(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165533
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】貫入ロッド曲がり測定治具及びこれを用いた貫入ロッドの曲がり測定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
E02D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070906
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】502231096
【氏名又は名称】株式会社サムシング
(71)【出願人】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前 俊守
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮城 健
(72)【発明者】
【氏名】牧野 暢久
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 凜太郎
(72)【発明者】
【氏名】大前 泰輔
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA03
2D043AB01
2D043BB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロッドの曲がりを簡単に把握できる貫入ロッド曲がり測定治具及びこれを用いた貫入ロッドの曲がり測定方法を提供する。
【解決手段】貫入ロッド曲がり測定治具は、測定対象の円柱形の貫入ロッド100の長手方向に沿って直線的に延びる基部11,12と、前記基部11,12の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッド100の外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、前記基部11,12の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッド100の外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部11,12に設けられ、前記基部11,12と前記貫入ロッド100の外周面との間の寸法を測定可能な測定部19と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、
前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項2】
前記測定部は、前記貫入ロッドの外周面から離間して設けられた前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間に介在されるとともに、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な寸法測定器である請求項1に記載の貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項3】
前記測定部は、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法の適否を判別可能な判別器である請求項2に記載の貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項4】
前記測定部は、
前記貫入ロッドの半径方向に進退するとともに、その先端部が前記貫入ロッドの外周面に当接可能な軸部と、
前記軸部の突出量が所定の範囲内であるか否かを示す表示部と、
を有する請求項2又は3に記載の貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項5】
前記測定部は、前記貫入ロッドの外周面に当接した前記基部の一部である請求項1に記載の貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項6】
前記基部の前記貫入ロッドの半径方向に関する寸法は、前記基部の前記貫入ロッドの周方向に関する寸法よりも大きい請求項1乃至5のいずれか1項に記載の貫入ロッド曲がり測定治具。
【請求項7】
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、
前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える貫入ロッド曲がり測定治具を用いた、貫入ロッドの曲がり測定方法であって、
前記第1当接部及び前記第2当接部の前記当接面を前記貫入ロッドの前記外周面に当接させることと、
前記当接させた状態で前記貫入ロッド曲がり測定治具を前記貫入ロッド周りに360°回転させることと、
前記回転中に前記測定部で前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定することと、
を含む貫入ロッドの曲がり測定方法。
【請求項8】
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、
前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える貫入ロッド曲がり測定治具を用いた、貫入ロッドの曲がり測定方法であって、
前記第1当接部及び前記第2当接部の前記当接面を前記貫入ロッドの前記外周面に当接させることと、
前記当接させた状態で前記貫入ロッドを軸周りに360°回転させることと、
前記回転中に前記測定部で前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定することと、
を含む貫入ロッドの曲がり測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質の調査を行う貫入試験機に用いられる貫入ロッドの曲がりを測定する貫入ロッド曲がり測定治具及びこれを用いた貫入ロッドの曲がり測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土質の調査を行う貫入試験には、貫入試験機が使用されている。貫入試験機は、載荷台と、載荷台に対して回転可能に設けられるチャックユニットと、チャックユニットを回転駆動する駆動源部と、チャックユニットに把持される貫入ロッドと、を備える(特許文献1参照)。貫入試験は、一般に15m程度の深度まで行われる。このため、貫入ロッドの先端側に位置する先端ロッドの末端に、延長ロッドが継ぎ足される。これによって、貫入ロッドの長さが延長される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-265451号公報
【特許文献2】特許第6211732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先端ロッドと延長ロッドとを継ぎ足して延長した貫入ロッドでは、ロッド接続部に起因する曲がりが生じうる。貫入ロッドが曲がっていないかを簡便に検出できれば便利である。
【0005】
従って、本発明の目的は、貫入ロッドの曲がりを簡単に把握することができる貫入ロッド曲がり測定治具及びこれを用いた貫入ロッドの曲がり測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下により解決される。すなわち、本発明(1)の貫入ロッド曲がり測定治具は、
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、 前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える。
【0007】
本発明(2)の貫入ロッド曲がり測定治具において、前記測定部は、前記貫入ロッドの外周面から離間して設けられた前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間に介在されるとともに、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な寸法測定器である。
【0008】
本発明(3)の貫入ロッド曲がり測定治具において、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法の適否を判別可能な判別器である。
【0009】
本発明(4)の貫入ロッド曲がり測定治具において、前記測定部は、
前記貫入ロッドの半径方向に進退するとともに、その先端部が前記貫入ロッドの外周面に当接可能な軸部と、
前記軸部の突出量が所定の範囲内であるか否かを示す表示部と、
を有する。
【0010】
本発明(5)の貫入ロッド曲がり測定治具において、前記貫入ロッドの外周面に当接した前記基部の一部である。
【0011】
本発明(6)の貫入ロッド曲がり測定治具において、前記基部の前記貫入ロッドの半径方向に関する寸法は、前記基部の前記貫入ロッドの周方向に関する寸法よりも大きい。
【0012】
本発明(7)の貫入ロッドの曲がり測定方法は、
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、
前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える貫入ロッド曲がり測定治具を用いた、貫入ロッドの曲がり測定方法であって、
前記第1当接部及び前記第2当接部の前記当接面を前記貫入ロッドの前記外周面に当接させることと、
前記当接させた状態で前記貫入ロッド曲がり測定治具を前記貫入ロッド周りに360°回転させることと、
回転中に前記測定部により前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定することと、
を含む。
【0013】
本発明(8)の貫入ロッドの曲がり測定方法は、
測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向に沿って直線的に延びる基部と、
前記基部の一方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第1当接部と、
前記基部の前記一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられ、前記貫入ロッドの外周面に当接可能な円弧状の当接面を有する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部との間の位置で前記基部に設けられ、前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部と、
を備える貫入ロッド曲がり測定治具を用いた、貫入ロッドの曲がり測定方法であって、
前記第1当接部及び前記第2当接部の前記当接面を前記貫入ロッドの前記外周面に当接させることと、
前記当接させた状態で前記貫入ロッドを軸周りに360°回転させることと、
前記回転中に前記測定部で前記基部と前記貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定することと、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貫入ロッドの曲がりを簡単に把握することができる貫入ロッド曲がり測定治具及びこれを用いた貫入ロッドの曲がり測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の測定部の縦断面を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具の横断面を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を用いた貫入ロッドの曲がり測定を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を用いた貫入ロッドの曲がり測定における曲がり判定を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を用いた貫入ロッドの曲がり測定における曲がり判定を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を用いた貫入ロッドの曲がり測定における曲がり判定を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を拡大して示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具を拡大して示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具の横断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しつつ、本発明の各実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具について説明する。貫入ロッド曲がり測定治具は、地盤調査で用いられる貫入試験機の貫入ロッドの曲がりを測定する器具である。測定対象の貫入ロッドは、深い深度の貫入試験を可能にするために、先端ロッドに延長ロッドを継ぎ足してロッドの長さを延長したものである。
【0017】
[第1実施形態]
図1及び
図2を参照して、第1実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具10について説明する。
図1及び
図2は、貫入ロッド曲がり測定治具10を示す斜視図である。貫入ロッド曲がり測定治具10は、第1基部11及び第2基部12と、第1スペーサ13及び第2スペーサ14と、第1ロッド受部保持部材15及び第2ロッド受部保持部材16と、第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18と、測定部19と、を有する。
【0018】
貫入ロット曲がり測定治具10の全長は、取り扱いやすい長さに設定する。一般的に使用される貫入ロッドの長さが750mmであることから、例えば、375mm~750mm程度に設定する。
【0019】
第1基部11及び第2基部12は、測定対象の円柱形の貫入ロッド(
図1及び
図2には示されない。
図4及び
図5参照。)の長手方向(
図1に示すX方向)に沿って直線的に延びている。第1基部11及び第2基部12は、金属材料、例えば炭素鋼により形成されている。第1基部11と第2基部12とは、第1スペーサ13及び第2スペーサ14を介して水平方向(
図1に示すY方向)、すなわち測定対象の貫入ロッドに対する周方向に所定の間隔を空けて保持されている。第1スペーサ13及び第2スペーサ14は、第1基部11及び第2基部12の撓みを防止する。第1スペーサ13及び第2スペーサ14の材質は、例えば樹脂や発泡スチロール等、軽量で変形しにくいものが好適である。
【0020】
第1基部11及び第2基部12のそれぞれの一方の端部21、22には、第1ロッド受部保持部材15を介して第1ロッド受部17が保持されている。第1基部11及び第2基部12の一方の端部21、22とは反対側の、第1基部11及び第2基部12のそれぞれの他方の端部23、24には、第2ロッド受部保持部材16を介して第2ロッド受部18が保持されている。第1ロッド受部保持部材15及び第2ロッド受部保持部材16は、第1基部11及び第2基部12を所定の間隔を空けて保持するとともに、それぞれ、第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18を第1基部12及び第2基部13の延びる長手方向に略直交する上下方向(
図1に示すZ方向)、すなわち測定対象の貫入ロッドに対する半径方向に保持している。
【0021】
第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18は、前記長手方向に厚みを有する半円形状のディスク部材である。第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18は、それぞれ、円弧状の内周面である第1当接部25及び第2当接部26を有する。第1当接部25及び第2当接部26は、貫入ロッドの曲がり測定の際に貫入ロッドの外周面に当接可能な当接面であり、貫入ロッドの外周面に当接可能な寸法に設定されている。第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18は、半円形状に限らず、120°~180°程度の円弧状の当接面を有する部材であってもよい。第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18の材質は、軽量で変形しにくく、削れにくい金属材料、例えば炭素鋼で形成されることが好適である。
【0022】
測定部19は、長手方向に沿って延びた第1基部11及び第2基部12の中央近傍に配置され、第1基部11と第2基部12とに挟まれて保持されている。測定部19は、長手方向において第1ロッド受部17の第1当接部25と第2ロッド受部18の第2当接部26との間の位置で第1基部11及び第2基部12に設けられている。
【0023】
図3は、測定部19の縦断面を概略的に示す図である。測定部19は、第1基部11と第2基部12との間に保持される筐体27と、筐体27内に収容された摺動部28と、表示部29と、を有する。測定部19は、第1基部11及び第2基部12と貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な寸法測定器として機能する。
【0024】
摺動部28は、
図3に示すように、軸部31と、ばね32と、を有する。軸部31は、上下方向(Z方向)、すなわち測定対象の貫入ロッドに対する半径方向に延びた円柱状の部材である。軸部31は、上側ロッド33と、下側ロッド34と、上側ロッド33と下側ロッド34とに介在する中間部材35と、を有する。上側ロッド33と下側ロッド34と中間部材35とは、同軸であり、中間部材35の上面36に配置されたばね32とともに、筐体27内で前記半径方向、つまり軸部31の軸方向に一体的に摺動可能な摺動部28を構成している。軸部32の下側ロッド34は、筐体27から下向きに突出している。下側ロッド34の下面37は、貫入ロッドの曲がり測定の際に貫入ロッドの外周面に当接可能な面である。
【0025】
表示部29は、円筒部材38を有する。円筒部材38には、その一部を切り欠いて形成された判定表示窓39が設けられている。円筒部材38は、筐体27の上側に、軸部31と同軸に配置されており、内部に上側ロッド33を収容している。
【0026】
軸部31の上側ロッド33には、貫入ロッドの曲がりが許容範囲であることを示す第1表示41と、許容範囲でないことを示す第2表示42が形成されている。軸部31の軸方向に対して、第1表示41の上下に第2表示42を配置している。第1表示41は、色であってもよいし、「合格」等の文字などの識別可能な標識であってよい。測定対象の貫入ロッドに対する半径方向における第1表示41の表示範囲は、曲がりの許容範囲Tに対応している。第2表示42もまた、第1表示41とは異なる色や「不合格」等の文字などの識別可能な標識であってよい。上側ロッド33は、判定表示窓39から第1表示41及び第2表示42が認識可能なように周方向に位置合わせして円筒部材38に収容されている。第1表示41及び第2表示42は、円筒部材38の判定表示窓39とともに表示部29を構成する。
【0027】
貫入ロッドの許容される曲がりの範囲は予め設定される。貫入ロッド曲がり測定治具10の組立ての際には、曲がりの許容範囲を考慮して、貫入ロッドの曲がりが許容範囲にある場合に判定表示窓39から第1表示41が現れ、貫入ロッドの曲がりが許容範囲にない場合に判定表示窓39から第2表示42が現れるように、半径方向及び周方向における軸部31の位置を調整する。
【0028】
図4は、貫入ロッド曲がり測定治具10の横断面を概略的に示す図である。
図4に示すように、第1基部11及び第2基部12の貫入ロッド100の半径方向に関する寸法L1は、第1基部11及び第2基部12の貫入ロッドの周方向に関する寸法L2よりも大きく設定されている。
【0029】
図5は、貫入ロッド曲がり測定治具10を用いた貫入ロッド100の曲がり測定を概略的に示す図である。貫入ロッド100では、深い深度の貫入試験を可能にするために複数のロッドが接続されている。貫入ロッド100は、少なくとも第1ロッド101と第2ロッド102とを有する。第1ロッド101と第2ロッド102とは、例えば第1ロッド101の一端の雄ねじ部と第2ロッド102の一端の雌ねじ部とのねじ止めにより、ロッド接続部103で接続されている。貫入ロッド100では、ロッド接続部103に起因して曲がりが生じやすい。
【0030】
貫入ロッド曲がり測定治具10を用いた貫入ロッド100の曲がり測定方法について説明する。ユーザは、
図5に示すように、第1ロッド受部17の第1当接部25及び第2ロッド受部18の第2当接部26を貫入ロッド100の外周面に当接させる。ここでは、第1当接部25を第1ロッド101の外周面104に当接させ、第2当接部26を第2ロッド102の外周面105に当接させている。このとき、貫入ロッド曲がり測定治具10の測定部19の長手方向の位置について、軸部31の下側ロッド34の下面37が貫入ロッド100のロッド接続部103及びその近傍となるように位置合わせする。そして、ユーザは、この当接状態を保ちながら、貫入ロッド曲がり測定治具10を貫入ロッド100周りに、あるいは、貫入ロッド100を軸周りに、一周、すなわち360°回転させる。
【0031】
このように、測定部19は、曲がり測定の際には、貫入ロッド100の外周面から離間して設けられた第1基部11及び第2基部12と貫入ロッド100の外周面との間に介在されるとともに、第1基部11及び第2基部12と貫入ロッド100の外周面との間の寸法を測定可能な寸法測定器として機能する。
【0032】
図6乃至
図8は、貫入ロッド曲がり測定治具10を用いた貫入ロッド100の曲がり測定における曲がり判定を概略的に示す図である。測定部19では、摺動部28は、軸部31の下側ロッド34の下面37がロッド接続部103に当接することで、中間部材35の上面36に当接しているばね32の付勢力により摺動する。つまり、軸部31の先端部である下側ロッド34の下面37が貫入ロッド100の外周面に当接することで、軸部31が貫入ロッド100の半径方向に進退する。このとき、貫入ロッド100の曲がりが許容範囲である場合には、
図6に示すように、一周を通じて表示部29の判定表示窓39から貫入ロッド100の曲がりが許容範囲であることを示す第1表示41が現れる。これにより、ユーザは、貫入ロッド100の曲がりが許容範囲であることを簡便に把握できる。また、貫入ロッド100の曲がりが許容範囲にない場合には、
図7又は
図8に示すように、表示部29の判定表示窓39から貫入ロッド100の曲がりが許容範囲にないことを示す第2表示42が現れる。これにより、ユーザは、貫入ロッド100の曲がりが許容範囲にないことを簡便に把握できる。
【0033】
このように、測定部19では、表示部29が、第1基部11及び第2基部12と貫入ロッド100の外周面との間の寸法の適否を判別可能な判別器として機能する。本実施形態では、測定部19は、貫入ロッド100の径方向に進退するとともに、その先端部が貫入ロッド100の外周面に当接可能な軸部31と、軸部31の突出量が所定の範囲内であるかを示す表示部29と、を有する。
【0034】
第1実施形態による貫入ロッド曲がり測定治具10によれば、第1当接部25と第2当接部26とを貫入ロッド100の外周面に当接させた状態で、治具を貫入ロッド100周りに、あるいは貫入ロッド100を軸周りに1回転させ、測定部19で第1基部11及び第2基部12と貫入ロッド100の外周面との間の寸法をロッド回りに測定することで、貫入ロッド100の曲がりを簡単に把握することができる。貫入ロッド曲がり測定治具10を用いた貫入ロッド100の曲がり測定方法により、貫入ロッド100の曲がりを簡便に把握することができる。
【0035】
測定部19として寸法測定器を用いることで、より高精度に貫入ロッド100の曲がりを検出することができる。
【0036】
測定部19として判別器を用いることで、貫入ロッド100の曲がりの有無を極めて簡単に把握することができる。
【0037】
第1基部11及び第2基部12の貫入ロッドの半径方向に関する寸法が周方向に関する寸法よりも大きいことにより、第1基部11及び第2基部12の下面の断面係数が大きくなる。これにより、曲げに強くなり、第1基部11及び第2基部12の撓みを防止することができる。
【0038】
なお、貫入ロッド曲がり測定治具10の測定部19の長手方向の位置について、軸部31の下側ロッド34の下面37を貫入ロッド100のロッド接続部103に合わせることで、曲がりが生じやすいロッド接続部103の曲がりを把握することができるが、これに限らず、貫入ロッド100の外周面の曲がり測定も同様に行うことができる。
【0039】
変形例として、測定部19の摺動部28に代えて、レーザー測定器を用いてもよい。レーザー測定器を用いることで、より高精度に貫入ロッドの曲がりを測定することができる。
【0040】
測定部19は、ブザーなどの音源を備えてもよい。例えば、貫入ロッド100の曲がりが許容範囲にない場合に測定部19の音源からブザー音が鳴る構成であってよい。これにより、測定結果を報知することができる。音源に代えて、又は音源と併用して、ランプなどの光源が点灯したり点滅したりすることで報知する構成であってもよい。
【0041】
[第2実施形態]
図9乃至
図12を参照して、第2実施形態の貫入ロッド曲がり測定治具50について説明する。
図9は、貫入ロッド曲がり測定治具50を示す斜視図である。
図10及び
図11は、貫入ロッド曲がり測定治具50を拡大して示す図である。貫入ロッド曲がり測定治具50は、基部51と、第1ロッド受部52と、第2ロッド受部53と、を有する。
【0042】
基部51は、測定対象の円柱形の貫入ロッドの長手方向(
図9に示すX方向)に沿って直線的に延びている。基部51の一方の端部54には、第1ロッド受部52が設けられている。基部51の他方の端部55には、第2ロッド受部53が設けられている。第1ロッド受部52及び第2ロッド受部53は、第1実施形態の第1ロッド受部17及び第2ロッド受部18と同様の半円形状のディスク部材である。第1ロッド受部52及び第2ロッド受部53は、それぞれ、円弧状の内周面である第1当接部56及び第2当接部57を有する。第1当接部56及び第2当接部57は、貫入ロッドの曲がり測定の際に貫入ロッドの外周面に当接可能な当接面であり、貫入ロッドの外周面に当接可能な寸法に設定されている。第1ロッド受部52及び第2ロッド受部53は、半円形状に限らず、120°~180°程度の円弧状の当接面を有する部材であってもよい。
【0043】
第2実施形態では、基部51の下面58が、貫入ロッドの曲がり測定の際に貫入ロッドに当接する面である。すなわち、基部51の一部が、第1当接部56を含む第1ロッド受部52と第2当接部57を含む第2ロッド受部53との間の位置で基部51に設けられ、基部51の下面58と貫入ロッドの外周面との間の寸法を測定可能な測定部として機能する。
【0044】
図12は、貫入ロッド曲がり測定治具50の横断面を概略的に示す図である。
図12に示すように、基部51の貫入ロッド100の半径方向に関する寸法L3は、基部51の貫入ロッド100の周方向に関する寸法L4よりも大きく設定されている。
【0045】
貫入ロッド曲がり測定治具50を用いた貫入ロッド100の曲がり測定方法について説明する。ユーザは、
図9に示すように、貫入ロッド曲がり測定治具50の第1ロッド受部52の第1当接部56及び第2ロッド受部53の第2当接部57を貫入ロッド100に当接させる。ここでは、第1当接部56を第1ロッド101の外周面104に当接させ、第2当接部57を第2ロッド102の外周面105に当接させている。そして、ユーザは、この当接状態を保ちながら、貫入ロッド曲がり測定治具50を貫入ロッド100周りに、あるいは、貫入ロッド100を軸周りに、一周、すなわち360°回転させる。ユーザは、貫入ロッド曲がり測定治具50又は貫入ロッド100を回転させながら、基部51の下面58と貫入ロッド100の外周面との間に隙間がないかを目視で確認する。隙間があれば、ユーザは、貫入ロッド100に曲がりが生じていると判定する。
【0046】
第2実施形態による貫入ロッド曲がり測定治具50によれば、貫入ロッド100の曲がりを簡単に把握することができる。貫入ロッド曲がり測定治具50を用いた貫入ロッド100の曲がり測定方法により、貫入ロッド100の曲がりを簡便に把握することができる。第2実施形態では、基部51の一部で測定部を兼ねることができ、別途の測定部を必要としない。全体構成を簡略化するとともに部品点数を削減することができる。これにより、貫入ロッド曲がり測定治具50の製造コストを低減することができる。
【0047】
また、基部51の貫入ロッドの半径方向に関する寸法が周方向に関する寸法よりも大きいことにより、基部51の当接面である下面58の断面係数が大きくなる。これにより、曲げに強くなり、基部51の撓みを防止することができる。
【0048】
上述した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。また、第1実施形態及び第2実施形態を適宜組み合わせて発明を構成することも当然に可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 貫入ロッド曲がり測定治具
11 第1基部
12 第2基部
13 第1スペーサ
14 第2スペーサ
15 第1ロッド受部保持部材
16 第2ロッド受部保持部材
17 第1ロッド受部
18 第2ロッド受部
19 測定部
25 第1当接部
26 第2当接部
28 摺動部
29 表示部
31 軸部
32 ばね
50 貫入ロッド曲がり測定治具
51 基部
52 第1ロッド受部
53 第2ロッド受部
100 貫入ロッド
101 第1ロッド
102 第2ロッド
103 ロッド接続部