(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016566
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ヒト化標的化ドメインを有するROR1特異的キメラ抗原受容体(CAR)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220114BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220114BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220114BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220114BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220114BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220114BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220114BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220114BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/10
A61K35/17 Z
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 H
【審査請求】有
【請求項の数】57
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189438
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2019558405の分割
【原出願日】2018-04-27
(31)【優先権主張番号】17168805.4
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518098047
【氏名又は名称】ユリウス-マクシミリアン-ウニヴェルシテート・ヴュルツブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フデチェク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・マーデス
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗原ROR1に特異的なヒト化標的化ドメインを有するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【解決手段】本発明は、前記CARをコードするポリヌクレオチド、ベクター及び特に、免疫治療におけるその使用のための、その表面にそれらを発現する単離された細胞を包含する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ROR1に結合することができるモノクローナル抗体のROR1結合断片のヒト化によって得られるヒト化標的化ドメインを含み、前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体R11、R12及び2A2からなる群から選択される、ROR1特異的CAR。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体R12及び2A2からなる群から選択される、請求項1に記載のROR1特異的CAR。
【請求項3】
ROR1に結合することができるヒト化標的化ドメインを含むROR1特異的CARであって、ヒト化標的化ドメインが、好ましくは、NからC末端の順に、
a)
a1)配列番号1のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
a2)配列番号3のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
a3)配列番号5のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列;
及び
b)
b1)配列番号2のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
b2)配列番号4のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
b3)配列番号6のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列
を含む、ROR1特異的CAR。
【請求項4】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、請求項3に記載のROR1特異的CAR。
【請求項5】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、請求項4に記載のROR1特異的CAR。
【請求項6】
ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、請求項5に記載のROR1特異的CAR。
【請求項7】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、請求項3に記載のROR1特異的CAR。
【請求項8】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、請求項7に記載のROR1特異的CAR。
【請求項9】
ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、請求項8に記載のROR1特異的CAR。
【請求項10】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、請求項3に記載のROR1特異的CAR。
【請求項11】
ヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、請求項10に記載のROR1特異的CAR。
【請求項12】
ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、請求項11に記載のROR1特異的CAR。
【請求項13】
少なくとも第1及び第2のCARを含むCARの組合せであって、組合せがROR1特異的であり、前記第1及び第2のCARが異なるポリペプチド鎖上に存在し、
c)前記第1のCARが、
c1)配列番号1のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
c2)配列番号3のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
c3)配列番号5のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む第1のヒト化標的化ドメインを含み;
及び
d)前記第2のCARが、
d1)配列番号2のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
d2)配列番号4のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
d3)配列番号6のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む第2のヒト化標的化ドメインを含む、CARの組合せ。
【請求項14】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の組合せ。
【請求項15】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の組合せ。
【請求項16】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の組合せ。
【請求項17】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の組合せ。
【請求項18】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の組合せ。
【請求項19】
第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の組合せ。
【請求項20】
CARが、免疫細胞への共刺激を媒介することができる共刺激ドメインを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、免疫細胞への共刺激を媒介することができる共刺激ドメインを更に含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項21】
前記共刺激ドメインが、4-1BB、CD28、Ox40、ICOS又はDAP10由来である、請求項20に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項22】
前記共刺激ドメインが、配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項21に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項23】
膜貫通ポリペプチドを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、膜貫通ポリペプチドを更に含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項24】
前記膜貫通ポリペプチドが、CD4、CD8又はCD28に由来する膜貫通ドメインである、請求項23に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインが、配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項24に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項26】
CARスペーサードメインを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、CARスペーサードメインを更に含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項27】
前記CARスペーサードメインが、CD4、CD8、Fc受容体、免疫グロブリン、又は抗体に由来する、請求項26に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項28】
前記CARスペーサードメインが、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列、好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項29】
CAR T細胞の選択的殺傷を可能にする自殺遺伝子産物を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCARが、CAR T細胞の選択的殺傷を可能にする自殺遺伝子産物を更に含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項30】
前記自殺遺伝子産物が、iCasp9又はHSV-TKである、請求項29に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【請求項31】
NからC末端の順に、i)好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を有する、小胞体への指向のためのシグナルペプチド;ii)前記ヒト化標的化ドメイン;iii)請求項26から28のいずれか一項に規定のCARスペーサードメイン;iv)請求項23から25のいずれか一項に規定の膜貫通ポリペプチド;v)請求項20から22のいずれか一項に規定の共刺激ドメイン;vi)好ましくは、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD3zシグナル伝達ドメインを含み、必要に応じて、vii)好ましくは、配列番号14のアミノ酸配列を有するT2Aリボソームスキッピング配列;viii)好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を有する、小胞体への指向のためのシグナルペプチド;及びix)好ましくは、配列番号15のEGFRtアミノ酸配列を有する検出可能なマーカータンパク質配列を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CAR。
【請求項32】
前記成分i)からix)からなる、請求項31に記載のROR1特異的CAR。
【請求項33】
請求項1から12のいずれか一項に記載のROR1特異的CARをコードするポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのROR1特異的CARを発現するか、又は請求項13から19のいずれか一項に記載のCARの組合せを発現する、組換え哺乳動物細胞。
【請求項35】
前記細胞が免疫細胞である、請求項34に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項36】
前記細胞がリンパ球である、請求項34又は35に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項37】
前記リンパ球が、Bリンパ球又はTリンパ球である、請求項34から36のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項38】
前記細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、g/d T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は顆粒球である、請求項34に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項39】
細胞がヒト細胞である、請求項34から38のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項40】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも1回細胞分裂することができる、請求項34から39のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項41】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも2回細胞分裂することができる、請求項34から40に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項42】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも3回細胞分裂することができる、請求項34から41のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項43】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも4回細胞分裂することができる、請求項34から42のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項44】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも5回細胞分裂することができる、請求項34から43のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項45】
ROR1特異的CAR又はCARのROR1特異的組合せが、標的化ドメインがいずれもヒト化されていない対応するROR1特異的CAR又はCARの対応するROR1特異的組合せを発現する対応する組換え哺乳動物対照細胞よりも高い結合親和性でROR1に結合することができ、前記結合親和性が、フローサイトメトリー分析によって評価された場合、蛍光標識された組換え凝集ROR1に対する結合親和性である、請求項34から44のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項46】
請求項34から45のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を産生するための方法であって、
(a)哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)工程(a)の前記哺乳動物細胞に、前記少なくとも1つのROR1特異的CAR又は前記CARの組合せをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入する工程;及び
(c)前記細胞中で、前記少なくとも1つのポリヌクレオチドから前記少なくとも1つのROR1特異的CAR又は前記CARの組合せを発現させる工程
を含む、方法。
【請求項47】
外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1の比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に組換え哺乳動物細胞を同時培養する工程を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1%、好ましくは、少なくとも2%、より好ましくは、少なくとも3%、更により好ましくは、少なくとも4%の組換え哺乳動物細胞が、同時培養中に少なくとも5回の細胞分裂を起こす、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
in vitro法である、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
工程(a)の前記哺乳動物細胞が、ドナーから得られる細胞である、請求項46から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
工程(a)の前記哺乳動物細胞が、患者から得られる細胞である、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
医薬における使用のための請求項34から45のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項53】
患者においてROR1を発現するがんを処置するための方法における使用のための請求項34から45のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項54】
がんが、ROR1陽性白血病、マントル細胞リンパ腫、乳がん又は肺がんである、請求項53に記載の使用のための請求項53に記載の組換え哺乳動物細胞。
【請求項55】
それを必要とする患者を処置するための方法であって、請求項52から54のいずれか一項に記載の組換え哺乳動物細胞を、前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項56】
ROR1を発現するがんを処置するためのものである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
がんが、ROR1陽性白血病、マントル細胞リンパ腫、乳がん又は肺がんである、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原ROR1に特異的なヒト化標的化ドメインを有するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本発明は、前記CARをコードするポリヌクレオチド、ベクター及び特に、免疫治療におけるその使用のための、その表面にそれらを発現する単離された細胞を包含する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍関連抗原に特異的なT細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝的に改変されたT細胞の養子移入は、がん治療のための有効なモダリティとして浮上している[1~5]。CARは、腫瘍細胞表面分子に特異的なモノクローナル抗体(mAb)の一本鎖改変断片(scFv)を、膜貫通ドメイン、1つ又は複数の細胞内共刺激シグナル伝達モジュール、及びCD3ζに連結することによって構築されることが最も多い合成受容体である[6~8]。CAR改変T細胞は、腫瘍細胞の非MHCに限定的な認識を提供し、持続的な応答が、B細胞系列に限定的なCD19分子に特異的なCARで改変された自己T細胞を用いる処置後のB細胞悪性腫瘍を有する患者において報告されている。これらの患者における主な毒性は、腫瘍溶解、サイトカイン放出、及び正常Bリンパ球の長期的枯渇と関連していた[1~3、5、9]。この分野における課題は、一般的な上皮腫瘍を含む多数の悪性腫瘍上で発現され、その発現が正常細胞ではなく悪性細胞に限定される分子に特異的な受容体構築物を同定し、検証することである。
【0003】
本発明者等は、CAR改変T細胞を用いる免疫治療のための候補として受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)を調査している。ROR1は、細胞外免疫グロブリン(Ig)様の、Frizzled、及びKringleドメインを含有する120kDaの糖タンパク質である。ROR1は、胚形成の間に発現されるが、未熟B細胞前駆体のサブセットとは別に、正常な成体組織には存在せず、脂肪細胞上での発現レベルが低い[10、11]。ROR1は、転写プロファイリングによってB細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)において発現されることが最初に示され[12、13]、その後、マントル細胞リンパ腫(MCL)、t(1;19)染色体転座を有する急性リンパ芽球性白血病(ALL)、並びに肺がん、乳がん、結腸がん、膵がん、腎がん、及び卵巣がんのサブセットを含む多くのがんの表面上で同定された[14~21]。肺腺癌とt(1;19)ALLとの両方において、ROR1は腫瘍形成シグナル伝達において協調しており、siRNAによるROR1のノックダウンは、腫瘍細胞生存の維持におけるこの分子の重要な役割を顕在化させた[15、18、22、23]。WO2016/115559は、ROR1に特異的な抗体及びキメラ抗原受容体に関する。
【0004】
CD19 CARを用いる臨床試験は、治療効能に関する最も重要な要件が、養子移入後のCAR T細胞の生着、in vivo増殖及び持続性であることを示した[24~26](臨床試験ID: NCT02167360、NCT02030847、NCT01865617)。応答患者においては、CAR T細胞は、それらが実質的な割合の患者のT細胞レパートリーを含む点まで、実質的な増殖を受ける。対照的に、非応答患者は、不十分なCAR T細胞生着を有するか、又はCAR T細胞移植が養子移入後早期に拒絶される。CAR T細胞増殖は、「進化した」エフェクター機能であり、CAR標的化ドメインの、対応する抗原への最適な結合を必要とする。したがって、CAR T細胞治療の潜在能力を最大化するためには、強力な抗原結合特性を示し、また、高いCAR T細胞の拡大及び長期生存を媒介するCARを選択することが重要である。
【0005】
現在、クリニックにおいて使用されている全てのCARは、マウス抗体に由来するscFv標的化ドメインを含有し、前臨床開発中であるCARの大部分も、「外来」起源の標的化ドメインを使用する。これらの「外来」標的化ドメインは、患者の免疫系によって認識される免疫原性エピトープを含有し、最終的にはCAR-T細胞拒絶を媒介する細胞性又は液性免疫応答を惹起することがわかっている;[27]、[28]及び[29]を参照されたい。参考文献[30]は、ヒト抗体に由来する標的化ドメインの使用を記載している。
【0006】
まとめると、改善されたCAR T細胞構築物並びに免疫治療等の治療のために使用することができる関連製品及び方法が、当業界で必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2016/115559
【特許文献2】WO2010/124188
【特許文献3】WO2012/075158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既知の抗ROR1抗体R11、R12及び2A2に基づくヒト化結合ドメイン並びにCAR及びCAR操作T細胞の構築のためのその使用に関する。例えば、2A2抗体の記載については、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[14];及びR11/R12抗体の記載については、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[37]を参照されたい。本発明によるCARは、ウサギ(R11&R12)及びマウス(2A2)結合ドメインとは反対に、ヒト化R11、R12及び2A2結合ドメインのより高い程度の「ヒト性」を有する。本発明によれば、これらのCAR及びCAR操作T細胞は、ウサギ(R11&R12)及びマウス(2A2)結合ドメインとは反対に、患者における臨床的使用においてより低い免疫原性を示すと予想される。
【0009】
本発明によれば、ヒト化を、当業界で公知の任意の方法によって実行することができる。非限定例として、R11、R12及び2A2抗ROR1モノクローナル抗体のVH及びVLドメインのヒト化は、CDR移植及びTranspo-mAbディスプレイによるROR-1標的のための最良の結合剤の選択によって実施された。この方法は、R11及び2A2抗体については、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[31]に記載されている。本発明によれば、CAR T細胞等のCARを発現する組換え哺乳動物細胞を、モノクローナル抗ROR-1抗体R11、R12及び2A2のヒト化抗ROR-1結合ドメインを有するCARを発現するように製造することができる。
【0010】
ROR1特異的CARのヒト化は、非ヒト化ROR1特異的CARに依拠する公知の臨床手法とは異なる。本発明者等はここで驚くべきことに、ヒト化ROR1特異的CARがその非ヒト化対応物よりも高い機能を有することを示した。ヒト化は親和性を増大させるよりもむしろ減少させると考えられるため、この利点は予想外であった。
【0011】
更に、本発明者等は驚くべきことに、有利な機能特性を有するヒト化CARを、本発明に従って製造することができることを示した。例えば、本発明によるCAR T細胞は、致死的に照射されたROR1発現標的細胞を用いた刺激の際に、細胞溶解を標的化し、強力な増殖を示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、以下の好ましい実施形態を提供する。
【0013】
1. ROR1に結合することができるモノクローナル抗体のROR1結合断片のヒト化によって得られるヒト化標的化ドメインを含み、前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体R11、R12及び2A2からなる群から選択される、ROR1特異的CAR。
【0014】
2. 前記モノクローナル抗体が、モノクローナル抗体R12及び2A2からなる群から選択される、項目1に記載のROR1特異的CAR。
【0015】
3. ROR1に結合することができるヒト化標的化ドメインを含むROR1特異的CARであって、ヒト化標的化ドメインが、好ましくは、NからC末端の順に、
a)
a1)配列番号1のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
a2)配列番号3のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
a3)配列番号5のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列;
及び
b)
b1)配列番号2のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
b2)配列番号4のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
b3)配列番号6のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列
を含む、ROR1特異的CAR。
【0016】
4. ヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、項目3に記載のROR1特異的CAR。
【0017】
5. ヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、項目4に記載のROR1特異的CAR。
【0018】
6. ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、項目5に記載のROR1特異的CAR。
【0019】
7. ヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、項目3に記載のROR1特異的CAR。
【0020】
8. ヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、項目7に記載のROR1特異的CAR。
【0021】
9. ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、項目8に記載のROR1特異的CAR。
【0022】
10. ヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列とを含む、項目3に記載のROR1特異的CAR。
【0023】
11. ヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列と、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む、項目10に記載のROR1特異的CAR。
【0024】
12. ヒト化標的化ドメインが、NからC末端の順に以下の配列:配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列であるアミノ酸リンカー配列、及び配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列からなる、項目11に記載のROR1特異的CAR。
【0025】
13. 少なくとも第1及び第2のCARを含むCARの組合せであって、組合せがROR1特異的であり、前記第1及び第2のCARが異なるポリペプチド鎖上に存在し、
c)前記第1のCARが、
c1)配列番号1のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
c2)配列番号3のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
c3)配列番号5のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む第1のヒト化標的化ドメインを含み;
及び
d)前記第2のCARが、
d1)配列番号2のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;
d2)配列番号4のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;又は
d3)配列番号6のアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列
からなる群から選択される抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む第2のヒト化標的化ドメインを含む、CARの組合せ。
【0026】
14. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目13に記載の組合せ。
【0027】
15. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号1の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号2の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、項目14に記載の組合せ。
【0028】
16. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目13に記載の組合せ。
【0029】
17. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号3の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号4の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、項目16に記載の組合せ。
【0030】
18. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目13に記載の組合せ。
【0031】
19. 第1のヒト化標的化ドメインが、配列番号5の抗体重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、第2のヒト化標的化ドメインが、配列番号6の抗体軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、項目18に記載の組合せ。
【0032】
20. CARが、免疫細胞への共刺激を媒介することができる共刺激ドメインを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、免疫細胞への共刺激を媒介することができる共刺激ドメインを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載の組合せ。
【0033】
21. 前記共刺激ドメインが、4-1BB、CD28、Ox40、ICOS又はDAP10由来である、項目20に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0034】
22. 前記共刺激ドメインが、配列番号12のアミノ酸配列を有する、項目21に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0035】
23. 膜貫通ポリペプチドを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、膜貫通ポリペプチドを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載の組合せ。
【0036】
24. 前記膜貫通ポリペプチドが、CD4、CD8又はCD28に由来する膜貫通ドメインである、項目23に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0037】
25. 前記膜貫通ドメインが、配列番号11のアミノ酸配列を有する、項目24に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0038】
26. CARスペーサードメインを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCAR、好ましくは、組合せの少なくとも第1及び第2のCAR、最も好ましくは、組合せの全てのCARが、CARスペーサードメインを更に含む、前記項目のいずれか1つに記載の組合せ。
【0039】
27. 前記CARスペーサードメインが、CD4、CD8、Fc受容体、免疫グロブリン、又は抗体に由来する、項目26に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0040】
28. 前記CARスペーサードメインが、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列、好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列を有する、項目27に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0041】
29. CAR T細胞の選択的殺傷を可能にする自殺遺伝子産物を更に含む、前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CAR;又は組合せの少なくとも第1若しくは第2のCARが、CAR T細胞の選択的殺傷を可能にする自殺遺伝子産物を更に含む、前記項目のいずれか1つに記載の組合せ。
【0042】
30. 前記自殺遺伝子産物が、iCasp9又はHSV-TKである、項目29に記載のROR1特異的CAR又は組合せ。
【0043】
31. NからC末端の順に、i)好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を有する、小胞体への指向のためのシグナルペプチド;ii)前記ヒト化標的化ドメイン;iii)項目26から28のいずれか1つに記載のCARスペーサードメイン;iv)項目23から25のいずれか1つに記載の膜貫通ポリペプチド;v)項目20から22のいずれか1つに記載の共刺激ドメイン;vi)好ましくは、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD3zシグナル伝達ドメインを含み、必要に応じて、vii)好ましくは、配列番号14のアミノ酸配列を有するT2Aリボソームスキッピング配列;viii)好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を有する、小胞体への指向のためのシグナルペプチド;及びix)好ましくは、配列番号15のEGFRtアミノ酸配列を有する検出可能なマーカータンパク質配列を更に含む、前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CAR。
【0044】
32. 前記成分i)からix)からなる、項目31に記載のROR1特異的CAR。
【0045】
33. 前記項目のいずれか1つに記載のROR1特異的CARをコードするポリヌクレオチド。
【0046】
34. 前記項目のいずれか1つに記載の少なくとも1つのROR1特異的CARを発現するか、又は前記項目のいずれか1つに記載のCARの組合せを発現する、組換え哺乳動物細胞。
【0047】
35. 前記細胞が免疫細胞である、項目34に記載の組換え哺乳動物細胞。
【0048】
36. 前記細胞がリンパ球である、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0049】
37. 前記リンパ球が、Bリンパ球又はTリンパ球である、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0050】
38. 前記細胞が、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、g/d T細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は顆粒球である、項目34に記載の組換え哺乳動物細胞。
【0051】
39. 細胞がヒト細胞である、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0052】
40. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも1回細胞分裂することができる、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0053】
41. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも2回細胞分裂することができる、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0054】
42. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも3回細胞分裂することができる、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0055】
43. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも4回細胞分裂することができる、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0056】
44. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に培養した場合、少なくとも5回細胞分裂することができる、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0057】
45. ROR1特異的CAR又はCARのROR1特異的組合せが、標的化ドメインがいずれもヒト化されていない対応するROR1特異的CAR又はCARの対応するROR1特異的組合せを発現する対応する組換え哺乳動物対照細胞よりも高い結合親和性でROR1に結合することができ、前記結合親和性が、フローサイトメトリー分析によって評価された場合、蛍光標識された組換え凝集ROR1に対する結合親和性である、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0058】
46. 前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞を産生するための方法であって、
(a)哺乳動物細胞を提供する工程;
(b)工程(a)の前記哺乳動物細胞に、前記少なくとも1つのROR1特異的CAR又は前記CARの組合せをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入する工程;及び
(c)前記細胞中で、前記少なくとも1つのポリヌクレオチドから前記少なくとも1つのROR1特異的CAR又は前記CARの組合せを発現させる工程
を含む、方法。
【0059】
47. 外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1の比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞と共に組換え哺乳動物細胞を同時培養する工程を更に含む、項目46に記載の方法。
【0060】
48. 少なくとも1%、好ましくは、少なくとも2%、より好ましくは、少なくとも3%、更により好ましくは、少なくとも4%の組換え哺乳動物細胞が、同時培養中に少なくとも5回の細胞分裂を起こす、項目47に記載の方法。
【0061】
49. in vitro法である、前記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
50. 工程(a)の前記哺乳動物細胞が、ドナーから得られる細胞である、前記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
51. 工程(a)の前記哺乳動物細胞が、患者から得られる細胞である、前記項目のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
52. 医薬における使用のための前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0065】
53. 患者においてROR1を発現するがんを処置するための方法における使用のための前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞。
【0066】
54. がんが、ROR1陽性白血病、マントル細胞リンパ腫、乳がん又は肺がんである、項目53に記載の使用のための項目53に記載の組換え哺乳動物細胞。
【0067】
55. それを必要とする患者を処置するための方法であって、前記項目のいずれか1つに記載の組換え哺乳動物細胞を、前記患者に投与する工程を含む、方法。
【0068】
56. ROR1を発現するがんを処置するためのものである、項目55に記載の方法。
【0069】
57. がんが、ROR1陽性白血病、マントル細胞リンパ腫、乳がん又は肺がんである、項目56に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1A】ヒト化2A2 VH及びVL配列並びに完全なh2A2 CARコード配列のアミノ酸配列である。(A)ヒト化2A2 VH及びVLアミノ酸配列。
【
図1B】ヒト化2A2 VH及びVL配列並びに完全なh2A2 CARコード配列のアミノ酸配列である。(B)NからC末端の順に表される、h2A2 CARの完全なアミノ酸配列。星印はアミノ酸配列の終わりを示すことに留意されたい。
【
図2A】ヒト化R11 VH及びVL配列並びに完全なR11 CARコード配列のアミノ酸配列である。(A)ヒト化R11 VH及びVLアミノ酸配列。
【
図2B】ヒト化R11 VH及びVL配列並びに完全なR11 CARコード配列のアミノ酸配列である。(B)NからC末端の順に表される、R11 CARの完全なアミノ酸配列。星印はアミノ酸配列の終わりを示すことに留意されたい。
【
図3A】ヒト化R12 VH及びVL配列並びに完全なR12 CARコード配列のアミノ酸配列である。(A)ヒト化R12 VH及びVLアミノ酸配列。
【
図3B】ヒト化R12 VH及びVL配列並びに完全なR12 CARコード配列のアミノ酸配列である。(B)NからC末端の順に表される、R12 CARの完全なアミノ酸配列。星印はアミノ酸配列の終わりを示すことに留意されたい。
【
図4A】EGFRt形質導入マーカーによるCARの富化及び検出。ヒトCD4又はCD8陽性T細胞を、ヒト化又は非ヒト化ROR1 CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した後、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt)形質導入マーカーを使用する磁気活性化細胞選別(MACS)により、CAR発現細胞について富化した。EGFRtのコード配列(CDS)は、2Aリボソームスキッピング配列によってCAR CDSに連結され、EGFRtの発現は、CAR発現のための代理マーカーとして使用することができる。(A)MACSによるEGFRt富化後のEGFRt陽性CD4
+T細胞の頻度を示すフローサイトメトリープロット。
【
図4B】EGFRt形質導入マーカーによるCARの富化及び検出。ヒトCD4又はCD8陽性T細胞を、ヒト化又は非ヒト化ROR1 CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて形質導入した後、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt)形質導入マーカーを使用する磁気活性化細胞選別(MACS)により、CAR発現細胞について富化した。EGFRtのコード配列(CDS)は、2Aリボソームスキッピング配列によってCAR CDSに連結され、EGFRtの発現は、CAR発現のための代理マーカーとして使用することができる。(B)MACSによるEGFRt富化後のEGFRt陽性CD8
+T細胞の頻度を示すフローサイトメトリープロット。
【
図5A】hROR1 CAR発現T細胞の細胞溶解活性。(A)ROR1陽性標的細胞に対する、示された非ヒト化又はヒト化ROR1特異的CARを発現する初代ヒトCD8
+T細胞の細胞溶解活性。K562は、陰性対照として使用したROR1陰性ヒト白血病細胞株である。K562-ROR1は、同じ細胞株を起源とするが、ROR1を安定に発現するように操作されている。MDA-MB-231及びA549は、ROR1を内在的に発現するヒト乳がん及び肺がん細胞株である。全ての標的細胞株を、蛍(P.pyralis)ルシフェラーゼを安定に発現するように操作した。標的細胞の特異的溶解を、150μg/mlの最終濃度でルシフェリンを添加した後の発光シグナルの強度に基づいて算出した。
【
図5B】hROR1 CAR発現T細胞の細胞溶解活性。(B)2つのROR1陽性標的細胞株K562-ROR1及びMDA-MB-231に対する、非ヒト化又はヒト化ROR1特異的CARを発現するヒトT細胞の細胞溶解活性の概要。データを、n=3の独立した実験から収集した。特異的溶解を、10:1のE:T比を用いる6時間のインキュベーション後のffluc陽性標的細胞の発光強度に基づいて算出した。
【
図6A】hROR1 CAR発現T細胞のサイトカイン分泌。非ヒト化又はヒト化ROR特異的CARを発現するCD4
+又はCD8
+CAR T細胞を、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1陽性標的細胞と共に同時培養した。エフェクターサイトカインIL-2及びIFN-γの濃度を、24時間の同時培養後に細胞培養上清中でELISAによって測定した。(A)2A2及びh2A2 CAR T細胞からのサイトカイン分泌の比較。
【
図6B】hROR1 CAR発現T細胞のサイトカイン分泌。非ヒト化又はヒト化ROR特異的CARを発現するCD4
+又はCD8
+CAR T細胞を、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1陽性標的細胞と共に同時培養した。エフェクターサイトカインIL-2及びIFN-γの濃度を、24時間の同時培養後に細胞培養上清中でELISAによって測定した。(B)R11及びhR11 CAR T細胞からのサイトカイン分泌の比較。
【
図6C】hROR1 CAR発現T細胞のサイトカイン分泌。非ヒト化又はヒト化ROR特異的CARを発現するCD4
+又はCD8
+CAR T細胞を、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1陽性標的細胞と共に同時培養した。エフェクターサイトカインIL-2及びIFN-γの濃度を、24時間の同時培養後に細胞培養上清中でELISAによって測定した。(C)R12及びhR12 CAR T細胞からのサイトカイン分泌の比較。
【
図7A】hROR1 CAR発現T細胞の増殖。4:1のE:T比でROR1陽性標的細胞を用いて刺激した後のCD4
+ ROR1特異的CAR T細胞の増殖。外因性サイトカインを培養培地に添加せず、T細胞増殖を、刺激の72時間後にCFSE染料希釈液によって評価した。分析のために、3組のウェルをプールし、生きた7AAD
-、CD4
+ T細胞の増殖を分析した。(A)ヒト化(実線)又は非ヒト化(破線)されたROR1 CAR T細胞のCFSEフローサイトメトリーヒストグラム。灰色の曲面はベクター対照T細胞(EGFRt)による。
【
図7B】hROR1 CAR発現T細胞の増殖。4:1のE:T比でROR1陽性標的細胞を用いて刺激した後のCD4
+ ROR1特異的CAR T細胞の増殖。外因性サイトカインを培養培地に添加せず、T細胞増殖を、刺激の72時間後にCFSE染料希釈液によって評価した。分析のために、3組のウェルをプールし、生きた7AAD
-、CD4
+ T細胞の増殖を分析した。(B)示されたROR1 CAR T細胞の分裂指数。
【
図7C】hROR1 CAR発現T細胞の増殖。4:1のE:T比でROR1陽性標的細胞を用いて刺激した後のCD4
+ ROR1特異的CAR T細胞の増殖。外因性サイトカインを培養培地に添加せず、T細胞増殖を、刺激の72時間後にCFSE染料希釈液によって評価した。分析のために、3組のウェルをプールし、生きた7AAD
-、CD4
+ T細胞の増殖を分析した。(C)0、1、2、3、4、及び5回の細胞分裂周期を経たT細胞のパーセンテージをまとめた表。
【
図8】hROR1 CAR T細胞によるROR1タンパク質の結合。非ヒト化又はヒト化ROR1 CARを発現するヒトCD
8+ T細胞を収集し、PBS、0.25%FCSで洗浄した後、最終濃度5.3μ/mlのAlexaFluor 647標識された凝集ROR1タンパク質及びモノクローナルαEGFR抗体を含有する同じバッファー中で10分インキュベートした。その後、細胞をPBS、0.25%FCSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
【
図9A】hROR1 CAR T細胞のin vivoでの活性。NSGマウスに、ROR1を発現するJeko-1マントル細胞リンパ腫株を接種し、21日後、ヒト化R12又は2A2 CAR T細胞の処置を受けた。(A)マウスに、28日目にルシフェリンを注射し、ffluc陽性腫瘍細胞によって放出される放射輝度シグナルを検出した。表示されるのは、21日目に測定したベースラインシグナルと比較した、各群の4匹の最良に応答するマウスに関するマウス1匹あたりの平均放射輝度の変化である。
【
図9B】hROR1 CAR T細胞のin vivoでの活性。NSGマウスに、ROR1を発現するJeko-1マントル細胞リンパ腫株を接種し、21日後、ヒト化R12又は2A2 CAR T細胞の処置を受けた。(B)56日目にhR12又はh2A2 ROR1 CAR T細胞を受けたマウスの骨髄におけるEGFRt後のEGFRt陽性CD4
+及びCD8
+T細胞の頻度を示すフローサイトメトリープロット。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、遺伝子治療、免疫学、生化学、遺伝学、及び分子生物学の分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0072】
本明細書に記載のものと類似するか、又は等価である全ての方法及び材料を、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載する。本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の参考文献は、明細書の終わりの参考文献の一覧中の対応する参考文献を指す、角括弧中の参考文献番号(例えば、「[31]」又は「参考文献[31]」として)によって示される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が、引用される参考文献よりも優先する。更に、材料、方法、及び実施例は、別途特定されない限り、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0073】
非ヒト起源の抗体を、当業界で公知の方法によるCDR移植によってヒト化することができる。ヒト化は、ヒト抗体結合ドメインに対する結合ドメインの相同性(すなわち、ヒト性)を増大させ、人類におけるヒト化抗体の免疫原性能力を減少させ、次いで、ヒト患者における安全性及び治療適用プロファイルを増大させると予想される。他方、抗体のヒト化は、ヒト化抗体のその抗原に対する結合親和性の低下を伴うことが多く、つまらない親和性成熟を必要とすることが多い。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[32]を参照されたい。また、CARの標的化ドメインの生成のためのヒト化抗体断片の使用は、標的抗原への結合及びCAR発現細胞のエフェクター機能の誘発に関して、より低い性能のCARをもたらし得ることも経験されてきた。
【0074】
本発明において、本発明者等は、抗ROR1特異的抗体クローン2A2(Mus muscullus、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2010/124188)、R11及びR12(Oryctolagus cuniculus、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2012/075158)を起源とする抗体の、
図1~
図3に例示されるようなヒト化VH及びVLドメインを誘導した。次いで、これらの抗体のヒト化VH及びVLドメインを使用して、ROR1抗原を標的化するCARの設計のために更に使用される一本鎖可変断片(scFv)を設計した。ヒト化CARを用いる初代ヒトT細胞の形質導入又はトランスフェクションを可能にし、CAR T細胞産物の産生を可能にする遺伝子導入ベクターを作出した。ヒト化ROR1標的化ドメインを有するROR1 CARを発現するCAR T細胞のエフェクター機能を、その非ヒト化対応物と比較した。ヒト化ROR1 CAR h2A2及びhR12は、その非ヒト化対応物と比較して予想外の優れたエフェクター機能を提供した。
【0075】
本発明は、ヒト化ROR1 CARの生成及びROR1を発現する標的細胞の殺傷のために免疫細胞を再指向させるためのその使用を初めて記載する。予想外に、2つのヒト化CAR、すなわち、h2A2及びhR12の観察された活性は、ROR1を発現する標的細胞を用いる機能的T細胞アッセイにおいて、非ヒト化形態よりも高かった。対照的に、R11モノクローナル抗体を起源とするscFv標的化ドメインを用いて構築されたCARは、エフェクター機能の比較的強い減少を示し、かくして、治療能力の一般的に予想可能な低下を示している。
【0076】
ヒト化ROR1 CARが非ヒト化対応物のものよりも優れた免疫細胞に対する抗原特異的エフェクター機能を媒介することができるという本発明の知見は、予想外のものであり、本発明者等の知る限り、先行技術において開示されていない。抗体ヒト化は、標的抗原に対する親和性の喪失、及び/又は親和性の低下を伴うことが多いため、この知見はまた、予想外である。標的化ドメインがそのようなヒト化抗体を起源とするCARも、より低いエフェクター機能及びより小さい治療能力を示すことが多い。かくして、本発明者等のヒト化ROR1 CARが、その非ヒト化対応物よりも優れたエフェクター機能を示すことは予測も予想もすることができなかった。
【0077】
本発明者等の新規なヒト化ROR1 CARの予測されたより低い免疫原性と共に、有意により高い機能は、これらのCARの臨床適用、特に、限定されるものではないが、がんに対する免疫治療との関連におけるそれらの使用にとって実質的な利点を提供する。
【0078】
本発明による「組換え哺乳動物細胞」は、本明細書で定義される任意の細胞であってもよい。好ましくは、組換え哺乳動物細胞は、単離された細胞である。本発明による組換え哺乳動物細胞を、公知の薬学的基準に従って製造することができる。例えば、それらを、ヒトへの投与のために製剤化することができる。
【0079】
本発明によるROR1特異的CAR又はCARの組合せは、任意の可能な形態であってもよい。好ましい実施形態では、ROR1特異的CAR又はCARの組合せは、単離された形態で存在する。別の好ましい実施形態では、本発明によるROR1特異的CAR又はCARの組合せは、組成物中に存在してもよい。組成物は、医薬組成物であってもよい。
【0080】
本発明による配列の配列アラインメントは、好適なアルゴリズムによって、好ましくは、BLASTアルゴリズムを使用することによって実施される。当業界で公知の好適なアラインメントパラメーターの使用については、参考文献[33、34]を参照されたい。
【0081】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」等の用語は出現するたびに、必要に応じて、「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」と置換してもよい。
【0082】
本明細書に記載の配列番号に対応する配列は、
図1~
図3及び以下の表に示される。
【0083】
【0084】
更に、本発明によるヒト化のための出発配列として使用することができる非ヒト化モノクローナル抗体R11、R12及び2A2のROR1結合断片の好ましいアミノ酸配列は、以下に示される通りである。
【0085】
非ヒト化2A2抗体のscFV(配列番号16):
QVQLQQSGAELVRPGASVTLSCKASGYTFSDYEMHWVIQTPVHGLEWIGAIDPETGGTAYNQKFKGKAILTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCTGYYDYDSFTYWGQGTLVTVSAGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSQKIMSTTVGDRVSITCKASQNVDAAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASNRYTGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNMQSEDLADYFCQQYDIYPYTFGGGTKLEIK。
【0086】
非ヒト化R11抗体のscFV(配列番号17):
QSVKESEGDLVTPAGNLTLTCTASGSDINDYPISWVRQAPGKGLEWIGFINSGGSTWYASWVKGRFTISRTSTTVDLKMTSLTTDDTATYFCARGYSTYYGDFNIWGPGTLVTISSGGGGSGGGGSGGGGSELVMTQTPSSTSGAVGGTVTINCQASQSIDSNLAWFQQKPGQPPTLLIYRASNLASGVPSRFSGSRSGTEYTLTISGVQREDAATYYCLGGVGNVSYRTSFGGGTEVVVK。
【0087】
非ヒト化R12抗体のscFV(配列番号18):
QEQLVESGGRLVTPGGSLTLSCKASGFDFSAYYMSWVRQAPGKGLEWIATIYPSSGKTYYATWVNGRFTISSDNAQNTVDLQMNSLTAADRATYFCARDSYADDGALFNIWGPGTLVTISSGGGGSGGGGSGGGGSELVLTQSPSVSAALGSPAKITCTLSSAHKTDTIDWYQQLQGEAPRYLMQVQSDGSYTKRPGVPDRFSGSSSGADRYLIIPSVQADDEADYYCGADYIGGYVFGGGTQLTVTG。
【0088】
非ヒト化2A2抗体のVH(配列番号19):
QVQLQQSGAELVRPGASVTLSCKASGYTFSDYEMHWVIQTPVHGLEWIGAIDPETGGTAYNQKFKGKAILTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCTGYYDYDSFTYWGQGTLVTVSA。
【0089】
非ヒト化2A2抗体のVL(配列番号20):
DIVMTQSQKIMSTTVGDRVSITCKASQNVDAAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASNRYTGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNMQSEDLADYFCQQYDIYPYTFGGGTKLEIK。
【0090】
非ヒト化R11抗体のVH(配列番号21):
QSVKESEGDLVTPAGNLTLTCTASGSDINDYPISWVRQAPGKGLEWIGFINSGGSTWYASWVKGRFTISRTSTTVDLKMTSLTTDDTATYFCARGYSTYYGDFNIWGPGTLVTISS。
【0091】
非ヒト化R11抗体のVL(配列番号22):
ELVMTQTPSSTSGAVGGTVTINCQASQSIDSNLAWFQQKPGQPPTLLIYRASNLASGVPSRFSGSRSGTEYTLTISGVQREDAATYYCLGGVGNVSYRTSFGGGTEVVVK。
【0092】
非ヒト化R12抗体のVH(配列番号23):
QEQLVESGGRLVTPGGSLTLSCKASGFDFSAYYMSWVRQAPGKGLEWIATIYPSSGKTYYATWVNGRFTISSDNAQNTVDLQMNSLTAADRATYFCARDSYADDGALFNIWGPGTLVTISS。
【0093】
非ヒト化R12抗体のVL(配列番号24):
ELVLTQSPSVSAALGSPAKITCTLSSAHKTDTIDWYQQLQGEAPRYLMQVQSDGSYTKRPGVPDRFSGSSSGADRYLIIPSVQADDEADYYCGADYIGGYVFGGGTQLTVTG。
【0094】
更なる好ましい実施形態
本発明のヒト化CARの好ましい実施形態は、ROR1発現細胞の異常な出現と関連する悪性腫瘍に対する細胞免疫治療におけるそれらの適用である。好ましくは、CAR改変細胞は、CD8+キラーT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、メモリーステムT細胞、インバリアントT細胞、NKT細胞、サイトカイン誘導キラーT細胞、ガンマ/デルタT細胞、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、又は遺伝子改変のために使用されることが望まれる任意の他の哺乳動物細胞型である。
【0095】
特に好ましい実施形態は、ROR1陽性白血病、マントル細胞リンパ腫、乳がん、肺がん又はROR1を発現する任意の他のがんに対する免疫治療剤としての、2A2、R11又はR12モノクローナル抗体を起源とするヒト化標的化ドメインを有する本発明のCARの使用である。
【0096】
別の好ましい実施形態は、肥満の処置のための免疫治療剤としての、2A2、R11又はR12モノクローナル抗体を起源とするヒト化標的化ドメインを有する本発明のCARの使用である。
【0097】
別の好ましい実施形態は、ROR1陽性自己免疫疾患又は感染症に対する免疫治療剤としての、2A2、R11又はR12モノクローナル抗体を起源とするヒト化標的化ドメインを有する本発明のCARの使用である。
【0098】
別の好ましい実施形態は、限定されるものではないが、4-1BB、CD28、Ox40、ICOS、DAP10又は免疫細胞に対する共刺激を提供する任意の他のドメイン等の、単一の共刺激ドメインを含有するCARの成分としての本発明のヒト化標的化ドメインの使用である。
【0099】
別の実施形態では、本発明のヒト化標的化ドメインを、共阻害シグナル伝達ドメインの使用に起因する阻害シグナルを媒介するCARの成分として使用することができる。そのようなシグナル伝達ドメインは、共阻害受容体CTLA-4、PD-1、BTLA、LAG3、TIM3又は免疫細胞機能を阻害する任意の他の受容体を起源としてもよい。
【0100】
別の好ましい実施形態は、2つ以上の共刺激又は共阻害ドメインの組合せを包含するCARにおける本発明のヒト化標的化ドメインの使用である。
【0101】
別の実施形態では、本発明のヒト化標的化ドメインを、CAR構築物中に含有させる提示されたscFv形式とは異なる形式で使用することができる。非限定例として、そのようなCARは、一方の鎖が開示されるヒト化抗ROR1抗体の可変重鎖(VH)を包含し、一方の鎖が可変軽鎖(VL)を包含する2つの異なるポリペプチド鎖から構成されていてもよい。
【0102】
別の好ましい実施形態では、本発明のヒト化標的化ドメインを含有するCAR遺伝子を、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションのような非ウイルストランスフェクション法により、又はSleeping Beauty、PiggyBac、Frog Prince、Himarl、Passport、Minos、hAT、Tol1、Tol2、AciDs、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、及びHsmar1、若しくは同等の、より低い及び/若しくはより高い転位活性を有するそれらの対応する誘導体のいずれかのようなトランスポザーゼと一緒に、所望の細胞中に導入する。
【0103】
別の好ましい実施形態では、本発明を起源とするヒト化標的化ドメインを包含するCAR遺伝子は、RNA又はDNAポリヌクレオチド分子の一部として送達される。
【実施例0104】
本発明を、以下の非限定例によって例示する。
【0105】
(実施例1)
ヒト化標的化ドメインを有するROR1特異的CAR改変ヒトCD8+及びCD4+ T細胞の調製及び機能的試験
材料及び方法:
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0106】
細胞株
293T、K562、MDA-MB-231及びA549細胞株を、American Type Culture Collectionから取得した。K562-ROR1を、完全長ROR1遺伝子を用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。ルシフェラーゼ発現株を、蛍(P.pyralis)ルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子を用いる上記細胞株のレンチウイルス形質導入によって誘導した。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDulbecco改変Eagle培地中で培養した。
【0107】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0108】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0109】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8+又はCD4+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(Life Technologies社)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。
【0110】
細胞傷害性、サイトカイン分泌、及びCFSE増殖アッセイ
蛍ルシフェラーゼを安定に発現する標的細胞を、様々なエフェクター:標的(E:T)比でエフェクターT細胞と共に、5×103細胞/ウェルで3組、インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、ルシフェリン基質を同時培養物に添加し、標的細胞のみと比較した、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中での発光シグナルの減少を、ルミノメーター(Tecan社)を使用して測定した。標準的な式を使用して特異的溶解を算出した。サイトカイン分泌の分析のために、5×104個のT細胞を、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種し、IFN-γ、TNF-α及びIL-2を、24時間のインキュベーション後に取り出された上清中で、ELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖の分析のために、5×104個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)で標識し、洗浄し、外因性サイトカインを含まないCTL培地中、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を抗CD3又は抗CD4又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、分析から死細胞を除外した。試料をフローサイトメトリーによって分析し、生きたT細胞の細胞分裂をCFSE希釈液によって評価した。分裂指数を、FlowJoソフトウェアを使用して算出した。
【0111】
結果
ヒト化ROR1 CAR T細胞の生成、検出及び富化
健康なドナーに由来するPBMCを、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、バルクCD4
+又はCD8
+ヒトT細胞を、MACSを使用してこの細胞集団から抽出した。単離の直後、T細胞を、CD3/28 Dynabeadsで2日間活性化した後、5の感染多重度(MOI)で非ヒト化又はヒト化バージョンのROR1特異的CARをコードするレンチウイルスベクターを用いるスピノキュレーションによって形質導入した。形質導入の4日後にDynabeadsを除去し、10日目に、ビオチン化モノクローナルαEGFR抗体を用いる標識化及び抗ビオチンマイクロビーズを用いるMACSにより、EGFRt陽性細胞についてT細胞を富化した。富化の後、EGFRt陽性画分は、通常はわずかにより低いパーセンテージのEGFRt陽性細胞を示したhR11 CARを除いて、再現性よく、総細胞の90%を超えて占めていた(
図4A及び
図4B)。
【0112】
ヒト化ROR1 CAR T細胞の細胞溶解活性
CAR T細胞を上記のように生成し、それらの細胞溶解活性を、ROR1陽性及びffluc発現標的細胞株K562-ROR1、MDA-MB-231及びA549に対する6時間の細胞傷害性アッセイにおいて評価した(
図5A)。ROR1陰性K562対照に対する特異的溶解は検出されなかった。h2A2及びhR12 CARを発現するT細胞は、用量依存的である高い程度の標的細胞溶解と共に非常に強力な抗腫瘍効果を示し、より高いE:T比はより高いパーセンテージの標的細胞溶解を引き起こした。CARではなく、EGFRt形質導入マーカーをコードするベクター対照を形質導入されたT細胞株は、標的細胞のいずれかの溶解を引き起こさなかった。これは、CAR自体が標的細胞溶解を誘導したこと、及びまた、原理的には、内在性TCRによる同種認識に起因して起こり得るCAR非依存的標的細胞溶解が、本発明者等の実験において検出可能ではなかったことを示している。h2A2及びhR12 CARとは対照的に、hR11 CARは、その細胞溶解活性が顕著に損なわれ、6時間のアッセイにおいて検出可能な溶解を示さなかった。注目すべきことに、インキュベーション時間を、例えば、24時間まで増加させた場合、それは検出可能かつ特異的な標的細胞溶解を引き起こした。
【0113】
n=3の関連しない健康なドナーから生成されたCAR T細胞並びにROR1陽性標的細胞K562-ROR1及びMDA-MB-231を用いる同じ条件下で、細胞傷害性アッセイを繰り返した(
図5B)。全てのドナーについて、h2A2及びhR12 CARについて観察された溶解は、一貫して強力であったが、hR11 CARによって媒介された溶解は、6時間のインキュベーション時間後にかろうじて検出可能であった。
【0114】
hROR1 CAR T細胞のROR1特異的活性化後のエフェクターサイトカイン分泌
CD4+又はCD8+ CAR T細胞を、上記のように生成し、4:1のE:T比で24時間、致死的に照射されたROR1発現標的細胞株と共に同時培養した。インキュベーション後、細胞培養上清を収集し、ELISAによりエフェクターサイトカインIL-2及びIFN-γの存在について分析した。対照として、細胞を、ROR1陰性K562細胞と共に、又は標的細胞の非存在下で培養した(培地対照)。目的のエフェクターサイトカインを産生するCAR T細胞の一般的能力を制御するために、細胞を、タンパク質キナーゼC(PKC)/NF-κB活性化因子であるホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)と、Ca2+イオノフォアであるイオノマイシンとの組合せでポリクローナル的に刺激した。アッセイ手順を、最大でn=3の関連しない健康なT細胞ドナーについて繰り返し、測定されたサイトカイン濃度を、グループ分析のために使用した。
【0115】
ヒト化2A2 CARは、そのサイトカインプロファイルが非ヒト化2A2 CARと同等であることを示した(
図6A)。IFN-γは、ROR1陽性標的又はPMA/Ionoを含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞の両方について1000~1500pg/mlの範囲にあった。IL-2もまた、ROR1陽性標的細胞を含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞について500~1000pg/mlの範囲にあった。驚くべきことに、h2A2 CAR T細胞のIL-2分泌は、K562-ROR1標的に関する非ヒト化バリアントと比較して上昇した。
【0116】
ヒト化R11 CARは、非ヒト化R11 CARと比較して減じられたサイトカイン分泌を示した(
図6B)。IFN-γ及びIL-2の濃度は、ROR1陽性標的細胞の存在下であっても、hR11 CARについてはバックグラウンドレベルであったが、非ヒト化R11 CARについては、CD4
+T細胞については1000pg/mlの範囲及びCD8
+T細胞については1800pg/mlのIFN-γの平均濃度並びに500~1000pg/mlの範囲の平均IL-2濃度が検出された。非ヒト化又はヒト化R11 CARを発現するCAR T細胞は両方とも、PMA/Ionoを用いる抗原非特異的刺激に応答してIFN-γ及びIL-2を産生する一般的能力を保持していた。
【0117】
ヒト化R12 CARは、非ヒト化R12 CARと同等であるサイトカインプロファイルを示した(
図6C)。IFN-γは、ROR1陽性標的又はPMA/Ionoを含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+とCD8
+ CAR T細胞の両方について1000~1500pg/mlの範囲にあった。IL-2も、ROR1陽性標的細胞を含有する試料中でのみ検出され、平均濃度は、CD4
+については400pg/ml及びCD8
+ CAR T細胞については500~800pg/mlの範囲にあった。
【0118】
総合すると、これらの結果は、h2A2及びhR12 CARの標的化ドメインのヒト化が、ROR1陽性標的細胞の遭遇後にエフェクターサイトカインIFN-γ及びIL-2を分泌するこれらのCARを発現するCD4+及びCD8+ヒトT細胞の能力を低下させなかったことを示している。検出されたサイトカインレベルは、非ヒト化CARと同等であり、一例では、非ヒト化CARよりも高かった。hR11 CARは、対照的に、T細胞が、両サイトカインの分泌に関する一般的能力を保持するとしても、ROR1陽性標的細胞に対する応答としてエフェクターサイトカインの検出可能な分泌を媒介しなかったが、これはhR11標的化ドメインのヒト化が観察された機能の喪失の原因となることを示唆している。これらのデータは、CDR移植によって生成されたCARにおけるヒト化結合ドメインの使用及びヒト化抗ROR1抗体の親和性を少しだけ減少させること(参考文献[31]を参照されたい)が、非ヒト化親結合ドメインを含むCAR T細胞と比較して、前記ヒト化結合ドメインを含むCAR T細胞の機能を予測することができないという事実の証拠である。
【0119】
ヒト化ROR1 CAR T細胞の増殖
CD4+又はCD8+ CAR T細胞を、記載のように生成し、CFSEで標識し、外因性サイトカインの非存在下で72時間、4:1のE:T比で致死的に照射されたROR1発現標的細胞株と同時培養した。インキュベーション時間の後、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCFSE希釈液について分析した。陰性対照として、CAR T細胞を、ROR1陰性K562細胞と共に、陽性対照として、50UI/mlのIL-2の存在下で同時培養した。
【0120】
ROR1陰性K562は、CAR構築物のいずれかを発現するT細胞の増殖を引き起こさなかった。EGFRt形質導入マーカーをコードするが、CAR配列を欠くベクター構築物を発現するT細胞は、バックグラウンド増殖を超える標的細胞のいずれかに応答する増殖を示さなかった(
図7A~
図7D)。これは、ROR1 CAR-T細胞の検出された増殖は、ROR1発現細胞による刺激に対する応答として、CARによって特異的に媒介されたことを示している。
【0121】
驚くべきことに、上記で決定された、類似するサイトカイン分泌プロファイルにも拘わらず、ヒト化2A2 CARを発現するT細胞は、ROR1陽性標的細胞に応答して、非ヒト化2A2 CARを発現するT細胞よりも有意に強力に増殖した(
図7A)。標的細胞株に応じて、CD4
+h2A2 CAR T細胞の分裂指数は、非ヒト化2A2 ROR1 CARと比較して、一貫して2~3倍高かった(
図7B)。ヒト化2A2 CARを発現するT細胞は、非ヒト化2A2 CARを発現するT細胞よりも高い細胞分裂回数を経た(
図7C)。MDA-MB-231標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の60%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は20%であった。同様に、K562-ROR1標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の51%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は18%であった。以前の観察と一致して、A549標的細胞を含むh2A2 CAR T細胞の18%が、3回以上の細胞分裂周期を経由し、非ヒト化2A2 CARについては、この画分は5%であった。
【0122】
ヒト化R11を発現するT細胞は、非ヒト化R11 CARを発現するT細胞よりも弱い増殖を示したが、その増殖は明らかにバックグラウンドレベルよりは上であった(
図7A)。標的細胞に応じて、分裂指数は1.5~3.5の係数で減少した。
【0123】
ヒト化R12 CARを発現するT細胞の増殖は特異的であり、非ヒト化バリアントを発現するT細胞と全体として同等であった。MDA-MB-231に対する非ヒト化バリアントの応答と比較して、ヒト化R12 CARを発現するT細胞について、有意により高い増殖レベルが検出された。増殖指数は、非ヒト化R12 CARバリアントと比較して約2倍高かった。3回以上の細胞分裂を経たT細胞のパーセンテージは、ヒト化R12 CARについては37%であり、非ヒト化R12 CARについては20%であった。
【0124】
総合すると、これらの結果は、2A2及びR12 CARのヒト化バリアントが、非ヒト化バリアントよりも実質的に高いレベルで抗原遭遇に応答してT細胞増殖を活性化することができることを示している。他方、ヒト化R11は、増殖能力の顕著な低下を示し、増殖レベルは、非ヒト化R11 CARと比較して顕著に低下した。
【0125】
(実施例2)
ヒト化ROR1 CARによるROR1-タンパク質の結合
材料及び方法
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0126】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0127】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、及びCAR-T細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0128】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8+又はCD4+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(ThermoFisher Scientific 社、MA)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。
【0129】
ROR1の結合
組換え凝集ROR1タンパク質を、AlexaFluor647標識キット(ThermoFisher Scientific社、MA)で標識し、これを使用して、ROR1 CARを発現するT細胞を染色した。T細胞をPBS、0.25%FCS中で1回洗浄した後、最終濃度5.3μg/mlの標識されたROR1タンパク質及びモノクローナルαEGFRt抗体を含有する同じバッファー中に再懸濁した。15分のインキュベーション時間後、細胞を過剰のPBS、0.25%FCSで洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0130】
結果:
その非ヒト化対応物と比較して、ヒト化2A2及びR12 ROR1 CARは、ROR1タンパク質への有意により強い結合を示した(
図8)。より高い全体的なパーセンテージのROR1タンパク質結合が検出されたが、これは、ヒト化CARのより良好な表面利用性及び/又は結合能力を示唆している。異なるAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化2A2 CARについては62.7%であり、ヒト化2A2 CARについては92.1%であった。同様に、異なるAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化R12 CARについては47.6%であり、ヒト化R12 CARについては79.0%であった。
【0131】
更に、強力なROR1結合を示したCAR T細胞のパーセンテージは、ヒト化2A2及びR12 CARについては増大し、結果として、これらの試料について、より低い頻度の弱いROR1結合が検出された。高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化2A2 CARについては2.61%であり、ヒト化2A2 CARについては20.0%であった。同様に、高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞のパーセンテージは、非ヒト化R12 CARについては0.7%であり、ヒト化R12 CARについては7.68%であった。これは、ROR1タンパク質に強く結合するT細胞数の大まかに10倍の増加に相当する。
【0132】
ヒト化R11は、非ヒト化R11 CARについての97.9%と比較して、AlexaFluor647陽性T細胞の4.98%の低い全体的なROR1タンパク質結合を示した。同様に、高いAlexaFluor647シグナルを示すT細胞の頻度は、ヒト化R11については0.019%であり、非ヒト化バリアントについては66.5%であった。
【0133】
まとめると、これらのデータは、ヒト化バージョンの2A2及びR12 CARが、非ヒト化バージョンよりも強いROR1抗原への結合を有することを示している。それは予想外であったが、実施例1について実施したアッセイの部分における上昇した活性の説明を提供することができる。
【0134】
(実施例3)
ヒト化ROR1 CARを発現するCAR-T細胞を用いる養子免疫治療後のNOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにおけるヒトJeko-1マントル細胞リンパ腫の退縮
材料及び方法:
ヒト対象
Institutional Review Board of the University of Wurzburg (Universitatsklinikum Wurzburg、UKW)によって認可された研究プロトコールに参加するためのインフォームドコンセント文書を提供した健康なドナーから、血液試料を取得した。Ficoll-Hypaque (Sigma社、St.Louis、MO)上での遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0135】
細胞株
Jeko-1(野生型)、293T、K562、MDA-MB-231及びA549細胞株を、American Type Culture Collectionから取得した。K562-ROR1を、完全長ROR1遺伝子を用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。ルシフェラーゼ発現株を、蛍(P.pyralis)ルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子を用いる上記細胞株のレンチウイルス形質導入によって誘導した。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDulbecco改変Eagle培地中で培養した。
【0136】
免疫表現型解析
PBMC及びT細胞株を、1つ又は複数の以下のコンジュゲート化mAb:CD3、CD4、CD8及び一致したアイソタイプ対照(BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。形質導入されたT細胞株を、ビオチンコンジュゲート化抗EGFR抗体(ImClone Systems Incorporated社、Branchburg、NJ)及びストレプトアビジン-PE (BD Biosciences社、San Jose、CA)で染色した。7-AAD (BD Biosciences社)による染色を、生細胞/死細胞識別のために、製造業者により指示されたように実施した。フロー分析を、FACSCanto上で行い、FlowJoソフトウェア(Treestar社、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0137】
レンチウイルスベクターの構築、レンチウイルスの調製、並びにCAR-T細胞及びJeko-1/ffluc細胞の生成
短い、又は長いスペーサー及び4-1BB共刺激ドメインを有するROR1特異的CARを含有するepHIV7レンチウイルスベクターの構築は記載されており、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[35]を参照されたい。全てのCAR構築物は、CARの下流に、トランケートされた表皮増殖因子受容体(EGFRt;tEGFRとしても知られる)をコードしていた。あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる参考文献[36]を参照されたい。遺伝子を、T2Aリボソームスキップエレメントによって連結した。
【0138】
CAR/EGFRt及びffluc/eGFPをコードするレンチウイルス上清を、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech社、Mountain View、CA)を使用して、それぞれのレンチウイルスベクタープラスミド並びにパッケージングベクターpCHGP-2、pCMV-Rev2及びpCMV-Gを同時トランスフェクトされた293T細胞中で産生させた。トランスフェクションの16時間後、培地を交換し、72時間後にレンチウイルスを収集した。CAR-T細胞を、記載のように[35]生成した。簡単に述べると、CD8+又はCD4+バルクT細胞を、健康なドナーのPBMCから選別し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies社)で活性化し、レンチウイルス上清で形質導入した。レンチウイルス形質導入を、スピノキュレーションによって2日目に実施し、10%ヒト血清、GlutaminMAX(Life Technologies社)、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び50U/mL IL-2を含むRPMI-1640中でT細胞を増殖させた。トリパンブルー染色を実施して、生きたT細胞を定量化した。拡大後、EGFRt+ T細胞を富化し、CD3特異的Okt3抗体並びに照射された同種異系PBMC及びEBV-LCLフィーダー細胞を用いるポリクローナル刺激によって拡大した。Jeko-1/ffluc細胞を、ffluc/eGFPをコードするレンチウイルスを用いるレンチウイルス形質導入によって生成した。
【0139】
細胞傷害性、サイトカイン分泌、及びCFSE増殖アッセイ
蛍ルシフェラーゼを安定に発現する標的細胞を、様々なエフェクター:標的(E:T)比でエフェクターT細胞と共に、5×103細胞/ウェルで3組、インキュベートした。4時間のインキュベーションの後、ルシフェリン基質を同時培養物に添加し、標的細胞のみと比較した、標的細胞及びT細胞を含有するウェル中での発光シグナルの減少を、ルミノメーター(Tecan社)を使用して測定した。標準的な式を使用して特異的溶解を算出した。サイトカイン分泌の分析のために、5×104個のT細胞を、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種し、IFN-γ、TNF-α及びIL-2を、24時間のインキュベーション後に取り出された上清中で、ELISA(Biolegend社)によって測定した。増殖の分析のために、5×104個のT細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen社)で標識し、洗浄し、外因性サイトカインを含まないCTL培地中、4:1の比で標的細胞と共に3組のウェルに播種した。インキュベーションの72時間後、細胞を抗CD3又は抗CD4又は抗CD8 mAb及び7-AADで標識して、分析から死細胞を除外した。試料をフローサイトメトリーによって分析し、生きたT細胞の細胞分裂をCFSE希釈液によって評価した。分裂指数を、FlowJoソフトウェアを使用して算出した。
【0140】
NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにおける実験
動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)は、全てのマウス実験を認可した。6~8週齢のメスのNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ (NSG)マウスを、Jackson Laboratoryから取得したか、又は社内で飼育した。マウスに、尾静脈を介して0.5×106個のJeko-1/ffluc腫瘍細胞を注射し、その後、h2A2又はhR12 ROR1 CAR細胞の尾静脈注射を投与した。両方のROR1 CAR T細胞株(h2A2及びhR12)が、形質導入マーカーEGFRtを発現した。対照T細胞は、EGFRt形質導入マーカーのみを発現した。
【0141】
腫瘍増殖の生物発光イメージングのために、マウスは、PBS中に再懸濁されたルシフェリン基質(Caliper Life Sciences社)の腹腔内注射(15μg/g体重)を受けた。マウスを、イソフルランで麻酔し、1秒~1分の獲得時間で小ビニングモードでルシフェリン注射の10分後にXenogen IVIS Imaging System (Caliper社)を使用して画像化して、不飽和画像を取得した。ルシフェラーゼ活性を、Living Image Software (Caliper社)を使用して分析した。光子束(放射輝度)を、それぞれ個々のマウスの全身を包含する目的の領域内で測定した。
【0142】
結果:
ヒト化ROR1 CARのin vivo活性を評価するために、本発明者等は、免疫欠損NSGマウスのコホート(n=5)に、尾静脈注射により、ヒトのROR1を発現するマントル細胞リンパ腫株Jeko-1/fflucを接種した。21日後、腫瘍が播種された時、マウスを、単回静脈内用量のhR12又はh2A2 ROR1 CAR T細胞で処置した。対照マウスを、EGFRt対照ベクターのみを発現するT細胞で処置したか、又は未処置のまま放置した。
【0143】
本発明者等は、hR12及びh2A2 ROR1 CAR-T細胞で処置した全てのマウスにおいて、急速な腫瘍退縮及び生存の改善を観察した(応答率100%)。
図9Aは、ベースライン放射輝度からの変化率としての、T細胞導入の7日後の腫瘍退縮を示す。ベースラインを、21日目での処置の前に各マウスについて測定した。ヒト化ROR1 CARで処置されたマウスとは対照的に、未処置のまま放置したか、又はEGFRt対照ベクターを発現するT細胞で処置された対照群は、全てのマウスにおいて継続的な腫瘍増殖を示した(応答率0%)。CAR T細胞処置の7日後の平均放射輝度は、hR12については2
*10
4p/sec/cm
2/srであり、h2A2については1
*10
5であった。対照群の平均放射輝度は、未処置のマウスについては6
*10
6であり、EGFRtのみのベクター対照で処置されたマウスについては1
*10
6であった。
【0144】
ヒト化ROR1 CAR T細胞は、マウスにおいて生着及び持続し、実験の終わりまでマウスの脾臓及び骨髄で検出可能であった。
図9Bは、56日目でのhR12コホートに由来する1匹のマウス及びh2A2コホートの1匹のマウスの骨髄試料に由来する代表的なフローサイトメトリーデータを示す。CD4及びCD8 T細胞が検出可能であり、ヒト化ROR1 CARを発現していた。本発明者等は、臓器試料中のヒト化ROR1 CAR T細胞の存在を確認した;総細胞中のヒト化ROR1 CAR T細胞の割合は、個々のマウス間で変化したが、一般的には1~10%の範囲であった。
【0145】
まとめると、これらのデータは、h2A2及びhR12 CARが、in vivoで強力かつ特異的な抗腫瘍活性を提供することを示している。
CAR、CARの組合せ、組換え哺乳動物細胞並びに本発明による方法及び医学的使用は、産業上の利用可能性を有する。例えば、それらを、医薬製品として、又はその製造のために使用することができる。