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特開2022-165933エマルジョンの独立した反応体積を移動させるためのマイクロ流体チップ、キット、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165933
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】エマルジョンの独立した反応体積を移動させるためのマイクロ流体チップ、キット、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20221025BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20221025BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221025BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N35/08 A
G01N37/00 101
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068362
(22)【出願日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】63/176,955
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595006223
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クライム, リヴィウ
(72)【発明者】
【氏名】マリク, リディヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレス, テオドール
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB23
2G058CC08
2G058DA07
2G058EA14
2G058EB18
2G058GA02
4B029AA09
4B029BB20
4B029CC01
4B029HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応体積(IRV)を崩壊させることなく、IRVを離散化、処理、および単分子層で提示するためのマイクロ流体チップを提供する。
【解決手段】遠心型マイクロ流体チップ内のエマルジョン分割された独立した反応体積(IRV)を熱処理のために深い処理チャンバ(tc)が設けられており、高密度の不混和性媒体で満たされたtc内にIRV用のサンプルを注入するために、IRVを形成するための流体力学的半径を有するノズルが設けられている。tcは、tc内のIRVを一括して熱処理するための熱制御素子に隣接し、ここで、IRVは3dパッキング配置を形成する。tcは、IRVが崩壊することなく選択的に移動するように通すことができる開口によって、提示チャンバ(pc)に結合されている。pcは、pcを検査するための波長に対して透明な窓に隣接する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転させるために遠心分離機に取り付けるための遠心型マイクロ流体チップであって、チャンバおよび相互接続チャネルのネットワークを備え、前記ネットワークが、
10~800μLの容積(vtc)、ならびに平均長さ(ltc)、平均幅(wtc)、および平均深さ(dtc)を有し、dtc<ltc、およびdtc<wtcである、処理チャンバ(tc)と、
前記tcにサンプルを送出するように適合された第1の経路であって、前記第1の経路が、2~120μmの流体力学的半径rを有するノズルを備え、前記ノズルが好適な媒体で満たされている場合、エマルジョン分割された独立した反応体積(IRV)として離散化された前記サンプルを前記tcに送出するように適合された、第1の経路と、
前記tcに開口によって結合された提示チャンバ(pc)であって、前記開口を通じて前記IRVを前記tcから前記pcに選択的に移動させることができる、提示チャンバ(pc)と、
少なくとも前記pcの長さおよび幅にわたって前記チップを通じて設けられた、前記pcを検査するために透明である窓と、
前記pcに第2の経路によって結合された、引込みチャンバ(rc)と、
を含み、
tcが、5×r~2mmであり、前記pcが、1.2×r~7×rの厚さdpcを有し、dtc>2dpcであり、前記開口を通る流路が、8×rよりも大きい最小流体力学的半径を有する、遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記pcが、3cm~前記チップの占有面積の80%の占有面積である、0.6~1.2vtcの容積(vpc)を有する、請求項1に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項3】
チャンバおよびチャネルの前記ネットワークが、20μm~5mmの公称厚さを有する第1のフィルムの少なくとも第1の面にレリーフで生成されており、前記チップが、前記チップのポートから離れて前記チャンバおよび前記チャネルを密閉するように前記第1の面を覆うカバーフィルムを備える、請求項1または2に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項4】
pcが、周囲と比べた圧力にもかかわらず、支持用微細構造の配列によって名目上維持される、請求項1、2、または3に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記ノズルが、前記tcへの前記第1の経路の入口に配置された、請求項4に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記tcへの前記第1の経路の前記入口が分岐して、前記ノズルの1つ以上の追加の実体をさらに提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記tcと前記pcとの間の前記開口が、長さよりも幅が広い、請求項1~6のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項8】
前記開口の床が、dtcからdpcまで変化する深さを有する傾斜部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項9】
前記傾斜部が、30°~75°のスロープを有する、請求項8に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項10】
2つ以上のフィルムのスタックを備え、前記フィルムのうちの少なくとも1つが、前記ネットワークを形成するレリーフ構造を有し、各フィルムが、20μm~3mmの公称厚さを有するか、各フィルムが、シロキサン以外の硬化したもしくは凝固した高分子化合物から構成されているか、前記チップの厚さが、0.1~12mmであるか、前記チップの平面延長が、3~25cmであるか、または前記チップが、少なくとも2つのポートを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項11】
前記第1の経路または第2の経路が、体積制御された送出のために、オーバーフローチャンバを有する計量チャンバを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項12】
前記第1の経路内の第1のチャンバ内の、乾燥形態もしくは液体形態の、PCR混合物などのサンプル準備反応混合物、前記第1の経路内の第2のチャンバ内の、乾燥形態もしくは液体形態のサンプル、前記第1の経路内の前記サンプルもしくは前記反応混合物を溶解もしくは懸濁するための緩衝液、溶媒、もしくは液体、または前記tc、前記pc、もしくはdc内に装填されたIRCを支持するように適合された分散媒、のうちの1つ以上が装填された、請求項1~11のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項13】
前記tcの軸線方向近位端で前記tcと合流する第3の経路によって前記tcに結合された、低密度媒体チャンバをさらに備え、前記低密度媒体チャンバに、前記サンプルと、前記緩衝液、前記溶媒、または前記液体と、前記分散媒との密度、よりも低い密度を有する液体が装填された、請求項12記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項14】
カートリッジに入れられており、前記カートリッジが、前記チップのポートへのアクセスを提供し、かつ前記チップの通気孔の遮りを回避しながら、操作および位置合わせを容易にするための剛性構造を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項15】
チップコントローラを備え、前記遠心分離機に取り付けられた、または前記遠心分離機に取り付けるためのキットであって、前記チップと前記コントローラとの両方を回転させるためのキットで提供されており、前記チップコントローラが、前記pc内の流体を前記dc内に選択的に移動させるためのオフチップ流量制御デバイスを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の遠心型マイクロ流体チップ。
【請求項16】
前記流量制御デバイスが、前記チップのポートに結合するための加圧流体供給ラインを備える、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記チップコントローラまたは前記カートリッジが、前記チップを前記チップコントローラまたは前記カートリッジの片側で支持するように寸法決めされたチップ保持面を備え、前記チップ保持面が、前記チップの前記処理チャンバをエネルギー場に選択的にさらすためのエネルギーデバイスを備える、請求項15または16に記載のキット。
【請求項18】
前記エネルギー場が、前記処理チャンバに隣接してチップと接触している、熱エネルギー源もしくはシンク、超音波トランスデューサ、または電磁界発生器である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
遠心分離中、または前記チップが静止しているときに、前記pcを撮像するための照明および撮像システムをさらに備える、請求項14~18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
遠心型マイクロ流体システムを形成するように組み立てられた、請求項14~19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
エマルジョン分割された反応体積(IRV)を同時処理して、前記処理されたIRVを単分子層で提示する方法であって、前記方法が、
遠心型マイクロ流体チップの処理チャンバ(tc)内に前記IRVを提供するステップと、
前記チップが遠心分離されている間に、遠心分離機上の前記チップに取り付けられたエネルギーデバイスを作動させることによって、前記tc内の前記IRVにエネルギー処理を施すステップであって、前記tcが、3~100個のIRVを収容する最小寸法を有する、ステップと、
流量制御デバイスを動作させて、前記IRVを前記tcから提示チャンバ(pc)に開口を介して移動させて、前記IRVを実質的な単分子層に配置する、ステップであって、前記開口が、前記IRVの平均直径よりも大きい幅、および前記pcの深さを有し、前記流量制御デバイスが、15kPa未満の圧力差を印加する、ステップと、
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般に、規則的なサイズの独立した反応体積(IRV:independent reaction volume)のマイクロ流体エマルジョンの処理および取扱いに関し、特に、低コストのマイクロ流体チップ上で、IRVを崩壊させることなく、IRVを離散化、処理、および単分子層(monolayer)で提示するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]Covid-19のパンデミックは、遺伝子検査および定量化のための低コストで利用可能な高速サンプル-反応(sample-to-answer)システムの必要性を浮き彫りにしており、これはとりわけ、本発明によって対処される。
【0003】
[0003]エマルジョンは、複雑なサンプルを分析するための、有用で洗練された、効率的な解決策である。既に少量であるサンプル体積を10~10(および場合によっては10以上)の単離された、独立した反応体積(IRV)に分割することにより、より少ない交絡反応を伴う単純化された反応、および細分されたサンプルの成分を評価するための単純化された読み出しプロセスが可能になる。油または他の不混和性流体の薄いウェブによって単離され、各エマルジョン分割IRVは、同じマイクロ流体チャンバ内で同時に処理することができる。
【0004】
[0004]現在、IRVを活用するいくつかの用途がある。例えば、デジタル液滴PCR(ddPCR)および等温デジタル液滴増幅(例えば、ddLAMP)などの核酸増幅アッセイは、乳化PCR、または等温増幅マスターミックス(プライマーおよびプローブ、ならびに増幅緩衝液および適切なポリメラーゼを含有する)、ならびに数千、例えば、ナノリットルスケールのIRVに分配され、その後熱処理(ddPCRの場合はサーマルサイクル、または等温増幅の場合は単一温度適用)および読み出し(例えば、蛍光または比色分析)が続くサンプル(すなわち、鋳型核酸)を必然的に伴う。
【0005】
[0005]残念なことに、規則的なサイズのIRVを形成および操作するための手段は、技術的にかなり複雑であり、IRVベースの技術を制限する高価で大きな占有面積の設備を必要とする。市販のシステム(Biorad(商標)製のQX100(商標)およびQX200(商標)など)または特注の研究グレードのデバイスは、完全なワークフローを実施することができるが、典型的には、(1)液滴を生成し、(2)サーマルサイクルを実行するために乳化した液滴をPCRチューブに移送し、(3)さらに液滴をPCRチューブから撮像チャンバまたは液滴読み出しチャネルに移送する、手動のステップを必要とする(Malicら、2019)。これらの手動のステップは労力を要し、エマルジョンの完全性およびアッセイの再現性を損なう可能性があるピペッティング誤差を起こしやすい場合がある。さらに、これらの(大きな)規模のサンプル体積は、技術の使用をさらに制限することに留意しなければならない。
【0006】
[0006]すべてのサービス設備と同様に、完全な自動化によって非常に限られた数のプロトコルを実行する能力と、限られた自動化によってより多くのプロトコルを実行することができる能力との間には、トレードオフがある。高レベルの自動化を提供するために、プロトコルは、投資に値するのに十分に定常的かつ十分に高いスループットプロセスである必要がある。
【0007】
[0007]例えば、BioRAD製のQX200 ddPCR System(商標)は、28×36×13(cm)の液滴発生器、および66×52×29(cm)のリーダ、ならびに特定のウェル反応モジュールを有するC1000 Touch Thermal Cycler(商標)、ならびにPX1 PCR Plate Sealer(商標)を明らかに必要とする。したがって、装填は手動または自動であり、ウェルプレートは、プロセスを完了するためにこれらの4つのデバイスの間でシャッフルされる必要がある。
【0008】
[0008]Biorad製のQX One Droplet Digital PCR System(商標)などの、ロボットシステムが組み込まれた精巧な機器は、ワークフロー全体を自動化することができるが、システムは、かなりの研究室占有面積(122×66×38(cm))を要し、数十万ドルのコストがかかる。そのため、一部の研究室では手が届かない。システムは、マイクロリットルサンプルに関するサンプル-反応能力を発揮する。
【0009】
[0009]別の市販プラットフォームであるStilla Technologies(商標)製のNaica System(商標)は、乳化およびサーマルサイクルを自動化するが、別個の撮像機器を必要とする(Madicら、2016)。Naica Systemは、流体力学的ネットワーク内の加圧されたチャンバを使用して、流体の移動を管理する。これには、精巧な計装および圧力制御システムが必要であり、機器およびデバイスの設計がさらに複雑になり、設備およびメンテナンスのコストが増加する。圧力制御システムを遠心型マイクロ流体工学に統合し、最新技術において同様の効果を達成できる方法は限られている。このシステムは、カスタマイズを制限する単一の規定された液滴サイズに基づく。さらに、システムは、BioRADのものと同様に、20mlのサンプル容器を使用し、本質的にはマクロ流体工学である。
【0010】
[0010]液滴生成と、ddPCRおよびddLAMPアッセイのための熱処理およびPCR後の撮像とを統合するために、いくつかの遠心型マイクロ流体システムが開発されている(Schulerら、2016aおよび2016b、Liら、2020、Huら、2019)。遠心型マイクロ流体システムは、アッセイをコンパクト化し、試薬消費量、したがってアッセイの全体的なコストを削減し、乳化前、処理中、または撮像後にサンプルを処理するための、異なるマイクロ流体工学機能の統合を可能にする。これらはすべて、ポンプベースの流体システムによって提示されるような閉鎖プロセスライン上で能力を拡張する。使い捨て遠心型マイクロ流体チップは、より少量の体積の試薬を統合し、より多様なプロトコルを提示する、様々なプロセス用に設計することができる。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/132743号によって特許請求されているような、再利用可能なチップコントローラ技術(本明細書では、空気圧または「P-」ブレードと呼ばれる。)は、チップの1つ以上のポートにおけるアドレス指定可能な加圧流体供給を提供し、すべての汚れた材料をチップに閉じ込めたままにしながら、チップの処理能力をさらに拡張することができる。遠心型マイクロ流体デバイスは、1つのプロトコルのみを実行することができる専用機械とは異なり、チップ構造、装填内容、およびいくつかの周辺デバイス(例えば、撮像および熱制御のためのもの)に応じて、非常に多数の異なるプロトコルを提供するために使用することができる汎用デバイスである。
【0011】
[0011]いくつかの遠心型マイクロ流体チップで実証されているものを含む、IRVを生成するためのいくつかのマイクロ流体工学戦略がある(Climeら、2020、Schulerら、2015)。遠心分離機は自然にIRVを形成するように適合されているが、多くの処理中に自然な形成を維持することは、IRVを分離する油ウェブの脆弱性、および液滴に対する圧力に依存する。例えば、Schuler 2016によって述べられているように、液体のガス溶解度は温度の上昇と共に減少し、したがって、95℃へのサンプル加熱中に放出されるガスの量は、少なくとも18v/v%であり得る。遠心環境におけるガスの気泡は、油ウェブを破壊し、IRVを混合する可能性がある。
【0012】
[0012]液滴生成、熱処理、および単分子層生成を含む完全なプロトコルの自動化は、マイクロ流体環境では依然として困難である。これは主に、熱処理中のIRVの安定性の制御が困難であること、および撮像のためのIRV単分子層形成の必要性に起因する。これは、より低い温度(例えば、RPAの場合は37℃、LAMPの場合は場合によっては65℃)での等温増幅にとって問題ではないかもしれないが、(液滴撮像に必要な)単分子層に緊密に充填されたIRVは、典型的には、IRV混合なしのPCRサーマルサイクルアッセイに必要となるような高温(例えば、95℃)での熱処理に耐えることができず、アッセイの誤差を誘発し、サンプリングの均一性および効率を低下させる。
【0013】
[0013]さらに、文献に記載されているほとんどのデバイスは、PDMS(シロキサン)を使用して製造されている。PDMSは学術研究でよく使用され、良好な透明性および生体適合性を有するが、この材料は、拡大された製造には不適合であり、産業(例えば、医薬および臨床研究)ではほとんど使用されず、ポリスチレン(PS)および環状オレフィンコポリマー(COC)などの生体適合性硬質熱可塑性物質が好ましい。PDMSはタンパク質および小分子を吸着し得、最終アッセイ結果を偏らせ、ガス透過性は経時的にサンプルの蒸発をもたらす可能性があり、これはサーマルサイクル中に特に問題となる。
【0014】
[0014]Schulerらによって記載された遠心カートリッジは、単一のプラットフォーム上での完全なワークフロー統合を可能にするが、デバイスは、液滴生成、サーマルサイクル、およびIRV読み出しのための単一のチャンバを備え、これは、撮像および気泡除去に必要なIRV単分子層形成を可能にするために、チャンバ床中に形成された傾斜角を有する複雑なピラミッド構造の製造を必要とする。これは、デバイス製造の複雑さを増大させ、さらに、単分子層形成のために限られた表面積しか提供しない。ほとんどのアッセイに必要な最小値よりも一桁低い、500個のIRVのみが撮像チャンバ内で読み出された。
【0015】
[0015]したがって、遠心型マイクロ流体チップ、デバイス、ならびにIRVの生成、処理、および撮像のための、特にコンパクトで、操作者にとって使いやすく、堅牢かつ正確なシステムの技術、および熱可塑性物質および熱可塑性エラストマーなどの大量製造技術と互換性のある材料で製造されたチップが必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
[0016]出願人は、低占有面積、低消費電力の遠心型マイクロ流体システムに関する、完全なプロトコルのサンプル-反応を考案しており、これは低コストで作製される可能性があり、携帯型に作製される可能性さえある。システムは、30×30×30(cm)未満の占有面積を有することができ、確実に供給することができるマイクロ流体サンプル体積の範囲で動作することができ、より完全な自動化に適している。システムは、本質的に、好適に提供かつ装填されたチップを備えた汎用遠心型マイクロ流体デバイスからなる。汎用遠心型マイクロ流体デバイスは、特に、遠心型マイクロ流体デバイスがP-ブレードプラットフォームになるように制御された圧力供給ポートを備える場合、またはチップの1つ以上のポートで供給される圧力に対するステータベースの制御のための加圧流体伝達のための空気圧スリップリングまたは回転継手を少なくとも有する場合、いくつかの代替目的に使用することができる。
【0017】
[0017]好適に提供されたチップは、処理チャンバ(tc)と、提示チャンバ(pc)と、サンプルをtcに送出するためのサンプル経路と、引込みチャンバ(rc)をpcに結合している引込み経路と、を含む、チャンバおよび相互接続チャネルのネットワークを有する。ネットワークは、基板の少なくとも片側における(少なくとも1つの)基板のレリーフパターニングと、レリーフパターニングされた表面を別の基板または単一のカバーで封止カバーすることによって提供される。チップは、カバーまたは基板のいずれかを介して、好ましくは基板およびカバーのいくつかの層を介さずに、pcの長さおよび幅にわたってpcの撮像を可能にするために、検査波長に対して透明な窓を有する。窓は、実質的にカバーまたは基板の全体であってもよく、区別されず、かつマーキングされていなくてもよく、視野内のネットワークの任意の部分の撮像を効果的に可能にする。
【0018】
[0018]好適に提供されたチップは、サンプルおよび不混和性流体からIRVを生成するためのサンプル経路内にノズルであって、tcの入口における1つ以上のノズルであってもよい、ノズルと、2Dパッキングよりも実質的により堅牢である3D格子またはパッキングにある間に、IRVの処理を可能にする比較的深いtcと、単分子層撮像のための浅いpcと、IRVを無傷で搬送するためのpcとtcとの間の低抵抗開口と、を有する。具体的には、ノズルは、不混和性流体に囲まれたエマルジョン分割IRVとして離散化されたサンプルをtcに送出するように適合された、2~120μmの流体力学的半径rを有する。
【0019】
[0019]tcは、チップの意図された回転軸からの、tcと最大の延長で交差する直線によって規定された、平均長さ(ltc)と、ltcに垂直なチップの平面における平均幅(wtc)と、レリーフ方向の平均深さ(dtc)と、を有し、pcおよび開口は同様に、それぞれlpc、wpc、dpc、l、w、dで示される。当業者によって予想されるように、dtc<ltc、dtc<wtc、dpc<lpc、dpc<wpc、およびd<wである。tcの容積(vtc)は、用途に応じて、典型的には10~800μLとなり得るが、より小さい規則的な半径(rIRV)を有するIRVを形成するためにノズルの精度が向上すると、さらなる減少が期待される。エマルジョンが処理に耐えることができることを確実にするために、dtcは5×r~2mmである。単分子層を提示するために、dpcは1.2×r~7×rであり、より好ましくは、1.6×r~6×rおよびdtc>2dpcであり、さらに好ましくは、dtc>3dpcまたはdtc>5dpcである。そのため、dpcは1.5×rIRV~3×rIRVであり、より好ましくは、1.6×rIRV~2.8×rIRV、または1.8×rIRV~2.5×rIRVであり得る。
【0020】
[0020]開口は、8×rより大きい最小流体力学的半径と、平面状であり得るかまたは徐々に弧状を描き得る滑らかな周囲壁と、を有する。一般に、周囲としての滑らかな円筒壁に近いほど、断面積に対する最小化された周囲に近くなり、開口を流れる抵抗が少なくなり、IRVが受けることとなるせん断応力が最も小さくなる。スリットの平坦で滑らかな壁が十分であることが分かった。
【0021】
[0021]pcは、例えば少なくとも1000個のIRV(いくつかのアッセイでは少なくとも5000が必要とされ、他のアッセイでは少なくとも10~12Kが必要とされる)を撮像するために、少なくとも1×3(cm)の広い占有面積占有面積を有する場合があり、エマルジョン全体を一度に撮像することができるように、tcの容積の0.6~2倍の容積を有する場合がある。あるいは、pcは、より小さい占有面積占有面積を有してもよく、IRVの連続撮像を可能にし、チップ上の空間を節約し、繊細なIRVをより長い距離搬送する必要性を除去する。pcは、IRV集合体の撮像のための窓と位置合わせされる。
【0022】
[0022]すべてのチャネル、およびpc以外のチャンバの深さは同じであってもよく、これは、チップの設計および製造に便利であり、チップの占有面積を効率的に使用することができるためである。dpcがチップの占有面積占有面積に対して十分に小さくなり得るため、フィルムおよびカバーは、チップの外部の環境とpc内との間の予想される圧力差の範囲にわたって申し分なく一定の作業深さを保証するには剛性が不十分である可能性がある。チップ内部のピラーの配列、および/または外部構造でチップを補強することは周知である。この補強の必要性は、dpcを増加させ、pcと周囲との間の圧力差を減少させ、かつpcの占有面積を減少させることによって低減される。これらのいずれも、すべてのIRVがpc内で一度に撮像されることが望まれる場合には低減に適さない可能性がある。そうである場合、ピラーまたは他の支持構造を使用して、dpcがパラメータ内で維持されることを保証するpcを支持することができる。
【0023】
[0023]あるいは、pcは、任意の瞬間にわずかな割合のIRVの撮像を提供することができるが、むしろpcにわたってIRVを行列行進させる。そうであれば、補強を回避する場合があり、幅の1/5以下の長さ(軸線方向からの半径における)など、より極端なアスペクト比を提供することができる。複数の連続する写真の色の変動を測定することは、写真間のタイミングが横断速度に対して長すぎる場合、計数の精度に関していくつかの問題を引き起こすが、画像の実質的な重複を伴う安価で低シャッタ速度の撮像を可能にするのに十分遅いIRVの動きは、各IRVの複数の画像を撮影かつ登録することを可能にする。さらに、はるかに小さいフレームレートキャプチャを、統計目的または検査の記録のために使用してもよい。連続した写真の画像分析はまた、不完全な、または意図的に変化した時空間照明パターンにわたって、より高い精度の評価を提供することができ、例えば、いくつかのIRVの色状態は、いくつかの照明帯域でより良好なコントラストを示し、他のIRVの色状態は、他の帯域でより良好なコントラストを示す可能性がある。
【0024】
[0024]wpcを増やすことによって、フレームごとに撮像されるIRVがより多くなり、最小lpcが撮像方式によって決定される。IRVの80%が一度だけ撮像され、10%の重複が多重撮像されたIRVの識別に対して完全に十分である場合、10%は10行のpcの最下行全体であり得、その場合、lpcは20×rIRVであり得る。開口にわたる深さの傾斜したまたは段階的な減少、および場合によってはtcからの距離に応じた幅の増加を提供することによって、tcおよびpcの深さの必要な差、および提示のための単分子層の形式に適合するために必要なIRV再構成の程度を考慮して、エマルジョン上のせん断ひずみを低減することができる。
【0025】
[0025]tc寸法、特にdtcにおいて、重油(すなわち、サンプルよりも高密度である)などの好適な媒体に完全に囲まれている場合、チップは、IRVの崩壊を観察することなく、少なくとも99℃の温度までのサーマルサイクルを可能にする場合がある。システムは、好ましくは、チップをヒータまたは他のエネルギー移送デバイス(例えば、超音波、音響、電磁気、または熱)と密接に接触させるように設計され、好ましくは、tcを部分的に形成するカバーまたは基板とデバイスとの間に密接な接触を提供する。
【0026】
[0026]遠心型マイクロ流体システムは、エマルジョン分割された独立した反応体積(IRV)の遺伝子検査などの、サンプル-反応検査を可能にする。ほとんどの先行技術の参考文献は、IRVを「液滴」と称しており、この用語は、サンプル全体が液滴の体積であり得るという点において、漠然としており、目的論的な特徴がなく、かつ不明確であるように思われる場合がある。具体的には、マイクロ流体チャンバ内でIRV集合体を移動させるとIRVが崩壊することが観察されているため、本発明は、典型的には多くのアッセイに不可欠であるIRVの融合をもたらす傾向があるIRVの処理を回避するか、または非常に限られた表面積の単分子層IRVpcを提示しなければならないという問題を解決する。
【0027】
[0027]出願人は、失敗したIRV集合体の移動を行おうという、多くの試みを行った。本発明は、大きな集合体であっても、遠心分離下において、IRVを崩壊させることなく、高深度のtcから単分子層の深度のpc内にIRV集合体を移動させることによってこの問題を解決する。結果として、遠心型マイクロ流体システム、特にP-ブレード特許に記載されている遠心型マイクロ流体システムなどの、空気圧補助遠心型マイクロ流体システムを、IRVの製造、処理、および提示のために活用することができる。
【0028】
[0028]出願人は、tcとpcとの間の適切な境界面、および移動を駆り立てるためにチップの対応するポートに印加される十分に低い圧力によって、エマルジョンが実質的な損失なしに移動され得ることを発見した。サンプルがチップに装填され、チップがチップコントローラに結合されると、システムが自動的になる遠心型マイクロ流体システムにおいて、これまでにない数のIRVが撮像されている。pcとtcとの間の好適な開口は、好適に制御された圧力が印加された場合に移動を可能にする。
【0029】
[0029]非空気圧補助(すなわち、伝統的な)遠心型マイクロ流体を超えるP-ブレードプラットフォームの使用の有効な点の1つは、「Bouyancy-driven step emulsification on pneumatic centrifugal microfluidic platform」題する論文(Lab on Chip 2020,20,3091、2020年6月22日)において出願人によって説明されているように、遠心分離速度および印加圧力の両方を変化させることによってIRVの寸法を厳密に制御できることである。具体的には、この論文は、300~700rpmの遠心分離の変動および周囲を超える0~40kPaの印加圧力で、IRV直径を少なくとも50μm変動させることができるチップ配置を示す。この論文の全内容およびそのすべての補足的開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
[0030]したがって、軸線を中心として回転させるために遠心分離機に取り付ける遠心型マイクロ流体チップであって、チャンバおよび相互接続チャネルのネットワークを備え、ネットワークが、10~800μLの容積(vtc)、ならびに平均長さ(ltc)、平均幅(wtc)、および平均深さ(dtc)を有し、dtc<ltc、およびdtc<wtcである、処理チャンバ(tc)と、tcにサンプルを送出する第1の経路であって、第1の経路が、2~120μmの流体力学的半径rを有するノズルを備え、ノズルが好適な媒体で満たされている場合、エマルジョン分割された独立した反応体積(IRV)として離散化されたサンプルをtcに送出するように適合された、第1の経路と、tcに開口によって結合された提示チャンバ(pc)であって、開口を通じてIRVをtcからpcに選択的に移動させることができる、提示チャンバ(pc)と、少なくともpcの長さおよび幅にわたってチップを通じて設けられた、pcを検査するための波長に対して透明な窓と、pcに第2の経路によって結合された、引込みチャンバ(rc)と、を備え、dtcが、5×r~2mmであり、pcが、1.2×r~7×rの厚さdpcを有し、dtc>2dpcであり、開口を通る流路が、8×rよりも大きい最小流体力学的半径を有する、遠心型マイクロ流体チップが提供される。
【0031】
[0031]pcは、3cm~チップの占有面積の80%の占有面積である、0.6~1.2vtcの容積(vpc)を有してもよい。チャンバおよびチャネルのネットワークは、20μm~5mmの公称厚さを有する第1のフィルムの少なくとも第1の面にレリーフで生成されてもよく、チップは、チップのポートから離れてチャンバおよびチャネルを密閉するように第1の面を覆うカバーフィルムを備えてもよい。pcは、周囲と比べたpc内の圧力にもかかわらず、dpcが名目上維持されることを確実にするために、支持用微細構造の配列を含んでもよい。
【0032】
[0032]ノズルは、tcへの第1の経路の入口に配置されてもよい。第1の経路は分岐して、ノズルの1つ以上の追加の実体を提供してもよい。
【0033】
[0033]tcとpcとの間の開口は、長さよりも幅が広いことが好ましい。開口は、深さがdtcからdpcまで変化する傾斜部、または深さの中間dtcからdpcの1つ以上の段を含んでもよい。傾斜部は、30°~75°のスロープを有してもよい。
【0034】
[0034]チップは、2つ以上のフィルムのスタックを備え、フィルムのうちの少なくとも1つが、ネットワークを形成するレリーフ構造を有し、各フィルムが、20μm~3mmの公称厚さを有するか、各フィルムが、シロキサン以外の硬化したもしくは凝固した高分子化合物から構成されているか、チップの厚さが、0.1~12mmであるか、チップの平面延長が、3~25cmであるか、またはチップが、少なくとも2つのポートを有する、チップであってもよい。
【0035】
[0035]第1の経路または第2の経路が、体積制御された送出のために、オーバーフローチャンバを有する計量チャンバを備えてもよい。
【0036】
[0036]チップは、第1の経路内の第1のチャンバ内の、乾燥形態もしくは液体形態の、PCR混合物などのサンプル準備反応混合物、第1の経路内の第2のチャンバ内の、乾燥形態もしくは液体形態のサンプル、第1の経路内のサンプルもしくは反応混合物を溶解もしくは懸濁するための緩衝液、溶媒、もしくは液体、またはtc、pc、もしくはdc内に装填されたIRCを支持するように適合された分散媒、のうちの1つ以上が装填されて、マイクロ流体システムを形成する、チップであってもよい。システムは、チップのチャンバ内に低密度媒体をさらに備え、低密度媒体チャンバに、tcの軸線方向近位端でtcと合流する第3の経路によってtcに結合されており、低密度媒体チャンバが、サンプル、緩衝液、溶媒、または液体と、分散媒との密度、よりも低い密度を有する液体が装填される、システムであってもよい。
【0037】
[0037]チップは、カートリッジに入れられており、カートリッジが、チップのポートへのアクセスを提供し、かつチップの通気孔の遮りを回避しながら、操作および位置合わせを容易にするための剛性構造を有する、チップであってもよい。
【0038】
[0038]チップは、チップコントローラを備え、かつ遠心分離機に取り付けられた、または遠心分離機に取り付けるためのキットであって、チップとコントローラとの両方を回転させるためのキットで提供されており、チップコントローラが、pc内の流体をdcに選択的に移動させるためのオフチップ流量制御デバイスを備える、チップであってもよい。流量制御デバイスは、チップのポートに結合するための加圧流体供給ラインを備えてもよい。チップコントローラは、チップをチップコントローラの片側で支持するように寸法決めされたチップ保持面を備え、チップ保持面が、チップの処理チャンバをエネルギー場に選択的にさらすためのエネルギーデバイスを備える、チップコントローラであってもよい。エネルギー場は、処理チャンバに隣接してチップと接触している、超音波トランスデューサまたは電磁界発生器によって給電される、熱エネルギー源またはシンクであってもよい。キットは、遠心分離中、またはチップが静止しているときに、pcを撮像するための照明および撮像システムをさらに備えてもよい。キットは、遠心型マイクロ流体システムを形成するように組み立てられてもよい。
【0039】
[0039]エマルジョン分割された反応体積(IRV)を同時処理して、処理されたIRVを単分子層で提示する方法であって、方法が、遠心型マイクロ流体チップの処理チャンバ(tc)内にIRVを提供するステップと、チップが遠心分離されている間に、遠心分離機上のチップに取り付けられたエネルギーデバイスを作動させることによって、tc内のIRVにエネルギー処理を施すステップであって、tcが、3~100個のIRVを収容する最小寸法を有する、ステップと、流量制御デバイスを動作させて、IRVを実質的な単分子層に配置する、ステップであって、IRVをtcから提示チャンバ(pc)に開口を介して移動させ、開口が、IRVの平均直径よりも大きい幅、およびpcの深さを有し、流量制御デバイスが、15kPa未満の圧力差を印加する、ステップと、を含む方法もまた提供される。
【0040】
[0040]本発明のさらなる特徴は、以下の詳細な説明の過程で説明されるか、または明らかになるであろう。
【0041】
[0041]本発明をより明確に理解できるように、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例としてここに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1の実施形態による、遠心型マイクロ流体チップ用のパターニングされた基板の概略上面図である。
図1A】カバーを有し、一般的にtcからpcへの出口を提供する壁、およびノズルに注目した、図1のチップの部分断面図である。
図1B図1のチップを使用して、IRVを形成し、形成したIRVを処理し、次いで処理したIRVをtc内に移動させるためのプロセスの6つの段階を示すストリップである。
図2】本発明の第2の実施形態による、より小さいpcを有する、チップ用のパターニングされた基板の概略上面図である。
図2A】tcとpcとの間の開口の深さの移行を示す、図2のチップの部分断面図である。
図2B】IRVを形成し、処理し、かつ提示するためのプロセス中の3つのステップにおける、図2の拡大図を示すストリップである。
図3】IRVを形成するために、IRVがどのように形成され、ノズルから分離されるかを、12のステップで示すストリップである。
図4】完全なddPCRプロトコルを提供するための追加のチャンバを備えた、本発明の第3の実施形態による、チップ用のパターニングされた基板の概略上面図である。
図5】第4のチップ実施形態が上に取り付けられたチップコントローラを備える、システムの概略図である。
図5A】チップの拡大図である。
図5B】tcに合流するノズルの配列、およびpc内の支持用微細構造の配列の拡大図である。
図6】本発明を実証するために使用されるチップの写真である。
図7図7は、遠心分離中に取得された提示チャンバの写真であり、図7Aは、画像の小領域の拡大図である。
図8】本発明を実証するために作成された実施例を使用して作成された、集合体のIRV直径分布を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[0054]本明細書では、エマルジョン分割された独立した反応体積(IRV)の遺伝子検査などの、サンプル-反応検査を可能にする、遠心型マイクロ流体技術(チップ、カートリッジ、キット、システム、および方法を含む)が記載される。具体的には、チップ、マイクロ流体システムを形成するための流体が装填されたチップ、チップを支持し、遠心分離機またはチップコントローラへの取付けを容易にするカートリッジ、チップおよびチップコントローラを備えたキット、ならびに遠心型マイクロ流体デバイスを形成するために組み立てられたキットは、IRVの配列を、IRVが熱処理に対してはるかにレジリエントになる3D配置にあることを確実にするために必要な深さを有する処理チャンバ(tc)から、撮像のための単分子層の深さの提示チャンバ(pc)内にどのように移動させるかという問題に対処し、この移動は、IRV分割の破壊をより少なくまたは実質的に少なく誘導する。
【0044】
[0055]遠心型マイクロ流体システム、特に、遠心分離中にチップの1つ以上のポートで圧力制御を可能にする、前述の国際公開第2015/132743号に記載され、同文献中に特定されている従来技術の回転カプラ/空気圧スリップリングを含む、遠心型マイクロ流体システムなどの、空気圧補助遠心型マイクロ流体システムは、tcからpcへの分散媒およびIRVの移動を可能にするように協働する、制御された圧力および遠心力場を供給することができ、過剰な分散媒は引込みチャンバ(rc)内に流れ込む。
【0045】
[0056]図1は、本発明の簡略化された実施形態を提示する、チップのパターニングされたフィルム10の概略図である。チップは、フィルム10と、フィルム10の面にレリーフパターンで形成されたマイクロ流体ネットワークの視認を可能にするために図示されていない、好適なカバーと、によって形成されている。レリーフパターンは、本発明の方法、およびさらに少しの内容を可能にするネットワークを提供する。より複雑なプロトコルは、より多くのチャンバおよびチャネルを必要とし、これは複数の相互接続されたフィルムを必要とする場合がある。より複雑なプロトコルに対応するために、層を相互接続するためのビアを有する層のスタックとしてチップを提供することが知られている。あるいは、同様に、フィルム10は、例えば、サンプルが調製される、チップの別の層からのビアとしてみなされるサンプルポート12aを有する、多層チップの単一層であると理解することができる。
【0046】
[0057]典型的には、チャンバは通気されており、これは、チャンバに結合されたそれぞれの通気孔12の流体があることを意味する。特に、チャンバがプロトコルの開始時にそれぞれの液体がチャンバ内に装填されるように設計されている場合、通気孔は同様に装填ポートとして機能する場合がある。用語が一般的に使用されているように、「ポート」はチップ上の環境への任意の開口であるが、一方、通気孔、ビア、装填ポート、または圧力制御/圧力供給ポートは、ポートの意図された機能を指定する。通気孔は、流体を閉じ込める(一定体積の空気プラグを圧縮または拡張する)ことなく、チャンバ内で流体レベルを上昇(軸線方向近位側に移動)または下降(軸線方向遠位側に移動)させることができる。ビアは、別のチップ層への貫通孔と連通している。装填ポートは、チャンバ内への液体の導入を可能にするポートである(前述の国際公開第2015/132743号に記載されているように、遠心分離中のオフチップ装填にはいくつかのプロセスがあるが、多くの場合、これはチップが静止している間に実行される)。圧力制御ポートは、スリップリング(流体結合回転継手)を介してチップに結合される場合がある圧力供給源に、またはスリップリングを介して供給されない場合は、(取り付けられて)ポンプ供給される場合があるチップコントローラの圧力供給チャンバ、もしくは加圧キャニスタに、結合されたポートである。場合によっては、加圧流体供給源は周囲圧力とすることができ、バルブが開く前に、チャンバは、例えばネットワーク内の空気プラグを考慮して正または負の圧力状態となり得、バルブを開くと、この圧力を放出することができる。同様に、開いたバルブを閉じると、遠心分離の結果として正圧または負圧を確立することができる。原理的には液体を使用することもあり得るが、典型的には、圧力はガスを介して供給される。
【0047】
[0058]チップは、本発明によれば、処理チャンバ(tc)15、提示チャンバ(pc)20、および引込みチャンバ(rc)25を備えるが、これらは図示のように配列される必要はない。チャンバは、チャネル、ならびに1つ以上のチャネルおよび場合によってはさらなるチャンバを備える経路によって相互接続されている。具体的には、サンプルをtc15に送出するために送出経路が設けられ、pc20とrc25との間に引込み経路が設けられ、流体が引込み経路を通じてpc20内に供給され得、かつpc20から引き抜かれる。
【0048】
[0059]図1に示す送出経路は、ポート12cによって通気されたオーバーフローチャンバ13への放出路を有するサンプルチャンバ14にサンプルを供給する、サンプルポート12aを備える。サンプルポート12aは、サンプル装填を容易にするために、他のポートと比較して広くなっている。例えば、チップは、制御された環境において、例えば位置合わせおよび自動注入(媒体に対して通気孔12bまたは12dで実行されてもよい)のための、機械で試薬を装填するためのより小さい装填ポートと、ユーザによって注入されたサンプルまたは他の流体を手動で供給するためのより大きい装填ポートと、を有することが論理的である。
【0049】
[0060]サンプルチャンバ14に放出路を設けることにより、サンプルの体積を正確に事前に定量化することなく、サンプルの体積を所望の体積を超えて導入することができる。遠心分離が適用されると、過剰体積はサンプルチャンバ14をオーバーフローすることとなり、サンプルチャンバ14内の残りはある程度の精度まで効率的に計量されることとなる。
【0050】
[0061]サンプルチャンバ14は、J字形チャネル16を介して、サンプル送出のために処理チャンバ15に結合されている。いくつかの実施形態では、圧力制御ポート12aを除いて本実施形態には示されていないが、送出を停止もしくは開始するため、および/またはサンプルの送出速度を制御するための流量制御デバイスを設けることが好ましい。Jチャネル16はノズル18においてtc15と合流するが、原則として、ノズル18は送出経路内の他の場所に提供され得る。例えば、出願人の米国特許第10,836,918号明細書およびその引用された先行技術文献は、カプセル化された液滴のインライン生産のためのマイクロ流体構造を教示している。インライン生産を使用して送出経路のさらに上方にIRVを生成することが可能であり、代替の実施形態では、異なるIRVをtc15に入る前に異なる処理に供することができる。
【0051】
[0062]ノズル18は、チップの意図されたIRVサイズの唯一の最も決定的な特徴である、流体力学的半径rを有する。典型的な遠心分離速度および圧力に対して、IRVの平均半径(rIRV)は、1~5倍rであり、より典型的には、約1.1~3.5r、または1.2~2.8rである。IRVはチップ自体の一部ではないため(システムの一部であってもよいが)、rはチップの特許請求を特徴付けるために使用される。
【0052】
[0063]したがって、ノズル18は、tcが油などのより高密度の不混和性流体で部分的に満たされているときに、サンプルをIRVに分割することによってサンプルをtc15内に供給するように適合されている。tcは通気されており(12b)、IRVのエマルジョンを収容するための容積を提供する。最適であれば、媒体は、サンプルチャンバ14によって計量された体積を引いた分tcを満たし、これを指し示すために基板またはカバー上に充填ラインがあってもよい。
【0053】
[0064]tc(dtc)の深さは、チップが設計されているIRVの平均半径(rIRV)の少なくとも5倍であることが好ましいが、原理的には、rIRVの3.5倍の小さいサイズであり、それでもなお、IRVを3Dパッキング格子に分布させるように機能することができる。pcは、1.3~3.2rIRVの深さ(dpc)を有し、より好ましくは1.6~2.5rIRV、または1.8~2.3rIRVである。rIRVではなく、rに関して理解されるように、dpcは、外側-外側範囲として1.3~15rであり、最も好ましい範囲として2.16~8.05rであるが、本明細書のすべての範囲のすべての中間範囲が意図される。rIRVは、単分子層配置を促進するために、30~150μm、より典型的には40~110μm、かつ現在は典型的には50~100μmの範囲であり得るため、dpcは、本明細書の意図されたすべての中間範囲を含む、48~450μmから95~230μmである。技術の進歩により、より小さいIRVが期待され、より小さいrおよびdpcが求められている。
【0054】
[0065]tcとpcとの間の開口22は、傾斜部23を有するdtcとdpcとの間の深さの変化に対応するスリットであり、これは、図1および図1Aを一緒に参照して最もよく理解される。
【0055】
[0066]図1Aは、フィルム10およびカバー層11を含むチップの線AAから抜き出された部分断面図を示している。この図は、tcの軸線方向遠位壁に注目しており、tcの上縁にあるノズル18と、tc15とpc20との間に延在する開口22の深さの変化との両方を示している。具体的には、約0.3dtcの深さからdpcまで延在する滑らかな傾斜部23を示している。dpcは約1/4dtcで示されているが、ほとんどの用途では、1/5~1/10dtcの割合がより好ましい可能性がある。rIRVが小さいほど、dpcは小さくなるが、dtcは必ずしも小さくなる必要はない。傾斜部は、示している0.3dtcよりも低くまたは高く始まっている場合があり、さらに、傾斜部が容易に形成されない場合には、1つまたは好ましくはより多くの段を設ける場合があることが理解されよう。異なる深さにおけるIRVの密度は、開口22からtc内への距離に依存する場合がある。カバーが上方に面する場合、媒体が十分に高密度である場合に、開口22におけるIRVの密度は、重力に起因して(0.3dtcの)傾斜部23の下縁よりも低くなる場合がある。出願人は、傾斜部が良好な動作に必要ではないことを発見した。
【0056】
[0067]図1から、傾斜部23のランは、tc15における開口の幅の約15%であることが分かり、開口は、約38°の角度でtcからpcまで広がっている。したがって、開口は、一方の方向に連続的に拡大し、他方の方向に縮小する。幅方向の拡張による深さ方向の高い狭窄度の部分的補償は、開口22を横切る移動中のIRVに対するせん断応力を低減する。3Dパッキングから提示単分子層を採用するために必要なIRVの実質的な再編成は、遠心分離速度に対する適度な制御、およびチップのポートにおける公称圧力差の適用を伴う、開口の設計によって達成することができる。ポート12によって印加される空気圧供給によって前方に付勢されながら、IRVがこのゲートを無傷で通過することができることは、予想外の結果である。
【0057】
[0068]引込み経路は、rc25およびpc20の軸線方向遠位端を結合するチャネル19と、pcとrcとの間の制御された流体移動を可能にする加圧ポート12dと、を含む。ポート12dはエッジポートとして示されており、これはチップ組立て、および圧力供給ポートへの封止結合のための取付けにおいて有効であり得る。例えば、すべてのポートがエッジポートである場合、様々な供給ラインへの様々なポートの手動結合は、最小限の設備および適切な封止で、ある程度の張力を有する好適な封止構造によって一度に提供されることができる。
【0058】
[0069]フィルム10は、射出成形、熱成形、3Dマイクロプリント、およびマイクロマシニングを含む、当技術分野で知られている方法のうちのいずれかでレリーフパターニングすることができる。これらの形成ルートの各々は、主に生産量に依存する経済上の有効な点および欠点を有するが、いくつかは、比較的一定の深さの床を有するチャネルおよびチャンバを生産するのに特に適しており、いくつかは、単一のチャンバ内の深さを変えるために特別な努力を必要とする。したがって、Schulerによって記載された、チャンバの床上に必要なピラミッド状の特徴は、成形にいくつかの制限を課し、それによって求められる製造規模においてチップが無駄になる可能性がある。すべての方法は、様々なチャンバの様々な深さを提供する。
【0059】
[0070]図1Bは、IRV生成、処理、および提示プロセスにおける連続するステップの、フィルム10の6つの平面フレームのストリップである。左上のフレームは、サンプルチャンバ14内のサンプル(オーバーフローチャンバ13に少量あふれている)、および引込みチャンバ25に装填された重質媒体を示している。サンプルは、好ましくは、生物学的流体、または空気、水、食品、もしくは土壌サンプルの水性担体(または例えば、処理されたサンプルもしくは流体の、濾液、保持液、溶解産物、留分、もしくは他の精製)と、緩衝液との入念な混合物、オールインワンPCR(または同様のもの)反応混合物、およびddPCRを可能にすることとなる、比色分析標的または官能化粒子である。このフレームは、遠心分離機への装填および取付け後の、最初のスピン後に撮像されたチップと一致する。
【0060】
[0071]2番目のフレーム(右上)は、ポート12dの閉塞がない場合に、重質媒体が継続的な遠心分離下にあるような場合、tc内に供給され、pcを満たす重質媒体を示している。ポート12dは、タイミングが望まれる場合、P-ブレード特許の図12のように、周囲に開いたバルブに結合して、重質媒体の供給のタイミングを制御し得る。そうでなければ、サンプルが第1のフレームにおける位置をとるとき、供給の連続プロセスが遠心分離から開始される場合がある。遠心分離は、所与の速度でJ字形チャネル16を介してサンプルを自然に引き込み、別の速度で高密度媒体を引き込むこととなるが、J字形チャネル16およびノズル18内の流体力学的抵抗は、供給経路内の流体力学的抵抗に勝るように、ポート12a、cにおいて12bに対して圧力差が加えられるまで、空であろうと満杯であろうと、サンプルがtc15に入るのを妨げることとなるため、これらの2つの流体間のノズル18への競合状態は重要ではない。その結果、重質媒体とサンプルとの間に空気プラグが存在することとなり、サンプルがノズル18を介して送出される前に、第3のフレーム(中央左)に示すように、気泡として油を介して放出される。
【0061】
[0072]第3のフレームは、第1のIRV30が形成され、重質媒体を通って浮力で上昇することを示している。重質媒体は、高い表面張力およびサンプルをカプセル化するのに好適な接触角を有する。IRVは上昇し、tc15内の浮選によって泡沫を形成する。IRV形成は、tcが実質的に満たされるまで、またはサンプルチャンバ14が十分に空になるまで、第4のフレーム(中央右)において継続する。IRVが形成された後にいかなる気泡もtc15内に導入させることは望ましくなく、したがって、ポート12aと12bとの間に加えられた圧力差の持続時間の手動または自動フィードバックベースの制御のために、サンプルチャンバ14の目視(またはマシンビジョン)検査を可能にすることが好ましく、その場合、サンプルチャンバ14のカメラベースの撮像のために第2の窓を設けてもよい。あるいは、かつより効率的には、サンプルチャンバ14が計量されると、圧力供給に対するプログラミングされた制御を較正して、tc15内への過剰な放出のリスクを十分に低くすることを可能にする提供された時間で体積を供給することができる。dtcは、IRVがtc内に三次元パッキングを形成することを保証し、これは、二次元パッキングよりも確実に隣接するIRVを分離する、重質媒体のウェブのより厚いセットを提供する。
【0062】
[0073]tc15における重質媒体の供給も保証されるべきである。第2のフレームに示されている重質媒体は、初期IRV形成には十分以上であるが、IRVが浮力で上昇すると、サンプルの追加質量が重質媒体を押し下げて、引込みチャンバ25内の重質媒体レベルを上昇させる。重質媒体レベルがノズル18のレベルを下回った場合、IRVは上昇し続け得るが、最も枯渇したゾーンのIRVのうちの一部が融合するまで、重質媒体はすべてのIRVのウェブを薄くすることしかできない。したがって、使用時には、予め装填された量の重質媒体が最初にpcを満たし、充填レベルがノズル18を下回ることがないように十分にtcを満たす。別の選択肢は、例えば、tc15を可視化し、ポート12dで正圧を選択的に印加して、IRVの崩壊の前に重質媒体がノズル18の軸線方向遠位側に流れる前に、重質媒体を持ち上げる緩やかな押しを加え、tcが一杯になったときにポート12aで圧力を停止することによって、重質媒体を監視および制御することである。カプセル化液に対するIRVの体積比の変動が大きい場合、監視が好ましい場合がある。この監視は、画像分析およびフィードバックと共にオンラインで提供されてもよく、または人間のオペレータによって手動で提供されてもよい。
【0063】
[0074]したがって、フレーム4とフレーム5との間で、サンプルチャンバ14が空にされ、すべてのIRVが形成され、IRVの集合体が熱処理に供される。この目的のために、チップ(またはチップを支持するカートリッジ)が取り付けられるブレードには、ペルチェヒータ/クーラなどの温度制御ユニット、またはtc15に近接する熱捕捉伝導面が設けられることが好ましい。熱捕捉伝導面は、好ましくはtcに密接に近接しており、内蔵温度センサを有してもよいが、好ましくは、フィルム10もしくはチップの一部であるか、または恒久的に固定されるのとは対照的に、ブレードまたはブレードのチップコントローラに取り付けられ、かつブレードまたはブレードのチップコントローラによって給電され、それによってチップがより低コストの使い捨てタイプとなる。しかしながら、フィルム10またはカバー11が、熱伝導率のわずかな改善のために選択されてもよい。熱捕捉伝導面の目的は、例えば、tcと断続的に位置合わせされた、オンブレードレーザ、LED、もしくは発光電球熱源、またはストロボ固定レーザ、LED、もしくは発光電球熱源を介して、tcを応答的に加熱することである。
【0064】
[0075]熱処理が完了すると、重質媒体の引込み、および浮力で同伴されたIRV30が提供される。5番目のフレームは、このプロセスが開始されたことを示しており、6番目のフレームまでに引込みが完了し、引込みチャンバ25が一杯になり、IRVの単分子層がpc20に提示される。チップコントローラまたは遠心分離機は、pcを撮像するためのカメラを当然有することができ、場合によってはブレードに取り付けることができるが、これは特殊な光学および照明を必要とする場合があり、またはストロボ光および遠心分離機内のカメラによって提供することができ、もしくは遠心分離後にチップにさらに提供されてもよい。撮像が遠心分離機から外れて、または遠心分離後に実行される場合、チップの内容物は、特に、通気孔のないチャンバが動作中に加圧空気プラグを展開させることが許可されている場合に、遠心分離中のチップの内容物の静止状態と、チップが静止したときとの間でシフトし得る。極端には、このシフトは、IRV境界を破壊する場合がある。チップの制御された減速(加圧空気プラグの有無にかかわらず)は、損傷なしのpcへのIRVの移動に影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
[0076]チャンバの形状、向き、および寸法、チャネルおよびポートのレイアウト、ならびに層の材料または組成(すなわち、フィルム10およびカバー11)を含む、チップのマイクロ流体ネットワークのほとんどの態様は、必須ではない。本明細書では、第1の実施形態の変形形態は、特定の方法で変更され得るいくつかの変形形態の特徴を示すために提供される。これらの変形形態は、本発明のそれぞれの実施形態において特徴の任意の組合せを組み立てることができるという点で、相互に独立していると実質的に理解される。
【0066】
[0077]図2は、pcが、IRVのビデオグラフィックス撮像または連続撮像のためのフロースルーチャンバであり、tc内にIRVを補充し、熱処理中のガス放出を低減するための軽質媒体チャンバが設けられているという、これらの主要な点において変化を持たせた基板10のレイアウトである。図2は、熱処理領域28、およびpc20を撮像することができる窓領域26を、ゴーストビューでさらに示している。例えば、ポート12a、cが連合している状態の、チップレイアウトのわずかな変更も設けられている。
【0067】
[0078]軽質媒体チャンバ30は、水性サンプルなどの、熱処理中に揮発しやすいIRVに対して好ましい。油などのキャッピング軽質媒体は、さもなければIRVの体積、サンプル成分の溶解に影響を及ぼし、かつ反応を損なうであろうガス放出を防止するのに有用であることが分かっている。
【0068】
[0079]フロースルーpc20は、開口22および出口の両方が対称的なフレアを有するという点で、幾分対称的な形態を有する。図2図2Aから分かるように、傾斜部23は、第1の変形形態では、約20°のスロープを有し、はるかに緩やかである。dtcおよびdpcは、変形形態が実施形態に匹敵するため、これは、約4倍長い傾斜部23のランを設けることによって達成される。開口22を通る流れは、変形形態ではIRV30により低いせん断応力を加えると予想され、tcの3Dパッキングからpcの単分子層への移行は、このより低いスロープの傾斜部23によって徐々に提供される。傾斜部23は、窓領域26の先頭およびpc20の先頭で終了する。必要ではないが、引込みチャネル19に通じるpc出口のフレアは、流れ方向の急激な変化におけるせん断力を減少させる可能性がある。引込みチャンバ25に入る前のIRVのいかなる崩壊も、回避することが実質的に好ましく、その場合、凝集した水性IRV内容物が、pc内のいかなるIRVとも相互作用することなく、重質媒体を介して浮力で上昇し得る。この目的のために、チャネル19は、IRVを運ぶ重質媒体に対してより滑らかな移行を提供するようにさらに修正されてもよい。
【0069】
[0080]図2Aは、フィルム10およびカバー11からなるチップの、図2に示すマーキングされた部分断面を示している。図2Bは、本発明によるプロセスの3つのステップを示すストリップであり、3つのステップの各フレームは、図2Aのチップの拡大図を示し、(上部の)第1のフレームにはtc、開口、およびpcがそれぞれ重質媒体で満たされている状態、(中央の)第2のフレームにはIRVがpcに入り始めている状態、および第3のフレーム(下部)には行列行進しているIRVがある状態を示している。チップを動作させるために、チップはプラットフォームに取り付けられ、スピンするように設定される。サンプルおよび重質媒体は移動され、それぞれJチャネル16内に入り、およびpcを満たしてtc内の充填レベルになる(上部フレーム)。完了すると、重質媒体がtc内のノズルを覆い、サンプルは、供給チャンバ14とtc15とを接続しているサイフォンバルブに打ち勝つのに十分高い正圧をポート15a(15cが閉塞または共加圧されている)において印加することによってサンプル計量チャンバに移送される。サンプルが移送されると、ノズル18がサンプルを個別のIRVとしてtc内に入れるときに乳化プロセスが開始し、これについては図3を参照して以下にさらに図示および説明する。したがって、IRVはtc内で生成される。IRVが作製されると、チャンバ30からの軽質媒体は、ポート12eで正圧を印加することによってtcに移送される。軽質媒体は、(サンプルよりも密度が低いために)チャンバの上部まで上昇する。次いで、制御されたヒータを使用して設定温度(または温度サイクルシーケンス)を適用することによって、熱処理が開始される。カートリッジが熱処理中にスピンすると、エマルジョンは重油と軽油との間に挟まれ、これによって蒸発を防ぎ、IRV安定性を維持する。熱処理が完了した後、遠心分離を停止することなく、IRVは、引込みチャンバ25のポートで負圧を印加することによって浅いpc20内に移送される。中央のフレームは、この開始を示しており、下部のフレームは、窓を横切るIRVの行列行進の無作為な瞬間を示している。したがって、図2Bの第1のフレームは、図1のフレーム2~4のうちのいずれかに対応する。第2のフレームは、十分な密度の媒体が引込みチャンバ25内に引き込まれると、IRVの一部が開口22内に引き入れられて、開口22を通る方法を示している。その後、IRVは、pcにわたって行列行進させられる。移動は低速であり、これは撮像およびIRV崩壊の防止を容易にするため、このプロセスにはある程度の時間がかかると予想される。実施形態とは異なり、変形形態は、引込みチャンバ25内でのIRVの蓄積、またはIRV内容物の他の貯留もしくは収集を可能にする。
【0070】
[0081]図3は、ノズル18におけるIRV形成を示すストリップである。12個のフレームの各々は、横方向に表示され、フレームの下縁はtc15の軸線方向遠位壁に対応し、右縁はカバー11の表面に対応することに留意されたい。連続する各フレームにおいて、より大量のサンプルが重質媒体内に注入され、浮力が増加して、引き込まれるにつれて上方に引き込まれる(すなわち、遠心力場の反対側)。フレーム9までに、IRVは形成されているが、サンプルのストリングによってノズルに繋がれていると言うことができる。浮力は、IRVをノズルからさらに、さらに移動させ、さらなるサンプルをtc内に引き込むが、第12のフレームでテザーが切れ、サンプルのストリングが自由表面エネルギーに有利な球形にはじき戻り、次のIRVを播種する。
【0071】
[0082]図1および図2は、本発明のIRV形成および提示プロセスにおいて直接協働する特徴以外の特徴を有さない2つの実施形態を示しているが、多くのチップが好ましくは、検査用のサンプルを生成するためにサンプル調製および処理の複数のステップを実行することが当業者には理解されよう。図1および図2のチップは、IRV生成、熱操作、および撮像のためのその後の単分子層形成を必要とする任意の用途に適しており、ddPCR、ddLAMP、ddRPA、または単一細胞ベースのアッセイが含まれ、単一細胞が特定の試薬でカプセル化され、指定された期間培養され、その後画像化される。IRVあたり最大1つの細胞を制御するために、最も簡単な方法は、所与のサンプルおよびIRV体積に対して、ポアソン分布によって予測されるようにIRVあたり最大1つの細胞を提供する適切な細胞濃度にサンプルを希釈することである。例えば、IRVの約15%は1つの細胞を含有し得、他のIRVは、水性緩衝液および溶解または担持された粒子および種のみを含有することとなる。当業者には理解されるように、液滴を形成するノズルに到達する前に、チャネル内の細胞を特定の間隔で制御または配置するために、流れ集束および他の技術を提供することができる。
【0072】
[0083]図4は、パターニングされ、血液、唾液、尿などを含む様々な臨床的に関連する生体流体からの核酸抽出など、アッセイに応じる完全なサンプル用のチップを提供するフィルム10を概略的に示している。IRVの生成、熱処理、および提示に必要なすべてのチャンバおよびチャネルを設けることに加えて、生体流体からの核酸単離のために追加のチャンバが設けられている。意図された使用のために組み立てられるとき、サンプルチャンバ14には乾燥試薬が予め装填され、以下のチャンバにはそれぞれ、次のように装填される:引込みチャンバ25内に重質媒体;チャンバ30内に軽質媒体;チャンバ36内に結合緩衝液;チャンバ37内に洗浄液;およびチャンバ38内に溶出緩衝液。結合緩衝液、洗浄液、および溶出緩衝液チャンバ36~38は、ビーズ床を含む混合チャンバ31に結合されており、ビーズは核酸抽出のために官能化されている。混合チャンバ31は、サンプル溶解のために設けられている。さらに、混合チャンバ31に配管によって結合されたオフチップサンプルバイアル40がある。混合チャンバ31はまた、出願人の同時係属中の国際公開第2020/100039号に教示されているように、サンプルチャンバ14およびオフチップ廃棄物リザーバ39と流体連通している。
【0073】
[0084]サンプルは混合チャンバ31に移送され、結合緩衝液はまた、チャンバ36の個別のポートを介してチャンバ36で正圧を印加することによってチャンバ31に移送される。結合緩衝液はサンプルを溶解し、サンプルから核酸を抽出する。官能化ビーズ(好ましくはシリカなどの多孔質高表面積ビーズ)は、好ましくはペルチェデバイスによって提供される温度制御によって補助され、核酸を捕捉する。次に、チャンバ31の液体内容物(未結合の溶解産物)は、混合チャンバ31のポートで、オフチップ廃棄物39へのチャネルをプライミングするのに十分な長さであるが、サンプルチャンバ14へのチャネルをプライミングするのに十分な長さではない期間、正圧を印加することによって排出される。ビーズの直径は、混合チャンバのオフチップ廃棄物39への開口の直径よりも大きいため、未結合の溶解産物が抜き出る間、ビーズは保持される。次いで、チャンバ31は、洗浄液をチャンバ31内に移動させ、再びチャンバ31を排水することによって、少なくとも一回洗浄される。溶出緩衝液をチャンバ31内に移送することによって、鋳型核酸がビーズから溶出される。これは、混合チャンバ31を加熱して核酸の放出を促進することを含み得る。次に、溶出された鋳型は、例えば、サイフォンバルブ接続チャンバ31および14に打ち勝つのに十分な圧力および持続時間でポート12a、b、dに負圧を印加することによって、サンプルチャンバ14に移送される。このサイフォンバルブを有するチャネル、サンプルチャンバ14、tc15にノズル18を有するJチャネルが、本実施形態における送出経路を形成する。この時点で、核酸を担持する溶出緩衝液がサンプルチャンバ14を満たし、乾燥した予混合物を水和および溶解する。有用であれば、ポート12a、b、dに印加される圧力を加えて、サンプルの気泡混合を誘導し、十分な溶解およびサンプルの均質性を確実にすることができる。これが完了すると、乳化、熱処理、および提示のためのプロセスは、前の例のように開始することができる。
【0074】
[0085]図5は、エマルジョン分割IRVの熱処理および表示のための遠心型マイクロ流体システムの特定の例である。システムは、軸線(図示せず)の周りで遠心分離機に取り付けられるように適合された遠心ブレード50を備える。ブレード50は、両端にある2つのチップ受容部53と、チップ受容部53の間の実質的に中間に延在するフレア状または丸みを帯びたプレート本体と、を備える。フレア状プレート本体部分は、一まとまりを適用する場所を提供して、遠心分離機のバランスをとる。
【0075】
[0086]2枚のチップ55は、チップ受容部53でブレード50に取り付けられるように設計されているが、一例では、説明のためにカバーを取り外して示している(すなわち、パターニングされたフィルム10)。チップは、カートリッジを形成するために補強されることが多く、カートリッジは、操作を容易にし、チップの意図しない操作による予め装填された流体の移動を回避する傾向があり、また加熱システム、観察システム、および圧力供給ポートなどの、ブレード50の対応する特徴とのチップの正確な位置合わせのためであることに留意されたい。しかしながら、そのような補強を提供するための構造は、チップを遮る傾向があり、省略されている。
【0076】
[0087]ブレード50の中心には、電気回路、電源、加圧流体源、ポンプ、流れ制御要素、または空気圧、油圧、および/もしくは電気スリップリングを有する場合がある、流体、または電力、または信号を供給するためのコントローラ52があり、そのうちの8つが示されている、それぞれの流体供給ライン56に供給される圧力を制御する。供給カプラ54は、チップのそれぞれのポート12をそれぞれの流体供給ライン56に結合する。チップの2つの例は、例えば、重複した検査を実行していてもよいし、同じ検査を実施する、異なるサンプル源を有してもよいが、典型的には、両方のチップを同時に動作させるための重複した圧力供給ライン56を有する。
【0077】
[0088]図5Aは、第3の変形形態によるフィルム10を示しており、カプラ54は、フィルム10の完全な図を提供するために分解されている。第3の変形形態では、いくつかの小さな変更がある。例えば、チャンバ13は、オーバーフローチャンバである代わりに、乾燥試薬用の別個のチャンバであり、その中に未処理のサンプルが供給される。遠心分離の前にチャンバ13内に供給されたサンプルは、拡散による混合に十分な時間、乾燥試薬と共に滞留し、チャンバ13のポートの制御によってサンプルチャンバ14に計量供給される。Jチャネル16は、流体力学的抵抗を有し、図5Bによりよく示されているように、ノズル18の配列に開口する。tc15は、供給速度の制御を改善する流体力学的抵抗を通じてチャンバ30から供給される軽質媒体のための緩衝空間を提供する、オーバーフローチャンバ15’を有する。サンプルをtc内に導入すると、tcの占有体積が拡大し、一方で、重質媒体が引込みチャンバ25に戻されるという事実は、この体積に関する提供の問題をもたらす。軽質媒体は体積の差に対処するのに役立つが、いかなるIRVも同伴することなく、軽質媒体がtcから実質的に除去される点までtcを過充填する能力が有効である。代替的な実施形態では、軽質媒体は、オーバーフローチャンバ15’内の空気を移動させる代わりに、チャンバ30に戻されてもよい。重質媒体チャンバ25には、より正確な量の重質媒体を供給するために、通気された計量チャネルが設けられている。計量チャネルは、IRV形成の前に、遠心分離中のtc内の重質媒体の充填レベルを検証するための有用な場所を提供する。pc20は、支持および補強のためのピラーの配列と共に示されている。dpcは非常に小さいため、チップ上の圧力の変動が使用中の深さを実質的に変化させないように、ピラーが必要である。これらは、図5Bによりよく示されている。
【0078】
[0089]図5Aはまた、単一の集塊構造がどのようにしてチップ55の提供されたポートの各々を押圧して、カプラ54を介してそれぞれの供給ライン56と密封接続することができるかを示している。
【0079】
[0090]図5Bは、第3の変形形態によるフィルム10のパターニングの特に高感度な部分の、部分拡大図を示す。流体力学的制限の後の、Jチャネル16の拡張されたマニホールドセグメントと結合されて示されている、7つのノズル18がある。したがって、制限を介して押圧されたサンプルは、マニホールドに押し寄せ、7つのノズルの各々にほぼ等しい流量を分配する。遠くないところに開口22が示されており、pc20内に配設され、かつ開口22まで適切に拡張しているピラー59が見られる。ピラー59は、IRVとの流れ相互作用を最小限に抑え、流れ内のせん断応力を回避するための寸法、ピッチ、およびオフセットを有する。
【実施例0080】
[0091]本発明は、いくつかの実験によって実証されている。図6は、本発明を考査するために使用されるチップの写真である。パターニングは、第3の変形形態に最もよく似ており、チップは、撮像のためにすべてのIRVを一度に提示するための視野を備えた大きなpcを有する。チップは、熱可塑性エラストマー(Mediprene OF(商標))中で、フィルムをホットエンボス加工し、平坦なCOCシートに接着することによって製造した。その後、デバイスを使用して、以下に記載されるプロトコル、IRVを生成し、エマルジョンをサーマルサイクルし、エマルジョンをpcに移送した。このチップでは、dpcは60μm、dtcは500μmであった。
【0081】
[0092]最初に、チップを、IRVを生成し、液滴PCRを実施するために必要なすべての液体で満たした。具体的には、200μlの重油を引込みチャンバ内に装填し、続いて20μlのサンプル(鋳型とのPCR混合物)をチャンバ13内に充填し、20μlの鉱油を軽質媒体チャンバ30内に充填した。次に、入口をブレードの圧力供給ポートで封止した状態で、デバイスを遠心分離機のブレード上に設置し、プラットフォームを400rpmで回転させる。
【0082】
[0093]ポート7(例示的なセクションでは、すべてのポートを図5B、または図6の左から右に番号付けされて識別した)で1.5psiの正圧を印加して、tc15(オーバーフローチャンバ15’ではない)が完全に満たされるまでpc、開口、およびtcに重油を移送する。次に、回転数を600rpmに上げる。この時点で、tcの内容物は約半分充填tcまで低下した。続いて、サンプルは、ポート3において200msのパルスで+1psiを印加することによって、チャンバ13からサンプルチャンバ14に移送される。
【0083】
[0094]チャンバ14内のサンプルを用いて、ポート2および3で+1.5psiよりも大きい一定の圧力を印加する(さらに回転速度を制御する)ことによって、IRVを次のステップで生成することができ、これはJチャネルの抵抗を克服し、ノズルを介してIRV生成のプロセスを開始するのに十分である。ノズルの提供された流体力学的半径と共に正確な圧力および回転速度は、IRVの直径および体積を決定し、これは、要求に応じて設定され、特定の用途に合わせてカスタマイズすることができる。この場合、ノズルは幅10μm、深さは8μmを有したため、水力半径は2(10×8)/(2(8+10))であり、これは約4.5μmである。
【0084】
[0095]圧力を印加すると、IRVは、はるばるオーバーフローチャンバ15’まで完全にtcを満たすように生成されたが、IRVはオーバーフローチャンバに入らなかった。これは、熱処理中のIRV崩壊を回避するために重要であった。IRV生成後、ポート5で+1psiの圧力を印加することによって、軽油をオーバーフローチャンバ内に供給した。このステップは、サーマルサイクル中の蒸発を防止し、適用される特定のPCRプロセスに必要な高温でのIRV安定性を保持するために使用された(すなわち、95℃)。
【0085】
[0096]次に、tcの下方のブレードに配置されたペルチェヒータでサーマルサイクルシーケンスを適用した。サーマルサイクルが完了した後、-1psiの負圧をポート6および7に印加して、重油を引き込むことによってpcへのエマルジョンの移送を開始した。このプロセスの間、プラットフォームがスピンを停止すると、pc内への油の逆流を防止するために、回転数は300rpmまで(10rpm刻みで)ゆっくりと低下する。移送が完了すると、圧力がオフにされ、回転が停止され、その後のIRVの撮像が可能になる。
【0086】
[0097]図7は、撮像されたpcの写真であり、支持ピラーの配列がダークスポットとして示されている状態である。IRVのいくつかのバンディングが見られ、特にpcの上部付近では、IRV崩壊のいくつかの領域が見えるが、pcの大部分は、均一なサイズのIRVの略六角形のパッキングで満たされている。隣接するIRVは異なる着色を有し、熱処理中のIRVの効果的な分離を実証している。図7Aは、ぎっしりと詰まった六角形の単分子層を示す拡大領域の一部(上部)を示し、各IRVは独立してPCR蛍光応答を伝えている。
【0087】
[0098]図8は、IRV直径の数を示すヒストグラムであり、出願人に、分布の平均およびCVを計算する機会を与え、それぞれ49μmおよび2.38%である。これは、各IRVの体積がほとんどの分析に対して十分に一定であることを実証している。上記に参照により組み込まれるLOC紙に記載されるように、数ミクロンから少なくとも100μmの様々な直径を中心とする適度に狭い分布を有するIRV直径を生成するためのチップ構成は、300~700rpmの遠心分離の変動および0~40kPaの正圧で生成することができる。
【0088】
[0099]提案されたチップおよびシステムの適用は、撮像のための自動化されたIRV生成、サーマルサイクル、およびエマルジョン移送について実証されている。
【0089】
[0100]熱処理およびIRVのエマルジョンの移動のためのチップおよびシステムの本質的な特徴は、視野を遮る代替要素を最小限にして本明細書に記載されている。いくつかのセンサおよびデバイスをブレードまたはチップコントローラに追加して、さらなる改善のための追加のプロセス制御およびフィードバックを提供することができることが当業者には理解されよう。構造に固有の他の有効な点は、当業者には明らかである。実施形態は、本明細書に例示的に記載されており、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。前述の実施形態の変形例は、当業者には明らかであり、本発明者によって以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0090】
[0101]参考文献
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【符号の説明】
【0091】
2…ポート、3…ポート、5…ポート、6…ポート、7…ポート、10…フィルム、基板、11…カバー層、カバー、12…ポート、通気孔、12a…サンプルポート、圧力制御ポート、12b…通気孔、12c…ポート、12d…通気孔、加圧ポート、12e…ポート、13…オーバーフローチャンバ、14…サンプルチャンバ、供給チャンバ、サイフォンバルブ接続チャンバ、15…処理チャンバ(tc)、15’…オーバーフローチャンバ、15a…ポート、16…J字形チャネル、Jチャネル、18…ノズル、19…引込みチャネル、20…提示チャンバ(pc)、フロースルーpc、22…開口、23…傾斜部、25…引込みチャンバ(rc)、重質媒体チャンバ、26…窓領域、28…熱処理領域、30…軽質媒体チャンバ、31…混合チャンバ、サイフォンバルブ接続チャンバ、36…溶出緩衝液チャンバ、37…チャンバ、38…溶出緩衝液チャンバ、39…オフチップ廃棄物リザーバ、オフチップ廃棄物、40…オフチップサンプルバイアル、50…遠心ブレード、52…コントローラ、53…チップ受容部、54…供給カプラ、55…チップ、56…流体供給ライン、圧力供給ライン、59…ピラー、r…ノズルの流体力学的半径、rIRV…IRVの平均半径、ltc…tcの平均長さ、wtc…tcの平均幅、dtc…tcの平均深さ、vtc…tcの容積、lpc…pcの平均長さ、wpc…pcの平均幅、dpc…pcの平均深さ、vpc…pcの容積、l…開口の平均長さ、w…開口の平均幅、d…開口の平均深さ。

図1
図1B
図1A
図2
図2B
図2A
図3
図4
図5
図5A
図5B
図6
図7
図8
【外国語明細書】