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  • 特開-建設機械の油圧回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165740
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】建設機械の油圧回路
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071218
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】小西 勲
(72)【発明者】
【氏名】金縄 裕也
(72)【発明者】
【氏名】峰 元太
(72)【発明者】
【氏名】宮森 和哉
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AB05
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB06
(57)【要約】
【課題】オイルクーラの損傷を防止することができると共に、作動油の温度が過剰に上昇するのを防止することができる建設機械の油圧回路を提供する。
【解決手段】油圧回路2は、オペレータによって操作されるとワークツール8を作動させるための信号を出力するワークツール操作装置10と、バイパス管路20に配置されたバイパスバルブ26と、コントロールバルブ12およびオイルクーラ28を経由しないでワークツール8から作動油タンク18に作動油を戻すための戻り管路30と、ワークツール操作装置10が操作されていない場合には、バイパスバルブ26の開度を第1の開度に調整し、ワークツール操作装置10が操作された場合には、バイパスバルブ26の開度を、第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整するコントローラ14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の油圧回路であって、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した作動油によって作動するワークツールと、
オペレータによって操作されると前記ワークツールを作動させるための信号を出力するワークツール操作装置と、
前記ワークツール操作装置が出力した信号に基づき、前記油圧ポンプから前記ワークツールへの作動油の供給を許容するコントロールバルブと、
前記油圧ポンプと前記コントロールバルブとを接続するポンプ管路と、
前記ポンプ管路から分岐して作動油タンクまで延びるバイパス管路と、
前記バイパス管路に配置されたバイパスバルブと、
前記バイパス管路において前記バイパスバルブよりも下流側に配置されたオイルクーラと、
前記コントロールバルブおよび前記オイルクーラを経由しないで前記ワークツールから前記作動油タンクに作動油を戻すための戻り管路と、
前記ワークツール操作装置が操作されていない場合には、前記バイパスバルブの開度を第1の開度に調整し、前記ワークツール操作装置が操作された場合には、前記バイパスバルブの開度を、前記第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整するコントローラと、を備える建設機械の油圧回路。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ワークツール操作装置が操作された場合において、
作動油の温度が調整開始温度以上のときは前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整し、
作動油の温度が前記調整開始温度未満のときは前記バイパスバルブの開度を、前記第2の開度よりも小さい第3の開度に調整する、請求項1に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ワークツール操作装置が操作されている状態において、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した後、作動油の温度が調整終了温度以下となった時に前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整する、請求項2に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項4】
前記コントローラは、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した際に、前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整した場合における前記油圧ポンプの吐出量よりも多くなるように前記油圧ポンプの吐出量を制御する、請求項2または3に記載の建設機械の油圧回路。
【請求項5】
前記コントローラは、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した際に、前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整した場合に前記ワークツールに供給される作動油の量と同じ量の作動油が前記ワークツールに供給されるように前記油圧ポンプの吐出量を制御する、請求項4に記載の建設機械の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ハンマー等のワークツールを備える建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体と、下部走行体に旋回自在に支持された上部旋回体と、上部旋回体に装着されたフロント作業機とを備える。油圧ショベルのフロント作業機は、上部旋回体に揺動自在に連結されたブームと、ブームの先端に揺動自在に連結されたアームとを含む。
【0003】
油圧ショベルにおいては、ワークツールとして掘削作業用のバケットがアームの先端に装着されているものが多いが、バケット以外にも様々なワークツールがアームの先端に装着され得る。バケット以外のワークツールとしては、たとえば、コンクリートや岩石等を破砕するための油圧ハンマー(油圧ブレーカ)がある。
【0004】
ワークツールとして油圧ハンマーを使用する際、油圧ハンマーの所要能力を発揮させるためには、油圧ハンマーの背圧を所定値未満にしなければならない。そこで、コントロールバルブを経由しないで、ワークツールから作動油タンクに作動油を戻す回路が採用されることがある(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-128076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コントロールバルブを経由せずに、油圧ハンマーから作動油タンクに作動油を戻す場合において、油圧ハンマーからの戻り油がオイルクーラを通るようになっていると、油圧ハンマーの使用に伴って発生するサージ圧により、オイルクーラが損傷してしまうという問題がある。一方、油圧ハンマーからの戻り油がオイルクーラを通らない構成であると、油圧ハンマーの作動中に作動油の温度が過剰に上昇するおそれがある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、オイルクーラの損傷を防止することができると共に、作動油の温度が過剰に上昇するのを防止することができる建設機械の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の建設機械の油圧回路が提供される。すなわち、建設機械の油圧回路であって、油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出した作動油によって作動するワークツールと、オペレータによって操作されると前記ワークツールを作動させるための信号を出力するワークツール操作装置と、前記ワークツール操作装置が出力した信号に基づき、前記油圧ポンプから前記ワークツールへの作動油の供給を許容するコントロールバルブと、前記油圧ポンプと前記コントロールバルブとを接続するポンプ管路と、前記ポンプ管路から分岐して作動油タンクまで延びるバイパス管路と、前記バイパス管路に配置されたバイパスバルブと、前記バイパス管路において前記バイパスバルブよりも下流側に配置されたオイルクーラと、前記コントロールバルブおよび前記オイルクーラを経由しないで前記ワークツールから前記作動油タンクに作動油を戻すための戻り管路と、前記ワークツール操作装置が操作されていない場合には、前記バイパスバルブの開度を第1の開度に調整し、前記ワークツール操作装置が操作された場合には、前記バイパスバルブの開度を、前記第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整するコントローラと、を備える建設機械の油圧回路が提供される。
【0009】
好ましくは、前記コントローラは、前記ワークツール操作装置が操作された場合において、作動油の温度が調整開始温度以上のときは前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整し、作動油の温度が前記調整開始温度未満のときは前記バイパスバルブの開度を、前記第2の開度よりも小さい第3の開度に調整する。
【0010】
前記コントローラは、前記ワークツール操作装置が操作されている状態において、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した後、作動油の温度が調整終了温度以下となった時に前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整するのが好適である。
【0011】
前記コントローラは、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した際に、前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整した場合における前記油圧ポンプの吐出量よりも多くなるように前記油圧ポンプの吐出量を制御するのが望ましい。
【0012】
前記コントローラは、前記バイパスバルブの開度を前記第2の開度に調整した際に、前記バイパスバルブの開度を前記第3の開度に調整した場合に前記ワークツールに供給される作動油の量と同じ量の作動油が前記ワークツールに供給されるように前記油圧ポンプの吐出量を制御するのが好都合である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建設機械の油圧回路は、コントロールバルブおよびオイルクーラを経由しないで、ワークツールから作動油タンクに作動油を戻すための戻り管路を備えるので、ワークツールの使用に伴ってサージ圧が発生しても、オイルクーラが損傷することはない。
【0014】
また、本発明の建設機械の油圧回路は、ワークツール操作装置が操作されていない場合には、バイパスバルブの開度を第1の開度に調整し、ワークツール操作装置が操作された場合には、バイパスバルブの開度を、第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整するコントローラを備えるので、ワークツールの作動中に、油圧ポンプが吐出した作動油の一部が、ポンプ管路からバイパス管路に流入してオイルクーラにおいて冷却されるので、作動油の温度が過剰に上昇するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従って構成された建設機械の油圧回路を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成された建設機械の油圧回路の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1において全体を符号2で示す油圧回路は、エンジン4によって駆動する可変容量形の油圧ポンプ6と、油圧ポンプ6が吐出した作動油(吐出油)によって作動するワークツール8とを備える。油圧回路2が採用される建設機械は、たとえば油圧ショベルであり、油圧ショベルのワークツール8としては、上述した油圧ハンマーのほか、林業作業において伐倒や枝払をするためのハーベスタ等がある。
【0018】
油圧回路2は、ワークツール8以外にも、油圧ポンプ6の吐出油によって作動する他の油圧アクチュエータを含む。油圧回路2が油圧ショベルのものである場合、ワークツール8以外の他の油圧アクチュエータとしては、図示していないが、ブームを揺動させるブームシリンダ、アームを揺動させるアームシリンダ、油圧ショベルを走行させる走行モータ、下部走行体に対して上部旋回体を旋回させる旋回モータ等が含まれ得る。
【0019】
図1に示すとおり、油圧回路2は、さらに、オペレータによって操作されるとワークツール8を作動させるための信号を出力するワークツール操作装置10と、ワークツール操作装置10が出力した信号に基づき、油圧ポンプ6からワークツール8への作動油の供給を許容するコントロールバルブ12とを含む。
【0020】
ワークツール操作装置10は、踏み込み操作されるペダル、あるいは、押しボタン式スイッチを有する構成でよい。押しボタン式スイッチは、たとえば、ブームシリンダやアームシリンダを操作するためのジョイスティック(図示していない。)に付設され得る。なお、油圧回路2は、ワークツール8以外の他の油圧アクチュエータを操作するための他の操作装置(レバーまたはペダルを有する構成)を含む。
【0021】
ワークツール操作装置10に対して、踏み込み操作や押し込み操作等の適宜の操作がなされると、ワークツール操作装置10は電気信号または油圧信号を出力する。図1には、ワークツール操作装置10が電気信号を出力する形態を示している。ワークツール操作装置10から出力された電気信号は、コントローラ14を介してコントロールバルブ12に送られる。
【0022】
なお、図示の実施形態とは異なり、ワークツール操作装置10がコントロールバルブ12に対して油圧信号を出力してもよい。この場合には、ワークツール操作装置10から出力された油圧信号が圧力センサ(図示していない。)によって検出され、この圧力センサの検出結果がコントローラ14に入力される。
【0023】
コントロールバルブ12は、ワークツール操作装置10が信号を出力すると、油圧ポンプ6からワークツール8に通じる油路を開き、油圧ポンプ6の吐出油がワークツール8へ供給されるのを許容する。一方、コントロールバルブ12は、ワークツール操作装置10が信号を出力していない場合には、油圧ポンプ6からワークツール8に通じる油路を閉じ、油圧ポンプ6の吐出油がワークツール8へ供給されるのを阻止する。
【0024】
また、コントロールバルブ12は、ワークツール操作装置10以外の他の操作装置から出力された信号に応じて、油圧ポンプ6からワークツール8以外の他の油圧アクチュエータに通じる他の油路も開閉する。
【0025】
コントローラ14は、処理装置および記憶装置を有するコンピュータから構成される。コントローラ14は、ワークツール操作装置10から出力された信号、およびワークツール操作装置10以外の他の操作装置から出力された信号に基づいて、コントロールバルブ12の作動を制御すると共に、油圧ポンプ6の吐出量を制御する。
【0026】
図1に示すとおり、油圧回路2は、油圧ポンプ6とコントロールバルブ12とを接続するポンプ管路16と、ポンプ管路16から分岐して作動油タンク18まで延びるバイパス管路20とを有する。ポンプ管路16には、油圧ポンプ6によって作動油タンク18から吸い込まれた作動油が吐出される。また、ポンプ管路16には、ポンプ管路16の圧力を検出する圧力センサ22が設けられており、圧力センサ22によって検出された圧力はコントローラ14に送られる。作動油タンク18には、作動油タンク18内の作動油の温度を検出する温度センサ24が付設されていて、温度センサ24が検出した温度はコントローラ14に送信される。
【0027】
バイパス管路20には、油圧ポンプ6の吐出油の一部を、ワークツール8等の油圧アクチュエータに供給せずに、作動油タンク18に戻す(アンロードする)ためのバイパスバルブ26と、作動油を冷却するオイルクーラ28とが設けられている。詳細は後述するが、バイパスバルブ26の開度は、コントローラ14によって制御されるようになっている。オイルクーラ28は、バイパス管路20においてバイパスバルブ26よりも下流側(作動油タンク18側)に配置されている。
【0028】
図1に示すとおり、油圧回路2は、コントロールバルブ12およびオイルクーラ28を経由しないで、ワークツール8から作動油タンク18に作動油を戻すための戻り管路30を備える。したがって、ワークツール8の使用に伴ってサージ圧が発生しても、ワークツール8から作動油タンク18に戻る作動油がオイルクーラ28を通過しないため、オイルクーラ28が損傷することはない。なお、ワークツール8以外の他の油圧アクチュエータからの戻り油は、図示していないが、コントロールバルブ12およびオイルクーラ28を経由して、かつ、バイパスバルブ26は通らずに、作動油タンク18に戻るようになっている。
【0029】
次に、上述したとおりの建設機械の油圧回路2の作動について説明する。
【0030】
ワークツール操作装置10や、ワークツール操作装置10以外の他の操作装置が操作されていない場合には、ワークツール操作装置10等から信号が出力されない。この場合には、ワークツール8や他のアクチュエータへの油路がコントロールバルブ12によって閉ざされるため、油圧ポンプ6の吐出油がワークツール8等に供給されず、ワークツール8等は作動しない。
【0031】
また、ワークツール操作装置10等が操作されていない場合、コントローラ14は、バイパスバルブ26の開度を第1の開度に調整する。これによって、油圧ポンプ6の吐出油がバイパス管路20を通って作動油タンク18に戻ると共に、ポンプ管路16の圧力が所定圧力に保持される。
【0032】
他方、ワークツール操作装置10が操作された場合には、ワークツール操作装置10から信号が出力される。そうすると、コントローラ14は、コントロールバルブ12を作動させ、油圧ポンプ6からワークツール8に通じる油路を開放させる。これによって、油圧ポンプ6の吐出油がワークツール8に供給され、ワークツール8が作動する。
【0033】
また、コントローラ14は、ワークツール操作装置10が操作されると、バイパスバルブ26の開度を、第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整する。このため、油圧ポンプ6の吐出油の一部が、ポンプ管路16からバイパス管路20に流入してオイルクーラ28において冷却される。
【0034】
図示の実施形態においては、ワークツール8と作動油タンク18とを接続する戻り管路30はオイルクーラ28を経由していないため、戻り管路30を通る作動油(ワークツール8からの戻り油)は、オイルクーラ28で冷却されずに作動油タンク18に戻る。けれども、ワークツール操作装置10が操作された場合には、コントローラ14によって、バイパスバルブ26の開度が、全閉ではない第2の開度に調整される。このため、油圧ポンプ6の吐出油の一部がバイパス管路20に流入してオイルクーラ28で冷却されるから、ワークツール8の作動中に、作動油の温度が過剰に上昇するのを防止することができる。
【0035】
バイパスバルブ26の第2の開度については、第1の開度よりも小さい任意の開度に設定することができるが、ワークツール8の作動中に、油圧ポンプ6の吐出油の一部がバイパス管路20に流入できるようにするため、完全に閉じた状態(全閉)は第2の開度に含まれない。また、第2の開度は、一定でもよいが、作動油の温度(たとえば作動油タンク18内の作動油の温度)に応じて変化させてもよい。
【0036】
バイパスバルブ26の第2の開度が大きいほど、バイパス管路20に流入してオイルクーラ28を通る作動油量が多くなるので、作動油の過熱の懸念が弱まる。しかし、第2の開度が大きくなるほど、ワークツール8の作動に使用される作動油量の減少幅が増大してしまうため、ワークツール8の作動への影響が大きくなる。
【0037】
反対に、第2の開度が小さくなるほど、ワークツール8に供給される作動油量の減少幅が小さくなるから、ワークツール8の作動への影響が少なくなるものの、オイルクーラ28を通る作動油量が少なくなるので、作動油の過熱の懸念が強まることになる。
【0038】
したがって、バイパスバルブ26の第2の開度は、作動油の過熱を効果的に抑制できる流量がバイパス管路20に振り分けられると共に、ワークツール8の所要能力を発揮できる流量がワークツール8に供給される程度の大きさであるのが好ましい。
【0039】
上記のとおり、コントローラ14は、ワークツール操作装置10が操作された場合に、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整するようになっているが、ワークツール操作装置10が操作されたことに加えて、さらに他の条件が充足された場合に、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整するようになっていてもよい。
【0040】
たとえば、他の条件として、作動油の温度が調整開始温度以上であることを加えることができる。すなわち、コントローラ14は、ワークツール操作装置10が操作された場合において、作動油の温度が調整開始温度以上のときは、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整し、作動油の温度が調整開始温度未満のときはバイパスバルブ26の開度を、第2の開度よりも小さい第3の開度に調整するようになっていてもよい。
【0041】
作動油の温度については、温度センサ24がコントローラ14に出力した温度(作動油タンク18内の作動油の温度)を用いることができるが、必ずしも作動油タンク18内のものでなくてよい。調整開始温度は、作動油の過熱の懸念が生じる温度として任意に設定することができる。バイパスバルブ26の第3の開度に関しては、第2の開度よりも小さい任意の開度でよいが、燃費低減の観点から、完全に閉じた状態(全閉)であるのが好適である。
【0042】
ポンプ管路16からバイパス管路20に流入した作動油は、ワークツール8の作動に使われずに作動油タンク18に戻ることになる。そこで、ワークツール操作装置10が操作された場合であっても、調整開始温度未満であれば(作動油の過熱の懸念が生じていなければ)、バイパスバルブ26の開度を、第2の開度よりも小さい第3の開度に調整することにより、ポンプ管路16からバイパス管路20に流入する作動油量を減らし、エネルギーロスを抑制することができる。
【0043】
上述したとおり、ワークツール操作装置10が操作された場合において、コントローラ14がバイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整するか否かを、作動油の温度によって決定することができる。さらに、コントローラ14がバイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整する制御を終了するか否かについても、作動油の温度によって決定してもよい。
【0044】
すなわち、コントローラ14は、ワークツール操作装置10が操作されている状態において、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整した後、作動油の温度が調整終了温度以下となった時に、バイパスバルブ26の開度を第3の開度に調整するようになっていてもよい。つまり、コントローラ14は、ワークツール操作装置10が操作されている間に、作動油の過熱の懸念が解消されれば、バイパスバルブ26の開度を第3の開度に調整してもよい。これによって、油圧ポンプ6の吐出油のうちアンロードされる作動油量を低減することができる。
【0045】
調整終了温度については、作動油の過熱の懸念のない温度として任意に設定することができる。ただし、調整終了温度は、上記調整開始温度よりも低い温度であって、チャタリングの発生を防止できる温度(たとえば、調整開始温度よりも10~15℃程度低い温度)であるのが望ましい。
【0046】
なお、これとは逆に、バイパスバルブ26の開度が第2の開度に一旦調整されたら、ワークツール操作装置10の操作が解除されるまで、バイパスバルブ26の開度が第2の開度に維持されるようになっていてもよい。
【0047】
ところで、バイパスバルブ26の開度が第2の開度に調整されている間は、先述のとおり、油圧ポンプ6の吐出油の一部がバイパス管路20に流入する。このため、第2の開度に調整された場合と、第2の開度よりも小さい第3の開度に調整された場合との双方において油圧ポンプ6の吐出量が一定であると、第3の開度に調整された場合よりも、第2の開度に調整された場合の方が、バイパス管路20に流入する作動油量が多くなり、ワークツール8の作動に使用される作動油量が少なくなる。
【0048】
このようなことから、コントローラ14は、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整した際に、バイパスバルブ26の開度を第3の開度に調整した場合における油圧ポンプ6の吐出量よりも多くなるように、油圧ポンプ6の吐出量を制御するのが好ましい。
【0049】
具体的には、コントローラ14は、バイパスバルブ26の開度を第2の開度に調整した際に、バイパスバルブ26の開度を第3の開度に調整した場合にワークツール8に供給される作動油の量と同じ量の作動油がワークツール8に供給されるように、油圧ポンプ6の吐出量を制御するのが好都合である。
【0050】
これによって、ワークツール8の作動中は、バイパスバルブ26の開度によらず(第2の開度であっても第3の開度であっても)、ワークツール8に一定の作動油を供給し、ワークツール8の能力を安定して発揮させることができる。また、ワークツール8の能力を損なわずに、第2の開度を大きくして、バイパス管路20に流入する作動油量を多くすることができるので、より効果的に作動油を冷却することができる。
【0051】
なお、油圧ポンプ6の吐出量の制御は、油圧ポンプ6の容量を変化させてもよく、あるいは、エンジン4の回転数を変化させてもよい。
【0052】
以上のとおりであり、図示の実施形態の油圧回路2は、コントロールバルブ12およびオイルクーラ28を経由しないで、ワークツール8から作動油タンク18に作動油を戻すための戻り管路30を備えるので、ワークツール8の使用に伴ってサージ圧が発生しても、オイルクーラ28が損傷することはない。
【0053】
また、油圧回路2は、ワークツール操作装置10が操作されていない場合には、バイパスバルブ26の開度を第1の開度に調整し、ワークツール操作装置10が操作された場合には、バイパスバルブ26の開度を、第1の開度よりも小さい非全閉の第2の開度に調整するコントローラ14を備えるので、ワークツール8の作動中に、油圧ポンプ6が吐出した作動油の一部が、ポンプ管路16からバイパス管路20に流入してオイルクーラ28において冷却されるので、作動油の温度が過剰に上昇するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
2:油圧回路
6:油圧ポンプ
8:ワークツール
10:ワークツール操作装置
12:コントロールバルブ
14:コントローラ
16:ポンプ管路
18:作動油タンク
20:バイパス管路
26:バイパスバルブ
28:オイルクーラ
30:戻り管路
図1