(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165702
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/08 20060101AFI20221025BHJP
B63H 20/06 20060101ALI20221025BHJP
B63H 25/22 20060101ALI20221025BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20221025BHJP
B63H 20/12 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B63H20/08 100
B63H20/06 100
B63H25/22
B63H25/42 B
B63H20/12 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071161
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】松永 卓真
(72)【発明者】
【氏名】萩 朋洋
(57)【要約】
【課題】ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行うことが可能な船外機および船舶を提供する。
【解決手段】この船外機120は、左右方向において油室51の油路42への接続口である油路接続口55の近傍に設けられ、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、油室51に滞留したエア60を油路接続口55に導くエアガイド部材70を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機本体と、
前記船外機本体の左右方向に延びるピストンロッドと、前記ピストンロッドに固定されたピストンと、内部に前記ピストンが配置され、内部に作動油を収容する油室が設けられたシリンダボディとを含み、前記油室の前記作動油の量を調整して前記シリンダボディを前記左右方向に移動させることにより、ステアリング軸を回動させて前記船外機本体を前記左右方向に回動させるステアリングシリンダと、
前記油室に接続されるとともに前記油室への前記作動油の供給および前記油室からの前記作動油の排出を行うための油路と、
前記左右方向において前記油室の前記油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、前記油室から前記油路を介して前記作動油が排出される場合に、前記油室に滞留したエアを前記油路接続口に導くエアガイド部材と、備える、船外機。
【請求項2】
前記エアガイド部材は、前記油室から前記作動油が排出される場合に、前記エアガイド部材の外周側に設けられた外周側流路を介して、前記油室の上部に滞留したエアを前記油路接続口に導くように構成されている、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記エアガイド部材は、円板状に形成されており、
前記外周側流路は、円板状の前記エアガイド部材の外周面と前記油室の内周面とによって形成されている、請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記エアガイド部材は、前記油室に前記作動油が供給される場合に、前記外周側流路に加えて、前記外周側流路よりも内周側に設けられた内周側流路を介して前記油室に前記作動油を供給するように構成されている、請求項2または3に記載の船外機。
【請求項5】
前記エアガイド部材は、前記油室から前記作動油が排出される場合に、前記内周側流路を塞ぐように、かつ、前記油室に前記作動油が供給される場合に、前記内周側流路を開放するように、前記油室内を前記左右方向に移動可能に構成されている、請求項4に記載の船外機。
【請求項6】
前記エアガイド部材は、前記油室内における前記左右方向の端面に当接する当接部を含み、
前記油室から前記作動油が排出される場合に、前記当接部が前記端面に当接して前記内周側流路を塞ぐ当接位置まで前記左右方向に移動するとともに、前記油室に前記作動油が供給される場合に、前記当接部が前記端面から離間して前記内周側流路を開放する離間位置まで前記左右方向に移動するように構成されている、請求項5に記載の船外機。
【請求項7】
前記エアガイド部材は、前記油室から前記作動油が排出される場合に、前記油室から前記油路接続口に排出される前記作動油の流れによって、前記当接位置まで前記左右方向に移動するとともに、前記油室に前記作動油が供給される場合に、前記油路接続口から前記油室に供給される前記作動油の流れによって、前記離間位置まで前記左右方向に移動するように構成されている、請求項6に記載の船外機。
【請求項8】
前記エアガイド部材が前記左右方向において前記離間位置よりも前記当接位置とは反対側に移動しないように規制する規制部をさらに備える、請求項6または7に記載の船外機。
【請求項9】
前記油路接続口は、前記左右方向において前記端面の近傍に設けられている、請求項6~8のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項10】
前記油路は、前記ピストンロッド内に設けられており、
前記油路接続口は、前記シリンダボディ内に配置された前記ピストンロッドの外周面に設けられており、
前記エアガイド部材は、前記左右方向の前記端面側に突出する前記当接部としての複数の第1凸部と、前記複数の第1凸部同士の間に形成され、前記油室において、外周側と前記ピストンロッドが設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部と、をさらに含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項11】
前記エアガイド部材は、前記複数の第1凸部のうちの少なくとも1つに設けられ、前記左右方向に貫通する前記内周側流路としての貫通孔をさらに含む、請求項10に記載の船外機。
【請求項12】
前記貫通孔は、前記複数の第1凸部の全てに設けられている、請求項11に記載の船外機。
【請求項13】
前記複数の第1凸部は、各々、前記左右方向から見て、扇形形状を有し、
前記貫通孔は、前記左右方向から見て、前記複数の第1凸部の扇形形状よりも小さい扇形形状を有する、請求項11または12に記載の船外機。
【請求項14】
前記油路接続口は、前記ピストンロッドの外周面のうちの周方向における一部に設けられており、
前記エアガイド部材は、前記ピストンロッドが設けられた前記油室における内周側において、前記複数の第1凸部に対して前記端面側とは反対側に凹むとともに、前記内外接続用凹部と前記油路接続口とを接続するように環状に形成された第1環状凹部をさらに含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項15】
前記油路は、前記ステアリングシリンダの前方、後方および下方のうちのいずれかに設けられており、
前記油路接続口は、前記シリンダボディの内周面に設けられており、
前記エアガイド部材は、前記油室において、前記端面側に突出する前記当接部としての第2凸部を含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項16】
前記エアガイド部材は、外周側に設けられ、前記左右方向に貫通する前記外周側流路としての切り欠き部をさらに含む、請求項15に記載の船外機。
【請求項17】
前記油路接続口は、前記シリンダボディの内周面のうちの周方向における一部に設けられており、
前記エアガイド部材は、外周側において、前記第2凸部に対して前記端面側とは反対側に凹むとともに、前記油路接続口と接続するように環状に形成された第2環状凹部をさらに含む、請求項15または16に記載の船外機。
【請求項18】
ステアリングホイールを含む船体と、
前記船体に取り付けられる船外機と、を備え、
前記船外機は、
船外機本体と、
前記船外機本体の左右方向に延びるピストンロッドと、前記ピストンロッドに固定されたピストンと、内部に前記ピストンが配置され、内部に作動油を収容する油室が設けられたシリンダボディとを含み、前記ステアリングホイールの操作に基づいて、前記油室の前記作動油の量を調整して前記シリンダボディを前記左右方向に移動させることにより、ステアリング軸を回動させて前記船外機本体を前記左右方向に回動させるステアリングシリンダと、
前記油室に接続されるとともに前記油室への前記作動油の供給および前記油室からの前記作動油の排出を行うための油路と、
前記左右方向において前記油室の前記油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、前記油室から前記油路を介して前記作動油が排出される場合に、前記油室に滞留したエアを前記油路接続口に導くエアガイド部材と、備える、船舶。
【請求項19】
前記エアガイド部材は、前記油室から前記作動油が排出される場合に、前記エアガイド部材の外周側に設けられた外周側流路を介して、前記油室の上部に滞留したエアを前記油路接続口に導くように構成されている、請求項18に記載の船舶。
【請求項20】
前記エアガイド部材は、円板状に形成されており、
前記外周側流路は、円板状の前記エアガイド部材の外周面と前記油室の内周面とによって形成されている、請求項19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機および船舶に関し、特に、ステアリング軸を回動させて船外機本体を左右方向に回動させるステアリングシリンダを備える船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング軸を回動させて船外機本体を左右方向に回動させるステアリングシリンダを備える船外機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステアリング力を船外機本体に作用させるステアリングシリンダを備える船外機が記載されている。上記特許文献1に記載されている船外機では、ステアリングシリンダは、船外機において、左右方向に延びるように設けられている。また、ステアリングシリンダは、リンク機構を介して、ステアリング軸と接続されている。また、ステアリングシリンダ内の油室は、ステアリングポンプと油路を介して接続されており、油室への作動油の供給および油室からの作動油の排出が行われる。そして、ステアリングシリンダは、作動油によって駆動(左右方向に移動)されて、船外機本体をステアリング軸回りに回動させるステアリング力を発生させる。なお、上記特許文献1に記載されている船外機では、ステアリングシリンダ内の油室の油路への接続口は、左右方向に延びるステアリングシリンダの側方(横)に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている船外機では、上記のように、ステアリングシリンダ内の油室の油路への接続口は、ステアリングシリンダの側方(横側)に設けられているので、油室にエアが侵入した場合、エアは、抜けることなく油室に滞留する。油室にエアが滞留している場合、ステアリングシリンダの動作が不安定になる場合がある。そこで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されているような従来の船外機において、油室にエアが侵入した場合、油室からエアを外部に排出する作業(油室のエア抜き作業)が作業者により行われている。油室のエア抜き作業は、たとえば、ステアリングシリンダを船外機本体から取り外した後、油路への接続口がステアリングシリンダの上側に位置するようにステアリングシリンダを傾ける等の煩雑な作業である。このため、ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行いたいという要望がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行うことが可能な船外機および船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船外機は、船外機本体と、船外機本体の左右方向に延びるピストンロッドと、ピストンロッドに固定されたピストンと、内部にピストンが配置され、内部に作動油を収容する油室が設けられたシリンダボディとを含み、油室の作動油の量を調整してシリンダボディを左右方向に移動させることにより、ステアリング軸を回動させて船外機本体を左右方向に回動させるステアリングシリンダと、油室に接続されるとともに油室への作動油の供給および油室からの作動油の排出を行うための油路と、左右方向において油室の油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室に滞留したエアを油路接続口に導くエアガイド部材と、を備える。
【0008】
この発明の第1の局面による船外機は、上記のように、左右方向において油室の油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室に滞留したエアを油路接続口に導くエアガイド部材を備える。これにより、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、エアガイド部材によって、油室に滞留したエアを油路接続口に導くことができる。すなわち、油室から油路を介して作動油を排出するステアリングシリンダの通常の動作によって、油室に滞留したエアが油路接続口に導かれるので、ステアリングシリンダを傾ける等の煩雑な作業を作業者が行うことなく、自動的に油室からエアを外部に排出することができる。その結果、ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行うことができる。また、作業者がエア抜き作業を実施することなく、船舶のユーザが操船中に(船舶の推進方向を変更するための)ステアリング操作を行うだけで、いつでもエア抜きを行うことができる。
【0009】
上記第1の局面による船外機において、好ましくは、エアガイド部材は、油室から作動油が排出される場合に、エアガイド部材の外周側に設けられた外周側流路を介して、油室の上部に滞留したエアを油路接続口に導くように構成されている。このように構成すれば、油室の上部(外周側)は、油室の内周側と比較して外流側流路に近いとともに、エアは作動油よりも粘性が低いので、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室の上部(外周側)に滞留したエアを、外周側流路を介して、油室から優先的に外部に排出することができる。その結果、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、エアガイド部材によって、油室の上部に滞留したエアを油路接続口に確実に導くことができる。
【0010】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、円板状に形成されており、外周側流路は、円板状のエアガイド部材の外周面と油室の内周面とによって形成されている。このように構成すれば、円板状のエアガイド部材によって、油室の上部(外周側)に滞留したエアを油路接続口に導く外周側流路をエアガイド部材の外周側に容易に形成することができる。
【0011】
上記エアガイド部材の外周側に設けられた外周側流路を介して油室の上部に滞留したエアを油路接続口に導く構成において、好ましくは、エアガイド部材は、油室に作動油が供給される場合に、外周側流路に加えて、外周側流路よりも内周側に設けられた内周側流路を介して油室に作動油を供給するように構成されている。このように構成すれば、油室に作動油が供給される場合に、作動油が供給される流路が外周側流路に限定される場合と比較して、作動油が供給される流路の断面積を大きくすることができる。その結果、油室に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を低減することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、油室から作動油が排出される場合に、内周側流路を塞ぐように、かつ、油室に作動油が供給される場合に、内周側流路を開放するように、油室内を左右方向に移動可能に構成されている。このように構成すれば、エアガイド部材を油室内において左右方向に移動させることによって、油室から作動油を排出する場合に、外周側流路を容易に形成することができるとともに、油室に作動油が供給される場合に、外周側流路および内周側流路を容易に形成することができる。
【0013】
上記エアガイド部材が油室内を左右方向に移動可能な構成において、好ましくは、エアガイド部材は、油室内における左右方向の端面に当接する当接部を含み、油室から作動油が排出される場合に、当接部が端面に当接して内周側流路を塞ぐ当接位置まで左右方向に移動するとともに、油室に作動油が供給される場合に、当接部が端面から離間して内周側流路を開放する離間位置まで左右方向に移動するように構成されている。このように構成すれば、エアガイド部材を油室内において当接位置と離間位置との間で左右方向に移動させることによって、油室から作動油が排出される場合に、内周側流路を容易に塞ぐことができるとともに、油室に作動油が供給される場合に、内周側流路を容易に開放することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、油室から作動油が排出される場合に、油室から油路接続口に排出される作動油の流れによって、当接位置まで左右方向に移動するとともに、油室に作動油が供給される場合に、油路接続口から油室に供給される作動油の流れによって、離間位置まで左右方向に移動するように構成されている。このように構成すれば、油室から作動油を排出するステアリングシリンダの通常の動作によってエアガイド部材が当接位置まで左右方向に移動するとともに、油路に作動油を供給するステアリングシリンダの通常の動作によってエアガイド部材が離間位置まで左右方向に移動するので、エアガイド部材を移動させるための専用の移動機構を別途設けることなく、エアガイド部材を油室内において当接位置および離間位置まで左右方向に移動させることができる。
【0015】
上記エアガイド部材が油室から作動油が排出される場合に当接位置まで左右方向に移動するとともに油室に作動油が供給される場合に内周側流路を開放する離間位置まで左右方向に移動する構成において、好ましくは、エアガイド部材が左右方向において離間位置よりも当接位置とは反対側に移動しないように規制する規制部をさらに備える。このように構成すれば、規制部によってエアガイド部材の移動範囲が左右方向において当接位置と離間位置との間に制限されるので、エアガイド部材の移動範囲が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0016】
上記エアガイド部材が油室から作動油が排出される場合に当接位置まで左右方向に移動するとともに油室に作動油が供給される場合に内周側流路を開放する離間位置まで左右方向に移動する構成において、好ましくは、油路接続口は、左右方向において端面の近傍に設けられている。このように構成すれば、左右方向において離間位置を端面から比較的近い位置に配置することができるので、エアガイド部材の移動範囲が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0017】
上記エアガイド部材が油室から作動油が排出される場合に当接位置まで左右方向に移動するとともに油室に作動油が供給される場合に内周側流路を開放する離間位置まで左右方向に移動する構成において、好ましくは、油路は、ピストンロッド内に設けられており、油路接続口は、シリンダボディ内に配置されたピストンロッドの外周面に設けられており、エアガイド部材は、左右方向の端面側に突出する当接部としての複数の第1凸部と、複数の第1凸部同士の間に形成され、油室において、外周側とピストンロッドが設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部と、をさらに含む。このように構成すれば、当接部としての複数の第1凸部によって、油室から作動油が排出される場合に、内周側流路を容易に塞ぐことができるとともに、油室に作動油が供給される場合に、内周側流路を容易に開放することができる。また、内外接続用凹部によって、油室から作動油が排出される場合に、エアガイド部材の端面側において、外周側流路と内周側のピストンロッドの外周面に設けられた油路接続口とを容易に接続することができるとともに、油室に作動油が供給される場合に、エアガイド部材の端面側において、外周側流路および内周側流路と、油路接続口とを容易に接続することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、複数の第1凸部のうちの少なくとも1つに設けられ、左右方向に貫通する内周側流路としての貫通孔をさらに含む。このように構成すれば、貫通孔によって、油室から作動油が排出される場合に複数の第1凸部が左右方向における端面に当接して塞がれるとともに油室に作動油が供給される場合に複数の第1凸部が左右方向における端面から離間して開放される内周側流路を容易に形成することができる。
【0019】
上記エアガイド部材が内周側流路としての貫通孔を含む構成において、好ましくは、貫通孔は、複数の第1凸部の全てに設けられている。このように構成すれば、貫通孔が複数の第1凸部のうちの一部のみに設けられている場合と比較して、内周側流路の断面積を容易に大きくすることができる。その結果、油室に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0020】
上記エアガイド部材が内周側流路としての貫通孔を含む構成において、好ましくは、複数の第1凸部は、各々、左右方向から見て、扇形形状を有し、貫通孔は、左右方向から見て、複数の第1凸部の扇形形状よりも小さい扇形形状を有する。このように構成すれば、貫通孔が複数の第1凸部と同じ扇形形状ではない形状を有する場合と比較して、内周側流路の断面積を容易に大きくすることができる。その結果、油室に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0021】
上記油路接続口がシリンダボディ内に配置されたピストンの外周面に設けられている構成において、好ましくは、油路接続口は、ピストンロッドの外周面のうちの周方向における一部に設けられており、エアガイド部材は、ピストンロッドが設けられた油室における内周側において、複数の第1凸部に対して端面側とは反対側に凹むとともに、内外接続用凹部と油路接続口とを接続するように環状に形成された第1環状凹部をさらに含む。このように構成すれば、環状に形成された第1環状凹部によって、外周側とピストンロッドが設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部と、ピストンロッドの外周面のうちの周方向の一部に設けられた油路接続口とを容易に接続することができる。
【0022】
上記エアガイド部材が油室から作動油が排出される場合に当接位置まで左右方向に移動するとともに油室に作動油が供給される場合に内周側流路を開放する離間位置まで左右方向に移動する構成において、好ましくは、油路は、ステアリングシリンダの前方、後方および下方のうちのいずれかに設けられており、油路接続口は、シリンダボディの内周面に設けられており、エアガイド部材は、油室において、端面側に突出する当接部としての第2凸部を含む。このように構成すれば、当接部としての第2凸部によって、油室から作動油が排出される場合に、内周側流路を容易に塞ぐことができるとともに、油室に作動油が供給される場合に、内周側流路を容易に開放することができる。
【0023】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、外周側に設けられ、左右方向に貫通する外周側流路としての切り欠き部をさらに含む。このように構成すれば、切り欠き部によって、油室から作動油が排出される場合に外周側流路を容易に形成することができる。
【0024】
上記油路接続口がシリンダボディの内周面に設けられている構成において、好ましくは、油路接続口は、シリンダボディの内周面のうちの周方向における一部に設けられており、エアガイド部材は、外周側において、第2凸部に対して端面側とは反対側に凹むとともに、油路接続口と接続するように環状に形成された第2環状凹部をさらに含む。このように構成すれば、環状に形成された第2環状凹部によって、外周側流路と、シリンダチューブの内周面のうちの周方向における一部に設けられた油路接続口とを容易に接続することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶は、ステアリングホイールを含む船体と、船体に取り付けられる船外機と、を備え、船外機は、船外機本体と、船外機本体の左右方向に延びるピストンロッドと、ピストンロッドに固定されたピストンと、内部にピストンが配置され、内部に作動油を収容する油室が設けられたシリンダボディとを含み、ステアリングホイールの操作に基づいて、油室の作動油の量を調整してシリンダボディを左右方向に移動させることにより、ステアリング軸を回動させて船外機本体を左右方向に回動させるステアリングシリンダと、油室に接続されるとともに油室への作動油の供給および油室からの作動油の排出を行うための油路と、左右方向において油室の油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室に滞留したエアを油路接続口に導くエアガイド部材と、を備える。
【0026】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、左右方向において油室の油路への接続口である油路接続口の近傍に設けられ、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室に滞留したエアを油路接続口に導くエアガイド部材を備える。これにより、上記第1の局面による船外機と同様に、油室から油路を介して作動油を排出するステアリングシリンダの通常の動作によって、油室に滞留したエアが油路接続口に導かれるので、ステアリングシリンダを傾ける等の煩雑な作業を作業者が行うことなく、自動的に油室からエアを外部に排出することができる。その結果、上記第1の局面による船外機と同様に、ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行うことができる。
【0027】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、エアガイド部材は、油室から作動油が排出される場合に、エアガイド部材の外周側に設けられた外周側流路を介して、油室の上部に滞留したエアを油路接続口に導くように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、油室の上部(外周側)に滞留したエアを、外周側流路を介して、油室から優先的に外部に排出することができる。その結果、上記第1の局面による船外機と同様に、油室から油路を介して作動油が排出される場合に、エアガイド部材によって、油室の上部に滞留したエアを油路接続口に確実に導くことができる。
【0028】
この場合、好ましくは、エアガイド部材は、円板状に形成されており、外周側流路は、円板状のエアガイド部材の外周面と油室の内周面とによって形成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船外機と同様に、エアガイド部材によって、油室の上部(外周側)に滞留したエアを油路接続口に導く外周側流路をエアガイド部材の外周側に容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、ステアリングシリンダ内の油室のエア抜きを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態による船外機を備えた船舶を示した斜視図である。
【
図2】第1実施形態による船外機の全体構成を示した左側面図である。
【
図3】第1実施形態による船外機のクランプブラケット、スイベルブラケット、ステアリングシリンダおよびステアリング装置等を示した斜視図である。
【
図4】第1実施形態による船外機のステアリングシリンダ、油配管およびステアリングポンプ等を示した斜視図である。
【
図5】第1実施形態による船外機のステアリングシリンダの全体構成を示した平面断面図である。
【
図6】第1実施形態による船外機のステアリングシリンダのピストン近傍の拡大平面断面図である。
【
図7】第1実施形態による船外機のステアリングシリンダの油室からエアの排出を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】第1実施形態による船外機のステアリングシリンダのエアガイド部材を示した斜視図である。
【
図9】第2実施形態による船外機のステアリングシリンダのピストン近傍の拡大平面断面図である。
【
図10】第2実施形態による船外機のステアリングシリンダの油室からエアの排出を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】第2実施形態による船外機のステアリングシリンダのエアガイド部材を示した斜視図である。
【
図12】第1実施形態の第1変形例による船外機のステアリングシリンダのエアガイド部材を示した斜視図である。
【
図13】第1実施形態の第2変形例による船外機のステアリングシリンダのエアガイド部材を示した斜視図である。
【
図14】第1実施形態の第3変形例による船外機のステアリングシリンダのエアガイド部材を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
[第1実施形態]
図1~
図8を参照して、第1実施形態による船外機120を備える船舶100の構成について説明する。
【0033】
(船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶100は、船体110と、船外機120と、を備える。船外機120は、船体110の後方のトランサムに取り付けられている。船外機120は、船体110を推進するための船舶用推進装置である。船舶100は、たとえば、運河や湖沼等において遊覧等に用いられる船舶である。また、船舶100は、比較的小型の船舶である。
【0034】
なお、図中のFWDおよびBWDは、それぞれ、船舶100の前方および後方を示している。また、図中のLおよびRは、それぞれ、船舶100の左方および右方を示している。また、図中のZ1およびZ2は、それぞれ、船舶100の上方および下方を示している。
【0035】
(船体の構成)
船体110は、ステアリングホイール111を含む。ステアリングホイール111は、船外機120による船体110の推進方向を変更するためのユーザの操作を受け付けるように構成されている。ステアリングホイール111に対するユーザの操作に伴って、ステアリングホイール111から船外機120に設けられたステアリングコントロールユニット(図示しない)に電気信号が送信される。ステアリングコントロールユニットは、ステアリングホイール111から送信された電気信号に基づいて、船体110の推進方向を変更するように船外機120に設けられたステアリング装置40(
図2参照)のステアリングモータ46b(
図4参照)を制御する。
【0036】
(船外機の構成)
図2に示すように、船外機120は、船外機本体10と、船外機本体10を船体110のトランサムに取り付ける一対のクランプブラケット20と、船外機本体10を支持するスイベルブラケット30と、を含む。また、船外機120は、船外機本体10を上下方向に回動させる油圧式のパワートリムチルト装置(図示しない)と、船外機本体10を左右方向に回動させる油圧式のステアリング装置40と、を含む。
【0037】
(船外機本体の構成)
船外機本体10は、エンジン11と、ドライブシャフト12と、プロペラシャフト13と、プロペラ14と、を含む。エンジン11は駆動力を発生させる内燃機関である。ドライブシャフト12およびプロペラシャフト13は、エンジン11の駆動力をプロペラ14に伝達する。プロペラ14は、伝達されたエンジン11の駆動力により、水中において回転することにより推力(船体110を推進するための推進力)を発生させる。
【0038】
船外機本体10は、パワートリムチルト装置により、クランプブラケット20に対して、スイベルブラケット30とともに上下方向に回動される。これにより、船体110の推進時において、水中に配置されたプロペラ14の上下方向の向きが調整されるとともに、船体110の停船時または推進開始時において、水中と水上との間でプロペラ14の位置が変更される。また、船外機本体10は、ステアリング装置40により、スイベルブラケット30(クランプブラケット20)に対して、左右方向に回動される。これにより、船体110の推進時において、水中に配置されたプロペラ14の左右方向の向きが調整される。
【0039】
(クランプブラケットの構成)
図3に示すように、クランプブラケット20は、船体110のトランサムに取り付けられている。クランプブラケット20は、左右方向に離間して一対設けられている。クランプブラケット20には、スイベルブラケット30が左右方向に延びるチルト軸(図示しない)回りに回動可能な状態で取り付けられている。スイベルブラケット30には、上下方向に延びるステアリング軸(図示しない)を介して船外機本体10が取り付けられている。すなわち、クランプブラケット20は、スイベルブラケット30および船外機本体10を回動可能に支持している。
【0040】
(スイベルブラケットの構成)
スイベルブラケット30は、左右方向において、一対のクランプブラケット20の間に配置されている。スイベルブラケット30は、チルト軸を介して、一対のクランプブラケット20に取り付けられている。スイベルブラケット30は、チルト軸回りに回動することにより、上下方向に回動するように構成されている。
【0041】
(パワートリムチルト装置の構成)
パワートリムチルト装置は、クランプブラケット20に取り付けられている。パワートリムチルト装置は、一対のクランプブラケット20の間に配置されている。パワートリムチルト装置は、スイベルブラケット30および船外機本体10をチルト軸の中心軸線91周りに上下方向に回動させるように構成されている。
【0042】
(ステアリング装置の構成)
図4に示すように、ステアリング装置40は、ステアリングシリンダ41と、油路42(
図5参照)と、アダプタ44と、油配管45と、ステアリング用油供給排出装置46と、を含む。
図5に示すように、ステアリングシリンダ41は、作動油が収容される油室51を含む。
図4に示すように、ステアリング用油供給排出装置46は、ステアリングポンプ46aと、ステアリングモータ46bと、を含む。油室51(
図5参照)は、油路42、アダプタ44および油配管45を介して、ステアリングポンプ46aと接続されている。ステアリングモータ46bは、ステアリングコントロールユニットによる制御によりステアリングポンプ46aを駆動して、ステアリングポンプ46aから油室51への作動油の供給、および、油室51から外部への作動油の排出を行う。すなわち、油路42は、油室51への作動油の供給および油室51からの作動油の排出を行うために設けられている。
【0043】
(ステアリングシリンダの構成)
図5に示すように、ステアリングシリンダ41は、船外機本体10の左右方向に延びるピストンロッド52と、ピストンロッド52に固定されたピストン53と、内部にピストン53が配置され、内部に作動油を収容する油室51が設けられたシリンダボディ54と、を含む。具体的には、左右方向に延びるピストンロッド52の左方の端部および右方の端部は、それぞれ、一対のクランプブラケット20に対して回動可能な状態で一対のクランプブラケット20に支持されている。ピストン53は、左右方向において、一対のクランプブラケット20の中央部でピストンロッド52に固定されている。ピストン53は、シリンダボディ54の内部空間を、ピストン53の左方の空間とピストン53の右方の空間とに仕切っている。これにより、シリンダボディ54内には、作動油を収容する油室51として、ピストン53の左方の左油室51aおよびピストン53の右方の右油室51bが形成されている。
【0044】
ステアリングシリンダ41は、油室51の作動油の量を調整してシリンダボディ54を左右方向に移動させることにより、ステアリング軸を回動させて船外機本体10(
図3参照)を左右方向に回動させるように構成されている。具体的には、ステアリングシリンダ41は、ピストンロッド52を介して、クランプブラケット20(
図3参照)に回動可能に取り付けられている。ステアリング用油供給排出装置46(
図4参照)は、左油室51aおよび右油室51bのうちの一方に作動油を供給するとともに、左油室51aおよび右油室51bのうちの他方から作動油を排出するように構成されている。これにより、左油室51aおよび右油室51bのうちの一方に収容された作動油の増加、および、左油室51aおよび右油室51bのうちの他方に収容された作動油の減少に伴って、シリンダボディ54が左右方向に移動する。そして、シリンダボディ54の左右方向への移動は、ステアリング軸に伝達され、ステアリング軸が左右方向に回動する。これにより、ステアリング軸に取付けられた船外機本体10がステアリング軸の中心軸線92周りに左右方向に回動して、船体110の推進方向が変更される。
【0045】
(油路の構成)
第1実施形態では、油路42は、ピストンロッド52内に設けられている。具体的には、ピストンロッド52の内部には、一方の端部が油配管45(
図4参照)に接続され、他方の端部が油室51に接続される油路42が形成されている。油路42は、左油室51aに接続される油路42aと、右油室51bに接続される油路42bと、を含む。ピストンロッド52は、2重管構造を有する。油路42aは、2重管のうちの内側の管として構成されている。油路42bは、2重管のうちの内側の管と外側の管との間に挟まれた領域として構成されている。
【0046】
また、第1実施形態では、左右方向において油室51の油路42への接続口である油路接続口55は、シリンダボディ54内に配置されたピストンロッド52の外周面52aのうちの周方向における一部に設けられている。具体的には、左油室51aに接続される油路42aの油路接続口55aは、ピストンロッド52の内部において、2重管のうちの内側の管からピストンロッド52の外周側に向かって左油室51aのピストンロッド52側の端部(外周面52a)まで延びている。また、右油室51bに接続される油路42bの油路接続口55bは、ピストンロッド52の内部において、2重管のうちの外側の管からピストンロッド52の外周側に向かって右油室51bのピストンロッド52側の端部(外周面52a)まで延びている。油路接続口55aおよび55bは、ピストンロッド52の軸方向(左右方向)から見て、周方向に互いに略等間隔に複数(たとえば、4つ)設けられている。
【0047】
また、第1実施形態では、油路接続口55は、油室51内における左右方向において端面56の近傍に設けられている。具体的には、左油室51aに接続される油路42aの油路接続口55aは、左右方向におけるピストン53側(右方)の位置と、ピストン53の左油室51a側の端面56aとが、左右方向において略同じ位置となるように形成されている。同様に、右油室51bに接続される油路42bの油路接続口55bは、左右方向におけるピストン53側(左方)の位置と、ピストン53の右油室51b側の端面56bとが、左右方向において略同じ位置となるように形成されている。
【0048】
(エアガイド部材の構成)
ここで、
図6に示すように、第1実施形態では、船外機120(
図2参照)は、油路接続口55の近傍に設けられ、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、油室51に滞留したエア60を油路接続口55に導くエアガイド部材70を備える。油室51に滞留するエア60(
図7参照)は、たとえば、ステアリングシリンダ41の組立時に、エア60が油室51に侵入した後、油路接続口55から排出されずに油室51に残留するエアである。なお、
図6では、油路42aに油路接続口55aを介して左油室51aから作動油が排出されるとともに、油路42bから油路接続口55bを介して右油室51bに作動油が供給される状態を示している。また、
図6では、エアガイド部材70の形状を明瞭に示すために、断面を表すエアガイド部材70のハッチングを省略している。
【0049】
第1実施形態では、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、エアガイド部材70の外周側に設けられた外周側流路81を介して、油室51の上部に滞留したエア60を油路接続口55に導くように構成されている。具体的には、
図7に示すように、エア60は作動油よりも軽いため、油室51に侵入したエア60は、油室51の上部に滞留する。油室51は、ピストンロッド52の軸方向から見て、円形形状を有するので、油室51の上部は、油室51の外周側の一部である。また、エア60は作動油と比較して粘性が低い。このため、
図6に示すように、外周側流路81を介して油室51から油路42に作動油が排出される動作が行われる際に、油室51の上部(外周側)に滞留したエア60が優先的に排出される。なお、
図7では、2重管構造を有するピストンロッド52を簡略化して1重管構造として描いているとともに、複数の油路接続口55を簡略化して1つだけ描いている。
【0050】
また、
図8に示すように、第1実施形態では、エアガイド部材70は、円板状に形成されている。そして、
図6に示すように、外周側流路81は、円板状のエアガイド部材70の外周面70aと油室51の内周面51cとによって形成されている。具体的には、外周側流路81は、円板状のエアガイド部材70の外周面70aと、油室51の内周面51cとの間の環状の隙間として構成されている。外周面70aと内周面51cとの間の環状の隙間の幅は、たとえば、数mmに設定されている。なお、エアガイド部材70の内周側のピストンロッド52が貫通する孔は、ピストンロッド52の直径より僅かに大きく(外周面70aと内周面51cとの間の環状の隙間の幅よりも遥かに小さく)形成されている。これにより、エアガイド部材70は、ピストンロッド52の外周面52aにガイドされながら、油室51内を後述する所定の範囲で移動可能となる。
【0051】
また、第1実施形態では、エアガイド部材70は、油室51に作動油が供給される場合に、外周側流路81に加えて、外周側流路81よりも内周側に設けられた内周側流路82を介して油室51に作動油を供給するように構成されている。具体的には、
図8に示すように、エアガイド部材70には、外周側流路81よりも内周側に設けられた内周側流路82が形成されている。そして、
図6に示すように、エアガイド部材70は、油路42に油路接続口55を介して油室51から作動油が供給される場合には、作動油が外周側流路81および内周側流路82を通過させることが可能に構成されている。
【0052】
また、第1実施形態では、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、内周側流路82を塞ぐように、かつ、油室51に作動油が供給される場合に、内周側流路82を開放するように、油室51内を左右方向に移動可能に構成されている。詳細には、エアガイド部材70は、油室51内における左右方向の端面56に当接する当接部71を含む。そして、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、当接部71が端面56に当接して内周側流路82を塞ぐ当接位置P1まで左右方向に移動するとともに、油室51に作動油が供給される場合に、当接部71が端面56から離間して内周側流路82を開放する離間位置P2まで左右方向に移動するように構成されている。
【0053】
具体的には、第1実施形態では、
図8に示すように、エアガイド部材70は、左右方向の端面56(
図6参照)側に突出する当接部71としての複数(8つ)の第1凸部72と、複数(8つ)の第1凸部72同士の間に形成され、油室51(
図6参照)において、外周側とピストンロッド52(
図6参照)が設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部73と、を含む。また、エアガイド部材70は、複数(8つ)の第1凸部72のうちの少なくとも1つに設けられ、左右方向に貫通する内周側流路82としての貫通孔72aを含む。すなわち、
図6に示すように、油路42a(油路42)に油路接続口55a(油路接続口55)を介して左油室51a(油室51)から作動油が排出される場合に、エアガイド部材70が当接位置P1に移動して、複数の第1凸部72の左右方向の端面56側の面72bが左右方向の端面56に当接する。この状態では、内周側流路82としての貫通孔72aが塞がれている。そして、左油室51a(油室51)から外周側流路81を介して、左右方向の端面56側に流れたエア60は、内外接続用凹部73を介して外周側から内周側に向かって流れる。また、油路42b(油路42)から油路接続口55b(油路接続口55)を介して右油室51b(油室51)に作動油が供給される場合に、エアガイド部材70が離間位置P2に移動して、複数の第1凸部72の左右方向の端面56側の面72bが左右方向の端面56から離間する。この状態では、内周側流路82としての貫通孔72aが開放されている。
【0054】
また、
図8に示すように、第1実施形態では、複数(8つ)の第1凸部72は、各々、左右方向から見て、扇形形状を有する。そして、貫通孔72aは、左右方向から見て、複数の第1凸部72の扇形形状よりも小さい扇形形状を有する。すなわち、複数の第1凸部72の左右方向の端面56と当接する左右方向の端面56側の面72bは、扇形の枠形状を有する。なお、第1実施形態では、貫通孔72aは、複数(8つ)の第1凸部72の全てに設けられている。
【0055】
また、エアガイド部材70は、複数の第1凸部72の外周側において、複数の第1凸部72に対して端面56側とは反対側に凹むとともに、外周側流路81と接続するように環状に形成された環状凹部74を含む。なお、環状凹部74は、内外接続用凹部73と同じだけ端面56側とは反対側に凹んでいる。
【0056】
また、エアガイド部材70は、ピストンロッド52が設けられた油室51における内周側において、複数の第1凸部72に対して端面56側とは反対側に凹むとともに、内外接続用凹部73と油路接続口55とを接続するように環状に形成された第1環状凹部75を含む。なお、第1環状凹部75は、内外接続用凹部73よりも端面56側とは反対側に大きく凹んでいる。
【0057】
また、
図6に示すように、第1実施形態では、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、油室51から油路接続口55に排出される作動油の流れによって、当接位置P1まで左右方向に移動するとともに、油室51に作動油が供給される場合に、油路接続口55から油室51に供給される作動油の流れによって、離間位置P2まで左右方向に移動するように構成されている。具体的には、エアガイド部材70は、油路42a(油路42)に油路接続口55a(油路接続口55)を介して左油室51a(油室51)から作動油が排出される場合に、左油室51a(油室51)から排出される作動油の流れにより当接位置P1側に向かって流されることによって、離間位置P2から当接位置P1まで左右方向に移動する。また、エアガイド部材70は、油路42b(油路42)から油路接続口55b(油路接続口55)を介して右油室51b(油室51)に作動油が供給される場合に、右油室51b(油室51)に供給される作動油の流れにより離間位置P2側に向かって流されることによって、当接位置P1から離間位置P2まで左右方向に移動する。
【0058】
また、第1実施形態では、船外機120は、エアガイド部材70が左右方向において離間位置P2よりも当接位置P1とは反対側に移動しないように規制する規制部52bを備える。具体的には、ピストンロッド52の油路接続口55側の端部には、油路接続口55よりも外周側に突出する段差形状を有する規制部52bが設けられている。これにより、エアガイド部材70の移動範囲は、左右方向において、当接位置P1と離間位置P2との間に限定されている。
【0059】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
第1実施形態では、上記のように、船外機120(船舶100)は、左右方向において油室51の油路42への接続口である油路接続口55の近傍に設けられ、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、油室51に滞留したエア60を油路接続口55に導くエアガイド部材70を備える。これにより、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、エアガイド部材70によって、油室51に滞留したエア60を油路接続口55に導くことができる。すなわち、油室51から油路42を介して作動油を排出するステアリングシリンダ41の通常の動作によって、油室51に滞留したエア60が油路接続口55に導かれるので、ステアリングシリンダ41を傾ける等の煩雑な作業を作業者が行うことなく、自動的に油室51からエア60を外部に排出することができる。その結果、ステアリングシリンダ41内の油室51のエア抜きを容易に行うことができる。また、作業者がエア抜き作業を実施することなく、船舶100のユーザが操船中に(船舶100の推進方向を変更するための)ステアリング操作を行うだけで、いつでもエア抜きを行うことができる。
【0061】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、エアガイド部材70の外周側に設けられた外周側流路81を介して、油室51の上部に滞留したエア60を油路接続口55に導くように構成されている。これにより、油室51の上部(外周側)は、油室51の内周側と比較して外周側流路81に近いとともに、エア60は作動油よりも粘性が低いので、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、油室51の上部(外周側)に滞留したエア60を、外周側流路81を介して、油室51から優先的に外部に排出することができる。その結果、油室51から油路42を介して作動油が排出される場合に、エアガイド部材70によって、油室51の上部に滞留したエア60を油路接続口55に確実に導くことができる。
【0062】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、円板状に形成されている。そして、外周側流路81は、円板状のエアガイド部材70の外周面70aと油室51の内周面51cとによって形成されている。これにより、円板状のエアガイド部材70によって、油室51の上部(外周側)に滞留したエア60を油路接続口55に導く外周側流路81をエアガイド部材70の外周側に容易に形成することができる。
【0063】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、油室51に作動油が供給される場合に、外周側流路81に加えて、外周側流路81よりも内周側に設けられた内周側流路82を介して油室51に作動油を供給するように構成されている。これにより、油室51に作動油が供給される場合に、作動油が供給される流路が外周側流路81に限定される場合と比較して、作動油が供給される流路の断面積を大きくすることができる。その結果、油室51に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を低減することができる。
【0064】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、内周側流路82を塞ぐように、かつ、油室51に作動油が供給される場合に、内周側流路82を開放するように、油室51内を左右方向に移動可能に構成されている。これにより、エアガイド部材70を油室51内において左右方向に移動させることによって、油室51から作動油を排出する場合に、外周側流路81を容易に形成することができるとともに、油室51に作動油が供給される場合に、外周側流路81および内周側流路82を容易に形成することができる。
【0065】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、油室51内における左右方向の端面56に当接する当接部71を含む。そして、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、当接部71が端面56に当接して内周側流路82を塞ぐ当接位置P1まで左右方向に移動するとともに、油室51に作動油が供給される場合に、当接部71が端面56から離間して内周側流路82を開放する離間位置P2まで左右方向に移動するように構成されている。これにより、エアガイド部材70を油室51内において当接位置P1と離間位置P2との間で左右方向に移動させることによって、油室51から作動油が排出される場合に、内周側流路82を容易に塞ぐことができるとともに、油室51に作動油が供給される場合に、内周側流路82を容易に開放することができる。
【0066】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、油室51から作動油が排出される場合に、油室51から油路接続口55に排出される作動油の流れによって、当接位置P1まで左右方向に移動するとともに、油室51に作動油が供給される場合に、油路接続口55から油室51に供給される作動油の流れによって、離間位置P2まで左右方向に移動するように構成されている。これにより、油室51から作動油を排出するステアリングシリンダ41の通常の動作によってエアガイド部材70が当接位置P1まで左右方向に移動するとともに、油路42に作動油を供給するステアリングシリンダ41の通常の動作によってエアガイド部材70が離間位置P2まで左右方向に移動するので、エアガイド部材70を移動させるための専用の移動機構を別途設けることなく、エアガイド部材70を油室51内において当接位置P1および離間位置P2まで左右方向に移動させることができる。
【0067】
また、第1本実施形態では、上記のように、船外機120(船舶100)は、エアガイド部材70が左右方向において離間位置P2よりも当接位置P1とは反対側に移動しないように規制する規制部52bを備える。これにより、規制部52bによってエアガイド部材70の移動範囲が左右方向において当接位置P1と離間位置P2との間に制限されるので、エアガイド部材70の移動範囲が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0068】
また、第1本実施形態では、上記のように、油路接続口55は、左右方向において端面56の近傍に設けられている。これにより、左右方向において離間位置P2を端面56から比較的近い位置に配置することができるので、エアガイド部材70の移動範囲が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0069】
また、第1本実施形態では、上記のように、油路42は、ピストンロッド52内に設けられている。また、油路接続口55は、シリンダボディ54内に配置されたピストンロッド52の外周面52aに設けられている。そして、エアガイド部材70は、左右方向の端面56側に突出する当接部71としての複数の第1凸部72と、複数の第1凸部72同士の間に形成され、油室51において、外周側とピストンロッド52が設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部73と、を含む。これにより、当接部71としての複数の第1凸部72によって、油室51から作動油が排出される場合に、内周側流路82を容易に塞ぐことができるとともに、油室51に作動油が供給される場合に、内周側流路82を容易に開放することができる。また、内外接続用凹部73によって、油室51から作動油が排出される場合に、エアガイド部材70の端面56側において、外周側流路81と内周側のピストンロッド52の外周面52aに設けられた油路接続口55とを容易に接続することができるとともに、油室51に作動油が供給される場合に、エアガイド部材70の端面56側において、外周側流路81および内周側流路82と、油路接続口55とを容易に接続することができる。
【0070】
また、第1本実施形態では、上記のように、エアガイド部材70は、複数の第1凸部72のうちの少なくとも1つに設けられ、左右方向に貫通する内周側流路82としての貫通孔72aを含む。これにより、貫通孔72aによって、油室51から作動油が排出される場合に複数の第1凸部72が左右方向における端面56に当接して塞がれるとともに油室51に作動油が供給される場合に複数の第1凸部72が左右方向における端面56から離間して開放される内周側流路82を容易に形成することができる。
【0071】
また、第1本実施形態では、上記のように、貫通孔72aは、複数の第1凸部72の全てに設けられている。これにより、貫通孔72aが複数の第1凸部72のうちの幾つか一部に設けられている場合と比較して、内周側流路82の断面積を容易に大きくすることができる。その結果、油室51に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0072】
また、第1本実施形態では、上記のように、複数の第1凸部72は、各々、左右方向から見て、扇形形状を有し、貫通孔72aは、左右方向から見て、複数の第1凸部72の扇形形状よりも小さい扇形形状を有する。これにより、貫通孔72aが複数の第1凸部72と同じ扇形形状ではない形状を有する場合と比較して、内周側流路82の断面積を容易に大きくすることができる。その結果、油室51に作動油が供給される場合の作動油の圧力損失を効果的に低減することができる。
【0073】
また、第1本実施形態では、上記のように、油路接続口55は、ピストンロッド52の外周面52aのうちの周方向における一部に設けられている。そして、エアガイド部材70は、ピストンロッド52が設けられた油室51における内周側において、複数の第1凸部72に対して端面56側とは反対側に凹むとともに、内外接続用凹部73と油路接続口55とを接続するように環状に形成された第1環状凹部75を含む。これにより、環状に形成された第1環状凹部75によって、外周側とピストンロッド52が設けられた内周側とを接続するように延びる内外接続用凹部73と、ピストンロッド52の外周面52aのうちの周方向の一部に設けられた油路接続口55とを容易に接続することができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、
図9~
図11を参照して、第2実施形態による船外機220を備える船舶200の構成について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態による船外機220および船舶200と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0075】
(油路の構成)
図9に示すように、第2実施形態では、油路42がピストンロッド52内に設けられた上記第1実施形態と異なり、油路242は、ステアリングシリンダ241の前方に設けられている。具体的には、油室251の前方には、一方の端部が油配管245に接続され、他方の端部が油室251に接続される油路242がステアリングシリンダ241と前後に並ぶように左右方向に延びるように形成されている。油路242は、左油室251aに接続される油路242aと、右油室251bに接続される油路242bと、を含む。油路242aは、ステアリングシリンダ241の左方のエンドキャップ257側において左油室251aに接続されるとともに、ステアリングシリンダ241のピストン253側において油配管245と接続されている。また、油路242bは、ステアリングシリンダ241の右方のエンドキャップ257側において右油室251bに接続されるとともに、ステアリングシリンダ241のピストン253側において油配管245と接続されている。なお、
図9では、油路242aから油路接続口255aを介して左油室251aに作動油が供給されるとともに、油路242bに油路接続口255bを介して右油室251bから作動油が排出される状態を示している。また、
図9では、エアガイド部材270の形状を明瞭に示すために、断面を表すエアガイド部材270のハッチングを省略している。
【0076】
また、第2実施形態では、油路接続口55がシリンダボディ54内に配置されたピストンロッド52の外周面52aのうちの周方向における一部に設けられた上記第1実施形態と異なり、左右方向において油室251の油路242への接続口である油路接続口255は、シリンダボディ254の内周面254a(油室251の内周面251c)のうちの周方向における一部に設けられている。具体的には、左油室251aに接続される油路242aの油路接続口255aは、シリンダボディ254の外周部の内部において、油路242aから内周側に向かって左油室251aの油路242a側の端部(内周面251c)まで延びている。また、右油室251bに接続される油路242bの油路接続口255bは、シリンダボディ254の(筒形状を形成する)外周部の内部において、油路242bから内周側に向かって右油室251bの油路242b側の端部(内周面251c)まで延びている。
【0077】
また、第2実施形態では、油路接続口55が油室51内における左右方向において(ピストン53側の)端面56の近傍に設けられた上記第1実施形態と異なり、油路接続口255は、油室251内における左右方向において(ピストン253側とは反対側の)端面256の近傍に設けられている。
【0078】
(エアガイド部材の構成)
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、船外機220は、油路接続口255の近傍に設けられ、油室251から油路242を介して作動油が排出される場合に、油室251に滞留したエア60(
図10参照)を油路接続口255に導くエアガイド部材270を備える。
図10に示すように、上記第1実施形態と同様に、ステアリングシリンダ241の組立時に、エア60が油室251に侵入した後、油路接続口255から排出されずに油室251に残留する。
【0079】
図11に示すように、第2実施形態では、エアガイド部材70が当接部71としての複数(8つ)の第1凸部72と複数(8つ)の第1凸部72同士の間に形成された内外接続用凹部73とを含む上記第1実施形態と異なり、エアガイド部材270は、油室251において、端面256(
図9参照)側に突出する当接部271としての第2凸部272を含む。すなわち、
図9に示すように、油路242b(油路242)に油路接続口255b(油路接続口255)を介して右油室251b(油室251)から作動油が排出される場合に、第2凸部272の左右方向の端面256側の面272bが左右方向の端面256に当接する。この状態では、内周側流路282が塞がれている。
【0080】
なお、第2実施形態では、内周側流路82として第1凸部72のうちの少なくとも1つに設けられ左右方向に貫通する貫通孔72aを設けた第1実施形態と異なり、内周側流路282は、ピストンロッド252の外周面252aと、エアガイド部材270の中央部の左右方向に貫通する貫通孔273の内周面273aとの間の環状の隙間として構成されている。外周面252aと内周面273aとの環状の隙間の幅は、たとえば、数mmに設定されている。
【0081】
また、第2実施形態では、外周側流路81として円板状のエアガイド部材70の外周面70aと油室51の内周面51cとの間の環状の隙間を設けた第1実施形態と異なり、エアガイド部材270は、外周側に設けられ、左右方向に貫通する外周側流路281としての切り欠き部276を含む。切り欠き部276は、エアガイド部材270の外周面270aの一部として構成されている。切り欠き部276aは、ピストンロッド252の軸方向(左右方向)から見て、互いに略等間隔に複数(たとえば、8つ)設けられている。なお、エアガイド部材270の外周面270aのうちの切り欠き部276が形成されていない部分の直径は、所定の範囲(当接位置P1と離間位置P2)において、シリンダボディ254の内周面254aの直径よりも僅かに小さく形成されている。これにより、エアガイド部材270は、シリンダボディ254の内周面254aにガイドされながら、油室251内を所定の範囲で移動可能となる。
【0082】
また、第2実施形態では、エアガイド部材270は、外周側において、第2凸部272に対して端面256側とは反対側に凹むとともに、油路接続口255と接続するように環状に形成された第2環状凹部275を含む。
【0083】
また、第2実施形態では、ピストンロッド52の油路接続口55側の端部に、油路接続口55よりも外周側に突出する規制部52bが設けられている上記第1実施形態と異なり、シリンダボディ254の内周面254aの油路接続口255側の近傍に、ピストン253側の内周面254aと比較して外周側に凹む段差形状を有する規制部254bが設けられている。
【0084】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0085】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
第2実施形態では、上記のように、船外機220(船舶200)は、左右方向において油室251の油路242への接続口である油路接続口255の近傍に設けられ、油室251から油路242を介して作動油が排出される場合に、油室251に滞留したエア60を油路接続口255に導くエアガイド部材270を備える。これにより、上記第1実施形態と同様に、油室251から油路242を介して作動油を排出するステアリングシリンダ241の通常の動作によって、油室251に滞留したエア60が油路接続口255に導かれるので、ステアリングシリンダ241を傾ける等の煩雑な作業を作業者が行うことなく、自動的に油室521からエア60を外部に排出することができる。その結果、上記第1実施形態と同様に、ステアリングシリンダ241内の油室51のエア抜きを容易に行うことができる。
【0087】
また、第2本実施形態では、上記のように、油路242は、ステアリングシリンダ241の前方に設けられている。また、油路接続口255は、シリンダボディ254の内周面254aに設けられている。そして、エアガイド部材270は、油室251において、端面256側に突出する当接部271としての第2凸部272を含む。これにより、当接部271としての第2凸部272によって、油室251から作動油が排出される場合に、内周側流路282を容易に塞ぐことができるとともに、油室251に作動油が供給される場合に、内周側流路282を容易に開放することができる。
【0088】
また、第2本実施形態では、上記のように、エアガイド部材270は、外周側に設けられ、左右方向に貫通する外周側流路281としての切り欠き部276を含む。これにより、切り欠き部276によって、油室251から作動油が排出される場合および油室251に外周側流路81を容易に形成することができる。
【0089】
また、第2本実施形態では、上記のように、油路接続口255は、シリンダボディ254の内周面254aのうちの周方向における一部に設けられている。そして、エアガイド部材270は、外周側において、第2凸部272に対して端面256側とは反対側に凹むとともに、油路接続口255と接続するように環状に形成された第2環状凹部275を含む。これにより、環状に形成された第2環状凹部275によって、外周側流路281と、シリンダボディ254の内周面254aのうちの周方向における一部に設けられた油路接続口255とを容易に接続することができる。
【0090】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0091】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0092】
たとえば、上記第2実施形態では、油路242が、ステアリングシリンダ241の前方に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、油路が、ステアリングシリンダの後方に設けられていてもよいし、ステアリングシリンダの下方に設けられていてもよい。
【0093】
また、上記第1実施形態では、内周側流路82としての貫通孔72aが、当接部71としての複数の第1凸部72の全てに設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図12の第1変形例のエアガイド部材370に示すように、内周側流路382としての貫通孔372aが、当接部371としての複数の第1凸部372の一部のみに設けられていてもよい。
【0094】
また、上記第1実施形態では、複数の第1凸部72が、各々、左右方向から見て、扇形形状を有し、内周側流路82としての貫通孔72aが、左右方向から見て、複数の第1凸部72の扇形形状よりも小さい扇形形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図12の第1変形例のエアガイド部材370に示すように、複数の第1凸部372が、各々、左右方向から見て、扇形形状を有し、内周側流路382としての貫通孔372aが、左右方向から見て、扇形形状以外の形状を有していてもよい。また、図示しないが、複数の第1凸部が、各々、左右方向から見て、扇形形状以外の形状を有していてもよい。
【0095】
また、上記第1施形態では、エアガイド部材70が、複数の第1凸部72の外周側において、複数の第1凸部72に対して端面56側とは反対側に凹むとともに、外周側流路81と接続するように環状に形成された環状凹部74を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エアガイド部材が、複数の第1凸部の外周側において、複数の第1凸部に対して端面側とは反対側に凹むとともに、外周側流路と接続するように環状に形成された環状凹部を含まなくてもよい。
【0096】
また、上記第1実施形態では、油路接続口55が、ピストンロッド52の外周面52aにおいて、周方向に互いに略等間隔に複数設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、油路接続口が、ピストンロッドの外周面において、周方向に互いに不均一な間隔に複数設けられていてもよい。また、油路接続口が、ピストンロッドの外周面において、周方向に1つだけ設けられていてもよい。
【0097】
また、上記第2実施形態では、エアガイド部材270が、外周側に設けられ、左右方向に貫通する外周側流路281としての切り欠き部276を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図13の第2変形例のエアガイド部材470に示すように、上記第1実施形態のエアガイド部材が外周側流路としての切り欠き部を含むように構成してもよいし、
図14の第3変形例のエアガイド部材570に示すように、上記第1実施形態の変形例のエアガイド部材が外周側流路としての切り欠き部を含むように構成してもよい。
【0098】
また、上記第1および第2実施形態では、エアガイド部材70、270が、油室51、251に作動油が供給される場合に、外周側流路81、281に加えて内周側流路82、282を介して油室51、251に作動油を供給するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エアガイド部材が、油室に作動油が供給される場合に、内周側流路を介さずに外周側流路を介して油室に作動油を供給するように構成してもよい。
【0099】
また、上記第1および第2実施形態では、ステアリングホイール111に対するユーザの操作に伴って、ステアリングホイール111から船外機120、220に設けられたステアリングコントロールユニットに電気信号が送信される。そして、ステアリングコントロールユニットは、ステアリングホイール111から送信された電気信号に基づいて、船体110、210の推進方向を変更するように船外機120、220に設けられたステアリング装置40のステアリングモータ46bを制御する。そして、ステアリングモータ46bの制御により船外機120、220に設けられたステアリングポンプ46aを駆動して、ステアリングポンプ46aから油室51、251への作動油の供給、および、油室51、251から外部への作動油の排出を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ステアリングホイールに対するユーザの操作に伴って、船体に設けられた機械式のステアリングポンプを駆動して、船外機に設けられたステアリングシリンダの油室への作動油の供給、および、油室からの作動油の排出を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 船外機本体
41、241 ステアリングシリンダ
42(42a、42b)、242(242a、242b) 油路
51、251 油室
51c、251c (油室の)内周面
56(56a、56b)256(256a、256b) (油室内における左右方向の)端面
52、252 ピストンロッド
52a、252a (ピストンロッドの)外周面
52b、254b 規制部
53、253 ピストン
54、254 シリンダボディ
55(55a、55b)、255(255a、255b) 油路接続口
60 エア
70、270、370、470、570 エアガイド部材
70a (エアガイド部材の)外周面
71、271、371 当接部
72、372 第1凸部
72a、372a 貫通孔
73 内外接続用凹部
75 第1環状凹部
81、281 外周側流路
82、282、382 内周側流路
100、200 船舶
110 船体
111 ステアリングホイール
120、220 船外機
254a (シリンダボディの)内周面
272 第2凸部
275 第2環状凹部
276 切り欠き部
P1 当接位置
P2 離間位置