(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166030
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電子デバイス用封止剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20221025BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20221025BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221025BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C09K3/10 G
H05B33/04
H05B33/14 A
C08G59/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119777
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2019515678の分割
【原出願日】2018-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017240666
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】西出 勝則
(72)【発明者】
【氏名】金 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】竹中(笹野) 美香
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び透明性に優れる電子デバイス用封止剤を提供する。
【解決手段】封止剤は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、前記硬化性樹脂は、下記式(1)および下記式(3)で表されるシリコーン化合物とを含有し、電子デバイス用封止剤全体のヘイズが10%以下である。
R
1,R
6はアルキル基、X
1~X
4はアルキル基、又はエポキシ環等を有する基。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する電子デバイス用封止剤であって、
前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表されるシリコーン化合物と下記式(3)で表されるシリコーン化合物とを含有し、
電子デバイス用封止剤全体のヘイズが10%以下である
ことを特徴とする電子デバイス用封止剤。
【化1】
式(1)中、R
1は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X
1、X
2は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、若しくは、(2-4)で表される基を表す。ただし、X
1及びX
2のうち少なくとも一方は、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は、(2-4)で表される基を表す。
【化2】
式(2-1)~(2-4)中、R
2は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、式(2-3)中、R
3は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
4は、結合手又はメチレン基を表し、式(2-4)中、R
5は、水素又はメチル基を表す。
【化3】
式(3)中、R
6は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X
3、X
4は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、若しくは、(4-4)で表される基を表す。nは、1以上1000以下の整数である。ただし、X
3及びX
4のうち少なくとも一方は、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基を表す。
【化4】
式(4-1)~(4-4)中、R
7は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、式(4-3)中、R
8は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R
9は、結合手又はメチレン基を表し、式(4-4)中、R
10は、水素又はメチル基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れる電子デバイス用封止剤に関する。また、本発明は、該電子デバイス用封止剤を用いてなる有機EL表示素子用封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)表示素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた電子デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着や溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性にも優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
【0004】
有機薄膜太陽電池素子は、無機半導体を使用した太陽電池に比べ、コスト、大面積化、製造工程の容易さ等の点で優れており、種々の構成のものが提案されている。具体的には例えば、非特許文献1には、フタロシアニン銅とペリレン系色素の積層膜を使用した有機太陽電池素子が開示されている。
【0005】
これらの有機薄膜素子は、有機層や電極が外気に曝されると、その性能が急激に劣化してしまうという問題がある。従って、安定性及び耐久性を高めるために、有機薄膜素子を封止して大気中の水分や酸素から遮断することが不可欠となる。
有機薄膜素子を封止する方法としては、従来、内部に吸水剤を設けた封止缶によって封止する方法が一般的であった。しかしながら、封止缶により封止する方法では、電子デバイスを薄型化することが困難となる。そこで、封止缶を使用しない有機薄膜素子の封止方法の開発が進められている。
【0006】
特許文献1には、有機EL表示素子の有機発光材料層と電極とを、CVD法により形成した窒化珪素膜と樹脂膜との積層膜により封止する方法が開示されている。ここで樹脂膜は、窒化珪素膜の内部応力による有機層や電極への圧迫を防止する役割を有する。
【0007】
特許文献1に開示された窒化珪素膜で封止を行う方法では、有機薄膜素子の表面の凹凸や異物の付着、内部応力によるクラックの発生等により、窒化珪素膜を形成する際に有機薄膜素子を完全に被覆できないことがある。窒化珪素膜による被覆が不完全であると、水分が窒化珪素膜を通して有機層内に浸入してしまう。
有機層内への水分の浸入を防止するための方法として、特許文献2には、無機材料膜と樹脂膜とを交互に蒸着する方法が開示されており、特許文献3や特許文献4には、無機材料膜上に樹脂膜を形成する方法が開示されている。
【0008】
樹脂膜を形成する方法として、基材上に液状の硬化性樹脂組成物を塗布した後、該硬化性樹脂組成物を硬化させる方法がある。塗布方法としてインクジェット法等を用いれば、高速かつ均一に樹脂膜を形成することができる。硬化性樹脂組成物からなる電子デバイス用封止剤を基材に塗布する場合、塗布性の観点から封止剤の粘度を低粘度とする必要がある。電子デバイス用封止剤の粘度を調整する方法としては、電子デバイス用封止剤に有機溶剤を配合する方法や、配合する硬化性樹脂として分子量の低いものを用いることが考えられるが、これらの方法ではアウトガスを発生しやすくなる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-223264号公報
【特許文献2】特表2005-522891号公報
【特許文献3】特開2001-307873号公報
【特許文献4】特開2008-149710号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Applied Physics Letters(1986、Vol.48、P.183)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れる電子デバイス用封止剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該電子デバイス用封止剤を用いてなる有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する電子デバイス用封止剤であって、上記硬化性樹脂は、下記式(1)で表されるシリコーン化合物と下記式(3)で表されるシリコーン化合物とを含有し、電子デバイス用封止剤全体のヘイズが10%以下である電子デバイス用封止剤である。
【0013】
【0014】
式(1)中、R1は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、若しくは、(2-4)で表される基を表す。ただし、X1及びX2のうち少なくとも一方は、下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は、(2-4)で表される基を表す。
【0015】
【0016】
式(2-1)~(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、式(2-3)中、R3は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R4は、結合手又はメチレン基を表し、式(2-4)中、R5は、水素又はメチル基を表す。
【0017】
【0018】
式(3)中、R6は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。X3、X4は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、若しくは、(4-4)で表される基を表す。nは、1以上1000以下の整数である。ただし、X3及びX4のうち少なくとも一方は、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基を表す。
【0019】
【0020】
式(4-1)~(4-4)中、R7は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、式(4-3)中、R8は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表し、R9は、結合手又はメチレン基を表し、式(4-4)中、R10は、水素又はメチル基を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0021】
本発明者らは、末端に重合性基を有する分子鎖の短い特定のシリコーン化合物が低アウトガス性に優れることを見出した。しかしながら、このような末端に重合性基を有する分子鎖の短い特定のシリコーン化合物を用いた場合、得られる封止剤が基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性に劣るものとなるという問題があった。一方で末端に重合性基を有する分子鎖の長い特定のシリコーン化合物は、無機材料膜に対する濡れ広がり性が優れるものの、シリコーン鎖の切断によってアウトガスを発生させ易いという問題があった。そこで、末端に重合性基を有する分子鎖の短い特定のシリコーン化合物と末端に重合性基を有する分子鎖の長い特定のシリコーン化合物とを組み合わせて用いることを検討したが、得られる封止剤に濁りが生じることがあった。そこで本発明者らは鋭意検討した結果、各成分の種類や含有割合を調整する等によってヘイズを特定値以下とすることにより、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れる電子デバイス用封止剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の電子デバイス用封止剤は、インクジェット法により容易に薄膜化することができるものとなる。
【0022】
本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、上記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有する。上記式(1)で表されるシリコーン化合物を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤は、低アウトガス性に優れるものとなり、かつ、硬化物が耐衝撃性及び耐熱性に優れるものとなる。
【0023】
上記式(1)中、R1は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記R1は、炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0024】
上記式(1)中、X1、X2は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、上記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、若しくは、(2-4)で表される基を表す。ただし、X1及びX2のうち少なくとも一方は、上記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は、(2-4)で表される基を表す。
上記式(1)で表されるシリコーン化合物は、上記式(1)中のX1及びX2の両方が、それぞれ上記式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は、(2-4)で表される基である化合物であることが好ましく、それぞれ上記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される基である化合物であることがより好ましい。
【0025】
上記式(2-1)~(2-4)中、R2は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表す。上記R2は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であることが好ましく、ジメチレン基又はトリメチレン基であることがより好ましい。
【0026】
上記式(2-3)中、R3は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表す。上記R3は、水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、水素又はエチル基であることがより好ましい。
【0027】
上記式(2-3)中、R4は、結合手又はメチレン基を表す。上記R4は、結合手であることが好ましい。
【0028】
上記式(2-4)中、R5は、水素又はメチル基を表す。上記R5は、メチル基であることが好ましい。
【0029】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記式(1)で表されるシリコーン化合物の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は90重量部である。上記式(1)で表されるシリコーン化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が低アウトガス性及び基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性により優れるものとなる。上記式(1)で表されるシリコーン化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、更に好ましい下限は30重量部、特に好ましい下限は50重量部である。また、上記式(1)で表されるシリコーン化合物の含有量のより好ましい上限は70重量部である。
【0030】
上記硬化性樹脂は、上記式(3)で表されるシリコーン化合物を含有する。上記式(3)で表されるシリコーン化合物を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤は、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性に優れるものとなる。
【0031】
上記式(3)中、R6は、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記R6は、炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0032】
上記式(3)中、X3、X4は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、若しくは、(4-4)で表される基を表す。ただし、X3及びX4のうち少なくとも一方は、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基を表す。
上記式(3)で表されるシリコーン化合物は、上記式(3)中のX3及びX4の両方が、それぞれ上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基である化合物であることが好ましい。
【0033】
上記式(3)において、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基である場合の上記X3及び上記X4における、該式(4-1)、(4-2)、(4-3)、又は、(4-4)で表される基は、重合性基である。上記重合性基は、上記式(4-1)、(4-2)、又は、(4-3)で表される基であることが好ましい。
【0034】
上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量の好ましい下限は300g/mol、好ましい上限は5000g/molである。上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が低アウトガス性及び基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性により優れるものとなる。上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量のより好ましい下限は400g/mol、より好ましい上限は2000g/molである。
なお、上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量は、上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重量(g)を上記式(3)で表されるシリコーン化合物中に含まれる重合性基のモル数(mol)で除して求められる値である。
【0035】
上記式(3)中、nは、1以上1000以下の整数である。上記式(3)中のnがこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れるものとなる。上記式(3)中のnの好ましい下限は5、好ましい上限は20、より好ましい下限は7、より好ましい上限は18である。
【0036】
上記式(4-1)~(4-4)中、R7は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表す。上記R7は、炭素数1以上3以下のアルキレン基であることが好ましく、ジメチレン基又はトリメチレン基であることがより好ましい。
【0037】
上記式(4-3)中、R8は、水素又は炭素数1以上6以下のアルキル基を表す。上記R8は、水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、水素又はエチル基であることがより好ましい。
【0038】
上記式(4-3)中、R9は、結合手又はメチレン基を表す。上記R9は、結合手であることが好ましい。
【0039】
上記式(4-4)中、R10は、水素又はメチル基を表す。上記R10は、メチル基であることが好ましい。
【0040】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記式(3)で表されるシリコーン化合物の含有量の好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は20重量部である。上記式(3)で表されるシリコーン化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が低アウトガス性及び基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性により優れるものとなる。
特に、上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量が300g/mol以上である場合、上記硬化性樹脂100重量部中における上記式(3)で表されるシリコーン化合物の含有量の好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は10重量部である。また、上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量が300g/mol未満である場合、上記硬化性樹脂100重量部中における上記式(3)で表されるシリコーン化合物の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。なお、上記硬化性樹脂が上記式(3)で表されるシリコーン化合物として複数種の化合物を含有する場合、上記式(3)で表されるシリコーン化合物の重合性基当量は、数平均値を意味する。
【0041】
上記硬化性樹脂は、上記式(1)で表されるシリコーン化合物及び上記式(3)で表されるシリコーン化合物に加えて、接着性を向上させる等の目的で、その他の硬化性樹脂を含有してもよい。
上記その他の硬化性樹脂としては、上記式(1)及び上記式(3)で表される構造を有さないエポキシ化合物(以下、「その他のエポキシ化合物」ともいう)、上記式(1)及び上記式(3)で表される構造を有さないオキセタン化合物(以下、「その他のオキセタン化合物」ともいう)、上記式(1)及び上記式(3)で表される構造を有さない(メタ)アクリル化合物(以下、「その他の(メタ)アクリル化合物」ともいう)、及び、ビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0042】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。なかでも、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
上記脂環式エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル社製の脂環式エポキシ樹脂、新日本理化工業社製の脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記ダイセル社製の脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000、セロキサイド8000、サイクロマーM-100等が挙げられる。
上記新日本理化工業社製の脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、サンソサイザーEPS等が挙げられる。
上記脂環式エポキシ樹脂のなかでも、エポキシ基に含まれる以外のエーテル結合、及び、エステル結合を有さないものはアウトガスの発生を抑制する観点から好適である。エポキシ基に含まれる以外のエーテル結合、及び、エステル結合を有さない脂環式エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド3000、セロキサイド8000等が挙げられる。
これらのその他のエポキシ化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
上記その他のオキセタン化合物としては、例えば、3-(アリルオキシ)オキセタン、フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。これらのその他のオキセタン化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのその他の(メタ)アクリル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0045】
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
なかでも、低粘度で反応性が高いことから、上記その他の硬化性樹脂として、脂環式エポキシ樹脂、3-(アリルオキシ)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、及び、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタンからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0047】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記その他の硬化性樹脂の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は90重量部である。上記その他の硬化性樹脂の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性を向上させる等の効果により優れるものとなる。上記その他の硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は10重量部である。また、上記その他の硬化性樹脂の含有量のより好ましい上限は70重量部、更に好ましい上限は60重量部、特に好ましい上限は40重量部である。
【0048】
本発明の電子デバイス用封止剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0049】
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0050】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、式中、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0051】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0052】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0053】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0054】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0055】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0056】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0057】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ローディア社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ローディア社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
【0058】
上記熱カチオン重合開始剤としては、アニオン部分がBF4
-、PF6
-、SbF6
-、又は、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0059】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0060】
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0061】
上記アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0062】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤、King Industries社製の熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4等が挙げられる。
上記King Industries社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、CXC1612、CXC1821等が挙げられる。
【0063】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0064】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、BASF社製の光ラジカル重合開始剤、東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記BASF社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0065】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0066】
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0067】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる電子デバイス用封止剤の硬化反応が速くなりすぎず、作業性により優れるものとなり、硬化物をより均一なものとすることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0068】
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、N-(2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル)尿素、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、N,N’-ビス(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)尿素、N,N’-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-アジポアミド、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0069】
上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の熱硬化剤、味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤等が挙げられる。
上記大塚化学社製の熱硬化剤としては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤としては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0070】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱硬化剤の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量が30重量部以下であることにより、得られる電子デバイス用封止剤が保存安定性により優れるものとなり、かつ、硬化物が耐湿性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0071】
本発明の電子デバイス用封止剤は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の電子デバイス用封止剤の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0072】
上記増感剤としては、例えば、チオキサントン系化合物や、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0073】
上記増感剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなりすぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0074】
本発明の電子デバイス用封止剤は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の電子デバイス用封止剤と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0075】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤によるブリードアウトを抑制しつつ、得られる電子デバイス用封止剤の接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0077】
本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化遅延剤を含有してもよい。上記硬化遅延剤を含有することにより、得られる電子デバイス用封止剤のポットライフを長くすることができる。
【0078】
上記硬化遅延剤としては、例えば、ポリエーテル化合物等が挙げられる。
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、クラウンエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、クラウンエーテル化合物が好適である。
【0079】
上記硬化遅延剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5.0重量部である。上記硬化遅延剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用封止剤を硬化させる際のアウトガスの発生を抑制しつつ、遅延効果をより発揮できる。上記硬化遅延剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0080】
本発明の電子デバイス用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の電子デバイス用封止剤に塗膜の平坦性を付与することができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0081】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤、AGCセイミケミカル社製の表面改質剤等が挙げられる。
上記ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤としては、例えば、BYK-340、BYK-345等が挙げられる。
上記AGCセイミケミカル社製の表面改質剤としては、例えば、サーフロンS-611等が挙げられる。
【0082】
本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化物の透明性を阻害しない範囲で、素子電極の耐久性を向上させるために、封止剤中に発生した酸と反応する化合物又はイオン交換樹脂を含有してもよい。
【0083】
上記封止剤中に発生した酸と反応する化合物としては、酸と中和する物質、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が用いられる。
【0084】
上記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型、両イオン交換型のいずれも使用することができるが、特に塩化物イオンを吸着することのできる陽イオン交換型又は両イオン交換型が好適である。
【0085】
また、本発明の電子デバイス用封止剤は、必要に応じて、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0086】
本発明の電子デバイス用封止剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0087】
本発明の電子デバイス用封止剤のヘイズの上限は、10%である。上記ヘイズが10%以下であることにより、透明性に優れ、有機EL表示素子等に好適に用いることができる。上記ヘイズの好ましい上限は5%、より好ましい上限は1%である。
上記ヘイズは、全透過光に対する拡散透過光の比率を意味し、例えば、AUTOMATIC HAZE METER MODEL TC-III DPK(東京電色社製)等の分光計を用いて測定することができる。
上記ヘイズを測定する試料としては、封止剤をガラス等の透明な基板上にスピンコート等の方法を用いて実使用される厚みに塗布した後、硬化させたものが用いられる。電子デバイス用封止剤のヘイズは、例えば、スピンコート等の方法により、ガラス板上に10μm厚となるように封止剤を塗布した後、封止剤を硬化させ、得られた硬化物のヘイズを測定することで求められる。
また、電子デバイス用封止剤のヘイズは、含有する各成分の種類やその含有割合を調整すること等によって調整することができる。
【0088】
本発明の電子デバイス用封止剤は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限が5mPa・s、好ましい上限が200mPa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、本発明の電子デバイス用封止剤がインクジェット塗布性や塗布後の形状保持性により優れるものとなる。上記電子デバイス用封止剤の粘度のより好ましい下限は10mPa・s、より好ましい上限は80mPa・sである。
なお、インクジェットによる塗布時に本発明の電子デバイス用封止剤を加熱し、粘度を低減して塗布しても良い。
【0089】
本発明の電子デバイス用封止剤の硬化物の波長380nm以上800nm以下における光の全光線透過率の好ましい下限は80%である。上記全光線透過率が80%以上であることにより、有機EL表示素子等により好適に用いることができる。上記全光線透過率のより好ましい下限は85%である。
上記全光線透過率は、例えば、AUTOMATIC HAZE METER MODEL TC-III DPK(東京電色社製)等の分光計を用いて測定することができる。
また、上記全光線透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0090】
本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化物に紫外線を100時間照射した後の400nmにおける透過率が20μmの光路長にて85%以上であることが好ましい。上記紫外線を100時間照射した後の透過率が85%以上であることにより、透明性により優れるものとなって、発光の損失が小さく、かつ、色再現性により優れるものとなる。上記紫外線を100時間照射した後の透過率のより好ましい下限は90%、更に好ましい下限は95%である。
上記紫外線を照射する光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアークランプ等、従来公知の光源を用いることができる。
また、上記紫外線を100時間照射した後の透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0091】
本発明の電子デバイス用封止剤は、JIS Z 0208に準拠して、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度が100g/m2以下であることが好ましい。上記透湿度が100g/m2以下であることにより、例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子の製造に用いた場合、有機発光材料層に水分が到達することによるダークスポットの発生を抑制する効果により優れるものとなる。
また、上記透湿度の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0092】
更に、本発明の電子デバイス用封止剤は、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露したときに、硬化物の含水率が0.5%未満であることが好ましい。上記硬化物の含水率が0.5%未満であることにより、例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子の製造に用いた場合、硬化物中の水分による有機発光材料層の劣化を抑制する効果により優れるものとなる。上記硬化物の含水率のより好ましい上限は0.3%である。
上記含水率の測定方法としては、例えば、JIS K 7251に準拠してカールフィッシャー法により求める方法や、JIS K 7209-2に準拠して吸水後の重量増分を求める等の方法が挙げられる。
また、上記含水率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0093】
本発明の電子デバイス用封止剤を用いて電子デバイスを製造する方法としては、例えば、本発明の電子デバイス用封止剤を2枚の基材のうち少なくとも一方に塗布する工程と、塗布した電子デバイス用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程と、上記2枚の基材を貼り合わせる工程とを有する方法等が挙げられる。
【0094】
本発明の電子デバイス用封止剤を2枚の基材のうち少なくとも一方に塗布する工程において、本発明の電子デバイス用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子を製造する場合、塗布により形成される本発明の電子デバイス用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されない。即ち、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
また、本発明の電子デバイス用封止剤を塗布する方法としては、インクジェット法が好ましい。
【0095】
上記電子デバイスとして有機EL表示素子を製造する場合、本発明の電子デバイス用封止剤を塗布する基材(以下、一方の基材ともいう)は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように上記一方の基材に本発明の電子デバイス用封止剤を塗布すればよい。即ち、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止剤部を形成してもよい。
【0096】
また、上記積層体は、無機材料膜で被覆されていてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiNx)や酸化珪素(SiOx)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層からなるものであってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の電子デバイス用封止剤からなる樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体を被覆してもよい。
【0097】
上記電子デバイス用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程は、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記電子デバイス用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程を、上記2枚の基材を貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の電子デバイス用封止剤は、光照射及び/又は加熱してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、2枚の基材を貼り合わせる前の硬化の進行を抑制し、貼り合わせた後の接着強度をより高くすることができる。
【0098】
上記電子デバイス用封止剤を光照射により硬化させる場合、本発明の電子デバイス用封止剤は、300nm以上400nm以下の波長及び300mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下の積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
【0099】
上記光照射に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光カチオン重合開始剤や上記光ラジカル重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0100】
本発明の電子デバイス用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0101】
上記電子デバイス用封止剤を加熱により硬化させる場合、例えば、電子デバイスとして有機EL表示素子を製造する際の有機発光材料層を有する積層体へのダメージを低減させつつ充分に硬化させる観点から、加熱温度は50℃以上120℃以下であることが好ましい。
【0102】
上記2枚の基材を貼り合わせる工程において、2枚の基材を貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長い時間を費やすことなく、2枚の基材を貼り合わせる際の本発明の電子デバイス用封止剤中からより効率的に気泡を除去できる。
【0103】
本発明の電子デバイス用封止剤は、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れるため、特に有機EL表示素子用封止剤として好適に用いることができる。本発明の電子デバイス用封止剤を用いてなる有機EL表示素子用封止剤もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0104】
本発明によれば、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れる電子デバイス用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子デバイス用封止剤を用いてなる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0106】
(実施例1~16、比較例1~3)
表1~3に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1~16及び比較例1~3の電子デバイス用封止剤を作製した。ホモディスパー型撹拌混合機としては、ホモディスパーL型(プライミクス社製)を用いた。得られた各電子デバイス用封止剤を5cm角のガラス板上にスピンコーターを用いて10μm厚に塗布した後、LEDランプを用いて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して硬化物を得た。得られた硬化物について、分光計を用いて測定したヘイズを表1~3に示した。分光計としては、AUTOMATIC HAZE METER MODEL TC-III DPK(東京電色社製)を用いた。
なお、表中における、式(1)で表されるシリコーン化合物及び式(3)で表されるシリコーン化合物について、以下に詳述する。
「SIB1092.0」は、R1が全てメチル基であり、X1及びX2が上記式(2-2)で表される基(R2はジメチレン基)である式(1)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量191g/mol)である。
「X-22-163」は、R1が全てメチル基であり、X1及びX2が上記式(2-1)で表される基(R2はトリメチレン基)である式(1)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量200g/mol)である。
「X-22-164」は、R1が全てメチル基であり、X1及びX2が上記式(2-4)で表される基(R2はトリメチレン基、R5はメチル基)である式(1)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量190g/mol)である。
「オキセタニル基を有するシリコーン化合物A」は、R1が全てメチル基であり、X1及びX2が上記式(2-3)で表される基(R2はトリメチレン基、R3はエチル基、R4はメチレン基)である式(1)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量223g/mol)である。
「X-22-169AS」は、R6が全てメチル基であり、X3及びX4が上記式(4-2)で表される基(R7はジメチレン基)であり、nが8である式(3)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量500g/mol)である。
「X-22-163A」は、R6が全てメチル基であり、X3及びX4が上記式(4-1)で表される基(R7はトリメチレン基)であり、nが18である式(3)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量1000g/mol)である。
「X-22-173DX」は、R6が全てメチル基であり、X3及びX4のうち、一方がメチル基、他方が上記式(4-1)で表される基(R7はトリメチレン基)であり、nが60である式(3)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量4600g/mol)である。
「オキセタニル基を有するシリコーン化合物B」は、R6が全てメチル基であり、X3及びX4が上記式(4-3)で表される基(R7はトリメチレン基、R8はエチル基、R9はメチレン基)であり、nが7である式(3)で表されるシリコーン化合物(重合性基当量482g/mol)である。
【0107】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0108】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤について、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件における粘度を測定した。E型粘度計としては、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)を用いた。
【0109】
(低アウトガス性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤の硬化物の加熱時に発生するアウトガスを、以下に示すようにヘッドスペース法によるガスクロマトグラフにより測定した。
まず、各電子デバイス用封止剤100mgをアプリケーターにて300μmの厚さに塗工した。次いで、LEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して封止剤を硬化させた後、ヘッドスペース用バイアルに硬化させた封止剤硬化物を入れてバイアルを封止し、100℃で30分間加熱して、ヘッドスペース法により発生ガスを測定した。なお、実施例15で得られた封止剤については、紫外線を照射する代わりに80℃で1時間加熱することにより硬化させた。
発生したガスが300ppm未満であった場合を「○」、300ppm以上500ppm未満であった場合を「△」、500ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
【0110】
(濡れ広がり性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤を、インクジェット吐出装置を用いて、10ピコリットルの液滴量にてアルカリ洗浄した無アルカリガラス上に滴下し、滴下から5分後の無アルカリガラス上の液滴の直径を測定した。インクジェット吐出装置としては、マテリアルプリンターDMP-2831(富士フイルム社製)を用い、無アルカリガラスとしては、AN100(AGC社製)を用いた。
【0111】
(有機EL表示素子の表示性能)
(有機発光材料層を有する積層体が配置された基板の作製)
長さ25mm、幅25mm、厚さ0.7mmのガラスにITO電極を1000Åの厚さとなるように成膜したものを基板とした。上記基板をアセトン、アルカリ水溶液、イオン交換水、及び、イソプロピルアルコールにてそれぞれ15分間超音波洗浄した後、煮沸させたイソプロピルアルコールにて10分間洗浄し、更に、UV-オゾンクリーナにて直前処理を行った。UV-オゾンクリーナとしては、NL-UV253(日本レーザー電子社製)を用いた。
次に、直前処理後の基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、素焼きの坩堝にN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)を200mg入れ、別の素焼き坩堝にトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を200mg入れ、真空チャンバー内を、1×10-4Paまで減圧した。その後、α-NPDの入った坩堝を加熱し、α-NPDを蒸着速度15Å/sで基板に堆積させ、膜厚600Åの正孔輸送層を成膜した。次いで、Alq3の入った坩堝を加熱し、15Å/sの蒸着速度で膜厚600Åの有機発光材料層を成膜した。その後、正孔輸送層及び有機発光材料層が形成された基板を、タングステン製抵抗加熱ボートを有する別の真空蒸着装置に移し、真空蒸着装置内のタングステン製抵抗加熱ボートの1つにフッ化リチウム200mgを入れ、別のタングステン製抵抗加熱ボートにアルミニウム線1.0gを入れた。その後、真空蒸着装置の蒸着器内を2×10-4Paまで減圧してフッ化リチウムを0.2Å/sの蒸着速度で5Å成膜した後、アルミニウムを20Å/sの速度で1000Å成膜した。窒素により蒸着器内を常圧に戻し、10mm×10mmの有機発光材料層を有する積層体が配置された基板を取り出した。
【0112】
(無機材料膜Aによる被覆)
得られた積層体が配置された基板に13mm×13mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて該積層体全体を覆うように無機材料膜Aを形成した。
プラズマCVD法は、原料ガスとしてSiH4ガス及び窒素ガスを用い、各々の流量をSiH4ガス10sccm、窒素ガス200sccmとし、RFパワーを10W(周波数2.45GHz)、チャンバー内温度を100℃、チャンバー内圧力を0.9Torrとする条件で行った。
形成された無機材料膜Aの厚さは、約1μmであった。
【0113】
(樹脂保護膜の形成)
無機材料膜Aによる被覆後の基板に対し、実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用封止剤を、インクジェット吐出装置を使用して40℃にてパターン塗布した。インクジェット吐出装置としては、マテリアルプリンターDMP-2831(富士フイルム社製)を用いた。
その後、LEDランプを用いて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して、電子デバイス用封止剤を硬化させて樹脂保護膜を形成した。なお、実施例15で得られた封止剤については、紫外線を照射する代わりに80℃で1時間加熱することにより硬化させて樹脂保護膜を形成した。
【0114】
(無機材料膜Bによる被覆)
樹脂保護膜を形成した後、基板に12mm×12mmの開口部を有するマスクを設置し、プラズマCVD法にて該樹脂保護膜の全体を覆うように無機材料膜Bを形成して有機EL表示素子を得た。
プラズマCVD法は、上記「(無機材料膜Aによる被覆)」と同様の条件で行った。
形成された無機材料膜Bの厚さは、約1μmであった。
【0115】
(有機EL表示素子の発光状態)
得られた有機EL表示素子を、温度85℃、湿度85%の環境下で100時間暴露した後、3Vの電圧を印加し、有機EL表示素子の発光状態(ダークスポット及び画素周辺消光の有無)を目視で観察した。ダークスポットや周辺消光が無く均一に発光した場合を「○」、ダークスポットや周辺消光が認められた場合を「△」、非発光部が著しく拡大した場合を「×」として有機EL表示素子の表示性能を評価した。
【0116】
【0117】
【0118】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、低アウトガス性、基板又は無機材料膜に対する濡れ広がり性、及び、透明性に優れる電子デバイス用封止剤を提供することができる。また、本発明によれば、該電子デバイス用封止剤を用いてなる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。