オフセット値を入力する。
【0046】
上述のように、ノズル13は、左右方向におけるノズル13の移動速度が一定になると、コーティング剤の噴射を開始しており、一定速度で左右方向に移動するノズル13からコーティング剤が噴射される。そのため、
図4に示すように、左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射位置と左右方向における基材2へのコーティング剤の塗布位置とに左右方向のずれΔYが生じる。PC7には、左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射位置と左右方向における基材2へのコーティング剤の塗布位置との左右方向のずれΔYを補正するための塗布ずれ補正値が入力可能となっている。ユーザは、塗布切断用のソフトウエアを利用してディスプレイ24の表示を確認しながら、塗布ずれ補正値を入力する。なお、ずれΔYは、塗布装置3において、予め、基材2に対してコーティング剤のテスト塗布を行うことで測定されている。また、塗布ずれ補正値は、たとえば、ずれΔYの半分の値である。
【0047】
ユーザは、PC7において、画像作成用のソフトウエアを利用してディスプレイ24の表示を確認しながら、画像データD1を作成し、作成した画像データD1を、塗布切断用のソフトウエア上に読み込む。塗布データD2および切断データD3は、画像データD1に基づいて、塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。すなわち、PC7は、画像データD1に基づいて塗布データD2および切断データD3を作成する。また、位置合わせ用データD4は、切断データD3等に基づいて、塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。ただし、ユーザが、画像作成用のソフトウエアまたは塗布切断用のソフトウエアを利用してディスプレイ24の表示を確認しながら、位置合わせ用データD4を作成しても良い。
【0048】
また、PC7は、画像データD1および位置合わせ用データD4に基づいて、印刷装置4で基材2に印刷を行うための印刷データを作成する。印刷データは、たとえば、塗布切断用のソフトウエア上でユーザが所定の操作を行うと自動的に作成される。また、たとえば、塗布切断用のソフトウエア上でユーザが所定の操作を行うと、印刷データがPC7から印刷装置4に転送され、印刷装置4は、
図6に示すように、画像Fおよび位置合わせ用マークMを基材2に印刷する。本形態の位置合わせ用マークMは、白抜きの丸である。位置合わせ用マークMは、画像Fを囲むように4箇所に印刷されており、画像Fの周方向において4個の位置合わせ用マークMを順次直線で結ぶと、長方形の枠が形成される。
【0049】
切断データD3は、
図5に示すように、画像データD1を囲む枠状のデータである。切断データD3は、塗布切断用のソフトウエア上でユーザが所定の切断用オフセット値を入力すると、画像データD1に基づいて、塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。また、切断データD3と一緒に、基材2へのコーティング剤の塗布範囲を仮設定するための塗布範囲仮設定用データD5が塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。本形態の塗布範囲仮設定用データD5は、切断データD3と同じデータであり、塗布切断用のソフトウエア上でユーザが切断用オフセット値を入力すると、画像データD1に基づいて、塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。なお、
図7~
図9では、塗布範囲仮設定用データD5の外形を簡略な形状としている。
【0050】
塗布データD2は、塗布範囲仮設定用データD5と、予め選択されたコーティング剤の種類、基材2の材質、ノズル13の種類、基材2に形成されるコーティング層の厚さ、および、テーブル12に載置される基材2の上面とノズル13の下端面との上下方向の距離と、予め入力された基材2の厚さ、コーティング用オフセット値、および、塗布ずれ補正値とに基づいて、塗布切断用のソフトウエア上で自動的に作成される。
【0051】
すなわち、PC7は、塗布範囲仮設定用データD5と、予め選択されたコーティング剤の種類、基材2の材質、ノズル13の種類、基材2に形成されるコーティング層の厚さ、および、テーブル12に載置される基材2の上面とノズル13の下端面との上下方向の距離と、予め入力された基材2の厚さ、コーティング用オフセット値、および、塗布ずれ補正値とに基づいて、塗布データD2を作成する。また、上述のように、塗布範囲仮設定用データD5は切断データD3と同じデータであるため、PC7は、切断データD3に基づいて、塗布データD2を作成する。
【0052】
具体的には、PC7は、まず、塗布範囲仮設定用データD5とコーティング用オフセット値とに基づいて、基材2へのコーティング剤の塗布範囲を設定するための塗布範囲設定用データD6を作成する(
図7(A)、
図8(A)、
図9(A)参照)。本形態では、基材2に印刷された画像Fをコーティング剤で確実に保護するため、PC7は、基材2へのコーティング剤の塗布範囲が塗布範囲仮設定用データD5において仮設定された塗布範囲よりもコーティング用オフセット値の分だけ広がるように塗布範囲設定用データD6を作成する。
【0053】
たとえば、塗布範囲仮設定用データD5の外形が
図7(A)、
図9(A)に示すような形状(斜線で示す部分の形状)である場合には、塗布範囲設定用データD6は、塗布範囲仮設定用データD5を囲む枠状のデータとなる。また、たとえば、
図8(A)に示すように、塗布範囲仮設定用データD5の外形が円環状になっている場合には、塗布範囲設定用データD6は、塗布範囲仮設定用データD5よりも外径が大きく、かつ、内径の小さい円環状のデータとなる。なお、コーティング用オフセット値は、たとえば、直線状コーティング剤CAの塗布間隔の半分の値となっている。
【0054】
その後、PC7は、PC7で予め選択された上述の各種の情報やPC7に予め入力された基材2の厚さ等に基づいて特定される所定の間隔で、塗布範囲設定用データD6によって特定される領域に直線状の複数のラインデータ(ハッチングライン)D7を作成する(
図7(B)、
図8(B)、
図9(B)参照)。ラインデータD7は、直線状コーティング剤CAに対応するデータである。ラインデータD7の間隔は、前後方向における直線状コーティング剤CAの塗布間隔に対応する。ラインデータD7の間隔は、PC7で予め選択された各種の情報やPC7に予め入力された基材2の厚さ等に基づいて特定される直線状コーティング剤CAの前後方向の幅等に応じて決定される。
【0055】
その後、PC7は、ノズル13の移動量を最小にするために、ラインデータD7の軌跡を最適化する(
図7(C)参照)。具体的には、ノズル13の移動量が最小になるように、ラインデータD7を最適なベクトルデータとする。より具体的には、ラインデータD7の長手方向に直交する方向において隣り合うラインデータD7のベクトルの向きが互いに逆向きになるように、ラインデータD7をベクトルデータ化する。その後、PC7は、予めPC7に入力された塗布ずれ補正値に応じた量だけラインデータD7の長手方向へラインデータD7を移動させる(
図7(D)参照)。具体的には、ベクトルデータとなっているラインデータD7をベクトルの向きと反対側へ移動させる。
【0056】
ラインデータD7を移動させると、塗布データD2の作成が終了する。塗布データD2は、移動後の複数のラインデータD7によって構成されている。このように作成された塗布データD2には、基材2に直線状コーティング剤CAを塗布するための左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射範囲のデータと、前後方向における直線状コーティング剤CAの塗布間隔のデータとが含まれている。
【0057】
(製造システムでの製品の製造方法)
製造システム1では、上述のように、たとえば、塗布切断用のソフトウエア上でユーザが所定の操作を行って、印刷データがPC7から印刷装置4に転送されると、印刷装置4は、画像Fおよび位置合わせ用マークMを基材2に印刷する。その後、ユーザは、画像Fおよび位置合わせ用マークMが印刷された基材2を塗布装置3まで運んでテーブル12に載置する。その後、キャリッジ15に搭載されるレーザポインタの光が位置合わせ用マークMに照射される位置までキャリッジ15を移動させて、レーザポインタの光が位置合わせ用マークMに照射される位置を塗布装置3の制御部に認識させることで、テーブル12に載置された基材2の位置を塗布装置3の制御部に認識させて、テーブル12に載置される基材2を位置合わせする。本形態では、1個、2個または3個の位置合わせ用マークMにレーザポインタの光が照射される位置を塗布装置3の制御部に認識させる。
【0058】
その後、ユーザは、塗布切断用のソフトウエア上で所定の操作を行って、塗布データD2をPC7から塗布装置3に転送する。塗布データD2が塗布装置3に転送されると、塗布装置3は、塗布データD2に基づいて基材2にコーティング剤を塗布する。その後、ユーザは、コーティング剤が塗布された基材2を硬化装置5まで運んで硬化装置5にセットし、基材2に塗布されたコーティング剤を硬化装置5で硬化させる。
【0059】
その後、ユーザは、コーティング剤が硬化した基材2を切断装置6まで運んで切断装置6のテーブルに載置する。その後、切断装置6の検知機構に位置合わせ用マークMを検知させることで、テーブルに載置された基材2の位置を切断装置6の制御部に認識させて、切断装置6のテーブルに載置される基材2を位置合わせする。その後、ユーザは、塗布切断用のソフトウエア上で所定の操作を行って、切断データD3をPC7から切断装置6に転送する。切断データD3が切断装置6に転送されると、切断装置6は、切断データD3に基づいて基材2を所定形状に切断する。
【0060】
なお、塗布装置3において、切断装置6の検知機構と同様の検知機構を用いて、テーブル12に載置される基材2の位置合わせを行っても良い。また、切断装置6において、塗布装置3のレーザポインタと同様のレーザポインタを用いて、切断装置6のテーブルに載置される基材2の位置合わせを行っても良い。
【0061】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、PC7は、画像データD1に基づいて塗布データD2を自動で作成している。そのため、本形態では、ユーザは塗布データD2を作成する必要がない。したがって、本形態では、製造システム1で製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能になる。また、本形態では、PC7は、画像データD1に基づいて切断データD3を自動で作成しており、ユーザは切断データD3を作成する必要がない。したがって、本形態では、コーティング剤が硬化した後の基材2が切断装置6で切断される場合であっても、製造システム1で製品を製造するためのデータの、ユーザによる作成作業を簡素化することが可能になる。
【0062】
本形態では、基材2の厚さによって基材2とノズル13との距離が変動するため、基材2の厚さが変わると直線状コーティング剤CAの前後方向の幅が変動して前後方向における直線状コーティング剤CAの適切な塗布間隔が変動することがあるが、本形態のPC7は、PC7に入力された基材2の厚さと画像データD1とに基づいて塗布データD2を作成している。そのため、本形態では、基材2の厚さが変わっても、PC7において適切な塗布データD2を作成することが可能になる。
【0063】
本形態では、ノズル13の種類によって直線状コーティング剤CAの前後方向の幅が変動して前後方向における直線状コーティング剤CAの適切な塗布間隔が変動することがあるが、本形態のPC7は、選択されたノズル13の種類と画像データD1とに基づいて塗布データD2を作成している。そのため、本形態では、ノズル13の種類が変わっても、PC7において適切な塗布データD2を作成することが可能になる。
【0064】
本形態では、左右方向におけるキャリッジ15の移動速度が一定になったときにノズル13がコーティング剤の噴射を開始している。そのため、本形態では、左右方向における直線状コーティング剤CAの塗布厚のばらつきを抑制することが可能になる。また、本形態では、ノズル13が左右方向に移動しながらコーティング剤を噴射しているため、上述のように、左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射位置と左右方向における基材2へのコーティング剤の塗布位置とがずれるが、本形態のPC7は、左右方向におけるノズル13からのコーティング剤の噴射位置と左右方向における基材2へのコーティング剤の塗布位置とのずれを補正するための塗布ずれ補正値と画像データD1とに基づいて塗布データD2を作成している。そのため、本形態では、左右方向における直線状コーティング剤CAの塗布位置のずれを抑制することが可能になる。
【0065】
本形態では、印刷装置4は、位置合わせ用マークMを基材2に印刷している。そのため、本形態では、印刷装置4と塗布装置3と切断装置6とが別々の装置となっていても、位置合わせ用マークMを用いて、塗布装置3および切断装置6において基材2を位置合わせすることが可能になる。したがって、本形態では、基材2の、印刷が行われた部分と、基材2の、コーティング剤が塗布される部分と、基材2の、切断が行われる部分とのずれを抑制することが可能になる。
【0066】
本形態では、PC7は、切断データD3と同じデータである塗布範囲仮設定用データD5に基づいて塗布データD2を作成している。そのため、本形態では、PC7でのデータの作成処理を簡素化することが可能になる。
【0067】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0068】
上述した形態において、製造システム1は、1台の塗布装置3と1台の印刷装置4とを備えていても良い。すなわち、製造システム1が有する塗布装置3の数と印刷装置4の数とが等しくなっていても良い。また、上述した形態において、塗布装置3のキャリッジ15に、基材2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッドが搭載されていても良い。すなわち、基材2にコーティング剤を塗布する塗布機構と基材2に印刷を行う印刷機構とが同じ装置に設けられていて、塗布機構と印刷機構とが別々の装置になっていなくても良い。この場合には、印刷装置4が不要になる。
【0069】
また、上述した形態において、基材2に塗布されたコーティング剤に紫外線を照射する紫外線照射器がキャリッジ15に搭載されていても良い。この場合には、硬化装置5が不要になる。さらに、上述した形態において、基材2に向かってレーザ光を射出するレーザ発光部がキャリッジ15に搭載されていても良い。この場合には、切断装置6が不要になる。また、上述した形態において、コーティング剤が硬化した後の基材2を所定形状に切断する必要がない場合には、製造システム1は、切断装置6を備えていなくても良い。
【0070】
上述した形態において、塗布装置3は、印刷装置4で印刷が行われる前の基材2にコーティング剤を塗布しても良い。すなわち、印刷装置4は、基材2に形成されたコーティング層の上に印刷を行っても良い。この場合には、製造システム1で製造される製品は、たとえば、Tシャツ等の衣類であっても良い。この場合には、基材2は、布帛によって形成されている。また、この場合には、コーティング剤が硬化した後の基材2が切断されないため、製造システム1は切断装置6を備えていない。したがって、PC7は、切断データD3を作成しない。
【0071】
また、この場合には、たとえば、塗布装置3は、白色のコーティング剤を基材2に塗布する。この場合には、印刷装置4で印刷される画像Fから白色のコーティング層がはみ出さないように、塗布範囲仮設定用データD5の外形は、画像データD1の外形よりも小さくなる。また、塗布範囲設定用データD6の外形は、たとえば、塗布範囲仮設定用データD5の外形よりも小さくなる。すなわち、コーティング用オフセット値は、基材2へのコーティング剤の塗布範囲を縮小するためにマイナスの値になる。
【0072】
上述した形態において、キャリッジ15に2個以上のノズル13が搭載されていても良い。この場合には、2個以上のノズル13は、前後方向に配列されている。また、上述した形態において、塗布装置3は、熱硬化型のコーティング剤を基材2に塗布しても良い。この場合には、硬化装置5は、基材2に塗布されたコーティング剤を加熱する加熱機構を備えている。
【0073】
上述した形態において、ノズル13は、コーティング剤と圧縮空気とを内部で混合して噴射する内部混合型の2流体ノズルであっても良い。ただし、上述した形態のように、ノズル13が外部混合型の2流体ノズルである場合には、ノズル13から噴射されるコーティング剤の飛散を抑制しやすくなるため、基材2の、意図した位置に一定量のコーティング剤を塗布することが可能になる。また、上述した形態において、ノズル13は、コーティング剤のみを噴射する1流体ノズルであっても良い。ただし、ノズル13が2流体ノズルである場合には、比較的厚さの薄いコーティング層を基材2に形成することが可能になる。
【0074】
上述した形態において、前後方向が第1方向となっており、左右方向が第2方向となっていても良い。この場合には、移動機構21が第2移動機構となり、移動機構22が第1移動機構となる。また、上述した形態において、製造システム1で使用される基材2の種類は1種類であっても良い。また、上述した形態において、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類は1種類であっても良いし、塗布装置3で使用されるノズル13の種類は1種類であっても良い。
【0075】
上述した形態において、移動機構22は、Yバー16に対してテーブル12を前後方向に往復移動させても良い。また、上述した形態において、画像データD1は、PC7とは別のパーソナルコンピュータで作成されて、PC7に読み込まれても良い。さらに、上述した形態において、印刷装置4は、インクジェットプリンタ以外の印刷装置であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 製造システム
2 基材
3 塗布装置(塗布機構)
4 印刷装置(印刷機構)
6 切断装置(切断機構)
7 PC(上位制御装置)
12 テーブル
13 ノズル
15 キャリッジ
21 移動機構(第1移動機構)
22 移動機構(第2移動機構)
D1 画像データ
D2 塗布データ
D3 切断データ
M 位置合わせ用マーク
X 第2方向
Y 第1方向
Z 上下方向