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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165641
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ウエブ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/188 20060101AFI20221025BHJP
   B65H 19/22 20060101ALI20221025BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20221025BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20221025BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20221025BHJP
   F26B 13/08 20060101ALI20221025BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20221025BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20221025BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65H23/188
B65H19/22
G10L15/00 200Z
G10L15/22 460D
G06F3/16 650
G06F3/16 630
F26B13/08
F26B25/00 A
B41F33/00 210
B41F9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071064
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】宇田 翔梧
(72)【発明者】
【氏名】市川 幹祠
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
3F064
3F105
3L113
【Fターム(参考)】
2C034AA22
2C034AA42
2C034AD05
2C250DB11
2C250DC01
2C250EA06
2C250EA10
3F064AA01
3F064CA02
3F064FA04
3F105AA01
3F105AA04
3F105AB03
3F105BA01
3F105BA07
3L113AA08
3L113AB02
3L113BA30
3L113CB01
3L113CB23
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】音声認識により、ウエブ加工に係る制御入力を行うことにより、オペレータの動作制御の決定から装置への制御入力までの即応性の高いウエブ加工装置を提供する。
【解決手段】ウエブ加工装置は、入力された音声情報を認識する音声認識部212と、ウエブの搬送及び加工の少なくともいずれかを制御する制御部21と、を備える。また、制御部21は、ウエブの張力、速度及び乾燥温度の少なくともいずれかを、音声認識部212で認識された制御情報に基づいて制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声情報を認識する音声認識部と、
ウエブの搬送及び加工の少なくともいずれかを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ウエブの張力、速度及び乾燥温度の少なくともいずれかを、前記音声認識部で認識された制御情報に基づいて制御する、
ウエブ加工装置。
【請求項2】
入力された音声情報を認識する音声認識部と、
前記音声認識部で認識された制御情報に基づいてウエブの紙継動作を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするウエブ加工装置。
【請求項3】
ウエブの加工のために動作する可動部と、
前記可動部の動作範囲内の物体を検出するエリアセンサと、を備え、
前記制御部は、
前記エリアセンサが前記動作範囲内の物体を検出していない場合にのみ、前記音声認識部で認識された制御情報に基づく制御を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のウエブ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記音声認識部で認識された制御情報を確認するための音声情報である確認情報をオペレータに出力し、
前記確認情報に対する肯定的な回答が入力された場合にのみ、前記音声認識部で認識された制御情報に基づく制御を行う、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウエブ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ加工装置に関し、より詳細には、オペレータが加工に係る制御入力を行うウエブの加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状のウエブに印刷を行うグラビア印刷機及びインクジェット印刷機、ウエブ同士を貼り合わせるラミネータ等、ウエブに種々の加工を行うウエブ加工装置が開発されている(例えば、特許文献1、2等)。これらのウエブ加工装置は、ロール状のウエブを巻き出して連続的に量産加工するものであり、一般的に大型の装置となる。
【0003】
また、装置の操作はそれぞれの加工装置に設けられた制御盤を操作することによって行われる。例えば、多色印刷を行うグラビア印刷機では、各色の印刷を行う印刷ユニットごとに設けられた制御盤を操作して印刷ユニットごとにパラメータ調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-160753号公報
【特許文献2】特開2015-231895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2等のウエブ加工装置では、装置が大型となるため、例えば、グラビア印刷機における多色印刷の際の見当合わせでは、オペレータが見当ずれを目視確認した上で、調整対象の印刷ユニットの制御盤の位置に移動して制御盤を操作し、乾燥温度、ウエブの張力等のパラメータを調整する。したがって、装置のパラメータ調整のための制御入力に時間を要し、品質調整の即応性を向上させることは難しい。
【0006】
また、例えば印刷済みのウエブを巻き取る巻取装置において紙継動作を行う場合、オペレータがウエブの巻取状態を目視確認し、紙継を行うことを決定する。そして、巻取装置の制御盤の位置に移動して紙継動作の制御入力を行う。したがって、オペレータが紙継を行うことを決定してから制御入力を行うまでに大きなタイムラグを生じる場合がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、音声認識により、ウエブ加工に係る制御入力を行うことにより、オペレータの動作制御の決定から装置に対する制御入力までの即応性の高いウエブ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るウエブ加工装置は、
入力された音声情報を認識する音声認識部と、
ウエブの搬送及び加工の少なくともいずれかを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ウエブの張力、速度及び乾燥温度の少なくともいずれかを、前記音声認識部で認識された制御情報に基づいて制御する。
【0009】
また、本発明の第2の観点に係るウエブ加工装置は、
入力された音声情報を認識する音声認識部と、
前記音声認識部で認識された制御情報に基づいてウエブの紙継動作を制御する制御部と、を備える。
【0010】
また、ウエブ加工装置は、
ウエブの加工のために動作する可動部と、
前記可動部の動作範囲内の物体を検出するエリアセンサと、を備え、
前記制御部は、
前記エリアセンサが前記動作範囲内の物体を検出していない場合にのみ、前記音声認識部で認識された制御情報に基づく制御を行う、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記制御部は、
前記音声認識部で認識された制御情報を確認するための音声情報である確認情報をオペレータに出力し、
前記確認情報に対する肯定的な回答が入力された場合にのみ、前記音声認識部で認識された制御情報に基づく制御を行う、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエブ加工装置によれば、音声認識により、ウエブ加工に係る制御を行うので、ウエブの加工状態を確認しながらウエブ加工装置の制御を行うことを容易にするとともに、ウエブ加工装置の制御の即応性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係るウエブ加工装置の概略図である。
図2】実施の形態1に係る制御ユニットの機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るウエブ加工装置の概略図である。
図4】実施の形態2に係る制御ユニットの機能ブロック図である。
図5】実施の形態2に係る巻取紙継処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るウエブ加工装置について説明する。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態に係るウエブ加工装置1は、ウエブに多色印刷を行うグラビア印刷機であり、図1の概略図に示すように、ロール状の紙、フイルム等のウエブWを巻出して印刷機へ送出する巻出装置11、巻出装置11から送出されたウエブWに多色印刷を行うグラビア印刷装置12、印刷されたウエブWを巻き取る巻取装置13、図示しない制御ユニット20を備える。
【0016】
巻出装置11は、ロール状態でセットされたウエブWをグラビア印刷装置12へ送出する装置である。
【0017】
グラビア印刷装置12は、ウエブWに、色ごとに印刷を行う印刷ユニット121,122,123を備える。また、グラビア印刷装置12は、ウエブWを印刷ユニット121へ送り込むインフィードローラ15、ウエブWを印刷ユニット123から巻取装置13へと送り出すアウトフィードローラ16を備える。
【0018】
本実施の形態に係る印刷ユニット121~123は、乾燥装置Dを備える。これにより、それぞれの印刷ユニット121~123で印刷されたインクを乾燥させ、にじみ等の不具合の発生を抑制することができる。
【0019】
巻取装置13は、巻出装置11から送り出され、グラビア印刷装置12で印刷された紙、フイルム等のウエブWを巻き取る装置である。
【0020】
制御ユニット20は、図2のブロック図に示すように、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24、通信部25を備える。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、水晶発振器等から構成されており、ウエブ加工装置1の動作を制御する。また、制御部21は、後述する音声入出力装置30から入力された音声情報に基づいて、ウエブ加工装置1の動作に係るパラメータ調整、ウエブWの加工動作の制御等を行う。調整パラメータは、ウエブWに対する印刷、複数のウエブWの貼り合わせ等の加工品質に影響を与えるウエブWの張力、送り速度、乾燥温度等である。
【0022】
制御部21は、制御部21のROM、記憶部22等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPUを動作させることにより、図2に示される制御部21の各機能を実現させる。これにより、制御部21は、音声情報取得部211、音声認識部212、音声情報出力部213として動作する。
【0023】
音声情報取得部211は、通信部25を介して接続される音声入出力装置30からオペレータが発する音声情報を取得する。また、音声情報取得部211は、取得した音声情報を音声認識部212へ送信する。
【0024】
音声認識部212は、音声情報取得部211から取得した音声情報を音声認識することにより、ウエブ加工装置1の動作制御、パラメータ調整等を行うための制御情報(制御コマンド)を認識する。
【0025】
音声情報出力部213は、オペレータに対して出力する音声情報を生成し、通信部25を介して音声入出力装置30へ送信し、出力させる。
【0026】
記憶部22は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、入力された音声情報を音声認識する認識モデル、音声情報から認識された制御情報に対応するウエブ加工装置1の動作条件等を記憶する。
【0027】
表示部23は、制御ユニット20に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶モニタである。表示部23は、ウエブ加工装置1の各種動作パラメータ等の情報を表示する。
【0028】
入力部24は、ウエブ加工装置1の各種動作パラメータ、ウエブ加工装置1の動作の開始、終了指示等を入力するための入力デバイスである。入力部24は、制御ユニット20に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0029】
通信部25は、制御部21と音声入出力装置30とを接続し、相互に通信を行う。通信部25による通信の方式は特に限定されないが、例えばブルートゥース(登録商標)を用いた無線通信である。
【0030】
音声入出力装置30は、ウエブ加工装置1の動作を制御するための音声情報を制御ユニット20へ入力するためのマイク、音声入力に対する制御ユニット20からの音声情報出力等をオペレータに伝えるためのスピーカを備える装置であり、例えばヘッドセットである。
【0031】
続いて、本実施の形態に係るウエブ加工装置1における音声制御動作について説明する。
【0032】
ウエブ加工装置1であるグラビア印刷機の動作が開始されると、ウエブWは、巻出装置11からグラビア印刷装置12へ送出される。また、グラビア印刷装置12では、グラビアロール、ファニッシャロール、圧胴等が回転し、ウエブWがグラビアロールに圧接するように、ウエブWを搬送する。
【0033】
グラビアロールの回転動作により、インキに浸されたグラビアロールの表面に、インキが転移される。グラビアロールに転移されたインキは、ドクターブレードで掻き落とされることにより、計量される。
【0034】
インキが転移されたグラビアロールは、ウエブWに圧接されることにより、インキをウエブWに転写させることで印刷を行う。
【0035】
インキが塗布されたウエブWは、印刷ユニット121~123に設けられた乾燥機で乾燥される。これにより、インキをウエブWに定着させ、にじみ等の不具合を防止することができる。
【0036】
グラビア印刷装置12では、印刷ユニット121~123によって各色の絵柄が順次印刷される。各色の印刷が完了したウエブWは巻取装置13によって巻き取られる。
【0037】
印刷ユニット121~123での印刷において、オペレータは、各色の印刷状態を確認し、印刷状態に係るパラメータの調整を行う。例えば、オペレータは印刷されたウエブWの各色の乾燥状態を確認し、未乾燥が生じている場合、ウエブ加工装置1の動作制御パラメータを調整して、未乾燥を解消する。未乾燥を解消するためには、例えば、印刷ユニット121~123における乾燥温度、乾燥風量等を調整する。これらの動作制御パラメータの調整は、ウエブ加工装置1を構成する各装置、各印刷ユニットに設置された制御部へパラメータ調整の操作入力をすることによって行われる。より具体的には、2色目の印刷ユニット(第2の印刷ユニット)122の乾燥を促進したい場合、オペレータは、2色目の印刷ユニット122の制御部へ、乾燥を促進するための入力、すなわち乾燥温度の上昇、乾燥風量の増加、印刷速度の低下等の入力を行う。
【0038】
本実施の形態では、このパラメータ調整操作を、音声入出力装置30であるヘッドセットを用いて行う。すなわち、上記の例の操作入力を行う場合、オペレータは、例えば2色目の印刷ユニット122の乾燥温度を上昇させるよう、音声入力を行う。オペレータが音声入出力装置30を介して入力する音声情報は、パラメータ調整の対象となる装置を特定する情報、変更するパラメータ及び変更内容等を含む。装置を特定する情報は特に限定されず、予め装置に割り振られたID番号、印刷ユニットの並び順等でもよい。例えば、「2色目の乾燥温度を上げて」のような音声入力を行うことができる。
【0039】
制御ユニット20は、音声情報取得部211で取得した音声情報を音声認識する。制御ユニット20の音声認識部212は、予め学習され、記憶部22に記憶されている音声認識モデルを用いて音声認識を行う。音声認識部212は、入力された音声情報に基づいて、パラメータ調整の対象となる装置を特定する情報、変更するパラメータ及び変更内容等の制御情報(制御コマンド)を認識する。
【0040】
本実施の形態では、図2に示すように、1つの制御ユニット20が、ウエブ加工装置1を構成する各装置の制御部を制御することとしている。すなわち、制御ユニット20が、音声入出力装置30と無線接続され、各装置の制御部と有線接続又は無線接続されている。そして、制御ユニット20の音声情報取得部211が、通信部25を介して入力された音声情報を取得することとしている。これにより、簡素な構成の制御ユニット20で、ウエブ加工装置1に含まれる複数の装置を制御することが可能となる。
【0041】
制御ユニット20は、音声認識によって特定された装置の制御部へ制御情報を送信し、制御対象の装置のパラメータ調整を行う。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエブ加工装置1では、音声認識により、ウエブ加工に係るパラメータを調整するので、ウエブWの加工状態を確認しながら制御パラメータを調整することができる。したがって、加工品質の調整が容易で、オペレータのパラメータ調整の決定からパラメータ調整の入力までの即応性を向上させることができる。これにより、より早くパラメータ調整をウエブWの加工状態に反映させることができる。
【0043】
また、本実施の形態に係るウエブ加工装置1は、音声認識により、ウエブ加工に係るパラメータを調整するので、オペレータは制御盤を操作する必要がない。したがって、オペレータは、他の作業を行いながらウエブ加工装置1のパラメータ調整を行うことが可能であり、より容易かつ効率的に作業を行うことができる。
【0044】
本実施の形態では、制御の対象となるパラメータは、ウエブWの張力であることとしたがこれに限られず、ウエブWの加工に係る調整パラメータであればよい。例えば、グラビア印刷機であるウエブ加工装置1においてウエブWの印刷図柄の間隔のばらつきであるピッチエラーを検出した場合、オペレータはウエブ加工装置1の乾燥温度、ウエブWの張力、送り速度等のパラメータを調整する。
【0045】
また、例えばラミネータであるウエブ加工装置においてウエブWのカールの状態を調整したい場合、オペレータは、それぞれのウエブWの張力、送り速度等を音声入力により調整する。
【0046】
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、ウエブ加工装置が複数の装置を含むグラビア印刷機である場合を例として説明したが、ウエブ加工装置は印刷機以外の個別の装置とすることもできる。本実施の形態では、ウエブ加工装置2として、巻取装置13を用いる場合について説明する。
【0047】
本実施の形態に係るウエブ加工装置2は、図3に示すように、ターレット131を用いた紙継機能を有する巻取装置13である。また、巻取装置13であるウエブ加工装置2は、図4の機能ブロック図に示すように、制御ユニット20’を備える。制御ユニット20’の概略構成は、他の装置の制御部と接続されていないことを除いて、実施の形態1に係る制御ユニット20と同様である。
【0048】
ウエブ加工装置2は、第1巻取軸132、第2巻取軸133の2つの巻取軸に巻芯を回転可能に保持している。そして、巻取位置にある一方の巻取軸(例えば第1巻取軸132)に巻き取られたウエブWが、予め定められた所定の量(ロール径)に達すると、ターレットを回転させて第2巻取軸133を巻取位置へ、第1巻取軸132を待機位置へ移動させる(紙継準備)。さらに、第1巻取軸132に巻き取られたウエブWが、予め定められた所定の量(ロール径)に達すると、図3に示すように、ウエブWをカットし、カットされたウエブWの先端部を第2巻取軸133の巻芯に巻き付けて、ウエブWの巻取を第2巻取軸133へ切り替える(紙継動作)。
【0049】
従来の巻取装置では、これら紙継準備、紙継動作等の指示は巻取装置の制御盤を操作して行われていた。これに対し本実施の形態では、オペレータが音声入出力装置30を介して入力した音声情報に基づいて、ウエブ加工装置2の制御ユニット20’が紙継準備、紙継動作等の動作を行う。
【0050】
以下、図5のフローチャートを参照しつつ、本実施の形態に係る紙継動作について説明する。まず、オペレータは、巻取位置にある第1巻取軸132のウエブWの巻取量等に基づいて、紙継準備を行うか否か判断する(ステップS11)。紙継を行うか否かの判断は、巻取装置13が備えるセンサの出力に基づいて行うこととしてもよい。この場合、第1巻取軸132のロールが予め設定されたウエブWの巻取量となり、紙継準備を行うべきタイミングになったことをセンサが検出して、制御ユニット20’が音声入出力装置30の音声出力によって、オペレータに紙継準備のタイミングを通知することとしてもよい。
【0051】
オペレータが紙継準備を行うと判断しない場合(ステップS11のNO)、オペレータは音声入出力装置30に対して、音声情報の入力を行わず、制御ユニット20’の音声情報取得部211は、音声情報の入力を待機し続ける。
【0052】
オペレータが紙継準備を行うと判断した場合(ステップS11のYES)、オペレータは音声入出力装置30に対して、紙継準備の操作を音声情報として入力する。制御ユニット20’の音声情報取得部211は、オペレータの音声情報を取得し、音声認識部212へ送信する(ステップS12)。
【0053】
音声認識部212は、音声情報取得部211から受信した音声情報を音声認識し、紙継準備の制御情報(制御コマンド)であることを認識する(ステップS13)。音声認識は、予め学習され記憶部22に記憶されている音声認識モデルに基づいて行われる。
【0054】
本実施の形態に係る制御ユニット20’は、音声情報による操作と、ウエブ加工装置2のエリアセンサとによるインターロックを行う。具体的には、制御ユニット20’は、紙継準備の制御情報を認識した際、ウエブ加工装置2の所定の動作領域、例えば可動部であるターレット131の動作範囲に人、物等の物体が存在しているか否かをエリアセンサによって検出する。その結果、エリアセンサが物体を検出した場合(ステップS14のYES)、制御ユニット20’は、通信部25を介して音声入出力装置30に音声出力させ、オペレータに紙継準備を行うことができないことを伝える(ステップS15)。音声出力情報は、例えば「エリアセンサが作動しているため、紙継準備を行うことができません。」のような文であり、音声データとして予め記憶部22に記憶されている。
【0055】
ステップS14において、エリアセンサが物体を検出しておらず、安全に動作できる場合(ステップS14のNO)、制御ユニット20’は、音声入力された制御コマンドの確認を行う(ステップS16)。具体的には、制御ユニット20’は、音声入出力装置30を制御して、オペレータに対して制御入力の確認を促すための確認情報、例えば「紙継準備を行いますか。」との音声情報を出力する。
【0056】
ステップS16の確認に対してオペレータが肯定の応答、例えば「はい」という肯定的な回答の音声入力をした場合(ステップS17のYES)、制御ユニット20’は、紙継準備を行う(ステップS18)。ここで、肯定的な回答とは、確認情報の内容に関わらず、オペレータが音声入力した制御情報に基づく制御動作を肯定する回答をいう。
【0057】
ステップS16の確認に対してオペレータが否定の応答、例えば「いいえ」という否定的な回答の音声入力をした場合、又はオペレータが上述の肯定の応答をせず、予め定められた所定の時間(例えば10秒程度)が経過した場合(ステップS17のNO)、制御ユニット20’は、紙継準備のための処理をリセットし、ステップS11のオペレータからの入力待ち状態に戻る。
【0058】
ターレット131が回転して、第2巻取軸133に装着された新たな巻芯が巻取位置に移動し、紙継準備が完了した後、オペレータは音声入出力装置30に対して、紙継動作の操作を音声情報として入力する。制御ユニット20’の音声情報取得部211は、オペレータの音声情報を取得し、音声認識部212へ送信する。
【0059】
音声認識部212は、音声情報取得部211から受信した音声情報を音声認識し、紙継動作を実行する制御情報を認識する(ステップS19)。音声認識は、紙継準備と同様の音声認識モデルに基づいて行われる。
【0060】
音声認識部212が紙継動作の制御情報を認識すると、音声情報出力部213は音声入出力装置30を制御して、オペレータに対して確認情報、例えば「巻取カットを行いますか」との音声情報を出力する(ステップS20)。
【0061】
ステップS20の確認に対してオペレータが肯定の応答、例えば「はい」という肯定的な回答の音声入力をした場合(ステップS21のYES)、制御ユニット20’は、紙継動作を行う(ステップS22)。
【0062】
ステップS20の確認に対してオペレータが否定の応答、例えば「いいえ」という否定的な回答の音声入力をした場合、又はオペレータが上述の肯定の応答をせず、予め定められた所定の時間(例えば10秒程度)が経過した場合(ステップS21のNO)、制御ユニット20’は、紙継準備のための処理をリセットし、ステップS11のオペレータからの入力待ち状態に戻る。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係るウエブ加工装置2では、巻取装置13のようにウエブWの搬送及び加工の少なくともいずれかを行う個々のウエブ加工装置を、音声認識によって制御することが可能である。したがって、ウエブWの加工状態を確認しながらウエブ加工装置の制御を容易に行うことができる。また、オペレータの動作制御の決定から装置に対する制御入力までの即応性を向上させることが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係るウエブ加工装置2は、音声認識によるウエブ加工装置2の動作制御と、エリアセンサのようにウエブ加工装置2に設けられたセンサとを組み合わせてインターロック処理を行うこととしている。これにより、ウエブ加工装置2の動作をより安全に行うことができる。
【0065】
また、音声認識を用いた制御において、制御ユニット20’は音声情報による確認処理を行うこととしている。これにより、オペレータの注意を促し、より安全にウエブ加工装置2を動作させることができる。
【0066】
本実施の形態では、紙継準備の際にインターロック処理を行うこととしたがこれに限られず、紙継動作の際、再度エリアセンサを用いたインターロック処理を行うこととしてもよい。これにより、より安全に紙継動作を行うことができる。
【0067】
また、本実施の形態では、確認情報に対して、オペレータの音声情報による確認処理を行うこととしたが、これに限られない。例えば、オペレータがヘッドセットと組み合わせて所持しているスイッチによって肯定的な回答又は否定的な回答を行うこととしてもよい。これにより、音声認識処理を減らして制御ユニット20’の負荷を軽減しつつ、ウエブ加工装置の動作の安全性を確保することができる。
【0068】
上記各実施の形態では、ウエブ加工装置としてグラビア印刷機、巻取装置を用いることとしたが、これに限られない。例えば、複数のウエブWを貼り合わせるラミネータ、接着剤等の塗工液をウエブWに塗工するコーター等、ウエブWに加工を行う装置であればよい。
【0069】
例えば、ドライラミネータ又はコーターであるウエブ加工装置において過乾燥による熱皺を検出した場合、オペレータはウエブ加工装置の乾燥に関するパラメータを調整する。具体的には、オペレータは皺の状態を確認しながら、「乾燥温度を下げて」、「乾燥張力を下げて」等の音声入力による指示を行う。
【0070】
また、上記各実施の形態では、オペレータが生産現場でウエブWを目視等により直接確認しつつ音声認識によって制御することとしたがこれに限られない。例えば、別室で加工済みのウエブWの状態を確認しながら、ネットワーク接続された生産ラインのウエブ加工装置を音声入出力装置30から操作することとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,2 ウエブ加工装置、11 巻出装置、12 グラビア印刷装置、121,122,123 印刷ユニット、13 巻取装置、131 ターレット、132 第1巻取軸、133 第2巻取軸、15 インフィードローラ、16 アウトフィードローラ、20,20’ 制御ユニット、21 制御部、211 音声情報取得部、212 音声認識部、213 音声情報出力部、22 記憶部、23 表示部、24 入力部、25 通信部、30 音声入出力装置、D 乾燥装置、W ウエブ
図1
図2
図3
図4
図5