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特開2022-165539光通信装置、光空間通信システム、光通信方法、及び光通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165539
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】光通信装置、光空間通信システム、光通信方法、及び光通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20221025BHJP
   H04B 10/112 20130101ALI20221025BHJP
【FI】
H04B10/077 190
H04B10/112
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070915
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】松井 円絵
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA41
5K102AB07
5K102AH02
5K102AH11
5K102AL23
5K102AL28
5K102LA03
5K102LA04
5K102LA05
5K102LA22
5K102LA23
5K102LA24
5K102LA38
5K102LA52
5K102LA56
5K102PB01
5K102PC12
5K102PH01
5K102PH03
5K102PH31
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体でも実行可能にする。
【解決手段】第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する光送信手段と、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ラインを伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する光受信手段と、第1電気信号を光送信手段に出力すると共に、第2電気信号を光送信手段に出力すると共に、光受信手段から入力した第3電気信号を処理すると共に、光受信手段から入力した第4電気信号の正常性を検証するデータ処理手段とを含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、
第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する
光送信手段と、
空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、
前記自己検証光専用ラインを伝播してきた前記第2光信号を第4電気信号に復調する
光受信手段と、
前記第1電気信号を前記光送信手段に出力すると共に、
前記第2電気信号を前記光送信手段に出力すると共に、
前記光受信手段から入力した前記第3電気信号を処理すると共に、
前記光受信手段から入力した前記第4電気信号の正常性を検証する
データ処理手段と
を備えた光通信装置。
【請求項2】
前記第1光信号及び前記第2光信号は互いに異なる波長を有し、
前記光送信手段は、
前記第1光信号及び前記第2光信号の両方を出力する共通の光変調手段と、
前記光変調手段から入力した、前記第1光信号及び前記第2光信号を空間及び前記自己検証光専用ラインへ向けて分岐する第2光分岐手段と、
前記第2光分岐手段によって前記自己検証光専用ラインへ向けて分岐された光信号から前記第2光信号を選択的に前記自己検証光専用ラインに出力する第2フィルタ手段と
を備えた請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記光送信手段は、前記第2光分岐手段によって空間へ向けて分岐された光信号から前記第1光信号を選択的に空間に出力する第1フィルタ手段を更に備えた
請求項2に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記第2光信号及び前記第3光信号は互いに異なる波長を有し、
前記光受信手段は、
空間を伝播してきた前記第3光信号、及び前記自己検証光専用ラインを伝播してきた前記第2光信号を合流する第3光分岐手段と、
前記第3光分岐手段によって合流された前記第3光信号及び前記第2光信号を入力して、前記第3電気信号及び前記第4電気信号の両方を出力する共通の光復調手段と
を備えた請求項1乃至3の何れか1項に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記データ処理手段は、前記光受信手段から入力した前記第4電気信号の正常性を繰り返し検証し、
前記データ処理手段は、前記光受信手段から入力した前記第3電気信号の正常性を検証し、
前記データ処理手段は、前記第3電気信号及び前記第4電気信号の正常性の検証結果に基づいて、前記第1光信号又は前記第3光信号の空間の伝播における異常を推定する
請求項1乃至4の何れか1項に記載の光通信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の光通信装置と、
空間を伝播してきた前記第1光信号を受信すると共に、
前記第3光信号を空間に送信する
地上局用の光通信装置と
を備えた光空間通信システム。
【請求項7】
第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、
第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する
光送信処理と、
空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、
前記自己検証光専用ラインを伝播してきた前記第2光信号を第4電気信号に復調する
光受信処理と、
前記第1電気信号を出力すると共に、
前記第2電気信号を出力すると共に、
前記第3電気信号を処理すると共に、
前記第4電気信号の正常性を検証する
データ処理と
を実行する光通信方法。
【請求項8】
第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、
第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する
光送信処理と、
空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、
前記自己検証光専用ラインを伝播してきた前記第2光信号を第4電気信号に復調する
光受信処理と、
前記第1電気信号を出力すると共に、
前記第2電気信号を出力すると共に、
前記第3電気信号を処理すると共に、
前記第4電気信号の正常性を検証する
データ処理と
をコンピュータに実行させる光通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置等の自己検証技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイスループット衛星等のブロードバンド衛星通信サービスの進展に伴い、衛星通信の大容量化のニーズが高まっている。そのニーズを満足するための技術として、地上と衛星間の光空間通信技術に対する期待が高まっている。
【0003】
又、衛星通信の大容量化に伴い、衛星搭載用の光通信装置に、新規技術や、宇宙航空用でない一般的な用途の部品が取り込まれる機会が増大している。一般的な用途の部品は、宇宙航空用の部品に比べて、安価で入手可能であり、新規技術が早期に導入される一方、信頼性が低い。そのため、軌道上における光通信装置の正常性検証が必要になっている。又、衛星通信では、地上と衛星間の大気を伝搬する光信号に対する品質評価も必要である。
【0004】
地上と衛星間の光空間通信技術の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の光受信機は、衛星搭載用として宇宙環境で利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/110956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地上と衛星間の光空間通信システムの一般的な技術では、地上局用の光通信装置から送信されたアップリンク光信号が、伝搬されて、衛星搭載用の光通信装置で受信される。又、衛星搭載用の光通信装置から送信されたダウンリンク光信号が、伝搬されて、地上局用の光通信装置で受信される。そのため、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認(正常性検証)では、地上局用の光通信装置を用意する必要がある。又、衛星間における光通信装置の健全性確認においても同様に、対向する他の衛星搭載用の光通信装置を用意する必要がある。ここで、特許文献1に記載の光受信機は、光受信機の健全性確認を単体で実行する機能を有していない。そのため、特許文献1に記載の光受信機のような、衛星搭載用の光通信装置には、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体で実行できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体でも実行可能にすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、光通信装置は、第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する光送信手段と、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ラインを伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する光受信手段と、第1電気信号を光送信手段に出力すると共に、第2電気信号を光送信手段に出力すると共に、光受信手段から入力した第3電気信号を処理すると共に、光受信手段から入力した第4電気信号の正常性を検証するデータ処理手段とを含む。
【0009】
本発明の一態様において、光空間通信システムは、第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する光送信手段と、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ラインを伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する光受信手段と、第1電気信号を光送信手段に出力すると共に、第2電気信号を光送信手段に出力すると共に、光受信手段から入力した第3電気信号を処理すると共に、光受信手段から入力した第4電気信号の正常性を検証するデータ処理手段とを含む光通信装置、及び空間を伝播してきた第1光信号を受信すると共に、第3光信号を空間に送信する地上局用の光通信装置を含む。
【0010】
本発明の一態様において、光通信方法は、第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する光送信処理と、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ラインを伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する光受信処理と、第1電気信号を出力すると共に、第2電気信号を出力すると共に、第3電気信号を処理すると共に、第4電気信号の正常性を検証するデータ処理とを実行する。
【0011】
本発明の一態様において、光通信プログラムは、コンピュータに、第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ラインに送信する光送信処理と、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ラインを伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する光受信処理と、第1電気信号を出力すると共に、第2電気信号を出力すると共に、第3電気信号を処理すると共に、第4電気信号の正常性を検証するデータ処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体でも実行可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態における光空間通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の第2実施形態における光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態における第1送信光出力部(通信用)のみ動作時の信号ルートの一例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態における第2送信光出力部(自己検証用)のみ動作時の信号ルートの一例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態における第1変形例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態における第2変形例の光通信装置の動作を示す模式図である。
図7】本発明の各実施形態における光通信装置を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、全ての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の各実施形態の基本である本発明の第1実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態における光空間通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態における光空間通信システム100は、衛星搭載用の光通信装置200と、地上局用の光通信装置300とを含む。
【0016】
光通信装置200は、光送信部210と、光受信部230と、データ処理部240とを含む。光送信部210と光受信部230の間は、自己検証光専用ライン220によって接続される。自己検証光専用ライン220は、例えば、光ファイバである。
【0017】
光送信部210は、第1電気信号を用いて変調したダウンリンク用の第1光信号を空間に送信すると共に、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ライン220に送信する。
【0018】
光受信部230は、空間を伝播してきたアップリンク用の第3光信号を第3電気信号に復調すると共に、自己検証光専用ライン220を伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する。
【0019】
データ処理部240は、第1電気信号を光送信部210に出力すると共に、第2電気信号を光送信部210に出力する。又、データ処理部240は、光受信部230から入力した第3電気信号を処理すると共に、光受信部230から入力した第4電気信号の正常性を検証する。
【0020】
光通信装置300は、空間を伝播してきた第1光信号を受信すると共に、第3光信号を空間に送信する。
【0021】
以上説明したように、本実施形態における光空間通信システム100では、光送信部210は、第2電気信号を用いて変調した自己検証用の第2光信号を自己検証光専用ライン220に送信する。又、光受信部230は、自己検証光専用ライン220を伝播してきた第2光信号を第4電気信号に復調する。そして、データ処理部240は、第2電気信号を光送信部210に出力する。そして、データ処理部240は、光受信部230から入力した第4電気信号の正常性を検証する。つまり、データ処理部240は、例えば、第2電気信号と第4電気信号が表すデータが一致するか否かを検証することによって、光通信装置200に含まれる、光送信部210、光受信部230、及びデータ処理部240が正常に動作しているか否かを検証できる。従って、本実施形態における光空間通信システム100には、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体でも実行可能であるという効果がある。
【0022】
即ち、地上局用の光通信装置300では、衛星搭載用の光通信装置200に健全性確認を指示すればよく、特別な測定器等を必要としない。又、衛星搭載用の光通信装置200では、光通信装置200の健全性確認において、地上局用の光通信装置300からのアップリンク光、及び、他の衛星搭載用の光通信装置からの入力光等を必要としない。又、衛星搭載用の光通信装置200では、光通信装置200の健全性確認において、光通信装置200が出力するダウンリンク光を受信する地上局用の光通信装置300、及び、光通信装置200が出力する送信光を受信する、他の衛星搭載用の光通信装置等を必要としない。
【0023】
尚、本実施形態における光通信装置200では、第1光信号及び第2光信号は互いに異なる波長を有してもよい(後述する第2実施形態を参照)。そして、光送信部210は、光変調部と、第2光分岐部と、第2フィルタ部とを含んでもよい。ここで、光変調部は、第1光信号及び第2光信号の両方を出力する。又、第2光分岐部は、光変調部から入力した、第1光信号及び第2光信号を空間及び自己検証光専用ライン220へ向けて分岐する。又、第2フィルタ部は、第2光分岐部によって自己検証光専用ライン220へ向けて分岐された光信号から第2光信号を選択的に自己検証光専用ライン220に出力する。この場合、光空間通信システム100には、第1光信号及び第2光信号の両方において、光変調部が供用されるという効果がある。
【0024】
更に、本実施形態における光通信装置200では、光送信部210は、第2光分岐部によって空間へ向けて分岐された光信号から第1光信号を選択的に空間に出力する第1フィルタ部を更に含んでもよい(後述する第2実施形態を参照)。この場合、光空間通信システム100には、光通信装置300が不必要な第2光信号を受信してしまう可能性がある場合にも、第2光信号の受信が抑制されるという効果がある。
【0025】
又、本実施形態における光通信装置200では、第2光信号及び第3光信号は互いに異なる波長を有してもよい(後述する第2実施形態を参照)。そして、光受信部230は、第3光分岐部と、光復調部とを含んでもよい。ここで、第3光分岐部は、空間を伝播してきた第3光信号、及び自己検証光専用ライン220を伝播してきた第2光信号を合流する。又、光復調部は、第3光分岐部によって合流された第3光信号及び第2光信号をそれぞれ入力して、第3電気信号、第4電気信号を出力する。この場合、光空間通信システム100には、第2光信号及び第3光信号の両方において、光復調部が供用されるという効果がある。
【0026】
又、本実施形態における光通信装置200では、データ処理部240は、光受信部230から入力した第4電気信号の正常性を繰り返し検証してもよい(後述する第2実施形態を参照)。そして、データ処理部240は、光受信部230から入力した第3電気信号の正常性を検証してもよい。そして、データ処理部240は、第3電気信号及び第4電気信号の正常性の検証結果に基づいて、第1光信号又は第3光信号の空間の伝播における異常(雲や降水に起因する光信号の不達等)を推定してもよい。この場合、光空間通信システム100には、第1光信号又は第3光信号の空間の伝播における異常を推定できるという効果がある。
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態を基本とする本発明の第2実施形態について説明する。
【0027】
本発明の第2実施形態における、衛星搭載用の光通信装置は、軌道上における光通信装置の自己検証機能を有する。そして、衛星搭載用の光通信装置は、光通信装置内で生成した自己検証用の送信光を光変調部で変調する。そして、光通信装置は、変調した光信号を、自己検証光専用ラインを介して光受信部に入力する。そして、光通信装置は、入力された自己検証用の送信光を復調し、データ処理部に入力する。そして、光通信装置は、入力された復調データをデータ再生部で再生し、再生されたデータの検証を行う。
【0028】
本実施形態における構成について説明する。
【0029】
図2は、本発明の第2実施形態における光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態における光通信装置205は、光送信部215と、光受信部235と、データ処理部245とを含む。光送信部215と光受信部235の間は、自己検証光専用ライン225によって接続される。自己検証光専用ライン225は、例えば、光ファイバである。
【0030】
光送信部215は、第1送信光出力部415と、第2送信光出力部425と、第1光分岐部435と、光変調部445と、第2光分岐部455と、第1光フィルタ部465と、第2光フィルタ部475とを含む。
【0031】
第1送信光出力部415は、通信時に下りで用いられる光(ダウンリンク光)を出力する。第1送信光出力部415は、例えば、レーザーダイオードである。
【0032】
第2送信光出力部425は、自己検証時に用いられる光(自己検証光)を出力する。通常、自己検証光は、ダウンリンク光と異なる波長を有する。第2送信光出力部425は、例えば、レーザーダイオードである。
【0033】
第1光分岐部435は、第1送信光出力部415及び第2送信光出力部425から入力した光を光変調部445へ出力する。第1光分岐部435は、例えば、ビームスプリッタである。
【0034】
第2光分岐部455は、光変調部445から入力した通信時に用いられる光信号を第1光フィルタ部465へ出力すると共に、光変調部445から入力した自己検証時に用いられる光信号を第2光フィルタ部475へ出力する。第2光分岐部455は、例えば、ビームスプリッタである。
【0035】
第1光フィルタ部465は、第2光分岐部455から入力した光信号のうち、通信時に用いられる光信号を選択的に外部へ出力する。第1光フィルタ部465は、例えば、バンドパスフィルタである。
【0036】
第2光フィルタ部475は、第2光分岐部455から入力した光信号のうち、自己検証時に用いられる光信号を選択的に自己検証光専用ライン225へ出力する。第2光フィルタ部475は、例えば、バンドパスフィルタである。
【0037】
データ処理部245は、データ生成部615と、光変調部制御部625と、第1送信光出力部制御部635と、第2送信光出力部制御部645と、光復調部制御部655と、データ再生部665と、データ検証部675とを含む。
【0038】
データ生成部615は、送信データを表す電気信号を出力する。
【0039】
光変調部制御部625は、光変調部445の動作を制御する。
【0040】
第1送信光出力部制御部635は、第1送信光出力部415の動作を制御する。
【0041】
第2送信光出力部制御部645は、第2送信光出力部425の動作を制御する。
【0042】
光復調部制御部655は、光復調部525の動作を制御する。
【0043】
光変調部445は、通信時に、データ生成部615から入力した電気信号を用いて、第1送信光出力部415から入力した光を変調することによって、送信用の光信号(ダウンリンク光信号)を生成し、第1光フィルタ部465を介して外部へ出力する。又、光変調部445は、自己検証時に、データ生成部615から入力した電気信号を用いて、第2送信光出力部425から入力した光を変調することによって、自己検証用の光信号(自己検証光信号)を生成し、第2光フィルタ部475を介して自己検証光専用ライン225へ出力する。光変調部445は、例えば、エレクトロリフラクティブ変調器、又はエレクトロアブソープション変調器である。光変調器は当業者に広く知られているので、詳細な説明を省略する。
【0044】
光受信部235は、第3光分岐部515と、光復調部525とを含む。
【0045】
第3光分岐部515は、外部(地上局)から入力したアップリンク光信号、及び自己検証光専用ラインから入力した自己検証光信号を光復調部525へ出力する。第3光分岐部515は、例えば、ビームスプリッタである。
【0046】
光復調部525は、通信時に、第3光分岐部515から入力したアップリンク光信号を復調することによって、アップリンクデータに変換し、アップリンクデータをデータ再生部665へ出力する。又、光復調部525は、自己検証時に、自己検証光専用ライン225を経由して第3光分岐部515から入力した自己検証光信号を復調することによって、自己検証用データに変換し、自己検証用をデータ再生部665へ出力する。光復調部525は、例えば、デジタルコヒーレント光受信器である。光復調器は当業者に広く知られているので、詳細な説明を省略する。
【0047】
データ再生部665は、光復調部525から入力したアップリンクデータを処理すると共に、自己検証用データをデータ検証部675へ出力する。
【0048】
データ検証部675は、データ再生部665から入力した自己検証用データに基づいて、光通信装置205の健全性確認を行う。
【0049】
本実施形態における動作について説明する。
【0050】
図3は、本発明の第2実施形態における第1送信光出力部(通信用)のみ動作時の信号ルートの一例を示す図である。図4は、本発明の第2実施形態における第2送信光出力部(自己検証用)のみ動作時の信号ルートの一例を示す図である。図3及び図4において、使用されない信号ルートを点線で示している。
【0051】
第1光フィルタ部465は、第2光分岐部455から入力した光信号のうち、ダウンリンク光を選択的に外部へ出力する(図3)。一方、第2光フィルタ部475は、第2光分岐部455から入力した光信号のうち、自己検証光信号を選択的に自己検証光専用ライン225へ出力する(図4)。従って、第1送信光出力部415から出力された光は、ダウンリンク光信号にのみ使用され、自己検証光信号に使用されない(図3)。又、第2送信光出力部425から出力された光は、自己検証光信号にのみ使用され、ダウンリンク光信号に使用されない(図4)。
【0052】
光変調部制御部625は、自己検証光信号の使用時に、アップリンク光信号が入力されないように、対向する光通信装置の動作を制御する。光変調部制御部625は、例えば、自己検証光信号の使用時に、アップリンク光信号を抑止させるコマンドを対向する地上局用の光通信装置300へ送信する。
【0053】
そして、光変調部制御部625は、第2送信光出力部425を動作させた上で、データ生成部615に、自己検証用データを表す電気信号を出力させる。第1送信光出力部415と第2送信光出力部425は、並行して動作してもよいし、排他的に動作してもよい。
【0054】
データ検証部675は、データ再生部665から入力した自己検証用データに基づいて、光通信装置205の健全性確認を行う。データ検証部675は、例えば、送信された自己検証用データを正しく受信できるか否かを判定することによって、光通信装置205の健全性確認を行う。自己検証用データを用いて確認できる項目は、自己検証用光信号の送信、光変調部445の正常動作、光復調部525の正常動作、及びデータ処理部245の正常動作を含む。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の光通信装置205では、ダウンリンク光信号の光送信部215、アップリンク光信号の光受信部235、及びデータ処理部245の健全性確認が、衛星搭載用の光通信装置205単体でも実行可能である。従って、本実施形態における光通信装置205には、衛星搭載用の光通信装置の健全性確認を単体でも実行可能であるという効果がある。
【0056】
本実施形態における変形例について説明する。
(第1変形例)
図5は、本発明の第2実施形態における第1変形例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、本変形例における光通信装置206は、光送信部216、光受信部235、データ処理部245を含む。
【0057】
光送信部216は、第1送信光出力部415と、第2送信光出力部425と、第1光分岐部435と、光変調部445と、第2光分岐部455と、第2光フィルタ部475とを含む。即ち、光送信部216は、第1光フィルタ部465を含まない。
【0058】
本変形例におけるその他の構成は、上述した第2実施形態における構成と同じである。
【0059】
ダウンリンク光信号を受信する地上局用の光通信装置300において、自己検証光信号をダウンリンク光信号から除去できる等の理由によって、自己検証光信号がダウンリンク光信号の受信を妨害する恐れが無い場合には、光通信装置205の代わりに光通信装置206が用いられてもよい。
【0060】
本変形例の光通信装置206には、光通信装置205に比べて構成を単純化できるという効果がある。
(第2変形例)
地上と衛星間の大気を伝搬する光信号では、雲や降水等によって高速な信号強度のレベル変動及び瞬断が発生することがある。そのため、地上と衛星間における通信ができず、異常箇所の特定が困難な場合がある。
【0061】
図6は、本発明の第2実施形態における第2変形例の光通信装置の動作を示す模式図である。本変形例における光通信装置207は、特に説明しない限り、上述した光通信装置205と同じ構成を有することとする。そして、光通信装置207は、軌道上において、光通信装置205と同様に、衛星搭載用の光通信装置207単体でも、光通信装置207の健全性確認を実行可能であることとする。
【0062】
光通信装置207の光変調部制御部625は、第1送信光出力部415と第2送信光出力部425を並行して動作させることによって、ダウンリンク光信号を地上局用の光通信装置300に送信すると共に、光通信装置207の自己検証を行う。即ち、光通信装置207のデータ検証部675は、データ再生部665から入力した自己検証用データに基づいて、光通信装置207の健全性確認を繰り返し行う。又、光通信装置207のデータ検証部675は、データ再生部665から入力した通信用データに基づいて、光通信装置207と光通信装置300間の通信における健全性確認を行う。
【0063】
光通信装置207のデータ検証部675は、光通信装置207と光通信装置300間の通信の健全性確認、及び光通信装置207の直近の健全性確認に基づいて、光通信装置207と光通信装置300間の大気における光信号(アップリンク光及びダウンリンク光)の品質を推定する。
【0064】
つまり、光通信装置207のデータ検証部675は、衛星搭載用の光通信装置207(図6の箇所(b))と大気を伝搬する光信号(図6の箇所(c))について、その双方の異常を検出することができる。
【0065】
あるいは、地上局用の光通信装置300が、大気を伝搬する光信号の品質を推定してもよい。例えば、光通信装置300は、予め、衛星搭載用の光通信装置207の健全性確認結果を(図6の箇所(b))光通信装置207から定期的に受信する。そして、光通信装置300は、光通信装置207との間の通信における正常性(図6の箇所(a))を確認する。そして、光通信装置300は、光通信装置207との間の通信における異常を検出した際に、光通信装置207から直近に受信した光通信装置207の健全性確認結果が異常でなければ、大気を伝搬する光信号の品質が低下している(図6の箇所(c))と推定する。一方、光通信装置300は、光通信装置207との間の通信における異常を検出した際に、光通信装置207から直近に受信した光通信装置207の健全性確認結果が異常ならば、光通信装置207の健全性が喪失している(図6の箇所(b))と推定する。
【0066】
図7は、本発明の各実施形態における光通信装置を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
光通信装置901は、記憶装置902と、CPU(Central Processing Unit)903と、キーボード904と、モニタ905と、I/O(Input/Output)装置908とを備え、これらが内部バス906によって接続されている。記憶装置902は、データ処理部240、245、光送信部210、215、216、光受信部230、235等(以下、「データ処理部等」と称す)のCPU903の動作プログラムを格納する。CPU903は、光通信装置901の全体を制御し、記憶装置902に格納された動作プログラムを実行し、I/O装置908によってデータ処理部等のプログラムの実行やデータの送受信を行なう。尚、上記の光通信装置901の内部構成は一例である。光通信装置901は、必要に応じて、キーボード904、モニタ905を接続する装置構成であってもよい。
【0068】
上述した本発明の各実施形態における光通信装置901は、専用の装置によって実現してもよいが、I/O装置908が外部との通信を実行するハードウェアの動作以外は、コンピュータ(情報処理装置)によっても実現可能である。この場合、係るコンピュータは、記憶装置902に格納されたソフトウェア・プログラムをCPU903に読み出し、読み出したソフトウェア・プログラムをCPU903において実行する。上述した各実施形態の場合、係るソフトウェア・プログラムには、上述したところの、図1、2、及び5に示した、光通信装置の各部の機能を実現可能な記述がなされていればよい。但し、これらの各部には、適宜ハードウェアを含むことも想定される。そして、このような場合、係るソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)は、本発明を構成すると捉えることができる。更に、係るソフトウェア・プログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体も、本発明を構成すると捉えることができる。
【0069】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、人工衛星搭載用の光通信装置に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
100 光空間通信システム
200、205、207 光通信装置
210、215、216 光送信部
220、225 自己検証光専用ライン
230、235 光受信部
300 光通信装置
415 第1送信光出力部
425 第2送信光出力部
435 第1光分岐部
445 光変調部
455 第2光分岐部
465 第1光フィルタ部
475 第2光フィルタ部
515 第3光分岐部
525 光復調部
615 データ生成部
625 光変調部制御部
635 第1送信光出力部制御部
645 第2送信光出力部制御部
655 光復調部制御部
665データ再生部
675 データ検証部
901 光通信装置
902 記憶装置
903 CPU
904 キーボード
905 モニタ
906 内部バス
908 I/O装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7