(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165772
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/197 20210101AFI20221025BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20221025BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20221025BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20221025BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20221025BHJP
H01M 50/375 20210101ALI20221025BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221025BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221025BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221025BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01M50/197
H01M50/184 C
H01M50/198
H01M50/557
H01M50/342 101
H01M50/375
B32B27/00 M
B32B7/027
C09J7/30
C09J123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071260
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
(72)【発明者】
【氏名】大野 直人
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5H011
5H012
5H043
【Fターム(参考)】
4F100AK03
4F100AK03B
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5H011AA13
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5H011KK01
5H011KK04
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5H012JJ10
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5H043LA41D
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの発熱時に蓄電デバイスを早期に開封させることができる端子用樹脂フィルム等の提供。
【解決手段】蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、金属端子に接着される第1シーラント層と、ポリオレフィン樹脂を含むコア層と、第2シーラント層とをこの順に有し、第1シーラント層及び第2シーラント層のうちの少なくとも一方が、接着剤層を介してコア層に接着され、コア層が、ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層を含み、第1シーラント層及び第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、接着剤層が、110℃以下の温度に融解ピークを有し、上記融解ピーク融解ピークにおける温度が第1シーラント層、コア層及び第2シーラント層に含まれるポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低い端子用樹脂フィルム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、
前記端子用樹脂フィルムが、
前記金属端子に接着される第1シーラント層と、
ポリオレフィン樹脂を含むコア層と、
第2シーラント層とをこの順に有し、
前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層のうちの少なくとも一方が、接着剤層を介して前記コア層に接着され、
前記コア層が、前記ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層を含み、
前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、
前記接着剤層が、110℃以下の温度において融解ピークを有し、前記融解ピークにおける温度が、前記第1シーラント層、前記コア層及び前記第2シーラント層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂又は前記酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低い、端子用樹脂フィルム。
【請求項2】
前記接着剤層において、前記融解ピークを複数有し、複数の前記融解ピークのうち、前記接着剤層を構成する接着剤について測定されるDSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピークが70℃以上110℃以下の温度に存在する、請求項1に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第1シーラント層に含まれる前記酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが2.0g/10min以上35g/10min未満である、請求項1又は2に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項4】
前記絶縁層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.1g/10min以上5g/10min未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項5】
前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層に含まれる前記酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が120℃以上160℃未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項6】
前記絶縁層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂の融点が130℃以上175℃未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項7】
前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂と硬化剤とを含む接着剤組成物を用いて形成される層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項8】
前記コア層が、前記接着剤層と前記絶縁層との間に設けられる樹脂層をさらに有し、
前記樹脂層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項7に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項9】
前記硬化剤が、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、及び、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる、請求項7又は8に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項10】
前記硬化剤が、前記多官能イソシアネート化合物からなり、前記多官能イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種類で構成されることを特徴とする請求項9に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項11】
前記多官能イソシアネート化合物が、ヌレート体、アダクト体、ビューレット体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種類で構成される、請求項10に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項12】
前記第1シーラント層の厚さが、前記第2シーラント層の厚さより大きい、請求項1~11のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項13】
前記接着剤層が着色剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項14】
蓄電デバイス本体と、
前記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、
前記金属端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、
前記外装材内に収容される電解液と、
前記金属端子の一部の外周面を覆って、前記金属端子と前記外装材との間に配置される端子用樹脂フィルムとを備え、
前記端子用樹脂フィルムが、請求項1~13のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルムからなり、
前記端子用樹脂フィルムの前記第1シーラント層が前記金属端子に接着され、
前記第2シーラント層が前記外装材に接着されている、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスの研究開発が行われている。
【0003】
このような蓄電デバイスとして、袋状の外装材の内部に電池本体を収容して収容したラミネート型リチウムイオン二次電池が知られている。このよう蓄電デバイスは一般に、電池本体から電流を取り出すためのタブと呼ばれる金属端子を備えており、金属端子の一部の外周面は、端子用樹脂フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)によって覆われている。
【0004】
このような端子用樹脂フィルムとして、従来、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。同文献には、融点が140℃の酸変性ポリプロピレンを用いた2つのスキン層の間に、融点が160℃のポリプロピレンを用いたコア層を挟んでなる3層構成の端子用樹脂フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リチウムイオン二次電池をはじめとする蓄電デバイスにおいては、蓄電デバイス本体自体が発熱して高温状態となり、それに伴って電解液の揮発により外装材の内圧が高まり、やがて蓄電デバイスが膨れることがある。この状態が継続すると内圧が高まり続け最終的に破裂する。このため、内圧が高まりきる前に蓄電デバイスが開封されることが望ましい。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の端子用樹脂フィルムにおいては、2つのスキン層及びコア層のいずれも高い融点を有するため、端子用樹脂フィルムが高温状態になるまで蓄電デバイスを開封させることができない。すなわち、上記特許文献1に記載の端子用樹脂フィルムは、蓄電デバイスの発熱時における早期開封性の点で改善の余地を有していた。
【0008】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、蓄電デバイスの発熱時において蓄電デバイスを早期に開封させることができる端子用樹脂フィルム、及び、それを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示は、蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される端子用樹脂フィルムであって、前記端子用樹脂フィルムが、前記金属端子に接着される第1シーラント層と、ポリオレフィン樹脂を含むコア層と、第2シーラント層とをこの順に有し、前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層のうちの少なくとも一方が、接着剤層を介して前記コア層に接着され、前記コア層が、前記ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層を含み、前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、前記接着剤層が、110℃以下の温度において融解ピークを有し、前記融解ピークにおける温度が、前記第1シーラント層、前記コア層及び前記第2シーラント層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂又は前記酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低い、端子用樹脂フィルムを提供する。
【0010】
上記端子用樹脂フィルムによれば、蓄電デバイス本体に電気的に接続された金属端子の一部の外周面に端子用樹脂フィルムの第1シーラント層を接着させ、外装材内に蓄電デバイス本体及び電解液を収容し、端子用樹脂フィルムの第2シーラント層を外装材に接着させることにより得られる蓄電デバイスにおいて、以下の効果が得られる。すなわち、端子用樹脂フィルムにおいては、接着剤層が、110℃以下の温度に融解ピークを有し、上記融解ピークにおける温度が、第1シーラント層、コア層及び第2シーラント層に含まれるポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低い。このため、蓄電デバイス本体が自らの発熱などによって高温状態になっても、電解液の揮発により外装材内部の圧力が高まって蓄電デバイスが過剰に膨張する前に、第1シーラント層、コア層及び第2シーラント層よりも先に接着剤層を融解させて接着剤層の接着強度を低下させることができる。このとき、第1シーラント層及び第2シーラント層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むため、第1シーラント層と金属端子との間の密着性、及び、第2シーラント層と外装材との間の密着性が十分に確保される。したがって、端子用樹脂フィルムによれば、外装材の内部の圧力がさらに高まったときに、第1シーラント層と金属端子との間、及び、第2シーラント層と外装材との間ではなく、接着剤層を起点として早期に蓄電デバイスを開封させることが可能となる。従って、本開示の端子用樹脂フィルムは、蓄電デバイスの安全性を高めることができる。
【0011】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記接着剤層において、前記融解ピークを複数有し、複数の前記融解ピークのうち、前記接着剤層を構成する接着剤について測定されるDSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピークが70℃以上110℃以下の温度に存在することが好ましい。
【0012】
この場合、接着剤層における複数の融解ピークのうち、接着剤層を構成する接着剤について測定されるDSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピークが70℃以上110℃以下の温度に存在することで、蓄電デバイスの耐熱性をより向上させることができる。
【0013】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
この場合、第1シーラント層及び第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含むため、第1シーラント層と金属端子との密着性が優れるとともに、第2シーラント層と外装材との密着性も優れる。
【0015】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記第1シーラント層に含まれる前記酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが2.0g/10min以上35g/10min未満であることが好ましい。
【0016】
この場合、金属端子に接着される第1シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが2.0g/10min以上であることで、第1シーラント層の高温での流動性が高くなるため、端子用樹脂フィルムを蓄電デバイスの金属端子に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層と金属端子との隙間を埋め易くすることができる。また、第1シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが35g/10min未満であることで、端子用樹脂フィルムを蓄電デバイスの金属端子に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層の流れ出しを抑制することができる。
【0017】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記絶縁層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.1g/10min以上5g/10min未満であることが好ましい。
【0018】
この場合、絶縁層に含まれるポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.1g/10min以上であることで、絶縁層の加工性を向上させることができるとともに、端子用樹脂フィルムの破断伸度を向上できる。また、絶縁層に含まれるポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが5g/10min未満であることで、絶縁層が溶融しにくくなるため、端子用樹脂フィルムを、蓄電デバイスの金属端子と、金属層を含む外装材とで挟んだ状態でヒートシールを行う場合に、絶縁層の薄層化(シール痩せ)を抑制でき、金属端子と外装材の金属層との間の絶縁性を確保しやすくすることができる。
【0019】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が120℃以上160℃未満であることが好ましい。
【0020】
この場合、第1シーラント層及び第2シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が120℃以上であることで、端子用樹脂フィルムが高温状態となっても、第1シーラント層及び第2シーラント層が融解しにくくなり、第1シーラント層と金属端子との間のシール性、及び、第2シーラント層と外装材とのシール性を保持しやすくすることができる。また、第1シーラント層及び第2シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が160℃未満であることで、ヒートシール時に酸変性ポリオレフィン樹脂が溶融し易く、ヒートシール強度をより向上できる。
【0021】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記絶縁層に含まれる前記ポリオレフィン樹脂の融点が130℃以上175℃未満であることが好ましい。
【0022】
この場合、絶縁層に含まれるポリオレフィン樹脂の融点が130℃以上であることで、絶縁層が溶融しにくくなるため、端子用樹脂フィルムを、蓄電デバイスの金属端子と、金属層を含む外装材とで挟んだ状態でヒートシールを行う場合に、絶縁層の薄層化(シール痩せ)を抑制でき、金属端子と外装材の金属層との間の絶縁性を確保しやすくすることができる。また、絶縁層に含まれるポリオレフィン樹脂の融点が175℃未満であることで、絶縁層がシール時に軟化するため、金属端子への追従性がよくなり埋め込み性がよくなる。
【0023】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと硬化剤とを含む接着剤組成物を用いて形成される層であることが好ましい。
【0024】
この場合、第1シーラント層及び接着剤層が酸変性ポリオレフィンを含むことになるため、第1シーラント層と接着剤層との密着性がより向上する。
【0025】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記第1シーラント層及び前記第2シーラント層が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと硬化剤とを含む接着剤組成物を用いて形成される層であり、前記コア層が、前記接着剤層と前記絶縁層との間に設けられる樹脂層をさらに有し、前記樹脂層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0026】
この場合、第1シーラント層又は第2シーラント層と、接着剤層に用いられる接着剤組成物と、コア層の樹脂層がいずれも酸変性ポリオレフィン樹脂を含むことになるため、第1シーラント層又は第2シーラント層と接着剤層との密着性がより向上するとともに、樹脂層と接着剤層との密着性がより向上する。このため、第1シーラント層又は第2シーラント層がコア層から剥離しにくくなる。
【0027】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記硬化剤が、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、及び、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。
【0028】
この場合、第1シーラント層がコア層からより剥離しにくくなる。
【0029】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記硬化剤が、前記多官能イソシアネート化合物からなり、前記多官能イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種類で構成されることが好ましい。
【0030】
この場合、第1シーラント層がコア層から特に剥離しにくくなる。
【0031】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記多官能イソシアネート化合物が、ヌレート体、アダクト体、ビューレット体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種類で構成されることが好ましい。
【0032】
この場合、コア層からの第1シーラント層の剥離が効果的に抑制される。
【0033】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記第1シーラント層の厚さが、前記第2シーラント層の厚さより大きいことが好ましい。
【0034】
端子用樹脂フィルムの厚さが同一である場合、第1シーラント層の厚さが、第2シーラント層の厚さより大きいことで、端子用樹脂フィルムを蓄電デバイスの金属端子に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層を金属端子側に向けると、第1シーラント層と金属端子との隙間を埋める樹脂の量を第2シーラント層よりも多くすることができるため、その隙間をより埋め易くすることができる。
【0035】
上記端子用樹脂フィルムにおいては、前記接着剤層が着色剤を含むことが好ましい。
【0036】
接着剤層は、第1シーラント層、コア層、及び第2シーラント層に比べて薄くすることができ、厚さの均一性を向上させることが可能であるため、接着剤層に着色剤が含まれる場合に、端子用樹脂フィルムにおける色ムラを抑制することができる。
【0037】
また、本開示は、蓄電デバイス本体と、前記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、前記金属端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、前記外装材内に収容される電解液と、前記金属端子の一部の外周面を覆って、前記金属端子と前記外装材との間に配置される端子用樹脂フィルムとを備え、前記端子用樹脂フィルムが、上述した端子用樹脂フィルムからなり、前記端子用樹脂フィルムの前記第1シーラント層が前記金属端子に接着され、前記第2シーラント層が前記外装材に接着されている、蓄電デバイスであってもよい。
【0038】
この蓄電デバイスによれば、端子用樹脂フィルムにおいて、接着剤層が、110℃以下の温度に融解ピークを有し、上記融解ピークにおける温度が第1シーラント層、コア層及び第2シーラント層に含まれるポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂の融点がよりも低い。このため、蓄電デバイス本体が自らの発熱などによって高温状態になっても、電解液の揮発により外装材内部の圧力が高まって蓄電デバイスが過剰に膨張する前に、第1シーラント層、コア層及び第2シーラント層よりも先に接着剤層を融解させて接着剤層の接着強度を低下させることができる。このとき、第1シーラント層及び第2シーラント層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むため、第1シーラント層と金属端子との間の密着性、及び、第2シーラント層と外装材との間の密着性が十分に確保される。したがって、蓄電デバイスによれば、外装材の内部の圧力がさらに高まったときに、第1シーラント層と金属端子との間、及び、第2シーラント層と外装材との間ではなく、接着剤層を起点として早期に蓄電デバイスを開封させることが可能となる。従って、蓄電デバイスは、その安全性を高めることができる。
【0039】
なお、本開示において、「融解ピーク」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/minで測定されるDSC曲線に現れる熱流の極大値を示す点をいう。
【0040】
また、本開示において、「融点」とは、融解ピークが1つである場合には、その融解ピークにおける温度をいい、融解ピークが複数存在する場合には、最も低温側の融解ピークにおける温度をいうものとする。
【0041】
さらに、本開示において、「メルトフローレート」(以下、「MFR」と呼ぶ)は、JIS K7210に準じて測定温度230℃の条件で測定される値をいう。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、蓄電デバイスの発熱時において蓄電デバイスを早期に開封させることができる端子用樹脂フィルム、及び、それを用いた蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本実施形態に係る蓄電デバイスを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図である。
【
図3】
図1の端子用樹脂フィルムを示す模式断面図である。
【
図4】
図1に示す外装材の一例を示す断面図である。
【
図5】端子用樹脂フィルムの第1の変形例を示す模式断面図である。
【
図6】端子用樹脂フィルムの第2の変形例を示す模式断面図である。
【
図7】実施例におけるヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0045】
[蓄電デバイス]
図1は、本実施形態に係る蓄電デバイスを示す斜視図、
図2は、
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図、
図3は、
図1の端子用樹脂フィルムを示す模式断面図である。
【0046】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、電解液(図示せず)と、外装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。
【0047】
蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。外装材13は、蓄電デバイス本体11及び電解液を収容するとともに、端子用樹脂フィルム16を介して一対の金属端子14を挟持している。一対の金属端子14は、蓄電デバイス本体11に電気的に接続されており、各金属端子14の一端は外装材13の内側に配置され、他端は外装材13の外側に配置されている。各金属端子14の一部の外周面は端子用樹脂フィルム16によって覆われており(
図2参照)、端子用樹脂フィルム16は外装材13と接着されている。
図1~
図3に示すように、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14に接着される第1シーラント層1と、ポリオレフィン樹脂を含むコア層2と、外装材13に接着される第2シーラント層3とをこの順に有している。コア層2は、ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層2Bを有しており、第1シーラント層1及び第2シーラント層3が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む。第1シーラント層1は接着剤層4を介して絶縁層2Bに接着され、第2シーラント層3は、コア層2の絶縁層2Bに接着されている。そして、接着剤層4は、110℃以下の温度において融解ピークを有し、上記融解ピークにおける温度(以下、「融解ピーク温度」と呼ぶ)が、第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3に含まれるポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低くなっている。
【0048】
この蓄電デバイス10によれば、端子用樹脂フィルム16において、接着剤層4が、110℃以下の温度に融解ピークを有し、融解ピーク温度が第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3に含まれるポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂の融点よりも低くなっている。このため、蓄電デバイス本体11が自らの発熱などによって高温状態になっても、電解液の揮発により外装材13の内部の圧力が高まって蓄電デバイス10が過剰に膨張する前に、第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3よりも先に接着剤層4を融解させて接着剤層4の接着強度を低下させることができる。このとき、第1シーラント層1及び第2シーラント層3が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むため、第1シーラント層1と金属端子14との間の密着性、及び、第2シーラント層3と外装材13との間の密着性が十分に確保される。したがって、蓄電デバイス10によれば、外装材13の内部の圧力がさらに高まったときに、第1シーラント層1と金属端子14との間、及び、第2シーラント層3と外装材13との間ではなく、接着剤層4を起点として早期に蓄電デバイス10を開封させることが可能となる。従って、蓄電デバイス10は、その安全性を高めることができる。
【0049】
以下、外装材13、金属端子14及び端子用樹脂フィルム16について詳細に説明する。
【0050】
[外装材]
図4は、
図1に示す外装材の一例を示す断面図である。
【0051】
図4に示すように、外装材13は、蓄電デバイス本体11側から、内層21と、内層側接着剤層22と、腐食防止処理層23-1と、バリア層24と、腐食防止処理層23-2と、外層側接着剤層25と、外層26と、が順次積層された7層構造である。
【0052】
内層21は、外装材13に対し、ヒートシールによる封止性を付与するシーラント層であり、蓄電デバイス10の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。内層(シーラント層)21の母材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。上記ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等を用いることができる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンを含むことが好ましい。これらポリオレフィン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
内層21は、必要とされる機能に応じて、単層フィルム、又は複数の層を積層させた多層フィルムであってよい。具体的には、防湿性を付与するために、エチレン-環状オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムであってよい。内層21は、各種添加剤(難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでよい。
【0054】
内層21の厚さは、10~150μmであることが好ましく、30~80μmであることがより好ましい。内層21の厚さが10μm以上であることで、外装材13は、外装材13、又は、端子用樹脂フィルム16との間で、充分な密着性を有することが可能となる。また、内層21の厚さが150μm以下であることで、外装材13のコストを抑えることができる。
【0055】
内層側接着剤層22としては、ドライラミネーション用接着剤、酸変性された熱融着性樹脂等の公知の接着剤を適宜選択して用いることができる。
【0056】
図4に示すように、腐食防止処理層23-1、23-2は、バリア層24の両面に形成することが性能上好ましいが、コストを抑える観点から、内層側接着剤層22側に位置するバリア層24の面のみに腐食防止処理層23-1を配置してよい。
【0057】
バリア層24は、導電性を有する金属層であってよい。バリア層24の材料としては、アルミニウム及びステンレス鋼等が挙げられ、コスト、質量(密度)等の観点から、アルミニウムが好ましい。
【0058】
外層側接着剤層25としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等を主剤としたポリウレタン系の接着剤を用いることができる。
【0059】
外層26としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単層膜、及び多層膜であってよい。外層26は、内層21と同様に、各種添加剤(難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでよい。外層26は、電解液の液漏れに備えて電解液に不溶な樹脂をラミネートしたり、電解液に不溶な樹脂成分をコーティングしたりすることで形成される保護層を有してよい。
【0060】
[金属端子]
図1及び
図2に示すように、一対の金属端子14は、金属端子本体14-1と、腐食防止層14-2と、を有する。一対の金属端子本体14-1のうち、一方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が外装材13から露出されている。一対の金属端子本体14-1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。
【0061】
金属端子本体14-1の材料としては、金属を用いることができる。この金属は、蓄電デバイス本体11の構造や蓄電デバイス本体11の各構成要素の材料等を考慮して決めることができる。
【0062】
蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池である場合、正極用集電体としてアルミニウムを用いることができ、負極用集電体として銅を用いることができる。蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池である場合、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料は、アルミニウムであることが好ましい。また、電解液への耐食性の観点から、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料は、1N30等の純度97%以上のアルミニウム素材であることがより好ましい。さらに、金属端子本体14-1を屈曲させる場合には、柔軟性を付加する目的で十分な焼鈍により調質したO材を用いることが好ましい。蓄電デバイス本体11の負極と接続される金属端子本体14-1の材料は、表面にニッケルめっき層が形成された銅、又はニッケルであることが好ましい。
【0063】
金属端子本体14-1の厚さは、リチウムイオン二次電池のサイズや容量に応じて決めることができる。リチウムイオン二次電池が小型である場合、金属端子本体14-1の厚さは、50μm以上であってよい。蓄電、車載用途等の大型のリチウムイオン二次電池の場合、金属端子本体14-1の厚さは、100~500μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0064】
腐食防止層14-2は、金属端子本体14-1の表面を覆うように配置されている。リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF6等の腐食成分が含まれる。腐食防止層14-2は、電解液に含まれるLiPF6等の腐食成分から金属端子本体14-1が腐食されることを抑制するための層である。
【0065】
[端子用樹脂フィルム]
図3に示すように、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14に接着される第1シーラント層1と、コア層2と、外装材13に接着される第2シーラント層3とをこの順に有している。コア層2は、ポリオレフィン樹脂を含む絶縁層2Bを有しており、第1シーラント層1は接着剤層4を介して絶縁層2Bに接着され、第2シーラント層3はコア層2の絶縁層2Bに接着されている。以下、第1シーラント層1及び第2シーラント層3、コア層2並びに接着剤層4について詳細に説明する。
【0066】
(第1シーラント層及び第2シーラント層)
第1シーラント層1及び第2シーラント層3は、第1シーラント層1及び第2シーラント層3に対し、ヒートシールによる封止性を付与する酸変性ポリオレフィン樹脂を有していればよい。この場合、第1シーラント層1及び第2シーラント層3が酸変性ポリオレフィン樹脂を含むため、第1シーラント層1と金属端子14との間の密着性、及び、第2シーラント層3と外装材13との間の密着性が十分に確保される。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸、カルボン酸、スルホン酸及びそれらの誘導体等をグラフト変性させた樹脂が挙げられる。酸変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性であることが、他の変性基の場合よりもヒートシール強度が向上する傾向にあるため好ましい。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;ポリブテン;ポリメチルペンテン;ポリノルボルネン等が挙げられる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール強度及び加工性の観点から、ポリプロピレンを含むことが好ましい。上記酸変性ポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、第1シーラント層1及び第2シーラント層3は、酸変性ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂をさらに含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0067】
ポリオレフィン樹脂の酸による変性率(例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、ヒートシール強度向上の観点から、0.1~20質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。
【0068】
第1シーラント層1及び第2シーラント層3は、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、フィラー、結晶核剤などの樹脂添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、複数の種類がブレンドされていてもよい。
【0069】
第1シーラント層1及び第2シーラント層3に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、接着剤層4の110℃における融解ピーク温度よりも高ければよいが、120℃以上160℃未満であることが好ましく、125~155℃であることがより好ましく、130~150℃であることが更に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が120℃以上であることで、端子用樹脂フィルム16が高温状態となっても、第1シーラント層1及び第2シーラント層3が融解しにくくなり、第1シーラント層1と金属端子14との間のシール性、及び、第2シーラント層3と外装材13とのシール性を保持しやすくすることができる。また、酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が160℃未満であることで、ヒートシール時に酸変性ポリオレフィン樹脂が溶融し易く、ヒートシール強度をより向上できる。
【0070】
第1シーラント層1に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRは、2.0g/10min以上35g/10min未満であることが好ましく、3~20g/10minであることがより好ましく、4~10g/10minであることが特に好ましい。第1シーラント層1に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRが2.0g/10min以上であることで、第1シーラント層1の高温での流動性が高くなるため、端子用樹脂フィルム16を蓄電デバイス10の金属端子14に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層1と金属端子14との隙間を埋め易くすることができる。また、第1シーラント層1に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRが35g/10min未満であることで、端子用樹脂フィルム16を蓄電デバイス10の金属端子14に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層1に含まれる樹脂の流れ出しを抑制することができ、流れ出す第1シーラント層1の樹脂が金属端子14などに付着(仮着)することを抑制できる。
【0071】
第1シーラント層1及び第2シーラント層3の厚さは、10~200μmであることが好ましく、20~150μmであることがより好ましい。第1シーラント層1及び第2シーラント層3の厚さが10μm以上であることで、金属端子14又は外装材13と端子用樹脂フィルム16との密着性をより向上できる。また、第1シーラント層1及び第2シーラント層3の厚さが200μm以下であることで、第1シーラント層1及び第2シーラント層3の加工性や破断強度をより向上させることができる。
【0072】
第1シーラント層1の厚さは、第2シーラント層3の厚さより大きくても、第2シーラント層3の厚さ以下であってもよいが、第2シーラント層3の厚さより大きいことが好ましい。端子用樹脂フィルム16の厚さが同一である場合、第1シーラント層1の厚さが、第2シーラント層3の厚さより大きい方が、端子用樹脂フィルム16を蓄電デバイス10の金属端子14に対してヒートシールする場合に、第1シーラント層1と金属端子14との隙間を埋める樹脂の量を第2シーラント層3よりも多くすることができるため、その隙間をより埋め易くすることができる。
【0073】
第1シーラント層1及び第2シーラント層3はそれぞれ同一の樹脂を含んでいてもよく、異なる樹脂を含んでいてもよい。また、第1シーラント層1及び第2シーラント層3の融点及びMFRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。端子用樹脂フィルム16の加工性及びカール抑制の観点からは、第1シーラント層1及び第2シーラント層3の上述した各構成は全て同一であることが好ましい。
【0074】
(コア層)
コア層2に含まれる絶縁層2Bは、ポリオレフィン樹脂を含む。ポリオレフィン樹脂としては、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;ポリブテン;ポリメチルペンテン;ポリノルボルネン等が挙げられる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ヒートシール強度及び加工性の観点から、ポリプロピレンを含むことが好ましい。
【0075】
絶縁層2Bは、必要に応じて、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、フィラー、結晶核剤などの樹脂添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0076】
絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂の融点は、第1シーラント層1及び第2シーラント層3に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点より高くてもよく、第1シーラント層1及び第2シーラント層3に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点以下であってもよいが、第1シーラント層1及び第2シーラント層に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂3の融点より高いことが好ましい。この場合、端子用樹脂フィルム16に、金属層からなるバリア層24を含む外装材13をヒートシールする際に、絶縁層2Bのシール痩せ(薄層化)を抑制でき、外装材13のバリア層24と金属端子14との間で絶縁性を確保しやすくなる。
【0077】
絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂の融点は、接着剤層4の110℃における融解ピーク温度よりも高ければよいが、130℃以上175℃未満であることが好ましく、135~170℃であることがより好ましく、140~165℃であることが更に好ましい。絶縁層2Bの融点が130℃以上であることで、絶縁層2Bが溶融しにくくなるため、端子用樹脂フィルム16を、蓄電デバイス10の金属端子14と、金属層からなるバリア層24を含む外装材13とで挟んだ状態でヒートシールを行う場合に、絶縁層2Bの薄層化(シール痩せ)を抑制でき、金属端子14と外装材13のバリア層24との間の絶縁性を確保しやすくすることができる。また、絶縁層2Bの融点が175℃未満であることで、ヒートシール時に絶縁樹脂が溶融し易く、ヒートシール強度をより向上できる。
【0078】
絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂のMFRは、第1シーラント層1及び第2シーラント層3のMFRより小さくても第1シーラント層1及び第2シーラント層3のMFR以上であってもよいが、第1シーラント層1及び第2シーラント層3に含まれるポリオレフィン樹脂のMFRより小さいことが好ましい。この場合、端子用樹脂フィルム16に、金属層からなるバリア層24を含む外装材13をヒートシールする際に、絶縁層2Bのシール痩せ(薄層化)を抑制でき、外装材13のバリア層24と金属端子14との間で絶縁性を確保しやすくなる。
【0079】
絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂のMFRは、0.1g/10min以上5g/10min未満であることが好ましく、0.2~4g/10minであることがより好ましく、0.4~3g/10minであることが特に好ましい。絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂のMFRが0.1g/10min以上であることで、絶縁層2Bの加工性を向上させることができるとともに、端子用樹脂フィルム16の破断伸度を向上できる。また、絶縁層2Bに含まれるポリオレフィン樹脂のMFRが5g/10min未満であることで、絶縁層2Bが溶融しにくくなるため、端子用樹脂フィルム16を、蓄電デバイス10の金属端子14と、金属層からなるバリア層24を含む外装材13とで挟んだ状態でヒートシールを行う場合に、絶縁層2Bの薄層化(シール痩せ)を抑制でき、金属端子14と外装材13の金属層からなるバリア層24との間の絶縁性を確保しやすくすることができる。
【0080】
絶縁層2Bの厚さは、10~300μmであることが好ましく、20~250μmであることがより好ましく、30~200μmであることが更に好ましい。絶縁層2Bの厚さが10μm以上であることで、外装材13と端子用樹脂フィルム16との高温条件下での密着性をより向上できる。また、絶縁層2Bの厚さが300μm以下であることで、加工性やフィルムの破断伸度をより向上させることができる。
【0081】
(接着剤層)
接着剤層4は、110℃以下の温度において融解ピークを有する。
【0082】
接着剤層4は、110℃以下の温度において融解ピークを複数有していてもよい。この場合、複数の融解ピークのすべてが110℃以下の温度にあってもよいが、必ずしもその必要はなく、一部の融解ピーク温度のみが110℃以下の温度にあり、残りの融解ピーク温度が110℃を超える温度にあっていてもよい。
【0083】
接着剤層4において、110℃以下の温度において融解ピークを複数有する場合、複数の融解ピークのうち、接着剤層4を構成する接着剤について測定されるDSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピーク(以下、「メイン融解ピーク」と呼ぶことがある)が70℃以上110℃以下の温度に存在することが好ましい。ここで、「DSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピーク」とは、融解ピーク(熱流の極大値を示す点)とベースラインとの間の最短距離が最も大きくなる融解ピークをいう。メイン融解ピークは、75℃以上の温度に存在することがより好ましく、80℃以上の温度に存在することが特に好ましい。メイン融解ピークが70℃以上に存在することで、蓄電デバイス10の耐熱性をより向上させることができる。
【0084】
接着剤層4において110℃以下の温度における融解ピーク温度は、第1シーラント層1、コア層2及び第2シーラント層3の融点よりも低い。ここで、接着剤層4の融解ピーク温度をT(℃)、第1シーラント層1、コア層2及び第2シーラント層3の融点のうち最低の融点をTmin(℃)とした場合、Tmin-Tの値は0℃より大きければ特に制限されるものではないが、加工性を向上させる観点からは、5℃以上であることが好ましく、より確実に接着剤層4で蓄電デバイス10を開封させるとともに加工性をより向上させる観点からは、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。
【0085】
接着剤層4は通常、樹脂と硬化剤とを含む接着剤組成物を用いて形成される層である。樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、接着剤層4の樹脂組成物に用いられる樹脂は、ポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。この場合、第1シーラント層1と接着剤層4との密着性がより向上する。第1シーラント層1が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合には、接着剤層4に用いられる樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。この場合、接着剤層4と第1シーラント層1との密着性がより向上する。
【0087】
硬化剤としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、硬化剤は、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物及びオキサゾリン基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。この場合、第1シーラント層1がコア層2からより剥離しにくくなる。
【0088】
硬化剤は、多官能イソシアネート化合物からなり、多官能イソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種類で構成されることが特に好ましい。この場合、第1シーラント層1がコア層2から特に剥離しにくくなる。
【0089】
ここで、多官能イソシアネート化合物は、ヌレート体、アダクト体及びビューレット体からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。この場合、コア層2からの第1シーラント層1の剥離が効果的に抑制される。
【0090】
端子用樹脂フィルム16は、視認性の向上の観点から、着色剤を含んでもよい。この場合、着色剤は、第1シーラント層1、コア層2、第2シーラント層3、接着剤層4のいずれかの層に含まれればよいが、接着剤層4に含まれることが好ましい。接着剤層4は、接着剤層4以外の層(すなわち第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3)に比べて薄くすることができ、厚さの均一性を向上させることが可能である。このため、接着剤層4に着色剤が含まれる場合には、端子用樹脂フィルム16における色ムラを抑制することができる。
【0091】
着色剤としては、着色顔料及び染料が挙げられる。着色顔料としては、カーボンブラック、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料などが挙げられる。
【0092】
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料などが挙げられる。
【0093】
接着剤層4の厚さは、第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3のうち最も薄い層の1倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましい。この場合、接着剤層4は、第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3に比べて十分に薄くなるため、端子用樹脂フィルム16と金属端子14又は外装材13とをヒートシールする場合でも、接着剤層4に用いられる樹脂の流れ出しが、第1シーラント層1、コア層2の絶縁層2B及び第2シーラント層3に含まれる樹脂に比べて十分に抑制され、接着剤層4に用いられる樹脂が金属端子14などに付着(仮着)することを抑制できる。
【0094】
接着剤層4の厚さは、端子用樹脂フィルム16のヒートシール強度の観点から、1~5μmであることが好ましく、2~4μmであることがより好ましい。
【0095】
端子用樹脂フィルム16の総厚は、200μm以上であることが好ましく、250μm以上であることがより好ましい。端子用樹脂フィルム16の総厚が200μm以上であることで、厚さが大きい金属端子14に対しヒートシールにより端子用樹脂フィルム16を接着させる場合に、金属端子14と端子用樹脂フィルム16との間の隙間を埋めやすくすることができる。端子用樹脂フィルム16の総厚の上限は特に限定されないが、例えば1000μm以下であってよい。
【0096】
[端子用樹脂フィルムの製造方法]
次に、本実施形態に係る端子用樹脂フィルム16の製造方法について説明する。端子用樹脂フィルム16の製造方法は、下記に限定されない。
【0097】
端子用樹脂フィルム16が第1シーラント層1、接着剤層4、絶縁層2B、第2シーラント層3の4層構造を有する場合、絶縁層2B及び第2シーラント層3からなる2層フィルムを事前に製膜した後、接着剤層4を形成するための接着剤組成物を用いて2層フィルムと第1シーラント層1とをドライラミネート法により積層してもよい。
【0098】
事前に製膜する2層フィルムは、Tダイ押出法やインフレーション法などの共押出法を用いて製造することができるが、膜厚安定性の観点から、インフレーション法を用いて製造することが好ましい。
【0099】
端子用樹脂フィルム16の製造方法の一例として、インフレーション法により2層フィルムを事前に製膜した後、接着剤層4を形成するための接着剤組成物を用いて2層フィルムと第1シーラント層1とを積層する方法について説明する。
【0100】
まず、絶縁層2B及び第2シーラント層3の母材を準備する。次いで、絶縁層2B及び第2シーラント層3の母材をインフレーション成型装置に供給する。次いで、インフレーション成型装置の押し出し部から2層構造(絶縁層2B及び第2シーラント層3が積層された構造)となるように、上記2つの母材を押し出しながら、押し出された2層構造の積層体の内側からエア(空気)を供給する。
【0101】
そして、円筒形状にインフレートされた円筒状の2層フィルムを搬送しながら、ガイド部により扁平状に変形させた後、一対のピンチロールにより2層フィルムをシート状に折り畳む。折り畳んだチューブの両端部をスリットし、1対(2条)のフィルムを巻き取りコアにロール状に巻き取ることで、ロール状とされた2層フィルムが製造される。
【0102】
押し出し温度は、130~300℃の範囲内が好ましく、130~250℃がより好ましい。押し出し温度が130℃以上である場合、各層を構成する樹脂が充分に溶融することで、溶融粘度が小さくなるため、スクリューからの押し出しが安定する。押し出し温度が300℃以下である場合、各層を構成する樹脂の酸化や劣化を抑制し、2層フィルムの品質の低下を防ぐことができる。
【0103】
スクリューの回転数、ブロー比、引き取り速度等は、膜厚を考慮して適宜設定することができる。2層フィルムの各層の膜厚比は、各スクリューの回転数を変更する事で調整することができる。
【0104】
次に、得られた2層フィルムに対し、接着剤層4を形成するための接着剤組成物を用いてドライラミネート法により、第1シーラント層1を積層する。
【0105】
具体的には、2層フィルム上に、接着剤組成物を塗布し、乾燥した後、その上に第2シーラント層3を供給して熱圧着した後、エージングを行うことで、端子用樹脂フィルム16を得ることができる。乾燥は、80~140℃で30秒~5分間の条件で行うことができる。また、エージングは、熱圧着後、30~80℃、24時間~240時間の条件で行うことができる。エージングにより、接着剤組成物が硬化されて接着剤層4が形成される。
【0106】
[端子用樹脂フィルムの融着方法]
図3に示した端子用樹脂フィルム16と外装材13とを溶融接着する融着処理について説明する。以下では、
図3に示した端子用樹脂フィルム16の第1シーラント層1を金属端子14側に向け、第2シーラント層3を外装材13側に向けて配置する場合について説明する。
【0107】
融着処理では、加熱による第2シーラント層3の溶融と、加圧による第2シーラント層3と外装材13との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と外装材13とを熱融着させる。
【0108】
融着処理では、端子用樹脂フィルム16と外装材13との充分な密着性及び封止性を得る観点から、第2シーラント層3に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度に加熱することが好ましい。
【0109】
端子用樹脂フィルム16の加熱温度は、例えば、140~170℃であってよい。処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、外装材13との密着性、及び生産性を考慮して決定することができる。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0110】
端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を向上させる観点から、170℃を超える温度で加圧時間を短くして熱融着してよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170℃超230℃以下とすることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒とすることができる。
【0111】
また、
図2を参照して、本実施形態に係る端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱による第1シーラント層1の溶融と、加圧による第1シーラント層1と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させる。
【0112】
融着処理では、端子用樹脂フィルム16と金属端子14との充分な密着性及び封止性を得る観点から、第1シーラント層1に含まれる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度に加熱することが好ましい。
【0113】
端子用樹脂フィルム16の加熱温度は、例えば、140~170℃であってよい。また、処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、金属端子14との密着性、及び生産性を考慮して決定することができる。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0114】
端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を向上させる観点から、170℃を超える温度で加圧時間を短時間にして熱融着してよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170超230℃以下とすることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒とすることができる。
【0115】
以上、本開示の好ましい実施形態について詳述したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0116】
例えば、
図4では、コア層2が、絶縁層2Bのみで構成されているが、
図5に示す端子用樹脂フィルム116のように、コア層2は、絶縁層2Bと、樹脂層2Aとの積層体で構成されてもよい。樹脂層2Aに含まれる樹脂としては、第1シーラント層1及び第2シーラント層3で使用される樹脂と同一のものを使用できる。第1シーラント層1が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、接着剤層4が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤組成物を用いて形成される場合には、樹脂層2Aは、樹脂として、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。この場合、第1シーラント層1、接着剤層4に用いられる接着剤組成物及びコア層2の樹脂層2Aが酸変性ポリオレフィンを含むことで、第1シーラント層1と接着剤層4との密着性がより向上するとともに、樹脂層2Aと接着剤層4との密着性がより向上する。このため、第1シーラント層1がコア層2から剥離しにくくなる。
【0117】
また、コア層2は、
図6に示す端子用樹脂フィルム216のように、コア層2と第2シーラント層3とが接着剤層4を介して接着される場合には、樹脂層2Aが、酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。この場合、第2シーラント層3、接着剤層4及びコア層2の樹脂層2Aが酸変性ポリオレフィンを含むことで、第2シーラント層3と接着剤層4との密着性がより向上するとともに、コア層2の樹脂層2Aと接着剤層4との密着性がより向上する。このため、第2シーラント層3がコア層2から剥離しにくくなる。同様に、第1シーラント層1がコア層2から剥離しにくくなる。なお、端子用樹脂フィルム216のように、接着剤層4が複数存在する場合、複数の接着剤層4はそれぞれ同一の接着剤組成物を用いて形成された層であってもよく、異なる接着剤組成物を用いて形成された層であってもよい。更に、複数の接着剤層4の厚さは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。端子用樹脂フィルム16の加工性及びカール抑制の観点からは、複数の接着剤層4の上述した各構成は全て同一であることが好ましい。
【0118】
また、上記実施形態では、端子用樹脂フィルム16が、リチウムイオン二次電池に適用されているが、リチウムイオン二次電池以外の蓄電デバイス(例えば全固体電池、リチウム空気電池など)にも適用可能である。
【実施例0119】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示を具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
<酸変性ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
第1シーラント層、コア層の樹脂層及び第2シーラント層に用いられる酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)樹脂組成物を、以下のようにして調製した。
すなわち、無水マレイン酸変性PPからなる酸変性PP(商品名「アドマー」、三井化学社製)100質量部に対し、アンチブロッキング剤を2質量部配合することにより酸変性PP樹脂組成物を得た。
【0121】
この酸変性PP樹脂組成物中の酸変性PPについて、DSCにより昇温速度10℃/minで測定したDSC曲線に現れる融解ピーク温度を融点として求めたところ、その融点は表1の「樹脂の物性」に示すとおり140℃であった。また、酸変性PP樹脂組成物中の酸変性PPについて、MFR測定器(東洋精機製作所社製)を用い、測定温度230℃の条件でJIS K7210に準じてMFRを測定したところ、MFRは表1の「樹脂の物性」に示すとおり7.0g/10minであった。
【0122】
<ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
コア層の絶縁層に用いられるポリプロピレン(PP)樹脂組成物を、以下のようにして調製した。
すなわち、PP(商品名「住友ノーブレン」、住友化学社製)100質量部に対し、着色剤を1質量部配合することによりPP樹脂組成物を得た。
【0123】
このPP樹脂組成物中のPPについて、酸変性PP樹脂組成物と同様にして融点を求めたところ、融点は表1の「樹脂の物性」に示すとおり165℃であった。また、PP樹脂組成物中のPPについて、酸変性PP樹脂組成物と同様にしてMFRを測定したところ、MFRは表1の「樹脂の物性」に示すとおり0.5g/10minであった。
【0124】
<接着剤組成物の調製>
(接着剤組成物1)
酸変性PP(商品名「アウローレン」、日本製紙社製)をトルエン中に溶解させ、酸変性PP100質量部に対しヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体(商品名「D-204EA-1」、三井化学社製)10質量部を配合し、接着剤組成物1を得た。
【0125】
この接着剤組成物1について、酸変性PP樹脂組成物と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には2つの融解ピークが現れた。2つの融解ピークの融解ピーク温度はそれぞれ57℃及び82℃であった。これらのうち、DSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピーク(メイン融解ピーク)の融解ピーク温度は82℃であった。
【0126】
(接着剤組成物2)
酸変性PP100質量部に対しヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体を10質量部配合したこと以外は接着剤組成物1と同様にして接着剤組成物2を得た。
【0127】
この接着剤組成物2について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には1つの融解ピークが現れた。その融解ピーク温度は75℃であった。
【0128】
(接着剤組成物3)
酸変性PP100質量部に対し上記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体を10質量部配合したこと以外は接着剤組成物1と同様にして接着剤組成物3を得た。
【0129】
この接着剤組成物3について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には1つの融解ピークが現れた。その融解ピーク温度は100℃であった。
【0130】
(接着剤組成物4)
PP100質量部に対しヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体を10質量部配合したこと以外は接着剤組成物1と同様にして接着剤組成物4を得た。
【0131】
この接着剤組成物4について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には1つの融解ピークが現れた。その融解ピーク温度は82℃であった。
【0132】
(接着剤組成物5)
酸変性PP100質量部に対し上記トルエンジイソシアネート(TDI)のアダクト体(商品名「CAT10L」、東洋モートン株式会社製)を10質量部配合したこと以外は接着剤組成物1と同様にして接着剤組成物5を得た。
【0133】
この接着剤組成物5について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には2つの融解ピークが現れた。2つの融解ピークの融解ピーク温度はそれぞれ57℃及び82℃であった。これらのうち、DSC曲線のベースラインから最も離れた融解ピーク(メイン融解ピーク)の融解ピーク温度は82℃であった。
【0134】
(接着剤組成物6)
ポリエステルポリオール(商品名「TMK55」、東洋モートン社製)に対し、NCO/OH(モル比)が20となるようにトルエンジイソシアネート(TDI)のアダクト体(商品名「CAT10L」、東洋モートン株式会社製)を配合し、接着剤組成物6を得た。
【0135】
この接着剤組成物6について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線において融解ピークは見られなかった。
【0136】
(接着剤組成物7)
酸変性PP100質量部に対し上記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体を10質量部配合したこと以外は接着剤組成物1と同様にして接着剤組成物7を得た。
【0137】
この接着剤組成物7について、接着剤組成物1と同様にしてDSC曲線を測定したところ、DSC曲線には1つの融解ピークが現れた。その融解ピーク温度は115℃であった。
【0138】
(実施例1)
上記酸変性PP樹脂組成物からなるコア層としての樹脂層と、上記PP樹脂組成物からなるコア層としての絶縁層と、上記酸変性PP樹脂組成物からなる第2シーラント層の3層をこの順にインフレーション法により共押し出しして3層フィルムを作製した。各層の厚さは表1に示すとおりである。
【0139】
一方、酸変性PP樹脂組成物からなる第1シーラント層をTダイ法にて作製した。第1シーラント層の厚さは表1に示すとおりである。
【0140】
そして、上記接着剤組成物1をダイレクトグラビア法にて第1シーラント層の上に塗工し、乾燥させた後、上記3層フィルムに対し、上記接着剤組成物1を介して第1シーラント層をラミネートした。続いて、40℃で120時間エージングを行い、接着剤組成物1を硬化させて接着剤層を得た。得られた接着剤層の厚さは表1に示すとおり3μmであった。こうして、端子用樹脂フィルムを得た。
【0141】
(実施例2)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0142】
(実施例3)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0143】
(実施例4)
コア層を絶縁層のみで構成し、第1シーラント層の厚さを表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0144】
(実施例5)
第1シーラント層、コア層の樹脂層、コア層の絶縁層及び第2シーラント層の厚さをそれぞれ表1に示すとおりに変更としたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0145】
(実施例6)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0146】
(実施例7)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物5を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0147】
(比較例1)
コア層を絶縁層のみで構成し、接着剤層を用いずに、第1シーラント層、コア層の絶縁層及び第2シーラント層を共押し出し製膜したこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0148】
(比較例2)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物6を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0149】
(比較例3)
接着剤組成物として、上記接着剤組成物7を用いたこと以外は実施例1と同様にして端子用樹脂フィルムを得た。
【0150】
[早期開封性]
(1)タブの作製
金属端子としては、幅5mm、長さ30mm、厚さ100μmのものを用いた。このとき、金属端子の材質は、正極用についてはアルミニウム、負極用についてはニッケルとした。正負極とも、ノンクロム系表面処理を行った。端子用樹脂フィルムとしては、幅15mm、長さ10mmにカットしたものを用いた。端子用樹脂フィルム/金属端子/端子用樹脂フィルムの順に積層し、融着温度150℃、融着時間10秒にて融着を行った。これにより、正極タブ及び負極タブを得た。
【0151】
(2)電池パックの作製
外装材としてはナイロンフィルム(厚さ25μm)/ポリエステルポリオール系接着剤(厚さ5μm)/アルミニウム箔(厚さ40μm、A8079-O材)/酸変性ポリプロピレン(厚さ30μm)/ポリプロピレン(厚さ40μm)の積層構造を有するものを用いた。アルミニウム箔の両面にはノンクロム系表面処理を行った。外装材のサイズを50mm×90mmとし、長辺で2つ折りとし、幅45mmとなった辺の片側を、正極タブ及び負極タブを挟み込んだ状態でヒートシールを行った。ヒートシールは、190℃にて5秒間行った。残り2箇所のタブの無い辺のヒートシールは190℃、3秒にて行った。まず、折り返した辺の対面のヒートシールを行い、その後、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートの混合液にLiPF6(6フッ化リン酸リチウム)を添加した電解液を2ml充填し、最後にタブの対面のヒートシールを行った。これにより、集電体等の電池要素が封入されていない、タブの評価用の電池パックを作製した。なお、上述した電池パックの作製条件は、実際の電池生産工程の条件よりも加熱温度やヒートシール時間において過酷な条件としたものである。
【0152】
(3)評価
上記のようにして作製した電池パックをオーブンに入れて加熱し、温度が120℃に到達するまでの電池パックの状態を目視にて観察した。そして、下記評価基準に従って端子用樹脂フィルムの早期開封性を評価した。そして、評価が「◎」である場合は合格とし、評価が「×」である場合には不合格とした。結果を表1に示す。なお、評価が「◎」である場合には、電池パックの内圧が上昇した後、端子用樹脂フィルムによって電池パックが早期に開封されたものと判断した。
(評価基準)
◎:電池パックが膨張した後、温度が120℃に到達するまでに電池パックが収縮する
×:電池パックが膨張した後、温度が120℃に到達してもそのままの状態である
【0153】
[密着性]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折り目とは反対側の端部をシールバーにて165℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向に沿った中央部を15mm幅で切り出し(
図7参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。このヒートシール強度測定用サンプルを、水を1500ppm添加した電解液中に85℃の環境に1週間浸漬した。このとき、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1(体積比)の割合で混合してなる混合液にLiPF
6(6フッ化リン酸リチウム)を1.0Mの濃度となるように添加したものを用いた。その後、25℃の環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、アルミニウム箔から端子用樹脂フィルムを剥離するT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて対アルミニウム箔耐熱ヒートシール強度(バースト強度)を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:ヒートシール強度が20N/15mm以上
〇:ヒートシール強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
×:ヒートシール強度が15N/15mm未満
【0154】
[埋込性]
長さ5cm、幅6mm、厚さ200μmの表面処理をされたアルミニウムからなる金属端子を同一の2枚の端子用樹脂フィルムで挟み、165℃/0.6MPaの条件でヒートシールを行ってサンプルを3個用意した。このとき、3個のサンプルはそれぞれ、シール時間を2秒、3秒又は4秒としたものである。そして、サンプルにおいて、金属端子の外周面と端子用樹脂フィルムとの間の隙間が埋め込まれているかについて浸透液としてのレッドチェッカー液(商品名「NEW ミクロチェック浸透液」、イチネンケミカルズ社製)を用いて調べた。具体的には、サンプルをレッドチェッカー液中に10分間浸漬した後、サンプルの金属端子の外周面と端子用樹脂フィルムとの間の隙間が赤くなっているかどうかを目視で調べた。得られた結果から、下記評価基準に基づいて端子用樹脂フィルムの埋込性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:シール時間が2秒で隙間の埋込みができる
〇:シール時間が3秒で隙間の埋込みができる
×:シール時間が4秒でないと隙間の埋込みができない
【0155】
【0156】
表1に示す結果より、実施例1~7の端子用樹脂フィルムは、高温環境下における早期開封性の点で合格であったのに対し、比較例1~3の端子用樹脂フィルムは、高温環境下における早期開封性の点で不合格であった。
したがって、本開示の端子用樹脂フィルムによれば、蓄電デバイスの発熱時において蓄電デバイスを早期に開封させることができることが確認された。
1…第1シーラント層、2…コア層、2A…樹脂層、2B…絶縁層、3…第2シーラント層、4…接着剤層、10…蓄電デバイス、11…蓄電デバイス本体、14…金属端子、16,116,216…端子用樹脂フィルム。