(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165769
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】射出成形機および射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/40 20060101AFI20221025BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B29C45/40
B29C45/17
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071257
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】朝野 一実
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB28
4F202CC07
4F202CM02
4F206JA07
4F206JB28
4F206JL02
4F206JN41
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】 成形品の取り出しに際して大きく型開きする必要がなくなり、装置全長または型開閉機構の長大化を抑制する。
【解決手段】 第1の金型19が取り付けられる第1の盤20と、第2の金型15が取り付けられる第2の盤16の間に、型開閉方向Cに直交する軸28を中心に回転可能であり、両側の金型取付面25a,25bに中間金型21,22が取り付けられる中間盤25が設けられ、第1の金型19と中間金型21、第2の金型15と中間金型22の型締が同時に行われる射出成形機11において、前記中間金型21,22または中間盤25にはエジェクタ機構50が設けられ、中間金型21,22が第1の金型19および第2の金型15と正対しない位置で前記エジェクタ機構50を作動させ、成形品P2の取り出しを行う取出モードBを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型が取り付けられる第1の盤と、第2の金型が取り付けられる第2の盤の間に、型開閉方向に直交する軸を中心に回転可能であり、両側の金型取付面に中間金型が取り付けられる中間盤が設けられ、第1の金型と中間金型、第2の金型と中間金型の型締が同時に行われる射出成形機において、
前記中間金型または中間盤にはエジェクタ機構が設けられ、
中間金型が第1の金型および第2の金型と正対しない位置で前記エジェクタ機構を作動させ、成形品の取り出しを行う取出モードを備える、射出成形機。
【請求項2】
中間金型が第1の金型および第2の金型と正対した位置で前記エジェクタ機構を作動させ、成形品の取り出しを行う第1の取出モードと、
中間金型が第1の金型および第2の金型と正対しない位置で前記エジェクタ機構を作動させ、成形品の取り出しを行う第2の取出モードとを備える、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
第1の金型が取り付けられる第1の盤と、第2の金型が取り付けられる第2の盤の間に、型開閉方向に直交する軸を中心に回転可能であり、両側の金型取付面にそれぞれ中間金型が取り付けられる中間盤が設けられ、第1の金型と中間金型、第2の金型と中間金型の型締が同時に行われる射出成形機の制御方法において、
前記中間金型または中間盤にはエジェクタ機構が設けられ、
中間金型が第1の金型および第2の金型と正対しない位置で中間盤の回転を停止させ、
前記エジェクタ機構を作動させて成形品の取り出しを行う、射出成形機の制御方法。
【請求項4】
中間盤の金型取付面が型開閉方向と平行になった状態で中間盤の回転を停止させる、請求項3に記載の射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の金型が取り付けられる第1の盤と、第2の金型が取り付けられる第2の盤の間に、型開閉方向に直交する軸を中心に回転可能であって両側の金型取付面に中間金型が取り付けられる中間盤が設けられ、第1の金型と中間金型、第2の金型と中間金型の型締が同時に行われる射出成形機、および射出成形機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の金型が取り付けられる第1の盤と、第2の金型が取り付けられる第2の盤の間に、型開閉方向に直交する軸を中心に回転可能であって両側の金型取付面に中間金型が取り付けられる中間盤が設けられ、第1の金型と中間金型、第2の金型と中間金型の型締が同時に行われる射出成形機としては、特許文献1に記載されたものが知られている。そして特許文献1においては、
図6に示される深物成形の例のように、一方の金型間の間隔を他方の金型間の間隔よりも大きくして成形品の取り出しを行うことが記載されている。
【0003】
しかしながら特許文献1の
図6の深物成形の例においても、型開時の金型の間に、中間金型のコア型の部分から成形品を抜き取ることができるスペースと取出機が侵入することができるスペースが必要となることには変わりはなく、成形品を取り出す側の金型の間隔は大きく開く必要があった。そのためそれに対応することの可能な射出成形機の構造としては、可動盤の最大型開量を大きく取る必要があり、それに応じてベッドや可動盤を移動させるためのボールねじ等の型開閉機構も長大なものとする必要があった。また深物成形品がごくまれにしか成形されない場合であっても、深物成形品の成形のために前記のような可動盤の最大型開量を大きく取った射出成形機の型締装置を準備する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、第1の金型が取り付けられる第1の盤と、第2の金型が取り付けられる第2の盤の間に、型開閉方向に直交する軸を中心に回転可能であり、両側の金型取付面に中間金型が取り付けられる中間盤が設けられ、第1の金型と中間金型、第2の金型と中間金型の型締が同時に行われる射出成形機において、前記中間金型または中間盤にはエジェクタ機構が設けられ、中間金型が第1の金型および第2の金型と正対しない位置で前記エジェクタ機構を作動させ、成形品の取り出しを行う取出モードを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の射出成形機によれば、深物成形品等の成形品の取り出しに際して大きく型開きする必要がなくなり、装置全長または型開閉機構の長大化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の射出成形機の型開時の状態を示す概略平面図である。
【
図2】本発明の実施形態の射出成形機の成形品取出時の状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施形態の射出成形機の各取出モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の複合成形品用の射出成形機11(以下射出成形機11と略す)について、
図1を参照して説明する。射出成形機11は、複数の樹脂材料を用いて複合成形品を成形する成形機であって、型締装置12とその両側にそれぞれ一基ずつ設けられた第1の射出装置13と第2の射出装置14から基本的な部分が構成される。射出成形機11の型締装置12は、第1の金型である固定金型19が取付けられる第1の盤である固定盤20と、第2の金型である可動金型15が取付けられる第2の盤である可動盤16との間に、型開閉方向Cと直交する方向の軸(回転軸28)を中心に回転可能であって両側の金型取付面25a,25bに中間金型21,22が取付けられる中間盤25が設けられ、第1の金型である固定金型19と中間金型21または22、第2の金型である可動金型15と中間金型22または21が同時に型締されるものである。
【0010】
固定盤20の四隅近傍にはそれぞれ型締シリンダ23(
図1の概略平面図では1個の型締シリンダ23のみ断面を記載)が設けられ、型締シリンダ23のラムがタイバ24を兼ねている。型締シリンダ23は双方向作動型のシリンダからなり、固定盤20内のタイバ24の側に大面積の型締用油室23aが設けられるとともに、反タイバ側(第1の射出装置側)には小面積の型開用油室23bが設けられている。
【0011】
そして固定盤20から可動盤16側に向けて平行に設けられた四本のタイバ24の型締シリンダ23から遠方側の部分(可動盤16側)には、ハーフナット29が係止される複数の凹溝からなる係止部24aが所定長さにわたって設けられている。可動盤16は、その四隅近傍に形成された孔にタイバ24が挿通され、ベース17上に配置された直動ガイド等のレール上を型開閉方向Cに移動されるようになっている。また前記ハーフナット29は、可動盤16の反固定盤側の面のタイバ24が挿通される孔の部分の周囲に配設され、タイバ24の係止部24aに対して係合および離脱が可能となっている。
【0012】
本実施形態では固定盤20に取り付けられる固定金型19は、第1の射出装置13から射出される溶融樹脂を図示しないキャビティに充填するためのホットランナ等の流路を備えている。本実施形態では固定金型19はキャビティ面19aが凹部からなるキャビ型であってエジェクタ機構を備えていない。しかし固定金型19はキャビティ面が凸部からなるコア型であってもよく、エジェクタ機構も備えていてもよい。
【0013】
次に中間部材18、中間盤25、中間金型21,22について説明する。固定金型19が取付けられる固定盤20と可動金型15が取付けられる可動盤16との間には、中間部材18が型開閉方向Cに移動自在に配設されている。中間部材18は、上側の2本のタイバ24に挿通される上フレーム26と、下側の2本のタイバ24に挿通されるとともにベース17上に支持される下フレーム27(
図1では明示されず)を備えている。
図2に示されるように上フレーム26と下フレーム27の間には垂直方向(型開閉方向Cとは直交方向)に設けられた回転軸28が図示しないベアリングにより回転自在に保持され、前記回転軸28には中間盤25が固定されている。また中間部材18の上フレーム26か下フレーム27の一方には中間盤25を回転させるサーボモータ34が取付けられている。中間部材18の一部である中間盤25は所定の厚みを有する略四角形の盤体であり、その両側の金型取付面25a、25bには、それぞれ中間金型21と中間金型22が取付けられるようになっている。なお本発明において上フレーム26は必須のものではない。
【0014】
図1および
図2に示されるように、中間部材18には中間盤25の回転を係止する第1の位置決め機構35が設けられている。具体的には下フレーム27のうち回転軸28の中心から遠い側には、第1の位置決め機構35の位置決めピン38を下フレーム27から上側に向けて突き出すため駆動源が設けられている。本実施形態では油圧シリンダ39のロッドが位置決めピン38となっている。また中間盤25の下面には、中間盤25を固定盤20等と正対した状態で回転停止した際に、前記位置決めピン38と上下方向に一致する位置に位置決めピン38が挿入される位置決め穴40が形成されている。第1の位置決め機構35は、後述する第1の取出モードAの際に中間盤25および中間金型21,22を固定するためのものである。
【0015】
また
図2に示されるように、下フレーム27のうち回転軸28の中心から型開閉方向Cの固定盤側または可動盤側のいずれかの側に向けて所定長さのブラケット46が固定されている。そして前記ブラケット46には、第2の位置決め機構36の位置決めピン47を下フレーム27から上方に向けて突出するための駆動源が設けられている。本実施形態では油圧シリンダ49のロッドが位置決めピン47となっている。位置決めピン47が挿入される中間盤25側の位置決め穴40については、第1の位置決め機構35の位置決めピン38が挿入れる位置決め穴40と共用されている。しかし中間盤25の下面に別に位置決め穴を設けてもよい。第2の位置決め機構36は、後述する第2の取出モードBの際に中間盤25および中間金型21,22を固定するためのものである。なお第2の位置決め機構は中間盤25の回転を当て止めにより停止する昇降式のストッパであってもよい。
【0016】
なお第1の位置決め機構35および第2の位置決め機構36の駆動源は、モータを用いてもよい。また第1の位置決め機構35、第2の位置決め機構36の少なくとも一方は、中間部材18の上フレーム26に設けてもよい。その場合位置決めピンが挿入される位置決め穴は中間盤25の上面側に設けられること当然である。また本発明では取り分け第2の位置決め機構36については必須のものではない。中間盤25を回転制御するサーボモータ34の制御により、中間盤25の金型取付面25a、25bが型開閉方向Cに平行となった状態で停止させ、サーボモータ34をサーボロック状態とすることにより中間盤25が不意に回転されることを防止できる。
【0017】
本実施形態では中間盤25の両側の金型取付面25a,25bにそれぞれ取り付けられる中間金型21,22は、同じ形状の金型である。中間金型21,22はキャビティ面21a,22aが凸部であるコア型であって内部にエジェクタ機構50を備えている。そしてエジェクタ機構50のエジェクタピン51は凸部の前面のキャビティ面21a,22aから突出可能となっている。なおエジェクタ機構50の駆動機構の一部または全部は、中間盤25の内部に設けてもよい。その場合中間盤25のエジェクタ機構の駆動機構は、両方の中間金型21,22のうちいずれか一方の複合成形品P2を保持している側の中間金型21,22のエジェクタピン51を突き出すことは言うまでもない。
図1および
図2では、エジェクタ機構の駆動源は、油圧シリンダを用いたものが記載されているが、サーボモータ等のモータを用いたものでもよい。またエジェクタ機構50を中間盤25の内部に設けた場合の駆動源の種類も前記中間金型21,22に設ける場合と同様に自由に選択できる。
【0018】
本実施形態では可動盤16に取り付けられる可動金型15は、第2の射出装置14から射出される溶融樹脂を図示しないキャビティに充填するためのホットランナ等の流路を備えている。本実施形態では可動金型15はキャビティ面15aが凹部であるキャビ型であってエジェクタ機構を備えていない。しかし可動金型はキャビティ面が凸部であるコア型であってもよく、エジェクタ機構を備えていてもよい。
【0019】
次に可動盤16および可動金型15を型開閉移動させる第1の型開閉機構30について説明する。固定盤20(またはベース17上)に設けられたブラケットにはサーボモータ31が固定されている。そしてボールネジ32が前記サーボモータ31により回転可能に固定盤20(またはベース17)のブラケットに軸支されている。ボールネジ32は、前記サーボモータ31の駆動軸と直接またはベルトを介して接続され、駆動力が伝達されるようになっている。また可動盤16に設けられたブラケットにはボールネジナット33が固定され、前記ボールネジナット33には前記ボールネジ32が挿通されている。なお
図1の概略平面図では第1の型開閉機構30は省略して1基のみが記載されているが、数は限定されず通常は2基または4基が設けられる。
【0020】
次に中間部材18(中間盤25を含む)と中間金型21,22を型開閉移動させる第2の型開閉機構42について説明する。第2の型開閉機構42については、可動盤16と中間部材18の間にわたって設けられる。可動盤16の四隅近傍の位置にはブラケットが固定され、前記ブラケットにサーボモータ43が固定されている。そして前記サーボモータ43の駆動軸とボールネジ44が直接またはベルトを介して接続され、駆動力が伝達されるようになっている。
【0021】
また中間部材18の両側にそれぞれ設けられたブラケットにはボールネジナット45が固定され、前記ボールネジナット45には前記ボールネジ44が挿通されている。第2の型開閉機構42は、サーボモータ43をサーボロックすることにより、中間盤25の位置を可動盤16に対して固定的に保持できる。
図1等の概略図では第2の型開閉機構42は省略して1基のみが記載されているが、数は限定されず、少なくとも2基以上、更に好ましくは両側に2基ずつ合計4基が配設される。更に第1の型開閉機構30または第2の型開閉機構42の少なくとも一方は油圧シリンダを用いたものでもよい。
【0022】
上記の構成により、第1の成形を行う固定金型19と中間金型21または22のいずれか一方からなる金型と、第2の成形を行う可動金型15と中間金型21または22のいずれか他方からなる金型は、型開閉方向Cと同軸上に配設され、第1の型開閉機構30と第2の型開閉機構42により型閉がなされた後に、同時に型締シリンダ23により型締可能となっている。従って1個の固定金型と1個の可動金型とが取付けられた一般的な射出成形機とほぼ同じ型締力で固定金型19と中間金型21または22のいずれか一方、可動金型15と中間金型21または22のいずれか他方の両方の型締を行うことができる。
【0023】
次に複合成形品の取出機について説明する。本実施形態では
図1に示されるように、取出機は腕部の先端に取出用ヘッド部53を備えた多関節取出ロボット52を使用している。そのため1台の多関節取出ロボット52の制御を切換えることにより、後述する通常の第1の取出モードAと本実施形態の第2の取出モードBの両方の取出モードの複合成形品Pの取り出し位置に対応して取り出しを行うことができる。射出成形機11の安全カバーについては、多関節取出ロボット52も内包する形で多関節取出ロボット52の外側に設置することが望ましい。なお
図2では多関節取出ロボット52は射出成形機11の手前側または奥側に設置されるが記載は省略されている。
【0024】
次に複合成形品用の射出成形機11の制御方法について
図1ないし
図3を参照して説明する。まずは通常の第1の取出モードAについて説明する。第1の取出モードAでは、固定金型19と中間金型21、中間金型22と1次成形品P1が保持された可動金型15が型閉されるとハーフナット29がタイバ24の係止部24aに係合される。中間盤25の位置決め穴40に挿入されている第1の位置決め機構35の位置決めピン38は、この後で抜かれて中間盤25の固定は解除される。次に固定金型19と中間金型21、中間金型22と可動金型15が型締機構の型締シリンダ23により同時に型締される。そして型締シリンダ23により型締された状態で、第1の射出装置13から固定金型19と中間金型21の間に形成されたキャビティに溶融樹脂が射出される。また第2の射出装置14から中間金型22と可動金型15の間に形成されたキャビティに別の溶融樹脂が射出され、1次成形品P1と結合されて複合成形品P2(完成品)が成形される。
【0025】
次に第1の位置決め機構35の位置決めピン38が中間盤25の位置決め穴40に再び挿入され中間盤25と中間金型21,22、可動金型15と可動盤16は再び型開完了位置まで型開きされる。この際、複合成形品P2はエジェクタ機構50が備えられた中間金型22に保持されて型開きされる。そしてそのまま中間金型22と可動金型15が正対した状態で、中間金型22のエジェクタ機構50が作動される。同時に多関節取出ロボット52等の取出機が可動金型15と中間金型22の間に挿入され、エジェクタ機構50のエジェクタピン51により突き出された複合成形品P2を保持し、射出成形機11の外部に取り出す。次に第1の位置決め機構35の位置決めピン38が中間盤25の位置決め穴40から抜き出された後、中間盤25と中間金型21,22が1度に180°連続回転される。そのことにより複合成形品P2が取り出された後の中間金型22は固定金型19と正対する。また1次成形品P1が保持された中間金型21は可動金型15と正対する。
【0026】
また第1の取出モードの変形例としては、複合成形品P2が中間金型22に保持されて型開きされた後、すぐにエジェクタ機構50を作動させず、そのまま中間金型21,22を180°回転させる。そして複合成形品P2を保持したままの中間金型22が固定金型19と正対した状態で中間金型22のエジェクタ機構50を作動させて複合成形品P2を取り出す。第1の取出モードAは、次に記載する第2の取出モードBよりも成形サイクル時間としては短くなる場合が多いので、中間金型21,22から取出しする際のスペースをさほど必要としない複合成形品の場合などに使用される。
【0027】
次に本実施形態の第2の取出モードBについて説明する。第2の取出モードBでは、固定金型19と中間金型21、中間金型22と1次成形品P1が保持された可動金型15が型閉されるとハーフナット29がタイバ24の係止部24aに係合される。中間盤25の位置決め穴40に挿入されている第1の位置決め機構35の位置決めピン38は、この後で抜かれて中間盤25の固定は解除される。次に固定金型19と中間金型21、中間金型22と可動金型15が型締機構の型締シリンダ23により同時に型締される。そして型締シリンダ23により型締された状態で、第1の射出装置13から固定金型19と中間金型21の間に形成されたキャビティに溶融樹脂が射出される。また第2の射出装置14から中間金型22と可動金型15の間に形成されたキャビティに別の溶融樹脂が射出され、1次成形品P1と結合されて複合成形品P2が成形される。次に第1の位置決め機構35の位置決めピン38が中間盤25の位置決め穴40に再び挿入され、
図1に示されるように中間盤25と中間金型21,22、可動金型15と可動盤16は再び型開完了位置まで型開きされる。
【0028】
ただし第1の取出モードAと第2の取出モードBでは中間盤25や可動盤16の型開量が相違している。即ち第2の取出モードBでは、中間金型22が可動金型15と正対しない位置でエジェクタ機構50を作動させて成形品の取り出しを行う。そのため中間金型22と可動金型15の間に複合成形品P2を金型から抜くためのスペースや取出機を侵入させるためのスペースを必要としない。
【0029】
第2の取出モードBでは、ここから次にサーボモータ34が作動されて中間盤25と中間金型21,22を90°回転させる。この際に
図1においては中間金型22に保持された複合成形品P2の角部の回転軌跡Rが記載されているが、中間盤25の回転時に複合成形品P2が可動金型15と接触しなければよい。そして
図2に示されるように中間盤25の金型取付面25a,25bが型開閉方向Cと平行になった状態(中間盤25の金型取付面25a,25bが操作側と反操作側に向いた状態)で中間盤25の回転を停止させる。この際の中間盤25の回転停止制御はサーボモータ34の図示しないロータリエンコーダにより回転角度を検出して位置制御により行われる。そして回転が停止した中間盤25に対して下フレーム27に設けられた第2の位置決め機構36の駆動手段の油圧シリンダ49が作動され、中間盤25のブラケット46に設けられた位置決め穴40に位置決めピン47が挿入される。
【0030】
次に中間金型22が90°回転され射出成形機11の側方を向いた状態で、中間金型22のエジェクタ機構50が作動される。また同時に多関節取出ロボット52等の取出機の取出用ヘッド部53が上下のタイバ24,24の間から中間金型22のキャビティ面22aの前方へ挿入される。そして前記多関節取出ロボット52の取出用ヘッド部53はエジェクタピン51により突き出された複合成形品P2を保持し、射出成形機11の外部に取り出す。次に中間盤25と中間金型22が再度、90°回転される。そのことにより複合成形品P2が取り出された中間金型22は固定金型19と正対する。また1次成形品P1が保持された中間金型21は可動金型15と正対する。
【0031】
なお上記の例では中間盤25と中間金型21,22は操作側に向けて90°回転されているが、反操作側に向けて90°回転され、エジェクタ機構50が作動(エジェクタ取出作動)されるものでもよい。また上記の例では90°回転された中間金型22は、第2の位置決め機構36により位置決め固定されているが、第2の位置決め機構36を設けずに、サーボモータ34によりサーボロックをした状態で、エジェクタ機構50を作動させてエジェクタ取出作動してもよい。
【0032】
また本発明は、中間金型22が第1の金型および第2の金型と正対しない位置で前記エジェクタ機構50を作動させるものであれば、停止位置は回転開始からの回転角度は、90°(プラス側とマイナ側を含む)には限定されず、一例として45°や135°など別の回転角度で中間盤25を停止させるものでもよい。なお可動金型15や固定金型19と緩衝せずに側方からの取出機の侵入が容易であることを考慮すると固定金型19または可動金型15に正対した回転開始時の角度から45°ないし135°の範囲内で回転させて中間盤25および中間金型21,22を停止させることが望ましい。またエジェクタ機構50の作動は、中間盤25の回転中から作動させるものを全く除外するものではない。
【0033】
次に別の実施形態について説明する。別の実施形態については図示は省略するが、中央の中間部材と中間盤は、型開閉方向には固定的に設けられ移動しないか、或いは型締時に微小移動しかしない。中間部材に対して回転可能な中間盤の両面にはそれぞれ中間金型が取り付けられている。そして中間部材と中間盤の一側には、第1の金型である可動金型が取付けられた第1の盤である可動盤が中間盤に対して型開閉移動可能となっている。また中間部材と中間盤の他側には、第2の金型である可動金型が取付けられた第2の盤である可動盤が中間盤に対して型開閉移動可能となっている。またこれら第1の金型である可動金型、中間金型、第2の金型である可動金型は可動盤やその背面等に設けられた型締機構により同時に型締可能となっている。
【0034】
別の実施形態の射出成形機の場合も成形品を取り出すための第1の取出モードAと第2の取出モードBを備えている。そして第2の取出モードBの場合は、可動金型を型開した状態で、中間盤と中間金型を90°回転させ、中間金型を型開閉方向に直交する方向である側方を向けた状態とし、中間盤か中間金型に設けたエジェクタ機構により複合成形品の取り出しを行う。なお本発明は、中間盤を備えておらずキャビティ面を4面に備えた立方形状の中間金型が設けられており、中間金型を90°ずつ回転させるたびに側方に位置するキャビティ面から成形品を取り出すものは対象としていない。
【0035】
本実施形態も別の実施形態も共に中間金型がコア型であってもキャビ型であってもよいが、いずれにしても深物成形品の成形の際に可動金型、または可動金型と中間金型の型開量を小さくすることができるので有利である。深物成形品とは、これに限定されるものではないが、中間金型に保持された状態の成形品の端部から端部まで幅の長さ(型開閉方向に直交する方向の長さ)に対する深さ方向の長さ(型開閉方向の長さ)の比率が0.4ないし4.0のものを想定している。また成形品は深物成形品でなくても金型自体の厚みが厚くて射出成形機11のデーライト(可動盤を最大型開きした状態)と同じ型開量まで型開しても成形品が取り出せなかったり、取り出しにくい場合にも有用である。更には成形品の取出時に金型間に、取出機以外にもインサート機、金型キャビティ面予熱機、金型キャビティ面清掃機、金型キャビティ面撮影用カメラなど他の機器も挿入したい場合なども本発明が有用である。
【0036】
なお本発明については、一々列挙はしないが、上記したものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや各実施形態の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0037】
11 複合成形品用の射出成形機
12 型締装置
15 可動金型
16 可動盤
18 中間部材
19 固定金型
20 固定盤
21,22 中間金型
25 中間盤
25a,25b 金型取付面
28 回転軸
35 第1の位置決め機構
36 第2の位置決め機構
50 エジェクタ機構
51 エジェクタピン
52 多関節取出ロボット
A 第1の取出モード
B 第2の取出モード