(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165784
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】双極型鉛蓄電池、双極型鉛蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/18 20060101AFI20221025BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20221025BHJP
C22C 11/06 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
H01M10/18
H01M4/68 A
C22C11/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071283
(22)【出願日】2021-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英明
(72)【発明者】
【氏名】田井中 亮
(72)【発明者】
【氏名】中北 直規
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017AS03
5H017AS10
5H017CC01
5H017EE02
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH10
5H028AA05
5H028BB05
5H028CC01
5H028CC08
5H028CC20
5H028EE01
5H028HH01
5H028HH03
5H028HH06
5H028HH08
5H028HH10
(57)【要約】
【課題】コストの大幅な増加を招くことなく、長期運用にも耐えられる寿命性能と高い容量性能とが両立した双極型鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】正極用集電板111a,111aaは鉛合金シートからなり、合金シートの試験片を温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、試験片の全表面積当たりの質量減少量が100mg/cm
2以下であり、セル部材110の正極111の側および負極112の側の両方を覆う基板121の一面に配置された正極用集電板111aの厚さは0.10mm以上0.50mm以下であり、双極型鉛蓄電池100の定格容量B(Ah)に対する正極用集電板111aの体積A(cm
3)の比(A/B)は0.11以上0.67以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、複数のセル部材と、
前記複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、複数の空間形成部材と、
を有し、
前記空間形成部材は、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含み、
前記セル部材と前記空間形成部材の前記基板とが交互に積層された状態で配置され、
前記複数のセル部材が直列に電気的に接続され、隣接する前記枠体が接合されている双極型鉛蓄電池であって、
前記正極用集電板は鉛合金シートからなり、前記合金シートの試験片を温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、前記試験片の全表面積当たりの質量減少量は100mg/cm2以下であり、
前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の両方を覆う前記基板の一面に配置された前記正極用集電板の厚さは0.10mm以上0.50mm以下であり、
当該双極型鉛蓄電池の定格容量B(Ah)に対する前記一面に配置された前記正極用集電板の体積A(cm3)の比(A/B)は0.11以上0.67以下である双極型鉛蓄電池。
【請求項2】
充電量が定格容量の100%を超えない状態で使用される請求項1記載の双極型鉛蓄電池。
【請求項3】
双極型鉛蓄電池の製造方法であって、
当該双極型鉛蓄電池は、
正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、複数のセル部材と、
前記複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、複数の空間形成部材と、
を有し、
前記空間形成部材は、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含み、
前記セル部材と前記空間形成部材の前記基板とが交互に積層された状態で配置され、
前記複数のセル部材が直列に電気的に接続され、隣接する前記枠体が接合されたものであり、
前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の両方を覆う前記基板の一面に配置する前記正極用集電板として、
厚さが0.10mm以上0.50mm以下の鉛合金シートを使用し、前記合金シートの試験片を温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、前記試験片の全表面積当たりの質量減少量は100mg/cm2以下であり、
前記一面に配置する前記正極用集電板の体積A(cm3)を、当該双極型鉛蓄電池の定格容量B(Ah)に対する比(A/B)が0.11以上0.67以下となるように設定する双極型鉛蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型(バイポーラ型)鉛蓄電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載された双極型鉛蓄電池が知られている。
【0003】
この双極型鉛蓄電池は、額縁形で樹脂製のフレームの内側に、樹脂製の基板が取り付けられている。基板の両面には鉛層が配置されている。基板の一面の鉛層には、正極用活物質層が隣接し、他面の鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形で樹脂製のスペーサを有し、その内側には、電解液を含浸させたガラスマットが配設されている。そして、フレームとスペーサとを交互に複数積層し、フレームとスペーサとの間が接着剤等で接着されている。また、基板に設けた貫通穴を介して、基板の両面の鉛層が接続されている。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載された双極型鉛蓄電池は、正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータ(ガラスマット)を備え、間隔を開けて積層配置された、複数のセル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、複数の空間形成部材と、を有している。また、空間形成部材は、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体(二極式プレートおよび端部プレートの枠部とスペーサ)と、を含んでいる。また、セル部材と空間形成部材の基板とが交互に積層状態で配置され、セル部材同士が直列に電気的に接続され、隣接する枠体同士が接合されている。
【0005】
そして、特許文献1には、基板の両面に配置される鉛層として鉛箔を使用することが記載されているが、鉛箔として具体的にどのような組成のものを使用するかについては記載されていない。
【0006】
一般的な鉛蓄電池の集電板用鉛合金の組成に関しては、例えば特許文献2に以下の記載がある。初期の鉛-カルシウム合金は、通常、比較的高い含有率(たとえば、0.08%以上)のカルシウムおよび比較的低い含有率(たとえば、0.35-0.5%)の錫を含んでいるために、これらの合金から生産される正極格子は、急速に硬化し、容易にハンドリングされて板にペーストされ得る利点があるが、Sn3Ca析出物の上に形成されるPb3Ca析出物が合金を硬化させる傾向があり、高温用途における正極格子の腐食および成長の増加をもたらす傾向がある。また、格子用合金として一般に利用されるカルシウムの含有率が非常に低い(0.02-0.05%)鉛合金は、非常に軟質で、ハンドリングするのが難しく、非常にゆっくり硬化する。そして、カルシウム含有率が非常に低い鉛合金は、通常、比較的低い量の錫および比較的高い量の銀を含有し、これらの合金は、耐腐食性が高い傾向があるが、これらの合金には、ハンドリングしにくい問題や薄い集電板(集電シート)にするための特別な処置を必要とする問題がある。
【0007】
また、特許文献3には、合金組成が、Ca0.03~0.09重量%、Sn1.05~1.50重量%、残部鉛から成る格子基板に正極活物質を充填して正極板とし、これを電池として使用した場合、その格子基板の腐食量が20%以下に抑制されることが記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、0.5質量%~2.0質量%のAgを含み、0.25質量%~6.0質量%のSnを含み、残部がPbからなる鉛合金を圧延して構成した蓄電池用圧延鉛合金が記載されている。そして、この圧延鉛合金は、0.001質量%程度のCaを含有することはあるが、従来の蓄電池用Pb-Ca合金のように0.03質量%~0.1質量%程度のCaを含むものではない。さらに、この圧延鉛合金は、従来のPb-Ca系の圧延鉛合金と同様、酸化によって表面に均一な厚みを有する腐食層が形成するものの、従来のPb-Ca系合金と比較して腐食量を顕著に低減でき、蓄電池の正極集電体用鉛合金として好適である、と記載されている。
【0009】
また、特許文献3および4に記載された合金からなるシートは「鉛合金シートの試験片を、温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、試験片の全表面積当たりの質量減少量が100mg/cm2以下である、鉛合金シート」である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6124894号公報
【特許文献2】特許第5399272号公報
【特許文献3】特許第3035177号公報
【特許文献4】特開2003-346811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
鉛蓄電池の劣化原因の一つに、正極用集電板の腐食がある。電池使用期間が長くなるほど、正極用集電板の腐食は進行し、腐食が進むと活物質の保持ができなくなり、電池としての性能が低下してしまう。それだけでなく、腐食によって脱落した正極用集電板が負極に接してしまった場合、短絡の可能性もある。
【0012】
特に、バイポーラ型鉛蓄電池の場合、電流分布が面での反応となるため、電荷移動抵抗を考慮する必要がなく、集電板を薄くすることが可能であるが、正極と負極との距離が近いため、正極用集電板の腐食が多いと致命的な欠陥が生じる恐れがあることから、正極用集電板の腐食を抑制する必要がある。
【0013】
一方、蓄電システムに使用する鉛蓄電池は、長期間(例えば、15年間)の運用に耐える寿命性能を有している必要があるが、電池を使用し続けることで正極鉛箔が腐食し、電池が寿命となってしまうことがある。また、蓄電システムに使用する鉛蓄電池は、電池容量が高いものである必要があるため、高い寿命性能と高い容量性能が両立したものであることが求められる。また、蓄電池の価格は、蓄電システムの価格に占める割合が大きいため、コストを低減することも求められる。
【0014】
本発明の課題は、コストの大幅な増加を招くことなく、長期運用にも耐えられる寿命性能と高い容量性能とが両立した双極型鉛蓄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した課題を解決するための本発明の第一態様は、以下の構成(1)~(4)を有する双極型鉛蓄電池である。
(1)正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、複数のセル部材と、前記複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、複数の空間形成部材と、を有する。
(2)前記空間形成部材は、前記セル部材の前記正極側および前記負極側の両方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む。前記セル部材と前記空間形成部材の前記基板とが交互に積層された状態で配置されている。隣接する前記枠体が接合されている。
(3)前記正極用集電板は鉛合金シートからなり、前記合金シートの試験片を温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、前記試験片の全表面積当たりの質量減少量が100mg/cm2以下である鉛合金シートからなる。
(4)前記正極用集電板の厚さは0.10mm以上0.50mm以下であり、当該双極型鉛蓄電池の定格容量B(Ah)に対する前記正極用集電板の体積A(cm3)の比(A/B)は0.11以上0.67以下である。
【0016】
本発明の第二態様は、上記構成(1)(2)を有する双極型鉛蓄電池の製造方法であって、以下の(5)(6)を有する。
(5)前記正極用集電板として、厚さが0.10mm以上0.50mm以下の鉛合金シートを使用する。前記合金シートの試験片を温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、前記試験片の全表面積当たりの質量減少量は100mg/cm2以下である。
(6)前記正極用集電板の体積A(cm3)を、当該双極型鉛蓄電池の定格容量B(Ah)に対する比(A/B)が0.11以上0.67以下となるように設定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の双極型鉛蓄電池および本発明の方法で得られた双極型鉛蓄電池によれば、コストの大幅な増加を招くことなく、長期運用にも耐えられる寿命性能と高い容量性能とが両立した双極型鉛蓄電池となることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態である双極型鉛蓄電池の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
〔全体構成〕
先ず、この実施形態の双極(バイポーラ)型鉛蓄電池の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイプレート(空間形成部材)120と、第一のエンドプレート(空間形成部材)130と、第二のエンドプレート(空間形成部材)140を有する。
図1ではセル部材110が三個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0021】
セル部材110の積層方向をZ方向(
図1及び
図2の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向をX方向とする。
【0022】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。セパレータ113には電解液が含浸されている。正極111は、正極用鉛箔(正極用集電板)111a,111aaと正極用活物質層111bを有する。負極112は負極用鉛箔(負極用集電板)112a,112aaと負極用活物質層112bを有する。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a,111aa、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112a,112aaは、この順に積層されている。
【0023】
Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0024】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイプレート120の基板121が配置されている。つまり、複数のセル部材110は、バイプレート120の基板121を間に挟んだ状態で積層されている。
【0025】
複数枚のバイプレート120と第一のエンドプレート130と第二のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための部材である。
【0026】
図2に示すように、バイプレート120は、平面形状が長方形の基板121と、基板121の四つの端面を覆う枠体122と、基板121の両面から垂直に突出する柱部123とからなり、基板121と枠体122と柱部123は一体に合成樹脂で形成されている。なお、基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0027】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層することにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0028】
正極用鉛箔111a,111aa、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a,112aa、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0029】
バイプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一面に第一の凹部121bが、他面に第二の凹部121cが形成されている。第一の凹部121bの深さは第二の凹部121cの深さより深い。第一の凹部121bおよび第二の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0030】
バイプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。バイプレート120の基板121は、セル部材110の正極111の側と、その隣のセル部材110の負極112の側と、の両方を覆う基板である。バイプレート120の基板121の第一の凹部121bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤層150を介して配置されている。
【0031】
また、バイプレート120の基板121の第二の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤層150を介して配置されている。
【0032】
バイプレート120の基板121の貫通穴121aに導通体160が配置され、導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、結合されている。つまり、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0033】
図1に示すように、第一のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133とからなる。基板131の平面形状は長方形であり、基板131の四つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に合成樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイプレート120の柱部123に対応させる。
【0034】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、最も外側(正極側)に配置されるバイプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層することにより、バイプレート120の基板121と第一のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイプレート120の柱部123と第一のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0035】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111aa、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0036】
第一のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向の寸法は、正極用鉛箔111aaのX方向の寸法に対応させてある。第一のエンドプレート130の基板131の一面に配置された正極用鉛箔111aaのZ方向の寸法は、バイプレート120の基板121の一面に配置された正極用鉛箔111aのZ方向の寸法よりも大きい。
【0037】
第一のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aaが接着剤層150を介して配置されている。
【0038】
また、第一のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aaと電気的に接続された正極端子を備えている。
【0039】
第二のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143とからなる。基板141の平面形状は長方形であり、基板141の四つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に合成樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイプレート120の柱部123に対応させる。
【0040】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、最も外側(負極側)に配置されるバイプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層することにより、バイプレート120の基板121と第二のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイプレート120の柱部123と第二のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0041】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112aa、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0042】
第二のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aaのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。第二のエンドプレート140の基板141の一面に配置された負極用鉛箔112aaのZ方向の寸法は、バイプレート120の基板121の他面に配置された負極用鉛箔112aのZ方向の寸法よりも大きい。
【0043】
第二のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aaが接着剤層150を介して配置されている。
【0044】
また、第二のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aaと電気的に接続された負極端子を備えている。
【0045】
なお、上記説明から分かるように、バイプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆う基板121と、セル部材110の側面を囲う枠体122と、を含む空間形成部材である。第一のエンドプレート130は、セル部材110の正極側のみ(正極側および負極側の一方)を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。第二のエンドプレート140は、セル部材110の負極側のみ(正極側および負極側の一方)を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。つまり、基板121,131,141は、セル部材110の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板であり、基板121はセル部材110の正極の側および負極の側の両方を覆う基板である。
〔集電板の構成〕
バイプレート120の基板121の凹部121bに配置される正極用鉛箔(基板121の一面に配置される正極用集電板)111aの厚さは0.10mm以上0.50mm以下であり、正極用鉛箔111aの体積A(cm3)と双極型鉛蓄電池100の定格容量B(Ah)との比(A/B)が0.11以上0.67以下である。
【0046】
また、正極用鉛箔111aは、錫(Sn)の含有率が1.0質量%以上2.0質量%未満であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.005質量%以上0.020質量%未満であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金からなる圧延シートまたは鋳造シートの非熱処理材で形成されている。
【0047】
また、正極用鉛箔111aの試験片を、温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、試験片の全表面積当たりの質量減少量は、100mg/cm2以下である。
【0048】
第一のエンドプレート130の凹部131bに配置される正極用鉛箔(正極用集電板)111aaは、厚さが0.5mm以上1.5mm以下であり、錫(Sn)の含有率が1.0質量%以上2.0質量%未満であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.005質量%以上.020質量%未満であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金からなる圧延シートまたは鋳造シートの非熱処理材で形成されている。
【0049】
バイプレート120の基板121の凹部121cに配置される負極用鉛箔(基板121の他面に配置される負極用集電板)121aの厚さは0.05mm以上0.3mm以下である。負極用鉛箔112aをなす合金は、例えば、錫(Sn)の含有率が0.5質量%以上2質量%以下の鉛合金である。
【0050】
第二のエンドプレート140の凹部141bに配置される負極用鉛箔(負極用集電板)112aaは、厚さが0.5mm以上1.5mm以下であり、負極用鉛箔112aaをなす合金は、例えば、錫(Sn)の含有率が0.5質量%以上2質量%以下の鉛合金である。
〔作用、効果〕
実施形態の双極型鉛蓄電池100では、バイプレート120の凹部121bに配置される正極用鉛箔(バイプレート120の基板121の一面に配置される正極用集電板)111aの厚さが0.10mm以上0.50mm以下であり、正極用鉛箔111aの体積A(cm3)と双極型鉛蓄電池100の定格容量B(Ah)との比(A/B)が0.11以上0.67以下である。また、正極用鉛箔111a,111aaの試験片を、温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、試験片の全表面積当たりの質量減少量は、100mg/cm2以下である。これにより、双極型鉛蓄電池100は、コストの大幅な増加を招くことなく、長期運用にも耐えられる高い寿命性能と高い容量性能とが両立したものとなる。
【0051】
比(A/B)が0.11未満であると、正極用鉛箔111aが腐食し易くなって長期運用には耐えられない。一方、比(A/B)が0.67を超えるほど大きい場合には、正極用鉛箔111aの体積が極端に大きくなることで、材料コストが高くつくとともに、セル室Cの体積を大きくしない限り、セル室Cに入れられる電解液の量が減るため、電池容量が低下する可能性がある。
【0052】
実施形態の双極型鉛蓄電池100は、充電量が定格容量の100%を超えない(例えば、99%以下、95%以下、20%以上99%以下、25%以上95%以下となる)状態で使用(運用)されることが好ましい。このような部分充電状態(PSOC:Partial State of Charge)での運用は充電効率が高く、正極用鉛箔111aの腐食が抑制される。つまり、実施形態の双極型鉛蓄電池100は、蓄電システム用の鉛蓄電池として好適である。
【0053】
「正極用鉛箔の試験片を、温度が60℃に保持された濃度38質量%の硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位で28日間連続の陽極酸化を行った後の、試験片の全表面積当たりの質量減少量が100mg/cm2以下である正極用鉛箔」は、例えば、錫(Sn)の含有率が1.0質量%以上2.0質量%未満であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.005質量%以上0.020質量%未満であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金を圧延または鋳造によりシート状にし、熱処理を行わない方法で製造することができる。
【実施例0054】
[正極用集電板の準備]
〔圧延シートおよび鋳造シートの製造〕
下記の合金A~合金Eからなり厚さが0.30mmである圧延シートおよび鋳造シートと、下記の合金Cからなり厚さが0.09mm、0.10mm、0.50mm、0.60mmである圧延シートを、以下の方法で製造した。
【0055】
圧延シートの製法:鉛合金スラブを、多段圧延機により所定厚みになるまで圧延した後、所定の寸法に打ち抜くことで圧延シートを作製した。
【0056】
鋳造シートの製法:所定寸法および厚みの鋳型を作製し、溶融させた鉛合金を鋳型に流し込み、冷却後に鋳型から取り出すことで、鋳造シートを作製した。
<合金A>
錫(Sn)の含有率が1.6質量%であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.038質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金。
<合金B>
錫(Sn)の含有率が1.6質量%であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.016質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金。
<合金C>
錫(Sn)の含有率が1.6質量%であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.010質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金。
<合金D>
錫(Sn)の含有率が0.8質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金。
<合金E>
錫(Sn)の含有率が1.6質量%であり、カルシウム(Ca)の含有率が0.026質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金。
【0057】
〔各正極用集電板の切り出し〕
<サンプルNo.1~No.6>
上記合金A~合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートおよび鋳造シートを、長辺が26.7cm、短辺が25.0cm(つまり、面積が667.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.1~No.6の正極用集電板とした。これらの正極用集電板の体積は20cm3である。
<サンプルNo.7~No.10>
上記合金Dまたは合金Eからなり、厚さが0.30mmである圧延シートおよび鋳造シートを、長辺が35.0cm、短辺が28.6cm(つまり、面積が1001.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.7~No.10の正極用集電板とした。これらの正極用集電板の体積は30cm3である。
<サンプルNo.11>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が17.8cm(つまり、面積が445.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.11の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は4cm3である。
<サンプルNo.12>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が22.2cm(つまり、面積が555.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.12の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は5cm3である。
<サンプルNo.13>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が35.0cmで短辺が31.7cm(つまり、面積が1109.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.13の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は10cm3である。
<サンプルNo.14>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が50.0cmで短辺が44.4cm(つまり、面積が2220.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.14の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は20cm3である。
<サンプルNo.15>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が60.0cmで短辺が55.6cm(つまり、面積が3336.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.15の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は30cm3である。
【0058】
<サンプルNo.16>
上記合金Cからなり、厚さが0.09mmである圧延シートを、長辺が60.0cmで短辺が59.3cm(つまり、面積が3558.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.16の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は32cm3である。
<サンプルNo.17>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が16.0cm(つまり、面積が400.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.17の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は4cm3である。
<サンプルNo.18>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が20.0cm(つまり、面積が500.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.18の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は5cm3である。
<サンプルNo.19>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が35.0cmで短辺が28.6cm(つまり、面積が1001.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.19の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は10cm3である。
<サンプルNo.20>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が50.0cmで短辺が40.0cm(つまり、面積が2000.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.20の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は20cm3である。
【0059】
<サンプルNo.21>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が60.0cmで短辺が50.0cm(つまり、面積が3000.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.21の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は30cm3である。
<サンプルNo.22>
上記合金Cからなり、厚さが0.10mmである圧延シートを、長辺が60.0cmで短辺が53.3cm(つまり、面積が3198.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.22の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は32cm3である。
<サンプルNo.23>
上記合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートを、長辺が15.0cmで短辺が8.9cm(つまり、面積が133.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.23の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は4cm3である。
<サンプルNo.24>
上記合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートを、長辺が15.0cmで短辺が11.1cm(つまり、面積が166.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.24の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は5cm3である。
<サンプルNo.25>
上記合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートを、長辺が20.0cmで短辺が16.7cm(つまり、面積が334.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.25の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は10cm3である。
【0060】
<サンプルNo.26>
上記合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートを、長辺が35.0cmで短辺が28.6cm(つまり、面積が1001.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.26の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は30cm3である。
<サンプルNo.27>
上記合金Cからなり、厚さが0.30mmである圧延シートを、長辺が35.0cmで短辺が30.5cm(つまり、面積が1067.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.27の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は32cm3である。
<サンプルNo.28>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が10.0cmで短辺が8.0cm(つまり、面積が80.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.28の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は4cm3である。
<サンプルNo.29>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が11.0cmで短辺が9.1cm(つまり、面積が100.1cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.29の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は5cm3である。
<サンプルNo.30>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が15.0cmで短辺が13.3cm(つまり、面積が199.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.30の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は10cm3である。
【0061】
<サンプルNo.31>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が16.0cm(つまり、面積が400.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.31の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は20cm3である。
<サンプルNo.32>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が30.0cmで短辺が20.0cm(つまり、面積が600.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.32の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は30cm3である。
<サンプルNo.33>
上記合金Cからなり、厚さが0.50mmである圧延シートを、長辺が30.0cmで短辺が21.3cm(つまり、面積が639.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.33の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は32cm3である。
<サンプルNo.34>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が10.0cmで短辺が6.7cm(つまり、面積が67.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.34の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は4cm3である。
<サンプルNo.35>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が11.0cmで短辺が7.6cm(つまり、面積が83.6cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.35の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は5cm3である。
【0062】
<サンプルNo.36>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が15.0cmで短辺が11.1cm(つまり、面積が166.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.36の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は10cm3である。
<サンプルNo.37>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が20.0cmで短辺が16.7cm(つまり、面積が334.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.37の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は20cm3である。
<サンプルNo.38>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が20.0cm(つまり、面積が500.0cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.38の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は30cm3である。
<サンプルNo.39>
上記合金Cからなり、厚さが0.60mmである圧延シートを、長辺が25.0cmで短辺が21.3cm(つまり、面積が532.5cm2)である長方形のシートに切り出して、サンプルNo.39の正極用集電板とした。この正極用集電板の体積は32cm3である。
【0063】
[腐食量の測定]
下記の合金A~合金Eからなり、厚さが0.30mmである圧延シートおよび鋳造シートを、幅15mm、長さ70mmの試験片に切断して、濃度38質量%(比重1.28)の60℃硫酸に入れ、水銀/硫酸水銀参照極に対して1350mVの定電位(vs:Hg/Hg
2SO
4)で28日間連続の陽極酸化を行った後、生成酸化物を除去した。そして、試験前後に質量を測定し、その値から試験による質量の減少量を算出し、試験片の全表面積当たりの質量減少量を腐食量(mg/cm
2)とした。
[双極型鉛蓄電池の組み立て]
サンプルNo.1~No.39の各正極用集電板を正極用鉛箔111aとして用い、
図1に示す構造を有し、定格容量が45AhとなるようにNo.1~No.39の双極型鉛蓄電池を組み立てた。正極用鉛箔111aaとしては、サンプル毎に、正極用鉛箔111aと同じ合金を用い同じ製法により得られ、正極用鉛箔111aと同じ長方形で、厚さが1.50mmであるシートを使用した。正極用鉛箔111a,111aa以外は、全てのサンプルで同じ構成とした。
【0064】
負極用鉛箔112aとしては、錫(Sn)の含有率が1.6質量%であり、残部が鉛(Pb)と不可避的不純物である鉛合金からなる圧延シートであって、厚さが1.0mmであるシートを使用した。負極用鉛箔112aaとしては、厚さが1.50mmで異なる以外は負極用鉛箔112aと同じ圧延シートを使用した。
【0065】
正極用活物質層111bおよび負極用活物質層112bは鉛化合物からなるもの、セパレータ113はガラス繊維からなるものであって、それぞれ定格容量45Ahに対応させた厚さのものを使用した。
[容量試験]
No.1~No.39の各双極型鉛蓄電池を、水温が25℃±2℃に制御された水槽内に置き、電池の端子電圧が1.8V/セルに低下するまで、定格容量(45Ah)の10時間率電流(4.5A)で放電し、放電持続時間を記録し、放電電流と放電持続時間から10時間率容量を計算した。
[寿命試験]
先ず、電池を満充電状態にした。次に、下記の(1)と(2)を繰り返し、電池の端子電圧が1.8V/セルに低下するまでのサイクル数を調べて、そのサイクル数を寿命とした。
(1)定格容量(45Ah)の10時間率電流(4.5A)で7時間放電する。つまり、定格容量に対してDOD70%の放電を行う。
(2)CC-CV充電を実施する。具体的には、定格容量(45Ah)の10時間率電流(4.5A)で充電し、電池の端子電圧が2.45V/セルに到達したら、定電圧充電を行う。この充電は、放電電気量に対して充電電気量が104%になるまで行う。
[性能評価、判定]
容量試験については、10時間率容量(Ah)が定格容量以上となっていれば容量性能が良好である(〇)と判定し、定格容量未満であれば不良である(×)と判定した。
【0066】
寿命については、上述の寿命試験で寿命が4500サイクル以上であれば、長期運用に耐える寿命性能を有している(〇)と判定し、4500サイクル未満であれば長期運用に耐えられない(×)と判定した。
【0067】
そして、容量性能が良好で、長期運用に耐える寿命性能を有していれば、総合評価で合格(〇)と判定した。
【0068】
これらの結果を各鉛合金シートの構成とともに表1、表2に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
表1の結果から、正極用鉛箔111aの厚さが0.30mmで、定格容量が45Ahで、A/Bが0.44または0.67のとき、正極用鉛箔111aの腐食量が90mg/cm2以下であれば、良好な容量性能と長期運用に耐える寿命性能の両方が達成できることが分かる。
【0072】
表2の結果から、正極用鉛箔111aの腐食量が30mg/cm2で、定格容量が45Ahで、A/Bが0.11以上0.67以下のとき、正極用鉛箔111aの厚さが0.10mm以上0.50mm以下であれば、良好な容量性能と長期運用に耐える寿命性能の両方が達成できることが分かる。