(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165576
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20221025BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E02F3/43 F
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070973
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴寛
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BB04
2D003CA02
2D003DA02
2D003DB04
2D003DB05
2D003EA01
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】作業装置に装備される部品点数の増加を抑制しながらも、作業装置の姿勢を精度よく演算することが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】油圧駆動式の作業装置2を有するホイールローダ1において、車体に取り付けられ、バケットシリンダ24を撮像するカメラ3と、カメラ3で撮像されたバケットシリンダ24の画像であるシリンダ画像を解析するコントローラ5,5Aと、を有し、カメラ3は、作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24を撮像可能とする位置に配置されており、コントローラ5,5Aは、作業装置2に係る寸法データを含む複数のパラメータL1~L14を記憶しており、カメラ3により撮像されたシリンダ画像を取得し、取得されたシリンダ画像からバケットシリンダ24に係る複数の投影寸法を演算し、演算された複数の投影寸法および記憶されている複数のパラメータL1~L14に基づいて、作業装置2の姿勢を演算する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、を備えた作業車両において、
前記油圧シリンダに係る寸法を示す標識と、
前記車体に取り付けられ、前記標識を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像された前記標識の画像である標識画像を解析するコントローラと、を有し、
前記撮像装置は、
前記作業装置の可動範囲において前記標識を撮像可能とする位置に配置され、
前記コントローラは、
前記作業装置に係る寸法データを含む複数のパラメータを記憶し、
前記撮像装置により撮像された前記標識画像を取得し、
取得された前記標識画像から前記標識に係る複数の投影寸法を演算し、
演算された前記複数の投影寸法および記憶されている前記複数のパラメータに基づいて、前記作業装置の姿勢を演算する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記作業装置を操作するための操作装置と、
前記操作装置を操作端位置で保持するデテント機能を有するデテント機構と、を有し、
前記コントローラは、
演算された前記作業装置の姿勢に基づいて、前記デテント機能を設定する設定信号または前記デテント機能を解除する解除信号を前記デテント機構に対して出力する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記車体に設けられた運転室を備え、
前記作業装置は、前記運転室の一側に配置されており、
前記撮像装置は、前記運転室に取り付けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車両において、
前記作業装置は、
前記車体の前部に上下方向に回動可能に取り付けられたリフトアームと、
前記リフトアームの先端部に上下方向に回動可能に取り付けられたバケットと、
前記バケットを駆動する前記油圧シリンダであるバケットシリンダと、を有し、
前記バケットシリンダは、
筒状のシリンダチューブと、
前記シリンダチューブに対して軸方向に伸縮可能に嵌入されたロッドと、を有し、
前記コントローラは、
前記複数の投影寸法をそれぞれ実寸法に変換するための基準となる複数の基準値を記憶し、
前記撮像装置により撮像された前記バケットシリンダの前記標識画像を取得し、
前記複数の投影寸法のうち、第1投影寸法として前記ロッドを含む前記バケットシリンダのストロークの投影長さを、第2投影寸法として前記撮像装置の撮像面に平行な一方向に沿った投影長さを、第3投影寸法として前記撮像面に平行な他方向に沿った投影長さを、取得された前記標識画像からそれぞれ演算し、
演算された前記第1投影寸法と、記憶されている前記複数の基準値のうちの前記バケットシリンダのストロークに関する第1基準値と、に基づいて、前記バケットシリンダのストロークを演算し、
演算された前記第2投影寸法と演算された前記第3投影寸法との比と、記憶されている前記複数の基準値のうちの前記バケットシリンダの角度に関する第2基準値と、に基づいて、前記バケットシリンダの角度を演算し、
演算された前記バケットシリンダのストロークおよび前記バケットシリンダの角度と、記憶されている前記複数のパラメータと、に基づいて、前記作業装置の姿勢を演算する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項4に記載の作業車両において、
前記標識には、前記バケットシリンダに設けられ、前記第1基準値に相当する前記バケットシリンダの軸方向に所定の長さを有した第1標識が含まれ、
前記コントローラは、
前記第1標識の前記所定の長さを前記第1基準値として記憶し、
前記第1投影寸法としての前記バケットシリンダのストロークと、前記第1標識の投影長さとを、取得された前記標識画像からそれぞれ演算し、
演算された前記バケットシリンダのストロークおよび前記第1標識の投影長さと、記憶されている前記所定の長さと、に基づいて、前記バケットシリンダのストロークを演算する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項4に記載の作業車両において、
前記標識には、前記バケットシリンダに設けられ、前記バケットシリンダの角度を示す第2標識が含まれ、
前記コントローラは、
前記バケットシリンダが基準姿勢となっている場合の前記標識画像から、前記第2標識における前記撮像面に平行な一方向に沿った所定の基準投影長さと前記第2標識における前記撮像面に平行な他方向に沿った所定の基準投影長さとの比を、前記第2標識の基準比として演算し、
演算された前記第2標識の前記基準比を前記第2基準値として記憶し、
前記第2標識における前記撮像面に平行な一方向に沿った所定の投影長さを前記第2投影寸法として、前記第2標識における前記撮像面に平行な他方向に沿った所定の投影長さを前記第3投影寸法として、取得された前記標識画像からそれぞれ演算し、
演算された前記第2標識における前記第2投影寸法と前記第3投影寸法との比と、記憶されている前記基準比と、に基づいて、前記バケットシリンダの角度を演算する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項7】
請求項1に記載の作業車両において、
前記車体は、ステアリング操作によって前部が後部に対して左右方向に屈曲可能に設けられ、
前記車体の前記前部には前記作業装置が、前記車体の前記後部には前記撮像装置が、それぞれ取り付けられ、
前記コントローラは、
取得された前記標識画像に基づいて、前記車体が直進姿勢であるか否かを判定し、
前記車体が前記直進姿勢であると判定された場合に、前記作業装置の姿勢を演算する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業対象物を掘削する掘削作業や積込み先へ荷を積み込む積込作業などを行う作業装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業車両においても、車体に取り付けられたカメラで撮像された画像を解析し、解析されたデータを運転支援に利用する技術が知られている。例えば、特許文献1には、運転室のルーフ側に設けられたカメラで掘削対象物を撮像し、撮像された掘削対象物の画像データから土質を判定し、判定された土質の情報に基づいて掘削対象物に適した掘削姿勢による掘削動作を実行するホイールローダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールローダでは、作業装置の掘削姿勢を検出する場合、角度センサや近接センサなどを用いる必要があり、これらのセンサは作業装置を構成する構成部品であるリフトアームおよびバケットのそれぞれに取り付ける必要があるため、作業装置に装備されるセンサ数が増えてしまう。また、センサの個数が多いと、車体の振動によるセンサの故障や破損が多く発生することになる。さらに、作業装置に各種センサを取り付ける際には、取付用の部品や電気配線も必要となるため、作業装置に装備される部品点数がさらに増えて作業装置における構成が複雑になってしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、作業装置に装備される部品点数の増加を抑制しながらも、作業装置の姿勢を精度よく演算することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体に取り付けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、を備えた作業車両において、前記油圧シリンダに係る寸法を示す標識と、前記車体に取り付けられ、前記標識を撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像された前記標識の画像である標識画像を解析するコントローラと、を有し、前記撮像装置は、前記作業装置の可動範囲において前記標識を撮像可能とする位置に配置され、前記コントローラは、前記作業装置に係る寸法データを含む複数のパラメータを記憶し、前記撮像装置により撮像された前記標識画像を取得し、取得された前記標識画像から前記標識に係る複数の投影寸法を演算し、演算された前記複数の投影寸法および記憶されている前記複数のパラメータに基づいて、前記作業装置の姿勢を演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業装置に装備される部品点数の増加を抑制しながらも、作業装置の姿勢を精度よく演算することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】
図1において作業装置が動作している様子を示す図である。
【
図3】カメラの取り付け位置について示し、カメラが運転室内のフロントコンソール上に取り付けられた場合の図である。
【
図4】カメラの取り付け位置の変形例1について示し、カメラが運転室の前側上方に取り付けられた場合の図である。
【
図5】カメラの取り付け位置の変形例2について示し、カメラが運転室内の中央上方に取り付けられた場合の図である。
【
図6】
図3におけるカメラの取り付け位置側から見た作業装置を示し、バケットが地面に接触している位置にいる場合の図である。
【
図7】
図3におけるカメラの取り付け位置側から見た作業装置を示し、バケットがフルチルト位置にあって、リフトアームが上昇途中である場合の図である。
【
図8】
図3におけるカメラの取り付け位置側から見た作業装置を示し、バケットがフルチルト位置のままリフトアームが最も上昇している位置にいる場合の図である。
【
図9】第1実施形態に係る作業装置の駆動制御システムの一構成例を示すシステム構成図である。
【
図10】第1実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図11】作業装置に関する各種のパラメータを示す図である。
【
図12A】バケットがフルチルト動作を行っている状態でリフトアームが所定の高さまで上昇している場合におけるバケットシリンダを示す左側面図である。
【
図13】
図11Aにおけるバケットシリンダのシリンダ画像を示す画像図である。
【
図14】第1実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】左方向にステアリングが切られた場合におけるホイールローダを示す上面図である。
【
図16】
図4におけるカメラの取り付け位置側から見た作業装置を示し、バケットがフルチルト位置にあって、リフトアームが上昇途中の状態で左方向にステアリングが切られた場合の図である。
【
図17】第2実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図18】
図16におけるバケットシリンダのシリンダ画像を示す画像図である。
【
図19】第2実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば、土砂や鉱物などの作業対象物を掘削してダンプトラックやホッパーといった積込み先へ作業対象物を積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0010】
<ホイールローダ1の構成>
まず、ホイールローダ1の構成について、
図1~5を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
図2は、
図1において作業装置2が動作している様子を示す図である。
【0012】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、ステアリング操作によって前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0013】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、4つの車輪11のうち、左側の前輪11Aおよび後輪11Bのみを示している。前フレーム1Aの前部には、油圧により駆動され前フレーム1Aに対して上下方向に動作する作業装置2が取り付けられている。
【0014】
作業装置2は、前フレーム1Aに上下方向に回動可能に取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する油圧シリンダとしての2つのリフトアームシリンダ22(
図1では不図示、
図2~5参照)と、リフトアーム21の先端部に上下方向に回動可能に取り付けられたバケット23と、バケット23を駆動する油圧シリンダとしてのバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、を有している。なお、2つのリフトアームシリンダ22は車体の左右方向に並んで配置されているが、
図2~5では、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみが示されている。
【0015】
2つのリフトアームシリンダ22はそれぞれ、
図3~5に示すように、作動油が流出入する筒状のシリンダチューブ221と、シリンダチューブ221に対して軸方向に伸縮するロッド222と、を有する。ロッド222は、一端側がシリンダチューブ221内に嵌入され、他端側がシリンダチューブ221から突出してリフトアーム21に取り付けられている。シリンダチューブ221は、底側となる基端部が前フレーム1Aに取り付けられている。
【0016】
そして、2つのリフトアームシリンダ22はそれぞれ、シリンダチューブ221に作動油が供給されてロッド222が伸縮することにより、リフトアーム21を駆動する。
図2に示すように、リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド222が伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、各ロッド222が縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。
【0017】
バケットシリンダ24は、
図1~
図5に示すように、作動油が流出入する筒状のシリンダチューブ241と、シリンダチューブ241に対して軸方向に伸縮するロッド242と、を有する。ロッド242は、一端側がシリンダチューブ241内に嵌入され、他端側がシリンダチューブ241から突出してベルクランク25に取り付けられている。シリンダチューブ241は、底側となる基端部が前フレーム1Aに取り付けられている。
【0018】
そして、バケットシリンダ24は、シリンダチューブ241に作動油が供給されてロッド242が伸縮することにより、ベルクランク25を介してバケット23を駆動する。
図2に示すように、バケット23は、バケットシリンダ24のロッド242が伸びることによりチルト(リフトアーム21に対して上方向に回動)し、ロッド242が縮むことによりダンプ(リフトアーム21に対して下方向に回動)する。これにより、バケット23は、土砂や鉱物などの作業対象物を掬って排出(放土)することができる。
【0019】
図1に示すように、バケットシリンダ24のシリンダチューブ241には、角度の標識となる標識円板60と、寸法の標識となる標識バー63と、がそれぞれ設けられている。これら標識円板60および標識バー63については後述する。なお、
図2~5では、標識円板60および標識バー63の図示を省略している。
【0020】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、ホイールローダ1の駆動に必要な各種の機器類を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0021】
運転室12には、バケットシリンダ24を撮像する撮像装置としてのカメラ3が取り付けられている。このカメラ3は、バケットシリンダ24の静止画ないし動画を撮影することが可能な撮像装置であればよく、例えば、バケットシリンダ24を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、バケットシリンダ24の奥行き方向のデータも記録できるようにしたステレオカメラを用いてもよい。
【0022】
カメラ3は、作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24の全体を撮像可能とする位置に配置されている。なお、「作業装置2の可動範囲」とは、リフトアーム21の最下降位置から最上昇位置までの可動範囲およびバケット23のフルダンプ位置からフルチルト位置までの可動範囲を含めた、作業装置2全体としての可動範囲をいう。また、「バケットシリンダ24の全体」とは、シリンダチューブ241の基端部からロッド242の他端部(シリンダチューブ241から突出した先端部)までの範囲全てをいう。
【0023】
なお、カメラ3は、必ずしも作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24の全体を撮像可能とする位置に配置されている必要はなく、少なくとも、作業装置2の可動範囲において、作業装置2を駆動する油圧シリンダ(リフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24)に係る寸法を示す「標識」を撮像可能とする位置に配置されていればよい。したがって、例えば、カメラ3は、作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24のロッド242を含む一部分を撮像可能とする位置に配置されていてもよい。
【0024】
なお、この油圧シリンダに係る寸法を示す「標識」には、油圧シリンダの寸法や角度を演算するために油圧シリンダに取り付けられた各種の標識部材(例えば、後述する標識円板60や標識バー63)、ならびに、油圧シリンダを構成する各部品(ロッドやシリンダチューブ)および各部品の構成要素の一部が含まれる。
【0025】
ここで、カメラ3の取り付け位置について、
図3~
図5を参照して説明する。
【0026】
図3は、カメラ3の取り付け位置について示し、カメラ3が運転室12内のフロントコンソール120上に取り付けられた場合の図である。
図4は、カメラ3の取り付け位置の変形例1について示し、カメラ3が運転室12の前側上方に取り付けられた場合の図である。
図5は、カメラ3の取り付け位置の変形例2について示し、カメラ3が運転室12内の中央上方に取り付けられた場合の図である。
【0027】
運転室12内には、オペレータが着座する運転席(不図示)が中央部に設けられている。そして、
図3~5に示すように、運転席の前側には、モニタや各種の操作スイッチなどが取り付けられたフロントコンソール120が設けられている。
図3では、このフロントコンソール120上にカメラ3が取り付けられている。
図3において一点鎖線で示すように、カメラ3の取り付け位置がフロントコンソール120上である場合には、カメラ3が撮像する範囲である画角の内側(以下、単に「カメラ3の画角内」とする)に作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24が含まれる。
【0028】
また、変形例1としての
図4では、運転室12の外部における前側上方にカメラ3が取り付けられている。
図4において一点鎖線で示すように、カメラ3の取り付け位置が運転室12の前側上方である場合においても、カメラ3が撮像する範囲である画角内に作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24が含まれる。
【0029】
そして、変形例2としての
図5では、運転室12内の中央上方(例えば、運転席の上方部)にカメラ3が取り付けられている。
図5において一点鎖線で示すように、カメラ3の取り付け位置が運転室12の中央上方である場合においても、カメラ3が撮像する範囲である画角内に作業装置2の可動範囲においてバケットシリンダ24が含まれる。
【0030】
なお、カメラ3は、前述したように、作業装置2の可動範囲において作業装置2を駆動する油圧シリンダに係る寸法を示す「標識」を撮像可能とする位置であれば、車体におけるいずれの位置に取り付けられていてもよい。ただし、
図3~5に示すように、カメラ3は、車体の後部に設けられた運転室12に取り付けられることにより、作業装置2の動作によって生じる振動の影響を受けにくく、破損や故障を防ぐことができる。また、
図4に示すように、カメラ3が運転室12の外部に取り付けられている場合には、外方からの飛来物などがカメラ3に衝突する可能性がある。そのため、カメラ3の破損や故障を防ぐ観点では、
図3および
図5に示すように、カメラ3は、運転室12の内部に取り付けられていることが好ましい。
【0031】
また、カメラ3は、車体に複数個設置されていてもよい。この場合において、複数のカメラ3のうち、作業装置2の姿勢に応じてバケットシリンダ24の撮像に適した位置のカメラ3を選択する構成としてもよい。
【0032】
次に、作業装置2の駆動制御システムについて、
図6~19を参照して実施形態ごとに説明する。
【0033】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る作業装置2の駆動制御システムについて、
図6~14を参照して説明する。
【0034】
(作業装置2の駆動制御システムの概要)
まず、作業装置2の駆動制御システムの概要について、
図6~9を参照して説明する。
【0035】
図6は、
図3におけるカメラ3の取り付け位置側から見た作業装置2を示し、バケット23が地面に接触している位置にいる場合の図である。
図7は、
図3におけるカメラ3の取り付け位置側から見た作業装置2を示し、バケット23がフルチルト位置にあって、リフトアーム21が上昇途中である場合の図である。
図8は、
図3におけるカメラ3の取り付け位置側から見た作業装置2を示し、バケット23がフルチルト位置のままリフトアーム21が最も上昇している位置にいる場合の図である。
図9は、第1実施形態に係る作業装置2の駆動制御システムの一構成例を示すシステム構成図である。なお、
図6~8では、バケットシリンダ24のシリンダチューブ241に設けられた標識円板60および標識バー63の図示を省略している。
【0036】
ホイールローダ1に搭載された作業装置2の駆動制御システムでは、カメラ3で撮像された撮像画像を用いて作業装置2の駆動を制御する。なお、以下の説明では、
図3に示す取り付け位置、すなわち運転室12内のフロントコンソール120上に配置されたカメラ3で撮像された撮像画像を用いた場合を例に挙げる。
【0037】
カメラ3は作業装置2の後方に配置されているため、カメラ3で撮像される撮像画像は、
図6~8に示すように、実際の作業装置2に対し後方からの投影画像となる。なお、本実施形態では、カメラ3の撮像対象である「標識」をバケットシリンダ24とし、カメラ3で撮像された標識画像をバケットシリンダ24の撮像画像(以下、単に「シリンダ画像」とする)とする。したがって、このシリンダ画像についても後方からの投影画像となっており、シリンダ画像上のバケットシリンダ24の寸法は全て、実際の寸法ではなく「投影寸法」となる。
【0038】
まず、バケット23が地面に接触している位置にいる場合には、バケットシリンダ24は、ロッド242の他端部がシリンダチューブ241の基端部よりも僅かに下側に位置し、水平姿勢から前側が斜め下に僅かに傾いた状態となる(
図1および
図2参照)。したがって、シリンダ画像では、
図6に示すように、ロッド242はシリンダチューブ241に隠れるような写り方となる。
【0039】
次に、バケット23が地面に接触している位置からチルトしてフルチルト位置となると共に、リフトアーム21が上昇して水平姿勢となったような場合には、バケットシリンダ24は、ベルクランク25に取り付けられたロッド242の他端部がリフトアーム21の上昇に伴って上方に移動すると共にロッド242自体も伸びるため、ロッド242の他端部がシリンダチューブ241の基端部よりも僅かに上側に位置し、水平姿勢から前側が斜め上に僅かに傾いた状態となる(
図2参照)。したがって、シリンダ画像では、
図7に示すように、ロッド242はシリンダチューブ241に隠れる部分が減る。
【0040】
そして、バケット23がフルチルト位置のままリフトアーム21が上昇していき最も上昇している位置となった場合には、バケットシリンダ24は、ロッド242の他端部がリフトアーム21の上昇に伴ってさらに上方に移動するため、ロッド242の他端部がシリンダチューブ241の基端部よりもはるか上方に位置し、水平姿勢から前側が斜め上に大きく傾いた状態となる(
図2参照)。したがって、シリンダ画像では、
図8に示すように、ロッド242はシリンダチューブ241に隠れることなく露出する。
【0041】
このように、リフトアーム21の位置およびバケット23の位置によってシリンダ画像上のシリンダチューブ241およびロッド242の写り方が異なってくる。そこで、作業装置2の駆動制御システムでは、
図9に示すように、カメラ3がコントローラ5に接続されており、コントローラ5は、カメラ3から出力されたシリンダ画像を解析することによって作業装置2の姿勢を演算している。また、コントローラ5は、演算された作業装置2の姿勢に基づいて作業装置2の駆動を制御する。
【0042】
作業装置2は、運転室12(
図1~5参照)内に設けられた操作装置としての操作レバー4によって操作される。操作レバー4は、
図9に模式的に示すように、前後方向および左右方向に操作可能なレバーである。例えば、オペレータが、操作レバー4を前方向に倒すとリフトアーム21が下降し、操作レバー4を後方向に倒すとリフトアーム21が上昇する。また、例えば、オペレータが、操作レバー4を左方向に倒すとバケット23がチルト動作し、操作レバー4を右方向に倒すとバケット23がダンプ動作する。
【0043】
なお、本実施形態では、オペレータは、1本の操作レバー4によってリフトアーム21およびバケット23の両方を操作しているが、これに限らず、リフトアーム21を操作する操作レバーとバケット23を操作する操作レバーとがそれぞれ分かれていてもよく、すなわち、2本の操作レバーで作業装置2を操作してもよい。
【0044】
操作レバー4には、2つのリフトアームシリンダ22を操作する方向の操作端位置で操作レバー4を保持するデテント機能を有するリフトアーム側デテント機構41と、バケットシリンダ24を操作する方向の操作端位置で操作レバー4を保持するデテント機能を有するバケット側デテント機構42と、がそれぞれ設けられている。
【0045】
「2つのリフトアームシリンダ22を操作する方向の操作端位置」とは、操作レバー4が前方向に最も倒れた位置である前側最傾倒位置Fおよび操作レバー4が後方向に最も倒れた位置である後側最傾倒位置Bである(
図9において二点鎖線で示す)。リフトアーム側デテント機構41によって操作レバー4が前側最傾倒位置Fで保持されると、リフトアーム21は最も速い速度で下降していく。また、リフトアーム側デテント機構41によって操作レバー4が後側最傾倒位置Bで保持されると、リフトアーム21は最も速い速度で上昇していく。
【0046】
「バケットシリンダ24を操作する方向の操作端位置」とは、操作レバー4が右方向に最も倒れた位置である右側最傾倒位置Rおよび操作レバー4が左方向に最も倒れた位置である左側最傾倒位置Lである(
図9において二点鎖線で示す)。バケット側デテント機構42によって操作レバー4が右側最傾倒位置Rで保持されると、バケット23は最も速い速度でダンプしていく。また、バケット側デテント機構42によって操作レバー4が左側最傾倒位置Lで保持されると、バケット23は最も速い速度でチルトしていく。なお、実際には、バケット側デテント機構42は、操作レバー4を左側最傾倒位置Lで保持するデテント機能のみを有する場合がほとんどである。
【0047】
図9に示すように、リフトアーム側デテント機構41およびバケット側デテント機構42はそれぞれ、コントローラ5に接続されており、コントローラ5から出力される設定信号に基づいてデテント機能が設定され(デテントON)、コントローラ5から出力される解除信号に基づいてデテント機能が解除される(デテントOFF)。
【0048】
したがって、コントローラ5は、カメラ3で撮像されたシリンダ画像を用いて演算された作業装置2の姿勢に基づいて、リフトアーム側デテント機構41およびバケット側デテント機構42を制御することにより、作業装置2の駆動を制御する。
【0049】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、
図10~13を参照して説明する。
【0050】
図10は、第1実施形態に係るコントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
図11は、作業装置2に関する各種のパラメータL1~L14を示す図である。
【0051】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、カメラ3や各種の操作装置およびセンサなどが入力I/Fにそれぞれ接続され、リフトアーム側デテント機構41およびバケット側デテント機構42が出力I/Fにそれぞれ接続されている。
【0052】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0053】
なお、本実施形態では、コントローラ5をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限らず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、ホイールローダ1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0054】
コントローラ5は、
図10に示すように、画像取得部51と、投影寸法演算部52と、実寸法演算部53と、姿勢判定部54と、信号出力部55と、記憶部56と、を含む。
【0055】
画像取得部51は、カメラ3から出力されたシリンダ画像を取得する。
【0056】
投影寸法演算部52は、画像取得部51において取得されたシリンダ画像からバケットシリンダ24に係る複数の投影寸法を演算する。複数の投影寸法は、具体的には、バケット23の位置(リフトアーム21の高さ)およびバケット23の傾きを特定して作業装置2の姿勢を演算するために必要となる値である。例えば、投影寸法演算部52は、複数の投影寸法のうち、第1投影寸法としてバケットシリンダ24におけるロッド242を含むストロークの投影長さを、第2投影寸法としてカメラ3の撮像面に平行な一方向に沿った投影長さを、第3投影寸法としてカメラ3の撮像面に平行な他方向に沿った投影長さを、シリンダ画像からそれぞれ演算する。
【0057】
実寸法演算部53は、投影寸法演算部52において演算されたバケットシリンダ24におけるロッド242を含むストロークの投影長さと、バケットシリンダ24のストロークに関する第1基準値と、に基づいて、バケットシリンダ24のストロークW1を演算する。
【0058】
また、実寸法演算部53は、投影寸法演算部52において演算されたカメラ3の撮像面に平行な一方向に沿った投影長さとカメラ3の撮像面に平行な他方向に沿った投影長さとの比と、バケットシリンダ24の角度(傾き)に関する第2基準値と、に基づいて、バケットシリンダの角度α(実角度α)を演算する。第1基準値および第2基準値はそれぞれ、投影寸法演算部52で演算された複数の投影寸法を実寸法に変換するための基準となる値である。
【0059】
姿勢判定部54は、実寸法演算部53において演算されたバケットシリンダ24のストロークW1および実角度αと、
図11に示す複数のパラメータL1~L14と、に基づいて、リフトアーム21の実角度θ1、バケット23の実際の高さH、およびバケット23の実角度θ2を特定して作業装置2の姿勢を演算し、演算された作業装置2の姿勢が目標姿勢であるか否かを判定する。複数のパラメータL1~L14は、作業装置2に係る寸法データ含む値、具体的には、設計寸法および設計座標を示す既知の値であって、予め記憶部56に記憶されている。
【0060】
信号出力部55は、姿勢判定部54において演算および判定された作業装置2の姿勢に基づいて、リフトアーム側デテント機構41およびバケット側デテント機構42に対してそれぞれ、設定信号あるいは解除信号を出力する。
【0061】
記憶部56は、メモリであって、実寸法演算部53において用いられる第1基準値および第2基準値、ならびに姿勢判定部54において用いられる複数のパラメータL1~L14が、それぞれ記憶されている。
【0062】
ここで、コントローラ5におけるバケットシリンダ24のストロークW1および実角度αの演算方法について、
図12A、
図12B、および
図13を参照して具体的に説明する。
【0063】
図12Aは、バケット23がフルチルト位置にあってリフトアーム21が所定の高さまで上昇している場合におけるバケットシリンダ24を示す左側面図である。
図12Bは、
図12Aにおける標識円板60の構成を示す正面図である。
図13は、
図12Aにおけるバケットシリンダ24のシリンダ画像を示す画像図である。
【0064】
図12Aに示すバケットシリンダ24のストロークW1の演算にあたっては、まず、投影寸法演算部52が、シリンダ画像からバケットシリンダ24の全体の投影長さW11(
図13に示す)を演算する。なお、この場合において、バケットシリンダ24のロッド242の他端部側およびシリンダチューブ241の基端部側に塗装などでマーク61,62が付けられていると、投影寸法演算部52は、シリンダ画像上でバケットシリンダ24の全体の投影長さW11を認識しやすくなる。
【0065】
本実施形態では、
図12Aおよび
図13に示すように、シリンダチューブ241の上面には、第1基準値に相当する所定の長さW2(
図12Aに示す)を有する第1標識としての標識バー63が設けられている。この標識バー63はカメラ3の画角内に含まれており、前述したバケットシリンダ24に係る寸法を示す「標識」に含まれる。
【0066】
投影寸法演算部52は、シリンダ画像から標識バー63の投影長さW12(
図13に示す)についても演算する。標識バー63の実長W2は、第1基準値として予め記憶部56に記憶されている。
【0067】
このように、既知の長さを有する標識バー63を用いることで、シリンダ画像上における投影寸法と実長との関係が分かるため、コントローラ5は、シリンダ画像上における投影寸法を実長に変換することができる。なお、標識バー63は、投影寸法演算部52がシリンダ画像上で認識しやすいように、塗装などにより設けられていることが望ましい。また、標識バー63は、カメラ3の画角内に含まれる位置であれば、バケットシリンダ24におけるいずれの位置に設けられていてもよい。
【0068】
そして、実寸法演算部53は、投影寸法演算部52で演算されたバケットシリンダ24の全体の投影長さW11と標識バー63の投影長さW12とを比較することにより、バケットシリンダ24のストロークW1を演算する。
【0069】
なお、バケットシリンダ24のストロークW1の演算にあたっては、投影寸法演算部52は、メッキ色のためシリンダ画像上で認識されやすいロッド242の投影長さW13を演算してもよい。この場合、
図12Aに示すシリンダチューブ241の実長W3およびロッド242の他端部に設けられたベルクランク25との取付部242Aの実長W4をそれぞれ、記憶部56に予め記憶しておく。そして、実寸法演算部53は、ロッド242の投影長さW13、シリンダチューブ241の実長W3、および取付部242Aの実長W4に対して三角関数を用いて積和することにより、バケットシリンダ24のストロークW1を演算する。
【0070】
また、本実施形態では、
図12A、
図12B、および
図13に示すように、バケットシリンダ24には、バケットシリンダ24の角度を示す第2標識としての標識円板60が設けられている。この標識円板60は、カメラ3の画角内に含まれており、前述したバケットシリンダ24に係る寸法を示す「標識」に含まれる。
【0071】
本実施形態では、標識円板60は、
図12Aに示すように、バケットシリンダ24の軸方向に対して直交するようにシリンダチューブ241の左側面に取り付けられている。したがって、標識円板60におけるカメラ3の撮像面に平行な一方向に沿った投影長さおよび標識円板60におけるカメラ3の撮像面に平行な他方向に沿った投影長さは、標識円板60におけるバケットシリンダ24の軸方向に直交する二方向の長さに相当し、
図12Bに示す横方向の実長W5および縦方向の実長W6をカメラ3の撮像面に投影した長さである。標識円板60は真円であることから、これら横方向の実長W5および縦方向の実長W6はそれぞれ、標識円板60の直径に相当する(W5=W6)。
【0072】
例えば、バケットシリンダ24がホイールローダ1の接地面に対して水平となる姿勢をバケットシリンダ24の基準姿勢とした場合、この基準姿勢に対するシリンダ画像では、標識円板60の横方向の投影長さW140よりも縦方向の投影長さW150が短くなる(W140>W150)。コントローラ5は、バケットシリンダ24が基準姿勢となっている場合のシリンダ画像から、標識円板60の横方向の投影長さW140と縦方向の投影長さW150との比W140/W150(W140:W150)を第2標識の基準比として演算する。
【0073】
演算された基準比は、第2基準値として記憶部56に記憶されている。なお、以下では、バケットシリンダ24の基準姿勢における標識円板60の横方向の投影長さW140を「標識円板60の横方向の基準投影長さW140」とし、基準姿勢における標識円板60の縦方向の投影長さW150を「標識円板60の縦方向の基準投影長さW150」とする。
【0074】
図12Aに示すバケットシリンダ24の実角度αの演算にあたっては、まず、投影寸法演算部52が、シリンダ画像から、第2投影寸法としての標識円板60の横方向の投影長さW14と第3投影寸法としての標識円板60の縦方向の投影長さW15との比W14/W15(W14:W15)を演算する。
図12Bと
図13とを比較してみると、シリンダ画像上では、標識円板60が横長の楕円状となっていることが分かる。これは、バケットシリンダ24が傾いていることによる。
【0075】
そして、実寸法演算部53は、投影寸法演算部52において演算された標識円板60の横方向の投影長さW14と縦方向の投影長さW15との比W14/W15と、記憶されている標識円板60の横方向の基準投影長さW140と縦方向の基準投影長さW150との比W140/W150(基準比W140:W150)と、を比較することにより、バケットシリンダ24の実角度αを演算する。
【0076】
なお、コントローラ5は、投影寸法演算部52において演算された標識円板60の横方向の投影長さW14と縦方向の投影長さW15との比W14/W15とバケットシリンダ24の実角度αとの関係を予め記憶部56に記憶しておき、実寸法演算部53は、記憶されている当該関係に基づいて比W14/W15に対応する実角度αを演算してもよい。
【0077】
なお、バケットシリンダ24の実角度αを演算するにあたって用いられる第2標識は、標識円板60のように円形である必要はなく、コントローラ5が、バケットシリンダ24の基準姿勢時のシリンダ画像から、第2標識におけるカメラ3の撮像面に平行な一方向に沿った所定の基準投影長さとカメラ3の撮像面に平行な他方向に沿った所定の基準投影長さとの比(第2標識の基準比)を演算することが可能な形状であれば特に制限はなく、例えば矩形状であってもよい(
図18参照)。また、標識円板60は、カメラ3の画角内に含まれる位置であれば、バケットシリンダ24におけるいずれの位置に設けられていてもよい。
【0078】
バケットシリンダ24の実角度αの演算にあたっては、コントローラ5は、必ずしも標識円板60を「標識」として用いる必要はなく、例えば、
図13に示すように、シリンダチューブ241の端部縁における幅方向の投影長さW16と軸方向の投影長さW17との比W16/W17を用いて、バケットシリンダ24の実角度αを演算してもよい。
【0079】
(コントローラ5における処理の流れ)
次に、コントローラ5において実行される処理の流れについて、
図14を参照して説明する。
【0080】
図14は、第1実施形態に係るコントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
本実施形態に係るコントローラ5では、操作レバー4が後側最傾倒位置Bで保持されてリフトアーム21が上昇中である場合(
図9参照)、すなわち、信号出力部55がリフトアーム側デテント機構41に対して設定信号を出力中である場合において(ステップS501)、まず、画像取得部51は、カメラ3で撮像されたバケットシリンダ24のシリンダ画像を取得する(ステップS502)。
【0082】
続いて、投影寸法演算部52は、ステップS502において取得されたシリンダ画像から、バケットシリンダ24の全体の投影長さW11と、標識バー63の投影長さW12と、標識円板60における横方向の投影長さW14と縦方向の投影長さW15との比W14/W15と、をそれぞれ演算する(ステップS503)。
【0083】
次に、実寸法演算部53は、ステップS503において演算されたバケットシリンダ24の全体の投影長さW11と、標識バー63の投影長さW12と、記憶部56に記憶されている標識バー63の実長W2(第1基準値)と、に基づいて、バケットシリンダ24のストロークW1を演算する(ステップS504)。
【0084】
また、ステップS504と並行して、実寸法演算部53は、ステップS503において演算された標識円板60における横方向の投影長さW14と縦方向の投影長さW15との比W14/W15と、記憶部56に記憶されている標識円板60の横方向の基準投影長さW140と縦方向の基準投影長さW150との比W140/W150と、に基づいて、バケットシリンダ24の実角度αを演算する(ステップS505)。
【0085】
そして、姿勢判定部54は、ステップS504において演算されたバケットシリンダ24のストロークW1と、ステップS505において演算されたバケットシリンダ24の実角度αと、記憶部56に記憶されている複数のパラメータL1~L14と、に基づいて、作業装置2の姿勢を演算する(ステップS506)。
【0086】
続いて、姿勢判定部54は、ステップS506において演算された作業装置2の姿勢が目標姿勢であるか否かを判定する(ステップS507)。
【0087】
ステップS507において作業装置2の姿勢が目標姿勢であると判定された場合には(ステップS507/YES)、信号出力部55は、リフトアーム側デテント機構41に対して解除信号を出力し(ステップS508)、コントローラ5における処理が終了する。
【0088】
一方、ステップS507において作業装置2の姿勢が目標姿勢でないと判定された場合には(ステップS507/NO)、信号出力部55は、リフトアーム側デテント機構41に対して継続して設定信号を出力し(ステップS509)、コントローラ5は、ステップS502に戻って処理を繰り返す。
【0089】
このように、ホイールローダ1では、コントローラ5が、カメラ3で撮像されたシリンダ画像に基づいて作業装置2の姿勢を演算しているため、作業装置2に角度センサや位置センサなどの各種のセンサを装備する必要がない。これにより、作業装置2に装備される部品点数の増加を抑制しながらも、作業装置2の姿勢を精度よく演算することができる。
【0090】
また、他の用途で車体に装備されている撮像装置をカメラ3として流用した場合には、作業装置2の姿勢を演算するためのカメラ3を別途設ける必要がなくなり、ホイールローダ1に装備すべき追加部品の削減を図ることができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、コントローラ5における画像解析対象を作業装置2の全体とせずにバケットシリンダ24のみとしているため、画像解析領域も少なく、実行すべき処理内容がシンプルになることから、誤判定が抑制されて判定精度を向上させることができる。
【0092】
なお、
図14では、操作レバー4が後側最傾倒位置Bで保持されてリフトアーム21が上昇中である場合におけるコントローラ5の処理の流れを示しているが、これに限らず、例えば、コントローラ5は、操作レバー4に対してデテント機能が設定されていない状態で作業装置2の姿勢を演算し、判定された作業装置2の姿勢に応じてリフトアーム側デテント機構41あるいはバケット側デテント機構42を制御してもよいし、操作レバー4が右側最傾倒位置Rで保持されてバケット23がチルト動作中である場合に作業装置2の姿勢を演算し、判定された作業装置2の姿勢に応じてリフトアーム側デテント機構41あるいはバケット側デテント機構42を制御してもよい。
【0093】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る作業装置2の駆動制御システムについて、
図15~19を参照して説明する。なお、
図15~19において、第1実施形態で説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0094】
図15は、左方向にステアリングが切られた場合におけるホイールローダ1を示す上面図である。
図16は、
図4におけるカメラ3の取り付け位置側から見た作業装置2を示し、バケット23がフルチルト位置にあって、リフトアーム21が上昇途中の状態で左方向にステアリングが切られた場合の図である。
図17は、第2実施形態に係るコントローラ5Aが有する機能を示す機能ブロック図である。
図18は、
図16におけるバケットシリンダ24のシリンダ画像を示す画像図である。
図19は、第2実施形態に係るコントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図15および
図16では、標識円板60および標識バー63の図示を省略している。
【0095】
本実施形態では、ステアリング操作によって車体の前部(前フレーム1A)が後部(後フレーム1B)に対して左右方向に屈曲した場合において、コントローラ5Aで実行される処理について説明する。例えば、
図15に示すように、ステアリング操作により左方向にステアリングが切られた場合、カメラ3で撮像されるシリンダ画像は、第1実施形態におけるシリンダ画像と異なってくる。具体的には、カメラ3側から見た前フレーム1Aおよび作業装置2は、
図16に示すように、カメラ3の設置位置の延長線上から左斜め前方に傾くため、シリンダ画像上のバケットシリンダ24も左斜め前方に傾いた状態となる。
【0096】
この場合、コントローラ5Aは、カメラ3から出力されたシリンダ画像に基づいて、作業装置2の姿勢の演算を精度良く行うことが難しく、また、大きくステアリングが切られた場合には、カメラ3の画角内にバケットシリンダ24が含まれなくなることもある。
【0097】
そこで、コントローラ5Aは、
図17に示すように、画像取得部51、投影寸法演算部52、実寸法演算部53、姿勢判定部54、信号出力部55、および記憶部56に加え、さらに、ステアリング操作が行われているか否か、すなわち車体が直進姿勢であるか否かを判定するステアリング操作判定部57を含む。
【0098】
ステアリング操作により左方向にステアリングが切られた場合、シリンダ画像上のバケットシリンダ24は、
図18に示すように、第1マーク61の位置P1が、第2マーク62の位置P2に対して距離WP12の分だけ左方向にオフセットした状態となる。ステアリング操作判定部57は、このオフセット状態をシリンダ画像から認識すると、ステアリング操作が行われている(車体が直進姿勢でない)と判定する。
【0099】
他に、例えば、ステアリング操作判定部57は、シリンダ画像上において標識バー63が左方向に傾斜していると認識した場合や、シリンダ画像上においてバケットシリンダ24そのものが左方向に傾斜していると認識した場合、および
図16に示すステアリング操作検出板64が傾倒していると認識した場合においても、ステアリング操作が行われていると判定することが可能である。
【0100】
また、例えば、センタジョイント10の付近に前フレーム1Aと後フレーム1Bとの相対角度を検出するセンサを設け、ステアリング操作判定部57は、当該センサで検出された相対角度に基づいて、ステアリング操作が行われているか否かを判定してもよい。
【0101】
コントローラ5Aでは、
図19に示すように、投影寸法演算部52によって行われる処理であるステップS503の前、実寸法演算部53によって行われる処理であるステップS504およびステップS505の前、および姿勢判定部54によって行われる処理であるステップS506の前のそれぞれにおいて、ステアリング操作判定部57によりステアリング操作が行われたか否かを判定する(ステップS511、ステップS512、およびステップS513)。
【0102】
ステップS511、ステップS512、およびステップS513のそれぞれにおいて、ステアリング操作が行われていない、すなわち車体が直進姿勢であると判定された場合には(ステップS511/YES、ステップS512/YES、ステップS513/YES)、作業装置2の姿勢を演算するための処理に進む(ステップS503、ステップS504、およびステップS506)。
【0103】
一方、ステップS511、ステップS512、およびステップS513のそれぞれにおいて、ステアリング操作が行われた(車体が直進姿勢でない)と判定された場合(ステップS511/NO、ステップS512/NO、ステップS513/NO)、ステップS502に戻って処理を繰り返す。すなわち、コントローラ5Aは、ステアリング操作判定部57においてステアリング操作が行われていると判定された場合には、作業装置2の姿勢の演算処理を中止する。
【0104】
図19では、コントローラ5Aは、作業装置2の姿勢の演算が中止された場合であっても、信号出力部55が設定信号を出力し続けている状態(ステップS501)となる。そして、ホイールローダ1がステアリング状態から復帰した後、すなわちステップS511、ステップS512、およびステップS513のそれぞれにおいて、ステアリング操作が行われていない(車体が直進姿勢である)と判定され(ステップS511/YES、ステップS512/YES、ステップS513/YES)、かつ、作業装置2が目標姿勢となった場合(ステップS507/YES)に、信号出力部55は、リフトアーム側デテント機構41に対して解除信号を出力する(ステップS508)。
【0105】
なお、操作レバー4が油圧パイロット式あるいはケーブル式である場合には、ステアリング操作状態かつリフトアーム側デテント機構41のデテント機能が設定された状態では、リフトアームシリンダ22に作動油が継続して供給されることになるが、操作レバー4が電気式である場合には作動油の供給を一旦停止してもよい。
【0106】
また、操作レバー4が油圧パイロット式あるいはケーブル式である場合には、コントローラ5Aは、作業装置2の姿勢の演算が中止されると、信号出力部55がリフトアーム側デテント機構41に対して解除信号を出力してリフトアームシリンダ22への作動油の供給を一旦停止するように制御してもよい。そして、ホイールローダ1がステアリング状態から復帰した後には、オペレータの操作によって操作レバー4を後側最傾倒位置Bでデテント保持させて、作業装置2の姿勢が目標姿勢となるように制御してもよい。
【0107】
また、
図19では、コントローラ5Aは、ステアリング操作判定部57においてステアリング操作が行われていると判定された場合には、作業装置2の姿勢の演算を中止したが、これに限らず、シリンダ画像上におけるバケットシリンダ24の左右方向への投影長さWP12と、上下方向への投影寸法HP12と、
図16に示すステアリング操作検出板64と、を用いることにより、ステアリング操作状態でのバケットシリンダ24の姿勢を演算することも可能である。
【0108】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、所定の実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、所定の実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、所定の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0109】
例えば、上記の各実施形態では、作業車両の一態様としてホイールローダ1を例に挙げて説明したが、これに限らず、油圧駆動式の作業装置2を備えた作業車両であれば本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1:ホイールローダ(作業車両)
2:作業装置
3:カメラ(撮像装置)
4:操作レバー(操作装置)
5,5A:コントローラ
12:運転室
21:リフトアーム
22:リフトアームシリンダ(油圧シリンダ)
23:バケット
24:バケットシリンダ(油圧シリンダ)
41:リフトアーム側デテント機構
42:バケット側デテント機構
60:標識円板(第2標識)
63:標識バー(第1標識)
221,241:シリンダチューブ
222,242:ロッド