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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165776
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】エアサスペンション用ドライヤ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20221025BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20221025BHJP
   B60G 11/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B01D53/26 230
B01D45/08 Z
B60G11/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071270
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】広沢 和裕
【テーマコード(参考)】
3D301
4D031
4D052
【Fターム(参考)】
3D301DA14
4D031AB02
4D031AB10
4D031BA06
4D031DA05
4D031EA01
4D052AA07
4D052CC08
4D052CC09
(57)【要約】
【課題】設置の自由度が高く省スペースで安価なエアサスペンション用ドライヤを得る。
【解決手段】乾燥剤Sが保持され、外部のエアが流入する開口及び乾燥剤Sによる乾燥処理後のエアを吐出する出口ポート52を備えたハウジング本体Hと、ハウジング本体Hの開口が形成された領域を、内部にチャンバーを形成しつつ覆う蓋部材C1と、を有し、蓋部材C1のうち周縁部の近傍位置に、外部のエアがチャンバーに流入する入口ポート51が形成され、蓋部材C1の内面に、入口ポート51から蓋部材C1のうち反対側に位置する周縁部の近傍に至るエア流通路Rが形成され、エア流通路Rの終端から蓋部材C1の周縁部に沿って反対方向に延出する第1水路11と第2水路21とが形成され、第1水路11の端部に第1排水口12が設けられ、第2水路21の端部に第2排水口22が設けられるエアサスペンション用ドライヤD。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に乾燥剤が保持され、外部のエアが流入する少なくとも一つの開口及び前記乾燥剤による乾燥処理が行われたエアを吐出する出口ポートを備えたハウジング本体と、
前記ハウジング本体の前記少なくとも一つの開口が形成された領域を、内部にチャンバーを形成しつつ覆う蓋部材と、を有し、
前記蓋部材のうち周縁部の近傍位置に、前記外部のエアが前記チャンバーに流入する入口ポートが形成され、前記蓋部材の内面に、前記入口ポートから前記蓋部材のうち反対側に位置する周縁部の近傍に至るエア流通路が形成され、
前記エア流通路の終端から前記蓋部材の周縁部に沿って互いに反対方向に延出する第1水路と第2水路とが形成され、
前記第1水路の端部に第1排水口が設けられ、前記第2水路の端部に第2排水口が設けられているエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項2】
前記エア流通路が、当該エア流通路の延出方向に沿って少なくとも一つの曲り部を備えている請求項1に記載のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項3】
前記エア流通路の延出方向に垂直な断面積が、前記入口ポートから前記エア流通路の終点に至るまで一定に形成されている請求項1または2に記載のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項4】
前記エア流通路が、前記蓋部材に一体形成された溝状部と、当該溝状部を覆うプレートとで、前記チャンバーの内部において閉じた通路として形成され、
前記プレートのうち前記エア流通路の終端に対応する位置にエアの流通孔が一つ形成されている請求項1から3の何れか一項に記載のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項5】
前記プレートの一部が、前記エア流通路のうち前記溝状部の壁部とは異なる位置から突出する第1突起と、前記ハウジング本体から突出する第2突起とによって挟持され、前記プレートが前記溝状部の壁部の縁部に付勢される状態に保持されている請求項4の何れか一項に記載のエアサスペンション用ドライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口ポートから取り入れたエアに含まれる水分の一部を予め除去したのちハウジング本体に保持した乾燥剤にて乾燥処理を行い、得られた乾燥エアを出口ポートからエアサスペンションに供給するエアサスペンション用ドライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなエアサスペンション用ドライヤとしては例えば特許文献1に示すものがある(〔0008〕~〔0011〕及び図1参照)。
【0003】
このエアサスペンション用ドライヤは、筒状のハウジングの軸方向の両端にエアの流入口と流出口を有し、ハウジング内に収容した一対のフィルタ間に乾燥剤が保持されている。流入口から取り入れたエアを乾燥剤によって乾燥させ、流出口から乾燥エアを吐出して車両のエアサスペンションに供給する。
【0004】
乾燥剤の上流側には、フィルタと、このフィルタ及び乾燥剤を支持しつつ乾燥剤にエアを案内する案内部材とが設けられている。案内部材は、流入口から取り入れたエアを一旦受け止める凹状部を中央に備え、その周囲に、凹状部で流通方向が変えられたエアを乾燥剤に流通させる複数の開口を設けた環状部を備えている。この複数の開口の総面積は流入口の開口面積以上に設定してある。
【0005】
本構成によれば、流入口から取り入れたエアを案内部材の凹部に衝突させて水分を分離し、その後、環状部の開口に案内することでエアを効率的に乾燥処理することができる。その結果、当該ドライヤによれば、保持する乾燥剤を大幅に削減することができ、特にハウジングにおける乾燥剤収容部分の軸方向寸法が大幅に短縮できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-16669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のエアサスペンション用ドライヤは、案内部材がドライヤの最下部に位置し、空気の衝突により予め分離された水分は、案内部材の近傍で回収され排出される。尚、この排出に係る構成は明確にされていない。
【0008】
このドライヤは、案内部材を有効に機能させるために、案内部材が最下方に位置する姿勢でのみ使用可能である。よって、仮にドライヤを横向きに設置しようとする場合、予め分離した水分が凹部の下方に位置する開口から乾燥剤の側に流入することとなる。よって、横向き使用する場合には排出流路を別に設ける必要がある。
【0009】
その結果、ドライヤの構成が複雑となり体格が大きくなるため設置場所の自由度が減少し、製造コストが上昇することとなる。
【0010】
このような実情に鑑み、従来から、設置の自由度が高く省スペースで安価なエアサスペンション用ドライヤが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤの特徴構成は、
内部に乾燥剤が保持され、外部のエアが流入する少なくとも一つの開口及び前記乾燥剤による乾燥処理が行われたエアを吐出する出口ポートを備えたハウジング本体と、
前記ハウジング本体の前記少なくとも一つの開口が形成された領域を、内部にチャンバーを形成しつつ覆う蓋部材と、を有し、
前記蓋部材のうち周縁部の近傍位置に、前記外部のエアが前記チャンバーに流入する入口ポートが形成され、前記蓋部材の内面に、前記入口ポートから前記蓋部材のうち反対側に位置する周縁部の近傍に至るエア流通路が形成され、
前記エア流通路の終端から前記蓋部材の周縁部に沿って互いに反対方向に延出する第1水路と第2水路とが形成され、
前記第1水路の端部に第1排水口が設けられ、前記第2水路の端部に第2排水口が設けられている点にある。
【0012】
(効果)
本構成のエアサスペンション用ドライヤは、入口ポートから取り込んだ外部のエアを蓋部材の内面に形成したエア流通路に沿って流通させ、エアに含まれる水分の一部を分離したのち更にエアをハウジング本体に供給して乾燥剤により乾燥処理するものである。
【0013】
本構成の蓋部材には、エア流通路が設けられ、その終端から第1水路及び第2水路が分岐すると共に、夫々の流水路の端部に第1排水口と第2排水口とが各別に設けられている。
【0014】
本構成であれば、エア流通路の端部近傍で分離された水分を蓋部材の外に排出するために、ハウジング本体の姿勢を二つ選択することができる。例えば、エア流通路の延出方向を水平方向に対して下方に45度傾斜させた二姿勢を選択可能となる。夫々の姿勢において、エア流通路から更に下方に第1水路あるいは第2水路が延出することとなり、分離した水分は第1排水口あるいは第2排水口から排出可能である。
【0015】
このように二つの姿勢を選択可能であれば、車両に対するエアサスペンション用ドライヤの配置態様が広がり、種々の車両に対する搭載性が良好となる。
【0016】
また、本構成では、上記エア流通路が蓋部材に形成されているため、構成部材の製造工程やハウジング本体と蓋部材との取付作業が複雑になることがなく、生産性にも優れたエアサスペンション用ドライヤを得ることができる。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤにあっては、前記エア流通路が、当該エア流通路の延出方向に沿って少なくとも一つの曲り部を備えていると好都合である。
【0018】
(効果)
本構成のように、エア流通路が少なくとも一つの曲り部を備えることで、ここを流通するエアがエア流通路の壁部に干渉する機会が増え、水として分離し易くなる。また、曲り部を有することでエア流通路の全長が伸び、水が分離する機会をさらに増やすことができる。これにより、この後の乾燥剤による乾燥処理が効率的なものとなり、より乾燥状態の高いエアを得ることができる。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤにおいては、前記エア流通路の延出方向に垂直な断面積を、前記入口ポートから前記エア流通路の終点に至るまで一定に形成しておくことができる。
【0020】
(効果)
本構成のように、エア流通路の延出方向に垂直な断面積を一定にすることで、エア流通路を流れるエアの流速が一定に維持される。そのため、曲り部等におけるエア流通路の壁部にエアが所定の勢いで干渉し、水の分離作用を高めることができる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤにおいては、前記エア流通路を、前記蓋部材に一体形成された溝状部と、当該溝状部を覆うプレートとで、前記チャンバーの内部において閉じた通路として形成しておき、前記プレートのうち前記エア流通路の終端に対応する位置にエアの流通孔を一つ形成しておくことができる。
【0022】
(効果)
本構成ではプレートを用いてチャンバーの内部に閉じたエア流通路を形成する。このようにエア流通路を仕切るのは、外部から取り込んだエアに含まれる水分を、乾燥剤による乾燥処理に先立って極力多く除去するためである。エア流通路にあっては、エアの流通状態を適宜設定することで水分の抽出量が変化する。具体的には、エア流通路の流路面積や流路長さ、曲がり形状等の設定が重要である。
【0023】
一方、乾燥剤による水分除去では、個々の乾燥剤に対するエアの供給量を分散させるのが効率的であり、乾燥剤の収容部に対する開口を多く形成するのが良い。
【0024】
そこで、本構成のように、蓋部材に一体形成された溝状部にプレートを対向させ、エア流通路を仕切り構成することで、先ず、水分の分離効率を高めている。
【0025】
さらに、エア流通路の端部に流通孔を一つ設けることで、ここから流出したエアが乾燥剤の収容部に連通する少なくとも一つの開口に流通する際のチャンバー内部の流通距離を長く確保することができ、更なる水分の抽出が可能となる。これにより、乾燥剤を用いた水分の除去量を少なくし乾燥処理の効率を高めている。
【0026】
(特徴構成)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤにあっては、前記プレートの一部が、前記エア流通路のうち前記溝状部の壁部とは異なる位置から突出する第1突起と、前記ハウジング本体から突出する第2突起とによって挟持され、前記プレートが前記溝状部の壁部の縁部に付勢される状態に保持されていると好都合である。
【0027】
(効果)
プレートは、エア流通路の溝状部の縁部に当接し、流路としての閉空間を形成する。その際にプレートは、溝状部の壁部に確実に当接してエア流通路の密封性を保持する必要がある。
【0028】
そこで本構成では、溝状部の壁部ではない部分に第1突起を設け、ハウジング本体に設けた第2突起とでプレートを挟持するように構成してある。このとき、例えば第1突起の先端位置が壁部の高さよりも僅かに低くなるように構成することで、第2突起によって押されたプレートが壁部の縁部に付勢当接した状態となる。よって、本構成のエアサスペンション用ドライヤであれば、エア流通路の密封度が高まり、プレートの取付状態が安定したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】エアサスペンション用ドライヤの外観及び設置態様を示す斜視図
図2】第1の実施形態に係るエアサスペンション用ドライヤの構成を示す分解斜視図
図3】第1の実施形態に係るエアサスペンション用ドライヤの構成を示す断面図
図4】第1の実施形態に係るエアサスペンション用ドライヤの構成を示す断面図
図5】第1の実施形態に係るエア流通路の構成を示す分解斜視図
図6】エアサスペンション用ドライヤの取付姿勢を示す説明図
図7】ハウジング本体の開口の別実施形態を示す説明図
図8】ハウジング本体の開口の別実施形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1の実施形態〕
(概要)
本発明に係るエアサスペンション用ドライヤD(以下、「ドライヤD」と称する)の外観を図1(a)(b)に示す。図1では、ドライヤDに付随してエアを取り込むためのモータMが設けられている。ドライヤDの内部には乾燥剤Sが保持され、外部から取り入れたエアに含まれる水分が除去される。その後、乾燥エアがエアサスペンションに供給される。
【0031】
図1(a)(b)には、ドライヤDの姿勢を90度異ならせた状態を示してある。本実施形態のドライヤDは、分離した水を放出する排水口を二つ備えており、所定の角度を選択しつつ設置が可能である。
【0032】
図2及び図3に示すように、このドライヤDは、例えば、円筒状のハウジング本体Hと、このハウジング本体Hの両端に取り付けられる第1カバーC1と第2カバーC2とを備えている。尚、第1カバーC1は、請求項で記載した蓋部材である。図1に示すように、第1カバーC1及び第2カバーC2にはボルト3を締結するためのフランジ31が設けてある。第1カバーC1及び第2カバーC2をハウジング本体Hの両端に位置合わせし、フランジ31に設けられたボルト孔32に締結用のボルト3を挿通した後、第1カバーC1と第2カバーC2とでハウジング本体Hを挟持固定する。
【0033】
これにより、図4に示すように、ハウジング本体Hと第1カバーC1との間には第1チャンバー41が形成され、ハウジング本体Hと第2カバーC2との間には第2チャンバー42が形成される。第1チャンバー41には、取り込んだエアに含まれる水分の一部を抜き取る領域であり、第2チャンバー42は、乾燥剤Sによって乾燥処理したエアを集めてエアサスペンションに供給する領域である。
【0034】
(エア流通路)
図2乃至図4に示すように、第1カバーC1の表面には内部にエアを取り込む入口ポート51が形成され、第1カバーC1の裏面には、入口ポート51から取り込んだエアを流通させるエア流通路Rが形成してある。エア流通路Rは第1カバーC1の裏面に一体的に構成した溝状部6と、当該溝状部6を塞ぐプレートPとでトンネル状に構成される。
【0035】
図2に示すように、エア流通路Rは第1カバーC1の一方の周縁部から他方の周縁部に延出している。このため、第1カバーC1に設けた入口ポート51は、エア流通路Rの端部に位置させるために第1カバーC1の周縁部に位置している。また、エア流通路Rは、延出方向に沿って少なくとも一つの曲り部R1を備えている。本実施形態では、直線状に形成した二つのエア流通路Rの境界位置が曲り部R1となっている。
【0036】
本実施形態のように、エア流通路Rを第1カバーC1の周縁部から他方の周縁部に形成することで、エア流通路Rが極力長く形成される。これにより、エアに含まれる水分は、エア流通路Rを流通する際に溝状部6の壁に当接するなどして抽出が促進される。
【0037】
また、エア流通路Rが少なくとも一つの曲り部R1を備えることで、ここを流通するエアが溝状部6の壁に干渉する機会が増え、水が分離され易くなる。また、曲り部R1を有することでエア流通路Rの全長がさらに伸び、水が分離する機会を増やすことができる。このように、エア流通路Rの曲がり形状や流路長さ、あるいは流路面積の設定等により、この後の乾燥剤Sによる乾燥処理が効率的なものとなり、より乾燥状態の高いエアを得ることができる。
【0038】
溝状部6を覆うプレートPは、図2に示すように例えば略Y字状を呈する。外周部は第1カバーC1の内面に位置決めされ、周辺部の一部には、ハウジング本体Hに形成された凸部23に外挿される位置決め用の孔部P2が形成されている。さらに、エア流通路Rの終端部に該当する位置にエアをハウジング本体Hの側に吐出する流通孔P3が設けてある。
【0039】
流通孔P3の開口面積は、エア流通路Rの流れ方向に垂直な断面積よりもやや小さく構成してある。これにより、流通孔P3から吐出されるエアの流速を高く設定し、ハウジング本体Hの底部40に勢いよく衝突させることで水の分離を促進させている。
【0040】
また、流通孔P3の形状は、例えば図2に示すように楕円形状としてある。これは、流通孔P3を通過する際のエアの圧損を極力少なくするためである。因みに、流通孔P3の形状を真円としても良いが、楕円とすることで、流通孔P3から吐出されたエアが仕切部37の延出方向に沿って流れ易くなる。これにより、仕切部37と接触するエアの流速が高く維持され、更なる水の分離が促進される。
【0041】
本実施形態では、エア流通路Rの端部に流通孔P3を一つ設けてある。本構成であれば、ここから第1チャンバー41に流出したエアが乾燥剤Sの収容部に連通する少なくとも一つの開口33に流通する際に、第1チャンバー41の内部における流通距離を長く確保することができ、更なる水分の抽出が可能となる。これにより、乾燥剤Sを用いた水分の除去量を少なくし乾燥処理の効率を高めている。
【0042】
プレートPは、例えば各種の金属材料で構成する。本実施形態では、金属製のプレートPが有する弾性を利用し、溝状部6の縁部に当接させることでエア流通路Rの密閉度を確保している。具体的には、プレートPの一部が、エア流通路Rのうち溝状部6の壁部とは異なる位置から突出する第1突起15と、ハウジング本体Hから突出する第2突起35とによって挟持されている。
【0043】
第1突起15及び第2突起35は共に棒状の部位であり、夫々の先端面によってプレートPを挟持する。例えば、溝状部6の内部に形成した第1突起15の高さは溝状部6の壁部の高さよりも僅かに低く形成してあり、第2突起35によってプレートPが第1突起15の側に軽く弾性変形した状態で固定される。これにより、プレートPが溝状部6の壁部の縁部に付勢され、エア流通路Rが密閉されたトンネル状に構成される。また、この構成によればプレートPの取付状態が安定したものとなる。
【0044】
尚、プレートPは、金属材料で構成する他に各種の樹脂材料で構成することもできる。エア流通路Rの溝状部6の縁部を確実に封止できるものであれば何れの材料であっても良い。また、溝状部6の縁部とプレートPの間に充填材や接着剤を塗布しても良いし、ゴム材料などの弾性材を介在させても良い。
【0045】
エア流通路Rの延出方向に垂直な断面積は、入口ポート51からエア流通路Rの終点に至るまで一定に形成してある。これにより、エア流通路Rを流れるエアの流速が一定に維持され、曲り部R1等におけるエア流通路Rの壁部にエアが所定の勢いで干渉して水の分離効果が高まる。
【0046】
図5及び図6に示すように、エア流通路Rの端部からは第1カバーC1の周縁部に沿って互いに反対方向に第1水路11と第2水路21(共に波線表示)が形成される。さらに、第1水路11の端部には第1排水口12を設けてあり、第2水路21の端部には第2排水口22が設けてある。
【0047】
具体的には、第1水路11及び第2水路21は、第1カバーC1とハウジング本体Hとを合せることで形成される円弧状の溝である。この溝は図3に示すように、仕切部37とハウジング本体Hの壁部36とで囲まれた凹状空間38に対応する位置に形成される。
【0048】
例えば、図4に示す状態では、エア流通路Rから流通孔P3を介してハウジング本体Hの側に排出されたエアが、ハウジング本体Hの壁部36とハウジング本体Hの端面に立設された仕切部37との間の凹部38に吐出され、ここで水分が分離される。第1カバーC1が図5あるいは図6(a)の状態にあるとき、この水分は、重力によって第1水路11を介して第1排水口12まで流下する。図6(a)に示すように、エア流通路Rを正面から見た場合に、流通孔P3から第1カバーC1の壁部16に沿って形成される第1水路11は、第1カバーC1の中心角にして約45度の領域に設けられている。
【0049】
第1排水口12は、第1水路11の端部として第1カバーC1に設けられた排水凹部17に開口している。この排水凹部17は、第1カバーC1の壁部16の一部を切り欠いたものである。この排水凹部17には、第1カバーC1の壁部16の内部に設けられた壁内流路18が連通しており、壁内流路18は排水バルブVに連通している。排水バルブVは、例えば、通電状態を変えることで任意のタイミングで水をドライヤDの外部に排出することができる。
【0050】
図5及び図6に示すように、流通孔P3の位置から第1水路11とは反対側には第2水路21が延出している。この第2水路21を用いる例を図6(b)に示す。図6(a)および図6(b)は、互いに90度回転した位相状態を示している。第2水路21の端部にも同様に第1カバーC1に排水凹部27が形成され、ここに第2排水口22が設けられている。図6(a)に示すように、エア流通路Rを正面から見た場合に、流通孔P3から第1カバーC1の壁部16に沿って形成される第2水路21も、第1カバーC1の中心角にして約45度の領域に設けられている。
【0051】
また、第2排水口22には壁内流路28が連通され、さらに排水バルブVに通じている。尚、図6(a)に示したように第2排水口22から延出する壁内流路28は、第1排水口12から延出する壁内流路18と合流したのち排水バルブVに連通している。
【0052】
本構成であれば、ドライヤDの設置姿勢に応じて第1水路11あるいは第2水路21を介して排水が可能となる。図6に示すように、ドライヤDの設置姿勢としては約90度異なる二つの姿勢を選択することができ、種々の車両に対する搭載性が向上する。また、排水のための水路が二つあることで、冷間時等の可動の際に一方の水路が氷結している場合でも他方の水路を介して排水が可能であり動作信頼性が向上する。さらには、エア流通路Rが蓋部材である第1カバーC1に一体的に形成されているため、構成部材の製造工程やハウジング本体Hと第1カバーC1との取付作業が複雑になることがない。よって、生産性に優れたドライヤDを得ることができる。
【0053】
(ハウジング本体)
図2及び図3に示すように、本実施形態のハウジング本体Hは一方に開口部39を備えた有底状のカップ形状を有する。このうち底部40は、第1カバーC1に対向する部位である。開口部39からは、例えば、筒状など所定形状の容器に充填された乾燥剤Sが挿入設置される。乾燥剤Sの容器は、例えば、網状のものなどを利用し、容器の内部にエアを流通させることができるようにしてある。図4に示すように、第2カバーC2の側には、複数の孔部を有し容器を押える第3カバーC3を設けておくと良い。尚、この例の他に、ハウジング本体Hの内部に乾燥剤Sを直接投入し、通気孔を備えた仕切部材を第2カバーC2の側に設ける構造であっても良い。
【0054】
図3及び図4に示すように、底部40には、エアが流通可能な複数の開口33が設けてある。この開口33は、例えば、底部40のうち中央付近に配置されるものと、周辺部分に配置されるものとの間で大きさを変更してある。ここでは、周辺部分の開口33を大きくしてある。これは、ハウジング本体Hの壁部36に近い位置ではエアの流通抵抗が高まる傾向があるため、この部位の開口33を大きくして、何れの部位においてもエアの流れを均等化するものである。
【0055】
また、底部40のうち第1カバーC1に対向する面の中央位置には第2突起35を設けてある。これは、第1カバーC1に設けた第1突起15と共にプレートPを挟持する部位である。また、底部40には、プレートPの流通孔P3を通過した後のエアを一旦受け止める仕切部37が突設してある。この仕切部37は、図3に示すように、壁部36の一部と協働して例えば三日月状の凹状空間を形成する。また、仕切部37の底部40からの突出高さは、壁部36の突出高さよりも低く形成してある。
【0056】
これにより、図4に示すように、流通孔P3から吐出されたエアが当該凹状空間にて一旦受け止められバッファ機能が発揮される。その際にエアは仕切部37の延出方向に沿って流れ、その後、仕切部37の各部を乗り越えたエアが夫々の開口33に向けて流通する。このように所定の長さの仕切部37を構成することで、エアを乾燥剤Sの各部に向けて均等に供給することができる。
【0057】
図3に示すように、ハウジング本体Hの開口部39の側の端部には、例えばフランジ部H1が形成される。このフランジ部H1は、第2カバーC2の環状の縁部に当接する。本構成であれば、ハウジング本体Hの構成が極めて簡略なものとなる。尚、この他に、例えば粒状の乾燥剤Sをハウジング本体Hの内部に充填し、充填剤の外径サイズよりも小さな孔部を多数有する封止材を取り付ける構成であっても良い。
【0058】
(第2カバー)
図4に示すように、乾燥剤Sによって乾燥処理がなされたエアは、第2カバーC2の内側に形成される第2チャンバー42に吐出され、さらに、第2カバーC2に設けられた出口ポート52を介してエアサスペンションに供給される。図3及び図4に示すように、出口ポート52は、第2カバーC2の内面の中央部に形成される。
【0059】
また、第2カバーC2には、出口ポート52を囲む状態に環状の壁部71が形成されている。この壁部71の高さは、乾燥剤Sの容器には届かない程度に設定され、乾燥剤Sの容器から流出したエアを壁部71の外部に一旦留めるバッファ効果が発揮される。これにより、乾燥剤Sの特定の部位を流通したエアが優先的に出口ポート52に向かう事態が解消される。つまり、乾燥剤Sの各部を通過したエアが壁部71の外側で混合されて乾燥程度が均一となり、その後エアが壁部71を乗り越えて出口ポート52に流通する。
【0060】
ハウジング本体Hと第1カバーC1及び第2カバーC2とを接続する際には、互いに当接する部材どうしの回転位相を合せるべく、合わせマーク(図示省略)を設けたり、所定の位相で嵌合する凹凸部を振り分け形成しておくと良い。
【0061】
以上の構成を有するドライヤDであれば、エア流通路Rが第1カバーC1に一体的に構成されるため、構造が簡単かつコンパクトになる。また、エア流通路Rからは、二方向に第1水路11と第2水路21が延出するため、ドライヤDを二つの姿勢に設置することができる。この結果、設置の自由度が高く省スペースで安価なエアサスペンション用ドライヤDを得ることができた。
【0062】
〔第2の実施形態〕
図7及び図8(a)(b)に示すように、ハウジング本体Hに形成する開口33の形状は適宜変更可能である。
【0063】
図7は、図2に示す開口33において、開口33の挿通方向がハウジング本体Hの軸心Xの方向に対して傾斜している例である。図7の各開口33は、同じ方向を向いているように見えるが、夫々の開口33の挿通方向は全て異なっており、軸心Xを中心に旋回流が形成されるように構成されている。本構成であれば、開口33を通過したエアが、乾燥剤Sが充填された領域の全体に亘って螺旋を描きながら流通するため、乾燥剤Sの吸湿効果を最大限に引き出すことができる。
【0064】
図8(a)(b)は、複数のスリット状の開口33が底部40の中心から放射状に形成された例である。図8(a)は曲線状の開口33であり、図8(b)は直線状の開口33である。軸心Xを含む平面による断面視において、開口33の壁面は軸心Xに沿って平行なものでもよいし、図7に示した例と同様に軸心Xに対して夫々が傾斜しているものでもよい。傾斜している場合には、開口33を通過したエアが強い旋回流を形成する。
【0065】
また、仮に、開口33の挿通方向が軸心Xと平行であっても緩やかな旋回流が発生する。つまり、底部40の周辺領域を流通するエアは、壁部36との摩擦によって流速が低下するため、底部40の中央付近を流通するエアの流速が相対的に大きくなる。この結果、開口33のうち中央付近の領域から乾燥剤Sの側に流入しようとするエアの向きが壁部36の側に変化する。開口33は、底部40の中心に対して螺旋状に形成されているから、エアは緩やかな螺旋を描きながら乾燥剤Sの領域を流通する。
【0066】
〔第3の実施形態〕
エア流通路Rについては、図示は省略するが、入口ポート51から流通孔P3までの部位を完全なパイプ状の部材で構成しても良い。例えば、各種の金属材料や樹脂材料で構成されたパイプを第1カバーC1の裏面に取り付ける。
【0067】
本構成であれば、プレートPを省略することができ、また、エア流通路Rの途中箇所におけるエアの漏洩が生じない。よって、比較的簡単な構成を維持しつつ、エアの乾燥効果を高めたエアサスペンション用ドライヤDを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のエアサスペンション用ドライヤは、内部に乾燥剤を備え、予めエアの水分を除去したのち乾燥剤によってさらにエアを乾燥させる方式のドライヤに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
11 第1水路
12 第1排水口
15 第1突起
21 第2水路
22 第2排水口
33 開口
35 第2突起
51 入口ポート
52 出口ポート
6 溝状部
C1 蓋部材
D エアサスペンション用ドライヤ
H ハウジング本体
P プレート
P3 流通孔
R エア流通路
R1 曲り部
S 乾燥剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8