(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166133
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】免疫療法のためのナノ粒子組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 17/08 20060101AFI20221025BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221025BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221025BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20221025BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221025BHJP
C07K 1/113 20060101ALI20221025BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221025BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221025BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221025BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20221025BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221025BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20221025BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20221025BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20221025BHJP
【FI】
C07K17/08 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/74
C07K16/46
C07K1/113
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/34
A61K47/60
A61K47/68
A61K35/15 Z
A61K39/00 H
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
B82Y5/00
C12N5/078
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126697
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2020127044の分割
【原出願日】2015-12-24
(31)【優先権主張番号】62/096,725
(32)【優先日】2014-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517220900
【氏名又は名称】ネクシミューン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクリーディ ブルース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗原特異的T細胞を誘導する貯蔵安定性のある医薬組成物を含む、免疫療法のための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】免疫細胞活性化のためのポリペプチドリガンドを結合させたポリマーナノ粒子を含む人工抗原提示細胞(aAPC)であって、該ナノ粒子がPLGAまたはPLAポリマーコアと、PEGポリマー部分がポリペプチドリガンドの末端との結合を有するPEGブラシから形成される親水性シェルとを含む、前記aAPCを提供する。
【選択図】
図29
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞活性化のためのポリペプチドリガンドを結合させたポリマーナノ粒子を含む人
工抗原提示細胞(aAPC)であって、該ナノ粒子が
PLGAまたはPLAポリマーコアと、
PEGポリマー部分がポリペプチドリガンドの末端との結合を有するPEGブラシから形
成される親水性シェルとを含む、前記aAPC。
【請求項2】
前記親水性シェルが、同一のまたは異なる分子量を有するPEGブラシの混合物を更に
含む、請求項1に記載のaAPC。
【請求項3】
前記ポリマーコアが、1:0~1:1の乳酸:グリコール酸比を基準とする、請求項1
または2に記載のaAPC。
【請求項4】
前記ポリマーコアが、約1:1の乳酸:グリコール酸を有するPLGAである、請求項
3に記載のaAPC。
【請求項5】
前記ポリマーコアがPLAである、請求項3に記載のaAPC。
【請求項6】
前記コアポリマーが約10K~約50Kの分子量を有する、請求項1~5のいずれか1
項に記載のaAPC。
【請求項7】
前記ポリマーナノ粒子が、PLGAもしくはPLAポリマーコア、ならびにPLGA-
PEG及び/またはPLA-PEGブロックコポリマーを含み、該PEG部分は親水性シ
ェルを形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項8】
前記ポリペプチドリガンドが、官能基によってPEG末端に結合される、請求項7に記
載のaAPC。
【請求項9】
前記ポリペプチドリガンドが、ポリペプチド上の一級アミンによってPEGと結合され
る、請求項8に記載のaAPC。
【請求項10】
前記ポリペプチドリガンドが、不対システイン側鎖によって結合される、請求項8に記
載のaAPC。
【請求項11】
前記PLGA-PEGコポリマーが、約10K~約50Kの分子量を有するPLGA部
分と、約2K~約10Kの分子量(複数可)を有するPEG部分とを含有する、請求項1
~10のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項12】
前記PLGAポリマーが約20Kの分子量を有し、前記PEGポリマーが約3K及び/
または約5Kの分子量を有する、請求項11に記載のaAPC。
【請求項13】
前記粒子が、約10K~約30Kの分子量を有するPLGA部分と、約2K~約10K
の分子量を有するPEG-MeOH部分とを含有する、PLGA-PEG-MeOHコポ
リマーを含む、請求項11または12に記載のaAPC。
【請求項14】
前記PLGA-PEGのPLGA部分が約20Kの分子量を有し、前記PEG-MeO
H部分が約3K~5Kの分子量を有する、請求項13に記載のaAPC。
【請求項15】
前記PLGA-PEG及びPLGA-PEG-MeOHが、約1:15~約15:1の
比で存在する、請求項13または14に記載のaAPC。
【請求項16】
前記PLGA-PEG及びPLGA-PEG-MeOHが、約1:10~約2:1で存
在する、請求項15に記載のaAPC。
【請求項17】
前記ポリマーが、約50%のPLGA、及び少なくとも約25%のPLGA-PEG-
MeOHで存在する、請求項13~16のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項18】
前記PLA-PEGコポリマーが、約10K~約50Kの分子量を有するPLA部分と
、約2K~約10Kの分子量(複数可)を有するPEG部分とを含有する、請求項1~1
0のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項19】
前記PLA-PEGのPLA部分が約20Kの分子量を有し、前記PEG部分が約3K
及び/または約5Kの分子量を有する、請求項18に記載のaAPC。
【請求項20】
前記粒子が、約10K~約30Kの分子量を有するPLA部分と、約2K~約10Kの
分子量を有するPEG-MeOH部分とを含有する、PLA-PEG-MeOHコポリマ
ーを含む、請求項18または19に記載のaAPC。
【請求項21】
前記PLA-PEGポリマーのPLA部分が約20Kの分子量を有し、前記PEG-M
eOH部分が3K~5Kの分子量を有する、請求項20に記載のaAPC。
【請求項22】
前記PLA-PEG及びPLA-PEG-MeOHが、約1:15~約15:1の比で
存在する、請求項20または21に記載のaAPC。
【請求項23】
前記PLA-PEGとPLA-PEG-MeOHが、約1:10~約2:1で存在する
、請求項22に記載のaAPC。
【請求項24】
前記ポリマーが、約50%のPLA、及び少なくとも約25%のPLA-PEG-Me
OHで存在する、請求項21~23のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項25】
前記ナノ粒子が、約20~200nmの範囲のサイズを有する、請求項1~24のいず
れか1項に記載のaAPC。
【請求項26】
前記aAPCが、約0~-20mVの表面電荷を有する、請求項1~25のいずれか1
項に記載のaAPC。
【請求項27】
前記aAPCが約-5~約-10mVの表面電荷を有する、請求項26に記載のaAP
C。
【請求項28】
粒子当たり約200個未満のリガンドを有する、請求項1~27のいずれか1項に記載
のaAPC。
【請求項29】
前記ポリペプチドリガンドが、ペプチド-HLAリガンドと、1つ以上の抗CD28ま
たは抗4-1BBリガンドを含む、請求項1~28のいずれか1項に記載のaAPC。
【請求項30】
場合により5~15のマウスフレームワーク残基を有するヒトIGHV4-59生殖細
胞系列フレームワークと、場合により3~15のマウスフレームワーク残基を有するIG
KV4-01生殖細胞系列フレームワークとを有する抗CD28抗体リガンドを含む、請
求項29に記載のaAPC。
【請求項31】
前記抗CD28リガンドが、抗原結合抗体断片または部分を含む、請求項30に記載の
aAPC。
【請求項32】
前記抗CD28リガンドがscFvを含む、請求項31に記載のaAPC。
【請求項33】
前記HLAリガンドが二量体である、請求項29に記載のaAPC。
【請求項34】
前記HLAがHLA-A*02:01である、請求項33に記載のaAPC。
【請求項35】
前記HLAが免疫グロブリン配列との融合体を含む、請求項33または34に記載のa
APC。
【請求項36】
前記抗CD28抗体リガンド及びHLA免疫グロブリン融合体が、S241及びL24
8に突然変異と、コドン473に不対システインを有するIgG4定常領域を有する、請
求項35に記載のaAPC。
【請求項37】
前記抗CD28抗体リガンドが、免疫グロブリン重鎖のコドン473で不対システイン
によって粒子とコンジュゲートされる、請求項36に記載のaAPC。
【請求項38】
前記HLAリガンドが、免疫グロブリン重鎖のコドン473で不対システインによって
粒子とコンジュゲートされる、請求項36または37に記載のaAPC。
【請求項39】
前記HLAリガンドが、免疫グロブリン可変ドメイン配列なしで、免疫グロブリンヒン
ジ領域に融合されるHLAの細胞外ドメインを含む、請求項35に記載のaAPC。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか1項に記載のaAPCを含む組成物を患者に投与することを
含む、抗原特異的な細胞傷害性T細胞の形成を誘導する方法。
【請求項41】
前記患者が癌患者である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、1種以上のチェックポイント阻害剤による療法を受けている、または受け
た経験がある、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記患者がT細胞養子免疫療法を受けている、請求項40または41に記載の方法。
【請求項44】
前記aAPC組成物を静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、リンパ内投与ま
たは腫瘍内投与により投与する、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の参照
本出願は、2014年12月24日出願の米国仮特許出願第62/096,725号に
対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、免疫細胞の活性を調節するための生物学的リガンドを提示するナノ粒子組成
物に関する。
【背景技術】
【0003】
抗原提示細胞(APC)は、その表面にある主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タン
パク質と複合体化された抗原ペプチドを処理して提示する細胞である。エフェクター細胞
、例えばT細胞は、細胞表面受容体、例えばT細胞受容体(TCR)によって、このペプ
チド-MHC(pMHC)複合体を認識する。
【0004】
樹状細胞(DC)は抗原提示細胞の一例であり、刺激を受けると効率的に抗原を提示し
て免疫エフェクター細胞の増殖を助け、それによって抗原に対する細胞傷害性応答を活性
化することができる。一部の免疫療法では、DCを患者から採取して、抗原とともに間欠
投与するか、またはウイルスベクターでトランスフェクトする。これらの活性細胞は患者
の体内に再注入されると、エフェクターリンパ球(例えばCD4+T細胞、CD8+T細
胞及びB細胞)に腫瘍抗原を提示する。この療法が奏功すれば、抗原(腫瘍抗原を含む)
を発現している細胞に対して細胞傷害性応答が開始される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抗原特異的な癌免疫療法を含め、免疫療法に有効である貯蔵安定性のあ
る医薬組成物が依然として必要とされている。この開示は上記及びその他の目的を満たす
。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、患者の抗原特異的T細胞を誘導する貯蔵安定性のある医薬組成物を含む、免
疫療法のための組成物及び方法を提供する。このような組成物は、例えば癌及び感染性疾
患の治療に有用である。いくつかの態様では、この組成物は、抗原提示複合体及び場合に
よりT細胞共刺激シグナルをその表面に有する薬学的に許容されるビーズまたは粒子を含
む人工抗原提示細胞(aAPC)であり、抗原特異的T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞
)の活性化に適した状況で、1種以上の抗原(例えば、腫瘍抗原(複数可))を提示する
分子複合体を患者に提供する。ビーズまたは粒子は、循環特性、体内分布、分解速度論を
含む薬力学的利点、ならびにナイーブT細胞及び/または以前に活性したT細胞の抗原特
異的な活性化及び/または増殖をもたらすように設計されている。物理的パラメーターと
しては、主にサイズ、表面電荷、多分散指数、ポリマー組成、リガンドコンジュゲートケ
ミストリー、リガンド密度、リガンド比が挙げられる。いくつかの態様では、本発明は、
標的組織、例えばリンパ節、脾臓及び腫瘍部位などに送達するナノスケールのaAPC(
例えば、約200nm未満)を提供する。本明細書に記載するナノaAPCプラットフォ
ームは、種々の免疫療法用途に合わせて微調整することができる。いくつかの実施形態で
は、aAPCは約20nM~約200nMの範囲内であり、1粒子当たり5~約1500
個のリガンド、例えばいくつかの実施形態では、1粒子当たり約150個未満のリガンド
、または1粒子当たり約100個未満のリガンド、例えば1粒子当たり約5~約90個の
リガンドを含有することができる。いくつかの実施形態では、ナノaAPCは、(平均で
)約150個未満のリガンドまたは約100個未満のリガンドがその表面にコンジュゲー
トされていて、それによって活性及び/または力価の損失を伴わずに、表面の多量のリガ
ンドによる立体的制約を回避する。
【0007】
いくつかの実施形態では、T細胞共刺激シグナルは抗CD28抗体またはその抗原結合
部分であり、これにはIgG、IgD、IgAまたはIgMアイソタイプから選択される
配列を含むヒト重鎖アミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン
配列は、ヒトIgG定常配列及び可変配列を含む。フレームワーク(FW)配列は、抗原
結合部位(複数可)の完全性を維持するのに重要な、または望ましいマウスフレームワー
ク残基を含むように修飾することができる。相補的決定領域(CDR)は、マウス抗体ア
ミノ酸配列(例えば、9.3mAb)または他のCD28結合配列をベースとしてよく、
更に9.3mAbと競合するエピトープを結合してもよい。いくつかの実施形態では、抗
体重鎖はヒトIGHV4(例えば、IGHV4-59)生殖細胞系列FWの変異体である
。いくつかの実施形態では、抗体は軽鎖を含み、軽鎖はヒトIGKV4-01 FWの変
異体である。抗体は定常領域を含み、更に定常領域はいくつかの実施形態においてヒトI
gG4定常領域またはその変異体である。
【0008】
共刺激分子を、抗原提示分子複合体を有する固体支持体にコンジュゲートして、抗原特
異的T細胞を誘導することができる。抗原提示分子複合体は、MHCクラスI及び/また
はクラスII複合体、または抗原結合クレフトを含むその一部を含むことができる。いく
つかの実施形態では、分子複合体は1つ以上のHLAアミノ酸配列(例えば、HLAの細
胞外ドメインまたはその抗原提示部分を含む)を含み、これには付加配列、例えば免疫グ
ロブリン配列、またはその他の多量体化(例えば、二量体化)配列もしくは安定化配列を
包含することができる。いくつかの実施形態では、HLA-Ig二量体化融合体は、安定
性、結合親和性及び/またはT細胞活性化に利点をもたらす。
【0009】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明はビーズまたは粒子にコンジュゲートさ
れたT細胞に抗原を提示する分子複合体を提供し、この分子複合体はクラスIまたはクラ
スII抗原結合クレフトまたはその一部を形成するアミノ酸配列を含む。この抗原提示複
合体のアミノ酸配列は、例えば、安定性、親和性及び立体的利点を得るために、非相同配
列との融合体を含むことができる。いくつかの実施形態では、非相同配列は免疫グロブリ
ン配列を含む。いくつかの実施形態では、分子複合体は、免疫グロブリン配列などの非相
同配列と融合されたHLA(例えば、HLA-A2)アミノ酸配列を含む。いくつかの実
施形態では、免疫グロブリン配列は、ヒト重鎖免疫グロブリン配列(例えば、IGVH4
)を含み、これには二量体HLAを提供するために免疫グロブリン定常領域配列(例えば
ヒンジ領域を含んでいる)を含むことができ、また場合により可変領域配列を含んでもよ
い。可変領域配列が存在する場合、場合によって、可能性のある抗原結合を低減または排
除するようにこの配列を修飾することも、マウスFW残基をなくすこともできる。いくつ
かの実施形態では、HLA抗原提示複合体は、Igヒンジ領域に直接融合される(例えば
、軽鎖または重鎖可変配列を含まない)。HLAアミノ酸配列は、HLA-A*02:0
1(IMGTアクセッション番号HLA00005)またはその誘導体であり得る。
【0010】
T細胞共刺激リガンド及び/または抗原提示複合体(ならびに、標的リガンドを含む本
明細書に開示される他のリガンド)は、ex vivoまたはin vivoで抗原提示
T細胞及び抗原特異的T細胞を活性化するため、粒子支持体にコンジュゲートされる。い
くつかの実施形態では、粒子は、PLGAまたはPLAポリマーコアを、PLGA-PE
GまたはPLA-PEGポリマーとともに形成する。あるいは、他のポリマー及び/また
はコポリマーを使用することができる。例えば、ポリマーは、1:0と0:1の間、例え
ば約1:0~約1:1の比率で、乳酸(L)及びグリコール酸(G)を含有することがで
きる。いくつかの実施形態では、結合リガンドの表面官能基をPEG鎖の末端に結合し、
親水性の外装を形成する。粒子は、循環特性、体内分布及び分解速度論を含む薬力学的利
点、ならびに抗原特異的T細胞を活性化する高い力価をもたらすように設計される。物理
的パラメーターとしては、主にサイズ、表面電荷、ポリマー組成、リガンドコンジュゲー
トケミストリー、リガンド密度が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、粒子は
PLGAまたはPLAポリマーのコア、及びコポリマーのPEG部分によって形成される
親水性シェルを有し、ポリマーの一部はポリペプチドリガンドの末端と結合する。親水性
シェルは、リガンドコンジュゲートの官能基に対して不活性である、いくつかのPEG鎖
、例えばPLGA-PEG-MeOHまたはPLA-PEG-MeOHポリマーを含む。
これらの実施形態では、粒子の化学物質により、リガンド密度の良好な調整が可能である
。
【0011】
いくつかの実施形態では、粒子は、例えば本明細書に詳述するPLGA-PEGまたは
PLA-PEG化学物質またはその他のポリマー化学物質などのポリマーナノ粒子であり
、約20~約200nmの範囲内のサイズを有する。いくつかの実施形態では、リガンド
密度は、(平均で)粒子当たり5~約1500個のリガンド、いくつかの実施形態では、
粒子当たり約150個未満のリガンド、または粒子当たり約100個未満のリガンド(例
えば、粒子当たり約5~約90個のリガンド)が存在するように調整される。
【0012】
種々の実施形態において医薬組成物はT細胞に提示される抗原ペプチドを更に含み、こ
の抗原ペプチドをリガンドとコンジュゲートされたビーズまたは粒子とともに合剤化する
ことができる。種々の実施形態において医薬組成物は貯蔵安定性であり、投与前に再構成
される凍結乾燥形態で提供しても、あるいは患者への投与に便利である別の形式(例えば
、非経口投与によって)提供してもよい。
【0013】
本明細書に記載する医薬組成物は、免疫療法、例えば、必要とする患者に有効量の組成
物を投与することによって抗原特異的T細胞の形成を誘導する方法に有用である。特に、
抗原提示プラットフォームは、癌、感染性疾患または自己免疫疾患を有する患者の治療、
または免疫抑制患者への予防的保護の提供に有用であり得る。いくつかの実施形態では、
ナノ粒子組成物を、チェックポイント阻害剤療法などの癌免疫療法後、及び/またはT細
胞養子免疫療法後に投与することで、様々な癌に対して増強された及び/または持続した
免疫学的攻撃を提供する。
【0014】
本発明は、本明細書に記載するアミノ酸配列でコードされるポリヌクレオチド、ならび
にそれを発現している宿主細胞を更に提供する。
【0015】
本発明の詳細は、以降に付属する説明及び特許請求の範囲に記載されている。本明細書
に記載するものと同様または同等である方法及び材料を本発明の実施または試験に使用す
ることができるが、ここに記載される方法及び材料は例示である。本発明の他の特徴、目
的及び利点は、本明細書の説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。明細書及び添付
の特許請求の範囲において、その内容について別段の明確な指示がない限り、単数形は複
数も含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的用語及び科学的用語はす
べて、本発明が属する分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】抗CD28の3種のヒト化可変重鎖配列を示す。
【
図2】抗CD28の3種のヒト化可変重鎖配列を示す。
【
図3】抗CD28の3種のヒト化可変重鎖配列を示す。
【
図4】抗CD28の3種のヒト化可変軽鎖配列を示す。
【
図5】抗CD28の3種のヒト化可変軽鎖配列を示す。
【
図6】抗CD28の3種のヒト化可変軽鎖配列を示す。
【
図9】HLA融合体を構築するためのヒト化CD28非結合可変領域を示す。
【
図10】ヒト化HLA-IgG4HCのアミノ酸配列を示す。
【
図11】軽鎖3(LC3またはVκ3)のアミノ酸配列を示す。
【
図14】STABLEFAST-NS0細胞株で発現される発現構築物を示す。
【
図15】STABLEFAST-NS0細胞株で発現される発現構築物を示す。
【
図16】STABLEFAST-NS0細胞株で発現される発現構築物を示す。
【
図17】ヒト化抗CD28 mAbがスーパーアゴニストでないことを示す。
【
図18】ヒト化抗CD28クローンが、ヒトT細胞株上のCD28を特異的に染色することを示す。
図18(A):マウス抗ヒトCD8 mAb(クロ-ン9.3、アイソタイプIgG2a)による染色である。
図18(B):ヒト化抗CD28(アイソタイプIgG4)による染色である。
【
図19】Fcヒンジ領域と直接融合される抗原提示複合体をベースとした、小分子MHC-Ig融合タンパク質の設計を示す。
【
図20】利用可能な一級アミンを介してコンジュゲートされるリガンドを有する、PLGAとPLGA-PEG-COOHナノaAPCとの比較を示す。PEG-COOH:mPEGの比が1:4であるビーズは、いずれも安定性かつ活性であった。
【
図21】ナノaAPCが同族のTCRを有するT細胞を特異的に染色することを示す。TCR結合特異性に関するFACSによるバイオ分析アッセイを示す。
【
図22】PLGA-PEGのaAPC粒子が、用量依存的に抗原特異的T細胞の増殖を刺激することを示す。
【
図23】PLGA-PEGベースのaAPCが、凍結乾燥時に安定であることを示す。
【
図24】SIYを負荷したPLGA-PEGナノaAPCを増量したときの2C T細胞の4日目の培養を示す。
【
図25】ナノaAPCによる刺激から1日後のT細胞増殖クラスターを示す。
【
図26】修飾された(Gen 2.0)共刺激リガンドの結合活性を示す。
【
図27】Kb-SIYのFcヒンジタンパク質をベースとするナノaAPCが、同族の標的2C T細胞を特異的に染色することを示す。
【
図28】リガンドの部位特異的なチオールコンジュゲートを有するナノaAPCを示す。ビーズは、比率1:1のPEG-COOHとmPEGポリマー(72B)または比率1:9のPEG-mal:mPEG(77B)を含有した。どちらも安定性かつ活性であった。
【
図29】ヒンジ二量体構築物を含んでいるナノaAPCを使用した、K
b特異的な2C T細胞(A)及びD
b-gp100特異的なpmel T細胞の増殖を示している。
【
図30】ヒトCMVまたはMART-1に特異的なT細胞のナノaAPCベースでの増殖を示す。比較のため、DynalベースのAPCを示す。
【
図31】例示的なナノ粒子の製剤化を示す。(A)マレイミド部位を誘導した化学物質を有する粒子とのリガンドのコンジュゲート;(B)動的光散乱法(DLS)による粒子の特徴;(C)NI-26バッチの電荷及びPDI。
【
図32】例示的なナノ粒子配合バッチの特性を示す一覧である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
全体を通じて以下の省略形を使用する:BLAST-Basic Local Ali
gnment Search Tool、CDR-相補的決定領域、Cκ-カッパ軽鎖定
常領域、Fc-抗体断片結晶化可能領域、FW-(可変領域の)フレームワーク領域、H
LA-ヒト白血球抗原、MHC-主要組織適合遺伝子複合体、VH-可変重鎖、Vκ-可
変カッパ軽鎖、及びV領域-抗体の可変領域、VHまたはVκのいずれか。
【0018】
本発明は、患者の抗原特異的T細胞を誘導する貯蔵安定性のある医薬組成物を含む、免
疫療法のための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、HLA
抗原を提示する二量体複合体を含む。いくつかの実施形態では、組成物はヒト化免疫グロ
ブリン配列またはその一部を含み、これを人工抗原提示細胞(aAPC)上のリガンド成
分として使用し、1種以上の抗原(例えば、腫瘍抗原(複数可))及び場合により1種以
上の共刺激シグナルを提示する二量体分子複合体を患者に提供することができる。抗原提
示プラットフォームは、以下で詳細に説明するように、人工固体支持体、例えばポリマー
ビーズまたは粒子を含む薬学的に許容される支持体を基とすることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、T細胞共刺激シグナルは、抗CD28抗体またはその一部で
ある。いくつかの実施形態では、抗CD28抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、I
gG4、IgD、IgAまたはIgMから選択される少なくとも1つのヒト免疫グロブリ
ンアイソタイプの配列を含む。例えば、抗CD28抗体は、IgGアイソタイプであって
よく、1つ以上のIgG生殖細胞系列フレームワーク配列の配列を含んでもよい。例えば
、抗CD28はヒトIGHV4重鎖アミノ酸配列を含んでもよく、1~15個のアミノ酸
修飾により変更されていてもよい。修飾には、抗原結合部位(複数可)の完全性を支持す
るようにマウスフレームワーク残基を含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、相補的決定領域(CDR)はマウス抗体アミノ酸配列を基と
し、場合により1~10個、例えば1~5個のアミノ酸修飾を有し得る。いくつかの実施
形態では、1、2、3またはそれ以上のCDRが、一般に利用可能であるマウス9.3m
Abを基にする(Tan et al.J.Exp.Med.1993 177:165
)。例示的なCDRを
図1~6に示す。いくつかの実施形態では、抗体は、9.3mAb
の重鎖CDRのフルセット及び/または軽鎖CDRのフルセットを有する。例えば、いく
つかの実施形態では、重鎖可変領域はCDR1(DYGVH)、CDR2(VIWAGG
GTNYNSALMS)及びCDR3(DKGYSYYYSMDY)のうち1つ、2つま
たは3つのCDRを含み、場合により各々が1、2または3個のアミノ酸の置換、欠失ま
たは付加により修飾されていてよい。例えば、いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は
CDR1(RASESVEYYVTSLMQ)、CDR2(AASNVES)及びCDR
3(QQSRKVPYT)のうち1つ、2つまたは3つのCDRを含み、各々が1、2ま
たは3個のアミノ酸の置換、欠失または付加により修飾されていてよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗CD28リガンドは、9.3mAbと同様の、または重複
するエピトープと結合するか、または9.3mAbのCDR1、CDR2及びCDR3を
有する抗体と同様の、または重複するエピトープを結合する。同様の、または重複するエ
ピトープを有する抗体は、例えば表面プラズモン共鳴(Biacore)を使用した競合
イムノアッセイなどの、何らかの好適な技術によって選別することができる。
【0022】
種々の実施形態において、別のCDR配列、可変領域またはCD28結合リガンドを用
いてもよい。別のリガンド、CD28エピトープ及び抗CD28抗体は、例えば、米国特
許第7,612,170号、米国特許第6,987,171号及び米国特許第6,887
,466号に記載されており、各開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖はヒトIGHV4-59生殖細胞系列フレームワー
ク(FW)の変異体を含み、これは5~15個のマウスFW残基を含むように修飾される
。いくつかの実施形態では、抗体は軽鎖アミノ酸配列を含み、軽鎖配列は、ヒトIGKV
4-01 FW配列の変異体であってもよく、これは3~15個のマウスFW残基を含む
ように修飾されていてもよい。
【0024】
抗CD28ヒト重鎖配列は、例えば、1、3、6、37、48、67、71、73、7
6、78、82、82a及び82c位(Kabat番号付けに基づく)で、1個以上の(
例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、またはすべて)のマウスFW残基を
含むように修飾されていてよい。これらの位置のマウスFW残基は、9.3mAbと同様
であり得る。軽鎖は、3、4、49、70、85、87及び80位で1個以上の(例えば
、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、またはすべて)のマウスFW残基を含むよ
うに修飾されていてよい。選択されたマウスFW残基は、抗原結合部位の完全性を支持す
ることができる。ヒト化抗CD28抗体は、9.3mAbのCD28に対する親和性及び
T細胞共刺激活性を保持しており、9.3mAbと比べて少なくとも40%、50%、7
5%、80%、90%、及びいくつかの実施形態では100%またはそれ以上にCD28
結合性及びT細胞活性化に対して効果的である。種々の実施形態において、抗CD28リ
ガンドはスーパーアゴニストではない。いくつかの実施形態では、抗CD28リガンドは
、9.3mAbと同様の、または重複するエピトープと結合する。
【0025】
抗体は定常領域を含んでもよく、定常領域はアイソタイプのいずれかであってよい。い
くつかの実施形態では、抗体定常領域は、ヒトIgG4またはその変異体である。いくつ
かの実施形態では、定常領域は1つ以上のヒンジを安定化する突然変異を含み、CH鎖(
例えば、Pで置換され得るS241)に導入されていてもよい。いくつかの実施形態では
、抗体は定常領域を含み、定常領域は、抗体を化学的に固体支持体とカップリングするの
に適した1つ以上の突然変異を含む。カップリングに適した1つ以上の突然変異は、アミ
ノ酸側鎖官能基(例えば、チオール、アミンまたはヒドロキシル)を生じさせることがで
き、例えばこれは不対システイン(例えば、S473位)である。定常領域に対する他の
変更には、Fcガンマ受容体結合を低減するような修飾を含む。例えば、CH鎖をL24
8、例えばL248Eで修飾することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、リガンドがナノ粒子面への機能的な付着により好適であるよ
うに、共刺激リガンドは最小化されてある。例えば、抗体は抗体断片(例えばF(ab’
)2またはFab)であってもよく、または一本鎖抗体もしくは他の抗原結合抗体断片で
ある。例えば、抗体断片は、本明細書に記載するヒト化mAbまたは他の抗CD28の一
本鎖可変断片であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、共刺激分子は、本明細書に記載する抗体のような抗CD28
mAbのVH鎖及びVL鎖によって形成される抗原結合ループからなる、または本質的
にそれからなる一本鎖可変断片(scFv)である。scFv抗体構築物は、短いペプチ
ドリンカーによって頭部-頭部または頭部-尾部の構成で共に結合された、1つまたは複
数(2、3、4または5)のVH及びVL超可変領域鎖(3D抗原エピトープ結合ポケッ
トを一緒に形成する各鎖の部分)を含んでいてよい。このような構築物はサイズが小さい
ため、完全に合成経路によって利便に生成することができる。更に、scFvは免疫原性
の可能性を低下させることができる。
【0028】
他の実施形態では、共刺激リガンドは、共刺激分子リガンドまたは抑制性リガンドのs
cFvと結合された1つ以上のHLA分子を含む二重特異性構築物である。二重特異性構
築物をナノ粒子表面に共有結合できるペプチドテザーによって、抗原提示複合体及び共刺
激リガンドまたは抑制性リガンドをコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形
態では、このような構築物は、HLA及び共刺激リガンドまたは抑制性リガンドのそれぞ
れがナノ粒子表面と個別に結合された、より大きい構築物を含むナノ粒子と同様の活性を
生じさせるため、製造上の利点をもたらす。
【0029】
いくつかの実施形態では、共刺激リガンドの生成に、ペプチド、アプタマー及びAdN
ectinを含む、他のリガンド結合形式を使用する。種々の標的結合形式としては、単
一ドメイン抗体、組換えの重鎖のみ抗体(VHH)、一本鎖抗体(scFv)、サメの重
鎖のみ抗体(VNAR)、マイクロタンパク質(システインノットタンパク質、knot
tin)、DARPin、テトラネクチン、アフィボディ;トランスボディ、アンチカリ
ン、アフィリン、マイクロボディ、ペプチドアプタマー、フィロマー、ストラドボディ、
マキシボディ、エビボディ、フィノマー、アルマジロリピートタンパク質、Kunitz
ドメイン、アビマー、アトリマー、プロボディ、イムノボディ(immunobody)
、トリオマブ(triomab)、トロイボディ、ペプボディ(pepbody)、ユニ
ボディ(UniBody)、デュオボディ(DuoBody)、Fv、Fab、Fab’
、F(ab’)2、ペプチド模倣分子、もしくは合成分子、またはその内容全体が参照に
より本明細書に組み込まれる、米国特許番号もしくは特許公開番号US7,417,13
0、US2004/132094、US5,831,012、US2004/02333
4、US7,250,297、US6,818,418、US2004/209243、
US7,838,629、US7,186,524、US6,004,746、US5,
475,096、US2004/146938、US2004/157209、US6,
994,982、US6,794,144、US2010/239633、US7,80
3,907、US2010/119446及び/またはUS7,166,697に記載の
ものが挙げられる。Storz MAbs.2011 May-Jun;3(3):31
0-317も参照のこと。
【0030】
共刺激分子を、抗原提示分子複合体を有する固体支持体にコンジュゲートして、抗原特
異的T細胞を誘導することができる。抗原提示分子複合体は、MHCクラスI及び/また
はクラスII複合体、またはその抗原結合クレフトを含む部分を含むことができる。いく
つかの実施形態では、分子複合体は1つまたは2つのHLAアミノ酸配列を含み、その配
列は免疫グロブリン配列などの追加の非相同配列を含んでいてもよい。別の非相同配列と
して、二量体化アミノ酸配列、例えばc-fos及びc-junが挙げられる。いくつか
の実施形態では、HLA融合体は、安定性、結合親和性及び/またはT細胞活性に付加的
な利点をもたらす。
【0031】
種々の実施形態において、抗原提示複合体は、MHCクラスI分子複合体もしくはMH
CクラスII分子複合体のいずれか、またはそれに代わるCD1dである。MHCクラス
I分子複合体は、少なくとも2つの融合タンパクを含んでいてよい。第1の融合タンパク
質は、第1のMHCクラスIのα鎖及び第1の免疫グロブリン重鎖を含み、第2の融合タ
ンパクは第2のMHCクラスIのα鎖及び第2の免疫グロブリン重鎖を含む。第1と第2
の免疫グロブリン重鎖は会合して、MHCクラスI分子複合体を形成する。MHCクラス
I分子複合体は、第1のMHCクラスIペプチド結合クレフトと、第2のMHCクラスI
ペプチド結合クレフトを含む。MHCクラスII分子複合体は、少なくとも4つの融合タ
ンパクを含むことができる。第1の融合タンパク質は、(i)免疫グロブリン重鎖と、(
ii)MHCクラスIIβ鎖の細胞外ドメインを含む。第2の融合タンパク質は、(i)
免疫グロブリン軽鎖と、(ii)MHCクラスIIα鎖の細胞外ドメインを含む。2つの
第1の融合タンパク質及び2つの第2の融合タンパク質が会合して、MHCクラスII分
子複合体を形成する。第1の融合タンパク質それぞれのMHCクラスIIβ鎖の細胞外ド
メイン及び第2の融合タンパク質それぞれのMHCクラスIIα鎖の細胞外ドメインは、
MHCクラスIIペプチド結合クレフトを形成する。抗原ペプチドは、ペプチド結合クレ
フトに結合される。種々の実施形態において、免疫グロブリン配列は、二量体化を支持す
るためのヒンジ領域を含んでいる部分的な重鎖配列である。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗原提示複合体は、ナノ粒子とのコンジュゲートのために、
不対システインを含むように遺伝子操作された、または天然の不対システインを使用して
いる、合成または組換えのHLAモノマー(例えば、β2ミクログロブリンを有するクラ
スIアルファ鎖)である。更に、共刺激シグナル(または、他の抗体系のリガンド)は、
FabであってもscFvであってもよい。このような実施形態では、2つのシグナルを
、目的受容体と結合する抗原結合抗体断片(例えば、scFv)に係留されたHLA分子
を含む単一の多機能構築物に組み込むことができる。
【0033】
他の態様及び実施形態では、本発明は、ビーズまたは粒子にコンジュゲートされた、T
細胞に抗原を提示する分子複合体を提供し、この複合体は、例えばHLAアミノ酸配列な
どの抗原提示配列に融合されたヒト化免疫グロブリン配列またはその一部を含む。いくつ
かの実施形態では、免疫グロブリン配列は、ヒト重鎖配列(例えば、IGHV4フレーム
ワーク)である。この可変領域は、CD28または他のヒトタンパク質に対する抗原結合
活性を含まない。HLAアミノ酸配列は、HLA-A*02:01(IMGTアクセッシ
ョン番号HLA00005)またはその誘導体もしくは断片、例えば1~10個、または
1~5個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を有する誘導体などであり得る。ヒト化免
疫グロブリン配列は更に、HLAと免疫グロブリン配列の間にリンカーアミノ酸配列を含
んでもよい。好ましくは、リンカーは免疫原性が欠けている。分子複合体は更に、β2ミ
クログロブリンペプチドを含んでもよい。
【0034】
種々の実施形態において、免疫グロブリン融合配列は、IgG、IgD、IgA、また
はIgMアイソタイプであり、ヒト生殖細胞系列フレームワークのいずれかに由来し得る
。生殖細胞系列フレームワークには、IGHV4(例えば、IGHV4-59)を含み、
これには抗CD28に関して記載した1つ以上のマウスフレームワーク残基を含んでも含
まなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記の抗CD28抗体の重鎖(マウスフレー
ムワーク残基の有無を問わない)は、この態様に従ってHLAに融合され、またこのよう
な実施形態において可変領域はCD28結合を低減または排除するように修飾される。
【0035】
いくつかの実施形態では、HLA融合構築物には可変鎖配列を含まない。例えば、HL
Aまたは抗原提示複合体を、ヒンジ領域上部のIg定常領域配列と融合して、二量体HL
Aを得ることができる。例えば、HLAまたはその抗原提示部分は、各IgG重鎖のCH
1部分とコンジュゲートされていてよい。IgG分子はすべて、ヒンジ領域(上方及び下
方)でジスルフィド結合によって互いに結合された、2つの同一の重鎖(定常領域と可変
領域)からなる。例えば、いくつかの実施形態では、HLA分子または抗原提示複合体が
CH1(ヒンジ領域上方のIgH鎖のN末端)と融合され、その結果、VH及びVL軽鎖
配列の欠失により、小さい二量体融合タンパク質が生成される。よって、このような構築
物はCH2及びCH3ドメインを含むことになる。このような構築物は、免疫原性の可能
性を低下させるだけでなく、製造上の利点をもたらすことができる。いくつかの実施形態
では、このような構築物はまた、ヒンジ領域からの距離が短いにもかかわらず、効率的な
T細胞活性化に十分な結合協同作用を示す。
【0036】
粒子化学物質によってリガンド密度を微調整することができる。一般にナノaAPCは
平均して、その表面にコンジュゲートされた5~約1500個のリガンドを有する。いく
つかの実施形態では、各粒子は、粒子当たり約500個未満のリガンド、または粒子当た
り約400個未満のリガンド、または粒子当たり約300個未満のリガンド、または粒子
当たり約200個未満のリガンドを有する。いくつかの実施形態では、このポリマーナノ
粒子は、粒子当たり約150個未満のリガンド、または粒子当たり約100個未満のリガ
ンドを有する。例えば粒子は、粒子当たり約5~約90個のリガンドを有することができ
る。種々の実施形態において、ナノ粒子は、粒子あたり約90個未満のコンジュゲートさ
れたリガンド、すなわち粒子当たり約80個未満、または約70個未満、または約60個
未満、または約50個未満、または約40個未満、または約30個未満、または約20個
未満のコンジュゲートされたリガンドを含む。いくつかの実施形態では、粒子は、その表
面に10~約80個のコンジュゲートされたリガンド、すなわち粒子当たり10~約70
個、または約10~約50個のコンジュゲートされたリガンドを含む。
【0037】
更に他の実施形態では、抗原提示複合体(例えば、HLA配列)は、Ig融合パートナ
ーを含まず、単量体である。例えば、いくつかの実施形態では、抗原提示複合体またはH
LA分子(例えばHLA-A2など)のC末端には、合成ナノ粒子(例えば、PLGA-
PEGマレイミドまたはPLA-PEGマレイミドブロックポリマーを含有する)などの
固体/半固体基質上の官能基(例えば、マレイミド部分)への部位特異的な結合に適した
ペプチドテザー配列を含む。テザー配列は任意の好適な配列を含むことができ、これは、
約5~約15個(または約5~約10個)のアミノ酸のテザー内のどこかにシステイン残
基が組み込まれた、Gly、Ser、Ala、及びThrなどの親水性残基、例えばGG
GSGまたはAAAGGの2つ、3つ、4つまたは5つのリピートなどから主に構成され
得る。システイン残基は、分子内ジスルフィド結合を形成しないと予測される部位に組み
込む必要がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、HLA-Ig融合体または他のHLA構築物は更に、T細胞
に提示される、HLAに結合した抗原ペプチドを含む。抗原ペプチドは、チロシナーゼ、
hTERT、MAGE-1、MAGE-3、gp-100、NY-ESO-1、Mela
n A/Mart-1、HPV16-E7、gp75/brown、BAGE及びS-1
00のうち1つ以上の抗原部分、ならびに/またはその内容全体が参照により本明細書に
組み込まれる、クラスIまたはクラスII複合体によって提示される、WO2004/0
06951に記載のいずれかの抗原ペプチドを包含することができる。
【0039】
抗原提示複合体に提供され得る他のシグナルとして以下が挙げられる:CD80(B7
-1)、CD86(B7-2)、B7-H3、4-1BBL、CD27、CD30、CD
134(OX-40L)、B7h(B7RP-1)、CD40、LIGHT(または、こ
のような分子もしくはその活性部分のIg融合体、場合により本明細書に記載するように
ヒト化される)、HVEMに特異的に結合する抗体、CD40Lに特異的に結合する抗体
、OX40に特異的に結合する抗体、Fasに特異的に結合する抗体、PD1に特異的に
結合する抗体、GITRに特異的に結合する抗体及び4-1BBに特異的に結合する抗体
。共刺激シグナルが天然リガンドに対する抗体である場合、抗体リガンドをヒト化及び/
またはそのサイズを最小化する(例えば、scFv及び二重特異性構築物)ため、ならび
に粒子にコンジュゲートされる抗体を遺伝子操作するため、本明細書で使用される技術を
用いることができる。
【0040】
本発明の抗原提示プラットフォームとして有用な接着分子は、T細胞またはT細胞前駆
体へのプラットフォームの接着を媒介することができる。本発明に有用な接着分子として
は、例えばICAM-1及びLFA-3が挙げられる。
【0041】
T細胞増殖因子は、T細胞の増殖及び/または分化に影響を及ぼす。T細胞増殖因子の
例としては、サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロン)及びスーパ
ー抗原が挙げられる。特に有用なサイトカインとしては、IL-2、IL-4、IL-7
、IL-10、IL-12、IL-15及びガンマインターフェロンが挙げられる。T細
胞増殖因子は、表面に化学的にコンジュゲートまたは吸着されたビーズまたは粒子の中に
封入されていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ナノ粒子は更に、粒子の
疎水性コア中に捕捉された、治療用化合物またはタンパク質/ペプチドを含む(例えば、
化学療法剤、サイトカインもしくはIL-2などのインターロイキン、T細胞を誘引する
CCL9のようなケモカイン、及び/または抗PD1抗体もしくは抗PD1ペプチドのよ
うなチェックポイント阻害剤分子)。いくつかの実施形態では、このようなaAPCは、
刺激または阻害、ならびにリプログラミングに対して特異的な細胞を標的とするように構
築される。いくつかの実施形態では、捕捉された化合物は、粒子マトリックスの分解によ
り放出される。このようなaAPCによって、オフターゲットの相互作用による不必要な
活性を制限することにより、併用療法の許容性と有効性を高めることができ得る。いくつ
かの実施形態では、ナノ粒子aAPCには、薬物化合物、例えばサイトカイン及び小分子
薬が封入されない。
【0042】
本発明の態様に従って提示される抗原には、腫瘍関連抗原を含む。腫瘍関連抗原には、
それが由来する腫瘍によってのみ発現する固有の腫瘍抗原、多くの腫瘍で発現するが、正
常な成人組織では発現しない共通腫瘍抗原(腫瘍胎児性抗原、癌/精巣抗原)、及び腫瘍
の発生源である正常組織によっても発現する組織特異的抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は
、例えば、胎児性抗原、異常な翻訳後修飾を有する抗原、分化抗原、突然変異した癌遺伝
子もしくは腫瘍抑制因子の産物、融合タンパク質、または腫瘍ウイルスタンパク質であり
得る。様々な腫瘍関連抗原が当技術分野において既知であり、これらの多くは市販されて
いる。腫瘍胎児性及び胎児性抗原としては、癌胎児性抗原及びアルファ-フェトプロテイ
ン(それぞれ、通常は発生期の胚においてのみ高度に発現するが、肝臓及び大腸の腫瘍に
よって高頻度で発現する)、胎盤アルカリホスファターゼのシアリル-ルイスX(腺癌に
発現)、CA-125及びCA-19(胃腸、肝臓及び婦人科腫瘍に発現)、TAG-7
2(結腸直腸腫瘍に発現)、上皮糖タンパク質2(多くの癌に発現)、膵臓癌胎児性抗原
、5T4(胃癌に発現)、アルファフェトプロテイン受容体(多発性腫瘍型、特に乳癌に
発現)、及びM2A(生殖細胞腫瘍形成で発現)が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原が、NY-ESO-1、MAGE-A
、B、及びC、CTAG-1、CTAG-45、GAGE、ならびにSSXを含み得る癌
/精巣(CT)抗原であり、通常これは、精巣の生殖細胞によって発現するが、正常な成
体の体組織では発現しない。しかしながら、黒色腫、乳房リンパ腫、肝臓リンパ腫、肺リ
ンパ腫、卵巣リンパ腫、及びホジキンリンパ腫を含む、数多くの種類の癌細胞がCT抗原
を発現していることが示されている。
【0044】
腫瘍関連の分化抗原は、チロシナーゼ(黒色腫に発現)及び特定の表面免疫グロブリン
(リンパ腫に発現)を含む。
【0045】
突然変異した癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子産物としては、いずれも多くの腫瘍型に発
現するRas及びρ53、Her-2/neu(乳癌及び婦人科癌に発現)、EGF-R
、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、網膜芽細胞腫遺伝子産物、MYC(肺癌
と関連)、RAS、乳房腫瘍と関連するp53非突然変異体、MAGE-1、及びMAG
E-3(黒色腫、肺癌及び他の癌と関連)が挙げられる。
【0046】
他の腫瘍抗原としては、慢性骨髄性白血病に発現するBCR-ABLなどの融合タンパ
ク質、及び子宮頚癌に見られるHPV型16、E6、及びE7などの腫瘍ウイルスタンパ
ク質が挙げられる。組織特異的腫瘍抗原としては、メラノトランスフェリン及びMUCI
(膵臓癌及び乳癌に発現);CD10(一般急性リンパ芽球性白血病抗原、すなわちCA
LLAとして以前から知られている)または表面免疫グロブリン(B細胞白血病及びリン
パ腫に発現);IL-2受容体のα鎖、T細胞受容体、CD45R、CD4+/CD8+
(T細胞白血病及びリンパ腫に発現);前立腺特異性抗原及び前立腺酸性ホスファターゼ
(前立腺癌に発現);gp100、MelanA/Mart-1、チロシナーゼ、gp7
5/brown、BAGE及びS-100(黒色腫に発現);サイトケラチン(様々な癌
腫に発現);ならびにCD19、CD20及びCD37(リンパ腫に発現)が挙げられる
。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗原ペプチドは、本明細書に記載のHLA-Ig融合複合体
などの、本明細書に記載のHLA抗原提示複合体によって提示されるMART-1、gp
100、NY-ESO-1及びMAGE-A3を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、aAPCは、腫瘍誘発性の突然変異に基づく1つ以上の抗原
ペプチド、または患者腫瘍の個別的評価から特定された新生抗原を提示する。
【0049】
更に他の実施形態では、組成物は、腫瘍型に応じた複数の抗原、例えば少なくとも2、
3、4、5、6、7、8、9または10個の抗原(例えば、2~10個または3~8個の
抗原)を含有するaAPCの混合薬を含む。通常、各aAPCは単一抗原を提示する。
【0050】
いくつかの実施形態では、抗原は自己抗原(autoantigen)であり、これは
生物がそれに対して免疫応答を生成する生物固有の「自己抗原(self antige
n)」である。自己抗原は、グッドパスチャー症候群、多発性硬化症、グレーブス病、重
症筋無力症、全身性エリテマトーデス、インスリン依存性糖尿病、関節リウマチ、尋常性
天疱瘡、アジソン病、疱疹状皮膚炎、セリアック病及び橋本甲状腺炎などの自己免疫疾患
に関与している。例えば、糖尿病関連自己抗原としては、インスリン、グルタミン酸デカ
ルボキシラーゼ(GAD)、及びその他の膵島細胞の自己抗原、例えば、ICA512/
IA-2タンパク質チロシンホスファターゼ、ICA12、ICA69、プレプロインス
リンもしくはその免疫学的に活性な断片(例えば、インスリンB鎖、A鎖、Cペプチドま
たはその免疫学的に活性な断片)、IGRP、HSP60、カルボキシペプチダーゼH、
ペリフェリン、ガングリオシド(例えば、GM1-2、GM3)またはその免疫学的に活
性な断片が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗原(複数可)は感染因子のものであり、例えば原生動物、
細菌、真菌(単細胞と多細胞の両方)、ウイルス、プリオン、細胞内寄生体、蠕虫及び免
疫応答を誘導できるその他の感染因子の成分である。
【0052】
抗原ペプチドを含む抗原は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第
6,268,411号に記載されるように、抗原提示複合体の抗原結合クレフトに能動的
にまたは受動的に結合することができる。場合により抗原ペプチドはペプチド結合クレフ
トに共有結合することができる。
【0053】
必要に応じて、ペプチドテザーを使用して抗原ペプチドをペプチド結合クレフトに結合
することができる。例えば、複数のクラスIMHC分子の結晶学的解析は、β2Mのアミ
ノ末端が、MHCペプチド結合クレフト内に存在する抗原ペプチドのカルボキシル末端と
非常に近接している、約20.5オングストロームの距離であることを示している。した
がって、約13アミノ酸長である比較的短いリンカー配列を使用して、ペプチドをβ2M
のアミノ末端に係留することができる。配列が適切である場合、そのペプチドはMHCの
結合溝に結合するはずである(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,268
,411号を参照)。
【0054】
いくつかの実施形態では、aAPCは、抗原特異的T細胞(ナイーブ細胞を含む)を増
殖及び活性化させる物理的特性、例えば細胞傷害性T細胞及び理想的には長期生存する記
憶T細胞を生じさせる物理的特性を有する。この開示によるナノaAPCは、とりわけ粒
度、リガンド親和性、リガンド結合の持続時間、リガンド結合の密度及び/またはクラス
ター、リガンドのサイズ及び方向、ならびに粒子表面特性に基づいて設計される。人工抗
原提示細胞(aAPC)は従来、免疫シナプスと関連して考察されており、TCR及び補
助シグナルのクラスター化が、特にナイーブT細胞において活性化に重要な役割を果たし
ていると考えられている。よって、「ラフト」すなわちリガンドのクラスターを形成する
ように設計された細胞サイズの粒子及び/またはマトリックスを使用して、この相互作用
を模倣するaAPCの作成が試みられてきたが、本ナノスケールのaAPCは、種々の実
施形態において、設計された粒度及び化学物質、T細胞リガンド、リガンド配向、リガン
ド密度及びリガンド比を有するナノサイズ粒子によって生体系を模倣する。
【0055】
いくつかの実施形態では、抗原提示複合体と共刺激シグナルが、PEGコポリマーの末
端(例えば、粒子表面に向かって外側に面する末端)に表面官能基を有するPLGA/P
LGA-PEG粒子またはPLA/PLA-PEG粒子、例えば親水性の外側表面に化学
結合のための官能基が設けられたPLGA-PEGマレイミド粒子またはPLA-PEG
マレイミド粒子にコンジュゲートされている。いくつかの実施形態では、aAPCは、血
液/リンパ交換によるリンパ節への輸送を含む、標的組織への分布を可能にする程度に長
く末梢血液循環中に存続する。シェルの組成もまた、生体内分布に影響を与え得る。した
がって、種々の実施形態において、粒子はコポリマーのPEG部分によって形成できる親
水性のシェルを有する。種々の実施形態において、粒子の電荷は、例えば、PLGAまた
はPLA上のCOOH基の組み合わせによって、ならびに粒子表面に結合した標的リガン
ドによって与えられる電荷によって、わずかに負となる。実施形態によっては、粒子(コ
ジュゲートされたリガンドの有無を問わない)は約0~-20mVの表面電荷を有し、実
施形態によっては、-5~-15mV、すなわち約-5~約-10mVの表面電荷を有す
る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子のサイズ及び表面特性は、T細胞による内在化が
可能であるようなものである。
【0056】
PLGA-PEGコポリマーを含んでいるナノ粒子は、例えば米国特許第8,420,
123号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
粒子は、形状が不規則であるものから球状のものまで、及び/または表面が凹凸すなわ
ち不規則であるものから、滑らかなものまで様々であり得る。球状粒子は、不規則なサイ
ズの粒子よりも小さい表面積を有する。球状粒子を使用する場合、表面積の減少により、
必要な試薬が少なくなる。一方、不規則な形状の粒子は、球状粒子よりも相当大きな表面
積を有し、表面積及び細胞との接触表面積当たりのコンジュゲートされるタンパク質含量
の点で有利となる。例えば、非対称なナノ粒子は、以下の範囲のいずれかである、少なく
とも1つの軸に沿った曲率半径を有する少なくとも1つの表面を有し得る:(a)約1n
m~約10nm;(b)約11nm~約100nm;(c)約101nm~約400nm
;(D)約401nm~約1μm;(e)約10μm~約20μm;(f)約20μm~
約100μm;及び(g)約101μm~約1mm。いくつかの実施形態では、非対称な
ナノ粒子は、(a)x軸に沿った寸法、(b)y軸に沿った寸法、及び(c)z軸に沿っ
た寸法によって規定され、この場合の(a)、(b)または(c)の少なくとも1つが、
少なくとも1つの他の寸法(a)、(b)または(c)と等しくない、非対称な形状を有
することができる。いくつかの実施形態では、非対称な形状は、以下の式のいずれかによ
って記述することができる楕円体である:a>b=c(長楕円体);a>b>c(三軸楕
円体);及び、a=b>c(扁平楕円体)。本発明に従って使用することができる非対称
ナノ粒子は、WO2013/086500に記載されており、その全体が参照により本明
細書に組み込まれる。
【0058】
種々の実施形態において、粒径は直径20~500nm、すなわち直径50~500n
m(平均直径)の範囲内である。いくつかの実施形態では、粒子は腫瘍組織を含む組織の
良好な末梢血液循環及び浸透が可能であるように、約400nm未満、または約300n
m未満、または約200nm未満の平均サイズを有する。いくつかの実施形態では、ナノ
粒子は、約50nm~約200nm、または約100nm~約200nm、例えば120
nm~約180nm、または約50nm~約100nmの平均サイズ(例えば、直径また
は最長軸)を有する。用語「約」は、数値的特徴に関連する場合、±10%を意味する。
いくつかの実施形態では、少なくとも90%の粒子は、約120~約180nmの範囲内
、または約40nm~約110nmの範囲内である粒子は、好ましくは上記の平均粒子サ
イズで、サイズが均一であっても、またはサイズが変化してもよい。いくつかの実施形態
では、粒子は、「EPR効果」(Enhanced permeability and
retention effect:血管透過性・滞留性亢進効果)を利用するのに十
分に小さい。
【0059】
本明細書に記載するリガンド及び分子複合体は、利用可能ないずれかの工程を使用して
、化学的にビーズにコンジュゲートすることができる。リガンド結合のための官能基とし
ては、PEG-COOH、PEG-NH2、PEG-SH、PEG-マレイミド、PEG
-ピリジルジスルフィド及びPEGアクリレートが挙げられる。例えば、Hermans
on,BlOCONJUGATE TECHNIQUES,Academic Pres
s,New York,1996を参照のこと。活性化官能基としては、ハロゲン化アル
キル及びハロゲン化アシル、アミン、スルフヒドリル、アルデヒド、不飽和結合、ヒドラ
ジド、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、アジド、アルキン誘導体、無水物
、エポキシド、カーボネート、アミノキシ、フラン誘導体、ならびに化学結合を活性化さ
せる他の既知の基が挙げられる。あるいは、小分子カップリング試薬の使用により、分子
を固体支持体に結合することができる。カップリング試薬の非限定的な例としては、カル
ボジイミド、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビスクロロエチルア
ミン、グルタルアルデヒドなどの二官能性アルデヒド、無水物等が挙げられる。他の実施
形態では、当技術分野において周知であるように、親和性結合、例えばビオチン-ストレ
プトアビジン結合またはカップリングによって、分子を固体支持体と結合することができ
る。例えば、ストレプトアビジンを共有結合または非共有結合により固体支持体に結合す
ることができ、ビオチン化分子は当技術分野で周知である方法を使用して合成することが
できる。
【0060】
活性化化学物質により、固体支持体表面への分子の特異的、安定的な結合が可能である
。タンパク質と官能基との結合に使用できる方法は数多く存在する。例えば、一般的な架
橋剤グルタルアルデヒドを使用して、2段階の工程でタンパク質アミン基をアミン化され
る固体支持体表面に結合することができる。得られた結合は加水分解的に安定である。他
の方法としては、タンパク質上のアミンと反応するn-ヒドロ-スクシンイミド(NHS
)エステルを含んでいる架橋剤、アミン、スルフヒドリルまたはヒスチジン含有タンパク
質と反応する活性ハロゲンを含んでいる架橋剤、アミン基またはスルフヒドリル基と反応
するエポキシドを含んでいる架橋剤、マレイミド基とスルフヒドリル基とのコンジュゲー
ト、及び糖ペンダント部分の過ヨウ素酸酸化に続く還元アミノ化によるタンパク質アルデ
ヒド基の形成を用いることが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、粒子またはビーズは、コアポリマーとしてのPLGA、PL
GA-PEG-マレイミド、及びエステルでエンドキャップされたPLGA-PEGを含
むポリマーである。あるいは粒子またはビーズは、コアポリマーとしてのPLA、PLA
-PEG-マレイミド、及びエステルでエンドキャップされたPLA-PEGを含む。マ
レイミド基により、形成された粒子に粒子外側表面への親水性「ステルス」コーティング
(PEG)、ならびにこのシェルと結合される官能基が得られ、利用可能な少なくとも1
つの遊離スルフヒドリル(-SH)基を有するリガンドの共有結合に使用することができ
る。例えば、FcにS473C置換を含むヒトIgG4フレームワーク(本明細書に記載
)上に、HLA-Igリガンド及び/または抗CD28(または、他の抗体リガンド)を
構築することができる。HLA-Igまたは抗CD28のいずれかの473位にある、こ
の不対システイン残基を穏やかな還元条件下で、PEGに結合されたマレイミド基とコン
ジュゲートすることができる。穏やかな還元条件下では、タンパク質、特にHLA-Ig
分子のHLA-ベータ-2-ミクログロブリン部分が不可逆的に変性する可能性は低い。
【0062】
例示的実施形態では、ナノ粒子は、(LA:GA比及び/またはPLGAポリマーの分
子量を調節することにより)in vivoでの特定の生分解速度に応じて調整できるコ
ア(PLGA)と、血清タンパク質によるオプソニン化及び循環からの排除から保護する
親水性外側シェル(「PEGブラシ」に類似した作用)と、リガンド密度の一貫した制御
(1分子/マレイミド基の確率論的関係)及びコアからひろく広がるリガンド配向によっ
て官能化された表面とを有する。例示的実施形態では、PLGAは20:1~1:20の
LA:GA比を基準とし、5/95、10/90、15/85、20/80、25/75
、30/70、35/65、40/60、45/55、50/50、55/45、60/
40、65/35、70/30、75/25、80/20、85/15、90/10また
は95/5のL/G組成を含む。PLGAは、そのエステル結合の加水分解によって分解
する。PLGA分解の所要時間は、モノマー比と関連性があり、グリコリド単位の含量が
高いほど、ラクチド主体の単位と比較して分解の所要時間は減少する。加えて、(遊離カ
ルボン酸とは対照的に)エステルでエンドキャップされたポリマーは、分解半減期が長く
なる。
【0063】
いくつかの実施形態では、PLGAは4:1~1:4のLA:GA比を基にし、いくつ
かの実施形態では、約1:1である。いくつかの実施形態では、PLGAのコアは、約2
0K~約50K、または約30K~約40K(例えば、約35K)の分子量を有する。P
LGA-PEGポリマー(PLGA-PEG-マレイミド及びPLGA-PEG-MeO
Hポリマーを含む)は、分子量10K~30Kの範囲内(例えば、約20K)のPLGA
部分と、分子量約2K~約10K、例えば約3K及び/または約5KのPEG部分を有す
る。種々の実施形態において、PLGA-PEG-マレイミドとPLGA-PEG-Me
OHポリマーの質量比は、約15:1~約1:15、例えば約10:1~約1:10また
は約5:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、PLGA-PEG-マレイミド
とPLGA-PEG-MeOHポリマーの比は、4:1~約1:4、例えば約4:1、約
3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3及び約1:4である。尚も更なる実施
形態では、PLGA-PEG-マレイミドとPLGA-PEG-MeOHの質量比は、1
:5~約1:15、例えば約1:10の範囲内である。実施形態によっては、T細胞の活
性化に最適であるリガンド密度に微調整されるように、この比率を選択する。
【0064】
いくつかの実施形態では、粒子はPLAポリマーを基にする。いくつかの実施形態では
、PLAのコアポリマーは、約20K~約50K、または約30K~約40K(例えば、
約35K)の分子量を有する。PLA-PEGポリマー(PLA-PEG-マレイミド及
びPLA-PEG-MeOHポリマーを含む)は、分子量10K~30Kの範囲内(例え
ば、約20K)のPLA部分と、分子量約2K~約10K、例えば約3K及び/または約
5KのPEG部分を有する。種々の実施形態において、PLA-PEG-マレイミドとP
LA-PEG-MeOHポリマーの質量比は、約15:1~約1:15、例えば約10:
1~約1:10または約5:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、PLA-P
EG-マレイミドとPLA-PEG-MeOHポリマーの比は、4:1~約1:4、例え
ば約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3及び約1:4である。
尚も更なる実施形態では、PLA-PEG-マレイミドとPLA-PEG-MeOHの質
量比は、1:5~約1:15、例えば約1:10の範囲内である。いくつかの実施形態で
は、T細胞の活性化に最適であるリガンド密度に微調整されるように、この比率を選択す
る。
【0065】
この粒子上の個々のタンパク質の比率を変更することができる。例えば、抗原提示複合
体と抗CD28の比率は、少なくとも約30:1、または少なくとも約10:1、約3:
1、約1:1、約1:3、約1:10、または少なくとも約1:30であり得る。いくつ
かの実施形態では、比率は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1
:2、約1:3、約1:4、または約1:5である。粒子に結合されたタンパク質の総量
は、1~約100μg、または約1~約50μg、または粒子1mg当たり1~約10μ
g、またはいくつかの実施形態では、粒子1mg当たり2~6μgであり得る。いくつか
の実施形態では、粒子のリガンド密度は、約103~約105リガンド/μm2または約
104リガンド/μm2である。例えば、サイズが20~200nmの範囲のナノ粒子の
場合、ナノ粒子は、平均して粒子当たり約5~約1500個のリガンド、例えば、粒子当
たり約10~約1500個のリガンド、または粒子当たり約10~約1200個のリガン
ド、または粒子当たり約10~約1000個のリガンド、または粒子当たり約10~約8
00個のリガンドを有する。いくつかの実施形態では、粒子は、粒子当たり少なくとも約
500個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約400個のリガンド、または粒子当
たり少なくとも約300個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約100個のリガン
ド、または粒子当たり少なくとも約90個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約8
0個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約70個のリガンド、または粒子当たり少
なくとも約60個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約50個のリガンド、または
粒子当たり少なくとも約40個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約30個のリガ
ンド、または粒子当たり少なくとも約20個のリガンド、または粒子当たり少なくとも約
10個のリガンド、いくつかの実施形態では最小でも粒子当たり約5個のリガンドを含む
。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、シグナル1及びシグナル2としての最小構築物(
例えば、シグナル1としては、場合によりヒンジ領域のすぐ上でIg配列に融合すること
により二量体化される、β2ミクログロブリンを結合した単一遺伝子性クラスIアルファ
鎖、及びシグナル2としては、記載されるscFv)を用いることにより、自己集合性ナ
ノ粒子としての可能性をもたらす。例えば、PLGA-PEGまたはPLA-PEGポリ
マーをコンジュゲートするリガンドとともに調製し(例えば、PLGA-PEG-シグナ
ル1及びPLGA-PEG-シグナル2)、次いでPLGAまたはPLAを特定のポリマ
ー比で混合してからナノ析出させることにより、混合/析出ステップ中にNPの最終製品
が形成される(自己集合)。このような工程は、製造手順を大幅に簡素化することができ
る。
【0067】
種々の実施形態において、本発明は、ポリマービーズまたは粒子、本明細書に記載する
抗CD28抗体、及び/または抗原提示複合体、例えば本明細書に記載するヒト化Ig
HLA融合複合体を含んでいる医薬組成物を提供する。医薬組成物は更に、記載されるT
細胞に提示する抗原ペプチドを含んでもよく、これをコンジュゲートするビーズまたは粒
子とともに合剤化してもよい。種々の実施形態において、医薬組成物は貯蔵安定性であり
、実施形態によっては投与前に再構成される凍結乾燥形態で提供されるか、または別の「
既製」医薬製剤として提供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、直径または平均直径が50~200nm(例えば
、100~200nm)であるPLGA/PLGA-PEG系ナノ粒子またはPLA/P
LA-PEG系ナノ粒子を含み、かつ表面にコンジュゲートされた抗CD28抗体及び抗
原提示複合体含んでいる医薬組成物を提供する。抗CD28抗体は、ヒト化抗体、例えば
本明細書に記載するものであってよく、抗体断片、例えば一本鎖可変断片であってもよい
。いくつかの実施形態では、抗原提示複合体は、少なくとも1つのHLA抗原結合クレフ
トを含む。抗CD28とHLA複合体は、同一反応で個別にまたは一緒に粒子と結合する
ことができる。医薬組成物は、少なくとも1つのペプチド抗原、例えば腫瘍抗原(例えば
、MART-1または本明細書に記載する他の抗原)を含むことができ、更にこれをいか
なる活性負荷工程も必要とせずに、粒子と合剤化することができる。
【0069】
本明細書に記載するナノaAPCプラットフォームに関連して使用できる代替的ポリマ
ーには、シクロデキストリン含有ポリマー、カチオン性シクロデキストリン含有ポリマー
、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(P
CL)、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(L-
乳酸)(PLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸-コ-グリコー
ル酸)(PLLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLA)、ポリ(L-ラクチド)
(PLLA)、PLGA-b-ポリ(エチレングリコール)-PLGA(PLGA-bP
EG-PLGA)、PLLA-bPEG-PLLA、PLGA-PEG-マレイミド(P
LGA-PEG-mal)、PLA-PEG-マレイミド、ポリ(D,L-ラクチド-コ
-カプロラクトン)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-カプロラクトン-コ-グリコリド)
、ポリ(D,L-ラクチド-コ-PEO~コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラク
チド-コ-PPO-コ-D,L-ラクチド)、ポリアルキルシアノアクラレート(cya
noacralate)、ポリウレタン、ポリ-L-リジン(PLL)、ヒドロキシプロ
ピルメタクリレート(HPMA)、ポリエチレングリコール、ポリ-L-グルタミン酸、
ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(エステルアミド)、ポ
リアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えばポリ
エチレン及びポリプロピレン)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリアル
キレングリコール、ポリアルキレンオキシド(PEO)、ポリ(エチレンテレフタレート
)のようなポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニ
ルエーテル、ポリ(酢酸ビニル)などのポリビニルエステル、ポリ(塩化ビニル)(PV
C)などのポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリスチレン
(PS)、ポリウレタン、アルキルセルロースなどの誘導体化セルロース、ヒドロキシア
ルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、ヒド
ロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸のポリマー、例え
ばポリメチルメタクリレート)(P MA)、
ポリ(エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ブチル(メタ)アクリレート、ポリ(イソ
ブチル(メタ)アクリレート、ポリ(ヘキシル(メタ)アクリレート、ポリ(イソデシル
(メタ)アクリレート、ポリ(ラウリル(メタ)アクリレート、ポリ(フェニル(メタ)
アクリレート、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ
(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)(ポリアクリル酸)、
及びそれらのコポリマー及び混合物、ポリジオキサノンとそのコポリマー、ポリヒドロキ
シアルカノエート、ポリプロピレンフマレート)、ポリオキシメチレン、ポロキサマー、
ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロ
ラクトン)、トリメチレンカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリオルトエステル、
ポリホスファゼン及びポリホスホエステル、そのデンドリマー及び誘導体、ならびに2つ
以上のこのようなポリマーの混合物及び/またはブロックコポリマーのうち1つ以上を含
む。
【0070】
本明細書に記載する医薬組成物は、免疫療法、例えば、必要とする患者に有効量の組成
物を投与することによって、抗原特異的な細胞傷害性T細胞の形成を誘導する方法に有用
である。いくつかの実施形態では、患者は癌患者である。
【0071】
本明細書に記載する粒子ベースの抗原提示プラットフォームは、静脈内投与、動脈内投
与、皮下投与、皮内投与、リンパ内投与及び腫瘍内投与を含む、いずれかの適切な経路に
よって患者に投与することができる。患者には、ヒト及び動物いずれの患者も含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明は、約20~200nm(例えば、いくつかの実施形
態では50~200nmまたは100~200nm)の範囲内のサイズ、約-0~-20
mV(及びいくつかの実施形態では-5~-10mV)の表面電荷を有する、PLGA/
PLGA-PEGポリマー粒子またはPLA/PLA-PEGポリマー粒子と、粒子当た
り約10~1500個のタンパク質リガンド、または粒子当たり10~約150個のリガ
ンド(例えば、粒子当たり約10~約100個のリガンド)とを含む医薬組成物を提供す
る。例示的な粒子は、0.3以下の多分散指数(PDI)を有する。いくつかの実施形態
では、タンパク質リガンドはそれぞれ、スルフヒドリル-マレイミドの化学作用により粒
子と結合される。リガンドは、抗CD28抗体リガンドの集団及びHLAリガンドの集団
、ならびにT細胞に提示される1種以上の抗原ペプチドを含む。組成物は、静脈内、動脈
内、皮下、皮内、リンパ内、または腫瘍内投与のための薬学的に許容される担体を含む。
いくつかの実施形態では、組成物は皮下投与用に製剤化される。
【0073】
特に、抗原提示プラットフォームは、感染性疾患、癌、もしくは自己免疫疾患を有する
患者の治療、または免疫抑制患者への予防的保護の提供に有用であり得る。
【0074】
治療可能な感染性疾患としては、細菌、ウイルス、プリオン、真菌、寄生体、蠕虫等を
原因とするものが挙げられる。このような疾患としては、AIDS、肝炎、CMV感染症
及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)が挙げられる。CMVは、例えば、臓器移植患
者に見られる最も一般的なウイルス性病原体であり、骨髄移植または末梢血幹細胞移植を
受けた患者の罹患及び死亡の主因である(Zaia,Hematol.Oncol.Cl
in.North Am.4,603-23,1990)。これは、こうした患者の免疫
不全状態に起因しており、血清陽性患者においては潜伏ウイルスの再活性化を、または血
清陰性の個人においては日和見感染をもたらす。現在の治療は、ガンシクロビルのような
抗ウイルス化合物の使用が中心である。この治療には欠点があり、最も顕著なものが薬剤
耐性CMVの発現である。この治療に代わる有用な方法は予防的な免疫療法レジメンであ
り、これには移植処置の開始前に、患者または該当するドナー由来のウイルス特異的CT
Lの生成を必要とする。
【0075】
PTLDは、移植患者に相当な割合で発生し、エプスタイン・バールウィルス(EBV
)感染から生じる。EBV感染は、米国の成人人口の約90%に存在すると考えられてい
る(Anagnostopoulos&Hummel,Histopathology
29,291-2)15,1996)。活性ウイルスの複製及び感染は、免疫系によって
抑制されるが、CMVの場合のように、移植療法により免疫不全となった個人は制御性T
細胞集団を失い、ウイルスの再活性化が可能になる。これは、移植プロトコルにとって重
大な障害となる。EBVはまた、種々の血液癌及び非血液癌における腫瘍促進にも関与し
得る。また、EBVと鼻咽頭癌との間には強い相関性がある。したがって、EBV特異的
T細胞による予防的治療は、現在の療法に代わる優れた方法を提供する。
【0076】
本発明に従って治療できる癌としては、黒色腫、癌腫、例えば、大腸癌、頭頸部癌、十
二指腸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、乳管癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、
子宮内膜癌、胃癌、異形成口腔粘膜、ポリープ症、浸潤性口腔癌、非小細胞肺癌、転移性
及び扁平上皮細胞泌尿器癌など;神経系悪性腫瘍、例えば神経芽細胞腫、神経膠腫など;
血液悪性腫瘍、例えば慢性骨髄性白血病、小児急性白血病、非ホジキンリンパ腫、慢性リ
ンパ性白血病、悪性皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、非MF皮膚T細胞リンパ腫、リン
パ腫様丘疹症、T細胞豊富型皮膚リンパ組織過形成、水疱性天疱瘡、円板状エリテマトー
デス、扁平苔癬など;等が挙げられる。例えば、Mackensen et al,In
t.J.Cancer 86,385-92,2000;Jonuleit et al
.,Int.J.Cancer 93,243-51,2001;Lan et al.
,J.Immunotherapy 24,66-78,2001;Meidenbau
er et al,J.Immunol.170(4),2161-69,2003を参
照のこと。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗腫瘍活性を有するT細胞を活性化するための本
明細書に記載の医薬組成物の投与によって、上記に示した癌を含む、癌を治療する方法を
提供する。いくつかの実施形態では、療法は、1種以上の免疫チェックポイント阻害剤、
例えばニボルマブ、ペムブロリズマブ及びイピリムマブとともに与えられる。いくつかの
実施形態では、付加的療法は、抗CTLA4もしくは抗PD1、または抗PD-L1であ
る。付加的療法またはチェックポイント阻害剤は、その従来的なレジメンに沿って個別に
投与しても、または本明細書に記載するナノ粒子への、もしくは別のナノ粒子集団に結合
された、追加のリガンドとして投与してもよい。いくつかの実施形態では、初期療法とし
て1種以上の免疫チェックポイント阻害剤を与え、その後、例えば、チェックポイント阻
害剤療法の約1~約8週間後、またはチェックポイント阻害剤療法の約2~約4週間後に
、本明細書に記載するaAPCによる療法を開始する。いくつかの実施形態では、1種以
上のチェックポイント阻害剤をナノ粒子療法と同時に与え、例えば、療法の開始時と約2
週間毎に、または療法の開始時と1種以上のチェックポイント阻害剤については約2週間
毎に、及びナノ粒子療法については約4週間毎に与える。いくつかの実施形態では、患者
は、チェックポイント阻害剤療法に対して耐性であるか、または部分的応答もしくは一過
性応答のみを示し、本明細書に記載するaAPCは、このような患者における腫瘍退縮を
増強する。更に他の実施形態では、通常はチェックポイント阻害剤療法に耐性のある癌に
対して、本明細書に記載する組成物は、このような癌へのチェックポイント阻害剤使用の
奏功性を高める。
【0078】
いくつかの実施形態では、ペプチド抗原は、患者の腫瘍の分析に基づいて、患者に応じ
て個別化した基準で選択される。例えば、Ionov Y.,A high throu
ghput method for identifying personalize
d tumor-associated antigens,Oncotarget 1
(2):148-155(2010)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方
法、または他の方法を使用することができる。これらの実施形態では、ナノ粒子を(「既
製」方式で)提供し、腫瘍抗原を個別化した基準で選択して充填することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、ナノaAPCは、患者由来のナイーブT細胞またはHLA一
致ドナー由来のT細胞をex vivoで増殖させて患者に投与するT細胞養子免疫療法
後に、ブースターワクチンとして使用される。このような実施形態において、ナノaAP
C組成物を4か月~約1年の期間にわたって1~約10回、投与し、癌免疫を増強するこ
とができる。
【0080】
治療可能な自己免疫疾患としては、喘息、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、I
型糖尿病、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、重症筋無力症、グッドパス
チャー症候群、グレーブス病、尋常天疱瘡、アジソン病、疱疹状皮膚炎、セリアック病及
び橋本甲状腺炎が挙げられる。
【0081】
抗原特異的ヘルパーT細胞は、マクロファージの活性化、または例えば、感染性疾患及
び癌の治療に使用することができる特異的な抗体を産生するB細胞の活性化に使用するこ
とができる。抗体産生B細胞自体を、この目的のために使用することもできる。
【0082】
本発明は更に、ポリヌクレオチドをコードする、本明細書に記載するアミノ酸配列、な
らびにそれを発現する宿主細胞を提供する。
【0083】
以降の非限定的な実施例によって、本発明を更に例示する。
【実施例0084】
実施例1:生殖細胞系列ヒト化可変領域及びヒト定常領域配列の設計
本実施例では、特に、マウス抗CD28抗体のテンプレート由来の生殖細胞系列ヒト化
(CDR移植)抗体の配列設計;S241P(Kabat番号付け)ヒンジ安定化突然変
異、残存するFcガンマ受容体結合を除去するためのL248E(Kabat番号付け)
突然変異、及び抗体の結合に適したCys残基(S473C、Kabat番号付け)を含
有するヒトIgG4を含むヒト定常領域配列の設計;CD28と結合する可能性がない変
異体生殖細胞系列ヒト化抗体のVドメインの設計;潜在的なT細胞エピトープを含まない
生殖細胞系列ヒト化抗体のN末端にHLA-A*02:01を融合するためのリンカー配
列の設計について示す。
【0085】
出発抗CD28抗体は、マウス9.3モノクローナル抗体(Tan et al..J
.Exp.Med.1993 177:165)であった。スイスのPDBを利用して9
.3抗体のV領域の構造モデルを作製し、抗体の結合特性に不可欠である可能性が高いV
領域内のアミノ酸を特定するために解析した。いくつかのフレームワーク残基に加え、C
DR(KabatとChothia両方の定義を使用)内に含まれるすべての残基を検討
し、結合に対して見込まれる重要度を決定した。抗CD28のVH及びVκ配列はいずれ
も、通常、フレームワーク(FW)残基を含み、またCDR1、2及び3のモチーフは多
くのマウス抗体と同等である。
【0086】
ヒト化には、重鎖のテンプレートとして、(Tan et al.J.Immunol
2002 169:1119-1125によって選択されたIGHV3/OR16-1
0よりむしろ)ヒトIGHV4-59生殖細胞系列FWを選択した。軽鎖のテンプレート
としてIGKV4-01生殖細胞系列FWを選択した。このFWはいずれも、それぞれの
マウスVH及びVκ配列と62%の相同性を有する。マウスCDRをこれらのFWに移植
し、また様々な数のマウスFW残基を加え、3種のヒト化VH変異体及び3種のヒト化V
κ変異体を作製した(
図1~6)。
【0087】
重鎖FWでは、FW1残基1及び3が、結合ポケットに隣接しているため、結合抗原に
重要であると考えられ、一方、残基6はベータ鎖を支持する残基1及び3両方のコンフォ
メーション及びCDR3のコンフォメーションに影響すると考えられた。したがって、す
べての変異体において、このマウスFW残基を維持した。
【0088】
FW2では、残基37がVHとVκ間の相互接続を維持するために重要であると考えら
れ、一方、残基48がCDR2のコンフォメーションを支持すると考えられた。したがっ
て、すべての変異体において、これら両方の残基を維持した。
【0089】
FW3では、残基73、76及び78がCDR1と直接接触する一方、残基71がCD
R1とCDR2の両方に接触している。したがって、これらの残基は抗原結合に必要であ
る可能性が高く(CDR1とCDR2の関与次第)、よってすべての変異体で維持した。
残基71は、残基71~78のコンフォメーションに影響を与えることによりCDR1の
コンフォメーションに間接的に影響を与え得る場合があり、一方、残基82aと82cも
また、CDR2のコンフォメーションに間接的に影響を与え得る。したがって、VH1に
おいてのみ、これらの残基を維持した。残基67と82は3次元構造内で隣接しており、
空間を充填するように相互作用して、CDR2のコンフォメーションに影響を与え、CD
R1及び3を支持するベータ鎖に潜在的に影響を与え得る。したがって、変異体VH1及
びVH2において、これらの残基を維持した。
【0090】
軽鎖FWでは、FW1の残基3が結合ポケットに隣接しており、抗原結合に直接関与す
る可能性があり、同時に残基4がCDR3のコンフォメーションを直接支持している。し
たがって、すべての変異体において、このマウスFW残基を維持した。
【0091】
FW2では、残基49がCDR2のコンフォメーションを支持し、また重鎖CDR3の
コンフォメーションを直接支持している重鎖と軽鎖間の相互接続においても重要であるた
め、すべての変異体でこの残基を維持した。
【0092】
FW3では、残基85及び87が、重鎖と軽鎖間の相互接続にとって重要であり、また
CDR3のコンフォメーションも支持していると考えられるため、すべての変異体でこの
残基を維持した。残基80は、CDR2及び3のコンフォメーションに間接的な影響を及
ぼす可能性があると考えられ、Vκ1でのみ維持した。残基70は一般に、軽鎖残基R2
4と塩橋を形成し、それによってVκドメインに対して重要なコンフォメーション上の影
響を及ぼす。抗CD28では、(残基70がDではなくNであるため)この塩橋は存在せ
ず、この相互作用を導入することは不利になる可能性がある。しかしながら、マウス抗体
のN70はグリコシル化(NFS)されており、ヒト化する際に、これを除去する方が有
利である。したがって、Vκ1とVκ2ではマウスNを維持したが、Vκ3ではDに変更
した。
【0093】
ヒンジ安定化突然変異(S241P)及び残存するFcガンマ受容体結合(L248E
)を除去するヒンジ下方の突然変異を組み込むように、ヒトIgG4/κに基づく定常領
域配列を設計した。化学的カップリングを目的としてFcのC末端近傍にシステイン残基
も加えた(S473C)。κ軽鎖定常領域配列(
図8)に加え、修飾されたIgG4の重
鎖定常領域配列を
図7に示す。
【0094】
CD28に結合しないことが見込まれるさらなるVHドメインを設計した。この配列を
図9に示す。マウスのV領域配列の解析は、(マウスの生殖細胞系列V領域の体細胞突然
変異の程度から)VHがCD28結合の主要因である可能性が高いことを示唆していた。
そこで、結合しないことが見込まれるヒト化VH変異体のみを設計した。この変異体は、
正確なCDRのコンフォメーションを再構築するために、マウスFW残基を全く含まず、
また結合に重要である可能性が高い残基のCDRH3に3つの突然変異を含んでいる(Y
100A、Y100aA、Y100bA)。
【0095】
実施例2:ヒト化抗体とHLA-A*02:01を融合するリンカーの設計
ヒト化抗CD28抗体のN末端にHLA-A*02:01(IMGTアクセッション番
号HLA00005)を融合するリンカーを構築し、潜在的な免疫原性を排除するために
iTope(商標)及びTCED(商標)による分析を取り入れた。
【0096】
iTope(商標)ソフトウェアは、34個のヒトMHCクラスII対立遺伝子の開放
型結合溝内の特異的結合ポケット(特にポケット位置;p1、p4、p6、p7及びp9
)と、ペプチドのアミノ酸側鎖との間の有利な相互作用を予測する。これらの対立遺伝子
は、世界的に見られる最も一般的なHLA-DR対立遺伝子を代表するものであり、何ら
かの特定の民族集団で最も優勢である対立遺伝子に起因する重み付けはしていない。20
個の対立遺伝子は「開状態」のp1構成を含み、14個は83位のグリシンがバリンで置
換されている「閉状態」の構成を含む。重要な結合残基の配置は、試験用タンパク質配列
にわたって1個のアミノ酸だけが重複する9量体ペプチドをin silico生成して
達成する。物理的なMHCクラスII結合実験と比較して、iTope(商標)を使用す
ると、MHCクラスII分子に結合するペプチドと結合しないペプチドとを高精度で良好
に識別できることがわかっている。in silicoのMHCクラスII結合アッセイ
に限界があれば、TCED(商標)を使用して緩和する。TCEDには、EpiScre
en(商標)のex vivoT細胞エピトープマッピングアッセイで事前にスクリーニ
ングされた配列に由来するペプチド(10,000超のペプチド)の大規模データベース
配列が含まれている。よってTCED(商標)を使用すると、無関係の抗体及びタンパク
質の配列に対して、あらゆる試験配列を検索し、実際のex vivoでの免疫原性との
相関性を見出すことができる。
【0097】
iTope(商標)を使用したリンカー配列の解析は、34個のヒトMHCクラスII
対立遺伝子各々に対して試験したリンカー配列にわたって重複する9量体を用いて実施し
た。各9量体を、MHCクラスII分子との潜在的な「適合性」及び相互作用に基づいて
スコア付けした。ソフトウェアによって算出されるペプチドのスコアは0から1の間であ
る。高い平均結合スコア(iTope(商標)のスコア関数で0.55超)を得た非生殖
細胞系列ペプチドが強調表示され、50%以上のMHCクラスII結合ペプチド(すなわ
ち、34個の対立遺伝子のうち17個)が高い結合親和性(スコア0.6超)を有する場
合、このようなペプチドを「無差別な高親和性」MHCクラスII結合ペプチドと定義し
た(これは、CD4+T細胞エピトープを含むため高リスクであると考えられる)。50
%以上のMHCクラスII結合ペプチドがスコア0.55超を有する(ただし、0.6超
が過半数ではない)ペプチドは、「無差別な中親和性」MHCクラスII結合ペプチドと
定義した。配列の更なる分析はTCED(商標)を使用して実施した。先のEpiScr
een(商標)試験でT細胞応答を刺激した無関係なタンパク質から、ペプチド(T細胞
エピトープ)間の高配列相同性を同定するため、この配列を使用して、BLAST検索に
よりTCED(商標)を調べた。
【0098】
Schneck et al.によって使用された配列には、N末端シグナル配列と結
合するHLA-A
*02:01のN末端に1つ、抗CD28 VHドメインと融合される
C末端に1つ、の2つのリンカーが組み込まれていた(例えば、
図9を参照)。N末端リ
ンカーについては、シグナル配列の切断部位から、リンカーを経て、HLA-A
*02:
01成熟タンパク質の最初の8個のアミノ酸を含めた配列を分析した。C末端リンカーに
ついては、HLA-A
*02:01のα3ドメイン末端の8個のアミノ酸から、リンカー
配列を経て、抗CD28 VHドメインの最初の8個のアミノ酸までの配列を分析した。
【0099】
結合スコア0.6超(高親和性)を有するペプチドは、過半数(17以上)のMHCク
ラスII対立遺伝子と結合する(無差別の高親和性結合因子と称する)。0.55~0.
6の結合スコアを有する中親和性結合因子は、17以上のMHCクラスII対立遺伝子を
結合する。N末端リンカーは、1つは高親和性(2位にp1アンカーを有する)及び1つ
は中親和性(4位にp1アンカーを有する)である、2つの無差別なMHCクラスII結
合配列を含むことが見出された。C末端リンカーは、11位にp1アンカーを有する1つ
の無差別な中親和性のMHCクラスII結合ペプチドを含むことが見出された。
【0100】
iTope(商標)分析で使用したものと同じ配列を使用して、AntitopeのT
細胞エピトープデータベース(TCED(商標))のBLAST検索を実施し、先に特定
したエピトープとの相同性を判定した。TCED(商標)を使用して、EpiScree
n(商標)T細胞エピトープマッピングアッセイで試験した無関係の配列由来のペプチド
の大規模データベース(10,000超のペプチド)に対して、あらゆる試験配列を検索
した。リンカー配列のいずれにも、TCED(商標)で何の「ヒット」も含まないことが
わかった。
【0101】
MHCクラスIIへの結合性を低減させるために、更にiTope(商標)を使用して
、リンカーへの配列変化を評価した。HLA-A
*02:01のN末端が、pBFKsr
ベクターに設けられたシグナル配列またはその天然のシグナル配列のいずれかに直接融合
されるように、N末端リンカーを完全に除去できたことが確認された。これにより、融合
タンパク質のN末端がヒト生殖細胞系列配列のみを含み、T細胞エピトープのリスクを回
避できることが保証されたことになる。以下の推奨リンカー配列は、MHCクラスII結
合をバックグラウンド残存レベル(9量体のいずれかが結合した対立遺伝子が5未満)に
低減し、クローニングに適した制限部位をもたらすことが見出された(ただし、いずれの
配列もベクターの修飾を必要とする)。
【表1】
【0102】
実施例3:配列のコドン最適化及び発現クローニング
GeneOptimizer(登録商標)を使用してコドンを最適化し、最適化した配
列を以下に示すようにクローニングして発現させた。
【0103】
PmeI制限部位、コザック配列、及びシグナルペプチドを用いて配列を遺伝子操作し
、NS0細胞中で発現させた。翻訳はコザック配列のすぐ下流で開始する。
【0104】
HLA-IgG4HC融合体の完全翻訳したアミノ酸配列を
図10に示す。
【0105】
LC3(Vκ3)の翻訳配列を
図11に示す。抗CD28
【0106】
【0107】
【0108】
ヒトβ2ミクログロブリンも発現させた。
【0109】
実施例4:NS0細胞中での発現
Biacore親和性データ及びその他の考察に基づいて、HC1::LC3及びHC
2::LC3の重鎖と軽鎖の組み合わせを、それぞれ第1及び第2のmAb候補として選
抜し、StableFast-NS0細胞株を作製した。
【0110】
STABLEFAST-NS0細胞株を生成するためのpBFksr::HC1::L
C3バイシストロニック発現ベクターの最終的なベクターマップを
図14に示す。同じ手
法を用いて、pBFksr::HC2::LC3の構築を行った。
【0111】
親NS0細胞を、無血清増殖培地を補充して拡大培養した。健全な培養を確立して、1
000万個の細胞(10x106)を45μgの線形(ΔPvuI)発現ベクターDNA
を用いてトランスフェクトした。増殖培地のバルク中で24時間、細胞を回復させた。回
復後、補充した無血清選択培地(コレステロール)中で細胞を洗浄し、選択培地で再懸濁
して、40x96ウェルプレートにウェル当たり200μLずつ分配した。実際の分配は
、HC1::LC3が1140細胞/ウェル、及びHC2::LC3が840細胞/ウェ
ルであった。プレートを37℃、5%CO2で1週間インキュベートし、フェノールレッ
ドを補充した選択培地を加えた。トランスフェクション後2週間で、多数のウェルが活発
に成長していくにつれて、培地の色が赤色から黄色へと変化した。
【0112】
HC1::LC3トランスフェクションから、合計1,127のウェルをELISA法
によりスクリーニングして、ヒトIgGの発現を検出した。HC2::LC3トランスフ
ェクションからは、合計612のウェルをスクリーニングした。IgGの濃度に基づいて
、それぞれ総量290及び101の細胞株を、HC1::LC3用とHC2::LC3用
の24ウェルプレートにスケールアップした。更なる分析のため、24時間の生産能アッ
セイを利用して最善な発現体を選別した。簡潔には、500μLの新鮮な培地中に5x1
05細胞となるように24ウェルプレートに播種した。24時間後、上清をELISA法
によりスクリーニングした。IgGの濃度に基づいて、それぞれ総量60及び24の細胞
株を、HC1::LC3用とHC2::LC3用の6ウェルプレートにスケールアップし
た。
【0113】
更なる分析のため、3日間の比生産能アッセイを利用して最善な発現体を選別した。簡
潔には、1.5mLの新鮮な培地中に4x105細胞となるように6ウェルプレートに播
種した。3日後、細胞を計数して、上清をELISA法によりスクリーニングした。Ig
Gの濃度及び成長に基づいて、平均の比生産速度すなわちSPRをpg/細胞/日で算出
することができる。相対的SPRに基づいて、それぞれ総量20及び10の細胞株を、H
C1::LC3用とHC2::LC3用のT-75フラスコにスケールアップした。3日
間のSPRアッセイをT-75スケールで繰り返し、浮遊適応である最終細胞株を選別し
て、mAbを産生するためスケールアップした。
【0114】
mAbごとに5つの細胞株を30mLのシェーカー培養にスケールアップし、SPRと
成長について再評価した。浮遊株をすべて堆積させた。mAbごとに最善に作用する細胞
株を小規模生産のため撹拌培養にスケール変更した。
【0115】
HLA-IgG4融合タンパク質の場合、pBFksr::HLA-IgG4::LC
3バイシストロニック発現ベクターを構築し、STABLEFAST-NS0細胞株を生
成した。ベクターマップを
図15に示す。また、3つすべての融合タンパク質サブユニッ
ト(ヒトHLA-IgG4重鎖融合体、CD28軽鎖[LC3]、及びヒトβ2ミクログ
ロブリン)をコードするトリシストロニック発現ベクターのため、ヒトβ2ミクログロブ
リン遺伝子を含む発現カセット及びベクターも作製した。トリシストロニック構築物を図
16に示す。上清のELISA法及びウェスタンブロット分析により、一過性のHEK2
93培養に3つすべての遺伝子の発現が確認された。
【0116】
実施例5:ヒト化リガンドの機能的性質決定
CD28に対するヒト化モノクローナル抗体が、mAbをコーティングしたプレート上
で、新たに単離したPBMCの増殖を誘導する能力について試験した。
図17に示すよう
に、ヒト化抗CD28は親と近似した機能を果たしており、スーパーアゴニストではない
。
【0117】
ヒト化モノクローナル抗体が、ヒトT細胞株上でCD28を染色する能力について試験
した。結果を
図18に示す。パネル(A)は、マウス抗ヒトCD8mAb(クローン9.
3、アイソタイプIgG2a)による染色を示している。ピークは左から右に、非染色細
胞、抗IgG2aのFITC及び抗CD28+抗IgG2aのFITCである。パネル(
B)は、ヒト化抗CD28(アイソタイプIgG4)による染色を示している。ピークは
左から右に、非染色細胞、抗IgG4のPE、抗CD28(35ng)+抗IgG4のP
E、抗CD28(1μg)+抗IgG4のPEである。ヒト化抗CD28による染色は、
クローン9.3mAbでブロックされ得る(図示せず)。
【0118】
HLA-Igの精製後、(Current protocols in Immuno
logy Chapter 17.2に記載のように)コンフォメーション依存性の抗H
LA mAbを使用して、ペプチドが負荷されたタンパク質を捕捉し、ELISA法によ
り抗原ペプチド負荷効率を確認する。非特異的ペプチドでは0%(すなわちMHCミスマ
ッチ)であるのに対して、特異的ペプチドでは約90%の再現可能な負荷効率(すなわち
正確なMHC制限)が予測される。
【0119】
実施例6:ナノ粒子の製剤化
以下の実施例は、分子量35KであるPLGA(LA:GA=1:1)から形成された
コアを有するナノ粒子の合成を示す。粒子のコロナは、PLGA-PEG-COOHまた
はPLGA-PEG-マレイミドと、PLGA-mPEG(メトキシPEG)の混合物か
らのPEGコポリマーによって形成する。COOH及びマレイミドの末端官能基により、
ポリペプチドのコンジュゲートが可能である。メトキシPEGは、PEG鎖上の末端官能
基に対して不活性である。PLGA部分は10~30K(例えば、約20K)の分子量を
有し、PEG部分の分子量は3K及び5Kである。この実施例では、ナノ粒子は、50%
のコアPLGA(35K)、及び25%のPLGA-PEG-COOHと25%のPLG
A-mPEGとの混合物により形成される。PLGA-PEG-COOH(またはマレイ
ミド)とPLGA-mPEGとの比率によって、粒子表面のリガンド密度の微調整が可能
である。例えば類似した分子量及び官能基密度を有する、PLA及びPLA-PEGなど
の他のポリマーを使用して類似した粒子を調製することができる。
【0120】
PLGAの内部コアは構造及びサイズを規定し、分解速度を早める要因となる。コアの
ナノ粒子に水が浸透すると、PLGAポリマーが加水分解され、最終的にナノ粒子の分解
が生じる。
【0121】
PLGA-mPEGポリマーは、タンパク質/ペプチドリガンドのコンジュゲートに使
用できる官能基に対して不活性であり、その結果、疎水性PLGAコアから広がるコアの
ナノ粒子に親水性のPEG最外層によってコーティングするコロナを与える役割を果たす
。とりわけ、これは、例えば血清タンパク質(例えば、アルブミン)の結合を制限するこ
となどによって、単核食細胞系(MPS)によるナノ粒子のオプソニン化及び除去の防止
に役立つ。
【0122】
PLGA-PEG-COOH及びPLGA-PEG-マレイミドはPLGA-mPEG
と同じ役割を果たすとともに、それに加えてコポリマーの各PEG鎖の末端に官能基を導
入する。完全なナノ粒子の形成後、EDC-スルホ-NHSを使用してPLGA-PEG
の末端COOH基を活性化することで、タンパク質/ペプチド上の利用可能な一級アミン
基とペプチド結合を形成する反応性基を生じさせることができる。この方策は、PLGA
-PEGポリマー上の活性化された-COOH基とコンジュゲートされる利用可能な一級
アミン基を制御しないため、ナノ粒子表面でのリガンドの配向が制御されず、その結果、
必ずしも生物学的に活性になるとは限らない。
【0123】
代替策は、例えばモノクローナルIgG(マウスリガンドの場合はIgG1;ヒトリガ
ンドの場合はIgG4)の遠位Fc領域などに不対システイン残基を含むリガンドを調製
することである。この不対システインは、PLGA-PEG-マレイミド(または、不対
システイン残基との共有結合の形成に使用できる他の好適な官能基)とのコンジュゲート
に適した特異的部位として作用する。これによって、各リガンドを部位特異的な方法でコ
ンジュゲートさせることができ、その結果、必然的に表面リガンドの大部分が、生物学的
活性を助けるように外側に配向してコンジュゲートされる。例えば、この方策では、ナノ
粒子の疎水性PLGA部分からひろく広がる、コロナの親水性PEG鎖のわずかに外側に
各リガンドの結合部分を有する。
【0124】
ナノ粒子は、サイズが20~200nmの範囲であり、多分散指数(PDI)が2以下
(例えば、いくつかの実施形態では0.3以下)であり、ゼータ電位(表面電荷)は-1
5mV~0mVである。この組成、サイズ及び電荷を有するナノ粒子は、in vivo
でのPK/ADMEに有益な特性を有することが予測される。具体的には、腫瘍微小環境
を含む標的組織への輸送、ならびに血液とリンパ間の移動が十分可能である程度に小さい
(200nm未満)。また、その親水性PEG層及びわずかな負電荷により、血清タンパ
ク質の結合、及び標的組織に分布する前にMPS細胞によって循環から排除される恐れの
あるナノ粒子のオプソニン化を遅延させるのに役立つ。このポリマー混合物は、日数で測
定される微生物分解速度が2週間程度になるはずである。またタンパク質リガンドが外側
に配向されることで、同族のTCR及び共刺激受容体(例えばCD28、4-1BB)と
のT細胞の結合と比較して、必然的に最大限の生物学的活性をもたらす。更に、いくつか
の実施形態では、製剤化する際、ナノ粒子の疎水性コアに可溶性のペイロード(例えばI
L-2、抗TGF-b、IL-21または小分子薬)を充填することができる。
【0125】
例示的なポリマー組成(ポリマー総重量100mg):
PLGA 35KDa 50% w/w
PLGA-PEG官能基 20KDa~5KDa 25% w/w
PLGA-PEG-MeOH 20KDa~5KDa 25% w/w
【0126】
ポリマーを1mlのジクロロメタンに溶解し、2.3mlの5%PVA(20KDa)
を添加して、プローブ超音波処理器を使用して溶液を乳化した。エマルジョンを46ml
の0.5%PVA溶液に添加して、溶媒が完全に蒸発するまで2時間撹拌した。
【0127】
精製のため、粒子を3,700rpmで30分間遠心分離して、0.45マイクロメー
トルのフィルターを通して濾過し、10,000rpmで10分間遠心分離して、大きな
粒子を除去した。粒子を脱イオン水で洗浄し、2000rpmの遠心濾過(100KDa
限外)を使用してPVAを除去した。
【0128】
リガンドのコンジュゲートに以下のプロトコルを使用した。40mgのナノ粒子を10
mMのHEPES緩衝液(pH6)に分散させ、濃度を1mg/mlとした。80mgの
EDC及び89.16mgのS-NHSを溶液に添加して30分間撹拌した。過剰なED
C及びS-NHSを2500rpmの遠心濾過によって除去した。粒子を濃度1mg/m
lとなるようにPBS中に再分散させ、粒子1mg当たり8mgに相当するKb-Ig及
び抗CD28の混合物を溶液に添加した。粒子を4℃で一晩撹拌した。
【0129】
粒子をPBSで洗浄した(17,000rpmx50分)。2回目の洗浄後、粒子を1
00mg/mlのスクロース溶液中で再構成した(添加した総スクロースは4mg)。
【0130】
【0131】
実施例7:Fcヒンジ領域融合体
抗原提示複合体(例えばH2-KbまたはHLA-2)をIgヒンジ領域と直接融合さ
せることによって、二量体の抗原提示リガンドを設計した。H2-KbのFcヒンジタン
パク質は、マウスIgG1のヒンジ-CH2-CH3部分に融合されたマウスクラスI
Kb細胞外ドメインを含み、不対システイン残基が重鎖231位のセリン残基を置換する
ように遺伝子操作されている。この設計を
図19に示す。
【0132】
図27は、Kb-SIYのFcヒンジタンパク質をベースとするナノaAPCが同族の
標的2C T細胞を特異的に染色することを示している。
【0133】
図29は、ヒンジ二量体構築物を含んでいるナノaAPCを使用した、Kb特異的な2
C T細胞(A)及びDb-gp100特異的なpmel T細胞の増殖を示している。
Miltenyiビーズ及びDynaビーズ(直径約4.5マイクロメートル)を比較に
使用した。NI-19、NI-21、NI-22(K
bヒンジ二量体を含む)のバッチ、
ならびにNI-24及びNI-25(D
bヒンジ二量体を含む)の物理的特性を
図32に
示す。NI-22は陰性対照である。
【0134】
実施例8:例示的なナノaAPC化学物質
利用可能な一級アミンを介してコンジュゲートされるリガンドとともに、PLGA及び
PLGA-PEG-COOHのナノaAPCを調製した。PLGA 40(200nm)
を基とするPLGA粒子は、有意な安定性を示さなかった。PLGA-PEG-COOH
(40K/3K):PLGA-mPEG(17K/3K)を基とし、1:4のPEG:m
PEG比を有する粒子は、良好な安定性及び活性を示した。
図20。
【0135】
以下は、
図31に示す、リガンドの部位特異的なコンジュゲート方法について記載して
いる。Igヒンジ領域に融合されたpHLA複合体をベースとするリガンドを含む、第二
世代リガンドの部位特異的なチオールコンジュゲートによりナノaAPCを調製した。マ
ウス型とヒト化型両方のリガンドを使用して、ナノaAPCを調製した。ナノAPCは2
段階で調製した。まず、PLGA-mPEG及びPLGA-PEG-マレイミドからなる
粒子をナノ析出法によって調製する。例えば、PLGA-mPEGとPLGA-PEG-
マレイミドの混合物(PLGA-PEG-マレイミドの%w/wは1~55%の間で変化
する)をアセトニトリルに溶解して、最終濃度50mg/mLにする。この溶液を、シリ
ンジポンプを使用して5mL/分でPVA溶液(MnPVA=9kDa、0.5%w/v
)に撹拌しながら注入する。有機溶媒と水性溶媒の混合比は1:1~1:20の間で急変
させた。マイクロ流体装置、拘束衝突噴流装置及び多重注入口ボルテックスミキサー装置
を使用して、優れた均一性と狭い粒度分布を確保した粒子を調製することができる。粒子
は、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)またはAmicon遠心フィ
ルターを使用して精製する。次に粒子をコンジュゲート緩衝液(HEPES 50mM、
EDTA 10mM、pH=6.7)に再懸濁した。最後に、抗CD28及びKbSIY
/HLAリガンドの混合物を粒子にコンジュゲートすることにより、ナノaAPCを調製
する。リガンドの粒子とのコンジュゲートは、室温で一晩続行する。リガンド:粒子の質
量比は、1~500μg/mg粒子の範囲である。抗CD28:Kb/HLAの比は、0
~1の間で変化する。結合されなかったリガンドはSECまたはTFFを使用して除去す
る。90nmの平均粒径及び50~120nmの粒度分布を有する粒子を調製した。
図3
2。
【0136】
図22に示すように、PLGA-PEGのaAPC粒子は、用量依存的に抗原特異的T
細胞の増殖を刺激する。更に、
図23に示すように、PLGA-PEGベースのaAPC
は、凍結乾燥時に安定である。
【0137】
SIYを充填したPLGA-PEGナノaAPCを増量したときの2C T細胞の4日
目の培養を
図24に示しており、これは抗原特異的T細胞の用量依存的な増殖を示す。図
25は、ナノaAPCによる刺激から1日後のT細胞増殖クラスターを示す。
【0138】
図28は、リガンドの部位特異的なチオールコンジュゲートを有するナノaAPCを示
す。ビーズは、比率1:1のPEG-COOHとmPEGポリマー(バッチ72B)また
は比率1:9のPEG-mal:mPEG(バッチ77B)を含有した。どちらも安定性
かつ活性であった。
【0139】
図30は、ヒトCMVまたはMART-1に特異的なT細胞のナノaAPCベースでの
増殖を示す。比較のため、DynalベースのAPCを示す。0日目、7日目、14日目
及び21日目の増殖を示す。CD8の染色をX軸に示し、Y軸でペプチド-MHCテトラ
マー染色に基づいて抗原特異的T細胞を識別している。
【0140】
図31は、マレイミド部位を誘導した化学物質を有する粒子へのリガンドのコンジュゲ
ートを含む、例示的なナノ粒子の製剤化(A);動的光散乱法(DLS)による粒子の特
徴(B);及び代表的なバッチ(NI26)のサイズ、電荷及びPDIの特徴を示す。N
I26粒子は、108nm付近をピークとする粒度分布、0.08のPDI及び-6.7
mVの電荷を示す。
【0141】
参照による組み込み
本明細書で言及される特許及び刊行物は全て、その全体が参照により本明細書に組み込
まれる。