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特開2022-165795自動二輪車用タイヤ及びタイヤセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165795
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ及びタイヤセット
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/03 C
B60C11/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071303
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】一柳 豊
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB06
3D131BC13
3D131BC20
3D131BC31
3D131BC33
3D131BC35
3D131CB05
3D131CB07
3D131EA08U
3D131EB03U
3D131EB18V
3D131EB20V
3D131EB27V
3D131EB28V
3D131EB66U
3D131EB68U
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】 排水性と耐久性とを両立し得る自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】 タイヤ軸方向に分割される一対の金型を用いて製造された自動二輪車用タイヤ1である。自動二輪車用タイヤ1は、複数の溝3が形成されたトレッド部2を有している。トレッド部2には、溝3に交差しない位置に一対の金型の割位置Pが設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ軸方向に分割される一対の金型を用いて製造された自動二輪車用タイヤであって、
複数の溝が形成されたトレッド部を有し、
前記トレッド部には、前記溝に交差しない位置に一対の前記金型の割位置が設けられる、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記割位置に最も近い前記溝の溝壁と前記割位置との間のタイヤ軸方向の距離は、1~10mmである、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記溝は、タイヤ赤道を挟んで、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びる一対の傾斜溝を含む、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
タイヤの回転方向が指定されており、
前記傾斜溝のタイヤ赤道からの距離は、前記回転方向の先着側から後着側にかけて徐々に大きくなる、請求項3に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記傾斜溝のタイヤ周方向に対する角度は、前記回転方向の先着側が後着側よりも小さい、請求項4に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
最も長い前記傾斜溝のタイヤ軸方向の長さは、トレッド半幅の50%以上である、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
一対の前記傾斜溝が、タイヤ周方向に15~29対形成される、請求項3ないし6のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記溝は、タイヤ赤道上でタイヤ周方向に延びる周方向溝を含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記周方向溝は、タイヤ赤道の一方側及び他方側に配される屈曲部と、前記屈曲部を連結する連結部とを含んでジグザグ状に延びる、請求項8に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記屈曲部は、溝深さが徐々に小さくなる浅溝部を含む、請求項9に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項11】
前記割位置は、タイヤ赤道から離れた位置に設けられる、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項12】
前記割位置とタイヤ赤道との距離は、トレッド半幅の5%~20%である、請求項11に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項13】
前記溝は、タイヤ赤道上には設けられていない、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項14】
自動二輪車に装着される前輪タイヤと後輪タイヤとのタイヤセットであって、
前記前輪タイヤが、請求項8ないし12のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤであり、
前記後輪タイヤが、請求項13に記載の自動二輪車用タイヤである、タイヤセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ軸方向に分割される一対の金型を用いて製造された自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水のためにトレッド部に複数の溝を設けた自動二輪車用タイヤが知られている。例えば、下記特許文献1には、トレッド部に主傾斜溝と副傾斜溝とセンター主溝とが設けられた自動二輪車用タイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-131899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような自動二輪車用タイヤは、一般的に、タイヤ軸方向に分割される一対の金型を用いて製造される。しかしながら、特許文献1の自動二輪車用タイヤは、この一対の金型の割位置とトレッド部の溝とが交差する部分において、溝底にクラックが発生する場合や、割位置に噛み込んだゴムにより膜が形成され排水を妨げる場合があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、排水性と耐久性とを両立し得る自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤ軸方向に分割される一対の金型を用いて製造された自動二輪車用タイヤであって、複数の溝が形成されたトレッド部を有し、前記トレッド部には、前記溝に交差しない位置に一対の前記金型の割位置が設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記割位置に最も近い前記溝の溝壁と前記割位置との間のタイヤ軸方向の距離は、1~10mmであるのが望ましい。
【0008】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記溝は、タイヤ赤道を挟んで、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びる一対の傾斜溝を含むのが望ましい。
【0009】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、タイヤの回転方向が指定されており、前記傾斜溝のタイヤ赤道からの距離は、前記回転方向の先着側から後着側にかけて徐々に大きくなるのが望ましい。
【0010】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記傾斜溝のタイヤ周方向に対する角度は、前記回転方向の先着側が後着側よりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、最も長い前記傾斜溝のタイヤ軸方向の長さは、トレッド半幅の50%以上であるのが望ましい。
【0012】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、一対の前記傾斜溝が、タイヤ周方向に15~29対形成されるのが望ましい。
【0013】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記溝は、タイヤ赤道上でタイヤ周方向に延びる周方向溝を含むのが望ましい。
【0014】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記周方向溝は、タイヤ赤道の一方側及び他方側に配される屈曲部と、前記屈曲部を連結する連結部とを含んでジグザグ状に延びるのが望ましい。
【0015】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記屈曲部は、溝深さが徐々に小さくなる浅溝部を含むのが望ましい。
【0016】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記割位置は、タイヤ赤道から離れた位置に設けられるのが望ましい。
【0017】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記割位置とタイヤ赤道との距離は、トレッド半幅の5%~20%であるのが望ましい。
【0018】
本発明の自動二輪車用タイヤにおいて、前記溝は、タイヤ赤道上には設けられていないのが望ましい。
【0019】
本発明は、自動二輪車に装着される前輪タイヤと後輪タイヤとのタイヤセットであって、前記前輪タイヤが、上述の一方の自動二輪車用タイヤであり、前記後輪タイヤが、上述の他方の自動二輪車用タイヤであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動二輪車用タイヤは、複数の溝が形成されたトレッド部を有し、前記トレッド部には、前記溝に交差しない位置に一対の金型の割位置が設けられている。このような自動二輪車用タイヤは、金型の割位置とトレッド部の溝とが交差しないので、溝底におけるクラックの発生を抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0021】
また、この自動二輪車用タイヤは、割位置にゴムが噛み込んだ場合にも、溝に膜が形成されることがないため、排水性が低下するおそれがない。このため、本発明の自動二輪車用タイヤは、排水性と耐久性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の自動二輪車用タイヤのトレッド部の一実施形態を示す展開図である。
図2】周方向溝の拡大図である。
図3図2のA-A線の断面図である。
図4図2のB-B線の断面図である。
図5】他の実施形態の自動二輪車用タイヤのトレッド部を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1のトレッド部2を示す展開図である。図1に示されるように、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、走行時に路面に接するトレッド面2aを含むトレッド部2を有している。本実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、自動二輪車の前輪タイヤとして好適に用いられる。本実施形態のトレッド部2には、複数の溝3が形成されている。
【0024】
本実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、タイヤ軸方向に分割される一対の金型(図示省略)を用いて製造されたものである。このため、本実施形態のトレッド部2には、一対の金型の割位置Pが設けられる。本実施形態の割位置Pは、溝3に交差しない位置に設けられている。
【0025】
このような自動二輪車用タイヤ1は、金型の割位置Pとトレッド部2の溝3とが交差しないので、溝底におけるクラックの発生を抑制し、耐久性を向上させることができる。また、この自動二輪車用タイヤ1は、割位置Pにゴムが噛み込んだ場合にも、溝3に膜が形成されることがないため、排水性が低下するおそれがない。このため、本実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、排水性と耐久性とを両立することができる。
【0026】
より好ましい態様として、自動二輪車用タイヤ1は、タイヤの回転方向Rが指定されている。このような自動二輪車用タイヤ1は、タイヤの回転方向Rに応じた溝3を設けることができ、排水性を向上させることができる。
【0027】
本実施形態の溝3は、タイヤ赤道Cを挟んで、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びる一対の傾斜溝4と、タイヤ赤道C上でタイヤ周方向に延びる周方向溝5とを含んでいる。このような溝3は、傾斜溝4と周方向溝5とにより、自動二輪車用タイヤ1の排水性をより向上させることができる。また、このような周方向溝5は、タイヤ赤道C上に設けられるので、直立転動時からの旋回応答性が良好であり、自動二輪車用タイヤ1のハンドリング性能を向上させることができる。
【0028】
傾斜溝4は、例えば、互いの溝幅及び長さが異なる第1傾斜溝4A、第2傾斜溝4B、第3傾斜溝4C及び第4傾斜溝4Dを備えている。傾斜溝4は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、種類数、溝幅、長さ及び形状を適宜変更して設けることができる。
【0029】
傾斜溝4のタイヤ赤道Cからの距離L1は、回転方向Rの先着側から後着側にかけて徐々に大きくなるのが望ましい。ここで、距離L1は、トレッド部2の展開図におけるタイヤ軸方向の距離である。このような傾斜溝4は、転動により接地面の排水を促進することができ、自動二輪車用タイヤ1の排水性を向上させることができる。
【0030】
傾斜溝4のタイヤ周方向に対する角度θは、回転方向Rの先着側が後着側よりも小さいのが望ましい。ここで、角度θは、トレッド部2の展開図におけるタイヤ周方向に対する角度である。このような傾斜溝4は、直立転動時の接地面の排水をより促進することができ、自動二輪車用タイヤ1の排水性を向上させることができる。
【0031】
最も長い傾斜溝4のタイヤ軸方向の長さL2は、好ましくは、トレッド半幅Wの50%以上である。本実施形態では、第1傾斜溝4Aが最も長い傾斜溝4である。ここで、長さL2は、トレッド部2の展開図におけるタイヤ軸方向の長さであり、トレッド半幅Wは、トレッド部2の展開図におけるタイヤ赤道Cからトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の幅である。
【0032】
このような自動二輪車用タイヤ1は、長い傾斜溝4により接地面からの排水を促進し、排水性を向上することができる。このような観点から、長さL2は、より好ましくは、トレッド半幅Wの70%以上であり、更に好ましくは、トレッド半幅Wの90%以上である。
【0033】
自動二輪車用タイヤ1は、一対の傾斜溝4が、タイヤ周方向に15~29対形成されるのが望ましい。本実施形態では、第1傾斜溝4A、第2傾斜溝4B、第3傾斜溝4C及び第4傾斜溝4Dが、それぞれ、タイヤ周方向に15~29対形成されている。このような自動二輪車用タイヤ1は、排水性と耐久性とを両立することに適しており、トレッド部2の剛性を適正化することができるので、ハンドリング性能も向上することができる。
【0034】
本実施形態の周方向溝5は、タイヤ赤道Cの一方側及び他方側に配される屈曲部5aと、屈曲部5aを連結する連結部5bとを含んでいる。このため、本実施形態の周方向溝5は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。このような自動二輪車用タイヤ1は、周方向溝5による排水性を向上しつつ、水膜が進行方向の前方へ押し出されて視界不良となることを抑制することができる。なお、周方向溝5は、例えば、タイヤ周方向に直線状に延びていてもよく、波状に延びていてもよい。
【0035】
図2は、周方向溝5の拡大図であり、図3は、図2のA-A線の断面図であり、図4は、図2のB-B線の断面図である。図2ないし図4に示されるように、本実施形態の周方向溝5の屈曲部5aは、溝深さが徐々に小さくなる浅溝部5cを含んでいる。
【0036】
このような浅溝部5cは、屈曲部5aにおける排水を促進し、自動二輪車用タイヤ1の排水性を向上させることができる。また、この浅溝部5cは、溝深さが徐々に変化しているので、直立転動時の接地面における剛性低下を抑制することができ、自動二輪車用タイヤ1の耐久性を向上させることができる。
【0037】
浅溝部5cは、回転方向Rの後着側に設けられるのが望ましい。このような浅溝部5cは、回転方向Rの先着側の連結部5bの排水も促進することができ、自動二輪車用タイヤ1の排水性をより向上させることができる。また、この浅溝部5cは、トレッド部2の剛性を適正化し、自動二輪車用タイヤ1のハンドリング性能を向上させることにも役立つ。
【0038】
図1に示されるように、割位置Pは、例えば、タイヤ赤道Cから離れた位置に設けられている。割位置Pは、上下一対の金型のうち、上型側に設けられるのが望ましい。本実施形態の割位置Pは、傾斜溝4と周方向溝5との間に設けられている。このような自動二輪車用タイヤ1は、割位置Pと傾斜溝4及び周方向溝5とが交差することを抑制し、排水性と耐久性とを両立することができる。
【0039】
割位置Pとタイヤ赤道Cとの距離L3は、好ましくは、トレッド半幅Wの5%~20%である。ここで、距離L3は、トレッド部2の展開図におけるタイヤ軸方向の距離である。距離L3がトレッド半幅Wの5%以上であることで、割位置Pと周方向溝5との交差を抑制することができ、自動二輪車用タイヤ1の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離L3は、より好ましくは、トレッド半幅Wの6%以上であり、更に好ましくは、7%以上である。
【0040】
距離L3がトレッド半幅Wの20%以下であることで、タイヤ赤道Cにおけるアンダーカットを抑制し、金型からの抜き取り作業を容易に行うことができる。このような観点から、距離L3は、より好ましくは、トレッド半幅Wの16%以下であり、更に好ましくは、12%以下である。
【0041】
割位置Pに最も近い溝3の溝壁と割位置Pとの間のタイヤ軸方向の距離d1、d2は、好ましくは、1~10mmである。ここで、距離d1、d2は、トレッド部2の展開図におけるタイヤ軸方向の距離である。距離d1、d2は、例えば、割位置Pのタイヤ軸方向の一方側の第1距離d1と他方側の第2距離d2とを含んでいる。
【0042】
本実施形態の第1距離d1は、割位置Pと周方向溝5とのタイヤ軸方向の距離である。本実施形態の第2距離d2は、割位置Pと第1傾斜溝4Aとのタイヤ軸方向の距離である。第1距離d1と第2距離d2とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
距離d1、d2が1mm以上であることで、割位置Pと溝3との交差を確実に回避し、自動二輪車用タイヤ1の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d1、d2は、より好ましくは、2mm以上であり、更に好ましくは、3mm以上である。
【0044】
距離d1、d2が10mm以下であることで、溝3が存在しない領域を低減し、自動二輪車用タイヤ1の排水性を向上させることができる。このような観点から、距離d1、d2は、より好ましくは、8mm以下であり、更に好ましくは、6mm以下である。
【0045】
図5は、他の実施形態の自動二輪車用タイヤ11のトレッド部12を示す展開図である。図5に示されるように、この実施形態の自動二輪車用タイヤ11は、上述の自動二輪車用タイヤ1と同様、走行時に路面に接するトレッド面12aを含むトレッド部12を有している。この実施形態の自動二輪車用タイヤ11は、自動二輪車の後輪タイヤとして好適に用いられる。この実施形態のトレッド部12には、上述のトレッド部2と同様、複数の溝13が形成されている。
【0046】
この実施形態の自動二輪車用タイヤ11は、上述の自動二輪車用タイヤ1と同様、タイヤ軸方向に分割される一対の金型(図示省略)を用いて製造されたものである。このため、この実施形態のトレッド部12にも、一対の金型の割位置Pが設けられる。この実施形態の割位置Pも、溝13に交差しない位置に設けられている。
【0047】
このような自動二輪車用タイヤ11は、金型の割位置Pとトレッド部12の溝13とが交差しないので、溝底におけるクラックの発生を抑制し、耐久性を向上させることができる。また、この自動二輪車用タイヤ11は、割位置Pにゴムが噛み込んだ場合にも、溝13に膜が形成されることがないため、排水性が低下するおそれがない。このため、この実施形態の自動二輪車用タイヤ1は、上述の自動二輪車用タイヤ1と同様、排水性と耐久性とを両立することができる。
【0048】
この実施形態の自動二輪車用タイヤ11は、上述の自動二輪車用タイヤ1と同様、タイヤの回転方向Rが指定されている。このような自動二輪車用タイヤ11は、タイヤの回転方向Rに応じた溝13を設けることができ、排水性を向上させることができる。
【0049】
この実施形態の溝13は、タイヤ赤道Cを挟んで、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びる一対の傾斜溝14を含んでいる。傾斜溝14は、例えば、互いの溝幅及び長さが異なる第1傾斜溝14A、第2傾斜溝14B、第3傾斜溝14C及び第4傾斜溝14Dを備えている。傾斜溝14は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、種類数、溝幅、長さ及び形状を適宜変更して設けることができる。
【0050】
傾斜溝14のタイヤ赤道Cからの距離L1は、上述の傾斜溝4と同様、回転方向Rの先着側から後着側にかけて徐々に大きくなるのが望ましい。このような傾斜溝14は、転動により接地面の排水を促進することができ、自動二輪車用タイヤ11の排水性を向上させることができる。
【0051】
傾斜溝14のタイヤ周方向に対する角度θは、上述の傾斜溝4と同様、回転方向Rの先着側が後着側よりも小さいのが望ましい。このような傾斜溝14は、直立転動時の接地面の排水をより促進することができ、自動二輪車用タイヤ11の排水性を向上させることができる。
【0052】
最も長い傾斜溝14のタイヤ軸方向の長さL2は、上述の傾斜溝4と同様、好ましくは、トレッド半幅Wの50%以上であり、より好ましくは、トレッド半幅Wの70%以上であり、更に好ましくは、トレッド半幅Wの90%以上である。この実施形態でも、第1傾斜溝14Aが最も長い傾斜溝14である。このような自動二輪車用タイヤ11は、長い傾斜溝14により接地面からの排水を促進し、排水性を向上することができる。
【0053】
この実施形態の溝13は、タイヤ赤道C上には設けられていない。このような自動二輪車用タイヤ1は、高荷重が負荷される後輪タイヤに用いられた場合にも、直立転動時の接地面の歪みを分散することができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0054】
この実施形態の割位置Pは、タイヤ赤道C上に設けられている。割位置Pは、例えば、タイヤ赤道Cから離れた位置に設けられていてもよい。割位置Pがタイヤ赤道Cから離れた位置に設けられる場合には、割位置Pは、上下一対の金型のうち、上型側に設けられるのが望ましい。この実施形態の割位置Pは、タイヤ赤道Cの一方側の傾斜溝14と他方側の傾斜溝14との間に設けられている。このような自動二輪車用タイヤ11は、割位置Pと溝13とが交差することを抑制し、排水性と耐久性とを両立することができる。
【0055】
割位置Pとタイヤ赤道Cとの距離L3は、好ましくは、トレッド半幅Wの20%以下である。距離L3がトレッド半幅Wの20%以下であることで、タイヤ赤道Cにおけるアンダーカットを抑制し、金型からの抜き取り作業を容易に行うことができる。このような観点から、この距離は、より好ましくは、トレッド半幅Wの16%以下であり、更に好ましくは、12%以下である。
【0056】
割位置Pに最も近い溝3の溝壁と割位置Pとの間のタイヤ軸方向の距離d1、d2は、好ましくは、1~10mmである。ここで、距離d1、d2は、トレッド部2の展開図におけるタイヤ軸方向の距離である。距離d1、d2は、例えば、割位置Pのタイヤ軸方向の一方側の第1距離d1と他方側の第2距離d2とを含んでいる。
【0057】
この実施形態の第1距離d1は、割位置Pと割位置Pのタイヤ軸方向の一方側の第1傾斜溝14Aとのタイヤ軸方向の距離である。この実施形態の第2距離d2は、割位置Pと割位置Pのタイヤ軸方向の他方側の第1傾斜溝14Aとのタイヤ軸方向の距離である。第1距離d1と第2距離d2とは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
距離d1、d2が1mm以上であることで、割位置Pと溝3との交差を確実に回避し、自動二輪車用タイヤ1の耐久性を向上させることができる。このような観点から、距離d1、d2は、より好ましくは、2mm以上であり、更に好ましくは、3mm以上である。
【0059】
距離d1、d2が10mm以下であることで、溝3が存在しない領域を低減し、自動二輪車用タイヤ1の排水性を向上させることができる。このような観点から、距離d1、d2は、より好ましくは、8mm以下であり、更に好ましくは、6mm以下である。
【0060】
図1及び図5に示されるように、自動二輪車用タイヤ1、11は、例えば、自動二輪車に装着される前輪タイヤと後輪タイヤとのタイヤセットとして好適に用いられる。本実施形態の前輪タイヤは、図1に示される自動二輪車用タイヤ1である。また、本実施形態の後輪タイヤは、図5に示される自動二輪車用タイヤ11である。
【0061】
このようなタイヤセットは、操舵を伴う前輪タイヤに周方向溝5を含む自動二輪車用タイヤ1を装着するので、優れた排水性を発揮することができる。また、このタイヤセットは、高荷重が負荷される後輪タイヤにタイヤ赤道C上に溝13が設けられていない自動二輪車用タイヤ11を装着するので、優れた耐久性を発揮することができる。このため、本実施形態のタイヤセットは、排水性と耐久性とを両立することができる。
【0062】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例0063】
図1及び図5に示されるトレッド部を有する自動二輪車用タイヤが、表1及び表2の仕様に基づき、それぞれ、試作された。比較例として、図1及び図5に示されるトレッド部の傾斜溝と同じ溝を有し、割位置と溝とが交差する自動二輪車用タイヤが試作された。試作された自動二輪車用タイヤを用いて、排水性、耐久性及びハンドリング性能がテストされた。主な共通仕様及びテスト方法は、以下のとおりである。
【0064】
<共通仕様>
前輪タイヤ : 図1のトレッド部を有する自動二輪車用タイヤ
前輪タイヤサイズ : 110/70-13M/C
前輪リムサイズ : 13×3.00MT
後輪タイヤ : 図5のトレッド部を有する自動二輪車用タイヤ
後輪タイヤサイズ : 130/70-13M/C
後輪リムサイズ : 13×3.50MT
【0065】
<排水性>
前輪タイヤの空気圧を200kPaとし、後輪タイヤの空気圧を225kPaとして、中型スクーターの前後輪に装着し、テストドライバーによりウェット路面を走行したときの排水性が、テストドライバーの官能により10段階で評価された。同様のテストが、20名のテストドライバーにより行われ、それらの合計点が算出された。結果は、比較例の合計点を100とする指数で表され、数値が大きいほど、排水性に優れていることを示す。
【0066】
<耐久性>
後輪タイヤの空気圧を280kPaとしてドラム試験機に装着し、2.67kNの荷重を負荷して4時間走行させ、次に、2.89kNの荷重を負荷して6時間走行させ、更に3.13kNの荷重を負荷して24時間走行させたときのクラックの状態が評価された。結果は、比較例を100とする指数で表され、数値が大きいほど、耐久性に優れていることを示す。
【0067】
<ハンドリング性能>
前輪タイヤの空気圧を200kPaとし、後輪タイヤの空気圧を225kPaとして、中型スクーターの前後輪に装着し、テストドライバーにより周回コースを走行したときのハンドリング性能が、テストドライバーの官能により10段階で評価された。同様のテストが、20名のテストドライバーにより行われ、それらの合計点が算出された。結果は、比較例の合計点を100とする指数で表され、数値が大きいほど、ハンドリング性能に優れていることを示す。
【0068】
テストの結果が、表1及び表2に示される。
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
テストの結果、実施例の自動二輪車用タイヤは、比較例に対して、排水性及び耐久性に優れており、排水性と耐久性とを両立していることが確認された。
【符号の説明】
【0071】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
3 溝
図1
図2
図3
図4
図5