(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165526
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】渦流探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20210101AFI20221025BHJP
【FI】
G01N27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070891
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】517166756
【氏名又は名称】テックス理研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小西 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 達也
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA12
2G053BA13
2G053BB03
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA17
2G053CB10
2G053DA02
2G053DA09
2G053DA10
2G053DB01
(57)【要約】
【課題】 渦流探傷装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号を除去する渦流探傷装置を提供する。
【解決手段】 被検査体3に対して同軸かつ離間して配置された一対の検出コイル10a、10bと、これら検出コイル10a、10bが生じる磁界が逆位相となるように各検出コイルによりブリッジの2辺が構成されたブリッジ回路とを具備し、一対の検出コイル10a、10bを挟むように、第1の励磁コイル11と第2励磁コイル12を各検出コイル10a、10bと同軸に配置し、検出コイル10a、10bとその隣に配置される第2励磁コイル12との間の距離Dを、第2励磁コイル12で励磁し隣に位置する検出コイル10a、10bで検出される振動ノイズ信号と第1励磁コイル11で励磁し検出コイル10a、10bで検出される振動ノイズ信号との位相を逆位相になる距離に設定した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に対して非接触且つ同軸に離間して配置された一対の検出コイルと、これら検出コイルが生じる磁界が逆位相となるように各検出コイルによりブリッジの2辺が構成されたブリッジ回路とを具備した渦流探傷装置であって、
励磁磁場を発生させて前記被検査体の表層部に渦電流を発生させる第1の励磁コイルと、
前記一対の検出コイルを挟むように、前記各検出コイルと同軸に配置される一対のコイル部で構成され、励磁磁場を発生させて被検査体の表層部に渦電流を発生させる第2の励磁コイルとを備え、
前記検出コイルとその隣側に配置される前記第2の励磁コイルのコイル部との間の距離を、前記第2の励磁コイルで励磁し隣に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が変化する距離に設定した、渦流探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の渦流探傷装置であって、
前記第1の励磁コイルは、前記一対の検出コイルを挟むように、前記各検出コイルと同軸に配置される一対のコイル部で構成され、前記第1の励磁コイルのコイル部は、前記検出コイルと前記第2の励磁コイルの各コイル部との間に配置される、渦流探傷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の渦流探傷装置であって、
前記第1の励磁コイルは、前記検出コイルと同心状に、前記検出コイルの外周側に配置される、渦流探傷装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の渦流探傷装置であって、
前記検出コイルとその隣側に配置される前記第2の励磁コイルとの間の距離を、前記第2の励磁コイルで励磁し隣側に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が逆位相になる距離に設定した、渦流探傷装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の渦流探傷装置であって、
前記第2の励磁コイルに交流電力を与え、前記第2の励磁コイルで励磁し隣側に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第1の励磁コイルに交流電力を与え、前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が逆位相になるように、前記第2の励磁コイルに与える交流電力の位相を変換して前記第2の励磁コイルに与える、渦流探傷装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の渦流探傷装置であって、
発振器と、前記発振器からの交流出力を増幅する第1電力増幅器と、前記発振器からの交流出力の位相を変換する第2の励磁用位相変換器と、前記第2の励磁用位相変換器からの交流出力を増幅する第2電力増幅器と、を備え、
前記第1の励磁コイルに前記電力増幅器から交流電力を与え、前記第2の励磁コイルに前記励磁用電力増幅器から交流電力を与える、渦流探傷装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の渦流探傷装置であって、
前記被検査体は、金属製丸棒材又は金属製丸パイプ材であり、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルは貫通コイルであり、前記丸棒材の外径と前記検出コイル及び前記第2の励磁コイルの内径との差に基づいて、前記検出コイルと前記第2の励磁コイルとの間の距離が設定される、渦流探傷装置。
【請求項8】
請求項1~6に記載の渦流探傷装置であって、
前記被検査体は、金属製丸パイプ材又は金属製丸棒材であり、
前記被検査体に対して近接して配置され、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルとを有する渦流探傷プローブを備え、
前記渦流探傷プローブは、円筒状又は半円筒状に形成されている、渦流探傷装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の渦流探傷装置であって、
前記被検査体は、金属製角パイプ材又は金属製角棒材であり、
前記検査体に対して近接して配置され、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルとを有する渦流探傷プローブを備え、
前記渦流探傷プローブは、被検査体を囲むように形成された矩形のパイプ形状又は被検査体の表面に離間して配置される矩形板形状に形成されている、渦流探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流探傷装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、励磁磁場を発生させて被検査体の表層部に渦電流を発生させる励磁コイルと、差動接続される一対の検出コイルと、前記検出コイルのインピーダンス変化による信号を処理する信号処理部とを備え、前記信号に基づいて前記被検査体の欠陥等を検査する相互誘導型渦流探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦流探傷装置は、被検査体の表面に渦電流を誘起し、この渦電流が作る反作用磁場の変化を検出することで、傷などの欠陥の有無を検知する表面検査技術として用いられている。なお、渦流探傷装置は、励磁コイルと検出コイルを1つのコイルで構成する自己比較型と、それぞれ別々のコイルで構成する相互誘導型とがある。これら渦流探傷装置は、S/N比を向上させることが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被検査体としての導体と非接触且つ同軸に一対の検出コイルが配置され、前記一対の検出コイルの間に、生じる磁界が互いに同相となるように一対の共振コイルを前記各検出コイルと同軸に配置し、共振コイルに容量回路を設けた渦流探傷装置が開示されている。
【0004】
上記した特許文献1に記載した渦流探傷装置においては、導体内部に傷や異物がない場合には、共振コイルに流れる誘導電流は相殺されるので、変化はない。これに対して、上記した装置においては、導体内部に傷や異物がある場合には、各検出コイルが生じる磁界に偏りが生じるため、各共振コイルが生じる誘導電流値に差が生じ、この差分の電流が流れて共振コイルが共振する。これにより、上記した装置は、S/N比を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1においては、渦流探傷装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号が発生した場合には、そのノイズ信号により、S/N比が低下するという問題があった。
【0007】
また、上記した特許文献1においては、共振コイルにも出力を増幅するための増幅回路がそれぞれ必要となり、装置が複雑になるという難点もあった。
【0008】
本発明の課題は、装置を複雑化することなく、検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号を除去することができる渦流探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被検査体に対して非接触且つ同軸に離間して配置された一対の検出コイルと、これら検出コイルが生じる磁界が逆位相となるように各検出コイルによりブリッジの2辺が構成されたブリッジ回路とを具備した渦流探傷装置であって、励磁磁場を発生させて前記被検査体の表層部に渦電流を発生させる第1の励磁コイルと、前記一対の検出コイルを挟むように、前記各検出コイルと同軸に配置される一対のコイル部で構成され、励磁磁場を発生させて被検査体の表層部に渦電流を発生させる第2の励磁コイルとを備え、前記検出コイルとその隣側に配置される前記第2の励磁コイルのコイル部との間の距離を、前記第2の励磁コイルで励磁し隣に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が変化する距離に設定した。
【0010】
本発明は、上記のように構成することにより、前記第1の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第2の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号と位相とを変化させることができる。この結果、互いのノイズ信号が重畳することにより、ノイズ信号を減少させることが可能となり、S/N比が向上する。
【0011】
また、本発明は、前記第1の励磁コイルは、前記一対の検出コイルを挟むように、前記各検出コイルと同軸に配置される一対のコイル部で構成され、前記第1の励磁コイルのコイル部は、前記検出コイルと前記第2の励磁コイルの各コイル部との間に配置されるように構成できる。
【0012】
また、本発明は、前記第1の励磁コイルは、前記検出コイルと同心状に、前記検出コイルの外周側に配置されるように構成できる。
【0013】
また、本発明は、記検出コイルとその隣側に配置される前記第2の励磁コイルとの間の距離を、前記第2の励磁コイルで励磁し隣側に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が逆位相になる距離に設定することが好ましい。
【0014】
本発明は、上記のように構成することにより、前記第1の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第2の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号とが逆位相となる。この結果、互いのノイズ信号が重畳することにより、ノイズ信号を相殺することが可能となり、S/N比が向上する。
【0015】
また、本発明は、前記第2の励磁コイルに交流電力を与え、前記第2の励磁コイルで励磁し隣側に位置する前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第1の励磁コイルに交流電力を与え、前記第1の励磁コイルで励磁し前記検出コイルで検出される偏心又は振動によるノイズ信号との位相が逆位相になるように、前記第2の励磁コイルに与える交流電力の位相を変換して前記第2の励磁コイルに与えるように構成することが好ましい。
【0016】
本発明は、上記のように、前記第2の励磁コイルに与える交流電力の位相を変換して前記第2の励磁コイルに与えるように構成することにより、前記第1の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号と、前記第2の励磁コイルによる励磁磁場から得られる検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号とが逆位相となる。この結果、互いのノイズ信号が重畳することにより、ノイズ信号を相殺することが可能となり、S/N比が向上する。
【0017】
また、本発明は、発振器と、前記発振器からの交流出力を増幅する第1電力増幅器と、前記発振器からの交流出力の位相を変換する第2の励磁用位相変換器と、前記第2の励磁用位相変換器からの交流出力を増幅する第2電力増幅器と、を備え、前記第1の励磁コイルに前記電力増幅器から交流電力を与え、前記第2の励磁コイルに前記励磁用電力増幅器から交流電力を与えるように構成することができる。
【0018】
また、前記被検査体は、金属製丸棒材又は金属製丸パイプ材であり、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルは貫通コイルであり、前記丸棒材の外径と前記検出コイル及び前記第2の励磁コイルの内径との差に基づいて、前記検出コイルと前記第2の励磁コイルとの間の前記距離を設定すればよい。
【0019】
また、本発明は、前記被検査体は、金属製丸パイプ材又は金属製丸棒材であり、前記被検査体に対して近接して配置され、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルとを有する渦流探傷プローブを備え、前記渦流探傷プローブは、円筒状又は半円筒状に形成されているように構成することができる。
【0020】
また、本発明は、前記被検査体は、金属製角パイプ材又は金属製角棒材であり、前記検査体に対して近接して配置され、前記検出コイルと前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルとを有する渦流探傷プローブを備え、前記渦流探傷プローブは、被検査体を囲むように形成された矩形のパイプ形状又は被検査体の表面に離間して配置される矩形板形状に形成されているように構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検査装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号を除去することができ、S/N比を向上させたる渦流探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷装置及び被検査体の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷装置の構成を示す概略回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷装置を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る渦流探傷装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズ信号の除去を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置及び被検査体の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置の構成を示す概略回路図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る第3実施形態に係る渦流探傷装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る渦流探傷装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る渦流探傷装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0024】
図1に示すように、本発明の被検査体3は、例えば、金属製丸パイプ材、金属製丸棒材等の導体である。この被検査体3に対して渦流探傷プローブ1が近接して配置され、被検査体3に発生した渦電流の変化を検出して探傷検査が行なわれる。渦流探傷プローブ1は、渦流探傷にて、被検査体3の傷や減肉などを検出する。以下においては、傷や減肉などを総称して欠陥という。
【0025】
本発明の第1実施形態にかかる渦流探傷装置に用いられる渦流探傷プローブ1は、円筒状又は半円筒状に形成され、内部に一対の検出コイル10a、10bと、励磁磁場を発生させて被検査体3の表層部に渦電流を発生させる第1の励磁コイル11と、第2の励磁コイル12とを備える。第2の励磁コイル12は、一対の検出コイル10a、10bを挟むように、各検出コイル10a、10bと同軸に配置される一対のコイル部12a、12bで構成されている。本発明の第1実施形態にかかる渦流探傷プローブ1は、相互誘導型渦流探傷装置に用いられるプローブである。第1の励磁コイル11は、相互誘導用励磁コイルとして用いられる。第2の励磁コイル12は、ノイズキャンセル用励磁コイルとして用いられる。
【0026】
この第1実施形態においては、一対の検出コイル10a、10b、第1の励磁コイル11、第2の励磁コイル12は、貫通コイルで構成されている。
【0027】
第1の励磁コイル11は、一対の検出コイルを10a、10bを挟むように、同軸に配置された一対のコイル部11a、11bで構成されている。第1の励磁コイル11のコイル部11aは、検出コイル10aと第2の励磁コイル12のコイル部12aとの間に配置され、第1の励磁コイル11のコイル部11bは、検出コイル10bと第2の励磁コイル12のコイル部12bとの間に配置される。
【0028】
第1の励磁コイル11を構成する一対のコイル部11a、11bに交流電流を与え、励磁磁場を発生させることにより、被検査体3の表層部に渦電流が発生する。第2の励磁コイル12を構成する一対のコイル部12a、12bに交流電流を与え、励磁磁場を発生させることにより、被検査体3の表層部に渦電流が発生する。
【0029】
一対の検出コイル10a、10bは、差動接続される。差動接続されている一対の検出コイル10a、10bは、ブリッジ回路に接続されている。一対の検出コイル10a、10bは、被検査体3に発生した渦電流の変化を検出する。一対の検出コイル10a、10bに発生する電圧が異なると、ブリッジ回路から欠陥を検知したことを示す信号が出力される。
【0030】
検出コイル10a、10bと第1の励磁コイル11を構成する一対のコイル部11a、11bと第2の励磁コイル12を構成する一対のコイル部12a、12bは、被検査体3に対して非接触且つ同軸に離間して配置されている。渦流探傷プローブ1と被検査体3とは相対的に移動する。すなわち、渦流探傷装置100は、被検査体3に対して渦流探傷プローブ1が移動し、被検査体3を検査する場合と、固定された渦流探傷プローブ1に対して被検査体3が移動する場合がある。本実施形態の渦流探傷装置100は、被検査体3に対して渦流探傷プローブ1が図中矢印方向に移動し、被検査体3の表面等の状態を検査し、欠陥の有無を検出する。
【0031】
本実施形態においては、被検査体3は金属製丸パイプ材又は金属製丸棒材である。
【0032】
本実施形態においては、検出コイル10a、10bとその隣にそれぞれ配置される第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bとの間は、距離Dを開けて配置されている。
図1に示すように、第2の励磁コイル12のコイル部12aと検出コイル10aとの間、第2の励磁コイル12のコイル部12bと検出コイル10bとの間は、それぞれ距離Dを隔てて配置されている。この距離Dについては、後述する。
【0033】
次に、
図2に従い本実施形態の回路構成の概略について説明する。
図2は、本発明に係る渦流探傷装置の検出コイル部分の構成を示す概略回路図である。
【0034】
図2に示すように、ブリッジ回路24は、検出コイル10a、10bと抵抗13a、13bとからなり、検出コイル10a、10bは、ブリッジ回路24の二辺として結線され、抵抗13a、13bはブリッジ回路24の他の2辺として結線される。
【0035】
検出コイル10a、10bを挟むように、一対のコイル部11a、11bで構成された第1の励磁コイル11が設けられている。本実施形態は、第1の励磁コイル11により、励磁し、検出コイル10a、10bで検出する相互誘導型渦流探傷装置である。
【0036】
相互誘導型渦流探傷装置は、励磁コイルによる励磁電圧を増加させることができる。すなわち、自己誘導型においては、ブリッジ回路との関係からコイルの大きさに制約がある。これに対して、相互誘導型においては、かかる制約はないので、コイルの大きさに自由度が得られ、励磁電圧を増加させることが容易である。励磁電圧を大きくすることで、検出信号を大きくすることができる。例えば、検出コイルと被検査体との間のクリアランスが大きい場合、すなわち、充電率が低い場合には、励磁電圧を大きくすることで検出信号が大きくでき、検出精度の向上を図ることができる。
【0037】
交流電源30(
図3においては、発振器21と第1電力増幅器22)からの交流出力は、第1の励磁コイル11のコイル部11a、11bに与えられ、コイル部11a、11bが励磁される。このコイル部11a、11bからの励磁により、被検査体3の表層部が励磁され、渦電流が発生する。検出コイル10a、10bは、渦電流により生成される磁束の変化にともなうインピーダンス変化を検出部31(
図3においては、位相検波器27など)で検出する。
【0038】
検出コイル10a、10bは、生じる磁界が互いに逆相となるように、差動接続されている。本実施形態においては、第1の励磁コイル11により、被検査体3を励磁し、検出コイル10a、10bは、渦電流により生成される磁束の変化に伴うインピーダンスの変化を検出する。
【0039】
図2に示すように、検出コイル10a、10bを挟むように、一対のコイル部12a、12bからなる第2の励磁コイル12が設けられている。交流電源30(
図3においては、発振器21と第2電力増幅器23)からの交流出力は、第2の励磁コイル12を構成するコイル部12a、12bに与えられ、コイル部12a、12bが励磁される。このコイル部12a、12bからの励磁により、被検査体3の表層部が励磁され、渦電流が発生する。この第2の励磁コイル12は、ノイズキャンセル用励磁コイルとして用いられる。
【0040】
コイル部12aは、生じる磁界が第1の励磁コイル11のコイル部11aと同相となるようにコイルが巻回されている。コイル部12bは、生じる磁界が第1の励磁コイル11のコイル部11bと同相となるように、コイルが巻回されている。
【0041】
検出コイル10aは、コイル部12aによる被検査体3からの渦電流により生成される磁束の変化に伴うインピーダンスの変化も検出する。
【0042】
検出コイル10bは、コイル部12bによる被検査体3からの渦電流により生成される磁束の変化に伴うインピーダンスの変化も検出する。
【0043】
このように、検出コイル10aは、第1の励磁コイル11のコイル部11aの励磁と第2の励磁コイル12のコイル部12aの励磁に基づく合成インピーダンスの変化を検出する。また、検出コイル10bは、第1の励磁コイル11のコイル部11bの励磁と第2の励磁コイル12のコイル部12bの励磁に基づく合成インピーダンスの変化を検出する。そして、被検査体3に異常がない場合には、このブリッジ回路24の出力信号がゼロバランスになるように設定されている。
【0044】
図2の端子A、B間の出力が検出部31から出力され、この出力信号に基づいて、被検査体3の検査を行うことができる。
【0045】
次に、本発明の第1実施形態に係る渦流探傷装置について、
図3のブロック図に従い更に説明する。
【0046】
図3に示すように、渦流探傷装置100は、発振器21、第1電力増幅器22、第2電力増幅器23、ブリッジ回路24、検出用位相変換器26、増幅器25、位相検波器27を備える。
【0047】
ブリッジ回路24は、
図2に示すように、渦流探傷プローブ1の検出コイル10a、10bと抵抗13a、13bにより構成される。
【0048】
発振器21からの交流出力は、第1電力増幅器22で増幅され、第1の励磁コイル11のコイル部(相互誘導用励磁コイル部)11a、11bに与えられる。また、発振器21からの交流出力は、第2電力増幅器23で増幅され、第2の励磁コイル12のコイル部(ノイズキャンセル用コイル部)12a、12bに与えられる。
【0049】
第1の励磁コイル11のコイル部11a、第2の励磁コイル12のコイル部12a、第1の励磁コイル11のコイル部11b、第2の励磁コイル12のコイル部12bにそれぞれ加えられた交流出力により、被検査体3が励磁される。そして、検出コイル10a、10bは、渦電流により生成される磁束の変化に伴うインピーダンス変化を検出する。
【0050】
ブリッジ回路24から出力される検出コイル10a、10b間の不平衡出力が増幅器25で増幅され、位相検波器27に送られる。発振器21からの交流出力が検出用位相変換器26に与えられる。この検出用位相変換器26の出力は位相検波器27に与えられる。
【0051】
検出用位相変換器26は、発振器21からの信号を励磁信号と同じ位相の信号と、励磁信号に対して90度位相のずれた信号に変換し、位相検波器27に与える。
【0052】
増幅器25で増幅された不平衡出力と検出用位相変換器26の出力が位相検波器27に与えられ、検出コイル10a、10bの出力は検出用位相変換器26の出力とあいまって検波される。
【0053】
位相検波器27は、励磁信号と同じ位相の信号によって不平衡出力を同期検波してX軸の渦電流信号を出力するとともに、励磁信号に対して90度位相のずれた信号によって不平衡出力を同期検波してY軸の渦電流信号を出力する。そして、検波されたX軸およびY軸の渦電流信号をフィルタ(図示しない)やA/D変換器(図示しない)を介して信号処理装置28に取り込み、測定結果等を表示器などの出力部29に表示する。信号処理装置28としては、例えば、渦流探傷装置100に接続されたパーソナルコンピューター(PC)で構成される。
【0054】
本実施形態においては、検出コイル10a、10bからの出力値に基づいての被検査体3の損傷等を検出する。
【0055】
ところで、上記した渦流探傷装置100においては、渦流探傷プローブ1又は被検査体3の振動若しくは渦流探傷プローブ1と被検査体3との間の偏心などが発生すると、検出コイル10a、10bと被検査体3との間の距離、第1の励磁コイル11(コイル部11a、11b)、第2の励磁コイル12(コイル部12a、12b)と被検査体3との間の距離がそれぞれ変化して、ノイズ信号が発生する。
【0056】
渦流探傷プローブ1が移動する場合においては、渦流探傷プローブ1の移動により、渦流探傷プローブ1に振動が発生することで、検出コイル10a、10bと被検査体3との間の距離と第1の励磁コイル11(コイル部11a、11b)と第2の励磁コイル12(コイル部12a、12b)と被検査体3との間の距離がそれぞれ変化して、ノイズ信号が発生する。また、被検査体3が移動する場合には、被検査体3の移動により、被検査体3に振動が発生することで、検出コイル10a、10bと被検査体3との間の距離と第1の励磁コイル11(コイル部11a、11b)と第2の励磁コイル12(コイル部12a、12b)と被検査体3との間の距離がそれぞれ変化して、ノイズ信号が発生する。さらに、渦流探傷プローブ1又は被検査体3が振動しない場合においても、検出コイル10a、10bと被検査体3又は第1の励磁コイル11(コイル部11a、11b)と第2の励磁コイル12(コイル部12a、12b)と被検査体3との間で偏心している場合においては、検出コイル10a、10bと被検査体3との間の距離と第1の励磁コイル11(コイル部11a、11b)と第2の励磁コイル12(コイル部12a、12b)と被検査体3との間の距離がそれぞれ変化して、ノイズ信号が発生する。
【0057】
このことから、この明細書においては、偏心又は振動によるノイズ信号とは、コイル又は被検査体の振動若しくはコイル又は被検査体の偏心により、検出コイル10a、10bと被検査体3との間の相対的な距離の変化により発生するノイズ信号を意味する。
【0058】
ここで、本発明者らは、検出コイル10aと第2の励磁コイル12のコイル部12aとの間の距離Dおよび検出コイル10bと第2の励磁コイル12のコイル部12bとの間の距離Dとノイズ信号との関係を鋭意検討した。その結果、第2の励磁コイル12で励磁し隣に位置する検出コイルにより検出される振動ノイズ信号と第1の励磁コイル11で励磁し検出コイルにより検出される偏心又は振動によるノイズ信号の位相が逆位相になる距離Dが存在することが分かった。
【0059】
本発明者らは、例えば、被検査体3が金属製丸棒材、検出コイル10a、10bと第1の励磁コイル11と第2の励磁コイル12が貫通コイルの場合、前記丸棒材の外径とコイルの内径との差により、前記検出コイルとその隣に配置される前記励磁コイルとの間の前記距離Dに最適な値があることを確認した。
【0060】
本発明の第1実施形態は、第2の励磁コイルと隣に位置する検出コイルとの間で、それぞれの偏心又は振動によるノイズ信号が逆位相となる距離Dを求める。第2の励磁コイル12のコイル部12aと検出コイル10aとの間の距離D及び第2の励磁コイル12のコイル部12bと検出コイル10bとの間の距離Dになるように、渦流探傷プローブ1に検出コイル10a、10b、第1の励磁コイル11、第2の励磁コイル12の各コイルを配置する。これにより、渦流探傷装置100の渦流探傷プローブ1の振動、被検査体3の偏心など発生した場合においても偏心又は振動によるノイズを除去することができる。
【0061】
第2の励磁コイルと検出コイルの距離Dを最適に設定することにより、第2の励磁コイルで励磁し隣の検出コイルで検出される振動ノイズ信号と第1の励磁コイルで励磁し検出側コイルで検出される振動ノイズ信号の位相が逆位相、すなわち位相が180度シフトする。この結果、偏心又は振動によるノイズにより発生する励磁コイルと検出コイルの合成信号は、減衰することができる。
【0062】
また、検出コイルと隣に位置する励磁コイルによる渦電流は、被検査体3のキズ等による渦電流の信号は変化しないことも確認できた。この結果、偏心又は振動によるノイズを除去することができ、S/N比を向上させることができる。
【0063】
次に、本発明の具体例につき
図4を参照して説明する。本具体例においては、丸棒材を偏心させて、検出コイルでインピーダンス変化を検出し、振動又は被検査体の偏心などによるノイズ信号が除去できることを確認した。
【0064】
図4は、本発明に係る渦流探傷装置の振動、被検査体の偏心又は振動によるノイズの除去を確認した具体例を説明するための模式図である。
【0065】
図4に示す具体例の渦流探傷プローブ1は、検出コイル10a、10bと検出コイル10a、10bを挟むように第1の励磁コイル11を構成する一対のコイル部11a、11bが設けられている。一対のコイル部11a、11bを挟むように第2の励磁コイル12を構成する一対のコイル部12a、12bが設けられている。
【0066】
検出コイル10a、10bと第1の励磁コイル11のコイル部11a、11b、第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bの内径は同じである。これらコイルに金属製の丸棒材からなる被検査体3が挿入される。
【0067】
図4に示すように、検出コイル10a、10bの間の径方向及び長さ方向の中心(c)を中心として、図中矢印方向に被検査体3を端部の移動距離dだけ傾斜移動させた。
【0068】
第1の励磁コイル11のコイル部11a、11bと第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bに、交流電力を与える。インピーダンスの変化は、検出コイル10a、10bにより検出する。第1の励磁コイル11のコイル部11a、11bと第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bへの交流電力は、第1の励磁コイル11だけ与える場合と、第2の励磁コイル12だけ与える場合になるように制御する。
【0069】
本発明者は、第1の励磁コイル11だけの励磁の検出結果と第2の励磁コイル12だけの励磁の検出結果は、位相が異なることを確認した。
【0070】
次に、第1の励磁コイル11と第2の励磁コイル12を励磁した検出値の合成信号を算出した各検出信号の位相が異なることから、偏心又は振動によるノイズが相殺され、ノイズを減少することができることがわかる。
【0071】
第2の励磁コイルと検出コイルは、両検出信号の位相が殆ど逆位相、すなわち、両者の位相が略180度になる距離Dがあると考えられる。この逆位相になる距離に励磁コイルと検出コイルの距離Dを設定することで、偏心又は振動によるノイズを相殺して、ノイズを除去することができる。
【0072】
このように、本発明によれば逆位相になる距離に励磁コイルと検出コイルの距離Dを設定することで偏心又は振動によるノイズを除去することができ、S/N比を向上させることができる。
【0073】
上記した第1実施形態においては、偏心又は振動によるノイズを確実に除去するために、両検出信号が逆位相になるように、励磁コイルと検出コイルの距離Dを設定している。
【0074】
次に、本発明の第2実施形態につき、
図5~
図7を参照して説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置及び被検査体の概略図、
図6は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置の構成を示す概略回路図、
図7は、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置を示すブロック図である。なお、第2実施形態は、第2の励磁コイルの構成が異なる以外は第1実施形態と同じなので、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0075】
本発明の第2実施形態にかかる渦流探傷装置に用いられる渦流探傷プローブ1は、円筒状又は半円筒状に形成され、内部に一対の検出コイル10a、10bと、励磁磁場を発生させて被検査体3の表層部に渦電流を発生させる第1の励磁コイル110と、第2の励磁コイル12とを備える。第2の励磁コイル12は、一対の検出コイル10a、10bを挟むように、各検出コイル10a、10bと同軸に配置される一対のコイル部12a、12bで構成されている。本発明の第2実施形態にかかる渦流探傷プローブ1は、相互誘導型渦流探傷装置に用いられるプローブである。第1の励磁コイル110は、相互誘導用励磁コイルとして用いられる。第2の励磁コイル12は、ノイズキャンセル用励磁コイルとして用いられる。
【0076】
第1実施形態の第1の励磁コイル11は、一対の検出コイル10a、10bを挟むように、同軸に配置された一対のコイル部11a、11bで構成されているのに対し、第2実施形態の第1の励磁コイル110は、検出コイル10a、10bと同心状に配置される。このように、第1の励磁コイル110は、検出コイル10a、10bと同心状に配置することにより、渦流探傷プローブ1の長さを第1実施形態のプローブより短くすることができる。
【0077】
図6は、本発明に係る渦流探傷装置の検出コイル部分の構成を示す概略回路図である。
図6に示すように、ブリッジ回路24は、検出コイル10a、10bと抵抗13a、13bとからなり、検出コイル10a、10bは、ブリッジ回路24の二辺として結線され、抵抗13a、13bはブリッジ回路24の他の2辺として結線される。
【0078】
検出コイル10a、10bを覆うように、第1の励磁コイル110が設けられている。検出コイル10a、10bを挟むように、一対のコイル部12a、12bからなる第2の励磁コイル12が設けられている。本実施形態は、第1の励磁コイル11により、励磁し、検出コイル10a、10bで検出する相互誘導型渦流探傷装置である。第1の励磁コイル110の構成以外は第1実施形態と同様に構成されている。
【0079】
次に、本発明の第2実施形態に係る渦流探傷装置について、
図7のブロック図に従い更に説明する。
【0080】
図7に示すように、渦流探傷装置100は、発振器21、第1電力増幅器22、第2電力増幅器23、ブリッジ回路24、検出用位相変換器26、増幅器25、位相検波器27を備える。
【0081】
ブリッジ回路24は、
図6に示すように、渦流探傷プローブ1の検出コイル10a、10bと抵抗13a、13bにより構成される。
【0082】
発振器21からの交流出力は、第1電力増幅器22で増幅され、第1の励磁コイル110に与えられる。また、発振器21からの交流出力は、第2電力増幅器23で増幅され、第2の励磁コイル12のコイル部(ノイズキャンセル用コイル部)12a、12bに与えられる。
【0083】
第1の励磁コイル110、第2の励磁コイル12のコイル部12a、コイル部12bにそれぞれ加えられた交流出力により、被検査体3が励磁される。そして、検出コイル10a、10bは、渦電流により生成される磁束の変化に伴うインピーダンス変化を検出する。
【0084】
ブリッジ回路24から出力される検出コイル10a、10b間の不平衡出力が増幅器25で増幅され、位相検波器27に送られる。発振器21からの交流出力が検出用位相変換器26に与えられる。この検出用位相変換器26の出力は位相検波器27に与えられる。
【0085】
検出用位相変換器26は、発振器21からの信号を励磁信号と同じ位相の信号と、励磁信号に対して90度位相のずれた信号に変換し、位相検波器27に与える。
【0086】
増幅器25で増幅された不平衡出力と検出用位相変換器26の出力が位相検波器27に与えられ、検出コイル10a、10bの出力は検出用位相変換器26の出力とあいまって検波される。
【0087】
本実施形態においては、検出コイル10a、10bからの出力値に基づいての被検査体3の損傷等を検出する。
【0088】
次に、本発明の第3実施形態に係る渦流探傷装置について、
図8のブロック図に従い説明する。
図8に示す第3実施形態においては、第2の励磁コイルと検出コイルの距離Dを所定の値に設定し、両検出信号が逆位相にならない場合には、第2の励磁コイルに与える信号の位相を変換し、両信号が逆位相になるように調整したものである。このため、
図8に示す第3実施形態においては、発振器21からの交流出力は、第2励磁用位相変換器40に与えられる。なお、
図8に示す第3実施形態は、第2励磁用位相変換器40を設けた以外は第1実施形態と同じなので、同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0089】
図8に示すように、発振器21からの交流出力は、第2励磁用位相変換器40に与えられる。この第2励磁用位相変換器40は、第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bに与える励磁用の交流電力の位相を変換する。この第2励磁用位相変換器40は、両検出信号の位相が逆位相になるように、第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bに与える交流電力の位相を変換する。
【0090】
第2励磁用位相変換器40で位相変換された交流電力は、第2電力増幅器23に与えられ、第2電力増幅器23で増幅し、第2の励磁コイル12のコイル部12a、12bに与えられる。
【0091】
これにより、第2の励磁コイル12を構成するコイル部12a、コイル部12bに第2励磁用位相変換器40で位相変換された交流電力を与えて励磁し、検出コイル10a、検出コイル10bからの検出信号と、第1の励磁コイル11のコイル部11a、コイル部11bに交流電力を与えて励磁し、検出コイル10a、検出コイル10bからの検出信号の位相信号が逆位相になり、S/N比を向上させることができる。
【0092】
上述した実施形態においては、貫通コイルを用いた場合について説明したが、本発明は、貫通コイルだけではなく、内挿コイル、上置コイルにも適用でき、同様の効果を得ることができる。
【0093】
上述した実施形態においては、被検査体が金属製丸パイプ材、金属製丸棒材の場合について説明したが、被検査体は、金属製丸パイプ材、金属製丸棒材に限らず、金属製角パイプ材、金属製角柱材にも適用できる。この場合、渦流探傷プローブは、被検査体を囲むように形成された矩形のパイプ形状又は被検査体の表面に離間して配置される矩形板形状に形成するとよい。
【符号の説明】
【0094】
1 :渦流探傷プローブ
3 :被検査体
10a :検出コイル
10b :検出コイル
11 :第1の励磁コイル
12 :第2の励磁コイル
21 :発振器
22 :第1電力増幅器
23 :第2電力増幅器
24 :ブリッジ回路
25 :増幅器
26 :検出用位相変換器
27 :位相検波器
28 :信号処理装置
29 :出力部
30 :交流電源
31 :検出部
40 :第2励磁用位相変換器
100 :渦流探傷装置