(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016565
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電子シンバル
(51)【国際特許分類】
G10D 13/10 20200101AFI20220114BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G10D13/10 160
G10H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189422
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2019089300の分割
【原出願日】2019-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】319004537
【氏名又は名称】株式会社エフノート
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】森 良彰
(57)【要約】
【課題】演奏者がパッド部の周縁部を叩打した際、エッジセンサによる叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる電子シンバルを提供する。
【解決手段】演奏者による叩打が可能とされた打面を有するパッド部2aと、パッド部2aを支持するフレーム部2bとを有し、当該フレーム部2bの周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサS1が取り付けられるとともに、パッド部2a及びフレーム部2bは、それぞれの中心から周縁部に向かって連続的に延設され、且つ、フレーム部2aの周縁部は、パッド部2bの周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者による叩打が可能とされた打面を有するパッド部と、前記パッド部を支持するフレーム部とを有し、当該フレーム部の周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサが取り付けられるとともに、前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって連続的に延設され、且つ、前記フレーム部の周縁部は、前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする電子シンバル。
【請求項2】
前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって所定の曲率を有しつつ連続的に延設され、且つ、前記フレーム部の周縁部が成す曲率は、前記パッド部の周縁部が成す曲率より大きく設定されることにより前記フレーム部の周縁部が前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子シンバル。
【請求項3】
前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの上面を中心から周縁部に向かって緩やかな角度で直線状に形成されることにより前記フレーム部の周縁部が前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子シンバル。
【請求項4】
前記パッド部は、その周縁部に前記エッジセンサと対峙した凸部が形成されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の電子シンバル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏者による叩打が可能とされた打面を有するパッド部と、パッド部を支持するフレーム部とを有し、当該フレーム部の周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサが取り付けられた電子シンバルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アコースティックのハイハットを電子的に出力可能な従来の電子ハイハットは、例えば特許文献1、2にて開示されている。かかる電子ハイハットは、トップシンバル及びボトムシンバルを上下方向に対峙した状態で取り付け、演奏者の操作に応じて上下動するロッドにトップシンバルを連結させることにより、トップシンバルとボトムシンバルとを当接又は離間させ得るようになっていた。
【0003】
また、従来の電子ハイハットは、トップシンバル(電子シンバル)及びボトムシンバルの離間寸法を検出し得る光センサを具備しており、その光センサで検出された離間寸法によりトップシンバル及びボトムシンバルの当接又は離間を検出することが可能とされていた。そして、演奏者がスティックによってトップシンバルの打面が叩打されたことを検出したとき、トップシンバル及びボトムシンバルの当接又は離間に応じて出力を異ならせることにより、アコースティックのハイハットと同様の演奏が可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-124364号公報
【特許文献2】特開2005-208555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、叩打方向が水平方向横向きに近い角度であった場合、エッジセンサによる叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、演奏者がパッド部の周縁部を叩打した際、エッジセンサによる叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる電子シンバルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、演奏者による叩打が可能とされた打面を有するパッド部と、前記パッド部を支持するフレーム部とを有し、当該フレーム部の周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサが取り付けられるとともに、前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって連続的に延設され、且つ、前記フレーム部の周縁部は、前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子シンバルにおいて、前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって所定の曲率を有しつつ連続的に延設され、且つ、前記フレーム部の周縁部が成す曲率は、前記パッド部の周縁部が成す曲率より大きく設定されることにより前記フレーム部の周縁部が前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電子シンバルにおいて、前記パッド部及びフレーム部は、それぞれの上面を中心から周縁部に向かって緩やかな角度で直線状に形成されることにより前記フレーム部の周縁部が前記パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の電子シンバルにおいて、前記パッド部は、その周縁部に前記エッジセンサと対峙した凸部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、演奏者による叩打が可能とされた打面を有するパッド部と、パッド部を支持するフレーム部とを有し、当該フレーム部の周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサが取り付けられるとともに、パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって連続的に延設され、且つ、フレーム部の周縁部は、パッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたので、演奏者がパッド部の周縁部を叩打した際、エッジセンサによる叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、パッド部及びフレーム部は、それぞれの中心から周縁部に向かって所定の曲率を有しつつ連続的に延設され、且つ、フレーム部の周縁部が成す曲率は、パッド部の周縁部が成す曲率より大きく設定されることによりフレーム部の周縁部がパッド部の周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたので、パッド部の曲率を維持しつつエッジセンサによる叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に適用される電子ハイハットの外観全体を示す斜視図
【
図4】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが当接した状態を示す全体断面図(
図3中III-III線断面図に相当)
【
図5】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが離間した状態を示す全体断面図(
図3中III-III線断面図に相当)
【
図6】同電子ハイハットのトップシンバルを示す正面図
【
図8】同電子ハイハットのトップシンバルを示す裏面図(保持部が取り付けられた状態)
【
図9】同電子ハイハットのトップシンバルを示す裏面図(保持部が取り外された状態)
【
図10】同電子ハイハットのトップシンバルを示す裏面図(保持部及び基板が取り付けられた状態)
【
図11】同電子ハイハットのボトムシンバルを示す平面図、側面図及び裏面図
【
図12】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが離間した状態を示す断面図
【
図13】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが当接した状態を示す断面図
【
図14】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが当接した状態でボトムシンバルに対してトップシンバルを更に押圧した状態を示す断面図
【
図15】同電子ハイハットにおけるトップシンバル及びボトムシンバルが当接した状態でロッドに対して傾斜した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に適用される電子ハイハット1は、
図1~5に示すように、ロッドrと、トップシンバル2(電子シンバル)と、ボトムシンバル3と、検出手段(距離センサ)としての光センサ7(
図7、8参照)と、ボトムシンバル3を支持する支持部材4と、演奏者が踏み込み操作可能なペダルPとを有して構成され、トップシンバル2及びボトムシンバル3の当接(
図5参照)又は離間(
図4参照)に応じてトップシンバル2の打面に対する叩打時の出力を異ならせることができるものである。
【0015】
ロッドrは、支持部材4内を挿通して上下方向に延設された金属製の棒状部材から成り、その下端部が作動部hを介してペダルPと連結されるとともに、上端側には、クラッチ5が取り付けられており、かかるクラッチ5によってトップシンバル2がロッドrに固定されている。これにより、ロッドrは、ペダルPに対する演奏者の踏み込み操作に応じて上下動可能とされ、その上下動に伴ってトップシンバル2を上下方向に移動させ得るようになっている。
【0016】
トップシンバル2は、演奏者が持つスティックによって叩打することにより振動し得るもので、
図6、7に示すように、中央にロッドrを挿通する挿通孔2cが形成された円板状部材から成り、スティックで叩打可能なゴム材又は発泡樹脂等から成るパッド部2aとパッド部2aを支持する金属材又は樹脂材から成るフレーム部2bとが一体化して構成されている。かかるトップシンバル2は、挿通孔2cにロッドrが挿通されるとともに、クラッチ5によりロッドrに対して固定されており、ロッドrの動作に応じて上下動可能とされている。なお、クラッチ5とロッドrとの間には、フェルト等の軟質材料が介在しており、これにより、トップシンバル2の揺動を許容させるとともに、ペダルPの操作ノイズがトップシンバル2の振動センサに伝達してしまうのを抑制することができる。
【0017】
ボトムシンバル3は、トップシンバル2と上下方向に対峙した状態で支持部材4上に固定して取り付けられ、ロッドrの動作に応じて上下動するトップシンバル2に対して当接又は離間し得るものとされている。かかるボトムシンバル3は、
図11に示すように、トップシンバル2と対応した円板状のゴム材又は発泡樹脂等から成る部材から成り、中央には、ロッドrを挿通するための挿通孔3bが形成されるとともに、光センサ7から照射される光を反射するための反射面Nと、弾性可能な領域としての切欠き部3aとが形成されている。
【0018】
反射面Nは、トップシンバル2に取り付けられた光センサ7から照射された光を反射するための円環状の面から成り、例えば反射を確実且つ良好に行わせるために、鏡面加工が施されたり或いは白色等のPVC発泡シートを貼着するのが好ましい。切欠き部3aは、ボトムシンバル3の周縁部から中央に向かって形成され、トップシンバル2が当接したときの押圧力により弾性変形可能な領域から成るもので、周方向に亘って等間隔に複数(本実施形態においては5つ)形成されている。
【0019】
また、パッド部2aの上面は、演奏者による叩打が可能とされた打面(エッジ部a、カップ部b及びボウ部c)が形成されるとともに、
図7に示すように、中央から周縁部に向かって曲率(曲率半径R)を有しつつ連続的に湾曲して延設されている。一方、フレーム部2bは、パッド部2aの裏面側に一体形成された樹脂材又は金属材から成るもので、同図に示すように、その上面が中央から周縁部近傍に向かってパッド部2aと同等の曲率(曲率半径R)にて連続的に湾曲して延設されるとともに、周縁部においては曲率より大きい曲率(曲率半径R>R’)を有して傾斜しており、パッド部2aよりも周縁部の傾斜角度が大きく形成されている。
【0020】
このように、フレーム部2bの周縁部が成す曲率は、パッド部2aの周縁部が成す曲率より大きく設定(曲率半径R’が曲率半径Rより小さく設定)されることによりフレーム部2bの周縁部がパッド部2aの周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されているのである。また、パッド部2aに形成された凸部の突端とフレーム部2bの周縁部に形成された後述するエッジセンサS1との間には、寸法tのクリアランスが形成されている。
【0021】
さらに、フレーム部2bは、
図7、10に示すように、周縁部上面及び中央部上面にそれぞれシートスイッチから成るエッジセンサS1及びカップセンサS2が取り付けられている。エッジセンサS1は、パッド部2aのエッジ部aに対して叩打すると電気的にオンして検出可能とされるとともに、カップセンサS2は、パッド部2aのカップ部bに対して叩打すると電気的にオンして検出可能とされており、後述の振動センサS3により検出された叩打の強さに応じて出力可能とされている。
【0022】
本実施形態に係るフレーム部2bの中央部裏面には、
図7に示すように、振動センサS3と、基板8に形成された光センサ7とが取り付けられ、これら振動センサS及び光センサ7がカバー部6によって覆われている。振動センサS3は、演奏者による叩打の強さを検出し得る例えばピエゾブザーから成るもので、
図10に示すように、フレーム部2bの中央部に3つ配設されている。
【0023】
そして、演奏者がスティックにてパッド部2aを叩打してトップシンバル2を振動させると、振動センサS3にて叩打の強さが検出され、その強さに応じた電気信号が出力ジャック9を介して外部の信号処理装置(不図示)に出力可能とされている。なお、エッジセンサS1及びカップセンサS2のオン・オフ状態に応じて識別され、エッジセンサS1及びカップセンサS2がオフの場合に叩打が検出されると、ボウ部cに対して叩打したと判断されて出力されることとなる。
【0024】
光センサ7は、トップシンバル2に配設され、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を光学的に検出し得る距離センサから成るもので、光をボトムシンバル3の反射面Nに照射する発光部と、その反射光を受ける受光部とを有しており、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を検出可能とされている。例えば、発光部は、赤外線を発光するLEDから成り、反射面Nからの反射光をフォトトランジスタから成る受光部にて受光すると、その受光した光の光量に応じた電気信号が出力され、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法が検出されるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態に係る光センサ7は、トップシンバル2に配設されるとともに、反射面Nがボトムシンバル3に配設されているが、ボトムシンバル3に光センサ7が配設されるとともに、トップシンバル2に反射面Nが配設されるものであってもよい。すなわち、光センサ7は、トップシンバル2及びボトムシンバル3の少なくとも一方に配設されるとともに、トップシンバル2及びボトムシンバル3の他方において当該光センサ7から照射された光を反射可能な反射面Nが形成されるものである。
【0026】
カバー部6は、円環状の基板8を覆って取り付けられるとともに、基板8に形成された光センサ7と対応する位置には、光センサ7を下方に臨ませ得る孔から成る導光部6aが形成されている。かかる導光部6aは、光センサ7からの光及び反射面Nからの反射光を通過可能とされるとともに、
図7に示すように、光センサ7の光の照射位置から反射面Nに向かって拡幅(下方に向かって幅寸法が拡大)して形成されている。
【0027】
ここで、本実施形態に係る光センサ7は、ロッドrに対するトップシンバル2及びボトムシンバル3の傾斜に応じて変位する複数の部位の離間寸法をそれぞれ非接触で検出し得るものとされ、当該離間寸法が検出される複数の部位は、トップシンバル2及びボトムシンバル3におけるロッドrを中心とした同一円周上にそれぞれ位置するものとされている。すなわち、本実施形態に係る光センサ7は、
図8~10に示すように、トップシンバル2においてロッドrを中心とした任意径の仮想円Y上に複数(3つ)配設されており、
図15に示すように、トップシンバル2及びボトムシンバル3が傾斜した場合、従来の如く鉛直方向zではなく、その傾斜方向αの離間寸法をそれぞれ検出可能とされている。
【0028】
なお、同図において、z軸及びx軸は、鉛直方向及び幅方向を示しており、当接状態のトップシンバル2及びボトムシンバル3が角度βだけ傾斜して幅方向がx方向からx’方向に傾いた場合、本実施形態に係る光センサ7によれば、x’方向に直交する傾斜方向αに対する離間寸法が検出される。これにより、従来の如くz方向の離間寸法を検出する場合、実際の離間寸法より大きな寸法が検出されて、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態であるにも関わらず離間した状態であると誤検出されて所望の出力ができない虞があるのに対し、本実施形態によれば、ロッドrに対するトップシンバル2及びボトムシンバル3の傾斜に応じて変位する複数の部位の離間寸法を検出し得るので、傾斜方向αに対する離間寸法を検出することができ、誤検出を防止することができる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る光センサ7は、ロッドrを中心とした同一円周上(仮想円Y上)において等間隔に亘って離間した3箇所の部位に配設されており、それら部位におけるトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法をそれぞれ独立して検出し得るものとされている。そして、光センサ7で検出された複数の検出値に基づいて、トップシンバル2及びボトムシンバル3の相対的な角度、寸法又は位置関係を算出可能とされている。なお、本実施形態に係る光センサ7は、ロッドrを中心とした同一円周上(仮想円Y上)において等間隔に亘って離間した3箇所の部位に配設されているが、3箇所以上の部位(少なくとも3箇所の部位)に配設されるものであってもよい。
【0030】
上記構成により、
図12に示すように、トップシンバル2及びボトムシンバル3が離間した状態において、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H1を検出することができるとともに、
図13に示すように、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態において、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H2(<H1)を検出することができる。これにより、離間寸法H1が検出された場合は、トップシンバル2及びボトムシンバル3が離間した状態の電気信号を出力し、離間寸法H2が検出された場合は、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態の電気信号を出力することができるので、演奏時、トップシンバル2及びボトムシンバル3の当接又は離間に応じて打面に対する叩打時の出力を異ならせることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るボトムシンバル3は、トップシンバル2が当接したときの押圧力により弾性変形可能な領域として切欠き部3aを有するので、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態から、更にペダルPを踏み込んでロッドrを下降させると、
図14に示すように、ボトムシンバル3が上下方向に圧縮されるので、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H3(<H2)を検出することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係る電子ハイハット1の使用形態について説明する。
まず、トップシンバル2及びボトムシンバル3を支持部材4に組み付けて電子ハイハット1を組み立てた後、図示しないケーブルを介して出力ジャック9と信号処理装置(不図示)とを電気的に接続することにより演奏可能な状態とする。このように、演奏可能な状態とすることで、トップシンバル2内の光センサ7は、信号処理装置から電力が供給され、発光部が発光するとともに受光部が受光量に応じた検出信号を信号処理装置に出力する。
【0033】
そして、電子ハイハット1を演奏するとき、演奏者は、スティックを手で把持してトップシンバル2を叩打する。この叩打により、振動センサS3は、パッド部2a及びフレーム部2bを介して伝達された振動に応じた検出信号を出力ジャック9を介して信号処理装置に出力する。また、トップシンバル2に配設された光センサ7は、発光部から照射された光が反射面Nを反射して受光部にて受光されると、その受光量に応じた検出信号を出力ジャック9を介して信号処理装置に出力する。
【0034】
これにより、信号処理装置は、振動センサS3及び光センサ7にてそれぞれ取得された検出信号に基づいて楽音信号を生成し、外部スピーカにて出力させる。具体的には、信号処理装置は、光センサ7から取得した検出信号に基づいてトップシンバル2の上下方向の位置を特定することにより、トップシンバル2がボトムシンバル3に当接しているか否かを判定するとともに、トップシンバル2のボトムシンバル3に対する当接又は離間状態と、振動センサS3から取得した検出信号とに応じて外部スピーカから出力すべき強さ及び音色の楽音信号を生成する。
【0035】
例えば、信号処理装置は、トップシンバル2がボトムシンバル3に当接していると判定した場合は、トップシンバル2がボトムシンバル3に対して当接している場合の楽音信号を生成するとともに、トップシンバル2がボトムシンバル3から離間していると判定した場合は、トップシンバル2がボトムシンバル3に対して離間している場合の楽音信号を生成することとなる。
【0036】
より具体的には、演奏者がペダルPを踏み込んだ場合、トップシンバル2は、ロッドrの下降に伴って下方へ移動し、ボトムシンバル3に当接すると、光センサ7は、反射面Nを反射した反射光に基づいてトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H2(
図13参照)を検出する。これにより、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態であると判定されるので、信号処理装置によってトップシンバル2及びボトムシンバル3が当接している場合の楽音信号が生成され、外部スピーカにて出力される。
【0037】
また、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態から演奏者がペダルPを更に踏み込んだ場合、トップシンバル2は、ロッドrの下降に伴って更に下方へ移動し、ボトムシンバル3が上下方向に圧縮されると、光センサ7は、反射面Nを反射した反射光に基づいてトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H3(
図14参照)を検出する。これにより、トップシンバル2によりボトムシンバル3が圧縮している状態であると判定されるので、信号処理装置にてトップシンバル2によりボトムシンバル3が圧縮している場合の楽音信号が生成され、外部スピーカにて出力される。
【0038】
さらに、演奏者がペダルPの踏み込みを弱くまたは解除した場合、図示しないコイルスプリングの付勢力によりロッドrが上方へ移動すると、光センサ7は、反射面Nを反射した反射光に基づいてトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H1(
図12参照)を検出する。これにより、トップシンバル2及びボトムシンバル3が離間した状態であると判定されるので、信号処理装置によってトップシンバル2及びボトムシンバル3が離間している場合の楽音信号が生成され、外部スピーカにて出力される。
【0039】
ここで、本実施形態においては、トップシンバル2が傾斜した状態で演奏者がペダルPを踏み込んだ場合、トップシンバル2は、ロッドrの下降に伴って下方へ移動し、ボトムシンバル3に当接すると、光センサ7は、反射面Nを反射した反射光に基づいてトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法H2(
図15参照)を検出する。これにより、トップシンバル2及びボトムシンバル3が当接した状態であると判定されるので、信号処理装置によってトップシンバル2及びボトムシンバル3が当接している場合の楽音信号が生成され、外部スピーカにて出力される。
【0040】
本実施形態によれば、光センサ7(検出手段)は、ロッドrに対するトップシンバル2及びボトムシンバル3の傾斜に応じて変位する複数の部位の離間寸法を検出し得るものとされ、当該離間寸法が検出される複数の部位は、トップシンバル2及びボトムシンバル3におけるロッドrを中心とした同一円周上にそれぞれ位置するので、トップシンバル2及びボトムシンバル3がロッドrに対して傾斜した場合であっても、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を精度よく検出することができる。
【0041】
また、光センサ7(検出手段)は、トップシンバル2及びボトムシンバル3におけるロッドrを中心とした同一円周上において等間隔に亘って離間した少なくとも3箇所以上の部位の離間寸法を検出し得るので、それぞれの光センサ7(検出手段)の検出値を電気的に平均する、又は電子的に演算処理することにより、トップシンバル2及びボトムシンバル3の一方が傾斜した場合であっても平均の離間寸法を検出することができる。
【0042】
さらに、光センサ7(検出手段)は、トップシンバル2及びボトムシンバル3の少なくとも一方に配設された距離センサから成り、当該距離センサによりロッドrに対するトップシンバル2及びボトムシンバル3の傾斜に応じて変位する複数の部位の離間寸法をそれぞれ非接触で検出し得るので、トップシンバル2及びボトムシンバル3の当接又は離間を確実に検出することができるとともに、演奏時、演奏者が違和感なくトップシンバル2及びボトムシンバル3の当接又は離間を行わせることができる。
【0043】
またさらに、距離センサは、光を照射し且つその反射光を受けて離間寸法を検出可能な光センサ7から成り、トップシンバル2及びボトムシンバル3の他方において当該光センサ7から照射された光を反射可能な反射面Nが形成されたので、比較的安価で検出精度の高い光センサ7を用いてトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を検出することができる。
【0044】
また、光センサ7の光の照射位置から反射面Nに向かって拡幅した導光部6aを有するので、周囲の明るさによる誤検出を防止することができ、トップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を安定且つ精度よく検出することができる。さらに、光センサ7(検出手段)で検出された複数の検出値に基づいて、トップシンバル2及びボトムシンバル3の相対的な角度、寸法又は位置関係を算出可能とされたので、トップシンバル2及びボトムシンバル3の相対的な角度、寸法又は位置関係を演奏時の出力に反映させることができる。
【0045】
加えて、本実施形態に係るボトムシンバル3は、トップシンバル2が当接したときの押圧力により弾性変形可能な領域を有するので、トップシンバル2及びボトムシンバル3の当接時の押圧力によってトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を変化させることができ、演奏時の出力に反映させることができる。特に、本実施形態における弾性変形可能な領域は、ボトムシンバル3における切欠き部3aから成るので、トップシンバル2がボトムシンバル3に当接した際に、面形状のボトムシンバル3の鳴りを抑えることができる。また、切欠き部3aにより、トップシンバル2がボトムシンバル3に当接した際に内部の空気を切欠き部3aから逃がすことができ、トップシンバル2及びボトムシンバル3の当接時の衝撃音を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るトップシンバル2は、打面を有するパッド部2aと、パッド部2aを支持するフレーム部2bとを有し、当該フレーム部2bの周縁部には、演奏者による叩打を検出可能なエッジセンサS1が取り付けられるとともに、パッド部2a及びフレーム部2bは、それぞれの中心から周縁部に向かって連続的に延設され、且つ、フレーム部2bの周縁部は、パッド部2aの周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたので、演奏者がパッド部2aの周縁部を叩打した際、エッジセンサS1による叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる。
【0047】
特に、本実施形態に係るパッド部2a及びフレーム部2bは、それぞれの中心から周縁部に向かって所定の曲率を有しつつ連続的に延設され、且つ、フレーム部2bの周縁部が成す曲率は、パッド部2aの周縁部が成す曲率より大きく設定(フレーム部2bの周縁部が成す曲率半径R’は、パッド部2aの周縁部が成す曲率半径Rより小さく設定)されることによりフレーム部2bの周縁部がパッド部2aの周縁部よりも傾斜角度が大きく形成されたので、パッド部2aの曲率(すなわち、打面の曲率)を維持しつつスティックによる叩打方向が水平方向横向きに近い角度であったとしてもエッジセンサS1による叩打の検出を正確且つ良好に行わせることができる。
【0048】
なお、パッド部2aの周縁部が成す曲率は、その曲率半径R=1000mm程度(R500~R1500の範囲内)とすることができ、フレーム部2bの周縁部が成す曲率は、その曲率半径R’=250mm程度(R100~R500の範囲内)とすることができる。また、パッド部2aの周縁部の角度は、水平面に対して10°程度d(5°~15°の範囲内)とすることができ、フレーム部2bの周縁部の角度は、水平面に対して15°程度(10°から30°の範囲内)とすることができる。
【0049】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばトップシンバル2及びボトムシンバル3の離間寸法を検出し得る光センサ7に代えて、電極間の距離を測定する静電容量センサ、金属板と磁界による過電流を測定する過電流式変位センサ、レーザ測距センサなど、他のセンサとしてもよい。また、本実施形態に係る光センサ7を用いる場合、照射された光を反射させる反射面Nは、平面の他、効率的に光を集光して反射可能な凹形状の湾曲断面の反射面としてもよい。
【0050】
さらに、本実施形態に係るボトムシンバル3には、切欠き部3aが形成されているが、弾性可能な領域であれば他の形態であってもよく、例えば薄肉部又は蛇腹形状部、さらにはボトムシンバル3を内周部と外周部とで分割構成し、ゴム等の弾性部材で連結した形態であってもよい。なお、弾性可能な領域は、ボトムシンバル3の最外径の半分の径より外側に設定するのが好ましい。またさらに、本実施形態に係るトップシンバル2は、フレーム部2bの周縁部が成す曲率がパッド部2aの周縁部が成す曲率より大きく設定されているが、フレーム部2bの上面を中心から周縁部に向かって緩やかな角度でスロープの如く直線状に形成することにより、フレーム部2bの周縁部がパッド部2aの周縁部よりも傾斜角度が大きくなるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電子ハイハット
2 トップシンバル(電子シンバル)
2a パッド部
2b フレーム部
2c 挿通孔
3 ボトムシンバル
3a 切欠き部(弾性可能な領域)
3b 挿通孔
4 支持部材
4a 上端部
5 クラッチ
6 カバー部
6a 導光部
7 光センサ(距離センサ)(検出手段)
8 基板
9 出力ジャック
r ロッド
P ペダル
h 作動部
N 反射面
Y 仮想円
S1 エッジセンサ
S2 カップセンサ
S3 振動センサ