(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165753
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】反射型スクリーン、映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20221025BHJP
G03B 21/60 20140101ALI20221025BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20221025BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20221025BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/60
G02B5/08 A
G02B5/02 B
G02B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071237
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】関口 博
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲一
(72)【発明者】
【氏名】川島 朋也
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
【Fターム(参考)】
2H021BA02
2H021BA03
2H021BA22
2H021BA27
2H021BA28
2H042BA04
2H042BA13
2H042BA15
2H042BA19
2H042DA02
2H042DA03
2H042DA04
2H042DA08
2H042DA11
2H042DC02
2H042DC04
2H042DC07
2H042DC08
2H042DE00
(57)【要約】
【課題】映像のぎらつきを低減でき、かつ、明瞭な映像を表示できる反射型スクリーン、及び、これを備える映像表示装置を提供する。
【解決手段】スクリーン10は、反射型スクリーンであって、背面側に凸となる単位光学形状121が複数配列された第1光学形状層12と、単位光学形状121の少なくとも第1斜面121aの一部に形成され、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されており、入射した光の少なくとも一部を拡散反射する反射層13と、スクリーン10の厚み方向において反射層13よりも映像源側に位置し、特定の角度範囲から入射した光を拡散して透過し、特定の角度範囲の範囲外から入射した光を拡散せずに透過する光制御層16とを備える。特定の角度範囲は、光制御層16の映像源側となる面に垂直な直線に対して、映像源LSが位置する側に25°以上55°以下となる範囲である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光の少なくとも一部を反射して映像を表示する反射型スクリーンであって、
映像光が入射する第1の面とこれに交差する第2の面とを有し、背面側に凸となる単位光学形状が複数配列された第1光学形状層と、
前記単位光学形状の少なくとも前記第1の面の一部に形成され、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されており、入射した光の少なくとも一部を拡散反射する反射層と、
該反射型スクリーンの厚み方向において前記反射層よりも映像源側に位置し、特定の角度範囲から入射した光を拡散して透過し、前記特定の角度範囲の範囲外から入射した光を拡散せずに透過する光制御層と、
を備え、
光を拡散する粒子を含有する光拡散層を備えておらず、
前記単位光学形状の前記第1の面がスクリーン面に平行な面となす角度αは、前記単位光学形状の配列方向に沿って一方向に大きくなり、
前記特定の角度範囲は、該反射型スクリーンの画面中央となる点を通り前記単位光学形状の配列方向に平行な方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記光制御層の映像源側となる面に垂直な直線に対して、前記角度αが小さい側に、25°以上55°以下となる範囲であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、
該反射型スクリーンの厚み方向において、前記第1光学形状層の映像源側の面と前記光制御層の背面側の面との間の距離は、0.5mm以下であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記反射層は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する半透過型であり、
前記反射層の背面側に前記反射層に隣接して設けられ、光透過性を有し、隣り合う前記単位光学形状による谷部を埋めるように積層された第2光学形状層を有し、
前記第2光学形状層は、その背面側の面が平面状であり、前記第1光学形状層と屈折率が等しいもしくは等しいとみなせるほど屈折率差が小さいこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記第1光学形状層は、背面側にフレネルレンズ形状を有し、
前記単位光学形状は、スクリーン面に直交する方向から見て円弧状であり、該反射型スクリーンの表示領域外に位置する点を中心として同心円状に配列されていること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射型スクリーンにおいて、
入射した光の一部を吸収し、一部を透過する光吸収層を備えること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項6】
請求項5に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記光吸収層は、前記反射層よりも背面側に設けられること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項7】
請求項6に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記光吸収層は、入射角度が大きい光に対する吸収率が、入射角度が0°である光に対する吸収率より大きい状態と、入射角度による光の吸収率の差が小さい状態とを選択できる調光層であること、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の反射型スクリーンにおいて、
前記反射層は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する半透過型であり、
前記反射層の背面側に前記反射層に隣接して設けられ、光透過性を有し、隣り合う前記単位光学形状による谷部を埋めるように積層された第2光学形状層を有し、
該反射型スクリーンの厚み方向において、前記光吸収層の映像源側の面から前記第2光学形状層の背面側の面までの距離は、前記光制御層の背面側の面から前記第1光学形状層の映像源側の面までの距離よりも大きいこと、
を特徴とする反射型スクリーン。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の反射型スクリーンと、
前記反射型スクリーンへ映像光を投射する映像源と
を備える映像表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の映像表示装置において、
前記特定の角度範囲は、前記映像源の投射する映像光の主たる入射角度範囲を含むこと、
を特徴とする映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スクリーンと、これを備える映像表示装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、映像源から投射された映像光を反射して表示する反射型スクリーンとして、様々なものが開発されている。なかでも、例えば、透明性を有する反射型スクリーン(例えば、特許文献1参照)は、窓ガラス等のような透光性の高い部材に貼り付ける等して固定し、投射された映像光を反射して映像を表示でき、かつ、映像光を投射しない不使用時等にはスクリーンの向こう側の景色を、スクリーンを通して観察することができるため、意匠性の高さ等から需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すように、反射面(反射層の表面)が微細な凹凸形状を有する粗面状である場合、映像光が反射面で拡散反射されるので、光を拡散する粒子等を含有する光拡散層を反射層よりも映像源側に備える必要がなく、反射型スクリーンの透明性を高めることができる。
しかし、このような粗面状の反射面を備える場合、映像のぎらつき(スペックルともいう)が生じやすいという問題があった。
【0005】
このような映像のぎらつきは、映像の快適な視認の妨げとなり、好ましくない。また、このような映像のぎらつきは、明るく明瞭な映像を表示できるレーザー光源を用いた映像源を使用する場合には、とくに視認されやすい傾向にあった。
このような映像のぎらつきを低減するためには、前述のような拡散材を含有する光拡散層を備えることが効果的である。しかし、このような光拡散層は、映像のぼけ(解像度の低下)を生じさせたり、スクリーンの透明性を低下させたりするという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、映像のぎらつきを低減でき、かつ、明瞭な映像を表示できる反射型スクリーン、及び、これを備える映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
第1の発明は、映像源から投射された映像光の少なくとも一部を反射して映像を表示する反射型スクリーンであって、映像光が入射する第1の面(121a)とこれに交差する第2の面(121b)とを有し、背面側に凸となる単位光学形状(121)が複数配列された第1光学形状層(12)と、前記単位光学形状の少なくとも前記第1の面の一部に形成され、その表面に微細かつ不規則な凹凸形状が形成されており、入射した光の少なくとも一部を拡散反射する反射層(13)と、該反射型スクリーンの厚み方向において前記反射層よりも映像源側に位置し、特定の角度範囲(R1)から入射した光を拡散して透過し、前記特定の角度範囲の範囲外(R2)から入射した光を拡散せずに透過する光制御層(16)と、を備え、光を拡散する粒子を含有する光拡散層を備えておらず、前記単位光学形状の前記第1の面がスクリーン面に平行な面となす角度αは、前記単位光学形状の配列方向に沿って一方向に大きくなり、前記特定の角度範囲は、該反射型スクリーンの画面中央となる点を通り前記単位光学形状の配列方向に平行な方向及び該反射型スクリーンの厚み方向に平行な断面において、前記光制御層の映像源側となる面に垂直な直線に対して、前記角度αが小さい側に、25°以上55°以下となる範囲であること、を特徴とする反射型スクリーン(10,20)である。
第2の発明は、第1の発明の反射型スクリーンにおいて、該反射型スクリーンの厚み方向において、前記第1光学形状層(12)の映像源側の面と前記光制御層(16)の背面側の面との間の距離は、0.5mm以下であること、を特徴とする反射型スクリーン(10,20)である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の反射型スクリーンにおいて、前記反射層(13)は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する半透過型であり、前記反射層の背面側に前記反射層に隣接して設けられ、光透過性を有し、隣り合う前記単位光学形状(121)による谷部を埋めるように積層された第2光学形状層(14)を有し、前記第2光学形状層は、その背面側の面が平面状であり、前記第1光学形状層(12)と屈折率が等しいもしくは等しいとみなせるほど屈折率差が小さいこと、を特徴とする反射型スクリーン(10,20)である。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記第1光学形状層(12)は、背面側にフレネルレンズ形状を有し、前記単位光学形状(121)は、スクリーン面に直交する方向から見て円弧状であり、該反射型スクリーンの表示領域外に位置する点を中心として同心円状に配列されていること、を特徴とする反射型スクリーン(10,20)である。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、入射した光の一部を吸収し、一部を透過する光吸収層(30)を備えること、を特徴とする反射型スクリーン(20)である。
第6の発明は、第5の発明の反射型スクリーンにおいて、前記光吸収層(30)は、前記反射層(13)よりも背面側に設けられること、を特徴とする反射型スクリーン(20)である。
第7の発明は、第6の発明の反射型スクリーンにおいて、前記光吸収層(30)は、入射角度が大きい光に対する吸収率が、入射角度が0°である光に対する吸収率より大きい状態と、入射角度による光の吸収率の差が小さい状態とを選択できる調光層であること、を特徴とする反射型スクリーン(20)である。
第8の発明は、第5の発明から第7の発明までのいずれかの反射型スクリーンにおいて、前記反射層(13)は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する半透過型であり、前記反射層の背面側に前記反射層に隣接して設けられ、光透過性を有し、隣り合う前記単位光学形状による谷部を埋めるように積層された第2光学形状層(14)を有し、該反射型スクリーンの厚み方向において、前記光吸収層(30)の映像源側の面から前記第2光学形状層(14)の背面側の面までの距離(D2)は、前記光制御層(16)の背面側の面から前記第1光学形状層(12)の映像源側の面までの距離(D1)よりも大きいこと、を特徴とする反射型スクリーン(20)である。
第9の発明は、第1の発明から第8の発明までのいずれかの反射型スクリーン(10,20)と、前記反射型スクリーンへ映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示装置(1)である。
第10の発明は、第9の発明の映像表示装置において、前記反射型スクリーン(10,20)の前記特定の角度範囲(R1)は、前記映像源(LS)の投射する映像光の主たる入射角度範囲を含むこと、を特徴とする映像表示装置(1)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、映像のぎらつきを低減でき、かつ、明瞭な映像を表示できる反射型スクリーン、及び、これを備える映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の映像表示装置1を示す図である。
【
図2】第1実施形態のスクリーン10の層構成を示す図である。
【
図4】光制御層16の光制御作用を説明する図である。
【
図5】第1実施形態のスクリーン10に入射する映像光及び外光の一例を示す図である。
【
図6】ピーク輝度等の測定時及び目視評価時における各スクリーンと、映像源LS、輝度計K、観察者O3の位置等を示す図である。
【
図7】第2実施形態のスクリーン20の層構成を示す図である。
【
図8】調光層30の液晶材料の配向の様子を示す図である。
【
図9】変形形態のスクリーン50の層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
【0011】
また、本明細書中において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択できる。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の映像表示装置1を示す図である。
図1(a)は、映像表示装置1の斜視図であり、
図1(b)は、映像表示装置1を側面側(後述する+X側)から見た図である。
映像表示装置1は、スクリーン10、映像源LS等を有している。スクリーン10は、映像源LSから投影された映像光L0の一部を反射して、画面上に映像を表示する反射型スクリーンである。このスクリーン10の詳細に関しては、後述する。
【0013】
ここで、理解を容易にするために、
図1を含め以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン10の画面の水平方向(左右方向)をX方向、鉛直方向(上下方向)をY方向とし、スクリーン10の厚み方向をZ方向とする。スクリーン10の画面は、XY面に平行であり、スクリーン10の厚み方向(Z方向)は、スクリーン10の画面に直交する。
また、スクリーン10の映像源側の正面方向に位置する観察者O1から見て水平方向の右側に向かう方向を+X方向、鉛直方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において背面側(裏面側)から映像源側に向かう方向を+Z方向とする。
さらに、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
【0014】
映像源LSは、映像光L0をスクリーン10へ投影する映像投射装置であり、例えば、短焦点型のプロジェクタである。本実施形態では、映像源LSは、光源として高圧水銀ランプを用いたDLP方式のプロジェクタを用いている。これに限らず、所望する光学性能や映像表示装置1の使用環境等に応じて、レーザーやLED等の他の光源を用いる映像源を使用してもよい。
この映像源LSは、映像表示装置1の使用状態において、スクリーン10の画面(表示領域)を正面方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、スクリーン10の画面左右方向の中央であって、スクリーン10の画面よりも鉛直方向下方側に位置している。
本明細書中において、スクリーン面とは、そのスクリーン全体として見たときにおける、スクリーンの平面方向となる面を示すものとする。スクリーン10のスクリーン面は、スクリーン10の画面(XY面)に平行である。
【0015】
映像源LSは、奥行き方向(Z方向)において、スクリーン10の表面からの距離が、従来のスクリーンの画面の正面方向に位置する汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から斜めに映像光L0を投影できる。したがって、従来の汎用プロジェクタに比べて、映像源LSは、スクリーン10までの投射距離が短く、投射された映像光L0がスクリーン10に入射する入射角度が大きく、入射角度の変化量(最小値から最大値までの変化量)も大きい。
【0016】
スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光L0の一部を映像源側(+Z側)の正面方向に位置する観察者O1側へ向けて反射して、観察者O1に映像を表示し、一部を透過する半透過型の反射型スクリーンである。スクリーン10は、透明性を有しており、観察者O1は、スクリーン10を通して向こう側(-Z側)の景色を観察可能である。
スクリーン10の画面(表示領域)は、使用状態において、観察者O1側から見て長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。また、スクリーン10は、その画面サイズが対角40~100インチ程度であり、画面の横縦比が16:9である。
なお、これに限らず、スクリーン10は、例えば、観察者O1側から見た形状を他の形状としてもよいし、その画面サイズを40インチ以下の大きさとしてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、その大きさや形状は適宜選択できるものとする。
【0017】
本実施形態のスクリーン10は、背面側に不図示の接合層を介して不図示の支持板に一体に接合(あるいは部分固定)され、画面の平面性を維持している。
支持板は、剛性が高い平板状の部材であり、アクリル樹脂やPC(ポリカーボネート)樹脂等の樹脂製、ガラス製等の板状の部材を用いることができる。また、本実施形態のように、スクリーン10が透明性を有する場合は、支持板も透明性を有することが好ましい。
なお、これに限らず、スクリーン10は、不図示の枠部材等によってその四辺等が支持され、その平面性を維持する形態としてもよい。
本実施形態の映像表示装置1は、室内用のパーテーションや、展示会等における映像表示や、店舗等のショーウィンドウ等にも適用可能であり、使用用途に応じて、支持板については適宜選択できる。
【0018】
図2は、第1実施形態のスクリーン10の層構成を示す図である。
図2では、スクリーン10の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点A(
図1参照)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面の一部を拡大して示している。
図3は、第1光学形状層12を説明する図である。
図3では、第1光学形状層12を背面側(-Z側)から見た図であり、理解を容易にするために、反射層13等を省略して示している。
図2に示すように、スクリーン10は、厚み方向(Z方向)において、その映像源側(+Z側)から順に、光制御層16、接合層17a、第1基材層11、第1光学形状層12、反射層13、第2光学形状層14、第2基材層15等を備えている。
【0019】
第1基材層11は、光透過性を有するシート状の部材であり、その背面側(-Z側)に、第1光学形状層12が一体に形成されている。この第1基材層11は、第1光学形状層12を形成する基材(ベース)となる層である。
第1基材層11は、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル・スチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
【0020】
第1光学形状層12は、第1基材層11の背面側(-Z側)に形成された光透過性を有する層である。第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面には、単位光学形状(単位レンズ)121が複数配列されて設けられている。
単位光学形状121は、
図3に示すように、真円の一部形状(円弧状)であり、スクリーン10の画面(表示領域)外に位置する点Cを中心として、同心円状に複数配列されている。すなわち、第1光学形状層12は、点Cを中心(フレネルセンター)とする、所謂、オフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状を、その背面側に有している。
本実施形態では、
図3に示すように、第1光学形状層12をスクリーン面の法線方向に沿って背面側(-Z側)から見たときに、点Cは、画面左右方向の中央であって画面外下方に位置しており、点Cと点Aとは、Y方向に延びる同一直線上に位置している。
【0021】
単位光学形状121は、
図2に示すように、スクリーン面に直交する方向(Z方向)に平行であって、単位光学形状121の配列方向に平行な断面における断面形状が、略三角形形状である。
単位光学形状121は、背面側(-Z側)に凸であり、映像光が入射する第1斜面(レンズ面)121aと、これに交差する第2斜面(非レンズ面)121bとを有している。1つの単位光学形状121において、第1斜面121aは、頂点t1を挟んで第2斜面121bの上側(+Y側)に位置している。
第1斜面121aがスクリーン面(XY面)に平行な面となす角度は、αである。第2斜面121bがスクリーン面に平行な面となす角度は、βある。角度α,βは、β>αという関係を満たしている。
【0022】
また、単位光学形状121の第1斜面121a及び第2斜面121bには、微細かつ不規則な凹凸形状が形成されている。この凹凸形状は、凸形状と凹形状とが2次元方向に不規則に配列されて形成されており、凸形状及び凹形状は、その大きさや形状、高さ等は不規則である。
【0023】
単位光学形状121の配列ピッチは、Pであり、単位光学形状121の高さ(厚み方向における頂点t1から単位光学形状121間の谷底となる点t2までの寸法)は、hである。
理解を容易にするために、
図2等では、単位光学形状121の配列ピッチP、角度α,βは、単位光学形状121の配列方向において一定として示している。しかし、本実施形態の単位光学形状121は、実際には、配列ピッチPは一定であるが、角度αが単位光学形状121の配列方向においてフレネルセンターとなる点Cから離れるにつれて(
図2に示す断面において上側へ向かうにつれて)次第に(連続的に)大きくなっている。
【0024】
なお、これに限らず、例えば、配列ピッチPが単位光学形状121の配列方向に沿って次第に変化する形態としてもよいし、単位光学形状121の配列方向に沿って、配列ピッチPや角度α等が段階的に変化する形態としてもよい。
角度α,β、配列ピッチP等は、映像源LSからの映像光の投射角度(スクリーン10への映像光の入射角度)や、映像源LSの画素(ピクセル)の大きさ、スクリーン10の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜設定してよい。
【0025】
本実施形態では、第1光学形状層12の背面側(-Z側)の面には、サーキュラーフレネルレンズ形状が形成される例を示したが、これに限らず、第1光学形状層12の背面側の面には、単位光学形状121が画面左右方向(X方向)に延在し、画面上下方向(Y方向)に配列されたリニアフレネルレンズ形状が形成される形態としてもよい。また、断面形状が略三角形形状であって画面左右方向(X方向)を稜線方向として延在する単位プリズムが、画面上下方向(Y方向)に複数された形態としてもよい。
【0026】
第1光学形状層12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
本実施形態では、第1光学形状層12を構成する樹脂として、紫外線硬化型樹脂を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0027】
反射層13は、入射した光の一部を反射し、一部を透過する半透過型の反射層であり、所謂、ハーフミラーである。反射層13は、単位光学形状121上、すなわち、第1斜面121a及び第2斜面121b上に形成されている。この反射層13は、第1光学形状層12と第2光学形状層14との間にこれらに隣接して設けられている。
反射層13は、その映像源側の面(第1光学形状層12側の面)、背面側の面(第2光学形状層14側の面)が、微細かつ不規則な凹凸形状を有する粗面となっている。これは、前述のように、第1斜面121a及び第2斜面121bは、微細な凹凸形状が形成されており、反射層13は、この微細な凹凸形状に追従して形成されていることや、反射層13の厚みは、この微細な凹凸形状の凹凸よりも十分に薄いことに起因する。
この反射層13は、入射した光の一部を微細かつ不規則な凹凸形状により拡散反射し、反射しない他の光の少なくとも一部を拡散しないで透過するという機能を有する。
【0028】
反射層13の反射率及び透過率は、所望する光学性能に合わせて適宜に設定できる。映像光を良好に反射させるとともに、映像光以外の光(例えば、太陽光等の外界からの光)を良好に透過させる観点から、反射層13の反射率及び透過率は、透過率が30~80%程度、反射率が5~60%程度であることが望ましい。
【0029】
反射層13は、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム等により形成される。また、反射層13は、これに限らず、例えば、上述のような光反射性の高い金属をスパッタリングしたり、金属箔を転写したり、金属薄膜を含有した塗料を塗布したりする等により形成されてもよい。
また、反射層13は、高い透明性を有し、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現できる誘電体多層膜や誘電体単層膜を蒸着する等により形成されてもよい。
本実施形態の反射層13は、クロムを蒸着することにより形成されており、反射層13のみでの反射率が約5%、透過率が約50%である。
なお、本実施形態では、反射層13は、単位光学形状121の第1斜面121a及び第2斜面121bに形成される例を示したが、これに限らず、例えば、第1斜面121aの少なくとも一部に形成される形態としてもよい。
【0030】
第2光学形状層14は、反射層13の背面側(-Z側)に隣接して設けられた光透過性を有する層である。この第2光学形状層14は、隣り合う単位光学形状121間の谷部を十分に埋めるように填されており、第2光学形状層14の背面側の面は、スクリーン面に平行な平坦な面状となっている。
このような第2光学形状層14により、スクリーン10の光透過性が向上し、かつ、反射層13を保護することができる。また、第2光学形状層14を設けることにより、第2基材層15等が積層しやすくなる。
【0031】
スクリーン10の透明性を向上させる観点から、第2光学形状層14の屈折率は、第1光学形状層12と等しい、もしくは、等しいとみなせる程度に小さい屈折率差を有していることが好ましい。また、第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ樹脂を用いて形成してもよいし、異なる樹脂を用いて形成してもよい。
本実施形態の第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ紫外線硬化型樹脂により形成されており、屈折率も第1光学形状層12と等しい。
【0032】
第2基材層15は、光透過性を有するシート状の部材であり、第2光学形状層14の背面側に一体に積層されている。この第2基材層15は、第1基材層11と同様に、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル・スチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
本実施形態では、第2基材層15は、第1基材層11と同様の材料により形成されている。
【0033】
接合層17aは、光制御層16と第1基材層11とを一体に接合する機能を有する層である。接合層17aは、光透過性の高い接着材や粘着材等を用いることができる。
光制御層16は、厚み方向において第1基材層11よりも映像源側(+Z側)に位置する層であり、特定の角度範囲から入射する光を拡散して透過し、それ以外の角度範囲から入射する光を拡散せずに透過するという機能を有する層である。この光制御層16は、第1基材層11の映像源側(+Z側)に、接合層17aを介して一体に設けられている。
図4は、光制御層16の光制御作用を説明する図である。
図4では、光制御層16の画面上下方向(Y方向)及び厚み方向(Z方向)に平行な断面を示している。また、
図4において、光制御層16の映像源側(+Z側)の面及び背面側(-Z側)の面は、スクリーン面(XY面)に平行であり、破線で示す直線Hは、光制御層16の映像源側の面及び背面側の面に直交する直線である。
【0034】
光制御層16は、
図4に示す断面において、映像源側(+Z側)の空気中から、第1入射角度範囲R1内の入射角度で入射した光を拡散して背面側(-Z側)へ出射し、第1入射角度範囲R1以外の入射角度となる第2入射角度範囲R2内の入射角度で入射した光を拡散せずに背面側へ透過するという機能を有している。
また、光制御層16は、
図4に示す断面において、背面側(-Z側)の空気中から、第3入射角度範囲R3内の入射角度で入射した光を拡散して映像源側(+Z側)へ出射し、第3入射角度範囲R3以外の入射角度となる第4入射角度範囲R4内の入射角度で入射した光を拡散せずに映像源側へ透過するという機能を有している。
【0035】
第1入射角度範囲R1は、映像源LSから投射され、スクリーン10(光制御層16)に入射する映像光L0の主たる入射角度範囲を含んでいる。
第1入射角度範囲R1は、映像源側(+Z側)において、直線Hに対して下側(-Y側)に25°以上55°以下となる範囲である。このとき、光制御層16は、その映像源側の面の任意の点に対して、画面上下方向下側から、入射角度25°以上55°以下で入射する光を、拡散して背面側(-Z側)へ出射する。
また、第2入射角度範囲R2は、光制御層16の映像源側において、第1入射角度範囲R1以外の角度である。
【0036】
第3入射角度範囲R3は、背面側(-Z側)において、直線Hに対して上側(+Y側)に25°以上55°以下となる範囲である。このとき、光制御層16は、その背面側の面の任意の点に対して、画面上下方向上側から、入射角度25°以上55°以下で入射する光を、拡散して映像源側(+Z側)へ出射する。
また、第4入射角度範囲R4は、光制御層16の背面側において、第3入射角度範囲R3以外の角度である。
【0037】
したがって、光制御層16は、映像源側の面の任意の点において、画面上下方向下側から入射角度25°以上55°以下で入射する光を拡散して透過し、これ以外の角度範囲から入射する光を拡散せずに透過する。また、光制御層16は、背面側の面の任意の点において、画面上下方向上側から入射角度25°以上55°以下で入射する光を拡散して透過し、これ以外の角度範囲から入射する光を拡散せずに透過する。
【0038】
光制御層16に映像源側から第1入射角度範囲R1内の入射角度で入射し、背面側へ出射した光のヘイズ値(拡散透過率)は、80%以上であることが好ましい。光制御層16に背面側から第3入射角度範囲R3内の入射角度で入射して映像源側へ出射した光のヘイズ値も、これと同様であることが好ましい。
ヘイズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の比で表され、透過光における光の拡散率を意味する。光制御層16のヘイズ値は、ヘイズメーター(例えば、村上色彩技術研究所製 HM-150)によって測定することができる。
【0039】
第1入射角度範囲R1及び第3入射角度範囲R3の範囲内の入射光については、本実施形態の第1入射角度範囲R1及び第3入射角度範囲R3が25°以上55°以下であるので、想定入射角度を40°とし、この角度で光が入射した場合の透過率を全光線透過率とし、この想定入射角度で入射して光制御層16内を直進して透過して出射した光に対して、2.5°以上広がって出射してきた光の割合を拡散透過率とする。
【0040】
一方、光制御層16に映像源側から第2入射角度範囲R2内の入射角度で入射した光、特に、入射角度0°で入射して背面側へ出射した光のヘイズ値(拡散透過率)は、低いことが好ましく、0%となることが理想的である。光制御層16に第4入射角度範囲R4内の入射角度で入射した光のヘイズ値も、これと同様であることが好ましい。
【0041】
このような光制御層16としては、屈折率が異なる透明樹脂の層が、所定の厚さで所定の方向に複数積層され、かつ、各層の硬化時の紫外線の照射方向を変えて形成された視界制御フィルム(例えば、リンテック株式会社製の視野制御フィルム Y-2555)が好適である。
【0042】
上述のように、本実施形態のスクリーン10は、光を拡散する作用を有する粒子等の拡散材を含有する光拡散層を備えておらず、光制御層16に特定の角度範囲(第1入射角度範囲R1及び第3入射角度範囲R3)内の入射角度で入射する光のみが拡散され、さらに反射層13においてその表面の微細な凹凸形状によって、拡散反射される形態となっている。
本実施形態において、接合層17aと第1基材層11とを合わせた厚み、すなわち、スクリーン10の厚み方向(Z方向)における第1光学形状層12の映像源側(+Z側)の面と、光制御層16の背面側(-Z側)の面との間の距離D1は、0.5mm以下であることが好ましい。この距離D1の大きさが0.5mmより大きいと、映像光を拡散する光制御層16と映像光を拡散反射する反射層13との間の距離が大きくなりすぎ、映像のぼけが大きくなり、映像の明瞭さが低下するという問題がある。したがって、距離D1は、上記範囲が好ましい。
【0043】
図5は、第1実施形態のスクリーン10に入射する映像光及び外光の一例を示す図である。
図5では、
図2に示すスクリーン10の断面と同様の断面の一部を拡大して示している。また、
図5では、理解を容易にするために、各層間の屈折率差はないものとして示している。
スクリーン10の下方に位置する映像源LSから投射された映像光L11は、第1入射角度範囲R1内の入射角度で光制御層16に入射して拡散され、接合層17a及び第1基材層11を透過して第1光学形状層12へ入射する。そして、映像光L11の一部である映像光L12は、単位光学形状121の第1斜面121aの反射層13によって拡散反射され、映像源側(+Z側)へ出射する。このとき、映像光L12は、
図5に示すスクリーン10の断面において、光制御層16に対して背面側から第4入射角度範囲R4の入射角度(特に、入射角度0°及び0°近傍)に相当する角度で入射するので、光制御層16では拡散されることなく映像源側へ出射して観察者O1側に届く。
【0044】
したがって、映像光L12は、第1入射角度範囲R1の範囲内で光制御層16に入射し、反射層13によって拡散反射されている。これにより、映像光L12は、好適に拡散され、スクリーン10は、十分な視野角で映像を表示できる。
また、映像光L12は、スクリーン10への入射時の光制御層16で拡散され、反射層13で拡散反射されるので、スクリーン10の厚み方向において異なる位置で2回拡散される。これにより、スクリーン10は、映像のぎらつき(スペックル)を低減でき、かつ、過度な拡散による像ぼけ(解像度の低下)を抑制できる。
【0045】
なお、映像光L11がスクリーン10の下方から投射されており、かつ、角度β(
図2参照)がスクリーン10の画面上下方向(Y方向)の各点における映像光L11の入射角度よりも大きいので、映像光L11が第2斜面121bに直接入射することはなく、第2斜面121bは、映像光の反射に寄与しない。
また、映像光L11のうち、一部の映像光L13は、反射層13を透過して背面側へ向かい、第2光学形状層14を透過して背面側上方へ出射する。なお、このような映像光L13は、背面側の天井に到達した場合には、天井への映像の映り込みの要因となる。しかし、本実施形態のスクリーン10では、映像光L13は、光制御層16により拡散されており、天井に映像光L13が到達した場合にも、天井に明瞭な映像が映り込むことはない。
【0046】
次に、背面側(-Z側)又は映像源側(+Z側)からスクリーン10に入射する映像光以外の太陽光や照明光等の外光について説明する。
スクリーン10への入射角度が小さい外光の大部分である外光G11,G12は、スクリーン10へ入射して反射層13を透過し、それぞれ背面側、映像源側へ出射する。スクリーン10は、光を拡散する粒子等の拡散材等を含有する層(光拡散層)を備えておらず、外光G11は、光制御層16に対して、映像源側から第2入射角度範囲R2内の入射角度で入射し、外光G12は、光制御層16に対して背面側から第4入射角度範囲R4内の角度に相当する入射角度で入射する。したがって、外光G11,G12は、光制御層16によって拡散されることなく、スクリーン10を透過する。
よって、観察者O1,O2が、スクリーン10を通してスクリーン10の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン10の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりすることなく、観察することができ、スクリーン10は、高い透明性を発揮できる。
【0047】
次に、スクリーン10に映像源側上方から入射する外光G13のうち、一部の外光(不図示)は、スクリーン10の表面で反射し、スクリーン下方側へ向かい、観察者O1,O2には届かない。また、外光G13は、映像源側から光制御層16に対して第2入射角度範囲R2内の入射角度で入射するので、拡散されることなく光制御層16を透過し、スクリーン10内を背面側へ向かう。そして、外光G13のうち、一部の外光G14は、反射層13で反射して、スクリーン10の映像源側下方へ向かい、スクリーン10の映像源側下方へ出射したり、スクリーン10の映像源側の表面で全反射して再度スクリーン10内部の下方へ向かい、減衰したりする。また、外光G13のうち、一部の外光G15は、反射層13を透過して、スクリーン10の背面側下方へ出射し、観察者O1,O2には届かない。
【0048】
スクリーン10に背面側上方から入射する外光G16のうち、一部の外光(不図示)は、スクリーン10の表面で反射し、スクリーン下方側へ向かい、観察者O1,O2には届かない。また、外光G16のうち、一部の外光G17は、スクリーン10に入射し、反射層13で拡散反射されるが、背面側上方へ出射するので、観察者O1,O2は届かない。また、外光G16のうち、一部の外光G18は、反射層13を透過して、映像源側下方へ出射する。この外光G18は、光制御層16へ背面側から入射する角度によっては光制御層16によって拡散される場合があるが、スクリーン10の下方へ出射して観察者O1,O2には届かないので、拡散による映像のコントラストへの影響は小さい。
したがって、スクリーン10は、映像源側上方や背面側上方から入射する外光による映像のコントラストの低下を抑制できる。
【0049】
本実施形態のスクリーン10の光制御層16に相当する位置に、光を拡散する粒子等の拡散材を含有する光拡散層を備える従来の反射型のスクリーンでは、映像光は、反射層での拡散反射に加えて、光拡散層によって反射層での反射前後の2回拡散されるため、映像光が過度に拡散されて映像のぼけ(解像度が低下)が生じる。
これに対して、本実施形態によれば、映像光は、反射層13での拡散反射の後は拡散されないので、解像度の高い映像を表示できる。
【0050】
また、そのような光拡散層を備える従来の反射型のスクリーンでは、光拡散層によって不要な外光も拡散されるため、観察者O1,O2がスクリーン10を通してスクリーン10の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン10の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりして観察され、スクリーンとしての透明性が低下したり、映像のコントラストが低下したりする。
これに対して、本実施形態によれば、スクリーン10は、そのような光拡散層を備えておらず、外光は、その多くが拡散されることなくスクリーンを透過したり、拡散された場合にも
図5に示すように観察者O1,O2の視認可能な範囲外へ出射したりするので、観察者O1,O2がスクリーン10を通してスクリーン10の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン10の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりすることがなく、スクリーンの透明性を維持でき、かつ、外光が拡散されることによる映像のコントラスト低下を大幅に抑制できる。
【0051】
以上のことから、本実施形態によれば、映像のぎらつきを抑制することができ、かつ、映像のぼけ(解像度の低下)を抑制して明瞭な映像を表示できる。
また、本実施形態によれば、不要な外光が拡散されて観察者に届くことがないので、コントラストの高い映像を表示でき、かつ、透明性の高いスクリーンとすることができる。
さらに、本実施形態によれば、反射層13を透過した映像光に起因する天井等への映像の映り込みを抑制することができる。
【0052】
(映像のぎらつき等に関する評価)
ここで、本実施形態のスクリーン10の実施例に相当するスクリーンと、比較例のスクリーンとを用意し、映像のぎらつきの低減効果や映像の明瞭さ等に関して評価した。
実施例及び比較例1,2のスクリーンは、いずれも画面サイズが40インチである。
実施例の光制御層16は、リンテック株式会社製の視野制御フィルム Y-2555である。
【0053】
比較例1のスクリーンは、実施形態のスクリーン10と同様の第1基材層11、第1光学形状層12、反射層13、第2光学形状層14、第2基材層15を備えているが、接合層17a及び光制御層16を備えていない。
比較例2のスクリーンは、比較例1のスクリーンに対して、第1基材層11の映像源側に接合層17aを介して光制御層16ではなく、光拡散層を積層した形態に相当する。この光拡散層は、光を拡散する粒子を含有した樹脂製の層であり、光の入射角度によらず、光を拡散するという特徴を有する。
したがって、実施例のスクリーンと比較例1,2のスクリーンとでは、第1基材層11から第2基材層15までは同じ形態であるが、光制御層16の有無等が相違点となっている。
【0054】
なお、実施例及び比較例1,2のスクリーンにおいて、共通する層の詳細は、以下の通りである。
第1基材層11は、屈折率1.59であるポリカーボネート樹脂製であり、厚さ0.075mmである。
第1光学形状層12は、屈折率1.51である紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)製であり、その厚さは、単位光学形状121の高さhにより単位光学形状121の配列方向に変化するが、画面下端中央で0.01mmであり、画面上端中央で0.14mmである。
【0055】
反射層13は、クロム製であり、その厚さは数nmである。
第2光学形状層14は、屈折率1.51である紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)製であり、その厚さは、単位光学形状121の高さhにより単位光学形状121の配列方向に変化するが、画面下端中央で0.14mmであり、画面上端中央で0.01mmである。
第2基材層15は、屈折率1.59であるポリカーボネート樹脂製であり、厚さ0.075mmである。
【0056】
実施例及び比較例1,2のスクリーンに関して、スペックルコントラスト、ピークゲイン、ピーク輝度、全光線透過率、ヘイズ値をそれぞれ測定し、さらに、目視評価により、映像のぎらつきや明瞭さ、スクリーンの透明性、天井への映像の映り込み(所謂、天井ゴースト)の有無等を評価した。
また、実施例のスクリーンの光制御層16及び比較例2の光拡散層についても、それぞれ全光線透過率とヘイズ値とを測定した。
以下に、スペックルコントラスト、ピークゲイン、ピーク輝度、全光線透過率、ヘイズ値の測定方法等を記載している。
【0057】
図6は、ピーク輝度等の測定時及び目視評価時における各スクリーンと、映像源LS、輝度計K、観察者O3の位置等を示す図である。
図6(a)は、ピーク輝度等の測定時における各スクリーン、映像源LS、輝度計K、観察者O3の位置を、側面側(+X側)から見た様子を示している。また、
図6(b)は、ピーク輝度等の測定時における各スクリーン、映像源LS、輝度計K、観察者O3の位置を、上側(+Y側)から見た様子を示している。
なお、
図6において、輝度計Kと観察者O3とは、理解を容易にするために、Z方向における位置をずらして示している。
【0058】
スペックルコントラストとは、単色光をスクリーンに照射した際に、所定の領域における面光強度分布の標準偏差σを、所定の領域における面光強度分布の平均値Iで割った値に相当し、その値が小さいほど、スペックルが小さいと評価される。NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)によるスペックルコントラストのガイドラインでは、スペックルコントラストが、赤色光及び緑色光は0.05以上、青色光では0.08以上となると、スペックルが人の目によって視認されやすいとされている。
ここでは、スペックルコントラストは、国際標準規格であるIEC 62906-5-2/62906-5-4に準拠して測定機(株式会社オキサイド製 Dr.SPECKLE/SM01VS09)を用いて、映像源LSから実施例及び比較例1,2のスクリーンの全面に緑色画面を投射した状態で測定した。測定は、各スクリーンの画面中央となる点Aから映像源側(+Z側)に800mmの位置から、上記測定機により、ひとみ角1度にて測定した。この緑色光のスペックルコントラストに関しては、以下、スペックルコントラストCs(G)とする。
【0059】
ピークゲインの算出方法は、以下の通りである。
まず、実施例及び比較例1,2のスクリーンを暗室環境下に配置して、映像源LS(リコー株式会社製PJWX-4152N)により白色画面を全面に投射し、
図6に示すように、画面中央となる点Aにおける輝度を、輝度計K(トプコン株式会社製 BM-9)により、点Aに対して+Z方向に1mの位置から測定した。輝度計Kによる測定は、輝度計Kの位置を微調整し、最も高い輝度が得られる位置を設定して行い、最大輝度Lmax(cd/m
2)を測定した。なお、映像源LSの設置位置は、使用した映像源LSの取り扱い説明書に準じた位置となっており、
図6(a)に示す断面において点Aにおける映像光の入射角度θは、θ=50°である。
次に、照度計(トプコン株式会社製 IM-600)にて、スクリーン画面中央となる点Aでの白色画面投影時の照度Iw(lx)を測定した。
得られた値より、下記式を用いて、ゲインGを算出した。
G=Lmax×π/Iw
得られたゲインGは、ピークゲインに相当する。
なお、ピーク輝度は、上記測定により得られた最大輝度とする。
【0060】
全光線透過率、ヘイズ値に関しては、実施例及び比較例1,2のスクリーンの画面中央となる点Aを中心として画面左右方向及び画面上下方向に平行な辺を有する10センチ四方の正方形形状の部材を各スクリーンのサンプルとして切り出し、このサンプルを用いて点Aにおける全光線透過率、ヘイズ値の測定を行っている。
全光線透過率は、入射角度0°で入射した光の透過率である。全光線透過率は、スクリーンのサンプルを用い、JIS K7316に準じて、ヘイズメーター(株式会社村上色彩研究所製のHM-150)により測定した。測定時、サンプルは、スクリーンの使用状態における映像源側(観察者側)の面がヘイズメーターのセンサー側となるように配置した。
【0061】
ヘイズ値は、前述のように、入射角度0°で入射する光に対する全光線透過率における拡散透過率の割合であり、各スクリーンのサンプルを用い、JIS K7316に準じて、ヘイズメーター(株式会社村上色彩研究所製のHM-150)により測定した。測定時、サンプルは、スクリーンの使用状態における映像源側(観察者側)の面がヘイズメーターのセンサー側となるように配置した。
また、実施例のスクリーンの光制御層16、比較例2のスクリーンの光拡散層についても、上述の方法を用いて、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。
【0062】
さらに、目視評価により、実施例及び比較例1,2のスクリーンに関して、映像のぎらつきの有無、映像の明瞭さ、スクリーンの透明性、天井への映像の映り込みの有無等を行った。
映像のぎらつきに関しては、実施例及び比較例1,2のスクリーンに対して、暗室環境下において、映像源LSから白色画面を投射した状態で、各スクリーンの画面の中央となる点Aから映像源側(+Z側)に1mの位置から、観察者O3がスクリーンの中央部分を観察して評価した。
【0063】
映像の明瞭さに関しては、実施例及び比較例1,2のスクリーンに対して、暗室環境下において、映像源LSから静止画(黒背景に白文字)を投射した状態で、スクリーンの画面の中央となる点Aから映像源側(+Z側)に1mの位置から、観察者O3がスクリーンの中央部分を観察して評価した。
スクリーンの透明性に関しては、明室環境下(画面の中心となる点Aでの照度700lx)において、映像源からの映像光の投射無しの状態で、各スクリーンの画面の中央となる点Aから映像源側(+Z側)に1mの位置から、観察者O3がスクリーンの中央部分を観察して評価した。
【0064】
天井への映像の映り込み(所謂、天井ゴースト)の有無は、実施例及び比較例1,2のスクリーンに対して、暗室環境下において、映像源LSから静止画(黒背景に白文字)を投射した状態で、各スクリーンを透過した映像光が各スクリーンの背面側(-Z側)であって上側(+Y側)1.5mの位置にある天井に到達して表示される映像を観察して評価した。このとき、各スクリーンと天井との間は開放空間となっているので、観察者O3は、各スクリーンの画面の中央のとなる点Aから映像源側(+Z側)に1mの位置から上記の天井を観察して評価した。
なお、各評価において、観察者O3は、3名であり、評価結果はその平均とした。
【0065】
【0066】
表1は、実施例及び比較例1,2のスクリーンの評価結果である。表1において、実施例及び比較例2に用いた光制御層16と、光拡散層の透過率及びヘイズも記載している。
表1において、ぎらつきは、映像のぎらつきが視認されないものを良として◎で示し、許容範囲内であるが少し視認されるものを可として〇で示し、視認されて不快に感じられるものを不可として×で示した。
また、表1において、映像の明瞭さは、像ぼけがない明瞭な映像が視認されるものを良として◎で示し、像ぼけ等が少し生じているが十分に明瞭であるものを可として〇で示し、像ぼけが生じており使用に適さないものを不可として×で示した。
【0067】
また、表1において、透明性は、透明性が高いものを良として◎で示し、良に比べてやや透明性は劣るが使用において十分な透明性を有するものを可として〇で示し、スクリーンの向こう側が白く濁って見える等、透明性が損なわれているものを不可として×で示した。
また、表1において、天井への映像の映り込み(所謂、天井ゴースト)の有無は、スクリーンを透過した映像光によって、天井に投影された映像パターンが認識できないものを良として◎で示し、良に比べ映像パターンが認識できるが不明瞭であるものを可として〇で示し、映像パターンが明瞭に認識できるものを不可として×で示した。
【0068】
なお、総合評価は、各スクリーンについてスペックルコントラストCs(G)や、ピークゲイン、ピーク輝度、透過率、目視評価による映像のぎらつきや映像の明瞭さ、スクリーンの透明性、天井への映像の映り込み等をすべて考慮しての評価であり、映像のぎらつきが低減され、映像が明瞭であり、透明性も十分であり、天井への映像の映り込みが認識できないものを良として◎で示し、良よりは劣るが使用可能であるものを可として〇で示し、使用に適さないものを不可として×で示した。
【0069】
表1に示すように、第1基材層11よりも映像源側に光制御層16を備えていない比較例1のスクリーンでは、ピークゲインや輝度が高く映像の明るさは十分であり、映像も明瞭であり、透明性も良好であるが、映像のぎらつきが生じており、好ましくない。また、比較例1のスクリーンでは、スクリーンの背面側の天井への映像の映り込みが視認されており、好ましくない。
また、第1基材層11よりも映像源側に、光拡散層を備えている比較例2のスクリーンでは、スペックルコントラストCs(G)が一番小さく、目視評価においても映像のぎらつきは効果的に抑制されている。しかし、比較例2のスクリーンでは、ピークゲインや輝度が低下して映像が暗くなり、また、目視評価においても映像が不明瞭であり(像ぼけが大きい)、さらに透明性も大きく低下している。これは、光拡散層が、光の入射角度によらず光を拡散するため、照明光等の外光等も拡散されてしまうためと考えられる。さらに、比較例2のスクリーンでは、スクリーンの背面側の天井への映像の映り込みも視認されていた。
【0070】
これに対して、実施例のスクリーンは、スペックルコントラストCs(G)も0.05未満であり、目視評価でも十分に映像のぎらつきを低減できている。また、ピークゲインやピーク輝度も十分確保され、かつ、目視評価においても、映像は明瞭であり、透明性も十分であり、スクリーンの背面側の天井への映像の映り込みも視認されなかった。
【0071】
以上のことから、本実施形態によれば、明瞭な映像を表示でき、かつ、映像のぎらつきを低減できるスクリーン10及び映像表示装置1を提供できる。
また、本実施形態によれば、上述の効果を有しながら、さらに、スクリーン10の透明性も十分に確保できる。さらに、本実施形態によれば、スクリーンの背面側の天井への映像の映り込みも抑制できる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のスクリーン20の層構成を示す図である。
図7では、前述の第1実施形態の
図2と同様に、スクリーン20の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点(
図1に示す点Aに相当する点)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面の一部を拡大して示している。
第2実施形態のスクリーン20は、反射層13よりも背面側となる部分の厚みが大きい点と、第2基材層25の背面側に接合層17cを介して調光層30を備えている点とが、前述の第1実施形態に示したスクリーン10とは異なるが、それ以外は、前述の第1実施形態と同様の形態である。したがって、以下の説明において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0073】
図7に示すように、第2実施形態のスクリーン20は、スクリーン20の厚み方向(Z方向)において、その映像源側(+Z側)から順に、光制御層16、接合層17a、第1基材層11、第1光学形状層12、反射層13、第2光学形状層14、第2基材層25、接合層17c、調光層30を備えている。このスクリーン20は、第1実施形態のスクリーン10に換えて、映像表示装置1に適用可能である。
本実施形態のスクリーン20においても、接合層17aと第1基材層11とを合わせた厚み、すなわち、スクリーン10の厚み方向(Z方向)における第1光学形状層12の映像源側(+Z側)の面と、光制御層16の背面側(-Z側)の面との間の距離D1は、0.5mm以下であることが像ぼけ等を低減する観点から好ましい。
【0074】
本実施形態の第2基材層25は、第1実施形態の第2基材層15よりも厚みが大きく、スクリーン20のスクリーン面の平面性を維持するために十分な剛性を有している。したがって、スクリーン20は、第1実施形態で示した不図示の支持板等に接合しなくとも、スクリーン20としての平面性を十分に維持することができる。なお、スクリーン20の背面側に、不図示の接合層を介して、前述のような支持板を接合し、スクリーン面の平面性の向上をさらに図ってもよい。
第2基材層25は、例えば、透明性の高いアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、ガラス等により形成された板状の部材が好適に用いられる。第2基材層25の厚みは、3~8mm程度が好適であり、スクリーン20の画面サイズ等に応じて適宜選択できる。
【0075】
また、上述のような第2基材層25を備えているので、本実施形態のスクリーン20は、その厚み方向(Z方向)において、調光層30の映像源側(+Z側)の面から第2光学形状層14の背面側(-Z側)の面までの距離D2は、光制御層16の背面側(-Z側)の面から第1光学形状層12の映像源側(+Z側)の面までの距離D1よりも大きい。すなわち、調光層30の映像源側(+Z側)の面から反射層13までの最短距離は、光制御層16の背面側(-Z側)の面から反射層13までの最短距離よりも大きい。
これにより、スクリーン20としての平面性を維持できる厚みを確保しつつ、距離D1を小さくすることができる。したがって、光制御層16から反射層13までの距離も小さくできるので、光制御層16に第1入射角度範囲R1内の入射角度で入射した映像光が、光制御層16で拡散されてスクリーン20内を広がりながら進むことにより、反射層13で反射される位置が離れてしまうことに起因する2重像等の像ぼけを低減することができる。
【0076】
仮に、本実施形態のスクリーンと同様に第2基材層25を備え、かつ、後述する調光層30を備えていないスクリーンの場合、第2基材層25の厚みにより、反射層13よりも背面側の厚みが大きくなる。そのため、このようなスクリーンでは、第1入射角度範囲R1内の角度で光制御層16に入射した映像光は拡散され、スクリーン内を背面側に進むにつれて大きく広がる。そして、スクリーンの背面側の空気との界面で一部の映像光が全反射して映像源側へ向かい、スクリーンから観察者側へ出射すると、2重像等の像ぼけとして視認され、映像の品位が低下する。
また、反射層13を透過した映像光の一部は、前述したように、天井への映像の映り込みを生じさせる。
これらを改善するために、本実施形態のスクリーン20は、調光層30を第2基材層25の背面側(-Z側)に備えている。
【0077】
接合層17cは、第2基材層25と調光層30とを一体に接合する機能を有する層である。接合層17cは、前述の接合層17aと同様に、光透過性の高い接着材や粘着材等を用いることができる。
【0078】
調光層30は、入射する光の一部を吸収し、一部を透過する光吸収層である。本実施形態の調光層30は、印加電圧を変化させることにより透過光の光量を制御することができるフィルムであり、入射する光の少なくとも一部を吸収することにより、透過光の光量、すなわち、光の透過率を制御する機能を有する。
本実施形態の調光層30は、二色性色素を使用したゲストホスト型の液晶セルであり、液晶に印加する電界により透過光量を変化させる液晶セルである。調光層30は、フィルム状の液晶用第2積層体30B及び液晶用第1積層体30Aにより液晶層36を挟持して構成される。
【0079】
液晶用第2積層体30Bは、基材31Bに、透明電極32B、配向層33B、ビーズスペーサー34を積層して形成される。
液晶用第1積層体30Aは、基材31Aに、透明電極32A、配向層33Aを積層して形成される。
調光層30は、この液晶用第1積層体30A及び液晶用第2積層体30Bに設けられた透明電極32A,32Bの駆動により、液晶層36に設けられたゲストホスト液晶組成物による液晶材料の配向を変化させ、これにより透過光の光量を変化させる。
【0080】
基材31A,31Bは、種々の透明樹脂フィルムを適用することができるが、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380~800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
透明樹脂フィルムの材料としては、特に、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。
基材31A,31Bは、種々の厚みの透明樹脂フィルムを適用することができる。
【0081】
透明電極(第1電極)32A、透明電極(第2電極)32Bは、透明樹脂フィルムに積層される透明導電膜から構成されている。
透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
【0082】
酸化錫(SnO2)系としてはネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。
酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。
酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
本実施形態では、ITO(Indium Tin oxide)により透明導電膜が形成される。
【0083】
本実施形態ではスペーサーとして球形状のビーズスペーサー34を用いる。ビーズスペーサー34は、液晶層36における外周部を除く部分の厚み(セルギャップ)を規定するために設けられる。ビーズスペーサー34は、シリカ等による無機材料による構成、有機材料による構成、これらを組み合わせたコアシェル構造の構成等を広く適用することができる。また、ビーズスペーサー34の形状は、上述した球形状の構成の他、円柱形状や角柱形状等で構成されたロッド形状としてもよい。
ただし、液晶層36の厚みを規定するスペーサーとしては、ビーズスペーサー34に限定されず、例えば、フォトレジストを基材31A、又は、基材31Bに塗工して露光、現像することにより円柱形状等に作製してもよい。
なお、上述の説明では、スペーサーは、液晶用第2積層体30Bに設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、液晶用第1積層体30A、液晶用第2積層体30Bの両方、又は、液晶用第1積層体30Aにのみ設けられるようにしてもよい。
【0084】
配向層33A,33Bは、液晶分子群を一定方向に配列させるための膜である。例えば、配向層33A,33Bは、配向膜そのものの状態としてもよいし、もしくは、光配向処理やラビング処理により配向処理を行って作製してもよいし、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。なお、配向層33A,33Bの作製方法は、上述した方法に限らず、適宜異なる方法を用いてもよい。
本実施形態では、ラビング用ポリイミド樹脂層を配向層33A,33Bとして用いている。
また、本実施形態では、調光層30は、配向層33A,33Bを備える形態を示したが、これに限らず、配向層33A,33Bを備えない形態としてもよい。
【0085】
液晶層(調光材料としての液晶材料)36には、二色性色素組成物を使用したゲストホスト液晶組成物を広く適用することができる。ゲストホスト液晶組成物にはカイラル剤を含有させるようにして、液晶材料を水平配向(調光層30の平面方向に平行に配向、液晶層36の厚み方向に対して直交する方向に配向)させた場合に液晶層36の厚み方向において螺旋形状となるように配向させるようにしてもよい。なお、調光層30において、液晶層36を囲むように、シール材35が配置されている。このシール材35により、液晶用第1積層体30A、液晶用第2積層体30Bが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材35は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化型樹脂等を適用することができる。
【0086】
調光層30は、遮光時におけるゲストホスト液晶組成物の配向が無電界時に形成されるように、配向層33B,33Aを一定の方向にプレチルトに係る配向規制力を設定した水平配向層に構成し、これによりノーマリーダークにより構成される。
ここで、ノーマリーダークとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最小となり、黒い画面となる構造である。また、ノーマリークリアとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最大となり、透明となる構造である。なお、調光層30は、遮光時における配向が、電圧印加時に形成されるようにして、ノーマリークリアにより構成してもよい。
【0087】
なお、本実施形態の調光層30は、ゲストホスト型の液晶セルとしたが、二色性色素組成物を用いない液晶セルとして構成してもよい。この場合、直線偏光層をさらに設けることで、調光セルとして機能させることができる。
また、液晶の駆動方式として、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等の各種駆動方式が知られているが、これら公知の駆動方式を適宜選択して用いることができる。
【0088】
図8は、調光層30の液晶材料の配向の様子を示す図である。
図8では、理解を容易にするために、透明電極32A,32B及び配向層33A,33Bと、液晶材料(液晶組成物36a及び二色性色素36b)のみを示しており、
図8(a)は、遮光時(電圧印加なし)を示し、
図8(b)は、透光時(電圧印加時)を示してる。
本実施形態の調光層30は、ノーマリーダークであるため、
図8(a)に示すように、電圧を印加しない状態(無電界時)では、液晶組成物36a及び二色性色素36bは、一方向に水平配向するように、すなわち、液晶組成物36a及び二色性色素36bの長軸方向が、一方向であって透明電極32A,32B及び配向層33A,33Bに対して平行な方向(所謂、水平方向)に配向される。この状態においては、調光層30に入射する光(
図8(a)に示す光La,Lb)は、その入射角度によらず、その多くが二色性色素36bに吸収され、透過率が最小となる遮光状態となる。
【0089】
また、本実施形態の調光層30は、ノーマリーダークであるため、
図8(b)に示すように、電圧を印加した状態(電界印加時)では、液晶組成物36a及び二色性色素36bは、一方向に垂直配向するように、すなわち、液晶組成物36a及び二色性色素36bの長軸方向が、一方向であって、透明電極32A,32B及び配向層33A,33B及びに対して垂直な方向(所謂、垂直方向)に配向される。この状態においては、調光層30に入射する光のうち、入射角度が0°や0°近傍である等、小さな入射角度で入射する光Laは、液晶層36(調光層30)を透過するが、入射角度が大きくなるにつれて二色性色素による光の吸収率が大きくなり、調光層30に対して斜め方向から大きな入射角度で入射する光Lbは、その多くが二色性色素36bに吸収されて透過率が大きく低下する。すなわち、調光層30は、大きな入射角度で入射する光に対する吸収率が、入射角度が0°や0°近傍である等、小さな入射角度で入射する光に対する吸収率よりも大きい。
そのため、調光層30は、電圧印加時には、その厚み方向(Z方向)に平行な方向の光の透過率が高く、入射角度が大きくなるにつれてその透過率が低下し、厚み方向に対して斜め方向から大きな入射角度で入射する光に対しては透過率が低い状態となる。本実施形態では、調光層30のこのような状態を、透光状態と呼ぶ。
なお、本実施形態では、大きな入射角度とは、入射角度40°以上であるとする。
【0090】
このような調光層30を備えることにより、以下のような効果を奏することができる。
調光層30が遮光状態である場合、調光層30は、入射角度に依らず多くの光を吸収するため、黒画面状態となる。したがって、調光層30を遮光状態として、映像源LSから映像光をスクリーン20へ投射すると、映像の黒輝度を下げ、映像のコントラストを大きく向上させることができる。
また、スクリーン20が調光層30を備えていない場合に、反射層13を透過した映像光が、スクリーン20の背面側の空気界面で全反射して映像源側の面から出射し、2重像等の像ぼけを招くことがあるが、スクリーン20は、調光層30によりこのような2重像等の要因となる映像光を吸収でき、2重像等の像ぼけを大幅に抑制して、明瞭な映像を表示できる。
さらに、調光層30は、反射層13を透過して、スクリーン20の背面側上方へ向かう映像光を吸収するので、スクリーン20の背面側の天井への映像の映り込みを大幅に抑制できる。
【0091】
次に、調光層30が透光状態である場合、スクリーン20の背面側の上方等から大きな入射角度で入射する太陽光や照明光等の外光の多くを調光層30により吸収しつつ、スクリーン20の正面方向におけるスクリーン20の透明性を十分に確保することができる。したがって、スクリーン20は、外光に起因するスクリーンの曇り(ヘイズ)が抑制され、その透明性を向上させることができる。
なお、調光層30を透光状態として映像光を投射する場合には、スクリーン20の背面側上方等から大きな入射角度で入射する外光の多くが調光層30により吸収されるので、調光層30を有していないスクリーンと比較して、映像のコントラストを向上させることができる。また、前述のような像ぼけの抑制や天井への映像の映り込み抑制の効果も、遮光状態である場合に比べて低下するが、期待できる。
【0092】
以上のことから、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、映像のぎらつきを抑制することができ、かつ、2重像等の映像のぼけ(解像度の低下)を抑制して明瞭な映像を表示でき、不要な外光が拡散されることがなく、コントラストや透明性の高い映像を表示できる。
さらに、本実施形態によれば、スクリーン面の平面性を高め、かつ、2重像等の像ぼけを抑制できる。
さらに、本実施形態によれば、表示する映像やスクリーン20等の使用環境に応じて、調光層30を透光状態とするか、遮光状態とするか適宜選択して設定できるので、利便性を向上できる。
さらに、本実施形態によれば、スクリーンの背面側の天井等への映像の映り込みをさらに抑制できる。
【0093】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、スクリーン10,20の映像源側(+Z側)及び背面側(-Z側)の表面に、傷つき防止を目的としたハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は、例えば、スクリーン10の映像源側及び背面側の面に、ハードコート機能を有する紫外線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を塗布する等により、形成される。
【0094】
また、ハードコート層に限らず、スクリーン10,20の使用環境や使用目的等に応じて、スクリーン10,20の映像源側及び背面側の表面に、例えば、反射防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能、帯電防止機能等、適宜必要な機能を有する層を1つ又は複数選択して設けてもよい。さらに、光制御層16よりも映像源側にタッチパネル層等を設けてもよい。
特に、スクリーン10,20の映像源側の表面に反射防止層を設けた場合には、スクリーン10表面での映像光の反射を低減してスクリーン10,20への入射光量を増大させ、映像の明るさを向上させる効果に加え、反射層13で反射した映像光が、映像源側の空気との界面で反射して、背面側へ出射して背面側に映像が漏れたように表示されることを防止できる。
なお、ハードコート層等の各種機能を有する層は、スクリーン10,20の映像源側又は背面側の表面のどちらか一方に設けられる形態としてもよい。
【0095】
(2)第1実施形態において、スクリーン10は、透明性を有する例を示したが、これに限らず、透明性を有しない反射型のスクリーンとしてもよい。
図9は、変形形態のスクリーン50の層構成を示す図である。
図9では、
図2に示す実施形態のスクリーン10の断面に相当する変形形態のスクリーン50の断面を示しており、変形形態のスクリーン50の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に直交(Z方向に平行)する断面の一部を拡大して示している。
変形形態のスクリーン50は、厚み方向に沿って映像源側から順に、光制御層16、接合層17a、第1基材層11、第1光学形状層12、反射層53、第2光学形状層54を有している。
反射層53は、光を反射する作用を有する層である。反射層53は、少なくとも第1斜面121aの一部に形成される。
図9は、反射層53は、第1斜面121aに形成され、第2斜面121bには形成されていない形態となっているが、これに限らず、第1斜面121a及び第2斜面121bに形成される形態としてもよい。
【0096】
反射層53は、第1斜面121a上に、アルミニウムや銀、ニッケル等の金属を蒸着する、スパッタリングする、又は、金属箔を転写する等により形成することが好ましい。
また、反射層53は、銀色系の塗料や、銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜や金属箔等を粉砕した粒子や微小なフレークを含む塗料等を、スプレーコートや、ダイコート、スクリーン印刷、ワイピングによる溝充填等の各種塗布方法により塗布して硬化させることにより形成することも可能である。
【0097】
第2光学形状層54は、実施形態の第2光学形状層14と同様に、反射層53及び第1光学形状層12の背面側(-Z側)に、これらを被覆するように設けられている。この第2光学形状層54は、光吸収性を有しており、光透過性を有しない。
この第2光学形状層54は、第2斜面121b上に接しているので、映像源側から第2斜面121bに入射した太陽光や照明光等の外光を吸収し、映像のコントラストを向上させることができる。また、第2光学形状層54が光吸収性を有することにより、スクリーン50の背面側に配置される不図示の支持板等が光透過性を有する場合にも、背面側から入射した外光による映像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0098】
このような第2光学形状層54は、黒色等の暗色系の顔料や染料、光吸収作用を有するビーズ、カーボンブラック等を含有する熱硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂や、黒色等の暗色系の水系塗料や有機系塗料等により形成することが好適である。
また、第2光学形状層54は、光吸収作用や反射層53の保護作用等を十分発揮する観点から、スクリーン10の厚み方向において、単位光学形状121間の頂点となる点t1からその背面側表面までの寸法を十分有することが好ましい。
【0099】
スクリーン50は、不図示の接合層を介して不図示の支持板に接合されている。この支持板は、例えば、木製やガラス製、樹脂製等の板状の部材であり、光透過性を有していないことが好ましい。また、支持板として室内の壁等も利用可能である。
【0100】
なお、上述の例に限らず、第2光学形状層54が光吸収性を有しておらず、スクリーンの背面側に配置される不図示の支持板が、光吸収性を有している(光透過性を有しない)形態としてもよいし、第2光学形状層54の背面側に、シート状の樹脂製の層であり、光吸収性を有する第2基材層等を設けてもよい。第2光学形状層54及び第2基材層がともに光吸収性を有し、光透過性を有していない形態としてもよい。
このような変形形態のスクリーン50においても、明瞭な映像を表示でき、かつ、映像のぎらつき(スペックル)を低減した反射型のスクリーン50及び映像表示装置とすることができる。
【0101】
(3)各実施形態において、光制御層16は、画面上下方向及び厚み方向に平行な断面において、画面上下方向における入射角度によって、選択的に入射光を拡散する例を挙げて説明したが、これに限らず、光制御層16は、単位光学形状121の配列方向及び厚み方向に平行な断面において、単位光学形状121の配列方向における入射角度によって、選択的に入射光を拡散する形態としてもよい。各実施形態のように、単位光学形状121が、点Cを中心として同心円状に配列される場合、光制御層16の光学性能も、同心円状に分布する特性となる。このような形態とすることにより、さらに効果的に光を拡散することができ、スクリーンの画面上側の左右両端等、視野角が低下しやすい箇所について、十分な視野角を確保できる。
【0102】
また、各実施形態において、光制御層16は、画面上下方向及び厚み方向に平行な断面において、入射光を拡散して透過する特定の角度範囲が一定である例を示したが、これに限らず、画面上下方向に沿って特定角度範囲が、連続的に又は段階的に変化する形態としてもよい。このような形態とすることにより、スクリーンの画面上下方向において変化する映像光の入射角度に対応して、より効果的に光を拡散することができ、良好な映像を表示できる。
【0103】
(4)各実施形態において、光制御層16は、背面側(-Z側)から入射する光については、入射角度に関係なく、拡散せずに透過する形態としてもよい。すなわち、光制御層16は、第3入射角度範囲R3を有しない形態としてもよい。
【0104】
(5)第1実施形態において、スクリーン10は、反射層13よりも映像源側(+Z側)に、入射した光の一部を透過し、一部を吸収する光吸収層として、所定の透過率となるように、黒や灰色等の暗色系の着色材等で着色された着色層を備える形態としてもよい。スクリーン10は、このような着色層を反射層13よりも映像源側に設けることにより、スクリーン10の背面側の空気との界面で反射した光が映像源側へ出射して二重像となることを抑制できる。また、このような着色層を備えることにより、映像の黒輝度の低減や映像源側からの外光の吸収を図り、映像のコントラスト向上を図ることができる。
このような着色層は、例えば、光制御層16の映像源側(+Z)に新たに積層してもよいし、例えば、接合層17aや第1基材層11等が着色材を含有し、着色層としての機能を有する形態としてもよい。
【0105】
また、第1実施形態において、反射層13よりも背面側(-Z側)に、上述のような着色層を設けてもよい。このような着色層を反射層13よりも背面側に設けることにより、スクリーン10の背面側の空気との界面で反射した光が映像源側へ出射して二重像となることを抑制でき、明瞭な映像を表示できる。また、着色層を反射層13よりも背面側に設けることにより、映像光を投射しない状態でのスクリーンの透明性は低下するが、背面側からの外光を吸収でき、明るく、コントラストが高い映像を表示できる。このような着色層は、第2基材層15よりも背面側に新たに積層してもよいし、例えば、第2基材層15等が着色材を含有し、着色層としての機能を有する形態としてもよい。
【0106】
なお、上述の光吸収層(着色層)は、特に、第1実施形態のスクリーン10の最も映像源側又は最も背面側に配置されること、すなわち、スクリーンと空気との界面となる位置に配置することが、より効果的である。
また、第2実施形態において、調光層30に換えて、上記着色層を備える形態としてもよい。
【0107】
(6)各実施形態において、単位光学形状121の第1斜面121a及び第2斜面121bは、例えば、曲面と平面とが組み合わされた形態としてもよいし、折れ面状としてもよい。
また、単位光学形状121は、3つ以上の複数の面によって形成される多角形形状としてもよい。
また、反射層13は、第1斜面121a及び第2斜面121bに形成される例を示したが、これに限らず、例えば、第1斜面121aの少なくとも一部に形成される形態としてもよい。
また、実施形態において、第1斜面121a及び第2斜面121bは、微細かつ不規則な凹凸形状を有する例を示したが、これに限らず、第1斜面121aのみが微細かつ不規則な凹凸形状を有する形態としてもよい。
【0108】
(7)各実施形態において、映像源LSは、スクリーン10,20の画面左右方向の中央であって画面外の下方に位置する例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、スクリーン10,20の上方に位置してもよい。この場合、スクリーン10,20は、その上下方向(Y方向)を反転させた形態となる。
また、映像源LSが、スクリーン10,20に対して斜め方向光から映像光を投射する形態としてもよい。この場合、第1光学形状層12のサーキュラーフレネルレンズ形状のフレネルセンターとなる点Cは、映像源LSの位置に合わせて配置する。このような形態とすることにより、映像源LSの位置等を自由に設定することができる。
【0109】
(8)第1実施形態において、スクリーン10は、第1光学形状層12や第2光学形状層14が十分な厚みや剛性等を有している場合には、第1基材層11及び第2基材層15の少なくとも一方を備えない形態としてもよい。
また、スクリーン10,20は、光制御層16を第1光学形状層12のベース(基材)として用いて、第1基材層11等を備えない形態としてもよい。
【0110】
(9)第2実施形態において、調光層30は、その両面(基材31Aの映像源側の面及び基材31Bの背面側の面)に接合層等を介して光透過性の高い基板層が積層された形態としてもよい。このような基板層としては、ガラス製の板状の部材が好適である。すなわち、合わせガラスの内部に実施形態の調光層30が配置された形態に相当し、接合層17cを介して第2基材層15の背面側される。
調光層30をこのような形態とすることにより、高温下で液晶層36内の液晶材料が重力方向に落ちることにより、液晶材料の分布のムラが生じ、これに起因する透過率のムラを低減することができる。
【0111】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した各実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0112】
1 映像表示装置
10,20 スクリーン
11 第1基材層
12 第1光学形状層
121 単位光学形状
121a 第1斜面
121b 第2斜面
13 反射層
14 第2光学形状層
15,25 第2基材層
16 光制御層
17a,17c 接合層
30 調光層
LS 映像源