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特開2022-166039肝内胆汁うっ滞および関連肝疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166039
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】肝内胆汁うっ滞および関連肝疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/745 20150101AFI20221025BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20221025BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20221025BHJP
   A61K 31/733 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K35/745
A61K35/742
A61K35/741
A61K31/733
A61P1/16 101
A61P17/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120558
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2018530858の分割
【原出願日】2016-12-14
(31)【優先権主張番号】62/266,771
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518151560
【氏名又は名称】メタボゲン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】メルスタム、ボー
(57)【要約】
【課題】
UDCA治療では、疾患重症度にかかわらずICPの生化学的マーカーがある程度改善されたが、掻痒の顕著な軽減および血清胆汁酸の著しい減少は重度のICP(胆汁酸濃度≧40μmol/L)患者に限って認められたことから、さらに効果的な治療が必要とされる。
【解決手段】
本発明は、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法に関する。また、そのような方法に使用するための組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法に使用するための、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物。
【請求項2】
前記使用が、前記被験体の掻痒症を治療するか、そのリスクを低減することを含む請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記肝内胆汁うっ滞が、妊娠性肝内胆汁うっ滞を含む請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの細菌株が少なくとも2つの細菌株を含み、前記少なくとも2つの細菌株が、胆汁酸脱抱合活性を有する第1の細菌株と、7-エピマー化活性を有する第2の細菌株とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの細菌株が少なくとも3つの細菌株を含み、前記少なくとも3つの細菌株が、胆汁酸脱抱合活性を有する第1の細菌株と、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)活性を有する第2の細菌株と、7β-HSDH活性を有する第3の細菌株とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記組成物が、硫酸塩還元活性を有する少なくとも1つの細菌株をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記胆汁酸脱抱合活性を有する前記細菌株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999である請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
7-エピマー化活性を有する前記細菌株が、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638である請求項1~4、6または7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
7α-HSDH活性を有する前記細菌株が、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285および/またはバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079である請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
7β-HSDH活性を有する前記細菌株が、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986である請求項5~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
硫酸塩還元活性を有する前記細菌株が、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187である請求項6~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む請求項1~3または5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む請求項1~3または5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記使用が、プレバイオティクスをさらに含む請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記プレバイオティクスがイヌリンである請求項18に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記被験体が哺乳動物である請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記被験体がヒトである請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物の治療有効量を前記被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法。
【請求項23】
前記組成物または肝内胆汁うっ滞または被験体が、請求項2~21のいずれか一項に定義される通りである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、硫酸塩還元活性を有する少なくとも1つの細菌株をさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物。
【請求項26】
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物。
【請求項27】
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)を含む組成物。
【請求項28】
デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)をさらに含む請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)株がビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999であり、前記バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)株がバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285であり、前記コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)株がコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986であり、前記バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)株がバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079であり、前記クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)株がクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638であり、および/または前記デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)株がデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187である請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、プレバイオティクス、好ましくはイヌリンをさらに含む請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医薬品に関する。さらに具体的には、本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクのある哺乳動物に対するプロバイオティクス介入のための方法および製品に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)は、妊娠の後期に、かゆみ(掻痒)および胎児合併症のかたちで現れる疾患である。ICPは最もよくみられる妊娠に特異的な肝疾患であり、早期分娩および子宮内死亡などの胎児の有害転帰のリスク増大と関連している。さらに、ICPは、子癇前症、甲状腺疾患、糖尿病および癌のリスク増大と関連している。次の因子によって、女性がICPを発症するリスクが増大する可能性がある。
-近親者がICPに罹患した。
-以前の妊娠でICPを発症した。
-双子、三つ子などを妊娠している(多胎妊娠)。
-肝損傷の病歴がある。
-体外受精(IVF)治療。
【0003】
ICPの診断基準は徐々に変化してきており、臨床的黄疸、掻痒の重症度および胆汁酸濃度の上昇がこれまでに含まれている。今日、ICPの診断のための最も適切な検査パラメータは、説明できない掻痒と相まった胆汁酸の上昇(≧10μmol/L)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICP患者に対して利用可能な薬理学的治療は、ウルソデオキシコール酸(UDCA)である。ICPを有する女性を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、UDCA治療の効果が検討された。130例の女性をUDCA治療、デキサメタゾン治療またはプラセボ治療に無作為に割り付けた。採用時および治療の3週間後に、掻痒と、胆汁うっ滞の生化学的マーカーとを分析した。また、胎児合併症も登録された。UDCA治療では、疾患重症度にかかわらずICPの生化学的マーカーがある程度改善されたが、掻痒の顕著な軽減および血清胆汁酸の著しい減少は重度のICP(胆汁酸濃度≧40μmol/L)患者に限って認められたことから、さらに効果的な治療が必要とされる。本発明は、この問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を含むが、これに限定されない肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクのある哺乳動物に対するプロバイオティクス介入のための方法、使用および製品(または組成物)に関する。
【0006】
本発明は、所望の特性を有する特定の細菌に基づく哺乳動物に対するプロバイオティクス介入のための方法、使用および製品(または組成物)に関する。
【0007】
本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクのある哺乳動物の血清胆汁酸濃度を調節するための方法を開示する。
【0008】
本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を有する哺乳動物の掻痒を軽減する方法を開示する。本発明はさらに、妊娠性肝内胆汁うっ滞を発症するリスクのある哺乳動物の掻痒を予防する方法を開示する。
【0009】
本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクのある哺乳動物の胎児のリスクを低減および/または予防するための方法に関する。
【0010】
本発明の第1の目的は、妊娠性肝内胆汁うっ滞(および本明細書の他の箇所に記載されている他の疾患)の治療に使用するための胆汁酸脱抱合/加水分解および/または7-エピマー化の能力を有する細菌、例えば、プロバイオティクス細菌を提供することである。いくつかの実施形態では、ともに前記能力を発揮する2つ以上の異なる細菌株が使用される。エピマー化は、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)による7α-ヒドロキシル基の酸化および7β-HSDHによる7-ケト官能性の立体特異的還元の2つの反応を含むことから、本発明の別の目的は、7α-HSDH酵素活性を有するものと、7β-HSDH酵素活性を有するものとの2つの異なるプロバイオティクス細菌株または種を選択して、7-エピマー化反応を得ることである。本発明のさらなる目的では、硫酸塩還元性のプロバイオティクス細菌も治療に使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明は、上述の能力をともに発揮するいくつかの細菌株の使用を含む。あるいは、単一の細菌株を使用してもよい。
【0011】
大部分の天然に存在する胆汁酸塩は、最も一般的にはグリシンまたはタウリンに抱合されている。このような抱合胆汁酸塩は、小腸に存在する場合、回腸に位置する頂端側ナトリウム依存性胆汁輸送体(ASBT)を介して能動的に再吸収される。脱抱合された胆汁酸は、このように能動的に再吸収されず、これらの一部は最終的に糞便中に排泄される。さらに、脱抱合された胆汁酸は、抱合胆汁酸よりも疎水性であるため、腸を通って再吸収されにくく、また糞便中への排泄が多くなる。言い換えれば、胆汁酸脱抱合(本明細書では胆汁酸加水分解とも呼ばれる)は、胆汁酸の腸肝再循環を減少させ、それにより、例えば胆汁酸の血清濃度または血漿濃度を含む総胆汁酸プールを減少させる。グリシン抱合体は、一般に、ヒト胆汁中にタウリン抱合体よりも高い割合(3:1)で存在する。したがって、いくつかの態様では、本発明は、加水分解酵素活性を有する細菌株または種の投与を含む。いくつかの実施形態では、細菌株の加水分解酵素または胆汁酸脱抱合の活性は、例えばタウリン抱合体よりもグリシン抱合体に対して高い親和性を有する場合がある。したがって、理論に束縛されることを望むものではないが、胆汁酸脱抱合を達成または刺激して、前記胆汁酸の再吸収を減少させるか排泄を増加させ、結果として胆汁酸の血清濃度の低下をもたらす細菌株の能力と考えられている。このため、この活性を有する株に、血清胆汁酸濃度の上昇を特徴とする疾患または障害に対する治療的有用性が認められる。
【0012】
いくつかの態様では、加水分解細菌株(または胆汁酸脱抱合活性を有する株)は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999の株を含んでもよい。
【0013】
本発明の別の目的では、例えば、ビフィズス菌(または他の細菌)の活性を増強するプレバイオティクスとともに、加水分解ビフィズス菌(または本明細書の他の箇所に記載されている胆汁酸脱抱合/加水分解活性を有する他の細菌種または株)を哺乳動物に投与してもよい。プレバイオティクスは、限定するものではないが、イヌリン、デンプン、フラクトオリゴ糖(FOS)またはガラクトオリゴ糖(GOS)であり得る。
【0014】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、しばらくの間、ICPの治療に使用されてきた。ウルソデオキシコール酸の吸収は、その難溶性のために遅く、不完全であり、他の胆汁酸の吸収を競合的に阻害する。いくつかの種の細菌は、7-エピマー化反応によって、ケノデオキシコール酸をウルソデオキシコール酸に変換することができる。このため、ウルソデオキシコール酸を添加する代わりに、細菌の酵素活性と胆汁酸の組成物を変換する能力とを利用する。これにより、例えば、血流中の胆汁酸の量が減少する。また、リトコール酸の産生量が減少する可能性がある。エピマー化には、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)による7α-ヒドロキシル基の酸化および7β-HSDHによる7-ケト官能性の立体特異的還元という2つの反応が含まれる。
【0015】
7-エピマー化能を有する細菌株には、限定するものではないが、クロストリジウム(Clostridium)、例えば、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)、例えば、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638などの細菌が含まれる。本発明の別の目的では、7β-HSDHによる7-ケト官能性の立体特異的還元が可能なものと、7α-HSDH酵素活性を有する他のものとの2つの異なる細菌種を選択してもよい。7α-HSDH酵素活性を有するプロバイオティクス細菌株の非限定的な例には、バクテロイデス(Bacteroides)の種、例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285)およびバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)(例えば、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079)が挙げられ、7β-HSDH酵素活性を有する株の非限定的な例には、コリンゼラ(Collinsella)の種、例えばコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)(例えば、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986)が挙げられる。
【0016】
加水分解細菌株の投与のために、さらに多くの胆汁酸が脱抱合型になって、遊離タウリン濃度の増大が起こることがある。したがって、本発明は、硫酸塩還元細菌を投与し、それによってタウリンの増加の有害な影響を回避することをさらなる目的とする。そのような硫酸塩還元細菌には、限定するものではないが、デスルホビブリオ(Desulfovibrio)の種、例えば、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)(例えば、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187)が挙げられる。いくつかの実施形態では、そのような硫酸塩還元細菌の使用が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明は、一般に、肝内胆汁うっ滞を治療または予防(リスクを低減)するためのプロバイオティクス細菌株の使用に関する。そのような治療は、胆汁酸脱抱合(または加水分解)活性および/または7-エピマー化活性を有する1つ以上の細菌株(または種)の選択に基づく。好ましくは、治療法に使用される1つ以上の株は、同じ株中にともに存在するか株の組合せによって提供される胆汁酸脱抱合および7-エピマー化活性の両方を有する。そのような1つ以上の株を使用して、本明細書の他の箇所に記載されている他の疾患を治療または予防(リスクを低減)することができる。そのような治療的処置は、一般に、前記細菌株が血清胆汁酸濃度を調節し、好ましくは低下させる能力に基づく。したがって、胆汁酸濃度、例えば、血清胆汁酸濃度などの体液胆汁酸濃度を調節する(例えば、低下させる)方法も提供される。
【0018】
本発明の上記および他の態様は、本明細書に提供される説明および方法に関して、ここでさらに詳細に記載される。本発明は、様々な形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0019】
本明細書中の本発明の説明に使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを目的とするものではない。
【0020】
本発明の実施形態の説明で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明白に示されていない限り、複数形も含むことが意図されている。また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連する列挙された項目のうち1つ以上の任意およびすべての可能な組合せを指し、包含する。
【0021】
さらに、化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す際に本明細書で使用される「約」という用語は、特定量の20%、10%、5%、1%、0.5%、さらには0.1%の変動を指す。
【0022】
ある範囲が使用される(例えば、xからyまでの範囲)場合、測定可能な値が約xから約yの範囲、またはその中の任意の範囲、例えば約xから約yなどに収まることを意味する。
【0023】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、記載された特徴、整数、工程、操作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、例えば、指定されたものを超えて有効成分または成分を含有せず、例えば、それらの有効成分または成分からなる。したがって、例えば、特定の細菌株を含む組成物が本明細書に記載されている場合、いくつかの実施形態では、組成物はそれらの細菌株からなり、他の細菌株を含有しない。他の実施形態では、そのような組成物は、さらなるまたは追加の有効成分または成分を含有しない。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書で使用される「有効量」または投与量は、治療効果および/または有益な効果であり得る所望の効果を生じるのに十分な量の本発明の細菌組成物を指す。有効量または投与量は、被験体の年齢、全身状態、治療される症状の重症度、投与される特定の組成物、治療の期間、任意の同時治療の性質、使用される薬学的に許容される担体ならびに当業者の知識および専門知識の範囲内の類似の因子によって変化する。適宜、個々の場合の「有効量」または投与量は、関連する文書および文献を参照して、および/または日常的な実験を用いて、当業者によって決定され得る。
【0027】
用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療する(treatment of)」(およびそれらの文法的変形)は、被験体の症状の重症度が軽減され、少なくとも部分的に軽減または改善され、および/または少なくとも1つの臨床症状のある程度の軽減、緩和または低減が達成され、および/または疾患または障害の進行が遅延することを意味する。
【0028】
本明細書の他の箇所の開示から明らかなように、本発明の方法および使用は、疾患のリスクの低減または疾患の予防ならびに疾患の能動的治療(例えば、既存の疾患の治療)に適している。したがって、予防的治療も本発明に包含される。
【0029】
このような予防的(または保護的)側面は、健常者または正常な被験体もしくはリスクのある被験体に都合よく実施することができ、完全な予防および顕著な予防の両方を含み得る。同様に、顕著な予防は、治療が実施されない場合に予測される重症度または症状と比較して、疾患の重症度または疾患の症状が低減する(例えば、測定可能または有意に低減する)シナリオを含み得る。
【0030】
本明細書で使用される「治療有効」量は、被験体を(本明細書に定義されるように)治療するのに十分な量である。当業者は、何らかの便益が被験体に提供される限り、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「調節する(modulating)」、「調節する(modulate)」、「調節する(modulates)」またはそれらの文法的変形は、少なくとも1つの細菌、例えば、プロバイオティクス細菌、種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与し、それによって成分の量または濃度を増加または減少させることによって、例えば、被験体の体液(例えば、血液、血清など)中の成分の量または濃度を変化させることを意味する。体液、例えば、血液または血清、胆汁酸濃度が調節される本発明の実施形態では、好ましくは胆汁酸の量または濃度が減少または低下する。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「増加する(increase)」、「増加する(increasing)」、「増加した(increased)」、「比較的高い(higher)」、「増強する(enhance)」、「増強した(enhanced)」、「増強する(enhancing)」および「増強する(enhancement)」(およびそれらの文法的変形)は、上昇、例えば、被験体の体液(例えば、血液、血清など)中の成分の量または濃度の上昇を表す(例えば、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、350%、300%、350%、400%、450%、500%以上)。この発現、量または濃度の増加は、例えば、被験体の体液中の成分の量または濃度と、少なくとも1つの細菌、例えば、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌、種または株を含む組成物の治療有効量が投与されていない対照被験体の体液中の同じ成分の量または濃度とを比較することによって観察することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「減少する(reduce)」、「減少した(reduced)」、「減少する(reducing)」、「減少する(reduction)」、「低下する(diminish)」、「抑制する(suppress)」および「減少する(decrease)」(およびそれらの文法的変形)は、例えば、本明細書に記載の対照被験体と比較した場合の被験体の体液(例えば、血液、血清など)中の成分の量または濃度の減少を表す。したがって、量または濃度のこの減少は、例えば、被験体の体液中の成分の量または濃度と、本明細書に記載の少なくとも1つのプロバイオティクス細菌種または株を含む組成物の治療有効量が投与されていない対照被験体の体液中の同じ成分の量または濃度とを比較することによって観察することができる。本発明の好ましい実施形態では、例えば、対照被験体と比較して、被験体の体液中の胆汁酸濃度(例えば、血清胆汁酸濃度)の低下が得られる。
【0034】
適切な対照被験体は、当業者によって容易に識別され、治療されていない被験体またはプラセボ治療された被験体(またはその集団)を含み得るか、治療前(例えば、その被験体の「ベースライン」濃度との比較)など、比較的早い時点で測定された同一の個々の被験体の特定のパラメータの濃度、例えば、胆汁酸濃度を含み得る。好ましくは、適切な対照濃度または値と比較した際に、(適宜)増加または減少は有意であり、例えば確率値≦0.05で、例えば臨床的にまたは統計的に有意である。
【0035】
本発明の「被験体」には、肝内胆汁うっ滞(または本明細書の他の箇所に記載されている本発明による治療のための任意の他の疾患または障害)を有するか罹患しやすい任意の動物が含まれる。いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物であり得る。哺乳動物の被験体には、限定するものではないが、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、ゴリラ、サル、ヒヒおよびチンパンジーなど)、イヌ、ネコ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなど、および実験動物(例えば、ラット、モルモット、マウス、スナネズミ、ハムスターなど)が含まれる。好適な被験体には、雄雌ならびに胚(例えば、子宮内(in utero)または卵内(in ovo)または胎児)、乳児、若年者、青少年、成人および高齢者を含むあらゆる年齢の被験体が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の被験体はヒトである。代表的な実施形態では、被験体はヒトの女性である。他の代表的な実施形態では、被験体は、妊娠したヒトの女性、および/または肝内胆汁うっ滞(または本明細書に記載の他の疾患または障害)から有害な影響を受ける可能性がある被験体の胎児である。
【0036】
本発明の方法の「被験体」または「必要とする被験体」は、胆汁うっ滞、例えば、肝外胆汁うっ滞または肝内胆汁うっ滞を有することが分かっているか、有するか発症するリスクがあることが疑われる被験体であり得る。代表的な実施形態では、被験体または必要とする被験体は、妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)を有することが分かっているか、有するか発症するリスクがあることが疑われる被験体であり得る。また、被験体またはそれを必要とする被験体は、掻痒(特に、肝内胆汁うっ滞、例えば、ICPの症状として生じる掻痒)を有することが分かっているか、有することが疑われるか、発症するリスクがある被験体であり得る。いくつかの実施形態では、被験体または必要とする被験体は、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患を有することが分かっているか、有することが疑われるか、発症するリスクがある被験体であり得る。
【0037】
また、本発明の方法および使用は、上記疾患の症状または副作用、例えば肝内胆汁うっ滞またはICP(または実際には本明細書に記載の他の疾患)の症例の掻痒を治療、軽減(低減または緩和)または予防(リスクを低減)するために使用することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、被験体または必要とする被験体は、肝内胆汁うっ滞、特に妊娠性肝内胆汁うっ滞を有することが分かっているか、有することが疑われるか、発症するリスクがある被験体である。さらに一般的には、本発明の方法は、胆汁酸濃度の変化、好ましくは増加、特に、血清胆汁酸濃度、例えば、≧10μmol/L(例えば10~39μmol/L)、または≧40μmol/L(例えば40~79μmol/L)、または≧80μmol/Lの血清胆汁酸濃度に関連するか、それを特徴とする任意の疾患を治療するか、そのリスクを低減するために使用することができる。いくつかの実施形態では、≧10μmol/Lおよび<40μmol/Lの血清胆汁酸濃度を有する被験体が好ましい。
【0039】
本明細書で使用される場合、組成物、治療剤または既知の薬物(例えば、プレバイオティクス)と本発明の細菌組成物との「同時投与」または「併用投与」という用語は、既知の薬物および細菌種または株がともに治療効果を有するような時間に、既知の薬剤または薬物に加えて、本発明の1つ以上の細菌種または株を投与することを意味する。場合によっては、この治療効果は相乗的である。そのような同時投与は、本発明の細菌組成物の投与に関して、既知の薬物の同時(すなわち、同じ時期に、同じ時期に並行して)、事前またはその後の投与(例えば、順次)を含むことができる。また、このような同時投与または併用投与は、別個に(例えば、少なくとも約2時間以上空けて)、順次に(例えば、約2時間以内、例えば、約15秒以内、30秒以内、45秒以内、1分以内、2分以内、3分以内、4分以内、5分以内、6分以内、7分以内、8分以内、9分以内、10分以内、11分以内、12分以内、13分以内、14分以内、15分以内、16分以内、17分以内、18分以内、19分以内、20分以内、21分以内、22分以内、23分以内、24分以内、25分以内、26分以内、27分以内、28分以内、29分以内、30分以内、35分以内、40分以内、45分以内、50分以内、55分以内、60分以内、65分以内、70分以内、75分以内、80分以内、85分以内、90分以内、95分以内、100分以内、105分以内、110分以内、115分以内など、およびその中の任意の範囲または値)および/または同じ時期に並行して(例えば、同時に)様々な投与経路により本発明の化合物(例えば、種の細菌株)を投与して、有効量または投与量を達成することを指す。当業者であれば、本発明の特定の薬物および細菌組成物の投与の適切な実施時期、順序および投与量を決定することは困難ではない。
【0040】
「プロバイオティクス」は、適切な量で投与すると、宿主に健康上の便益を与える生きた微生物である。
【0041】
妊娠性肝内胆汁うっ滞(ICP)は、通常、妊娠の第3トリメスターに発症する。ICPは、特に手足に(発疹がないことが多い)重度の掻痒を引き起こすことがあるが、母親の長期的な健康にとって懸念されることはめったにない。しかし、早産、胎児仮死、出産中の胎便吸引による呼吸困難(例えば、胎便吸引症候群)、さらに、子宮内死亡または死産などの重篤な合併症を胎児に引き起こす可能性がある。したがって、本発明の方法および使用は、胎児のそのような合併症を治療するか、そのリスクを低減するとともに、母親のICPおよびその症状を治療するか、そのリスクを低減することができる。以前にICPを発症した女性は、その後の妊娠中にICPを発症するリスクが高い。また、ICPに罹患した親族を有する女性もICPを発症するリスクが高い。ICP発症に関連する他の危険因子には、多胎妊娠、肝損傷の病歴および体外受精(IVF)治療がある。そのような女性が、本発明に従って治療することができる被験体または必要とする被験体(例えば、リスクのある被験体)の別の例である。
【0042】
ICPの診断基準は徐々に変化してきており、臨床的黄疸、掻痒の重症度および一般に血液中、例えば、血清または血漿中の胆汁酸濃度の上昇がこれまでに含まれている。今日、ICPの診断のための最も適切な検査パラメータは、説明できない掻痒と相まった胆汁酸の上昇(≧10μmol/L)である。スウェーデンの前向きコホート試験では、ICPの発症率が1.5%であることが確認された。軽度のICP(ICP患者の81%)は胆汁酸濃度<40μmol/L(ただし≧10μmol/L)として定義することができる。重度のICP(ICP患者の19%)は胆汁酸濃度≧40μmol/Lとして定義することができ、これはまた、胎児合併症の比率の高さと関連する。胎児合併症の確率は、1μmol/Lの総胆汁酸増加あたり1%~2%増加した。本発明の方法により、任意の重症度のICPを治療することができる。例えば、好ましい実施形態では、上記で定義した軽度のICPが治療される。他の実施形態では、上記で定義した重度のICPが治療される。
【0043】
第3トリメスターでは、妊娠ホルモン、特にプロゲステロンが筋肉組織を弛緩させ、出産前に産道の準備を整える。これはまた、胆汁を貯蔵する目的を有する胆嚢の適切な機能に影響を及ぼすことがある。
【0044】
胆汁酸/胆汁酸塩は、消化酵素を活性化し、脂肪および脂溶性ビタミンを可溶化するのに重要な役割を果たし、肝臓、胆道および腸の疾患に関与する。胆汁酸は、肝臓内で多段階の多臓器(multiorganelle)経路によって合成される。胆汁酸塩は、肝細胞によって細管に排泄されて胆汁を形成する。細管が左右の肝管に流出し、胆汁は胆嚢に流入する。胆汁は胆嚢から放出され、十二指腸に移動し、そこで脂肪の代謝および分解に寄与する。
【0045】
一般的な胆汁酸は、ステロール環上のヒドロキシル基の数および配向の点で主に異なる。一次胆汁酸という用語は、肝臓により新たに合成されたものを指す。ヒトでは、一次胆汁酸は、コール酸(3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5β-コラン酸)(「CA」)およびケノデオキシコール酸(3α,7α-ジヒドロキシ-5β-コラン酸)(「CDCA」)を含む。腸内細菌によるこれらの胆汁酸の脱ヒドロキシル化は、疎水性の高い二次胆汁酸、デオキシコール酸(3α,12α-ジヒドロキシ-5β-コラン酸)(「DCA」)およびリトコール酸(3α-ヒドロキシ-5β-コラン酸)(「LCA」)を産生する。これらの4つの胆汁酸CA、CDCA、DCAおよびLCAは、一般に、ヒトの胆汁酸塩プールの99%超を構成する。肝臓によって代謝された二次胆汁酸は、時に、三次胆汁酸と呼ばれる。
【0046】
ケト胆汁酸は、結腸細菌による胆汁酸ヒドロキシル基、特に7-ヒドロキシル基の酸化の結果として、人体内で二次的に産生される。しかし、ケト胆汁酸は、肝臓によって、対応するαまたはβ-ヒドロキシ胆汁酸に急速に還元される。例えば、CDCAの対応するケト胆汁酸は、7-ケトリトコール酸であり、対応するβ-ヒドロキシ胆汁酸によるその還元生成物の1つが、三次胆汁酸であるウルソデオキシコール酸(3α-7β-ジヒドロキシ-5β-コラン酸)(「UDCA」)である。
【0047】
クマの胆汁の主成分であるUDCAは、70年強にわたり、多くの種類の肝疾患に対する治療および予防のための医薬品として使用されてきた。その医薬的用途には、放射線透過性胆石の溶解、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎およびC型肝炎の治療が含まれる。他の哺乳類では、ラットおよびマウスにみられる6β-ヒドロキシル基を含有する胆汁酸は、ムリコール酸として知られており、ブタによって産生される6α-ヒドロキシ胆汁酸は、ヒオコール酸およびヒオデオキシコール酸と称される。水生哺乳動物の23-ヒドロキシ胆汁酸は、フォセコール酸(phocecholic acid)およびフォセデオキシコール酸(phocedeoxycholic acid)として知られている。
【0048】
典型的には、ヒト胆汁中に分泌される天然に存在する胆汁酸塩の99%超が抱合される。抱合体は、第2の有機置換基(例えば、グリシン、タウリン、グルクロン酸塩、硫酸塩またはまれに他の置換基)が、エステル、エーテルまたはアミド連結を介して、側鎖カルボン酸または環ヒドロキシル基の1つに結合している胆汁酸である。抱合胆汁酸は、遊離胆汁酸よりも細胞傷害性が低い。
【0049】
小腸に放出される約95%の胆汁酸塩が能動的に再吸収される。胆汁酸塩の再吸収、特に抱合胆汁酸の胆汁酸塩の再吸収は、腸細胞の刷子縁膜に存在する頂端側ナトリウム依存性胆汁輸送体(ASBT)を介して起こる。胆汁酸塩は、側底膜に到達すると、血液中に輸送される。わずかな割合の胆汁酸塩は能動的に再吸収されず、腸内細菌叢によって脱抱合された後に、吸収されるか二次胆汁酸であるデオキシコール酸塩(DCA、コール酸塩から)ならびにリトコール酸塩およびウルソデオキシコール酸塩(LCAおよびUDCA、ケノデオキシコール酸塩から)に変換される。二次胆汁酸は、受動的に吸収されるか、糞便中に排泄される。吸収された一次胆汁酸および二次胆汁酸ならびに胆汁酸塩は肝臓に戻され、そこで全部ではないが大部分が肝細胞に能動的に輸送される。肝臓に入ると、胆汁酸は再抱合され、次いで、新たに合成された胆汁酸塩とともに再分泌される。この全体的な過程は、腸肝循環と呼ばれるものの1サイクルを構成する。腸管腔では、胆汁酸濃度が変化し、遠位腸内で再摂取の大部分が起こる。胆汁酸/胆汁酸塩は腸内細菌叢の増殖を変化させる。胆汁酸プールは約2~4gの胆汁酸を含有し、このプールは腸肝循環を介して毎日約6~10回再循環される。総胆汁酸塩プールのうち、約0.2~0.6gが毎日糞便中に排泄される。この胆汁酸塩の失われた部分が、コレステロールからの肝臓の新たな胆汁酸合成を介して補充される。
【0050】
本発明は、ある種の細菌の組合せが血清胆汁酸濃度を低下させ、妊娠性肝内胆汁うっ滞に罹患している女性の掻痒を緩和することができるという原理に基づく。したがって、本発明は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を含むが、これに限定されない肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクがあるか、有することが疑われる哺乳動物に対するプロバイオティクス介入のための方法、使用および製品に関する。また、本明細書の他の箇所に記載されている他の疾患の治療または予防も提供される。本明細書の発明は、様々な方法、形態および実施形態で実施することができ、本明細書に記載されるものに限定されない。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、妊娠性肝内胆汁うっ滞を発症するまたは有するリスクがあるか、有することが疑われる哺乳動物または被験体を含むが、これらに限定されない被験体、例えば、好ましくは肝内胆汁うっ滞を有する哺乳動物の血清胆汁酸濃度を調節する(例えば、低下させる)方法および掻痒または掻痒のリスクを治療または低減するための方法が提供される。
【0052】
一実施形態では、プロバイオティクス細菌が、前記被験体、例えば哺乳動物に投与される。胆汁酸脱抱合/加水分解および7-エピマー化の能力を有するプロバイオティクス細菌が、好ましくは、妊娠性肝内胆汁うっ滞の治療に使用される。関連する実施形態では、プロバイオティクス細菌は、胆汁酸脱抱合/加水分解および/または7-エピマー化の能力を有する1つの細菌株もしくは種またはともに上記の能力を発揮もしくは提供するいくつかの細菌株もしくは種の組合せ(すなわち、2つ以上、例えば、2、3、4、5、6種などの細菌種または株)を含むことができる。
【0053】
本明細書の他の箇所に記載されているように、脱抱合された胆汁酸は、ASBTによって能動的に再吸収されず、これらの一部が最終的に糞便中に排泄される。さらに、脱抱合された胆汁酸は、抱合胆汁酸よりも疎水性であるため、腸を通って再吸収されにくく、また糞便中への排泄が多くなる。言い換えれば、胆汁酸脱抱合は、胆汁酸の腸肝再循環を減少させ、それによって総胆汁酸プールを減少させる。ウルソデオキシコール酸(UDCA)の吸収は、難溶性のために遅く、不完全であり、他の胆汁酸の吸収を競合的に阻害する。いくつかの種の細菌は、7-エピマー化反応によって、ケノデオキシコール酸をウルソデオキシコール酸に変換することができる。エピマー化には、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)による7α-ヒドロキシル基の酸化および7β-HSDHによる7-ケト官能性の立体特異的還元という2つの反応が含まれる。
【0054】
一実施形態では、プロバイオティクス細菌株の組合せは、胆汁酸脱抱合/加水分解の能力を有する1つの株と、7-エピマー化の能力を有する別の株とを含むことができる。いくつかの実施形態では、加水分解細菌株は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999を含むことができる。グリシン抱合体は一般に、ヒト胆汁中ではタウリン抱合体よりも高い割合で存在し(3:1)、したがって、いくつかの実施形態では、細菌株の胆汁酸脱抱合/加水分解活性は、例えば、タウリン抱合体よりもグリシン抱合体に対する方が高い親和性または活性を有する場合がある。いくつかの実施形態では、7-エピマー化酵素活性を有する細菌株は、クロストリジウム(Clostridium)、例えば、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)、例えば、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638を含むことができる。
【0055】
別の実施形態では、前記プロバイオティクス細菌株の組合せは、胆汁酸脱抱合/加水分解の酵素活性を有する1つの株および/または種と、7-エピマー化酵素活性を提供する2つ以上の株および/または種、例えば、7α-HSDHの酵素活性を有する別の株および/または種および7β-HSDHの酵素活性を有するさらに別の株および/または種とを含むことができる。胆汁酸ヒドロキシル基のエピマー化は、α型からβ型へ(またはその逆)の立体化学の可逆的変化である。本発明の文脈では、7-エピマー化活性は、CDCAのUDCAへの可逆的変化をもたらすことができる。HSDHによる胆汁酸ヒドロキシル基の可逆的酸化および還元の程度は、部分的には、腸内環境の酸化還元電位に依存する。7α-HSDHによる酸化を促進する高い酸化還元電位が粘膜表面上に見出され、7β-HDSHによる還元を促進する低い酸化還元電位が腸管腔で見出される。7-エピマー化反応を得るために2つの異なる株(7α-HSDH酵素活性を有するものと7β-HDSH酵素活性を有するもの)を使用する場合、様々な酸化還元電位を用いる利点が利用される。いくつかの実施形態では、加水分解細菌株/種は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999を含むことができる。いくつかの実施形態では、7α-HSDH酵素活性を有する例示的な細菌種または株は、バクテロイデス(Bacteroides)、例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285およびバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、例えば、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079を含むことができる。コリンゼラ(Collinsella)、例えば、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)、例えば、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986は、7β-HSDH酵素活性を有する株または種の非限定的な例である。
【0056】
いくつかの実施形態では、加水分解細菌株/種の投与のために、さらに多くの胆汁酸が脱抱合型になって、遊離タウリン濃度の増大が起こる可能性がある。いくつかの病原菌は、毒性の高い硫化水素、HSにタウリンを代謝する独自の能力を有する。したがって、本発明のさらなる実施形態では、硫酸塩還元細菌を投与して、そのような病原菌の代謝活性を相殺し、放出されたタウリンの負の影響を回避することができる。デスルホビブリオ(Desulfovibrio)、例えば、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)、例えば、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187は、硫酸塩還元能を有する株の一例である。
【0057】
本発明の一実施形態では、プロバイオティクス細菌株/種の組合せの非限定的な例は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、バクテロイデス(Bacteroides)およびコリンゼラ(Collinsella)、またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)およびクロストリジウム(Clostridium)であり得る。適切な細菌の例には、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)のうち1つ以上もしくは全種(例えば、2つまたは3つ)またはビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)のうち1つ以上もしくは全種(例えば、2つまたは3つ)が挙げられる。また、適切な細菌の例には、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)のいずれかまたは両方が挙げられる。これらの組合せのいずれも、デスルホビブリオ菌(Desulfovibrio bacteria)、例えば、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)をさらに含んでもよい。
【0058】
上記の組合せに使用される株の好ましい例は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638またはデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187のうち1つ以上または全種(例えば、2つまたは3つまたは4つ)である。
【0059】
本発明の一実施形態では、プロバイオティクス細菌株/種の組合せの非限定的な例は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187であり得る。本発明のさらなる実施形態では、プロバイオティクス細菌の組合せの非限定的な例は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む。本発明のさらに別の実施形態では、プロバイオティクス細菌の組合せは、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む。他の例は、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を用いないこれらの組合せとなる。
【0060】
細菌株または種の上記の組合せを含む組成物または製品または製剤またはキットは、本発明のさらに別の態様を提供する。そのような組成物は、医薬組成物または栄養組成物の形態をとってもよい。いくつかの例示的な組成物が実施例に提供される。
【0061】
本発明の関連する実施形態では、ビフィズス菌(または上記のような他の細菌)は、ビフィズス菌(または他の細菌)の活性を増強する可能性があるプレバイオティクスとともに哺乳動物に投与されてもよい。プレバイオティクスにはイヌリンを含めることができるが、これに限定されない。プレバイオティクスの他の例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0062】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌株または株の組合せは、ICPを発症するリスクのある哺乳動物(または被験体)に使用することができる。危険因子には、ICPの以前の発症、ICPに罹患した親族(すなわち、遺伝因子)、多胎妊娠、肝損傷の病歴および体外受精(IVF)治療が挙げられる。いくつかの実施形態では、投与は、約1、2または3回/日であってよく、哺乳動物が妊娠した際に治療が開始されてもよい。前記哺乳動物がICPを発症するリスクがある場合、哺乳動物が妊娠を予定している際に投与を開始することもできる。別の実施形態では、投与は、約1、2または3回/日であってよく、第2トリメスター(妊娠の約13週)に治療が開始されてもよい。
【0063】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌株または株の組合せは、ICPを有する哺乳動物(または被験体)に使用することができる。いくつかの実施形態では、治療群は、10μmol/L(または40μmol/Lまたは80μmol/L)を超える胆汁酸濃度および説明できない掻痒を有する哺乳動物または本明細書の他の場所に記載されている軽度または重度のICPを有する患者を含む。いくつかの実施形態では、投与は1、2または3回/日であり、1カ月間、2カ月間もしくは3カ月間、または前記哺乳動物が妊娠している限り、または乳児が生まれるまで持続することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、ICPを発症するまたは有するリスクのある哺乳動物(または被験体)(例えば、本明細書の他の場所で定義されているICP被験体群)に、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌株または株の組合せを使用して、胎児および/または乳児のリスクを低減することができる。胎児のリスクの低減には、限定するものではないが、早産、出産中の胎便吸引による呼吸困難および/または子宮内死亡または死産のリスク低減が挙げられる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌株または株の組合せは、限定するものではないが、胆汁うっ滞(例えば肝外または肝内胆汁うっ滞)、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎およびC型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を含む疾患に使用することができる。いくつかのそのような実施形態では、治療群は、胆汁酸濃度が増大した哺乳動物、例えば、10μmol/L(または40μmol/Lまたは80μmol/L)を超える胆汁酸濃度、特に血清胆汁酸濃度、例えば、≧10μmol/L(例えば、10~39μmol/Lまたは≧10μmol/Lおよび<40μmol/L)または≧40μmol/L(例えば、40~79μmol/Lまたは≧40μmol/Lおよび<80μmol/L)または≧80μmol/Lの血清胆汁酸濃度を有する哺乳動物を含む。
【0066】
本明細書に記載の好ましい製品または組成物は、凍結された細菌、凍結乾燥された(freeze-dried)細菌、凍結乾燥された(lyophilized)(例えば、凍結乾燥粉末)または乾燥された細菌を含み、好ましくは単位投与形態、例えば、カプセル(例えば、ゼラチンカプセル)または錠剤またはゲルまたはサシェである。そのような製品などの使用のための(例えば、細菌の数またはCFUの形態での)適切な比率および用量は、本明細書の他の箇所および実施例に記載されている。また、他の成分、例えば保存料(例えばグリセロール)、乾燥剤、安定化剤、ゲル化剤および/または凍結保護剤が、そのような製品などに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、そのような追加成分は非天然剤である。いくつかの実施形態では、プレバイオティクスが含まれる。プレバイオティクスの例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0067】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティクス細菌株または株の組合せは、カプセルもしくはサシェの形態または他の適切な形態であってよく、哺乳動物(または被験体)に経口投与することができる。いくつかの実施形態では、投与は1、2または3回/日であり、1カ月間、2カ月間もしくは3カ月間または前記哺乳動物が治療されている疾患に罹患し続けている限り持続することができる。
【0068】
本発明に使用するための種または株の適切な用量は、治療すべき疾患、投与様式および関連する製剤に応じて選択することができる。例えば、本発明に従って被験体に投与されるプロバイオティクス細菌(または細菌の組合せ)が治療上または健康上の便益をもたらすことができるように、投与量および投与計画が選択される。したがって、2つ以上の異なる細菌株が投与される本発明の実施形態では、あらゆる株が存在する場合に治療上または健康上の便益が観察されるように、各細菌の適切な用量が選択される。例えば、10~1012の1つまたは各細菌の1日用量、例えば、10~1010、または10~10、または10~10、または10~1010の総CFUの細菌を使用してもよい。1つまたは各細菌の好ましい1日用量は、約10または10の総CFU、例えば、10~1010または10~1010または10~10である。そのような用量は、CFU/gまたはCFU/単位剤形(例えば、サシェ、カプセル、錠剤など)の形態であり得る。
【0069】
例示的な計画は、実施例に提供される。
【0070】
本発明の方法および使用は、任意の動物または被験体または患者に対して実施することができる。いくつかの実施形態では、動物または被験体は哺乳動物であり得る。代表的な実施形態では、動物または被験体はヒトであり得る。
【0071】
したがって、いくつかの実施形態では、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法が提供される。
【0072】
したがって、代替的にみて、本発明は、被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法に使用するための胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物を提供する。
【0073】
代替的にみて、本発明はまた、被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減するための医薬品(または組成物)の製造のために、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の使用を提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、それを必要とする被験体の胆汁酸濃度、例えば、血清胆汁酸濃度を調節する方法であって、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の胆汁酸濃度、例えば、血清胆汁酸濃度を調節することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0075】
したがって、代替的にみて、本発明は、被験体の胆汁酸濃度、例えば、血清胆汁酸濃度を調節する方法に使用するための胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0076】
代替的にみて、本発明はまた、被験体の胆汁酸濃度、例えば、血清胆汁酸濃度を調節するための医薬品(または組成物)の製造のために、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0077】
好ましい実施形態では、そのような調節(modulation)または調節(modulating)は、胆汁酸濃度の低下(reduction)または低下(decrease)によるものである。
【0078】
したがって、本発明のさらに別の実施形態は、それを必要とする被験体の胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を治療するか、その発症リスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の前記疾患を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法を提供する。
【0079】
したがって、代替的にみて、本発明は、被験体の胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を治療するか、その発症リスクを低減する方法に使用するための胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物を提供する。
【0080】
代替的にみて、本発明はまた、被験体の胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を治療するか、その発症リスクを低減するための医薬品(または組成物)の製造のために、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の使用を提供する。
【0081】
したがって、いくつかの実施形態では、それを必要とする被験体の掻痒症を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの(プロバイオティクス)細菌種または株を含む組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0082】
したがって、代替的にみて、本発明は、被験体の掻痒症を治療するか、そのリスクを低減する方法に使用するための胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0083】
代替的にみて、本発明はまた、被験体の掻痒を治療するか、そのリスクを低減するための医薬品(または組成物)の製造のために、胆汁酸脱抱合/加水分解活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌種または株を含む組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、被験体は、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞(例えば、妊娠性肝内胆汁うっ滞)、胆石症、胆汁性消化不良、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、慢性活動性肝炎、C型肝炎および/または他の関連肝疾患の治療を有するか、発症するリスクがある。
【0084】
いくつかの実施形態では、掻痒は、これらの疾患のうち1つ以上に関連するか、例えば、これらの疾患のうち1つ以上の症状であるか、これらの疾患のうち1つ以上の副作用である。特に、そのような掻痒は、肝内胆汁うっ滞、好ましくは妊娠性肝内胆汁うっ滞に関連し得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、肝内胆汁うっ滞は、妊娠性肝内胆汁うっ滞を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。代表的な実施形態では、被験体はヒトの女性、例えば妊娠したヒトの女性である。
【0087】
任意の適切な細菌種または株、例えば任意の適切なプロバイオティクス細菌種または株は、本明細書に記載の機能特性を有するならば、本発明の方法または使用に使用することができる。
【0088】
本発明の方法および使用では、少なくとも1つの細菌種または株を組み合わせて使用することが特に好ましい(例えば、1、2、3、4または5つの種または株を使用してもよい)。2つ以上の株が使用される実施形態では、そのような株は、同じまたは異なる種の細菌であり得る。同様に、特定の実施形態では、2つ以上の種の細菌を使用することができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、細菌株または種の組合せまたは混合物が投与される(併用療法)ことが分かる。そのような細菌の混合物または組合せは、単一の(同じ)組成物中に含めてともに投与されるか、別個に(例えば、異なる製品または組成物中に含めて)投与されてもよい。別個に投与される場合、そのような投与は、順次または同時であってよい。しかし、別個の投与は、同じ治療レジメンまたは方法の一部を形成する。
【0090】
2つ以上の株または種の投与が別個または順次である実施形態では、投与は、本明細書の他の箇所に記載されているように、互いに適切な時間枠内で行われることが好ましい。例えば、別個の投与は、好ましくは、互いに数時間以内(例えば、1時間)または数分以内(例えば、15または30分以内)に、最も好ましくは、できるだけ短い時間枠内(同時または事実上同時投与を含む)で行われる。好ましくは、細菌の2つ以上の株または種は、単一の組成物中に含めて同時投与される。
【0091】
プロバイオティクス細菌の2つ以上の株が単一の組成物中の混合物中で使用されるか、プロバイオティクス細菌の2つ以上の株が使用されるがそれらが別個に投与される実施形態では、株の所望の機能(例えば、胆汁酸脱抱合/加水分解活性または7-エピマー化活性または硫酸塩還元活性)が有用な程度に保持されるならば、任意の適切な比率の細菌を使用することができる。そのような比率は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、2つ以上の株または種のそのような組合せは、1:10、1:5、1:1、5:1または10:1の比率またはこれらの極限の間の任意の場所、例えば、1:1で使用され得る。そのような比率はまた、本明細書の他の箇所に記載されている本発明の製品、キット、組成物などに使用することができる。
【0092】
そのような種または株は、一般に、単離された種もしくは株または純粋な培養物であり、種または株の組合せが使用される場合、それらはともに混合され得る。いくつかの実施形態では、そのような株は天然に存在する株に対応しない。
【0093】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌種または株は、少なくとも2つの細菌種または株を含み、少なくとも2つの細菌種または株は、胆汁酸脱抱合/加水分解活性を有する第1の細菌種または株と、7-エピマー化活性を有する第2の細菌種または株とを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌種または株は、少なくとも3つの細菌種または株を含み、少なくとも3つの細菌種または株は、胆汁酸脱抱合/加水分解活性を有する第1の細菌種または株と、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)活性を有する第2の細菌種または株と、7β-HSDH活性を有する第3の細菌種または株とを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物は、硫酸塩還元活性を有する少なくとも1つの細菌種または株をさらに含んでもよい。この活性は、胆汁酸脱抱合または7-エピマー化活性を提供する同じ細菌種または株のうち1つ以上によって提供されてもよいか、少なくとも1つの追加の(または異なる)細菌種または株によって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、硫酸塩還元活性を有する細菌種または株は、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187であってよい。本発明に使用するデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)のこの株は、2015年10月20日にブダペスト条約の下に、DSMZ(ライプニッツ研究所DSMZ-ドイツ微生物細胞培養コレクション、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweig、ドイツ)に寄託されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、胆汁酸脱抱合の活性/加水分解活性を有する細菌種または株は、ビフィズス菌であってよい。代表的な実施形態では、胆汁酸脱抱合の活性/加水分解活性を有する細菌種または株は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999であってよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、7-エピマー化活性を有する細菌種または株は、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638であってよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、7α-HSDH活性を有する細菌種または株は、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285および/またはバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079であってよく、および/または7β-HSDH活性を有する細菌種または株は、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986であってよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの細菌株または種を含む組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、例えば治療有効量のプレバイオティクスを含む組成物の形態で、プレバイオティクスを被験体に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プレバイオティクスは、プロバイオティクス細菌の投与前、投与と同時または投与後に投与される。いくつかの実施形態では、プレバイオティクスはイヌリンであってよい。プレバイオティクスの他の例は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0106】
プレバイオティクスは、プロバイオティクス細菌と同じ組成物中に存在してよいか、例えば異なる組成物中に含まれて別個に投与されてもよい。
【実施例0107】
以下の実施例を参照して、本発明をこれから説明する。これらの実施例は、本発明の態様を例示するためのものであり、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
(例1)
【0108】
製品(製品A)を開発し、以下の細菌株を含有させる:
1)ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999
2)クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638
3)デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM32187
【0109】
製品中の細菌株は、1x10cfu/g/細菌株の濃度で存在し、500mgの標準ゼラチンカプセル中に凍結乾燥粉末の形態で存在する。
(例2)
【0110】
製品(製品B)を開発し、以下の組成物を含有するサシェの形態で製造する:
1)ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999:1×10cfu/サシェ
2)バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285:1×10cfu/サシェ
3)コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986:1×10cfu/サシェ
4)イヌリン:3000mg/サシェ
【0111】
LAFベンチ(Heto-Holten A/S(デンマーク)製、Holten Laminair Model S-2010 1.2)内で乾燥剤(10cm×12cm、包装材料PET12/PE/ALU12/PE/PE+乾燥剤/PE(Alcan製)を使用)を用いて、周囲温度で当技術分野で既知のアルミニウムホイルバッグに組成物を充填する。Denver Instrument GmbH(ドイツ)製の秤XP-600を用いて、各バッグに、B.ロンガム(B.longum)ATCC BAA-999、B.フラジリス(B.fragilis)ATCC 25285およびC.アエロファシエンス(C.aerofaciens)ATCC 25986ならびにイヌリンを含む粉末3gを加える。次いで、Kettenbaum Folienschweisstechnik GmbH&Co.KG(ドイツ)製のフィルムシーリング装置モデルF460/2を用いて、充填されたアルミニウムホイルバッグをヒートシールする。
(例3)
【0112】
軽度のICP(胆汁酸濃度≧10μmol/Lおよび<40μmol/L)を有する妊婦の試験群を試験に含め、(例2に記載の)プロバイオティクス製品Bを投与する。治療は1日3回行い、3カ月間または乳児の出産まで持続する。治療に先立って、血液検体を採取し、掻痒/かゆみの知覚重症度を記録することによって女性を検査する。胆汁酸濃度に関して血液検体を分析する。
【0113】
治療後、上記のように再度女性を検査する。プロバイオティクス製品Bにより治療された女性では、血液中の胆汁酸濃度が低下し、掻痒/かゆみの軽減が認められる。
【0114】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、説明のみを目的とするものであり、それらを鑑みた様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲内に含まれることを理解されたい。本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法に使用するための、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物
それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物の治療有効量を前記被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法、
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物、
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物、あるいは
ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)を含む組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、説明のみを目的とするものであり、それらを鑑みた様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲内に含まれることを理解されたい。本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい態様として以下が含まれる。
(1) 被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法に使用するための、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物。
(2) 前記使用が、前記被験体の掻痒症を治療するか、そのリスクを低減することを含む請求項1に記載の使用のための組成物。
(3) 前記肝内胆汁うっ滞が、妊娠性肝内胆汁うっ滞を含む請求項1または2に記載の使用のための組成物。
(4) 前記少なくとも1つの細菌株が少なくとも2つの細菌株を含み、前記少なくとも2つの細菌株が、胆汁酸脱抱合活性を有する第1の細菌株と、7-エピマー化活性を有する第2の細菌株とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(5) 前記少なくとも1つの細菌株が少なくとも3つの細菌株を含み、前記少なくとも3つの細菌株が、胆汁酸脱抱合活性を有する第1の細菌株と、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSDH)活性を有する第2の細菌株と、7β-HSDH活性を有する第3の細菌株とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(6) 前記組成物が、硫酸塩還元活性を有する少なくとも1つの細菌株をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(7) 前記胆汁酸脱抱合活性を有する前記細菌株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999である請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(8) 7-エピマー化活性を有する前記細菌株が、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638である請求項1~4、6または7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(9) 7α-HSDH活性を有する前記細菌株が、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285および/またはバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079である請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(10) 7β-HSDH活性を有する前記細菌株が、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986である請求項5~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(11) 硫酸塩還元活性を有する前記細菌株が、デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187である請求項6~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(12) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む請求項1~3または5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(13) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986を含む請求項1~3または5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(14) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(15) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(16) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079、コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(17) 前記組成物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999、クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638およびデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187を含む請求項1~3または6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(18) 前記使用が、プレバイオティクスをさらに含む請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(19) 前記プレバイオティクスがイヌリンである請求項18に記載の使用のための組成物。
(20) 前記被験体が哺乳動物である請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
(21) 前記被験体がヒトである請求項20に記載の使用のための組成物。
(22) それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減する方法であって、胆汁酸脱抱合活性および/または7-エピマー化活性を有する少なくとも1つの細菌株を含む組成物の治療有効量を前記被験体に投与し、それにより、それを必要とする被験体の肝内胆汁うっ滞を治療するか、そのリスクを低減することを含む方法。
(23) 前記組成物または肝内胆汁うっ滞または被験体が、請求項2~21のいずれか一項に定義される通りである請求項22に記載の方法。
(24) 前記組成物が、硫酸塩還元活性を有する少なくとも1つの細菌株をさらに含む請求項22に記載の方法。
(25) ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物。
(26) ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)およびコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)を含む組成物。
(27) ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)およびクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)を含む組成物。
(28) デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)をさらに含む請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
(29) 前記ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)株がビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)ATCC BAA-999であり、前記バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)株がバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285であり、前記コリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)株がコリンゼラ・アエロファシエンス(Collinsella aerofaciens)ATCC 25986であり、前記バクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)株がバクテロイデス・セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)DSM 2079であり、前記クロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)株がクロストリジウム・バラティイ(Clostridium baratii)ATCC 27638であり、および/または前記デスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)株がデスルホビブリオ・ピゲル(Desulfovibrio piger)DSM 32187である請求項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
(30) 前記組成物が、プレバイオティクス、好ましくはイヌリンをさらに含む請求項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
【外国語明細書】