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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165883
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】レザー調素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20221025BHJP
   A45C 1/02 20060101ALI20221025BHJP
   A45C 3/00 20060101ALI20221025BHJP
   A45C 5/02 20060101ALI20221025BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20221025BHJP
   A45C 7/00 20060101ALI20221025BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20221025BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20221025BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20221025BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20221025BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20221025BHJP
   D04D 9/04 20060101ALI20221025BHJP
   B68G 7/02 20060101ALI20221025BHJP
   A47C 7/24 20060101ALI20221025BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20221025BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20221025BHJP
【FI】
D04B1/00 C
A45C1/02 Z
A45C3/00 Z
A45C5/02 R
A45C5/02 T
A45C11/00 B
A45C7/00 Z
A44C5/00 Z
B60N2/58
A43B23/02 101A
D06N3/00
D04B1/14
D04D9/04
B68G7/02
A47C7/24
A41D31/04 G
A41D31/00 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071480
(22)【出願日】2021-04-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.nichimou.jp/2021/03/20/独自の特許技術で編む/「第8回 ファッション ワールド 東京 春/第1回 国際 サステナブル ファッションEXPO」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000634.000026157.html https://www.fashion-tokyo.jp/ja-jp/to-visit/2021s_feature/tex.html https://fw-apr2021.tems-system.com/exhiSearch/OEM/jp/Details?id=FP7NC8EGYh0%3D&exhibition=4 https://www.eventbiz.net/?p=71247 https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.page?IMNEWS4=2469671
(71)【出願人】
【識別番号】519349964
【氏名又は名称】有限会社ニチモウ
(74)【代理人】
【識別番号】100185144
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 忠
(72)【発明者】
【氏名】上原 正稔
【テーマコード(参考)】
3B045
3B087
4F050
4F055
4L002
4L049
【Fターム(参考)】
3B045CE00
3B045FC05
3B045FC08
3B087DE03
4F050HA01
4F050HA30
4F055AA01
4F055AA18
4F055AA21
4F055AA27
4F055BA27
4F055EA23
4F055GA37
4L002AA00
4L002AC07
4L002BA00
4L002BA06
4L002EA00
4L002FA00
4L002FA01
4L049AA13
4L049AA18
4L049CA01
4L049EA06
4L049EA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レザー調素材の外観のバリエーションの自由度を高めることで高度の意匠性を発揮しつつ、丈夫で柔軟性を有するレザー調素材を提供する。
【解決手段】緯編地に挿入されたレザー調挿入紐を有するレザー調素材において、前記緯編地はレザー調挿入紐の素材以外の地糸で構成され、前記レザー調挿入紐は、コルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐で構成され、前記レザー調挿入紐は前記緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより前記緯編地の表面側から前記レザー調挿入紐が見える部分と前記緯編地に隠れている部分とが交互に形成されている、ことを特徴とするレザー調素材。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯編地に挿入されたレザー調挿入紐を有するレザー調素材において、
前記緯編地はレザー調挿入紐の素材以外の地糸で構成され、
前記レザー調挿入紐は、コルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐で構成され、
前記レザー調挿入紐は前記緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより前記緯編地の表面側から前記レザー調挿入紐が見える部分と前記緯編地に隠れている部分とが交互に形成されている、
ことを特徴とするレザー調素材。
【請求項2】
前記緯編地の表面側から前記レザー調挿入紐が見える部分は、前記緯編地の裏面側からみた場合は前記緯編地に隠れている部分であり、
前記緯編地の表面側から前記緯編地に隠れている部分は、前記緯編地の裏面側からみた場合は前記レザー調挿入紐が見える部分であることを特徴とする請求項1に記載のレザー調素材。
【請求項3】
前記レザー調挿入紐はレザー調素材全体の約30%以上の面積を占めていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のレザー調素材。
【請求項4】
前記レザー調挿入紐は、その幅が1.5mm以上2.5mm以下
であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレザー調素材。
【請求項5】
前記緯編地の番手が7以上12以下
であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のレザー調素材。
【請求項6】
前記レザー調挿入紐が複数種類のレザー調挿入紐であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレザー調素材。
【請求項7】
前記地糸の種類が緯編地の場所に応じて異なっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレザー調素材。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載のレザー調素材を用いたかばん、バッグ、小物入れ、財布、ベルト、靴、スニーカー、衣服、ジャケット、コート、帽子、パンツ、ブレスレット、ソファー、クッション、椅子、インテリア資材、車両内装材、乗り物の座席などの表面材、箱又は包装容器。
【請求項9】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載のレザー調素材において、
前記レザー調挿入紐が表面から見えている割合がレザー調素材中に配置されているレザー調挿入紐の全面積に対して20%~80%であるレザー調素材を用いたかばん、バッグ、小物入れ、財布、ベルト、靴、スニーカー、衣服、ジャケット、コート、帽子、パンツ、ブレスレット、ソファー、クッション、椅子、インテリア資材、車両内装材、乗り物の座席などの表面材、箱又は包装容器。
【請求項10】
緯編地に挿入された複数のレザー調挿入紐を有するレザー調素材の製造方法において、
前記緯編地の地糸はレザー調挿入紐の素材以外の糸で構成され、
前記レザー調挿入紐は、コルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐で構成され、
前記緯編地は緯編機により機械的に編まれ、
前記レザー調挿入紐は糸解舒装置で前記緯編機に供給され、
前記レザー調挿入紐は緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより緯編地の表面側から前記レザー調挿入紐が見える部分と緯編地に隠れている部分とが交互に形成される、
ことを特徴とするレザー調素材の製造方法。
【請求項11】
前記緯編地の表面側から前記レザー調挿入紐が見える部分は、前記緯編地の裏面側からみた場合は前記緯編地に隠れている部分であり、
前記緯編地の表面側から前記緯編地に隠れている部分は、前記緯編地の裏面側からみた場合は前記レザー調挿入紐が見える部分であることを特徴とする請求項10に記載のレザー調素材の製造方法。
【請求項12】
前記緯編機のキャリッジの移動速度が30mm/秒~48mm/秒であることを特徴とする請求項10又は11に記載のレザー調素材の製造方法。
【請求項13】
前記レザー調挿入紐は平紐であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載のレザー調素材の製造方法。
【請求項14】
前記レザー調挿入紐はレザー調素材全体の約30%以上の面積を占めていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載のレザー調素材の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性を有するレザー調素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤギ、牛、羊等の哺乳類や、ワニ、ヘビ、トカゲ等の爬虫類から取れた皮をなめし、製品として使えるように加工したものを革、皮革、皮革素材などという。人工的に革に似せて作られた合成皮革(合皮)や人工皮革との違いを明確にするために、本革(レザー)、天然皮革、天然皮革素材などとも呼ばれる。皮革素材は、衣料品や装身具などさまざまな用途に用いられ、特に本革でできた製品は革本来の風合いを愉しむことができ製品の高級感を感じさせることができる。
【0003】
皮革素材を他の素材と組み合わせて加工し、さらに意匠性や機能性を向上させる試みがある。例えば、特許文献1に記載の皮革素材は、皮革シートに複数の孔を備えていて、その孔に毛糸等が通されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の皮革素材は、平革紐を縦糸とし、細めの革紐を横糸として織成した革織物が記載されている。
【0005】
また昨今、資源大量消費型の社会に対する問題意識が高まっており、資源を消費するさまざまな業界で環境負荷の小さいサステナブルな取り組みが求められている。皮革業界においても、端切れ素材を活用したレザークラフトなど革を有効に活用する取り組みが求められている。
【0006】
また近年皮革に代わるレザー調素材としてアップルレザー、コルク素材、合成皮革などのエシカルな素材が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-169900号公報
【特許文献2】実用新案登録第3098125号公報
【特許文献3】特許6861352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の皮革素材は、皮革シートに設けられた複数の孔を通る毛糸等により皮革製品の外観に特有の変化を与えている。また、皮革素材表面の染色・模様等により様々な外観を与えている。しかし、皮革シートをベースとした皮革素材であるために、従前の皮革素材と同様に柔軟性が限定的で汎用的な用途に向かない。また、当該皮革素材の外観にバリエーションを持たせるためには、従前の皮革素材と同様に皮革素材表面の染色・模様などの加工工程が必要であり手間がかかる。
【0009】
特許文献2に記載の皮革素材は、革紐を組み合わせた織物であるため強度の点で問題がある。
【0010】
本発明の発明者は、上記事情を鑑みて、皮革素材の外観のバリエーションの自由度を高めることで高度の意匠性を発揮しつつ、丈夫で柔軟性を有する皮革素材を発明した(特許文献3)。本発明は特許文献3に記載の皮革素材の皮革挿入紐をコルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐とすることでさらに意匠性を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の緯編地に挿入されたレザー調挿入紐を有するレザー調素材は、前記緯編地はレザー調挿入紐の素材以外の地糸で構成され、前記レザー調挿入紐は、コルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐で構成され、該レザー調挿入紐は緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより緯編地の表面側(一方の面側)からレザー調挿入紐が見える部分と緯編地に隠れている部分とが交互に形成されている。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明のレザー調素材は、緯編地の表面側(一方の面側)からレザー調挿入紐が見える部分は、緯編地の裏面側(他方の面側)からみた場合は緯編地に隠れている部分であり、緯編地の表面側(一方の面側)から緯編地に隠れている部分は、緯編地の裏面側(他方の面側)からみた場合はレザー調挿入紐が見える部分である。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明のレザー調素材の製造方法は、緯編地に挿入された複数のレザー調挿入紐を有するレザー調素材の製造方法において、前記緯編地の地糸は前記レザー調挿入紐の素材以外の地糸で構成され、前記レザー調挿入紐は、コルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐で構成され、前記緯編地は緯編機により機械的に編まれ、前記レザー調挿入紐は糸解舒装置で前記緯編機に供給され、前記レザー調挿入紐は緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより緯編地の表面側(一方の面側)からレザー調挿入紐が見える部分と緯編地に隠れている部分とが交互に形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のレザー調素材は、レザー調素材の外観のバリエーションの自由度を高めることで高度の意匠性を発揮しつつ、丈夫で柔軟性を有するレザー調素材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】編物(緯編(横編・丸編))のイラスト
図2】緯編地の模式図
図3】本発明の実施例(作品例1)
図4a】本発明の実施例(作品例1)
図4b】本発明の実施例(作品例1)
図5】本発明の実施例(作品例2)
図6】本発明の実施例(作品例3)
図7】本発明の実施例(作品例4)
図8】本発明の実施例(作品例5)
図9】本発明の実施例のイラスト(作品例6(ロゴ))
図10】本発明の実施例のイラスト(作品例7(迷彩柄))
図11a】レザー調挿入紐が見えている部分とニットに覆われている部分の割合が異なる作品例
図11b】レザー調挿入紐が見えている部分とニットに覆われている部分の割合が異なる作品例
図11c】レザー調挿入紐が見えている部分とニットに覆われている部分の割合が異なる作品例
図11d】レザー調挿入紐が見えている部分とニットに覆われている部分の割合が異なる作品例
図12】本発明のレザー調素材を用いた鞄のイラスト
図13a】二つ折り紐の断面図
図13b】三つ折り紐の断面図
図14a】芯糸入り二つ折り紐の断面図
図14b】芯糸入り三つ折り紐の断面図
図15】本発明の比較例(革織物)
図16】緯編機の外観
図17】コルク紐を用いた実施例
図18】アップルレザーの実施例
図19】合成皮革紐を用いた実施例
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)織物と編物について
(2)本発明のレザー調素材の構成
(3)作品例
(4)本発明のバリエーション
(5)本発明の比較例
(6)本発明の製造方法
(7)本発明の特徴(効果)
【0017】
(1)織物と編物について
織物とは表1(織物欄)のように縦糸(経糸)と横糸(緯糸)が概ね直角に交じり、隣の糸と密着して平面的に連なって面を形成する織地である。一方、編物とは表1(緯編欄/経編欄)又は図1のようにループ(編み目)を作り、その(ループ)に次の糸を引っ掛けて連続してループを形成することで面を形成する。このようなループの集合を編組織などともいう。
【0018】
【表1】
(下記Webサイトから引用)
http://www.imaikigyo.ecweb.jp/production/whats_tricot/
【0019】
編物には横編(緯編(ヨコアミ))と縦編(経編(タテアミ))がある。横編は、ループが横方向に進みながら編地を形成し、1本の糸で編地が形成される。一方、縦編(経編)はループをタテ方向に連続して編み上げていく生地である。それぞれ、緯編地、経編地などと称する。本発明のレザー調素材は緯編地を用いている。
【0020】
(2)本発明のレザー調素材の構成
本発明は、レザー調挿入紐の素材以外の地糸で構成され緯編地の編み目(ループ)にレザー調挿入紐が挿入されている。レザー調挿入紐は緯編地のある横方向に沿って表から裏に、裏から表に通されており、緯編地の表面(一方の面)からみるとレザー調挿入紐が見ている部分と緯編地に隠れている部分が交互に形成されている。一方、緯編地の裏面(他方の面)からみると、表面からレザー調挿入紐が見ている部分はと緯編地に隠れている部分となり、表面からレザー調挿入紐が隠れている部分はとレザー調挿入紐が見ている部分となる。すなわち、レザー調挿入紐は緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより緯編地の表面側からレザー調挿入紐が見える部分と緯編地に隠れている部分とが交互に形成されている
【0021】
緯編地に複数のレザー調挿入紐が挿入されており、いずれも緯編地の横方向に沿って挿入されている。レザー調挿入紐が緯編地に多数(複数)挿入されることにより全体としてレザー調素材となっている。本発明の、レザー調挿入紐はコルク紐、アップルレザー紐又は合成皮革紐から構成される。本発明において、コルク(コルクシート)、アップルレザー及び合成皮革はレザー調材料(素材)である。
【0022】
本発明のコルク紐とは、コルクから形成した紐やコルク成分/コルク粉末を含有する紐を意味する。一般にコルクはコルク樫から採取した樹皮から製造される。コルク紐はコルク粉末をポリエステル樹脂などの合成樹脂(結合剤)とまぜてシート状にしたものから形成してもよい。本発明のコルク紐に含まれるコルク成分は10%以上80%以下であることが望ましい。
コルクは一般の木材と違い原木を伐採しない為、再生する樹皮から再びコルクを採る事が出来る(コルク樫の樹齢は約200年、再生サイクルは10年程度とされており、1本の木から15~20回程度採取可能)。また樹皮を採取された原木は再生に通常の3~5倍ものCOを吸収し地球温暖化防止に寄与する事からも、自然を守りながら生産し続けられる安全な素材と言える。
図17は本発明のレザー調挿入紐としてコルク紐を用いた実施例である。コルクがもつ特性により、軽量・ 撥水・ 耐熱・断熱・ 耐摩耗性・ 弾力性・ 防虫作用・ 防臭・消臭・ 消音の効果を有するレザー調素材である。
なお、本発明においてレザー調挿入紐としてコルク紐を用いる場合、発明の名称はレザー調素材であってもコルク素材であっても構わない。またコルク紐はコルク粉末と結合剤を配合した紐と称してもよい。
【0023】
本発明のアップルレザー紐とは、アップルレザーから形成した紐を意味する。アップルレザーは、りんごの絞りカスやりんごの表皮を乾燥させて粉末状にし、適切な分量の樹脂(結合剤)を混ぜ合わせることで形成されるレザー調の素材である。本発明ではアップルレザー、アップルレザー紐をそれぞれアップルスキン、アップルスキン紐と言い換えてもよい。また、アップルレザーはりんごの絞りカス又はりんごの表皮の粉体と結合剤を配合した合成皮革(人工皮革)などと称してもよい。
本発明で使用するアップルレザーに含まれるりんご成分の量に特に限定はないがりんご成分の含有量が10%以上80%以下であることがのぞましい。
本発明の実施例で用いるアップルレザー(図18参照)はりんごを余す事なく使用した、バイオベース度66%のUSDA認証製品(内50%はりんご成分)であり、裏基布にもりんごを使用している。結合剤には製造時の毒性が少ない水性のポリウレタン・ポリエステルを使用し、有害物質である「ジメチルホルムアミド」や大気中の光化学スモッグを引き起こす原因物質VOC(揮発性有機化合物)を含まないようにしている。本革を思わせる肌目細かなシボと、ソフトで軽くさらっとした手触りが特徴のヴィーガンレザーである。
なお、本発明においてレザー調挿入紐としてアップルレザー紐を用いる場合、発明の名称はレザー調素材であってもアップルレザー素材又はアップルスキン素材であっても構わない。アップルレザー紐は特に図示しないが図18などのアップルレザー(アップルレザーシート)から適当な大きさに切り出すことで形成することができる。
【0024】
本発明の合成皮革紐とは、合成皮革から形成した紐を意味する。本発明の合成皮革は一般的に合成皮革や人工皮革と呼ばれるものであればどのようなものであっても構わない。例えば、天然又は合成の布地等に合成樹脂を塗布して得られる合成皮革でもよく、マイクロファイバー等の布地(通常、不織布)に合成樹脂を含浸して得られる人工皮革でもよく、マイクロファイバー等の布地(通常、不織布)に合成樹脂を含浸し、さらに合成樹脂を塗布して得られる人工皮革でもよい。これらの合成樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリアミノ酸系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリウレタン系樹脂である(参照:特開2020-122166)。
図19は本発明のレザー調挿入紐として合成皮革紐を用いた実施例である。この実施例で使用する合成皮革は「エコテックス・スタンダード100」認証を取得した、3歳以下の乳幼児にも優しい人工皮革である。一部製品にリサイクルポリエステルを使用する事で石油使用量を減らし、CO排出量を抑えている。また結合剤には人体や環境への影響が少ない水性ポリウレタンを使用。汚れにくく、お手入れの際は水洗い及びドライクリーニングも可能である。マイクロファイバーによるスエード調の上質な手触りが洗練された製品作りを演出している。
エコテックス100規格(Oeko-Tex Standard 100)は有害物質の使用を禁止叉は規制しており、認証された製品は規格に定められた人の健康に害を与える有害物質が規制値以下である事を認証している。一般的にDMF(ジメチルホルムアミド)を含む有機溶剤系を使用する事が多いが、欧州諸国ではDMFは生殖毒性の懸念から工業プロセスの使用または含有製品の輸入・販売が法規制されている。
なお、本発明においてレザー調挿入紐として合成皮革紐を用いる場合、発明の名称はレザー調素材であっても合成皮革素材であっても構わない。
【0025】
このような緯編地とレザー調挿入紐から構成される素材がレザー調素材として成立するためには、レザー調挿入紐はレザー調素材全体の約30%以上の面積を占めていることが望ましい(なお、ここでいう面積は表面及び裏面から見える面積の合計である)。より望ましくは50%以上であり、より望ましくは70%以上であり、さらに望ましくは90%以上である。実際には、レザー調素材を用いて製作される製品に応じて決定される。
【0026】
本発明ではレザー調挿入紐を緯編地のループに通す間隔を任意に設定することができる。
【0027】
図2は横方向にループが12個、縦方向にループが6個、合計72個のループが形成されている緯編地にレザー調挿入紐が挿入されていることを示す図である。縦ループ番号2,3,4,5の位置にレザー調挿入紐が横方向に挿入されている。レザー調挿入紐が挿入される横方向をコースと呼ぶ場合、図2は上から第1のコース、第2のコース、第3のコース、第4のコース、第5のコース、第6のコースが存在し、レザー調挿入紐は第2、第3、第4、第5及び第6のコースに挿入されている。
【0028】
縦ループ番号2の位置(第2のコース)のレザー調挿入紐は、横ループ番号2,4,6,8,10,12のループに対しては表側に配置されていて、横ループ番号1,3,5,7,9,11のループに対しては裏側に配置されている。
【0029】
縦ループ番号3の位置(第3のコース)のレザー調挿入紐は、横ループ番号1,4,5,8,9,12のループに対しては表側に配置されていて、横ループ番号2,3,6,7,10,11のループに対しては裏側に配置されている。
【0030】
縦ループ番号4の位置(第4のコース)のレザー調挿入紐は、横ループ番号2,3,5,6,8,9,11,12のループに対しては表側に配置されていて、横ループ番号1,4,7,10のループに対しては裏側に配置されている。
【0031】
縦ループ番号5の位置(第5のコース)のレザー調挿入紐は、横ループ番号1,3,4,6,7,9,10,12のループに対しては表側に配置されていて、横ループ番号2,5,8,11のループに対しては裏側に配置されている。
【0032】
図2では縦ループ番号2から5に配置されているレザー調挿入紐のように4つのレザー調挿入紐が縦方向に連続して配置されているがレザー調挿入紐は連続して縦方向に配置されている必要はなく挿入されている場所と挿入されていない場所は任意に設定することができる。
【0033】
以上のように、レザー調挿入紐が挿入されている縦方向の位置とレザー調挿入紐を緯編地のループに通す間隔を任意に設定するにより様々な模様を表現することができる。なお、図2はレザー調挿入紐と緯編地のループとの相対的な位置関係を示すためイラストである。ループの大きさに対してレザー調挿入紐が小さく表現されているが、実際には図3等の実施例のようにレザー調挿入紐はループの径にフィットするように挿入されている。
【0034】
(3)作品例
以下に本発明の作品例(実施例)を示す。なお、実物の写真の緯編地に挿入されている挿入紐は本皮紐の場合があるがレザー調挿入紐を用いた場合も同様のデザインを達成することができる。
(作品例1)
図3は、本発明の一実施形態であるレザー調素材の外観の写真である。緯編地の縦方向のすべての位置にレザー調挿入紐が挿入されている(全コースにレザー調挿入紐が挿入されている)。そのため本実施例のレザー調挿入紐はレザー調素材全体の概ね100%の面積を占めている。
上から5つのレザー調挿入紐についてはいずれも緯編地のループに通す間隔が同じように設定されている。横方向のループ2つ分に対してレザー調挿入紐が表側に配置されていて横方向のループ4つ分に対してはレザー調挿入紐が裏側に配置されている。レザー調挿入紐の図3の上から6つ目から14つ目については、レザー調挿入紐をループに通す位置がズレていて階段状の模様を形成している。図4aは図3の作品の全体像であり図4bはその裏側からみた写真である。
【0035】
本実施形態のレザー調挿入紐は平状の紐である。レザー調挿入紐の幅(緯編地に挿入した場合の縦方向の長さ)は約2 mmであり、厚さは約1 mmである。緯編地(ニット)を形成する地糸は綿糸である。緯編地(ニット)の編み目の大きさを表す番手は10ゲージである。
【0036】
(作品例2)
図5は、本発明の一実施形態であるレザー調素材の外観の写真である。レザー調挿入紐は緯編地の緯方向に3コースに1つの割合で挿入されている(緯編地の縦方向のループ3つに1つの割合でレザー調挿入紐が挿入されている)。本実施例のレザー調挿入紐はレザー調素材全体の概ね50%の面積を占めている(レザー調挿入紐が挿入されていないコースはレザー調挿入紐が挿入されているコースより幅が狭いため1/3より大きい値となる)。
【0037】
(作品例3)
図6は、本発明の一実施形態であるレザー調素材の外観の写真である。本実施形態のレザー調挿入紐は直径2 mmの丸紐である。本実施例のレザー調挿入紐はレザー調素材全体の概ね60%の面積を占めている
【0038】
(作品例4)
図7は、本発明の一実施形態であるレザー調素材の外観の写真である。本実施形態のレザー調挿入紐は幅約2 mmの三つ折り平紐であり表面がラッカー仕上げとなっている。レザー調挿入紐は緯編地の緯方向に1コース置きに挿入されている。緯編地にレザー調挿入紐を挿入した後、生地全体に加える熱量を調整することで図7のような緯編地の熱収縮性を利用した立体的な形状(凹凸を有する形状)とすることもできる。本実施例のレザー調挿入紐はレザー調素材全体の概ね70%の面積を占めている
【0039】
(作品例5)
図8は、本発明の一実施形態であるレザー調素材の外観の写真である。本実施形態のレザー調挿入紐は幅約3 mmの三つ折り平紐である。他の実施例と比較して緯編地がふんわりとしているのは緯編地を製作する際に加える熱量を他の実施例より少なくしているためである。熱量をコントロールすることによりニットの仕上げのバリエーションが可能となる。本実施例のレザー調挿入紐はレザー調素材全体の概ね80%の面積を占めている。
【0040】
(作品例6)
図9は、本発明の一実施形態であるレザー調素材のイラストである。緯編地に対してレザー調挿入紐でロゴ「NM」が表現されている。点線は緯編地の後ろ側に回り込んでいるレザー調挿入紐を意味している。本作品例のようにレザー調挿入紐で英数字、文字又はロゴを表現することでさらに意匠性を向上することができる。レザー調挿入紐で英数字、文字又はロゴが表現されたレザー調素材がさらに好ましい。
【0041】
(作品例7)
図10は、本発明の一実施形態であるレザー調素材のイラストである。緯編地で迷彩を表現している。緯編地の地糸の色は様々な色が選択可能でありこの図の迷彩のような模様を任意に作成することができる。図10では緯編地を構成する編み目の記載を省略している。図10はグレースケールで分かりづらいが実際は迷彩柄を4色の領域で表現している。そのうちある色の領域については、レザー調挿入紐が表面に見えるように編み込まれている。図中の横方向の点線(「■」の並び)がレザー調挿入紐である。本作品例のようにレザー調挿入紐で模様を形成するとさらに意匠性が向上する。さらに、緯編地で表現された模様の一部をレザー調挿入紐が見えるように形成することで(レザー調挿入紐で埋めることで)さらに意匠性を向上することができる。
【0042】
(作品例8)
図11a~図11dはレザー調素材に占めるレザー調挿入紐が配置されている面積(表面からみた面積)に対してレザー調挿入紐が見えている部分とレザー調挿入紐がニットに覆われている部分の割合が異なる作品例である。
図11aではレザー調挿入紐が図面上横方向に10行にわたって緯編地に密に挿入されており(※レザー調挿入紐が横方向に10行にわたって10本横たわっている)、レザー調挿入紐が配置されている面積を100とするとレザー調挿入紐が見ている部分(図中の黒の部分)が50でありニットに覆われている部分(図中の白の部分)が50である。したがってレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して50%である。
図11bではレザー調挿入紐が10行にわたって緯編地に密に挿入されており、レザー調挿入紐が配置されている面積を100とするとレザー調挿入紐が見ている部分が60でありニットに覆われている部分が40である。したがってレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して60%である。
図11cではレザー調挿入紐が10行にわたって緯編地に密に挿入されており、レザー調挿入紐が配置されている面積を100とするとレザー調挿入紐が見ている部分が40でありニットに覆われている部分が60である。したがってレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して40%である。
図11bではレザー調挿入紐が10行にわたって緯編地に密に挿入されており、レザー調挿入紐が配置されている面積を100とするとレザー調挿入紐が見ている部分が60でありニットに覆われている部分が40である。したがってレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して60%である。
図11dではレザー調挿入紐が1行置きに5行にわたって緯編地に挿入されており、レザー調挿入紐が配置されている面積を50とするとレザー調挿入紐が見ている部分が25でありニットに覆われている部分が25である(レザー調素材全体としてはニットの部分は75である)。したがってレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して50%である。
【0043】
図4a、図4bは本発明のサンプルの写真である。図4aのサンプルではレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して約25%である。図4bのサンプルではレザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して約75%である。
【0044】
本発明のレザー調素材にといてレザー調挿入紐をどの程度は配置するかは目的とするデザインや意匠性に応じて任意に調整することができる。またレザー調挿入紐をレザー調素材の表面からみた場合にどの程度露出させるか(どの程度ニットで隠すか)もまた目的とするデザインや意匠性に応じて任意に調整することができる。
【0045】
一方で、次のような工夫も可能である。レザー調素材はその製造工程で何らかの匂いが付着する場合がある。発明のレザー調素材を用いた製品はレザー調素材の一部がニットで覆われているためレザー調素材の匂いがニット(緯編地)で吸収されレザー調素材がすべて露出している製品と比較してレザー調素材の匂いを抑えることができる。このような用途においては、レザー調挿入紐が見えている割合はレザー調挿入紐が配置されている面積に対して10%~80%が望ましい。より匂いを抑えるとしたら20%~60%である。あまりニットで隠されているとレザー調素材としての見た目のインパクトが弱くなるので25~50%が望ましい。ここで「見えている」とは当該レザー調素材を各レザー調製品に用いた際に、当該製品をユーザーが使用している際、他者(ユーザー以外の者)から「見えている」の意味である。
なお、ここでいう「本発明のレザー調素材を用いた製品」とは、使用時に外から(他のユーザーから)見える部分と見えない部分があるレザー調製品すべてを意味する。例えば、かばん、バッグ、小物入れ、財布、ベルト、靴、スニーカー、衣服、ジャケット、コート、帽子、パンツ、ブレスレット、ソファー、クッション、椅子、インテリア資材、車両内装材、乗り物の座席などの表面材、箱及び包装容器などである。
【0046】
すなわち、レザー調挿入紐が表面から見えている割合がレザー調素材中に配置されているレザー調挿入紐の全面積に対して30%~80%であるレザー調素材を用いたかばん、バッグ、小物入れ、財布、ベルト、靴、スニーカー、衣服、ジャケット、コート、帽子、パンツ、ブレスレット、ソファー、クッション、椅子、インテリア資材、車両内装材、乗り物の座席などの表面材、箱又は包装容器等が本発明の実施例となる。ここで「表面」とは製品使用時に外から(他のユーザーから)見えている部分が多い側の面である。例えば、バッグの場合は荷物を入れない側の面(いわゆる外側)であり、ベルト、靴、スニーカー、衣服など身につけるものであれば身に付ける側の面の反対側の面である。
なお、このような実施例おいても前述のとおりレザー調挿入紐はレザー調素材全体の約40%以上の面積を占めていることが望ましい。
【0047】
(作品例9)
図12は、本発明のレザー調素材を用いた鞄のイラストである。鞄全体は緯編地(ニット)で構成されていて、図のように表面の一部はレザー調挿入紐が見えるように配置されている。図中の横方向の太線がレザー調挿入紐である。なお、鞄は従来のレザー調素材だけ又は緯編地だけで構成されている部分があってもよい。
【0048】
(4)本発明のバリエーション
(A)意匠性向上のバリエーション
本発明のレザー調素材はレザー調挿入紐の素材、色、表面加工、大きさ、緯編地に挿入する場所などの選択により、レザー調素材としての意匠性を高めることができる。一つの緯編地に挿入されるレザー調挿入紐は複数種類(2以上の種類)のものを採用してもよい。例えば、複数の色(青色と緑色など2以上の色)のレザー調挿入紐や異なる素材のレザー調挿入紐を採用することで意匠性をさらに高めることができる。
【0049】
また、緯編地を構成する地糸も緯編地の場所に応じて異なるものを用いてもよい。本発明のレザー調素材は緯編地(ニット)を用いることで緯編地がもつ意匠性のバリエーションをレザー調素材として組み込むことができる。
【0050】
(B)緯編地とレザー調挿入紐の関係のバリエーション
本発明のレザー調素材はいずれもさまざまなレザー調製品の素材として利用されるべきものであるため、緯編地に挿入されているレザー調挿入紐が緯編地から大きくズレないなど緯編地とレザー調挿入紐がしっかりと組み合わされていることが望ましい。そのため、緯編地(ニット)の編み目の大きさを表す番手とレザー調挿入紐の幅(丸紐の場合は直径)を好適に選択する必要がある。具体的には緯編地の番手は7以上12以下が望ましく、その場合、レザー調挿入紐の幅(平紐の場合は断面の長手方向の長さ、丸紐の場合は断面の直径(以下同様))は1.5 mm以上 2.5 mm以下が望ましい。より好適には1.8 mm以上2.2 mm以下である。さらに好適には緯編地の番手が10で、レザー調挿入紐の幅は1.8 mm以上 2.2 mm以下が望ましい。
また、レザー調挿入紐の厚さは0.5mm以上1.5 mm以下が望ましい。より好適には0.8 mm以上1.2 mm以下が望ましい。
【0051】
(C)素材のバリエーション
本発明の緯編地を形成する地糸は、レザー調挿入紐の素材以外の糸であればどのようなものでも構わないが、緯編機(横編機)などの機械織りに対応できる糸が望ましい。例えば、綿、麻、カシミヤ、ウール、セラミック繊維、金糸、銀糸、カーボン、ナイロン糸、ウーリー糸、スパン糸、ウーリーナイロン糸、アクリル糸、ポリエステル糸、ポリエステルウーリー糸、ポリエステル仮撚加工糸、ポリウレタン樹脂製の糸、レーヨン糸、合成繊維糸、半合成繊維糸、などである。
もっとも、レザー調挿入紐との編みやすさを考えると、アクリル糸、ポリエステル糸、レーヨン糸、ナイロン糸などの化学繊維が望ましい。綿などの自然繊維は混合であれば編成しやすくなる。
【0052】
本発明のレザー調挿入紐は、コルクでできたコルク紐、アップルレザーからできたアップルレザー紐又は合成皮革からできた合成皮革紐であって緯編地のループに挿入できるものであればどのようなものでも構わない。
【0053】
本発明のレザー調挿入紐のさらなるバリエーションを示す。レザー調挿入紐は公知の平紐又は丸紐が好適であるがこれに限定されない。例えば3つ編み紐や4つ編み紐などを採用できる。平紐としては、スリット紐、二つ折り紐、三つ折り紐を採用できる。図13a、図13bにそれぞれ二つ折り紐、三つ折り紐の断面図を示す。スリット紐とはレザー調素材をスリット状に細長に裁断したものである。二つ折り紐又は三つ折り紐はスリット状の紐(平紐)を紐の長手方向に沿って二つ又は三つに折り重ね合わせたものである。
【0054】
レザー調挿入紐を編み機で緯編地に織り込む際は、レザー調挿入紐の断線が問題となる。そのため、レザー調挿入紐の内部に芯糸を挿入し紐全体の強度を補強することが望ましい。例えば、二つ折り紐、三つ折り紐に芯糸を挿入した際の断面図を図14a、図14bに示す。図中の丸が芯糸の断面である。芯糸の材質はアクリル糸、ポリエステル糸、レーヨン糸、ナイロン糸などの化学繊維が好ましく直径は概ね0.5mm~1.5mmである。より好ましくは0.7mm~1.2mmである。
【0055】
(D)地糸とレザー調挿入紐との組み合わせ
本発明では上述のとおりレザー調挿入紐の選択次第で見え方が異ならせることができる。レザー調挿入紐を意匠性向上のために用いていることも特徴である。緯編地を形成する柄は様々な公知のものを採用でき、緯編地の柄が同じでもレザー調挿入紐の選択次第で全く異なる印象を与えることができる。また作品例6、7のように緯編地の柄とレザー調挿入紐が表面側から見える部分を工夫することにより(例えばレザー調挿入紐の表面から見える部分が緯編地の柄の一部を構成する等)、迷彩柄やロゴなど種々の模様に緯編地だけでは困難なインパクトを与えることができる。
【0056】
(5)本発明の比較例
本発明の比較例として革紐の緯糸と革紐を経糸で形成した織物を図15に示す。伸縮性、通気性、重量、耐衝撃吸収、防水性、抗菌性、耐熱性、耐冷性、耐久性、透湿性などさまざまな点で本発明の方が有利である。
【0057】
(6)本発明の製造方法
本発明は緯編地のループにレザー調挿入紐が通るように製造する。具体的には公知の緯編機(横編機又は丸編機)で緯編地を形成しつつレザー調挿入紐を挿入糸(インレイ)として緯編機に供給することで機械的に製造することができる。レザー調挿入紐の供給に糸解舒装置を用いるとレザー調挿入紐のねじれやよじれの派生を抑制できる。特にレザー調挿入紐として平紐を用いる場合は平紐のねじれやよじれが意匠性を悪くするので糸解舒装置を用いることが特に望ましい。本発明の製造には横編機とし島精機社の横編機(NSRY123LPC 10)を用いた。また、糸解舒装置として島精機社の糸解舒装置(UAオプションAYUD001)を用いた。
地糸やレザー調挿入紐の選択やどのような位置にレザー調挿入紐を挿入するかなどのデザインに関する設定は例えば、デザインシステム(SDS-ONE APEX4)にて自在に調整することができる。
また、緯編地にスチームをかけることも可能である。熱収縮性のある地糸や熱で形状記憶する素材の地糸を用いることで緯編地の仕上がり具合、緯編地と比較挿入糸の結合具合又は緯編地の編目の縮小をコントロールすることができる。
参考までに図16に本発明の製造に用いた緯編機の外観を示す。
【0058】
緯編機でレザー調挿入紐と緯編地を編み込む場合は、レザー調挿入紐の断線に十分注意する必要がある。レザー調挿入紐の断線を抑制するために、緯編機のキャリッジの移動速度を慎重に設定する必要がある。我々が試行錯誤の上得た知見は以下のとおりである。
(レザー調挿入紐の幅が3mm以上の場合)
キャリッジを横方向に120cm移動させる場合、約2.5~3.0秒で移動させるのが望ましい。すなわちキャリッジの移動速度は約40cm/秒~48cm/秒が望ましい。
(レザー調挿入紐が2mm以上~3mm未満の場合)
キャリッジを横方向に120cm移動させる場合、約3.0~3.5秒で移動させるのが望ましい。すなわちキャリッジの移動速度は約34cm/秒~40cm/秒が望ましい。
(レザー調挿入紐が0.8mm以上~2mm未満の場合)
キャリッジを横方向に120cm移動させる場合、約3.5~4.0秒で移動させるのが望ましい。すなわちキャリッジの移動速度は約30cm/秒~34cm/秒が望ましい。
また前述のとおりレザー調挿入紐として内部に芯糸が挿入された紐を用いることでさらに製造時の断線のリスクを軽減できる。
【0059】
(7)本発明の特徴(効果)
本発明のレザー調素材の特徴(効果)は上記に述べたものだけでなくさらに次のような効果を有する。
・本発明のレザー調素材はレザー調素材がもつ柔らかな風合いと高級感を維持しつつ緯編地(ニット)がもつ柔軟性を有している。
・緯編地を用いているために革紐を用いた織物と比較して強度がすぐれている。また通気性もすぐれている。
・緯編地を用いているためにレザー調素材としては軽量化が図られている。
・レザー調挿入紐の素材、色、表面加工、大きさ、緯編地に挿入する場所などの選択により、レザー調素材としての意匠性を高めることができる。
・緯編地の地糸の選択などによる意匠性をレザー調素材として取り入れている。
・レザー調挿入紐と緯編地の地糸の選択などによりそれぞれの意匠性の相乗効果が可能となる。
・レザー調挿入紐が緯編地の緯方向の複数の編み目に挿入されることにより緯編地の表面側からレザー調挿入紐が見える部分と緯編地に隠れている部分とが交互に形成されているため、レザー調素材としては表面と裏面の両方ともに意匠性があり両面を利用することができる。またリバーシブル素材としても活用できる。
・また、本発明のレザー調素材の材料(レザー調挿入紐)は紐であることから本発明のレザー調素材を用いたレザー調製品を製造する際の物流コストを低く抑えることができる。
・また、本発明の緯編地の地糸としてオーガニックコットンなどの糸を使用すればさらにエコロジー(エコ)でありサステナブルな取り組みに寄与することができる。
【0060】
本発明のレザー調素材は既存のさまざまなレザー調製品に適用することができる。例えば、かばん、バッグ、小物入れ、財布、ベルト、靴、スニーカー、衣服、ジャケット、コート、帽子、パンツ、ブレスレット、ソファー、クッション、椅子、インテリア資材、車両内装材、乗り物の座席などの表面材、箱及び包装容器などである。図12は本発明のレザー調素材を用いた鞄の実施例のイラストである。


図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19