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特開2022-165799供給制御システム、供給制御装置及び供給制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165799
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】供給制御システム、供給制御装置及び供給制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/06 20060101AFI20221025BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20221025BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
F15B11/06 Z
G05B23/02 R
G05D7/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071307
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山根 和敏
(72)【発明者】
【氏名】田坂 貴文
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘和
(72)【発明者】
【氏名】野口 博登
【テーマコード(参考)】
3C223
3H089
5H307
【Fターム(参考)】
3C223AA15
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF05
3H089AA21
3H089BB15
3H089DA05
3H089DA06
3H089DB13
3H089FF06
3H089FF07
3H089FF12
3H089GG03
3H089JJ20
5H307AA11
5H307AA12
5H307BB01
5H307CC03
5H307DD15
5H307EE02
5H307EE22
5H307FF12
(57)【要約】
【課題】主管から複数の枝管が分岐する配管と、主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、主管を開閉する複数のバルブとを備え、枝管から気体を供給する系において、作業性を向上させることが可能な供給制御システム、供給制御装置1及び供給制御プログラムを提供する。
【解決手段】各コンプレッサCの動作状態及び各バルブVの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、各枝管Psから供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタ210を用いる。供給制御装置1は、各領域で稼動する工程の状態を取得し、取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出し、算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、パターンマスタ210から選択し、選択した制御パターンに基づいて、各コンプレッサC及び各バルブVを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとを備え、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置されており、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御する供給制御システムであって、
各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタと、
各領域で稼動する工程の状態を取得する取得手段と、
取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する算出手段と、
算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する選択手段と、
選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段と
を備えることを特徴とする供給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の供給制御システムであって、
前記パターンマスタは、制御パターンに対応付けて、制御コストが記録されており、
前記選択手段は、必要流量に対して、全ての領域の流量の予測値が上回る制御パターンが、前記パターンマスタに複数記録されている場合に、予測値が上回る制御パターンから、制御コストに基づいて制御パターンを選択する
ことを特徴とする供給制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の供給制御システムであって、
前記配管の流量を検出する流量検出部を更に備え、
前記流量検出部が検出した流量が、必要流量を下回る前記配管がある場合、予め設定されている非常制御の制御パターンで、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段を備える
ことを特徴とする供給制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の供給制御システムであって、
前記取得手段が取得した工程の状態が変化する場合で、休止していた工程の稼動を開始する領域があるとき、工程の稼動を開始する領域へ気体を供給する主管内の流量を、必要流量まで上昇させるべく予め設定されている開始制御の制御パターンで、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御した後、前記選択手段にて選択されたパターンマスタに基づく制御に遷移する
ことを特徴とする供給制御システム。
【請求項5】
主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとが配置され、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置された供給制御システムに対し、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御する供給制御装置であって、
各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタにアクセスする手段と、
各領域で稼動する工程の状態を取得する手段と、
取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する手段と、
算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する手段と、
選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段と
を備えることを特徴とする供給制御装置。
【請求項6】
主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとが配置され、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置された供給制御システムに対し、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御するコンピュータに、供給制御させる供給制御プログラムであって、
コンピュータに、
各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタにアクセスする手順と、
各領域で稼動する工程の状態を取得する手順と、
取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する手順と、
算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する手順と、
選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手順手段と
を実行させることを特徴とする供給制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主管から分岐する枝管からの気体の供給を制御する供給制御システム、供給制御装置及び供給制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場等の事業所では、事業所内の複数箇所で、エアブロー等の目的のために気体を供給するシステムが求められている。気体の供給は、配管に設置されたコンプレッサの起動及び停止、バルブの開閉等の操作により制御する。しかしながら、作業者が、コンプレッサの起動及び停止、バルブの開閉等の作業を行う場合、操作忘れ、操作ミス等のトラブルが生じる恐れがある。そこで、気体の供給制御の自動化が求められている。例えば、特許文献1には、自動で、ブロワから母管を介してループ配管へ定圧空気を供給する定圧空気供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-157916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているループ配管だけでなく、様々な配管構成で、気体を供給するシステムが求められている。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、様々な配管構成に適用可能で、気体の供給を自動的に制御する供給制御システムの提供を主たる目的とする。
【0006】
また、本発明は、本発明に係る供給制御システムに用いられる供給制御装置の提供を他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、本発明に係る供給制御装置を実現する供給支援プログラムの提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願開示の供給制御システムは、主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとを備え、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置されており、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御する供給制御システムであって、各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタと、各領域で稼動する工程の状態を取得する取得手段と、取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する算出手段と、算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する選択手段と、選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記供給制御システムにおいて、前記パターンマスタは、制御パターンに対応付けて、制御コストが記録されており、前記選択手段は、必要流量に対して、全ての領域の流量の予測値が上回る制御パターンが、前記パターンマスタに複数記録されている場合に、予測値が上回る制御パターンから、制御コストに基づいて制御パターンを選択することを特徴とする。
【0010】
また、前記供給制御システムにおいて、前記配管の流量を検出する流量検出部を更に備え、前記流量検出部が検出した流量が、必要流量を下回る前記配管がある場合、予め設定されている非常制御の制御パターンで、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記供給制御システムにおいて、前記取得手段が取得した工程の状態が変化する場合で、休止していた工程の稼動を開始する領域があるとき、工程の稼動を開始する領域へ気体を供給する主管内の流量を、必要流量まで上昇させるべく予め設定されている開始制御の制御パターンで、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御した後、前記選択手段にて選択されたパターンマスタに基づく制御に遷移することを特徴とする。
【0012】
更に、本願開示の供給制御装置は、主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとが配置され、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置された供給制御システムに対し、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御する供給制御装置であって、各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタにアクセスする手段と、各領域で稼動する工程の状態を取得する手段と、取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する手段と、算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する手段と、選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
更に、本願開示の供給制御プログラムは、主管から複数の枝管が分岐する配管と、前記主管に気体を供給する複数のコンプレッサと、前記主管を開閉する複数のバルブとが配置され、前記各枝管は、複数に区分された領域のいずれかに気体を供給するように配置された供給制御システムに対し、領域毎に稼動する工程に応じて、前記枝管からの気体の供給を制御するコンピュータに、供給制御させる供給制御プログラムであって、コンピュータに、各コンプレッサの動作状態及び各バルブの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、前記各枝管から供給する気体の流量の予測値を記録しているパターンマスタにアクセスする手順と、各領域で稼動する工程の状態を取得する手順と、取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する手順と、算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを、前記パターンマスタから選択する手順と、選択した制御パターンに基づいて、前記各コンプレッサ及び前記各バルブを制御する手順手段とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る供給制御システム、供給制御装置及び供給制御プログラムは、様々な配管構成において、主管から分岐する枝管からの気体の供給を自動的に制御することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願開示の供給制御システムにて用いられるハードウェア構成の一例を概念的に示す概略説明図である。
図2】本願開示の供給制御システムが適用された事業所に配置された配管系統の一例を示す概略説明図である。
図3】本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置及び記録装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本願開示の供給制御システムにて用いられる記録装置が備えるパターンマスタの記録内容の一例を概念的に示す説明図である。
図5】本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置の供給制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本願開示の供給制御システムに係る必要流量と制御パターンに基づく供給量との関係を経時的に示すグラフである。
図7】本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置の異常対応処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置の工程開始処理の一例を示すフローチャートである。
図9】本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理の一例を概念的に示すモデルである。
図10】本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理の一例を概念的に示すモデルである。
図11】本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理の一例を概念的に示すモデルである。
図12】本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理の一例を概念的に示すモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した実施形態の一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
<適用例>
本願開示の供給制御システムは、事業所、例えば、工場において、空気、窒素等の気体を、事業所内に設置された配管から工場内の各領域へ供給する系に適用される。工場内に設置された配管は、主管と、主管から分岐した枝管とを備えている。主管は、剛性のパイプで形成されている。枝管は、剛性のパイプ、フレキシブルパイプ等の管で構成されている。工場内は、複数の領域に区分されており、領域毎に様々な工程が稼動し、工程が稼動する領域へ、配管から気体が供給される。気体は、主管を通って枝管から領域内に供給される。
【0018】
図1は、本願開示の供給制御システムにて用いられるハードウェア構成の一例を概念的に示す概略説明図である。本願開示の供給制御システムは、サーバコンピュータ等のコンピュータを用いた供給制御装置1にて制御される。供給制御装置1には、データサーバコンピュータ等のコンピュータを用いた記録装置2が接続されている。記録装置2は、気体の供給制御に用いる制御パターンを示したパターンマスタ210を記録している。工場には、主管Pm及び主管Pmから分岐した枝管Psが設置されている。主管Pmには、気体を供給するコンプレッサC、主管Pmを開閉するバルブV等の被制御機器が取り付けられている。更に、主管Pmには、気体の流量を圧力として測定する圧力計PG(流量検出部)等の測定機器が取り付けられている。また、領域内の様々な場所には、温度及び湿度を測定する温湿度計等の測定機器が設置されている。被制御機器及び測定機器は、PLC(Programable Logic Controller)等の機器制御装置PLCに接続されており、機器制御装置PLCは、供給制御装置1に接続されている。機器制御装置PLCは、供給制御装置1からの命令に従って、被制御装置を制御し、測定機器が測定して得られた測定データを供給制御装置1へ送信する。機器制御装置PLCは、被制御機器及び測定機器に限らず、領域内で動作する様々な機器を制御しており、領域内の工程の稼動状態を検出し、供給制御装置1へ送信する。供給制御装置1、記録装置2、機器制御装置PLC等の各種装置は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network )、専用線等の通信網NWを介して接続されている。
【0019】
図1に例示する実施形態では、1台の供給制御装置1及び1台の記録装置2を接続した形態を例示しているが、本願開示の供給制御システムは、様々な形態に変形することが可能である。例えば、本願開示の供給制御システムは、複数台のコンピュータを連係させて供給制御装置1とする構成、供給制御装置1及び記録装置2を1台の装置とする構成等の様々な構成の形態として実現することが可能である。また、図1に例示する実施形態では、1台の機器制御装置PLCを用いた形態を示しているが、例えば、全体を管理する主機器制御装置と、領域毎に設置した複数の副機器制御装置とを用いる等、様々な形態に展開することが可能である。
【0020】
図2は、本願開示の供給制御システムが適用された事業所に配置された配管系統の一例を示す概略説明図である。図2は、事業所である工場の概略伏図に、概略配管系統図を配置位置が把握できるように重畳して示している。図2に例示するように、工場は、領域Aから領域Fまでの6つの領域に区分されている。図2中、各領域内を通る二重線は、配管のうち主管Pmを示している。図2中、主管Pmから分岐する枝管Psは、記号「○」にて示している。図2に例示するように主管Pmには、コンプレッサC、バルブV等の複数の被制御機器及び圧力計PG等の複数の測定機器が取り付けられている。領域は、工程の稼動パターン、稼働率、バルブVの位置、コンプレッサCの位置等の諸条件を考慮して設定されている。具体的には、同時期に稼動する設備が配置されている区域は、同じ領域になるように区分される。従って、例えば、他の区域に設置された設備と比べて、稼動する時間帯が異なる設備が多く配置されている区域については、コンプレッサCが配置されていない区域であっても、独立した領域として設定される場合がある。図2では、一部の配管がループしている形態を示しているが、配管の接続形態は、様々な形態に展開することが可能である。
【0021】
<供給制御装置1及び記録装置2の構成>
次に、コンピュータを用いて構成される供給制御装置1及び記録装置2の構成について説明する。図3は、本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置1及び記録装置2の構成例を示すブロック図である。サーバコンピュータ等のコンピュータを用いて構成される供給制御装置1は、制御部10、記録部11、通信部12等の各種構成を備えている。本願実施形態では、1台のコンピュータを用いて供給制御装置1として構成する実施形態について説明するが、複数のコンピュータを連係させて供給制御装置1として構成するようにしてもよい。
【0022】
制御部10は、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置全体を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等のプロセッサである。
【0023】
記録部11は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks )、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される記録用デバイスである。記録部11には、基本プログラム(OS:Operating System)、基本プログラム上で動作する応用プログラム(アプリケーションプログラム)等のプログラムが記録されている。記録部11には、応用プログラムとして、本願開示の供給制御プログラム110が記録されている。
【0024】
通信部12は、通信網NWに接続し、通信網NWを介して他の装置と通信する通信アダプタ及び制御回路等の通信用デバイスである。
【0025】
供給制御装置1は、通信網NWを介して端末装置に接続され、端末装置が備えるモニタ等の表示部及びキーボード等の入力部がユーザーインターフェースとなるが、供給制御装置1が表示部及び入力部を備える構成とすることも可能である。
【0026】
以上のように構成されたサーバコンピュータ等のコンピュータは、記録部11に記録されている供給制御プログラム110を読み取り、供給制御プログラム110に含まれる各種手順を、制御部10の制御により実行することで、本願開示の供給制御装置1として機能する。
【0027】
データサーバコンピュータ等のコンピュータを用いて構成される記録装置2は、制御部20、記録部21、通信部22等の各種構成を備えている。制御部20、記録部21及び通信部22の構成は、供給制御装置1の同名の構成と実質的に同様の機能を有している。記録部21の記録領域の一部は、供給制御システムの制御に用いるパターンマスタ210等の各種データベースとして用いられる。
【0028】
図4は、本願開示の供給制御システムにて用いられる記録装置2が備えるパターンマスタ210の記録内容の一例を概念的に示す説明図である。パターンマスタ210は、各コンプレッサCの動作状態及び各バルブVの開閉状態を示した制御パターンに対応付けて、各枝管Psから供給する気体の流量の予測値及びコストを記録しているテーブル形式のデータベースである。図4に例示するパターンマスタ210は、制御パターンを特定する制御パターンIDに対応付けて、コンプレッサIDにて示す各コンプレッサCの動作状態及び各バルブVの開閉状態を記録している。各コンプレッサCの動作状態は、コンプレッサCを特定するCMP1、CMP2、CMP3等のコンプレッサIDに対応付けて起動状態を示す「ON」又は休止状態を示す「OFF」にて示されている。各バルブVの開閉状態は、バルブVを特定するVAL1、VAL2、VAL3等のバルブIDに対応付けて開状態を示す「開」又は閉状態を示す「閉」にて示されている。また、パターンマスタ210は、制御パターンIDに対応付けて各領域の気体の流量の予測値を記録している。更に、パターンマスタ210は、制御パターンIDに対応付けて制御コスト(費用)を記録している。パターンマスタ210を参照することにより、各コンプレッサCの動作状態及び各バルブVの開閉状態の組み合わせから、各領域に供給する気体の流量及び必要なコストを予測することができる。
【0029】
記録部21の記録領域には、パターンマスタ210だけでなく、各配管の設定、コンプレッサCの設定、バルブ制御の設定、領域の設定、工程の設定、工程の通信の設定等の様々な設定を記録したデータベースが記録されている。
【0030】
<供給制御システムの制御>
次に、本願開示の供給制御システムにて実施される各種装置による制御について説明する。図5は、本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置1の供給制御処理の一例を示すフローチャートである。供給制御装置1の制御部10は、記録部11に記録されている供給制御プログラム110を実行する制御部10の制御により、供給制御処理を実行する。
【0031】
供給制御装置1の制御部10は、各領域で稼動する工程の状態を取得する(S101)。ステップS101では、機器制御装置PLCから機器の動作状態を取得し、記録装置2の記録部21に記録されている工程の設定に基づいて、各領域で稼動する工程の状態を取得する。ステップS101にて取得した工程の状態により、いずれかの領域で工程が切り替わると判断した場合、ステップS102以降の処理を実行する。例えば、工程に設置された各種装置の電源のオン/オフ、装置の停止中、休止中、起動中、非稼動等の動作状態を取得し、工程の設定を加味して工程の状態を取得する。
【0032】
制御部10は、ステップS101にて取得した各領域で稼動する工程の状態に基づいて、領域毎の必要流量を算出する(S102)。必要流量は、予め工程の状態に対応付けて設定されている基準量に基づいて算出される。例えば、必要流量の設定は、過去の実績に基づいて稼動中の平均流量を基にした基準流量を設定しておき、停止中又は休止中の場合は、稼動中の基準流量の1/2の量が必要流量として算出される。更に、予め設定されている基準流量に対し、測定機器にて測定された温度補正をすることで必要流量が算出される。温度補正は、領域又は建屋内の複数の測定機器にて測定した複数の温度の最低値を採用し、採用した温度の最低値に基づく係数を乗じて必要流量を算出する。領域内又は建屋内の温度が低い程、工程に供給すべき流量が増加するため、乗じる係数は、温度が低い程、大きい値が採用される。
【0033】
制御部10は、ステップS102にて算出した領域毎の必要流量に対して、全ての領域で気体の流量の予測値が上回る制御パターンを全て抽出する(S103)。ステップS103の制御パターンの抽出は、記録装置2が備えているパターンマスタ210にアクセスして、各領域の気体の予測値を参照し、全ての領域で気体の流量の予測値が、必要流量を上回る制御パターンのレコードを抽出することにより行われる。
【0034】
制御部10は、ステップS103にて抽出した制御パターンが複数か否かを判定する(S104)。
【0035】
ステップ104において、抽出した制御パターンが複数であると判定した場合(S104:YES)、制御部10は、ステップS103にて抽出した複数の制御パターンから制御コストに基づいて、一の制御パターンを選択する(S105)。ステップS105では、複数の制御パターンのうちから制御コストが最も低い制御パターンが選択される。制御コストが最も低い制御パターンを選択することにより、不要なコンプレッサCの起動を抑制し、製造コストを抑制することができる。
【0036】
ステップS104において、抽出した制御パターンが複数ではないと判定した場合(S104:NO)、制御部10は、ステップS103にて抽出した一の制御パターンを選択する(S106)。
【0037】
制御部10は、ステップS105又はステップS106にて選択した制御パターンに基づいて、各コンプレッサC及び各バルブVを制御する(S107)。ステップS107の制御は、制御パターンとして示されている各コンプレッサCの起動状態及び各バルブVの開閉状態に制御する制御信号を、機器制御装置PLCを介して各コンプレッサC及び各バルブVへ送信することにより行われる。
【0038】
図6は、本願開示の供給制御システムに係る必要流量と制御パターンに基づく供給量との関係を経時的に示すグラフである。図6では、横軸が経過時間を示し、縦軸が供給量を示す圧力を示している。図6において、実線が、稼動する工程の状態に基づいて算出される必要流量の経時変化を示しており、破線が、選択した制御パターンによる流量の予測値の経時変化を示している。図6に例示するように、工程の変化によって、必要流量が経時的に変化する。制御パターンによる流量の予測値は、必要流量を上回っているが、制御コストが最も低い制御パターンが選択されているため、必要流量を大きく上回ることはなく、必要流量の変化に追従するように変化する。
【0039】
以上のようにして、本願開示の供給制御システムにおける供給制御処理が実行される。
【0040】
次に、本願開示の供給制御システムにおいて、流量低下等の異常が発生した場合の処理について説明する。図7は、本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置1の異常対応処理の一例を示すフローチャートである。供給制御装置1の制御部10は、記録部11に記録されている供給制御プログラム110を実行する制御部10の制御により、異常対応処理を実行する。
【0041】
供給制御装置1の制御部10は、各領域で工程が稼動中、機器制御装置PLCを介して測定機器から送信される測定データを監視する。例えば、制御部10は、測定データに示された主管Pmの圧力から、主管Pmに流れる気体の流量を監視する。制御部10は、監視している気体の流量が、それぞれ設定されている必要流量を下回るか否かを判定する(S201)。
【0042】
ステップS201において、監視している気体の流量が、必要流量を下回る箇所があると判定した場合(S201:YES)、制御部10は、予め設定されている非常制御の制御パターンに基づいて、各コンプレッサC及び各バルブVを制御する(S202)。ステップS202の非常制御の制御パターンとは、例えば、全てのコンプレッサCを起動し、全てのバルブVを開状態とする制御パターンである。全てのコンプレッサCを起動し、全てのバルブVを開状態とすることにより、全ての領域に気体の必要流量を供給し、工程の稼動を維持することができる。非常制御の制御パターンは、適宜、設定することが可能である。
【0043】
ステップS201において、監視している気体の流量が、必要流量を下回る箇所がないと判定した場合(S201:NO)、制御部10は、ステップS201の処理を繰り返す。
【0044】
非常制御の制御パターンで制御している制御部10は、定常状態に復帰したか否かを判定し(S203)、定常状態に復帰したと判定した場合(S203:YES)、ステップS201に戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS203において、制御部10は、例えば、作業者が定常状態に復帰したことを示す入力操作を行ったことを検出した場合、測定データに基づく全ての流量が予め設定されている復帰条件を充足した場合等の状況変化を取得した場合に、定常状態に復帰したと判定する。
【0045】
ステップS203において、定常状態に復帰していないと判定した場合(S203:NO)、制御部10は、ステップS203の処理を繰り返す。
【0046】
以上のようにして、本願開示の供給制御システムにおける異常対応処理が実行される。なお、異常状態から定常状態への復帰に際しては、適宜、手動工程又は確認を要する半自動工程を設けて状態及び安全を確認しながらの制御がなされる。
【0047】
次に、本願開示の供給制御システムにおいて、休止状態にある領域で、工程の稼動を開始する場合に行われる工程開始処理について説明する。図8は、本願開示の供給制御システムにて用いられる供給制御装置1の工程開始処理の一例を示すフローチャートである。供給制御装置1の制御部10は、記録部11に記録されている供給制御プログラム110を実行する制御部10の制御により、工程開始処理を実行する。
【0048】
供給制御装置1の制御部10は、各領域で稼動する工程の状態を取得して、休止状態にあった工程が稼動を開始する領域があるか否かを判定する(S301)。ステップS301の処理は、図5を用いて説明した供給制御処理のステップS101にて、各領域で稼動する工程の状態を取得した場合に実行される。
【0049】
ステップS301において、休止状態にあった工程が稼動を開始する領域があると判定した場合(S301:YES)、制御部10は、領域毎の必要流量を算出し(S302)、予め設定されている開始制御の制御パターンで各コンプレッサC及び各バルブVを制御する(S303)。ステップS302の必要流量を算出する処理は、図5を用いて説明した供給制御処理のステップS102の処理と実質的に同様である。ステップS303の開始制御の制御パターンとは、工程の稼動を開始する領域へ気体を供給する主管Pm内の流量を、稼動開始後の必要流量まで上昇させる制御パターンである。主管Pm内の流量は、主管Pm内の圧力により求められる。
【0050】
ステップS301において、休止状態にあった工程が稼動を開始する領域はないと判定した場合(S301:NO)、制御部10は、図5を用いて説明した供給制御処理のステップS102以降の処理を実施する。
【0051】
開始制御の制御パターンで制御している制御部10は、稼動を開始する領域の主管Pm内の流量の測定値が、稼動開始後の必要流量まで上昇したか否かを判定する(S304)。
【0052】
ステップS304において、必要流量まで上昇したと判定した場合(S304:YES)、制御部10は、図5を用いて説明した供給制御処理のステップS103以降の処理を実施する。
【0053】
ステップS304において、必要流量まで上昇していないと判定した場合(S304:NO)、制御部10は、ステップS304の処理を繰り返し実行する。
【0054】
図9乃至図12は、本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理の一例を概念的に示すモデルである。図9乃至図12は、領域A、領域B及び領域Cに区分された事業所において、領域Cの工程の稼動を開始する状態をモデル化して示している。図9乃至図12に例示するモデルでは、領域A、領域B及び領域Cを、この順で主管Pmが通っている。例示するモデルには、領域Aの端部に第1バルブV1、領域A及び領域Bの間に第2バルブV2、領域B及び領域Cの間に第3バルブV3、並びに領域Cの端部に第4バルブV4が取り付けられている。例示するモデルには、領域Aに第1コンプレッサC1及び第2コンプレッサC2の2台のコンプレッサCが取り付けられている。
【0055】
図9は、領域Aのみが稼動中で、全てのバルブVが閉じ、領域Aの2台のコンプレッサCのうち第1コンプレッサC1のみが動作している起動している状態を示している。図9に例示する状態において、領域Cの工程を稼動すると、領域B及び領域Cには、コンプレッサCがないため、領域Aの2台のコンプレッサCで、領域Cに気体を供給する必要がある。この場合、第2バルブV2及び第3バルブV3の開く制御並びに第2コンプレッサC2を起動する制御を同時期に行うと、領域Cで供給する気体の圧力が低下する恐れがある。そこで、工程開始処理が必要となる。
【0056】
図10は、図9に例示する状態から第2コンプレッサC2を起動した状態を示している。第2バルブV2を閉じたまま、第2コンプレッサC2を起動することにより、領域A内の主管Pmの圧力が上昇する。
【0057】
図11は、図10に例示する状態から、領域A内の主管Pmの圧力の上昇を検出し、必要流量に達したとして第2バルブV2を開いた状態を示している。第2バルブV2を開くことにより、領域B内の主管Pmに気体が供給され、領域B内の主管Pmの圧力が上昇する。
【0058】
図12は、図11に例示する状態から、領域B内の主管Pmの圧力の上昇を検出し、必要流量に達したとして第3バルブV3を開いた状態を示している。第3バルブV3を開くことにより、領域C内の主管Pmに気体が供給され、領域C内の主管Pmの圧力が上昇する。領域C内の圧力が上昇した段階で、領域Cの工程を稼動し、供給制御処理を行うことで、圧力を低下させることなく、気体を供給することが可能となる。図9乃至図12のモデルとして示す各コンプレッサC及び各バルブVの制御を開始制御の制御パターンとして予め記録しておくことにより、供給する圧力を低下させることなく、休止していた領域の工程の開始することが可能となる。
【0059】
以上のようにして、本願開示の供給制御システムにおける工程開始処理が実行される。
【0060】
本願開示の供給制御システムは、上述した様々な状態で稼動を行い、稼動中の様々な情報を記録装置2の記録部21に蓄積する。蓄積した様々な情報は、新たな制御パターンの作成、制御パターンの更新等の処理に用いられる。これにより、本願開示の供給制御システムは、制御パターンの精度を向上させることができる。
【0061】
以上詳述した如く、本願開示の供給制御システムは、各コンプレッサCの動作状態及び各バルブVの開閉状態を示した制御パターンに基づいて、各コンプレッサC及び各バルブVを制御する。これにより、本願開示の供給システムは、気体の供給を自動的に制御することが可能となる等、優れた効果を奏する。従って、本願開示の供給制御システムは、作業ミスの低減、作業の効率化等の作業性の向上を実現することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0062】
また、本願開示の供給制御システムは、圧力の低下が生じた場合に、全てのコンプレッサCを起動し、全てのバルブVを開ける異常処理を実施する。これにより、本願開示の供給制御システムは、気体の供給量が一時的に低下した場合でも、自動的に対応することが可能となる。
【0063】
更に、本願開示の供給制御システムは、工程の稼動が休止している領域で、工程の稼動を開始する場合に、気体の流量を十分に上げてから供給制御を行う工程開始処理を実行する。これにより、稼動開始の際の気体の供給量の低下を防止することが可能となる。
【0064】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0065】
例えば、前記実施形態では、異常処理として、圧力が低下した場合にコンプレッサC及びバルブVを制御する制御パターンを例示したが、本発明はこれに限らず、様々な異常処理を対応できる制御パターンを学習させることが可能である。例えば、本願開示の供給制御システムは、圧力が所定の上限値以上に上昇した場合、関係するコンプレッサCを停止する等、様々な処理に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 供給制御装置
10 制御部
11 記録部
110 供給制御プログラム
2 記録装置
20 制御部
21 記録部
210 パターンマスタ
Pm 主管
Ps 枝管
C コンプレッサ
C1 第1コンプレッサ
C2 第2コンプレッサ
V バルブ
V1 第1バルブ
V2 第2バルブ
V3 第3バルブ
V4 第4バルブ
PG 圧力計(流量検出部)
PLC 機器制御装置
NW 通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12