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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166077
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】RNA誘導性転写制御
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221025BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N1/19 ZNA
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124144
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2020200649の分割
【原出願日】2014-06-04
(31)【優先権主張番号】61/830,787
(32)【優先日】2013-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ、 ジョージ エム.
(72)【発明者】
【氏名】マリ、 パラシャント ジー.
(72)【発明者】
【氏名】エスベルト、 ケビン エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DNA結合タンパク質-ガイドRNA複合体を使用して、標的DNAの発現を制御する方法を提供する。
【解決手段】スペーサー配列、tracrメイト配列、及びtracr配列を有する2種類のガイドRNAを細胞に含ませること、前記tracr配列はその一部が前記tracrメイト配列にハイブリダイズし、前記tracrメイト配列と前記tracr配列はリンカー核酸配列で連結されており、前記スペーサー配列のそれぞれはDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である、ドナー核酸を前記細胞に含ませること、及びCas9タンパク質ニッカーゼを前記細胞に含ませることを含み、前記2種類のガイドRNAのそれぞれは前記Cas9タンパク質ニッカーゼと共に前記DNA標的核酸に共局在し、相同組み換えにより前記ドナー核酸が前記DNA標的核酸にオフセットニックで挿入される、相同組み換えにより細胞にドナー核酸を挿入する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
前記DNAに結合し且つ前記1種類以上のRNAによってガイドされるヌクレアーゼ欠損(nuclease-null)Cas9タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する、
細胞において標的核酸の発現を制御する方法。
【請求項2】
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸が、RNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が真核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記RNAが約10ヌクレオチド~約500ヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記RNAが約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項1に記
載の方法。
【請求項14】
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し且つ前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる、
細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
【請求項16】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在して相同組換えを引き起こす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在して二本鎖切断を生じさせる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれている、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
ドナー核酸配列をコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のニックにより前記標的核酸の前記ドナー核酸配列との相同組換えが引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする第2外来核酸、および
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を含み、
前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質、および前記転写
制御因子タンパク質またはドメインが、前記標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
【請求項26】
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、請求項25に記載の細胞。
【請求項28】
前記細胞が真核細胞である、請求項25に記載の細胞。
【請求項29】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項25に記載の細胞。
【請求項30】
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、請求項25に記載の細胞。
【請求項31】
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、請求項25に記載の細胞。
【請求項32】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、請求項25に記載の細胞。
【請求項33】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項25に記載の細胞。
【請求項34】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項25に記載の細胞。
【請求項35】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項25に記載の細胞。
【請求項36】
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項25に記載の細胞。
【請求項37】
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項25に記載の細胞。
【請求項38】
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項25に記載の細胞。
【請求項39】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、および
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有する少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが、前記DNA標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
【請求項40】
前記細胞が真核細胞である、請求項39に記載の細胞。
【請求項41】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項39に記載の細胞。
【請求項42】
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、請求項39に記載の細胞。
【請求項43】
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、請求項39に記載の細胞。
【請求項44】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項39に記載の細胞。
【請求項45】
前記2種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項39に記載の細胞。
【請求項46】
前記2種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項39に記載の細胞。
【請求項47】
前記DNA標的核酸がゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項39に記載の細胞。
【請求項48】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し且つ前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
【請求項49】
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、且つ、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する、細胞において標的核酸の発現を制御する方法。
【請求項50】
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が真核細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記RNAが約10ヌクレオチド~約500ヌクレオチドである、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記RNAが約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドである、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項49に記載の方法。
【請求項61】
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
【請求項64】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在して相同組換えを引き起こす、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在する、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在して二本鎖
切断を生じさせる、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれている、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせる、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、請求項63に記載の方法。
【請求項72】
ドナー核酸配列をコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のニックにより前記標的核酸の前記ドナー核酸配列との相同組換えが引き起こされる、請求項63に記載の方法。
【請求項73】
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸、および
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を含み、
前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、前記標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
【請求項74】
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、請求項73に記載の細胞。
【請求項75】
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、請求項73に記載の細胞。
【請求項76】
前記細胞が真核細胞である、請求項73に記載の細胞。
【請求項77】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項73に記載の細胞。
【請求項78】
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、請求項73に記載の細胞。
【請求項79】
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、請求項73に記載の細胞。
【請求項80】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、請求項73に記載の細胞。
【請求項81】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、請
求項73に記載の細胞。
【請求項82】
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、請求項73に記載の細胞。
【請求項83】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項73に記載の細胞。
【請求項84】
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項73に記載の細胞。
【請求項85】
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項73に記載の細胞。
【請求項86】
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項73に記載の細胞。
【請求項87】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、および
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが、前記DNA標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
【請求項88】
前記細胞が真核細胞である、請求項87に記載の細胞。
【請求項89】
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、請求項87に記載の細胞。
【請求項90】
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、請求項87に記載の細胞。
【請求項91】
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、請求項87に記載の細胞。
【請求項92】
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、請求項87に記載の細胞。
【請求項93】
前記2種類以上のRNAがガイドRNAである、請求項87に記載の細胞。
【請求項94】
前記2種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、請求項87に記載の細胞。
【請求項95】
前記DNA標的核酸がゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、請求項87に記載の細胞。
【請求項96】
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を
妨げる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
【請求項97】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質がII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質である、請求項49に記載の方法。
【請求項98】
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、請求項63に記載の方法。
【請求項99】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質がII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質である、請求項73に記載の細胞。
【請求項100】
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、請求項87に記載の細胞。
【請求項101】
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、請求項96に記載の方法。
【請求項102】
1塩基~4塩基の5’短縮を有するスペーサー配列を含むガイドRNA。
【請求項103】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約64個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項104】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約65個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項105】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約66個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項106】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約67個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項107】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約68個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項108】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約69個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項109】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約70個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項110】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約80個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項111】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約90個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【請求項112】
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約100個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本願は2013年6月4日に出願された、ここに全ての目的のために全体の参照により本明細書に援用される、米国仮特許出願番号第61/830787号の優先権を主張する。
【0002】
政府権益の説明
本発明は米国国立衛生研究所助成金番号P50 HG005550と米国エネルギー省の助成金番号DE-FG02-02ER63445の国庫補助により行われた。米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
細菌と古細菌のCRISPR‐CasシステムはCasタンパク質と複合体になっている短鎖ガイドRNAに依存して、侵入してきた外来核酸の内に存在する相補配列の分解を導く。Deltcheva,E.ら著、CRISPR RNA maturation by trans-encoded small RNA and host factor RNaseIII.Nature誌、第471巻、602~607頁(2011年)、Gasiunas,G,Barrangou,R.,Horvath,P.およびSiksnys,V.著、Cas9-crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria.Proceedings of the National Academy of Sciences
of the United States of America誌、第109巻、E2579~2586頁(2012年)、Jinek,M.ら著、A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in
adaptive bacterial immunity.Science誌、第337巻、816~821頁(2012年);Sapranauskas,R.ら著、The Streptococcus thermophilus CRISPR/Cas system provides immunity in Escherichia coli.Nucleic acids research誌、第39巻、9275~9282頁(2011年)、およびBhaya,D.,Davison, M.およびBarrangou, R.著、CRISPR-Cas system in bacteria and archaea:versatile small RNAs for adaptive defense and regulation.Annual review of genetics誌、第45巻、273~297頁(2011年)を参照されたい。最近の、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)のII型CRISPRシステムのインビトロにおける再構成により、通常トランスにコードされるtracrRNA(「trans-activating CRISPR RNA」)と融合したcrRNA(「CRISPR RNA」)は、そのcrRNAに一致する標的DNA配列をCas9タンパク質に配列特異的に切断させるのに充分であることが示された。標的部位に相同であるgRNAの発現によりCas9の動員と標的DNAの分解が引き起こされる。H.Deveauら著、Phage response to CRISPR-encoded resistance in Streptococcus thermophilus.Journal of Bacteriology誌、第190巻、1390頁(2008年2月)を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様は、ガイドRNAと、DNA結合タンパク質と、二本鎖DNA標的配列との複合体に関するものである。ある特定の態様によると、本開示の範囲内のDNA結合タンパク質には、ガイドRNAとの複合体を形成するタンパク質、およびその複合体を二本鎖DNA配列にガイドするガイドRNAとの複合体であって、そのDNA配列に結合する前記複合体を形成するタンパク質が含まれる。本開示のこの態様を前記RNAとDNA結合タンパク質の二本鎖DNAへの共局在、または二本鎖DNAとの共局在と呼ぶことができる。このようにDNA結合タンパク質‐ガイドRNA複合体を使用して、標的DNAの発現を制御するために標的DNAに転写制御因子タンパク質またはドメインを局在させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある特定の態様によると、細胞において標的核酸の発現を制御する方法であって、前記標的核酸を含むDNA(デオキシリボ核酸)に相補的である1種類以上のRNA(リボ核酸)をコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記DNAに結合し且つ前記1種類以上のRNAによってガイドされるRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損(nuclease-null)DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、且つ、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する前記方法が提供される。
【0006】
一つの態様によると、RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸は、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする。一つの態様によると、1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸はRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸は、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする。
【0007】
一つの態様によると、前記細胞は真核細胞である。一つの態様によると、前記細胞は酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である。一つの態様によると、前記細胞は哺乳類細胞である。
【0008】
一つの態様によると、前記RNAは約10ヌクレオチドから約500ヌクレオチドの間である。一つの態様によると、前記RNAは約20ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間である。
【0009】
一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは転写活性化因子である。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記標的核酸は疾患または有害な健康状態と関連する。
【0010】
一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはガイドRNAである。一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはtracrRNA‐crRNA融合体である。一つの態様によると、前記ガイドRNAはスペーサー配列とトレーサーメイト配列(tracer mate sequence)を含む。前記ガイドRNAは、その一部がtracrメイト配列にハイブリダ
イズするtracr配列を含んでもよい。前記ガイドRNAはトレーサーメイト配列とtracr配列を連結(link)してtracrRNA‐crRNA融合体を作製するリンカー核酸配列を含んでもよい。前記スペーサー配列は、例えばハイブリダイゼーションにより、標的DNAに結合する。
【0011】
一つの態様によると、前記ガイドRNAは短縮型スペーサー配列を含む。一つの態様によると、前記ガイドRNAは1塩基の5’末端短縮を有する短縮型スペーサー配列を含む。一つの態様によると、前記ガイドRNAは2塩基の5’ 末端短縮を有する短縮型スペーサー配列を含む。一つの態様によると、前記ガイドRNAは3塩基の5’末端短縮を有する短縮型スペーサー配列を含む。一つの態様によると、前記ガイドRNAは4塩基の5’末端短縮を有する短縮型スペーサー配列を含む。したがって、前記スペーサー配列は1塩基~4塩基の5’末端短縮をその配列に有し得る。
【0012】
ある特定の実施形態によると、前記スペーサー配列は前記標的核酸配列にハイブリダイズする約16個から約20個の間のヌクレオチドを含んでよい。ある特定の実施形態によると、前記スペーサー配列は前記標的核酸配列にハイブリダイズする約20ヌクレオチドを含んでよい。
【0013】
ある特定の態様によると、前記リンカー核酸配列は約4個から約6個の間の核酸を含んでよい。
【0014】
ある特定の態様によると、前記tracr配列は約60個から約500個個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約64個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約65個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約66個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約67個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約68個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約69個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約70個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約80個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約90個から約500個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約100個から約500個の間の核酸を含んでよい。
【0015】
ある特定の態様によると、前記tracr配列は約60個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約64個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約65個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約66個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約67個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約68個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約69個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約70個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約80個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約90個から約200個の間の核酸を含んでよい。ある特定の態様によると、前記tracr配列は約100個から約200個の間の核酸を含んでよい。
【0016】
例示的なガイドRNAが図5Bに示されている。
【0017】
一つの態様によると、前記DNAはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである。
【0018】
ある特定の態様によると、細胞において標的核酸の発現を制御する方法であって、前記標的核酸を含むDNA(デオキシリボ核酸)に相補的である1種類以上のRNA(リボ核酸)をコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記DNAに結合し且つ前記1種類以上のRNAによってガイドされるII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記1種類以上のRNA、II型CRISPRシステムの前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、II型CRISPRシステムの前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、且つ、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する前記方法が提供される。
【0019】
一つの態様によると、II型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸は、II型CRISPRシステムの前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする。一つの態様によると、1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸はRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸は、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする。
【0020】
一つの態様によると、前記細胞は真核細胞である。一つの態様によると、前記細胞は酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である。一つの態様によると、前記細胞は哺乳類細胞である。
【0021】
一つの態様によると、前記RNAは約10ヌクレオチドから約500ヌクレオチドの間である。一つの態様によると、前記RNAは約20ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間である。
【0022】
一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは転写活性化因子である。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記標的核酸は疾患または有害な健康状態と関連する。
【0023】
一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはガイドRNAである。一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはtracrRNA‐crRNA融合体である。
【0024】
一つの態様によると、前記DNAはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである。
【0025】
ある特定の態様によると、細胞において標的核酸の発現を制御する方法であって、前記標的核酸を含むDNA(デオキシリボ核酸)に相補的である1種類以上のRNA(リボ核酸)をコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記DNAに結合し且つ前記1種類以上のRNAによってガイドされるヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、転写制御因子タンパク質またはドメインを
コードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する前記方法が提供される。
【0026】
一つの態様によると、ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする前記外来核酸は、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする。一つの態様によると、1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸はRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸は前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする。
【0027】
一つの態様によると、前記細胞は真核細胞である。一つの態様によると、前記細胞は酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である。一つの態様によると、前記細胞は哺乳類細胞である。
【0028】
一つの態様によると、前記RNAは約10ヌクレオチドから約500ヌクレオチドの間である。一つの態様によると、前記RNAは約20ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間である。
【0029】
一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは転写活性化因子である。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記標的核酸は疾患または有害な健康状態と関連する。
【0030】
一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはガイドRNAである。一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはtracrRNA‐crRNA融合体である。
【0031】
一つの態様によると、前記DNAはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである。
【0032】
一つの態様によると、標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸、および転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を含む細胞であって、前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である前記細胞が提供される。
【0033】
一つの態様によると、RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸は、RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする。一つの態様によると、1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸はRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸は、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする。
【0034】
一つの態様によると、前記細胞は真核細胞である。一つの態様によると、前記細胞は酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である。一つの態様によると、前記細胞は哺乳類細胞である。
【0035】
一つの態様によると、前記RNAは約10ヌクレオチドから約500ヌクレオチドの間である。一つの態様によると、前記RNAは約20ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間である。
【0036】
一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは転写活性化因子である。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記転写制御因子タンパク質またはドメインは疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する。一つの態様によると、前記標的核酸は疾患または有害な健康状態と関連する。
【0037】
一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはガイドRNAである。一つの態様によると、前記1種類以上のRNAはtracrRNA-crRNA融合体である。
【0038】
一つの態様によると、前記DNAはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである。
【0039】
ある特定の態様によると、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質はII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質である。ある特定の態様によると、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質はヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質である。
【0040】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼ(nickase)をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニック(nick)を入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる前記方法が提供される。
【0041】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記2種類以上のRNAによってガイドされるII型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記II型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記II型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる前記方法が提供される。
【0042】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し、且つ、前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DN
A標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる前記方法が提供される。
【0043】
DNA標的核酸を改変させる前記方法によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの同じストランド上に存在する。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの同じストランド上に存在して相同組換えを引き起こす。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在する。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在して二本鎖切断を生じさせる。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれて(offset with respect to one another)いる。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせる。一つの態様によると、前記2つ以上の隣接するニックは二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす。一つの態様によると、前記方法はドナー核酸配列をコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のニックにより前記標的核酸の前記ドナー核酸配列との相同組換えが引き起こされる。
【0044】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる前記方法が提供される。
【0045】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、前記2種類以上のRNAによってガイドされるII型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記II型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記II型CRISPRシステムの少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる前記方法が提供される。
【0046】
一つの態様によると、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法であって、それぞれ前記DNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を前記細胞に導入すること、1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し且つ前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッ
ケースをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる前記方法が提供される。
【0047】
一つの態様によると、それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、および少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を含む細胞であって、前記2種類以上のRNAと前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記DNA標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である前記細胞が提供される。
【0048】
一つの態様によると、前記RNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼはII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである。一つの態様によると、前記RNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼは1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有するCas9タンパク質ニッカーゼである。
【0049】
一つの態様によると、前記細胞は真核細胞である。一つの態様によると、前記細胞は酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である。一つの態様によると、前記細胞は哺乳類細胞である。
【0050】
一つの態様によると、前記RNAは約10個から約500個の間のヌクレオチドを含む。一つの態様によると、前記RNAは約20個から約100個の間のヌクレオチドを含む。
【0051】
一つの態様によると、前記標的核酸は疾患または有害な健康状態と関連する。
【0052】
一つの態様によると、前記2種類以上のRNAはガイドRNAである。一つの態様によると、前記2種類以上のRNAはtracrRNA‐crRNA融合体である。
【0053】
一つの態様によると、前記DNA標的核酸はゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである。
【0054】
本発明のある特定の実施形態のその他の特徴および利点は、後続の実施形態とそれらの図面の説明において、および特許請求の範囲からさらに十分に明らかとなろう。
【0055】
本特許または特許出願のファイルは彩色図面を含む。彩色図面を有する本特許または特許出願公開の写しは、請求および所要の手数料を納付すれば、特許庁によって提供される。本実施形態の前述その他の特徴および利点は、添付されている図面と併せて、後続の例示的な実施形態の詳細な説明からより十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1-1】図1AはRNA誘導性転写活性化の模式図である。図1BはRNA誘導性転写活性化の模式図である。図1Cはレポーターコンストラクトのデザインを示す。
図1-2】図1Dは蛍光活性化細胞選別(FACS)と免疫蛍光分析(IF)の両方によってアッセイしたときにCas9N-VP64融合体がRNA誘導性転写活性化を示すことを表すデータを示す。
図1-3】図1Dは蛍光活性化細胞選別(FACS)と免疫蛍光分析(IF)の両方によってアッセイしたときにCas9N-VP64融合体がRNA誘導性転写活性化を示すことを表すデータを示す。
図1-4】図1EはCas9N、MS2-VP64、および適切なMS2アプタマー結合部位を有するgRNAの存在下でのレポーターコンストラクトのgRNA配列特異的転写活性化を示すFACSとIFによるアッセイデータを示す。
図1-5】図1EはCas9N、MS2-VP64、および適切なMS2アプタマー結合部位を有するgRNAの存在下でのレポーターコンストラクトのgRNA配列特異的転写活性化を示すFACSとIFによるアッセイデータを示す。
図1-6】図1Fは個々のgRNAと複数のgRNAによる転写誘導を表すデータを示す。
【0057】
図2-1】図2AはCas9-gRNA複合体とTALEによるターゲティングのランドスケイプを評価するための方法を示す。
図2-2】図2BはCas9-gRNA複合体が平均してその標的配列中の1~3個の突然変異に対して許容的であることを表すデータを示す。図2CはCas9-gRNA複合体が、PAM配列に局在しているものを除いて点突然変異にほとんど感受性が無いことを表すデータを示す。
図2-3】図2Dは2塩基のミスマッチの導入によってCas9-gRNA複合体活性が顕著に損なわれることを表すヒートプロットデータを示す。図2Eは18-merのTALEが平均してその標的配列中の1~2個の突然変異に対して許容的であることを表すデータを示す。
図2-4】図2Fは18-merのTALEがCas9-gRNA複合体と同様にその標的中の1塩基のミスマッチにほとんど感受性が無いことを表すデータを示す。図2Gは2塩基のミスマッチの導入によって18-merのTALEの活性が顕著に損なわれることを表すヒートプロットデータを示す。
【0058】
図3-1】図3AはガイドRNAデザインの模式図である。
図3-2】図3Bは5’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックと3’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックについての非相同末端結合のパーセンテージ率を示すデータを表す。
図3-3】図3Cは5’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックと3’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックについてのターゲティングのパーセンテージ率を示すデータを表す。
【0059】
図4-1】図4AはPDB ID:4EP4(青色)のRuvCの位置D7にある金属配位性残基の模式図(左)、およびPDB ID:3M7K(オレンジ色)と4H9D(青緑色)のHNHエンドヌクレアーゼドメインの模式図であって3M7Kの配位しているMgイオン(灰色の四角)とDNA(紫)を含む模式図(中央)、および分析した突然変異体のリスト(右)である。
図4-2】図4BはCas9突然変異体m3およびm4、およびまた、それらの突然変異体のそれぞれのVP64との融合体の検出不可能であるヌクレアーゼ活性を示すデータを表す。
図4-3】図4C図4Bのデータの高感度検査である。
【0060】
図5-1】図5AはCas9-gRNA活性を測定するための相同組換えアッセイの模式図である。
図5-2】図5Bは無作為配列挿入物を有するガイドRNAと相同組換えのパーセンテージ率を示す。
図5-3】図5Bは無作為配列挿入物を有するガイドRNAと相同組換えのパーセンテージ率を示す。
【0061】
図6-1】図6AはOCT4遺伝子のガイドRNAの模式図である。図6Bはプロモーター・ルシフェラーゼレポーターコンストラクトの転写活性化を示す。
図6-2】図6CはqPCRによって内在性遺伝子の転写活性化を示す。
【0062】
図7-1】図7AはREX1遺伝子のガイドRNAの模式図である。図7Bはプロモーター・ルシフェラーゼレポーターコンストラクトの転写活性化を示す。
図7-2】図7CはqPCRによって内在性遺伝子の転写活性化を示す。
【0063】
図8-1】図8Aは正規化された発現レベルの算出のための高レベルの特異性分析処理フローを模式的に示す図である。
図8-2】図8Bはバイアスがかけられたコンストラクトライブラリー内で生じたミスマッチ数毎の結合部位のパーセンテージの分布状態のデータを示す。左:理論的分布状態。右:実際のTALEコンストラクトライブラリーから観察された分布状態。図8Cはミスマッチ数毎の結合部位に集まったタグの数のパーセンテージの分布状態のデータを示す。左:陽性対照試料から観察された分布状態。右:対照ではないTALEがガイドされた試料から観察された分布状態。
【0064】
図9-1】図9AはCas9-gRNA複合体の標的配列中の1~3個の突然変異に対する許容性を示す、当該複合体のターゲティングランドスケイプの分析データを示す。図9BはPAM配列に局在しているものを除く点突然変異に対する非感受性を示す、Cas9-gRNA複合体のターゲティングランドスケイプの分析データを示す。
図9-2】図9Cは2塩基のミスマッチの導入によって活性が顕著に損なわれることを示す、Cas9-gRNA複合体のターゲティングランドスケイプの分析のヒートプロットデータを示す。
図9-3】図9Dは化膿レンサ球菌(S. pyogenes)のCas9の予想されるPAMがNGGであり、またNAGであることを確認する、ヌクレアーゼ介在性HRアッセイのデータを示す。
【0065】
図10-1】図10Aは18-merのTALEがそれらの標的配列中の複数の突然変異を許容することを確認する、ヌクレアーゼ介在性HRアッセイのデータを示す。
図10-2】図10Aは18-merのTALEがそれらの標的配列中の複数の突然変異を許容することを確認する、ヌクレアーゼ介在性HRアッセイのデータを示す。
図10-3】図10Bは3つの異なるサイズ(18-mer、14-merおよび10-mer)のTALEのターゲティングランドスケイプの分析データを示す。
図10-4】図10Cはほぼ1塩基ミスマッチ解像度を示す10-merのTALEのデータを示す。図10Dはほぼ1塩基ミスマッチ解像度を示す10-merのTALEのヒートプロットデータを示す。
【0066】
図11-1】図11AはデザインされたガイドRNAを示す。
図11-2】図11Bは様々なガイドRNAの非相同末端結合のパーセンテージ率を示す。
図12-1】図12Aは、SOX2遺伝子についてデザインされた、転写開始部位の上流の約1kb長のDNA鎖を標的とする10種類のgRNAを示す。
図12-2】図12Bは、NANOG遺伝子についてされた、転写開始部位の上流の約1kb長のDNA鎖を標的とする10種類のgRNAを示す。
図13-1】図13Aは、Cas9N-VP64+gRNA2のターゲティングランドスケイプを示し、図13Bは、Cas9N-VP64+gRNA2の1塩基ミスマッチプロットを示す。
図13-2】図13Cは、Cas9N-VP64+gRNA2の2塩基ミスマッチプロットを示し、図13Dは、Cas9N-VP64+gRNA3のターゲティングランドスケイプを示す。
図13-3】図13Eは、Cas9N-VP64+gRNA3の1塩基ミスマッチプロットを示し、図13Fは、Cas9N-VP64+gRNA3の2塩基ミスマッチプロットを示す。
図14図14A~Cは、2種類の異なるsgRNA:Cas9複合体を使用した特異性データを示す。
図15-1】図15Aは、1塩基または2塩基のミスマッチを担持するgRNA2についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図15-2】図15B-1は、1塩基または2塩基のミスマッチを担持するgRNA2についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図15-3】図15B-2は、1塩基または2塩基のミスマッチを担持するgRNA2についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図15-4】図15C及び図15D-1は、1塩基または2塩基のミスマッチを担持するgRNA3についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図15-5】図15D-2は、1塩基または2塩基のミスマッチを担持するgRNA3についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-1】図16Aは、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA1についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-2】図16B-1は、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA1についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-3】図16B-2は、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA1についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-4】図16C、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA3についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-5】図16D-1は、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA3についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図16-6】図16D-2は、スペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA3についてのヌクレアーゼアッセイを用いた試験を示す。
図17-1】図17Aは、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9のPAMについての試験を示す。
図17-2】図17Bは、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9のPAMについての試験を示す。
図18-1】図18Aは、TALE突然変異についてのヌクレアーゼアッセイにおける標的化実験を示す。
図18-2】図18Bは、TALE突然変異についてのヌクレアーゼアッセイにおける標的化実験を示す。
図19-1】図19Aは、TALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較のための試験アプローチを示す。
図19-2】図19B-1は、TALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較を示す。
図19-3】図19B-2は、TALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較を示す。
図19-4】図19C-1は、TALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較を示す。
図19-5】図19C-2は、TALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較を示す。
図20-1】図20Aは、オフセット・ニック形成に関するAAVS1遺伝子座のターゲティングを示す。
図20-2】図20Bは、オフセット・ニック形成に関するデータを示す。
図21-1】図21Aは、オフセット・ニック形成およびNHEJプロファイルを示す。
図21-2】図21Bは、オフセット・ニック形成およびNHEJプロファイルを示す。
図21-3】図21Cは、オフセット・ニック形成およびNHEJプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本開示の実施形態は、標的核酸の制御法においてDNAに転写制御因子タンパク質またはドメインを共局在させるためにDNA結合タンパク質を使用することに基づく。そのようなDNA結合タンパク質が様々な目的のためにDNAに結合することは当業者に既知である。そのようなDNA結合タンパク質は天然物であり得る。本開示の範囲内に含まれるDNA結合タンパク質にはここでガイドRNAと称されるRNAによってガイドされ得るものが含まれる。この態様によると、ガイドRNAとRNA誘導型DNA結合タンパク質はDNAにおいて共局在複合体を形成する。ある特定の態様によると、DNA結合タンパク質はヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質であり得る。この態様によると、ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質ヌクレアーゼ活性を有するDNA結合タンパク質の改変(alteration)または改造(modification)の結果から生じ得る。そのようなヌクレアーゼ活性を有するDNA結合タンパク質は当業者に知られており、例えばII型CRISPRシステムに存在する、Cas9タンパク質のような、ヌクレアーゼ活性を有する天然のDNA結合タンパク質を含む。そのようなCas9タンパク質とII型CRISPRシステムは当技術分野においてよく記述されている。ここにその全体が参照により援用される全ての追加情報を含むMakarovaら著、Nature Reviews,Microbiology誌、第9巻、2011年6月、467~477頁を参照されたい。
【0068】
ヌクレアーゼ活性を有する例示的なDNA結合タンパク質は二本鎖DNAにニックを入れるかまたは二本鎖DNAを切断するように機能する。そのようなヌクレアーゼ活性はヌクレアーゼ活性を示す1つ以上のポリペプチド配列を有するDNA結合タンパク質から生じ得る。そのような例示的なDNA結合タンパク質はそれぞれのドメインが二本鎖DNAの特定のストランドを切断すること、またはニックを入れることを担っている2つの別個のヌクレアーゼドメインを有していてよい。当業者に知られているヌクレアーゼ活性を有する例示的なポリペプチド配列にはMcrA-HNHヌクレアーゼ関連ドメインおよびRuvC様ヌクレアーゼドメインが含まれる。したがって、例示的なDNA結合タンパク質は自然界においてMcrA-HNHヌクレアーゼ関連ドメインとRuvC様ヌクレアーゼドメインのうちの1つ以上を含むタンパク質である。ある特定の態様によると、前記DNA結合タンパク質はヌクレアーゼ活性を不活化するために改変されるか、あるいは改造される。そのような改変または改造にはヌクレアーゼ活性またはヌクレアーゼドメインを不活化するための1つ以上のアミノ酸の変更が含まれる。そのような改造には、ヌクレアーゼ活性を示す単数または複数のポリペプチド配列、すなわち、ヌクレアーゼドメインが、前記DNA結合タンパク質に存在しないように、ヌクレアーゼ活性を示す前記単数または複数のポリペプチド配列、すなわち、ヌクレアーゼドメインを除去することが含まれる。ヌクレアーゼ活性を不活化するための他の改造は、本開示に基づいて当業者にすぐに明らかになろう。したがって、ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質にはヌクレアーゼ活性を不活化するように改造されたポリペプチド配列、またはヌクレアーゼ活性を不活化するための単数または複数のポリペプチド配列の除去が含まれる。そのヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質はヌクレアーゼ活性が不活化されていてもDNA結合能を保持している。したがって、前記DNA結合タンパク質はDNA結合に必要な単数または複数のポリペプチド配列を含んでいるが、ヌクレアーゼ活性を示すヌクレアーゼ配列の1つ以上または全てを欠失していてよい。したがって、前記DNA結合タンパク質はDNA結合に必要な単数または複数のポリペプチド配列を含んでいるが、不活化ヌクレアーゼ活性を示すヌク
レアーゼ配列の1つ以上または全てを有していてよい。
【0069】
一つの態様によると、2つ以上のヌクレアーゼドメインを有するDNA結合タンパク質はヌクレアーゼドメインの1つを除いて全てが不活化されているように改造または改変されていてよい。そのような改造型または改変型DNA結合タンパク質は、そのDNA結合タンパク質が二本鎖DNAの一方のストランドだけを切断する、またはニックを入れるものである限り、DNA結合タンパク質ニッカーゼと呼ばれる。RNAによってDNAにガイドされるとき、DNA結合タンパク質ニッカーゼはRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼと呼ばれる。
【0070】
例示的なDNA結合タンパク質としては、ヌクレアーゼ活性を欠くII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質がある。例示的なDNA結合タンパク質としてはヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質がある。例示的なDNA結合タンパク質としてはCas9タンパク質ニッカーゼがある。
【0071】
化膿レンサ球菌(S.pyogenes)ではCas9は、そのタンパク質中の2つの触媒ドメイン、すなわち、DNAの相補ストランドを切断するHNHドメインと非相補ストランドを切断するRuvC様ドメインが介在する処理を介して、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の3bp上流に平滑末端二本鎖切断を形成する。ここにその全体が参照により援用されるJinkeら著、Science誌、第337巻、816~821頁(2012年)を参照されたい。Cas9タンパク質は、Makarovaら著、Nature Reviews,Microbiology誌、第9巻、2011年6月、467~477頁の追加情報中に見出される次のものを含む、多数のII型CRISPRシステムに存在することが知られている:メタノコッカス・マリパルディスC7株;コリネバクテリウム・ジフテリアエ;コリネバクテリウム・エフィシエンスYS-314株;コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 Kitasato株;コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 Bielefeld株;コリネバクテリウム・グルタミカムR株;コリネバクテリウム・クロッペンステッティイDSM44385株;マイコバクテリウム・アブセサスATCC19977株;ノカルディア・ファルシニカIFM10152株;ロドコッカス・エリスロポリスPR4株;ロドコッカス・ジョスティイRHA1株;ロドコッカス・オパカスB4 uid36573株;アシドサーマス・セルロリティカス11B株;アルスロバクター・クロロフェノリカスA6株;クリベラ・フラビダDSM17836 uid43465株;サーモノスポラ・カーバタDSM43183株;ビフィドバクテリウム・デンティウムBd1株;ビフィドバクテリウム・ロングムDJO10A株;スラッキア・ヘリオトリニレデューセンスDSM20476株;パーセフォネラ・マリナEX H1株;バクテロイデス・フラギリスNCTC9434株;カプノサイトファガ・オクラセアDSM7271株;フラボバクテリウム・サイクロフィルムJIP02 86株;アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA835株;ロゼイフレクサス・キャステンホルツィイDSM13941株;ロゼイフレクサスRS1株;シネコシスティスPCC6803株;エルシミクロビウム・ミヌトゥムPei191株;非培養性シロアリ1群細菌系統型Rs D17株;フィブロバクター・サクシノゲネスS85株;バチルス・セレウスATCC10987株;リステリア・イノキュア;ラクトバチルス・カゼイ;ラクトバチルス・ラムノーサスGG株;ラクトバチルス・サリバリウスUCC118株;ストレプトコッカス・アガラクティアエA909株;ストレプトコッカス・アガラクティアエNEM316株;ストレプトコッカス・アガラクティアエ2603株;ストレプトコッカス・ディスガラクティアエ亜種エクイシミリスGGS124株;ストレプトコッカス・エクイ亜種ズーエピデミカスMGCS10565株;ストレプトコッカス・ガロリティカスUCN34 uid46061株;ストレプトコッカス・ゴルドニイChallis subst CH1株;ストレプトコッカス・ミュータンスNN2025 uid46353株;ストレプトコッカス・ミュータンス;ストレプトコッカ
ス・ピオゲネスM1 GAS株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS5005株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS2096株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS9429株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS10270株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS6180株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS315株;ストレプトコッカス・ピオゲネスSSI-1株;ストレプトコッカス・ピオゲネスMGAS10750株;ストレプトコッカス・ピオゲネスNZ131株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)CNRZ1066株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)LMD-9株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)LMG18311株;クロストリジウム・ボツリヌムA3 Loch Maree株;クロストリジウム・ボツリヌムB Eklund 17B株;クロストリジウム・ボツリヌムBa4 657株;クロストリジウム・ボツリヌムF Langeland株;クロストリジウム・セルロリティカムH10株;フィネゴルディア・マグナATCC29328株;ユウバクテリウム・レクターレATCC33656株;マイコプラズマ・ガリセプティカム;マイコプラズマ・モービレ163K株;マイコプラズマ・ペネトランス;マイコプラズマ・シノビアエ53株;ストレプトバチルス・モニリフォルミスDSM12112株;ブラジリゾビウムBTAi1株;ニトロバクター・ハンブルゲンシスX14株;ロドシュードモナス・パルストリスBisB18株;ロドシュードモナス・パルストリスBisB5株;バルビバクラム・ラバメンティボランスDS-1株;ディノロセオバクター・シバエDFL12株;グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクスPal 5 FAPERJ株;グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクスPal 5 JGI株;アゾスピリルムB510 uid46085株;ロドスピリラム・ルブラムATCC11170株;ジアフォロバクターTPSY uid29975株;フェルミネフォロバクター・エイセニアエEF01-2株;ナイセリア・メニンギティデス(Neisseria meningitides)053442株;ナイセリア・メニンギティデス(Neisseria meningitides)alpha14株;ナイセリア・メニンギティデス(Neisseria meningitides)Z2491株;デスルホビブリオ・サレキシゲンスDSM2638株;カンピロバクター・ジェジュニ亜種ドイレイ26997株;カンピロバクター・ジェジュニ81116株;カンピロバクター・ジェジュニ;カンピロバクター・ラリRM2100株;ヘリコバクター・ヘパティカス;ウォリネラ・サクシノゲネス;トルモナス・アウエンシスDSM9187株;シュードアルテロモナス・アトランティカT6c株;シュワネラ・ペアレアナATCC700345株;レジオネラ・ニューモフィラParis株;アクチノバチルス・サクシノゲネス130Z株;パスツレラ・ムルトシダ株;フランシセラ・ツラレンシス亜種ノビシダU112株;フランシセラ・ツラレンシス亜種ホラルクティカ;フランシセラ・ツラレンシスFSC198株;フランシセラ・ツラレンシス亜種ツラレンシス;フランシセラ・ツラレンシスWY96-3418株;およびトレポネーマ・デンティコーラATCC35405株。したがって、本開示の態様は、II型CRISPRシステムに存在するCas9タンパク質であって、ヌクレアーゼ欠損になっている、または本明細書に記載されるようなニッカーゼになっているCas9タンパク質に関する。
【0072】
Cas9タンパク質は文献中では当業者によってCsn1と呼ばれることがあり得る。本明細書に記載される実験対象である化膿レンサ球菌(S.pyogenes)Cas9タンパク質配列を以下に示す。ここにその全体が参照により援用されるDeltchevaら著、Nature誌、第471巻、602~607頁(2011年)を参照されたい。
【0073】
【化1】
【0074】
本明細書に記載されるRNA誘導性ゲノム制御方法のある特定の態様によると、ヌクレアーゼ活性を低下させるように、実質的に低下させるように、または除去するようにCas9を改変する。一つの態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインまたはHNHヌクレアーゼドメインを改変することによってCas9ヌクレアーゼ活性を低下させる、実質的に低下させる、または除去する。一つの態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインを不活性化する。一つの態様によると、HNHヌクレアーゼドメインを不活性化する。一つの態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインとHNHヌクレアーゼドメインを不活性化する。追加の態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインとHNHヌクレアーゼドメインが不活性化されているCas9タンパク質が提供される。追加の態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインとHNHヌクレアーゼドメインが不活性化されている限りにおいてヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質が提供される。追加の態様によると、RuvCヌクレアーゼドメインまたはHNHヌクレアーゼドメインのどちらかが不活性化され、それによって残りのヌクレアーゼドメインがヌクレアーゼ活性について活性型のままでい
る、Cas9ニッカーゼが提供される。このように二本鎖DNAの一方のストランドだけが切断されるか、またはニックを入れられる。
【0075】
追加の態様によると、ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質を提供するためにCas9中の1つ以上のアミノ酸が改変されているかあるいは除去されているヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質が提供される。一つの態様によると、それらのアミノ酸にはD10とH840が含まれる。Jinkeら著、Science誌、第337巻、816~821頁(2012年)を参照されたい。追加の態様によると、それらのアミノ酸にはD839とN863が含まれる。一つの態様によると、D10、H840、D839およびH863のうちの1つ以上または全てがヌクレアーゼ活性を低下させるか、実質的に低下させるか、または除去するアミノ酸で置換される。一つの態様によると、D10、H840、D839およびH863のうちの1つ以上または全てがアラニンで置換される。一つの態様によると、D10、H840、D839およびH863のうちの1つ以上または全てが、アラニンなどの、ヌクレアーゼ活性を低下させるか、実質的に低下させるか、または除去するアミノ酸で置換されたCas9タンパク質は、ヌクレアーゼ欠損Cas9またはCas9Nと称され、当該タンパク質はヌクレアーゼ活性が低下若しくは削減されているか、またはヌクレアーゼ活性が検出のレベル内に無いか若しくは実質的に無い。この態様によると、Cas9Nのヌクレアーゼ活性は公知のアッセイを用いて検出できない場合があり得る、すなわち、公知のアッセイの検出レベル未満であり得る。
【0076】
一つの態様によると、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質は、DNAに結合し且つRNAによってガイドされる当該タンパク質の能力を保持する、そのホモログおよびオーソログを含む。一つの態様によると、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質は、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)由来の天然Cas9ついて示されている配列であって、D10、H840、D839およびH863のうちの1つ以上または全てがアラニンで置換されている前記配列、および、その配列に対して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の相同性を有するタンパク質配列であって、RNA誘導型DNA結合タンパク質などのDNA結合タンパク質である、前記配列を含む。
【0077】
一つの態様によると、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質は、RuvCヌクレアーゼドメインとHNHヌクレアーゼドメインのタンパク質配列を除いた化膿レンサ球菌(S. pyogenes)由来の天然Cas9について示されている配列、およびまた、その配列に対して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の相同性を有するタンパク質配列であって、RNA誘導型DNA結合タンパク質などのDNA結合タンパク質である前記配列を含む。このように本開示の態様はDNA結合を担う、例えばガイドRNAとの共局在とDNA結合を担う、タンパク質配列、及び当該タンパク質配列と相同なタンパク質配列を含み、且つ、ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質を作製するためには、RuvCヌクレアーゼドメインとHNHヌクレアーゼドメインは不活化されるかまたは天然のCas9タンパク質のタンパク質配列から除去されるかのどちらかであり得るので、(DNA結合に必要とされない限り)これらのドメインのタンパク質配列を含む必要が無い。
【0078】
本開示の目的のため、Cas9に対する相同性を有する公知のタンパク質構造の中の金属配位性残基を図4Aに示す。Cas9配列中の位置に基づいて残基が標識されている。左はPDB ID:4EP4のRuvC構造(青色)。Cas9配列中のD10に対応する位置D7は、Mgイオン配位位置の中で強調されている。中央はPDB ID:3M7K(オレンジ色)と4H9D(青緑色)のHNHエンドヌクレアーゼドメインの構造であり、3M7Kの配位しているMgイオン(灰色の四角)とDNA(紫)とを含む。3M7K中の残基D92およびN113および4H9Dの位置D53およびN77はCas9の
アミノ酸D839およびN863に対する配列相同性を有し、棒で示されている。右は作製されヌクレアーゼ活性について分析された突然変異体のリストである。野生型Cas9、D10についてアラニンで置換したCas9m1;D10とH840についてアラニンで置換したCas9m2;D10、H840、およびD839についてアラニンで置換したCas9m3;並びに、D10、H840、D839、およびN863についてアラニンで置換したCas9m4
【0079】
図4Bに示されるように、標的座位についてディープシーケンシングを行うと、Cas9突然変異体:m3およびm4、および、それらのそれぞれのVP64との融合体は、検出不可能なヌクレアーゼ活性を示した。gRNA標的を区別する赤色の線と共に、ゲノム上の位置に対する突然変異頻度をプロットで示す。図4C図4Bのデータの高感度検査を示す図であり、突然変異ランドスケイプが未改変座位に類似のプロファイルを示すことが確認される。
【0080】
一つの態様によると、転写活性化ドメインをヌクレアーゼ欠損Cas9またはガイドRNAのどちらかに連結することによってヒト細胞においてのRNA誘導性ゲノム制御を可能にする、遺伝子改変されたCas9-gRNAシステムが提供される。本開示の一つの態様によると、1つ以上の転写制御タンパク質またはドメイン(そのような用語は互換的に使用される)がヌクレアーゼ欠損型Cas9または1つ以上のガイドRNA(gRNA)に結びつけられ、あるいはこれ以外のやり方で接続される。それらの転写制御ドメインは標的座位に対応する。したがって、本開示の態様は、転写制御ドメインをCas9NまたはgRNAのどちらかに融合し、接続し、または結びつけることによりそのようなドメインを標的座位に局在させるための方法および材料を含む。
【0081】
一つの態様によると、転写活性化可能なCas9N融合タンパク質が提供される。一つの態様によると、VP64活性化ドメイン(ここにその全体が参照により援用されるZhangら著、Nature Biotechnology誌、第29巻、149~153頁(2011年)を参照のこと)がCas9NのC末端に結びつけられ、融合され、接続され、あるいはこれら以外のやり方で連結(tether)される。一つの方法によると、当該Cas9Nタンパク質により標的ゲノムDNA部位に転写制御ドメインが提供される。一つの方法によると、転写制御ドメインに融合したCas9Nが1つ以上のガイドRNAと共に細胞内に提供される。融合した転写制御ドメインを有するCas9Nが、標的ゲノムDNAに、または標的ゲノムDNA近傍に結合する。1つ以上のガイドRNAが、標的ゲノムDNAに、または標的ゲノムDNA近傍に結合する。転写制御ドメインが標的遺伝子の発現を制御する。特定の態様によると、Cas9N-VP64融合体は、プロモーター近辺の配列を標的とするgRNAと組み合わさった時に、レポーターコンストラクトの転写を活性化し、それによってRNA誘導性転写を活性化した。
【0082】
一つの態様によると、転写活性化可能なgRNA融合タンパク質が提供される。一つの態様によると、VP64活性化ドメインがgRNAに結びつけられ、融合され、接続され、あるいはこれら以外のやり方で連結(tether)される。一つの方法によると、そのgRNAによりゲノムDNA部位を標的とする転写制御ドメインが提供される。一つの方法によると、転写制御ドメインに融合したgRNAがCas9Nタンパク質と共に細胞内に提供される。当該Cas9Nは、標的ゲノムDNAに、または標的ゲノムDNA近傍に結合する。転写制御タンパク質またはドメインと融合した、1つ以上のガイドRNAが、標的ゲノムDNAに、または標的ゲノムDNA近傍に結合する。転写制御ドメインが標的遺伝子の発現を制御する。特定の態様によると、Cas9Nタンパク質と、転写制御ドメインが融合したgRNAとが、レポーターコンストラクトの転写を活性化し、それによってRNA誘導性転写を活性化した。
【0083】
転写制御可能なgRNA連結物は、無作為配列をそのgRNAに挿入し、Cas9機能についてアッセイすることによりそのgRNAのどの領域が改造を許容するか特定することによって作製された。キメラgRNAのcrRNA部分の5’末端またはtracrRNA部分の3’末端のどちらかに無作為配列挿入物を有するgRNAは機能性を保持し、一方でキメラgRNAのtracrRNAスキャフォルド部分への挿入がなされると機能が喪失する。無作為塩基挿入に対するgRNAの柔軟性についてまとめた図5A~Bを参照されたい。図5AはCas9-gRNA活性を測定するための相同組換え(HR)アッセイの模式図である。図5Bに示されるように、キメラgRNAのcrRNA部分の5’末端またはtracrRNA部分の3’末端のどちらかに無作為配列挿入物を有するgRNAは機能性を保持し、一方でキメラgRNAのtracrRNAスキャフォルド部分に挿入がなされると機能が失われる。gRNA配列中の挿入の位置は赤色のヌクレオチドによって示されている。科学的理論に捉われることを望むことなく述べれば、5’末端での無作為塩基挿入による活性の上昇はgRNAが長くなって半減期が増したことに起因するものであり得る。
【0084】
VP64をgRNAに結合させるため、2コピーのMS2バクテリオファージ・コートプロテイン結合性RNAステムループをそのgRNAの3’末端に取り付けた。ここにその全体が参照により援用されるFuscoら著、Current Biology誌:第CB13巻、161~167頁(2003年)を参照されたい。これらのキメラgRNAはCas9NとMS2-VP64融合タンパク質と共に発現した。3種類全ての要素の存在下でレポーターコンストラクトの配列特異的転写活性化が観察された。
【0085】
図1AはRNA誘導性転写活性化の模式図である。図1Aに示されるように、転写活性化可能なCas9N融合タンパク質を作製するため、VP64活性化ドメインをCas9NのC末端に直接連結した。図1Bに示されるように、転写活性化可能なgRNA連結物を作製するため、2コピーのMS2バクテリオファージ・コートプロテイン結合性RNAステムループをそのgRNAの3’末端に取り付けた。これらのキメラgRNAはCas9NとMS2-VP64融合タンパク質と共に発現した。図1Cは転写活性化をアッセイするために使用されたレポーターコンストラクトのデザインを示している。それらの2種類のレポーターは別個のgRNA標的部位を有し、且つ、対照TALE-TF標的部位を共有する。図1Dに示されるように、蛍光活性化細胞選別(FACS)および免疫蛍光分析(IF)の両方によってアッセイすると、Cas9N-VP64融合体はRNA誘導性転写活性化を示す。具体的には、対照TALE-TFが両方のレポーターを活性化した一方で、Cas9N-VP64融合体はgRNA配列特異的にレポーターを活性化する。図1Eに示されるように、3種類全ての要素、すなわち、Cas9N、MS2-VP64、および適切なMS2アプタマー結合部位を有するgRNAが存在するときにのみ、レポーターコンストラクトのgRNA配列特異的転写活性化がFACSおよびIFの両方によって観察された。
【0086】
ある特定の態様によれば、Cas9N、1つ以上のgRNAおよび転写制御タンパク質またはドメインを使用して内在性遺伝子を制御する方法が提供される。一つの態様によると、内在性遺伝子はあらゆる所望の遺伝子(ここでは標的遺伝子と呼ばれる)であり得る。一つの例示的な態様によると、制御の標的となる遺伝子には、多能性の維持に関与する両方とも厳密に制御されている遺伝子であるZFP42(REX1)およびPOU5F1(OCT4)が含まれた。図1Fに示されるように、転写開始部位の上流の約5kb長のDNA鎖(DNase高感受性部位が緑色で強調されている)を標的とする10種類のgRNAをREX1遺伝子用にデザインした。プロモーター・ルシフェラーゼレポーターコンストラクト(ここにその全体が参照により援用されるTakahashiら著、Cell誌、第131巻、861~872頁(2007年)を参照のこと)を用いて転写活性化をアッセイするか、または内在性遺伝子のqPCRにより転写活性化を直接的にアッセイ
した。
【0087】
図6A~CはCas9N-VP64を使用するRNA誘導性OCT4制御に関する。図6Aに示されるように、転写開始部位の上流の約5kb長のDNA鎖を標的とする21種類のgRNAをOCT4遺伝子用にデザインした。DNase高感受性部位が緑色で強調されている。図6Bはプロモーター・ルシフェラーゼレポーターコンストラクトを使用して転写活性化を示している。図6Cは内在性遺伝子のqPCRにより直接的に転写活性化を示している。個々のgRNAの導入によって転写が中程度に促進された一方で、複数のgRNAが相乗的に作用して堅固な複数倍の転写活性化を促進した。
【0088】
図7A~CはCas9N、MS2-VP64およびgRNA+2×MS2アプタマーを使用するRNA誘導性REX1制御に関する。図7Aに示されるように、転写開始部位の上流の約5kb長のDNA鎖を標的とする10種類のgRNAをREX1遺伝子用にデザインした。DNase高感受性部位が緑色で強調されている。図7Bはプロモーター・ルシフェラーゼレポーターコンストラクトを使用して転写活性化を示している。図7Cは内在性遺伝子のqPCRにより直接的に転写活性化を示している。個々のgRNAの導入によって転写が中程度に促進された一方で、複数のgRNAが相乗的に作用して堅固な複数倍の転写活性化を促進した。一つの態様では、gRNA上に2×MS2アプタマーが存在しないことで転写活性化が引き起こされない。ここにその全体が参照によりそれぞれ援用されるMaederら著、Nature Methods誌、第10巻、243~245頁(2013年)およびPerez-Pineraら著、Nature Methods誌、第10巻、239~242頁(2013年)を参照されたい。
【0089】
したがって、方法は、標的遺伝子の発現を制御するためにCas9Nタンパク質および転写制御タンパク質またはドメインと複数のガイドRNAを使用することに関する。
【0090】
Cas9連結アプローチとgRNA連結アプローチの両方が効果的であり、前者は約1.5~2倍高い能力を示した。この差異は3要素複合体集合と対照的な2要素複合体集合の必要条件に起因するようである。しかしながら、gRNA連結アプローチは、各gRNAが異なるRNA-タンパク質間相互作用対を利用する限り、別個のgRNAによって様々なエフェクタードメインを動員することを原理的に可能にする。ここにその全体が参照により援用されるKaryer-Bibensら著、ヨーロッパ細胞生物学会賛助Biology of the Cell誌、第100巻、125~138頁(2008年)を参照されたい。本開示の一つの態様によると、特異的なガイドRNAおよび包括的な(generic)Cas9Nタンパク質、すなわち、異なる標的遺伝子に対する同一または類似のCas9Nタンパク質を使用して、異なる標的遺伝子を制御することができる。一つの態様によると、同一または類似のCas9Nを使用する多重遺伝子制御の方法が提供される。
【0091】
本開示の方法はヒト細胞の多重遺伝子操作およびエピジェネティック操作を提供するために本明細書に記載されるようなCas9Nタンパク質とガイドRNAを使用して標的遺伝子を編集することにも関する。Cas9-gRNAターゲティングが論点であるので(ここにその全体が参照により援用されるJiangら著、Nature Biotechnology誌、第31巻、233~239頁(2013年)を参照のこと)、非常に多種多様な標的配列のバリエーションに対するCas9親和性を徹底的に調査するための方法を提供する。したがって、本開示の態様は、天然のヌクレアーゼ活性型Cas9を使用する特異性試験によってもたらされるdsDNA切断毒性および突然変異修復により生じる厄介な問題を回避しつつヒト細胞におけるCas9ターゲティングの直接的ハイスループット・リードアウトを提供する。
【0092】
その他の本開示の態様は概ね標的遺伝子の転写制御のためにDNA結合タンパク質またはDNA結合システムを使用することに関する。当業者は本開示に基づいて例示的なDNA結合システムを容易に特定する。そのようなDNA結合システムは、天然のCas9タンパク質にあるようないかなるヌクレアーゼ活性も有する必要が無い。したがって、そのようなDNA結合システムはヌクレアーゼ活性を不活性化する必要が無い。一つの例示的なDNA結合システムはTALEである。ゲノム編集ツールとして通常はTALE-FokIダイマーが使用され、ゲノム制御にはTAEL-VP64融合体が非常に有効であることが示されている。一つの態様に従い、図2Aに示されている方法を用いてTALEの特異性を評価した。ライブラリーの各要素がdTomato蛍光タンパク質を発現するミニマルプロモーターを含むコンストラクトライブラリーを設計する。転写開始部位mの下流に24bpの(A/C/G)無作為転写物タグを挿入し、一方で2つのTF結合部位をプロモーターの上流に配置する。一つは全てのライブラリー要素によって共有される一定DNA配列であり、二つ目のものは「バイアスがかかった」結合部位ライブラリーを有する可変的特徴であり、それらの結合部位はプログラム可能DNAターゲティング複合体が結合するように設計された標的配列から離れて多数の突然変異の組合せを提示する配列の大きなコレクションに及ぶように設計されている。これは、標的配列ヌクレオチドが79%の頻度で現れ、他のそれぞれのヌクレオチドが7%の頻度で現れるようなヌクレオチド出現頻度を各位置で有するように設計された縮重オリゴヌクレオチドを使用して達成される。ここにその全体が参照により援用されるPatwardhanら著、Nature Biotechnology誌、第30巻、265~270頁(2012年)を参照されたい。次にレポーターライブラリーを配列解析して24bpのdTomato転写物タグとライブラリー要素中のそれらの対応する「バイアスがかかった」標的部位との間の関係を明らかにする。異なる標的間でのタグの共有が非常にまれであることがそれらの転写物タグの大きな多様性によって確証され、一方で標的配列のバイアスがかかった構成は、ほとんど突然変異を有しない部位がより多くの突然変異を有する部位よりも多くのタグと結合することを意味する。次に、dTomatoレポーター遺伝子の転写が共有DNA部位に結合するように設計された対照TF、または標的部位に結合するように設計された標的TFのどちらかによって促進される。促進を受けた細胞に対してRNA配列解析を実施することにより発現した各転写物タグの量を各試料で測定し、次に前もって作製された関連表を使用してそれらの対応する結合部位にその転写物タグをマップする。対照TFの結合部位は全てのライブラリー要素にわたって共有されているので対照TFは全てのライブラリー構成要素を等しく刺激することが予期され、一方で標的TFは、その標的TFが優先的に標的とする構成要素に対して、発現構成要素の分布状態をゆがめると予期される。対照TFについて得られたタグ数で標的TFについて得られたタグ数を除算することにより各結合部位について正規化発現レベルを計算するために、ステップ5においてこの仮説を利用する。
【0093】
図2Bに示されるように、Cas9-gRNA複合体は平均してその標的配列中の1~3個の突然変異に対して許容的であることがその複合体のターゲティングランドスケイプより明らかである。図2Cに示されるように、Cas9-gRNA複合体は、PAM配列に局在しているものを除いて点突然変異にもほとんど感受性が無い。特に、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)のCas9の予想されるPAMがNGGばかりでなくNAGでもあることがこのデータより明らかである。しかしながら、図2Dに示されるように、これらのミスマッチがさらに8~10塩基ほどgRNA標的配列の3’末端に近くに局在するときにのみ、2塩基のミスマッチの導入によってCas9-gRNA複合体活性は顕著に損なわれる(ヒートプロットでは標的配列の位置は5’末端より1~23と標識されている)。
【0094】
本明細書に記載される転写特異性アッセイを用いて別の広範に使用されるゲノム編集ツールであるTALEドメインの突然変異許容性を決定した。図2Eに示されるように、1
8-merのTALEについてのTALEオフ・ターゲティングデータより、18-merのTALEは平均してその標的配列中の1~2個の突然変異を許容することができ、且つ、その標的中の3塩基ミスマッチ変異体の大多数を活性化することができないことが明らかである。図2Fに示されるように、18-merのTALEは、Cas9-gRNA複合体と同様に、その標的中の1塩基のミスマッチにほとんど感受性が無い。図2Gに示されるように、18-merのTALEの活性は2塩基のミスマッチの導入によって顕著に損なわれる。TALEの活性はミスマッチがその標的配列の5’末端に近くなるほどそれらのミスマッチに対して感受性が高くなる(ヒートプロットでは標的配列の位置は5’末端より1~18と標識されている)。
【0095】
様々なサイズのTALEによるターゲティングのランドスケイプを評価することに関する図10A~Cの主題であるヌクレアーゼアッセイの標的化実験を用いて結果を確認した。図10Aに示されるように、18-merのTALEはそれらの標的配列中の複数の突然変異を許容することがヌクレアーゼ介在性HRアッセイを用いて確認された。図10Bに示されるように、図2に記載されているアプローチを用いて3つの異なるサイズ(18-mer、14-merおよび10-mer)のTALEのターゲティングランドスケイプを分析した。TALEが短くなるほど(14-merおよび10-mer)次第にそれらのTALEのターゲティングが特異的になり、活性もほぼ一桁低くなる。図10Cおよび10Dに示されるように、10-merのTALEはほぼ1塩基ミスマッチの感度を示し、2つのミスマッチを有する標的に対してほとんど全ての活性を失う(ヒートプロットでは標的配列の位置は5’末端より1~10と標識されている)。まとめると、ゲノム工学用途においてより短いTALEを設計するほどより高い特異性を得ることができ、一方でTALEヌクレアーゼ用途において標的外効果を回避するためにFokIの二量体化の必要性が重要であることをこれらのデータは示している。それぞれここにその全体が参照により援用されるKimら著、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌、第93巻、1156~1160頁(1996年)およびPattanayakら著、Nature Methods誌、第8巻、765~770頁(2011年)を参照されたい。
【0096】
図8A~Cは、実験データを例に示されている正規化発現レベルの算出のための高レベルの特異性分析処理フローに関する。図8Aに示されるように、レポーター遺伝子転写物に組み込まれる分布状態にバイアスがかかっている結合部位配列と無作為配列24bpタグを有するコンストラクトライブラリーを構築する(上段)。転写されたタグは、縮合性が高いので、多くが1つずつのCas9結合配列またはTALE結合配列に対応することになるはずである。コンストラクトライブラリーを配列解析して(第3段、左)どのタグがどの結合部位に対応するか確定し、結合部位と転写されたタグの間の関連表を作製する(第4段、左)。様々な結合部位について構築された複数のコンストラクトライブラリーについて、ライブラリーバーコードを使用して配列解析してもよい(ここでは水色および明黄色で表される;第1~4段、左)。次にコンストラクトライブラリーを細胞集団に形質移入し、一組の様々なCas9/gRNAまたはTALE転写因子をそれらの集団の試料中でガイドする(第2段、右)。1つの試料は、コンストラクト内の一定の結合部位配列を標的とする一定のTALE活性化因子によって常にガイドされる(上段、緑色のボックス)。この試料は陽性対照として機能する(緑色の試料、+記号によっても表される)。次にそれらのガイド試料内のレポーターmRNA分子から作られたcDNAを配列解析し、分析して試料中の各タグのタグ数を得る(第3段および第4段、右)。コンストラクトライブラリーの配列解析と同様に、試料バーコードを付加することにより陽性対照を含む複数の試料を一緒に配列解析し、分析する。ここで明赤色は、配列解析され、陽性対照(緑色)と一緒に分析された、1つの非対照試料を表す。各リードには転写されたタグだけが現れ、コンストラクトの結合部位は現れないので、次にコンストラクトライブラリー
の配列解析から得られた結合部位とタグの間の関連表を使用して各試料の中の各結合部位から発現するタグの総数を算出する(第5段)。次に各非陽性対照試料についての総数を陽性対照試料において得られた総数で除算することにより各非陽性対照試料についての総数を各結合部位についての正規化発現レベルに変換する。ミスマッチ数毎の正規化発現レベルのプロットの例が図2Bと2E、および図9A図10Bに提供されている。誤りがちなタグ、コンストラクトライブラリーと結合できないタグ、および明らかに複数の結合部位によって共有されるタグに対する幾つかのレベルのフィルタリングは、この全体的処理フローに含まれていない。図8Bはバイアスがかかったコンストラクトライブラリー内で生じたミスマッチ数毎の結合部位のパーセンテージの例示的な分布状態を示している。左:理論的分布状態。右:実際のTALEコンストラクトライブラリーから観察された分布状態。図8Cはミスマッチ数毎の結合部位に集まったタグの数のパーセンテージの例示的な分布状態を示している。左:陽性対照試料から観察された分布状態。右:対照ではないTALEがガイドされた試料から観察された分布状態。陽性対照TALEがコンストラクト内の一定の部位に結合するので、集まったタグ数の分布状態は図8Bにおける結合部位の分布状態をよく反映し、一方でミスマッチが少ない部位ほど高い発現レベルをガイドするのでその分布状態は非対照TALE試料について左方にゆがめられている。下:標的TFについて得られたタグ数を対照TFについて得られたタグ数で除算してこれらの間の相対的濃縮度を計算することによって平均発現レベルと標的部位における突然変異数との間の関係が明らかになる。
【0097】
これらの結果は異なるCas9-gRNA複合体を使用して作成された特異性データによってさらに再確認される。図9Aに示されるように、異なるCas9-gRNA複合体がその標的配列中の1~3個の突然変異に対して許容的である。図9Bに示されるように、そのCas9-gRNA複合体は、PAM配列に局在しているものを除いて点突然変異にもほとんど感受性が無い。しかしながら、図9Cに示されるように、2塩基のミスマッチの導入によって活性が顕著に損なわれる(ヒートプロットでは標的配列の位置は5’末端より1~23と標識されている)。図9Dに示されるように、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)のCas9の予想されるPAMがNGGであり、またNAGであることがヌクレアーゼ介在性HRアッセイを用いて確認された。
【0098】
ある特定の態様によると、本明細書に記載される方法に従って結合特異性が増加する。複数の複合体の間の相乗作用がCas9N-VP64による標的遺伝子の活性化の要因であり、個々の標的外結合事象の効果は最小限であるべきなのでCas9Nの転写制御用途は自然と非常に特異的である。一つの態様によると、ゲノム編集の方法の中でオフセット・ニックを使用する。ニックの大多数がNHEJ事象を引き起こすことはほとんどないので(ここにその全体が参照により援用されるCertoら著、Nature Methods誌、第8巻、671~676頁(2011年)を参照のこと)、標的外ニック形成の効果が最小になる。対照的に、オフセット・ニックを誘導して二本鎖切断(DSB)を生じさせることは遺伝子破壊の誘導において非常に有効である。ある特定の態様によると、5’オーバーハングは3’オーバーハングと比較してより有意なNHEJ事象を引き起こす。同様に、HR事象の総数は5’オーバーハングが生じたときよりも著しく少ないが、3’オーバーハングはNHEJ事象よりもHR事象を好む。以上より、相同組換えのためにニックを用い、二本鎖切断を生じさせるためにオフセット・ニックを用いて標的外Cas9-gRNA活性の効果を最小限にする方法が提供される。
【0099】
図3A~Cは多重オフセット・ニック形成およびガイドRNAとの標的外結合を減少させるための方法に関する。図3Aに示されるように、トラフィックライトレポーターを使用して標的化ニック導入時または標的化切断導入時のHR事象とNHEJ事象を同時にアッセイした。HDR経路により解消されたDNA切断事象はGFP配列を回復し、一方で突然変異誘発性NHEJはGFPを読み枠から外し、且つ、下流のmCherry配列を
読み枠に入れるフレームシフトの原因になる。そのアッセイについて、200bp長のDNA鎖を範囲とする14種類のgRNA、すなわち、センスストランドを標的とする7種類(U1~7)とアンチセンスストランドを標的とする7種類(D1~7)をデザインした。相補ストランドにニックを入れるCas9D10A突然変異体を使用して異なる二通りのgRNAの組合せを用いて一連の計画的5’オーバーハングまたは3’オーバーハングを誘導した(それらの14種類のgRNAのニック形成部位が示されている)。図3Bに示されるように、オフセット・ニックを誘導して二本鎖切断(DSB)を生じさせることは遺伝子破壊の誘導にとって非常に有効である。特に、5’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックは3’オーバーハングと比べてより多くのNHEJ事象を引き起こす。図3Cに示されるように、3‘オーバーハングの生成はNHEJ事象よりもHR事象の比率にとっても好都合であるが、HR事象の総数は5’オーバーハングが生じたときよりも著しく少ない。
【0100】
図11A~BはCas9D10Aニッカーゼ介在性NHEJに関する。図11Aに示されるように、トラフィックライトレポーターを使用して標的化ニック導入時または標的化切断導入時のNHEJ事象をアッセイした。簡単に説明すると、DNA切断事象の導入時にその切断が突然変異誘発性NHEJを誘発するとGFPが読み枠から外れ、且つ、下流のmCherry配列が読み枠に入って赤色の蛍光が生じる。200bp長のDNA鎖を範囲とする14種類のgRNA、すなわち、センスストランドを標的とする7種類(U1~7)とアンチセンスストランドを標的とする7種類(D1~7)をデザインした。図11Bに示されるように、全ての標的についてDSBと堅固なNHEJを引き起こす野生型Cas9と異なり(Cas9D10A突然変異体を用いると)大半のニックはほとんどNHEJ事象を引き起こさないことが観察された。14か所の部位全てが連続的な200bp長のDNA鎖の範囲内に位置し、10倍を超えるターゲティング効率の差が観察された。
【0101】
ある特定の態様に従い、細胞において標的核酸の発現を制御する方法であって、1つ以上の、2つ以上のまたは複数の外来核酸を前記細胞に導入することを含む前記方法を本明細書に記載する。細胞に導入されるそれらの外来核酸は単数のガイドRNAまたは複数のガイドRNA、単数のヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質または複数のヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質と転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする。また、ガイドRNA、ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および転写制御因子タンパク質またはドメインは、当該ガイドRNA、ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および転写制御因子タンパク質またはドメインがDNAに結合し、標的核酸の発現を制御する限り、当業者によって理解されるように共局在複合体と呼ばれる。ある特定の追加の態様によると、細胞に導入される前記外来核酸は単数のガイドRNAまたは複数のガイドRNAとCas9タンパク質ニッカーゼとをコードする。また、ガイドRNAとCas9タンパク質ニッカーゼは、当該ガイドRNAとCas9タンパク質ニッカーゼがDNAに結合し、標的核酸にニックを入れる限り、当業者によって理解されるように共局在複合体と呼ばれる。
【0102】
本開示による細胞には本明細書に記載されるように外来核酸を導入することができ、発現させることができるあらゆる細胞が含まれる。本明細書に記載される本開示の基本的な考えは細胞種によって限定されないことが理解されるべきである。本開示による細胞には真核細胞、原核細胞、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、古細菌細胞、真正細菌細胞などが含まれる。細胞には酵母細胞、植物細胞、および動物細胞などの真核細胞が含まれる。特定の細胞には哺乳類細胞が含まれる。さらに、細胞には標的核酸を制御するのに有益である、または望ましいあらゆる細胞が含まれる。そのような細胞には疾患または有害な健康状態を引き起こす特定のタンパク質の発現に欠損を有する細胞が含まれ得る。当業者にはそのような疾患または有害な健康状態は容易にわかる。本開示によれば、本明細書に記載される方法と、標的核酸の上方制御と特定のタンパク質の対応的な発現を引き起こす転写
活性化因子とによって、当該特定のタンパク質の発現を担う核酸が標的とされ得る。この場合、本明細書に記載される方法は治療処置を提供する。
【0103】
標的核酸には、本明細書に記載される共局在複合体が制御またはニックの形成のどちらかにとって有用であり得るあらゆる核酸配列が含まれる。標的核酸には遺伝子が含まれる。本開示の目的のため、二本鎖DNAなどのDNAは標的核酸を含むことができ、共局在複合体はその共局在複合体が標的核酸に対する所望の作用を有し得るようにその標的核酸で、またはそれに隣接して、またはその近傍でそのDNAに結合するか、あるいはこれら以外のやり方でそのDNAと共局在することができる。そのような標的核酸には内在性の(または天然の)核酸および外来性の(または外来の)核酸が含まれ得る。当業者は標的核酸を含むDNAに共局在するガイドRNAおよびCas9タンパク質を本開示に基づいて容易に特定またはデザインすることができる。当業者は標的核酸を含むDNAに同様に共局在する転写制御因子タンパク質またはドメインをさらに特定することができる。DNAにはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNAまたは外来性DNAが含まれる。
【0104】
外来核酸(すなわち、細胞の天然の核酸組成物の一部ではない核酸)を、当業者に知られている導入のためのあらゆる方法を用いて細胞に導入してよい。そのような方法には形質移入、形質導入、ウイルス形質導入、微量注入、リポフェクション、ヌクレオフェクション、ナノ粒子ボンバードメント、遺影室転換、接合などが含まれる。当業者は容易に特定可能な文献を用いてそのような方法を容易に理解し、適用する。
【0105】
転写活性化因子である転写制御因子タンパク質またはドメインにはVP16、VP64、および本開示に基づいて当業者によって容易に特定可能な他のものが含まれる。
【0106】
疾患および有害な健康状態は特定のタンパク質の発現の異常な喪失を特徴とするものである。そのような疾患または有害な健康状態は特定のタンパク質の上方制御によって治療され得る。以上より、疾患または有害な健康状態を治療する方法であって、本明細書に記載される共局在複合体が標的核酸を含むDNAに会合その他のやり方で結合し、共局在複合体の転写活性化因子が標的核酸の発現を上方制御する前記方法を提供する。例えば、褐色脂肪分化および代謝取込みの増加を促進するPRDM16と他の遺伝子の上方制御を用いてメタボリックシンドロームまたは肥満を治療することができる。抗炎症性遺伝子の活性化は自己免疫疾患および心血管疾患において有用である。腫瘍抑制遺伝子の活性化は癌の治療に有用である。当業者は本開示に基づいてそのような疾患および有害な健康状態を容易に特定する。
【0107】
後続の実施例を本開示の代表として示す。これらの実施形態および他の同等の実施形態は本開示、図面および添付されている特許請求の範囲を考慮して明らかであるので、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例0108】
[実施例1]
Cas9突然変異体
Cas9のRuvCドメインとHNHドメインの天然の活性を除去することができるCas9の候補突然変異を特定するために、公知の構造を有するCas9と相同である配列を検索した。HHpred(ワールド・ワイド・ウェッブサイト・ツールキット、tuebingen.mpg.de/hhpred)を使用して全長タンパク質データバンク(2013年1月)に対してCas9の全長配列をクエリ配列とした。この検索によってCas9のHNHドメインに対する顕著な配列相同性を有する2つの異なるHNHエンドヌクレアーゼであるPadエンドヌクレアーゼと推定エンドヌクレアーゼ(それぞれPDB
ID:3M7Kと4H9D)が返された。これらのタンパク質を調査してマグネシウムイオンの配位に関わる残基を見つけ出した。次に、それらの対応する残基をCas9に対する配列アラインメントの中で特定した。Cas9の中の同じ種類のアミノ酸と整列する各構造中の2つのMg配位性側鎖を特定した。それらは3M7KのD92とN113、および4H9DのD53とN77であった。これらの残基はCas9のD839とN863に対応した。Pad残基D92とN113のアラニンへの突然変異によってそのヌクレアーゼが触媒的に欠損になることも報告された。この分析に基づいてCas9突然変異D839AとN863Aを作製した。さらに、HHpredはCas9とサーマス・サーモフィルスのRuvC(PDB ID:4EP4)のN末端との間の相同性も予測する。この配列アラインメントはCas9中のRuvCドメインの機能を除去する以前に報告された突然変異D10Aを含む。この突然変異を適切な突然変異として確認するため、前述したように金属結合性残基を決定した。4EP4ではD7がマグネシウムイオンを配位するのに機能する。この位置はCas9 D10に対応する配列相同性を有し、この突然変異が金属結合の除去に役立ち、結果としてCas9のRuvCドメインからの触媒活性の除去に役立つことを確認する。
【0109】
[実施例2]
プラスミド構築
Quikchangeキット(アジレントテクノロジーズ社)を使用してCas9突然変異体を作製した。標的gRNA発現コンストラクトは(1)IDTから個々のgBlockとして直接注文され、pCR-BluntII-TOPOベクター(インビトロジェン)にクローン化されるか、または(2)Genewizによってカスタム合成されるか、または(3)オリゴヌクレオチドのGibson構築を用いてgRNAクローニングベクターに構築された(プラスミド番号41824)。Addgene社のEGIPレンチベクターに構築される、終止コドンを有するGFP配列と適切な断片の融合PCR構築によって切断型GFPを伴うHRレポーターアッセイ用のベクターを構築した(プラスミド番号26777)。次にこれらのレンチベクターを使用してGFPレポーター安定株を構築した。この研究で使用されたTALENは標準的なプロトコルを用いて構築された。ここにその全体が参照により援用されるSanjanaら著、Nature Protocols誌、第7巻、171~192頁(2012年)を参照されたい。標準的PCR融合プロトコルの手法を用いてCas9NとMS2 VP64の融合を実施した。OCT4およびREX1用のプロモータールシフェラーゼコンストラクトはAddgene社から入手した(プラスミド番号17221およびプラスミド番号17222)。
【0110】
[実施例3]
細胞培養および形質移入
10%ウシ胎児血清(FBS、インビトロジェン)、ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep、インビトロジェン)、および非必須アミノ酸(NEAA、インビトロジェン)を添加した高グルコース・ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、インビトロジェン)中でHEK293T細胞を培養した。加湿恒温器中に37℃および5%のCOで細胞を維持した。
【0111】
ヌクレアーゼアッセイを伴う形質移入は次の通りであった。製造業者のプロトコルに従ってリポフェクタミン2000を使用して0.4×10個の細胞に2μgのCas9プラスミド、2μgのgRNAおよび/または2μgのDNAドナープラスミドを形質移入した。形質移入から3日後に細胞を回収し、FACSによって分析するか、またはゲノム切断の直接的アッセイのためにDNAイージー・キット(Qiagen)を使用して約1×10個の細胞のゲノムDNAを抽出した。これらのためにPCRを実施して前記細胞に由来するゲノムDNAを用いてターゲティング領域を増幅し、MiSeqパーソナルシーケンサー(Illumina社)により200,000リードを超える包括度でアンプ
リコンをディープシークエンスした。シーケンシングデータを分析してNHEJ効率を推定した。
【0112】
転写活性化アッセイを伴う形質移入については、0.4×10個の細胞に(1)2μgのCas9N-VP64プラスミド、2μgのgRNAおよび/または0.25μgのレポーターコンストラクトを形質移入するか、または(2)2μgのCas9Nプラスミド、2μgのMS2-VP64、2μgのgRNA-2×MS2アプタマーおよび/または0.25μgのレポーターコンストラクトを形質移入した。形質移入から24~48時間後に細胞を回収し、FACSまたは免疫蛍光方法を用いてアッセイするか、またはそれらの全RNAを抽出し、その後にこれらのRNAをRT-PCRにより分析した。ここで、OCT4とREX1についてインビトロジェンの標準的taqmanプローブを使用し、各試料の正規化をGAPDHに対して実施した。
【0113】
Cas9-gRNA複合体とTALEの特異性プロファイルについての転写活性化アッセイを伴う形質移入については、0.4×10個の細胞に(1)2μgのCas9N-VP64プラスミド、2μgのgRNAおよび0.25μgのレポーターライブラリーを形質移入するか、または(2)2μgのTALE-TFプラスミドおよび0.25μgのレポーターライブラリーを形質移入するか、または(3)2μgの対照TFプラスミドおよび0.25μgのレポーターライブラリーを形質移入した。形質移入から24時間後に(レポーターの促進が飽和モード状態であることを回避するため)細胞を回収した。RNAイージー・プラス・キット(Qiagen)を使用して全RNA抽出を実施し、Superscript-III(インビトロジェン)を使用して標準的RT-pcrを実施した。転写物タグの標的化pcr増幅により次世代シーケンシング用のライブラリーを作製した。
【0114】
[実施例4]
Cas9-TFおよびTALE-TFレポーターの発現レベルの計算のための数理分析および配列分析
この処理のための高レベルの論理フローが図8Aに示されており、その他の詳細がここに提供される。コンストラクトライブラリーの組成の詳細については図8A(第1段)および8Bを参照されたい。
【0115】
シーケンシング:Cas9実験についてはコンストラクトライブラリー(図8A、第3段、左)とレポーター遺伝子のcDNA配列(図8A、第3段、右)をIllumina
MiSeq上で150bpの重複性ペアエンドリードとして入手し、TALE実験については対応する配列をIllumina HiSeq上で51bpの非重複性ペアエンドリードとして入手した。
【0116】
コンストラクトライブラリー配列の処理:アラインメント:Cas9実験について、novoalignバージョン2.07.17(ワールド・ワイド・ウェッブサイトnovocraft.com/main/index/php)を使用して8bpのライブラリーバーコード対によって挟まれる234bpのコンストラクトに対応する一組の250bpの基準配列に対してリード対を整列させた(図8A、第3段、左を参照のこと)。novoalignに提供された基準配列では23bpの縮合性Cas9結合部位領域と24bpの縮合性転写物タグ領域(図8A、第1段を参照のこと)をNと指定し、一方でコンストラクトライブラリーバーコードを明確に規定した。TALE実験については基準配列の長さが203bpであり、縮合性結合部位領域の長さが23bpに対して18bpであったことを除いて同じ方法を用いた。有効性検査:生成されたファイルについての、各リード対の左のリードと右のリードをそれぞれ基準配列に対して整列させたNovoalign出力データ。両方とも基準配列に対してユニークに整列しているリード対のみがその
他の有効性条件の対象とされ、これらの条件の全てを通過したリード対のみが保持された。有効性条件には以下のものが含まれる。
(i)2つのコンストラクトライブラリーバーコードの各々が少なくとも4か所の位置で基準配列バーコードと整列しなくてはならず、それら2つのバーコードは同じコンストラクトライブラリーのバーコード対について整列しなくてはならない。
(ii)基準配列のN領域に整列する全ての塩基はnovoalignによってA、C、GまたはTと呼ばれなくてはならない。Cas9実験についてもTALE実験についても左のリードと右のリードは基準N領域で重ならず、これらのN塩基のあいまいなnovoalignコールの可能性が生じなかったことに留意されたい。(iii)同様に、これらの領域にはnovoalignによってコールされる挿入または欠失が現れてはならない。(iv)(これらの無作為配列はA、C、およびGのみから生じるので)転写物タグ領域にTが現れてはならない。これらの条件のうちのいずれか1つに違反するリード対を拒絶リード対ファイルに収集した。自作のperlスクリプトを使用してこれらの有効性検査を実施した。
【0117】
ガイドされた試料レポーター遺伝子cDNA配列の処理:アラインメント:まず(ワールド・ワイド・ウェッブサイトgithub.com/jstjohn/SeqPrepからダウンロードされた)SeqPrepを使用して重複するリード対を79bpの共通セグメントにまで合併し、その後でnovoalign(上記のバージョン)を使用してこれらの79bp共通セグメントを非対合性単一リードとして一組の基準配列に整列させて(図8A、第3段、右を参照のこと)、その中で(コンストラクトライブラリーの配列解析については)24bpの縮合性転写物タグをNと指定し、一方で試料バーコードを明確に規定した。TALE配列領域とCas9cDNA配列領域の両方が8bp試料バーコード配列対によって挟まれる同一の63bpのcDNA領域に対応した。有効性検査では(a)ここで、それまでのSeqPrepによるリード対の合併のため、有効性処理はリード対中の両方のリードのユニークなアラインメントについてフィルターをかける必要が無く、合併したリードのユニークなアラインメントについてのみフィルターをかける必要があること、(b)cDNA配列リードには転写物タグだけが現れるので、有効性処理は基準配列のこれらのタグ領域を適用するだけであり、および別個の結合部位領域に適用されることもないこと、を除き、コンストラクトライブラリーの配列解析に適用したのと同じ条件を適用した(上記参照)。
【0118】
結合部位と転写物タグの間の関連表の構築:自作のperlを使用して有効性検査されたコンストラクトライブラリー配列からこれらの表を作成した(図8A、第4段、左)。A、C、およびGの塩基から構成される24bpのタグ配列は基本的にコンストラクトライブラリーにわたってユニークであるべきではあるが(共有する確率=約2.8e-11)、結合部位とタグの関連の早期分析により、おそらくは主に結合配列中の配列エラーの組合せ、またはコンストラクトライブラリーを作製するために使用されたオリゴの中のオリゴ合成エラーの組合せが原因で実際には無視できない割合のタグ配列が複数の結合配列によって共有されることが明らかになった。タグの共有に加えて、有効性検査されたリード対中の結合部位と関連することが分かったタグは、バーコードミスマッチに起因して、どのコンストラクトライブラリーにそれらのタグが由来し得るのか明確ではない場合にコンストラクトライブラリーリード対拒絶ファイルに見出される可能性もあった。最後に、タグ配列自体が配列エラーを含む可能性があった。これらのエラー原因に対処するため、タグを3つの属性に分類した:(i)安全対不安全:不安全はコンストラクトライブラリー拒絶リード対ファイルに見出され得るタグを意味した;共有対非共有:共有は複数の結合部位配列との関連が分かったタグを意味する;および2+対1のみ:2+は有効性検査されたコンストラクトライブラリー配列の中で少なくとも2回現れるタグであって、配列エラーを含む可能性が少ないと考えられるタグを意味する。これらの3つの基準を組み合わせて各結合部位と関連するタグの8つのクラスが生じ、最も保証された(しかし、最も
少ない)クラスは安定、非共有、2+タグのみを含み、最も保証されていない(しかし、最も多い)クラスは安全性、共有制、または発生数に関係なく全てのタグを含む。
【0119】
正規化発現レベルの計算:自作のperlコードを使用して図8Aの第5~6段に示されているステップを実施した。まず、コンストラクトライブラリーについて前もって計算した結合部位と転写物タグの間の表を用いて各ガイド試料について得られたタグ数を結合部位ごとに集計した(図8Cを参照のこと)。次に各試料について集計された各結合部位のタグ数を陽性対照試料について集計されたタグ数で除算して正規化発現レベルを作成した。これらの計算に関係するその他の考慮事項には以下のものが含まれる。
1.各試料について、結合部位と転写物タグの間の関連表の中に見出すことができない有効性検査されたcDNA遺伝子配列の中に「新規」タグの組が見出された。その後の計算ではこれらのタグを無視した。
2.結合部位と転写物タグの間の関連表の中の上記のタグの8クラスの各々について上記のタグ数の集計を実施した。コンストラクトライブラリー中の結合部位は、中心となる配列に類似の配列は頻繁に生成されるが、ミスマッチ数が増えた配列はだんだん稀にしか生成されないようにバイアスがかけられるので、ミスマッチがほとんど無い結合部位が一般に大多数のタグになり、ミスマッチが多い結合部位ほど少数のタグにしかならなかった。したがって、最も保証されたタグのクラスを使用することが一般的には望ましいが、2つ以上のミスマッチを有する結合部位の評価は結合部位当たり少数のタグに基づいたものとなり、それらのタグ自体は信頼できるものであってもその保証された数および比率が統計学的にあまり信頼できないものになる可能性があった。そのような場合、全てのタグを使用した。この考慮事項についてのある補償は、nか所のミスマッチ位置について別個に集計されたタグ数の数はミスマッチ位置の組合せ数(
【0120】
【数1】


に等しい)と共に増加し、nと共に劇的に増加するという事実から通用しており、したがって、様々な数nのミスマッチについて集計されたタグ数の平均(図2b、2e、および図9Aおよび10Bに示される)は2以上のnについて統計学的に非常に大きな集計されたタグ数の集合に基づいている。
3.最後に、TALEコンストラクトライブラリーに構築された結合部位は18bpであり、タグとの連関はこれらの18bp配列に基づいて指定されるが、幾つかの実験は18bpのコンストラクト結合部位領域内の中央の14bpまたは10bpの領域に結合するように計画されているTALEを用いて実施された。これらのTALEの発現レベルの計算において、タグを関連表中の18bpの結合部位の対応する領域に基づいて結合部位について集計し、それによりこの領域の外側にある結合部位のミスマッチを無視した。
【0121】
[実施例5]
Cas9-VP64を用いたRNA誘導性SOX2およびNANOG制御
本明細書に記載されるsgRNA(アプタマー改変短鎖ガイドRNA)連結アプローチにより、各sgRNAが異なるRNA-タンパク質間相互作用対を利用する限り、別個のsgRNAにより様々なエフェクタードメインを動員することができ、同一のCas9Nタンパク質を用いて多重遺伝子制御を行うことができる。図12AのSOX2遺伝子と図12BのNANOG遺伝子について、転写開始部位の上流の約1kb長のDNA鎖を標的とする10種類のgRNAをデザインした。DNase高感受性部位が緑色で強調されて
いる。内在性遺伝子のqPCRにより転写活性化をアッセイした。両方の例において、個々のgRNAの導入によって転写が中程度に促進された一方で、複数のgRNAが相乗的に作用して堅固な複数倍の転写活性化を促進した。データは平均値±SEM(N=3)である。図12A~Bに示されるように、2種類の追加の遺伝子であるSOX2とNANOGはプロモーターの上流約1kb長のDNA鎖内を標的とするsgRNAによって制御された。転写開始部位近傍のそれらのsgRNAによって堅固な遺伝子活性化が引き起こされた。
【0122】
[実施例6]
Cas9-gRNA複合体によるターゲティングのランドスケイプの評価
図2に記載されているアプローチを用いて2種類の追加的Cas9-gRNA複合体(図13A~C)と(図13D~F)のターゲティングランドスケイプを分析した。それらの2種類のgRNAは非常に異なる特異性プロファイルを有し、gRNA2は最大で2~3個のミスマッチを許容し、gRNA3は最大でも1個のミスマッチしか許容しない。これらの態様は1塩基ミスマッチプロット(図13B、13E)と2塩基ミスマッチプロット(図13C、13F)の両方に反映されている。図13Cおよび13Fでは正規化発現レベルを計算するには入手できるデータが不充分である塩基ミスマッチ対は「×」を含む灰色のボックスで表されており、一方でデータ表示を改善するため、正規化発現レベルが彩色スケールの一番上を超す外れ値であるミスマッチ対は星印「*」を含む黄色のボックスで表されている。統計学的有意性の記号は、***がP<0.0005/nであり、**がP<0.005/nであり、がP<0.05/nであり、およびN.S.(有意性無し)はP>=0.05/nであり、nは比較数である(表2を参照のこと)。
【0123】
[実施例7]
有効性確認、レポーターアッセイの特異性
図14A~Cに示されるように2種類の異なるsgRNA:Cas9複合体を使用して特異性データを作成した。対応する突然変異型sgRNAがレポーターライブラリーを刺激することができなかったので、そのアッセイは評価されるsgRNAについて特異的であることを確認した。図14A:野生型gRNA標的配列に対してデザインされたレポーターライブラリーを使用して2種類のgRNA(野生型および突然変異体;配列の差異が赤色で強調されている)の特異性プロファイルを評価した。図14B:対応する突然変異型gRNAがレポーターライブラリーを刺激することができなかったので、このアッセイは評価されるgRNAについて特異的であることを確認した(データを図13Dから再プロット)。統計学的有意性の記号は、***がP<0.0005/nであり、**がP<0.005/nであり、がP<0.05/nであり、およびN.S.(有意性無し)はP>=0.05/nであり、nは比較数である(表2を参照のこと)。異なるsgRNAは異なる特異性プロファイルを有することができ(図13A、13D)、具体的には、sgRNA2は最大で3個のミスマッチを許容し、sgRNA3は最大でも1個のミスマッチしか許容しない。ミスマッチに対する最も高い感受性は、他の位置にあるミスマッチも活性に影響することが観察されてはいたが、スペーサーの3’末端に局在する。
【0124】
[実施例8]
有効性確認、1塩基および2塩基gRNAミスマッチ
図15A~Dに示されるように、アッセイしたsgRNA中のスペーサーの3’末端の12bp内に1塩基のミスマッチがあっても検出可能なターゲティングが生じることが標的化実験により確認された。しかしながら、この領域内の2bpのミスマッチは活性の顕著な喪失を引き起こした。ヌクレアーゼアッセイを用いて2種類の独立したgRNAであるスペーサー配列内に標的に対する1塩基または2塩基のミスマッチ(赤色で強調)を担持するgRNA2(図15A~B)とgRNA3(図15C~D)を試験した。アッセイしたgRNA中のスペーサーの3’末端の12bp内に1塩基のミスマッチがあっても検
出可能なターゲティングが生じるものの、この領域内の2bpのミスマッチは活性の急速な喪失を引き起こすことが確認された。これらの結果は異なるgRNA間の特異性プロファイルの差をさらに強調し、図13の結果と一致する。データは平均値±SEM(N=3)である。
【0125】
[実施例9]
有効性確認、5’gRNA短縮
図16A~Dに示されるように、スペーサーの5’部分を短縮してもsgRNA活性が維持された。ヌクレアーゼアッセイを用いて2種類の独立したgRNAであるスペーサーの5’末端の短縮を有するgRNA1(図16A~B)とgRNA3(図16C-D)を試験した。1~3bpの5’末端短縮はよく許容されるが、それよりも大きい欠失は活性の喪失を引き起こすことが観察された。データは平均値±SEM(N=3)である。
【0126】
[実施例10]
有効性確認、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)のPAM
図17A~Bに示されるように、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)Cas9のPAMはNGGであり、およびまた、NAGであることがヌクレアーゼ介在性HRアッセイを用いて確認された。データは平均値±SEM(N=3)である。追加の調査により、ヒトエクソン内の作製された一組の約190KのCas9標的であって、ターゲティング配列の最後の13ntを共有する代替性NGG標的を有しないCas9標的を、前の13nt内にミスマッチを有する代替性NAG部位の存在について、またはNGG部位について走査した。わずかに0.4%のみがそのような代替性標的を有しないことがわかった。
【0127】
[実施例11]
有効性確認、TALE突然変異
18-merのTALEは標的配列中の複数の突然変異を許容することがヌクレアーゼ介在性HRアッセイ(図18A~B)を用いて確認された。図18A~Bに示されるように、ヌクレアーゼアッセイにおける標的化実験により測定すると、標的の中央におけるある特定の突然変異によってより高いTALEの活性が生じる。
【0128】
[実施例12]
TALEモノマーの特異性とTALEタンパク質の特異性
個々の反復性可変二残基(RVD)の役割を切り離すため、RVDの選択は塩基特異性に寄与しないが、TALE特異性は全体としてそのタンパク質の結合エネルギーの関数でもあることを確認した。図19A~CはTALEモノマー特異性とTALEタンパク質特異性の間の比較を示している。図19A図2に記載されるアプローチを改変したものを用い、一連の6NIリピートまたは6NHリピートを有する2種類の14-merのTALE-TFのターゲティングランドスケイプを分析した。このアプローチでは、中央に縮合性6-mer配列を有するレポーターの縮小型ライブラリーを作成および使用して、TALE-TFの特異性をアッセイした。図19B~C:両方の例において、予期される標的配列(すなわち、NIリピートについては6個のAを有し、NHリピートについては6個のGを有するもの)が濃縮されていることが指摘された。これらのTALEの各々はなお中央の6-mer標的配列内に1~2個のミスマッチがあることを許容する。モノマーの選択は塩基特異性に寄与しないが、TALE特異性は全体としてそのタンパク質の結合エネルギーの関数でもある。一つの態様によると、操作して短くしたTALEまたは高親和性モノマーと低親和性モノマーの組成を有するTALEはゲノム工学用途においてより高い特異性を生じ、短いTALEを使用するとヌクレアーゼ用途においてFokIの二量体化が標的外効果のさらなる減少を可能にする。
【0129】
[実施例13]
オフセット・ニック形成、天然遺伝子座
図20A~Bはオフセット・ニック形成に関するデータを示している。ゲノム編集の背景ではオフセット・ニックを形成してDSBを生じさせる。大多数のニックは非相同末端結合(NHEJ)介在性インデルを生じることがなく、したがってオフセット・ニックがガイドされるときに標的外単一ニック形成事象がインデルを生じる比率は非常に低い可能性がある。オフセット・ニックを誘導してDSBを生成することは、挿入されたレポーター遺伝子座と天然のAAVS1ゲノム座位の両方で遺伝子破壊をガイドするのに有効である。図20A:200bp長のDNA鎖を範囲とする8種類のgRNAであるターゲティングセンスストランドを標的とする4種類(s1~4)とアンチセンスストランドを標的とする4種類(as1~4)でAAVS1遺伝子座のターゲティングを行った。相補ストランドにニックを入れるCas9D10A突然変異体を使用して異なる二通りのgRNAの組合せを用いて一連の計画的5’オーバーハングまたは3’オーバーハングを誘導した。図20B:単一のgRNAでは検出可能なNHEJ事象がガイドされなかったが、オフセット・ニックを誘導してDSBを生成することが遺伝子破壊の誘導に非常に有効であることがサンガーシーケンシング・ベースアッセイを用いて観察された。特に、5’オーバーハングを生じさせるオフセット・ニックは3’オーバーハングと比べてより多くのNHEJ事象を生じさせる。サンガーシーケンシングクローンの数はバーの上で強調されており、予想されるオーバーハングの長さは対応するx軸の凡例の下に示されている。
【0130】
[実施例14]
オフセット・ニック形成、NHEJプロファイル
図21A~Cはオフセット・ニック形成およびNHEJプロファイルに関する。3種類の異なるオフセット・ニック形成組合せの代表的なサンガーシーケンシングの結果がボックスにより強調されているターゲティングgRNAの位置と共に示されている。さらに、相同組換え(HR)介在性修復の標準モデルと一致して、オフセット・ニックによる5’オーバーハングの作製によって3’オーバーハングよりも堅固なNHEJ事象がもたらされた(図3B)。5’オーバーハングを形成するとNHEJの促進に加えてHRの堅固な誘導が観察された。3’オーバーハングの形成はHR率の改善を引き起こさなかった(図3C)。
【0131】
[実施例15]
表1
内在性遺伝子制御のためのgRNA標的
Cas9-gRNA介在性活性化実験において使用されたREX1、OCT4、SOX2およびNANOGのプロモーター中の標的を列記する。
【0132】
【表1】
【0133】
[実施例16]
表2
Cas9-gRNAおよびTALEの特異性データの統計学的分析の要約
表2(a)特定の数の標的部位突然変異を有する標的配列に結合するTALEまたはC
as9-VP64活性化因子の正規化発現レベルの比較のP値。正規化発現レベルが図カラムに示されている図の中の箱ひげ図によって表されており、箱は標的部位のミスマッチ数毎のこれらの発現レベルの分布状態を表す。各箱ひげ図の中のミスマッチ数の各連続対についてt検定を用いてP値を計算したが、そのt検定は一標本t検定または二標本t検定のどちらかであった(方法を参照のこと)。各箱ひげ図内の比較数に基づくボンフェローニ補正P値閾値を使用して統計学的有意性を評価した。統計学的有意性の記号は、***がP<0.0005/nであり、**がP<0.005/nであり、がP<0.05/nであり、およびN.S.(有意性無し)はP>=0.05/nであり、ここでnは比較数である。表2(b)図2D中のシード領域の統計学的特徴解析:2つの突然変異が20bpの標的部位の3’末端の候補シード領域内の突然変異形成位置対にある標的配列と他の全ての位置対にある標的配列にCas9N VP64+gRNAが結合したときの発現値の間の分離度を表すlog10(P値)。最大の-log10(P値)(上で強調されている)によって示されている最大の分離度は標的部位の最後の8~9bpの中に見出される。これらの位置はこの標的部位の「シード」領域の始まりを表すものと解釈してよい。P値の計算方法の情報については方法のなかの「シード領域の統計学的分析」の節を参照されたい。
【0134】
【表2】
【0135】
[実施例17]
実施例中のタンパク質とRNAの配列
A. m4突然変異体に基づくCas9-VP64活性化因子コンストラクトの配列が下に表示されている。最大の活性を示すCas9m4 VP64融合タンパク質形式とC
as9m4 VP64N融合タンパク質形式を有する3種類のバージョンを構築した。m3突然変異体およびm2突然変異体(図4A)の対応するベクターも構築した(NLSドメインとVP64ドメインが強調されている)。
【0136】
【化2-1】
【0137】
【化2-2】
【0138】
【化2-3】
【0139】
【化3-1】
【0140】
【化3-2】
【0141】
【化3-3】
【0142】
【化4-1】
【0143】
【化4-2】
【0144】
【化4-3】
【0145】
B.MS2活性化因子コンストラクトと2×MS2アプタマードメインを有する対応するgRNAバックボーンベクターの配列が下に提供されている(NLS、VP64、gRNAスペーサー、およびMS2結合RNAステムループドメインが強調されている)。最大の活性を示すMS2VP64N融合タンパク質形式を有する前者の2種類のバージョンを構築した。
【0146】
【化5】
【0147】
【化6】
【0148】
【化7】
【0149】
C.dTomato蛍光ベース転写活性化レポーター配列が下に記載されている(ISceI対照TF標的配列、gRNA標的配列、最小CMVプロモーター配列およびFLAGタグ+dTomato配列が強調されている)。
【0150】
【化8】
【0151】
【化9】
【0152】
D.TALEおよびCas9-gRNAの特異性アッセイに使用されるレポーターライブラリーの全般的形式が下に提供されている(ISceI対照TF標的配列、gRNA/TALE標的部位配列(gRNAについては23bp、およびTALEについては18bp)、最小CMVプロモーター配列、RNAバーコード配列、およびdTomato配列が強調されている)。
【0153】
【化10】
【0154】
本発明の態様は以下を含む。
付記1
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
前記DNAに結合し且つ前記1種類以上のRNAによってガイドされるヌクレアーゼ欠損(nuclease-null)Cas9タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する、
細胞において標的核酸の発現を制御する方法。
付記2
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、付記1に記載の方法。
付記3
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸が、RNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制
御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、付記1に記載の方法。
付記4
前記細胞が真核細胞である、付記1に記載の方法。
付記5
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記1に記載の方法。
付記6
前記RNAが約10ヌクレオチド~約500ヌクレオチドである、付記1に記載の方法。
付記7
前記RNAが約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドである、付記1に記載の方法。
付記8
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、付記1に記載の方法。
付記9
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、付記1に記載の方法。
付記10
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、付記1に記載の方法。
付記11
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記1に記載の方法。
付記12
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、付記1に記載の方法。
付記13
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記1に記載の方法。
付記14
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記1に記載の方法。
付記15
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し且つ前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる、
細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
付記16
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在する、付記15に記載の方法。
付記17
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在して相同組換えを引き起こす、付記15に記載の方法。
付記18
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在する、付記
15に記載の方法。
付記19
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在して二本鎖切断を生じさせる、付記15に記載の方法。
付記20
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、付記15に記載の方法。
【0155】
付記21
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれている、付記15に記載の方法。
付記22
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせる、付記15に記載の方法。付記23
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、付記15に記載の方法。
付記24
ドナー核酸配列をコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のニックにより前記標的核酸の前記ドナー核酸配列との相同組換えが引き起こされる、付記15に記載の方法。
付記25
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする第2外来核酸、および
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を含み、
前記1種類以上のRNA、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、前記標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
付記26
ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記ヌクレアーゼ欠損Cas9タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、付記25に記載の細胞。
付記27
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、付記25に記載の細胞。
付記28
前記細胞が真核細胞である、付記25に記載の細胞。
付記29
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記25に記載の細胞。
付記30
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、付記25に記載の細胞。
付記31
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、付記25に記載の細胞。
付記32
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、付記25に記載の細胞。
付記33
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、付記25に記載の細胞。
付記34
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、付記25に記載の細胞。
付記35
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記25に記載の細胞。
付記36
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、付記25に記載の細胞。
付記37
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記25に記載の細胞。
付記38
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記25に記載の細胞。
付記39
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、および
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有する少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが、前記DNA標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
付記40
前記細胞が真核細胞である、付記39に記載の細胞。
【0156】
付記41
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記39に記載の細胞。
付記42
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、付記39に記載の細胞。
付記43
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、付記39に記載の細胞。
付記44
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記39に記載の細胞。
付記45
前記2種類以上のRNAがガイドRNAである、付記39に記載の細胞。
付記46
前記2種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記39に記載の細胞。
付記47
前記DNA標的核酸がゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記39に記載の細胞。
付記48
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
1つの不活性型ヌクレアーゼドメインを有し且つ前記2種類以上のRNAによってガイドされる少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のCas9タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のR
NAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
付記49
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸を前記細胞に導入すること、
転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが発現し、前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記DNAに共局在し、且つ、前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を制御する、細胞において標的核酸の発現を制御する方法。
付記50
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、付記49に記載の方法。
付記51
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、付記49に記載の方法。
付記52
前記細胞が真核細胞である、付記49に記載の方法。
付記53
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記49に記載の方法。
付記54
前記RNAが約10ヌクレオチド~約500ヌクレオチドである、付記49に記載の方法。
付記55
前記RNAが約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドである、付記49に記載の方法。
付記56
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、付記49に記載の方法。
付記57
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、付記49に記載の方法。
付記58
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、付記49に記載の方法。
付記59
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記49に記載の方法。
付記60
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、付記49に記載の方法。
【0157】
付記61
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記49に記載の方法。
付記62
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記49に記載の方法。
付記63
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
付記64
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在する、付記63に記載の方法。
付記65
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの同じストランド上に存在して相同組換えを引き起こす、付記63に記載の方法。
付記66
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在する、付記63に記載の方法。
付記67
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在して二本鎖切断を生じさせる、付記63に記載の方法。
付記68
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、付記63に記載の方法。
付記69
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれている、付記63に記載の方法。
付記70
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせる、付記63に記載の方法。付記71
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、且つ、その位置が互いにずれており、且つ、二本鎖切断を生じさせて非相同末端結合を引き起こす、付記63に記載の方法。
付記72
ドナー核酸配列をコードする第3外来核酸を前記細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のニックにより前記標的核酸の前記ドナー核酸配列との相同組換えが引き起こされる、付記63に記載の方法。
付記73
標的核酸を含むDNAに相補的である1種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする第2外来核酸、およ

転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする第3外来核酸を含み、
前記1種類以上のRNA、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質、および前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、前記標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
付記74
RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質をコードする前記外来核酸が、前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質に融合した前記転写制御因子タンパク質またはドメインをさらにコードする、付記73に記載の細胞。
付記75
1種類以上のRNAをコードする前記外来核酸がRNA結合ドメインの標的をさらにコードし、
前記転写制御因子タンパク質またはドメインをコードする前記外来核酸が、前記転写制御因子タンパク質またはドメインに融合したRNA結合ドメインをさらにコードする、付記73に記載の細胞。
付記76
前記細胞が真核細胞である、付記73に記載の細胞。
付記77
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記73に記載の細胞。
付記78
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、付記73に記載の細胞。
付記79
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、付記73に記載の細胞。
付記80
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが転写活性化因子である、付記73に記載の細胞。
【0158】
付記81
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが前記標的核酸の発現を上方制御する、付記73に記載の細胞。
付記82
前記転写制御因子タンパク質またはドメインが、疾患または有害な健康状態を治療するために前記標的核酸の発現を上方制御する、付記73に記載の細胞。
付記83
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記73に記載の細胞。
付記84
前記1種類以上のRNAがガイドRNAである、付記73に記載の細胞。
付記85
前記1種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記73に記載の細胞。
付記86
前記DNAがゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記73に記載の細胞。
付記87
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸、および
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を含み、
前記2種類以上のRNAおよび前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが、前記DNA標的核酸に対する共局在複合体の構成要素である、細胞。
付記88
前記細胞が真核細胞である、付記87に記載の細胞。
付記89
前記細胞が酵母細胞、植物細胞、または動物細胞である、付記87に記載の細胞。
付記90
前記RNAが約10個~約500個のヌクレオチドを含む、付記87に記載の細胞。
付記91
前記RNAが約20個~約100個のヌクレオチドを含む、付記87に記載の細胞。
付記92
前記標的核酸が疾患または有害な健康状態と関連する、付記87に記載の細胞。
付記93
前記2種類以上のRNAがガイドRNAである、付記87に記載の細胞。
付記94
前記2種類以上のRNAがtracrRNA‐crRNA融合体である、付記87に記載の細胞。
付記95
前記DNA標的核酸がゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、または外来性DNAである、付記87に記載の細胞。
付記96
それぞれがDNA標的核酸中の隣り合う部位に相補的である2種類以上のRNAをコードする第1外来核酸を細胞に導入すること、
少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼをコードする第2外来核酸を前記細胞に導入することを含み、
前記2種類以上のRNA及び前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが発現し、前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼが前記2種類以上のRNAと共に前記DNA標的核酸に共局在し、前記DNA標的核酸にニックを入れて2つ以上の隣接するニックを生じさせ、
前記2つ以上の隣接するニックが二本鎖DNAの異なるストランド上に存在し、二本鎖切断を生じさせて前記標的核酸の断片化を引き起こすことによって前記標的核酸の発現を妨げる、細胞内でDNA標的核酸を改変させる方法。
付記97
前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質がII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質である、付記49に記載の方法。
付記98
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、付記63に記載の方法。
付記99
前記RNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質がII型CRISPRシステムのRNA誘導型ヌクレアーゼ欠損DNA結合タンパク質である、付記73に記載の細胞。
付記100
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、付記87に記載の細胞。
【0159】
付記101
前記少なくとも1種類のRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼがII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNA結合タンパク質ニッカーゼである、付記96に記載
の方法。
付記102
1塩基~4塩基の5’短縮を有するスペーサー配列を含むガイドRNA。
付記103
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約64個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記104
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約65個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記105
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約66個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記106
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約67個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記107
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約68個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記108
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約69個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記109
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約70個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記110
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約80個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記111
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約90個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
付記112
crRNAとtracrRNAの融合転写物であって、前記tracrRNAが約100個~約500個の核酸を含むガイドRNA。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
図15-5】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図16-5】
図16-6】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図19-4】
図19-5】
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図21-3】
【配列表】
2022166077000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書中に実質的に開示された発明。