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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165843
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】磁場発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/20 20060101AFI20221025BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20221025BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01F7/20 Z
H01F6/04
H01F27/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071385
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133939
【氏名又は名称】テラル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】河島 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊東 徹也
(72)【発明者】
【氏名】福井 聡
(57)【要約】
【課題】冷却容器を小型化できる、磁場発生装置を提供する。
【解決手段】この発明の磁場発生装置1は、鉄心2と、一対の超電導コイル3と、1つ又は一対の真空断熱容器4と、を備え、鉄心は、略C字状又は略U字状のヨーク21と、ヨークとは別体に構成され、ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置された、一対の分割鉄心部22と、を有し、各分割鉄心部には、各超電導コイルが、一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、分割鉄心部と分割鉄心部に巻かれた超電導コイルとからなる分割鉄心コイル組立体5は、1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、ヨークは、1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と、
一対の超電導コイルと、
1つ又は一対の真空断熱容器と、
を備え、
前記鉄心は、
略C字状又は略U字状のヨークと、
前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置された、一対の分割鉄心部と、
を有し、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとからなる分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている、磁場発生装置。
【請求項2】
一対の前記分割鉄心コイル組立体のうち少なくとも一方において、
前記分割鉄心部の外周面は、前記作業空間に面するとともに軸直方向内側に凹んだ環状の段差部を有しており、
前記超電導コイルが、前記周方向に沿って、前記段差部に巻かれている、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項3】
一対の前記分割鉄心コイル組立体のうち少なくとも一方において、
前記分割鉄心部の外周面は、環状の溝を有しており、
前記超電導コイルが、前記周方向に沿って、前記溝に巻かれている、請求項1に記載の磁場発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁場発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、略C字状の鉄心と、当該鉄心の一対の端部に巻かれた一対のコイルと、を備えた、磁場発生装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-123084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の磁場発生装置において、コイルとして超電導コイルを用いる場合、超電導コイルを冷却する必要があり、その冷却の方法としては、鉄心及び一対のコイルの全体を真空断熱容器に収容するものが考えられるが、真空断熱容器が大型になるという課題があった。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためのものであり、真空断熱容器を小型化できる、磁場発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁場発生装置は、
鉄心と、
一対の超電導コイルと、
1つ又は一対の真空断熱容器と、
を備え、
前記鉄心は、
略C字状又は略U字状のヨークと、
前記ヨークとは別体に構成され、前記ヨークの内側に位置し、互いに作業空間を介して対向配置された、一対の分割鉄心部と、
を有し、
各前記分割鉄心部には、各前記超電導コイルが、前記一対の分割鉄心部どうしが対向する方向に平行な軸線を中心とする周方向に沿って、それぞれ巻かれており、
前記分割鉄心部と前記分割鉄心部に巻かれた前記超電導コイルとからなる分割鉄心コイル組立体は、前記1つ又は一対の真空断熱容器に収容されており、
前記ヨークは、前記1つ又は一対の真空断熱容器の外に配置されている。
【0007】
本発明の磁場発生装置においては、
一対の前記分割鉄心コイル組立体のうち少なくとも一方において、
前記分割鉄心部の外周面は、前記作業空間に面するとともに軸直方向内側に凹んだ環状の段差部を有しており、
前記超電導コイルが、前記周方向に沿って、前記段差部に巻かれていると、好適である。
【0008】
本発明の磁場発生装置においては、
一対の前記分割鉄心コイル組立体のうち少なくとも一方において、
前記分割鉄心部の外周面は、環状の溝を有しており、
前記超電導コイルが、前記周方向に沿って、前記溝に巻かれていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、真空断熱容器を小型化できる、磁場発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る磁場発生装置を概略的に示す、断面図である。
図2図1の磁場発生装置の一部を拡大して示す、拡大図である。
図3図2の磁場発生装置の一部をA-A線に沿った断面により示す、A-A断面図である。
図4】分割鉄心コイル組立体の第1変形例を概略的に示す、断面図である。
図5】分割鉄心コイル組立体の第2変形例を概略的に示す、断面図である。
図6】分割鉄心コイル組立体の第3変形例を概略的に示す、断面図である。
図7】分割鉄心コイル組立体の第4変形例を概略的に示す、断面図である。
図8】分割鉄心コイル組立体の第5変形例を概略的に示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る磁場発生装置は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る磁場発生装置の実施形態を例示説明する。
【0012】
図1図3は、本発明の一実施形態に係る磁場発生装置1を示している。
図1に示すように、本実施形態の磁場発生装置1は、鉄心2と、一対の超電導コイル3と、一対の真空断熱容器4と、を備えている。
【0013】
鉄心2は、ヨーク21と、一対の分割鉄心部22と、を有している。
ヨーク21は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。ヨーク21は、略C字状又は略U字状(図1の例では、略C字状)をなしている。ヨーク21は、一対の端部21aを有している。図1の例において、ヨーク21は、一対の端部21aが作業空間6側を向くように指向されている。ただし、ヨーク21は、分割鉄心部22の軸線方向外側ADOの面と狭い隙間で対向する面が設けられていれば、ヨーク21の端部21aは任意の向きに指向されてよい。
一対の分割鉄心部22は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21とは別体に構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の内側に位置しており、互いに作業空間6を介して対向配置されている。作業空間6は、エアギャップである。
このようにして、鉄心2は、略C字状をなしている。
【0014】
本明細書では、一対の分割鉄心部22を通るとともに一対の分割鉄心部22どうしが対向する方向に延在する軸線Oに平行な方向を、「軸線方向AD」という。また、軸線方向ADにおいて作業空間6に近い側を「軸線方向内側ADI」といい、軸線方向ADにおいて作業空間6から遠い側を「軸線方向外側ADO」という。また、軸線方向ADに対し垂直な方向を「軸直方向OD」という。軸直方向ODにおいて軸線Oに近い側を「軸直方向内側」といい、軸直方向ODにおいて軸線Oから遠い側を「軸直方向外側」という。また、本明細書では、軸線Oを中心とする周方向を、単に「周方向」ということがある。また、「外周側」、「内周側」とは、特に断りがない限り、軸線Oを中心としたときの外周側、内周側をそれぞれ指す。
【0015】
一対の分割鉄心部22とヨーク21の一対の端部21aとは、軸線方向ADに対向している。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の一対の端部21aに対し軸線方向内側ADIに位置している。一対の分割鉄心部22の軸線方向外側ADOの面は、一対のヨーク21の軸線方向内側ADIの面に対して狭い隙間で対向している。
【0016】
図1図3に示すように、各分割鉄心部22には、各超電導コイル3が、軸線Oを中心とする周方向に沿って(言い換えれば、軸線Oの周りを周回するように)、それぞれ巻かれている。超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面221(具体的に、外周面221のうち、後述の段差部2211)の外周側に位置して、外周面221と径方向に離間対向するか、又は、外周面221と接触する。
超電導コイル3は、超電導体を含むコイル本体を少なくとも含む。超電導コイル3のコイル本体は、例えば帯状に構成される。超電導コイル3は、コイル本体に加え、コイル本体を内部に収容するコイルケースをさらに含んでもよい。コイルケースは、例えば樹脂等から構成される。
図3の例において、超電導コイル3は、軸直方向ODの断面において、軸線Oの周りを周回する略四角環形状をなしているが、超電導コイル3は、軸直方向ODの断面において、軸線Oの周りを周回する環形状である限り、例えば略円環形状、略楕円環形状等、任意の環形状をなしていてよい。
図示は省略するが、磁場発生装置1は、超電導コイル3に電流(例えば直流電流)を流すための電流供給部を備えている。
分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3とは、分割鉄心コイル組立体5を構成している。すなわち、分割鉄心コイル組立体5は、分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3と、からなる。磁場発生装置1は、一対の分割鉄心コイル組立体5を有している。
【0017】
各分割鉄心コイル組立体5は、各真空断熱容器4にそれぞれ収容されている。ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。一対の真空断熱容器4どうしは、作業空間6を介して互いに軸線方向ADに対向している。図2に示すように、真空断熱容器4における軸線方向内側ADIの壁42は、分割鉄心コイル組立体5と作業空間6との間に位置している。また、真空断熱容器4における軸線方向外側ADOの壁43は、分割鉄心コイル組立体5とヨーク21の端部21aとの間に位置している。
磁場発生装置1は、図示しない冷凍機を備えており、当該冷凍機により、真空断熱容器4の内部の機器が冷却される。真空断熱容器4は、冷凍機によって冷却された内部の機器の温度を保冷するように構成されている。これにより、真空断熱容器4は、冷凍機とともに、分割鉄心コイル組立体5ひいては超電導コイル3を、冷却し、超低温に維持するように構成されている。具体的に、超電導コイル3は、超電導体が超電導となるまで(ひいては、電気抵抗が実質的にゼロになるまで)、冷却される。
真空断熱容器4は、内部が真空にされるとともに、壁の一部又は全部に積層断熱材を有していると、好適である。積層断熱材は、例えば、金属蒸着樹脂フィルムと樹脂網を複数枚積層することにより構成させる。真空断熱容器4の本体を構成する材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、複合材のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等が挙げられる。
ただし、真空断熱容器4は、内部に分割鉄心コイル5が収容される限り、これとは異なる任意の方法により、分割鉄心コイル組立体5ひいては超電導コイル3を冷却するように構成されてもよい。
【0018】
このように構成された磁場発生装置1においては、図示しない電流供給部によって超電導コイル3に電流が流されると、鉄心2(ヨーク21及び一対の分割鉄心部22)に磁束が通り、作業空間6に強磁場が発生する。
作業空間6に発生する強磁場は、任意の用途に用いられてよい。
【0019】
例えば、磁場発生装置1は、アルミビレットの加熱装置に用いられてもよい。この場合、当該加熱装置は、磁場発生装置1に加えて、アルミビレットを回転させるモータを備える。超電導コイル3には、直流電流が流され、ひいては、作業空間6には直流強磁場が発生するようにされる。アルミビレットは、アルミビレットの中心軸線が軸線方向ADに対し垂直かつ水平になるように、作業空間6に配置され、モータによって、アルミビレットの中心軸線の周りに回転される。そうすると、アルミビレットには交流磁場が印加されたことと等価となり、アルミビレット内に誘導電流が流れ、アルミビレットが加熱される。
【0020】
ここで、本実施形態の効果を説明する。
まず、本実施形態によれば、磁場発生装置1が超電導コイル3を備えているので、仮に磁場発生装置1が超電導コイル3の代わりに通常の銅コイルを備えた場合と比べて、作業空間6において、より強い磁場を発生させることができる。
また、本実施形態によれば、磁場発生装置1が鉄心2を備えているので、仮に磁場発生装置1が鉄心2を備えない場合に比べて、超電導コイル3の製作に使用される超電導体の使用量を低減しつつ、強磁場を発生させることが可能であるため、超電導体を低減でき、ひいては、コストを低減できる。超電導体は、一般的に高価であるため、超電導体低減によるコスト低減の効果は大きいといえる。
また、本実施形態によれば、磁場発生装置1の鉄心2が、ヨーク21を有しているので、仮に鉄心2がヨーク21を有しない場合に比べて、磁気回路抵抗を低減でき、磁束を増加できる。
また、本実施形態によれば、上述のように、鉄心2がヨーク21と一対の分割鉄心部22とに分割され、各分割鉄心コイル組立体5が各真空断熱容器4にそれぞれ収容されており、ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。よって、仮に、分割されていない略C字状の鉄心と当該鉄心の一対の端部に巻かれた一対の超電導コイルとの全体を真空断熱容器に収容するようにした場合に比べて、真空断熱容器4を小型化することができる。それにより、外部からの熱侵入を低減でき、ひいては、省エネが可能となる。
なお、仮に、分割されていない略C字状の鉄心を用いる場合において、真空断熱容器を小型化するためには、真空断熱容器が当該鉄心の一対の端部の周りを周回する一対の超電導コイルのみを収容するように、真空断熱容器をドーナツ型に構成することも考えられる。しかし、その場合は、鉄心と超電導コイルとの間に真空断熱容器の壁が介在することになり、すなわち鉄心と超電導コイルとが離間するため、その分、超電導コイルの周長が長くなるため、超電導コイルの使用量が多くなり、コスト増につながる。また、鉄心と超電導コイルとが離間する分、漏れ磁束が増えるため、必要な超電導体の使用量が多くなり、コスト増につながる。その点、本実施形態によれば、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)に直接超電導コイル3を巻いており、ひいては鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを接触させて両者間の距離を無くしているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ型にした場合に比べて、超電導コイル3の周長を短くすることができ、ひいては、超電導体を低減でき、コストを低減できる。また、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを接触させて両者間の距離を無くしているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ型にした場合に比べて、漏れ磁束を低減でき、ひいては、超電導体を低減でき、コストを低減できる。また、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)と超電導コイル3とを接触させているので、上述のように真空断熱容器をドーナツ型にした場合に比べて、鉄心2(具体的には、分割鉄心部22)の蓄冷効果を利用して、超電導コイル3の温度上昇を抑制できるので、冷凍機の冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。
また、本実施形態によれば、各分割鉄心コイル組立体5において、通電時に、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力(図2の黒矢印)と、分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力(図2の白抜き矢印)とが、相殺するため、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力が小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造を簡易化することが可能になる。ひいては、外部から支持構造を介した超電導コイル3への熱侵入を低減することが可能になり、ひいては、冷凍機の冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。
【0021】
本実施形態においては、図1図2に示すように、磁場発生装置1が、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造として、支持部材7を有している。支持部材7は、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4から吊り下げるように構成されている。より具体的に、本例では、支持部材7は、例えば熱伝導率が小さい棒状に構成され、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4における上側の壁41から断熱を行い吊り下げるように構成されている。このように、支持部材7は、分割鉄心コイル組立体5の自重を支えるように構成されており、分割鉄心コイル組立体5の水平方向の動きを規制するようには構成されていない。このようにして、本実施形態では、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造(支持部材7)が、簡易に構成されている。
なお、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造は、これに限らず、任意でよい。
【0022】
本実施形態においては、図1図2に示すように、磁場発生装置1が、分割鉄心コイル組立体5と真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43との間に、スペーサ部材8を有している。これにより、通電時等に、分割鉄心コイル組立体5が軸線方向AD方向に過度に動くのを、より効果的に抑制できる。また、スペーサ部材8により、非通電時は、分割鉄心コイル組立体5と真空断熱容器4との間の隙間を保つ事により、通電停止時の熱侵入量を低減することが可能となる。
スペーサ部材8は、例えば、分割鉄心コイル組立体5の分割鉄心部22に固定され又は分割鉄心部22と一体に構成され、かつ、真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43とは別体かつ非固定状態にされてもよい。あるいは、スペーサ部材8は、分割鉄心コイル組立体5とは別体かつ非固定状態にされ、かつ、真空断熱容器4における軸線方向AD両側の壁42、43に固定され又は壁42、43と一体に構成されてもよい。
なお、スペーサ部材8は、設けられなくてもよい。
【0023】
本実施形態においては、図1図2に示すように、一対の分割鉄心コイル組立体5のそれぞれにおいて、分割鉄心部22の外周面221は、環状の段差部2211を有している。段差部2211は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在している。段差部2211は、(真空断熱容器4の壁42を介して)作業空間6に面している。段差部2211は、軸直方向内側に凹んでいる。具体的に、段差部2211は、軸直方向ODに略平行であるとともに軸線方向内側ADIを向く軸直方向面2211aと、軸直方向面2211aから分割鉄心部22の軸線方向内側ADIの端面223まで軸線方向ADに略平行に延在する軸線方向面2211bと、からなる。超電導コイル3は、軸線Oを中心とする周方向に沿って、段差部2211に巻かれている。
これにより、超電導コイル3と分割鉄心部22とが軸線方向ADに向き合うようにされているので、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力(図2の黒矢印)と分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力(図2の白抜き矢印)とが、より効果的に相殺し、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力がより小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造をより簡易化することが可能になる。また、超電導コイル3には、軸線方向外側ADOに向かうローレンツ力(図2の黒矢印)が作用するものの、超電導コイル3は、段差部2211(特に軸直方向面2211a)によって、軸線方向外側ADOへの移動が規制される。すなわち、段差部2211が、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制する機能を有している。そのため、別途、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制するための規制構造を設ける必要がない。ひいては、外部から規制構造を介した超電導コイル3への熱侵入を低減することが可能になり、ひいては、超電導コイル3の温度上昇を抑制できるので、冷凍機の冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。また、超電導コイル3は、その軸線方向内側ADIが、分割鉄心部22によって覆われず、(真空断熱容器4の壁42を介して)作業空間6に面しているので、その分、作業空間6に、より強い磁場を発生させることができる。また、超電導コイル3は、段差部2211の軸線方向面2211bだけでなく段差部2211の軸直方向面2211aにも接触しているので、その分、分割鉄心部22との接触面積が増え、ひいては、分割鉄心部22を介した超電導コイル3の冷却効果が向上する。
なお、上述の段差部2211は、一対の分割鉄心コイル組立体5の両方に設けられると好適であるが、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち一方のみにおいて設けられてもよい。
【0024】
本明細書で説明する各例においては、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3の外周面31は、図2の例のように、分割鉄心部22の外周面221と同じ軸直方向OD位置にあってもよいし、あるいは、図4の例のように、分割鉄心部22の外周面221よりも内周側にあってもよいし、あるいは、図5の例のように、分割鉄心部22の外周面221よりも外周側にあってもよい。
【0025】
本明細書で説明する各例においては、図6の例のように、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、分割鉄心部22の外周面221は、外周側へ突出した突起部2213を有し、この突起部2213に、段差部2211を有していてもよい。この場合、超電導コイル3の外周面31は、図6の例のように、突起部2213の外周面2213aと同じ軸直方向OD位置にあってもよいし、あるいは、突起部2213の外周面2213aよりも内周側にあってもよいし、あるいは、突起部2213の外周面2213aよりも外周側にあってもよい。
【0026】
図7に示すように、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、分割鉄心部22の外周面221は、環状の溝2212を有してもよい。溝2212は、軸線Oを中心とする周方向に沿って全周にわたって延在している。溝2212は、外周側が開放している。溝2212は、互いに対向するとともにそれぞれ軸直方向ODに略平行な一対の溝壁面2212aと、外周側を向くとともに軸線方向ADに略平行な溝底面2212bと、を有している。この場合、超電導コイル3は、周方向に沿って、溝2212に巻かれ、ひいては、溝2212に収容される。
この場合、上述の段差部2211に超電導コイル3を巻いた場合(図1図6)と同様に、超電導コイル3と分割鉄心部22とが軸線方向ADに向き合うようにされているので、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力と分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力とが、より効果的に相殺し、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力がより小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造をより簡易化することが可能になる。また、超電導コイル3には、軸線方向外側ADOに向かうローレンツ力が作用するものの、超電導コイル3は、溝2212(特に溝2212における軸線方向外側ADOの溝壁面2212a)によって、軸線方向外側ADOへの移動が規制される。すなわち、溝2212が、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制する機能を有している。そのため、別途、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制するための規制構造を設ける必要がない。ひいては、外部から規制構造を介した超電導コイル3への熱侵入を低減することが可能になり、ひいては、超電導コイル3の温度上昇を抑制できるので、冷凍機の冷却負担を軽減できるほか、超電導コイルを十分に冷却できることで超電導体の能力を有効に利用できる。また、超電導コイル3は、溝2212の溝底面2212bだけでなく溝2212の溝壁面2212aにも接触しているので、その分、分割鉄心部22との接触面積が増え、ひいては、分割鉄心部22を介した超電導コイル3の冷却効果が向上する。
この場合、分割鉄心部22のうち、溝2212と分割鉄心部22の軸線方向内側ADIの端面223との間の壁部222は、軸線方向ADの厚さが薄いほど、通電時に壁部222が磁束飽和しやすく、ひいては、作業空間6に、より強い磁場を発生させることができる。このような観点から、壁部222の軸線方向ADの厚さは、3mm以下であると、好適である。また、同様の観点から、溝2212の軸線方向ADの中心は、分割鉄心部22の軸線方向ADの中心よりも、軸線方向内側ADIに位置していると、好適である。
【0027】
ただし、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3は、分割鉄心部22において段差部2211や溝2212等の凹凸の無い外周面221に巻かれていてもよい。その場合も、超電導コイル3に軸線方向外側ADOに向かって作用するローレンツ力と、分割鉄心部22に軸線方向内側ADIに向かって作用する電磁力とが、相殺するため、分割鉄心コイル組立体5に作用する軸線方向ADの力が小さくなる。そのため、分割鉄心コイル組立体5を真空断熱容器4に対して支持するための支持構造を簡易化することが可能になる。ただし、図1図7の各例のように、超電導コイル3が分割鉄心部22の外周面221の段差部2211又は溝2212に巻かれている場合のほうが、この効果は大きい。なお、超電導コイル3が分割鉄心部22において段差部2211や溝2212等の凹凸の無い外周面221に巻かれている場合、別途、超電導コイル3の軸線方向外側ADOへの移動を規制するための規制構造を設けると、好適である。
【0028】
本明細書で説明する各例においては、一対の分割鉄心コイル組立体5のうち少なくとも一方において、超電導コイル3は、図1図7の各例のように、軸線方向ADに沿って1層のみからなる1段構造からなってもよいし、あるいは、図8の例のように、軸線方向ADに沿って複数層の超電導コイル層32が配列された多段構造からなってもよい。
【0029】
本明細書で説明する各例においては、図示は省略するが、真空断熱容器4の内部において、分割鉄心コイル組立体5の軸線方向内側ADIの面(具体的には、分割鉄心部22の軸線方向内側ADIの端面223、及び/又は、超電導コイル3の軸線方向内側ADIの端面)には、冷却板が当てられていてもよい。この場合、超電導コイル3と冷却板とが接触していると、より好適である。これにより、超電導コイル3をより効果的に冷却できる。
ただし、冷却板は設けられていなくてもよい。
【0030】
本明細書で説明する各例においては、ヨーク21の端部21aと、真空断熱容器4の軸線方向外側の壁43とは、図2に示すように、互いから離間していると好適であるが、互いに接触していてもよい。
【0031】
本明細書で説明する各例においては、真空断熱容器4や分割鉄心コイル組立体5の構成は、磁場発生装置1の軸線方向ADの中心に対して対称であると、好適であるが、磁場発生装置1の軸線方向ADの中心に対して非対称であってもよい。
【0032】
本明細書で説明する各例においては、磁場発生装置1は、真空断熱容器4を1つのみ備えてもよい。この場合、一対の分割鉄心コイル組立体5は、当該真空断熱容器4に収容され、また、ヨーク21は、当該真空断熱容器4の外に配置される。この場合も、仮に、分割されていない略C字状の鉄心と当該鉄心の一対の端部に巻かれた一対の超電導コイルとの全体を真空断熱容器に収容するようにした場合に比べて、真空断熱容器4を小型化することができる。
なお、この場合の真空断熱容器4は、例えば、図1の例の一対の真空断熱容器4どうしを連結管等で連結して一体化した構成を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る磁場発生装置は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 磁場発生装置
2 鉄心
21 ヨーク
21a 端部
22 分割鉄心部
221 外周面
2211 段差部
2211a 軸直方向面
2211b 軸線方向面
2212 溝
2212a 溝壁面
2212b 溝底面
2213 突起部
2213a 外周面
222 壁部
223 軸線方向内側の端面
3 超電導コイル
31 外周面
32 超電導コイル層
4 真空断熱容器
41 上側の壁
42 軸線方向内側の壁
43 軸線方向外側の壁
5 分割鉄心コイル組立体
6 作業空間
7 支持部材
8 スペーサ部材
O 軸線
AD 軸線方向(対向方向)
ADI 軸線方向内側
ADO 軸線方向外側
OD 軸直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8