(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166128
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】取付板及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20221025BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20221025BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H05K5/02 E
H05K7/12 M
B60R11/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126322
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018213779の分割
【原出願日】2018-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】赤井 愛智
(57)【要約】
【課題】取付状態が長期間安定維持される取付板及び電子機器を提供する。
【解決手段】取付板(12)は、本体部(1)に支持部(17)で支持され、支持部(17)とは反対側の面における、支持部(17)に対応した位置に対応する部位に、凹凸部(12t)を有する。または、取付板(12)は、本体部(1)に支持部(17)で支持され、支持部(17)とは反対側の面において接着部材(2)を介して凹面である被取付部材(3)に取り付けられ、接着部材(2)の圧縮度合が高くなる取付板(12)の周縁部に、凹凸部(12t)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に支持部で支持され、前記支持部とは反対側の面における、前記支持部に対応した位置に対応する部位に、凹凸部を有する
取付板。
【請求項2】
本体部に支持部で支持され、前記支持部とは反対側の面において接着部材を介して凹面である被取付部材に取り付けられる取付板であって、
前記接着部材の圧縮度合が高くなる前記取付板の周縁部に、凹凸部を有する
取付板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の取付板と、
本体部と、
を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ドライブレコーダ装置(取付部材)を、車両のフロントガラス(被取付部材)の内面に両面テープを用いて取り付ける構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構造は、ドライブレコーダ装置における比較的質量の大きいレコーダ本体を、可動アーム,固定アーム,及び貼付板を介し、貼付板に張り付けられた両面テープによってフロントガラスに取り付けるようになっている。
すなわち、レコーダ本体がフロントガラスから遠い位置にあり、両面テープには、特に上側の部分に、フロントガラスから剥がす方向のモーメントが付与される。
【0005】
そのため、ドライブレコーダ装置をフロントガラスに取り付けた場合に、時間経過に伴い、接着部材である両面テープの一部がフロントガラス又は貼付板から剥がれ、ドライブレコーダ装置の取付状態が不安定になる可能性を排除できない。そのため、取付状態が長期間安定維持される工夫が望まれている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、取付状態が長期間安定維持される取付板及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1)本体部に支持部で支持され、支持部とは反対側の面における、支持部に対応した位置に対応する部位に、凹凸部を有する取付板である。
2)本体部に支持部で支持され、支持部とは反対側の面において接着板を介して凹面である被取付部材に取り付けられる取付板であって、接着部材の圧縮度合が高くなる取付板の周縁部に、凹凸部を有する取付板である。
3)上記1)または2)に記載の取付板と、本体部と、を備える、電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、取付状態が長期間安定維持される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の実施例であるドライブレコーダ51をフロントガラス3に取り付けた第1の状態を示す左側面図である。
【
図2】
図2は、ドライブレコーダ51の前面図である。
【
図3】
図3は、ドライブレコーダ51の後面図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるS4-S4位置での断面図である。
【
図5】
図5は、ドライブレコーダ51をフロントガラス3に取り付けた第2の状態を示す左側面図である。
【
図6】
図6は、ドライブレコーダ51が有する取付板12における支持対応部AR17,AR161,AR162を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、ドライブレコーダ51の変形例1であるドライブレコーダ51Aを示す前面図である。
【
図8】
図8は、変形例2としてのドライブレコーダ51A1における支持対応部AR17,1R17A,AR16Aを説明するための平面図である。
【
図9】
図9は、変形例3としての取付板12Bにおける突起12aの形成例を示す
図8におけるS9-S9位置での断面図である。
【
図10】
図10は、突起12aを形成した取付板12のフロントガラス3への取付状態を示す第1の断面図である。
【
図11】
図11は、突起12aを形成した取付板12のフロントガラス3への取付状態を示す第2の断面図である。
【
図12】
図12は、ドライブレコーダ51の変形例4であるドライブレコーダ51Cを示す模式的右側面図である。
【
図13】
図13は、ドライブレコーダ51の変形例5であるドライブレコーダ51Dを示す模式的右側面図である。
【
図14】
図14は、ドライブレコーダ51の変形例6であるドライブレコーダ51Eを示す模式的右側面図である。
【
図15】
図15は、ドライブレコーダ51Eの取付板12Eにおける支持対応部AR16A,AR231,AR232を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る電子機器を、実施例のドライブレコーダ51などにより説明する。また、ドライブレコーダ51を取付部材とし車両のフロントガラス3を被取付部材とも称する。
【0011】
(実施例)
図1は、車両のフロントガラス3の内面3aに、ドライブレコーダ51を取り付けた状態を示す一部断面の左側面図である。
図1において車両の前後上下方向を矢印で示してある。左方は紙面手前側、右方は紙面奥側である。また、取付板12の上面123に直交する外内方向をそれぞれY前方向及びY後方向とし、Y前Y後方向に直交する上下方向をY上方向及びY下方向と規定し、矢印で示してある。
図1は、湾曲した非平板部材であるフロントガラス3を、便宜的に平板部材として示してある。
【0012】
ドライブレコーダ51は、本体部1,取付板12,リンク腕14,ケーブル13を有する。本体部1の外装,取付板12,及びリンク腕14は、樹脂又は金属により形成されている。
【0013】
本体部1は、上下方向に薄い直方体状に形成され、カメラ部11,信号処理部19,及び記憶部20を有する。本体部1は、フロントガラス3に対しカメラ部11が前部に位置する姿勢で使用される。カメラ部11が有するレンズ部11aは、本体部1の前面に露出している。信号処理部19及び記憶部20は、本体部1内に収容されている。
【0014】
本体部1の上面の前部には、取付板支持部16が形成されている。取付板支持部16は、取付板12のY下端部を、左右方向に延びる回動軸線CL16まわりに回動自在に支持する。
本体部1の上面後方には、板状のリンクガイド15が立設されている。リンクガイド15は、カメラ部11の光軸CL11に沿う方向に延びる長孔151を有する。
【0015】
取付板12は、本体部1に対して反対側となる上面123に、接着部材2が接着されている。接着部材2は、例えば、厚さ方向に弾性圧縮可能な両面テープである。上面123は、接着部材2の取付面でもあり、上面123を有する取付板12は、ドライブレコーダ51を、内面が凹面となるよう湾曲したフロントガラスの内面に取り付ける取付部となる。
引き出し線13aは、一端側が信号処理部19に接続され、他端側が本体部1から上方に引き出されて取付板12に沿い後面124からケーブル13として引き出されている。
【0016】
ケーブル13は、カメラ部11及び信号処理部19に電源を供給する給電線とカメラ部11から出力された映像信号及びカメラ部11で撮像されて記憶部20に記憶された画像の信号を外部に送出する信号線とを含む。
ケーブル13は、後面124から引き出されたあと、フロントガラス3の中央上方のルームミラーまわりなどに引き回され、車両に設置されたカーナビゲーション装置などのモニター機器(不図示)に接続される。
【0017】
取付板12の本体部1側の面は下面125である。下面125における後面124側の端部又は端部近傍には、リンク腕支持部17が設けられている。
リンク腕支持部17は、リンク腕14の一端側を左右方向に延びる回動軸線CL17まわりに回動自在に支持している。
リンク腕14の他端側は、摺動子部18として本体部1と連結されている。摺動子部18は、リンク腕14が、リンクガイド15の長孔151に対し、光軸CL11方向に摺動可能(矢印DRb参照)に係合する連結部位である。
摺動子部18は、ロック機能を有し、リンクガイド15に対するリンク腕14の係合位置を、長孔151内の所望の前後位置でロックできるようになっている。
【0018】
ドライブレコーダ51は、取付板12に接着した両面テープ2をフロントガラス3の内面3aに接着(貼着)することによりフロントガラス3に取り付けられる。
ドライブレコーダ51は、摺動子部18のロック位置を前後方向に調整することで、リンク腕14で連結された取付板12の本体部1に対する起立角度を自由に設定できる。
【0019】
起立角度は水平面LHに対する角度である。例えば、
図1において、摺動子部18は長孔151の最前端部に位置しており、起立角度は角度θ1である。
これにより、ドライブレコーダ51をフロントガラス3の内面3aに取り付けたときに、内面3aの傾斜角度に応じ、カメラ部11によってフロントガラス3を通して撮像される車両前方の撮像範囲を上下方向に調整設定できる。
【0020】
図2はドライブレコーダ51の前面図である。
図2に示されるように、取付板支持部16は、本体部1の前部において上方に突出し左右に離隔して形成された一対の突出部11b1,11b2と、一対の突出部11b1,11b2を繋ぐように設けられた左右方向に延びる支持軸部11cとを有する。支持軸部11cは、回動軸線CL16を軸線として形成されている。
【0021】
取付板12は、前端部(Y下端部)にフック部12cを有する。詳しくは、取付板12は、左右両端部に、支持軸部11cの周面に対し摺動回動可能に係合する一対のフック部12c1,12c2を有する。
すなわち、取付板支持部16は、フック部12c1と支持軸部11cとが係合した取付板支持部161と、フック部12c2と支持軸部11cとが係合した取付板支持部162とに分割されている。
【0022】
フック部12c1,12c2の左右方向の外面間距離は、一対の突出部11b1,11b2の左右方向の内面間距離に対しわずかに小さく設定されており、取付板12は、回動軸線CL16まわりの回動において、左右方向の移動が実質的にない状態とされている。
【0023】
次に、
図3及び
図4を主に参照して、リンク腕14と、リンク腕支持部17及び摺動子部18との構造について説明する。
図3は、ドライブレコーダ51の後面図であり、
図4は
図1におけるS4-S4位置での断面図である。
図3に示されるように、本体部1の後面には、ドライブレコーダ51を操作するための複数の操作釦11sが、操作部11sGとして配置されている。
【0024】
リンク腕14は、板状の基部14aと、摺動子部18側において基部14aに直交し左右方向に延びる回動軸線CL18を軸線として筒状に突出した摺動支持部14bと、リンク腕支持部17側に厚さが薄く形成された回動支持部14cと、を有する。
リンク腕14において、摺動支持部14bの反対側には、凹部14b1が形成されている。摺動支持部14bには、軸線を回動軸線CL18とする貫通孔14b2が形成されている。また、回動支持部14cには、左右方向に延びる回動軸線CL17を軸線とする貫通孔14c1が形成されている。
【0025】
リンク腕支持部17において、取付板12は、支持壁12dと支持壁12dに形成された凹部12d1とを有する。支持壁12dの凹部12d1には回動軸線CL17を軸線とする貫通孔12d2が形成されている。
支持壁12dの貫通孔12d2と回動支持部14cの貫通孔14c1とは、同芯で位置合わせされると共に、ボルトBN1が凹部12d1側から挿通されナットBN2で締め込まれている。
ボルトBN1と支持壁12dとの間、支持壁12dと回動支持部14cとの間、及び回動支持部14cとナットBN2の間には、それぞれ高い摺動性を有するポリスライダワッシャ4d,4e,及び4fが介在している。
【0026】
摺動子部18において、長孔151側から貫通孔14b2へとボルトBN3が挿通され、ナットBN4で締め込まれている。
ボルトBN3とリンクガイド15との間、リンクガイド15と摺動支持部14bとの間、及び摺動支持部14bとナットBN4との間には、それぞれポリスライダワッシャ4a,4b,及び4cが介在している。
【0027】
リンク腕支持部17には、ボルトBN1及びナットBN2を過剰に締め込んだときにロックしないように、所定長さのカラー(不図示)がボルトBN1とナットBN2との間に介装されている。
これにより、リンク腕14は、常に非ロック状態であり、かつ所定値以上の回動トルクが付与されたときに回動するようになっている。
一方、摺動子部18は、ボルトBN3及びナットBN4を締め込むことで、まず所定値以上の回動トルクで回動可能な使用状態となり、さらに締め込むことで、基部14aの、リンクガイド15に対する回動軸線CL18まわりの回動位置を所望の位置でロックできる。
【0028】
図5は、摺動子部18を、長孔151の最後部に移動して(矢印DR18)位置させた状態を示す左側面図であり、
図1と対比可能な図である。
図5に示されるように、取付板12の起立角度が角度θ1よりも小さい角度θ2となり、このようにフロントガラス3が伏せた姿勢の場合においても、ドライブレコーダ51は、光軸CL11を概ね水平方向にして取付可能である。
【0029】
図6は、取付板12において本体部1を支持する部位を、ハッチング付きの領域で示した概念図である。
ドライブレコーダ51において、取付板12は、本体部1を、前方端(Y下方端)の左右二箇所のフック部12c1,12c2と、左後方(左Y上方)のリンク腕支持部17と、の3箇所で支持している。詳しくは、第1の支持部は、取付板支持部16であり、第2の支持部は、リンク腕支持部であり、第3の支持部は摺動子部18である。
すなわち、
図6に示されるように、取付板12は、本体部1を、一対のフック部12c1,12c2に対応し左右方向に離隔する支持対応部AR161,AR162と、リンク腕支持部17に対応する支持対応部AR17とで支持している。
支持対応部AR17は、支持対応部AR161に対しY上方に離隔した位置にある。
【0030】
図1,
図2,及び
図5に示されるように、本体部1には、左右方向の概ね中央、かつ前後方向において中央やや前方の位置に、重心Gがある。ドライブレコーダ51をフロントガラス3に取り付けた状態で、重心Gには重力Fa2がかかり接着部材2は、重力Fa2に抗して取付板12を接着により支持している。
従って、接着部材2には、重力Fa2が、支持対応部AR161,AR162,AR17の3箇所に分散して作用する。従って、各支持対応部にかかる力は、1箇所で支持する場合よりも小さくなっており、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12から剥がれにくくなっている。
【0031】
また、支持対応部AR161,AR162は、取付板12の左右両端にあり、重心Gは、左右方向において、支持対応部AR161,1R162の間に位置する。すなわち、重心Gを含み左右を分割する鉛直平面に対し、支持対応部AR161,AR162はそれぞれ左側と右側とに位置する。
これにより、支持対応部AR161及び支持対応部AR162それぞれにかかる前後方向を軸とするモーメントは、打ち消し合って小さくなる。
【0032】
また、
図1に示されるような起立角度が特に大きい場合を除き、
図5に示されるように、重心Gは、前後方向において、一対の支持対応部AR161,AR162と支持対応部AR17との間に位置する。
これにより、支持対応部AR161,AR162と支持対応部AR17とのそれぞれに掛かる左右方向を軸とするモーメントは、打ち消し合って小さくなる。
【0033】
このように、ドライブレコーダ51は、接着部材2に対し、本体部1の自重が分散した複数の領域にかかるようになっている。そのため、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12から剥がれにくい。
また、接着部材2に対して分散してかかる力それぞれのモーメントも、前後方向及び左右方向それぞれで打ち消し合うように作用する。
そのため、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12に対しさらに剥がれにくくなっている。
【0034】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0035】
実施例のドライブレコーダ51は、取付板12のフック部12cを、その前端(Y下端)における左側及び右側に形成されたフック部12c1及びフック部12c2として一対備えている。これに限らず、変形例1として、一つのフック部12Acを有する取付板12Aを備えたドライブレコーダ51Aであってもよい。
【0036】
図7は、ドライブレコーダ51Aの前面図である。
図7において、ドライブレコーダ51Aは、重心Gの位置を跨いで左右に延びる一つのフック部12Acを有する。フック部12Acは、支持軸部11cに係合し、取付板支持部16Aを構成する。
これにより、
図8に示されるように、フック部12Acに対応する支持対応部AR16Aは、取付板12の前端(Y下端)において左右方向に隙間なく延在する一つの領域となる。そのため、取付板支持部16Aから接着部材2に加わる力は、面分布となってドライブレコーダ51の場合よりもさらに分散され、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12Aから、さらに剥がれにくくなる。
【0037】
実施例のドライブレコーダ51は、取付板12を後方側(Y上方側)で支える、取付板支持部16,リンク腕14,及びリンク腕支持部17からなる支持組SGを左右の一方(左側)のみに備えたものである。
これに対し、ドライブレコーダ51を、一対の支持組SG,SGAを有するドライブレコーダ51A1に変形してもよい。
図7には、追加した右側の支持組SGAが鎖線で示されている。ドライブレコーダ51A1では取付板12A1が用いられる。
【0038】
図8には、一対の支持組SG,SGAに対応する支持対応部AR17,AR17Aが記載されている。
すなわち、
図8には、変形例1のドライブレコーダ51Aに、さらに支持組SGAを搭載した変形例2のドライブレコーダ51A1の支持対応部AR16A,AR17,AR17Aが示されている。
これにより、本体部1から加わる重力Fa2は、接着部材2に対し、左右方向及び前後方向(Y上Y下方向)に、それぞれが比較的大きな面積を有するように分散して付与される。そのため、接着部材2の接着力に加わる単位面積あたりの力はより小さく、接着力への影響はより少なくなる。従って、接着部材2はフロントガラス3の内面3a及び取付板12A1からより剥がれにくくなる。
【0039】
取付板12A1において重心Gの鉛直線と交わる取付部重心位置とも称する位置Gp(
図5及び
図8参照)に対し、支持対応部AR16A,AR17,AR17Aは、左右及び前後(Y上Y下)それぞれの方向に対称範囲として位置する。
これにより、接着部材2にかかる左右方向に延びる軸まわりのモーメント及びY上Y下方向に延びる軸まわりのモーメントはそれぞれ相殺して、接着部材2を剥がす方向に作用するモーメントは実質的に無視できる状態となる。
そのため、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12A1から、さらに一層剥がれにくくなる。
【0040】
一方、取付板12には、本体部1の自重のみならず、ケーブル13から力Fa1が付与される。この力Fa1は、ケーブル13が、フロントガラス3の内面3aに沿ってY上方に引き出された後の引き回しで曲げられた場合に、元の直状の状態に戻ろうとして取付板12をY下方に押す力である。力Fa1は、接着部材2に対して剪断力として作用する。
そこで、取付板12の上面123に、突起12aを形成するとよい。突起12aは、取付板12の、力Fa1によるY下方への移動を阻止する。
【0041】
図9は、変形例3としての、上面123に突起12aを有する取付板12Bを示す断面図であり、
図8におけるS9-S9位置での断面に相当する。
【0042】
図9に示されるように、上面123には、左右方向(紙面表裏方向)に延びる突起12aがY上-Y下方向に複数並設されている。
各突起12aは、上面123に対し直交して立設する底面12a1と、底面12a1の先端からY上方に向かうに従って上面123に接近する方向に傾斜した傾斜面12a2と、を有して断面形状が三角形形状とされている。
【0043】
突起12aは、上面123の全体に形成されていてもよいが、
図9に示されるように、上面123の一部に形成されていてもよい。例えば、突起12aを取付板12Bの周縁に沿う枠状の範囲に形成する。
接着部材2が接着された範囲内で突起12aが形成された枠状の範囲を、対剪断力強化部AR1と称する。また、上面123において、枠状の対剪断力強化部AR1で囲まれた中間部位は、突起12aが形成されていない平坦な表面であって接着力強化部AR2と称する。
【0044】
突起12aの高さとなる底面12a1の上面123からの高さHdは、所定の距離未満とされている。所定の距離は、接着部材2の厚さ方向の弾性圧縮可能な距離である。
具体例では、接着部材2の自然状態の厚さが3.0mmであり、弾性圧縮可能な厚さ方向の距離(圧縮量)を1.8mmとすると、突起12aの高さは、1.8mm未満とされる。
【0045】
取付板12Bの上面123に、接着部材2を接着する際には、接着部材2の全範囲を指などで上面123に押し付けてしっかり接着させる。
特に、対剪断力強化部AR1においては、接着部材2を突起12aの形状に沿ってできるだけ隙間なくしっかり貼り付くように指などで押圧するが、接着部材2の基材の反発によって隣接する突起12aの間の谷となる部分は、若干浮き上がる虞もある。
この浮き上がりを防止するため、上面123には突起12aのない平坦な接着力強化部AR2を有している。接着力強化部AR2では、接着部材2が上面123に対し面当たりして強固に接着する。
これにより、対剪断力強化部AR1における接着部材2の浮き上がりをより確実に抑え、接着部材2を突起12aが食い込んだ状態で維持できる。
【0046】
取付板12Bの上面123に接着部材2を接着した状態で、接着部材2をフロントガラス3の内面3aに貼り付ける。
これにより、ドライブレコーダ51はフロントガラス3に取り付けられる。
図10及び
図11を参照して、ドライブレコーダ51の取付板12Bを、フロントガラス3に取り付けた状態を説明する。
図10及び
図11では、フロントガラス3の湾曲度合いを誇張して記載してある。
図10は、取付板12Bを、接着力強化部AR2の部分で水平方向に切断した断面図であり、
図6は、接着力強化部AR2の部分で鉛直方向に切断した断面図である。
【0047】
図5及び
図6に示されるように、取付板12Bは平板状に形成されており、フロントガラス3は外側に凸となる湾曲形状となっている。
図11に示されるように、取付板12Bには、ケーブル13からY下方向に向く外力の力Fa1が加わり、接着部材2には、一面側に接着したフロントガラス3と、他面側に接着して力Fa1によってY下方向に移動しようとする取付板12とに挟まれ、剪断力が加えられる。
【0048】
この状況下で、取付板12Bは、接着部材2が食い込む複数の凹凸部12tを有している。凹凸部12tは、上面123に対し突出した部分又は凹んだ部分の少なくとも一方を含んで形成されている。ここでは、凹凸部12tを突出する突起12aとした例を説明する。
接着部材2に食い込む複数の突起12aを有している。取付板12Bは、突起12aの底面12a1が、取付板12Bに加えられた力Fa1の方向に対し直交面となる取付姿勢でフロントガラス3に取り付けられる。すなわち、この取付姿勢において、底面12a1は、力Fa1に直交する方向に延びて細長く形成された面となる。
これにより、取付板12が力Fa1によってY下方向に移動しようとしても、接着部材2に対し突起12aの底面12a1が食い込み、その移動が阻止される。
【0049】
また、底面12a1が力Fa1の付与方向に直交する面であることから、力Fa1が大きくてもその力Fa1に良好に抗して取付板12Bが接着部材2に対してY下方に移動することを阻止する。
これにより、取付板12Bは、力Fa1に対し接着部材2から剥がれにくくなっている。すなわち、取付板12Bを有するドライブレコーダは、フロントガラス3から脱落しにくくなっている。
【0050】
一方、接着部材2をフロントガラス3の凹面である内面3aに密着して接着させた状態では、取付板12Bが平板状であることから、中央部分よりも周縁部分の方が、接着部材2がより圧縮され圧縮度合いが高くなっている。
ここで取付板12Bは、周縁部分に、突起12aを有する対剪断力強化部AR1を有している。すなわち、対剪断力強化部AR1では、接着部材2の圧縮度合いが高く、突起12aの接着部材2への食い込みがより強くなっている。そのため、力Fa1による取付板12Bの移動を、より確実に阻止できる。
これにより、取付板12Bは、接着部材2からより剥がれにくくなっている。
【0051】
実施例のドライブレコーダ51は、リンク腕支持部17と摺動子部18とを繋ぐリンク腕14が一つの腕であるが、リンク腕14は、直列に接続された複数の腕で構成されるよう変形してよい。
図12は、この変形例4としての、関節部21で連結した二つのリンク腕141,142を有するドライブレコーダ51Cを示す模試的左側面図である。
【0052】
関節部21は、例えば、放射状に形成された凹凸部を係合させるハースカップリングであって、二つのリンク腕の交差角度を割り出し可能な連結部である。すなわち、リンク腕141とリンク腕142とを所定ピッチの所望の角度でロック可能とされている。
リンク腕141は、一端部が関節部21に連結し、一端部がリンク腕支持部17に回動自在に支持されている。リンク腕142は、一端部が関節部21に連結し、他端部が摺動子部18に回動自在に連結されている。取付板12においてリンク腕支持部17は、位置P1に設けられている。
これにより、例えば本体部1の形状の制約などから、長孔151の長さが十分に得られない場合においても、取付板12の起立角度の調整範囲を広くすることができる。
【0053】
図13は、ドライブレコーダ51Cに対し、リンク腕支持部17が取付板12に設けられているのではなく、取付板12Dを有し、取付板12Dに対しY上下方向に離隔する位置P2,P3の2箇所で固定された支持部材22に設けられている変形例5としてのドライブレコーダ51Dである。
これにより、取付板12Dに対し、本体部1の重心Gにかかる重力Fa2がさらに分割して付与されるので、接着部材2は、フロントガラス3の内面3a及び取付板12Dから剥がれにくい。
【0054】
図14は、変形例6としてのドライブレコーダ51Eを示す。ドライブレコーダ51Eは、ドライブレコーダ51Dのようにリンク腕支持部17が取付板12Dに対し複数の点状部位として連結されているものではない。詳しくは、ドライブレコーダ51Eは、取付板12Eを有し、取付板12Eに対し、リンク腕支持部17が、Y上下方向に延びるよう設けられたレールガイド(不図示)に係合するレール23により、線状の範囲P4で連結されている。レールガイド及びレール23に代わり、リンク腕支持部17が、取付板12Eに対しY上下方向に延在する構成であってもよい。換言すると、リンク腕支持部17は、棒状の部材であって、取付板12Eとリンク腕141とを連結するものであってもよい。
これにより、取付板12Eに対し、本体部1の重心Gにかかる重力Fa2は、取付板支持部16に加え、左右の縁部においてY上Y下方向に延びる範囲P4全体に重力Fa2を付与するようになっている。すなわち、重力Fa2によって接着部材2にかかる単位面積あたりの力が、さらに小さくなっている。
【0055】
図15は、取付板12Eの支持対応部AR16A,AR231,AR232を説明する平面図である。
図15に示されるように、取付板12EのY下方,左方,及び右方の縁部には、点状ではなく面状に重力Fa2が作用する。
これにより、接着部材2にかかる単位面積あたりの力はより小さくなって、接着部材2はフロントガラス3の内面3a及び取付板12から剥がれにくい。
【0056】
取付板支持部16におけるフック部12c及び支持軸部11cの設置部材は、実施例に対し逆であってもよい。
すなわち、取付板支持部16は、フック部12cが本体部1側に形成され、支持軸部11cが取付板12側に形成されていてもよい。
【0057】
上述の実施例,変形例1~変形例6は、適宜組み合わせてよい。
例えば、取付板支持部16を含むように対剪断力強化部AR1を設けてもよい。 例えば、
図14に示す棒状のリンク腕支持部17が取付板12Eとリンク腕141を連結する構成において、リンク腕支持部17が取付板12Eの周縁部に配置される構成であってもよい。このとき、本体部1の重心Gにかかる重力Fa2は、取付板12Eに対し接着部材2の圧縮度合が高くなる周縁部に分散して付与されるため、接着部材2はフロントガラス3の内面3a及び取付板12から剥がれにくくなる。
【0058】
取付板12に対しリンク腕14は回動可能なものとして説明したが、電子部品が、取付け角度調整が不要な場合には、回動せず固定連結されていてもよい。この場合、取付板12のフック部12cは、相対回動可能なフック形状ではなく固定的に支持する形状の支持部であってもよい。リンク腕14についても同様である。
【0059】
取付部材となる電子機器の例としてドライブレコーダを説明したが、電子機器はドライブレコーダに限定されない。被取付部材はフロントガラスに限定されない。例えば、被取付部材が車両のダッシュボードや2輪車のウインドシールドであり、取付部材が通信端末機器、車両用カメラ、赤外カメラや距離センサなどであってもよい。また、上述の電子機器の取付方法が活用される対象は移動体に限定されず、住宅の窓ガラスにカメラなどの電子機器を取り付ける方法として活用されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 本体部
11 カメラ部
11a レンズ部
11b1,11b2 突出部
11c 支持軸部
11s 操作釦
11sG 操作部
12,12A,12A1,12B,12C,12D,12E 取付板
123 上面
124 後面
125 下面
12a 突起
12a1 底面
12a2 傾斜面
12c,12c1,12c2,12Ac フック部
12d 支持壁
12d1 凹部
12d2 貫通孔
12t 凹凸部
13 ケーブル
13a 引き出し線
14,141,142 リンク腕
14a 基部
14b 摺動支持部
14b1 凹部
14b2 貫通孔
14c 回動支持部
14c1 貫通孔
15 リンクガイド
151 長孔
16,161,162,16A 取付板支持部
17 リンク腕支持部
18 摺動子部
19 信号処理部
2 接着部材
20 記憶部
21 関節部
22 支持部材
23 レール
3 フロントガラス
3a 内面
4a~4f ポリスライダワッシャ
51,51A,51A1,51C,51D,51E ドライブレコーダ(電子機器)
AR1 対剪断力強化部
AR2 接着力強化部
AR17,AR161,AR162,AR16A,AR17A,AR231,
AR232 支持対応部
BN1,BN3 ボルト
BN2,BN4 ナット
CL11 光軸
CL16,CL17,CL18 回動軸線
Fa1 力
Fa2 重力
G 重心
Gp,P1,P2,P3 位置
P4 範囲
Hd 高さ
LH 水平面
SG,SGA 支持組
θ1,θ2 角度