(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165922
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/714 20060101AFI20221025BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20221025BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221025BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K31/714
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/661
A61K31/4415
A61K31/375
A61K31/185
A61K47/20
A61P3/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065022
(22)【出願日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021070757
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】泉川 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA37
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC22
4C076DD57Q
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086BC18
4C086BC83
4C086CB09
4C086DA34
4C086DA39
4C086GA07
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4C086MA03
4C086MA04
4C086MA06
4C086MA07
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC22
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA08
4C206MA03
4C206MA06
4C206MA11
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZC22
(57)【要約】
【課題】
ビタミンB12類と特定のビタミンを配合した組成物において、ビタミン類の経時的な分解を抑制でき、優れた保存安定性を有する固形組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、及びアスコルビン酸又はそれら塩から選ばれる少なくとも1種、(B)ビタミンB12類、及び(C)タウリンを含有することを特徴とする固形組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、及びアスコルビン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種、(B)ビタミンB12類、及び(C)タウリンを含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
さらに、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
(A)ビタミンB1類がチアミンまたはその塩である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項4】
(A)ビタミンB2類がリボフラビンまたはその塩である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項5】
(A)ビタミンB6類がピリドキシン又はその塩である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項6】
(B)ビタミンB12類がシアノコバラミンまたはメコバラミンである、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項7】
(C)タウリンが合成タウリンまたは水産物由来タウリンである、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項8】
(C)タウリンが、組成物全質量に対して30~90質量%である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項9】
錠剤、顆粒剤、散剤又はカプセル剤である、請求項1又は2に記載の固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミン含有組成物における、ビタミン類の含量低下が抑制された安定な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在複数のビタミン類を含有する医薬品、医薬部外品、健康食品等が市販されている。これらは、目的に応じて異なるビタミン等を含有しており、複数種類の医薬品、医薬部外品、健康食品等をそれぞれ個別に摂取するよりも簡便に必要な有効成分を摂取できる点で、極めて有用である。
【0003】
医薬組成物の製剤化にあたり、配合成分の成分安定性は非常に重要である。配合成分が製剤化された後、種々の環境条件(例えば、高温下や低温下、露光下、多湿環境下等)で経時的に不安定となって、その含量が大きく低下すると、該成分が所期の効果を発揮し得なくなることが懸念される。とりわけ、配合成分の用量を厳密に管理すべき医薬組成物においては、より高度な製剤安定性が要求される。
【0004】
水溶性ビタミンは、一般に、熱や光といった環境因子の影響を受けて不安定となり、含量低下を引き起こしやすいことが知られている。
【0005】
ビタミンB1類は炭水化物の代謝を促進することで、神経や筋肉の機能を正常に保つ作用があり、疲労回復やストレス緩和などに有効であることが知られている(特許文献1)。
【0006】
ビタミンB2類は、消耗性疾患など食事からの摂取では不十分な際の栄養補給剤の成分として、また口角炎、口辱炎、急・慢性湿疹、結膜炎などビタミンB2の欠乏または代謝障害が関与すると推定される疾患の予防・治療剤の成分として使われている。(特許文献2)
【0007】
またビタミンB6類は、生体内でアミノ酸脱炭酸酵素及びアミノ基転移酵素の補酵素として、タンパク質の代謝に関わる成分であり、肉体疲労、眼精疲労、妊娠時の栄養補給のために、広く医薬品、育毛剤、健康食品等に用いられている(特許文献3)。
【0008】
ビタミンB12類は生体内で多くの代謝系に関与し、正常な発育、造血、神経組織のミリエン鞘形成などに重要な役割を果たしている。また疲れ目や眼精疲労の改善等の薬理作用が知られており、マルチビタミン剤や点眼剤に多く配合されている。
【0009】
しかしながらこれらのビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類やビタミンB12類等のビタミンB群は、安定性の問題を多く抱えていることが広く知られており、各ビタミンB群について安定化を図る方法が種々検討されている。例えばビタミンB1類では、トコフェロールコハク酸エステルと同時配合の際は、どちらか一方を被覆剤で被覆することにより安定化を図る方法や、ビタミンB1類とともにデンプン及びリン酸水素カルシウムを配合することによりビタミンB1類の経時的な分解を抑制できる方法が開示されている(特許文献4、特許文献5)。
【0010】
また、アスコルビン酸又はその塩は水溶性のビタミンであり、熱や光に不安定なことが広く知られている。このため、アスコルビン酸またはその塩について安定化を図る方法が種々検討されている。例えばアスコルビン酸の周囲を疎水性熱溶融性脂質で被覆することにより、安定化を図る方法が開示されている(特許文献6)。
【0011】
しかしながら従来の方法では製剤処方、製剤設計に制約があるため対応できない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2018-104393号
【特許文献2】特開平11-199486号
【特許文献3】特開2015-196655号
【特許文献4】特開平5-271072号
【特許文献5】特開平9-268127号
【特許文献6】特開2001-128644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、及びアスコルビン酸又はその塩の群から選ばれる少なくとも1種とビタミンB12類を同時に配合すると、各種ビタミンの含量が経時的に低下することを見出した。本発明の目的は、ビタミンB12類と特定のビタミンを配合した組成物において、ビタミン類の経時的な分解を抑制でき、優れた保存安定性を有する固形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、驚くべきことに、アミノ酸の1種であるタウリンを配合することで、経時変化によるビタミン類の含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、及びアスコルビン酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種、(B)ビタミンB12類、及び(C)タウリンを含有することを特徴とする固形組成物、
(2)さらに、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する(1)に記載の固形組成物、
(3)(A)ビタミンB1類がチアミンまたはその塩である、(1)又は(2)に記載の固形組成物、
(4)(A)ビタミンB2類がリボフラビンまたはその塩である、(1)~(3)のいずれかに記載の固形組成物、
(5)(A)ビタミンB6類がピリドキシンまたはその塩である、(1)~(4)のいずれかに記載の固形組成物、
(6)(B)ビタミンB12類がシアノコバラミンまたはメコバラミンである、(1)~(5)のいずれかに記載の固形組成物、
(7)(C)タウリンが合成タウリンまたは水産物由来タウリンである、(1)~(6)のいずれかに記載の固形組成物、
(8)(C)タウリンが、組成物全質量に対して30~90質量%である、(1)~(7)のいずれかに記載の固形組成物、
(9)錠剤、顆粒剤、散剤又はカプセル剤である、(1)~(8)のいずれかに記載の固形組成物、
である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ビタミン類の含量低下が抑制された固形組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、「ビタミンB1類」とは、ビタミンB1若しくはその誘導体又はそれらの塩であり、チアミンそのもののほか、その誘導体(ビスチアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、チアミン二リン酸など)及びそれらの塩(硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩など)も包含され、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明においては、塩酸チアミン、硝酸チアミン(チアミン硝化物)、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミンが好ましく、硝酸チアミン(チアミン硝化物)、塩酸フルスルチアミン、ベンフォチアミンがより好ましく、塩酸フルスルチアミン、硝酸チアミン(チアミン硝化物)がさらに好ましく、硝酸チアミン(チアミン硝化物)が特に好ましい。これらのビタミンB1類は公知の化合物であり、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法により製造することも可能である。
【0018】
本発明におけるビタミンB1類とタウリンの配合比は、ビタミンB1類の安定性の効果からビタミンB1類(複数のビタミンB1類を含む場合はその総量。以下、同じ)、1質量部に対し、タウリンは4~300質量部が好ましく、20~200質量部がより好ましく、20~150質量部がさらに好ましく、20~100質量部が特に好ましい。
【0019】
本発明におけるビタミンB1類と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合比は、ビタミンB1類の安定性の効果からビタミンB1類、1質量部に対し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは0.5~50質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましく、2~10質量部が特に好ましい。
【0020】
本発明におけるビタミンB1類の1日当たりの摂取量は特に限定されず、組成物の利用目的等に応じて適宜調整可能である。例えば、経口投与用の組成物の場合、1日当たりビタミンB1類は0.1~300mgが好ましく、1~100mgがより好ましく、1~25mgがさらに好ましい。
【0021】
本発明の組成物において、組成物の安定性を十分に維持しうるという観点から、ビタミンB1類は、組成物全質量に対して0.01~30質量%含有せしめるのが好ましく、0.1~20質量%含有せしめるのがより好ましく、0.1~10質量%含有せしめるのがさらに好ましく、0.8~5質量部%含有せしめるのが特に好ましい。
【0022】
本発明において、「ビタミンB2類」とは、ビタミンB2若しくはその誘導体又はそれらの塩であり、リボフラビンそのもののほか、その誘導体(リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドなど)及びそれらの塩(ナトリウム塩などのアルカリ金属塩など)も包含され、本発明においては、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明においては、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビンが好ましく、リボフラビンが特に好ましい。これらのビタミンB2類は公知の化合物であり、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法により製造することも可能である。
【0023】
本発明におけるビタミンB2類とタウリンの配合比は、ビタミンB2類の安定性の効果からビタミンB2類(複数のビタミンB2類を含む場合はその総量。以下、同じ)、1質量部に対し、タウリンは4~750質量部が好ましく、20~500質量部がより好ましく、20~300質量部がさらに好ましく、40~250質量部が特に好ましい。
【0024】
本発明において、ビタミンB2類と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合比において、ビタミンB2類の安定性の効果からビタミンB2類、1質量部に対し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは0.5~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましく、1~50質量部がさらに好ましく、8~50質量部が特に好ましい。
【0025】
本発明におけるビタミンB2類の1日当たりの摂取量は特に限定されず、組成物の利用目的等に応じて適宜調整可能である。例えば、経口投与用の組成物の場合、1日当たりビタミンB2類は0.1~100mgが好ましく、0.5~45mgがより好ましく、1~45mgがさらに好ましく、2~15mgが特に好ましい。
【0026】
本発明において、組成物の安定性を十分に維持しうるという観点から、ビタミンB2類は、組成物全質量に対して0.01~30質量%含有せしめるのが好ましく、0.01~20質量%含有せしめるのがより好ましく、0.05~10質量%含有せしめるのがさらに好ましく,0.1~2.5質量%含有せしめるのが特に好ましい。
【0027】
本発明において、「ビタミンB6類」とは、ビタミンB6若しくはその誘導体又はそれらの塩であり、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサールそのもののほか、それらの誘導体(リン酸ピリドキサールなど)及びそれらの塩(カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;塩酸塩などの無機酸塩など)も包含され、本発明においては、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明においては、ピリドキシン塩酸塩、リン酸ピリドキサールが好ましく、ピリドキシン塩酸塩が特に好ましい。これらのビタミンB6類は公知の化合物であり、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法により製造することも可能である。
【0028】
本発明におけるビタミンB6類とタウリンの配合比は、ビタミンB6類の安定性の効果からビタミンB6類(複数のビタミンB6類を含む場合はその総量。以下、同じ)、1質量部に対し、タウリンは4~750質量部が好ましく、20~400質量部がより好ましく、20~250質量部がさらに好ましく、25~250質量部が特に好ましい。
【0029】
本発明において、ビタミンB6類と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合比において、ビタミンB6類の安定性の効果からビタミンB6類、1質量部に対し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは0.5~50質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましく、10~50質量部がさらに好ましい。
【0030】
本発明におけるビタミンB6類の1日当たりの摂取量は特に限定されず、組成物の利用目的等に応じて適宜調整可能である。例えば、経口投与用の組成物の場合、1日当たりビタミンB6類は0.1~100mgが好ましく、0.5~50mgがより好ましく、1~50mgがさらに好ましく、1~10mgが特に好ましい。
【0031】
本発明において、組成物の安定性を十分に維持しうるという観点から、ビタミンB6類は、組成物全質量に対して0.01~30質量%含有せしめるのが好ましく、0.1~20質量%含有せしめるのがより好ましく、0.1~10質量%含有せしめるのがさらに好ましく、0.3~1.8質量%が特に好ましい。
【0032】
本発明において、「アスコルビン酸又はその塩」とは、アスコルビン酸そのもののほか、それらの塩(カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ナトリウム塩などのアルカリ金属塩など)も包含され、本発明においては、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、本発明においては、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウムが好ましく、アスコルビン酸カルシウムが特に好ましい。これらのアスコルビン酸又はその塩は公知の化合物であり、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法により製造することも可能である。
【0033】
本発明におけるアスコルビン酸又はその塩とタウリンの配合比は、アスコルビン酸又はその塩の安定性の効果からアスコルビン酸又はその塩(複数のアスコルビン酸又はその塩を含む場合はその総量。以下、同じ)、1質量部に対し、タウリンは0.2~30質量部が好ましく、0.3~20質量部がより好ましく、1~15質量部がさらに好ましく、1~10質量部が特に好ましい。
【0034】
本発明において、アスコルビン酸又はその塩と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合比において、アスコルビン酸又はその塩の安定性の効果からアスコルビン酸またはその塩、1質量部に対し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは0.1~40質量部が好ましく、0.1~30質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましく、0.2~2.5が特に好ましい。
【0035】
本発明におけるアスコルビン酸又はその塩の1日当たりの摂取量は特に限定されず、組成物の利用目的等に応じて適宜調整可能である。例えば、経口投与用の組成物の場合、1日当たりアスコルビン酸又はその塩は1~2,000mgが好ましく、10~1,000mgがより好ましく、50~700mgがさらに好ましい。
【0036】
本発明において、組成物の安定性を十分に維持しうるという観点から、アスコルビン酸又はその塩は、組成物全質量に対して1~60質量%含有せしめるのが好ましく、5~60質量%含有せしめるのがより好ましく、5~50質量%含有せしめるのがさらに好ましい。
【0037】
本発明において、「ビタミンB12類」とは、ビタミンB12若しくはその誘導体又はそれらの塩であり、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンそのもののほか、それらの誘導体(メコバラミン、デオキシアデノシルコバラミンなど)及びそれらの塩(塩酸塩などの無機酸塩;酢酸塩などの有機酸塩など)も包含され、本発明においては、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ビタミンB12類は共通して、分子の中心にコバルトを含むコリン環構造を有している。本発明においては、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メコバラミン、ヒドロキソコバラミンが好ましく、シアノコバラミン、メコバラミンがより好ましく、シアノコバラミンが特に好ましい。これらのビタミンB12類は公知の化合物であり、市販のものを用いてもよく、また、公知の方法により製造することも可能である。
【0038】
本発明におけるビタミンB12類とタウリンの配合比は、ビタミンB12類の安定性の効果からビタミンB12類(複数のビタミンB12類を含む場合はその総量。以下、同じ)、1質量部に対し、タウリンは30~150,000質量部が好ましく、100~150,000質量部がより好ましく、2,500~50,000質量部がさらに好ましく、5,000~25,000質量部が特に好ましい。
【0039】
本発明におけるビタミンB12類と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの配合比は、ビタミンB12類の安定性の効果からビタミンB12類、1質量部に対し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは0.2~20,000質量部が好ましく、0.6~15,000質量部がより好ましく、15~5,000質量部がさらに好ましく、500~5,000質量部が特に好ましい。
【0040】
本発明におけるビタミンB12類の1日当たりの摂取量は特に限定されず、組成物の利用目的等に応じて適宜調整可能である。例えば、経口投与用の組成物の場合、1日当たりビタミンB12類は1~5,000μgが好ましく、1~1,500μgがより好ましく、1~60μgがさらに好ましい。
【0041】
本発明において、組成物の安定性を十分に維持しうるという観点から、ビタミンB12類は、組成物全質量に対して0.0001~5質量%含有せしめるのが好ましく、0.001~1.5質量%含有せしめるのがより好ましく、0.001~0.06質量%含有せしめるのがさらに好ましい。
【0042】
本発明に用いられるタウリンは、日本薬局方又は食品添加物に準拠したタウリンであり、合成タウリン、又はタウリンを含むいか、たこや、かきなどの水産物からの抽出品(水産物由来抽出物)などをあげることができる。好ましくは合成タウリン(合成品)、または水産物由来タウリン、より好ましくは合成タウリンである。なお、牛胆汁由来のタウリンは好ましくない。タウリンは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0043】
本発明におけるタウリンは、組成物全質量に対して20~98質量%含有せしめるのが好ましく、30~98質量%含有せしめるのがより好ましく、40~96質量%含有せしめるのがさらに好ましい。
【0044】
本発明に用いられる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロース骨格に極少量のヒドロキシプロポキシ基を有するセルロースであり、固形組成物の製造の観点から、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が5~16質量%であるものが好ましく、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が7~14質量%であるものがより好ましく、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が8~11質量%であるものがさらに好ましい。特に限定されるものではないが、日本薬局方又は食品添加物に準拠した低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、日本薬局方に準拠した低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明において,低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粒子形態は、特に限定されるものではないが、微粉又は繊維状がより好ましく、繊維状がより好ましい。
【0045】
本発明において、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、組成物全質量に対して1~30質量%含有せしめるのが好ましく、1~20質量%含有せしめるのがより好ましく、3~20質量%含有せしめるのがさらに好ましい。
【0046】
本発明の固形組成物は特に制限されるものではないが、例えば医薬品、医薬部外品、食品等が挙げられる。好ましくは医薬品、医薬部外品である。
【0047】
本発明の固形組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよく、ミニタブレットでもよい。
【0048】
本発明の固形組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、酸味剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着色剤、発泡剤、界面活性剤、可塑剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0049】
本発明の固形組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0050】
本発明の固形組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール、リン酸水素カルシウム類等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0051】
本発明の錠剤には、従来行われている錠剤の製造方法により、製造することができる。すなわち、本製剤は、医薬有効成分と上述のような添加剤を混合機などの適当な混合機で混合して錠剤用混合末を製造した後、当該混合末を直接圧縮打錠する方法、または、顆粒を圧縮打錠する方法等により製造することができる。顆粒の製造方法は、乾式造粒法(スラッグ法、ローラーコンパクター法)、湿式造粒法により製造することができ、好ましくは湿式造粒法である。造粒装置としては、ローラーコンパクター、撹拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、噴霧造粒等で製造すればよい。錠剤用混合末または当該混合末の顆粒を圧縮打錠する機械としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を用いることができる。
【実施例0052】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0053】
(固形組成物の調製)
(実施例1~10、比較例1~6)
表1に記載の配合組成で各原料成分を秤量した後、均一に混合した。混合物と適量の水及びエタノールの混液を加え乳鉢で練合、造粒した後、十分に乾燥させた。その後全量を篩(目開き710μm)に通過させ造粒物を得た後、打錠し錠剤を得た。
【0054】
【0055】
安定性試験(含量変化)
得られた錠剤について、試験開始時及び65℃条件下に1日間保存後のサンプルについて、チアミン硝化物、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、シアノコバラミンの含量を測定し、残存率を計算した。
結果を表2に示す。
【0056】
【0057】
表2に示すように、タウリンを配合しておらず低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのみを配合した比較例1、タウリンを配合していない比較例2~比較例5のビタミンB群の残存率は全て90%以下となった。一方、タウリンのみを配合している実施例1において、比較例1~3と比較し、劇的にビタミンB群の残存率が改善することが明らかとなった。
また、タウリン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの両者を配合した実施例2~実施例8はビタミンB群の残存率は全て90%以上を示し、残存率がさらに改善することが明らかとなった。
アスコルビン酸カルシウムを配合した比較例6のシアノコバラミンの残存率は80%以下となった。タウリン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの両者を配合した実施例9、10では、シアノコバラミンの残存率が90%以上を示し、劇的にシアノコバラミンの残存率が改善することが明らかとなった。