(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165701
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】下部走行体
(51)【国際特許分類】
B66C 23/78 20060101AFI20221025BHJP
E02F 9/08 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B66C23/78 E
E02F9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071160
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】阿佐 建吾
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205FA06
3F205FA07
(57)【要約】
【課題】カーボディに対するアームの回転を制限するための装置を簡素に構成し、この装置の部品数を抑制する。
【解決手段】ジャッキ位置決め装置50は、リンク53と、アーム30に設けられたアーム側ブラケット61と、固定部材71と、を備える。リンク53は、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。アーム30が第1状態のとき、固定部材71は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するようにリンク53およびアーム側ブラケット61に取り付けられる。アーム30が第2状態のとき、リンク53は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するようにアーム30の側板(アーム側板31)に接触することが可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボディと、
前記カーボディに回転可能に取り付けられたアームを有するジャッキ装置と、
前記カーボディに対する前記アームの位置決めを行うジャッキ位置決め装置と、
を備え、
前記カーボディは、
カーボディ上部と、
前記カーボディ上部よりも下側に配置されたカーボディ下部と、
を備え、
前記アームは、前記カーボディ上部と前記カーボディ下部との間に配置され、第1状態と第2状態とに可変に前記カーボディに回転可能に取り付けられ、
前記第1状態および前記第2状態のうち一方は、前記カーボディに対して張り出された張出状態であり、
前記第1状態および前記第2状態のうち、前記張出状態ではない方は、前記カーボディに対して格納された格納状態であり、
前記ジャッキ位置決め装置は、
前記カーボディに回転可能に取り付けられたリンクと、
前記アームに設けられたアーム側ブラケットと、
前記リンクおよび前記アーム側ブラケットに取り付け可能な固定部材と、
を備え、
前記アームが前記第1状態のとき、前記固定部材は、前記カーボディに対する前記アームの回転を制限するように前記リンクおよび前記アーム側ブラケットに取り付けられ、
前記アームが前記第2状態のとき、前記リンクは、前記カーボディに対する前記アームの回転を制限するように前記アームの側板に接触することが可能に構成される、
下部走行体。
【請求項2】
請求項1に記載の下部走行体であって、
前記アームの前記側板および前記リンクのうち、一方は、挟み部を備え、
前記アームの前記側板および前記リンクのうち、前記挟み部を有する方とは異なる方は、被挟み部を備え、
前記挟み部は、前記アームが第2状態のときに前記カーボディに対する前記アームの回転を制限するように前記被挟み部を挟むように配置可能に構成される、
下部走行体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の下部走行体であって、
前記リンクは、前記アームが第2状態のときに、制限位置と制限解除位置とに可変に前記カーボディに対して回転可能に取り付けられ、
前記制限位置は、前記カーボディに対する前記アームの回転を制限する位置であり、
前記制限解除位置は、前記カーボディに対する前記アームの回転の制限を解除する位置である、
下部走行体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の下部走行体であって、
前記カーボディに回転可能に前記リンクを接続するリンク回転軸部を備え、
前記リンク回転軸部は、
前記カーボディと前記リンクとを接続する部分であるリンク回転軸部本体部と、
前記リンク回転軸部本体部に設けられ、前記固定部材を格納可能に構成される固定部材格納部と、
を備える、
下部走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキ装置を備える下部走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の下部走行体が記載されている(同文献の
図2を参照)。この下部走行体は、カーボディ(同文献におけるトラックフレーム)を持ち上げるためのジャッキ装置(同文献におけるビームおよびジャッキシリンダ)を備えている(同文献の
図2~
図4などを参照)。ジャッキ装置は、アーム(同文献におけるビーム)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジャッキ装置のアームは、カーボディに格納された格納状態と、カーボディから張り出された張出状態と、に変化させられる場合がある。この場合、格納状態および張出状態のそれぞれで、カーボディに対するアームの回転の制限(位置決め)が行われる必要がある。格納状態のアームの回転を制限する部材と、張出状態のアームの回転を制限する部材と、が別々に設けられると、カーボディに対するアームの回転の制限を行うための部品数が増大する(詳細は後述)。カーボディに対するアームの回転の制限を行うための装置をできるだけ簡素に構成し、この装置の部品数をできるだけ少なくすることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、カーボディに対するアームの回転を制限するための装置を簡素に構成し、この装置の部品数を抑制できる下部走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下部走行体は、カーボディと、ジャッキ装置と、ジャッキ位置決め装置と、を備える。前記ジャッキ装置は、前記カーボディに回転可能に取り付けられたアームを有する。前記ジャッキ位置決め装置は、前記カーボディに対する前記アームの位置決めを行う。前記カーボディは、カーボディ上部と、カーボディ下部と、を備える。前記カーボディ下部は、前記カーボディ上部よりも下側に配置される。前記アームは、前記カーボディ上部と前記カーボディ下部との間に配置され、第1状態と第2状態とに可変に前記カーボディに回転可能に取り付けられる。前記第1状態および前記第2状態のうち一方は、前記カーボディに対して張り出された張出状態である。前記第1状態および前記第2状態のうち、前記張出状態ではない方は、前記カーボディに対して格納された格納状態である。前記ジャッキ位置決め装置は、リンクと、アーム側ブラケットと、固定部材と、を備える。前記リンクは、前記カーボディに回転可能に取り付けられる。前記アーム側ブラケットは、前記アームに設けられる。前記固定部材は、前記リンクおよび前記アーム側ブラケットに取り付け可能である。前記アームが前記第1状態のとき、前記固定部材は、前記カーボディに対する前記アームの回転を制限するように前記リンクおよび前記アーム側ブラケットに取り付けられる。前記アームが前記第2状態のとき、前記リンクは、前記カーボディに対する前記アームの回転を制限するように前記アームの側板に接触することが可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、カーボディに対するアームの回転を制限するための装置を簡素に構成することができ、この装置の部品数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す格納状態のアーム30などを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す格納状態のアーム30をカーボディ前後方向外側Xoから見た図であり、
図1のF4矢視図である。
【
図5】
図4に示すジャッキ位置決め装置50をカーボディ前後方向Xから見た図である。
【
図6】
図1に示す張出状態のアーム30などを示す斜視図である。
【
図8】
図1に示す張出状態のアーム30をカーボディ横方向Yから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図9を参照して、
図1に示す下部走行体1について説明する。
【0010】
下部走行体1は、作業機械を走行させる。下部走行体1を有する作業機械は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械などであり、具体的には例えばクレーンなどである。下部走行体1は、クローラ1cと、カーボディ10と、ジャッキ装置20と、ジャッキ位置決め装置50(
図2参照)と、を備える。
【0011】
クローラ1cは、下部走行体1を走行させる。クローラ1cは、カーボディ横方向Yの両側に1つずつ(左右に)設けられる。例えば、クローラ1cは、カーボディ10に着脱可能である。なお、「カーボディ横方向Y」などの方向の詳細は後述する。
【0012】
カーボディ10は、下部走行体1の本体部分である。カーボディ10は、左右のクローラ1c・1cが取り付けられるものである。カーボディ10は、カーボディ本体10aと、アクスル10bと、
図2に示すカーボディ側部11と、カーボディ上部13と、カーボディ下部15と、補強ブラケット17と、を備える。
【0013】
(方向)
下部走行体1に関する方向であって、下部走行体1が水平面に置かれたとしたときに鉛直方向と一致(または略一致)する方向を、上下方向Z(上側Z1、下側Z2)とする。カーボディ側部11に直交(または略直交)する方向を、カーボディ前後方向Xとする。カーボディ前後方向Xにおいて、
図6に示す張出状態のアーム30(後述)がカーボディ側部11に対して突出する側を、カーボディ前後方向外側Xoとし、その逆側をカーボディ前後方向内側Xiとする。
図2に示すように、カーボディ前後方向Xおよび上下方向Zのそれぞれに交差(例えば直交)する方向を、カーボディ横方向Yとする。カーボディ前後方向X、カーボディ横方向Y、および上下方向Zは、互いに直交してもよく、略直交してもよい。
【0014】
カーボディ本体10aは、
図1に示すように、カーボディ10の中央部に設けられる。カーボディ本体10aは、図示しない旋回ベアリングを介して、図示しない上部旋回体が取り付けられる部分である。アクスル10bは、カーボディ本体10aからカーボディ横方向Y外側の両側に突出するように設けられる部分を有する。アクスル10bには、クローラ1cが取り付けられる。カーボディ本体10aとアクスル10bとは、一体的に設けられてもよく、別体(組立可能、接続可能)でもよい。
【0015】
カーボディ側部11は、
図2に示すように、アーム30が格納状態のときに、アーム30と対向する部分である。カーボディ側部11は、カーボディ10の側面(水平方向または略水平方向を向いた面)となる部分である。例えば、カーボディ側部11は、板状(側板)などである。カーボディ側部11は、カーボディ横方向Yおよび上下方向Zに延びるように設けられる。
図1に示すように、カーボディ側部11は、カーボディ10のカーボディ前後方向Xにおける両側(前側部分および後側部分)に設けられる。カーボディ側部11は、カーボディ本体10aおよびアクスル10bの、少なくともいずれかに設けられる(カーボディ上部13およびカーボディ下部15も同様)。
【0016】
カーボディ上部13は、
図2に示すように、カーボディ10の上側Z1の部分である。例えば、カーボディ上部13は、板状(上板、天板)などである。カーボディ上部13は、カーボディ前後方向Xおよびカーボディ横方向Yに延びるように設けられる。
【0017】
カーボディ下部15は、カーボディ10の下側Z2の部分である。カーボディ下部15は、カーボディ上部13よりも下側Z2に配置される。例えば、カーボディ下部15は、板状(下板、底板)などである。例えば、カーボディ下部15は、カーボディ前後方向Xおよびカーボディ横方向Yに延びるように設けられる。
【0018】
補強ブラケット17は、
図4に示すように、アーム30とカーボディ上部13との隙間(さらに詳しくは上下方向Zの隙間)を埋めるように配置される。補強ブラケット17は、カーボディ10とアーム30との接続部分を補強する。例えば、補強ブラケット17は、カーボディ上部13から下側Z2に突出するように設けられる。補強ブラケット17は、カーボディ上部13に固定される。補強ブラケット17は、カーボディ下部15から上側Z1に突出するように設けられてもよく、例えばカーボディ下部15に固定されてもよい(図示なし)。補強ブラケット17がカーボディ下部15から上側Z1に突出する場合に比べ、補強ブラケット17がカーボディ上部13から下側Z2に突出する場合は、シリンダ装置40を短くすることができる。補強ブラケット17は、アーム30よりも上側Z1および下側Z2のそれぞれに設けられてもよい。
【0019】
この補強ブラケット17は、
図2に示すように、カーボディ側部11から、カーボディ前後方向外側Xoに突出するように設けられる。補強ブラケット17は、カーボディ側部11に固定される。補強ブラケット17は、補強ブラケット17とカーボディ下部15との間に隙間(さらに詳しくは上下方向Zの隙間)が設けられるように配置される。例えば、補強ブラケット17は、カーボディ前後方向Xから見て四角形または略四角形などである(
図4参照)。例えば、補強ブラケット17は、カーボディ横方向Yから見て四角形または略四角形などである。例えば、補強ブラケット17は、上下方向Zから見て、四角形でもよく、円筒形でもよく、半円筒形でもよく、これらに近い形状(例えば略四角形など)でもよい。補強ブラケット17の大きさおよび強度などは、カーボディ10およびアーム30のそれぞれの上下方向Zの長さ、下部走行体1および上部旋回体(図示なし)の質量、ならびにアーム30およびその周辺部に必要な強度などの条件に応じて設定される。また、これらの条件によっては、補強ブラケット17は、設けられなくてもよい。
【0020】
ジャッキ装置20は、
図1に示すように、地面に対して下部走行体1を持ち上げる装置である。例えば、ジャッキ装置20は、カーボディ10に対してクローラ1cを着脱する作業などに用いられる。ジャッキ装置20は、複数(例えば4つ)設けられる。以下では、1つのジャッキ装置20について説明する。ジャッキ装置20は、アーム30と、シリンダ装置40と、を備える。
【0021】
アーム30は、カーボディ10とシリンダ装置40とをつなぐ構造物である。アーム30は、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。
図2に示すように、アーム30は、カーボディ上部13とカーボディ下部15とに取り付けられる。例えば、アーム30は、補強ブラケット17を介してカーボディ上部13に取り付けられてもよく、補強ブラケット17を介してカーボディ下部15に取り付けられてもよい(図示なし)。アーム30は、カーボディ10に対して水平方向に回転可能である。
図1に示すように、カーボディ10に対するアーム30の回転軸をアーム回転軸30aとする。アーム回転軸30aが延びる方向は、上下方向Zまたは略上下方向Zである(
図4参照)。
図2に示すように、アーム30のうち、カーボディ10に取り付けられる側の部分をアーム基端部30bとし、カーボディ10への取付部分とは反対側の部分をアーム先端部30tとする。アーム回転軸30aに交差する方向であって、アーム基端部30bとアーム先端部30tとを結ぶ方向を、アーム前後方向Aとする。
【0022】
このアーム30は、
図2に示す格納状態と、
図6に示す張出状態と、に可変になるように、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。
図2に示すように、格納状態は、カーボディ10に対してアーム30が格納された状態であり、さらに詳しくは、カーボディ側部11とアーム30の側板(後述するアーム側板31)とが平行または略平行に配置された状態である。格納状態の「状態」とは、カーボディ10に対するアーム30の配置(姿勢)である(張出状態、第1状態、および第2状態についても同様)。
図6に示すように、張出状態は、カーボディ10に対してアーム30が張り出された状態であり、さらに詳しくは、カーボディ側部11からカーボディ前後方向外側Xoに突出するようにアーム30が張り出された状態である。
【0023】
このアーム30は、
図2に示す第1状態と、
図6に示す第2状態と、に可変になるように、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。
図2に示すように、第1状態は、固定部材71(後述)によりカーボディ10に対するアーム30の回転を制限可能な、アーム30の状態である。
図6に示すように、第2状態は、リンク53(後述)がアーム30の側板(後述するアーム側板31)に接触することにより、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限可能なアーム30の状態である。第1状態および第2状態のうち、一方は張出状態であり、張出状態でない方は格納状態である。以下では、主に、
図2に示すように格納状態が第1状態であり、
図6に示すように張出状態が第2状態である場合について説明する。
【0024】
このアーム30は、
図4に示すように、カーボディ上部13とカーボディ下部15との間(上下方向Zにおける間)に配置される。例えば、アーム30は、補強ブラケット17とカーボディ下部15との間(上下方向Zにおける間)に配置される。さらに詳しくは、アーム基端部30bは、カーボディ上部13とカーボディ下部15との間に配置される。例えば、アーム基端部30bは、補強ブラケット17とカーボディ下部15との間に配置される。アーム30は、後述するアーム側板31と直交する方向から見たとき、
図4に示す例では略長方形などであり、略三角形などでもよい。アーム30は、箱型(中空)構造でもよい。アーム30は、アーム側板31と、アーム側板連結部33(
図2参照)と、を備える。
【0025】
アーム側板31(アーム30の側板)は、
図2に示すように、アーム30の幅方向の外側部分に設けられる。アーム側板31は、板状である。アーム側板31は、上下方向Zおよびアーム前後方向Aに延びるように設けられる。アーム側板31は、複数(例えば2枚)設けられる。複数のアーム側板31どうしは平行(または略平行)に配置される。2つのアーム側板31・31のうち、アーム30が格納状態のときに、カーボディ側部11に近い方を第1アーム側板31aとし、カーボディ側部11から遠い方を第2アーム側板31bとする。
【0026】
アーム側板連結部33は、複数のアーム側板31・31どうしをつなぐように設けられる。アーム側板連結部33は、複数のアーム側板31・31のそれぞれに固定される。アーム側板連結部33は、例えば板状部材を備えてもよく、ブロック状部材などを備えてもよい。
【0027】
シリンダ装置40(トランスリフタ)(
図1参照)は、伸縮シリンダを備える装置である。シリンダ装置40は、格納された状態(
図4参照)と使用可能な状態(
図1において実線で示すシリンダ装置40を参照)とに可変に、アーム30に回転可能に取り付けられる(詳細は後述)。例えば、
図1に示すように、シリンダ装置40は、筒状のシリンダチューブ40aと、シリンダロッド40bと、フロート40cと、を備える。シリンダロッド40bは、シリンダチューブ40aに差し込まれた部材であり、シリンダチューブ40aの長手方向に移動する。フロート40cは、例えば敷板などを介して、地面に接触するものである。
【0028】
ジャッキ位置決め装置50(トランスリフタ位置決め装置)は、
図2に示すように、カーボディ10に対するアーム30の位置決めを行う。その結果、ジャッキ位置決め装置50は、カーボディ10に対するジャッキ装置20の位置決めを行う。ジャッキ位置決め装置50は、カーボディ10およびアーム30に設けられる。ジャッキ位置決め装置50は、リンク取付部51と、リンク53と、リンク回転軸部55と、アーム側ブラケット61と、アーム側接触部63と、固定部材71と、を備える。
【0029】
リンク取付部51は、
図3に示すように、リンク53が取り付けられる部分(ブラケット)である。リンク取付部51は、カーボディ10に固定される。例えば、リンク取付部51は、カーボディ側部11に固定される。リンク取付部51は、カーボディ10からカーボディ前後方向外側Xoに突出するように設けられる。リンク取付部51は、例えば板状などである。リンク取付部51は、リンク取付部本体51aと、リンク回転制限部51cと、を備える。リンク取付部本体51aは、リンク取付部51の本体部分であり、例えば板状などである。例えば、リンク取付部本体51aは、上下方向Zおよびカーボディ前後方向Xに延びるように設けられる。リンク回転制限部51cは、リンク取付部51に対する(カーボディ10に対する)リンク53の回転を制限する。
図8に示すように、リンク回転制限部51cは、リンク53が制限位置(後述)のときに、リンク取付部51に対してリンク53が回転することを制限し、リンク取付部51を下側Z2から支持する。例えば、リンク回転制限部51cは、リンク取付部本体51aからカーボディ横方向Yに突出するように設けられる。リンク回転制限部51cは、リンク取付部51に設けられなくてもよく、例えばアーム30に設けられてもよい。
【0030】
リンク53は、
図2に示すように、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。リンク53は、カーボディ10に対して例えば上下方向Zに回転可能である(
図2および
図6参照)。リンク53は、例えばリンク取付部51を介してカーボディ10に取り付けられる。
図6に示すように、リンク53は、第2状態(例えば張出状態)のときに、制限位置と、制限解除位置(
図6において二点鎖線で示すリンク53を参照)と、に可変となるように、カーボディ10に対して回転可能である(各位置の詳細は後述)。例えば、リンク53は、上下方向Zおよびカーボディ前後方向Xに回転可能である(
図2および
図6参照)。
図3に示すように、リンク53は、リンク本体53aと、リンク側固定部材取付部53cと、リンク側接触部53eと、を備える。
【0031】
リンク本体53aは、リンク53の本体部分である。例えば、リンク本体53aは、リンク板53a1と、リンク板連結部53a2と、を備える。リンク板53a1は、板状部材である。リンク板53a1は、2枚設けられる。2枚のリンク板53a1・53a1は、互いに平行(または略平行)に配置される。例えば、リンク板53a1は、上下方向Zおよびカーボディ前後方向Xに延びるように設けられる。リンク板連結部53a2は、2枚のリンク板53a1・53a1どうしを連結し、互いに固定する。リンク板連結部53a2は、板状でもよく、ブロック状などでもよい。
【0032】
リンク側固定部材取付部53cは、
図5に示すように、アーム30が第1状態(例えば格納状態)のときに固定部材71が取り付けられる部分である。リンク側固定部材取付部53cは、リンク本体53aに設けられる(例えば形成される)。リンク側固定部材取付部53cは、固定部材71を取り付け可能な孔(例えばピン孔)などである。
【0033】
リンク側接触部53eは、
図6に示すように、アーム30が第2状態(例えば張出状態)のときに、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するように、アーム側板31に接触することが可能な部分である。例えば、リンク側接触部53eは、リンク板53a1の一部である。例えば、
図9に示すように、リンク側接触部53eは、挟み部53e1を構成する。挟み部53e1は、後述する被挟み部63a(具体的にはアーム側板31)を挟むように配置可能に構成される。例えば、リンク側接触部53eは、2枚のリンク板53a1・53a1の面であって、2枚のリンク板53a1・53a1が互いに対向する面(内側の面)である。
【0034】
リンク回転軸部55は、
図5に示すように、カーボディ10に対するリンク取付部51の回転軸となる部分である。リンク回転軸部55は、リンク取付部51、およびリンク本体53a(さらに詳しくは2つのリンク板53a1・53a1)に取り付けられる。例えば、リンク回転軸部55は、円柱状または円筒状の部材(具体的にはピン)である。例えば、リンク回転軸部55は、リンク取付部51およびリンク本体53aのそれぞれに設けられたピン孔に差し込まれる。
図3に示すように、リンク取付部51およびリンク本体53aからリンク回転軸部55が抜けることを防ぐための抜け止め部材(例えば抜け止めピン)が、リンク回転軸部55に取り付けられてもよい。例えば、リンク回転軸部55は、リンク回転軸部本体部55aと、固定部材格納部55cと、を備える。リンク回転軸部本体部55aは、カーボディ10とリンク53とを接続する部分である。リンク回転軸部本体部55aは、円柱状または円筒状である。例えば、リンク回転軸部本体部55aは、リンク取付部51とリンク53とに差し込まれる。
【0035】
固定部材格納部55cは、
図7に示すように、固定部材71を格納可能に構成される。固定部材格納部55cは、リンク回転軸部本体部55aに設けられる(例えば固定される)。固定部材格納部55cは、リンク回転軸部本体部55aの長手方向における端部に設けられる。固定部材格納部55cは、リンク回転軸部本体部55aの長手方向における端部よりも、リンク回転軸部本体部55aの長手方向における外側に配置される。固定部材格納部55cは、2枚のリンク板53a1・53a1が対向する方向において、リンク53よりも外側に配置される。固定部材格納部55cは、固定部材71を格納可能(例えば保持可能、装着可能など)な構造を有する。例えば、固定部材71がピンである場合、固定部材格納部55cは、固定部材71を差し込み可能な孔を備えてもよい。固定部材格納部55cは、リンク回転軸部55の着脱を容易にするための把手として用いられてもよい。
【0036】
アーム側ブラケット61は、
図3に示すように、アーム30が第1状態(例えば格納状態)のときに固定部材71が取り付けられる部分である。アーム側ブラケット61は、アーム30に設けられ、アーム30に例えば固定される。アーム側ブラケット61は、アーム側板31に設けられてもよく、アーム側板連結部33に設けられてもよい。アーム側ブラケット61は、例えば2つのアーム側板31・31の一方に設けられてもよく、両方に設けられてもよい(図示なし)。
図3に示す例では、アーム側ブラケット61は、第1アーム側板31aに設けられる。アーム側ブラケット61は、2つのアーム側板31・31の間に配置されてもよい。アーム側ブラケット61は、アーム30が格納状態のときに、アーム側板31からカーボディ前後方向Xに突出するように配置されてもよい。具体的には例えば、アーム側ブラケット61は、第1アーム側板31aからカーボディ前後方向外側Xoに突出してもよく、第2アーム側板31bからカーボディ前後方向内側Xiに突出してもよい。アーム側ブラケット61は、例えば板状などである。アーム側ブラケット61は、アーム側ブラケット本体部61aと、アーム側固定部材取付部61cと、を備える。アーム側ブラケット本体部61aは、アーム側ブラケット61の本体部であり、例えば板状などである。
【0037】
アーム側固定部材取付部61cは、アーム30が第1状態(例えば格納状態)のときに固定部材71が取り付けられる部分である。アーム側固定部材取付部61cは、アーム側ブラケット本体部61aに設けられる(例えば形成される)。固定部材71が円柱または円筒状部材(ピン)である場合は、アーム側固定部材取付部61cは、アーム側ブラケット本体部61aに形成された孔(ピン孔)などである。アーム側固定部材取付部61cは、円形の孔でもよく、上下方向Zに長い長孔でもよい。アーム側固定部材取付部61cが上下方向Zに長い長孔である場合、リンク側固定部材取付部53c(
図5参照)とアーム側固定部材取付部61cとの位置が上下方向Zにずれていても、これらに固定部材71を容易に差し込むことができる。
【0038】
アーム側接触部63は、
図6に示すように、アーム30が第2状態(例えば張出状態)のときに、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するように、リンク側接触部53eに接触する。アーム側接触部63は、アーム側板31の一部である(
図2参照)。例えば、アーム側接触部63は、アーム側板31のアーム基端部30bに設けられる。
図4に示すように、例えば、アーム側接触部63は、アーム側板31の上下方向Zにおける中央部に設けられてもよい。
図4に示す例では、アーム側接触部63は、アーム回転軸30aよりもアーム先端部30t側に配置される。
図9に示すように、アーム側接触部63は、被挟み部63aを備える。
【0039】
被挟み部63aは、挟み部53e1に挟まれることが可能な部分である。
図7に示すように、挟み部53e1は、アーム30が第2状態のときにカーボディ10に対するアーム30の回転を制限するように、被挟み部63aを挟むように配置される。
図9に示す例では、被挟み部63aはアーム側板31に設けられ、挟み部53e1はリンク53に設けられる。具体的には例えば、被挟み部63aは、アーム側板31の厚さ方向を向く、アーム側板31の両面である。挟み部53e1は、2枚のリンク板53a1・53a1の内側の面(互いに対向する面)である。なお、被挟み部63aがリンク53に設けられ、挟み部53e1がアーム側板31に設けられてもよい(図示なし)。この場合、例えば、
図3に示すアーム30の幅方向片側のアーム側板31(例えば第2アーム側板31b)が複数枚の板を有し、リンク53のリンク板53a1が1枚のみ設けられてもよい。
【0040】
固定部材71は、
図4に示すように、アーム30が第1状態(例えば格納状態)のときにカーボディ10に対するアーム30の回転を制限する部材である。固定部材71は、リンク53およびアーム側ブラケット61に取り付け(例えば差し込み)可能である。
図5に示すように、固定部材71は、リンク側固定部材取付部53cおよびアーム側固定部材取付部61cに取り付け(例えば差し込み)可能である。固定部材71は、例えば円柱状または円筒状の部材(ピン)である。
図2に示すように、アーム30が第1状態のとき、固定部材71の中心軸の方向は、例えばカーボディ横方向Yなどである。
図3に示すように、リンク53およびアーム側ブラケット61から固定部材71が抜けるのを防ぐための抜け止め部材(例えば抜け止めピン)が、固定部材71に取り付けられてもよい。固定部材71の着脱を容易にするための把手が、固定部材71に設けられてもよい。
【0041】
(格納状態など)
図2に示すように、ジャッキ装置20がカーボディ10に格納されたときの、アーム30、シリンダ装置40(
図4参照)、およびジャッキ位置決め装置50の配置などは、次の通りである。アーム30は、格納状態とされる。このとき、アーム30は、カーボディ側部11に沿うように配置される。例えば、アーム前後方向Aは、カーボディ横方向Yまたは略カーボディ横方向Yとなる。このとき、アーム30は、カーボディ上部13、カーボディ下部15、およびカーボディ側部11に囲われた領域(格納スペースS)に配置される。なお、アーム30の一部が、カーボディ上部13およびカーボディ下部15の少なくとも一部からカーボディ前後方向外側Xoにはみ出てもよい。
【0042】
図4に示すように、アーム30が格納状態のとき、シリンダ装置40は、格納される。このとき、シリンダ装置40は、アーム30の上側Z1部分に沿うように配置される。例えば、シリンダ装置40の長手方向は、水平方向または略水平方向となる。例えば、シリンダ装置40の長手方向は、鉛直方向に対して傾いた方向となる。
【0043】
図5に示すように、アーム30が格納状態のとき、リンク53は、リンク側固定部材取付部53cとアーム側固定部材取付部61cとに固定部材71を取り付け可能となるような位置に配置される。例えば、
図3に示すように、リンク53は、立てた姿勢とされる。さらに詳しくは、リンク回転軸部55よりも上側Z1にリンク側固定部材取付部53cが配置されるように、リンク53が配置される。なお、アーム30が格納状態のとき、リンク53は、上記のような立てた姿勢でなくてもよい。
【0044】
アーム30が格納状態のとき、固定部材71は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するように、リンク53およびアーム側ブラケット61に取り付けられる。さらに詳しくは、
図5に示すように、固定部材71は、リンク側固定部材取付部53cおよびアーム側固定部材取付部61cに取り付けられる。このとき、固定部材71の軸方向は、カーボディ10に対するアーム30の回転方向とは異なる方向であり、例えばアーム前後方向Aであり、例えばカーボディ横方向Yである。
【0045】
(張出状態など)
図6に示すように、ジャッキ装置20がカーボディ10から張り出されたときの、アーム30、シリンダ装置40、およびジャッキ位置決め装置50の配置などは、次の通りである。アーム30は、張出状態とされる。このとき、アーム30は、カーボディ側部11からカーボディ前後方向外側Xoに突出するように配置される。例えば、アーム前後方向Aは、カーボディ前後方向Xまたは略カーボディ前後方向Xとなる。
【0046】
図1において実線で示すジャッキ装置20のように、アーム30が張出状態のとき、シリンダ装置40は、上下方向Zに延びるように配置される。さらに詳しくは、
図4に示すシリンダチューブ40aおよびシリンダロッド40b(
図1参照)の長手方向は、上下方向Zまたは略上下方向Zとなる。
【0047】
図6に示すように、アーム30が張出状態のとき、リンク53は、制限解除位置に配置可能である(
図6において二点鎖線で示すリンク53を参照)。制限解除位置は、カーボディ10に対するアーム回転軸30a(
図4参照)を中心とするアーム30の回転の制限を解除するときの、リンク53の位置である。リンク53が制限解除位置のとき、アーム30が、カーボディ10に対して回転可能となる。このとき、リンク側接触部53e(挟み部53e1)は、アーム側板31(被挟み部63a)を挟まないように配置され、アーム側板31から外れた位置に配置される。
【0048】
アーム30が張出状態のとき、リンク53は、制限位置に配置可能である(
図6において実線で示すリンク53を参照)。制限位置は、カーボディ10に対するアーム回転軸30a(
図4参照)を中心とするアーム30の回転を制限するときの、リンク53の位置(角度、姿勢)である。このとき、
図9に示すリンク側接触部53eは、アーム側板31(例えば第2アーム側板31b)に接触可能に配置される。このとき、
図1に示すカーボディ10に対してアーム30が回転しようとすると、
図9に示すリンク側接触部53eとアーム側接触部63とが互いに接触することで、
図1に示すカーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。このとき、
図9に示すように、挟み部53e1(例えばリンク側接触部53e)は、被挟み部63a(例えばアーム側板31、例えば第2アーム側板31b)を挟むように配置される。この場合、
図1に示すカーボディ10に対してアーム回転軸30aを中心にアーム30がどちら向きに回転しようとしても、
図9に示す挟み部53e1が被挟み部63aに接触することで、
図1に示すカーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。
【0049】
なお、カーボディ10に対するアーム30の回転の制限は、様々に変形可能である。例えば、アーム30が張出状態のときに、カーボディ10に対するアーム30の回転が、格納状態に向かう向きにのみ許容される場合などが考えられる。例えば、アーム30が張出状態のときに、格納状態に向かう向きとは反対側にアーム30が回転することを制限する構造を、カーボディ10およびアーム30が備える場合などが考えられる。このような場合には、
図6に示すリンク53(リンク側接触部53e)は、格納状態に向かう向きへのアーム30の回転を制限すればよい。この場合、リンク53は、挟み部53e1を備える必要はない。リンク53のリンク板53a1は、2枚設けられなくてもよい。また、
【0050】
図9に示すリンク側接触部53eとアーム側接触部63との間には適切な大きさの隙間が設けられる。さらに詳しくは、リンク53が制限位置のときであって、リンク側接触部53eとアーム側接触部63とが接触しない場合、リンク側接触部53eとアーム側接触部63との間には適切な大きさの隙間(具体的には例えば3mmずつなど)が設けられる。よって、
図6に示すリンク53が、制限位置と非制限位置(
図6において二点鎖線で示すリンク53を参照)との間で、スムーズに移動することができる。
【0051】
アーム30が張出状態のとき、固定部材71は、格納されることが好ましい。例えば、
図7に示すように、固定部材71は、固定部材格納部55cに格納される。この場合、作業者は、
図5に示すリンク側固定部材取付部53cおよびアーム側固定部材取付部61cから固定部材71を取り外した後、直ちに、固定部材71を固定部材格納部55cに格納することができる。なお、リンク回転軸部55とは異なる部分(例えばカーボディ10、アーム30など)に、固定部材71を格納するための部材が設けられてもよい。
【0052】
(リンク53による回転の制限について)
図2に示すリンク53は、アーム30が格納状態および張出状態のそれぞれのときに、アーム30の回転の制限に使われていればよい。リンク53が単独で、アーム30の回転の制限を行わなくてもよい。例えば、上記実施形態では、アーム30が格納状態のときは、リンク53単独ではなく、リンク53および固定部材71などにより、アーム30の回転の制限が行われた。また、例えば、上記実施形態では、
図6に示すように、アーム30が張出状態のときには、リンク53が(リンク53単独で)アーム30の回転の制限を行った。一方、リンク53が、アーム30の一方向の回転の制限を行い、例えば上記「格納状態に向かう向きとは反対側にアーム30が回転することを制限する構造」が、アーム30の他方向(上記「一方向」とは逆方向)の回転の制限を行ってもよい。
【0053】
(検討)
図4に示すように、ジャッキ装置20がカーボディ10に格納されるとき、シリンダ装置40が鉛直方向に対して傾けられた状態で、アーム30およびシリンダ装置40が、格納スペースSに格納される。ここで、補強ブラケット17が設けられず、アーム30の上側Z1部分がカーボディ上部13の直下に配置される場合について考える。この場合、カーボディ10に対するアーム30の位置を固定する部材(例えばピン)を、カーボディ上部13よりも上側Z1から、カーボディ上部13およびアーム30に差し込むことが可能な場合がある。一方、アーム30の上側Z1部分とカーボディ上部13との隙間が、補強ブラケット17で埋められる場合がある。この場合は、カーボディ10に対するアーム30の位置を固定する部材を、カーボディ上部13よりも上側Z1からカーボディ上部13およびアーム30に差し込むことはできない、または困難である。
【0054】
アーム30の上側Z1部分とカーボディ上部13との間に補強ブラケット17が設けられる理由は、例えば次の通りである。例えば、カーボディ10の高さ(上下方向Zの長さ)が大きく、カーボディ上部13とカーボディ下部15との間隔が広いほど、アーム基端部30bの高さを大きくすることが考えられる。この場合、アーム基端部30bの高さを大きくすると、アーム30の強度を確保することはできるが、アーム30の質量が増大する。そのため、アーム30を含む物が輸送される際に、輸送物の質量が制限値(さらに詳しくは車両を用いて公道で輸送を行う際の質量の制限値)を超えてしまう。または、輸送物の質量が制限値を超えないように、分解の作業が必要になる。また、アーム基端部30bの高さを大きくすると、シリンダ装置40を格納しようとするスペースが、アーム基端部30bに占められてしまい、シリンダ装置40を格納することが困難または不可能になる。そこで、アーム30およびその周辺部の強度を確保しつつ、シリンダ装置40を格納するスペースを確保するために、アーム基端部30bの上側Z1部分とカーボディ上部13との隙間が、補強ブラケット17で埋められる場合がある。
【0055】
補強ブラケット17が設けられる場合は、カーボディ10に対するアーム30の位置を固定する部材(例えばピン)を、カーボディ上部13よりも上側Z1からカーボディ上部13に差し込むことはできない。そこで、カーボディ10に対するアーム30の位置を固定するための、リンク構造が設けられる場合がある。この「リンク構造」は、カーボディ10に設けられる板状部材(プレート)と、アーム30に設けられる板状部材と、これらの板状部材どうしを接続する部材(例えばピン)と、を備える構造である。この場合、アーム30が張出状態(
図6参照)のときにアーム30を固定するリンク構造と、アーム30が格納状態のときにアーム30の位置を固定するリンク構造と、が別々に設けられると、リンク装置の部品数が多く、複雑な構造となる。また、例えば、アーム30またはカーボディ10に設けられるリンク構造のプレートが、アーム30(またはカーボディ10)に対して回転可能に構成される場合などには、さらに部品数が増大する。
【0056】
一方、本実施形態の下部走行体1では、リンク53は、
図2に示すアーム30が第1状態のときのアーム30の回転の制限と、
図6に示すアーム30が第2状態のときのアーム30の回転の制限と、に兼用される。さらに、アーム30が第2状態のときのアーム30の回転の制限に、アーム側板31が用いられる。よって、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するための装置(ジャッキ位置決め装置50)を簡素に構成することができ、ジャッキ位置決め装置50の部品数を抑制することができる。具体的には例えば、ジャッキ位置決め装置50では、
図7に示すリンク取付部51、2個のリンク板53a1、リンク板連結部53a2、およびアーム側ブラケット61(
図3参照)の、5個のプレートが用いられる。また、例えば、ジャッキ位置決め装置50では、リンク回転軸部55、および固定部材71の、2個のピンが用いられる。なお、抜け止めピンや把手など、アーム30の回転の制限とは直接的には関係のない部品は、上記の部品数には含まれない。なお、補強ブラケット17が設けられない場合に、ジャッキ位置決め装置50が設けられてもよい。
【0057】
(第1の発明の効果)
図1に示す下部走行体1による効果は、次の通りである。下部走行体1は、カーボディ10と、ジャッキ装置20と、ジャッキ位置決め装置50(
図2参照)と、を備える。ジャッキ装置20は、カーボディ10に回転可能に取り付けられたアーム30を有する。
図2に示すように、ジャッキ位置決め装置50は、カーボディ10に対するアーム30の位置決めを行う。カーボディ10は、カーボディ上部13と、カーボディ下部15と、を備える。カーボディ下部15は、カーボディ上部13よりも下側Z2に配置される。アーム30は、カーボディ上部13とカーボディ下部15との間に配置される。アーム30は、第1状態と第2状態(
図6参照)とに可変にカーボディ10に回転可能に取り付けられる。第1状態および第2状態のうち一方は、
図6に示すように、カーボディ10に対して張り出された張出状態である。第1状態および第2状態のうち、張出状態ではない方は、
図2に示すように、カーボディ10に対して格納された格納状態である。
図2に示すように、ジャッキ位置決め装置50は、リンク53と、アーム側ブラケット61と、固定部材71と、を備える。リンク53は、カーボディ10に回転可能に取り付けられる。アーム側ブラケット61は、アーム30に設けられる。固定部材71は、リンク53およびアーム側ブラケット61に取り付け可能である。
【0058】
[構成1-1]アーム30が第1状態のとき、固定部材71は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するようにリンク53およびアーム側ブラケット61に取り付けられる。
【0059】
[構成1-2]
図6に示すように、アーム30が第2状態のとき、リンク53は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するようにアーム30の側板(アーム側板31)に接触することが可能に構成される。
【0060】
上記[構成1-1]では、
図2に示すように、アーム30が第1状態のとき、リンク53およびアーム側ブラケット61に固定部材71が取り付けられることで、カーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。上記[構成1-2]では、
図6に示すように、アーム30が第2状態のとき、リンク53がアーム側板31に接触することで、カーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。よって、リンク53は、
図2に示すアーム30が第1状態のときのアーム30の回転の制限と、
図6に示すアーム30が第2状態のときのアーム30の回転の制限と、に兼用される。よって、下部走行体1では、アーム30が第1状態のときのアーム30の回転の制限を行うリンク部材と、アーム30が第2状態のときのアーム30の回転の制限を行うリンク部材と、が別々に設けられる場合に比べ、次の効果が得られる。下部走行体1では、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するための装置(ジャッキ位置決め装置50)を簡素に構成することができ、この装置(ジャッキ位置決め装置50)の部品数を抑制することができる。
【0061】
また、上記[構成1-2]では、アーム30が第2状態のとき、リンク53がアーム側板31に接触することで、カーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。よって、アーム30が第2状態のときのアーム30の回転の制限を行うための部材として、アーム側板31(アーム30の一部)が用いられる。よって、下部走行体1では、第2状態のアーム30の回転の制限を行うための部材がアーム30とは別に設けられる場合に比べ、次の効果が得られる。下部走行体1では、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するための装置(ジャッキ位置決め装置50)を簡素に構成することができ、この装置(ジャッキ位置決め装置50)の部品数を抑制することができる。
【0062】
(第2の発明の効果)
[構成2]
図9に示すように、アーム側板31およびリンク53のうち、一方(例えばリンク53)は、挟み部53e1を備える。アーム側板31およびリンク53のうち、挟み部53e1を有する方とは異なる方(例えばアーム側板31)は、被挟み部63aを備える。挟み部53e1は、
図6に示すアーム30が第2状態のときにカーボディ10に対するアーム30の回転を制限するように、被挟み部63aを挟むように配置可能に構成される。
【0063】
上記[構成2]により、
図9に示すように、挟み部53e1が被挟み部63aを挟むように配置された場合、
図6に示すカーボディ10に対するアーム30の両側(例えば上側Z1から見て右回りおよび左回り)の回転を制限することができる。
【0064】
部材の回転を制限するための構造として、部材に設けられた孔と、この孔に差し込まれるピンと、を有する構造などがある。しかし、部材に孔が設けられると、この部材の強度が低下しやすい。そのため、部材に孔が設けられることは、好ましくない場合がある。一方、上記[構成2]では、挟み部53e1と被挟み部63aとにより、カーボディ10に対するアーム30の回転が制限される。よって、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限するための孔を、強度部材であるアーム30のアーム側板31に設ける必要はない。よって、アーム30の強度が低下することを抑制することができる。
【0065】
(第3の発明の効果)
[構成3]リンク53は、アーム30が第2状態のときに、制限位置と制限解除位置とに可変にカーボディ10に対して回転可能に取り付けられる。制限位置は、カーボディ10に対するアーム30の回転を制限する位置である。制限解除位置は、カーボディ10に対するアーム30の回転の制限を解除する位置である。
【0066】
上記[構成3]により、カーボディ10に対してリンク53を回転させることで、カーボディ10に対するアーム30の回転の制限と制限の解除とを、容易に切り替えることができる。
【0067】
(第4の発明の効果)
図7に示すように、下部走行体1は、カーボディ10に回転可能にリンク53を接続するリンク回転軸部55を備える。リンク回転軸部55は、リンク回転軸部本体部55aと、固定部材格納部55cと、を備える。リンク回転軸部本体部55aは、カーボディ10とリンク53とを接続する部分である。
【0068】
[構成4]固定部材格納部55cは、リンク回転軸部本体部55aに設けられ、固定部材71を格納可能に構成される。
【0069】
上記[構成4]により、次の効果が得られる。固定部材71は、アーム30が第1状態のときに用いられ(
図3参照、上記[構成1-1]参照)、アーム30が第2状態のときには用いられる必要はない(上記[構成1-2]参照)。上記[構成4]では、固定部材格納部55cに固定部材71を格納することができる。よって、例えば、固定部材71の紛失を抑制することができる。
【0070】
上記[構成4]により、次の効果が得られてもよい。上記[構成4]では、固定部材格納部55cは、リンク回転軸部本体部55aとは別に設けられる。よって、カーボディ10およびリンク53に対してリンク回転軸部本体部55aが着脱される場合は、作業者は、固定部材格納部55cを持って(固定部材格納部55cを例えば把手として)、リンク回転軸部本体部55aを容易に着脱することができる。なお、リンク回転軸部本体部55aは、カーボディ10およびリンク53に対して着脱されなくてもよい。
【0071】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0072】
例えば、アーム30の張出状態(
図6参照)が、アーム30の第1状態(
図2参照)でもよい。さらに詳しくは、アーム30が張出状態(
図6参照)のときに、
図2に示すように、固定部材71などによるアーム30の回転の制限が行われてもよい。また、アーム30の格納状態(
図2参照)が、アーム30の第2状態(
図6参照)でもよい。さらに詳しくは、アーム30が格納状態(
図2参照)のときに、
図6に示すように、リンク側接触部53eとアーム側接触部63とが接触することによるアーム30の回転の制限が行われてもよい。この場合、カーボディ10に対するリンク53の回転軸の方向は、例えばカーボディ前後方向Xなどである。
【符号の説明】
【0073】
1 下部走行体
10 カーボディ
13 カーボディ上部
15 カーボディ下部
20 ジャッキ装置
30 アーム
31 アーム側板(アーム30の側板)
50 ジャッキ位置決め装置
53 リンク
53e1 挟み部
55 リンク回転軸部
55a リンク回転軸部本体部
55c 固定部材格納部
61 アーム側ブラケット
63a 被挟み部
71 固定部材