(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165690
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071131
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】596168605
【氏名又は名称】大川 光治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大川 光治郎
(57)【要約】
【課題】マスク本体を容易にかつ衛生的に着け外しすること。
【解決手段】利用者の顔の口を覆う口元の位置Puで着用されるシート状に形成されたマスク本体2と、該マスク本体2の左右側縁から耳に引っ掛け可能に左右各側へ延出する一対の耳掛け部3とを備え、マスク本体2の正面部2fに、口元の位置Puと、マスク本体2の上縁が利用者の口よりも下方に位置する下顎の位置Pdとの間でマスク本体2を移動可能に摘まむ摘まみ部4が設けられた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の顔の口を覆う口被覆位置で着用されるシート状に形成されたマスク本体と、該マスク本体の左右側縁から耳に引っ掛け可能に左右各側へ延出する一対の耳掛け部とを備えたマスクであって、
上記マスク本体の正面部に、上記口被覆位置と、上記マスク本体の上縁が利用者の口よりも下方に位置する降下位置との間で上記マスク本体を移動可能に摘まむ摘まみ部が設けられた
マスク。
【請求項2】
上記摘まみ部は、上記正面部における、上縁の左右方向の中央部に設けられた
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
上記摘まみ部は、上記マスク本体の上縁の左右方向の中央部に、該マスク本体から上方へ延出するように備えた
請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
上記マスク本体の下縁の中央に左右方向に沿って、顔の表面形状に沿って塑性変形可能な可撓性を有する芯材が設けられた
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
上記耳掛け部は、上記マスク本体が上記口被覆位置で着用された状態において適合する有効長さよりも若干長く設定された
請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口、鼻およびこれらの周辺を覆う衛生マスクに関し、例えば、飲食する際において、着用した状態から一時的に取り外しながら(すなわち、着け外ししながら)利用する場合に適したマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
粉塵、花粉或いはウイルスなどの予防、飛沫飛散防止の目的でマスクが用いられている。近年では、新型コロナ感染症の感染予防対策として、公共交通機関、飲食店、スポーツジム、イベント会場などでマスクの着用が要請されている。
【0003】
特に、飲食店においては、マスクを着けたまま飲食するいわゆる「マスク会食」が推奨されている。その一環として、利用者が飲食物を口へ運ぶ際には、片方の耳掛け部を耳から外し、マスク本体に対して口元を露出させた状態で飲食物を口へ運び、該片方の耳掛け部を耳に掛け直すという、一連のマスクの着け外し動作が、マスク会食におけるマナーとして自治体等において推奨されている。
しかし、このような一連のマスクの着け外し動作を、飲食物を口へ運ぶ度に行うことは面倒である。
【0004】
また、例えば、スポーツジム等において、鼻下部等のマスクで覆われた部位にかいた汗を拭う際など、飲食店以外にも着用が要請されている空間においてマスクを着用する場合においても、マスクは、一旦着用されると常時着用されるわけではなく一時的に着け外しされる。その度に、マスク会食における上述したマスクの着け外し動作と同様の動作を経てマスクを着け外しすることは面倒である。
【0005】
そこで、マスクを一時的に着け外しするための他の動作として、左右両側の耳掛け部を耳に掛けたままマスク本体を掴んで口元から下顎の位置まで下方へずらすことが考えられる。
【0006】
このマスク取り外し動作は、左右両側の耳掛け部を耳に掛けたままでも容易に取り外す(すなわち、マスク本体に対して口元を露出する)ことができる点で有利であるが、粉塵や細菌などのフィルタ機能を有するマスク本体自体を掴むため、衛生面の観点で好ましくない。
【0007】
上述した課題に対して、最近では、左右両側の耳掛け部を耳に掛けたまま、かつマスク本体を口元から下方へずらさなくてもマスク本体に覆われた口元を一時的に露出させることができる構造のマスクが例えば、下記特許文献1において提案されている。
【0008】
特許文献1のマスクは、中央部に開口部が設けられたマスク本体と、開口部を覆う表カバー部材とを備え、開口部を開閉可能にマスク本体に対して表カバー部材を着脱可能に形成されている。
【0009】
しかし、特許文献1のマスクは、飲食物を口へ運ぶ際に、マスク本体における開口部の縁部に飲食物が付着するおそれがあるため不衛生であるとともに、表カバー部材が不用意に閉じないように該表カバー部材を一方の手で把持しておく必要があり面倒である。
【0010】
また、特許文献1のマスクは、通常の着用時において、表カバー部材によってマスク本体の開口部がたとえ閉じられたとしても、構造上、マスク本体と表カバー部材との間に開口部へ通じる僅かな隙間が生じやすいため、マスク自体の細菌等の遮蔽機能、すなわち、衛生面についても懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、マスク本体を容易にかつ衛生的に着け外しすることができるマスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明のマスクは、利用者の顔の口を覆う口被覆位置で着用されるシート状に形成されたマスク本体と、該マスク本体の左右側縁から耳に引っ掛け可能に左右各側へ延出する一対の耳掛け部とを備えたマスクであって、上記マスク本体の正面部に、上記口被覆位置と、上記マスク本体の上縁が利用者の口よりも下方に位置する降下位置との間でマスク本体を移動可能に摘まむ摘まみ部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、上記マスク本体を直接、摘まむよりも摘まみ部を摘まむ方が摘み易いため、上記摘まみ部を摘んだ状態でマスク本体を上記口被覆位置と上記降下位置との間で容易に移動させることができる。
【0015】
さらに、上記マスク本体を上記口被覆位置と上記降下位置との間で上下動させる際に、上記マスク本体を正面側から手で直接、掴む必要がなく、上記摘まみ部を介して上記マスク本体を上下動させることができるため、上記マスク本体を衛生的に移動させることができる。
従って、上記マスク本体を容易にかつ衛生的に着け外しすることができる。
【0016】
ここで、上記口被覆位置は、上記マスク本体が例えば、口元に位置する場合を示し、上記マスク本体で少なくとも口を覆った状態の位置を示す。上記降下位置は、マスク本体が、口元から取り外されて例えば、下顎に位置する場合であり、マスク本体の上縁が利用者の口よりも下方に位置する場合を示す。
【0017】
この発明の態様として、上記摘まみ部は、上記正面部における、上縁の左右方向の中央部に設けられた構成とすることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、上記正面部における、長手方向の中央上部に設けた摘まみ部を摘んでマスク本体を移動させることで、マスク本体を口被覆位置と降下位置との間でスムーズに移動させることができる。
【0019】
詳しくは、上記正面部の中央部に左右方向に延びるプリーツが複数設けられた構成においては、上記正面部の中央部は周縁よりも伸縮性が高い伸縮部となる。このような伸縮部に摘まみ部を設け、摘まみ部を手で摘んで移動させる場合、伸縮部が伸縮することで、上記マスク本体の移動が吸収され、上記マスク本体のスムーズな移動が阻害されるおそれがある。
【0020】
これに対して、上述したように、上記摘まみ部を上記正面部の中央部を避けて上縁に設けることで、上記マスク本体を口被覆位置と降下位置との間でスムーズに移動させることができる。
【0021】
その他にも、上記摘まみ部を上記正面部における、外周縁側に位置する上縁に設けることで、マスク本体が有するフィルタ機能が上記摘まみ部によって阻害されなく、マスク本体を容易にかつ衛生的に着け外しすることができる。
【0022】
この発明の態様として、上記摘まみ部は、上記マスク本体の上縁の左右方向の中央部に、該マスク本体から上方へ延出するように備えた構成としてもよい。
【0023】
上記構成によれば、利用者は、上記摘まみ部を確実に摘んで上記マスク本体を上記降下位置から上記口被覆位置へと容易に移動させることができる。
【0024】
この発明の態様として、上記マスク本体の下縁の中央に左右方向に沿って、顔の表面形状に沿って塑性変形可能な可撓性を有する芯材が設けられた構成とすることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、例えば、上記マスク本体が上記口被覆位置にある状態において、上記マスク本体の下縁に有する上記芯材は、利用者の下顎に左右方向に沿って配置される。このため、上記芯材を利用者の例えば下顎の左右方向の形状に沿って塑性変形させておくことで、マスク本体を降下位置から口被覆位置まで移動させる際に、上記マスク本体の下縁に位置する芯材を下顎に係止させることができる。
【0026】
従って、上記マスク本体を上記降下位置と上記口被覆位置との間で繰り返し上下動させても、上記口被覆位置において、上記マスク本体の下縁を下顎に留めておくことができ、上記口被覆位置において、利用者の口を上記マスク本体によって確実に覆うことができる。
【0027】
この発明の態様として、上記耳掛け部は、上記マスク本体が上記口被覆位置で着用された状態において適合する有効長さよりも若干長く設定することが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、耳に掛けた状態の耳掛け部の張力を若干緩和できるため、口被覆位置と降下位置との間において上記マスク本体の上下動作を繰り返しても耳が痛くなることがなく、また、上記マスク本体をスムーズに上下動作をさせることができる。
【発明の効果】
【0029】
上記構成によれば、マスク本体を容易にかつ衛生的に着け外しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】
図1のA-A線矢視断面を拡大して模式的に示した断面図。
【
図3】(a)は
図1のB-B線に沿った要部の矢視拡大断面図、(b)は
図1の摘まみ部およびその周辺部の拡大図。
【
図4】(a)はマスク本体が口元の位置にある状態の正面図、(b)は同側面図。
【
図5】(a)はマスク本体が下顎の位置にある状態の正面図、(b)は同側面図。
【
図6】
図4(b)の要部を一部断面で示した芯材の作用説明図。
【
図7】(a)は変形例のマスクにおける摘まみ部を
図3(b)に対応して示す拡大図、(b)は変形例のマスクを
図5(a)の要部に対応して示す正面図、(c)は同じく
図4(a)の要部に対応して示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態のマスク1は、主に使い捨てマスクとして用いられ、例えば、昨今の新型コロナ感染症の感染拡大に対する予防対策として、飲食店においてマスクを持ち合わせていない客に対して店側がサービスの一環として無償で配布するマスクとして適用することができる。
【0032】
図1に示すように、マスク1は、マスク本体2と左右一対の耳掛け部3と(耳ひも部)と摘まみ部4と、芯材5とを備えている。
【0033】
マスク本体2は、口、鼻尖(鼻孔)およびこれらの周辺を覆うことが可能な大きさを有するシート状に形成され、未着用状態において正面視横長の長方形状に形成されている。
【0034】
図中、矢印Yは、マスク本体2の長手方向(左右方向)、矢印Xは、マスク本体2の短手方向(上下方向)を示し、さらに、矢印Yrはマスク本体2の右方向、矢印Ylはマスク本体2の左方向、矢印Xuはマスク本体2の上方向、矢印Xdはマスク本体2の下方向、矢印Zfはマスク本体2の正面側(前方側、すなわち着用時に表面側)、矢印Zrはマスク本体2の後背側(後方側、すなわち着用時に裏面側)を示す。
【0035】
マスク本体2は、不図示のマスク用シートを複数積層して成る多層式である。マスク用シートは、粉塵やウイルスの通過を阻止するフィルタ機能を有しており、例えば、不織布、ガーゼ、紙等の材料から成る通気性素材で形成されている。
【0036】
図1、
図2に示すように、マスク本体2は、長手方向に延在する折り目21が短手方向に互いに離間して複数(当例では正面部2f(着用時に表側となる面)側と背面部2r(着用時に裏側となる面)との各面に3つずつ)形成されている。
図1に示すように、折り目21は、マスク本体2の長手方向の略全長に亘って延在されている。これら折り目21によって、マスク本体2は、折り曲げられる。そして、折り目21によって折り曲げられたマスク本体2には、複数段(当例では3段)のプリーツ22(折り重なり部)が並設される。複数のプリーツ22は、何れもマスク本体2の長手方向の略全長に亘って互いに平行に延在されている。
【0037】
なお、
図1に示すように、マスク本体2はプリーツ22が形成された状態が維持されるように長手方向の両端部において複数の熱溶着部23において接合されている。マスク本体2を接合する手段としては、本実施形態のように熱溶着に限らず、超音波溶着、接着等の他の手段を採用してもよい。
【0038】
マスク本体2は、上述したように、短手方向に複数段のプリーツ22が形成されているため、上下方向に展開(伸長)して利用者の鼻から下顎までの広い範囲を覆うとともに、前方へドーム状に膨出し、利用者の口元を立体的に覆う。
【0039】
図1に示すように、摘まみ部4は、マスク本体2の正面部2fにおける、上縁2uの長手方向の中央部に、上縁2uに沿って配置された帯状の短片部材40によって形成されている。
図1、
図3(a)(b)に示すように、短片部材40の長手方向の一端側部位41(例えば、左側部位41)は、取付け手段としてのホッチキス42によってマスク本体2に対して正面側から取り付けられる。
【0040】
一方、同図に示すように、短片部材40の長手方向の他端側部位(4)(例えば、右側部位(4))は、利用者が指先(例えば、人先指と親指)で摘まむことが可能な摘まみ部4として形成されている(
図3(a)中の仮想線で示した摘まみ部4参照)。摘まみ部4は、短片部材40の長手方向の一端側部位41を介してマスク本体2に取り付けられており、マスク本体2に対して正面側(前方)へ突出可能に突片状に形成されている。
なお、摘まみ部4は、不使用時(すなわち、マスク本体2を上下動させない状態)においては、マスク本体2の正面側に倒伏した状態で配置される(
図3(a)中の実線で示した摘まみ部4参照)。
【0041】
摘まみ部4は、例えば、マスク会食において飲食物を口へ運ぶ際に、左右両側の耳掛け部3が耳に引っ掛けられた状態のまま指先で摘まみ、マスク本体2を
図4(a)(b)に示すような口元の位置Pu(口被覆位置)から
図5(a)(b)に示すような下顎の位置Pd(降下位置)まで一時的にずらすために用いられる。
【0042】
さらに、摘まみ部4は、マスク本体2を一時的に外した状態から着用した状態に戻す際に、左右両側の耳掛け部が耳に引っ掛けられた状態のまま指先で該摘まみ部4を摘まみ、マスク本体2を下顎の位置Pdから口元の位置Puまで持ち上げるために用いられる。
【0043】
帯状の短片部材40をマスク本体2に取り付ける取付け手段は、指先で摘まんで引っ張っても外れない取り付け強度を有していれば、留め具としてのホッチキス42に限らず、例えば、溶着(熱溶着、超音波溶着)、接着(接着剤、粘着テープによる接着)或いは縫合等の他の取付け手段を採用してもよい。さらに、摘まみ部4は、取付け手段として例えば、クリップ等の係止部材、面ファスナ、ホック或いはボタン等により、マスク本体2に対して着脱可能に取り付けてもよい。
【0044】
また、摘まみ部4は、利用者が指先で摘まむことが可能であれば、短片部材40の長手方向の左側部位41に限らず、例えば、長手方向の右側部位、或いは、中央部位が前方へ突出するように左右両端部位をマスク本体2に対して取り付けた構成としてもよい。さらに、摘まみ部4(短片部材40)は、利用者が指先で摘んでマスク本体2を上下動可能に前方へ突出する形状であれば、例えば、帯状(シート状)に限らず、紐状或いは立体形状等でもよく、また、摘まみ部4は、例えば、植物繊維、動物繊維、化学繊維、厚紙或いは金属等で形成してもよく、材質は特に限定しない。また、摘まみ部4(短片部材40)は、例えば、不織布、フエルト、織物或いは編物等で形成することができる。
【0045】
また、
図1に示すように、芯材5は、塑性変形可能な可撓性を有する長尺部材(線材)であり、マスク本体2の下縁2dの中央に長手方向に沿って配置され、
図2に示すように、マスク本体2を構成する不織布等のマスク用シート(図示省略)の層間に織り込まれた状態で備えている。
【0046】
本実施形態において芯材5は、帯状に形成されたアルミニウム製のワイヤーであるが、塑性変形可能な可撓性を有する部材であれば特に限定せず、例えば、アルミニウム以外の他の金属材料、樹脂材料、或いは厚紙等で形成してもよい。
【0047】
芯材5は、マスク本体2の下縁2dにおいて長手方向に延在するため、マスク本体2で利用者の口元に着用した状態において下顎に位置する。このため、芯材5を利用者の顔の側へ押し当てると下顎の形状に沿って変形され、その形状に保持される。すなわち、芯材5は、マスク本体2を利用者の口元に着用した状態において顎のラインに沿って係止される(
図6参照)。
【0048】
なお、図示省略するが、芯材は、マスク本体2の上縁2uの中央にも左右方向に沿って備えてもよい。この場合、芯材は、利用者の口元に着用した状態において、鼻筋を横切るように左右方向に延在する。そして、芯材は、鼻の形状に合うように変形させることで、マスク本体2が口元からずれ落ちないように保持するノーズクリップとして利用することができる。
なお、下顎の形状に沿って係止する本実施形態の芯材5は、ノーズクリップとして利用する芯材よりも長手方向に若干短く形成されている。
【0049】
図1に示すように、耳掛け部3は、紐状に形成され、マスク本体2に対して左右各側に一対を備えている。そして、紐状の耳掛け部3は、マスク本体2の左右各側において、一端部がマスク本体2の左右夫々に対応する側辺部2a,2bの上端に、他端部が側辺部2a,2bの下端に夫々背面側から溶着等により接合されている。
【0050】
これにより、左右一対の耳掛け部3は、左右対称形状に形成され、何れもマスク本体2の左右夫々に対応する側辺部2a,2bから耳に引っ掛け可能に左右各側へ環状に延出している。
なお、マスク1は、左右両側に紐状の耳掛け部3を備えた形態に限らず、例えば、図示省略するが、マスク本体2と左右両側の耳掛け部3とを含めた全体が1枚もののシート状部材で形成し、シート状部材における、耳掛け部3に相当する左右両側部位に、耳を掛けることが可能に開口する開口部が設けられた形態としてもよい。
【0051】
耳掛け部3は、伸縮性を有することに限定しないが、本実施形態においては、ゴムやポリウレタン等の伸縮性を有する素材により伸縮可能に形成されている。
【0052】
本実施形態の耳掛け部3(ゴム紐)は、マスク本体2が口元の位置で着用された状態において適合する有効長さよりも若干長く設定されている。換言すると、一般的な市販のマスクの耳掛け部の有効長さよりも若干長く設定されている。
【0053】
例えば、本実施形態のマスク1が子供(未就学児~中学生)用である場合は、該マスク1の耳掛け部3は、市販の女性用のマスクにおける耳掛け部の有効長さに設定されている。本実施形態のマスク1が女性用である場合は、該マスク1の耳掛け部3は、市販の男性用のマスクにおける耳掛け部の有効長さに設定されている。
【0054】
詳しくは、本実施形態のマスク1は、子供用、女性用の何れの場合においても夫々に対応する市販のマスクに対して、耳掛け部の有効長さが約101パーセント~110パーセントの割合で長尺となるように設定されている。
【0055】
より詳しくは、市販の子供用のマスクにおける耳掛け部の有効長さが約23mm~30mmであるのに対して、本実施形態の子供用のマスク1における耳掛け部3の有効長さは、約23.2~33mmに設定されている。
同様に、市販の女性用のマスクにおける耳掛け部の有効長さが約30mmであるのに対して、本実施形態の女性用のマスク1における耳掛け部3の有効長さは、約30.3~33mmに設定されている。
【0056】
一方、本実施形態のマスク1が男性用である場合は、該マスク1の耳掛け部3は、子供用のマスク1或いは女性用のマスク1において耳掛け部3の長さを上述したように長尺化した割合(約101パーセント~110パーセント)と略同じ割合で市販の男性用のマスクにおける耳掛け部の長さよりも長尺化している。
【0057】
詳しくは、市販の男性用のマスクにおける耳掛け部の有効長さが約32~35mmであるのに対して、本実施形態の男性用のマスク1における耳掛け部3の有効長さは、約32.3~38.5mmに設定されている。
【0058】
このように耳掛け部3の有効長さを若干長く設定することで、耳掛け部3が耳に引っ掛けられた際に耳に加わる張力を緩和することができる。よって、左右両側の耳掛け部3が耳に引っ掛けられた状態のまま摘まみ部4を摘まんでマスク本体2を口元の位置Puと下顎の位置Pdとの間で上下動させても耳が痛くなることがない。
【0059】
なお、耳掛け部3が耳に引っ掛けられた際に耳に加わる張力を緩和する手段として、上述したように、耳掛け部の有効長さを若干長く設定することに限らず、耳掛け部の伸度(伸縮性)が若干(2パーセント~10パーセント程度)高くなるように設定してもよい。
【0060】
図1に示すように、上述した本実施形態のマスク1は、利用者の顔の口、鼻孔およびこれらの周辺を覆う口元の位置Pu(口被覆位置)(
図4(a)(b)参照)において着用されるシート状に形成されたマスク本体2と、該マスク本体2の左右各側の側辺部2a,2b(側縁)から耳に引っ掛け可能に左右各側へ延出する一対の耳掛け部3とを備え、マスク本体2の正面部2fに、口元の位置Puと、下顎の位置Pd(降下位置)(
図5(a)(b)参照)との間でマスク本体2を移動可能に摘まむ摘まみ部4が設けられた形態としている。
【0061】
上記構成によれば、マスク本体2を直接、摘まむよりも摘まみ部4の方が摘み易いため、摘まみ部4を摘んだ状態でマスク本体2を容易に移動させることができる。
【0062】
さらに、マスク本体2を口元の位置Puと下顎の位置Pdとの間で上下動させる際に、マスク本体2自体を正面側から手で直接、掴む必要がなく、摘まみ部4を介してマスク本体2を上下動させることができるため、マスク本体2を衛生的に移動させることができる。
従って、マスク本体2を容易にかつ衛生的に着け外しすることができる。
【0063】
その他にも、マスク1を一時的に外す際に、摘まみ部4を利用することで、左右両側の耳掛け部3を耳に掛けたままマスク本体2を容易にかつ衛生的に口元よりも下方へずらすことが可能となる。このため、利用者は、例えば、飲食物を口へ運ぶ際に、マスク1の一部を保持しておく必要がなく、両手を使って飲食することができる。
【0064】
詳述すると、従来、例えば、マスク会食において利用者が飲食物を口へ運ぶ際に、利用者がマスクを一時的に取り外す場合、利用者は、マスクの左右何れか一方の耳掛け部を一方の手の指先で摘まんで耳から外す。このとき、マスクは、他方の耳掛け部のみが耳に掛かった状態となり、一方の耳掛け部が垂下した状態となる。利用者は、垂下した状態の一方の耳掛け部が邪魔にならないように該一方の耳掛け部3を一方の手の指先で摘まんで保持しつつ他方の手で箸等を用いて飲食物を口へ運んでいた。
【0065】
しかし、このように一方の手で一方の耳掛け部3を保持している間、利用者は、例えば、一方の手で箸を持ち、他方の手で茶碗を持ちながら、或いは、一方の手でナイフを持ち、他方の手でフォークを持ちながら飲食するように両手を用いて飲食することが制限される。
【0066】
これに対して、マスク1は、下顎の位置Pdへ降下させた状態においても、左右両側の耳掛け部3が耳に掛けられた状態であるとともに、マスク本体2を下顎等に当接(フィット)した状態として安定して下顎の位置Pdに留めておくことができる。
【0067】
従って、利用者は、口元に着用したマスク1を一時的に取り外しても左右何れの側の手もマスク1を保持する必要がないため、両手を使って飲食することができる。
【0068】
この発明の態様として、
図1に示すように、摘まみ部4は、正面部2fにおける、上縁2uの左右方向の中央部に設けられたものである。
【0069】
上記構成によれば、正面部2fにおける、上縁2uの長手方向の中央に設けた摘まみ部4を摘んでマスク本体2を上下動させることで、マスク本体2を口元の位置Puと下顎の位置Pdとの間でスムーズに移動させることができる。
【0070】
詳しくは、正面部2fの中央部に左右方向に延びるプリーツ22が複数設けられた構成においては、正面部2fの中央部は周縁よりも伸縮性が高い伸縮部となる。例えば、このような中央部に摘まみ部4を設け、摘まみ部4を手で摘んで移動させようとした場合、中央部が伸縮することで、マスク本体2のスムーズな移動が阻害されるおそれがある。
【0071】
これに対して、上述したように、摘まみ部4を正面部2fの中央部を避けて上縁2uに設けることで、マスク本体2を口元の位置Puと下顎の位置Pdとの間でスムーズに移動させることができる。
【0072】
その他にも、摘まみ部4は、正面部2fにおける、中央部ではなく外周縁側に位置する上縁2uに設けることで、マスク本体2自体が有するフィルタ機能が摘まみ部4(短片部材40)によって阻害されることを回避できる。
【0073】
この発明の態様として、
図1、
図2に示すように、マスク本体2の下縁2dの中央に左右方向に沿って、顔の表面形状に沿って塑性変形可能な可撓性を有する芯材5が設けられたものである。
【0074】
上記構成によれば、マスク本体2を下顎の位置Pdと口元の位置Puとの間で繰り返し上下動させても、口元の位置Puにおいて、芯材5が下顎に係止されることでマスク本体2の下縁2dを下顎に留めておくことができ、口元の位置Puにおいて、利用者の口をマスク本体2によって確実に覆うことができる。
【0075】
詳しくは、マスク本体2は、下顎の位置Pdまで下げた状態においては、上下に収縮した状態となることがある。このため、マスク本体2は、下顎の位置Pdから口元の位置Puまで移動する際に、上下に収縮した状態のまま移動されることがあり、その場合、マスク本体2によって口が適切に覆われないことになる。
【0076】
これに対して、例えば、マスク本体2が口元の位置Puにある状態において、マスク本体2の下縁2dに有する芯材5は、利用者の下顎に左右方向に沿って(すなわち、顎のラインに沿って)配置される。このため、芯材5を利用者の顎のラインに沿って塑性変形させておくことで、マスク本体2を下顎の位置Pdから口元の位置Puまで移動させた際に、
図6に示すように、マスク本体2の下縁2dに位置する芯材5を下顎に係止させることができる。
【0077】
よって、マスク本体2を下顎の位置Pdから口元の位置Puまで上方へ移動させる際に、マスク本体2の下縁2dが意に反して口元に達するまで上方へ移動することを阻止できる。さらに、マスク本体2の下縁2dに位置する芯材5を下顎に係止させながら、マスク本体2を上方へ移動させることで、その際のテンションを利用して、上下方向に収縮した状態のマスク本体2を上下方向に伸長(展開)することができる。
従って、口元の位置Puにおいて利用者の口をマスク本体2によって確実に覆うことができる。
【0078】
この発明の態様として、耳掛け部3は、マスク本体2が口元の位置Puにおいて着用された状態において適合する有効長さよりも若干長く設定されたものである。
【0079】
上記構成によれば、耳に掛けた状態の耳掛け部3の張力を若干緩和できるため、口元の位置Puと下顎の位置Pdとの間においてマスク本体2の上下動作を繰り返しても耳が痛くなることがなく、また、マスク本体2をスムーズに上下動作させることができる。
【0080】
以下、本実施形態の変形例に係るマスク1’について説明するが、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図7(a)に示すように、本実施形態の変形例に係るマスク1’は、マスク本体2の上縁2uの左右方向の中央部に、該マスク本体2から上方へ延出する摘まみ部4’を備えた構成としている。
【0082】
上記構成によれば、利用者は、摘まみ部4’を確実に摘んでマスク本体2を下顎の位置Pd(
図7(b)参照)から口元の位置Pu(
図7(c)参照)へと容易に移動させることができる。
【0083】
詳しくは、マスク本体2を下顎の位置Pdまで移動させた状態においては、
図7(b)に示すように、マスク本体2は、下顎の形状にフィットするように、上下方向に収縮(弛緩)した状態で着用される。このため、摘まみ部をマスク本体2自体に設けた場合には、該摘まみ部が収縮したマスク本体2の内部に埋もれ、摘まみ部を適切に指先で摘まむことができないことが懸念される。
【0084】
これに対して本実施形態においては、上述したように、摘まみ部4’をマスク本体2の正面部2fにおける、上縁2uの左右方向の中央部に、該マスク本体2から上方へ延出するように備えることで、該摘まみ部4’が収縮したマスク本体2の内部に埋もれることがない(
図7(b)参照)。
【0085】
従って、摘まみ部4’を指先で確実に摘んでマスク本体2を下顎の位置Pdから口元の位置Puへと容易に移動させることができる。
【0086】
また、
図7(c)に示すように、マスク本体2が口元の位置Puに位置する状態において、摘まみ部4’は、マスク本体2の上縁2uの中央部から上方へ延出するが、利用者の鼻筋に沿って配置されるため、利用者が摘まみ部4’を目障りに感じることがない。
【0087】
上述した変形例のように、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、本発明のマスクは、摘まみ部を備えた構成であれば、使い捨てマスクに適用するに限らず、洗って再利用可能なマスクに適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,1’…マスク
2…マスク本体
2f…マスク本体の正面部
2u…マスク本体の上縁
2d…マスク本体の下縁
2a,2b…マスク本体の側辺部(側縁)
3…一対の耳掛け部
4,4’…摘まみ部
5…芯材
Pu…口元の位置(口被覆位置)
Pd…下顎の位置(降下位置)