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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165812
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電気的駆動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071325
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 義則
(72)【発明者】
【氏名】宗像 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA12
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106EE36
3H106EE42
3H106GB23
(57)【要約】
【課題】開弁状態での流体による弁体への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる低コストの電気的駆動弁を提供する。
【解決手段】電磁弁1は、円筒形状を有する弁体収容部材70を有する。弁体収容部材70の第1部分71には、開弁状態において弁体20を収容する収容空間74が設けられている。弁体収容部材70の第2部分72には、複数のスリット76によって周方向に分割された複数の弾性片75が設けられている。そして、複数の弾性片75が内側に弾性変形するように、複数の弾性片75が固定鉄心50の内側に挿入されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離される弁体と、前記弁本体に収容されたプランジャと、前記弁体と前記プランジャとを連結する弁軸と、前記弁体と前記プランジャとの間に配置され、前記弁軸が内側に挿入された円筒形状を有する固定鉄心と、前記弁本体の外側に配置された電磁コイルと、円筒形状を有する弁体収容部材と、を有する電気的駆動弁であって、
前記弁体収容部材の一方の端部には、開弁状態において前記弁体を収容する収容空間が設けられ、
前記弁体収容部材の他方の端部には、複数の弾性片が設けられ、
前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入され、または、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入され、
前記弁体収容部材が、前記複数の弾性片によって前記固定鉄心に固定されていることを特徴とする電気的駆動弁。
【請求項2】
前記複数の弾性片が、前記弁体収容部材の他方の端部が複数のスリットによって周方向に分割されることにより形成されている、請求項1に記載の電気的駆動弁。
【請求項3】
前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、
前記複数の弾性片が、前記弾性変形する前の状態において、先端が基端よりも外側に配置されるように前記弁体収容部材の軸方向に対して傾斜している、請求項1または請求項2に記載の電気的駆動弁。
【請求項4】
前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、
前記固定鉄心の内周面には、抜け止め凹部が設けられ、
前記複数の弾性片の外側面には、前記複数の弾性片における前記固定鉄心の内側から抜ける方向への移動を規制するように前記抜け止め凹部に掛かる抜け止め凸部が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電気的駆動弁。
【請求項5】
前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、
前記弁体収容部材が、円筒形状を有する第1部分と、前記第1部分より外径の小さい円筒形状を有する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する円環平板形状の第3部分と、を有し、
前記第1部分が、前記収容空間が設けられた前記一方の端部であり、
前記第2部分が、前記複数の弾性片が設けられた前記他方の端部であり、
前記第3部分における前記第2部分側の面が、前記固定鉄心の前記弁座側の端面に接している、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電気的駆動弁。
【請求項6】
前記固定鉄心の前記弁座側の端面には、回り止め凹部が設けられ、
前記第3部分における前記第2部分側の面には、前記弁体収容部材の軸周りの回転を規制するように前記回り止め凹部に掛かる回り止め凸部が設けられている、請求項5に記載の電気的駆動弁。
【請求項7】
前記複数の弾性片が外側に弾性変形するように、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入されており、
前記複数の弾性片が、前記弾性変形する前の状態において、先端が基端よりも内側に配置されるように前記弁体収容部材の軸方向に対して傾斜している、請求項1または請求項2に記載の電気的駆動弁。
【請求項8】
前記複数の弾性片が外側に弾性変形するように、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入されており、
前記固定鉄心の外周面には、抜け止め凹部が設けられ、
前記複数の弾性片の内側面には、前記複数の弾性片における前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側から抜ける方向への移動を規制するように前記抜け止め凹部に掛かる抜け止め凸部が設けられている、請求項1、請求項2または請求項7に記載の電気的駆動弁。
【請求項9】
前記弁本体には、前記複数の弾性片のうちの少なくとも1つの先端に接しかつ前記抜け止め凹部に掛かる固定凸部が設けられている、請求項8に記載の電気的駆動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気的駆動弁の一例である電磁弁が特許文献1に開示されている。特許文献1の電磁弁は、ハウジングと、弁体と、可動カラー部材と、を有している。弁体は、ハウジングの弁室内に配置され、弁口を開閉する。可動カラー部材は、円筒部と、フランジ部と、を有している。円筒部は、開弁状態において弁体を囲むように配置されている。フランジ部は、円筒部の上端部に接続されている。フランジ部の下面は、ハウジングに摺動可能に接している。電磁弁では、可動カラー部材によって、弁室内の流体による弁体への作用を抑制して、弁体の振動を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-239358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電磁弁において、可動カラー部材はハウジングに固定されておらず、ばねによってハウジングに押し付けられている。そのため、フランジ部とハウジングとの摺動によって金属粉などの異物が発生するおそれがあった。また、溶接やろう付けなどで可動カラー部材を固定すると製造コストが増えてしまう問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、開弁状態での流体による弁体への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる低コストの電気的駆動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気的駆動弁は、弁座を有する弁本体と、前記弁座に接離される弁体と、前記弁本体に収容されたプランジャと、前記弁体と前記プランジャとを連結する弁軸と、前記弁体と前記プランジャとの間に配置され、前記弁軸が内側に挿入された円筒形状を有する固定鉄心と、前記弁本体の外側に配置された電磁コイルと、円筒形状を有する弁体収容部材と、を有する電気的駆動弁であって、前記弁体収容部材の一方の端部には、開弁状態において前記弁体を収容する収容空間が設けられ、前記弁体収容部材の他方の端部には、複数の弾性片が設けられ、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入され、または、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入され、前記弁体収容部材が、前記複数の弾性片によって前記固定鉄心に固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、電気的駆動弁が、円筒形状を有する弁体収容部材を有している。弁体収容部材の一方の端部には、開弁状態において弁体を収容する収容空間が設けられている。弁体収容部材の他方の端部には、複数の弾性片が設けられている。前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されている、または、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入されている。そして、弁体収容部材が、複数の弾性片によって前記固定鉄心に固定されている。このようにしたことから、例えば圧入構造や凹凸構造を構成する複数の弾性片によって弁体収容部材が固定鉄心に固定され、簡易な構成で弁体収容部材を固定鉄心に固定することができる。そのため、電気的駆動弁は、低コストで開弁状態での流体による弁体への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる。
【0008】
本発明において、前記複数の弾性片が、前記弁体収容部材の他方の端部が複数のスリットによって周方向に分割されることにより形成されていることが好ましい。このようにすることで、弁本体収容部材の他方の端部に、複数の弾性片を比較的容易に形成することができる。
【0009】
本発明において、前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、前記複数の弾性片が、前記弾性変形する前の状態において、先端が基端よりも外側に配置されるように前記弁体収容部材の軸方向に対して傾斜している、ことが好ましい。このようにすることで、固定鉄心の内周面の径を弁体収容部材における複数の弾性片の基端がある箇所の外径と同一にし、複数の弾性片を固定鉄心の内側に挿入することで、複数の弾性片を内側に弾性変形させることができる。そのため、固定鉄心の内周面に複数の弾性片を弾性変形させるためのテーパー面や凸部などを設ける必要がなくなり、固定鉄心を比較的簡易な形状にすることができる。
【0010】
本発明において、前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、前記固定鉄心の内周面には、抜け止め凹部が設けられ、前記複数の弾性片の外側面には、前記複数の弾性片における前記固定鉄心の内側から抜ける方向への移動を規制するように前記抜け止め凹部に掛かる抜け止め凸部が設けられている、ことが好ましい。このようにすることで、抜け止め凹部に抜け止め凸部が掛かることによって、弁体収容部材が固定鉄心から脱落してしまうことを抑制できる。
【0011】
本発明において、前記複数の弾性片が内側に弾性変形するように、前記複数の弾性片が前記固定鉄心の内側に挿入されており、前記弁体収容部材が、円筒形状を有する第1部分と、前記第1部分より外径の小さい円筒形状を有する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する円環平板形状の第3部分と、を有し、前記第1部分が、前記収容空間が設けられた前記一方の端部であり、前記第2部分が、前記複数の弾性片が設けられた前記他方の端部であり、前記第3部分における前記第2部分側の面が、前記固定鉄心の前記弁座側の端面に接している、ことが好ましい。このようにすることで、抜け止め凹部に抜け止め凸部が掛かることによって複数の弾性片における固定鉄心の内側から抜ける方向への移動を規制するとともに、固定鉄心の弁座側の端面と第3部分における第2部分側の面とが接することによって複数の弾性片における固定鉄心の内側に挿入する方向への移動を規制することができる。そのため、弁体収容部材の移動(がたつき)を抑制して、異物の発生をより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明において、前記固定鉄心の前記弁座側の端面には、回り止め凹部が設けられ、前記第3部分における前記第2部分側の面には、前記弁体収容部材の軸周りの回転を規制するように前記回り止め凹部に掛かる回り止め凸部が設けられている、ことが好ましい。このようにすることで、回り止め凹部に回り止め凸部が掛かることによって、弁体収容部材の軸周りの回転を規制し、異物の発生をより効果的に抑制できる。
【0013】
本発明において、前記複数の弾性片が外側に弾性変形するように、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入されており、前記複数の弾性片が、前記弾性変形する前の状態において、先端が基端よりも内側に配置されるように前記弁体収容部材の軸方向に対して傾斜している、ことが好ましい。このようにすることで、固定鉄心の外周面の径を弁体収容部材における複数の弾性片の基端がある箇所の内径と同一にし、固定鉄心を複数の弾性片の内側に挿入することで、複数の弾性片を外側に弾性変形させることができる。そのため、固定鉄心の外周面に複数の弾性片を弾性変形させるためのテーパー面や凸部などを設ける必要がなくなり、固定鉄心を比較的簡易な形状にすることができる。
【0014】
本発明において、前記複数の弾性片が外側に弾性変形するように、前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側に挿入されており、前記固定鉄心の外周面には、抜け止め凹部が設けられ、前記複数の弾性片の内側面には、前記複数の弾性片における前記固定鉄心が前記複数の弾性片の内側から抜ける方向への移動を規制するように前記抜け止め凹部に掛かる抜け止め凸部が設けられている、ことが好ましい。このようにすることで、抜け止め凹部に抜け止め凸部が掛かることによって、弁体収容部材が固定鉄心から脱落してしまうことを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記弁本体には、前記複数の弾性片のうちの少なくとも1つの先端に接しかつ前記抜け止め凹部に掛かる固定凸部が設けられている、ことが好ましい。このようにすることで、固定鉄心を弁本体に固定できるとともに弁体収容部材が固定鉄心から脱落してしまうことをより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低コストで開弁状態における流体の弁体への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例に係る電磁弁の断面図である。
図2図1の電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図3図1の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。
図4図1の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である(続き)。
図5図1の電磁弁の第1変形例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図6図5の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。
図7図5の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である(続き)。
図8図1の電磁弁の第2変形例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図9図8の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。
図10図8の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である(続き)。
図11】本発明の第2実施例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図12図11の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。
図13図11の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である(続き)。
図14図11の電磁弁の第1変形例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図15図11の電磁弁の第2変形例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
図16図11の電磁弁の第3変形例に係る電磁弁の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第1実施例に係る電磁弁について、図1図4を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る電磁弁の断面図である。図2は、図1の電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図2では、磁気コイルの記載を省略している。図3図4は、図1の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。図3(a)は、弁体収容部材の正面図である。図3(b)は、弁体収容部材の平面図である。図4(a)は、図3(b)のIVA-IVA線に沿う断面図である。図4(b)は、図4(a)において二点鎖線の四角形で囲んだ箇所の拡大図である。
【0020】
図1図2に示すように、本実施例に係る電磁弁1は、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心50(「吸引子」ともいう。)と、電磁コイル60と、弁体収容部材70と、を有している。
【0021】
弁本体10は、弁本体部材11と、弁座部材12(「シート本体」ともいう。)と、を有している。弁本体部材11と弁座部材12とは、例えば、ステンレスなどの金属製である。
【0022】
弁本体部材11は、小径部11aと、大径部11bと、を有している。小径部11aは、上端が塞がれた円筒形状を有している。大径部11bは、小径部11aより外径の大きい円筒形状を有している。大径部11bは、小径部11aの下端部に同軸に一体的に接続されている。弁本体10は、段付きの円筒形状を有している。
【0023】
弁座部材12は、円筒部12aと、フランジ部12bと、を有している。フランジ部12bは、円筒部12aの下端部に一体的に接続されている。円筒部12aの上端面12cには、弁座13が設けられている。弁座13は、上方から下方に向かうにしたがって径が小さくなる内向きの環状テーパー面である。円筒部12aは、弁本体部材11の大径部11bの内側に配置されている。フランジ部12bは、大径部11bに接合されている。
【0024】
弁本体部材11の大径部11bの内側には、弁室14が設けられている。弁室14には、弁座部材12の円筒部12aが配置されている。円筒部12aの内側には、弁口15が設けられている。弁口15は、弁座13に囲まれており、弁室14に開口している。弁本体部材11の大径部11bには、円管である第1導管91が接合されている。第1導管91は、弁室14に接続されている。弁座部材12には、円管である第2導管92が接合されている。第2導管92は、弁口15に接続されている。第1導管91は入口管である。第2導管92は出口管である。
【0025】
弁体20は、平面視円形のキャップ形状を有している。弁体20は、例えば、真ちゅうやステンレスなどの金属製である。弁体20が弁座13に接すると、弁口15が閉じて閉弁状態となる。弁体20が弁座13から離れると、弁口15が開いて開弁状態となる。弁体20は、弁座13(すなわち弁口15)を開閉する。本実施例において、弁体20が弁座13に接することと、弁体20が弁座13を閉じることと、は同義である。
【0026】
プランジャ30は、円筒形状を有している。プランジャ30は、弁本体部材11の小径部11aに上下方向(第1軸線L1方向)に移動可能に収容されている。
【0027】
弁軸40は、円柱形状を有している。弁軸40の径は、弁体20の径より小さい。弁軸40の下端部は弁体20の上端部に一体的に接続されている。弁体20および弁軸40は、例えば、真ちゅうやステンレスなどの金属製である。弁軸40の上端部は、プランジャ30の下端部にかしめにより接続されている。弁軸40は、弁体20とプランジャ30とを連結している。
【0028】
固定鉄心50は、円筒形状を有している。固定鉄心50は、弁本体部材11の小径部11aの下部に配置されている。固定鉄心50は、弁体20とプランジャ30との間に配置されている。固定鉄心50の内側には、弁軸40が上下方向に移動可能に挿入されている。固定鉄心50とプランジャ30との間には、プランジャばね35が配置されている。プランジャばね35は、圧縮コイルばねである。プランジャばね35は、プランジャ30を上方(弁体20が弁座13から離れる方向)に押している。
【0029】
固定鉄心50の外周面50aには、周方向全体にわたって延在する溝状の固定凹部56が設けられている。小径部11aには内側に突出する固定凸部16が設けられている。固定凸部16は、小径部11aを外側からかしめたりポンチ打ちしたりして形成されている。固定凹部56に固定凸部16が掛かることにより固定鉄心50が小径部11aに固定される。
【0030】
固定鉄心50の内周面50bには、周方向全体にわたって延在する溝状の抜け止め凹部57が設けられている。抜け止め凹部57は、周方向に間隔をあけて配置された複数の穴でもよい。固定鉄心50の下端面50c(固定鉄心50の弁座13側の端面)には、回り止め凹部58が設けられている。回り止め凹部58は、円形の穴である。本実施例において、回り止め凹部58は、周方向に180度間隔で2つ設けられている。
【0031】
電磁コイル60は、円筒形状を有している。電磁コイル60の内側には、弁本体部材11の小径部11aが挿入されている。電磁コイル60に通電すると、プランジャ30に対して下方(弁体20が弁座13に近づく方向)に移動させる力(磁力)が働き、プランジャ30はプランジャばね35の上方に押す力に抗って下方に移動して、弁体20が弁座13に接する。
【0032】
弁体20が弁座13に接すると、弁体20における弁座13に接した箇所の内側の面積Sに対して弁室14の流体圧力と弁口15の流体圧力との圧力差ΔPが作用して、弁体20を下方に押す力が生じる。そのため、プランジャばね35のばねの設定荷重や上記面積Sなどを適宜設定することで、閉弁状態において上記圧力差ΔPが所定の閉弁維持圧力Pc以上のときに、電磁コイル60の通電を停止しても閉弁状態を維持することができる。
【0033】
弁体収容部材70は、図3図4に示すように、第1部分71と、第2部分72と、第3部分73と、を有している。第1部分71は、円筒形状を有している。第1部分71は、円筒部12aと上下方向に間隔をあけて配置されている。第2部分72は、第1部分71より外径の小さい円筒形状を有している。第3部分73は、第1部分71と第2部分72とを連結している。第1部分71は、弁体収容部材70の一方の端部である。第2部分72は、弁体収容部材70の他方の端部である。第3部分73の外周縁は、第1部分71の上端に一体的に接続されている。第3部分73の内周縁は、第2部分72の下端に一体的に接続されている。弁体収容部材70は、例えば、ステンレスなどの金属製である。
【0034】
第1部分71の内径は、弁体20の外径よりわずかに大きい。第1部分71の内側には、収容空間74が設けられている。弁体20は、開弁状態において収容空間74に配置される。本実施例において、弁体20は、閉弁状態において収容空間74の外に配置される。なお、第1部分71は、弁体20が閉弁状態においても収容空間74に配置されるように、当該第1部分71の下端が弁座部材12の近くまで延びた構成を有していてもよい。この構成では、第1部分71が、弁体20の開弁状態から閉弁状態までの移動をガイドする。
【0035】
第2部分72の内径は、弁軸40の外径よりわずかに大きい。第2部分72の内側には、弁軸40が挿入されている。第2部分72は、弁軸40を上下方向に移動可能に支持している。
【0036】
第2部分72には、その上端から下方に延びる複数のスリット76によって周方向に分割された複数の弾性片75が設けられている。すなわち、複数の弾性片75は、第2部分72が複数のスリット76によって周方向に分割されることにより形成されている。本実施例では、3つの弾性片75が設けられている。スリット76は、周方向に120度間隔で3つ設けられている。複数の弾性片75は、第2部分72の周方向に並ぶように配置されている。
【0037】
複数の弾性片75のそれぞれは、弾性変形する前の状態(すなわち外部から力が加えられていない状態)において、先端75aが基端75bより外側(径方向外方)に配置されている。本実施例において、複数の弾性片75は、上下方向に対して角度α(α=1~5度程度が好ましい)傾斜している。図4(b)において、線M1は第1軸線L1と平行な直線である。第2部分72における複数の弾性片75の基端75bがある箇所の外径は、固定鉄心50の内周面50bの径(具体的には、固定鉄心50の内周面50bにおける複数の弾性片75が挿入される箇所の径)と同一であるが、厳密には、当該外径が内周面50bの径よりわずかに小さい寸法であることが好ましい。
【0038】
複数の弾性片75の外側面75cには、抜け止め凸部77が設けられている。抜け止め凸部77は、概ね半球形状を有している。抜け止め凸部77は、複数の弾性片75のそれぞれの外側面75cにおいて、幅方向(周方向)の中心でかつ先端75a寄りの箇所に1つ配置されている。抜け止め凸部77は、複数の弾性片75が固定鉄心50の内側に挿入されたとき、固定鉄心50の抜け止め凹部57に進入し、抜け止め凹部57に掛かる。抜け止め凸部77が抜け止め凹部57に掛かることで、複数の弾性片75の下方(固定鉄心50の内側から抜ける方向)への移動が規制される。また、抜け止め凸部77が抜け止め凹部57に掛かった状態において、第3部分73の上面73c(第3部分73の第2部分72側の面)が、固定鉄心50の下端面50cに接している。第3部分73の上面73cが固定鉄心50の下端面50cに接することで、複数の弾性片75の上方(固定鉄心50の内側に挿入する方向)への移動が規制される。本実施例において、複数の弾性片75は、固定鉄心50の内側に挿入されると内側に弾性変形して、角度αが0になるように構成されている。これにより、複数の弾性片75の外側面75cが、固定鉄心50の内周面50bに押し付けられる。
【0039】
なお、本実施例の弾性片75は、弾性変形する前の状態において、先端75aが基端75bより外側に配置されるように形成されており、弾性片75は固定鉄心50の内周面50bを常時外方に押し続けている。しかしながら、弾性片75は、弾性変形する前の状態において、先端75aと基端75bとが上下方向に並ぶように(すなわち、弾性片75が上下方向と平行になるように)形成されていてもよく、または、先端75aが基端75bより内側(径方向内方)に配置されるように形成されていてもよい。これらの場合、弾性片75の抜け止め凸部77が抜け止め凹部57の底面を常時外方に押し続けなくとも、抜け止め凸部77が抜け止め凹部57に入り込んでいれば弁体収容部材70を固定鉄心50に固定できる。ただし、弾性片75の抜け止め凸部77が抜け止め凹部57の底面を常時外方に押し続ける構成とすると、弁体収容部材70のガタつきを防止できる。さらに、弾性片75は、抜け止め凸部77の下側(弁座13側)の曲面部分が抜け止め凹部57の下端に当接するように形成されていることがより好ましい。このようにすることで、弾性片75の弾性によって抜け止め凸部77が上方に移動しようとするため、第3部分73の上面73cが固定鉄心50の下面に常時押し付けられて、弁体収容部材70のガタつきを防止できる。
【0040】
第3部分73の上面73cには、回り止め凸部78が設けられている。回り止め凸部78は、概ね半球形状を有している。本実施例において、回り止め凸部78は、周方向に180度間隔で2つ設けられている。回り止め凸部78は、第3部分73の上面73cが固定鉄心50の下端面50cに接したとき、回り止め凹部58に進入するように配置される。回り止め凸部78が回り止め凹部58に掛かることで、弁体収容部材70の第1軸線L1周りの回転が規制される。なお、抜け止め凹部57が周方向に間隔をあけて配置された複数の穴である構成では、抜け止め凸部77が抜け止め凹部57に掛かることで、同様に、弁体収容部材70の第1軸線L1周りの回転が規制される。この構成では、回り止め凹部58および回り止め凸部78を省略してもよい。
【0041】
電磁弁1において、弁本体10(弁本体部材11、円筒部12a、弁座13、弁口15)、弁体20、プランジャ30、弁軸40、固定鉄心50、弁体収容部材70および第2導管92は、それぞれの中心軸が第1軸線L1上に配置(すなわち第1軸線L1と一致するように配置)されている。また、電磁弁1において、第1導管91は、その中心軸が第2軸線L2上に配置(すなわち第2軸線L2と一致するように配置)されている。第2軸線L2は、第1軸線L1と直交している。
【0042】
次に、上述した電磁弁1の動作の一例について説明する。
【0043】
電磁コイル60に通電すると、プランジャ30は、磁力によって下方に移動する。プランジャ30とともに弁軸40および弁体20が下方に移動する。弁体20が弁座13に接して電磁弁1は閉弁状態となる。
【0044】
閉弁状態において弁室14の流体圧力と弁口15の流体圧力との圧力差ΔPが閉弁維持圧力Pc以上のとき、電磁コイル60の通電を停止しても電磁弁1は閉弁状態を維持する。そして、上記圧力差ΔPが閉弁維持圧力Pcより小さくかつ電磁コイル60の通電が停止していると、プランジャ30は、プランジャばね31に押されて上方に移動する。プランジャ30とともに弁軸40および弁体20が上方に移動する。弁体20が弁座13から離れて電磁弁1は開弁状態となる。開弁状態において、弁体20は、弁体収容部材70の収容空間74に収容される。
【0045】
開弁状態において、第1導管91から弁室14に流入した流体は、弁口15を通り第2導管92から流出する。ここで、弁体収容部材70がない構成では、流体が、弁体20の上方に横方向(図1図2の左右方向)から流れ、弁軸40と固定鉄心50との隙間から弁本体部材11の小径部11aに流れる。これにより、プランジャ30の上方の流体圧力が弁体20の下方(弁体20と弁口15との間)の流体圧力より大きくなり、プランジャ30が下方に移動して弁座13(弁口15)が閉じてしまうことがある。一方、弁体収容部材70がある構成では、流体が、弁体20の下方から弁体20と弁体収容部材70の第1部分71との隙間を通り弁体20の上方に流れる。そのため、プランジャ30の上方の流体圧力が弁体20の下方の流体圧力より大きくなりにくく、プランジャ30が下方に移動することを抑制できる。このように、弁体収容部材70によって、開弁状態における流体の弁体への作用を抑制できる。
【0046】
弁体収容部材70の複数の弾性片75は、固定鉄心50の内側に挿入されている。複数の弾性片75は内側に弾性変形されており、複数の弾性片75の外側面75cは固定鉄心50の内周面50bに押し付けられていることが好ましい。これにより、弁体収容部材70が固定鉄心50に固定されている。また、複数の弾性片75の抜け止め凸部77が固定鉄心50の抜け止め凹部57に掛かり、弁体収容部材70の第3部分73の上面73cが固定鉄心50の下端面50cに接している。これにより、複数の弾性片75の上下方向の移動が規制される。また、弁体収容部材70の回り止め凸部78が固定鉄心50の回り止め凹部58に進入している。これにより、弁体収容部材70の第1軸線L1周りの回転が規制される。
【0047】
以上説明したように、電磁弁1は、弁座13を有する弁本体10と、弁座13に接離される弁体20と、弁本体10に収容されたプランジャ30と、弁体20とプランジャ30とを連結する弁軸40と、弁体20とプランジャ30との間に配置され、弁軸40が内側に挿入された円筒形状を有する固定鉄心50と、弁本体10の外側に配置された電磁コイル60と、円筒形状を有する弁体収容部材70と、を有する。弁体収容部材70の第1部分71には、開弁状態において弁体20を収容する収容空間74が設けられている。弁体収容部材70の第2部分72には、複数のスリット76によって周方向に分割された複数の弾性片75が設けられている。複数の弾性片75が内側に弾性変形するように、複数の弾性片75が固定鉄心50の内側に挿入されている。そして、弁体収容部材70が、複数の弾性片75によって固定鉄心50に固定されている。
【0048】
このようにしたことから、複数の弾性片75が復元力により固定鉄心50に押し付けられ、簡易な構成で弁体収容部材70を固定鉄心50に固定することができる。そのため、電磁弁1は、低コストで開弁状態での流体による弁体20への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる。
【0049】
また、複数の弾性片75が、弾性変形する前の状態において、先端75aが基端75bよりも外側に配置されるように弁体収容部材70の軸方向(第1軸線L1方向)に対して傾斜している。このようにすることで、固定鉄心50の内周面50bの径を弁体収容部材70の第2部分72における複数の弾性片75の基端75bがある箇所の外径と同一(厳密には、当該外径が内周面50bの径よりわずかに小さい寸法であることが好ましい)にし、複数の弾性片75を固定鉄心50の内側に挿入することで、複数の弾性片75を内側に弾性変形させることができる。そのため、固定鉄心50の内周面50bに複数の弾性片75を弾性変形させるためのテーパー面や凸部などを設ける必要がなくなり、固定鉄心50を比較的簡易な形状にすることができる。
【0050】
また、固定鉄心50の内周面50bには、抜け止め凹部57が設けられている。複数の弾性片75の外側面75cには、複数の弾性片75の下方(固定鉄心50の内側から抜ける方向)への移動を規制するように抜け止め凹部57に掛かる抜け止め凸部77が設けられている。このようにすることで、抜け止め凹部57に抜け止め凸部77が掛かることによって、弁体収容部材70が固定鉄心50から脱落してしまうことを抑制できる。なお、電磁弁1は、抜け止め凹部57および抜け止め凸部77を省略した構成を有していてもよい。
【0051】
また、弁体収容部材70が、円筒形状を有する第1部分71と、第1部分71より外径の小さい円筒形状を有する第2部分72と、第1部分71と第2部分72とを連結する円環平板形状の第3部分73と、を有している。第1部分71に収容空間74が設けられている。第2部分72に複数の弾性片75が設けられている。第3部分73の上面73cが、固定鉄心50の下端面50cに接している。このようにすることで、抜け止め凹部57に抜け止め凸部77が掛かることによって複数の弾性片75の下方への移動を規制するとともに、固定鉄心50の下端面50cと第3部分73の上面73cとが接することによって複数の弾性片75の上方への移動を規制することができる。そのため、弁体収容部材70の移動(がたつき)を抑制して、異物の発生をより効果的に抑制できる。
【0052】
また、固定鉄心50の下端面50cには、回り止め凹部58が設けられている。第3部分73の上面73cには、弁体収容部材70の第1軸線L1周りの回転を規制するように回り止め凹部58に掛かる回り止め凸部78が設けられている。このようにすることで、回り止め凹部58に回り止め凸部78が掛かることによって、弁体収容部材70の第1軸線L1周りの回転を規制し、異物の発生をより効果的に抑制できる。なお、電磁弁1は、回り止め凹部58および回り止め凸部78を省略した構成を有していてもよい。
【0053】
図5図7に、上述した電磁弁1の第1変形例に係る電磁弁1Aを示す。
【0054】
図5は、図1の電磁弁の第1変形例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図5では、磁気コイルの記載を省略している。図6図7は、図5の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。図6(a)は、弁体収容部材の正面図である。図6(b)は、弁体収容部材の平面図である。図7(a)は、図6(b)のVIIA-VIIA線に沿う断面図である。図7(b)は、図7(a)において二点鎖線の四角形で囲んだ箇所の拡大図である。以下の変形例の説明において、第1実施例に係る電磁弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
電磁弁1Aは、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心50A(「吸引子」ともいう。)と、電磁コイル60と、弁体収容部材70Aと、を有している。
【0056】
固定鉄心50Aは、回り止め凹部58を省略したこと以外は、第1実施例の固定鉄心50と同一の構成を有する。
【0057】
弁体収容部材70Aは、(1)抜け止め凸部77に代えて、複数の弾性片75の先端75aに設けられた外側に突出するくさび形状の抜け止め凸部77Aを有し、(2)回り止め凸部78を省略した、こと以外は、第1実施例の弁体収容部材70と同一の構成を有する。抜け止め凸部77Aは、外側に突出している。抜け止め凸部77Aは、第1軸線L1に沿う断面形状が先端が上方を向くくさび形状となるように形成されている。なお、弁体収容部材70Aの弾性片75は、固定鉄心50Aに挿入されると内側に弾性変形し、抜け止め凸部77Aが抜け止め凹部57に進入すると形状が復元する。これにより、抜け止め凸部77Aが抜け止め凹部57に掛かり、弁体収容部材70Aが固定鉄心50Aに固定される。そのため、弁体収容部材70Aが固定鉄心50Aに固定された後に弾性片75が弾性変形を維持する必要はない。しかしながら、ガタつき防止の観点から、弁体収容部材70Aが固定鉄心50Aに固定された後でも弾性片75が弾性変形を維持して、弾性片75が固定鉄心50Aの内周面50bを外方に押し続けるようにしてもよい。
【0058】
図8図10に、上述した電磁弁1の第2変形例に係る電磁弁1Bを示す。
【0059】
図8は、図1の電磁弁の第2変形例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図8では、磁気コイルの記載を省略している。図9図10は、図8の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。図9(a)は、弁体収容部材の正面図である。図9(b)は、弁体収容部材の平面図である。図10(a)は、図9(b)のXA-XA線に沿う断面図である。図10(b)は、図10(a)において二点鎖線の四角形で囲んだ箇所の拡大図である。
【0060】
電磁弁1Bは、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心50B(「吸引子」ともいう。)と、電磁コイル60と、弁体収容部材70Bと、を有している。
【0061】
固定鉄心50Bは、抜け止め凹部57および回り止め凹部58を省略したこと以外は、第1実施例の固定鉄心50と同一の構成を有する。
【0062】
弁体収容部材70Bは、抜け止め凸部77および回り止め凸部78を省略したこと以外は、第1実施例の弁体収容部材70と同一の構成を有する。
【0063】
上述した電磁弁1A、1Bも、第1実施例に係る電磁弁1と同様の作用効果を奏する。
【0064】
なお、電磁弁1Bでは、抜け止め凹部57および抜け止め凸部77が省略されており、複数の弾性片75が内側に弾性変形するように、複数の弾性片75が固定鉄心50Bの内側に挿入されている。このようにすることで、複数の弾性片75が復元力により固定鉄心50Bに押し付けられ、簡易な構成で弁体収容部材70Bを固定鉄心50Bに固定することができる。
【0065】
(第2実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第2実施例に係る電磁弁について、図11図13を参照して説明する。
【0066】
図11は、本発明の第2実施例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図11では、磁気コイルの記載を省略している。図12図13は、図11の電磁弁が有する弁体収容部材を示す図である。図12(a)は、弁体収容部材の正面図である。図12(b)は、弁体収容部材の平面図である。図13(a)は、図12(b)のXIIIA-XIIIA線に沿う断面図である。図13(b)は、図13(a)において二点鎖線の四角形で囲んだ箇所の拡大図である。以下の説明において、第1実施例に係る電磁弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施例の電磁弁2は、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心150と、電磁コイル60と、弁体収容部材170と、を有している。
【0068】
固定鉄心150は、円筒形状を有している。固定鉄心150は、弁本体部材11の小径部11aの下部に配置されている。固定鉄心150は、弁体20とプランジャ30との間に配置されている。固定鉄心150とプランジャ30との間には、プランジャばね35が配置されている。固定鉄心150の内側には、弁軸40が上下方向(第1軸線L1方向)に移動可能に挿入されている。
【0069】
固定鉄心150の外周面150aには、周方向全体にわたって延在する溝状の固定凹部156が設けられている。固定凹部156に固定凸部16が掛かることにより固定鉄心150が小径部11aに固定される。
【0070】
固定鉄心150の外周面150aには、周方向全体にわたって延在する溝状の抜け止め凹部157が設けられている。抜け止め凹部157は、周方向に間隔をあけて配置された複数の穴でもよい。
【0071】
弁体収容部材170は、円筒形状を有している。弁体収容部材170は、円筒部12aと上下方向に間隔をあけて配置されている。弁体収容部材170は、例えば、ステンレスなどの金属製である。
【0072】
弁体収容部材170の下端部171の内径は、弁体20の外径よりわずかに大きい。下端部171の内側には、収容空間174が設けられている。収容空間174には、開弁状態において弁体20が配置される。下端部171は、弁体収容部材170の一方の端部である。
【0073】
弁体収容部材170の上端部172には、その上端から下方に延びる複数のスリット176によって周方向に分割された複数の弾性片175が設けられている。すなわち、複数の弾性片175は、上端部172が複数のスリット176によって周方向に分割されることにより形成されている。本実施例では、3つの弾性片175が設けられている。スリット176は、周方向に120度間隔で3つ設けられている。複数の弾性片175は、弁体収容部材170の周方向に並ぶように配置されている。上端部172は、弁体収容部材170の他方の端部である。
【0074】
複数の弾性片175のそれぞれは、弾性変形する前の状態(すなわち外部から力が加えられていない状態)において、先端175aが基端175bより内側(径方向内方)に配置されている。複数の弾性片175は、上下方向に対して角度β(β=1~5度程度が好ましい)傾斜している。図13(b)において、線M2は第1軸線L1と平行な直線である。弁体収容部材170における複数の弾性片175の基端175bがある箇所の内径は、固定鉄心150の外周面150aの径(具体的には、固定鉄心150の外周面150aにおける複数の弾性片175に挿入される箇所の径)と同一であるが、厳密には、当該内径が外周面150aの径よりわずかに大きい寸法であることが好ましい。本実施例において、複数の弾性片175は、固定鉄心150が内側に挿入されると外側に弾性変形して、角度βが0になるように構成されている。これにより、複数の弾性片175の内側面175dが、固定鉄心150の外周面150aに押し付けられる。
【0075】
複数の弾性片175の内側面175dには、抜け止め凸部177が設けられている。抜け止め凸部177は、概ね半球形状を有している。抜け止め凸部177は、複数の弾性片175のそれぞれの内側面175dにおいて、幅方向(周方向)の中心でかつ先端175a寄りの箇所に1つ配置されている。抜け止め凸部177は、固定鉄心150が複数の弾性片175の内側に挿入されたとき、固定鉄心150の抜け止め凹部157に進入し、抜け止め凹部157に掛かる。抜け止め凸部177が抜け止め凹部157に掛かることで、複数の弾性片175の下方(固定鉄心150が複数の弾性片175の内側から抜ける方向)への移動が規制される。また、複数の弾性片175の先端175aが、固定鉄心150の外周面150aに設けられた下方を向く環状平面である段部150eに接している。
【0076】
弁体収容部材170の複数の弾性片175の内側には、固定鉄心150が挿入されている。複数の弾性片175は外側に弾性変形されており、複数の弾性片175の内側面175dは固定鉄心150の外周面150aに押し付けられている。これにより、弁体収容部材170が固定鉄心150に固定されている。また、複数の弾性片175の抜け止め凸部177が固定鉄心150の抜け止め凹部157に掛かり、複数の弾性片175の先端175aが、固定鉄心150の外周面150aに設けられた下方を向く環状平面である段部150eに接している。これにより、複数の弾性片175の上下方向の移動が規制される。
【0077】
以上説明したように、電磁弁2は、弁座13を有する弁本体10と、弁座13に接離される弁体20と、弁本体10に収容されたプランジャ30と、弁体20とプランジャ30とを連結する弁軸40と、弁体20とプランジャ30との間に配置され、弁軸40が内側に挿入された円筒形状を有する固定鉄心150と、弁本体10の外側に配置された電磁コイル60と、円筒形状を有する弁体収容部材170と、を有している。弁体収容部材170の下端部171には、開弁状態において弁体20を収容する収容空間174が設けられている。弁体収容部材170の上端部172には、複数のスリット176によって周方向に分割された複数の弾性片175が設けられている。複数の弾性片175が外側に弾性変形するように、固定鉄心150が複数の弾性片175の内側に挿入されている。そして、弁体収容部材170が、複数の弾性片175によって固定鉄心150に固定されている。
【0078】
このようにしたことから、複数の弾性片175が復元力により固定鉄心150に押し付けられ、簡易な構成で弁体収容部材170を固定鉄心150に固定することができる。そのため、電磁弁2は、低コストで開弁状態での流体による弁体20への作用を抑制できるとともに異物の発生を抑制できる。
【0079】
また、複数の弾性片175が、弾性変形する前の状態において、先端175aが基端175bよりも内側に配置されるように弁体収容部材170の軸方向(第1軸線L1方向)に対して傾斜している。このようにすることで、固定鉄心150の外周面150aの径を弁体収容部材170における複数の弾性片175の基端175bがある箇所の内径と同一(厳密には、当該内径が外周面150aの径よりわずかに大きい寸法であることが好ましい)にし、固定鉄心150を複数の弾性片175の内側に挿入することで、複数の弾性片175を外側に弾性変形させることができる。そのため、固定鉄心150の外周面150aに複数の弾性片175を弾性変形させるためのテーパー面や凸部などを設ける必要がなくなり、固定鉄心150を比較的簡易な形状にすることができる。
【0080】
また、固定鉄心150の外周面150aには、抜け止め凹部157が設けられている。そして、複数の弾性片175の内側面175dには、複数の弾性片175の下方(固定鉄心150が複数の弾性片175の内側から抜ける方向)への移動を規制するように抜け止め凹部157に掛かる抜け止め凸部177が設けられている。このようにすることで、抜け止め凹部157に抜け止め凸部177が掛かることによって、弁体収容部材170が固定鉄心150から脱落してしまうことを抑制できる。なお、電磁弁2は、抜け止め凹部157および抜け止め凸部177を省略した構成を有していてもよい。
【0081】
図14に、上述した電磁弁2の第1変形例に係る電磁弁2Aを示す。
【0082】
図14は、図11の電磁弁の第1変形例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図14では、磁気コイルの記載を省略している。以下の変形例の説明において、第2実施例に係る電磁弁2と同一(実質的に同一を含む)の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
電磁弁2Aは、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心150(「吸引子」ともいう。)と、電磁コイル60と、弁体収容部材170Aと、を有している。
【0084】
弁体収容部材170Aは、抜け止め凸部177に代えて、複数の弾性片175の先端175aに設けられた抜け止め凸部177Aを有していること以外は、第2実施例の弁体収容部材170と同一の構成を有する。抜け止め凸部177Aは、内側に突出している。抜け止め凸部177Aは、第1軸線L1に沿う断面形状が先端が上方を向くくさび形状となるように形成されている。
【0085】
図15に、上述した電磁弁2の第2変形例に係る電磁弁2Bを示す。
【0086】
図15は、図11の電磁弁の第2変形例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図15では、磁気コイルの記載を省略している。
【0087】
電磁弁2Bは、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心150B(「吸引子」ともいう。)と、電磁コイル60と、上述した弁体収容部材170Aと、を有している。
【0088】
固定鉄心150Bは、(1)固定凹部156を省略し、(2)固定凹部156を兼ねた抜け止め凹部157を有していること以外は、第2実施例の固定鉄心150と同一の構成を有する。
【0089】
弁体収容部材170Aの抜け止め凸部177Aが、固定鉄心150Bの抜け止め凹部157に掛かる。また、弁本体部材11の小径部11aには、固定凸部16が周方向に120度間隔で3つ設けられており、各固定凸部16が複数の弾性片175の先端175aに接しかつ抜け止め凹部157に掛かる。固定凸部16が複数の弾性片175の先端175aに接することで、弾性片175が内側に向けて押される。これにより、固定鉄心150Bを弁本体部材11の小径部11aに固定できるとともに弁体収容部材170Aが固定鉄心150Bから脱落してしまうことをより効果的に抑制できる。
【0090】
図16に、上述した電磁弁2の第3変形例に係る電磁弁2Cを示す。
【0091】
図16は、図11の電磁弁の第3変形例に係る電磁弁の弁体収容部材およびその近傍を拡大した断面図である。図16では、磁気コイルの記載を省略している。
【0092】
電磁弁2Cは、弁本体10と、弁体20と、プランジャ30と、弁軸40と、固定鉄心150Cと、電磁コイル60と、弁体収容部材170Cと、を有している。
【0093】
固定鉄心150Cは、抜け止め凹部157を省略したこと以外は、第2実施例の固定鉄心150と同一の構成を有する。
【0094】
弁体収容部材170Cは、抜け止め凸部177を省略したこと以外は、第2実施例の弁体収容部材170と同一の構成を有する。
【0095】
上述した電磁弁2A、2B、2Cも、第2実施例に係る電磁弁2と同様の作用効果を奏する。
【0096】
なお、電磁弁2Cでは、抜け止め凹部157および抜け止め凸部177が省略されており、複数の弾性片175が外側に弾性変形するように、固定鉄心150Cが複数の弾性片175の内側に挿入されている。このようにすることで、複数の弾性片175が復元力により固定鉄心150Cに押し付けられ、簡易な構成で弁体収容部材170Cを固定鉄心150Cに固定することができる。
【0097】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
(第1実施例)
1、1A、1B…電磁弁、10…弁本体、11…弁本体部材、11a…小径部、11b…大径部、12…弁座部材、13…弁座、14…弁室、15…弁口、16…固定凸部、20…弁体、30…プランジャ、40…弁軸、50、50A、50B…固定鉄心、50a…外周面、50b…内周面、50c…下端面、56…固定凹部、57…抜け止め凹部、58…回り止め凹部、60…電磁コイル、70、70A、70B…弁体収容部材、71…第1部分、72…第2部分、73…第3部分、73c…上面、74…収容空間、75…弾性片、75a…先端、75b…基端、75c…外側面、76…スリット、77、77A…抜け止め凸部、78…回り止め凸部、91…第1導管、92…第2導管、L1…第1軸線、L2…第2軸線
(第2実施例)
2、2A、2B、2C…電磁弁、150、150B、150C…固定鉄心、150a…外周面、150e…段部、156…固定凹部、157…抜け止め凹部、170、170A、170C…弁体収容部材、171…下端部、172…上端部、174…収容空間、175…弾性片、175a…先端、175b…基端、175d…内側面、176…スリット、177、177A…抜け止め凸部

図1
図2
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図16