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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165630
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H05B3/00 320B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071048
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤矢 浩二
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA42
3K058AA97
3K058CA03
3K058CA24
3K058CA32
3K058CB02
(57)【要約】
【課題】駆動スイッチの制御手法に拘わらず、異常検出を適切に行なう。
【解決手段】ヒータ装置は、交流電源に対してヒータおよび駆動スイッチが直列に接続されたヒータ駆動回路とゼロクロス検出回路と異常検出回路と判定部と制御部とを備える。異常検出回路は、駆動スイッチに並列に接続された発光ダイオードとフォトトランジスタとを含むフォトカプラと、発光ダイオードに逆並列に接続されたダイオードと、を有する。判定部は、異常検出回路の出力に基づいてヒータまたはヒータ駆動回路の異常を判定する。制御部は、100%とは異なるデューティ比で駆動スイッチを制御する場合に、ゼロクロス検出回路により検出されるゼロクロスが検出されたことに基づいて、ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが発光ダイオードの順方向となる期間に駆動スイッチのオフ期間が生じないようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に対してヒータおよび駆動スイッチが直列に接続されたヒータ駆動回路と、
前記交流電源の電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路と、
前記駆動スイッチに並列に接続された発光ダイオードと前記発光ダイオードからの光を受けるフォトトランジスタとを含むフォトカプラと、前記発光ダイオードに逆並列に接続されたダイオードと、を有する異常検出回路と、
前記異常検出回路の出力に基づいて前記ヒータまたは前記ヒータ駆動回路の異常を判定する判定部と、
100%とは異なるデューティ比で前記駆動スイッチを制御する場合に、前記ゼロクロス検出回路によりゼロクロスが検出されたことに基づいて、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となる期間に前記駆動スイッチのオフ期間が生じないように前記駆動スイッチを制御する制御部と、
を備えるヒータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒータ装置であって、
前記異常検出回路は、前記ゼロクロス検出回路によるゼロクロスの検出から半周期経過時を起点として次のゼロクロスまでの期間に、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となるように構成される、
ヒータ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヒータ装置であって、
前記異常検出回路は、前記ゼロクロス検出回路によるゼロクロスの検出時を起点として次のゼロクロスまでの期間に、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となるように構成される、
ヒータ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のヒータ装置であって、
前記判定部は、前記制御部が前記駆動スイッチをオン制御しているときに、前記異常検出回路の出力がローレベル信号とハイレベル信号とに交互に繰り返されると、前記駆動スイッチがオープン故障したと判定する、
ヒータ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のヒータ装置であって、
前記判定部は、前記制御部が前記駆動スイッチをオフ制御しているときに、前記異常検出回路の出力が一定であると、前記ヒータが断線したか前記駆動スイッチが短絡故障したと判定する、
ヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ装置に関し、詳しくは、異常検出装置を含むヒータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の異常検出装置を含むヒータ装置としては、便座ヒータおよびヒータスイッチに直列に接続された発光ダイオードと発光ダイオードからの光を受けるフォトトランジスタとを有するフォトカプラと、発光ダイオードに逆並列に接続されたツェナーダイオードと、を備え、ヒータスイッチがオンのときのフォトカプラの出力を監視して便座ヒータの断線の有無を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、便座ヒータを駆動するヒータ駆動部(トライアック)と、ヒータ駆動部の両端に接続されトライアックの導通状態を検出するヒータ駆動検出部と、交流電圧のゼロクロスに同期した信号を出力する交流電圧検出部と、ヒータ駆動部を制御すると共にヒータ駆動検出部の出力と交流電圧検出部の出力とに基づいてヒータ駆動部の異常および発熱部の異常を検出する制御部と、を備えるものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。制御部は、ゼロクロス信号を受けて交流電圧を一周期の全区間通電する全波制御と、半区間通電する半波制御と、ゼロクロス信号から一定時間遅れて交流電圧の一部を通電する位相制御との3つの制御方法により便座ヒータの通電を制御する。そして、全波制御時および位相制御時において、ヒータ駆動検出部の出力信号の波形が正常時の波形と明らかに異なる場合に異常検出を行なう。半波制御時においては、印加される電圧の正負により正常時の出力が異なるため、異常検出は行なわない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-145471号公報
【特許文献2】特開2009-61138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の回路は、全波制御を想定した回路構成であり、半波制御のようなデューティ制御では、印加される電圧の正負により正常時の出力が異なるため、異常検出を行なうことができない。また、特許文献2記載の回路では、全波制御時および位相制御時においては異常検出を行なうことができるものの、ヒータ駆動検出部を必要とし、コスト増を招く。また、特許文献1記載の回路と同様に、半波制御時においては印加される電圧の正負によって正常時の出力が異なるため、異常検出を行なうことができない。
【0006】
本発明のヒータ装置は、駆動スイッチの制御手法に拘わらず、異常検出を適切に行なうことができるヒータ装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒータ装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明のヒータ装置は、
交流電源に対してヒータおよび駆動スイッチが直列に接続されたヒータ駆動回路と、
前記交流電源の電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路と、
前記駆動スイッチに並列に接続された発光ダイオードと前記発光ダイオードからの光を受けるフォトトランジスタとを含むフォトカプラと、前記発光ダイオードに逆並列に接続されたダイオードと、を有する異常検出回路と、
前記異常検出回路の出力に基づいて前記ヒータまたは前記ヒータ駆動回路の異常を判定する判定部と、
100%とは異なるデューティ比で前記駆動スイッチを制御する場合に、前記ゼロクロス検出回路によりゼロクロスが検出されたことに基づいて、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となる期間に前記駆動スイッチのオフ期間が生じないように前記駆動スイッチを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0009】
この本発明のヒータ装置では、100%とは異なるデューティ比で駆動スイッチを制御する場合に、ゼロクロスが検出されたことに基づいて、ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが発光ダイオードの順方向となる期間に駆動スイッチのオフ期間が生じないように駆動スイッチを制御する。100%のデューティ比で駆動スイッチを制御する場合、駆動スイッチのオフ期間がないため、交流電源からの電流は全区間で駆動スイッチに流れ、発光ダイオードに流れない。このため、装置が正常であれば、両者の場合で異常検出回路の出力は同一となる。したがって、100%とは異なるデューティ比で制御する場合と100%のデューティ比で制御する場合とのいずれの場合も、異常検出回路の出力を正常時の出力と比較することで、ヒータ装置の異常を適切に判定することができる。
【0010】
こうした本発明のヒータ装置において、前記異常検出回路は、前記ゼロクロス検出回路によるゼロクロスの検出から半周期経過時を起点として次のゼロクロスまでの期間に、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となるように構成されてもよい。こうすれば、100%とは異なるデューティ比で駆動スイッチを制御する場合に、ゼロクロスの検出時からデューティ比に応じた時間だけ遅れて駆動スイッチがオンするように制御すればよいから、駆動スイッチの遅延時間による影響を低減することができる。
【0011】
あるいは、本発明のヒータ装置において、前記異常検出回路は、前記ゼロクロス検出回路によるゼロクロスの検出時を起点として次のゼロクロスまでの期間に、前記ヒータ駆動回路を流れる電流の向きが前記発光ダイオードの順方向となるように構成されてもよい。
【0012】
また、本発明のヒータ装置において、前記判定部は、前記制御部が前記駆動スイッチをオン制御しているときに、前記異常検出回路の出力がローレベル信号とハイレベル信号とに交互に繰り返されると、前記駆動スイッチがオープン故障したと判定してもよい。
【0013】
さらに、本発明のヒータ装置において、前記判定部は、前記制御部が前記駆動スイッチをオフ制御しているときに、前記異常検出回路の出力が一定であると、前記ヒータが断線したか前記駆動スイッチが短絡故障したと判定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の異常検出装置を含むヒータ装置の概略構成図である。
図2】全波制御時におけるヒータスイッチの動作を説明する説明図である。
図3】半波制御時におけるヒータスイッチの動作を説明する説明図である。
図4】正常時、便座ヒータの断線時、ヒータスイッチのオープン故障時および短絡故障時のそれぞれにおける、ヒータスイッチへの駆動信号とヒータスイッチの状態と便座ヒータの状態と異常検出回路出力電圧との関係を示す説明図である。
図5】正常時に半波制御を実行した場合の異常検出回路出力電圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図6】便座ヒータの断線故障時に半波制御を実行した場合の異常検出回路出力電圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図7】ヒータスイッチのオープン故障時に半波制御を実行した場合の異常検出回路出力電圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図8】ヒータスイッチの短絡故障時に半波制御を実行した場合の異常検出回路出力電圧の時間変化の様子を示す説明図である。
図9】正常時の全波制御時の異常検出回路出力電圧と半波制御(上半波オン,下半波オン)時の異常検出回路出力電圧とを示す説明図である。
図10】デューティ70%のヒータ入力電圧の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の異常検出装置を含むヒータ装置の概略構成図である。ヒータ装置10は、洋式便器に設置された便座装置の便座2を加温するものであり、図1に示すように、便座2に内蔵された便座ヒータ11と、ヒータスイッチ16をオンして交流電源1の電圧を便座ヒータ11に印加することで当該便座ヒータ11を駆動するヒータ駆動回路15と、交流電源1の電圧のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路20と、便座ヒータ11やヒータ駆動回路15の異常を検出する異常検出回路30と、装置全体をコントロールする制御装置40と、を備える。
【0017】
ヒータ駆動回路15のヒータスイッチ16は、例えば、トライアックや、発光ダイオードを含むソリッドステートリレーにより構成される。ヒータスイッチ16のトライアックと便座ヒータ11とは、交流電源1に対して直列に接続されている。ヒータスイッチ16は、制御装置40からの駆動信号(オン信号)によりオンされ、交流電源1の電圧が次のゼロクロスを通過するタイミングで自動的にオフされる。
【0018】
ゼロクロス検出回路20は、交流電源1の電圧のゼロクロスを検出するものであり、本実施形態では、出力電圧Vcのローレベル電圧からハイレベル電圧への変化に基づいて交流電源1の電圧の立ち下がりゼロクロスを検出する。このゼロクロス検出回路20は、図1に示すように、フォトカプラ21とダイオード24と抵抗素子25,26とコンデンサ27とを備える。フォトカプラ21は、発光素子としての発光ダイオード22と、発光ダイオード22からの光を受ける受光素子としてのフォトトランジスタ23と、を有する。発光ダイオード22および抵抗素子25は、交流電源1に対して互いに直列に接続され、且つ、便座ヒータ11とヒータスイッチ16に並列に接続されている。ダイオード24は、発光ダイオード22に逆並列に(ダイオード24の順方向と発光ダイオード22の順方向とが逆向きとなるように)接続されている。フォトトランジスタ23のエミッタは接地され、フォトトランジスタ23のコレクタは抵抗素子26を介して定電圧源Vccに接続されると共にコンデンサ27を介して接地されている。抵抗素子26とコンデンサ27との接続点Pcの電圧は、出力電圧Vcとして制御装置40に出力される。
【0019】
異常検出回路30は、便座ヒータ11の断線やヒータスイッチ16のオープン故障および短絡故障を検出するものであり、ゼロクロス検出回路20と同様の回路構成を有する。すなわち、異常検出回路30は、図1に示すように、フォトカプラ31とダイオード34と抵抗素子35,36とコンデンサ37とを備える。フォトカプラ31は、発光素子としての発光ダイオード32と、発光ダイオード32からの光を受ける受光素子としてのフォトトランジスタ33と、を有する。発光ダイオード32および抵抗素子35は、交流電源1に対して便座ヒータ11と共に互いに直列に接続され、且つ、ヒータスイッチ16に並列に接続されている。ダイオード34は、発光ダイオード32に逆並列に(ダイオード34の順方向と発光ダイオード32の順方向とが逆向きとなるように)接続されている。フォトトランジスタ33のエミッタは接地され、フォトトランジスタ33のコレクタは抵抗素子36を介して定電圧源Vccに接続されると共にコンデンサ37を介して接地されている。抵抗素子36とコンデンサ37との接続点Poの電圧は、出力電圧Voとして制御装置40に出力される。
【0020】
制御装置40は、CPUやROM、RAMを備えるマイクロプロセッサとして構成されている。制御装置40の機能ブロックとしては、接続点Pcの出力電圧Vcを入力してヒータスイッチ16へ駆動信号を出力して制御する制御部41と、接続点Pc,Poの出力電圧Vc,Voを入力して便座ヒータ11やヒータ駆動回路15の異常を判定する判定部42と、を備える。
【0021】
次に、こうして構成されたヒータ装置10の動作について説明する。制御部41は、便座ヒータ11の通電として、図示しない温度センサで検出される便座2の温度が設定温度となるように全波制御や半波制御を用いてヒータスイッチ16を制御する。図2および図3は、ヒータスイッチ16の動作を説明する説明図である。図2は、全波制御の動作を示し、図3は、半波制御の動作を示す。全波制御は、図2に示すように、交流電源電圧Vのゼロクロスの検出(ゼロクロス検出回路20の出力電圧Vcがローレベル電圧からハイレベル電圧に変化したこと)を受けて交流電源電圧Vの全区間(100%のデューティ比)で便座ヒータ11に電圧が印加されるようヒータスイッチ16を制御することにより行なわれる。半波制御は、図3に示すように、交流電源電圧Vのゼロクロスの検出を受けて交流電源電圧Vの半区間(50%のデューティ比)で便座ヒータ11に電圧が印加されるようヒータスイッチ16を制御することにより行なわれる。本実施形態では、半波制御は、交流電源電圧Vの上半波区間の電圧が便座ヒータ11に印加されるように、ゼロクロス(立ち下がりゼロクロス)の検出から半周期経過時にヒータスイッチ16をオンすることにより行なわれる。
【0022】
ここで、ヒータ装置10(便座ヒータ11やヒータスイッチ16)に異常が生じていないとき(正常時)には、異常検出回路30は、以下のように動作する。制御装置40がヒータスイッチ16をオフしているときには、交流電源1からの電流は、発光ダイオード32とダイオード34とに半周期毎に交互に流れる。このため、異常検出回路30からは、出力電圧Voとしてローレベル電圧とハイレベル電圧とが半周期毎に交互に出力される。一方、制御装置40がヒータスイッチ16をオンしたときには、交流電源1からの電流は、ヒータスイッチ16に流れ、発光ダイオード32には流れない。したがって、異常検出回路30からは、出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧が出力される。
【0023】
次に、異常検出回路30からの出力電圧Voに基づいて判定部42が便座ヒータ11やヒータ駆動回路15の異常を判定する動作について説明する。図4は、正常時、便座ヒータ11の断線時、ヒータスイッチ16のオープン故障時および短絡故障時のそれぞれにおける、ヒータスイッチ16への駆動信号とヒータスイッチ16の状態と便座ヒータ11の状態と異常検出回路出力電圧との関係を示す説明図である。図5図8は、半波制御を実行した場合におけるヒータ装置10の状態に応じた異常検出回路出力電圧の時間変化の様子を示す説明図である。なお、図5は、正常時の様子を示し、図6は、便座ヒータ11の断線故障時の様子を示し、図7は、ヒータスイッチ16のオープン故障時の様子を示し、図8は、ヒータスイッチ16の短絡故障時の様子を示す。異常判定は、ヒータスイッチ16をオン制御しているときやオフ制御しているときに、異常検出回路30の出力電圧Voが正常時のものと異なるか否かを判定することにより行なわれる。
【0024】
便座ヒータ11が断線しているときには、ヒータスイッチ16の状態に拘わらず、便座ヒータ11にも発光ダイオード32にも電流が流れない。このため、図6に示すように、異常検出回路30からは、出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧が出力される。図4に示すように、正常時にはヒータスイッチ16をオフ制御していると、異常検出回路30の出力電圧Voはローレベル電圧とハイレベル電圧とに交互に変化するため、判定部42は、ヒータスイッチ16をオフ制御しているにも拘わらず、異常検出回路30の出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧を検出すると、便座ヒータ11が断線していると判定する。
【0025】
ヒータスイッチ16がオープン故障しているときには、制御装置40がヒータスイッチ16をオン制御しても、ヒータスイッチ16はオンしないため、交流電源1からの電流は、半周期毎に発光ダイオード32とダイオード34とに交互に流れる。このため、図7に示すように、異常検出回路30からは、出力電圧Voとしてローレベル電圧とハイレベル電圧とが交互に出力される。図4に示すように、正常時にはヒータスイッチ16をオン制御していると、異常検出回路30の出力電圧Voは一定のハイレベル電圧となるため、判定部42は、ヒータスイッチ16をオン制御しているにも拘わらず、異常検出回路30の出力電圧Voとしてローレベル電圧とハイレベル電圧とが交互に出力されていることを検出すると、ヒータスイッチ16がオープン故障していると判定する。
【0026】
ヒータスイッチ16が短絡故障しているときには、制御装置40がヒータスイッチ16をオフ制御しても、ヒータスイッチ16がオンされ続けているため、交流電源1からの電流は、ヒータスイッチ16を流れ続け、発光ダイオード32には流れない。このため、図8に示すように、異常検出回路30からは、出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧が出力される。図4に示すように、正常時にはヒータスイッチ16をオフ制御していると、異常検出回路30の出力電圧Voはローレベル電圧とハイレベル電圧とに交互に変化するため、判定部42は、ヒータスイッチ16をオフ制御しているにも拘わらず、異常検出回路30の出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧を検出すると、ヒータスイッチ16が短絡故障していると判定する。なお、便座ヒータ11の断線故障時とヒータスイッチ16の短絡故障時は、いずれも制御装置40がオフ制御しているときに異常検出回路30が出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧を出力している場合であるから、判定部42は、両者を区別することなく異常判定を行なう。
【0027】
このように、便座ヒータ11やヒータスイッチ16の異常判定は、異常検出回路30の出力電圧Voが正常時のものと異なるか否かを判定することにより行なわれる。このため、正常時においてヒータスイッチ16の制御手法(全波制御や、半波制御等)を切り替えた際に異常検出回路30の出力電圧Voが変化してしまうと、正常時との比較ができなくなり、異常判定を行なうことができない。図9は、正常時の全波制御時の異常検出回路出力電圧と半波制御(上半波オン,下半波オン)時の異常検出回路出力電圧とを示す説明図である。全波制御においては、交流電源電圧Vの全区間でヒータスイッチ16がオンされるため、発光ダイオード32には電流が流れず、異常検出回路30からは、出力電圧Voとして一定のハイレベル電圧が出力される(図9(a)参照)。一方、半波制御においては、交流電源電圧Vの半区間でヒータスイッチ16がオフされるため、ヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となる期間にヒータスイッチ16のオフ期間が生じると、当該オフ期間において電流が発光ダイオード32に流れ、異常検出回路30からは、全波制御時とは異なり、出力電圧Voとしてローレベル電圧とハイレベル電圧とが交互に出力されてしまう(図9(c)参照)。そこで、本実施形態では、制御部41は、半波制御において、ヒータ駆動回路15の電流の向きが発光ダイオード32の順方向となる期間にヒータスイッチ16のオフ期間が生じないように、ヒータスイッチ16を制御する。具体的には、交流電源電圧Vの上半波区間でヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となることから、交流電源電圧Vの上半波が便座ヒータ11に印加されるように、交流電源電圧Vの立ち下がりゼロクロスの検出から半周期経過時にヒータスイッチ16をオン制御する(図9(b)参照)。これにより、正常時において、異常検出回路30の出力電圧Voを、全波制御時と半波制御時とで同一にすることができ、全波制御および半波制御のいずれを実行する場合でも、異常検出を適切に行なうようにすることができる。なお、50%~100%の範囲内でデューティ制御する場合には、全波制御を実行する場合と異常検出回路30の出力電圧Voを同一とするためには、ヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となる期間にヒータスイッチ16のオフ期間が生じなければよいから、例えば図10(70%デューティ制御)のように複数の周期を単位期間として当該単位期間内における全波制御と半波制御との実行割合をデューティ比に応じて調整するようにしてもよい。
【0028】
以上説明した本実施形態のヒータ装置10では、100%とは異なるデューティ比でヒータスイッチ16を制御する場合に、ゼロクロス検出回路20によりゼロクロスが検出されたことに基づいてヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となる期間にヒータスイッチ16のオフ期間が生じないようにヒータスイッチ16を制御する。これにより、半波制御において、正常時の異常検出回路30の出力電圧Voを、全波制御時と同一にすることができるため、いずれの制御手法によっても、異常検出回路30の出力電圧Voを正常時のものと比較することで、便座ヒータ11の断線やヒータスイッチ16のオープン故障、短絡故障などの異常を適切に検出することができる。
【0029】
本実施形態では、異常検出回路30は、ゼロクロス検出回路20によるゼロクロス(交流電源電圧Vの立ち下がりゼロクロス)の検出から半周期経過時を起点として次のゼロクロスまでの期間(半周期)にヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となるように構成されたが、ゼロクロス検出回路20によるゼロクロスの検出時を起点として次のゼロクロスまでの期間に電流が発光ダイオード32の順方向となるように構成されてもよい。この場合、例えば、交流電源電圧Vの上半波区間でヒータ駆動回路15を流れる電流の向きが発光ダイオード32の順方向となり、ゼロクロス検出回路20は、交流電源電圧Vの立ち上がりゼロクロスを検出する場合、半波制御において、ゼロクロス検出回路20による立ち上がりゼロクロスの検出時または立ち上がりゼロクロスの検出から一周期経過時にヒータスイッチ16をオン制御すればよい。
【0030】
本実施形態では、図1に示したように、ヒータスイッチ16は、トライアックを備えるものとしたが、ソリッドステートリレーのようなフォトリレーを備えるものとしてもよい。
【0031】
本実施形態では、ヒータ装置10は、交流電源1に対して便座ヒータ11とヒータスイッチ16とが直列に接続されたヒータ駆動回路15における便座ヒータ11やヒータスイッチ16の異常を判定するものに適用した。しかし、便座ヒータ11に限定されるものではなく、例えば、衛生洗浄装置においてノズルから人体の局部に噴出する洗浄水を加温するための温水ヒータや、洗浄時に濡れた人体の局部を温風により乾燥させるための乾燥ヒータなど、ヒータまたは駆動スイッチの異常を検出するものであれば、如何なるヒータ装置にも適用可能である。
【0032】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、便座ヒータ11が「ヒータ」に相当し、ヒータ駆動回路15が「ヒータ駆動回路」に相当し、ヒータスイッチ16が「駆動スイッチ」に相当し、ゼロクロス検出回路20が「ゼロクロス検出回路」に相当し、フォトカプラ31が「フォトカプラ」に相当し、ダイオード34が「ダイオード」に相当し、異常検出回路30が「異常検出回路」に相当し、制御部41が「制御部」に相当し、判定部42が「判定部」に相当する。
【0033】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ヒータ装置や異常検出回路の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 交流電源、2 便座、10 ヒータ装置、11 便座ヒータ、15 ヒータ駆動回路、16 ヒータスイッチ、20 ゼロクロス検出回路、21 フォトカプラ、22 発光ダイオード、23 フォトトランジスタ、24 ダイオード、25,26 抵抗素子、27 コンデンサ、30 異常検出回路、31 フォトカプラ、32 発光ダイオード、33 フォトトランジスタ、34 ダイオード、35,36 抵抗素子、37 コンデンサ、40 制御装置、41 制御部、42 判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10