(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165923
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】保護ロッキング付き安全スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 27/00 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H01H27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065497
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】10 2021 109 993.5
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム リンク
(72)【発明者】
【氏名】ロゲール ループ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーアス ファイト
(57)【要約】
【課題】ボルトを介した保護ロッキングを可能にし、小さくてコンパクトな設計を有し、かつ、効果的で安全で省エネ型の保護ロッキングを可能にする安全スイッチを提供する。
【解決手段】安全スイッチ(10)に対して所定のロック位置にアクチュエータ(12)をロックするよう構成された、移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)と、第1の位置と第2の位置との間で出し入れ可能なロッキング隔壁(60)とを備え、前記ロッキング隔壁(60)は、前記ロッキングボルト(30)を、嵌合を介して前記第2の位置に固定するよう構成されている、安全スイッチ(10)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全スイッチ(10)であって、
移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)であって、当該安全スイッチ(10)に対して所定のロック位置にアクチュエータ(12)をロックするよう構成された、前記ロッキングボルト(30)と、
移動可能に取り付けられたロッキング隔壁(60)であって、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な、前記ロッキング隔壁(60)とを備え、
前記ロッキング隔壁(60)は、前記移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)を、正嵌合を介して前記第2の位置に固定するよう構成されている、安全スイッチ(10)。
【請求項2】
前記移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)は、窪み(62)を有するガイド本体(48)に取り付けられており、
前記ロッキング隔壁(60)は、前記窪み(62)を通って前記ガイド本体(48)内を移動可能とされており、前記正嵌合は、前記ロッキング隔壁(60)と前記ガイド本体(48)との間に形成される、請求項1に記載の安全スイッチ。
【請求項3】
伝達要素(70)をさらに備え、前記伝達要素(70)は、当該伝達要素(70)の長手方向に沿って延びる運動の際に、前記ロッキング隔壁(60)を、当該伝達要素(70)の前記長手方向に対して横方向に、特に垂直に、前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるよう構成されている、請求項1または請求項2に記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記伝達要素(70)は、前記長手方向を横切る第1の方向に隆起する第1の突起(84)と、前記第1の方向と反対の第2の方向に隆起し、かつ、前記第1の突起(84)に対して前記長手方向にオフセットされている第2の突起(68)とを含んでいる、請求項3に記載の安全スイッチ。
【請求項5】
前記ロッキング隔壁(60)を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるよう構成された、駆動装置(68)をさらに備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項6】
前記駆動装置(68)は、電気機械式アクチュエータ、特にソレノイドであって、前記駆動装置(68)は、所定の運動の方向に沿った第1の直線運動を実行する、請求項5に記載の安全スイッチ。
【請求項7】
前記移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)は、前記所定の運動の方向に沿った第2の直線運動を行うように構成されている、請求項6に記載の安全スイッチ。
【請求項8】
前記移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)および前記駆動装置(68)は、力学的に切り離されている、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項9】
前記移動可能に取り付けられたロッキングボルト(30)を予めセンタリングされた位置へと付勢する作動力を有するアクチュエータ要素(56)をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項10】
前記ロッキング隔壁(60)を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動可能にする、補助的なロック解除装置(26)をさらに備える、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項11】
前記補助的なロック解除装置(26)は前記駆動装置(68)に運動学的に結合されており、前記ロッキング隔壁(60)は、前記補助的なロック解除装置(26)を介し、前記駆動装置(68)の駆動力に反して移動可能とされている、請求項10に記載の安全スイッチ。
【請求項12】
前記アクチュエータ(12)が前記所定のロック位置にあるときに、前記アクチュエータ(12)の対応するトランスポンダ(28)から信号を読み取るよう構成された読み取り器(29)をさらに備える、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項13】
前記アクチュエータ(12)のアクチュエータ部(16)の位置、前記ロッキングボルト(30)の位置、および/または、前記ロッキング隔壁(60)の位置を直接または間接的に検知するよう、かつ、前記検知された位置を、当該安全スイッチ(10)に接続されたコントローラに通知するよう構成された、評価ユニットをさらに備える、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項14】
前記アクチュエータ(12)のアクチュエータ部(16)が、前記所定のロック位置を占めるように挿入可能とされている、受け口(20)をさらに備え、前記受け口(20)は、前記アクチュエータ部(16)が当該受け口(20)内へと挿入可能とされる、180度の開口角を有している、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の安全スイッチ。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の安全スイッチ(10)と、前記安全スイッチ(10)に対して移動可能とされたアクチュエータ(12)とを備える、安全スイッチング機構(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(以下、発明のことを「開示」ということがある)は、安全スイッチ、ならびに、安全スイッチおよびアクチュエータを備える安全スイッチング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
安全スイッチおよび対応する安全スイッチング機構は、機械および技術システムが人々にもたらす危険を許容水準まで低減するために、安全技術において使用されている。通常、そのような安全スイッチング機構は、例えば危険な区域へのアクセスを安全にする分離保護装置として働く安全ドアと関連して、危険な区域へのアクセスを安全にするために使用される。そのような場合、安全スイッチング機構により安全ドアが適切にロックされることを保証できれば、安全スイッチのみで危険な区域内での危険なシステムの運転を可能にできる。システムは、安全スイッチング機構に結合され、かつ、対応する安全関連の制御信号を安全スイッチング機構から受信する、安全コントローラを介して実現できる。
【0003】
この種の安全スイッチング機構は、安全スイッチング機構の所定の不具合時の安全性を規定する標準的規則に従う。求められる不具合時の安全性は、安全スイッチング機構の追加的な安全関連の装置により達成できる。例えば、アクチュエータおよび安全スイッチにそれぞれ配置された送信器および受信器は、安全スイッチに関する所定のロック位置にアクチュエータが存在することを保証するように相互作用できる。
【0004】
インターロッキングの監視に加えて、前述した種類の安全スイッチング機構には、保護ロッキング(guard locking)も設けられている。保護ロッキングは、安全関連の移動する部品の位置を監視するだけでなく、それを所定の位置にロックする。このような保護ロッキングは、例えば特許文献1または特許文献2より公知である。それらにおいて説明された保護ロッキングは、回転駆動装置により解除位置とロック位置との間で移動できる保護ロッキングボルトを有しており、保護ロッキングボルトおよび駆動装置は、伝送装置を介して互いに運動学的に結合されている。
【0005】
保護ロッキングの別の形態が、小さくてコンパクトな設計の安全スイッチを教示する特許文献3に記載されている。特許文献3に係る安全スイッチはロッキングボルトを有していない。むしろ、ロッキングユニットが設けられており、ロック位置にあるロッキング要素がロッキングユニットの開口内へと突出して、そのサイズを縮小している。アクチュエータは、その前端が、この縮小された開口よりも大きいが開口単独よりは小さい断面積を有しており、それゆえにロッキングユニット内に保持することができる。ロッキング要素は、アクチュエータが開口を通過できるように作動力に逆らって移動させることができ、その際、アクチュエータがそのロック位置に挿入されるとすぐに、作動力によりロッキング要素がロック位置に戻るよう移送されて、アクチュエータを固定する。追加のロッキングユニットを使用して、ロッキング要素をこれ以上作動力に逆らって移動できないようにロックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2009 041 101 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/058718 A1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3 474 304 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1または特許文献2に示す保護ロッキングには、ボルトが常にそれぞれの駆動装置に運動学的に結合されており、それゆえにボルトに働く力も駆動装置に伝達されるという短所がある。他方、特許文献3に係る装置は、ロッキング要素および保護ロッキングを切り離すが、特定のアクチュエータ形状に限定される。
【0008】
これらの背景に照らして、ボルトを介した保護ロッキングを可能にし、小さくてコンパクトな設計を有し、かつ、効果的で安全で省エネ型の保護ロッキングを可能にする安全スイッチを提供することが本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面によれば、安全スイッチであって、当該安全スイッチに対して所定のロック位置にアクチュエータをロックするよう構成された、移動可能に取り付けられたロッキングボルトと、第1の位置と第2の位置との間で出し入れ可能に取り付けられたロッキング隔壁(locking bulkhead)とを備え、ロッキング隔壁は、移動可能に取り付けられたロッキングボルトを、正嵌合(positive fit)を介して、第2の位置に固定するよう構成されている、安全スイッチが提供される。
【0010】
ゆえに、移動可能なロッキング隔壁を介してロックできるロッキングボルトを有する安全スイッチを提供することが、本発明の着想である。第2の位置での正篏合(形態閉鎖(form closure))を介して、ロッキング隔壁はロッキングボルトの移動を阻止し、かつ、ロッキングボルトに働く力を吸収する。ロッキングボルトに対する力は、例えば保護ロッキングに逆らって安全ドアを開こうとした場合に増加し、それにより、これらの力がボルトの作動要素またはロッキング隔壁の駆動装置へと伝達されることなく、安全スイッチの構造へと、特にハウジングへと伝達できる。特に、駆動装置はその際、より低い負荷用に設計することができ、より低いエネルギーで運転することができる。これは、安全スイッチを全体として、より小さく、よりコンパクトに、かつ、より安価に設計できることを意味する。
【0011】
ロッキングはボルトによって行われるため、対応するアクチュエータの設計、または、アクチュエータを安全スイッチと組み合わせるやり方については、多くの可能性がある。アクチュエータの形状は、ボルトが係合できさえすればよく、アクチュエータが安全スイッチに、ボルトに対して径方向に近付く角度は任意であってよい。より小さくて、よりコンパクトな設計に加えて、安全スイッチとアクチュエータとからなる安全スイッチング機構はこのような仕方で、より柔軟に使用することもできる。
【0012】
保護ロッキング用のボルトおよび隔壁によるそのロッキングを構造上分離することにも、両方の装置をそれらのそれぞれの目的のためにのみ設計すればよく、それゆえに特に効率的に設計できるという利点がある。
【0013】
好ましい改良形態では、ロッキングボルトは、窪みを有するガイド本体に取り付けられていてもよく、窪みを通って、ロッキング隔壁は、ガイド本体内を移動可能とされており、正嵌合は、ロッキング隔壁とガイド本体との間に形成されている。
【0014】
ゆえに、ロッキング隔壁を、ロッキングボルトのガイド本体内へと押し込んで、ロッキングボルトをロックすることができる。ボルトを介してロッキング隔壁に働く力は、ロッキング隔壁を通じてガイド本体へと、そしてそれにより安全スイッチの構造要素へと伝達される。それにより、ボルトの駆動装置およびロッキング隔壁の駆動装置を、この力から切り離すことができる。
【0015】
ロッキングボルトのガイド本体との正嵌合については、第1の位置から第2の位置へと短い距離を移動するのみでよい、非常に短い隔壁を使用すれば十分である。これによっても、簡単かつコンパクトな仕方で、ロッキング隔壁用の駆動ユニットを設計することが可能となる。
【0016】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、伝達要素をさらに備えており、伝達要素は、当該伝達要素の長手方向に沿って延びる運動中に、ロッキング隔壁を、当該伝達要素の長手方向に対し横方向に、特に垂直に、第1の位置から第2の位置へと移動するよう構成されている。
【0017】
伝達要素を介して、隔壁をセットするための横方向の移動を行うことが可能であり、これは、ロッキングボルトの移動と実質的に平行とすることができる。それにより、安全スイッチが本質的にロッキングボルトの長手方向に延びることが可能となり、これは安全スイッチの幅の狭い設計を可能にする。伝達要素はさらに、ロッキング隔壁の駆動装置を、ロッキング隔壁から切り離すことを可能にする。換言すれば、伝達要素およびロッキング隔壁は、ロッキング隔壁に働く力が伝達要素の駆動装置に伝達されないように配置されてもよい。
【0018】
さらなる改良形態では、伝達要素は、伝達要素の長手方向を横切る第1の方向に隆起する第1の突起と、第1の方向と反対の第2の方向に隆起し、かつ、第1の突起に対して長手方向にオフセットされている第2の突起とを含んでいてもよい。
【0019】
突起を介して、伝達要素の長手方向を横切るロッキング隔壁の上昇および下降運動を、さらなる部品の必要なしに、簡単な仕方で実現できる。同時に、この種の力の方向転換により、簡単な仕方で力の切り離しを実施することが可能となる。
【0020】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、ロッキング隔壁を第1の位置から第2の位置へと移動するよう構成された、アクチュエータをさらに備えていてもよい。
【0021】
アクチュエータは、安全スイッチの制御された保護ロッキングを可能にする。本明細書に説明するロッキング隔壁がボルトをロックするために移動しなければならない距離が短いため、隔壁用の駆動装置を、非常に簡単に、小さく、かつ省エネ型に設計することができる。
【0022】
さらなる改良形態では、駆動装置は、電気機械式アクチュエータ、特にリニアソレノイドであってもよく、それは、所定の運動の方向に沿った第1の直線運動を行う。
【0023】
ゆえに、駆動装置は、短い移動を行うのみである場合に、特に簡単に設計できる、簡単な上昇装置であってもよい。本件において、これはロッキング隔壁の、対応する設計によって可能とされている。
【0024】
さらなる改良形態では、ロッキングボルトは、所定の運動の方向に沿った第2の直線運動を行うよう構成できる。
【0025】
この改良形態によれば、ボルトおよび駆動装置の移動の方向は、それゆえに対応している。それにより、安全スイッチが本質的に長手方向に延び、それゆえに可能な限り幅が狭くなるようにできる。
【0026】
さらなる改良形態では、ロッキングボルトおよび駆動装置は、力学的に切り離されていてもよい。
【0027】
この改良形態により、経済的かつ簡単な駆動装置が可能となる。なぜなら、駆動装置は、ロッキングボルトに働くロック力を、これらが正嵌合を介して切り離されているゆえに、相殺しなくてよいからである。
【0028】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、ロッキングボルトを予めセンタリングされた位置(pre-centering position)へと付勢する作動力を有する、アクチュエータを含んでいてもよい。
【0029】
この改良形態によれば、安全スイッチは事前センタリング機能を有している。事前センタリングとは、アクチュエータを、前もってロックしておくことなしに、ロッキングに適した位置に保持することである。事前センタリングにより、実際のロッキングについて、ロッキングボルト自体を再び移動させなくてもよくなる。なぜなら、それはすでにロック位置にあるからである。最終的なロッキングについては、作動力に逆らうロッキングボルトの運動のみを防止すべきである。
【0030】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、ロッキング隔壁を第1の位置から第2の位置へと移動するための、追加のロック解除手段をさらに備えていてもよい。
【0031】
追加のロック解除手段は、補助的なロック解除装置として機能でき、かつ、手動のロック解除を可能にできる。補助的な解除を緊急の解除へと格上げすることも考え得る。追加のロック解除装置を、ロッキング隔壁のみを移動するよう設定することもできる。このように、補助的または緊急な解除は、簡単なやり方で実施できる。
【0032】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、アクチュエータが所定のロック位置にあるときに、アクチュエータの対応するトランスポンダから信号を読み取るよう構成された、読み取り器をさらに備えていてもよい。
【0033】
アクチュエータの位置は、アクチュエータ内に収容されたトランスポンダを介して検証できる。トランスポンダ/読み取り器の組み合わせにより、追加の安全装置としての安全スイッチに対する規範的要件(normative requirements)の順守を保証できる。アクチュエータは、発明の実施の形態に応じて柔軟に構成できるので、トランスポンダ/読み取り器ユニットの組み合わせも、さまざまに設計できる。
【0034】
さらなる改良形態では、安全スイッチは、アクチュエータが、所定のロック位置を占めるように挿入可能とされている、受け口をさらに備えていてもよく、受け口は、アクチュエータが当該受け口内へと挿入可能とされている、180度の開口角を有している。
【0035】
アクチュエータを安全スイッチに対して180度の角度で送り込めるようにすることにより、安全スイッチング機構を柔軟に設計でき、かつ、安全スイッチをアクチュエータに対して異なる方位に配置できる。
【0036】
前記特徴および以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれの場合に示唆されている組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは単独でも使用できると理解される。
【0037】
本発明の実施の形態を図面に示し、以下の記述において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施の形態に係る安全スイッチング機構を示す斜視図である。
【
図3】
図1の安全スイッチング機構のさらなる断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、実施の形態に係る安全スイッチング機構の斜視図を示している。安全スイッチング機構は、本明細書においてその全体を参照番号100によって示され、かつ、相互に移動可能で相互作用する2つの部品、すなわち安全スイッチ10およびアクチュエータ12を、本質的に備えている。
【0040】
アクチュエータ12は、据え付け部14を備えており、据え付け部14を介してアクチュエータ12は、安全関連の移動可能な部品、例えば安全ドアに接続できる。また、アクチュエータ12は、アクチュエータ部16を備えており、アクチュエータ部16は、安全関連の移動可能な部品の位置に基づいて、安全スイッチ10と作動接続(operative connection)させることができる。
【0041】
安全スイッチ10は、安全関連の移動可能な部品に対して固定される装置(例えばドアフレーム)に固定することのできる基体18と、作動接続を確立するためにアクチュエータ12のアクチュエータ部16を挿入できる受け口20とを有するハウジングを備えている。
【0042】
作動接続は、インターロック監視および保護ロッキングを含んでいてもよい。作動接続の状態は、基体18上のディスプレイ要素22を介して視覚化できる。さらには、前記状態は、安全スイッチ10により検知された状態に応じた応答を発動するように、インターフェース24を介して、他の装置(特に安全コントローラ)に報告することができる。例えば、安全コントローラは、アクチュエータ部16が受け口20で適切に検知されない場合に、技術設備の運転を停止できる。
【0043】
図1に示す実施の形態において、安全スイッチ10は、アクチュエータ12の補助的または緊急なロック解除を可能にする、補助的なロック解除装置26をさらに備えている。より詳細に以下に説明するように、補助的なロック解除装置26は、安全スイッチ10による保護ロッキングを手動で解除するのに使用できる。
【0044】
図2を参照して、安全スイッチ10の例示的な構造を、より詳細に以下に説明する。
図2は、基体18を縦断した、
図1の安全スイッチ10の断面図を示している。同一の参照番号は、
図1と同じ部分を示している。
【0045】
図2では、
図1を参照してすでに示したように、アクチュエータ12は安全スイッチ10に対して、所定のロック位置にあり、そこでは、アクチュエータ部16は、安全スイッチ10が取り付けられる固定された部品に対する、安全関連の移動可能な部品の適切なロッキングを想定できるような仕方で、安全スイッチ10の受け口20内に配置されている。受け口20内でのアクチュエータ部16の適切な位置は例えば、本明細書で示唆されるように、アクチュエータ部16内のトランスポンダ28と、安全スイッチ10内の対応する読み取り器29とを介して判定できる。しかし、安全スイッチ10がインターロック監視のこの設計に限定されず、安全スイッチ10に対するアクチュエータ部の位置を判定する他のやり方を考え得ることに留意すべきである。
【0046】
所定のロック位置において、アクチュエータ部16を、安全関連の移動可能な部品が、固定された部品(保護ロッキング)に対してもはや移動できないように、安全スイッチ10によって受け口20内でロックすることができる。
【0047】
この目的のために、安全スイッチ10は、アクチュエータ部16と係合できる、移動可能に取り付けられたロッキングボルト30を有している。例えば、アクチュエータ部16は、本明細書に示すように穴の形態の、または、ロッキングボルト30が係合してアクチュエータ部16を固定する係合窪み(engagement recess)の形態の、窪み32を有していてもよい。固定するには、簡単な係合で十分であり、かつ、アクチュエータ部16の背部で係合する必要はない。
【0048】
固定について説明した仕方でロッキングボルト30を使用して、アクチュエータ部16を、ロッキングボルト30に対して径方向にいかなる角度であっても安全スイッチ10に対して供給し、それを所定の場所に固定することができる。例えば、受け口20は、本明細書に示すように、アクチュエータ部16を受け入れるために180度という大きく開いた角度で、スロット状の形態を有していてもよい。アクチュエータ20は例えば、ボルトの長手方向の本体軸36に直交するように延びる閉鎖表面34と、ボルト30の反対側の止め具38と、止め具38を基体18に接続する横材40とによって形成されていてもよい。あるいは、止め具38が基体18から取り外される、二つの部分でできた受け口20が考えられる。この場合、アクチュエータ部16を360度の角度でロッキングボルト30へと径方向に送り込むことが考えられるであろう。
【0049】
本明細書及び図面に示すように、ロッキングボルト30は、丸いヘッド部42を有し、かつ、ヘッド部42の反対の側において、径方向に突出するフランジ部44で終わる、円筒体であってもよい。ロッキングボルト30はガイド46に、その長手方向の本体軸36に沿って、移動可能に取り付けられていてもよい。
【0050】
ロッキングボルト30は、ロッキングボルト30が閉鎖表面34へと突出するロック位置と、ロッキングボルト30がアクチュエータ部16を解除する解除位置との間で、移動可能とされている。フランジ部44は、中空の円筒形のガイド本体48内に配置でき、その際、ガイド本体48の上側の止め具50および下側の止め具52が、それに沿ってロッキングボルト30が2つの位置の間を移動可能な、移動経路54を規定する。
【0051】
反動バネ56(アクチュエータ)は、ロック位置へと移動するよう、ロッキングボルトを付勢する。フランジ部44およびガイド本体48はそれぞれ、反動バネ56を受け入れて支持するために、対向する各孔58を含んでいてもよい。反動バネ56は、アクチュエータ部16を事前センタリングするのに十分な力をロッキングボルト30に対して及ぼすが、ロックされた位置からのアクチュエータ部の移動がもはや不可能となるようには阻止しないように構成されていてもよい。むしろ、反動バネ56の作動力は、事前センタリングしたアクチュエータ部16を、人が垂直抗力(normal force)で受け口20から引き出すことを可能にするよう選択されていてもよい。これは、ロッキングボルト30のヘッド部を丸くすることにより、かつ/または、それに応じてアクチュエータ部16の窪み32を丸くすることにより、さらに促進できる。アクチュエータ部16を出入りさせる際、ロッキングボルト30は、ロック位置において事前負荷されて(preloaded)おり、すなわち付勢されて(biased)おり、それゆえに、反動バネ56の作動力に逆らって移動される。
【0052】
安全スイッチ10はさらに、ロッキング隔壁(locking bulkhead)60を備えており、ロッキング隔壁60は、移動可能に取り付けられたロッキングボルト30を、少なくともそのロック位置において、固定するよう配置されている。ロッキング隔壁60は、ロッキングボルト30の長手方向の本体軸36に対して横方向に、特に垂直に、ロッキングボルト30の移動経路54内へと挿入可能な、急速に変位可能なシャッターであってもよい。例えば、ロッキング隔壁60は、径方向の窪み62を通ってガイド本体48内へと挿入可能であってもよく、そこにおいて、第1の位置(ロック位置)を占める。
【0053】
ロック位置において、ロッキング隔壁60は、正嵌合(positive fit)を介して、ロッキングボルト30の移動を阻止する。正嵌合は、ガイド本体48のフランジ部44および停止面64との、ロッキング隔壁60の係合により形成されてもよい。反動バネ56の作動力に逆らってロッキングボルト30を長手方向に押す力は本明細書において、ロッキング表面66と反対の面がガイド本体48の当接面64に当接した状態で、ロッキング隔壁60のロッキング表面66に垂直に働く。ガイド本体48は、ロッキング隔壁60を介して、ロッキングボルト30に働く力を吸収するものであり、基体18に固定的に取り付けられていてもよく、それゆえに、ハウジングが基体18とともに取り付けられている部品に固定して取り付けられている。
【0054】
第2の位置(解除位置)において、ロッキングボルト30の移動は解放され、ガイド本体48内で長手方向の本体軸36に沿って移動することが可能となる。ロッキング隔壁60が解除位置にあるときに、アクチュエータ部16を受け口20から引き出して、ロッキングボルト30を反動バネの作動力に逆らって押すことができる。
【0055】
図2に示すように、ロッキング隔壁60は、ロッキングボルト30をロック位置でロックすることができる。さまざまな実施の形態において、ロッキング隔壁60は追加的に、ロッキングボルト30を解除位置に、すなわち、ロッキングボルト30が閉鎖表面34を通って突出しない位置に、保持してもよい。この目的のために、ロッキングボルト30およびロッキング隔壁60は、ロッキング隔壁60がフランジ部44と係合して、ロッキングボルト30を反動バネ56の作動力に逆らって保持するように配置されていてもよい。ここでも、ロッキング隔壁60は、作動力により生じたロッキングボルト30に加わる力が正嵌合(positive fit)により抵抗を受けるように、ガイド本体48と協働してもよい。
【0056】
ロッキング隔壁60は、ロッキングボルト30の長手方向の本体軸36に対して、横方向に、特に垂直に移動可能とされている。ロッキング隔壁60の移動のための駆動力は、駆動装置68により供給されてもよい。駆動装置68は、伝達要素70により、ロッキング隔壁60に結合されている。伝達要素70は、駆動装置68により生み出される直線運動を行って、この運動をロッキング隔壁60に伝達してもよい。
【0057】
図2に示すように、駆動装置68は、ロッド72に直線動作をさせる、リニアソレノイド、特に双安定リニアソレノイドであってもよい。本明細書において、ロッド72は、駆動装置68の直線動作を伝達要素70に伝達するために、伝達要素70の下側部分68にある受け口76に係合する、径方向に突き出したヘッド部74で終端している。
【0058】
伝達要素70の運動は、ロッキングボルト30の長手方向の本体軸36に実質的に平行であってもよい。運動に関し、伝達要素70は、ガイド本体48に並行して延びるガイド80に取り付けられていてもよい。さらに、伝達要素70はロッキング隔壁60を、ロッキングボルト30の長手方向の本体軸36に対して横方向に移動して、それを前述したようにロックしてもよい。
【0059】
ロッキング隔壁60は、この横軸82に沿ってのみ移動ができるように、この軸に対して横方向にロッキング隔壁60に働く力が支持体により吸収される状態で、支持されていてもよい。
図2に示すように、適切な軸受けにより、ロッキングボルト30、ロッキング隔壁60および伝達要素70を力学的に切り離す(force-decouple)ことができる。ロッキング隔壁60の軸受けを、例えばガイド本体48の窪み62により実施してもよい。
【0060】
伝達要素70からロッキング隔壁60への動作を伝達するために、伝達要素70は、伝達要素70の直線方向の動作に対して横方向に延びる突起84、86を含んでいてもよい。突起84、86は、例えば丸いカムの形態であってもよく、かつ、ロッキング隔壁60と協働して、後者がロック位置または解除位置を、伝達要素が横方向に移動したときに選択的に占めるようにされていてもよい。例えば、ロッキング隔壁60は、伝達要素70が長手方向に通過する開口88を含んでいてもよく、その際、突起84、86はそれぞれ、突起の延びる方向にロッキング隔壁60を移動させる(偏向させる)。
【0061】
ロッキング隔壁60が偏向可能な距離、すなわち第1の位置と第2の位置との間の距離は、非常に小さくてもよく、例えば5mm未満であってもよい。くわえて、ロッキング隔壁60は、それを第1の位置から第2の位置へと移動するのに必要な力が小さいよう、拘束なしで支持されていてもよい。したがって、効果的な保護ロッキングを提供するのに、小さくて非常にコンパクトな駆動装置68で十分であろう。さらには、反動バネ56の作動力に逆らってロッキングボルト30に働く力はアクチュエータ68に伝達されないので、アクチュエータ68をこのような力に抵抗するよう設計しなくてよい。
【0062】
全体として、駆動装置68の小さなサイズと簡単なロック機構とにより、安全スイッチ10を非常に小さくかつコンパクトにすることが可能となる。さらには、説明した構成に係る効果的な保護ロッキングを提供するのに、駆動装置68は、非常にわずかなエネルギーしか必要としない。
【0063】
安全スイッチ10は、本明細書に示す実施の形態に示すように、追加のロック解除オプションを提供する、補助的なロック解除装置26(
図1)を有していてもよい。安全スイッチ10は、補助的なロック解除装置26を介して、例えばレンチまたは正方形レンチなどの助けにより、手動でロック解除することができる。
【0064】
本明細書に示す実施の形態において、補助的なロック解除装置26は、伝達要素70に、その下側部分78において結合されており、その際、補助的なロック解除装置26の回転運動が、前述したように伝達要素70の直線運動へと変換される。次いで、直線動作により、ロッキング隔壁60が、前述した仕方でロック位置から解除位置へと移動される。
【0065】
駆動装置68は、ロッキング隔壁を移動するための力を加えるよう設計されてさえいればよいが、そうでない場合、ロッキングボルトから力学的に切り離されるため、この構成では補助的な解除を、駆動装置68の駆動力に逆らって、直接的に作動させることができる。
【0066】
公知の安全スイッチと対照的に、ロッキング隔壁60を介する本明細書に説明した保護ロッキングはこのように、特に簡単な設計の補助的および/または緊急な解除を可能にする。これは、駆動装置68からの追加的な切り離しを提供する必要がないためである。ゆえに、安全スイッチ10の設計をさらに簡略化できる。
【0067】
電子機器90が、トランスポンダ/読み取り器の組み合わせ28、29によるインターロック監視のため、ディスプレイ要素22による安全スイッチ10の状態可視化のため、かつ、駆動装置68の制御のために、設けられていてもよい。
【0068】
電子機器90は、一体型および個別の部品を含んでいてもよく、本明細書において、単一のプリント回路基板92に配置されている。
【0069】
プリント回路基板92は、実質的に安全スイッチ10の長手方向に、安全スイッチ10のハウジングの上側表面94に直接沿って延びている。この位置決めには、安全スイッチ10の必要な電気部品すべてを、単一の回路基板に配置できるという利点がある。
【0070】
回路基板は、読み取り器29と、ディスプレイ要素22と、駆動制御器96と、保護ロッキングのそれぞれの運転状態を検知するためのセンサシステム98とを備えていてもよい。
【0071】
センサシステム98は、伝達要素70の位置に応じて光線が遮断される、光電センサであってもよい。
【0072】
図3は、前述した安全スイッチング機構100の断面図を示している。同一の参照番号は、先に
図1および
図2に示したのと同一の部品を示している。
【0073】
本明細書において、切断面はロッキングボルト30の長手方向の本体軸36に対する法平面とされており、かつ、ロッキング隔壁60を通過している。先の実施の形態におけると同じく、ロッキング隔壁60は、ロッキングボルト30の移動が阻止される、ロック位置にある。ロッキングボルト30は、ボルト30がその長手方向の本体軸36に沿って移動できるように、ガイド本体48に取り付けられている。ロッキング隔壁60は、ガイド本体48の窪み62に移動可能に取り付けられており、かつ、長手方向の軸36に対して横方向に移動可能とされている。
【0074】
この実施の形態において、ロッキング隔壁60は、伝達要素70が通過する開口88を含んでいる。伝達要素70は本明細書において、長手方向の本体軸36に平行に移動可能とされている。この点で、突起84、86は、ロッキング隔壁60をロック位置または解除位置へと偏向する。ガイド本体48の追加の止め具が、ロッキング隔壁がガイド本体48内へと深く挿入され過ぎるのを防止している。
【0075】
ロッキング隔壁60が、本明細書に示す形態に限定されず、ロッキング隔壁60を構成してもよいやり方に関し、他の変形例を考え得ることに留意されたい。必要とされるのは、正嵌合を介したその移動においてロッキングボルト30がロックされるように、ロッキング隔壁60が、ロッキングボルト30の移動経路に係合できることのみである。正嵌合は、ガイド本体48により形成できる。
【0076】
さらには、本明細書に示す実施の形態は、単なる例示として理解すべきであり、本発明の範囲を逸脱することなく、異なる実施の形態を考え得る。原則として、本発明の保護の範囲は、以下の特許請求の範囲により決定され、説明に記載の、または図面に示す特徴により限定されない。
【外国語明細書】