(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165575
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ユニット式フラップゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/44 20060101AFI20221025BHJP
E02B 7/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E02B7/44
E02B7/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070970
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】508305258
【氏名又は名称】日新興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504118852
【氏名又は名称】株式会社中央コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 幸美
(72)【発明者】
【氏名】牧田 健作
(72)【発明者】
【氏名】林 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 晴文
(72)【発明者】
【氏名】新銀 武
(72)【発明者】
【氏名】千葉 慎二
(57)【要約】
【課題】既存の門柱、ゲート等の撤去を要することなく、また、翼壁の改築もなく軽微な改築で経済的に設置できるばかりでなく、継手部を改変することなく設置できるユニット式フラップゲートを提供する。
【解決手段】既設樋門18の河川本流側RMの流出口19Aから支流側流入口19Bの中間に嵌装可能に形成された支持筐体(ソケット)2と、当該支持筐体2内に、占有高を有して軸承されると共に、前記流出口19Aを開閉するフラップ1を有するヒンジ式ゲートとから構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設樋門の河川本流側の流出口から河川支流側流入口の中間に嵌装可能に形成された支持筐体(ソケット)と、当該支持筐体内に、占有高を有して軸承されると共に、前記流出口を開閉するフラップを有するヒンジ式ゲートとからなることを特徴とするユニット式フラップゲート。
【請求項2】
河川本流側からの逆流水によりフラップが押圧された際、閉じたフラップにより水流を堰止め可能なフラップ係止体を支持筐体(ソケット)の内壁面下部に設けたことを特徴とする請求項1記載のユニット式フラップゲート。
【請求項3】
フラップが側面断面視で略逆く字状に屈曲形成すると共に、支持筐体(ソケット)内の上部に設けた支軸を中心に振り子動可能に取り付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のユニット式フラップゲート。
【請求項4】
フラップの河川本流側面に、フラップに取り付けたフロートの浮力と均衡可能な重量と位置決め機能を備えた複数のウエイトを要するバランスウエイトを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のユニット式フラップゲート。
【請求項5】
複数のウエイトが、少なくとも第1のウエイトと第2のウエイトとからなり、当該第2のウエイトは、前記第1のウエイトを常に自由垂下状態になるように吊持し、且つ、フラップの表面に貼着されたスキンプレート上に固定すると共に、前記第1のウエイトの吊り部材を保持する保持アームを有することを特徴とする請求項4記載のユニット式フラップゲート。
【請求項6】
フラップの外周に倣って矩形環状に形成されると共に、側断面視で、既設樋門の河川本流側の流出口に向かって拡径するように鈍角に折曲して一体的に形成され、且つ、支持筐体(ソケット)内壁面に当接する戸当り片を有する水密ゴム環が配設され、当該水密ゴム環はゴムの硬さが45から65の範囲で、且つ、その4隅の角頂部分の厚みを変化させて撓み量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のユニット式フラップゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川堤防の工作物である既設樋門樋管の函体内部に設置するためのユニット式フラップゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樋門、樋管は河川海岸堤防の工作物として築造されている。これらは、主として堤内側の河川または水路から排水を目的とする構造物である。なかでも河川本流側の既設樋門樋管の流出口には、扉体となるゲートが門柱などに嵌め込まれていて、洪水時に河川が氾濫して水位が上昇した場合、一般的には、水防団員や近隣住民等の操作員が門柱上部の操作台に就き、人手で開閉機を操作してゲートを閉止して逆流水を堰き止めるように配備されている。
【0003】
しかしながら、近年、過疎地での人口減少及び高齢化が進み、操作員も高齢化が進む中、危険を孕む上記堰き止め作業を行う後継人員の不足が懸念されている。
【0004】
そこで、2011年12月に水防法が改正され、人命の尊重及び安全性を考慮して、人手に頼らない電動力により自動的に駆動するゲート又は無動力で自動的に駆動するフラップゲートが種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、樋門の河川側出口に、開閉自在の扉体が河川側からの流水に対し止水可能になるように、上部ヒンジ機構により懸垂された状態で設置され、樋門側からの流水に対して扉体が河川方向に回転動作して樋門を開放するフラップゲートにおいて、扉体の重心位置と扉体を懸垂する吊芯が、浮力構造物の浮力中心を通る鉛直線より下流に配することにより、上流側低水位あるいは大容量の排水時において円滑な排水を行い、また、河川側水位と樋管側水位が同程度となった状態では逆流の発生を防止するフラップゲートが開示されている。
【0006】
他にも、樋門等の構造物における開口部に対し、その扉体の開閉バランスを調整するバランスウエイトを主ウエイトと補助ウエイトとにより構成し、扉体が全閉状態から所定の傾斜角度まで開放される範囲では、主ウエイトと補助ウエイトとが一体的に回動するもの(特許文献2参照。)。
【0007】
用水路の排水口に内外水方向に揺動自在に支持され、排水隙間を隔てて排水口を内水方向に閉じる下揺動位置と、排水口を外水方向に開く上揺動位置とに揺動自在な扉体を備え、用水路に設けられた支持桁に内水側第1連結軸で揺動自在に連結され、内水側第1連結軸よりも外水側の上端部にバランスウエイトが取付けられた内水側リンクと、内水側リンクの下端部に、内水側の上端部が内水側第2連結軸で揺動自在に連結された扉体と、扉体の外水側の下部に設けられたフロートとを備え、外水の内水側への漏水が極めて少なく、かつ騒音も発生し難く、水流も乱さないフラップゲート(特許文献3参照。)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-96122号公報
【特許文献2】特許第5503074号公報
【特許文献3】特開2015-105566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、門柱不要の電動力ゲート又は無動力フラップゲートを既設樋門に取り付ける際には、既存の門柱及びゲートの撤去、さらに取り付け部分や翼壁の改築を要する。さらには、継手機能の改変という課題がある。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑み、既存の門柱、ゲート等の撤去を要することなく、また、翼壁の改築もなく軽微な改築で経済的に設置できるばかりでなく、継手部を改変することなく設置できるユニット式フラップゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明のユニット式フラップゲートは、既設樋門の河川本流側の流出口から河川支流側流入口の中間に嵌装可能に形成された支持筐体(ソケット)と、当該支持筐体内に、占有高を有して軸承されると共に、前記流出口を開閉するフラップを有するヒンジ式ゲートとからなることを第1の特徴とする。
【0011】
また、河川本流側からの逆流水によりフラップが押圧された際、閉じたフラップにより水流を堰止め可能なフラップ係止体を支持筐体(ソケット)の内壁面下部に設けたことを第2の特徴とする。
【0012】
また、フラップが側面断面視で略逆く字状に屈曲形成すると共に、支持筐体(ソケット)内の上部に設けた支軸を中心に振り子動可能に取り付けたことを第3の特徴とする。
【0013】
また、フラップの河川本流側面に、フラップに取り付けたフロートの浮力と均衡可能な重量と位置決め機能を備えた複数のウエイトを擁するバランスウエイトを取り付けたことを第4の特徴とする。
【0014】
また、複数のウエイトが、少なくとも第1のウエイトと第2のウエイトとからなり、当該第2のウエイトは、前記第1のウエイトを常に自由垂下状態になるように吊持し、且つ、フラップの表面に貼着されたスキンプレート上に固定すると共に、前記第1のウエイトの吊り部材を保持する保持アームを有することを第5の特徴とする。
【0015】
また、フラップの外周に倣って矩形環状に形成されると共に、側断面視で、既設樋門の河川本流側の流出口に向かって拡径するように鈍角に屈曲して一体的に形成され、且つ、支持筐体(ソケット)内壁面に当接する戸当り辺を有する水密ゴム環が配設され、当該水密ゴム環はゴムの硬さが45から65の範囲で、且つ、その4隅の角頂部分の厚みを変化させて撓み量を調整することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)堤内側からの平常時の流水に対しては、その水位に対応して自ずから浮上して流通させ、洪水のような水位上昇時には河川本流側からの逆流の水圧を利用して扉体が自ずと閉じるので、人手による閉止操作が不要になり、安全性が担保できる。
(2)既存のゲートに重ねて本発明のゲート装置を取付けておけば、既存の操作装置に故障が生じて閉止操作が不能になった場合でも自動的に開閉動作を行うことができる。
(3)支持筐体内に予めフラップゲートを組み入れたユニット式にして函体内に設置することにより、既存の門柱やゲート等の撤去を要することなく、既存の門柱やスライドゲートが残置されていても軽微な改築で済み経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るユニット式フラップゲートの一実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るユニット式フラップゲートを堤防の既設樋門に設置した状態を模式的に示す一部切欠き斜視図。
【
図3】
図1のユニット式フラップゲートを既設樋門に設置した状態を模式的に示す側面断面図。
【
図4】本発明に係るユニット式フラップゲートを堤防の既設樋門に設置した状態を示す(a)は正面断面図、(b)は背面断面図である。
【
図5】バランスウエイトの組立て構造を示す(a)は一部切り欠き正面図、(b)は第2のウエイトの平面図、(c)は第1のウエイトの平面図、(d)は一部切り欠き側面図である。
【
図6】水密ゴム環を示す(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は要部拡大断面図である。
【
図7】水密ゴム環の他の実施例を示す(a)は要部拡大平面図、(b)は(a)の側面断面図、(c)は要部斜視図である。
【
図8】フラップの主構を示す(a)は側面図、(b)は側面断面図である。
【
図10】支軸の軸受けの函体壁への取り付け方法における(a)は仮固定状態、(b)は最終固定状態を示す要部拡大断面図である。
【
図11】(a)は低水位時又は渇水時、(b)は通常水位時におけるゲートの作動状態を示す説明図である。
【
図12】計画余裕高水位時におけるゲートの作動状態を示す説明図である。
【
図13】(a)は洪水により、内外水位が同時に上昇し始めた時、(b)は河川本流側が洪水時かつ、河川支流側流入口が満水時におけるゲートの作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例0019】
[ユニット式フラップゲートの設置概要]
図1乃至
図4に示すように、支持筐体(ソケット)2内に底版から支軸シャフト12aまでの占有高Hdを有して軸承されると共に、フラップ1を有するヒンジ式ゲートとからなるにユニット式フラップゲートUGは、既設樋門20の既存ゲート21が開放された河川本流側RMの流出口19Aより嵌挿し移動させ、所定の位置で仮固定し、樋門函体18の内面とユニット式フラップゲートUGの支持筐体2の外面との所定の隙間に中詰め材の無収縮モルタル26などを充填した後、最終固定する。
【0020】
尚、既存の門柱22や既存ゲート21は、ユニット式フラップゲートUGの設置作業に支障を来たさなければ、撤去する必要はない、また、新設樋門、さらに開水路などにも設置が可能であるが、ここでは既設樋門20が構築された樋門函体18に設置する場合における実施例で説明する。
【0021】
図2に示すように、堤防25の堤内側の排水を行うために、堤防25に埋設された既設樋門20内部を流れて河川本流側RMに排出される。豪雨洪水時には、既設樋門20の樋門函体18内を満水状態の水位で流出する場合が多いが、樋門函体18の流出口19A、すなわち、既存ゲート21の取付け側においては、水叩部24の水路幅が広がり、流出口19Aからの水量が拡散され、樋門函体18の流出口19A近傍の水位は低下する。この計画洪水状態の水位から流出口19Aの低下した水位の区間Lにおいて所期の効果を得るために好適な位置にユニット式フラップゲートUGを設置する。また、河川本流側RMからの逆流水によりフラップ1が押圧された際、閉じたフラップ1により流水を堰止め可能なフラップ係止体17を支持筐体(ソケット)2の内壁面下部に設ける。
【0022】
[ユニット式フラップゲートの構成]
本実施例に係るユニット式フラップゲートUGの支持筐体(ソケット)2は、奥行き長さの異なる戸当り2bを上下辺端に一体に形成した略台形箱状で、その左右両面に河川本流側RMに張り出した一対の筐体側板2aを有しており、箱部分の内側面は4面すべてがフラップ1の戸当り2bを兼用している。また、本実施例に係るバランスウエイトBWは、少なくとも第1のウエイト6と第2のウエイト7とからなり、第2のウエイト7は、第1のウエイト6を常に自由垂下状態になるように吊持連結している。そして夫々のウエイトには重量調整が可能なように、ウエイトの両端に嵌装可能な調整用ウエイト8又は11を備えている。
【0023】
このように、フラップ1は支持筐体(ソケット)2内の上部に設けた支軸シャフト12aを中心に振り子動可能に取り付けられている。つまり、フラップ1に取り付けたフロート材14の浮力及び縦桁(主構)3a、水密ゴム環16の重量と均衡可能な重量と位置決め機能を備えた複数のウエイト6及び7を擁するバランスウエイトBWが取り付けられている。第2のウエイト7は、第1のウエイト6を常に自由垂下状態になるように吊持し、且つ、フラップ1の表面に貼着されたスキンプレート15上に固定されて第1のウエイト6の吊持連結材9を保持する保持アーム10を有する。
【0024】
また、筐体側板2aの上部には、フラップ1を支持する占有高Hdを有した軸承板13が取付けられていて、支持筐体2の内壁下部には閉じたフラップ1を受け止めるフラップ係止体17が取付けられている。これにより、軸受け12に嵌入された支軸シャフト12aでフラップ1が吊持され、河川本流側RMから流出口19Aに逆流入してフラップ1が水圧に押されてフラップ係止体17で受け止められて逆流水を堰き止める。さらに、フラップ1に取付けられた水密ゴム環16は、逆流水で押圧されているゴム辺の先端が、箱部分を形成している上下左右4辺の戸当り2bに当接され水密性を保っている。後述するが、水密ゴム環16の四隅の形状が円弧形状に設計されている場合には、支持筐体2の箱部分の角も水密ゴム環16の角に応じた円弧形状とする。
【0025】
すなわち、本実施例のユニット式フラップゲートUGは、支持筐体2の筐体内面壁を戸当り2b兼用とし、一対の筐体側板2a上部に軸承板13で軸承された、流出口19Aを開閉するフラップ1を有するヒンジ式ゲートを構成している。
【0026】
[フラップの取付構造]
フラップ1の扉体3は側面視で略逆く字状を成している屈曲した構造体であり、その構成は、
図5乃至
図8に示すように、縦桁(主構)3aと、横桁3bとから成り、その前面(河川本流側RM)にはスキンプレート4が貼設されていて、さらに、スキンプレート4上方に支軸シャフト12aが嵌入される軸受け12と、第2のウエイト7を保持する保持アーム10が接合されており、複数枚の調整用ウエイト11が接続可能である。第2のウエイト7は吊持連結材9により第1のウエイト6を常に自由垂下状態になるとともに重量の調整をするように吊持し、第1のウエイト7にも複数枚の調整用ウエイト8が接続可能にされている。
尚、本実例では、第1のウエイト6が自由垂下する態様で説明してるが、バランスウエイトBWと扉体3の均衡を図る上では、吊持連結材9を固定して垂下状態を保持するものでもよい。また、第1のウエイト6の断面は円形としてるが、一部を切り欠いた円形又は多角形として重量の調整をするものでもよい。
【0027】
また、フラップ1には、その前面(河川本流側RM)と背面側に浮体である大小様々なフロート材14が組み込まれていて、支軸シャフト12aを中心にバランスウエイトBWの重量と扉体3(フロート材14、水密ゴム環16を含む)の自重で均衡可能に配置されていて、バランスウエイトBWは支軸シャフト2aの左側上部に位置し、支軸シャフト2aを中心に右側には略逆く字状の扉体3が軸受け12で吊持されている。
【0028】
また、
図9に示すように、スキンプレート4の表面及び扉体3の縦桁3a及び横桁3bの間にはフロート材14が組込まれており、スキンプレート4側のフロート材14は、表面から突出、縦桁3aと横桁3bには大小さまざまなフロート材14が嵌め込まれて、フロート材14の一部は構造体から突出しているが、これらは何れもフロート保持カバー5,15で覆われて保護されている。その形状及び体積は任意であり、樋門函体18の内寸の状況に応じて変えることが可能であり、任意に浮力調整を行うことができるようにされている。さらに、経年劣化によるフロート材14の交換取付けを簡便にできるようにされている。
【0029】
扉体3の背面(堤内川流入口RS)には、水密ゴム環16が貼設され、
図6に示すように、押えプレート16aを介してボルトで締結されていて、河川本流側RMに水密ゴム環16が戸当り2bに当接される辺の角度は、河川本流側RMに拡径されていて、水圧によりフラップ1がフラップ係止体17で受け止められ、拡径された辺も押圧されて戸当りに当接されて水密性が保たれる。 すなわち、水密ゴム環16は、フラップ1の外周に倣って矩形環状に形成されると共に、側断面視で、既設樋門20の河川本流側RMの流出口19Aに向かって拡径するように鈍角に屈曲して一体的に形成され、且つ、支持筐体(ソケット)2の内壁面に当接する戸当り辺を有する構成とされている。
【0030】
尚、水密ゴム環16の四隅は隣り合う辺が角形状を成した形であるが、
図7に示すように、円弧状に角を滑らかにして形成してもよい。また、水密ゴム環16の直線部分と四隅の角部分では水圧で押圧された際の撓み量が夫々に異なるために、CRゴムの硬さ45~65の範囲で、且つ、その四隅の角頂部分の厚みt1~t2を変化させ撓み量を調整することで、水圧で押圧された水密ゴム環16が戸当り2bにCRゴムが密着し水密性が保たれている。
【0031】
[ユニット式フラップゲートの設置方法]
樋門函体18の内部が渇水状態において、河川本流側RMの流出口19Aより嵌挿させて流水水位の余裕高h1~h2の範囲が決められた位置に設置固定する。その際、嵌挿入されたユニット式フラップゲートUGを任意の位置まで人力又は牽引機材(図示せず)で移動させて設置固定する。
【0032】
設置後、
図10に示すように、ユニット式フラップゲートUGを設置する前に樋門函体18の壁面18にアンカー孔27aを削孔しておく。支持筐体2の壁に取り付けている仮固定兼調整ボルト28により樋門函体18の内壁と支持筐体2の外壁の間に計画遊間dを保持し、その後、戸当り2bに取り付けた軸軸承板13と支持筐体2を貫通してアンカーボルト27を挿入し締結して本固定し、樋門函体18の内面と支持筐体2の外側の隙間に無収縮モルタル26を充填して最終固定する。
【0033】
無収縮モルタル26が凝固した後、仮固定兼調整ボルト28を取り除く。既設樋門函体18の内空間の四隅には、ハンチと呼ばれる隅切りが施され、多々存在する。このような断面構造においては、予めユニット式フラップゲートUGが嵌挿又は移動可能なように、ハンチ(一室につき4か所)を除去して、ユニット式フラップゲートUGの取付け完了後に、除去したハンチ部面を周知手段で保護する。
【0034】
ユニット式フラップゲートUGの各部材の材質については、鋼製部分については、ステンレス製鋼材、水密ゴム環16はCRゴム、フロート材14は発泡性スチロールが好ましいが、フロート保護カバー5,15及びフロート材14についてはこの限りではない。
【0035】
[流水位の状況に応じたフラップゲートの動作説明]
以下、
図11及び
図12に基づいて、本実施例フラップゲートの動作を説明する。
【0036】
図11(a)に、低水位状態または渇水状態の動作を示す。
支持筐体2の箱内部に組み込まれたフラップ1は、軸受け12に嵌挿された支軸シャフト12aを中心に扉体3(フロート材14、水密ゴム環16を含む)の重量と、第1ウエイト6及び第2のウエイト7の重量で均衡が保たれていて、また、フラップゲート1の略逆く字状の下辺と鉛直線上の辺との間には所期開度と呼ばれる角度αを有していて、第2のウエイト7に吊持連結された第1のウエイト6は自由垂下状態を保っている。この状態における微量の水は、支持筐体2と扉体3に貼着して固定された水密ゴム環16の隙間から流れ出る。
【0037】
図11(b)に、平常水位時(水位が変化する流水状態)の動作を示す。まず、支持筐体2の箱内部に組み込まれたフラップ1は、河川支流側RSの水位が上昇して流入口19Bに流れた場合、フラップ1に取り付けたフロート材14の浮力及び流水に押されて支軸シャフト12aを中心にして円弧を成して回転しながら上昇する。その際、第2のウエイト7に吊持連結された第1のウエイト6は自由垂下状態を保っている。さらに、計画水面変化区間Lの範囲内でフラップ1の背面が流水面に沿って浮上している。
【0038】
図12は計画余裕高h2がh1に変位する流水状態を示す。この場合、水位の水頭差h=(H2-H1)の変化の範囲内でフラップ1が流水面に沿って浮上する。すなわち、水位が上昇して計画余裕高h2の水位に到達した場合、フラップ1の状態は略水平状態となり、計画水面変化区間Lを漂うが、樋門函体18の内部水位が下がると、フラップ1に取り付けたフロート材14による浮力が減少し、各々のウエイト6及び7の重量及び扉体3の自重が加わり、支軸シャフト12aを中心に回転しながら降下して、
図11(a)に示す低水位又は渇水状態に自ずと戻り、第1のウエイト6も自由垂下状態に復帰する。
【0039】
洪水時、内外水位が同時に上昇し始めた場合、扉体3のフロートに作用する浮力により扉体3は自動的に閉動作する(
図13(a)参照)。
【0040】
図13(b)は、河川本流側RMが洪水水位状態で、流出口19Aから流水が逆流し、さらに、堤内水位が流入口19Bの高さに達し、樋門函体18内が満水になった状態を示す。すなわち、流出口19Aから流水が逆流した場合、その水圧に押圧されたフラップ1は、フラップ係止体17で受け止められる。さらに、水位の上昇と共に、扉体3背面に貼着され固定されている水密ゴム環16の略く字状の4辺に水圧が加わり、水位上昇に伴ってその先端部が戸当り2bに押圧当接され、さらに、水位が上昇を続けて河川本流側RMの流出口19Aの上辺を越えた場合は、水密ゴム環16の上辺にも水圧が加わり、箱状の戸当り面2bに4辺の先端部が全て当接されて水密性が向上する。
【0041】
また、堤内側の流水が流れ込み樋門函体18内を満水にした状態では、河川本流側RMの洪水水位と、堤内側RSの排水水位では函体底版面を基準として水深(高さ)H1がH2よりも勝っていて、樋門函体18内のフラップ1に加わる水圧荷重も勝っていてるので開動作は行われない。すなわち、洪水時に外水圧が内水圧を上回ると自動的に閉扉する。
【0042】
その後、河川本流側RMの水位が低下減少すると、逆流水圧による荷重が取り除かれ、流入口19Bの水位も低下して、水圧による荷重が取り除かれて、フラップ1はフラップ係止体17から離脱してシャフト支軸12aに吊持されて自由垂下状態に回帰して初期開度を維持する(
図13(a)→
図13(b)→
図12→
図11(a)の状態に復帰する)。
尚、上記実施例は好適な実施形態は具現化した一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて種々変更可能である。例えば、本実施例では、支持筐体(ソケット)2内にフラップ1を有するヒンジ式ゲートを予め組み込んで一体的に構成した状態で設置しているが、これらを分離した状態で現場まで移送し、先ず、支持筐体(ソケット)2を樋門函体18内に嵌装設置した後、フラップ1を組み込むものでもよい。