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特開2022-165822二酸化塩素発生装置及び燻蒸用組成物
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  • 特開-二酸化塩素発生装置及び燻蒸用組成物 図1
  • 特開-二酸化塩素発生装置及び燻蒸用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165822
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】二酸化塩素発生装置及び燻蒸用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/03 20060101AFI20221025BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20221025BHJP
   C01B 11/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61L9/03
A61L9/01 F
C01B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071341
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】396018508
【氏名又は名称】ファーストケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】落合 堅司
(72)【発明者】
【氏名】長綱 誠
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA10
4C180CA03
4C180EA02Y
4C180EA23X
4C180EA24Y
4C180EA52Y
4C180EA57X
4C180EA63Y
4C180EB05X
4C180GG01
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】従来よりも発熱剤及び二酸化塩素発生剤との反応が確実かつスムーズに進行し、十分な二酸化塩素の発生量が安定して確保できるだけでなく、安全に二酸化塩素を生成でき、操作が簡単で、使用後の廃棄も容易で環境に優しい二酸化塩素発生装置及び燻蒸用組成物を提供する。
【解決手段】イージーオープンエンドの上蓋と底蓋とを備えた金属缶の内部に、水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素発生を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを水透過性又は水溶性の袋体に入れてなる燻蒸用組成物を収容した二酸化塩素発生装置。上蓋はパーシャルオープンエンドの蓋であり、底蓋はフルオープンエンドの蓋であることが好ましい。発熱剤から水蒸気を発生させるために十分な量の水を収容した容器を更に備えたキット形態としてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イージーオープンエンドの上蓋と底蓋とを備えた金属缶の内部に、水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを水透過性又は水溶性の袋体に入れてなる燻蒸用組成物を収容した二酸化塩素発生装置。
【請求項2】
前記上蓋はパーシャルオープンエンドの蓋であり、前記底蓋はフルオープンエンドの蓋である、請求項1に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項3】
さらに、前記発熱剤から水蒸気を発生させるために十分な量の水を収容した容器を備えている、請求項1又は2に記載の二酸化塩素発生装置。
【請求項4】
水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを水透過性又は水溶性の袋体に入れてなる燻蒸用組成物。
【請求項5】
前記固体の二酸化塩素発生剤は、固体酸及び亜塩素塩を少なくとも含む、請求項4に記載の燻蒸用組成物。
【請求項6】
前記固体の二酸化塩素発生剤は、さらに、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む、請求項5に記載の燻蒸用組成物。
【請求項7】
前記発熱剤は、生石灰を含む、請求項4~6の何れか1項に記載の燻蒸用組成物。
【請求項8】
前記袋体は、水溶性の袋体の外側に水透過性の袋体を重ねた袋体である、請求項4~7の何れか1項に記載の燻蒸用組成物。
【請求項9】
前記水溶性の袋体は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム製の袋体であり、前記水透過性の袋体は、不織布製又はスクリーンメッシュ製の袋体である、請求項8に記載の燻蒸用組成物。
【請求項10】
前記袋体は、前記水透過性の袋体の外側に、伸縮性の水透過性の袋体をさらに重ねた袋体である、請求項8又は9に記載の燻蒸用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱材を発熱させて水蒸気の共存下に二酸化塩素を発生せしめる装置、及び、燻蒸用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような二酸化塩素を発生せしめる装置としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたものが存在する。
特許文献1の二酸化塩素発生装置は、上面が開放された断熱容器の内部下方に、水を加えると発熱する発熱剤及び二酸化塩素水の活性化剤を収容し、その上方に底面部が破断可能なフィルムで構成された水容器を配置し、水容器に二酸化塩素水を収容してなる。そして、水容器の底面部のフィルムを水容器内に配置されたフィルム破断部材により破断し、二酸化塩素水をその活性化剤と発熱剤とに接触させることにより、水蒸気を発生させるとともに二酸化塩素を蒸散させる。
【0003】
特許文献2の二酸化塩素発生装置は、上端が開口した容器部と、容器部の内部を上下に仕切る穴開きプレートと、前記容器部の開口を覆う煙突状の上端開口部を備えた蓋部とを備えてなる。そして、水を加えると発熱する発熱剤の入った不織布製袋体を容器部の底部に載置し、この袋体に水を注いだ後、容器内部に穴あきプレートを配置し、この穴あきプレート上に、二酸化塩素発生剤の入った不織布製袋体を載置するとともに、上記蓋体を容器部の上端に装着する。そうすると、発熱剤と水との接触により発生した水蒸気が容器内部を上昇して二酸化塩素発生剤と接触することにより二酸化塩素が発生し、上記蓋体の開口部から二酸化塩素が水蒸気とともに放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-218826号公報
【特許文献2】特開2015-93811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の二酸化塩素発生装置では、二酸化塩素発生速度と水蒸気の発生時期が適切な時間帯に反応せず、また、二酸化塩素の発生量が不十分である点で問題があった。さらに、上記二酸化塩素発生装置の断熱容器及び水容器は、多種の金属部品と樹脂部品を堅固に組み立てた構造を備え、使用後には、断熱容器内に発熱剤の反応済の薬剤粉が残存するため、廃棄物の分別回収の観点から問題となっている。また、上記二酸化塩素発生装置は、使用前においては、水容器内に危険性のある二酸化塩素水が含まれるので、水容器の密閉性を確保するために高度の技術が要求されていた。
【0006】
特許文献2の二酸化塩素発生装置では、水蒸気と二酸化塩素発生剤との接触が不十分となる場合があり、二酸化塩素の発生量が不十分である点で問題があった。
【0007】
本発明は、従来よりも発熱剤及び二酸化塩素発生剤との反応が確実かつスムーズに進行し、十分な二酸化塩素の発生量が安定して確保できるだけでなく、安全に二酸化塩素を生成でき、操作が簡単で、使用後の廃棄も容易で環境に優しい二酸化塩素発生装置及びそれに使用する燻蒸用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一局面によれば、イージーオープンエンドの上蓋と底蓋とを備えた金属缶の内部に、水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを水透過性又は水溶性の袋体に包入してなる燻蒸用組成物を収容した二酸化塩素発生装置を提供する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記上蓋はパーシャルオープンエンドの蓋であり、前記底蓋はフルオープンエンドの蓋である。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記二酸化塩素発生装置は、さらに、前記発熱剤から水蒸気を発生させるために十分な量の水を収容した容器を備えている。
【0010】
本発明は、他の局面によれば、水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを水透過性又は水溶性の袋体に入れてなる燻蒸用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二酸化塩素発生装置によれば、上蓋を開いて形成された開口部から金属缶内に所定量の水を注入することで水蒸気とともに二酸化塩素が前記開口部から排出され、使用後は底蓋を開いてそこから金属缶内の収容物を容易に取り出すことができ、使用者は使用時に水を注入するだけでよいので安全に燻蒸を行うことができ、使用後は金属缶とその収容物を容易に分別回収できる。上蓋をパーシャルオープンエンドの蓋とし、底蓋をフルオープンエンドの蓋とした場合は、上蓋の開口部のノズル効果によって二酸化塩素が水蒸気に伴って勢いよく排出されるので、より高い燻蒸効果が得られる一方、使用後の底蓋の開口部から金属缶内の収容物を容易に取り出して、金属缶とその収容物を容易に分別回収できる。また、前記二酸化塩素発生装置が、発熱剤から水蒸気を発生させるために十分な量の水を収容した容器を備えている場合は、使用者が燻蒸に適切な量の水を計量する必要がないので、より簡単に燻蒸を行うことができる。
【0012】
本発明の燻蒸用組成物によれば、水をかけるだけで水蒸気に随伴して二酸化塩素を生成させるに必要な薬剤がワンパックにされているので、使用者は使用時に、この燻蒸用組成物を上記金属缶やその他の適当な容器に配置して水を注入するだけでよく、安全かつ簡単に燻蒸を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生装置を斜め下方から見た状態で示す斜視図である。
図2図1の二酸化塩素発生装置を斜め上方から見た状態で示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の二酸化塩素発生装置>
本発明の二酸化塩素発生装置は、金属缶の中に、水と接触することにより水蒸気とともに二酸化塩素を放出する燻蒸用組成物を収容したものである。
【0015】
図1及び図2に示されるように、図示の実施形態の二酸化塩素発生装置の金属缶10は、その内部に燻蒸用組成物入りの袋体21を収容した状態で、飲料缶や食品缶詰と同様に、金属筒11の上下開口部のそれぞれを円盤状の上蓋12と円盤状の底蓋13で閉止して構成されている。上蓋12及び底蓋13としては、開閉の容易性の点から、イージーオープンエンドの蓋が用いられる。図1の例では、上蓋12がパーシャルオープンエンドの蓋、底蓋13がフルオープンエンドの蓋とされているが、これに限定されるものではない。上蓋12及び底蓋13は、飲料缶や食品缶詰と同様の方法で金属筒11に固定することがきるが、例えば、金属缶市場で提供されている缶のダブルシーム(二重巻締工法)により固定することができ、金属缶10内部の気密性を長期間、安全に維持するようにシールすることが好ましい。金属缶は、アルミ製及び/又はスチール製が好ましいが、その他の金属製であってもよい。袋体21は水透過性又は水溶性の袋体であり、この中に、上記発熱剤及び上記二酸化塩素発生剤の粉体を入れることで、缶の開封時に薬剤の飛散を防ぐとともに、保管や移送中の振動のため、不織布の網目より微細粉発熱材の飛び出す事故を防止することができ、また、その水透過性又は水溶性により水との反応時間を制御することができる。
【0016】
図示の実施形態の二酸化塩素発生装置は、上蓋12のタブ16を常法に従い上蓋12の外方に引っ張ることにより、雫形状の切欠き部17に沿って開口する。そして、この開口から所定量の水を金属缶10内部に注入すると、金属缶10内に収容された袋体21に水が浸透し、その後、袋体21の内部に収容された発熱剤及び二酸化塩素発生剤が水と接触することにより、袋体21から水蒸気とともに二酸化塩素が発生し、切欠き部17に沿った上記開口から水蒸気とともに二酸化塩素が吐出され金属缶10の外部へ放出される。その際、切欠き部17に沿った上記開口のノズル効果により、水蒸気とともに二酸化塩素は金属缶10の上方へ上昇する。なお、タブ16は開口の際に切り離されるプルタブ式であっても、切り離されないステイオンタブ式であってもよい。
【0017】
使用後は、フルオープンエンドの底蓋13のタブ15を底蓋13の外方に引っ張ることにより、内周18に沿って開口する。その結果、底蓋13は大きく開口するので、内部に収容されている袋体21を金属缶10の外部へ簡単に取り出すことができる。したがって、金属缶10と袋体21を簡単に分別して回収することができる。
【0018】
本発明の二酸化塩素発生装置は、発熱剤から水蒸気を発生させるために十分な量の水を収容した容器を備えたキット形態の製品として供給することもできる。水の量は、金属缶10内に収容される発熱剤の量に応じて異なるが、発熱剤が生石灰である場合、生石灰1gに対して、0.3~1.5mLであることが好ましく、0.4~1.3mLであることがより好ましく、0.5~1.2mLであることがさらにより好ましい。水の量が多すぎると温度上昇が低くなるので水蒸気が発生しにくくなり、二酸化塩素の放出範囲が狭くなり、殺菌、消臭等の効果が十分に得られなくなる。水の量が少なすぎると温度上昇が高くなり過ぎ、二酸化塩素の発生量も十分でなくなり、やはり、殺菌、消臭等の効果が十分に得られなくなる。
例えば、金属缶10の容量が310mLである場合は、金属缶10内に30~60gの生石灰を収容し、水の量は25~55mLとすることが好ましい。
【0019】
<本発明の燻蒸用組成物>
本発明の燻蒸用組成物は、水に接触すると発熱する固体の発熱剤と、水に接触すると二酸化塩素を発生する固体の二酸化塩素発生剤とを少なくとも含み、これらを水透過性又は水溶性の袋体に入れてなる。
固体の発熱剤としては、上記した生石灰の他、粉末アルミニウム、粉末マグネシウムなどが挙げられる。これらの発熱剤は、1種単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
【0020】
固体の二酸化塩素発生剤としては、固体酸と亜塩素塩とを少なくも含んでなることが好ましい。固体酸と亜塩素酸塩とは、理論上当量以上で混合すればよいが、固体酸の水溶解性を考慮すると、固体酸を亜塩素酸塩に対して過剰に配合することが好ましく、通常、亜塩素酸塩1当量に対して2~7当量の固体酸を配合することが好ましく、2~5当量の固体酸を配合することが好ましい。固体酸としては、クエン酸、スルファミン酸、酢酸,ギ酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。亜塩素酸塩としては、亜塩素酸のアルカリ金属塩、亜塩素酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。亜塩素酸のアルカリ金属塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどが挙げられる。亜塩素酸のアルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウムなどが挙げられる。この二酸化塩素発生剤は、水と接触することにより、固体酸及び亜塩素酸塩が反応し、二酸化塩素の気体を生成する。二酸化塩素は、フリーラジカル(不対電子)持つ分子であり、常に他の分子から電子を奪う性質があるので、空間除菌や消臭に用いられている。さらに、二酸化塩素発生剤に塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを添加することで、反応時間の遅延化等の上記反応のコントロールをすることが出来る。
【0021】
1缶(内容積310mL)当たりの燻蒸用組成物を調製する場合の代表的な配合比率は下記のとおりである。
・生石灰 20~60g
・クエン酸 7~18g
・塩化ナトリウム 1~18g
・亜塩素酸ナトリウム 3~6g
・炭酸ナトリウム 4~15g
二酸化塩素を十分に放出させるため、亜塩素酸ナトリウム1gに対して、クエン酸は、1~5gの範囲で添加することが好ましい。生石灰に期待される作用は蒸気発生作用であるので、発熱作用で水の蒸気を確認出来る水の量は生石灰1gに対して上述した範囲の量であり、特に好ましくは0.6mlである。水蒸気の発生と同期して二酸化塩素を発生させるためには、生石灰1gに対して亜塩素酸塩を0.0005~0.002当量(亜塩素酸ナトリウム換算で0.045~0.18g)配合することが好ましく、0.0007~0.0015当量(亜塩素酸ナトリウム換算で0.063~0.14g)配合することがより好ましい。
【0022】
水透過性又は水溶性の袋体は、水透過性の袋体又は水溶性の袋体を単独で使用してもよいが、水溶性の袋体の外側に水透過性の袋体を重ねた袋体であることが好ましく、さらに、その外側に、最外層として、伸縮性の水透過性の袋体(例えば、ポリプロピレン又はナイロン製)を重ねたものがより好ましい。水溶性の袋体を単独で使用すると、水蒸気及び二酸化塩素が発生する際、溶解した水溶性の袋体の成分が水に溶解する過程で高粘度物質液体となり、水蒸気及び二酸化塩素のガス体と混合して発泡が生じて金属缶から溢れる現象が生じることがあるが、水溶性の袋体の外側に水透過性の袋体を重ねて使用すると発泡体を包み込み金属缶から溢れるのを防止する効果があり、また、使用後に生成する消石灰を収容して飛散を防止する効果があり、金属缶10から取り出して廃棄するのが容易になる。
【0023】
水溶性の袋体としては、水溶性フィルム等の水と接触すると水に溶解する材料でできた袋体であれば、特に限定されない。水溶性フィルムとしては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、食用又は薬用のオブラート、澱粉フィルムなどが挙げられる。水溶性の袋体は、水蒸気や二酸化塩素の放出をコントロールするために、1層で用いても、複数層重ねて用いてもよい。
【0024】
水透過性の袋体としては、水を透過する材料でできた袋体であれば、特に限定されないが、例えば、不織布製又はスクリーンメッシュ製の袋体が挙げられる。
不織布製の袋体を構成する不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製の不織布、ポリエステル製の不織布、ポリ乳酸製の不織布などが挙げられる。不織布の目付量は、10~60g/mが好ましく、厚さは0.03mm~0.5mmが好ましい。
【0025】
スクリーンメッシュ製の袋体を構成するスクリーンメッシュとしては、特に限定されないが、可撓性の高いプラスチック製のスクリーンメッシュが好ましく、例えば、ナイロン製、ポリエステル製、ポリ乳酸製、ポリオレフィン製のスクリーンメッシュが挙げられる。スクリーンメッシュのメッシュカウントは、20メッシュ~200メッシュが好ましく、開口率は30~80%が好ましい。
【0026】
上記のとおり最外層の袋体として水透過性の袋体を使用する場合は、該袋体は、伸縮性を備えた袋体が好ましく、例えば、ストッキングなどに用いられている網目の伸縮性素材からなる水透過性の袋体が好ましい。最外層の袋体として伸縮性の水透過性の袋体を使用した場合、反応後に生石灰から消石灰が生成して嵩が増大した場合でも、袋内に収容した状態を維持できるので、金属缶と分別して廃棄する際に好都合である。
【実施例0027】
実施例1(燻蒸用組成物の調製)
下記成分を下記配合量範囲にて混合し、本発明の二酸化塩素発生装置1缶(内容積310mL)の燻蒸用組成物を調製した。
・生石灰 50g
・クエン酸 10g
・塩化ナトリウム 10g
・亜塩素酸ナトリウム 5g
・炭酸ナトリウム 5g
上記組成物をPVAフィルム製の袋体を2層に重ねて形成した水溶性の袋体の中に収納し、この袋体をポリエチレン及びポリプロピレン製の不織布(110mm×105mm)の袋体に収納し、袋体入り燻蒸用組成物を調製した。
【0028】
比較例1(燻蒸用組成物の調製)
対照として、上記ポリエチレン及びポリプロピレン製の不織布(110mm×105m
m)を使用しない以外、実施例1と同様の袋体入り燻蒸用組成物を調製した。
【0029】
実施例2(二酸化塩素発生装置の作成及び使用)
直径65mm、長さ100mmの寸法の図1及び2に示す円筒状のスチール缶(内容積310mL)の中に、実施例1で調製した袋体入り燻蒸用組成物を入れ、上蓋12及び底蓋13を二重巻締により固定し、二酸化塩素発生装置を作成した。
また、蓋付きのプラスチック容器に収容した30mLの水を用意した。
【0030】
上蓋12のタブ16を外方に引っ張ることにより、切欠き部17に沿って開口させた。この開口から、上記プラスチック容器に収容された水30mLをスチール缶内に注入した。
その結果、注入から約1分後に、水蒸気の白い上昇気流とともに、二酸化塩素が上記開口から放出されることを確認した。二酸化塩素ガスの発生は、北川式ガス検知管方式による二酸化塩素(Tube No.116)法により発生品種ガスと発生量を確認した。スチール缶からのガスの発生は、1~10分間継続して、終了した。
その後、底蓋13のタブ15を外方に引っ張ることにより底蓋13の内部が内周18に沿って外れ、内部に収容されていた燻蒸用組成物を含む袋体21をスチール缶から容易に分離することができた。なお、スチール缶内で水と生石灰とが反応して生成した消石灰は、土地改良剤(酸性土壌の中和剤)に用いることができるので、廃棄物の削減に貢献できる。
【0031】
比較例2(二酸化塩素発生装置の作成及び使用)
実施例1で調製した袋体入り燻蒸用組成物の代わりに、比較例1で調製した袋体入り燻蒸用組成物を使用して実施例2と同様に実験を行った。
その結果、袋体の外面から発泡が生じ、スチール缶内に泡が充満し、切欠き部17に沿った開口からゴム風船状の気泡があふれ出しスチール缶全体を汚染した。また、水蒸気で、熱水性液が発生し、危険であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、自動車室内の消臭、殺菌等の他、環境衛生上消臭・殺菌を必要とするホテル、旅館、病院、介護施設等の内部空間の消臭、殺菌等を目的とした二酸化塩素による燻蒸の分野で利用できる。
【符号の説明】
【0033】
10 金属缶
11 金属筒
12 上蓋
13 底蓋
15 タブ
16 タブ
17 切欠き部
18 内周
21 袋体
図1
図2