(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165720
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】キック式走行車
(51)【国際特許分類】
A63C 17/12 20060101AFI20221025BHJP
B62K 17/00 20060101ALI20221025BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20221025BHJP
B62J 45/414 20200101ALI20221025BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20221025BHJP
【FI】
A63C17/12
B62K17/00
B62M6/45
B62J45/414
B62J45/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071185
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】521169734
【氏名又は名称】有限会社インテンド
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】吉武 太志
(72)【発明者】
【氏名】武村 泰範
(72)【発明者】
【氏名】海下 航
【テーマコード(参考)】
3D212
【Fターム(参考)】
3D212BB08
3D212BB10
3D212BB13
3D212BB24
3D212BB44
3D212BB53
3D212BB63
3D212BB74
3D212BB85
(57)【要約】
【課題】人の脚力で得られる推進力より大きい推進力で走行可能なキック式走行車を提供する。
【解決手段】車輪11、12を有し、利用者が脚で走行面Gを蹴って生じる推進力で車輪11、12が走行面G上を転動して走行するキック式走行車10において、キック式走行車10の加速度を計測する加速度計測手段と、車輪11の転動を補助する回転力を作動によって発生する駆動源21と、駆動源21の作動を制御する制御部とを備え、制御部は、加速度計測手段により計測される加速度が設定値A以上となったことを、駆動源21の作動を開始する必須条件とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有し、利用者が脚で走行面を蹴って生じる推進力で該車輪が該走行面上を転動して走行するキック式走行車において、
該キック式走行車の加速度を計測する加速度計測手段と、
前記車輪の転動を補助する回転力を作動によって発生する駆動源と、
前記駆動源の作動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記加速度計測手段により計測される加速度が設定値A以上となったことを、前記駆動源の作動を開始する必須条件とすることを特徴とするキック式走行車。
【請求項2】
請求項1記載のキック式走行車において、利用者が搭乗した状態であるか否かを検出する搭乗検知手段を更に備え、前記制御部は、利用者が搭乗した状態であることが前記搭乗検知手段により検出されていることも、前記駆動源の作動を開始する必須条件とすることを特徴とするキック式走行車。
【請求項3】
請求項1又は2記載のキック式走行車において、走行中の前記走行面の傾斜を検出する傾斜検出手段を更に備え、前記制御部は、走行中の前記走行面が上り傾斜及び水平のいずれかであることが前記傾斜検出手段によって検出されていることも、前記駆動源の作動を開始する必須条件とすることを特徴とするキック式走行車。
【請求項4】
請求項3記載のキック式走行車において、前記制御部は、走行中の前記走行面が下り傾斜であることが前記傾斜計測手段により検出されて、作動状態の前記駆動源を停止することを特徴とするキック式走行車。
【請求項5】
請求項1又は2記載のキック式走行車において、走行中の前記走行面の傾斜を検出する傾斜検出手段を更に備え、前記制御部は、走行中の前記走行面が上り傾斜、水平及び予め定めた傾斜角Sより緩やかな下り傾斜のいずれかであることが前記傾斜検出手段によって検出されていることも、前記駆動源の作動を開始する必須条件とすることを特徴とするキック式走行車。
【請求項6】
請求項5記載のキック式走行車において、前記制御部は、走行中の前記走行面が前記傾斜角S以上の下り傾斜であることが前記傾斜検出手段により検知されて、作動中の前記駆動源を停止することを特徴とするキック式走行車。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のキック式走行車において、前記制御部は、前記加速度計測手段により計測される負の加速度の絶対値が設定値B以上であるのを検出して、作動中の前記駆動源を停止させることを特徴とするキック式走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が脚で走行面を蹴って進むキック式走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車は、ペダルの踏み込みをトルクセンサによって検出してモータを作動させ車輪の回転を補助することから、通常の自転車に比べて人によるペダルの踏み込みの負荷を低減できる(特許文献1参照)。電動アシスト自転車は、蓄電池に蓄電されていた電気エネルギーを使い切りモータが作動できなくなると、通常の自転車に比べてペダルが重くなるという問題があったが、この問題は、非接触式のトルクセンサの採用等により改善されたこともあり、近年、電動アシスト自転車の普及が進んでいる。
【0003】
これに対し、キックスケーターやスケートボード等の人が走行面を蹴って進むキック式走行車は、電動アシスト化が進んでいない。その理由は様々であるが、理由の一つとして、キック式走行車には、電動アシスト自転車と同様の仕組みをそのまま適用できないことが挙げられる。電動アシスト自転車においては、ペダルに与えられる力の大きさに応じた大きさの負荷がかかるクランクシャフトに、その負荷を大掛かりな設計変更なしに安定的に計測できる機構を設けることができる。
【0004】
この点、キック式走行車には、走行面を蹴る力を安定的に検出可能な機構を、大掛かりな設計変更なしに設けることができないため、キック式走行車においては、走行面を蹴る力を検出して補助力を発生させる仕組みとは異なる仕組みが求められ、その具体例が、例えば、特許文献2に記載されている。
特許文献2に記載のキック式走行車は、人が走行面を蹴ることで加速し、人が走行面を蹴るのを止めることで減速することを鑑みたものであり、速度センサを備え、走行面が蹴られてキック式走行車が最高速度に達したのを検知して、減速を遅らせるための補助力を車輪に付加する。これによって、一度の蹴り出しで進む距離を延ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-108126号公報
【特許文献2】特開2004-202002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このキック式走行車は、人が走行面を蹴って加速している際に補助力が発生しないため、人の脚力で得られる推進力より大きい推進力を得ることができないという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、人の脚力で得られる推進力より大きい推進力で走行可能なキック式走行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るキック式走行車は、車輪を有し、利用者が脚で走行面を蹴って生じる推進力で該車輪が該走行面上を転動して走行するキック式走行車において、該キック式走行車の加速度を計測する加速度計測手段と、前記車輪の転動を補助する回転力を作動によって発生する駆動源と、前記駆動源の作動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記加速度計測手段により計測される加速度が設定値A以上となったことを、前記駆動源の作動を開始する必須条件とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るキック式走行車は、キック式走行車の加速度を計測する加速度計測手段と、車輪の転動を補助する回転力を作動によって発生する駆動源と、駆動源の作動を制御する制御部とを備え、制御部が、加速度計測手段により計測される加速度が設定値A以上となったことを、駆動源の作動を開始する必須条件とするので、人の脚力から得られた推進力によってキック式走行車が加速している状態で駆動源が作動して推進力を発生させることができ、人の脚力で得られる推進力より大きい推進力で走行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るキック式走行車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るキック式走行車10は、車輪11、12を有し、利用者が脚で走行面Gを蹴って生じる推進力で車輪11、12が走行面G上を転動して走行する。以下、キック式走行車10について詳細に説明する。
【0011】
本実施の形態に係るキック式走行車10は、
図1、
図2に示すように、利用者に握られるハンドル13と、利用者が載る前後方向に長いデッキ14と、デッキ14の前方に配された駆動式の車輪11と、デッキ14の後方に設けられた従動式の車輪12を有するキックスケーターである。以下、特に記載しない限り、キック式走行車10は走行面G上に配されているものとして記載する。
【0012】
水平配置された直線状のハンドル13には、中央に、略鉛直に配された中空のコラム15の上端部が連結されている。コラム15は、デッキ14に固定された支持部材16に回転自在に支持され、コラム15の下端部には、車輪11を回転自在に支持するフォーク17が連結されている。車輪11の向き(キック式走行車10の進行方向)は、ハンドル13が利用者により左又は右に捻られコラム15が回動することによって変えられる。デッキ14は略水平に配され、デッキ14の後部には、車輪12を回転自在に支持するフォーク18と、利用者に踏まれて車輪12の上側に接触して摩擦力を発生させる円弧状のブレーキ部材19とが取り付けられている。
【0013】
停止状態のキック式走行車10は、利用者が一方の脚(以下、この脚を左脚とするが、右脚でもよいことは言うまでも無い)をデッキ14に載せた状態で他方の脚(以下、この脚を右脚とするが、左脚でもよいことは言うまでも無い)で走行面Gを蹴ることにより加速して走行を開始する。走行中のキック式走行車10は、利用者が右脚で走行面Gを蹴るのを止めることにより、惰性走行となって徐々に減速し、利用者が右脚でブレーキ部材19を踏んでブレーキ部材19を車輪12に押し付けることにより急激に減速して停止する。
【0014】
また、キック式走行車10は、
図1、
図2、
図3に示すように、キック式走行車10の加速度を計測する加速度計測手段20と、車輪11、12の走行面G上の転動を補助する回転力を作動によって発生するモータ(駆動源の一例)21と、モータ21の作動を制御する制御部22と、利用者がキック式走行車10に搭乗した状態であるか否かを検出する搭乗検知手段23と、キック式走行車10が走行中の走行面Gの傾斜を検出する傾斜検出手段24を備えている。
【0015】
本実施の形態では、加速度計測手段20として、デッキ14に取り付けられた加速度センサを採用しているが、これに限定されないのは言うまでも無い。例えば、加速度センサの代わりに、車輪12(又は車輪11)の回転数を検出する回転速度計と、回転速度計の測定値及び車輪12(又は車輪11)の半径を基にキック式走行車10の加速度を算出する演算回路とにより構成された車輪の回転を基にした加速度導出機構を加速度計測手段として採用することや、車輪の回転を基にした加速度導出機構と加速度センサとによって加速度計測手段を構成することも可能である。
【0016】
キック式走行車10が凹凸のある走行面Gを走行中、加速度センサの設計や走行面Gの凹凸の状況によっては、加速度センサによるキック式走行車10の加速度の計測が不安定になること、並びに、車輪12の回転数から求めた値をキック式走行車10の加速度とする場合、キック式走行車10が凹凸のある走行面Gを走行中でもキック式走行車10の加速度を安定的に求められることが実験的検証によって確認された。従って、車輪12の回転数から求めた値をキック式走行車10の加速度として扱うことは、キック式走行車10が凹凸のある走行面Gを走行している状態でも、キック式走行車10の加速度を安定的に導出でき、有効である。
【0017】
但し、車輪12の回転数から求めた値を無条件でキック式走行車10の加速度として扱う場合、車輪12が走行面Gを転動していない状況で車輪12が回転しても(例えば、利用者がキック式走行車10を持ち上げている状況で車輪12に物が接触して車輪12が回転しても)、求められた値がキック式走行車10の加速度として検知されることとなる。この点、加速度センサにより計測される加速度が予め設定された設定値C以上であるときのみ、車輪12の回転数から求めた値をキック式走行車10の加速度として扱うようにすることで、改善可能である。これが、車輪の回転を基にした加速度導出機構と加速度センサとによって加速度計測手段を構成する優位性である。本実施の形態では、Cが0.5m/s2以上1.5m/s2以下の値であり、好ましくは、0.8m/s2以上1.2m/s2以下の値である。
【0018】
本実施の形態では、
図1に示すように、モータ21に、車輪11の内側に配されたインホイールモータが使用されている。
コラム15内には、モータ21及び制御部22等に電気的に接続された二次電池25が収容されている。二次電池25は、外部電源に二次電池25を接続することにより充電されて、モータ21及び制御部22等に供給する電力を蓄える。
【0019】
搭乗検知手段23は、
図1に示すように、デッキ14において、利用者が左脚を載せる箇所に設けられた荷重センサ、及び、荷重センサの測定値を基に利用者がキック式走行車10に搭乗しているか否かを判定する演算回路を有している。搭乗者検知手段23の演算回路は、荷重センサの計測値が予め定められた設定値以上の大きさである際に、利用者がデッキ14(キック式走行車10)に搭乗した状態であることを検知し、荷重センサの計測値が設定値未満の際に、利用者がデッキ14に非搭乗の状態であることを検知する。
【0020】
本実施の形態において、キック式走行車10は、走行中の走行面Gに対してデッキ14の長手方向が平行となるように設計されている。傾斜検出手段24は、デッキ14に固定された傾斜計であり、デッキ14の長手方向の傾き、即ち、キック式走行車10が走行中の走行面Gの傾斜を検出する。制御部22は、傾斜検出手段24の計測値を基にキック式走行車10が走行中の走行面Gが水平、上り傾斜又は下り傾斜のいずれであるかを検知する。なお、傾斜検出手段24はデッキ14以外の部材に固定することも可能である。
【0021】
制御部22は、電子回路等によって構成することができ、
図3に示すように、加速度計測手段20、モータ21、搭乗検知手段23、傾斜検出手段24、二次電池25及び利用者により操作されて制御部22を起動するスイッチ26に接続されている。
制御部22は、起動されて、加速度計測手段20よりキック式走行車10の加速度、搭乗検知手段23より利用者が搭乗中か否かの情報、及び、傾斜検出手段24より走行面Gの傾斜角度をそれぞれ受信することや、受信した情報を基にモータ21を制御すること等が可能となる。
【0022】
次に、キック式走行車10の動作について説明する。
図4に示すように、利用者によるスイッチ26の操作によって、制御部22が起動されると(ステップS1)、制御部22は、各種処理が可能となり、加速度計測手段20により計測される加速度が設定値A以上となっているか否かを検出する(ステップS2)。このとき、モータ21は停止している。本実施の形態では、Aが0.5m/s
2以上2.0m/s
2以下の値であり、好ましくは、1.0m/s
2以上1.5m/s
2以下の値である。A、Cの値は、利用者の負担を安定的に低減できること、及び、モータを利用者の脚力によるキック式走行車10の加速時のみに作動すること等を実現できるように実験的検証を重ねて決定した。
【0023】
ステップS2で、制御部22は、加速度計測手段20により計測される加速度が設定値A以上であることを検出した場合、利用者が搭乗中であることが搭乗検知手段23によって検出されているか否かを検知する(ステップS3)。一方、ステップS2において、加速度計測手段20により計測される加速度が設定値A未満であることを制御部22が検出した場合、再度、ステップS2の処理、即ち、加速度計測手段20により計測される加速度が設定値A以上となっているか否かの制御部22による検出がなされる。
【0024】
ここで、車輪の回転を基にした加速度導出機構と加速度センサとによって加速度計測手段を構成する場合、ステップS2において、車輪の回転を基にした加速度導出機構により算出される加速度が設定値A以上であり、かつ、加速度センサにより計測される加速度が設定値C(例えば、A>C)以上であることが、ステップS3に進む条件となり、それ以外はステップS2の処理が再度行われる。
【0025】
ステップS3において、利用者が搭乗状態であることが搭乗検知手段23により検出されている場合、制御部22は、走行中の走行面Gが上り傾斜及び水平のいずれかであることが傾斜検出手段24によって検出されているか否かを検知する(ステップS4)。一方、ステップS3で、利用者が非搭乗状態であることが搭乗検知手段23により検出されている場合、ステップS2の処理が再度なされる。
【0026】
ステップS4で、走行中の走行面Gが上り傾斜及び水平のいずれかであることが傾斜検出手段24によって検出されている場合、制御部22は、モータ21に対しモータ21を作動させる指令信号を送信して、モータ21を作動させる(ステップS5)。モータ21は作動によって、車輪11に回転力を与えて、車輪11の転動を補助する。そのため、キック式走行車10は、利用者の脚力により得られる推進力と、モータ21の作動による推進力とを合わせた推進力(即ち、利用者の脚力により得られる推進力より大きい推進力)で走行することができる。
【0027】
また、加速度計測手段20により計測される加速度が設定値A以上となったことを加速条件とし、利用者が搭乗した状態であることが搭乗検知手段23により検出されていることを搭乗条件とし、走行中の走行面Gが上り傾斜及び水平のいずれかであることが傾斜検出手段24によって検出されていることを走行面条件として、制御部22は、加速条件、搭乗条件及び走行面条件が全て満たされてモータ21の作動を開始することから、本実施の形態では、制御部22が加速条件、搭乗条件及び走行面条件をそれぞれモータ21の作動を開始する必須条件としている。
【0028】
ここで、キック式走行車10を利用者の脚力により得られる推進力より大きい推進力で走行させるという観点では、加速条件のみをモータ21の作動を開始する必須条件とすればよく、搭乗条件及び走行面条件をモータ21の作動を開始する必須条件にする必要はない。従って、制御部22が、加速条件に加えて、搭乗条件及び走行面条件のいずれか一方又は双方をモータ21の作動を開始する必須条件とするか否かは選択可能である。
なお、ステップS2、S3、S4の順番は入れ替えてもよいことは言うまでも無く、例えば、搭乗条件の検出を加速条件の検出の前に行ってもよい。
【0029】
搭乗条件をモータ21の作動を開始する必須条件としない場合、車輪の回転を基にした加速度導出機構と加速度センサとによって加速度計測手段を構成するのが好適である。車輪の回転を基にした加速度導出機構で設定値A以上の加速度が検出され、加速度センサにより設定値C以上の加速度が検出される状況は、利用者がキック式走行車10に載って走行しているものとみなし得るためである。
【0030】
ステップS5でモータ21が作動を開始してからT秒経過するまで(ステップS10)に、搭乗検知手段23により利用者が非搭乗状態であることが検出されるか(ステップS6)、傾斜検出手段24によって走行面Gが下り傾斜であることが検知されるか(ステップS7)、加速度計測手段20により、負の加速(減速)が計測され、その計測される負の加速度(減速度)の絶対値が設定値B以上であることが検出されると(ステップS8)、制御部22はモータ21に指令信号を発信してモータ21を停止させる(ステップS9)。
【0031】
従って、制御部22は、キック式走行車10が走行中の走行面Gが下り傾斜であることが傾斜検出手段24により検出されて、あるいは、加速度計測手段20により計測される負の加速度の絶対値が設定値B以上であるのを検出して、作動中のモータ21を停止させることとなる。設定値Bは予め設定される値であり、利用者がブレーキ部材19を踏んでキック式走行車10を意識的に減速させる状況を想定した値が設定値Bとして設定される。本実施の形態では、Bが1.5m/s2以上3.5m/s2以下の値であり、好ましくは、2.0m/s2以上3.0m/s2以下の値である。このBの範囲は、種々の検証によって決定した。
【0032】
利用者によるブレーキ操作そのものを直接的に検出できる設計を採用する場合(例えば、ハンドルに取り付けられたレバーの操作によってブレーキをかけるハンドブレーキが設けられたキック式走行車であって、制御部がブレーキのためのレバー操作を検出できる場合)は、計測される負の加速度の絶対値が設定値B以上であることを検出して、モータを停止する代わりに、ブレーキ操作を検出して、モータを停止するようにしてもよい。
【0033】
利用者がキック式走行車10に搭乗していない状態や(ステップS3)、走行面Gが下り傾斜になっている状態で(ステップS4)、停止しているモータ21を作動せず、利用者がキック式走行車10に非搭乗となった際や(ステップS6)、走行面Gが下り傾斜になった際や(ステップS7)、負の加速度の絶対値が設定値B以上となった際に(ステップS8)、作動中のモータ21を停止させるのは、安全面を考慮したものである。
【0034】
また、モータ21の作動開始後、利用者がデッキ14(キック式走行車10)に搭乗していること、走行面Gが上り傾斜又は水平であること、並びに、負の加速度の絶対値が設定値B以上となっていないことが、検知され続けても、T秒経過した時点(ステップS10)で、制御部22はモータ21を停止させる(ステップS9)。Tは、予め設定された値であり、本実施の形態では、Tに2以上5以下の値が設定されている。
【0035】
モータ21が停止した後、制御部22は、R秒経過するまでモータ21の作動を再開せず、R秒経過した後、ステップS2に戻って、モータ21の作動を再開できるようにする(ステップS11)。これは、モータ21が車輪11に対し、実質的に連続して回転力を与えるのを回避するためである。Rは、予め設定された値であり、本実施の形態では、Rに1以上3以下の値が設定されている。
【0036】
本実施の形態では、キック式走行車10が走行中の走行面Gが上り傾斜及び水平のいずれかであることが傾斜検出手段24によって検出されていることを、制御部22がモータ21の作動を開始する必須条件としているが(ステップS4、S5)、その代わりに、キック式走行車10が走行中の走行面Gが上り傾斜、水平及び予め定めた傾斜角Sより緩やかな下り傾斜のいずれかであることが傾斜検出手段24によって検出されていることを、制御部22がモータ21の作動を開始する必須条件とすることもできる。傾斜角Sは、例えば、10°や5°である。
【0037】
この場合、モータ21が作動している際、制御部22は、キック式走行車10が走行中の走行面Gが傾斜角S以上の(傾斜角S又は傾斜角Sより急な)下り傾斜であることが傾斜検出手段24により検知されて作動中のモータ21を停止することとなる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、キック式走行車はキックスケーターに限定されず、スケートボード等の利用者が脚で走行面を蹴って進むものであればよい。
また、搭乗者検知手段を設ける場合、搭乗者検知手段は、利用者によりハンドルが握られていることを検出するセンサであってもよい。
更に、後輪を駆動式の車輪とすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10:キック式走行車、11、12:車輪、13:ハンドル、14:デッキ、15:コラム、16:支持部材、17、18:フォーク、19:ブレーキ部材、20:加速度計測手段、21:モータ、22:制御部、23:搭乗検知手段、24:傾斜検出手段、25:二次電池、26:スイッチ