(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016606
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】画像取得システムおよび画像取得方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20220114BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190738
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2021121819の分割
【原出願日】2018-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元胤
(72)【発明者】
【氏名】大西 達也
(57)【要約】
【課題】対象物の径方向のいずれの部分に対しても、鮮明な放射線画像を取得することができる画像取得システムおよび画像取得方法を提供する。
【解決手段】画像取得システム1は、対象物20に向けて放射線を出力する放射線源2と、回転軸線L周りで対象物20を回転させるように構成された回転ステージ6と、対象物20を透過した放射線が入力される入力面11aとTDI制御可能なイメージセンサ13とを有する放射線カメラ4と、対象物20の撮像面Pにおける放射線画像を生成する画像処理装置10と、を備える。回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度βは、対象物20の内周部における拡大率M
inが対象物20の外周部における拡大率M
outよりも大きくなるように設定されている。放射線カメラ4は、回転ステージ6による対象物20の回転速度に同期してイメージセンサ13におけるTDI制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、
回転軸線周りで前記対象物を回転させるように構成された回転ステージと、
前記対象物を透過した前記放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有し、入力された前記放射線を撮像して画像データを出力する放射線カメラと、
前記回転ステージを前記回転軸線方向に移動制御し、前記放射線源に対して前記対象物を近接および離間させるように構成されたステージ移動制御部と、
前記画像データに基づいて前記対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像処理装置と、を備え、
前記放射線カメラは、前記回転ステージによる前記対象物の回転速度に同期して前記イメージセンサにおけるTDI制御を行う、画像取得システム。
【請求項2】
前記回転ステージまたは前記放射線カメラを保持し、前記回転ステージの前記回転軸線と前記放射線カメラの前記入力面とのなす角度を調整するように構成された角度調整部を更に備える、請求項1に記載の画像取得システム。
【請求項3】
前記角度調整部は、前記回転軸線に対して前記放射線カメラの前記入力面が傾斜するように前記放射線カメラを保持する、請求項2に記載の画像取得システム。
【請求項4】
前記角度調整部は、前記放射線カメラの前記入力面に対して前記回転軸線が傾斜するように前記回転ステージを保持する、請求項2に記載の画像取得システム。
【請求項5】
前記放射線カメラは、前記入力面を有するシンチレータを含み、前記イメージセンサは、前記放射線の入力に応じて前記シンチレータが発するシンチレーション光を撮像する、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像取得システム。
【請求項6】
前記イメージセンサは、前記入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像取得システム。
【請求項7】
回転ステージを用い、回転軸線周りで対象物を所定の速度で回転させる回転ステップと、
回転している前記対象物に向けて放射線源から放射線を出力する放射線出力ステップと、
前記対象物を透過した前記放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有する放射線カメラを用い、入力された前記放射線を撮像して画像データを出力する放射線撮像ステップと、
前記回転ステージを前記回転軸線方向に移動制御し、前記放射線源に対して前記対象物を近接または離間させる移動ステップと、
前記画像データに基づいて前記対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像生成ステップと、を含み、
前記放射線撮像ステップでは、前記回転ステージによる前記対象物の回転速度に同期して前記イメージセンサにおけるTDI制御を行う、画像取得方法。
【請求項8】
前記回転ステージまたは前記放射線カメラを回動させることにより、前記回転ステージの前記回転軸線と前記放射線カメラの前記入力面とのなす角度を調整する調整ステップを更に含む、請求項7に記載の画像取得方法。
【請求項9】
前記調整ステップでは、前記回転軸線に対して前記放射線カメラの前記入力面が傾斜するように前記放射線カメラを回動させる、請求項8に記載の画像取得方法。
【請求項10】
前記調整ステップでは、前記放射線カメラの前記入力面に対して前記回転軸線が傾斜するように前記回転ステージを回動させる、請求項8に記載の画像取得方法。
【請求項11】
前記放射線カメラは、前記入力面を有するシンチレータを含み、前記放射線撮像ステップでは、前記放射線の入力に応じて前記シンチレータが発するシンチレーション光を撮像する、請求項7~10のいずれか一項に記載の画像取得方法。
【請求項12】
前記イメージセンサは、前記入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである、請求項7~10のいずれか一項に記載の画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像取得システムおよび画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される対象物にX線を照射し、対象物を透過したX線を検出してTDI(時間遅延積分)制御を行うことにより、対象物のX線画像を取得する装置が知られている(特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の装置では、ベルトコンベアにより対象物が搬送される。X線センサは、搬送方向と直交する方向に並べられた複数の検出素子からなる素子列が、搬送方向に複数段並べられた構成を有する。特許文献2に記載の装置では、試料(対象物)を収納した容器をX方向に移動させつつ、その容器を回転させる。TDIカメラは、試料の搬送速度に同期した撮像を行う。容器の角速度は、TDI積算方向の移動速度とX線源の焦点から回転中心までの距離との比に等しくなるように設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-174545号公報
【特許文献2】特開2017-53778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、回転軸線周りに回転させられた対象物に放射線を照射し、TDI制御可能なカメラを用いて放射線画像を取得する装置について検討する。この装置において、回転軸線は、カメラのセンサの受光面(またはその延長面)に交差する。対象物の内周部の速度と、対象物の外周部の速度とは異なる。内周部の速度に基づいてTDI制御が行われた場合、取得される放射線画像は、外周部において不鮮明になり得る。すなわち、対象物の径方向のいずれかの部分の速度に基づいてTDI制御が行われた場合、取得される放射線画像は、他の部分において不鮮明になり得る。このように、半径の違いに起因する速度(周速度)の違いは、TDI制御による鮮明な放射線画像を取得することを困難にしている。
【0005】
本開示は、対象物の径方向のいずれの部分に対しても、鮮明な放射線画像を取得することができる画像取得システムおよび画像取得方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る画像取得システムは、対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、回転軸線周りで対象物を回転させるように構成された回転ステージと、対象物を透過した放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有し、入力された放射線を撮像して画像データを出力する放射線カメラと、回転ステージを回転軸線方向に移動制御し、放射線源に対して対象物を近接および離間させるように構成されたステージ移動制御部と、画像データに基づいて対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像処理装置と、を備え、放射線カメラは、回転ステージによる対象物の回転速度に同期してイメージセンサにおけるTDI制御を行う。
【0007】
本開示の別の態様に係る画像取得方法は、回転ステージを用い、回転軸線周りで対象物を所定の速度で回転させるステップ(回転ステップ)と、回転している対象物に向けて放射線源から放射線を出力するステップ(放射線出力ステップ)と、対象物を透過した放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有する放射線カメラを用い、入力された放射線を撮像して画像データを出力するステップ(放射線撮像ステップ)と、回転ステージを回転軸線方向に移動制御し、放射線源に対して対象物を近接または離間させるステップ(移動ステップ)と、画像データに基づいて対象物の撮像面における放射線画像を生成するステップ(画像生成ステップ)と、を含み、放射線撮像ステップでは、回転ステージによる対象物の回転速度に同期してイメージセンサにおけるTDI制御を行う。
【0008】
上記の画像取得システムおよび画像取得方法によれば、回転ステージによる対象物の回転速度に同期して、イメージセンサにおけるTDI制御が行われる。対象物の撮像面のうち、内周部(回転軸線に最も近い部分)の速度は、外周部(回転軸線から最も遠い部分)の速度より遅い。回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面との間には、鋭角である角度が形成されている。よって、放射線源と内周部を透過した放射線が入力される入力面の部分との距離は、放射線源と外周部を透過した放射線が入力される入力面の部分との距離よりも長い。このことは、内周部における拡大率は、外周部における拡大率よりも大きいことを意味する。TDI制御における所定のラインスピードに適応する搬送スピードは拡大率に反比例する。上記した拡大率の大小関係によれば、内周部と外周部の速度差の影響が緩和される。さらに、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度が、放射線源と対象物内の撮像面との距離であるFODに応じて設定されることにより、内周部と外周部とにおいて、拡大率の比が速度比の逆数となり、フォーカスを合わせることができる。その結果、内周部と外周部の間のいずれの部分でも、フォーカスを合わせることができる。よって、対象物の径方向のいずれの部分に対しても、鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0009】
ステージ移動制御部によれば、放射線源と対象物との距離を調整することができる。言い換えれば、対象物の回転軸線方向(すなわち厚み方向)の任意の位置に、上記したFODに基づく撮像面を設定することができる。この場合、放射線源が不動であれば、FODは一定とみなせる。対象物の厚み方向の任意の位置の放射線画像を取得することができる。
【0010】
いくつかの態様において、画像取得システムは、回転ステージまたは放射線カメラを保持し、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を調整するように構成された角度調整部を更に備える。この場合、角度調整部によって、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0011】
画像取得システムのいくつかの態様において、角度調整部は、回転軸線に対して放射線カメラの入力面が傾斜するように放射線カメラを保持する。この場合、放射線カメラの姿勢を調整し、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0012】
画像取得システムのいくつかの態様において、角度調整部は、放射線カメラの入力面に対して回転軸線が傾斜するように回転ステージを保持する。この場合、回転ステージの姿勢を調整し、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0013】
画像取得システムのいくつかの態様において、放射線カメラは、入力面を有するシンチレータを含み、イメージセンサは、放射線の入力に応じてシンチレータが発するシンチレーション光を撮像する。この場合、対象物の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0014】
画像取得システムのいくつかの態様において、イメージセンサは、入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである。この場合、対象物の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0015】
移動ステップによれば、放射線源と対象物との距離を調整することができる。言い換えれば、対象物の回転軸線方向(すなわち厚み方向)の任意の位置に、上記したFODに基づく撮像面を設定することができる。この場合、放射線源が不動であれば、FODは一定とみなせる。対象物の厚み方向の任意の位置の放射線画像を取得することができる。
【0016】
いくつかの態様において、画像取得方法は、回転ステージまたは放射線カメラを回動させることにより、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を調整するステップ(調整ステップ)を更に含む。この場合、角度を調整するステップによって、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0017】
画像取得方法のいくつかの態様において、調整ステップでは、回転軸線に対して放射線カメラの入力面が傾斜するように放射線カメラを回動させる。この場合、放射線カメラの姿勢を調整し、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0018】
画像取得方法のいくつかの態様において、調整ステップでは、放射線カメラの入力面に対して回転軸線が傾斜するように回転ステージを回動させる。この場合、回転ステージの姿勢を調整し、回転ステージの回転軸線と放射線カメラの入力面とのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0019】
画像取得方法のいくつかの態様において、放射線カメラは、入力面を有するシンチレータを含み、放射線撮像ステップでは、放射線の入力に応じてシンチレータが発するシンチレーション光を撮像する。この場合、対象物の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0020】
画像取得方法のいくつかの態様において、イメージセンサは、入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである。この場合、対象物の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のいくつかの態様によれば、対象物の径方向のいずれの部分に対しても、鮮明な放射線画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る画像取得装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の画像取得装置における放射線源と対象物と放射線カメラとの位置関係を説明するための図である。
【
図3】
図1の画像取得装置におけるFOR、FDD、および放射線カメラの傾きを説明するための図である。
【
図4】回転する対象物の内周部の速度と外周部の速度を説明するための図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(d)は、ステージ移動制御部による撮像面の移動を示す図である。
【
図6】
図1の画像取得装置による画像取得方法の手順を示すフロー図である。
【
図7】第1実施形態の変形例の概略構成を示す図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る画像取得装置の概略構成を示す図である。
【
図9】
図8の画像取得装置による画像取得方法の手順を示すフロー図である。
【
図10】本開示の第3実施形態に係る画像取得装置の概略構成を示す図である。
【
図11】
図10の画像取得装置における放射線源と対象物と放射線カメラとの位置関係を説明するための図である。
【
図12】シミュレーションの各条件を説明するための図である。
【
図13】比較例1に係るシミュレーション結果を示す図である。
【
図14】比較例2に係るシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】実施例に係るシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0024】
図1および
図2に示されるように、画像取得システム1は、対象物20の放射線画像を取得するための装置である。対象物20は、たとえば回転軸線Lを中心とする円筒状のホイール部22と、ホイール部22の周囲に巻き付けられたロール部21とを含む。ホイール部22とロール部21との間には、環状の境界面23が形成される。画像取得システム1は、ホイール部22が放射線画像に含まれないように構成されてもよい。すなわち、画像取得システム1は、ロール部21のみの放射線画像を取得するように構成されてもよい。ロール部21は、たとえば、ロール状に巻かれたチップコンデンサである。ロール部21は、ロール状に巻かれたセパレータ等であってもよい。対象物20がホイール部22を有さずに、対象物20が1個のディスク等であってもよい。その場合、対象物20が回転軸線Lを有する。画像取得システム1が対象物20の検査に用いられる場合、ロール部21は、検査対象の部分すなわち検査部である。
【0025】
画像取得システム1は、ロール部21のうち、厚み方向すなわち回転軸線L方向の所定の位置にある撮像面における放射線画像を取得する。言い換えれば、画像取得システム1は、ロール部21のうちの撮像面にフォーカスした放射線画像を取得する。画像取得システム1は、放射線画像を取得することにより、対象物20のロール部21に存在し得る、たとえば異物や欠陥などを検出可能である。画像取得システム1は、たとえば、ポリアミド繊維あるいはポリオレフィン繊維、分割型複合繊維、単一繊維、または芯鞘型複合繊維からなる対象物、および、対象物中に存在し得る金属からなる異物等を検出可能である。
【0026】
画像取得システム1は、白色X線等の放射線を発生させる放射線発生装置3を備える。放射線発生装置3は、対象物20に向けて放射線を出力する放射線源2を有する。放射線源2は、X線出射部からコーンビームX線を出射(出力)する。放射線源2は、たとえばマイクロフォーカスX線源であってもよく、ミリフォーカスX線源であってもよい。放射線源2から出射されるX線は放射線束2aを形成する。この放射線束2aが存在する領域が、放射線源2の出射領域である。対象物20のホイール部22が放射線画像に含まれないようにするため、X線出射部の形状または構造が工夫されていてもよい。放射線源2は、管電圧および管電流を調整可能に構成されている。
【0027】
画像取得システム1は、対象物20を保持し、回転軸線L周りで対象物20を回転させるように構成された回転ステージ6と、放射線源2から出力されて対象物20を通過した放射線を入力して撮像する放射線カメラ4とを備える。回転ステージ6は、たとえば給電により駆動されるモータと、モータに連結されたギア部と、ギア部を介して回転させられるステージ本体とを含み得る。回転ステージ6は、たとえば、ステージ本体を等速回転させる。回転ステージ6における回転速度は、適宜に調整可能になっている。
【0028】
放射線カメラ4は、たとえば、対象物20を通過した放射線が入力される入力面11aを含み、放射線の入力に応じてシンチレーション光を発生させるシンチレータ11と、シンチレータ11で発生したシンチレーション光を透過させるFOP(Fiber Optic Plate)12と、FOP12を透過したシンチレーション光が入力される受光面13aを含み、シンチレーション光を撮像して画像データを出力するイメージセンサ13とを有する。放射線カメラ4は、たとえば、イメージセンサ13にシンチレータ11付きのFOP12がカップリングされた間接変換型のカメラである。放射線カメラ4は、シンチレータ11の入力面11aに入力された放射線を間接的に撮像して、画像データを出力する。
【0029】
シンチレータ11は、板状(たとえば平板状)の波長変換部材である。シンチレータ11は、対象物20を透過し入力面11aに入力された放射線をシンチレーション光に変換する。比較的低いエネルギーの放射線は、入力面11a側で変換され、入力面11aから出射(出力)される。比較的高いエネルギーの放射線は、シンチレータ11の裏面で変換され、裏面から出射(出力)される。
【0030】
FOP12は、板状(たとえば平板状)の光学デバイスである。FOP12は、たとえばガラスファイバからなり、シンチレーション光等を高効率で伝達する。FOP12は、白色X線等の放射線を遮蔽する。
【0031】
イメージセンサ13は、TDI(時間遅延積分)駆動が可能なエリアイメージセンサである。イメージセンサ13は、たとえば、CCDエリアイメージセンサである。イメージセンサ13は、複数のCCDがピクセル方向に一列に並べられた素子列が、対象物20の移動方向に対応して、積分方向に複数段並べられた構成を有する。積分方向とは、ピクセル方向に直交する方向であり、
図1および
図3における紙面垂直方向に相当する。イメージセンサ13は、後述するタイミング制御部16によって、対象物20の速度(周速度)に合わせて電荷転送を行うように制御される。すなわち、イメージセンサ13は、回転ステージ6による対象物20の回転速度に同期して、受光面13aにおける電荷転送を行う。これにより、S/N比のよい放射線画像を得ることができる。
【0032】
なお、イメージセンサ13は、TDI(時間遅延積分)駆動が可能なCMOSエリアイメージセンサであってもよい。また、イメージセンサ13は、TDI(時間遅延積分)駆動が可能なCCD-CMOSイメージセンサであってもよい。たとえば、CCD-CMOSイメージセンサは、特開2013-098420号公報あるいは特開2013-098853号公報に記載されているイメージセンサである。なお、「TDI駆動可能」であることは、「TDI制御可能」であることと同意である。
【0033】
画像取得システム1は、放射線カメラ4から出力された画像データに基づいて、対象物20の撮像面Pにおける放射線画像を生成する画像処理装置10と、画像処理装置10によって生成された放射線画像を表示する表示装置15と、放射線カメラ4における撮像タイミングを制御するタイミング制御部16とを備える。
【0034】
画像処理装置10は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。画像処理装置10は、放射線カメラ4から出力された放射線画像データに基づいて、対象物20の放射線画像を作成する画像処理プロセッサを有してもよい。画像処理プロセッサは、たとえば、放射線画像データを入力し、入力した放射線画像データに対して画像処理等の所定の処理を実行する。画像処理プロセッサは、作成した放射線画像を表示装置に出力する。
【0035】
表示装置15としては、公知のディスプレイが用いられ得る。なお、画像処理装置10には、図示しない入力装置が接続されてもよい。入力装置は、たとえばキーボードやマウス等であり得る。ユーザは、入力装置を用いて、対象物20の厚み、対象物20における境界面23の位置、または撮像面Pの位置等の各種パラメータを入力可能である。
【0036】
タイミング制御部16は、たとえば、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。タイミング制御部16は、放射線カメラ4における撮像タイミングを制御する制御プロセッサを有してもよい。制御プロセッサは、たとえば、ユーザの入力等により記憶された対象物20の厚み、対象物20における境界面23の位置、または撮像面Pの位置に基づいて、放射線カメラ4および回転ステージ6を制御する。なお、画像処理装置10およびタイミング制御部16は、単一のコンピュータにより実行されるプログラムとして構成してもよいし、個別に設けられるユニットとして構成してもよい。
【0037】
画像取得システム1は、更に、回転ステージ6を回転軸線L方向に昇降させるためのステージ昇降機7と、ステージ昇降機7における回転ステージ6の昇降を制御(移動制御)するように構成されたステージ昇降制御部(ステージ移動制御部)17とを備える。ステージ昇降機7としては、公知の昇降機が用いられ得る。ステージ昇降機7は、たとえば、回転軸線L上に配置されて回転ステージ6および対象物20を貫通するボールネジとモータ(駆動源)とを含んでもよい。ステージ昇降機7は、ネジ式に限られず、たとえば油圧等を駆動源とする伸縮式の昇降機であってもよい。
【0038】
ステージ昇降制御部17は、たとえば、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。ステージ昇降制御部17は、回転ステージ6の回転軸線L方向における移動を制御する制御プロセッサを有してもよい。制御プロセッサは、たとえば、ユーザの入力等により記憶された対象物20の厚み、または撮像面Pの位置に基づいて、ステージ昇降機7を制御する。ステージ昇降制御部17は、ステージ昇降機7を制御することにより、放射線源2に対して対象物20を近接または離間させる。すなわち、ステージ昇降制御部17は、放射線源2に対して対象物20を近接および離間させるように構成されている。
【0039】
以上説明した画像取得システム1の各構成は、図示しない筐体内に収容され、筐体内で固定されてもよい。また、上記各構成は、筐体に収容されずに、たとえばベース上に組みつけられてもよい。放射線源2、放射線カメラ4、および回転ステージ6のすべて又は少なくとも1つは、互いの相対的な位置関係を調節可能なように、移動可能であってもよい。画像処理装置10は、筐体に収容されてもよいし、筐体の外部に設置されてもよい。画像処理装置10、表示装置15、タイミング制御部16、およびステージ昇降制御部17のすべて又は少なくとも1つが、放射線源2、放射線カメラ4、および回転ステージ6が設けられた場所から離れた場所に設置されてもよい。画像処理装置10、タイミング制御部16、およびステージ昇降制御部17による制御は、無線通信を用いた遠隔操作であってもよい。
【0040】
続いて、放射線源2、回転ステージ6、および放射線カメラ4の配置および位置関係について説明する。
図1および
図2に示されるように、回転ステージ6は、たとえば、放射線源2と放射線カメラ4との間に設置される。より詳細には、回転ステージ6は、回転ステージ6の回転軸線Lが放射線源2の側方を通るような位置に設けられる。これにより、放射線源2の真下に、対象物20の境界面23が位置する。言い換えれば、境界面23の延長面(本実施形態では回転軸線Lを中心とする円筒面)が放射線源2を通るように、放射線発生装置3および回転ステージ6が配置されている。放射線源2の出射領域は、ロール部21を含む、または、ロール部21を通る。対象物20のロール部21を透過した放射線が放射線カメラ4の入力面11aに入力されるように、放射線カメラ4が配置されている(
図2参照)。言い換えれば、放射線カメラ4の入力面11aは、放射線源2および回転軸線Lを含む仮想平面を含むように設けられている。
【0041】
本実施形態では、放射線カメラ4は、その入力面11aが回転ステージ6の回転軸線Lに対して鋭角をなすように、傾斜して設置されている。これにより、得られる放射線画像において、ロール部21の内周部と外周部の速度差の影響が緩和される(詳しくは後述する)。本明細書において、「内周」、「外周」、「半径」および「径方向」との語は、回転軸線Lを基準として用いられる。
【0042】
さらに本実施形態では、放射線カメラ4を傾斜させるのみならず、回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度(上記した鋭角)が、放射線源2と対象物20内の撮像面Pとの距離であるFOD(Focus-Object Distance)に応じて設定されている。以下、
図3および
図4を参照して詳細に説明する。
【0043】
図3を参照して、内周側のFDD
inを基準として、それに適した外周部のFDD
outおよび放射線カメラ4の傾きθの計算について説明する。ここで、FDD(Focus-Detector Distance)は放射線源2と放射線カメラ4の入力面11aとの距離であり、添え字の「in」および「out」は、それぞれ「内周部」および「外周部」を意味する。まず、TDIカメラである放射線カメラ4を任意のラインスピードで駆動する際、そのラインスピードに適応する搬送スピードは、X線幾何学倍率(すなわち拡大率)に反比例する。内周部における拡大率M
inと、外周部における拡大率M
outは、以下の式(1)および式(2)で表される。
【0044】
【0045】
ここで、以下の式(3)の関係が成り立てば、内周部および外周部のいずれにおいてもフォーカスが合う。
【数3】
【0046】
式(1)、式(2)および式(3)と、角速度ωと接線方向の速度vの関係式(4)(
図4参照)とから、式(5)が導かれる。
【数4】
【数5】
【0047】
この式(5)を満たすように、放射線カメラ4を傾斜させてFDDを調整すれば、内周部および外周部のいずれにおいてもフォーカスが合う。なお、式(4)は、以下の式(6)および式(7)から導かれる(
図4も参照)。FODは、放射線カメラ4のラインスピードと回転ステージ6の回転速度の比を変えることで調整可能である。
【数6】
【数7】
【0048】
続いて、ロールの巻き厚wを式(8)のように定めると、内周部のFDD
inを基準として、それに適した外周部のFDD
outと放射線カメラ4の傾きθは、以下の式(9)~(11)のように計算される。なお、傾きθは、回転軸線Lに垂直な平面と放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度であるとも言える。
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0049】
このように、本実施形態では、回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度βが、放射線源2と対象物20内の撮像面Pとの距離であるFOD(Focus-Object Distance)に応じて設定されている。なお、角度β=π/2-角度θの関係であることは明らかである。基本的に、拡大率がn倍になると、イメージセンサ13上の像の移動速度もn倍になるため、TDI制御速度(電荷搬送速度)もn倍になる。現実的な拡大率を考えると、傾き角度θとしては20°~30°とする必要がある。
【0050】
続いて、
図5および
図6を参照して、画像取得システム1の動作すなわち放射線画像の取得方法について説明する。まず、ロール状に巻かれたチップコンデンサ等の対象物20を回転ステージ6に取り付け、回転ステージ6によって保持させる。次に、
図6に示されるように、FODを決定する(ステップS01)。FODは、所望の拡大率に基づいて決定することができる。
【0051】
次に、ステージ昇降制御部17が、FODに合わせてステージ昇降機7を駆動し、回転ステージ6を回転軸線L方向に移動させる(ステップS02(移動ステップ))。次に、回転ステージ6を用い、回転軸線L周りで対象物20を所定の速度で回転させる(ステップS03(回転ステップ))。次に、回転している対象物20に向けて放射線源2から照射線を出力・照射する(ステップS04(放射線出力ステップ))。対象物20のロール部21を透過した放射線が入力面11aに入力される。
【0052】
次に、放射線カメラ4が、回転ステージ6による対象物20の回転速度に同期して、イメージセンサ13におけるTDI制御を行う(ステップS05)。すなわち、ロールの回転速度と同期する速度で、イメージセンサ13を駆動する。そして、放射線カメラ4が、撮像面を撮像し(ステップS06)、画像データを出力する(ステップS07)(ステップS05~S07(放射線撮像ステップ))。画像処理装置10が、放射線カメラ4から出力された画像データを入力して、対象物20の撮像面Pにおける放射線画像を生成する(ステップS08(画像生成ステップ))。
【0053】
以上の一連の処理を経て、撮像面Pの放射線画像が取得される。本実施形態の画像取得システム1および画像取得方法によれば、回転ステージ6による対象物20の回転速度に同期して、イメージセンサ13におけるTDI制御が行われる。対象物20の撮像面Pのうち、内周部(回転軸線に最も近い部分)の速度は、外周部(回転軸線から最も遠い部分)の速度より遅い。回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとの間には、鋭角である角度βが形成されている。よって、放射線源2と内周部を透過した放射線が入力される入力面11aの部分との距離FDD
inは、放射線源2と外周部を透過した放射線が入力される入力面11aの部分との距離FDD
outよりも長い(
図3参照)。このことは、内周部における拡大率は、外周部における拡大率よりも大きいことを意味する(式(1)および(2)参照)。TDI制御における所定のラインスピードに適応する搬送スピードは拡大率に反比例する。上記した拡大率の大小関係によれば、内周部と外周部の速度差の影響が緩和される。さらに、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度が、放射線源2と対象物20内の撮像面Pとの距離であるFODに応じて設定されることにより、内周部と外周部とにおいて、拡大率の比が速度比の逆数となり、フォーカスを合わせることができる。その結果、内周部と外周部の間のいずれの部分でも、フォーカスを合わせることができる。よって、対象物20の径方向のいずれの部分に対しても、鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0054】
ここで、画像取得方法は、回転ステージ6を回転軸線L方向に移動制御し、放射線源2に対して対象物20を近接または離間させるステップを更に含んでもよい。たとえば、上述したステップS01~S08が終了した後に、対象物20を回転軸線L方向に移動させてもよい(ステップS02)。
図5(a)に示されるように、1回目の画像の生成では、撮像面Pは、ロール部21の下面付近に設定されている。そこで、
図5(b)に示されるように、回転軸線L方向の厚みの1/4(1/n:nは自然数)に相当する分、回転ステージ6を降下させる。これによって、ロール部21の下面から厚みの1/4程度上に撮像面Pを移動し、当該撮像面Pの鮮明な放射線画像を得ることができる。同様に、
図5(c)および
図5(d)に示されるように、回転ステージ6を降下させることにより、撮像面Pの位置を段階的に上げていくことができる。
【0055】
このステップによれば、放射線源2と対象物20との距離を調整することができる。言い換えれば、対象物20の回転軸線L方向(すなわち厚み方向)の任意の位置に、上記したFODに基づく撮像面Pを設定することができる。この場合、放射線源2が不動であれば、FODは一定とみなせる。対象物20の厚み方向の任意の位置の放射線画像を取得することができる。
【0056】
入力面11aを有するシンチレータ11と、放射線の入力に応じてシンチレータ11が発するシンチレーション光を撮像するイメージセンサ13とを有する放射線カメラ4によれば、対象物20の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0057】
画像取得システム1を用いた画像取得方法では、たとえば、最初のパラメータ(FOD等)の入力が済んだ段階で、自動的に上記ステップS02~S08が行われるように、画像処理装置10、タイミング制御部16、ステージ昇降制御部17、および表示装置15を設定しておいてもよい。また、ある撮像面Pに関して1枚の放射線画像を取得した後に、ステージ昇降制御部17によって1/nの移動を行い、次の撮像面Pに関する放射線画像を取得するようにしてもよい。このような厚み方向の異なる位置で放射線画像を取得することにより、たとえば発見された異物に関する情報(径方向または厚み方向における位置情報等)を製造工程にフィードバックすることも可能である。
【0058】
図7を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。
図7に示されるように、ステージ昇降機7およびステージ昇降制御部17が省略され、それに代えて、放射線発生装置3(放射線源2)を昇降(回転軸線L方向に移動)させる機構を備えた画像取得システム1Aが提供されてもよい。
図7では、放射線発生装置3の昇降機構の図示は省略されている。また、画像処理装置10、表示装置15、およびタイミング制御部16の図示も省略されている(この点、以下の
図10および
図11でも同様である)。
【0059】
このような画像取得システム1Aによっても、以下の式(12)により、FODに応じた放射線カメラ4の傾きθを計算することができる。
【数12】
【0060】
続いて、
図8および
図9を参照して、第2実施形態に係る画像取得システム1Bについて説明する。画像取得システム1Bが第1実施形態の画像取得システム1と違う点は、ステージ昇降機7およびステージ昇降制御部17が省略された点と、それに代えて、放射線カメラ4を回動させることにより、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度を調整するように構成された回動機構18および角度調整部19を備えた点である。回動機構18は、放射線カメラ4に連結された回動軸18aを含み、図示しないモータおよびギア等を有して放射線カメラ4を回動させる。回動機構18は、回転軸線Lに対して放射線カメラ4の入力面11aが傾斜するように放射線カメラ4を保持する。回動機構18の回動軸18aは、回転軸線Lおよび放射線源2を含む仮想平面に垂直であってよい。
【0061】
図9に示されるように、この画像取得システム1Bを用いた画像取得方法が、画像取得システム1を用いた画像取得方法と違う点は、FODの決定(ステップS01)に先立って、FDDを決定し(ステップS10)、そのFDDに応じて対象物20を設置する(ステップS11)点と、その後にFODを決定した(ステップS01)後、FDD、FOD,および巻き厚wに基づいて傾き角度θを算出し(ステップS12、式(11)(12)参照)、その傾き角度θとなるように角度調整部19によって回動機構18を制御し放射線カメラ4の角度を調整する(ステップS13(調整ステップ))点である。画像取得システム1におけるステージの移動(ステップS02、
図6参照)は実施されない。
【0062】
この画像取得システム1Bによっても、上記した画像取得システム1,1Aと同様の作用・効果が奏される。また角度を調整するステップによって、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0063】
また角度を調整するステップでは、放射線源2と対象物20内の撮像面Pとの距離であるFODに応じて、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度を調整するので、任意のFODに対してフォーカスを合わせることができる。
【0064】
また角度を調整するステップでは、回転軸線Lに対して放射線カメラ4の入力面11aが傾斜するように放射線カメラ4を回動させるので、放射線カメラ4の姿勢を調整し、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0065】
続いて、
図10および
図11を参照して、第3実施形態に係る画像取得システム1Cについて説明する。画像取得システム1Cが第1実施形態の画像取得システム1と違う点は、ステージ昇降機7およびステージ昇降制御部17が省略された点と、境界面23の延長面が放射線源2を通らないように回転ステージ6および対象物20が傾斜させられた点と、撮像面Pの内周部に対応する放射線束2aの端縁(光軸)が、放射線カメラ4の入力面11aに直交するように放射線カメラ4が配置された点である。
【0066】
この画像取得システム1Cにおいても、上記式(1)~(5)と同様のことが言え、対象物20の傾き角度θは、下記式(13)によって計算される。画像取得システム1Cにおいて、回転軸線Lと入力面11aとのなす角度βについて、角度β=π/2-角度θの関係であることは明らかである。
【数13】
【0067】
なお、上述した画像取得システム1Bにおける回動機構18および角度調整部19と同様の機構を、画像取得システム1Cの回転ステージ6に適用してもよい。この場合、回転ステージ6の姿勢を調整し、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度を、FODに応じた適切な角度に調整することができる。
【0068】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、上記実施形態では、放射線カメラ4が、イメージセンサ13にシンチレータ11付きのFOP12がカップリングされた間接変換型のカメラである場合について説明したが、放射線カメラはこの形態に限られない。たとえば、FOP12が省略され、イメージセンサ13にシンチレータ11がカップリングされた間接変換型の放射線カメラが採用されてもよい。この場合も、シンチレータ11の入力面11aが、放射線カメラの入力面であり、上記した角度の基準となる。また、イメージセンサ13のみからなる直接変換型の放射線カメラが採用されてもよい。この場合、イメージセンサ13の受光面13aが、放射線カメラの入力面であり、上記した角度の基準となる。直接変換型の放射線カメラにおいても、イメージセンサ13によるTDI制御は可能である。また、イメージセンサ13にFOPがカップリングされた直接変換型の放射線カメラが採用されてもよい。この場合、FOPの表面が、放射線カメラの入力面であり、上記した角度の基準となる。これらの直接変換型放射線イメージセンサを用いた場合でも、対象物の鮮明な放射線画像を取得することができる。
【0069】
また、回転ステージ6の回転軸線Lと放射線カメラ4の入力面11aとのなす角度は、FODに応じて設定されていればよく、上記式(11)、(12)、(13)に一致しなければならないわけではない。上記式(11)、(12)、(13)とは多少異なる角度であっても、径方向のいずれの部分に対しても鮮明な放射線画像を取得することは可能である。また、回転ステージ6または放射線カメラ4が回動できる態様の画像取得システムに限られず、「FODに応じて設定された」角度で回転ステージ6または放射線カメラ4が固定されており、その後の角度調整が不能になっている画像取得システムが、本発明の一態様として提供されてもよい。
【0070】
また、回転ステージ6および放射線カメラ4の両方を角度調整可能な構成が採用されてもよい。なお、回転ステージ6を傾ける場合には、放射線カメラ4をより傾ける必要がある。
【0071】
上述の複数の実施形態のいずれか2つ又はそれ以上が組み合わされた画像取得システムが提供されてもよい。たとえば、画像取得システム1における放射線カメラの傾斜と回転ステージ6の昇降、画像取得システム1Aにおける放射線発生装置3の昇降、画像取得システム1Bにおける放射線カメラ4の回動(角度調整)、および、画像取得システム1Cにおける回転ステージ6と対象物20の傾斜のうち、いずれか2つ又はそれ以上が組み合わされた画像取得システムが提供されてもよい。
【0072】
(試験例)
第1実施形態に係る画像取得システム1の効果を検証するため、シミュレーションを行った。内周部の半径をr
in=120mm、外周部の半径r
out=150mmと想定した。
図12に示されるように、内周部に位置する異物1(符号F1で示される)を基準として、巻き厚方向の真ん中に位置する異物2(符号F2で示される)の速度比は1.125倍であり、外周部に位置する異物3(符号F3で示される)の速度比は1.25である。
【0073】
比較例1として、放射線カメラ4を傾けない条件、すなわち画像取得システム1において放射線カメラ4の入力面11aが回転軸線Lに直交する条件でシミュレーションを行った。また比較例2として、放射線カメラ4を傾け、放射線カメラ4の入力面11aが回転軸線Lに対して鋭角をなすが、FODに応じた適切な角度の半分程度の条件でシミュレーションを行った。比較例1および2では、内周部の異物1の搬送速度に合うように、TDI転送速度を設定した。実施例は、放射線カメラ4の入力面11aが回転軸線Lに対して鋭角をなし、FODに応じた適切な角度である条件でシミュレーションを行った。なお、実施例における傾き角度は約34°であり、比較例2における傾き角度は約17°であった。シミュレーション条件は、FDD:300mm、FOD:100mmとした。比較例1、比較例2、および実施例のシミュレーション結果を
図13,14,15にそれぞれ示す。なお、各図において、搬送方向Dが併記されている。
【0074】
図13に示されるように、放射線カメラ4を傾けなかった場合、異物1の放射線画像は鮮明であるが、異物2,3については速度が合っていないため搬送方向Dにボケたような画像となり、コントラストが悪化した。また
図14に示されるように、放射線カメラ4を傾けてはいるが角度が適切でなかった場合も、異物2,3については速度が合っていないため搬送方向Dにボケたような画像となり、コントラストが悪化した。
【0075】
図15に示されるように、放射線カメラ4を傾け、FODに応じた適切な角度を設定した場合、速度差(速度比)が吸収され、径方向のすべての位置でボケなく物体を撮影できた。
【符号の説明】
【0076】
1…画像取得システム、2…放射線源、3…放射線発生装置、4…放射線カメラ、6…回転ステージ、7…ステージ昇降機、10…画像処理装置、11…シンチレータ、11a…入力面、13…イメージセンサ、13a…受光面、15…表示装置、16…タイミング制御部、17…ステージ昇降制御部(ステージ移動制御部)、20…対象物、21…ロール部、22…ホイール部、23…境界面、L…回転軸線、P…撮像面。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、
回転軸線周りで前記対象物を回転させるように構成された回転ステージと、
前記対象物を透過した前記放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有し、入力された前記放射線を撮像して画像データを出力する放射線カメラと、
前記放射線源を前記回転軸線方向に移動制御し、前記対象物に対して前記放射線源を近接および離間させるように構成された移動制御部と、
前記画像データに基づいて前記対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像処理装置と、を備え、
前記放射線カメラは、前記回転ステージによる前記対象物の回転速度に同期して前記イメージセンサにおけるTDI制御を行う、画像取得システム。
【請求項2】
前記回転ステージまたは前記放射線カメラを保持し、前記回転ステージの前記回転軸線と前記放射線カメラの前記入力面とのなす角度を調整するように構成された角度調整部を更に備える、請求項1に記載の画像取得システム。
【請求項3】
前記角度調整部は、前記回転軸線に対して前記放射線カメラの前記入力面が傾斜するように前記放射線カメラを保持する、請求項2に記載の画像取得システム。
【請求項4】
前記角度調整部は、前記放射線カメラの前記入力面に対して前記回転軸線が傾斜するように前記回転ステージを保持する、請求項2に記載の画像取得システム。
【請求項5】
前記放射線カメラは、前記入力面を有するシンチレータを含み、前記イメージセンサは、前記放射線の入力に応じて前記シンチレータが発するシンチレーション光を撮像する、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像取得システム。
【請求項6】
前記イメージセンサは、前記入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像取得システム。
【請求項7】
回転ステージを用い、回転軸線周りで対象物を所定の速度で回転させる回転ステップと、
回転している前記対象物に向けて放射線源から放射線を出力する放射線出力ステップと、
前記対象物を透過した前記放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有する放射線カメラを用い、入力された前記放射線を撮像して画像データを出力する放射線撮像ステップと、
前記放射線源を前記回転軸線方向に移動制御し、前記対象物に対して前記放射線源を近接または離間させる移動ステップと、
前記画像データに基づいて前記対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像生成ステップと、を含み、
前記放射線撮像ステップでは、前記回転ステージによる前記対象物の回転速度に同期して前記イメージセンサにおけるTDI制御を行う、画像取得方法。
【請求項8】
前記回転ステージまたは前記放射線カメラを回動させることにより、前記回転ステージの前記回転軸線と前記放射線カメラの前記入力面とのなす角度を調整する調整ステップを更に含む、請求項7に記載の画像取得方法。
【請求項9】
前記調整ステップでは、前記回転軸線に対して前記放射線カメラの前記入力面が傾斜するように前記放射線カメラを回動させる、請求項8に記載の画像取得方法。
【請求項10】
前記調整ステップでは、前記放射線カメラの前記入力面に対して前記回転軸線が傾斜するように前記回転ステージを回動させる、請求項8に記載の画像取得方法。
【請求項11】
前記放射線カメラは、前記入力面を有するシンチレータを含み、前記放射線撮像ステップでは、前記放射線の入力に応じて前記シンチレータが発するシンチレーション光を撮像する、請求項7~10のいずれか一項に記載の画像取得方法。
【請求項12】
前記イメージセンサは、前記入力面を有する直接変換型放射線イメージセンサである、請求項7~10のいずれか一項に記載の画像取得方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一態様に係る画像取得システムは、対象物に向けて放射線を出力する放射線源と、回転軸線周りで対象物を回転させるように構成された回転ステージと、対象物を透過した放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有し、入力された放射線を撮像して画像データを出力する放射線カメラと、放射線源を回転軸線方向に移動制御し、対象物に対して放射線源を近接および離間させるように構成された移動制御部と、画像データに基づいて対象物の撮像面における放射線画像を生成する画像処理装置と、を備え、放射線カメラは、回転ステージによる対象物の回転速度に同期してイメージセンサにおけるTDI制御を行う。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の別の態様に係る画像取得方法は、回転ステージを用い、回転軸線周りで対象物を所定の速度で回転させるステップ(回転ステップ)と、回転している対象物に向けて放射線源から放射線を出力するステップ(放射線出力ステップ)と、対象物を透過した放射線が入力される入力面とTDI(時間遅延積分)制御可能なイメージセンサとを有する放射線カメラを用い、入力された放射線を撮像して画像データを出力するステップ(放射線撮像ステップ)と、放射線源を回転軸線方向に移動制御し、対象物に対して放射線源を近接または離間させるステップ(移動ステップ)と、画像データに基づいて対象物の撮像面における放射線画像を生成するステップ(画像生成ステップ)と、を含み、放射線撮像ステップでは、回転ステージによる対象物の回転速度に同期してイメージセンサにおけるTDI制御を行う。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
移動制御部によれば、放射線源と対象物との距離を調整することができる。言い換えれば、対象物の回転軸線方向(すなわち厚み方向)の任意の位置に、上記したFODに基づく撮像面を設定することができ、対象物の厚み方向の任意の位置の放射線画像を取得することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
移動ステップによれば、放射線源と対象物との距離を調整することができる。言い換えれば、対象物の回転軸線方向(すなわち厚み方向)の任意の位置に、上記したFODに基づく撮像面を設定することができ、対象物の厚み方向の任意の位置の放射線画像を取得することができる。