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特開2022-166131重複する非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物を用いる対立遺伝子特異的な増幅
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166131
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】重複する非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物を用いる対立遺伝子特異的な増幅
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20221025BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20221025BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20221025BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6876 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126459
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2020165028の分割
【原出願日】2015-05-19
(31)【優先権主張番号】62/000,114
(32)【優先日】2014-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ツァン デヴィット ユー
(72)【発明者】
【氏名】ウー ルオジャ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュシャオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対立遺伝子特異的な増幅のための、重複する非対立遺伝子特異的プライマーオリゴヌクレオチド及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物を提供する。
【解決手段】ブロッカー及び第1のプライマーオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド組成物を提供する。ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的中立性サブ配列及びブロッカー可変性サブ配列を有する第1の配列を含む。非標的特異的サブ配列は、その3’及び5’末端に標的中立性サブ配列が隣接し、該標的中立性サブ配列と連続する。第1のプライマーオリゴヌクレオチドは酵素性伸長を誘導するのに十分であり;ここで前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは第2の配列を含む。前記第2の配列は標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複し;ここで前記第2の配列は重複サブ配列及び非重複サブ配列を含む。前記第2の配列は、非標的特異的サブ配列を含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年5月19日に出願の米国仮出願第62/000,114号に対する優先権を請求するものであり、これの開示は、本明細書中に参照によってその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表
配列表は、電子的な形態でのみ本出願とともに提出され、本明細書中に参照によって組み込まれる。配列表テキストファイル「14-21013-WO(260947.00251)_SL.txt」は、2015年5月18日に作成され、13,144バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
DNA及びRNA配列における小さな差により、ヒトを含めた生物の全体の身体的な健康及びウェルネスにおける大きな差をもたらすことができる。例えば、細菌ゲノム中の単一塩基変化により、抗生物質抵抗性をもたらすことができ、また、ヒトゲノム中の単一塩基変化により、がん進行がもたらされる可能性がある。ゲノム科学分野の成熟及び多くの核酸生物マーカー配列及び分子の付随的な発見に伴って、バイオテクノロジー産業から、単一塩基変化を識別できる確実な、頑強な、安価な、且つ正確な核酸アッセイを開発する強い需要が存在する。特に、多くのPCRに基づくアッセイが、開発されてきており、それらは対立遺伝子特異的である。
【0004】
微量の変異の選択的な検出のためのPCRに基づくアプローチは、(A)対立遺伝子特異的プライマー及び(B)対立遺伝子特異的ブロッカーを伴う非対立遺伝子特異的プライマーの2つのファミリーのアプローチに大きく分類することができる。
【0005】
対立遺伝子特異的プライマーの例には、増幅不応性突然変異システム(ARMS)、対立遺伝子特異的ブロッカーPCR(ASB-PCR)、及び競合的対立遺伝子特異的TaqMan PCR(castPCR)が含まれる。(B)の例には、PNAブロッカーPCR及びより低い変性温度PCR(COLD-PCR)での同時増幅が含まれる。
【0006】
本発明の前、対立遺伝子特異的プライマーは、既知の一塩基変異の検出に一般に優れており(より高い変異感受性)、対立遺伝子特異的ブロッカーを伴う非対立遺伝子特異的プライマーは、接近してクラスター化した複数の変異(ホットスポット)又は未知の変異配列の検出に一般に適用されている。
【0007】
ARMS、ASB-PCR、castPCRなどの対立遺伝子特異的PCRプライマーは、プライマーの最も3’の位置に対立遺伝子特異的なヌクレオチドを一般に有する。対立遺伝子特異的PCRプライマーは、正しく対になった塩基を特異的に伸長するためにDNAポリメラーゼ酵素の識別力を利用するが、不正確なDNAポリメラーゼ伸長イベントが生じる場合、プライマーの一部であった微量の対立遺伝子ヌクレオチドがテンプレートに組み込まれることになり、それ以降増幅サイクルが非特異的になるとの事実によって制限される。対立遺伝子特異的PCRプライマーは、最初の不正確な増幅イベントまで特異的であるにすぎない。非対立遺伝子特異的プライマーでの対立遺伝子特異的な検出は、正確な変性温度制御及びより小さい配列の制限分析を必要とする。非対立遺伝子特異的プライマーでの対立遺伝子特異的な検出は、低い変異感受性を有し、ポリメラーゼが導入するエラーに対してより脆弱である。
【0008】
したがって、対立遺伝子特異的な増幅及び改善された変異感受性を伴った非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物が必要とされる。したがって、大過剰のバリアント中の少量の標的の検出に適した新しいアプローチの開発は、診断上の適用に必須である。このように、本開示は、例えば、がん診断などの疾患診断上の適用のための、より正確で効率的なツールを提供するための非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、対立遺伝子特異的な増幅のための、重複する非対立遺伝子特異的プライマーオリゴヌクレオチド及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドの組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ブロッカーオリゴヌクレオチド及び第1のプライマーオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド組成物を提供する。前記ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的中立性サブ配列(target-neutral subsequence)及びブロッカー可変性サブ配列(blockervariable subsequence)を有する第1の配列を含む。しかし、いくつかの例では、前記ブロッカーオリゴヌクレオチドは、検出される標的核酸が挿入の検出のためである場合には前記ブロッカー可変性サブ配列を含まないこともある。前記ブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に標的中立性サブ配列が隣接し、該標的中立性サブ配列と連続する。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは酵素による伸長を誘導するのに十分であり;ここで前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは第2の配列を含む。前記第2の配列が重複サブ配列(overlapping subsequence)及び非重複サブ配列を含むように、
前記第2の配列は標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複する。前記第2の配列は、ブロッカー可変性サブ配列に対して相同ないかなる配列も含まない。
【0011】
本発明はさらに、標的配列の増幅のための方法に関する。方法には、バリアント配列を有する1又は2コピー以上の第1の核酸及び少なくとも1コピーの第2の核酸を含有する試料を得るステップが含まれ;ここで前記第2の核酸は標的配列を有する。前記標的配列及びバリアント配列はそれぞれ、相同性サブ配列及び可変性サブ配列を含む。前記可変性サブ配列は、少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含む。さらに、前記標的配列の可変性サブ配列は標的特異的サブ配列であり、前記バリアント配列の可変性サブ配列は非標的特異的サブ配列である。
【0012】
試料を得るステップ後、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、試料に導入される。前記ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的中立性サブ配列及びブロッカー可変性サブ配列を有する第1の配列を含む。前記標的中立性サブ配列は相同性サブ配列の部分に対して相補的であり、前記ブロッカー可変性サブ配列は非標的特異的サブ配列に対して相補的である。さらに、前記ブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に標的中立性サブ配列が隣接し、該標的中立性サブ配列と連続する。
【0013】
その後、第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、試料に導入される。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、酵素による伸長を誘導するのに十分である。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、前記相同性サブ配列の第2の部分に対して相補的である、第2の配列を含む。さらに、前記第2の配列が重複サブ配列及び非重複サブ配列を含むように、前記第2の配列は標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複する。前記第2の配列は、可変性サブ配列に対して相補的ないかなる配列も含まない。
【0014】
次のステップで、DNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、及びポリメラーゼに基づく核酸増幅に必要な1又は2以上の試薬が、試料に導入され;試料は、核酸増幅を達成するのに十分な条件下で反応させる。
【0015】
本発明の利点は、対立遺伝子特異的プライマーアプローチに適合する及び/又はそれを超える改善された変異感受性である。
【0016】
本発明の別の利点は、顕著な(8℃)温度ロバスト性を有する単純な2ステップサーマルサイクリングプロトコールである。
【0017】
本発明のさらに別の利点は、複雑なバックボーン又はヌクレオチド修飾なしで、安価なDNAプライマー及びブロッカー試薬を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の利点は、高いフィデリティーの酵素との適合性である。
【0019】
本発明のさらに別の利点は、非対立遺伝子特異的プライマーが、バリアントに結合したブロッカーと比較して、標的に結合したブロッカーを、より有利に置き換えるように、対立遺伝子特異的ブロッカーが標的よりもバリアントにより強く結合することである。前記非対立遺伝子特異的プライマーを用いる利点は、擬似的に増幅されるバリアントが、標的配列というよりむしろバリアント配列を保有する増幅産物(アンプリコン)をもたらすことである。したがって、特異性は、サイクルごとに度合いを増す。
【0020】
この発明の概要は、下記の発明を実施するための形態においてさらに記載される、単純化された形で、発明の開示、特定の態様、利点及び新規特徴を導入するために提示される。この発明の概要は、特許請求される対象物の鍵となる特徴又は不可欠な特徴を同定することを意図するものではなく、特許請求される対象物の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上記の発明の概要は、以下の例示的な実施形態の詳細な説明と同様に、添付の図面と併せて読めば、より良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的な構成が図面中に示される。しかし、本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び手段に限定されない。
図1】本発明に従う対立遺伝子特異的な増幅のための非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーの概略図を説明する図である。
図2】本発明に従うプライマー及びブロッカーの熱力学的なデザインの概略図を説明する図である。
図3】本発明に従う配列からのΔG°値の計算の概略図を説明する図である。図3は、表示順に、それぞれ、配列番号1、33、1、34、2、33、2、及び34を開示する。
図4】実施例1に従うヒトゲノムDNA中の微量の対立遺伝子検出の概略図を説明する図である。図4は、表示順に、それぞれ、配列番号3~4、35、32、36、及び32を開示する。
図5】実施例2に従う微量の温度ロバスト性の概略図を説明する図である。図5は、表示順に、それぞれ、配列番号5~6及び37~38を開示する。
図6A】実施例3に従う増加したプライマーデザイン柔軟性の概略図を説明する図である。
図6B】実施例3に従うヒトSNP rs3789806を増幅する4セットのプライマー及びブロッカーペアの核酸配列の概略図を説明する図である。図6Bは、表示順に、それぞれ、配列番号5~12及び39~40を開示する。
図7A】実施例4に従う、固定されたΔΔG°=2kcal/molでのΔG°rxn1の効果のシミュレーションの概略図を説明する図である。
図7B(I)】実施例4に従う、SMAD7 rs4939827における実験検証の概略図を説明する図である。図7B(I)は、表示順に、それぞれ、配列番号3、13~16、4、17、及び35~36を開示する。
図7B(II)】実施例4に従う、SMAD7 rs4939827における実験検証の概略図を説明する図である。図7B(II)は、表示順に、それぞれ、配列番号3、18~23、36、及び35を開示する。
図8】実施例5に従う、3’非相同性領域を有するブロッカーの概略図を説明する図である。図8は、表示順に、それぞれ、配列番号5、24、及び37~38を開示する。
図9A】実施例6に従う、TaqMan(登録商標)プローブを用いるマルチプレックスの概略図を説明する図である。
図9B】実施例6に従う、TaqMan(登録商標)プローブを用いるマルチプレックスの概略図を説明する図である。
図10】実施例7に従う、プライマー及びブロッカーのためのプロテクターの概略図を説明する図である。
図11A】実施例8に従う、欠失(STAG2 rs200841330)の検出の概略図を説明する図である。図11Aは、表示順に、それぞれ、配列番号25~26及び41~42を開示する。
図11B】実施例8に従う、挿入(STAG2 rs200841330)の検出の概略図を説明する図である。図11Bは、表示順に、それぞれ、配列番号25、43、42、及び41を開示する。
図12】実施例9に従う、上流ブロッカーの概略図を説明する図である。図12は、表示順に、それぞれ、配列番号27~28及び44~45を開示する。
図13】実施例10に従う、真菌リボソームRNAコード化DNAの特異的な増幅の概略図を説明する図である。
図14】実施例11に従う、Dual NASPの概略図を説明する図である。図14は、表示順に、それぞれ、配列番号29、10、46~49、及び30~31を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、特定の実施形態に関して及びある特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。記載された図面は、概略のみを記載し、非限定的である。図面では、いくつかの要素のサイズは、誇張又は曲解される可能性があり、説明目的でのスケールで描かれていない。何か他のものが具体的に指定されない限り、本発明の要素が初出において「a」又は「an」として指定される場合、2回目以降の出現に対しては「前記(the)」又は「前記(said)」として指定される。
【0023】
以下、本発明は、添付されている図面を参照してより完全に記載され、本発明の全てではないが、一部の実施形態が示される。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書において説明されている実施形態に制限されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が全ての法的要件を満足するよう、提供される。
【0024】
定義
他に定義されていない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で用いているように、用語「ブロッカーオリゴヌクレオチド」は、長さ約12~約100ヌクレオチドの少なくとも1本の連続的な鎖を指し、本明細書にそのように示される場合、その3’末端に官能基又はヌクレオチド配列をさらに含んでもよく、これによって、ポリメラーゼ連鎖反応法などの増幅プロセス間に酵素による伸長が防止される。
【0026】
本明細書で用いているように、用語「プライマーオリゴヌクレオチド」は、長さ約12~約100ヌクレオチドの少なくとも1本の連続的な鎖を含み、ポリメラーゼ連鎖反応法などの増幅プロセス間に酵素による伸長を可能にするのに十分である分子を指す。
【0027】
本明細書で用いているように、用語「標的中立性サブ配列」は、標的核酸及びバリアント核酸の両方における配列に対して相補的であるヌクレオチドの配列を指す。例えば、増幅のための標的とされる所望の核酸配列(標的核酸)は、可変領域(バリアント核酸)を例外として、前記標的核酸と大部分が相同な配列を有する核酸分子を含む試料中に存在していてもよく、いくつかの実例では、このような可変領域は前記標的核酸から僅かに単一ヌクレオチドが異なる。この例では、前記標的中立性サブ配列は、可変領域ではない2つの核酸間で共有される相同配列の少なくとも部分に対して相補的である。したがって、本明細書で用いているように、用語「ブロッカー可変性サブ配列」は、バリアント核酸の可変領域に対して相補的な、ブロッカーオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。
【0028】
本明細書で用いているように、用語「重複サブ配列」は、本明細書に記載の組成物において使用されるブロッカーオリゴヌクレオチド配列の部分と相同な、プライマーオリゴヌクレオチドの少なくとも5ヌクレオチドのヌクレオチド配列を指す。前記プライマーオリゴヌクレオチドの重複サブ配列は、ブロッカー可変性サブ配列の5’であろうと3’であろうと、前記ブロッカーオリゴヌクレオチドの標的中立性サブ配列の任意の部分に対して相同であってもよい。したがって、用語「非重複サブ配列」は、重複サブ配列ではないプライマーオリゴヌクレオチドの配列を指す。
【0029】
本明細書で用いているように、用語「標的配列」は、増幅される、識別される、又はそうでなければ単離される、一塩基多型などの所望の対立遺伝子を有する核酸のヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いているように、用語「バリアント配列」は、所望の対立遺伝子を有さない核酸のヌクレオチド配列を指す。例えば、いくつかの例では、バリアント配列は野生型の対立遺伝子を有し、一方、標的配列は突然変異対立遺伝子を有する。したがって、いくつかの例では、バリアント配列及び標的配列はゲノム中の共通の遺伝子座に由来し、それぞれの配列が、2つの間で変異する所望の対立遺伝子、ヌクレオチド又はヌクレオチドの群を有する領域以外が実質的に相同であってもよい。
【0030】
本発明は、オリゴヌクレオチド組成物に関する。本発明の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、対立遺伝子特異的な増幅のための、非対立遺伝子特異的プライマーオリゴヌクレオチド及び対立遺伝子特異的ブロッカーオリゴヌクレオチドを含む。
【0031】
本発明の別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、ブロッカーオリゴヌクレオチド及び第1のプライマーオリゴヌクレオチドを含む。前記ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的中立性サブ配列及びブロッカー可変性サブ配列を有する第1の配列を含む。前記ブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に標的中立性サブ配列が隣接し、該標的中立性サブ配列と連続する。換言すれば、前記ブロッカー可変性サブ配列は、前記標的中立性サブ配列をブロッカー可変性サブ配列の3’に対する部分及び5’に対する部分の2つの部分に分割し得る。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは酵素による伸長を誘導するのに十分であり;ここで第1のプライマーオリゴヌクレオチドは第2の配列を含む。前記第2の配列が重複サブ配列及び非重複サブ配列を含むように、前記第2
の配列は標的中立性サブ配列と少なくとも5ヌクレオチド重複する。前記第2の配列は、ブロッカー可変性サブ配列を含まない。したがって、前記プライマーオリゴヌクレオチドは、非対立遺伝子特異的プライマーと特徴付けされ得る。前記重複領域は、前記ブロッカー可変性サブ配列の5’側又はブロッカー可変性サブ配列の3’側のいずれかにおけるブロッカーオリゴヌクレオチドの標的中立性サブ配列の部分に対して相同であってもよい。図1に示されるように、前記プライマーオリゴヌクレオチド重複サブ配列は、前記ブロッカー可変性サブ配列(ブロッカーにおける「C」として表示される)の5’側におけるブロッカーの標的中立性サブ配列と相同である。ここで、前記標的中立性サブ配列は、前記ブロッカー可変性サブ配列Cのいずれかの側におけるブロッカーの部分である。図12は、前記プライマーの重複サブ配列が、前記ブロッカー可変性サブ配列Cの3’であるブロッカーの標的中立性サブ配列の部分と相同である一例を表す。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態において、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、3’末端又はその付近に、酵素による伸長を防止する官能基又は非相補的配列領域をさらに含む。ある例では、前記ブロッカーオリゴヌクレオチドの官能基は、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0033】
第2の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT)を生じさせ、第1の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT)を生じさせ、これは以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG°PT-ΔG°BT≧-8kcal/mol
を満たす。
【0034】
非重複サブ配列は、ハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°)を生じさせ、これは以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG°≧-12kcal/mol
を満たす。
【0035】
ある例では、第2の配列は、標的中立性サブ配列の5’末端と約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチド重複する。別の例では、第2の配列は、標的中立性サブ配列の5’末端と約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチド重複する。
【0036】
ある例では、ブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い。別の例では、ブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、酵素による伸長を誘導するのに十分な第2のプライマーオリゴヌクレオチドをさらに含む。前記第2のプライマーオリゴヌクレオチドは、前記第1の配列又は第2の配列と重複しない第3の配列を含み、標的中立性であり、ポリメラーゼ連鎖反応法を用いる核酸の領域を増幅するため、前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドとともに使用するのに十分である。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドをさらに含む。前記第2のブロッカーオリゴヌクレオチドは、第2の標的中立性サブ配列及び第2のブロッカー可変性サブ配列を有する第4の配列を含む。前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、標的のアンチセンス配列に結合するように一般的にデザインされることから、標的核酸の非標的特異的サブ配列と同じ配列を有する。前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に第2の標的中立性サブ配列が隣接し、該第2の標的中立性サブ配列と連続する。前記第3の配列が第2の重複サブ
配列及び第2の非重複サブ配列を含むように、前記第3の配列は第2の標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複する。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドは、3’末端又はその付近に、酵素による伸長を防止する第2の官能基又は第2の非相補的配列領域をさらに含む。ある例では、前記第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの第2の官能基は、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0040】
第3の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT2)を生じさせ、第4の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT2)を生じさせ、これは以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG°PT2-ΔG°BT2≧-8kcal/mol
を満たす。
【0041】
第2の非重複サブ配列は、ハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°)を生じさせ、これは以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG°≧-12kcal/mol
を満たす。
【0042】
一例では、第3の配列は、第2の標的中立性サブ配列の5’末端と約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチド重複する。別の例では、前記第3の配列は、前記第2の標的中立性サブ配列の5’末端と約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチド重複する。
【0043】
上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、約12ヌクレオチド長~約100ヌクレオチド長であってもよい。上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、約15ヌクレオチド長~約90ヌクレオチド長であってもよい。上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、約20ヌクレオチド長~約80ヌクレオチド長であってもよい。上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、約20ヌクレオチド長~約70ヌクレオチド長であってもよい。上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、約20ヌクレオチド長~約60ヌクレオチド長であってもよい。上記実施形態のいずれかにおいて、プライマーオリゴヌクレオチド及びブロッカーオリゴヌクレオチドは、それぞれ、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド長であってもよい。
【0044】
ある例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約10~約900倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約20~約800倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約30~約700倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約40~約600倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの
濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約50~約500倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約60~約400倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約70~約300倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約80~約200倍高い。別の例では、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約90~約100倍高い。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、ポリメラーゼ連鎖反応法に必要な試薬をさらに含む。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、複数のヌクレオシド三リン酸をさらに含む。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、DNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼをさらに含む。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、ポリメラーゼ連鎖反応法に必要な試薬、複数のヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼをさらに含む。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態において、ブロッカー可変性サブ配列は、単一ヌクレオチドである。
【0050】
本発明はさらに、標的配列の増幅のための方法に関する。方法には、(a)バリアント配列を有する1又は2コピー以上の第1の核酸及び少なくとも1コピーの第2の核酸を含有する試料を得るステップが含まれ;ここで前記第2の核酸は標的配列を有する。標的配列及びバリアント配列は、それぞれ、相同性サブ配列及び可変性サブ配列を有する。前記可変性サブ配列は、少なくとも1つのヌクレオチドをさらに含むが、2~5ヌクレオチドを含んでもよい。さらに、前記標的配列の可変性サブ配列は標的特異的サブ配列であり、前記バリアント配列の可変性サブ配列は非標的特異的サブ配列である。
【0051】
方法は、(b)ブロッカーオリゴヌクレオチドを試料に導入するステップをさらに含み;ここで前記ブロッカーオリゴヌクレオチドは、標的中立性サブ配列及びブロッカー可変性サブ配列を有する第1の配列を含む。前記標的中立性サブ配列は相同性サブ配列の部分に対して相補的であり、前記ブロッカー可変性サブ配列は非標的特異的サブ配列に対して相補的である。さらに、前記ブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に標的中立性サブ配列が隣接し、該標的中立性サブ配列と連続する。
【0052】
方法は、(c)第1のプライマーオリゴヌクレオチドを試料に導入するステップをさらに含む。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、酵素による伸長を誘導するのに十分である。前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、第2の配列を含む。さらに、前記第2の配列は相同性サブ配列の第2の部分に対して相補的であり、また前記第2の配列が重複サブ配列及び非重複サブ配列を含むように、前記第2の配列は標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複してもよい。前記第2の配列は、可変性サブ配列に対して相補的ないかなる配列も含まない。
【0053】
方法は、(d)DNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、及びポリメラーゼに基づく核酸増幅に必要な1又は2以上の試薬を試料に導入するステップ;並びに、次に(e)
試料を核酸増幅を達成するのに十分な条件下で反応させるステップをさらに含む。
【0054】
本発明の実施形態において、ブロッカーオリゴヌクレオチドは、3’末端又はその付近に、酵素による伸長を防止する官能基又は非相補的配列領域をさらに含む。ある例では、前記官能基は、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0055】
第2の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT)を生じさせ、第1の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT)を生じさせ、これは以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG°PT-ΔG°BT≧-8kcal/mol
を満たす。
【0056】
非重複サブ配列は、ハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°)を生じさせ、これは以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG°≧-12kcal/mol
を満たす。
【0057】
一例では、第2の配列は、ブロッカーの標的中立性サブ配列の5’末端と約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチド重複する(すなわち、「重複サブ配列」)。換言すれば、前記第2の配列は、前記ブロッカーのブロッカー可変性サブ配列の5’側にあるブロッカーの標的中立性サブ配列の5ヌクレオチド~約40ヌクレオチドと相同な重複サブ配列を含む。別の例では、前記第2の配列は、標的中立性サブ配列の5’末端と約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチド重複する。さらに別の例において、第2の配列は、前記ブロッカーのブロッカー可変性サブ配列の3’側にあるブロッカーの標的中立性サブ配列の部分と相同な重複サブ配列を含む。
【0058】
一例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約10~約500倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約20~約250倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約40~約125倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約50~約100倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約300~約400倍高い。別の例では、試料に導入されるブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約500~約600倍高い。
【0059】
本発明の別の実施形態において、DNAポリメラーゼは、耐熱性DNAポリメラーゼである。
【0060】
本発明のさらに別の実施形態において、方法は、試料を少なくとも10サイクルかける(exposing)ステップにより核酸増幅を達成するのに十分な条件をさらに含む。各サイクルは少なくとも2つの異なる温度曝露(temperature exposure)を有し、1つの温度曝露
は少なくとも85℃であり、1つの温度曝露は75℃以下である。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態において、方法は、試料にニッキング酵素、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、RNAse、逆転写酵素又はその任意の組合せからなる群から選択される酵素を導入するステップをさらに含む。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態において、方法は、第2のプライマーオリゴヌクレオチドを試料に導入するステップをさらに含む。前記第2のプライマーオリゴヌクレオチドは、第3の配列を含む。さらに、前記第3の配列は、可変性サブ配列と重複しない。さらに、前記第3の配列は、標的中立性であり、標的配列を有する核酸の領域を増幅するため、第1のプライマーオリゴヌクレオチドとともに使用するのに十分である。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態において、方法は、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドを試料に導入するステップをさらに含む。前記第2のブロッカーオリゴヌクレオチドは第4の配列を含み;ここで第4の配列は第2の標的中立性サブ配列及び第2のブロッカー可変性サブ配列を有する。さらに、前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、前記ブロッカー可変性サブ配列に対して相補的な配列である。さらに、前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に第2の標的中立性サブ配列が隣接し、該第2の標的中立性サブ配列と連続する。加えて、前記第3の配列が第2の重複サブ配列及び第2の非重複サブ配列を含むように、前記第3の配列は第2の標的中立性サブ配列の5’末端と少なくとも5ヌクレオチド重複する。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態において、第2のブロッカーオリゴヌクレオチドは、酵素による伸長を防止する、3’末端又はその付近に第2の官能基又は第2の非相補的配列領域をさらに含む。ある例では、前記第2の官能基は、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチドからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0065】
第3の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT2)を生じさせ、第4の配列はハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT2)を生じさせ、これは以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG°PT2-ΔG°BT2≧-8kcal/mol
を満たす。
【0066】
第2の非重複サブ配列は、ハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°)を生じさせ、これは以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG°≧-12kcal/mol
を満たす。
【0067】
ある例では、第3の配列は、第2の標的中立性サブ配列の5’末端と約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチド重複する。別の例では、前記第3の配列は、第2の標的中立性サブ配列の5’末端と約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチド重複する。
【0068】
ある例では、試料に導入される第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い。別の例では、試料に導入される第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度は、試料に導入される第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い。
【0069】
本発明のさらに別の実施形態において、標的配列の増幅のための方法は、試料からアリコート(aliquot)を除去するステップ;及び上記定義されるステップ(b)から(e)
を繰り返すステップをさらに含む。
【0070】
図1は、対立遺伝子特異的な増幅のための非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーの概略図を説明する。核酸試薬混合物は二種のオリゴヌクレオチド種、プライマー(プライマーオリゴヌクレオチド)及びバリアント特異的ブロッカー(ブロッカーオリゴヌクレオチド)を含み、これが一緒に作用してポリメラーゼに基づく増幅方法と連動して確実な微量標的の増幅を可能にする。ブロッカーは、ジデオキシヌクレオチド又は3-炭素リンカーなどの非伸長性修飾によって3’末端で修飾されてもよい。プライマー及びブロッカーの配列は、標的核酸配列及びバリアント核酸配列へのそれらのハイブリダイゼーションの熱力学に基づいて合理的にデザインされる。いくつかの実施形態において、ブロッカーは、標的及びバリアント核酸配列の優勢がプライマーに結合する前にブロッカーに結合するように、プライマーよりも著しく高い濃度で存在する。プライマーは、ブロッカー-標的又はブロッカー-バリアント分子に一過性に結合し、標的又はバリアントに対する結合においてブロッカーに置き換わる可能性を持つ。ブロッカー配列はバリアント標的に特異的であるので、そのバリアントからの置き換えは標的からの置き換えよりも熱力学的な有利性は低い。したがって、非対立遺伝子特異的プライマーは、バリアント配列を増幅するよりも、高い収率/効率で、標的配列を増幅する。そのプライマーの非対立遺伝子特異的な性質は、擬似的に増幅されるバリアント配列が、標的対立遺伝子というよりむしろバリアント対立遺伝子を保有することを意味し、その後の増幅サイクルも標的に優位な増幅バイアスを示す。
【0071】
バリアント特異的ブロッカーの高濃度により、プライマーが結合する機会を得る前に、最初にブロッカーが標的及びバリアントの両方に結合する高い確率がもたらされる。プライマーが、ブロッカーと重複しないユニーク領域を介して標的-ブロッカー又はバリアント-ブロッカー複合体両方への結合を開始し、その後、酵素フリー鎖置換プロセスを介してブロッカーを置き換える可能性がある。
【0072】
図2はプライマー及びブロッカーの熱力学的なデザインの概略図を説明する。プライマー及びブロッカーの配列は、望ましい反応熱力学を達成するため合理的にデザインされる。ここで、プライマー、ブロッカー、標的、及びバリアント核酸配列は、図2において1から8の番号で表示される、連続的なヌクレオチドを含む領域に細分される。プライマーと標的の間のハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT)及びブロッカーと標的の間のハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT)は、以下を満たす:
+2kcal/mol≧ΔG°PT-ΔG°BT≧-8kcal/mol
【0073】
上記を満足させるプライマー及びブロッカーシステムは、標的に対するプライマー結合とバリアントに対するプライマー結合の間の各サイクルにおけるハイブリダイゼーション収率において大きい差を不均等に生じ、標的特異的な増幅がもたらされる。
【0074】
酵素フリー鎖置換プロセスは、プライマー結合対ブロッカー結合の相対的な熱力学により導かれる。ブロッカーは、標的(より負のΔG°は強い有利性を示すので、結合の標準自由エネルギーΔG°BT、ΔG°BT>ΔG°BV)に対するよりもバリアント(結合の標準自由エネルギーΔG°BV)に対してより有利にハイブリダイズする。本発明の別の実施形態において、プライマーは、標的(結合の標準自由エネルギーΔG°PT、ΔG°PV=ΔG°PT)に対するのに等しく有利にバリアント(結合の標準自由エネルギーΔG°PV)にハイブリダイズする。
【0075】
標的と結合しているブロッカーを置き換えるプライマーの反応BT+P<=>PT+Bは、標準自由エネルギーΔG°rxn1=ΔG°PT-ΔG°BTを有し、これは標準自由エネルギーΔG°rxn2=ΔG°PV-ΔG°BVを有するバリアントと結合してい
るブロッカーを置き換えるプライマーの反応BV+P<=>PV+Bのものよりも負(より有利)である。本発明の良好な性能のために、プライマー及びブロッカーは通常ΔG°rxn1≦0及びΔG°rxn2≧0であるようにデザインされるべきである。しかし、ブロッカー及びプライマーの相対的な濃度は、反応の平衡分布及び有効な熱力学に影響を及ぼし得るので、ΔG°rxn1及びΔG°rxn2ガイドラインは絶対ではない。
【0076】
図3は配列からのΔG°値の計算の概略図を説明する。異なる領域相互作用のΔG°を計算するための異なる慣例が存在する;最隣接モデルに基づく例示的なエネルギー計算が図3中に示される。ΔG°1-5、ΔG°4-7、及びΔG°4-8の用語は、ハイブリダイゼーション開始の標準自由エネルギー(ΔG°init)及び第6の領域に隣り合ったエキストラベーススタックをさらに含む。他の方法を用いて計算される標準自由エネルギーΔG°は同じΔG°PT、ΔG°PV、ΔG°BT、及びΔG°BV値をもたらし得るが、個々の領域(例えば、ΔG°3-6)の熱力学は異なっていてもよい。説明的な例は、本発明において使用されるΔG°計算の方法を示すことが意図され、アッセイに関する配列を示唆することが意図されない;リストされる配列が安定に結合するためには短過ぎる可能性がある。プライマー配列、ブロッカー配列、標的配列、バリアント配列、操作温度、及び操作上の緩衝剤条件からのΔG°PT、ΔG°PV、ΔG°BT、及びΔG°BVの計算は、当業者に知られている。
【0077】
図4は、本発明のプローブ及びブロッカーデザイン並びに2つのヒトリポジトリ試料NA18537及びNA18562のSMAD7遺伝子座周辺のサブ配列を示す。プライマー/ブロッカーセットのデザインは、SMAD7一塩基多型(SNP)のAバリアントを特異的に増幅するためデザインされた。ブロッカーは、SMAD7SNPのG-バリア
ントを保有するバリアントテンプレートに対して完全に相補的にデザインされ、Taq
DNAポリメラーゼによる酵素による伸長を防止する3-炭素リンカー(C3)によって3’末端で官能化される。リバースプライマーは、フォワードプライマーの3’に結合し、いずれの対立遺伝子に対しても特異的ではない。プライマー(primar)及びブロッカーの様々なサブ配列を記載するために使用される専門用語の説明のため、オリゴヌクレオチドを以下の通り記載することができる。ブロッカーオリゴヌクレオチドは、配列の残りの部分のアライメントの外に示されるシトシンヌクレオチドの、5’及び3’に対する配列を含む標的中立性サブ配列を含み、この例において、シトシンヌクレオチドはブロッカーのブロッカー可変性サブ配列を表す。プライマーオリゴヌクレオチドの重複サブ配列は、ブロッカー可変性サブ配列(シトシン)の5’側におけるブロッカー配列に対して相同な配列を含む。
【0078】
図5は、56℃~66℃の範囲のアニーリング/伸長温度における、ヒトSNP rs
3789806(C/G)C対立遺伝子を標的とするプライマーブロッカーペアの性能を示す。
【0079】
図6A及び図6Bは、予期しない相互作用を回避するためのより多くのデザインスペースを有するプライマーデザインを示す。
【0080】
図7A及び図7Bは、ΔG°rxn1のデザインを介して対立遺伝子特異的PCRの挙動を制御することを示す。ΔG°rxn1がより正であるようにプライマー及びブロッカーがデザインされる場合、ΔCq値がより大きいことを図7Aのシミュレーションは示唆する。しかし、ΔG°rxn1のより正の値では、標的の増幅も遅く、Cqのより大きい値をもたらす。シミュレーションは、2kcal/molの固定されたΔΔG°を想定する。上段部分グラフは、ハイブリダイゼーション収率における異なる値のΔG°rxn1(星印)及びΔG°rxn2(ドット)の予測される効果を示す。下段部分グラフは、各プライマー及びブロッカーペアについての標的及びバリアントのシミュレートされた増幅
曲線を示す。示された全てのケースで、ブロッカーとプライマーとの濃度比は20:1である。図7B(I)及び図7B(II)は、増幅選択性に影響するΔG°rxn1の実験結果を示す。異なるΔG°rxn1値は、ブロッカーの3’末端の延長(lengthening)又は短縮を介して達成された。予想通り、より正のΔG°rxn1であることにより、標的及びバリアントの両方についてより大きいCqがもたらされる。本発明者らは、標的についてより大きいΔCq及び相対的に小さいCq遅延(Cq<28)がもたらされる、至適な中間ΔG°rxn1を観測した。シミュレーションと違い、ΔCqはΔG°rxn1ととともに単調に増加しなかった。プライマー二量体の形成及び非特異的な増幅は、Cqシーリングを生じる。
【0081】
PCRプロセスの動力学的なシミュレーションは、以下のように表現される:
Tfn+1=Tfn+Pn・[Pn/(Pn+Bn)+Y(ΔG°rxn1)・Bn/(Pn+Bn)]・Trn
Trn+1=Trn+Rn・Tfn
Vfn+1=Vfn+Pn・[Pn/(Pn+Bn)+Y(ΔG°rxn2)・Bn/(Pn+Bn)]・Vrn
Vrn+1=Vrn+Rn・Vfn
式中、Tfnはサイクルnでの標的のフォワード鎖の標準化濃度であり、Trnはサイクルnでの標的のリバース鎖の標準化濃度であり、Vfnはサイクルnでのバリアントのフォワード鎖の標準化濃度であり、Vrnはサイクルnでのバリアントのフォワード鎖の標準化濃度であり、Pnはサイクルnでのフォワードプライマーの標準化濃度であり、Bnはサイクルnでのブロッカーの標準化濃度であり、Rnはサイクルnでのリバースプライマーの標準化濃度であり、及びY(ΔG°)は、所与のΔG°反応標準自由エネルギーでの、置き換え反応のハイブリダイゼーション収率である。シミュレーション結果は、図7Aに示される。
【0082】
図8は、非伸長性の化学的な官能化より3’末端に非相同性配列を有するブロッカーを示す。非相同性配列は標的又はバリアントのいずれの下流領域にも結合しないので、非相同性領域は酵素による伸長を効果的に防止する。標的Cq及びΔCq値は、実施例1に示されるものに類似し、3’末端での、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチド、非相同性配列などの同様の官能基が、それぞれ酵素による伸長を効果的に防止できることを示す、ここでfP、rP、及びBはフォワードプライマー、リバースプライマー、及びブロッカー(フォワードプライマーに対する)を表す。
【0083】
標準ブロッキングPCRにおいて、フォワードプライマーのみが標的配列の増幅に偏り;リバースプライマーはおよそ等しく標的及びバリアントの両方を増幅する。フォワード及びリバースプライマー両方が標的配列のみの増幅に偏る場合、増幅特異性は(変異感受性における、およそ二次性の改善で)さらに改善され得る。二重の標的特異的な増幅を達成するため、フォワード及びリバースプライマーは短い距離によって離されるようにデザインされて、それらはバリアント特異的ブロッカーと重複する。その制限において、プライマー結合領域は、種類が標的とバリアントの間で変異する単一ヌクレオチドによって離される。フォワード及びリバースのバリアント特異的ブロッカーは、それらが標的の相補鎖に対して結合し、両方が変異領域をスパンするので、互いに対して部分的に相補的である。操作条件で部分的に相補性であるが、大多数のブロッカー分子は互いにハイブリダイズしないように、ブロッカーはデザインされる。
【0084】
図9A及び図9BはヒトBRAF rs3789806及びIL23R rs1884444 SNPsに対してデザインされたプライマー-ブロッカーシステムを各々示し、そ
れらは同じ反応中でマルチプレックスされた。ブロッカー結合領域の対応する下流を標的化するTaqMan(登録商標)プローブがデザインされ、読み取り機構として使用された。
【0085】
図10は、他のプライマー、ブロッカー、又はテンプレートに対するプライマー又はブロッカーの非特異的な結合が非特異的な増幅をもたらすことを示す。下段の区画は、プライマー及びブロッカーの非特異的な結合を抑制するプロテクターのデザインを提供する。プロテクターオリゴヌクレオチドは、プライマー及びブロッカー配列に対して部分的に相補的である。化学量論に過剰のプロテクターの存在は、部分的に二本鎖化したプライマー及びブロッカーの両方をもたらす。ブロッカーは配列が核酸配列における領域5に対して非相補的である新しい領域11を有し、プロテクターは配列が領域11に対して相補的である新しい領域10を有する。
【0086】
図11A及び図11Bは、欠失及び挿入を検出するためデザインされたプライマー及びブロッカーを各々示す。プライマーは非標的特異的であり、この方法は不確かな数の塩基又は不確かな位置の欠失又は挿入を検出するためにも使用することができる。
【0087】
図12は、SNP位置の3’にプライマーを、そして該プライマーの5’にブロッカーを配置することによる本発明の下位の実施を示す。この実施は、第1のサイクルにおいてハイブリダイゼーション特異性のみを生じ、ΔCqは好適なデザインよりも小さい。
【0088】
図13は、大過剰の相同性ヒトDNA中の3種の病原性真菌種の真菌18S DNAサ
ブ配列の選択的な増幅を実証する。真菌18Sサブ配列及びその相同性ヒトサブ配列は複数の領域で異なっているので、本発明者らは増幅特異性を最大にするために、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方に対応するブロッカー種をデザインした。
【0089】
図14は、一方が各プライマーに対する2セットのバリアント対立遺伝子ブロッカーを用いることによる、フォワード及びリバースプライマー両方に関する標的特異的な増幅の使用を記載する。ブロッカーは互いに対して部分的に相補的であるが、操作条件においてそれらの多くは互いにハイブリダイズしない。ブロッカー及びプライマーは、フォワードプライマーがリバースブロッカーを伸長除去できないように及びリバースプライマーがフォワードブロッカーを伸長除去できないようにデザインされる。図14は、予備的な実験結果を示す。
【0090】
プライマー及びブロッカー組合せは、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、及びローリングサークル増幅(RCA)を含むが、これに限定されない、核酸のための他の酵素増幅アッセイに適用され得る。
【0091】
本発明は、大過剰のバリアントで少量の標的を検出するため特に適切である。本発明のがん診断適用のため、バリアントは野生型DNA配列を指してもよく、標的はがんDNA配列を指してもよい。本発明の感染症診断適用のため、バリアントは病原体DNA配列を指してもよく、標的は相同性ヒトDNA配列を指してもよい。
[実施例]
【実施例0092】
図4は、プローブ及びブロッカーデザイン並びに2つのヒトリポジトリ試料NA18537及びNA18562のSMAD7遺伝子座周辺のサブ配列についての本発明の実施例1を示す。SMAD7遺伝子座中の健常ヒト単一ヌクレオチド多形(SNP)rs4939827(C/T)を、概念実証検証のために選択した。標的としてT対立遺伝子を、バリアントとしてC対立遺伝子を任意に指定した。ヒトリポジトリゲノムDNA試料NA18562(C対立遺伝子のホモ接合)及びNA18537(T対立遺伝子のホモ接合)をCoriell(登録商標)から購入し、対応するヌクレオチド配列を1000Genomes
ウェブサイトから取得した。意図されない重合を防止するために、ブロッカーの3’末端
をC3スペーサーで修飾した。qPCR実験結果により、0%標的(100%バリアント)から0.1%標的(99.9%バリアント)が区別される。0.1%標的試料を、0.1%NA18537を99.9%NA18562と混合することによって調製した。100%バリアントと100%標的の間の定量サイクル(ΔCq)の平均差は14.8であり、100%バリアント(グラフ中で「WT」として表示される)と0.1%標的の間の平均差は4.2であった。全ての実験を、Bio-Rad CFX96(商標)qPCR機器中の96ウ
ェルプレート中で行った。各ウェルにおいて、200nMプライマー、2μΜブロッカー、及び20ngヒトゲノムDNAを、Bio-rad iTaq(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix中で混合した。95℃での3分の開始プロセス後、95℃で10秒の変性ステップ及び60℃で30秒間のアニーリング/伸長ステップを65サイクル行った。図5~12に示される実施例実験は、類似するプロトコールを使用した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1は、1000Genomesデータベースから得られる、ヒトゲノムDNA試料NA18562及びNA18537中の4セットのSNPペアについての対立遺伝子特異的な増幅結果の例を示す。各SNPペアについて、各対立遺伝子バリアントについてのプライマー及びブロッカーデザインを、デザインし、検査した。「ブロッカー」列中に示される塩基種類は抑制された対立遺伝子(バリアント)を表し、「-」はブロッカーを添加していないことを意味する。全てのケースで、7.1~14.6の範囲の2つの対立遺伝子の間の大きなΔCq値が観測された。全ての実験を、Bio-rad iTaq(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix中で400nMの各プライマー及び4μΜのブロッカーを用いてトリプリケートで行った。プライマー及びブロッカー配列又は実験条件のいかなる経験的な最適化なしで、熱力学的に決定されたデザインの性能は、結果によって示された。
【実施例0095】
図5は、56℃~66℃の範囲のアニーリング/伸長温度での、ヒトSNP rs37
89806(C/G)C対立遺伝子を標的とするプライマー-ブロッカーペアの性能についての本発明の実施例2を示す。実施例2は、56℃~64℃の良好な対立遺伝子特異的な増幅を示し、少なくとも8℃の温度ロバスト性を表す。400nMの各プライマー及び4μΜのブロッカーを使用し、アニーリング/伸長温度以外の他の実験条件は実施例1に
記載のものと同じであった。
【実施例0096】
図6A及び図6Bは、本発明の実施例3を示す。本発明において示されるプライマーのデザインは、予期せぬ相互作用を回避するためのより多くのデザインスペースを提供した。ヒトSNPrs3789806 C対立遺伝子を各々特異的に増幅する4セットのプライマー及びブロッカーペアの核酸配列は、ΔCq>11を示す。400nMの各プライマー及び4μΜのブロッカーを使用し、他の実験条件は実施例1に記載のものと同じであった。
【実施例0097】
図7A図7B(I)及び図7B(II)は、ΔG°rxn1のデザインを介して対立遺伝子特異的PCRの挙動を制御することについての本発明の実施例4を示す。ΔG°rxn1がより正であるようにプライマー及びブロッカーがデザインされる場合、ΔCq値がより大きいことを図7Aのシミュレーションは示唆した。しかし、ΔG°rxn1のより正の値では、標的の増幅は遅く、Cqのより大きい値をもたらした。シミュレーションは、2kcal/molの固定されたΔΔG°を想定した。上段部分グラフは、ハイブリダイゼーション収率における異なる値のΔG°rxn1(星印)及びΔG°rxn2(ドット)の効果を予測した。下段部分グラフは、各プライマー及びブロッカーペアについての標的及びバリアントのシミュレートされた増幅曲線を予測した。示された全てのケースで、ブロッカーとプライマーとの濃度比は20:1であった。図7B(I)及び図7B(II)は、増幅選択性に影響するΔG°rxn1の実験結果を示す。異なるΔG°rxn1値は、ブロッカーの3’末端の延長又は短縮を介して達成された。予想通り、より正のΔG°rxn1であることにより、標的及びバリアントの両方についてより大きいCqがもたらされた。至適な中間ΔG°rxn1は、標的について最も大きいΔCq及び相対的に小さいCq遅延(Cq<28)がもたらされた。プライマー二量体の形成及び非特異的な増幅がCqシーリングによって生じたので、シミュレーションと違いΔCqはΔG°rxn1ととともに単調に増加しなかった。200nMの各プライマー及び2μΜのブロッカーを使用し、他の実験条件は実施例1に記載のものと同じであった。
【実施例0098】
図8は、非伸長性の化学的な官能化ではなく3’末端に非相同性配列を有するブロッカーについての本発明の実施例5を示す。非相同性配列は標的又はバリアントのいずれの下流領域にも結合しないので、非相同性領域は酵素による伸長を効果的に防止する。400nMの各プライマー及び4μΜのブロッカーを使用し、他の実験条件は実施例1に記載のものと同じであった。標的Cq及びΔCq値は、図4に示されるものに類似し、3’末端での、3-炭素スペーサー又はジデオキシヌクレオチド、非相同性配列などの同様の官能基が、酵素による伸長を効果的に防止できることを表す。図8において、fP、rP、及びBはそれぞれ、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びブロッカー(フォワードプライマーに対する)を表す。
【実施例0099】
図9A及び図9Bは、本発明の実施例6を示す。本発明者らの非対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的ブロッカーのリアルタイムPCRの実施のために、リバースプライマーも必要とされ、これは対立遺伝子特異的ではなかった。SYBR(登録商標)Green Supermix及びTaqMan(登録商標)を実験に使用したところ、2つの間で著しく異なることはないとの結果であった。ヒトBRAF rs3789806及びIL23Rrs1884444 SNPsに対してデザインされたプライマー-ブロッカーシステムは、同じ
反応中でマルチプレックスされた。ブロッカー結合領域の対応する下流を標的とするTaqMan(登録商標)プローブが、デザインされ、読み取り機構として使用された。BRAF
rs3789806アンプリコンに関するTaqMan(登録商標)プローブをFAMフルオロフォア、Iowa Black FQ失活剤、及び内部ZEN失活剤で修飾し、IL23R rs18
84444アンプリコンに関するTaqMan(登録商標)プローブをCy5フルオロフォア及びIowa Black RQ失活剤で修飾した。図9Aは、BRAF rs3789806 G対立遺
伝子及びIL23R rs1884444 T対立遺伝子のマルチプレックス検出の増幅結果を示す。塩基種類は、ブロッカーが抑制していた対立遺伝子(バリアント)を表示した。図9Bは、BRAFrs3789806 C対立遺伝子及びIL23R rs1884444 G対立遺伝子のマルチプレックス検出を示す。各実験中、ゲノムDNA試料を、
400nMの各プライマー、4μΜの各ブロッカー、及び200nMの各TaqMan(登録商標)プローブとBio-rad iQ Supermix中で混合した。qPCRプロトコールは、実施例1
に示したものと同じであった。
【実施例0100】
図10は、他のプライマー、ブロッカー、又はテンプレートに対するプライマー又はブロッカーの非特異的な結合についての本発明の実施例7を示す。実施例7は、非特異的な増幅をもたらした。下段の区画は、プライマー及びブロッカーの非特異的な結合を抑制するプロテクターのデザインを提供した。ブロッカーは配列が核酸配列における領域5に対して非相補的である新しい領域11を有し、プロテクターは配列が領域11に対して相補的である新しい領域10を有していた。
【実施例0101】
図11A及び図11Bは、欠失及び挿入を検出するためデザインされたプライマー及びブロッカーについての本発明の実施例8を示す。Del rs200841330を、概
念実証結果を示すために使用した。400nMの各プライマー及び4μΜのブロッカーを使用し、他の実験条件は実施例1に示したものと同じであった。プライマーは非対立遺伝子特異的であるので、この方法は不確かな数の塩基又は不確かな位置の欠失又は挿入を検出するためにも使用することができる。
【実施例0102】
図12は、SNP位置の3’にプライマーを、そして該プライマーの5’にブロッカーを配置することによる本発明の実施例9を示す。実施例9は、第1のサイクルにおいてのみハイブリダイゼーション特異性を生じ、ΔCqは好適なデザインよりも小さかった。プライマー濃度は400nMであり、ブロッカー濃度は4μΜであった。実験条件は、実施例1に示したものと同じであった。
【実施例0103】
図13は、大過剰の相同性ヒトDNA中の3種の病原性真菌種の真菌18S DNAサ
ブ配列の選択的な増幅についての本発明の実施例10を示す。真菌18Sサブ配列及びその相同性ヒトサブ配列は複数の領域で異なっているので、増幅特異性を最大にするために、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方に対応するブロッカー種をデザインした。3種の真菌種及びヒトにおけるコンセンサス配列からの18Sサブ配列のgBlock断片(配列検証された400bpの二本鎖化したDNA、IDT)を、実験に使用した。各真菌のDNAgBlock断片の60,000コピー(0.1%)、60コピ
ー(0.0001%)及び0コピー(100%ヒト)を、60,000,000コピーのヒトDNAと別々に混合した。全てのケースで、百万分の1以下の微量の配列を検出するとの結果であった。200nMの各プライマー及び1μΜの各ブロッカーを使用し、他の実験条件は実施例1に示したものと同じであった。
【実施例0104】
図14は、本発明の実施例11を示す。図14は、一方が各プライマーに対する2セッ
トのバリアント対立遺伝子ブロッカーを使用した;フォワード及びリバースプライマー両方に関する対立遺伝子特異的な増幅の使用を記載する。ブロッカーは互いに対して部分的に相補的であるが、操作条件は多くの互いのハイブリダイゼーションをサポートしなかった。ブロッカー及びプライマーは、フォワードプライマーがリバースブロッカーを伸長除去できないように及びリバースプライマーがフォワードブロッカーを伸長除去できないようにデザインされた。図14は、予備的な実験結果を提示した。
【0105】
本開示の特定の実施形態の前出の記載は、例証及び説明の目的で提示されている。例示的な実施形態が本発明の原理及びその実際上の適用の最良の説明をするため、選択され、記載され、それによって他の当業者の本発明の最良の利用を可能にし、様々な修飾を伴う様々な実施形態は意図される特定の用途に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B(I)】
図7B(II)】
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
【配列表】
2022166131000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の標的中立性サブ配列及び第1のブロッカー可変性サブ配列を含む第1の配列を含む第1のブロッカーオリゴヌクレオチドであって、
前記第1のブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に前記第1の標的中立性サブ配列が隣接し、前記第1の標的中立性サブ配列と連続しており、
前記第1のブロッカー可変性サブ配列は、前記第1の標的中立性サブ配列を前記第1のブロッカー可変性サブ配列の3’に対する部分及び前記第1のブロッカー可変性サブ配列の5’に対する部分の2つの部分に分割し、
前記第1の標的中立性サブ配列は、第1の標的核酸及び第1のバリアント核酸の両方の相同性サブ配列の第1の部分に相補的であり、
前記第1のブロッカー可変性サブ配列は前記第1のバリアント核酸の第1のバリアントサブ配列に相補的であり、かつ
前記第1のブロッカーオリゴヌクレオチドは、酵素による伸長を防止し、前記第1の標的中立性サブ配列と連続する配列に相補的でない、非相補的配列領域をその3‘末端に含む、前記第1のブロッカーオリゴヌクレオチド;
(b)酵素による伸長を誘導するのに十分である第1のプライマーオリゴヌクレオチドであって、
前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドは、前記第1の標的核酸及び前記第1のバリアント核酸の両方の相同性サブ配列の第2の部分に相補的である第2の配列を含み、
前記第2の配列は、前記第2の配列が第1の重複サブ配列及び第1の非重複サブ配列を含むように、前記標的中立性サブ配列と少なくとも5ヌクレオチド重複し、前記第2の配列は、前記第1のブロッカー可変性サブ配列を含まず、
前記第2の配列が、前記標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT)を生じさせ、前記第1の配列が、前記標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT)を生じさせ、以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG° PT -ΔG° BT ≧-8kcal/mol
を満たし、かつ
前記第1のプライマーオリゴヌクレオチドの前記第1の非重複サブ配列が、前記標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°3)を生じさせ、以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG° ≧-12kcal/mol
を満たす、前記第1のプライマーオリゴヌクレオチド;
(c)第2の標的中立性サブ配列及び第2のブロッカー可変性サブ配列を含む第4の配列を含む第2のブロッカーオリゴヌクレオチドであって、
前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、その3’及び5’末端に前記第2の標的中立性サブ配列が隣接し、前記第2の標的中立性サブ配列と連続しており、
前記第2のブロッカー可変性サブ配列は、前記第2の標的中立性サブ配列を前記第2のブロッカー可変性サブ配列の3’に対する部分及び前記第2のブロッカー可変性サブ配列の5’に対する部分の2つの部分に分割し、
前記第2の標的中立性サブ配列は、第2の標的核酸及び第2のバリアント核酸の両方の相同性サブ配列の第1の部分に相補的であり、
前記第2のブロッカー可変性サブ配列は前記第2のバリアント核酸の第2のバリアントサブ配列に相補的であり、かつ
前記第2のブロッカーオリゴヌクレオチドは、酵素による伸長を防止し、前記第2の標的中立性サブ配列と連続する配列に相補的でない、非相補的配列領域をその3‘末端に含む、前記第2のブロッカーオリゴヌクレオチド;並びに
(d)酵素による伸長を誘導するのに十分である第2のプライマーオリゴヌクレオチドであって、
前記第2のプライマーオリゴヌクレオチドは、前記第2の標的核酸及び前記第2のバリアント核酸の両方の相同性サブ配列の第2の部分に相補的である第3の配列を含み、
前記第3の配列は、前記第3の配列が第2の重複サブ配列及び第2の非重複サブ配列を含むように、前記第2の標的中立性サブ配列と少なくとも5ヌクレオチド重複し、前記第3の配列は、前記第2のブロッカー可変性サブ配列を含まず、
前記第3の配列が、前記第2の標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°PT)を生じさせ、前記第4の配列が、前記標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°BT)を生じさせ、以下の条件:
+2kcal/mol≧ΔG° PT -ΔG° BT ≧-8kcal/mol
を満たし、かつ
前記第2のプライマーオリゴヌクレオチドの前記第2の非重複サブ配列が、前記第2の標的核酸へのハイブリダイゼーションの標準自由エネルギー(ΔG°3)を生じさせ、以下の条件:
-4kcal/mol≧ΔG° ≧-12kcal/mol
を満たす、前記第2のプライマーオリゴヌクレオチド;
を含む、オリゴヌクレオチド組成物
【請求項2】
第1の重複サブ配列が、第1の標的中立性サブ配列の5’末端の部分を含み、前記部分が約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチドである、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項3】
第2の重複サブ配列が、第2の標的中立性サブ配列の5’末端の部分を含み、前記部分が約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチドである、請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項4】
第1の重複サブ配列が、第1の標的中立性サブ配列の5’末端の部分を含み、前記部分が約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチドである、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項5】
第2の重複サブ配列が、第2の標的中立性サブ配列の5’末端の部分を含み、前記部分が約7ヌクレオチド~約30ヌクレオチドである、請求項1又は4に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項6】
第1のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項7】
第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約2~約10,000倍高い、請求項1又は6に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項8】
第1のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項9】
第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約5~約1,000倍高い、請求項1又は8に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項10】
(a)ポリメラーゼ連鎖反応法に必要な試薬;又は
(b)複数のヌクレオシド三リン酸;又は
(c)DNAポリメラーゼ;又は
(d)(a)、(b)及び(c)の任意の組合せ;
をさらに含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項11】
第1のブロッカー可変性サブ配列が、単一ヌクレオチドである、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項12】
第2のブロッカー可変性サブ配列が、単一ヌクレオチドである、請求項1又は11に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項13】
第1のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第1のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約10~約500倍高い、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項14】
第2のブロッカーオリゴヌクレオチドの濃度が、第2のプライマーオリゴヌクレオチドの濃度より約10~約500倍高い、請求項1又は13に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【請求項15】
標的核酸をさらに含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2022166131000001.xml