(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016571
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】流体制御機器
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20220114BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F16K37/00 G
F16K31/122
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189831
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2019506055の分割
【原出願日】2018-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2017053707
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】米華 克典
(72)【発明者】
【氏名】落石 将彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(57)【要約】
【課題】流体制御機器の異常を検知するための部材を内部に収容しつつ、小型化を実現した流体制御機器を提供する。また、流体制御機器の異常を検知した結果を外部において容易に確認できるようにする。
【解決手段】流体制御機器1は、機器内に備えられた情報処理モジュール5と、流路を備えたバルブボディ11と、バルブボディ11に固定されたアクチュエータボディ12と、アクチュエータボディ12に固定され、側面に貫通孔133dが形成された中空のケーシング13と、アクチュエータボディ12内に設けられ、内部に駆動圧導入室S2へ連通する駆動圧導入路126bが形成されたピストン126と、駆動圧を導入する管であって、一端が駆動圧導入路126bに挿し込まれ、他端がケーシング13の貫通孔133dから外部へ導出された導入管21とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を備えたバルブボディと、
前記バルブボディに固定されたアクチュエータボディと、
前記アクチュエータボディに固定され、側面に貫通孔が形成された中空のケーシングと、
前記アクチュエータボディ内に設けられ、内部に駆動圧導入室へ連通する駆動圧導入路が形成されたピストンと、
駆動圧を導入する管であって、一端が前記駆動圧導入路に挿し込まれ、他端が前記ケーシングの貫通孔から外部へ導出された導入管と、
前記バルブボディ内に備えられたセンサと、
前記ケーシング内に設けられ、前記ケーシング内の前記導入管の上方に形成されるスペースに情報処理モジュールを保持すると共に、前記センサから導出された配線を貫通させるための貫通孔が設けられている保持部材と、
を有する、
流体制御機器。
【請求項2】
前記ケーシングの上面に、上記情報処理モジュールと接続された情報表示用パネルが嵌め込まれる情報表示パネル用貫通孔が形成されている、
請求項1記載の流体制御機器。
【請求項3】
前記アクチュエータボディの外周面には、前記バルブボディ及び前記ケーシングの内周面に形成されたネジと螺合するネジが形成され、前記バルブボディ及び前記ケーシングと螺合する部分に、前記センサから導出された配線を通すための配線溝が形成されており、
前記センサから導出された配線が、前記配線溝を介して前記ケーシング内へ引き込まれている、
請求項1又は2記載の流体制御機器。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの項に記載の流体制御機器を用いた流体制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれかの項に記載の流体制御機器を複数用いた流体制御装置であって、
前記流体制御装置におけるデータを表示するためのパネルを有する、流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサやセンサによって得られたデータに基づく処理を実行する情報処理モジュールを内部に格納した流体制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御機器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を惹き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御機器における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、漏出を容易に検知できるだけでなく、従来は考慮していなかった流体制御機器の使用頻度、温度、湿度、及び振動等、上記漏出を始めとして流体制御機器の異常に影響を及ぼす様々な環境要因情報を収集し、異常との相関を分析し、異常発生の予期に役立てることが可能な流体制御機器、及び情報収集方法の要求が高まっている。
また、半導体製造プロセスにおいては反応性が高く極めて毒性の高いガスが使われるため、遠隔的に漏出を検知できることが重要である。
また、上述のALDを実現するためには流体制御機器とプロセスチャンバの配管接続距離が重要になっている。即ち、プロセスガスの制御をより高速化するために、流体制御機器をさらに小型化しプロセスチャンバの直近に配置することが重要になっている。
【0003】
この点、特許文献1では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取り付けられる漏れ検知部材とからなるシール部破損検知機構であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏れ検知部材は前記孔に取り付けられる筒状体とこの筒状体に設けられた可動部材とからなり、この可動部材は制御器内の前記空隙内に充満した漏出流体の圧力によって前記筒状体の外方へ可動とされてなるものが提案されている。
また、特許文献2では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取付けられる漏洩検知部材とからなるシール部破損検知機構付制御器であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏洩検知部材は特定の流体の存在によって感応するものが提案されている。
さらに、特許文献3では、流体の漏れを検出する漏れ検出装置であって、センサ保持体と、漏れ検出対象部材に設けられて漏れ検出対象部材内の密封部分と外部とを連通するリークポートに対向するようにセンサ保持体に保持された超音波センサと、超音波センサのセンサ面とリークポートとの間に設けられた超音波通路と、超音波センサで得られた超音波を処理する処理回路とを備えているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-093736号公報
【特許文献2】特開平05-126669号公報
【特許文献3】特開2014-21029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点、特許文献1、2、3記載の装置はいずれも、異常を検知する機構が流体制御機器の外側に取り付けられるものである。しかし、複数の流体制御機器を集積させた流体制御装置では、流体制御機器同士を密に隣接させることによってコンパクトにしているため、流体制御機器の外側に異常を検知するための部材等を設けることは好ましくない。
また、流体制御機器の異常を検知する部材同士を接続する配線が外側に露出している場合、配線同士の絡まりが生じたり、ショートが引き起こされたりして、流体制御機器そのものに不具合を生じさせる原因ともなりかねない。
【0006】
一方、流体制御機器の内部には、正確な動作が要求される可動部材が収められているため、流体制御機器の異常を検知するための部材等を内部に収容した際、これらの部材が可動部材の動作に干渉するようなことがあってはならない。また、流体制御機器の異常を検知するための部材等を内部に収容させるために流体制御機器が大きくなり、その結果、流体制御装置が大きくなることは好ましくない。
また、流体制御機器の異常を検知するための部材等が内部に収容された構造においても、異常の検知結果は、流体制御機器の外部において容易に確認できることが好ましい。
また、上記装置はいずれも異常の発生後にしかセンサデータの変化が発生しないため、故障の発生を予期する事ができない。
【0007】
そこで本発明は、流体制御機器の異常を検知するための部材を内部に収容しつつ、小型化を実現した流体制御機器を提供することを目的の一つとする。また、流体制御機器の異常を検知した結果を外部において容易に確認できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体制御機器は、流路を備えたバルブボディと、前記バルブボディに固定されたアクチュエータボディと、前記アクチュエータボディに固定され、側面に貫通孔が形成された中空のケーシングと、前記アクチュエータボディ内に設けられ、内部に駆動圧導入室へ連通する駆動圧導入路が形成されたピストンと、駆動圧を導入する管であって、一端が前記駆動圧導入路に挿し込まれ、他端が前記ケーシングの貫通孔から外部へ導出された導入管と、前記バルブボディ内に備えられたセンサと、前記ケーシング内に設けられ、前記ケーシング内の前記導入管の上方に形成されるスペースに情報処理モジュールを保持すると共に、前記センサから導出された配線を貫通させるための貫通孔が設けられている保持部材と、を有する。
【0009】
また、前記ケーシングの上面に、上記情報処理モジュールと接続された情報表示用パネルが嵌め込まれる情報表示パネル用貫通孔が形成されているものとしてもよい。
【0010】
また、前記アクチュエータボディの外周面には、前記バルブボディ及び前記ケーシングの内周面に形成されたネジと螺合するネジが形成され、前記バルブボディ及び前記ケーシングと螺合する部分に、前記センサから導出された配線を通すための配線溝が形成されており、前記センサから導出された配線が、前記配線溝を介して前記ケーシング内へ引き込まれているものとしてもよい。
【0011】
また、前記流体制御機器を用いて、流体制御装置を構成するものとしてもよい。
【0012】
また、前記流体制御機器を複数用いた流体制御装置を構成し、前記流体制御装置におけるデータを表示するためのパネルを有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体制御機器の異常を検知するための部材を流体制御機器の内部に収容しつつ、流体制御機器の小型化を実現することができる。また、流体制御機器の異常を検知した結果を外部において容易に確認することができる。また、異常の原因や異常を予測できるデータを収集して分析できると共に、分析結果に基づいて異常を予測したり、予測と実績を比較して予測精度を上げたりすることもできる。また、バルブの動作時の動的なセンサ測定値のみを学習に用いることができ、精度を落とさずに学習の次元量を削減して計算コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体制御機器を示す外観斜視図であって、(a)正面側、(b)背面側を示す。
【
図2】本実施形態に係る流体制御機器を示す部分透視図であって、(a)閉弁状態、(b)開弁状態を示す。
【
図3】本実施形態に係る流体制御機器のアクチュエータボディを示す外観斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る流体制御機器のアクチュエータボディにカバーを取り付ける工程を説明する図であって、(a)取り付け前、(b)取り付け後を示す。
【
図5】本実施形態に係る流体制御機器に取り付けられた固定部材を示す部分拡大図である。
【
図6】本実施形態に係る流体制御機器のA-A矢視図である。
【
図7】本実施形態に係る流体制御機器に取り付けられる保持部材を示す外観斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る流体制御機器を示す部分透視図である。
【
図9】本実施形態に係る流体制御機器の配線経路を説明するためのB-B矢視図であって、(a)バルブボディとケーシングと透視した図、(b)バルブボディを透視した図を示す。
【
図10】本実施形態に係る流体制御機器によって構成された流体制御装置を示す外観斜視図である。
【
図11】本実施形態に係る流体制御機器が備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図12】本実施形態に係る流体制御機器、及び当該流体制御機器と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図13】本実施形態の変形例に係る流体制御機器、及び当該流体制御機器と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図14】本実施形態の変形例に係る流体制御機器、及び当該流体制御機器と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図15】流体制御機器の開閉にかかる時間を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
以下、本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
図1に示されるように、本実施形態に係る流体制御機器1は、流体制御機器1の異常、特に流体の漏出を検知するセンサやセンサの駆動に関わるモジュール等を内蔵し、上方に動作状況を表示するパネルや動作状況に関わる情報を取り出すための取出口を備えたものである。
【0016】
本実施形態に係る流体制御機器1は、
図2に示されるように、バルブボディ11、バルブボディ11の上端に配設された略円筒状のアクチュエータボディ12、アクチュエータボディ12の上端に配設されたケーシング13によって構成されている。
【0017】
バルブボディ11内には、流体が流入する流入路111aと流体が流出する流出路111b、及び当該流入路111aと流出路111bに連通する弁室111cが設けられている。この流入路111a、流出路111b、及び弁室111cは、流体が流通する流路111を一体的に構成している。
【0018】
また、流入路111aと弁室111cとが連通する箇所の周縁には環状のシート112が設けられている。シート112上にはさらに、シート112に当接離反することによって流入路111aから流出路111bへ流体を流通させたり、流通を遮断させたりするダイヤフラム113が設けられている。
【0019】
ダイヤフラム113は、ステンレス、NiCo系合金等の金属やフッ素系樹脂からなる円盤状の部材であり、流路111と空間S1とを隔離する隔離部材として機能する。このダイヤフラム113は、駆動圧としてのエアが供給されてディスク124による押圧から開放されると、自身の復元力や流路111内の圧力によって中央部がシート112から離反する方向に変位してシート112から離反する。その結果、弁室111cが開放され、流入路111aと流出路111bとが連通した状態となる。
一方、駆動圧としてのエアの供給が止まってダイヤフラム113がディスク124に押圧されると、シート112に対してダイヤフラム113の中央部がシート112に当接する方向に変位してシート112に当接する。その結果、弁室111cが遮断され、流入路111aと流出路111bが遮断された状態となる。
【0020】
バルブボディ11の側面には
図1(b)に示されるように、空間S1と外部とを連通させる貫通孔として構成されたリークポートLPが設けられている。このリークポートLPは、流体制御機器1の異常を検知すべく、後述する圧力センサ41によって空間S1内の圧力を検出する際には塞いでもよく、リークポートLPが塞がれると、空間S1は気密状態となる。
【0021】
リークポートLPは、流体制御機器1の完成品検査では流路111の気密性を検査する際のテストポートとしても機能する。この完成品検査は、流路111に不活性なヘリウムガス(He)等を流通させることによって行われる。
【0022】
また、一般的に、隔離部材には本例のダイヤフラム113のほか、ベローズが用いられる。しかし、ベローズはストローク(流量レンジ)を大きく取れる反面、アクチュエータボディ内の体積変化が大きくなるため、流体制御機器の開閉動作時に呼吸口(本例のリークポートLPに相当)を開放する必要がある。
一方、本例のようなダイレクトダイヤフラム構造、即ち、ダイヤフラム113がシート112に当接離反することによって流入路111aから流出路111bへ流体を流通させたり、流通を遮断させたりする構造では、アクチュエータボディ12内の体積変化が少ない。そのため、流体制御機器1の異常を検知するべく、アクチュエータボディ12内に後述する圧力センサ41を取り付けて圧力変化を検出する場合に、リークポートLPを塞いでも、流体制御機器1は問題なく開閉動作を行うことができる。
【0023】
アクチュエータボディ12は
図3に示されるように、バルブボディ11に螺合する螺合部121、外部に露出する露出部122、ケーシング13のキャップボディ131に螺合する螺合部123によって構成される。
螺合部121の外周面にはネジが切られており、バルブボディ11の内周面に切られたネジと螺合する。
また、螺合部123の外周面にもネジが切られており、キャップボディ131の内周面に切られたネジと螺合する。
【0024】
このアクチュエータボディ12の外周面には、軸心方向に沿って、配線を通すことのできる配線溝121a、122a、123aが形成されている。螺合部121、123の外周面に設けられた配線溝121a、123aの溝底は、外周面に切られたネジの溝よりも深くなっている。そのため、配線溝121a、123aに配線を通した状態で、配線を断線等させることなく、螺合部121、123に夫々、バルブボディ11とキャップボディ131を螺合させることができる。
【0025】
露出部122の外周面に設けられた配線溝122aの脇には、カバー1221を取り付けるためのネジ穴122bが設けられている。
ここで、
図4に示されるように、カバー1221は配線溝122aを覆う部材であって、アクチュエータボディ12のネジ穴122bに対応した貫通孔1221aを備えている。アクチュエータボディ12の配線溝122aに配線を通し、カバー1221の貫通孔1221aを介して、アクチュエータボディ12のネジ穴122bにネジ122cを螺合させることにより、アクチュエータボディ12の配線溝122aに通した配線がカバー1221で覆われる。
【0026】
アクチュエータボディ12内には、ダイヤフラム113を押圧するディスク124、ダイヤフラム113の周縁を押える押えアダプタ125、上下に摺動するピストン126、ピストン126の外周面上に巻回され、ピストン126を下方に付勢するバネ127が設けられている。
【0027】
押えアダプタ125は、ダイヤフラム113の周縁を上方から押さえつけ、流路111を流れる流体が、ダイヤフラム113の周縁部近傍からアクチュエータボディ12内に漏出するのを防止している。
【0028】
ピストン126は、ディスク124を介してダイヤフラム113をシート112に当接離反させる。
このピストン126の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部1261を構成している。ピストン126は、拡径部1261の上面側においてバネ127の付勢力を受ける。また、拡径部1261の下端側においては、アクチュエータボディ12の上端面との間に駆動圧導入室S2を形成する。
【0029】
また、ピストン126の内部には、上端面に形成された開口部126aと、拡径部1261の下端側に形成される駆動圧導入室S2とを連通させるための駆動圧導入路126bが設けられている。
ピストン126の開口部126aには、外部から駆動圧を導入するための導入管21が接続される。
【0030】
ピストン126の拡径部1261の外周面上には、小径の保持部が設けられ、当該保持部にOリング1262が保持されている。このOリング1262はピストン126の外周面とアクチュエータボディ12の内周面の間をシールしている。
【0031】
また、ピストン126の下端側にも小径の保持部が設けられ、当該保持部にOリング1263が保持されている。このOリング1263はピストン126の外周面とアクチュエータボディ12の内周面の間をシールしている。これにより、アクチュエータボディ12内のディスク124が上下動する部分において、ダイヤフラム113とOリング1263によって仕切られた空間S1が形成されている。
ここで、アクチュエータボディ12の螺合部121には貫通孔12aが形成されており、この貫通孔12aによって空間S1は、バルブボディ11に設けられたリークポートLPを介して外部と連通しているが、リークポートLPが塞がれると、外部と遮断されて気密状態となる。
【0032】
Oリング1262とOリング1263によって形成された空間は、ピストン126内の駆動圧導入路126bに連通する駆動圧導入室S2を形成している。
この駆動圧導入室S2には、ピストン126内の駆動圧導入路126bを介して、導入管21からエアが導入される。エアが駆動圧導入室S2に導入されると、ピストン126がバネ127の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム113がシート112から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室S2にエアが導入されなくなると、ピストン126がバネ127の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム113がシート112に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0033】
ケーシング13は、一端が閉じた略円筒上の部材であって、アクチュエータボディ12の上端に配設され、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43から得られたデータを処理等する情報処理モジュール5が内部に収納される。
本例におけるケーシング13は、キャップボディ131、アクチュエータキャップ132、キャップトップ133の3つの部材によって構成されている。
【0034】
キャップボディ131は、略円筒状の部材であって、アクチュエータボディ12の上端に配設される。アクチュエータボディ12の上端部の外周面と、キャップボディ131の下端部の内周面には、相互に対応したネジが切られており、互いに螺合させることにより、アクチュエータボディ12上にキャップボディ131が固定される。
【0035】
キャップボディ131の内周面には、固定部材1311が取り付けられている。
固定部材1311は、後述するリミットスイッチ43を固定するための部材であって、略直方体状からなる。この固定部材1311には、固定部材1311をキャップボディ131の内周面に取り付けるためのネジ穴1311aが設けられている。
これに対応して、キャップボディ131には貫通孔131aが設けられている。キャップボディ131の貫通孔131aに外側からネジを貫挿させ、キャップボディ131の内周面上に配設された固定部材1311のネジ穴1311aにネジ1311bを螺合させることにより、固定部材1311が固定される。
【0036】
なお、
図5に示されるように、固定部材1311には、後述するリミットスイッチ43から導出された配線を引き回すための配線溝1311cが設けられており、配線溝1311cに配線を収容させることができる。
【0037】
アクチュエータキャップ132は、キャップボディ131の上端に配設される略円盤状の部材であり、ケーシング13を上下に仕切っている。
このアクチュエータキャップ132は、下面側において、ピストン126の拡径部1261の上面とバネ127を挟持している。
【0038】
また、アクチュエータキャップ132の中央であって、ピストン126の開口部126aに対応した位置に、ピストン126側へ延出した略円筒状の貫通孔132aが設けられている。この貫通孔132aには、導入管21の一端が挿通させられている。
さらに、貫通孔132aの外側には、
図6に示されるように、配線を通すための貫通孔132bが設けられている。
【0039】
キャップトップ133は、アクチュエータキャップ132の上端に配設される略キャップ状の部材であり、中空の内部に、情報処理モジュール5を収容することができる。
【0040】
キャップトップ133の上面には、貫通孔133a、133bが設けられている。
貫通孔133aには、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータや当該データに基づく処理結果等を表示するための液晶パネル等が嵌め込まれている。
貫通孔133bには、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータに基づいた処理の結果、流体制御機器1に異常が発生した場合に、当該異常を報知するためのLEDランプ等の警告灯が嵌め込まれている。
【0041】
キャップトップ133の側面には、
図1に示されるように、貫通孔133cが設けられている。この貫通孔133cには、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータや当該データに基づく処理結果等を取り出すべく、外部機器に接続するためのコネクタが設けられている。
【0042】
キャップトップ133の側面であって、アクチュエータキャップ132側の開口部近傍には、キャップトップ133の上面から離れた位置に貫通孔133dが設けられている。この貫通孔133dには、導入管21が挿通させられる。
【0043】
導入管21は、外部から流体制御機器1内に駆動圧としてのエアを導入するための管であって、ナイロンチューブ等によって構成されて可撓性を有する。
この導入管21は、一端がピストン126の開口部126aから駆動圧導入路126b内へ挿し込まれている。駆動圧導入路126b内へ挿し込まれた導入管21の先端の外周面と、駆動圧導入路126bの内周面の間には、Oリング24が保持されている。このOリング24は、駆動圧導入路126bの内周面と、駆動圧導入路126bに挿し込まれた導入管21の外周面の間をシールしている。これにより、導入管21から導入されるエアが漏れなく、ピストン126内の駆動圧導入路126bを介して、駆動圧導入室S2へ導入される。
【0044】
また、アクチュエータキャップ132の貫通孔132aには、導入管21を固定するための固定部材23が嵌め込まれている。この固定部材23は略筒状の部材であって、導入管21の外径と略同じ内径の貫通孔を有しており、当該貫通孔に導入管21が貫挿される。また、固定部材23の開口部126a側の周縁は爪状に尖っており、これにより固定部材23内に貫挿された導入管21は、外部へ抜け出ないように固定される。
【0045】
一端がピストン126の開口部126aから駆動圧導入路126b内へ挿し込まれた導入管21の他端は、キャップトップ133の貫通孔133dから外部へ導出されており、その先端にはワンタッチ継手22が取り付けられる。
【0046】
キャップトップ133のアクチュエータキャップ132側の開口部近傍には、保持部材3が保持されている。
この保持部材3は
図6に示されるように、樹脂製の可撓性を有する略リング状の部材であり、情報処理モジュール5を下面側から上方に支持することにより、情報処理モジュール5をキャップトップ133内に保持する。
この保持部材3には、上下方向に貫通した貫通孔3a、3bが形成されており、この貫通孔3a、3b内には、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43と情報処理モジュール5とを接続する配線を通すことができる。
【0047】
保持部材3の外周縁には、外側へ爪状に突出した突出部31が形成されている。この突出部31を含めた保持部材3の外径は、キャップトップ133の中空部の内径と略同じか、僅かに大きい外径を有している。これにより、
図7に示されるように、キャップトップ133の内周面に保持部材3を取り付けた際、保持部材3は突出部31により、キャップトップ133の内周面上に突っ張った状態に保持される。
【0048】
また、この保持部材3は、キャップトップ133のアクチュエータキャップ132側の開口部近傍であって、貫通孔133dが設けられている位置よりも上側に保持される。
これにより、情報処理モジュール5は保持部材3上に保持され、導入管21が情報処理モジュール5によって潰されないようになっている。
【0049】
なお、本実施形態では、貫通孔3aの径を大きくすると共に、保持部材3を略リング状とすることにより、保持部材3を撓ませやすくし、キャップトップ133の内周面に取り付けやすいようにしている。
他方、別の実施例では、保持部材3を、配線を通すための小孔のみが設けられた略円盤状とすることもできるし、保持部材3をキャップトップ133と一体的に構成された部材とすることもできる。なお、保持部材3をキャップトップ133と一体的に構成した場合には、キャップトップ133の上面全体を開閉自在とし、上面から情報処理モジュール5を内部へ収納させられるようにするとよい。
【0050】
流体制御機器1の内部には、所定の箇所に圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43が取り付けられると共に、これらの圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって検出されたデータを処理する情報処理モジュール5が収納される。
【0051】
空間S1には、空間S1内の圧力を検出するための圧力センサ41と、流体の温度を測定するための温度センサ42が取り付けられている。
この圧力センサ41は、空間S1内の圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。
【0052】
本実施形態では、空間S1内の圧力変化を圧力センサ41によって検出することにより、流体の漏出等に起因した流体制御機器1の異常を検知するが、コンデンサ型マイクロホンユニットを圧力センサ41として用いることが可能である。即ち、コンデンサ型マイクロホンユニットは、音波を受けて振動する振動板と、振動板に対向して配置された対向電極を有し、振動板と対向電極との間の静電容量の変化を電圧の変化に変換して音声信号とすることができる。そして、このコンデンサ型マイクロホンユニットは、振動板の背面側に設けられる空気室を塞ぐことで無指向性(全指向性)となる。無指向性の場合、コンデンサ型マイクロホンユニットはあらゆる方向からの音波による音圧の変化をとらえて動作するため、圧力センサ41として利用することが可能となる。
【0053】
温度センサ42は、設置箇所の温度を測定する。当該設置箇所は、流路111の近傍であることから、当該設置個所の温度を、流路111内を流通する流体の温度とみなすことができる。
【0054】
ケーシング13のキャップボディ131の内部には、リミットスイッチ43が取り付けられている。
リミットスイッチ43は、キャップボディ131の内周面に取り付けられた固定部材1311により、キャップボディ131内に固定されている。
【0055】
このリミットスイッチ43は、ピストン126の拡径部1261の上方に固定されており、ピストン126の上下動に応じて、スイッチが切り替えられる。即ち、開弁時にピストン126が上方へ押し上げられると、ピストン126の拡径部1261によってリミットスイッチ43が押下される。一方、閉弁時にピストン126が下方へ押し下げられると、リミットスイッチ43は、ピストン126の拡径部1261によって押下された状態から解放される。
ピストン126の上下動に伴うリミットスイッチ43の押下に応じて、流体制御機器1の開閉回数や開閉頻度を検知することができる。また、リミットスイッチ43を複数設けることで、流体制御機器1の開閉速度を検知することができる。
【0056】
ここで、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43と情報処理モジュール5とを繋ぐ配線の引き回しについて、
図8、
図9を参照して説明する。
まず、圧力センサ41と温度センサ42から導出された配線は、アクチュエータボディ12の外周面に形成された配線溝121a、122a、123aを介して、キャップボディ131内へ引き込まれている。
なお、配線溝121a、122a、123aは夫々、バルブボディ11、カバー1221、キャップボディ131によって覆われるため、圧力センサ41と温度センサ42からキャップボディ131内へ引き回された配線が外部に露出することがない。
また、リミットスイッチ43から導出された配線は、
図5に示される固定部材1311の配線溝1311c内に嵌め込まれた上、キャップボディ131内へ引き込まれている。
【0057】
キャップボディ131内へ引き込まれた圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43の配線は、アクチュエータキャップ132に設けられている貫通孔132bを介してキャップトップ133内へ引き回され、情報処理モジュール5に接続する。
【0058】
このように、流体制御機器1では配線を外部に露出させることなく、また、流体制御機器1内のピストン126等の可動部材に接触させることなく配線が引き回されているため、他機器との接触等による断線等を防止することができる。
【0059】
情報処理モジュール5は、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって検出されたデータを処理するためのLSI(Large-Scale Integration)等によって構成される。なお、情報処理モジュール5には、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43の駆動に必要な電源を供給するボタン電池といった駆動電源等が含まれてもよい。
【0060】
以上の構成からなる流体制御機器1は通常、
図10に示されるように複数、集積して流体制御装置10を構成する。
このように、複数の流体制御機器1によって流体制御装置10を構成する場合、流体制御機器1は密集して配設されるため、各流体制御装置10におけるデータを表示するためのパネルや、情報処理モジュール5から情報を取り出すべく、USBメモリ等の外部機器を接続するためのポートは上面、少なくとも上方に設けられるのが好適である。特に、データを表示するためのパネルは、上面からでなければ視認しにくい。
【0061】
続いて、本実施形態に係る流体制御機器1において、内部に取り付けられた圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータに基づき、流体制御機器1の異常が判別される処理について説明する。
【0062】
本実施形態に係る情報処理モジュール5は、
図11に示されるように、判別処理部51、補正処理部52、情報表示部53、警告表示部54、及び情報供給部55を備える。
【0063】
判別処理部51は、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータに基づき、流体制御機器1の異常の有無を判別する処理を実行する機能部である。
この判別処理部51は、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサ41によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、空間S1への流体の漏出等に起因した流体制御機器1の異常を判別する処理を実行することができる。即ち、通常使用時において、流体制御機器1の弁の開閉で想定される空間S1内の圧力の限界値を所定の閾値としておく。そして、空間S1内の圧力の検出値が当該閾値を超えた場合に、流体制御機器1に異常が生じたものと判別する。このような判別の合理性は、ダイヤフラム113の破損等によって空間S1へ流体が漏出して空間S1内の圧力が上昇した結果として、あるいは流路111内の減圧によって空間S1内の圧力が減少した結果として空間S1内の圧力の検出値が閾値を超えたとみなせることによる。
【0064】
補正処理部52は、温度センサ42によって測定された流体の温度に応じて、判別処理部51が空間S1への流体の漏出を判別するべく参照する所定の閾値を補正する。
【0065】
このように、所定の閾値が補正処理部52によって補正された際には、判別処理部51は補正後の閾値と、圧力センサ41によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、空間S1への流体の漏出等に起因した流体制御機器1の異常を判別する処理を実行する。
【0066】
情報表示部53は、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得された空間S1内の圧力、流体の温度、及び流体制御機器1の開閉状態や回数等に係る情報や、判別処理部51による判別処理の結果に係る情報を外部に視認可能に表示する機能部である。この情報表示部53は、液晶パネル等によって実現され、キャップトップ133の貫通孔133aに嵌め込まれている。
これにより、流体制御機器1の状況を外部から容易に把握することができる。特に、流体制御機器1が集積した流体制御装置10においては、各流体制御機器1を最も識別し易い上面側に情報表示部53が配設されるため、表示された情報を確認し易い。
【0067】
警告表示部54は、判別処理部51による判別処理の結果を受けて、流体制御機器1に異常が発生した場合に発光する機能部である。この警告表示部54は、LED等の発光体によって実現され、キャップトップ133の貫通孔133bに嵌め込まれている。
これにより、流体制御機器1に異常が発生した場合に警告表示部54が警告を発し、容易に異常を認識することができる。
【0068】
情報供給部55は、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータや、判別処理部51による判別結果に係る情報を外部に供給するための機能部である。この機能部は、USBケーブルにより外部コンピュータに接続して用いられ、そのUSBコネクタはキャップトップ133の側面の貫通孔133cを介してケーブルの抜き挿しを行う。
【0069】
以上の構成からなる流体制御機器1によれば、圧力センサ41によって検出された空間S1内の圧力と所定の閾値との比較に基づき、空間S1への流体の漏出等に起因した流体制御機器1の異常を検知することができる。
さらに、流体制御機器1は、空間S1内の圧力を検出した上、所定の閾値と検出値とを比較することによって流体制御機器1の異常を検知するため、閉空間S内が負圧となる異常を来した場合でも、これを検知することができる。
【0070】
また、流体の温度変化に起因して空間S1内の圧力が変化しても、これと流体の漏出等の流体制御機器1の異常によって惹き起こされた空間S1内の圧力の変化とを識別して、流体制御機器1の異常を検知することができる。
【0071】
なお、本例ではダイヤフラム113とOリング1262によって仕切られた空間を空間S1として、その内部の圧力を検出することによって流体制御機器1の異常を検知したが、ダイヤフラム113によって隔てられた流体制御機器1内の空間であれば、当該空間を空間S1として圧力を検出することで、ダイヤフラム113の破損等の流体制御機器1の異常を検知することができる。
【0072】
また、本実施形態の変形例として、流体制御機器1の開閉を検知するリミットスイッチ43に代えて、流体制御機器1の駆動圧を検出する駆動圧センサを設けることによって、流体制御機器1の開閉を検知することもできる。
この場合には、流体制御機器1の開閉動作中であっても、流体の漏出等に起因した空間S1内の圧力変化を判別することができる。即ち、駆動圧から必要な補正値へと変換する適当な伝達関数を実験的に求めることで、ピストン126が移動している瞬間の空間S1内の過渡的な圧力変化を補正することもできる。
同時に、駆動圧センサの検出値から空間S1内の圧力上昇が予期されるにも関わらず、圧力センサ41の検出値が上昇しない場合には、ピストン126若しくは圧力センサ41の故障を判断することができる。
【0073】
また、上述の例では、キャップトップ133の上面の貫通孔133aに情報表示用のパネルを嵌めるものとしたが、これに関わらず、貫通孔133aにUSBコネクタ等の情報取出口を設けることもできる。
【0074】
以上の本実施形態に係る流体制御機器は、内蔵する情報処理モジュール5が備える判別処理部51、補正処理部52によって流体制御機器1の異常を検知し、その情報を情報表示部53、警告表示部54、あるいは情報供給部55を介して外部へ提供したが、ネットワークを介して通信可能に構成されたサーバに対して情報を提供可能に構成することもできる。
【0075】
図12は、ネットワークNW1、NW2を介して流体制御機器1とサーバ71とが通信可能に構成された例を示している。
この例では、流体制御機器1がサーバ71とデータの送受信を行えるよう、情報処理モジュール5に通信処理部56を備えさせている。この通信処理部56は、サーバ71に対し、判別処理部51による判別結果を送信したり、必要に応じて圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得されたデータを送信したりする。この例では、流体制御機器1とサーバ71との間に中継装置6が設けられており、当該中継装置6を介して、流体制御機器1からの情報がサーバ71に提供される。
【0076】
具体的に、通信処理部56によって送信されるデータは例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった無線通信によって実現されるネットワークNW1を経由して一旦、中継装置6に送信され、中継装置6から無線あるいは有線のLAN等によって実現されるネットワークNW2を介してサーバ71に送信される。
【0077】
また、この通信処理部56は、判別処理部51による判別結果を1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で送信することができる。このように所定の周期で情報の送信を行う場合には、消費電力を抑えることができる。
【0078】
また、
図10に示されるように、流体制御機器1が複数、集積されて流体制御装置10を構成する場合、各流体制御機器1の情報処理モジュール5が備える通信処理部56は、サーバ71に対して自己を識別可能な自己識別情報と共に、判別処理部51による判別結果を流体制御機器1ごとに異なるタイミングで送信することができる。
【0079】
サーバ71に対して、流体制御機器1を個々に識別可能な自己識別情報が送信されることで、流体制御装置10を構成する複数の流体制御機器1のうちのいずれが異常を来しているのかを判別することができる。
また、サーバ71に対して、流体制御機器1ごとに異なるタイミングで判別結果が送信されることで、パケット衝突の問題を回避することができるし、一斉に送信される場合と比べて一時的な処理の過負荷を防ぐこともできる。さらに、一斉に送信される場合と違い、データ送信に利用される無線のチャンネルを流体制御機器1ごとに変える必要がないため、多くのチャンネルを用意する必要がない。特にネットワークNW1をBluetooth(登録商標)によって構成する場合には、同時接続台数が限られるため(通常7台)、送信のタイミングを変えることで同時接続台数を超える数の流体制御機器1を用いることができる。
【0080】
サーバ71は、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成される。
このサーバ71は、中継装置6を介して、流体制御機器1の空間S1における流体の漏出の判別結果を受信するための通信処理部711を有している。サーバ71が流体制御機器1から受信した情報は適宜、流体制御機器1の監視者等が利用する端末からの求めに応じて、当該監視者等が利用する端末に提供される。
【0081】
中継装置6は、ネットワークNW1を介して流体制御機器1からデータを受信すると共に、ネットワークNW2を介して当該受信したデータをサーバ71に対して送信する。
なお、本実施形態では、流体制御機器1とサーバ71の間に中継装置6を介在させたが、流体制御機器1とサーバ71とが直接、データ通信可能となるように構成することもできる。
【0082】
以上の構成によれば、流体制御機器1の異常に関する情報がサーバ71に集約されるため、流体制御機器1の監視者等は、流体制御機器1の動作状況を負担なく監視することができる。
【0083】
図13は、ネットワークを介して流体制御機器8とサーバ72とを通信可能に構成した例を示している。
なお、本例の説明において、流体制御機器8は流体制御機器1と同様の構造を有しており、特段の言及がない限り、上述の例と同じ番号(符号)の付された部材や機能部等は、上述の部材や機能部等と同じ機能を保持あるいは処理を実行するものであるため、説明を省略する。
【0084】
この例では、上述した流体制御機器1の情報処理モジュール5が備えた判別処理部51と補正処理部52と同様の機能を有する判別処理部721と補正処理部722をサーバ72が備えており、サーバ72側で空間S1内への流体の漏出等に起因した流体制御機器8の異常が判別される。
【0085】
流体制御機器8は、情報処理モジュール9の通信処理部56により、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって得られたデータをサーバ72に対して送信する。
【0086】
サーバ72は、CPU、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAMやROM、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成され、判別処理部721、補正処理部722、及び通信処理部723からなる機能部を構成する。
【0087】
判別処理部721は、上述した判別処理部51と同様、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサ41によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、空間S1への流体の漏出等に起因した流体制御機器8の異常を判別する処理を実行する。また、補正処理部722によって所定の閾値が補正された際には、補正後の閾値を基準として流体制御機器8の異常を判別する処理を実行する。
【0088】
補正処理部722は、上述した補正処理部52と同様、リミットスイッチ43によって検知された流体制御機器8の開閉状態や、温度センサ42によって測定された流体の温度に応じて、判別処理部51が空間S1への流体の漏出を判別するべく参照する所定の閾値を補正する。ただし、本例では、流体制御機器8の開閉状態や、温度センサ42によって測定された流体の温度に係る情報は、ネットワークNW1、NW2を経由して、流体制御機器8からサーバ72に供給されたものである。
【0089】
通信処理部723は、中継装置6を介して、流体制御機器8から、流体制御機器8の開閉状態や、温度センサ42によって測定された流体の温度に係る情報を受信する。
【0090】
以上の構成によれば、流体制御機器8の異常の判別処理がサーバ72側で実行される結果、流体制御機器8に実装される情報処理モジュール9の構成をシンプルにすることができるし、判別処理部721や補正処理部722が実行するプログラムのデバッグ等、保守も容易になる。
【0091】
なお、本例ではさらに、サーバ72側において流体制御機器8の異常の判別処理が実行された結果、流体制御機器8に異常が発生していると判別された場合に、異常発生の情報を流体制御機器8へ送信し、流体制御機器8の情報表示部53、警告表示部54に異常の表示あるいは警告をさせるようにしてもよい。
【0092】
上述した流体制御機器8とサーバ72とがネットワークNW1、2を介して通信可能に構成された例では、流体制御機器8が備える圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43によって取得された情報を集約させることができることから、集約させた情報に基づいてデータマイニングを行うことが可能となる。
以下、流体制御機器8とサーバ72が通信可能に構成された上述の実施例の変形例として、流体制御機器8の動作を分析するシステムについて説明する。
【0093】
本例においても流体制御機器8は、流体制御機器8の動作情報を取得するための動作情報取得機構として、圧力センサ41、温度センサ42、及びリミットスイッチ43を備える。これにより流体制御機器8は、空間S1内の圧力、流体の温度、流体制御機器8の開閉回数や開閉頻度(複数のリミットスイッチによって開閉速度も検知可能)といった流体制御機器8の動作情報を取得することができる。
【0094】
一方、流体制御機器8の動作の分析のためには、所定の動作情報取得機構を設けることによって他の種類の動作情報を取得することも有効である。具体的には、流体制御機器8の使用期間、流体制御機器8の外部環境の温度や湿度、ピストン126の推力、ピストン126の平均移動速度、振動、流体制御機器8を構成する部材の内部応力や硬度などが挙げられる。
【0095】
本例に係る流体制御機器の動作分析システムの構成を
図14に示す。
この動作分析システムにおいて、サーバ72は流体制御機器8から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する情報処理装置であり、前述の判別処理部721、補正処理部722、及び通信処理部723に加え、情報収集部724、情報記憶部725、情報抽出部726、相関関係分析部727、及び異常予期部728を備える。
【0096】
情報収集部724は、通信処理部723により、流体制御機器8に対して動作情報の送信を要求し、当該情報を収集する。また、情報収集部724は、異常判別処理部721から流体制御機器8の異常判別結果に係る情報の供給を要求し、当該異常判別結果に係る情報を収集する。
なお、流体制御機器8における動作情報は、流体制御機器8からのみならず、他の機器から収集されることがあってもよい。例えば、流体制御機器8が設置されている場所の温度や湿度を計測する端末から収集したり、流体制御機器8の管理者の管理者端末によって入力された情報を収集したりすることがあってもよい。
【0097】
情報記憶部725は、流体制御機器8から収集された動作情報と、流体制御機器8の異常の判別結果を記憶する記憶部である。
【0098】
情報抽出部726は、情報記憶部725を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の動作情報と判別結果に係る情報を、流体制御機器8ごとに選択的に抽出する。
例えば、複数の流体制御機器8の動作情報について、同一の弁開閉回数(例:1000万回)における動作時間と当該動作時間における異常の判別結果に係る情報を抽出する。
特に、流体制御機器8の動作情報データのうち、リミットスイッチ43や圧力センサ41の変化から検出される、流体制御機器8の開閉状態の切り替わる前、及び後の所定時間におけるデータを切り出して入力データとする。これは、バルブの動作時の動的なセンサ測定値の変化を測定することが異常予期に置いて有効であることを反映したものであり、入力データの次元数を削減して後述の学習の計算コストを減らすことができる。所定時間は、流体制御機器8の開閉にかかる時間(駆動圧を導入し始めてから、流体制御機器8が完全開になるまでの時間、と定義する。
図15の2本の点線の間の時間がこの時間に相当する)の1倍~5倍の時間とすることで、必要な範囲のデータを無駄なく抽出することができる。また、流体制御機器8から送信するデータを予めこの時間の範囲内に限定して送信することで、通信のデータ量を削減することができ、流体制御機器8での消費電力を抑制できる。
【0099】
相関関係分析部727は、情報抽出部726によって抽出された情報を対比することにより、流体制御機器8の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する
第一の学習では、異常が発生した流体制御機器8の過去の動作情報を元に、異常が発生する前の所定の期間(以下、「故障直前期間」とする)の入力データと、異常発生後の入力データと、それ以前の正常動作時の入力データとを分類する教師あり学習を行う。この学習は、例えばニューラルネットワークのモデルに対して誤差逆伝搬法(Backpropagation)を用いた確率的勾配降下法(SGD:Stochastic Gradient Descent)によって行われる。
故障直前期間の長さの設定によって、学習済みモデルの判別性能が異なり、ニューラルネットワークの層数やノード数などのハイパーパラメータと同様に、所定の期間の長さも調整すべきハイパーパラメータとなる。これらのハイパーパラメータの調整は例えば最適化アルゴリズムによって選定され、判別能力の高くなる値を選定することができる。一方、バルブユーザーの用途によっては別の故障直前期間の値を知りたい場合に対応し、故障直前期間として2種類以上の期間を用意してクラスタリングを行っても良い。また、故障の種類ごとに異なる分類を作成してもよく、所定期間内にどの故障が発生するか予期することができる。
分析により、例えば、複数の流体制御機器8の動作情報について、弁を1000万回、開閉するのに要した動作時間と、当該動作時間における異常の判別結果により、同じ1000万回の弁開閉回数であっても、それが3カ月でカウントされた回数であるか、3年でカウントされた回数であるかによって、異常の発生確率が異なるのかどうかを分析することができる。
第二の学習では、データ数が少ない特殊な異常を事前検知するために、オートエンコーダを用いた教師なし学習を行う。オートエンコーダは、ニューラルネットワークで構成したモデルに対し、バルブが正常動作していた時の入力データを入力し、同じデータが出力されるように学習を行う。このニューラルネットワークの隠れ層の次元数を入力データや出力データの次元数よりも小さく設定することで、通常動作時の入力データのパターンに対してのみ適切に元のデータを再現できるオートエンコーダを学習させることができる。
【0100】
異常予期部728は、相関関係分析部727による分析結果に基づき、情報記憶部725に記憶されている流体制御機器8の動作情報を参照して、流体制御機器8の異常発生確率を算出することにより、流体制御機器8の異常を予期する。
現在のセンサデータの測定値を入力として第一の学習により得られた学習済みモデルに分類を行わせることで、バルブが故障直前期間に入っている確率を算出できる(第一の異常予期手段7281)。この確率は読み方を変えると、所定の期間内に壊れるという異常発生確率である。
また、第二の学習により得られたオートエンコーダに、現在のセンサから得られた入力データを通し、出力を元の入力と比較してL2ノルム等で入出力間距離を算出し所定の閾値と比較する(第二の異常予期手段7282)。オートエンコーダは正常動作時のデータであれば元のデータを復元できるように構成されているが、異常動作時には正しく元のデータを復元できないため入力と出力の間に差が大きくなるため、閾値を超えていた場合には流体制御機器8の異常を検知できる。この手法を前記の教師あり学習と併用することで、教師データとして用意されない明らかな外れ値の異常状態(例えば、センサの故障、作動温度の極端な変化など)を予め検出することができ、前述の故障直前期間の判定の信頼性を高めることができる。つまり、第一の学習における教師あり学習が、教師データのない領域に対してどのような挙動を示すか保証されないという問題に対してある程度の対処を行うことができる。流体制御機器8はしばしばそれが搭載される装置の改造により、以前と全く異なる動作環境に置かれることがしばしばあり、再学習を行うべきかどうかの指標データとして用いることもできる。
【0101】
異常を予期することができれば、その情報を流体制御機器8の管理者が利用する管理者端末等に対して通知したり、流体制御機器8に対してその情報を通知すると共に、警告表示部54による警告表示を行わせたりしてもよい。
【0102】
なお、上述した例では、サーバ72が判別処理部721や補正処理部722を備える場合について説明したが、流体制御機器8が判別処理部721や補正処理部722と同様の機能部を備える場合についても適用可能であり、その場合、情報収集部724は流体制御機器8から異常判別結果を収集する。
【0103】
また、相関関係分析部727による分析においては例えば、以下の分析結果を得られることが予想される。
(1)流体制御機器8の同一使用期間における開閉回数と異常発生の相関
例えば、3年で1000万回の弁開閉と、3カ月で1000万回の弁開閉では異常発生確率が異なることが予想される。
(2)環境温度と異常発生の相関
例えば、20℃の環境下での使用と、80℃での使用では異常発生確率が異なることが予想される。
(3)ピストン126の推力と異常発生の相関
例えば、ピストン126の推力(駆動圧の大小に依存)の大小で、ダイヤフラム113への負荷に影響が出ることが予想される。
(4)流体制御機器8の開閉速度と異常発生の相関
例えば、ピストン126の平均移動速度の大小で異常発生確率が異なることが予想される。
(5)振動と異常発生の相関
例えば、環境(振動)の大小によって異常発生確率が異なることが予想される。
(6)流体制御機器8を構成する部材の歪みと異常発生の相関
例えば、各部材の内部応力の大小で異常発生確率が異なることが予想される。
(7)湿度と異常発生の相関
例えば、湿度と各部材、特にOリング1262、1263、24等の異常発生確率が異なる。
(8)初期硬度、及び硬度変化と異常発生の相関
例えば、流体制御機器8の使用初期の各部材の初期硬度の大小で異常発生確率が異なることが予想される。また、硬度変化速度の大小で異常発生確率が異なることも予想される。
モデルの学習の結果によっては、各センサの測定値に対して、所定の周波数成分抽出・複数のセンサデータ間の相互相関計算・所定のパターンとのマッチング・積分・微分などと同等の処理を含むモデルとなる場合がある。
【0104】
また、情報記憶部725に記憶される流体制御機器8の異常判別結果について、異常がどの部材の破損等であるか(例えば、ダイヤフラム113の破損、Oリング1262、1263、24の破損、ピストン126等のアクチュエータボディ12内の部材等)を把握可能な情報が含まれるようにすれば、バルブ開閉速度の変化や流量の変化、ピストン不動などがどの部材に影響を与えやすいかを把握することもできる。
【0105】
また、以上のデータマイニングによって異常発生を予期すると共に、さらにその予期情報と現実に発生した異常有無を比較較分析し、相関分析の精度を高めてもよい。