(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166054
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/047 20060101AFI20221025BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20221025BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221025BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20221025BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20221025BHJP
A01N 65/22 20090101ALI20221025BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20221025BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20221025BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20221025BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221025BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221025BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221025BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20221025BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221025BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K31/047
A01P1/00
A01P3/00
A01N31/02
A01N37/36
A01N65/22
A61K31/19
A61P17/00 101
A61P31/10
A61K31/17
A61K36/53
A61K36/534
A61K9/06
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/40
A61K8/9789
A61Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122557
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2019533676の分割
【原出願日】2017-09-04
(31)【優先権主張番号】16001946.9
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512010786
【氏名又は名称】ロッタファーム エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ザナルディ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】チェルカチ アレサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】モンタルド イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】マウス ヨアキム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組成物、および吸湿特性を有する抗菌剤としてのその使用を提供する。
【解決手段】最大10個の炭素原子を有するカルボン酸および/またはその塩より選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物を含む、組成物であって、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1種の第1のジオール、および8~12個の炭素原子を有する少なくとも1種の第2のジオールをさらに含み、該組成物が、カルボン酸化合物を2~30重量パーセント、第1のジオールを50~90重量パーセント、および第2のジオールを0.1~10重量パーセントの量で含む、組成物とする。本発明の組成物は、クレンジング、消毒、表面処理、含浸および抗菌処理のために使用することができる。組成物は、爪の真菌感染症(爪真菌症)の治療に特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大10個の炭素原子を有するカルボン酸および/またはその塩より選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物を含む、組成物であって、
3~6個の炭素原子を有する少なくとも1種の第1のジオール、および8~12個の炭素原子を有する少なくとも1種の第2のジオールをさらに含み、
該組成物が、カルボン酸化合物を2~30重量パーセント、第1のジオールを50~90重量パーセント、および第2のジオールを0.1~10重量パーセントの量で含む、
組成物。
【請求項2】
以下の重量パーセントの成分を含む、請求項1記載の組成物:
。
【請求項3】
塩基がKOHまたはNaOHである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
0.01~1重量パーセントの量の少なくとも1種のハイドロレート(hydrolate)をさらに含む、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項5】
ゲル化剤をさらに含む、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項6】
第1のジオールが、3個または4個の炭素原子を有する、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項7】
第1のジオールが、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはそれらの混合物である、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項8】
第2のジオールが、10個の炭素原子を有する、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項9】
第2のジオールがデシレングリコールである、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項10】
カルボン酸が乳酸である、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項11】
2.0~6.0のpHを有する、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項12】
以下の工程:
a.本発明の組成物を得るために、原料を混合する工程
を含む、前記請求項の少なくとも一項記載の組成物を調製するための方法。
【請求項13】
爪真菌症の治療における使用のための、請求項1~11の少なくとも一項記載の組成物。
【請求項14】
クレンジング、消毒、表面処理または含浸のための、請求項1~11の少なくとも一項記載の組成物の非医学的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、および吸湿特性を有する抗菌剤としてのその使用に関する。組成物は、カルボン酸化合物、ならびに、少なくとも1種のC3~C6ジオールおよび少なくとも1種のC8~C12ジオールを含む。本発明によるカルボン酸化合物は、最大10個の炭素原子を有するカルボン酸またはその塩である。本発明の組成物は、クレンジング、消毒、表面処理、含浸および抗菌処理のために使用することができる。組成物は、爪の真菌感染症(爪真菌症)の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
クレンジング、消毒、表面処理、含浸および抗菌処理のために使用される組成物は、先行技術により公知である。
【0003】
WO 96/11572 A1(特許文献1)には、最大10個の炭素原子を有するカルボン酸およびその塩、ならびに、混合物としての、またはエステル、ポリエステルもしくはポリマーの形態の化合物としてのC3~C10ジオールを含み、抗菌特性と吸湿特性とを有する組成物が開示されている。ジオールとカルボン酸との組み合わせによる抗菌効果の向上が得られたことが記載されている。さらに、組成物は、数種のカルボン酸と数種のジオールとの混合物を含んでもよく、より短い炭素鎖を有するジオールが、より長い鎖を有するジオールの溶媒として機能することも開示されている。しかし、WO 96/11572 A1には、組成物が、より短いジオールとより長いジオールとの混合物を含んでもよいことが開示されているが、少なくとも1種のC3~C6ジオールと、少なくとも1種のC8~C12ジオールとを含む組成物は開示されていない。むしろ、WO 96/11572 A1には、C3~C6ジオールがC7~C10ジオールよりも好ましいことが開示されている。実際、実施例には、いかなるC7~C10ジオールも含まれていない。複数種のジオールを含む実施例には、プロピレングリコール(C3)とヘキシレングリコール(C6)とが含まれている。したがって、WO 96/11572 A1の意味でのより短いジオールとより長いジオールとの混合物は、C3グリコールとC6グリコールとの混合物と理解されるべきである。WO 96/11572 A1によるC7~C10ジオールの量は0.1~1重量%をはるかに上回る。
【0004】
WO 2012/107565 A1(特許文献2)を考慮すると、抗真菌組成物において6個を超える炭素原子を有するジオールを使用することに対して当技術分野において長く続いている偏見があったように見受けられる。WO 2012/107565 A1には、爪の真菌感染症の治療のための薬学的組成物が開示されており、これは、約10%の量で存在する抗真菌アリルアミン化合物と、有機酸またはそのエステルと、ジオールと、金属イオン封鎖剤とを含む。適したジオールはプロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、およびヘキサンジオールであると開示されており、プロパンジオールおよびブタンジオールが特に適していると開示されている。言及されたジオールの混合物もまた適している。ペンタンジオールは、爪内への組成物の浸透に対して、浸透という点から見てヘキサンジオールより性能が良いプロパンジオールと同じ効果を有するようであることが開示されている。したがって、長すぎるジオール、特に6個以上の炭素原子を有するジオールが使用されるとき、爪内への組成物の浸透が損なわれるようである。これにより、当技術分野においてより短いジオールがこれまで好まれた理由が説明される。
【0005】
クレンジング、消毒、表面処理、含浸および抗菌処理のための組成物は先行技術により公知であるが、これらの組成物は往々にして、抗菌効果に関して、特に菌類に対して、最適ではない。しかし、より効果的なクレンジング、消毒、表面処理、含浸および抗菌処理を可能にするために、効果が改善された組成物が望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 96/11572 A1
【特許文献2】WO 2012/107565 A1
【発明の概要】
【0007】
発明の説明
上記の問題は、本特許請求の範囲の主題によって解決される。該問題は、最大10個の炭素原子を有するカルボン酸またはその塩を含む組成物により特に解決され、組成物は、3~6個の炭素原子を有する少なくとも1種の第1のジオールと、8~12個の炭素原子を有する少なくとも1種の第2のジオールとをさらに含む。組成物は、抗菌効果が向上しており、抗菌スペクトルが広く、数種の皮膚糸状菌、酵母菌、カビ菌、細菌およびウイルスに対する抑制効果が高い。特に、先行技術の組成物と比較して、真菌に対する抗菌効果が著しく向上している。本発明の組成物はさらに、皮膚に優しく、環境に優しく、低アレルゲン性であり、角質溶解活性があり、さらに吸湿効果があり、例えばエタノールほど速く蒸発しない。本発明の開発において本発明者らが実施した研究から、少なくとも1種のC3~C6ジオールと、少なくとも1種のC8~C12ジオールとの組み合わせによる抗菌効果の向上が得られた。好ましくは、組成物は、C3ジオール、特にプロピレングリコールと、C10ジオール、特にデシレングリコールとを含む。
【0008】
本明細書によれば、「CXジオール」という用語は、ちょうどX個の炭素原子を有するジオールに対応する。したがって、例えば、C3ジオールは、ちょうど3個の炭素原子を有するジオールと理解されるべきであり、C10ジオールは、ちょうど10個の炭素原子を有するジオールと理解されるべきである。「C3~C6ジオール」という用語は、3~6個の炭素原子を有するジオールを表し、「C8~C12ジオール」という用語は、8~12個の炭素原子を有するジオールを表す。
【0009】
好ましくは、第1のジオールは、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールおよびヘキシレングリコールからなる群より選択されるジオールである。より好ましくは、第1のジオールは、3個または4個の炭素原子を有する。より好ましくは、第1のジオールは、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはそれらの混合物である。
【0010】
より好ましくは、第1のジオールは、ちょうど3個の炭素原子を有する。特に好ましくは、第1のジオールはプロピレングリコールである。
【0011】
好ましくは、第2のジオールは、オクチレングリコール、ノニレングリコール、デシレングリコール、ウンデシレングリコールおよびドデシレングリコールからなる群より選択されるジオールである。より好ましくは、第2のジオールは、ちょうど10個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、第2のジオールはデシレングリコールである。第2のジオールにおいて、炭素原子の数が多くなりすぎると、抗細菌活性ならびに真菌に対する固有の毒性が低下する。炭素原子の数が少なすぎると、望まれない浸透現象が現れる。
【0012】
第1および第2のジオールに加えて、本発明の組成物は、3~6個の炭素原子または8~12個の炭素原子を持たないさらなるジオールを任意で含んでもよい。例えば、組成物は、7個の炭素原子を有するジオール、特にヘプチレングリコールを含んでもよい。
【0013】
本明細書において、ジオールは、プロピレングリコール、デシレングリコールなどといったそれらの慣用名で主に識別される。本明細書に記載のそのような化合物の体系名を、下記表1にまとめる。
【0014】
【0015】
ジオール化合物が立体異性体を持ち得る場合、通常、ラセミ種が本発明により使用される。しかし、R型および/またはS型という選択肢が適しているように見受けられる場合、当業者はそれらも使用するであろう。
【0016】
本発明により使用され得る、最大10個の炭素原子を有するカルボン酸という用語は、最大10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和脂肪族モノ-、ジ-もしくはポリ-カルボン酸に関し、これは、最大8個の炭素原子を有する芳香脂肪族または芳香族ジカルボン酸、オキシまたはヒドロキシカルボン酸を含む。最大10個の炭素原子を有するそのようなカルボン酸またはそのようなカルボン酸の塩は、本明細書において「カルボン酸化合物」とも呼ばれる。好ましいカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、オキサロ酢酸、フタル酸、グリコール酸、クエン酸、乳酸、グルクロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、カルボン酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸およびそれらの混合物からなる群より選択される。さらにより好ましくは、カルボン酸は乳酸である。
【0017】
本発明による組成物は、水、C1~C8アルコール、油、好ましくは、ピーナッツ油、オリーブ油、菜種油、亜麻仁油、トール油およびヒマシ油などの植物油などの添加剤を、乳化剤との組み合わせありまたはなしで含んでもよい。さらに、クレンジング効果を強化するために界面活性剤が添加されてもよい。尿素および/またはポリエチレングリコールも含まれてもよい。さらに、組成物のpHを調整するために、組成物は、KOHおよび/またはNaOHなどの塩基を含んでもよい。組成物は、以下でより詳しく説明する1種または複数種のハイドロレート(hydrolate)、例えば、ミントハイドロレート、オレガノハイドロレート、タイムハイドロレートまたはそれらの混合物も含んでもよい。
【0018】
本発明による他の添加剤は、抗真菌薬、好ましくはアゾール誘導体、アリルアミンおよびアモロルフィン;抗ウイルス剤、好ましくはイドキシウリジン、アシクロビル、ホスホニオギ酸、ポドフィロトキシン;ビグアニドおよびアミジン、キノリン、過酸化ベンゾイル、ビブロカトール、クリンダマイシン、ネオマイシン、フシジン酸、ムピロシン、硫黄などの抗細菌剤;グルココルチコイド、好ましくはヒドロコルチゾンおよびフルオロ置換ステロイド、ゲルおよび酵素であってもよい。
【0019】
本発明の組成物は液体またはゲル様であってもよい。ゲル様特性を得るために、本発明の組成物は、1種または複数種のゲル化剤を含んでもよい。好ましいゲル化剤は、ポリクアテルニウム、特にポリクアテルニウム-10であり、これは、四級化ヒドロキシエチルセルロース、したがって、ヒドロキシエチルセルロースの四級トリメチルアンモニウム塩である。
【0020】
上述の通り、本発明の組成物は、少なくとも1種のカルボン酸化合物と、少なくとも1種のC3~C6ジオールと、少なくとも1種のC8~C12ジオールとを含む。好ましい態様において、組成物は、ちょうど1種のカルボン酸化合物と、ちょうど1種のC3~C6ジオールと、ちょうど1種のC8~C12ジオールとを含む。代替の態様において、本発明の組成物は、2種以上のカルボン酸化合物と、2種以上のC3~C6ジオールと、2種以上のC8~C12ジオールとを含む。
【0021】
本明細書に記載の特定の成分の量は、特に記載のない限り、本発明の組成物中のこの成分の総量に対応する。例えば、ある一定量のC3~C6ジオールを組成物が含むことが本明細書においていわれている場合、これは、組成物中のC3~C6ジオールの総量を示す。例えば、60重量パーセントのC3~C6ジオールの総量は、組成物が40重量パーセントのプロピレングリコールと20重量パーセントのブチレングリコールとを含むこと、または組成物が60重量パーセントのプロピレングリコールを含むことを意味し得る。カルボン酸またはカルボン酸化合物、C8~C12ジオール、塩基、ハイドロレートおよびその他などの総称で識別される本発明の組成物のすべての成分にも同じことがあてはまる。
【0022】
好ましくは、組成物は、2~30重量パーセントの量のカルボン酸化合物と、50~90重量パーセントの量のC3~C6ジオールと、0.1~10重量パーセントの量のC8~C12ジオールとを含む。より好ましくは、組成物は、5~20重量パーセントの量のカルボン酸化合物と、60~80重量パーセントの量のC3~C6ジオールと、0.5~2重量パーセントの量のC8~C12ジオールとを含む。さらにより好ましくは、組成物は、6~12重量パーセントの量のカルボン酸化合物と、65~75重量パーセントの量のC3~C6ジオールと、0.6~1.5重量パーセントの量のC8~C12ジオールとを含む。
【0023】
カルボン酸化合物は、pH値を低下させることにより真菌の増殖を妨げる。好ましくは、組成物は、最低でも1重量パーセント、より好ましくは最低でも2重量パーセント、より好ましくは最低でも4重量パーセント、より好ましくは最低でも5重量パーセント、より好ましくは最低でも6重量パーセント、より好ましくは最低でも7重量パーセント、より好ましくは最低でも7.5重量パーセントの量のカルボン酸化合物を含む。カルボン酸化合物の量が少なすぎると、達成される効果が損なわれることがある。カルボン酸化合物の量が多すぎると、コストも高くなりすぎる。好ましくは、組成物は、最高でも35重量パーセント、より好ましくは最高でも30重量パーセント、より好ましくは最高でも25重量パーセント、より好ましくは最高でも20重量パーセント、より好ましくは最高でも15重量パーセント、より好ましくは最高でも12重量パーセント、より好ましくは最高でも10重量パーセント、より好ましくは最高でも9重量パーセントの量のカルボン酸化合物を含む。好ましくは、組成物は、1~35重量パーセント、より好ましくは2~30重量パーセント、より好ましくは4~25重量パーセント、より好ましくは5~20重量パーセント、より好ましくは6~15重量パーセント、より好ましくは7~12重量パーセント、より好ましくは7.5~10重量パーセントの量のカルボン酸化合物を含む。別の好ましい態様において、組成物は、好ましくは7~9重量パーセントの量のカルボン酸化合物を含む。
【0024】
好ましい量は、全組成物に基づいて1重量%の範囲内である。
【0025】
C3~C6グリコールは、水を結合するその能力に起因する水和特性を有する。好ましくは、組成物は、最低でも40重量パーセント、より好ましくは最低でも45重量パーセント、より好ましくは最低でも50重量パーセント、より好ましくは最低でも55重量パーセント、より好ましくは最低でも60重量パーセント、より好ましくは最低でも65重量パーセント、より好ましくは最低でも67重量パーセントの量のC3~C6ジオールを含む。C3~C6グリコールの量が少なすぎると、達成される効果が損なわれることがある。好ましくは、組成物は、最高でも98重量パーセント、より好ましくは最高でも95重量パーセント、より好ましくは最高でも90重量パーセント、より好ましくは最高でも85重量パーセント、より好ましくは最高でも80重量パーセント、より好ましくは最高でも75重量パーセント、より好ましくは最高でも70重量パーセントの量のC3~C6ジオールを含む。好ましくは、組成物は、40~98重量パーセント、より好ましくは45~95重量パーセント、より好ましくは50~90重量パーセント、より好ましくは55~85重量パーセント、より好ましくは60~80重量パーセント、より好ましくは65~75重量パーセント、より好ましくは67~70重量パーセントの量のC3~C6ジオールを含む。
【0026】
C8~C12ジオールは水と結合することができて、浸透圧機構により真菌の拡散を抑える可能性も有する。好ましくは、組成物は、最低でも0.1重量パーセント、より好ましくは最低でも0.2重量パーセント、より好ましくは最低でも0.4重量パーセント、より好ましくは最低でも0.5重量パーセント、より好ましくは最低でも0.6重量パーセント、より好ましくは最低でも0.7重量パーセント、より好ましくは最低でも0.8重量パーセントの量のC8~C12ジオールを含む。C8~C12グリコールの量が少なすぎると、達成される効果が損なわれることがある。好ましくは、組成物は、最高でも10重量パーセント、より好ましくは最高でも5重量パーセント、より好ましくは最高でも4重量パーセント、より好ましくは最高でも2重量パーセント、より好ましくは最高でも1.5重量パーセント、より好ましくは最高でも1.2重量パーセント、より好ましくは最高でも1.1重量パーセントの量のC8~C12ジオールを含む。好ましくは、組成物は、0.1~10重量パーセント、より好ましくは0.2~5重量パーセント、より好ましくは0.4~4重量パーセント、より好ましくは0.5~2重量パーセント、より好ましくは0.6~1.5重量パーセント、より好ましくは0.7~1.2重量パーセント、より好ましくは0.8~1.1重量パーセントの量のC8~C12ジオールを含む。別の好ましい態様において、組成物は、0.8~1.2重量パーセントの量のC8~C12ジオールを含む。
【0027】
好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(C3~C6ジオール:C8~C12ジオール)は、最低でも10:1、より好ましくは最低でも20:1、より好ましくは最低でも30:1、より好ましくは最低でも40:1、より好ましくは最低でも50:1、より好ましくは最低でも60:1、より好ましくは最低でも65:1である。好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(C3~C6ジオール:C8~C12ジオール)は、最高でも150:1、より好ましくは最高でも120:1、より好ましくは最高でも100:1、より好ましくは最高でも90:1、より好ましくは最高でも80:1、より好ましくは最高でも75:1、より好ましくは最高でも70:1である。好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(C3~C6ジオール:C8~C12ジオール)は、10:1~150:1、より好ましくは20:1~120:1、より好ましくは30:1~100:1、より好ましくは40:1~90:1、より好ましくは50:1~80:1、より好ましくは60:1~75:1、より好ましくは65:1~70:1の範囲内である。
【0028】
好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のカルボン酸化合物の量との質量比(C3~C6ジオール:カルボン酸化合物)は、最低でも1:1、より好ましくは最低でも2:1、より好ましくは最低でも3:1、より好ましくは最低でも4:1、より好ましくは最低でも5:1、より好ましくは最低でも6:1、より好ましくは最低でも7:1である。好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のカルボン酸化合物の量との質量比(C3~C6ジオール:カルボン酸化合物)は、最高でも25:1、より好ましくは最高でも20:1、より好ましくは最高でも15:1、より好ましくは最高でも12:1、より好ましくは最高でも11:1、より好ましくは最高でも10:1、より好ましくは最高でも9:1である。好ましくは、組成物中のC3~C6ジオールの量と組成物中のカルボン酸化合物の量との質量比(C3~C6ジオール:カルボン酸化合物)は、1:1~25:1、より好ましくは2:1~20:1、より好ましくは3:1~15:1、より好ましくは4:1~12:1、より好ましくは5:1~11:1、より好ましくは6:1~10:1、より好ましくは7:1~9:1の範囲内である。
【0029】
好ましくは、組成物中のカルボン酸化合物の量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(カルボン酸化合物:C8~C12ジオール)は、最低でも1:1、より好ましくは最低でも2:1、より好ましくは最低でも3:1、より好ましくは最低でも4:1、より好ましくは最低でも5:1、より好ましくは最低でも6:1、より好ましくは最低でも7:1である。好ましくは、組成物中のカルボン酸化合物の量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(カルボン酸化合物:C8~C12ジオール)は、最高でも30:1、より好ましくは最高でも25:1、より好ましくは最高でも20:1、より好ましくは最高でも15:1、より好ましくは最高でも12:1、より好ましくは最高でも11:1、より好ましくは最高でも10:1である。好ましくは、組成物中のカルボン酸化合物の量と組成物中のC8~C12ジオールの量との質量比(カルボン酸化合物:C8~C12ジオール)は、1:1~30:1、より好ましくは2:1~25:1、より好ましくは3:1~20:1、より好ましくは4:1~15:1、より好ましくは5:1~12:1、より好ましくは6:1~11:1、より好ましくは7:1~10:1の範囲内である。
【0030】
尿素は、その角質溶解特性および軟化特性に起因する水和効果を有する。好ましくは、本発明の組成物は尿素を含む。尿素の量はある一定の閾値を下回るべきではなく、その理由は、爪真菌症治療の場合に爪が軟化されず、ジオールが爪の天然の障壁を通過できないからである。好ましくは、組成物は、最低でも2重量パーセント、より好ましくは最低でも4重量パーセント、より好ましくは最低でも8重量パーセント、より好ましくは最低でも10重量パーセント、より好ましくは最低でも12重量パーセント、より好ましくは最低でも14重量パーセント、より好ましくは最低でも15重量パーセント、より好ましくは最低でも16重量パーセントの量の尿素を含む。尿素の量が少なすぎると、達成される効果が損なわれることがある。好ましくは、組成物は、最高でも50重量パーセント、より好ましくは最高でも45重量パーセント、より好ましくは最高でも40重量パーセント、より好ましくは最高でも35重量パーセント、より好ましくは最高でも30重量パーセント、より好ましくは最高でも25重量パーセント、より好ましくは最高でも22重量パーセント、より好ましくは最高でも21重量パーセントの量の尿素を含む。好ましくは、組成物は、2~50重量パーセント、より好ましくは4~45重量パーセント、より好ましくは8~40重量パーセント、より好ましくは10~35重量パーセント、より好ましくは12~30重量パーセント、より好ましくは14~25重量パーセント、より好ましくは16~22重量パーセントの量の尿素を含む。別の好ましい態様において、組成物は、15~21重量パーセントの量の尿素を含む。
【0031】
好ましくは、本発明の組成物は、NaOHまたはKOHなどの塩基を含む。塩基は、組成物のpHの調整に有利である。好ましくは、組成物は、最低でも0.1重量パーセント、より好ましくは最低でも0.2重量パーセント、より好ましくは最低でも0.4重量パーセント、より好ましくは最低でも0.5重量パーセント、より好ましくは最低でも0.6重量パーセント、より好ましくは最低でも0.7重量パーセント、より好ましくは最低でも0.8重量パーセントの量の塩基を含む。塩基の量が少なすぎると、組成物のpH値が非常に低くなることがあり、これは、達成される効果を損なうことがある。好ましくは、組成物は、最高でも10重量パーセント、より好ましくは最高でも5重量パーセント、より好ましくは最高でも4重量パーセント、より好ましくは最高でも2重量パーセント、より好ましくは最高でも1.5重量パーセント、より好ましくは最高でも1.2重量パーセント、より好ましくは最高でも1.1重量パーセントの量の塩基を含む。塩基の量が多すぎると、組成物のpH値が非常に高くなることがあり、これは、達成される効果を損なうことがある。好ましくは、組成物は、0.1~10重量パーセント、より好ましくは0.2~5重量パーセント、より好ましくは0.4~4重量パーセント、より好ましくは0.5~2重量パーセント、より好ましくは0.6~1.5重量パーセント、より好ましくは0.7~1.2重量パーセント、より好ましくは0.8~1.1重量パーセントの量の塩基を含む。
【0032】
好ましくは、組成物は、1種または複数種のハイドロレートを含む。より好ましくは、組成物は、ちょうど1種のハイドロレートを含む。ハイドロレートは、ハーブ蒸留液、フローラルウォーター、ハイドロゾル、ハーブウォーターまたはエッセンシャルウォーターとしても公知である。ハイドロレートは、植物またはハーブを蒸留することにより得られる精油および/または水溶性成分を通常含む。本発明による好ましいハイドロレートは、ミントハイドロレート、オレガノハイドロレート、タイムハイドロレートおよびそれらの混合物からなる群より選択される。ミントハイドロレートが特に好ましい。驚くべきことに、ハイドロレートが本発明の組成物の抗菌効果をさらに改善することが本発明者らによって明らかになった。したがって、本発明の組成物は、好ましくは最低でも0.01重量パーセント、より好ましくは最低でも0.02重量パーセント、より好ましくは最低でも0.04重量パーセント、より好ましくは最低でも0.05重量パーセント、より好ましくは最低でも0.06重量パーセント、より好ましくは最低でも0.07重量パーセント、より好ましくは最低でも0.08重量パーセントの量のハイドロレートを含む。本発明者らは、ハイドロレートが本発明の組成物の貯蔵性を改善することができることを見出した。ハイドロレートの量が少なすぎると、組成物の貯蔵性が損なわれることがある。好ましくは、組成物は、最高でも1重量パーセント、より好ましくは最高でも0.5重量パーセント、より好ましくは最高でも0.4重量パーセント、より好ましくは最高でも0.2重量パーセント、より好ましくは最高でも0.15重量パーセント、より好ましくは最高でも0.12重量パーセント、より好ましくは最高でも0.11重量パーセントの量のハイドロレートを含む。好ましくは、組成物は、0.01~1重量パーセント、より好ましくは0.02~0.5重量パーセント、より好ましくは0.04~0.4重量パーセント、より好ましくは0.05~0.2重量パーセント、より好ましくは0.06~0.15重量パーセント、より好ましくは0.07~0.12重量パーセント、より好ましくは0.08~0.11重量パーセントの量のハイドロレートを含む。
【0033】
特に好ましい態様において、本発明の組成物は、少なくとも1種のカルボン酸化合物と、少なくとも1種のC3~C6ジオールと、少なくとも1種のC8~C12ジオールと、尿素と、塩基、特にNaOHと、1種または複数種のハイドロレートとを含む。さらにより好ましい態様において、本発明の組成物は、ちょうど1種のカルボン酸化合物と、ちょうど1種のC3~C6ジオールと、ちょうど1種のC8~C12ジオールと、尿素と、塩基、特にNaOHと、ミントハイドロレート、オレガノハイドロレートおよびタイムハイドロレートからなる群より選択されるちょうど1種のハイドロレートとを含む。さらにより好ましい態様において、本発明の組成物は、ちょうど1種のカルボン酸化合物と、ちょうど1種のC3~C6ジオールと、ちょうど1種のC8~C12ジオールと、尿素と、塩基、特にNaOHと、ミントハイドロレートを含む。
【0034】
好ましくは、本発明の組成物のpHは、最低でも1.5、より好ましくは最低でも2.0、より好ましくは最低でも2.5、より好ましくは最低でも3.0、より好ましくは最低でも3.5である。好ましくは、本発明の組成物のpHは、最高でも6.5、より好ましくは最高でも6.0、より好ましくは最高でも5.5、より好ましくは最高でも5.0、より好ましくは最高でも4.5である。好ましくは、本発明の組成物のpHは、1.5~6.5、より好ましくは2.0~6.0、より好ましくは2.5~5.5、より好ましくは3.0~5.0、より好ましくは3.5~4.5である。pHが高すぎたり、低すぎたりすると、達成される効果が損なわれることがある。非常に好ましいpHは5の範囲内であり、これは、爪真菌症治療の場合に爪の軟化を可能にする。
【0035】
好ましい態様において、本発明の組成物は、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0036】
より好ましくは、本発明の組成物は、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0037】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0038】
本発明の組成物は、上述の通り1種または複数種のハイドロレートも含んでもよい。そのような態様において、本発明の組成物は、好ましくは以下の重量パーセントの成分を含む。
【0039】
より好ましくは、本発明の組成物は、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0040】
さらにより好ましくは、本発明の組成物は、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0041】
ゲル様特性を得るために、本発明の組成物は、1種または複数種のゲル化剤をさらに含んでもよい。そのような態様において、組成物は、好ましくは最低でも0.01重量パーセント、より好ましくは最低でも0.02重量パーセント、より好ましくは最低でも0.05重量パーセント、より好ましくは最低でも0.1重量パーセント、より好ましくは最低でも0.2重量パーセント、より好ましくは最低でも0.3重量パーセント、より好ましくは最低でも0.35重量パーセントの量のゲル化剤を含む。ゲル化剤の量が少なすぎると、所望のゲル様特性が十分な程度まで達成されないことがある。好ましくは、組成物は、最高でも5重量パーセント、より好ましくは最高でも2重量パーセント、より好ましくは最高でも1重量パーセント、より好ましくは最高でも0.8重量パーセント、より好ましくは最高でも0.7重量パーセント、より好ましくは最高でも0.6重量パーセント、より好ましくは最高でも0.5重量パーセントの量のゲル化剤を含む。ゲル化剤の量が多すぎると、組成物の粘性が高くなりすぎることがある。好ましくは、組成物は、0.01~5重量パーセント、より好ましくは0.02~2重量パーセント、より好ましくは0.05~1重量パーセント、より好ましくは0.1~0.8重量パーセント、より好ましくは0.2~0.7重量パーセント、より好ましくは0.3~0.6重量パーセント、より好ましくは0.35~0.5重量パーセントの量のゲル化剤を含む。
【0042】
本発明は、さらに、以下の工程:
a.本発明の組成物を得るために、原料を混合および撹拌する工程
を含む、本発明の組成物を調製するための方法である。
【0043】
その抗菌特性および吸湿特性のために、本発明の組成物は、微生物感染症、特に皮膚および爪の感染症の治療に有用である。したがって、本発明は、真菌感染症、細菌感染症またはウイルス感染症の治療における使用のための上述の本発明の組成物である。好ましいのは、カンジダ属(Candida)、ピチロスポルム属(Pityrosporum)、白癬菌属(Trichophyton)、小胞子菌属(Microsporum)、カビ菌、特にアスペルギルス属(Aspergillus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ならびにウイルス、特にヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、いぼウイルスおよびHIVウイルスによって引き起こされる疾患の治療のための本発明の組成物である。好ましいのは、真菌感染症の治療における使用のための本発明の組成物である。特に好ましいのは、爪真菌症の治療における使用のための本発明の組成物である。
【0044】
本発明の組成物は、皮膚の消毒、皮膚のクレンジング、有痛部および創傷のクレンジングのために、シャンプー、石けん、シャワージェル、軟化製剤、ならびに抗菌効果を有するピーリング剤として、虫刺されを治療するための抗菌効果を有する皮膚製剤として、日焼け防止剤または「アフターサンローション」と組み合わせた日焼け防止として、使用することもできる。組成物はまた、抗菌効果を強化および拡大するために他のクレンザーおよび消毒剤に添加剤として含まれてもよい。
【0045】
組成物が皮膚用に使用される場合、効果は2通りに現れる。第一に、組成物にはピーリング効果があるため、感染した角質層(ケラチン)が機械的に除去され、これは、微生物を減少させる。続いて、組成物の抗菌効果により、これらの減少した微生物を死滅させることができる。
【0046】
その抗菌効果および吸湿効果のために、本発明の組成物は、人体または動物体に関連しないその他の様々な表面の処理または含浸のために使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
表面処理
本発明による組成物は、革、木材だけでなく、プラスチック、金属およびセラミック材料などの様々な表面を処理、クレンジングおよび消毒するために使用することができる。
【0048】
本発明による洗浄剤は、軟化させ、かつ乾燥させないがゆえに、例えば、エチルアルコールおよびイソプロパノールを含む従来から公知の洗浄剤および消毒剤とは異なる。
【0049】
本発明による組成物はエチルアルコールのように揮発性ではないため、表面からより緩徐に蒸発し、そのため、より長い時間残り、その消毒効果を保持する。組成物は比較的燃えにくいため、火災のリスクという点から見ても利点を有する。したがって、テーブルの表面、革の表面およびプラスチック被覆表面、例えば、歯科医院の椅子のためのクリーナーとして使用される場合、本発明の実用における利点は多い。
【0050】
革およびプラスチックを洗浄した後、光沢および表面仕上げの向上も観察された。また、本発明による剤による処理後、材料のわずかな損傷はあまり目立たないように見受けられる。ラッカー塗装の木材を拭くために組成物が使用される場合、特定のタイプのラッカーを表面で一時的に溶解することができる。その後、ラッカーにおけるこれまでの損傷があまり目立たないか、または見えないことが観察された。これらの変化は恒久的であった。したがって、本発明による生成物は、環境に優しく、皮膚に優しい、ラッカー塗装表面用クレンジング剤および修復剤として使用することができる。
【0051】
組成物はエアロゾルを生成することができるため、より速やかな塗布のために広範囲に容易に噴霧することができる。噴霧は、包装材料や機械部品などの消毒およびクレンジングのために、または特定のタイプの食料品、例えば、パン、果物、タマネギ、ならびに花の球根、タバコおよび家畜飼料に対する細菌およびカビの攻撃を防ぐために利用することもできる。
【0052】
本発明による組成物の別の使用領域は、様々な表面またはケーブル内もしくはパイプ内に付着した細菌の溶解である。
【0053】
金属の表面処理において、従来から公知のものに照らして、組成物はまた、さびを溶解させる効果を有することができると見なされる。したがって、組成物は、防食剤中の抗菌効果のある添加剤として適している。
【0054】
潤滑剤および冷却媒体、例えば、潤滑油および切削液の添加剤として、組成物の抗菌効果を有利に利用することができ、したがって、剤を添加する必要がない。緩衝剤を加えることによって、必要に応じて適切なpHを得ることができる。
【0055】
表面のカビの増殖を抑制し、製材所労働者の吸入熱を予防するために、製材後に木材に直接噴霧することは、本発明による生成物の別の使用領域である。
【0056】
含浸
本発明による組成物は、それ自体が様々な材料に浸透し、よく吸収されることが示された。より深部にある構造内の微生物の増殖を防ぐための処理は、含浸により実施することができる。組成物の含浸に適している様々な材料には、革;テキスタイル、例えば、おむつ、密封包帯、失禁補助具、タンポン、生理用ナプキン、ドレッシング材、プラスター;布、靴の中敷;木材製品および紙製品、例えば、リフレッシャーナプキン、使い捨てタオル、古紙などがある。
【0057】
本発明には、例えば、異なる材料の遊離カルボン酸基に、または例えば、テキスタイル、木材もしくは紙材料といった材料に吸収もしくは吸着されたポリマーに、本発明による含浸剤を化学結合する可能性も含まれる。そのような吸収または吸着されたポリマーの例は、アルギン酸またはアルギネートである。その場合、この方法による処理は抗菌性含浸を提供し、これは、アルギン酸を介してより速やかにテキスタイルおよび木繊維に結合する。この抗菌性含浸の使用領域の例は、タンポン、創傷および有痛部用ドレッシング材、おむつ、失禁補助具ならびに中敷である。
【0058】
本発明による組成物が結合するアルギン酸またはアルギネートのゲルは、テキスタイル材料に吸収されることなく皮膚および創傷の処理剤として別個に機能することもできる。
【0059】
組成物は塗料と混合することもでき、この場合、カビおよび細菌の増殖を防ぐために、毒性の抗カビ剤の代わりに油が水性アクリル塗料に含まれるか、または混合される。
【0060】
木材含浸時の1つの問題は、本発明による組み合わせが水によって浸出することである。それ自体撥水性である油を加えることによって、この問題をある程度軽減することができる。ここで、乳化剤を加える必要がある。
【0061】
吸湿効果は、木材における割れの生成を防ぐことができるため、正しく使用されればこれもまた利点になり得る。木材の処理において、ポリエチレングリコールによる含浸は、木繊維を膨潤させ、木材における乾燥および割れの生成が起こらないように作用する確立された方法である。
【0062】
ポリエチレングリコールには十分な抗菌効果がないため、ポリエチレングリコールによる長期間の処理に伴って生じ得る1つの問題はカビの発生である。本発明による組成物はポリエチレングリコールと混合できるため、この新しい組み合わせは微生物の増殖を防ぐことができる。
【0063】
紙の生産ではカビが発生するリスクが高い。これは特に古紙にあてはまる。本発明を使用するさらなる可能性は、例えば、カビの発生を防ぐために、組成物をプロセス水に加えたり、またはスプレーの形で供給したりするものである。組成物は水溶性であるため、温水系または冷水系などにも容易に加えられる。
【実施例0064】
13種の異なるサンプルについて、4種の異なる菌類に対するそれらの抗菌効果を試験した。サンプルは、以下において、実施例A、00、01、02、03、04、05、06、07、08、09、10および11と識別される。
【0065】
実施例Aおよび00は、カルボン酸化合物と、第1のジオールと、尿素と、塩基とを含む。しかし、本発明の意味における第2のジオールは組成物中にない。したがって、実施例Aおよび00は比較例である。
【0066】
実施例01および03~08は、ハイドロレート(実施例03~08)または植物抽出物(実施例01)をさらに含む。しかし、本発明の意味における第2のジオールは含まれていなかった。したがって、実施例01および03~08も比較例である。
【0067】
実施例02および09~11は、カルボン酸化合物と、第1のジオールと、本発明の意味における第2のジオールとを含む。したがって、実施例02および09~11は、本発明による組成物の例である。実施例A、00、01および03~08、そして実施例02および09~11は、尿素および塩基を含む。さらに、実施例09~11はハイドロレートをさらに含む。
【0068】
組成物は本質的に、下記表2に示す以下の重量パーセントの成分からなるものであった。
【0069】
【0070】
「ad 100」という用語は、実施例の総量が100重量パーセントになるような量のプロピレングリコールを実施例が含んでいたことを示す。
【0071】
実施例の組成物の生成を、実施例11に関して以下で例示的に説明する。
【0072】
第1の工程において、プロピレングリコール(商品名:PROPYLENE GLYCOL;供給業者:SigmaAldrich)68.9gと、デシレングリコール(商品名:SYMCLARIOL;供給業者:Symrise)1gと、尿素(商品名:UREA;供給業者:SigmaAldrich)18gとを混合し、尿素が完全に溶解するまで混合物を撹拌しながら、約55℃に加熱した。透明で均質な溶液が得られたら、絶えず撹拌しながら溶液を冷却した。次いで、乳酸(商品名:LACTIC ACID;供給業者:Agrar)9gと、水酸化ナトリウム(商品名:水酸化ナトリウム 30%;供給業者:SigmaAldrich)3gと、ミントハイドロレート(マルバハッカ(Mentha Rotundifolia)葉抽出物;商品名:IDROLATO MENTA;供給業者:Bionap)0.1gとを30℃超の温度で組成物に加え、均質な組成物が得られるまで組成物を混合した。
【0073】
実施例Aおよび実施例00~10をそれに準じて調製した。
【0074】
2つのフェーズ、すなわちフェーズA(定性試験)およびフェーズB(最小阻止濃度(MIC)の評価による定量試験)において、上述の実施例に対する実験を実施した。
【0075】
フェーズA-定性試験
上に挙げた実施例の活性を、以下の4種の菌類:
・カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
・紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)
・毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)
・スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)
に対して定性的に試験した。
【0076】
爪真菌症の症例から株を分離し、形態学的に同定した。
【0077】
表面に1mlの真菌懸濁液を接種した、サブロー寒天を含む150mmペトリ皿内で定性試験を実施した。懸濁液が完全に吸収されるまで、ペトリ皿を層流フード内に放置した。
【0078】
各実施例100μlを12mm滅菌ディスク上に置いた。次いで、ディスクを寒天表面に置いた。
【0079】
次いで、プレートを25℃でインキュベートした。
【0080】
C.アルビカンスについては24時間後および48時間後、糸状菌株である毛瘡白癬菌およびS.ブレビカウリスについては4日後および6日後、糸状菌株である紅色白癬菌については5日後および6日後に、各生成物の抑制ゾーンを測定した。
【0081】
2つのパートで試験を実施した。パート1の間に、サンプルA、00、01、02、03、04および05を評価した。パート2の間に、サンプル06、07、08、09、10および11を評価した。
【0082】
結果
パート1の結果を下記表3に示す。数値は、mmで表された真菌増殖抑制ゾーンを表す。「st」という用語は、「汚れた」ゾーンに対する静真菌作用を示し、これは真菌の増殖の低下を表す。各真菌および各時点において達成された最も高い真菌抑制を太字で示す。
【0083】
【0084】
実施例2は、すべての株に対して活性が最も高かった。実施例5は、実施例A、00、01、03および04よりも毛瘡白癬菌に対する活性が高かったが、実施例2よりは依然として活性が低かった。
【0085】
第2のパートでは、実施例06~11を試験した。サンプルAを基準参照として試験に含めた。第2のパートの結果を下記表4に示す。各真菌および各時点において達成された最も高い真菌抑制を太字で示す。
【0086】
【0087】
実施例09、10および11の活性は同等であったが、実施例11は、C.アルビカンスに対する活性が最も高かった。
【0088】
要約すると、上に示した定性試験のパート1および2は、実施例02、09、10および11が最も高い抗真菌効果を有することを示す。注目すべきことに、カルボン酸化合物および第1のジオールに加えて本発明の意味における第2のジオールを含んでいた試験された実施例は、実施例02、09、10および11だけである。
【0089】
フェーズB-定量試験(最小阻止濃度(MIC)の評価)
定性試験に使用されたものと同じ真菌株に対してサンプルA、02、08および11を試験した。
【0090】
試験方法は、液体基質中での微量希釈であった。サブロー液体培地を栄養源として使用した。真菌を接種した最終濁度0.5 DMFの懸濁液を調製した。濁度とは、肉眼では通常見えない多数の個々の粒子によって引き起こされる、流体の白濁または濁りである。
【0091】
24ウェル滅菌プレート内で微量希釈液を調製し、これを35℃の暗所でインキュベートした。
【0092】
C.アルビカンスについては、24時間後に最初の測定を実施し、48時間後に最終MICを測定した。糸状菌株である毛瘡白癬菌、紅色白癬菌およびS.ブレビカウリスについては、接種から4日後に測定を実施した。
【0093】
結果を下記表5に示す。数値は、真菌増殖の抑制を示した実施例の最小濃度を示す。
【0094】
【0095】
結果は、実施例11が最も効果的であり、そのすぐ後に実施例02が続くことを示す。
【0096】
要約すると、本明細書に示す実験は、カルボン酸化合物、ならびに、小さい第1のジオールおよびより大きい第2のジオールを含む本発明による組成物が、第2のジオールを含まない組成物と比べて抗真菌特性を改善したことを示す。
【0097】
さらに、実験を1週間後に繰り返したとき、抗真菌性能が損なわれた実施例02とは対照的に、実施例11は同じMICを示すことが本発明者らによって明らかになった。注目すべきことに、実施例02と実施例11との違いは、実施例11にはミントハイドロレートが存在することのみである。したがって、実施例02および実施例11はいずれも優れた抗真菌効果を示すが、ハイドロレート、特にミントハイドロレートの存在により、組成物の貯蔵性が改善するようである。
【0098】
約0.4重量パーセントの量のポリクアテルニウム-10を添加することにより、抗真菌効果に影響することなく上述の実施例にゲル様特性が与えられたことに留意されたい。ポリマーが組成物中で完全に分散し透明なゲルが得られるまで、撹拌および混合しながら、ポリクアテルニウム-10を上述の組成物に加えた。