(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165732
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】乗用型苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
A01C11/02 342Q
A01C11/02 342R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071208
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
【テーマコード(参考)】
2B063
【Fターム(参考)】
2B063AA10
2B063AB01
2B063AB08
2B063BB12
2B063BB31
2B063CA04
2B063CA09
2B063CA21
2B063CB02
2B063CB11
(57)【要約】
【課題】苗植付部に整地レーキを設けて整地性能を向上させて、適切な苗植付作業が行なえるようにしているが、圃場が硬い場所では、苗植付深さが浅くなり適切な苗植付作業が行なえない事態が発生する。そこで、圃場が硬い場所を検知して苗植付深さを自動補正する乗用型苗移植機を提供する。
【解決手段】走行車体の後部に苗植付部4を装着し、苗植付部4の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート28,29を設け、後部に苗植付装置を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ6を機体左右方向の支軸33にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地レーキ6の傾動角度を検出するセンサ34を設け、センサ34が整地レーキ6の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、整地フロート28,29の後部位置を上動調節して苗植付装置による苗の植付け深さを深い側に補正する制御装置を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に苗植付部(4)を装着し、該苗植付部(4)の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート(28,29)を設け、後部に苗植付装置(27)を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ(6)を機体左右方向の支軸(33)にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地レーキ(6)の傾動角度を検出するセンサ(34)を設け、該センサ(34)が整地レーキ(6)の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、整地フロート(28,29)の後部位置を上動調節して苗植付装置(27)による苗の植付け深さを深い側に補正する制御装置を設けたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項2】
走行車体(2)の後部に苗植付部(4)を装着し、該苗植付部(4)の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート(28,29)を設け、後部に苗植付装置(27)を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ(6)を機体左右方向の支軸(33)にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地フロート(28)の前部の上下動を検出する迎角制御センサの検出により苗植付部(4)を自動昇降制御すると共に、整地レーキ(6)の傾動角度を検出するセンサ(34)を設け、該センサ(34)が整地レーキ(6)の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、迎角制御センサの制御感度を敏感側に補正する制御装置を設けたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項3】
走行車体(2)の後部に苗植付部(4)を装着し、該苗植付部(4)の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート(28,29)を設け、後部に苗植付装置(27)を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ(6)を機体左右方向の支軸(33)にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地レーキ(6)の傾動角度を検出するセンサ(34)を設け、該センサ(34)が整地レーキ(6)の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、走行車体(2)の走行速度に対する苗植付部(4)の駆動回転速度を変速して植付株間を変更する株間変速装置を設定した株間よりも広くなるように補正する制御装置を設けたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の後部に苗植付部を装着した乗用型苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行車体の後部に苗植付部を装着した乗用型苗移植機において、苗植付部に整地レーキを設けた乗用型苗移植機がある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗植付部に整地レーキを設けて整地性能を向上させて、適切な苗植付作業が行なえるようにしているが、圃場が硬い場所では、苗植付深さが浅くなり適切な苗植付作業が行なえないような事態が発生する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圃場が硬い場所を検知して苗植付深さを自動補正する乗用型苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体2の後部に苗植付部4を装着し、該苗植付部4の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート28,29を設け、後部に苗植付装置27を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ6を機体左右方向の支軸33にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地レーキ6の傾動角度を検出するセンサ34を設け、該センサ34が整地レーキ6の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、整地フロート28,29の後部位置を上動調節して苗植付装置27による苗の植付け深さを深い側に補正する制御装置を設けた乗用型苗移植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、整地レーキ6の傾動角度を検出するセンサ34を設け、該センサ34が整地レーキ6の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、整地フロート28,29の後部位置を上動調節して苗植付装置27による苗の植付け深さを深い側に補正する制御装置を設けたので、整地レーキ6が所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上ある場合は、整地フロート28,29前部が泥土を押して後部が下動して植付深さが浅くなる状態なので、制御装置により整地フロート28,29の後部位置を上動調節し、苗植付装置27による苗の植付け深さを深い側に補正調節して、適切な植付深さにすることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、走行車体2の後部に苗植付部4を装着し、該苗植付部4の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート28,29を設け、後部に苗植付装置27を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ6を機体左右方向の支軸33にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地フロート28の前部の上下動を検出する迎角制御センサの検出により苗植付部4を自動昇降制御すると共に、整地レーキ6の傾動角度を検出するセンサ34を設け、該センサ34が整地レーキ6の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、迎角制御センサの制御感度を敏感側に補正する制御装置を設けた乗用型苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、走行車体2の後部に苗植付部4を装着し、該苗植付部4の下部に後部枢支軸にて前部が上下作動する整地フロート28,29を設け、後部に苗植付装置27を設け、前部に圃場を整地する整地レーキ6を機体左右方向の支軸33にて傾動自在に設けた乗用型苗移植機において、整地レーキ6の傾動角度を検出するセンサ34を設け、該センサ34が整地レーキ6の所定角度以上の傾斜状態を所定時間以上検出すると、走行車体2の走行速度に対する苗植付部4の駆動回転速度を変速して植付株間を変更する株間変速装置を設定した株間よりも広くなるように補正する制御装置を設けた乗用型苗移植機である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明における実施の形態の乗用型田植機の側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態の乗用型田植機の要部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0012】
<全体構成>
図1は、本発明の乗用型苗移植機の典型例である施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。そして、苗植付部4の前部には整地レーキ6が設けられている。また、走行車体2の前部左右両側には、予備苗載台Yが設けられ、走行車体2の前端中央にはセンターマーカCMが設けられ、走行車体2の前部左右部には左右水車型線引きマーカRM,LMが設けられている。なお、乗用型田植機1の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0013】
<走行車体2>
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪7,7及び左右一対の後輪8,8を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース9が配置され、そのミッションケース9の左右側方に前輪ファイナルケース10,10が設けられ、該左右前輪ファイナルケース10,10の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪7,7が各々取り付けられている。
【0014】
また、ミッションケース9の背面部にメインフレーム11の前端部が固着されており、そのメインフレーム11の後端部に左右サスペンションを介して左右後輪ギヤケース12,12が各々独立して上下動自在に支持され、その後輪ギヤケース12,12から外向きに突出する後輪車軸13,13に後輪8,8が取り付けられている。
【0015】
エンジン14はミッションケース9前部に設けたエンジンフレーム上に搭載されており、該エンジン14の回転動力が、ベルト伝動装置及びHSTを介してミッションケース9に伝達される。
【0016】
ミッションケース9に伝達された回転動力は、該ミッションケース9内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪デフを経由して左右前輪ファイナルケース10,10に伝達されて左右前輪7,7を駆動すると共に、残りが左右後輪駆動軸を介して左右後輪ギヤケース12,12に伝達されて左右後輪8,8を駆動する。
【0017】
前輪デフは、後述の座席17前方下方のフロアステップ18に設けたデフロックペダルでデフロック操作されると共に、ボンネット15内に設けた制御装置にて作動するデフロック作動アクチュエータにてデフロック操作される。
【0018】
また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケースに伝達され、それから植付伝動軸によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0019】
エンジン14は、ボンネット15で覆われており、その上方に前輪7,7を操向操作するステアリングハンドル16が設けられている。
【0020】
走行車体2の中央部には、座席17が設置されている。座席17の前方と左右両側及びボンネット15の下端左右両側は、水平状のフロアステップ18になっている。フロアステップ18は一部格子状になっており、該フロアステップ18を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ18上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ19となっている。
【0021】
走行車体2の前部には、基部がエンジンベースに固定された支持フレームの上端部に衛星測位システムの受信機GPSが設けられている。
【0022】
乗用型田植機1は、衛星測位システムの受信機GPSにて現在位置を把握し、ボンネット15内に設けた制御装置にて左右前輪7,7を操向用油圧シリンダにて操向制御して、圃場内を予め定められた走行ルートに沿って自律走行制御する。
【0023】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク20aと左右一対の下リンク20b,20bを備えている。これらリンク20a,20b,20bは、その基部側がメインフレーム11の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム21に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク22が連結されている。そして、縦リンク22の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸23が挿入連結され、連結軸23を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0024】
リンクベースフレーム21と縦リンク22との間に昇降油圧シリンダが設けられており、該昇降油圧シリンダを油圧で伸縮させることにより、昇降リンク装置3が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
リンクベースフレーム21の上リンク20a基部を回動自在に枢支した部位の近くにはポテンショメータよりなるリンクセンサ24が設けられており、上リンク20aの上下回動量を検出し、昇降リンク装置3が苗植付部4をどの程度上動させているか検出できる。
【0026】
従って、該リンクセンサ24が所定量以上に苗植付部4を上動させた位置で苗植付作業が行なわれていることを検出した場合には、ボンネット15内に設けた制御装置は圃場の耕盤が深い圃場であると判断して、前記操向用油圧シリンダの左右前輪7,7の操向量を基準値よりも多くして自立走行制御を行なう。また、バック旋回時のエンジン回転数を基準値よりも多く補正して適切なバック旋回が行なえるようにする。
【0027】
また、リンクセンサ24が所定量以上に苗植付部4を上動させた位置で苗植付作業が行なわれていることを検出した場合には、ボンネット15内に設けた制御装置は圃場の耕盤が深い圃場であると判断して、前記衛星測位システムの受信機GPSにて現在位置を認識してその圃場位置は耕盤が深いことを記録し圃場マップを作成する。
【0028】
<苗植付部4>
苗植付部4は6条植の構成で、伝動ケース25、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口に供給するとともに横一列分の苗を全て各苗取出口に供給する苗送りベルトにより苗を下方に移送する苗載台26、苗取出口に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置27を備えている。
【0029】
苗植付部4の下部には中央にセンター整地フロート28、その左右両側にサイド整地フロート29,29がそれぞれ設けられている。これら整地フロート28,29,29を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地フロート28,29,29が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置27により苗が植付けられる。各整地フロート28,29,29は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように後部が機体左右方向の枢支軸にて回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンター整地フロート28の前部の上下動が迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダを制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する(自動昇降制御する)。
【0030】
ボンネット15上部後方の操作パネルに設けた感度調節ダイヤルの操作にて迎角制御センサの中立位置を上下調節し、自動昇降制御の制御感度を調節する。即ち、感度調節ダイヤルの操作にて迎角制御センサの中立位置が上方になるように調節すると、センター整地フロート28の基準姿勢が前上がりとなり制御感度は敏感となる。逆に、感度調節ダイヤルの操作にて迎角制御センサの中立位置が下方になるように調節すると、センター整地フロート28の基準姿勢が前下がりとなり制御感度は鈍感となる。
【0031】
各整地フロート28,29,29の後部は、伝動ケース25底面に回動自在に支持された左右方向の横軸30から後方に向けて延設された3つのフロート支持アーム31の先端に各々回動自在に枢支されている。
【0032】
そして、横軸30は、植付深さ調節用電動モータにて回動され、該横軸30の回動にて3つのフロート支持アーム31の先端が上下作動し、各整地フロート28,29,29の後部位置が上下調節されて、苗植付装置27による苗の植付け深さが調節される。
【0033】
即ち、ボンネット15上部後方の操作パネルに設けた植付深さ調節ダイヤルの操作にて植付深さ調節用電動モータが作動し各整地フロート28,29,29の後部位置が上下調節されて、苗植付装置27による苗の植付け深さを調節することができる。また、後述のとおり、ボンネット15内に設けた制御装置からの作動出力によっても、植付深さ調節用電動モータが作動し各整地フロート28,29,29の後部位置が上下調節されて、苗植付装置27による苗の植付け深さが調節される。
【0034】
苗植付部4の前部には、左右前輪7,7及び左右後輪8,8の走行跡を整地する整地レーキ6が設けられ、整地フロート28,29,29に先立って泥面を整地する。
【0035】
苗植付部4には、植付部フレーム41が左右方向に設けられており、該植付部フレーム41に前記縦リンク22の下端部が固定され、伝動ケース25の前部が固定されている。
【0036】
整地レーキ6は、平面視でコ字状で側面視で上部及び下部に上傾斜面6aと下傾斜面6bが形成され、上傾斜面6aは左右後輪8,8が掻き揚げて落下する泥土を受けて前方に落とし、下傾斜面6bは泥面に接地して整地する。
【0037】
そして、整地レーキ6は、植付部フレーム41に基部が固定され前方に延びるレーキ支持フレーム32先端に設けた支軸としての枢支ピン33に矢印(イ)-(ロ)方向に回動自在に支持されている。なお、整地レーキ6は、矢印(イ)方向に付勢されている。
【0038】
また、レーキ支持フレーム32には、レーキ角度検出用のセンサとしてのポテンショメータ34が設けられており、ポテンショメータ34から検出用揺動アーム34aを前方に向けて設け、該検出用揺動アーム34a先端部に設けた長孔34bに整地レーキ6に設けた検出用ピン6cを挿通し、整地レーキ6の傾き角度を検出する。
【0039】
そして、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、整地フロート28,29,29前部が泥土を押して後部が下動して(低い位置にあり)植付深さが浅くなっている状態なので、制御装置からの作動出力で植付深さ調節用電動モータを作動し各整地フロート28,29,29の後部位置を上動調節し、苗植付装置27による苗の植付け深さを深い側に補正調節して、適切な植付深さに補正する。
【0040】
同時に、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、苗植付部4が沈み込んでいる状態なので、迎角制御センサの制御感度を敏感側に補正する。
【0041】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、整地レーキ6前方に草や藁屑等の夾雑物が溜まっているので、油圧バルブを切り替えて苗植付部4を20cm程度1秒間上昇させて夾雑物を後方に逃がすように制御しても良い。
【0042】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、圃場が硬い為に駆動負荷が増加して左右前輪7,7及び左右後輪8,8がスリップして前進速度が遅くなっているので、走行車体2の走行速度に対する苗植付部4の駆動回転速度を変速して植付株間を変更する株間変速装置を設定した株間よりも広くなるように制御装置が補正して、適切な株間となるようにする。
【0043】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、圃場が硬い為に駆動負荷が増加して左右前輪7,7及び左右後輪8,8がスリップしているので、機体を畦際で自動旋回する際に左右後輪8,8の回転数で走行距離を計算して旋回後に自動で苗植付部4の下降及び下降後の苗植付部4の駆動を行なうタイミングを整地レーキ6の倒伏角度に比例して基準値よりも遅く補正して、適切な自動旋回制御が行なえるようにする。
【0044】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、操向用油圧シリンダによる左右前輪7,7の操向力を大きくしないと適切に操向できないので、操向用油圧シリンダへの圧油を供給する油圧ポンプの回転数を基準値よりも増加補正して、適切な操向用油圧シリンダによる左右前輪7,7の操向が行なえるようにする。
【0045】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、圃場が硬い為に駆動負荷が増加して左右前輪7,7及び左右後輪8,8がスリップしているので、前進時に制御装置はデフロック作動アクチュエータを作動させて左右前輪7,7の前輪デフをデフロックし、直進性を向上させる。
【0046】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬くて凹凸が基準よりも悪いと判断し、自律走行制御の操向量を基準値よりも大きく補正して、適切な自律走行制御が行なえるようにする。
【0047】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、左右水車型線引きマーカRM,LMが圃場に線引きする際に、左右水車型線引きマーカRM,LMの圃場への接地方向への付勢力を基準値よりも大きく補正して、硬い圃場でも適切に線引きが行なえるようにする。
【0048】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、自律走行制御の操向量を基準値よりも小さく補正して、適切な自律走行制御が行なえるようにする。
【0049】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以下傾斜している状態(起立状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が起立状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が軟らかいと判断し、自律走行制御の操向量を基準値よりも小さく補正して、適切な自律走行制御が行なえるようにする。
【0050】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以下傾斜している状態(起立状態)と通常傾斜状態を繰り返して検出すると、機体は繰り返して轍を横断して走行していると判断し、自律走行制御の操向量を基準値よりも大きく補正して、適切な自律走行制御が行なえるようにする。
【0051】
また、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以下傾斜している状態(起立状態)が維持されていることを検出すると、機体は轍に沿って走行していると判断し、自律走行制御の操向量を基準値よりも小さく補正して、適切な自律走行制御が行なえるようにする。
【0052】
<施肥装置5>
施肥装置5は、肥料ホッパ35に貯留されている粒状の肥料を繰出部36によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース37で各整地フロート28,29,29の左右両側に取り付けた施肥ガイド38まで導き、施肥ガイド38の前側に設けた作溝体39によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータで駆動するブロアで発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバを経由して施肥ホース37に吹き込まれ、施肥ホース37内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0053】
そして、施肥ガイド38の後方には、施肥構内に落とし込まれた肥料の上に泥土を被せて覆う覆土板40が設けられている。
【0054】
覆土板40は、施肥ガイド38の後方位置で各整地フロート28,29,29の左右両側に枢支軸にて基部が回動自在に設けられ、その先端が後方斜め方向に延びて泥土を施肥溝に押して埋める。そして、覆土板40の傾斜角度は、覆土板作動電動モータにて変更自在であり、ボンネット15上部後方の操作パネルに設けた覆土調節ダイヤルの操作にて任意に変更して、圃場の条件に応じて作業者が覆土作用を調節できる。
【0055】
また、前記ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬いと判断し、覆土板作動電動モータを作動させて覆土板40の傾斜を施肥ガイド38に近づく側に補正変更して覆土量を増して適切な覆土が行なえるようにする。
【0056】
また、左右前輪7,7が泥土中で回転する部位に電極を設けて左右前輪7,7間の電気抵抗を検出して圃場の肥沃度を検出して、繰出部36の肥料繰出し量を肥沃度に応じて変更する可変施肥制御を行なっているが、前記ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出し、ボンネット15内に設けた制御装置が倒伏状態を所定時間以上(3秒以上)継続していると判定すると、圃場が硬くて肥沃度が適正に検出できないと判断して、可変施肥制御の繰出部36の肥料繰出し量を初期設定量に戻し、施肥制御の安定化を図っている。
【0057】
最後に、上記までのポテンショメータ34が整地レーキ6の傾斜状態を検出して行なう補正制御は、センター整地フロート28が接地し(迎角制御センサが接地を判定し)、且つ、苗植付部4が駆動されている時のみ行われるようにして、制御の誤作動を防止している。
【0058】
また、リンクセンサ24にて苗植付部4が上昇位置であることを検出している時に、ポテンショメータ34が整地レーキ6の矢印(イ)方向へ所定角度以上傾斜している状態(倒伏状態)を検出した場合は、整地レーキ6に泥土が付着堆積した状態であるので、警報を発して作業者に告知し、各種補正制御等をキャンセルして誤作動を防止する。
【符号の説明】
【0059】
2 走行車体
4 苗植付部
6 整地レーキ
27 苗植付装置
28 整地フロート(センター整地フロート)
29 整地フロート(サイド整地フロート)
33 支軸(枢支ピン)
34 センサ(ポテンショメータ)