(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165870
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ブレース固定金具及びブレースの取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20221025BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E04B1/58 H
E04B1/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071429
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】595118892
【氏名又は名称】株式会社ポラス暮し科学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】315007581
【氏名又は名称】BXカネシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】照井 清貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 高広
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB13
2E125AC18
2E125AG41
2E125BB13
2E125BD01
2E125BE08
2E125CA02
2E125CA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブレース固定金具にモーメントや引き剥がし力が作用しても、各取付面部と各構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないブレース固定金具を提供する。
【解決手段】ブレース固定金具1は、柱2の入隅ISを形成する面2aに取り付けられ、柱2の軸方向に沿った第1軸AX1を有する第1取付面部10と、横架材3の入隅ISを形成する面3aに取り付けられ、横架材3の軸方向に沿った第2軸AX2を有する第2取付面部20と、第1取付面部10と第2取付面部20を連結し、ブレース4が取り付けられる連結面30を備え、第1取付面部10には、柱2にねじ込まれるビスが挿通する複数の第1ビス孔が設けられ、第1ビス孔は、下端部の近傍領域と上端部の近傍領域に集中し、第2取付面部20には、横架材3にねじ込まれるビスが挿通する複数の第2ビス孔が設けられ、第2ビス孔は、右端部の近傍領域と左端部の近傍領域に集中している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱又は横架材からなる第1構造部材と該第1構造部材に組み付けられる第2構造部材の入隅に空間を残して、前記第1構造部材と前記第2構造部材に取り付けられるブレース固定金具であって、
前記ブレース固定金具は、
前記第1構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第1構造部材の軸方向に沿った第1軸を有する第1取付面部と、
前記第2構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第2構造部材の軸方向に沿った第2軸を有する第2取付面部と、
前記第1取付面部と前記第2取付面部を連結し、ブレースが取り付けられる連結面部を備え、
前記第1取付面部は、前記第1軸の方向において、前記入隅側に位置する第1入隅側端部と該第1入隅側端部に対向する第1非入隅側端部を有し、
前記第1取付面部には、前記第1構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第1線状部材孔が設けられ、該第1線状部材孔は、前記第1入隅側端部の近傍領域と前記第1非入隅側端部の近傍領域に集中し、
前記第2取付面部は、前記第2軸の方向において、前記入隅側に位置する第2入隅側端部と該第2入隅側端部に対向する第2非入隅側端部を有し、
前記第2取付面部には、前記第2構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第2線状部材孔が設けられ、該第2線状部材孔は、前記第2入隅側端部の近傍領域と前記第2非入隅側端部の近傍領域に集中していること
を特徴とするブレース固定金具。
【請求項2】
前記第1入隅側端部の近傍領域には、前記第1構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第1棒状部材孔が設けられ、前記第2入隅側端部の近傍領域には、前記第2構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第2棒状部材孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレース固定金具。
【請求項3】
前記第1入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第1線状部材孔の個数は、前記第1非入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第1線状部材孔の個数より多く、前記第2入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第2線状部材孔の個数は、前記第2非入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第2線状部材孔の個数より多いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のブレース固定金具。
【請求項4】
前記ブレース固定金具は、1枚の金属板に曲げ加工を施した構造であり、前記第1取付面部と前記第2取付面部は、前記連結面部から曲げられて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載したブレース固定金具。
【請求項5】
前記連結面部は略等脚台形状を有することを特徴とする請求項4記載のブレース固定金具。
【請求項6】
柱又は横架材からなる第1構造部材と該第1構造部材に組み付けられる第2構造部材の入隅に空間を残して、前記第1構造部材と前記第2構造部材にブレース固定金具を介して取り付けられるブレースの取付構造であって、
前記ブレース固定金具は、
前記第1構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第1構造部材の軸方向に沿った第1軸を有する第1取付面部と、
前記第2構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第2構造部材の軸方向に沿った第2軸を有する第2取付面部と、
前記第1取付面部と前記第2取付面部を連結し、ブレースが取り付けられる連結面部を備え、
前記第1取付面部は、前記第1軸の方向において、前記入隅側に位置する第1入隅側端部と該第1入隅側端部に対向する第1非入隅側端部を有し、
前記第1取付面部には、前記第1構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第1線状部材孔が設けられ、該第1線状部材孔は、前記第1入隅側端部の近傍領域と前記第1非入隅側端部の近傍領域に集中し、
前記第2取付面部は、前記第2軸の方向において、前記入隅側に位置する第2入隅側端部と該第2入隅側端部に対向する第2非入隅側端部を有し、
前記第2取付面部には、前記第2構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第2線状部材孔が設けられ、該第2線状部材孔は、前記第2入隅側端部の近傍領域と前記第2非入隅側端部の近傍領域に集中していること
を特徴とするブレースの取付構造。
【請求項7】
前記第1入隅側端部の近傍領域には、前記第1構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第1棒状部材孔が設けられ、前記第2入隅側端部の近傍領域には、前記第2構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第2棒状部材孔が設けられていることを特徴とする請求項6記載のブレースの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造軸組構造の建築物において、柱と横架材あるいは横架材同士を組み付けた骨格にブレースや筋交を取り付けるために使用されるブレース固定金具及びブレース固定金具を使用したブレースの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造軸組構造の建築物においては、鉛直方向に木製の柱を配置し、水平方向に木製の横架材(梁、土台等)を配置し、柱と横架材又は横架材同士を組み付けて骨格を形成し、骨格で形成される矩形の対角線上にブレースあるいは筋交い(以下「ブレース等」という)を取り付け、骨格構造の補強が図られている。
この場合、ブレース等の取付は、結合された柱と横架材等に跨って金具(以下「ブレース固定金具」という。)を取り付け、ブレース固定金具にブレース等を固定することにより行われることが多いが、柱と横架材等で形成される骨格(矩形)の入隅は、配線や配管あるいは柱と横架材を固定する金具等が配置されるため、骨格の入隅に空間が残るようにして、ブレース固定金具を柱と横架材等に跨って取り付けることが望ましい。
また、ブレース固定金具は、他の金具と同様に、低コストで容易に製造できる加工性も要求される。
そのため、ブレース等の取付構造やブレース固定金具に関し、骨格の入隅に空間が残る構造・形状にしたり、ブレース固定金具の加工性の向上を図った種々の提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2005-16102号公報)には、梁2に取り付けられる第1の取付部42と、柱3に取り付けられる第2の取付部43と、第1の取付部42と第2の取付部43とを連結する連結部44とを有し、第1の取付部42は平板部42aとリブ部42bとを備え、第2の取付部43は平板部43aとリブ部43bとを備え、連結部44は平板部44aとリブ部44bとを備え、連結部44のリブ部44bにはブレース17が取り付けられるようにし、梁2と柱3で形成される入隅に空間が残るように梁2と柱3に取り付けられる耐震補強具41(引用文献1の段落[0051]~[0059]、
図10~12)が開示されている。
そして、特許文献1の耐震補強具41においては、平板部42aに設けられた孔部42cと梁2に設けられた貫通孔2hにボルト14aを挿通させてナット14bと螺合して、第1の取付部42が梁2の主面2bに取り付けられ、平板部43aに設けられた孔部43cと柱3に設けられた貫通孔3fにボルト14aを挿通させてナット14bと螺合して、第2の取付部43が柱3の主面3bに取り付けられる。
しかしながら、特許文献1の耐震補強具41を1枚の金属板を加工して作製する場合、平板部42a、43a、44aとリブ部42b、43b、44bは曲げ加工により形成できるが、リブ部42b、43b、44bは溶接等により連結する必要があり、加工性が悪いという欠点がある。
また、一般的に、ボルトとナットで金具を梁や柱に取り付ける場合、梁や柱に設けられた貫通孔の内径をボルトの径より若干大きくして、貫通孔とボルトの間にクリアランスが設けられることから、特許文献1の耐震補強具41の梁2と柱3への取付においても、貫通孔2h、3fとボルト14aの間にクリアランスが設けられる。
しかしながら、地震や強風等により梁2と柱3の結合部が変形しようとしてブレース17に引張力が作用して、第1の取付部42と第2の取付部43を梁2と柱3からずらそうとするせん断力が作用した場合、第1の取付部42と第2の取付部43が上記クリアランス分だけずれ、梁2と柱3の結合部の初期変形を完全に防止することはできないという問題がある。
【0004】
この点、特許文献2(特開2005-36625号公報)には、溝形鋼材10Cにボックス型筋交い金物上部鉄板10Aとボックス型金物下部鉄板10Bを溶接し、上部鉄板10Aの溶接面に鉄筋ブレース7を挿通して固定し、上部鉄板10Aの柱接触面10A2を柱固定ボルト11Aとホールダウン部分固定ビス14で柱2に固定し、下部鉄板10Bを横架材固定ボルト11Bで梁4に固定したホールダウン機能付きの金物101が開示されている。
特許文献2の金物101は、上部鉄板10Aの柱接触面10A2が柱固定ボルト11Aとホールダウン部分固定ビス14で柱2に固定されているものの、下部鉄板10Bは横架材固定ボルト11Bのみで梁4に固定されていることから、上部鉄板10Aと下部鉄板10Bを柱2と梁4からずらそうとするせん断力が作用した場合、柱2と梁4の結合部の初期変形を完全に防止することはできない。
また、特許文献2の金物101においては、柱2と梁4で形成される入隅に空間を残すことができず、溝形鋼材10Cに上部鉄板10Aと下部鉄板10Bを溶接されることから、加工性もきわめて悪くなる。
【0005】
次に、特許文献3(特開2012-132258号公報)には、木造構造物の仕口部3を構成する柱1及び梁2それぞれに取付固定するための第1固定部5bと第2固定部5cを有し、第1固定部5bには、複数の取付孔7を、幅方向に一定間隔Dを隔てる偶数の列に並べると共に、長さ方向に隣り合う列で位置をずらして一定ピッチPで並べて、千鳥配置で形成すると共に、第2固定部5cには、複数の取付孔7を、千鳥配置を幅方向で反転させた反転千鳥配置で形成し、取付孔7にコーチボルトやビス、釘などの固定部材6を挿通して、柱1と梁2に第1固定部5bと第2固定部5cを取付固定する仕口金物が開示されている。
特許文献4(意匠登録第1511570号公報)には、柱の側面にビスで固定される略長方形状の取付面部と横架材に上面にビスで固定される略長方形状の取付面部と、これらの取付面部を連結する略等脚台形状の連結面部からなり、連結面部の中央に穴を設け筋交い(ブレース)が取り付けられるようにした建築用金物が開示されている。
上記特許文献3の仕口金物において、第1固定部5bと第2固定部5cを連結する支持板部5aに特許文献3のようなブレースを取り付けた場合、地震や強風等により仕口部3が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、第1固定部5bと第2固定部5cを柱1と梁2からずらそうとするせん断力が作用しても、第1固定部5bと第2固定部5cは、ボルトとナットではなくコーチボルトやビス、釘などの固定部材6で柱1と梁2に固定されていることから、特許文献1のような梁2と柱3結合部の初期変形、すなわち、仕口部3の初期変形は生じない。
特許文献4においても、地震や強風等により柱と横架材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、取付面部を柱や横架材からずらそうとするせん断力が作用しても、取付面部はビスで柱や横架材に固定されていることから、柱と横架材の結合部の初期変形は生じない。
【0006】
ところで、特許文献3の仕口金物や特許文献4の建築用金物のように、柱と梁(横架材)のような結合される2つ構造部材の側面(入隅を形成する面)に取り付けられる2つ取付面部と、各取付面部を連結する連結面部を備え、連結面部にブレースを取り付けた金物を2つの構造部材で形成される入隅に空間を残して取り付けた場合、地震や強風等により2つの構造部材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用すると、上記のようなせん断力の他に、各取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に各構造部材の側面に沿って回転させようとするモーメントが作用する場合がある。
このようなモーメントが作用すると、特許文献3の固定部材6(特許文献4のビス)のうち、第1固定部5b・第2固定部5c(特許文献4の取付面部)の中央部から長手方向に離れた位置にある固定部材6(特許文献4のビス)で固定された部分に過大の力が作用して、その部分が損傷(塑性変形)するという問題が生ずる。
また、ブレースが取り付けられた特許文献3の仕口金物(特許文献4の建築用金物)においては、地震や強風等により仕口部3や柱と横架材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用すると、上記のようなせん断力やモーメントの他に、第1固定部5bと第2固定部5c(特許文献4の取付面部)を柱と梁(特許文献4の横架材)から引き剥がすそうとする引き剥がし力が作用し、この引き剥がし力により第1固定部5bと第2固定部5c(特許文献4の取付面部)に作用する応力は、仕口部3(特許文献4の柱と横架材の結合部)に近い部分に集中する。
このため、第1固定部5bと第2固定部5c(特許文献4の取付面部)に作用する引き剥がし力により、固定部材6(特許文献4のビス)のうち、仕口部3(特許文献4の柱と横架材の結合部)に近い位置にある固定部材6(特許文献4のビス)で固定された部分が損傷(塑性変形)するという問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-16102号公報
【特許文献2】特開2005-36625号公報
【特許文献3】特開2012-132258号公報
【特許文献4】意匠登録第1511570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、結合される2つ構造部材の側面(入隅を形成する面)に取り付けられる2つの取付面部と各取付面部を連結してブレース等が取り付けられる連結面部を備えたブレース固定金具またはこのブレース固定金具を使用したブレース取付構造において、2つ構造部材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、各取付面部を各構造部材からずらそうとするせん断力が作用しても、2つ構造部材の結合部に初期変形が生じないようにし、各取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に各構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用したり、各取付面部を各構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、各取付面部と各構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、柱又は横架材からなる第1構造部材と該第1構造部材に組み付けられる第2構造部材の入隅に空間を残して、前記第1構造部材と前記第2構造部材に取り付けられるブレース固定金具であって、前記ブレース固定金具は、前記第1構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第1構造部材の軸方向に沿った第1軸を有する第1取付面部と、前記第2構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第2構造部材の軸方向に沿った第2軸を有する第2取付面部と、前記第1取付面部と前記第2取付面部を連結し、ブレースが取り付けられる連結面部を備え、前記第1取付面部は、前記第1軸の方向において、前記入隅側に位置する第1入隅側端部と該第1入隅側端部に対向する第1非入隅側端部を有し、前記第1取付面部には、前記第1構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第1線状部材孔が設けられ、該第1線状部材孔は、前記第1入隅側端部の近傍領域と前記第1非入隅側端部の近傍領域に集中し、前記第2取付面部は、前記第2軸の方向において、前記入隅側に位置する第2入隅側端部と該第2入隅側端部に対向する第2非入隅側端部を有し、前記第2取付面部には、前記第2構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第2線状部材孔が設けられ、該第2線状部材孔は、前記第2入隅側端部の近傍領域と前記第2非入隅側端部の近傍領域に集中しているブレース固定金具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項2の発明は、前記第1入隅側端部の近傍領域には、前記第1構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第1棒状部材孔が設けられ、前記第2入隅側端部の近傍領域には、前記第2構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第2棒状部材孔が設けられているブレース固定金具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項3の発明は、前記第1入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第1線状部材孔の個数は、前記第1非入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第1線状部材孔の個数より多く、前記第2入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第2線状部材孔の個数は、前記第2非入隅側端部の近傍領域に設けられた前記第2線状部材孔の個数より多いブレース固定金具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項4の発明は、前記ブレース固定金具は、1枚の金属板に曲げ加工を施した構造であり、前記第1取付面部と前記第2取付面部は、前記連結面部から曲げられて構成されているブレース固定金具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0013】
請求項5の発明は、前記連結面部は略等脚台形状を有するブレース固定金具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0014】
請求項6の発明は、柱又は横架材からなる第1構造部材と該第1構造部材に組み付けられる第2構造部材の入隅に空間を残して、前記第1構造部材と前記第2構造部材にブレース固定金具を介して取り付けられるブレースの取付構造であって、前記ブレース固定金具は、前記第1構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第1構造部材の軸方向に沿った第1軸を有する第1取付面部と、前記第2構造部材の前記入隅を形成する面に取り付けられ、前記第2構造部材の軸方向に沿った第2軸を有する第2取付面部と、前記第1取付面部と前記第2取付面部を連結し、ブレースが取り付けられる連結面部を備え、前記第1取付面部は、前記第1軸の方向において、前記入隅側に位置する第1入隅側端部と該第1入隅側端部に対向する第1非入隅側端部を有し、前記第1取付面部には、前記第1構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第1線状部材孔が設けられ、該第1線状部材孔は、前記第1入隅側端部の近傍領域と前記第1非入隅側端部の近傍領域に集中し、前記第2取付面部は、前記第2軸の方向において、前記入隅側に位置する第2入隅側端部と該第2入隅側端部に対向する第2非入隅側端部を有し、前記第2取付面部には、前記第2構造部材にねじ込み又は打ち込みされる線状部材が挿通する複数の第2線状部材孔が設けられ、該第2線状部材孔は、前記第2入隅側端部の近傍領域と前記第2非入隅側端部の近傍領域に集中しているブレースの取付構造を提供して、上記課題を解決するものである。
【0015】
請求項7の発明は、前記第1入隅側端部の近傍領域には、前記第1構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第1棒状部材孔が設けられ、前記第2入隅側端部の近傍領域には、前記第2構造部材に挿通される棒状部材が挿通する第2棒状部材孔が設けられているブレースの取付構造を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明のブレース固定金具においては、第1構造部材と第2構造部材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、第1取付面部と第2取付面部を第1構造部材と第2構造部材からずらそうとするせん断力が作用しても、第1構造部材と第2構造部材の結合部に初期変形が生じず、第1取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に第1構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用しても、第1取付面部と第1構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)せず、第2取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に第2構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用しても、第2取付面部と第2構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載の発明のブレース固定金具においては、さらに、第1取付面部を第1構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第1取付面部と第1構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)せず、第2取付面部を第2構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第2取付面部と第2構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないという効果を奏する。
【0018】
請求項3に記載の発明のブレース固定金具においては、さらに、第1取付面部を第1構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第1取付面部と第1構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)が一層防止でき、第2取付面部を第2構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第2取付面部と第2構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)が一層防止できるという効果を奏する。
【0019】
請求項4に記載の発明のブレース固定金具においては、さらに、1枚の金属板から第1取付面部と第2取付面部が容易に作製できるという効果を奏する。
【0020】
請求項5に記載の発明のブレース固定金具においては、さらに、第1構造部材と第2構造部材の入隅に容易に空間を残すことができるという効果を奏する。
【0021】
請求項6に記載の発明のブレースの取付構造においては、第1構造部材と第2構造部材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、第1取付面部と第2取付面部を第1構造部材と第2構造部材からずらそうとするせん断力が作用しても、第1構造部材と第2構造部材の結合部に初期変形が生じず、第1取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に第1構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用しても、第1取付面部と第1構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)せず、第2取付面部をその中央部を中心に第2構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用しても、第2取付面部と第2構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないという効果を奏する。
【0022】
請求項7に記載の発明のブレースの取付構造においては、さらに、第1取付面部を第1構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第1取付面部と第1構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)せず、第2取付面部を第2構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、第2取付面部と第2構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態のブレースの取付構造の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ブレース固定金具1の正面図である。
【
図8】
図5のB-B拡大断面図、C-C拡大断面図、D-D断面図及びE-E断面図である。
【
図10】ブレース固定金具1を柱2と横架材3とで形成される入隅に当てがった状態の斜視図である。
【
図11】
図1に示すブレースの取付構造の第1の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[ブレースの取付構造の構成]
図1は、本発明の実施形態のブレースの取付構造の構成を示す斜視図であり、図中、1はブレース固定金具、2は柱、2aは入隅側の面、3は横架材、3aは入隅側の面、4はブレース、4aは羽子板、4bはボルト、10は第1取付面部、20は第2取付面部、30は連結面部、AX1は第1軸、AX2は第2軸、ISは入隅、SPは空間であり、図において、Xは横架材3の軸方向(長手方向)に沿った方向(左右方向)、YはX方向と水平方向に垂直な方向(前後方向)、Zは柱2の軸方向に沿った方向で水平面(XY面)と垂直な方向(上下方向)である。
図1に示すブレースの取付構造においては、柱2と横架材3とで形成される入隅IS(二点鎖線で示す)に、ブレース固定金具1を介して、ブレース4が取り付けられている。
柱2は、本発明の第1構造部材となるものであり、横架材3は、本発明の第2構造部材となるもので、土台や梁等であり、柱2と横架材3には、木製の材料、例えば、ヒノキ(桧)、ヒバ(桧葉)、スギ(杉)等の木材が使用され、柱2と横架材3は、直交又は直交に近い状態にして組み付けられる。
ブレース固定金具1は、第1取付面部10、第2取付面部20及び連結面部30からなり、第1取付面部10と第2取付面部20は、連結面部30により連結されている(詳細は後述する。)
第1取付面部10は、柱2の入隅IS側の面2aに取り付けられ、柱2の軸方向(Z方向)に沿った第1軸AX1を有し、第2取付面部20は、横架材3の入隅IS側の面3aに取り付けられ、横架材3の軸方向(X方向)に沿った第2軸AX2を有し、ブレース固定金具1が取り付けられた入隅ISには、空間SPが残されている。
ブレース4は、入隅ISと入隅ISに対向する入隅の間に取り付けられ、柱2と横架材3等からなる骨組みを補強して耐力壁等の耐力構面を形成するものであり、ブレース4の羽子板4aは、ボルト4bとナット(図示せず)によりブレース固定金具1の連結面部30に取り付けられている。
【0025】
[ブレース固定金具1の構成]
図2は、ブレース固定金具1の斜視図、
図3は、ブレース固定金具1の左側面図、
図4は、ブレース固定金具1の平面図、
図5は、ブレース固定金具1の正面図、
図6は、ブレース固定金具1の背面図、
図7は、
図4のA-A断面図、
図8(a)は、
図5のB-B拡大断面図、
図8(b)は、
図5のC-C拡大断面図、
図8(c)は、
図5のD-D断面図、
図8(d)は、
図5のE-E断面図である。
図中、11は第1平板、11aは上端部、11bは下端部、12は上側ビス孔群、12hは第1ビス孔、13は下側ビス孔群、13hは第1ビス孔、14は第1ボルト孔、15a~15dは第1凹み、21は第2平板、21aは左端部、21bは右端部、22は左側ビス孔群、22hは第2ビス孔、23は右側ビス孔群、23hは第2ビス孔、24は第2ボルト孔、25a~25dは第2凹み、31は平板部、32は外側L字部、32aは外側端部、33は内側L字部、33aは内側端部、34はブレースボルト孔、35a~35fは第3凹み、36a、36b、37a、37bは切欠きである。
また、
図5と
図6において、網点で示す30Rは、外側端部32aから内側端部33aに向かう領域である。
上述のように、ブレース固定金具1は、第1取付面部10、第2取付面部20、及び、第1取付面部10と第2取付面部20を連結する連結面部30からなり、第1取付面部10と第2取付面部20は、連結面部30に対して直角又は直角に近い角度に起立している。
【0026】
第1取付面部10は、上端部11aと下端部11bを有する第1平板11に、上側ビス孔群12、下側ビス孔群13及び第1ボルト孔14が設けられて形成される。
第1取付面部10にあっては、柱2と横架材3の入隅ISにブレース固定金具1を取り付けたとき、第1軸AX1の方向において、入隅IS側に位置する下端部11bが本発明の第1入隅側端部となり、下端部11b(第1入隅側端部)に対向する上端部11aが本発明の第1非入隅側端部となる。
上側ビス孔群12は、上端部11aの近傍領域に集中して設けられた複数の第1ビス孔12hからなり、下側ビス孔群13は、下端部11bの近傍領域に集中して設けられた複数の第1ビス孔13hからなり、第1ボルト孔14は、下端部11bの近傍領域に設けられており、第1ビス孔12h、13hが本発明の第1線状部材孔となり、第1ボルト孔14が本発明の第1棒状部材孔となる。
そして、下側ビス孔群13を形成する第1ビス孔13hの個数は、上側ビス孔群12を形成する第1ビス孔12hの個数より多くなっている。
この場合、上端部11aの近傍領域は、上端部11aからZ方向下側に、第1平板11のZ方向(上下方向)の長さの1/10~2/5、望ましくは1/4~1/3程度寄った領域をいい、下端部11bの近傍領域は、下端部11bからZ方向上側に、第1平板11のZ方向(上下方向)の長さの1/10~2/5、望ましくは1/4~1/3程度寄った領域をいう。
また、第1取付面部10と連結面部30に跨る直角又は直角に近い角度の部分(境界部分)には、第1凹み15a~15dが設けられている。
この第1凹み15a~15dは、
図8(a)に示すように、上記直角又は直角に近い角度の部分を内側に押し込んで膨らますことにより形成されたものである。
【0027】
第2取付面部20は、第1取付面部10と同じ構造である。
すなわち、第2取付面部20は、左端部21aと右端部21bを有する第2平板21に、左側ビス孔群22、右側ビス孔群23及び第2ボルト孔24が設けられて形成される。
第2取付面部20にあっては、柱2と横架材3の入隅ISにブレース固定金具1を取り付けたとき、第2軸AX2の方向において、入隅IS側に位置する右端部21bが本発明の第2入隅側端部となり、右端部21b(第2入隅側端部)に対向する左端部21aが本発明の第2非入隅側端部となる。
左側ビス孔群22は、左端部21aの近傍領域に集中して設けられた複数の第2ビス孔22hからなり、右側ビス孔群23は、右端部21bの近傍領域に集中して設けられた複数の第2ビス孔23hからなり、第2ボルト孔24は、右端部21bの近傍領域に設けられており、第2ビス孔22h、23hが本発明の第2線状部材孔となり、第2ボルト孔24が本発明の第2棒状部材孔となる。
そして、右側ビス孔群23を形成する第2ビス孔23hの個数は、左側ビス孔群22を形成する第2ビス孔22hの個数より多くなっている。
この場合、左端部21aの近傍領域は、左端部21aからX方向右側に、第2平板21のX方向(左右方向)の長さの1/10~2/5、望ましくは1/4~1/3程度寄った領域をいい、右端部21bの近傍領域は、右端部21bからX方向左側に、第2平板21のX方向(左右方向)の長さの1/10~2/5、望ましくは1/4~1/3程度寄った領域をいう。
また、第2取付面部20と連結面部30に跨る直角又は直角に近い角度の部分(境界部分)には、第2凹み25a~25dが設けられている。
この第2凹み25a~25dは、
図8(b)に示すように、上記直角又は直角に近い角度の部分を内側に押し込んで膨らますことにより形成されたものである。
【0028】
連結面部30は、平板部31、外側L字部32及び内側L字部33からなり(
図8(c)参照)、正面から見た外形が略等脚台形となっており、外側L字部32の湾曲部が外側端部32aとなり、内側L字部33の湾曲部が内側端部33aとなる。
この場合、連結面部30の外側端部32aから内側端部33aに向かう領域30Rにおいては、外側端部32aから内側端部33aに向かう方向、すなわち、外側端部32aと内側端部33aに直交する方向の所定長さ当たりの厚み方向(Y方向)の断面積は、外側端部32a近傍となる外側L字部32において、外側L字部32を除く部分より2倍以上となっている。所定長さとは、外側L字部32の外側端部32aから内側端部33aに向かう方向の長さLzをいい、Lzは、外側L字部32のY方向の長さLyの1/2以下の長さをいう(
図8(c)参照)。
また、平板部31においては、中央から外側端部32aに寄った位置に、ブレースボルト孔34が設けられ、外側端部32aの両側には切欠き36a、36bが設けられ、内側端部33aの両側には、切欠き37a、37bが設けられている。
さらに、外側端部32aには、その長手方向に沿って第3凹み35a~35fが設けられている。
この第3凹み35a~35fは、
図7、
図8(d)に示すように、外側L字部32の折曲部を内側に押し込むことにより形成されたものである。
【0029】
[ブレース固定金具1の組立加工]
図9は、ブレース固定金具1の展開図であり、図中、40は金属板、41は第1面部、42は第2面部、43は第3面部、43pは外側折曲面部、43qは内側折曲面部であり、二点鎖線で表すf1~f4は折曲線である。
以下、ブレース固定金具1の組立加工について説明する。
ブレース固定金具1を組立加工するための金属板40は、第1面部41、第2面部42及び第3面部43からなり、第1面部41と第3面部43は折曲線f1で区画され、第2面部42と第3面部43は折曲線f2で区画される。
第1面部41は、第1取付面部10となる部分であり、上側ビス孔群12、下側ビス孔群13及び第1ボルト孔14が設けられている。
第2面部42は、第2取付面部20となる部分であり、左側ビス孔群22、右側ビス孔群23及び第2ボルト孔24が設けられている。
第3面部43は、連結面部30となる部分であり、中央部付近にブレースボルト孔34が設けられ、折曲線f1の近傍に切欠き36a、37aが設けられ、折曲線f2の近傍に切欠き36b、37bが設けられている。
また、第3面部43において、折曲線f3の外側は外側折曲面部43pとなっており、折曲線f4の外側は内側折曲面部43qとなっている。
【0030】
金属板40からブレース固定金具1への組立加工は、次のようにして行われる。
まず、第1面部41を折曲線f1に沿って第3面部43に対して直角又は直角に近い角度に折り曲げ、第1取付面部10を形成し、第2面部42を折曲線f2に沿って第3面部43に対して直角又は直角に近い角度に折り曲げ、第2取付面部20を形成する。
次いで、第3面部43において、外側折曲面部43pを折曲線f3に沿ってL字状に折り曲げ、外側L字部32を形成し、内側折曲面部43qを折曲線f4に沿ってL字状に折り曲げ、内側L字部33を形成する。
このとき、第3面部43には切欠き36a、36bが設けられているため、外側折曲面部43pを折曲線f3に沿って容易に折り曲げることができ、切欠き37a、37bが設けられているため、内側折曲面部43qを折曲線f4に沿って容易に折り曲げることができる。
この後、折曲線f1上の複数のスポット状部分を内側に押し込んで膨らませ、第1凹み15a~15dを形成し、折曲線f2上の複数のスポット状部分を内側に押し込んで膨らませ、第2凹み25a~25dを形成し、折曲線f3上の複数のスポット状部分を内側に押し込んで膨らませ、第3凹み35a~35fを形成する。
このようにボルト孔とビス孔等を設けた1枚の金属板40に対して、所定の折曲線に沿って曲げ加工を施し、複数のスポット状部分に押し込み加工を施すことにより、容易にブレース固定金具1を作製することができる。
【0031】
[ブレース固定金具1の取付]
図10は、ブレース固定金具1を柱2と横架材3とで形成される入隅に当てがった状態の斜視図であり、図中、50、60はボルト、51、61はナット、52、53、62、63はビスであり、ボルト50、60が本発明の棒状部材となり、ビス52、53、62、63が本発明の線状部材となる。
以下、
図10に基づいてブレース固定金具1の取付を説明する。
まず、第1取付面部10を、柱2の入隅側の面2aに当てがい、第2取付面部20を横架材3の入隅側の面3aに当てがう。
このとき、第1取付面部10の第1平板11と第2取付面部20の第2平板21は直交することから、第1取付面部10の第1軸AX1はZ方向を向き、第2取付面部20の第2軸AX2はX方向を向く。
柱2には、予めX方向の貫通孔が設けられ、横架材3には、予めZ方向の貫通孔が設けられており、第1取付面部10の第1ボルト孔14が柱2の貫通孔と合致し、第2取付面部20の第2ボルト孔24が横架材3の貫通孔と合致するように、ブレース固定金具1の位置決めを行う。
次いで、ボルト50を、第1ボルト孔14と柱2の貫通孔に挿通し、ボルト50の先端側のネジ部にナット51をねじ込み、ボルト50とナット51で第1取付面部10の第1平板11を柱2に固定する。
また、ボルト60を、第2ボルト孔24と横架材3の貫通孔に挿通し、ボルト60の先端側のネジ部にナット61をねじ込み、ボルト60とナット61で第2取付面部20の第2平板21を横架材3に固定する。
【0032】
この後、第1取付面部10において、ビス52を、上側ビス孔群12の各第1ビス孔12hから、柱2にねじ込み、ビス53を、下側ビス孔群13の各第1ビス孔13hから、柱2にねじ込む。
また、第2取付面部20において、ビス62を、左側ビス孔群22の各第2ビス孔22hから、横架材3にねじ込み、ビス63を、右側ビス孔群23の各第2ビス孔23hから、横架材3にねじ込む。
このとき、最初に、ボルト50・ナット51で第1取付面部10を柱2に位置決め固定し、ボルト60・ナット61で第2取付面部20を横架材3に位置決め固定することから、容易にビス52、53を第1ビス孔12h、13hから柱2にねじ込み、ビス62、63を第2ビス孔22h、23hから横架材3にねじ込みことができ、作業者の負荷が軽減される。
このようにして、第1取付面部10が、ボルト50・ナット51とビス52、53により、柱2に強固に固定され、第2取付面部20が、ボルト60・ナット61とビス62、63により、横架材3に強固に固定され、ブレース固定金具1が、柱2と横架材3とで形成される入隅ISに取り付けられる。
柱2と横架材3の入隅ISに取り付けられたブレース固定金具1に対しては、
図1に示すように、ブレース4の羽子板4aを連結面部30の平板部31に当てがい、羽子板4aのボルト孔(図示せず)とブレースボルト孔34にボルト4bを挿通し、ボルト4bのネジ部にナット(図示せず)をねじ込んで締め付ける。
これにより、ブレース4がブレース固定金具1の連結面部30に固定される。
なお、本発明の線状部材は、ビス52、53、62、63のようなビスに限定されず、木製の構造部材に打ち込まれるくぎであってもよく、本発明の棒状部材は、ボルト50、60のようなボルトに限定されず、ピンであってもよい。
【0033】
[ブレースの取付構造の作用]
図11は、
図1に示すブレースの取付構造の第1の作用を説明する説明図であり、図中、M1は第1モーメント、M2は第2モーメントである。
以下、
図11に基づいて
図1に示すブレースの取付構造の第1の作用について説明する。
図1のブレースの取付構造において、地震や強風により、柱2と横架材3等からなる骨組みを変形させようとする強い力が作用し、ブレース4に引張力が作用すると、ブレース固定金具1の第1取付面部10には、その中央部乃至中央部付近を中心に柱2の面2aに沿って第1取付面部10を回転させようとする第1モーメントM1が作用し、ブレース固定金具1の第2取付面部20には、その中央部乃至中央部付近を中心に横架材3の面3aに沿って第2取付面部20を回転させようとする第2モーメントM2が作用する。
そして、第1モーメントM1により、第1取付面部10から第1取付面部10を柱2に固定するビス等に作用する力は、第1取付面部10の中心部乃至中央部付近からの距離に比例して小さくなり、上端部11aと下端部11bで最小となる。
また、第2モーメントM2により、第2取付面部20から第2取付面部20を横架材3に固定するビス等に作用する力は、第2取付面部20の中心部乃至中央部付近からの距離に比例して小さくなり、左端部21aと右端部21bで最小となる。
この場合、第1取付面部10においては、上端部11aの近傍領域に複数の第1ビス孔12hが集中して設けられ、下端部11bの近傍領域に複数の第1ビス孔13hが集中して設けられ、第1取付面部10と柱2を固定する複数のビス52、53は、上端部11aの近傍領域と下端部11bの近傍領域に集中することから、この集中した複数のビス52、53が、第1モーメントM1により回転しようとする第1取付面部10から受ける力は小さく、複数のビス52、53によって個々のビス52、53が受ける力は分散されてさらに弱まり、ビス52、53による第1取付面部10と柱2の固定部の損傷(塑性変形)が効果的に防止される。
同様にして、第2取付面部20においては、左端部21aの近傍領域に複数の第2ビス孔22hが集中して設けられ、右端部21bの近傍領域に複数の第2ビス孔23hが集中して設けられ、第2取付面部20と横架材3を固定する複数のビス62、63は、左端部21aの近傍領域と右端部21bの近傍領域に集中することから、この集中した複数のビス62、63が、第2モーメントM2により回転しようとする第2取付面部20から受ける力は小さく、複数のビス62、63によって個々のビス62、63が受ける力は分散されてさらに弱まり、ビス62、63による第2取付面部20と横架材3の固定部の損傷(塑性変形)が効果的に防止される。
【0034】
次に、
図1に示すブレースの取付構造の第2の作用を説明する。
図1のブレースの取付構造において、地震や強風により、柱2と横架材3等からなる骨組みを変形させようとする強い力が作用し、ブレース4に引張力が作用すると、ブレース固定金具1の第1取付面部10、第2取付面部20には、上記のような第1モーメントM1、第2モーメントM2の他に、第1取付面部10を柱2から引き剥がし、第2取付面部20を横架材3から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用する。
そして、この引き剥がし力は、柱2と横架材3の結合部に近いほど大きくなり、第1取付面部10の下端部11bと第2取付面部20の右端部21bで最大となる。
この場合、第1取付面部10の下端部11bの近傍領域には第1ボルト孔14が設けられ、この第1ボルト孔14を挿通するボルト50とナット51で第1取付面部10の下端部11bの近傍領域が柱2に固定されていることから、引き剥がし力に対してビスより強い抵抗力を示すボルト50とナット51が、最大となる上記引き剥がし力に抗し、上記引き剥がし力による第1取付面部10と柱2の固定部の損傷(塑性変形)が効果的に防止される。
同様にして、第2取付面部20の右端部21bの近傍領域には第2ボルト孔24が設けられ、この第2ボルト孔24を挿通するボルト60とナット61で第2取付面部20の右端部21bの近傍領域が横架材3に固定されていることから、ボルト60とナット61が、最大となる上記引き剥がし力に抗し、第2取付面部20と横架材3の固定部の損傷(塑性変形)が効果的に防止される。
【0035】
また、第1取付面部10において、下側ビス孔群13を形成する第1ビス孔13hの個数は、上側ビス孔群12を形成する第1ビス孔12hの個数より多くなっており、第1ビス孔13hに挿通するビス53の個数は、第1ビス孔12hに挿通するビス52の個数よりも多く、上記引き剥がし力に対するビスの抵抗は下端部11bの近傍領域が他の領域よりも大きく、上記引き剥がし力による第1取付面部10と柱2の固定部の損傷(塑性変形)がり一層防止される。
同様に、第2取付面部20において、右側ビス孔群23を形成する第2ビス孔23hの個数は、左側ビス孔群22を形成する第2ビス孔22hの個数より多くなっており、第2ビス孔23hに挿通するビス63の個数は、第2ビス孔22hに挿通するビス62の個数よりも多く、上記引き剥がし力に対するビスの抵抗は右端部21bの近傍領域が他の領域よりも大きく、上記引き剥がし力による第2取付面部20と横架材3の固定部の損傷(塑性変形)がり一層防止される。
さらに、地震や強風により、柱2と横架材3等からなる骨組みを変形させようとする強い力が作用し、ブレース4に引張力が作用し、ブレース固定金具1の第1取付面部10、第2取付面部20を柱2、横架材3からずらそうとするせん断力が作用しても、第1取付面部10は、複数のビス52、53によって柱2に固定され、第2取付面部20は、複数のビス62、63によって横架材3に固定されていることから、柱2と横架材3等の初期変形は生じにくい。
【0036】
その他、
図1のブレースの取付構造は、以下のような作用を奏する。
図1のブレースの取付構造において、地震や強風により、柱2と横架材3等からなる骨組みを変形させようとする強い力が作用すると、ブレース4には引張力が作用すると共に、ブレース固定金具1は、ブレース4との接合部において、ブレース4の引張力が作用し、ブレース固定金具1を変形させると共に、ブレース固定金具1を柱2と横架材3から引き離そうとする力が作用する。
そして、ブレース固定金具1おいては、特に、連結面部30の外側端部32a近傍に、X方向、Y方向、Z方向の曲げ、引張、せん断、ねじり等が複合した大きな力が作用する。
この場合、連結面部30の外側端部32a近傍には、外側L字部32が形成され、領域30Rにおいては、外側端部32aから内側端部33aに向かう方向の所定長さ当たりの厚み方向(Y方向)の断面積は、外側端部32a近傍となる外側L字部32において、外側L字部32を除く部分より2倍以上となっていることから、外側端部32a近傍に作用する曲げ、引張、せん断、ねじり等が複合した大きな力に対して、強い抵抗を示し、外側端部32a近傍の降伏が防止される。
また、外側端部32aには、その長手方向に沿って第3凹み35a~35fが設けられており、第3凹み35a~35fが上記複合した大きな力に対してより強い抵抗を示し、外側端部32a近傍の降伏が一層防止される。
さらに、連結面部30は内側L字部33を有し、この内側L字部33により、連結面部30の内側端部33aの降伏が防止される。
【0037】
また、ブレース固定金具1においては、第1取付面部10と連結面部30の境界部分や、第2取付面部20と連結面部30の境界部分にも、曲げ、引張、せん断、ねじり等が複合した大きな力が作用する。
この場合、第1取付面部10と連結面部30に跨る直角又は直角に近い角度の部分(境界部分)には、第1凹み15a~15dが設けられ、第2取付面部20と連結面部30に跨る直角又は直角に近い角度の部分(境界部分)には、第2凹み25a~25dが設けられている。
この第1凹み15a~15dと第2凹み25a~25dが、上記複合した大きな力に対してより強い抵抗を示し、第1取付面部10と連結面部30の境界部分や、第2取付面部20と連結面部30の境界部分の降伏が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のブレース固定金具及及びブレースは、2つ構造部材の結合部が変形しようとしてブレースに引張力が作用し、各取付面部を各構造部材からずらそうとするせん断力が作用しても、2つ構造部材の結合部に初期変形が生じないようにでき、各取付面部をその中央部乃至中央部付近を中心に各構造部材の面に沿って回転させようとするモーメントが作用したり、各取付面部を各構造部材から引き剥がそうとする引き剥がし力が作用しても、各取付面部と各構造部材の固定部分が損傷(塑性変形)しないようでき、木造軸組構造の建築物に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ブレース固定金具
2 柱
2a 入隅側の面
3 横架材
3a 入隅側の面
4 ブレース
4a 羽子板
4b ボルト
10 第1取付面部
11 第1平板
11a 上端部
11b 下端部
12 上側ビス孔群
12h 第1ビス孔
13 下側ビス孔群
13h 第1ビス孔
14 第1ボルト孔
15a~15d 第1凹み
20 第2取付面部
21 第2平板
21a 左端部
21b 右端部
22 左側ビス孔群
22h 第2ビス孔
23 右側ビス孔群
23h 第2ビス孔
24 第2ボルト孔
25a~25d 第2凹み
30 連結面部
30R 領域
31 平板部
32 外側L字部
32a 外側端部
33 内側L字部
33a 内側端部
34 ブレースボルト孔
35a~35f 第3凹み
36a、36b、37a、37b 切欠
40 金属板
41 第1面部
42 第2面部
43 第3面部
43p 外側折曲面部
43q 内側折曲面部
50、60 ボルト
51、61 ナット
52、53、62、63 ビス
AX1 第1軸
AX2 第2軸
f1~f4 折曲線
IS 入隅
M1 第1モーメント
M2 第2モーメント
SP 空間