(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165980
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】サービス提供装置、サービス提供方法およびサービス提供プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221025BHJP
【FI】
G06Q30/02 398
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115227
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2020523196の分割
【原出願日】2019-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2018109115
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320005501
【氏名又は名称】株式会社電通
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】曽 伯文
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率よく広告などのサービスを提供できるサービス提供装置、サービス提供方法及びサービス提供プログラムを提供する。
【解決手段】複数のユーザ端末と、サービス提供装置と、再生装置とを備えており、これらが互いに通信可能となっているサービス提供システムにおいて、サービス提供装置2は、自律的に運航する機能を有する複数の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する経路情報受信手段と、複数の移動体のそれぞれの現在位置を示す位置情報を受信する位置情報受信手段と、を有する経路共有サーバ2A及び複数の移動体のうちの2以上の移動体からの経路情報によって移動経路に関するサービス提供条件が満たされた場合に、経路情報及び位置情報に応じてサービスを2以上の移動体のユーザに提供するサービス提供手段を有するサービス管理サーバ2Bを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に運航する機能を有する1以上の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する手段と、
移動経路ごとの属性情報を収集することにより、地理空間上の特定区域を、属性情報と特定時間などの掛け合わせで評価する手段と、
それぞれの地理空間を広告媒体として活用するための評価を行って広告表示を指示する手段と、を備える演算装置。
【請求項2】
前記属性情報は、当該移動経路において、移動体に何人、どのような人物がどのような移動理由で移動するか、の情報を含む、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記受信する手段は、2以上の前記移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する、請求項1または2に記載の演算装置。
【請求項4】
第1手段が、自律的に運航する機能を有する1以上の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信し、
第2手段が、移動経路ごとの属性情報を収集することにより、地理空間上の特定区域を、属性情報と特定時間などの掛け合わせで評価し、
第3手段が、それぞれの地理空間を広告媒体として活用するための評価を行って広告表示を指示する、演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動体の経路情報を利用してサービスを提供するサービス提供装置、サービス提供方法およびサービス提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動体の自動運転を実現させる方法として、航空機、船舶、自動車、ドローンその他の移動体に適した自動運転の制御技術の開発、またこれらの移動体の制御に関連した通信、放送その他制御技術の開発が進められている。これらの移動体を事業として利用者に提供していくうえで、広告・コンテンツ等の情報を配信し、配信の対価として得られる収益で運送料を担保する方法が検討されている。しかしながら、一様ではない移動需要に即して広告を最適に配信するためには、乗客の属性や移動目的地といった情報だけでなく、広告がどの程度の範囲や規模で配信されるのかを管理し、かつ広告主から広告を受付けて配信する仕組みが必要となる。その際、既存の広告出稿状況と組み合わせたり、乗客の多様な移動状況に即した情報提供が求められたりする。これらの処理を個別の移動体管理者や運航事業者が行うことは非効率である。
広告を見ることでタクシー代が無料となるサービスが提案されている。しかしながら、具体的にどのように広告を出すのかは不明であり、ユーザにとって適した広告が表示されるとは限らない。そのため、広告主にとっては、個別の移動体あるいは運送サービス事業者の単位を超えた地域空間全体の移動傾向を踏まえて、効率よく広告を出せないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】https://nommoc.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、効率よく広告・コンテンツなどのサービスを提供できるサービス提供装置、サービス提供方法およびサービス提供プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、自律的に運航する機能を有する複数の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する経路情報受信手段と、前記複数の移動体のそれぞれの現在位置を示す位置情報を受信する位置情報受信手段と、前記複数の移動体のうちの2以上の移動体からの前記経路情報によって移動経路に関するサービス提供条件が満たされた場合に、前記経路情報および前記位置情報に応じてサービスを前記2以上の移動体のユーザに提供するサービス提供手段と、を備えるサービス提供装置が提供される。
【0007】
複数の移動体のうち2以上の移動体からの経路情報によってサービス提供条件が満たされた場合にサービスが提供されるので、サービスの提供効率が向上する。なお、移動体とは、例えば自動運転可能な車両である。また、サービスとは、例えば広告、コンテンツ、クーポン等の情報を提供することである。
【0008】
前記サービス提供条件は、前記移動体の移動経路が予め定めた特定地点を含むことであってよい。
【0009】
前記サービス提供手段は、前記位置情報に基づき、前記特定地点に基づいて定まる範囲内に前記移動体が入るタイミングで、前記サービスを提供してもよい。
【0010】
前記サービス提供手段は、前記特定地点に関連する店舗に関する広告、または、前記特定地点に関連する店舗で使用可能なクーポンを、前記サービスとして提供してもよい。
【0011】
前記サービス提供手段は、前記特定地点の近傍に設置され、前記特定地点にある移動体から視認可能な再生装置を利用して前記サービスを提供してもよい。
【0012】
前記サービス提供条件は、前記移動経路が前記特定地点を含む前記移動体が所定数以上あってもよい。
【0013】
前記サービス提供条件は、前記移動経路における移動時間または移動距離に関連し、前記サービス提供手段は、前記移動時間または前記移動距離に応じた時間のサービスを提供してもよい。
【0014】
前記サービス提供条件は、2以上の前記移動体の目的地が共通することであってもよい。
【0015】
前記サービス提供条件は、前記移動体を利用するユーザの人数および/または属性に関するものであってもよい。
【0016】
前記サービス提供手段によるサービス提供は、コンテンツの再生であり、前記サービス提供手段は、前記ユーザが用いるユーザ端末にコンテンツを配信して前記ユーザ端末に前記コンテンツを再生させてもよい。
【0017】
前記サービス提供手段によるサービス提供は、コンテンツの再生であり、前記サービス提供手段は、前記ユーザが用いるユーザ端末に再生指令を送信して前記ユーザ端末が予め記憶しているコンテンツを再生させてもよい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、経路情報受信手段が、自律的に運航する機能を有する複数の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信することと、位置情報受信手段が、前記複数の移動体のそれぞれの現在位置を示す位置情報を受信することと、サービス提供手段が、前記複数の移動体のうちの2以上の移動体からの前記経路情報によって移動経路に関するサービス提供条件が満たされた場合に、前記経路情報および前記位置情報に応じてサービスを前記2以上の移動体のユーザに提供することと、を備えるサービス提供方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、コンピュータを、自律的に運航する機能を有する複数の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する経路情報受信手段と、前記複数の移動体のそれぞれの現在位置を示す位置情報を受信する位置情報受信手段と、前記複数の移動体のうちの2以上の移動体からの前記経路情報によって移動経路に関するサービス提供条件が満たされた場合に、前記経路情報および前記位置情報に応じてサービスを前記2以上の移動体のユーザに提供するサービス提供手段と、として機能させるサービス提供装置が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、自律的に運航する機能を有する複数の移動体のそれぞれの移動経路を示す経路情報を受信する手段と、移動経路ごとの属性情報を収集することにより、地理空間上の特定区域を、属性情報と特定時間などの掛け合わせで評価する手段と、それぞれの地理空間を広告媒体として活用するための評価を行って広告表示を指示する手段と、を備える演算装置が提供される。
【0021】
前記属性情報は、当該移動経路において、移動体に何人、どのような人物がどのような移動理由で移動するか、の情報を含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
複数の移動体のうち2以上の移動体からの経路情報によってサービス提供条件が満たされた場合にサービスが提供されるので、サービスの提供効率が向上する。また、複数の移動体の動的な移動情報をもとに、最適な情報を配信できるため、効率的な情報提供がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】サービス提供システムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】サービス提供装置2の概略構成を示すブロック図。
【
図4】サービス記憶手段25に記憶されたサービスDBの一例を示す図。
【
図5】サービス提供装置2の処理動作の一例を示すフローチャート。
【
図7】本技術のユースケースの一例を模式的に示す図。
【
図8】本技術のユースケースの別の例を模式的に示す図。
【
図9】本技術のユースケースのまた別の例を模式的に示す図。
【
図10】デジタルサイネージとの連動の仕組みを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の代表例として、自動運転車の走行ルート・エリアに適した広告・コンテンツを効率的に配信する仕組みを提供するシステムを開示する。このシステムにおいては、ルートを走行する自動運転車や乗客の属性情報や走行ルートの特性と、走行ルート・エリアにおけるマスメディアその他の広告展開とその反応状況を基に、走行ルート・エリアに即して広告主と自動運転車の乗客をマッチングさせ、最適な広告もしくはコンテンツを配信する。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1は、サービス提供システムの概略構成を示すブロック図である。サービス提供システムは、ユーザ端末1と、サービス提供装置2と、再生装置60とを備えており、これらは互いに通信可能となっている。ユーザ端末1は自動運転機能(例えば、SAE-J3016レベル3以上)を有する車両に乗ったユーザが用いるものであり、車両に搭載された車載端末(例えば、カーナビ)でもよいし、ユーザが持ち込んだ携帯端末(例えば、スマートフォンやタブレット)でもよい。ユーザ端末1は、後述する経路情報および位置情報をサービス提供装置2に送信する。そして、サービス提供装置2は、経路情報および位置情報に応じたサービスを、ユーザ端末1や任意の再生装置60を介してユーザに提供する。
なお、ユーザ端末1は、車両内のみならず、自動運転機能を有する船舶(水中・水上を運航する移動体)、ドローン等の飛行体内にあることを想定することもできるが、以下はすべて車両として記載する。
【0026】
図2は、ユーザ端末1の概略構成を示すブロック図である。ユーザ端末1は、位置情報取得手段11と、経路情報設定手段12と、通信手段13と、サービス提供手段14と、ディスプレイ15と、コンテンツ記憶手段16とを有する。なお、ユーザ端末1の機能の少なくとも一部は、ユーザ端末1のプロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0027】
位置情報取得手段11はユーザ端末1の現在位置を取得し、現在位置を示す位置情報を逐次生成する。具体例として、位置情報取得手段11はGPS受信器を有し、測位衛星等からユーザ端末1の現在位置(緯度および経度)を取得できる。ユーザ端末1は車両に乗ったユーザが用いるものであるから、ユーザ端末1の現在位置は車両の現在位置とも言える。位置情報には、現在位置に加え、車両を特定するID、ユーザを特定するID、現在位置の取得時刻を示す情報も含まれ得る。
【0028】
なお、車両に車載カメラなどのセンサデバイス(不図示)を搭載し、位置情報取得手段11は他車両のナンバープレートを検出するなどによって、他車両の現在位置を示す位置情報を生成してもよい。
【0029】
経路情報設定手段12は車両の移動経路を設定し、移動経路を示す経路情報を生成する。経路情報は、車両を特定するID、ユーザを特定するID、出発地、経由地、目的地などの情報を含み得る。出発地、経由地および目的地は、車両のユーザが任意に設定してもよいし、予め車両に対して設定されてもよい。あるいは、位置情報取得手段11が取得した現在位置を出発地としてもよい。また、経路情報には、車両を利用するユーザの人数、属性(性別、年齢など)、移動目的、移動に要する時間など他の情報が含まれていてもよい。
【0030】
通信手段13は、位置情報取得手段11によって位置情報が生成されると、位置情報をサービス提供装置2に送信する。また、通信手段13は、経路情報設定手段12によって経路情報が生成されると、経路情報をサービス提供装置2に送信する。なお、位置情報は逐次送信されるのに対し、経路情報は新たに設定あるいは更新された際に送信されればよい。さらに、通信手段13はユーザにサービスを提供するのに必要なデータをサービス提供装置2から受信する。
【0031】
サービス提供手段14は、サービス提供装置2から受信したデータに基づき、ユーザにサービスを提供する。具体例として、サービス提供手段14は、サービス提供装置2から所定コンテンツを受信し、ディスプレイ15に当該コンテンツを表示する。あるいは、サービス提供手段14は、予めコンテンツを記憶したコンテンツ記憶手段16を参照し、コンテンツ提供サーバから指定されたコンテンツを読み出して、ディスプイに当該コンテンツを表示する。
【0032】
図3は、サービス提供装置2の概略構成を示すブロック図である。サービス提供装置2は、位置情報受信手段21と、経路情報受信手段22と、経路情報記憶手段23と、サービス提供手段24と、サービス記憶手段25とを有する。なお、サービス提供装置2の機能の少なくとも一部は、サービス提供装置2のプロセッサが所定のプログラムを実行することによって実現されてもよい。また、サービス提供装置2は複数の装置から構成されてもよく、例えば、位置情報受信手段21、経路情報受信手段22および経路情報記憶手段23が1つの装置(経路共有サーバ2A)に設けられ、サービス提供手段24およびサービス記憶手段25が別の1つの装置(サービス管理サーバ2B)に設けられてもよい。
【0033】
位置情報受信手段21は、各車両の現在位置を示す位置情報を、当該車両に乗ったユーザが用いるユーザ端末1から受信する。
【0034】
経路情報受信手段22は、各車両の移動経路を示す経路情報を、当該車両に乗ったユーザが用いるユーザ端末1から受信する。そして、経路情報受信手段22は経路情報を経路情報記憶手段23に登録する。これにより、複数の車両の移動経路が共有される(ルートシェア)。
【0035】
サービス提供手段24は、経路情報記憶手段23およびサービス記憶手段25を参照し、経路情報および位置情報に応じて、車両のユーザにサービスを提供する。具体的には、サービス記憶手段25には、移動経路に関するサービス提供条件と、各サービス提供条件に関連付けられたサービス内容とがサービスDBとして記憶されている。そして、サービス提供手段24は、経路情報記憶手段23に記憶された経路情報に基づき、2以上の車両によってサービス提供条件のいずれかが満たされたか否かを判断する。満たされた場合に、サービス提供手段24は当該サービス提供条件に関連付けられたサービスを、同サービス提供条件を満たす車両のユーザに提供する。
【0036】
図4は、サービス記憶手段25に記憶されたサービスDBの一例を示す図である。上述したように、サービスDBには、移動経路に関するサービス提供条件と、サービス内容とが関連付けられている。
【0037】
サービスIDが1のサービス(以下、単に「サービス1」などと表記する)では、移動経路が地点Aを含む車両が10台以上あることを条件に、地点Aの近傍にある店舗Mに関する広告を当該車両の各ユーザ端末1に再生する。なお、「移動経路が地点Aを含む」ことは、例えば経路情報における「経由地」あるいは「目的地」が地点Aであることを意味する。
【0038】
これにより、地点Aを通る車両に効率よく広告を提供でき、ユーザを店舗Mに導くことができる。
【0039】
サービス2では、移動経路が地点Bを含む車両が20台以上あることを条件に、地点Bの近傍にある店舗Nで使用可能なクーポンを当該車両の各ユーザ端末1に提示する。クーポンの提示は、例えばQRコード(登録商標)や、パスワードの表示によることができる。
【0040】
これにより、地点Bを通る車両に効率よくクーポンを提供でき、ユーザを店舗Nに導くことができる。
【0041】
サービス3では、地点Cを30台以上の車両が通る時間帯があることを条件に、当該時間帯に、地点Cの近傍にある店舗Oで行われるセールの広告を、地点Cに設置された(地点Cにある車両から視認可能な)デジタルサイネージ(
図1の再生装置60に相当)で告知する。この場合も、ユーザに対してサービスが提供されると言える。
【0042】
通常のデジタルサイネージは、一定の期間、同一の広告(例えば、店舗名と、その店舗までの距離)を表示するのが一般的である。これに対し、サービス3によれば、多くの車両が集中的に地点Cを通る時間帯に、効率よく、かつ、機動的に広告を提供できる。
【0043】
サービス4では、移動時間が15~20分である車両が40台以上あることを条件に、当該車両のユーザ端末1に再生時間が10分であるP社の広告を再生する。
【0044】
これにより、移動時間に応じた最適な広告をユーザに提供できる。
【0045】
サービス5では、移動距離が60~70kmである車両が50台以上あることを条件に、当該車両のユーザ端末1に、再生時間が100分であり、Q社の宣伝を含む映画を再生する。
【0046】
これにより、移動距離に応じた最適なコンテンツをユーザに提供できる。
【0047】
サービス6では、目的地が共通し、その到着時刻が概ね共通する車両が5台以上あることを条件に、当該車両のユーザに英会話レッスンの講師をマッチングする。
【0048】
これにより、目的地までの時間に行うことが可能な英会話のグループレッスンを提供できる。
【0049】
サービス7では、移動経路が地点Dを含まないが、地点Dの近くを通る車両が60台以上あることを条件に、当該車両のユーザ端末1に地点Dを通る経路を提示し、実際に地点Dを通るとクーポンを提示する。
【0050】
これにより、多少の遠回りを促し、遠回りを受け入れたユーザはクーポンを受け取ることができる。
【0051】
このように、経路情報を共有することで、様々なサービス提供条件を設定できる。サービス提供条件は、特定地点(エリアも含む)、特定地点に達する時間帯、特定地点における移動方向、移動時間、移動距離、台数、車両を利用するユーザの人数、属性、移動目的など、経路情報に含まれ得る任意の情報とすることができる。また、サービス提供条件は、天候、地理情報、渋滞情報など、経路情報には含まれない情報と組み合わせたものであってもよい。
【0052】
また、自動運転を想定するため、種々のサービスを提供可能である。サービス内容は、コンテンツの再生、クーポンの提供、広告の再生、英会話レッスンの提供、ヨガのレッスンの提供などとすることができる。サービス内容はサービス提供条件に適した(関連した)ものであることが望ましい。また、サービス内容は、移動体の移動場所、経路、移動目的、同乗者数、天候・気象条件、移動体の車内与件、移動体に乗用するユーザの属性情報(経済情報、健康情報等)、及び移動経路上の商業施設、歴史的名所等の観光資源、官公署、他の交通機関等の状況に応じて変動させることが可能となる。
【0053】
サービス提供の形態にも種々考えられる。典型的には、ユーザ端末1のディスプレイ15を媒体としてサービスを提供できる。この場合、ディスプレイ15上に再生すべきコンテンツなどのデータをサービス提供装置2のサービス提供手段24からストリーミング形式でユーザ端末1に配信してもよい。あるいは、ユーザ端末1のコンテンツ記憶手段16に予め複数のコンテンツを記憶しておき、どのコンテンツを再生すべきかを指定する再生指令をサービス提供装置2のサービス提供手段24からユーザ端末1に送信してもよい。
【0054】
また、デジタルサイネージ、ビルボード、屋外広告、商業施設その他任意の情報伝達手段のように、ユーザ端末1とは異なる再生装置60を媒体としてサービスを提供することもできる。この場合、サービス提供対象のユーザが乗った車両が再生装置60に接近したタイミングで、再生装置60で再生すべきコンテンツなどのデータをサービス提供装置2のサービス提供手段24から再生装置60に配信するのがよい。
【0055】
その他、サービスの提供として、特定の地点において特定の物品がユーザに対して提供されてもよい。また、複数の形態を組み合わせてサービスを提供してもよい。
【0056】
サービスの提供は、サービス提供装置2からユーザ端末1に一方的に行われてもよい。あるいは、サービス提供装置2からユーザ端末1にサービス提供のオファーを行ってもよい。この場合、ユーザ端末1を用いるユーザがオファーを受け入れるのみでサービスが提供されてもよいし、ユーザによる対価の支払いによってサービスが提供されてもよい。対価の支払いは金銭によってもよいが、広告の視聴・聴取により対価を相殺してもよい。また、ユーザ端末1からサービス提供装置2にオファーを行ってもよい。
【0057】
各サービスは、サービス提供条件やサービス内容に応じた価格で、オークション方式による入札で分配されてもよい。入札価格は、例えばサービス提供条件における車両台数が多いほど、また、移動時間が長いほど高く設定される。また、経路情報を共有することで、各車両の移動時間を把握できる。よって、経路情報に基づいて最適な広告配信時間やサービス提供条件を自動で計算することも可能になる。そうして空いた時間を枠として捉え、機動的にターゲティングされたサービス(特に広告)を配信可能となる。
【0058】
サービスの提供(特に、コンテンツの配信)には、車両のIDやユーザのIDのみならず、分散型コンピューティングにより、信号機の情報や気象情報を組み合わせたブロックチェーンにより認証することも想定できる。
【0059】
図5は、サービス提供装置2の処理動作の一例を示すフローチャートである。図示していないが、各車両のユーザ端末1が経路情報を送信すると、サービス提供装置2の経路情報受信手段22は経路情報を受信し、経路情報記憶手段23に登録する。また、サービス提供装置2の位置情報受信手段21は各車両の現在位置を示す位置情報を同ユーザ端末1から逐次受信している。
【0060】
サービス提供装置2のサービス提供手段24は、経路情報が受信される度に、あるいは、定期的に、サービス記憶手段25におけるサービス提供条件が満たされたか否かを判定する(ステップS1)。満たされた場合、サービス提供手段24はサービスの提供対象および提供タイミングを特定する。
【0061】
例えば、
図4のサービス1のサービス提供条件が満たされた場合、提供対象は移動経路が地点Aを含む車両のユーザ端末1であり、提供タイミングは各車両が地点Aの近傍を通るときである。また、サービス3のサービス提供条件が満たされた場合、提供対象は地点Cに設置されたデジタルサイネージであり、提供タイミングは地点Cを30台以上の車両が通る時間帯である。
【0062】
そして、サービス提供手段24はサービス提供タイミングであるか否かを判定する(ステップS2)。提供タイミングであれば、サービス提供手段24は提供対象にサービスを提供する(ステップS3)。
【0063】
例えば、
図4のサービス1のサービス提供条件が満たされた場合、サービス提供手段24はサービス提供対象であるユーザ端末1を用いるユーザが乗った車両からの位置情報を監視し、その車両が地点Aに近づいた(地点Aに基づいて定まる範囲内に入った)タイミングで、広告を再生させる。また、サービス3のサービス提供条件が満たされた場合、サービス提供手段24は該当の時間帯になったタイミングで、デジタルサイネージに広告を配信する。
【0064】
このように、本実施形態では、複数の車両の経路情報を共有する。複数の車両からの経路情報によってある条件が満たされた場合に、条件に応じたサービスを提供する。そのため、車両間の相互関係も活用でき、効率よくサービスを提供できる。また、複数の移動体の動的な移動情報をもとに、最適な情報を配信できるため、効率的な情報提供がなされるだけでなく、これらの過去データを蓄積することにより、個別の移動体または特定の地理的空間における情報提供を効率化することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、自動運転機能を有する車両を例に取って説明したが、車両に限らず、人が直接的な操作をしなくても自律的に運航可能な任意の移動体に本発明を適用可能である。また、本発明の利用者は、自動運転車を用いて物品の輸送を行う事業者、エリア内で自動運転車の配車を行う事業者、自動運転車で販売・飲食業などを営む事業者、交通管制を行う警察その他の行政機関、道路等のインフラ管理者などを想定しているが、これらには限られない。
【0066】
以上述べたように、本技術の特徴は、
図6に示すように、過去の経路情報や移動中の特定地理空間上での行動結果を複数の移動体から時系列的に収集し(これをルート情報という)、それぞれのルート情報に関連した乗客・移動者の情報、同乗者や車内で提供される各種サービス、移動前後で提供されるサービス情報等(これを属性情報という)を地理空間上に時系列に沿って整理し、ルート情報と属性情報との関連性について統計的手法を用いて演算し、その結果を学習させることにより、蓄積したルート情報と特徴点が一定数以上一致する新たなルート情報や属性情報(個別または複数を問わない)が入力された際に、その情報量や特徴点の多寡に応じて、期待される情報を個別的あるいは複数に提供することである。
【0067】
図6において、広告等の情報を特定のエリアやターゲットに対して配信したい者(便宜的に広告主とする)は、それぞれ配信条件(エリア、ルート、移動体またはその組み合わせ、時間帯、反復の有無及びその頻度、ターゲット属性(性別、年齢、移動目的等)、移動体内の配信装置の種類等)を選定し、希望する配信条件として設定する。広告P/Fでは、配信最適化エンジンを通じて過去の配信実績、同時期の申込状況等をもとに一定の条件(一定額、オークション、需給に伴う一定枠内の変動価格いずれの方法も考慮できる)により配信対価(媒体費等と称することもできる)が計算され、広告主に提示される。広告主はその額に満足する場合は、配信を承認し、必要な配信素材を広告P/Fにアップロードする。配信最適化エンジンが蓄積したルート情報並びに属性情報を踏まえて、広告主が希望する条件に合致する移動体に対して広告P/Fから配信情報を抽出して情報を配信する情報演算処理がなされる。単に希望する場所やルートに情報を配信するのではなく、それを効率的に行うための前処理として統計的手法により移動動態(ルート、移動目的、属性情報等)を分析し最適化を図ることが、情報配信の効率を高めるうえで重要である。この入力の部分である移動体のルート情報、属性情報を収集するのは、これまではバラバラの移動事象ごとに情報が得られたり、得られなかったりと不安定であった。しかし、自律的に走行可能な移動体の出現は、移動者が車を走行させるうえで移動ルートを含む目的地を設定し、また移動体を利用するのに際して移動目的などの属性情報の提供を配車などの場面で提供する確率が高まる状況を生み出すという意味において、こうしたデータの収集効率が高まることを意味する。本技術は、そうした自動走行時代に即した情報配信の最適化を図るものである。
【0068】
このように、
図6に示した技術によれば、上述した手法で収集された移動経路情報と、移動経路ごとに、移動体に何人、どのような人物がどのような移動理由で移動するのか等の情報(属性情報)を収集することにより、地理空間上の特定区域を、属性情報と特定時間などの掛け合わせで評価し、それぞれの地理空間を広告媒体として活用するための評価を行って移動体等に広告表示を指示する演算装置を実現できる。
【0069】
以下、ルート情報をシェアすることでどのような状態を達成したいのかという点から補足する。特に、自動運転車の走行経路に基づいた適当な広告等サービス情報を配信する技術により、自動運転車により走行経路は途中変更を含めて予めわかるようになり、移動体内で自由な時間が増大し、車車間の協調動作が容易になる。
【0070】
図7は、本技術のユースケースの一例を模式的に示す図である。なお、
図7のユーザーデバイスおよび情報配信ツールは、
図1のユーザ端末1よびサービス提供装置2とそれぞれ対応する。
【0071】
図7では、情報配信ツールが複数のユーザーデバイスからルート情報および位置情報を収集する。そして、情報配信ツールは、過去の地理空間上の自動運転車の移動傾向・移動者の傾向のデータを統計的に処理し、地理空間上に配信条件を設定し、それに基づいて広告を配信する。
【0072】
より具体的には、ある地理空間上で起終点が設定され、カーナビなどで経路が設定された情報が車から得られたとする。当該ルートを含む地理空間上の過去のイベントを参考に、当該イベントや当該地理空間の特定範囲を走行するルートが生じた場合に広告などの情報を配信したい広告主またはコンテンツホルダーが設定する条件に適合した場合に、当該車両の車内デバイスに対して、種々の情報を配信する。
【0073】
個々のユーザの位置情報については、現在位置をGPSから取得できる。移動時間については、過去のルート情報と属性情報(移動目的)から、時間優先か否かなどを推定し、交通モードは配車アプリなどから推定し、当該ルート情報が同一地理空間上の過去のどの移動パターンに最も近似しているかを割り出す。そして、最近似の移動パターンとの共通点、他の移動パターンとの共通点等からもっとも近しい結果を導いた対応方法を実行することができる。
【0074】
具体的に配信される情報の例としては、移動ルート・位置情報に基づく店舗送客があり(
図7のパターンA)、
図4のサービス1,2に対応する。別の例としては、移動時間に応じた配信コンテンツの最適化があり(
図7のパターンB)、
図4のサービス5に対応する。
【0075】
また別の例としては、交通モードをまたぐ連続的コンテンツ配信がある(
図7のパターンC)。このパターンCは、Maas(Mobility as a service)アプリのように、同一の移動体ではない複数の移動体を一つのルート上で使用する場合、その組み合わせについても地理空間上にルート情報として組み入れ、そのパターンと同一または近似する起終点を有するルートであって、属性情報もまた近似する要素がある移動情報については、その移動手段の変更をトレースして情報を時系列で配信することができる。
【0076】
図8は、本技術のユースケースの別の例を模式的に示す図である。以下、
図7との相違点を中心に説明する。
図8では、集合体から得られた情報をもとに、テレビ番組とのCM連動機能を行うものである。提供内容としては、エリア内のテレビ視聴率、ラジオ聴取率等と移動状況とを組み合わせ、移動中の広告情報を移動者の属性や移動目的、移動経路等を踏まえて個別の移動者に併せて配信する、または特定の条件を満たす移動集団に対して同一の情報を提供するのがよい。
【0077】
具体的に配信される情報の例としては、移動ルート・位置情報に基づく電波放送(ラジオ・テレビ・衛星等)との連動がある(
図8のパターンD)。このパターンDでは、目的地や経路に合わせて、移動中の放送エリアの番組の広告や情報を差し替えて配信したり、目的地の放送エリアのコンテンツを移動中の放送エリアでも配信したりすることができる。
【0078】
別の例としては、移動ルート・位置情報に基づくケーブルテレビ等の放送との連動がある(
図8のパターンE)。
【0079】
また別の例としては、交通モードをまたぐ連続的コンテンツ配信とデジタルサイネージとの連動がある(
図8のパターンF)。すなわち、本例では、自動運転によりあらかじめ移動経路がわかる個別の車が、予めルートシェアにより分析した傾向と合致した移動特性を有する場合、またそれらの車が複数向かってくることが分かった場合、予めそれらの車に対して訴求力の高い広告をサイネージに表示し、リレー形式などで他のサイネージと連動させることができる。
【0080】
具体的には、上述したように、属性情報とルート情報との掛け合わせで、特定のルートと属性から得られた特異点を有するパターンには、特定の傾向・特性があることが把握できる。例えば、駐車場を付設する駅があるとし、その駅の近くにある保育園は、朝の特定時間帯に周辺から車が集中するという状況がある場合、ルート情報は個々の家から保育園を経由して駅の駐車場までのルート、属性情報は保育園とそれぞれの移動体に乗車する人数や他の移動から得られた家族構成などの属性情報がある。こうした状況を深層学習による関連付けで、予めルートシェアにより分析した傾向や、移動特性を把握できる。
【0081】
このパターンFは
図4のサービス3と対応しているが、さらに、複数のデジタルサイネージを連動させたリレー形式も可能である。
【0082】
図9は、本技術のユースケースのまた別の例を模式的に示す図であり、
図4のサービス2と対応している。共通の目的地に向かうことが判明したら、その時点で何人以上が目的地に来たら発給するクーポンをグループクーポンと呼ぶ。配布した人が全員来たら使えるようにしてもよいし、実際には来なくても目的地設定したら使えるようにしてもよいし、一定期間に一定以上が目的地や経由地に設定したら使えるようにしてもよく、グループクーポンの使用可否基準は広告主が任意に設定すればよい。
【0083】
図10は、デジタルサイネージとの連動の仕組みを模式的に示す図である。図示のように、デジタルサイネージを複数束ねているネットワークと連携することができる。移動空間内で特定のデバイスに限らず、様々なサービスを提供できる。
【0084】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0085】
1 ユーザ端末
11 位置情報取得手段
12 経路情報設定手段
13 通信手段
14 サービス提供手段
15 ディスプレイ
16 コンテンツ記憶手段
2 サービス提供装置
2A 経路共有サーバ
2B サービス管理サーバ
21 位置情報受信手段
22 経路情報受信手段
23 経路情報記憶手段
24 サービス提供手段
25 サービス記憶手段
60 再生装置