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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165625
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/24 20060101AFI20221025BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20221025BHJP
   H02K 19/24 20060101ALI20221025BHJP
   H02K 1/27 20220101ALI20221025BHJP
【FI】
H02K1/24 B
H02K1/22 A
H02K19/24 A
H02K1/27 501A
H02K1/27 501M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071042
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 智博
(72)【発明者】
【氏名】北田 賢司
【テーマコード(参考)】
5H601
5H619
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601AA23
5H601BB19
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD21
5H601EE12
5H601EE18
5H601GA11
5H601GD09
5H601HH02
5H601HH04
5H601KK14
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB18
5H619PP02
5H619PP05
5H619PP08
5H619PP12
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB05
5H622DD01
5H622DD02
(57)【要約】
【課題】爪状磁極の変形を抑制した回転電機の回転子を提供する。
【解決手段】回転電機の回転子100は、第1磁極10と、第2磁極20と、第1保持部材30と、第2保持部材40と、を備える。第1磁極10は、第1円環部11及び第1爪部12を有する。第1爪部12は、第1円環部11から軸方向に延びる。第1爪部12は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。第2磁極20は、第2円環部21及び第2爪部22を有する。第2円環部21は、第1円環部11に対して軸方向第1側に配置されている。第2爪部22は、第2円環部21から軸方向に延びる。第2爪部22は、周方向において第1爪部11と交互に配置されている。第1保持部材30は、第1爪部12の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第1係合部を有する。第2保持部材40は、第2爪部22の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第2係合部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1円環部、及び、前記第1円環部から軸方向に延びかつ周方向において互いに間隔をあけて配置された複数の第1爪部、を有する第1磁極と、
前記第1円環部に対して軸方向第1側に配置された第2円環部、及び、前記第2円環部から軸方向に延びかつ周方向において前記第1爪部と交互に配置された複数の第2爪部、を有する第2磁極と、
前記第1爪部の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第1係合部、を有する第1保持部材と、
前記第2爪部の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第2係合部、を有する第2保持部材と、
を備える、回転電機の回転子。
【請求項2】
前記第1係合部の内径は、前記複数の第1爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きく、
前記第2係合部の内径は、前記複数の第2爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい、
請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記第1保持部材は、円環状の第1本体部をさらに有し、
前記第1係合部は、前記第1本体部から軸方向第2側に延びる、
請求項1又は請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記第1爪部は、先端部の外周部において周方向に延びる第1係合凹部を有し、
前記第1係合部は、前記第1係合凹部に係合するように構成される、
請求項3に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記第1爪部及び前記第2爪部に対して径方向内側に配置される界磁コイルをさらに備える、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記界磁コイルは、軸方向において前記第1爪部よりも長い、
請求項5に記載の回転電機の回転子。
【請求項7】
周方向において、前記第1爪部と前記第2爪部との間に配置された永久磁石をさらに備える、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項8】
前記第2保持部材に対して軸方向第2側に配置された抜け落ち防止機構をさらに備える、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項9】
前記抜け落ち防止機構は、円環状のプレートと、前記プレートに対して軸方向第2側に配置されたスナップリングと、を含む、
請求項8に記載の回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に、回転子を有する回転電機が用いられている。従来の回転子として、爪状の形状の磁極(以下、爪状磁極という)を有するクローポール型の回転子が知られている。このような回転子においては、爪状磁極の変形を抑制することが望まれている。特許文献1~特許文献5には、爪状磁極の変形を防止する部材を備えた回転子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-213441号公報
【特許文献2】国際公開第2018/139561号
【特許文献3】特開2017-220989号公報
【特許文献4】特開平1-318532号公報
【特許文献5】特開昭64-85547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~特許文献5の回転電機の回転子とは異なる方法で爪状磁極の変形を抑制してもよい。
【0005】
本発明の課題は、爪状磁極の変形を抑制した回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一側面に係る回転電機の回転子は、第1磁極と、第2磁極と、第1保持部材と、第2保持部材と、を備える。第1磁極は、第1円環部及び第1爪部を有する。第1爪部は、第1円環部から軸方向に延びる。第1爪部は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。第2磁極は、第2円環部及び第2爪部を有する。第2円環部は、第1円環部に対して軸方向第1側に配置されている。第2爪部は、第2円環部から軸方向に延びる。第2爪部は、周方向において第1爪部と交互に配置されている。第1保持部材は、第1爪部の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第1係合部を有する。第2保持部材は、第2爪部の先端部に対して径方向外側に配置される円環状の第2係合部を有する。
【0007】
この構成によれば、環状の第1保持部材の第1係合部が第1爪部の先端部に当接可能である。同様に、環状の第2保持部材の第2係合部が第2爪部の先端部に当接可能である。そのため、回転子の回転中に第1磁極及び第2磁極の先端部が第1及び第2係合部の内径を超えて外周側に広がって変形するのを抑制することができる。
【0008】
(2)好ましくは、第1係合部の内径は、複数の第1爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい。第2係合部の内径は、複数の第2爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい。
【0009】
この場合、第1係合部の内周面と、複数の第1爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間に隙間が存在する。また、第2係合部の内周面と、複数の第2爪部の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間に隙間が存在する。そのため、回転子が永久磁石を備える場合であっても、組み立て時に圧入等による切削切粉が永久磁石に付着することがない。
【0010】
(3)好ましくは、第1保持部材は、第1本体部をさらに有する。第1本体部は、円環状である。第1係合部は、第1本体部から軸方向第2側に延びる。この場合、トルクコンバータを回転子の軸方向に並べたときに、第1係合部をトルクコンバータの芯出し用の部材として用いることができる。
【0011】
(4)好ましくは、第1爪部は、第1係合凹部を有する。係合凹部は、第1爪部の先端部の外周部において周方向に延びる。第1係合部は、第1係合凹部に係合するように構成される。この場合、インロー形式で組み立てることができるため、位置決めが容易になる。
【0012】
(5)好ましくは、回転電機の回転子は、第1爪部及び第2爪部に対して径方向内側に配置される界磁コイルをさらに備える。
【0013】
(6)好ましくは、界磁コイルは、軸方向において第1爪部よりも長い。この場合、より強い磁束を発生させることができる。
【0014】
(7)好ましくは、回転電機の回転子は、周方向において、第1爪部と第2爪部との間に配置された永久磁石をさらに備える。この場合、永久磁石による磁束を利用することで、回転電機の出力性能を向上させることができる。
【0015】
(8)好ましくは、回転電機の回転子は、第2保持部材に対して軸方向第2側に配置された抜け落ち防止機構をさらに備える。この場合、第2保持部材の抜け落ちを防止できる。
【0016】
(9)好ましくは、抜け落ち防止機構は、円環状のプレートと、スナップリングと、を含む。スナップリングは、プレートに対して軸方向第2側に配置されている。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明では、爪状磁極の変形を抑制した回転電機の回転子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の回転電機の回転子の断面図。
図2】本実施形態の回転電機の回転子の斜視図。
図3】本実施形態の回転電機の回転子を分解した状態での斜視図。
図4】第1磁極の断面図。
図5】第1磁極を軸方向第1側からみた斜視図。
図6】本発明の回転電機の回転子の一位相を抜き出した斜視図。
図7】第2磁極の断面図。
図8】本実施形態の回転電機の回転子の一部を拡大した断面の模式図。
図9】第1磁極及び第2磁極と永久磁石との位置関係を示す図。
図10】抜け落ち防止機構を示す斜視図。
図11】本実施形態の回転電機の回転子の一部を拡大した断面図。
図12】コアプレートを示す斜視図。
図13】本実施形態の回転電機の回転子の変形例の一部を拡大した断面の模式図。
図14】本実施形態の回転電機の回転子の変形例の第1磁極及び第2磁極と永久磁石との位置関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[全体構成]
図1に、本発明の一実施形態による回転電機の回転子100を示している。図1の断面図において、O-O線が回転軸線である。なお、以下の説明において、「軸方向」とは回転軸Oが延びる方向を示し、図1の左側を「軸方向第1側」、図1の右側を「軸方向第2側」とする。また、「径方向」とは、回転軸Oを中心とした円の半径方向を意味する。「周方向」とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を意味する。
【0020】
回転電機の回転子100は、トルクコンバータ200に対して軸方向第2側に配置されている。具体的には、回転電機の回転子100は、トルクコンバータ200のインペラシェル201に取り付けられている。トルクコンバータ200の軸方向第1側には図示しないエンジンが配置されている。回転電機の回転子100の軸方向第2側には図示しないトランスミッションが配置されている。回転電機の回転子100と、エンジンの出力軸と、トルクコンバータ200と、は同じ回転軸Oを有する。
【0021】
図2及び図3を参照して、回転電機の回転子100は、クローポール型である。回転電機の回転子100は、第1磁極10と、第2磁極20と、第1保持部材30と、第2保持部材40と、を備える。回転電機の回転子100は、永久磁石60、抜け落ち防止機構70、及び、コアプレート80をさらに備える。
【0022】
[第1磁極10]
図4図6を参照して、第1磁極10は、回転可能に配置されている。第1磁極10は、例えば鉄などの軟磁性体で構成される。第1磁極10は、第1円環部11と、複数の第1爪部12と、を有する。
【0023】
第1円環部11は、円環状であり、中央部に孔を有している。
【0024】
第1爪部12は、第1円環部11から軸方向第1側に延びる。より具体的には、第1爪部12は、第1円環部11の外周部から軸方向第1側に延びる。第1爪部12は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。複数の第1爪部12の軸方向の長さは、すべて同じである。複数の第1爪部12の外周面によって構成される仮想円筒の外径は、第1円環部11の外径よりも大きい。第1爪部12は、第2磁極20に対して非接触状態にある。第1爪部12は、第2磁極20の第2円環部21に対して、径方向に径方向隙間を有するように構成されている。
【0025】
第1爪部12は、第1係合凹部13を有する。第1係合凹部13は、第1爪部12の先端部の外周部において周方向に延びる。第1係合凹部13は、第1爪部12の先端部の外周端縁を切り欠くことによって形成された段部である。各第1係合凹部13の外周面は、回転軸Oを中心とする同じ円周上に位置する。
【0026】
第1爪部12は、第2係合凹部14を有する。第2係合凹部14は、第1爪部12の基端部の外周部において周方向に延びる。第2係合凹部14は、第1爪部12の基端部の外周端縁を切り欠くことによって形成された段部である。各第2係合凹部14の外周面は、回転軸Oを中心とする同じ円周上に位置する。
【0027】
より詳細には、第1爪部12は、第1脚部12aと、第1突起部12bと、を含む。第1脚部12aは、第1円環部11から径方向外側に延びる。より具体的には、第1脚部12aは、第1円環部11の外周部から径方向外側に延びる。第1突起部12bは、第1脚部12aの外周部から軸方向第1側に延びる。第1突起部12bは、例えば矩形薄板状である。
【0028】
[第2磁極20]
図3図6及び図7を参照して、第2磁極20は、第1磁極10の軸方向第1側、かつ、回転可能に配置されている。第2磁極20は、例えば鉄などの軟磁性体で構成される。第2磁極20は、第2円環部21と、複数の第2爪部22と、を有する。
【0029】
第2円環部21は、円環状であり、中央部に孔を有している。第2円環部21は、第1円環部11に対して軸方向第1側に配置されている。
【0030】
第2爪部22は、第2円環部21から軸方向第2側に延びる。より具体的には、第2爪部22は、第2円環部21の外周部から軸方向第2側に延びる。第2爪部22は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。第2爪部22は、第1爪部12と交互に配置されている。複数の第2爪部22の軸方向の長さは、すべて同じである。複数の第2爪部22の外周面によって構成される仮想円筒の外径は、第2円環部21の外径よりも大きい。第2爪部22は、第1磁極10に対して非接触状態にある。第2爪部22は、第1磁極10の第1円環部11に対して、径方向に径方向隙間を有するように構成されている。
【0031】
第2爪部22は、第3係合凹部23を有する。第3係合凹部23は、第2爪部22の先端部の外周部において周方向に延びる。第3係合凹部23は、第2爪部22の先端部の外周端縁を切り欠くことによって形成された段部である。各第3係合凹部23の外周面は、回転軸Oを中心とする同じ周上に位置する。
【0032】
第2爪部22は、第4係合凹部24を有する。第4係合凹部24は、第2爪部22の基端部の外周部において周方向に延びる。第4係合凹部24は、第2爪部22の基端部の外周端縁を切り欠くことによって形成された段部である。各第4係合凹部24の外周面は、回転軸Oを中心とする同じ周上に位置する。
【0033】
より詳細には、第2爪部22は、第2脚部22aと、第2突起部22bと、を含む。第2脚部22aは、第2円環部21から径方向外側に延びる。より具体的には、第2脚部22aは、第2円環部21の外周部から径方向外側に延びる。第2突起部22bは、第2脚部22aの外周部から軸方向第2側に延びる。第2突起部22bは、例えば矩形薄板状である。
【0034】
[第1保持部材30]
第1保持部材30は、円環状である。第1保持部材30は、隙間嵌めにより、第1爪部12の先端部に装着される。
【0035】
図1を参照して、詳細には、第1保持部材30は、第1本体部31と、第1係合部32と、を有する。第1本体部31は円環状である。
【0036】
第1係合部32は、第1本体部31の外周部において軸方向第2側に突出し、周方向に延びる。第1係合部32は円環状である。第1係合部32は、段部で構成されている。第1係合部32は、第1爪部12の先端部に対して径方向外側に配置される。つまり、第1保持部材30は、第1爪部12の先端部の径方向外側に配置されている。
【0037】
第1係合部32の内径は、複数の第1爪部12の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい。つまり、第1係合部32の内周面と、複数の第1爪部12の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間には隙間が存在する。ただし、第1係合部32の少なくとも1か所は、トルクコンバータ200のインペラシェル201、コアプレート80、及び少なくとも1つの第1爪部12の先端部の外周面のいずれかひとつ以上の部材により支持されていてもよい。
【0038】
図6を参照して、第1係合部32は、第1爪部12の第1係合凹部13と、第2爪部22の第4係合凹部24と、に係合する。これにより、インロー形式で組み立てることができるため、位置決めが容易になる。
【0039】
第1保持部材30は、非磁性体で構成される。非磁性体は、例えばアルミニウム又はオーステナイト系ステンレス鋼などである。
【0040】
[第2保持部材40]
第2保持部材40は、円環状である。第2保持部材40は、隙間嵌めにより、第2爪部22の先端部に装着される。
【0041】
図1を参照して、詳細には、第2保持部材40は、第2本体部41と、第2係合部42と、を有する。第2本体部41は円環状である。
【0042】
第2係合部42は、第2本体部41の外周部において軸方向第1側に突出し、周方向に延びる。第2係合部42は円環状である。第2係合部42は、段部で構成されている。第2係合部42は、第2爪部22の先端部に対して径方向外側に配置される。つまり、第2保持部材40は、第2爪部22の先端部の径方向外側に配置されている。
【0043】
第2係合部42の内径は、複数の第2爪部22の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい。つまり、第2係合部42の内周面と、複数の第2爪部22の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間には隙間が存在する。ただし、第2係合部42の少なくとも1か所は、コアプレート80、及び少なくとも1つの第2爪部22の先端部の外周面のいずれかひとつ以上の部材により支持されていてもよい。
【0044】
図6を参照して、第2係合部42は、第1爪部12の第2係合凹部14と、第2爪部22の第3係合凹部23と、に係合する。
【0045】
第2保持部材40は、非磁性体で構成される。非磁性体は、例えばアルミニウム又はオーステナイト系ステンレス鋼などである。
【0046】
[永久磁石60]
図6図8及び図9を参照して、永久磁石60は、矩形板状である。永久磁石60は、周方向において、第1爪部12と第2爪部22との間に配置される。永久磁石60は、第1爪部12及び第2爪部22により、径方向外側から押さえられることにより支持されている。永久磁石60は、第1爪部12と第2爪部22との間の全部に又はその一部に配置することができる。永久磁石60の軸方向第1側の端部は、第1保持部材30の第1係合部32に接触しており、永久磁石60の第2側端部は、第2保持部材40の第2係合部42に接触している。これにより、永久磁石60は、軸方向に位置決めされている。永久磁石60の第1側端部は、第1保持部材30の第1本体部31に接触していない。永久磁石60の第2側端部は、第2保持部材40の第2本体部41に接触していない。
【0047】
永久磁石60は、ネオジムを主原料とした磁石又はフェライトを主原料とした磁石である。具体的には、永久磁石60としては、例えば、SmCo磁石、AlNiCo磁石、又は、ネオジムボンド磁石など、様々な種類の永久磁石60を使用することができる。
【0048】
当該構成によれば、永久磁石60による磁束を利用することで、回転電機の出力性能を向上させることができる。
【0049】
[抜け落ち防止機構70]
図10を参照して、抜け落ち防止機構70は、第2保持部材40に対して軸方向第2側に配置されている。本実施形態においては、第2保持部材40の第2係合部42の内周面と、複数の第2爪部22の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間には隙間が存在している。そのため、回転中に第2保持部材40が抜け落ちる恐れがある。しかしながら、抜け落ち防止機構70により、第2保持部材40が抜け落ちるのを防止することができる。
【0050】
抜け落ち防止機構70は、円環状のプレート71と、スナップリング72と、を含む。プレート71は、軸方向に貫通する複数の貫通孔71aを有する。貫通孔71aは、周方向において互いに間隔を空けて配置されている。スナップリング72は、プレート71に対して軸方向第2側に配置されている。スナップリング72は、プレート71の軸方向の動きを規制する。
【0051】
[コアプレート80]
図11及び図12を参照して、コアプレート80は、回転可能に配置されている。コアプレート80は、非磁性体で構成される。非磁性体は例えば、アルミニウム、オーステナイト系ステンレス鋼、又は、樹脂材料である。コアプレート80は、円環基部81と、複数の係合突出部82と、を有する。
【0052】
円環基部81は、円環状であり、中央部に孔を有している。この孔において、円環基部81は、トルクコンバータ200のインペラシェル201により支持されている。
【0053】
係合突出部82は、円環基部81から軸方向第2側に延びる。より具体的には、係合突出部82は、円環基部81の外周部から軸方向第2側に延びる。係合突出部82は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。複数の係合突出部82の軸方向の長さは、すべて同じである。複数の係合突出部82の外周面によって構成される仮想円筒の外径は、円環基部81の外径よりも大きい。係合突出部82は、一対の脚部82a及び82bを含む。一対の脚部82a及び82bの間に、第1爪部12が配置される。一対の脚部82a及び82bの間の部分により、第1爪部12が支持されている。となり合う係合突出部82の間に、第2磁極20の第2爪部22が配置される。となり合う係合突出部82は、第2爪部22を周方向から挟んで支持している。この構成により、第1磁極10と第2磁極20とを周方向に非接触状態で保持することができる。
【0054】
係合突出部82の先端部に、抜け落ち防止機構70のプレート71が配置されている。係合突出部82は、プレート71の貫通孔71aを通っている。また、係合突出部82は、先端部の内周面に溝82cを有する。溝82cは、周方向に延びる。溝82cに、スナップリング72が係合している。すなわち、スナップリング72は、係合突出部82に押さえられている。係合突出部82は、第2保持部材40の第2係合部42で径方向の動きを規制されている。この構成により、回転中に係合突出部82の先端部が外周側に開くのを抑制することができる。
【0055】
[界磁コイル50]
図1を参照して、本発明の一実施形態による回転電機は、回転子100の径方向内周側に界磁コイル50を備える。界磁コイル50は、第1爪部12及び第2爪部22に対して径方向内側に配置される。本実施形態においては、トルクコンバータ200に対して軸方向に並べて回転子100を配置する。そのため、界磁コイル50を、第1爪部12及び第2爪部22に対して径方向内側に配置することができる。これにより、環状の第1保持部材30が第1爪部12の先端部に当接可能である。同様に、環状の第2保持部材40が第1爪部12の基端部に当接可能である。
【0056】
界磁コイル50は、直流電流により磁束を励磁する。界磁コイル50は、軸方向において第1爪部12よりも長い。これにより、永久磁石60による磁束に加えて界磁コイル50の磁束を利用することで、回転電機の出力性能を向上させることができる。
【0057】
[動作及び作用]
【0058】
以上のように構成された回転子100を用いた回転電機において、回転電機をスタータとして始動機能を発揮させる場合について説明する。エンジンの始動指令に基づき、図示しないインバータを駆動して固定子に三相交流電流を流して固定子を磁化するとともに、界磁コイル50に電流を流す。界磁コイル50に電流を流して、回転子100の第1磁極10と第2磁極20とを励磁する。第1磁極10と第2磁極20とは、それぞれ、例えばN極とS極とにそれぞれ磁化される。この結果、回転子100が固定子に対して回転を開始するとともに、固定子において誘起電圧を有する起電力が発生する。
【0059】
その後、誘起電圧は回転子100の回転速度に応じて増加する。回転子100の回転速度がエンジンのアイドリングに対応するアイドリング回転速度より低い初爆の回転速度に到達したとき、インバータの駆動が停止する。以後、所定の誘起電圧(要求電圧)を保持するように、自動的に発電モード、すなわち、回転電機を発電機として発電機能を発揮させるモードに移行する。
【0060】
この発電モードでは、界磁コイル50を励磁し続けるとき、誘起電圧が所定の誘起電圧で一定になるように、励磁電流を調整する。励磁電流を調整するとき、まず、界磁コイル50の磁化力が一定となるように励磁電流を調整する。この状態で、回転子100が回転すると、回転電機は発電機として機能することになる。
【0061】
この結果、エンジンと回転電機とを連結することで、エンジン始動を可能とし、かつ走行中は回転電機をジェネレータ(発電機)として機能させる事ができる。
【0062】
環状の第1保持部材30の第1係合部32が第1爪部12の先端部の外周面に当接可能である。同様に、環状の第2保持部材40の第2係合部42が第2爪部22の先端部の外周面に当接可能である。そのため、回転子100が固定子に対して回転している間、回転子100の回転中に第1爪部12及び第2爪部22の先端部が第1保持部材30及び第2保持部材40の内径を超えて外周側に広がって変形するのを抑制することができる。
【0063】
また、第1保持部材30を圧入などの手段により装着すると、切削切粉が生じる。回転子100が永久磁石60を備える場合、この切削切粉が永久磁石60に付着し、永久磁石60の機能が低下するという問題が生じる。しかしながら、本実施形態では、第1保持部材30の第1係合部32の内径は、複数の第1爪部12の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外径よりも大きい。つまり、第1保持部材30の第1係合部32の内周面と、複数の第1爪部12の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間には隙間が存在する。この隙間を有するため、第1保持部材30を装着する際に、隙間嵌めにより装着することができる。そのため、回転子100が永久磁石60を備える場合であっても、切削切粉により永久磁石60の機能が低下するという問題が生じない。
【0064】
ここで、第1保持部材30の第1係合部32の内周面と、複数の第1爪部12の先端部の外周面によって構成される仮想円筒の外周面と、の間に隙間が存在する場合、回転子100が回転すると、第1保持部材30と第1爪部12とが相対回転して、第1保持部材30及び/又は第1爪部12が摩耗するという問題が生じる。しかしながら、本願の回転子100においては、回転子100が回転すると、複数の第1爪部12の先端部が外周側に開き、第1保持部材30の第1係合部32の内周面に当接する。これにより、第1保持部材30が固定される。そのため、第1保持部材30と第1爪部12とが相対回転して、第1保持部材30及び/又は第1爪部12が摩耗するという問題が生じない。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は、以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0066】
変形例1
上記実施形態では、第2爪部22は、第2脚部22aと、第2突起部22bと、を含んだ。しかしながら、特にこれに限定されない。第2爪部22は、第2脚部22aを含まず、第2突起部22bが第2円環部21の軸方向第2側側面から直接延びていてもよい。
【0067】
同様に、上記実施形態では、第1爪部12は、第1脚部12aと、第1突起部12bと、を含んだ。しかしながら、特にこれに限定されない。第1爪部12は、第1脚部12aを含まず、第1突起部12bが第1円環部11の軸方向第1側側面から直接延びていてもよい。
【0068】
変形例2
上記実施形態では、第4係合凹部24を第2爪部22に設け、第1係合部32を第4係合凹部24に係合させていた。しかしながら、特にこれに限定されない。例えば変形例1において、第4係合凹部24は、第2円環部21の軸方向第1側の外周部に配置されてもよい。
【0069】
同様に、上記実施形態では、第2係合凹部14を第1爪部12に設け、第2係合部42に係合させていた。しかしながら、特にこれに限定されない。例えば変形例1において、第2係合凹部14は、第1円環部11の軸方向第2側の外周部に配置されてもよい。
【0070】
変形例3
上記実施形態では、回転電機の回転子100は、トルクコンバータ200のインペラシェル201に取り付けられていた。しかしながら、特にこれに限定されない。回転電機の回転子100は、他の装置に取り付けられていてもよい。他の装置とはたとえば、ダンパーである。
【0071】
変形例4
上記実施形態では、永久磁石60は、第1磁極10の第1爪部12及び第2磁極20の第2爪部22により、径方向外側から押さえられることにより支持されていた。しかしながら、特にこれに限定されない。図13に示すように、永久磁石60は、第1保持部材30の第1係合部32及び第2保持部材40の第2係合部42により、径方向外側から押さえられることにより支持されていてもよい。永久磁石60の軸方向第1側の端部は、第1保持部材30の第1本体部31に接触しており、永久磁石60の第2側端部は、第2保持部材40の第2本体部41に接触していてもよい。この場合、図14に示すように、第1爪部12及び第2爪部22は、永久磁石60を径方向外側から押さえるような構造を必要としない。そのため、第1磁極10及び第2磁極20の工法を簡略化できる。
【符号の説明】
【0072】
10 第1磁極
11 第1円環部
12 第1爪部
13 第1係合凹部
14 第2係合凹部
20 第2磁極
21 第2円環部
22 第2爪部
23 第3係合凹部
24 第4係合凹部
30 第1保持部材
31 第1本体部
32 第1係合部
40 第2保持部材
41 第2本体部
42 第2係合部
50 界磁コイル
60 永久磁石
70 抜け落ち防止機構
71 プレート
72 スナップリング
80 コアプレート
81 円環基部
82 係合突出部
100 回転電機の回転子
200 トルクコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14