(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165749
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】偏波方向の測定装置、強度比テーブルの取得方法、偏波方向の測定方法及び偏波方向の測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
G01S7/02 210
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071233
(22)【出願日】2021-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 範泰
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AA02
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD16
5J070AF06
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】円偏波アンテナで受信する直線偏波となる受信波の偏波方向を測定することができる。
【解決手段】円偏波アンテナを用いて受信波の偏波方向を測定する測定装置であって、受信波の受信強度の強度比に対して、到来方向によって異なる強度比を付与する強度比付与部と、第1強度比テーブルと第2強度比テーブルと、をそれぞれ記憶する記憶部と、2つのアンテナ間における受信波の強度比を取得する検出器と、受信波の到来方向を取得する取得部と、取得した受信波の到来方向に基づいて、第1強度比テーブルから受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、第2強度比テーブルから受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、検出器において取得した受信波の強度比と、受信波の垂直偏波成分の強度比と、受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、受信波の偏波方向を算出する演算部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円偏波アンテナを用いて直線偏波となる受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定装置であって、
複数の前記円偏波アンテナで受信される前記受信波の受信強度の強度比に対して、到来方向によって異なる強度比を付与する強度比付与部と、
複数の前記円偏波アンテナのうち、2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブルと、2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の水平偏波成分の前記強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルと、をそれぞれ記憶する記憶部と、
2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の強度比を取得する検出器と、
前記受信波の到来方向を取得する取得部と、
取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出する演算部と、を備える偏波方向の測定装置。
【請求項2】
前記取得部は、複数の前記円偏波アンテナにより受信した前記受信波に基づいて前記受信波の到来方向を方探する方向探知部である請求項1に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項3】
複数の前記円偏波アンテナは、2つの前記円偏波アンテナの組合せが2以上となるように設けられ、
前記演算部は、予め規定された変更条件に基づいて、所定の前記円偏波アンテナの組合せから、他の前記円偏波アンテナの組合せに変更して、前記受信波の偏波方向を算出する請求項1または2に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項4】
前記変更条件は、前記第1強度比テーブルから取得した前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記第2強度比テーブルから取得した前記受信波の水平偏波成分の強度比とが一致する条件である請求項3に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項5】
前記変更条件は、前記第1強度比テーブルから取得した前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記第2強度比テーブルから取得した前記受信波の水平偏波成分の強度比との差が、他の前記円偏波アンテナの組合せよりも、所定の前記円偏波アンテナの組合せのほうが小さくなる条件である請求項3または4に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項6】
前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルは、前記受信波の周波数ごとに記憶されており、
前記検出器は、前記受信波の前記周波数を検出し、
前記演算部は、前記検出器で検出した前記周波数に基づいて、前記周波数に対応する前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルを取得し、取得した前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルから、前記取得部で取得した前記受信波の到来方向に対応する前記受信波の垂直偏波成分の強度比及び前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項7】
前記強度比付与部は、複数の前記円偏波アンテナを収容するレドームを有し、
前記レドームは、三次元空間において不均一な形状または不均一な構造となっている請求項1から6のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項8】
前記強度比付与部は、複数の前記円偏波アンテナを収容するレドームに設けられると共に、電気特性を変化させる材料を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項9】
前記強度比付与部は、前記円偏波アンテナの素子のゲインを、空間的に一様でないゲインとしたアンテナである請求項1から8のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項10】
前記受信波の到来方向は、方位角方向の角度であるAZ角度と、前記方位角方向に直交する俯仰角方向の角度であるEL角度と、により規定され、
前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルは、
前記AZ角度及び前記EL角度に対応付けた複数のセルを有すると共に、複数の前記セルに前記強度比がそれぞれ設定されており、前記セル間の前記強度比が補間されている請求項1から9のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項11】
前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルが前記受信波の周波数ごとに用意される場合、
前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルは、前記周波数間の前記強度比が補間されている請求項1から10のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置に用いられる前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルを取得する強度比テーブルの取得方法であって、
複数の前記円偏波アンテナに対して、電波発生源から発生する前記受信波を、所定の到来方向及び所定の偏波となるように設定するステップと、
前記電波発生源から前記受信波を発生させるステップと、
複数の前記円偏波アンテナにおいて前記受信波を受信するステップと、
前記受信波を受信することによって得られた2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブル、及び2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の水平偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルを取得するステップと、を実行する強度比テーブルの取得方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置により、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定方法であって、
複数の前記円偏波アンテナにより、前記受信波を受信するステップと、
前記検出器において、複数の前記円偏波アンテナで受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ間における前記強度比を検出するステップと、
前記取得部において、前記受信波の到来方向を取得するステップと、
前記演算部において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部に記憶された前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップと、を実行する偏波方向の測定方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の偏波方向の測定装置により実行される、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定プログラムであって、
複数の前記円偏波アンテナにより、前記受信波を受信するステップと、
前記検出器において、複数の前記円偏波アンテナで受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ間における前記強度比を検出するステップと、
前記取得部において、前記受信波の到来方向を取得するステップと、
前記演算部において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部に記憶された前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップと、を実行させる偏波方向の測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定装置、強度比テーブルの取得方法、偏波方向の測定方法及び偏波方向の測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、受信波の偏波方向を測定する測定装置として、偏波検出部を備える障害物検知レーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。偏波検出部は、第1~第4検波器を有し、第1~第4検波器に接続されるECUは、第1~第4検波器それぞれからの受信電圧から受信偏波を計算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、受信波を受信するアンテナとしては、円偏波アンテナがある。円偏波アンテナは、直線偏波アンテナに比して広帯域性を有しているため、広帯域にわたる電波を受信するシステムでは、円偏波アンテナが採用される。一方で、円偏波アンテナは、水平偏波、垂直偏波、斜め偏波等の何れの偏波方向の受信波でも、偏波方向に関わらず受信することから、直線偏波となる受信波の偏波方向を測定することは困難である。
【0005】
そこで、本開示は、円偏波アンテナで受信する直線偏波となる受信波の偏波方向を測定することができる偏波方向の測定装置、偏波方向の測定方法及び偏波方向の測定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の偏波方向の測定装置は、複数の円偏波アンテナを用いて直線偏波となる受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定装置であって、複数の前記円偏波アンテナで受信される前記受信波の受信強度の強度比に対して、到来方向によって異なる強度比を付与する強度比付与部と、複数の前記円偏波アンテナのうち、2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブルと、2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の水平偏波成分の前記強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルと、をそれぞれ記憶する記憶部と、2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の強度比を取得する検出器と、前記受信波の到来方向を取得する取得部と、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出する演算部と、を備える。
【0007】
本開示の強度比テーブルの取得方法は、上記の偏波方向の測定装置に用いられる前記第1強度比テーブル及び前記第2強度比テーブルを取得する強度比テーブルの取得方法であって、複数の円偏波アンテナに対して、電波発生源から発生する前記受信波を、所定の到来方向及び所定の偏波となるように設定するステップと、前記電波発生源から前記受信波を発生させるステップと、複数の前記円偏波アンテナにおいて前記受信波を受信するステップと、前記受信波を受信することによって得られた2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブル、及び2つの前記円偏波アンテナ間における前記受信波の水平偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルを取得するステップと、を実行する。
【0008】
本開示の偏波方向の測定方法は、上記の偏波方向の測定装置により、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定方法であって、複数の前記円偏波アンテナにより、前記受信波を受信するステップと、前記検出器において、複数の前記円偏波アンテナで受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ間における前記強度比を検出するステップと、前記取得部において、前記受信波の到来方向を取得するステップと、前記演算部において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部に記憶された前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップと、を実行する。
【0009】
本開示の偏波方向の測定プログラムは、上記の偏波方向の測定装置により実行される、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定プログラムであって、複数の前記円偏波アンテナにより、前記受信波を受信するステップと、前記検出器において、複数の前記円偏波アンテナで受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ間における前記強度比を検出するステップと、前記取得部において、前記受信波の到来方向を取得するステップと、前記演算部において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1強度比テーブルから前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部に記憶された前記第2強度比テーブルから前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、円偏波アンテナで受信する直線偏波となる受信波の偏波方向を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る偏波方向の測定装置の一部を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する説明図である。
【
図5】
図5は、受信波の垂直偏波成分に関する第1強度比テーブルの図である。
【
図6】
図6は、受信波の水平偏波成分に関する第2強度比テーブルの図である。
【
図7】
図7は、受信波の偏波方向に関する説明図である。
【
図8】
図8は、強度比テーブルの取得方法に用いられる装置の概略構成図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する一例の説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する一例の説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態4に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態5に係る偏波方向の測定装置のレドームの形状の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0013】
[実施形態1]
実施形態1に係る偏波方向の測定装置1及び偏波方向の測定方法は、円偏波アンテナ5で受信する直線偏波の受信波の偏波方向を測定する装置及び手法となっている。受信波としては、電波であり、例えば、探知レーダのビームである。測定装置1は、例えば、航空機、車両または船舶等の運輸機械に設けられている。受信波は、所定の到来方向から円偏波アンテナ5で受信され、受信波の到来方向は、方位角方向(以下、AZ(Azimuth)方向という)の角度(AZ角度)と、俯仰角方向(以下、EL(Elevation)方向という)の角度(EL角度)により定まる。
【0014】
図1は、実施形態1に係る偏波方向の測定装置の一部を示す概略構成図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図3は、
図1のB-B断面図である。
図4は、実施形態1に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する説明図である。
図5は、受信波の垂直偏波成分に関する第1強度比テーブルの図である。
図6は、受信波の水平偏波成分に関する第2強度比テーブルの図である。
図7は、受信波の偏波方向に関する説明図である。
図8は、強度比テーブルの取得方法に用いられる装置の概略構成図である。
【0015】
(偏波方向の測定装置)
図1から
図3に示すように、測定装置1は、複数の円偏波アンテナ5と、レドーム6と、を備えている。複数の円偏波アンテナ5は、AZ方向(
図1のx方向)に沿って直線状に複数並べて設けられ、EL方向(
図1から
図3のz方向)において1つ設けられた、一次元の配置となっている。なお、実施形態1では、EL方向への高さを抑制すべく、一次元の配置としているものの、配置については特に限定されない。複数の円偏波アンテナ5は、2以上あればよく、実施形態1では、2つの円偏波アンテナ5を用いて説明する。複数の円偏波アンテナ5は、AZ方向において所定の間隔で配置されている。
【0016】
レドーム6は、例えば、航空機の翼に設けられている。レドーム6は、受信波の到来方向によって、円偏波アンテナ5間における信号強度の強度比に対して異なる強度比を付与する強度比付与部として機能している。なお、航空機の翼の翼長方向がAZ方向となっている。具体的に、レドーム6は、形状がAZ方向及びEL方向を含む三次元空間において不均一な形状となっている。
図2に示すように、AZ方向における翼根側(
図1の左側)の位置で切ったレドーム6の断面形状は、内部空間の広さがEL方向において幅広となっている。一方で、
図3に示すように、翼先側(
図1の右側)の位置で切ったレドーム6の断面形状は、内部空間の広さがEL方向において幅狭となっている。このため、レドーム6は、受信波が入社するレドーム6の入射面における受信波の入射角度を、三次元的に異ならせている。また、
図2及び
図3に示す断面においても、レドーム6の厚さは一定でなく、EL方向によって厚みが異なっている。
【0017】
ここで、直線偏波となる受信波は、レドーム6の入射面における入射角度が異なると、レドーム6を透過する受信波の透過率の入射角特性が、受信波の垂直偏波成分と水平偏波成分とで異なるものとなる。このため、複数の円偏波アンテナ5に入射する受信波の入射角度を異ならせることで、1つの円偏波アンテナ5で受信する受信波の信号強度と他の1つの円偏波アンテナ5で受信する受信波の信号強度との強度比を異ならせることができる。
【0018】
なお、レドーム6は、その構造が積層構成となっており、形状を異ならせること、積層構成を異ならせること、形状及び積層構成の両方を異ならせることで、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与するようにしてもよい。
【0019】
また、
図4に示すように、測定装置1は、検出器10と、記憶部11と、取得部12と、演算部13と、を備えている。
【0020】
検出器10は、2つの円偏波アンテナ5に接続されており、2つの円偏波アンテナ5における信号強度の強度比を検出している。ここで、実施形態1では、2つの円偏波アンテナ5として、「アンテナ1」及び「アンテナ2」を適用している。つまり、実施形態1において、検出器10は、2つの円偏波アンテナ5の強度比として、「アンテナ1」及び「アンテナ2」の強度比を検出している。なお、検出器10は、強度比を検出したが、少なくとも強度比を検出すればよく、必要に応じて、周波数を検出してもよい。
【0021】
記憶部11は、
図5に示す第1強度比テーブルT1と、
図6に示す第2強度比テーブルT2とを記憶している。第1強度比テーブルT1は、2つの円偏波アンテナ5間における受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)と受信波の到来方向とを対応付けたデータである。
図5は、その横軸がAZ角度となっており、その縦軸がEL角度となっている。また、第1強度比テーブルT1は、AZ角度及びEL角度に対応付けられる複数のセルから構成されている。各セルには、強度比が対応付けられている。このため、強度比が対応付けられたセルには、AZ角度及びEL角度が対応付けられる。また、第1強度比テーブルT1は、少なくとも周波数ごとに用意されている。実施形態1では、第1強度比テーブルT1として、「アンテナ1」及び「アンテナ2」の第1強度比テーブルT1を用意している。第2強度比テーブルT2は、2つの円偏波アンテナ5間における受信波の水平偏波成分の強度比(TH)と受信波の到来方向とを対応付けたデータである。
図6は、
図5と同様に、その横軸がAZ角度となっており、その縦軸がEL角度となっている。なお、第2強度比テーブルT2は、第1強度比テーブルT1の垂直偏波成分を水平偏波成分に読み替えたものであり、第1強度比テーブルT1とほぼ同様であるため、説明を省略する。また、図示は省略するが、記憶部11は、測定装置1を用いた受信波の偏波方向を測定するためのプログラムを記憶している。なお、第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2は、
図5に示す第1強度比テーブルT1及び
図6に示す第2強度比テーブルT2の他、第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2を基に数式化したものも含む。
【0022】
取得部12は、受信波の到来方向を取得する。具体的に、取得部12は、複数のアンテナ15により受信した受信波に基づいて、受信波の到来方向を方探する方向探知部である。取得部12は、複数のアンテナ15において受信した受信波の位相差Δθ、波長λ、アンテナ15間の距離dに基づいて、所定の算出式から、受信波の到来方向を算出する。ここで、所定の算出式は、一般に知られている位相差方探の方式であり、「θ=sin
-1(Δθ・λ/2πd)」などを用いる。また、取得部12は、三次元方向における受信波の到来方向を取得するために、
図4に示すように複数のアンテナ15を二次元配置したもの、すなわち、3つのアンテナ15をAZ方向及びEL方向にそれぞれ隣接して並べたものとなっている。
【0023】
演算部13は、受信波の偏波方向を算出する。具体的に、演算部13は、取得部12において取得した受信波の到来方向に基づいて、第1強度比テーブルT1から受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)を取得すると共に、第2強度比テーブルT2から受信波の水平偏波成分の強度比(TH)を取得する。また、演算部13は、検出器10において取得した受信波の強度比(M)を取得する。そして、演算部13は、受信波の強度比(M)と、受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)と、受信波の水平偏波成分の強度比(TH)とに基づいて、所定の算出式から、受信波の偏波方向を算出する。
【0024】
所定の算出式は、水平偏波成分の比率を求める下記の(1)式と、垂直偏波成分の比率を求める下記の(2)式である。
PH=(M-TV)/(TH-TV) ・・・(1)
PV=1-PH ・・・(2)
【0025】
そして、
図7に示すように、演算部13は、(1)式で求めた水平偏波成分の比率と、(2)式で求めた垂直偏波成分の比率とから、受信波の偏波方向を算出する。
【0026】
(強度比テーブル取得方法)
次に、
図8を参照して、測定装置1に用いられる第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2を取得する強度比テーブルの取得方法について説明する。第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2の取得には、
図8に示す取得装置21が用いられる。なお、以下では、単に強度比テーブルT1,T2ともいう。取得装置21は、送信器22と、受信器23と、動作部24と、測定器25と、を備えている。
【0027】
送信器22は、受信器23へ向けて所定の偏波方向となる直線偏波の電波(受信波)を送信する。受信器23は、測定装置1の複数の円偏波アンテナ5及びレドーム6と同等のものとなっており、受信した電波を受信波として取得する。動作部24は、受信器23から見た送信器22の位置が所定のAZ角度及びEL角度となるように受信器23を移動させる。測定器25は、送信器22の送信周波数及び偏波方向を設定し、受信器23において受信した受信波の強度比を取得すると共に、取得時におけるAZ角度及びEL角度を取得する。
【0028】
強度比テーブルT1,T2の取得方法では、2つの円偏波アンテナ5を含む受信器23が、所定のAZ角度及びEL角度となる到来方向となるように、取得装置21は、動作部24を動作させるステップを実行する。この後、取得方法では、電波発生源となる送信器22から所定の周波数及び所定の偏波方向となる電波を発生させるステップを実行する。そして、取得方法では、所定の周波数及び偏波方向となる電波を受信器23により受信波として受信するステップを実行する。取得方法では、受信器23において受信波を受信すると、測定器25により受信波の垂直偏波成分及び水平偏波成分の2つの円偏波アンテナ5間における強度比を測定する。そして、取得方法では、測定した2つの円偏波アンテナ5間における受信波の垂直偏波成分における強度比と、取得時におけるAZ角度及びEL角度とを対応付けて、受信波の周波数ごとに第1強度比テーブルT1として取得するステップを実行する。また、取得方法では、測定した2つの円偏波アンテナ5間における受信波の水平偏波成分における強度比と、取得時におけるAZ角度及びEL角度とを対応付けて、受信波の周波数ごとに第2強度比テーブルT2として取得するステップを実行する。
【0029】
なお、受信波の周波数ごとに用意される複数の強度比テーブルT1,T2は、周波数間の強度差が補間される補間処理が実行されてもよい。さらに、強度比テーブルT1,T2内の各セルは、AZ角度及びEL角度からなる到来方向に対応付けられているが、セル間のAZ角度及びEL角度が補間される補間処理が実行されてもよい。
【0030】
(偏波方向の測定方法)
次に、
図4を参照して、測定装置1により、直線偏波となる受信波の偏波方向を測定する測定方法について説明する。
【0031】
測定方法では、先ず、2つの円偏波アンテナ5により受信波を受信するステップS1を実行する。この後、測定方法では、検出器10において、2つの円偏波アンテナ5で受信した受信波に基づいて、2つの円偏波アンテナ5間における強度比を検出するステップS2を実行する。また、測定方法では、取得部12において、受信波の到来方向を取得するステップS3を実行する。測定方法では、演算部13において、取得した受信波の到来方向に基づいて、記憶部11に記憶された第1強度比テーブルT1から受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、第2強度比テーブルT2から受信波の水平偏波成分の強度比を取得するステップS4を実行する。そして、ステップS4では、演算部13が、受信波の強度比(M)と、受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)と、受信波の水平偏波成分の強度比(TH)とに基づいて、所定の算出式から、受信波の偏波方向を算出する。なお、実施形態1の測定方法では、受信波の周波数に基づいて、対応する第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2を用いてもよい。
【0032】
[実施形態2]
次に、
図9を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図9は、実施形態2に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する一例の説明図である。
【0033】
実施形態1の測定装置1では、取得部12において、複数のアンテナ15を用いて受信波の到来方向を取得した。実施形態2の測定装置40では、取得部12が、複数の円偏波アンテナ5を用いて受信波の到来方向を取得している。つまり、実施形態2では、複数の円偏波アンテナ5が、受信波の強度比の検出と、受信波の到来方向の取得とに用いられている。
【0034】
具体的に、取得部12は、複数の円偏波アンテナ5により受信した受信波に基づいて、受信波の到来方向を方探する方向探知部である。取得部12は、実施形態1と同様に、複数の円偏波アンテナ5において受信した受信波の位相差Δθ、波長λ、アンテナ5間の距離dに基づいて、所定の算出式から、受信波の到来方向を算出する。また、取得部12は、三次元方向における受信波の到来方向を取得するために、
図4と同様に、複数の円偏波アンテナ5を二次元配置したもの、すなわち、3つの円偏波アンテナ5をAZ方向及びEL方向にそれぞれ隣接して並べたものとなっている。
【0035】
[実施形態3]
次に、
図10を参照して、実施形態3について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図10は、実施形態3に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する一例の説明図である。
【0036】
実施形態3では、複数の円偏波アンテナ5が、2つの円偏波アンテナ5の組合せ(ペア)が2以上となるように設けられている。つまり、円偏波アンテナ5は、少なくとも3以上設けられ、2つの異なるアンテナペアとなるように設けられている。なお、
図10では、所定のアンテナペアを「アンテナペア(1)」とし、他の所定のアンテナペアを「アンテナペア(2)」と図示している。
【0037】
実施形態3において、演算部13は、予め規定された変更条件に基づいて、所定の円偏波アンテナ5の組合せから、他の円偏波アンテナ5の組合せに変更して、受信波の偏波方向を算出している。実施形態3では、例えば、アンテナペア(1)からアンテナペア(2)へ変更している。
【0038】
具体的に、実施形態3では、変更条件として、第1強度比テーブルT1から取得した受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)と、第2強度比テーブルT2から取得した受信波の水平偏波成分の強度比(TH)とが一致する条件である。つまり、実施形態1の(1)式に示すように、TV=THとなる場合、(1)式の右辺の分母がゼロとなってしまうことから、受信波の偏波方向を算出することができない。このため、強度比(TV)と強度比(TH)とが一致する変更条件となる場合、演算部13は、TV=THとなるアンテナペア(1)から、TV≠THとなるアンテナペア(2)へ変更する。これにより、演算部13は、(1)式の右辺の分母がゼロとなることを抑制することで、受信波の偏波方向を算出する。
【0039】
[実施形態4]
次に、
図11を参照して、実施形態4について説明する。なお、実施形態4では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図11は、実施形態4に係る偏波方向の測定装置及び偏波方向の測定方法に関する一例の説明図である。
【0040】
実施形態4では、実施形態3と同様に、複数の円偏波アンテナ5が、2つの円偏波アンテナ5の組合せ(ペア)が2以上となるように設けられている。実施形態4において、演算部13は、予め規定された変更条件に基づいて、所定の円偏波アンテナ5の組合せから、他の円偏波アンテナ5の組合せに変更して、受信波の偏波方向を算出している。実施形態4では、例えば、アンテナペア(1)からアンテナペア(2)へ変更している。
【0041】
具体的に、実施形態4では、変更条件として、第1強度比テーブルT1から取得した受信波の垂直偏波成分の強度比(TV)と、第2強度比テーブルT2から取得した受信波の水平偏波成分の強度比(TH)との差が、他の円偏波アンテナ5の組合せよりも、所定の円偏波アンテナ5の組合せのほうが小さくなる条件である。つまり、
図11に示すように、TVとTHとの強度差が小さい場合、誤差の影響が大きくなることから、受信波の偏波方向の算出精度が低下する。このため、強度比(TV)と強度比(TH)との強度差が、上記の変更条件となる場合、演算部13は、強度差が小さいアンテナペア(1)から、アンテナペア(1)に比して強度差が大きいアンテナペア(2)へ変更する。これにより、演算部13は、TVとTHとの強度差が大きくなることで、誤差の影響を抑制し、受信波の偏波方向の算出精度を担保する。
【0042】
なお、実施形態4では、複数のアンテナペアから受信波の偏波方向を複数算出し、算出した複数の受信波の偏波方向を平均化する処理を実行してもよい。
【0043】
[実施形態5]
次に、
図12を参照して、実施形態5について説明する。なお、実施形態5では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図12は、実施形態5に係る方向探知装置のレドームの形状の例を示す断面図である。
【0044】
実施形態1から4の測定方法では、レドーム6により、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与していたが、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与していない部位または付与が不足している部位等がある場合がある。
【0045】
このため、実施形態5では、
図12に示すように、測定装置1のレドーム6に電気特性を変化させるための材料を追加した構成となっている。電気特性を変化させるための材料としては、例えば、誘電体、金属等の良導体を用いることが可能である。なお、以下では、誘電体31を追加した構成として説明する。誘電体31は、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与すればよく、例えば、
図12の誘電体31a~31c、32、33を配置してもよい。
図12のレドーム6aでは、レドーム6aの内側に倣って誘電体31aが設けられており、誘電体31aは、その内面が湾曲面となっている。また、
図12のレドーム6bでは、誘電体31bが、レドーム6aの内側から突出するブロック形状のものとなっている。
図12のレドーム6cでは、レドーム6cの内側に倣って誘電体31cが設けられており、誘電体31cは、円偏波アンテナ5と対向する内面が平面となっており、この平面のEL方向の両側に連なる面も平面となっている。
図12のレドーム6dでは、レドーム6aの内側に、別体となる誘電体32が取り付けられたものとなっている。
図12のレドーム6eでは、円偏波アンテナ5に被覆されるキャップ状の誘電体33を取り付けたものとなっている。
【0046】
なお、図示は省略するが、レドーム6の外側に、誘電体31のような電気特性を変化させるための材料を配置してもよく、例えば、測定装置1を航空機に搭載する場合には、レドーム6の外側にある機体を、電気特性を変化させるための材料として用いてもよい。つまり、レドーム6の外側にある機体が、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与する強度比付与部として機能してもよい。また、強度比付与部の他の態様として、円偏波アンテナ5の素子のゲインを、空間的に一様でないゲインとすることで、円偏波アンテナ5自体を強度比付与部として機能させてもよい。この強度比付与部は、空間的に一様でないゲインであるため、到来方向によって異なる強度差を発生させることが可能となる。
【0047】
また、実施形態5の電気特性を変化させるための材料は、実施形態2のように、複数の円偏波アンテナ5が、受信波の到来方向の取得に用いられる場合、受信波の到来方向によって異なる位相差を付与する場合において適用してもよい。つまり、レドーム6に電気特性を変化させるための材料を追加することで、受信波の到来方向によって異なる位相差を付与するようにしてもよい。また、実施形態2のように、複数の円偏波アンテナ5が、受信波の到来方向の取得に用いられる場合であっても、受信波の到来方向によって異なる位相差を付与せずに、強度比のみを付与するようにしてもよい。つまり、取得部12の構成に応じて、実施形態5の適用の有無を選択してもよいし、また、実施形態5を適用する場合であっても、強度比のみを付与してもよいし、強度比及び位相差を付与してもよい。
【0048】
また、実施形態1から5では、AZ角度及びEL角度を変更させながら、各セルにおける強度比を取得した強度比テーブルT1,T2を用いて、受信波の偏波方向を測定したが、この構成に特に限定されない。例えば、レドーム6を荷重変形させながら、各セルにおける強度比を取得して強度比テーブルT1,T2を生成し、生成した強度比テーブルT1,T2を用いて、レドーム6の荷重変形を考慮して、受信波の偏波方向を測定してもよい。
【0049】
以上のように、実施形態に記載の偏波方向の測定装置1,40、強度比テーブルT1,T2の取得方法、偏波方向の測定方法及び偏波方向の測定プログラムは、例えば、以下のように把握される。
【0050】
第1の態様に係る偏波方向の測定装置1,40は、複数の円偏波アンテナ5を用いて直線偏波となる受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定装置1,40であって、複数の前記円偏波アンテナ5で受信される前記受信波の受信強度の強度比に対して、到来方向によって異なる強度比を付与する強度比付与部(レドーム6、誘電体31、良導体、空間的に一様でないゲインを有するアンテナ素子)と、複数の前記円偏波アンテナ5のうち、2つの前記円偏波アンテナ5間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブルT1と、2つの前記円偏波アンテナ5間における前記受信波の水平偏波成分の前記強度比と前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルT2と、をそれぞれ記憶する記憶部11と、2つの前記円偏波アンテナ5間における前記受信波の強度比を取得する検出器10と、前記受信波の到来方向を取得する取得部と、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記第1強度比テーブルT1から前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記第2強度比テーブルT2から前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出する演算部13と、を備える。
【0051】
この構成によれば、円偏波アンテナ5を用いて、直線偏波となる受信波を受信する場合であっても、受信波の偏波方向を測定することができる。
【0052】
第2の態様として、前記取得部12は、複数の前記円偏波アンテナ5により受信した前記受信波に基づいて前記受信波の到来方向を方探する方向探知部である。
【0053】
この構成によれば、円偏波アンテナ5を、受信波の強度比の検出と、受信波の到来方向の取得とに用いることができるため、構成を簡易なものとすることができる。
【0054】
第3の態様として、複数の前記円偏波アンテナ5は、2つの前記円偏波アンテナ5の組合せが2以上となるように設けられ、前記演算部13は、予め規定された変更条件に基づいて、所定の前記円偏波アンテナ5の組合せから、他の前記円偏波アンテナ5の組合せに変更して、前記受信波の偏波方向を算出する。
【0055】
この構成によれば、変更条件に基づいて、円偏波アンテナ5の組合せを適切なものにすることができ、適切な円偏波アンテナ5の組合せを用いて、受信波の偏波方向を算出することができる。
【0056】
第4の態様として、前記変更条件は、前記第1強度比テーブルT1から取得した前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記第2強度比テーブルT2から取得した前記受信波の水平偏波成分の強度比とが一致する条件である。
【0057】
この構成によれば、受信波の偏波方向の算出が困難な場合であっても、円偏波アンテナ5の組合せを適切なものにすることで、受信波の偏波方向を算出することが可能となる。
【0058】
第5の態様として、前記変更条件は、前記第1強度比テーブルT1から取得した前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記第2強度比テーブルT2から取得した前記受信波の水平偏波成分の強度比との差が、他の前記円偏波アンテナの組合せよりも、所定の前記円偏波アンテナの組合せのほうが小さくなる条件である。
【0059】
この構成によれば、受信波の偏波方向の算出精度が低下する場合であっても、円偏波アンテナ5の組合せを適切なものにすることで、算出精度の低下を抑制することができる。
【0060】
第6の態様として、前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2は、前記受信波の周波数ごとに記憶されており、前記検出器10は、前記受信波の前記周波数を検出し、前記演算部13は、前記検出器10で検出した前記周波数に基づいて、前記周波数に対応する前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2を取得し、取得した前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2から、前記取得部12で取得した前記受信波の到来方向に対応する前記受信波の垂直偏波成分の強度比及び前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得する。
【0061】
この構成によれば、第1強度比テーブルT1及び第2強度比テーブルT2を周波数ごとに取得することができるため、周波数に対応した適切な強度比を取得することでき、強度比に対応する精度のよい受信波の偏波方向を算出することができる。
【0062】
第7の態様として、前記強度比付与部は、複数の前記円偏波アンテナ5を収容するレドーム6を有し、前記レドーム6は、三次元空間において不均一な形状または不均一な構造となっている。
【0063】
この構成によれば、レドーム6の形状を三次元空間において不均一な形状または不均一な構造とすることで、受信波の到来方向によって異なる強度比を付与することができる。
【0064】
第8の態様として、前記強度比付与部は、複数の前記円偏波アンテナ5を収容するレドーム6に設けられると共に、電気特性を変化させる材料(誘電体31、良導体)を有する。
【0065】
この構成によれば、電気特性を変化させる材料をレドーム6に設けることで、受信波の到来方向によって異なる強度比を簡易に付与することができる。
【0066】
第9の態様として、前記強度比付与部は、前記円偏波アンテナ5の素子のゲインを、空間的に一様でないゲインとしたアンテナ5である。
【0067】
この構成によれば、円偏波アンテナ5の素子のゲインを空間的に一様でないゲインとすることで、円偏波アンテナ5自体を強度比付与部として容易に機能させることができる。つまり、円偏波アンテナ5の素子のゲインを、素子ごとに異なったゲインとすることで、受信波の到来方向によって異なった強度差を容易に得ることができる。
【0068】
第10の態様として、前記受信波の到来方向は、方位角方向の角度であるAZ角度と、前記方位角方向に直交する俯仰角方向の角度であるEL角度と、により規定され、前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2は、前記AZ角度及び前記EL角度に対応付けた複数のセルを有すると共に、複数の前記セルに前記強度差がそれぞれ設定されており、前記セル間の前記強度比が補間されている。
【0069】
この構成によれば、セル間の強度比を適切に補間することができるため、受信波の到来方向に対応する強度比を精度よく取得することができる。
【0070】
第11の態様として、前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2が前記受信波の周波数ごとに用意される場合、前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2は、前記周波数間の前記強度比が補間されている。
【0071】
この構成によれば、周波数間の強度比を、適切に補間することができるため、周波数間の強度比を精度よく取得することができ、また、受信波の到来方向に対応する強度比を適切に取得することができる。
【0072】
第12の態様に係る強度比テーブルT1,T2の取得方法は、上記の偏波方向の測定装置1,40に用いられる前記第1強度比テーブルT1及び前記第2強度比テーブルT2を取得する強度比テーブルT1,T2の取得方法であって、複数の前記円偏波アンテナ5に対して、電波発生源から発生する前記受信波を、所定の到来方向及び所定の偏波となるように設定するステップと、前記電波発生源から前記受信波を発生させるステップと、複数の前記円偏波アンテナ5において前記受信波を受信するステップと、前記受信波を受信することによって得られた2つの前記円偏波アンテナ5間における前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第1強度比テーブルT1、及び2つの前記円偏波アンテナ5間における前記受信波の水平偏波成分の強度比と、前記受信波の到来方向とを対応付けた第2強度比テーブルT2を取得するステップと、を実行する。
【0073】
この構成によれば、強度比と受信波の到来方向とを適切に対応付けた強度比テーブルT1,T2を取得することができる。
【0074】
第13の態様に係る偏波方向の測定方法は、上記の偏波方向の測定装置1,40により、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定方法であって、複数の前記円偏波アンテナ5により、前記受信波を受信するステップS1と、前記検出器10において、複数の前記円偏波アンテナ5で受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ5間における前記強度比を検出するステップS2と、前記取得部12において、前記受信波の到来方向を取得するステップS3と、前記演算部13において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部11に記憶された前記第1強度比テーブルT1から前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部11に記憶された前記第2強度比テーブルT2から前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器10において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップS4と、を実行する。
【0075】
この構成によれば、円偏波アンテナ5を用いて、直線偏波となる受信波を受信する場合であっても、受信波の偏波方向を測定することができる。
【0076】
第14の態様に係る方向探知プログラムは、上記の偏波方向の測定装置1,40により実行される、受信波の偏波方向を測定する偏波方向の測定プログラムであって、複数の前記円偏波アンテナ5により、前記受信波を受信するステップS1と、前記検出器10において、複数の前記円偏波アンテナ5で受信した前記受信波に基づいて、2つの前記円偏波アンテナ5間における前記強度比を検出するステップS2と、前記取得部12において、前記受信波の到来方向を取得するステップS3と、前記演算部13において、取得した前記受信波の到来方向に基づいて、前記記憶部11に記憶された前記第1強度比テーブルT1から前記受信波の垂直偏波成分の強度比を取得すると共に、前記記憶部11に記憶された前記第2強度比テーブルT2から前記受信波の水平偏波成分の強度比を取得し、前記検出器10において取得した前記受信波の強度比と、前記受信波の垂直偏波成分の強度比と、前記受信波の水平偏波成分の強度比とに基づいて、所定の算出式から、前記受信波の偏波方向を算出するステップS4と、を実行させる。
【0077】
この構成によれば、円偏波アンテナ5を用いて、直線偏波となる受信波を受信する場合であっても、受信波の偏波方向を測定することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,40 測定装置
5 円偏波アンテナ
6 レドーム
10 検出器
11 記憶部
12 取得部
13 演算部
15 アンテナ
21 取得装置
22 送信器
23 受信器
24 動作部
25 測定器
31a~31c,32,33 誘電体
T1 第1強度比テーブル
T2 第2強度比テーブル