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特開2022-166151タンパク質の経口送達のための手段及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166151
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】タンパク質の経口送達のための手段及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20221025BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221025BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20221025BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221025BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/00
A23L33/18
A61P1/00
A61P1/02
A61K47/68
A61K9/14
A61K9/19
A61K38/02
A61K39/00 K
A61K39/00 B
A61P37/04
A61K38/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127748
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019547139の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】17158471.7
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509333933
【氏名又は名称】フエー・イー・ベー・フエー・ゼツト・ウエー
(71)【出願人】
【識別番号】500454046
【氏名又は名称】ウニベルズィタイト・ヘント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・カレバート
(72)【発明者】
【氏名】ロバン・バンリュシェーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブラム・ラウケンス
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・デピッケル
(72)【発明者】
【氏名】ビクラム・バーディー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】組換えタンパク質を分泌する組換え宿主の培地を含む、経口医薬配合物を提供する。得られた経口医薬配合物は、胃腸障害及び/又は口腔障害の治療のために有用である。さらに経口医薬配合物は、予防目的及びワクチン目的のために有用である。
【解決手段】組換え真菌の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物、並びに前記乾燥配合物及び医薬用賦形剤を含む経口医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え真菌の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物。
【請求項2】
前記Fcドメインが、IgAFcドメインである、請求項1に記載の乾燥配合物。
【請求項3】
Fcドメインに融合した前記外因性ペプチドが、予防用若しくは治療用ペプチドであり、又は前記外因性ペプチドが、ワクチンであり、若しくはワクチンの部分を形成する、請求項1又は2に記載の乾燥配合物。
【請求項4】
糸状真菌又は酵母細胞等の組換え真菌宿主の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を、経口投与可能なマトリックスに添加し、続いて、得られた混合物を乾燥させることによって得られた、乾燥配合物であって、前記培地が、前記組換え宿主に対して外因性の分泌ポリペプチドを含む、乾燥配合物。
【請求項5】
前記外因性ポリペプチドが、Fcドメイン、特にIgA Fcドメインに融合している、請求項4に記載の乾燥配合物。
【請求項6】
乾燥させることが、組換え真菌細胞の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子及び経口投与可能なマトリックスを噴霧乾燥させることによって実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥配合物。
【請求項7】
乾燥させることが、組換え宿主の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子及び経口投与可能なマトリックスを凍結乾燥させることによって実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥配合物。
【請求項8】
医薬品としての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物及び医薬用賦形剤を含む、経口医薬組成物。
【請求項10】
胃腸疾患の治療を目的とした使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
口腔疾患の治療を目的とした使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ワクチンとしての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物を含む、食品製品。
【請求項14】
機能性又は薬用食品製品である、請求項13に記載の食品製品。
【請求項15】
ポリペプチドが、IL22 IgA Fc融合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の乾燥配合物又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、IgAFcと融合したタンパク質が、免疫グロブリン単一可変ドメインである、経口医薬組成物。
【請求項17】
N-グリカン及び/又はO-グリカンによって修飾された、真菌産生タンパク質であって、糖タンパク質の分子量のうちの少なくとも30%が、経口投与における使用のための前記N-グリカン又はO-グリカンによって占められる、真菌産生タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母細胞等の宿主細胞中における組換えタンパク質の産生の分野に関する。より詳細には、本発明は、タンパク質の経口送達の分野に関する。具体的には、本発明は、組換えポリペプチドを分泌する組換え宿主の培地を含む、経口医薬配合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ホルモン、酵素、リガンド又は抗体を含む阻害剤を含むペプチド又はタンパク質は、様々な細胞機能を調節する。したがって、これらのペプチド又はタンパク質は、クリニックにおいて、生理学的又は病理学的な過程の調節によってヒト障害を治療又は予防するために有用である。小分子分子薬物とは著しく異なり、標的に対するペプチド又はタンパク質の高い選択性は、副作用及び宿主細胞に対する毒性を低減することができる。がん、代謝障害、胃腸疾患、口腔疾患、神経変性性疾患及び感染症の治療において、治療を目的としたタンパク質又はペプチドの使用が増え続けることが、予想されている。現在、タンパク質型薬物の大部分は、ほ乳類、植物、酵母又は細菌細胞培養系を使用して、製造されている。これらの発現タンパク質は、抽出及び精製されなければならないが、抽出及び精製は、高価で複雑な工程並びに低温における貯蔵及び輸送を必要とする。生物学的製剤は、一般に、静脈内注射又は皮下注射によって送達され、このことは、効果的ではあるが、患者、特に慢性状態の患者にとっては望ましくない。注射可能な形態のタンパク質型薬物は、投与のために医療従事者を要することが多く、頻繁な病院に頻繁に来院することになり、患者のコンプライアンスが低下する。経皮投与、鼻腔内投与、吸入投与及び経口投与等の他の送達経路も調査中であるが、一般に、経口送達が最も望ましい経路だと考えられる。数十年の努力にもかかわらず、ペプチド、タンパク質及び抗体薬の経口送達は、医薬における主要な難点のままであり、上市されているこのようなタンパク質は、ほんの一握りにすぎない。このことは、生物学的製剤が製薬市場において急速に成長しているセグメントであり、その価値は直近10年間で360億ドルから1630億ドルに3倍化しているため、特に失望を誘う事柄である。したがって、患者にとっては好都合であるが、この投与経路を大分子型薬物にとって厄介なものにする、いくつかの技術的な障壁が存在する。確実なこととして、最も重要な難点は、胃及び腸管における、pHに応じた酵素による薬物の分解である。さらに、これらの化合物は、胃腸(GI)管を裏打ちする上皮細胞の透過性が低く、固有の不安定もある。大分子の経口送達を容易にするためのいくつかの技術が、開発されてきた。ポリエチレングリコールのような分子を付着させることにより、抗体Fcドメイン又はヒト血清アルブミンは、循環中の血清中におけるペプチド安定性を高める。さらに、ペプチド薬物は、血清プロテアーゼ及びペプチダーゼから保護するために修飾されてもよい。このような修飾は、N末端アセチル化、C末端アミド化、非天然アミノ酸の使用及びジスルフィド結合による環化を含む。さらに、いくつかの改善が、酵素阻害剤の開発、吸収又は浸透向上剤の使用、カプセル内へのポリペプチドの配合、消化器官の管壁に張り付く接着性ポリマーの施用及び配合物中へのキャリア分子の組み込みにおいてなされた。これらの技術にもかかわらず、タンパク質及びペプチドは一般的に、口から摂取した場合に2%未満である、極めて低い生物学的利用能を有する。最近、本発明者らにより、植物種子産生抗体は胃体管を生き残るものであり、腸管において生物活性だったことが示された(WO2014033313及びVirdi V.et al(2013)PNAS、110、29、11809-11814を参照されたい。)。多量の組換えタンパク質を産生することができる植物産生系は、冗長で高価な調節手順のため、可食型ワクチンを産生するための最良の選択ではないであろう。真核生物が少ないほど、より多量の組換えタンパク質の産生が可能になり、より望ましい。経口送達することができる治療用タンパク質の産生のための、酵母等の下等真核生物宿主を使用することは、利点であろう。下等真核生物細胞は、治療用タンパク質の送達に関して記述されてきたが、治療用タンパク質を産生することができる完全組換え細胞としてのみ記述されてきた(例えば、Zhang et al.(2012)BMC Biotechnology 12:97及びWO2007039586を参照されたい。)。組換え酵母自体ではなく、分泌ポリペプチドを含む培地のみを使用できることは、望ましいであろう。さらにより望ましくは、培地から治療用ポリペプチドを精製する必要はなく、培地をそのままの状態で使用することが、重要であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/033313号
【特許文献2】国際公開第2007/039586号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Virdi V.et al(2013)PNAS、110、29、11809-11814
【非特許文献2】Zhang et al.(2012)BMC Biotechnology 12:97
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、本発明者らは驚くべきことに、治療用ポリペプチドを含み、透過物状化合物の濃度を低減するために膜分離工程によって処理された、組換え酵母の培地を含む、乾燥配合物が、経口送達配合物として使用され得ることを示した。驚くべきことに、治療用ポリペプチドを含む粉末状乾燥済みの培地(凍結乾燥又は噴霧乾燥によって得られたもの)は、消化器官において分解から保護されることが示されている。さらに、粉末状乾燥配合物もまた、消化器官において、生物学的活性を維持していることがやはり示されている。
【0006】
第1の態様において、本発明は、経口投与可能なマトリックスと、組換え宿主から得た培地との混合物を含む、乾燥配合物であって、培地中において、可溶性透過物状化合物の濃度が、膜分離工程において低減されており、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0007】
さらに別の特定の態様において、本発明は、組換え酵母に由来の培地を含む、配合物であって、前記酵母が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生する、配合物を提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、前記配合物の含水量及び5kDa未満の分子量を有する可溶性分子が、膜分離工程において前記培地を濃縮した後で前記配合物を調製することによって低減される、態様1による配合物を提供する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、含水量及び5kDa未満の分子量を有する可溶性分子が、前記培地を乾燥させた後で前記配合物を調製することによって低減される、態様1による配合物を提供する。
【0010】
第4の態様において、本発明は、前記配合物の含水量及び5kDa未満の分子量を有する可溶性分子が、前記配合物を乾燥させることによって低減される、態様1による配合物を提供する。
【0011】
第5の態様において、本発明は、組換え宿主の培地を含む、乾燥配合物であって、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0012】
第6の態様において、本発明は、前記組換え宿主が、酵母である、態様5による乾燥配合物を提供する。
【0013】
第7の態様において、本発明は、外因性ポリペプチドが、Fcドメインに融合している、態様5及び6による乾燥配合物を提供する。
【0014】
第8の態様において、本発明は、態様7による乾燥配合物であって、前記Fcドメインが、IgA Fcドメインである、乾燥配合物を提供する。
【0015】
第9の態様において、本発明は、前記外因性ペプチドが、予防用若しくは治療用ペプチドであり、又は前記外因性ペプチドが、ワクチンであり、若しくはワクチンの部分を形成する、態様5~8のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0016】
第10の態様において、本発明は、ポリペプチドを組換え宿主の培地中に分泌させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた組換え宿主に対して外因性の前記ポリペプチドを含む、乾燥配合物を提供する。
【0017】
第11の態様において、本発明は、融合ポリペプチドを組換え宿主の培地中に産生させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた、Fcドメインとの前記融合ポリペプチドを含む、乾燥配合物を提供する。
【0018】
第12の態様において、本発明は、前記組換え宿主が、原核生物宿主、植物細胞又は真菌細胞、特に糸状真菌である、態様10又は11による乾燥配合物を提供する。
【0019】
第13の態様において、本発明は、態様10又は11による乾燥配合物であって、前記組換え宿主が、酵母細胞である、乾燥配合物を提供する。
【0020】
第14の態様において、本発明は、前記乾燥させることが、噴霧乾燥によって実施される、態様5~13のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0021】
第15の態様において、本発明は、前記乾燥させることが、凍結乾燥によって実施される、態様5~13のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0022】
第16の態様において、本発明は、酵母細胞をさらに含む、態様5~13のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0023】
第17の態様において、本発明は、タンパク質に富んだ金属をさらに含む、態様5~13のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0024】
第18の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0025】
第19の態様において、本発明は、胃腸疾患を治療するための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0026】
第20の態様において、本発明は、口腔疾患の治療を目的とした使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0027】
第21の態様において、本発明は、予防用製品としての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0028】
第22の態様において、本発明は、ワクチンとしての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0029】
第23の態様において、本発明は、機能性食品製品としての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0030】
第23の態様において、本発明は、薬用食品製品としての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0031】
第24の態様において、本発明は、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を含む、食品製品を提供する。
【0032】
第25の態様において、本発明は、ポリペプチドが、IL22IgAFc融合物である、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0033】
第27の態様において、本発明は、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物及び医薬用賦形剤を含む、経口医薬配合物を提供する。
【0034】
第28の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、態様5~17のいずれか1つによる乾燥配合物を提供する。
【0035】
第29の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、第27の態様による経口医薬配合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1-1】FaeG固定化ELISA構成による、高発現するピキア(Pichia)クローン(A)及びダイズ種子(B)のスクリーニング及び選択の図である。
図1-2】FaeG固定化ELISA構成による、高発現するピキア(Pichia)クローン(A)及びダイズ種子(B)のスクリーニング及び選択の図である。
図1-3】パネル「C」は、キアVHH-IgAFcを含有する上澄みの代表的な免疫ブロット法を示している。
図1-4】パネル「D」は,ダイズVHH-IgAFcを発現した種子抽出物の代表的な免疫ブロット法を示している。
図2】ピキア産生抗体と種子産生抗体との機能的同等性を比較する、ELISAに基づいた滴定の典型例の図である。この代表図において、点線によるピキア産生V2A抗体(ピキア-V2A)の曲線は、実線によるアラビドプシス(Arabidopsis)産生V2A(At―V2A)の異なる濃度に対して比較されている。
図3-1】ピキア及びダイズ産生VHH-IgAが、子ブタにおけるETEC感染を予防する、図である。実験(A)の概略図。
図3-2】ピキア及びダイズ産生VHH-IgAが、子ブタにおけるETEC感染を予防する、図である。チャレンジ(B)後のF4-ETECのシェディング。
図3-3】ピキア及びダイズ産生VHH-IgAが、子ブタにおけるETEC感染を予防する、図である。セロコンバージョンは、抗F4-ETEC血清IgM(C)力価を示している。
図3-4】ピキア及びダイズ産生VHH-IgAが、子ブタにおけるETEC感染を予防する、図である。セロコンバージョンは、抗F4-ETEC血清IgG(D)力価を示している。
図3-5】ピキア及びダイズ産生VHH-IgAが、子ブタにおけるETEC感染を予防する、図である。セロコンバージョンは、抗F4-ETEC血清IgA(E)力価を示している。
図4-1】パネルA。実施例3の実験機構。
図4-2】パネルB。6日目までで4つの異なる群における糞便1グラム当たりのF4ETEC細菌のシェディング。
図4-3】パネルC。4つの異なる群に属する個々の子ブタに関する抗ETECIgGの血清力価。
図4-4】パネルD。4つの異なる群に属する個々の子ブタに関する抗ETECIgAの血清力価。
図5】GAPプロモーターによって駆動される、コマガタエッラ・ファッフィ(Komagataella phaffi)(以前は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)としても知られていた)において産生されたV2IgAFc融合物の発現に関する、還元SDS-PAGE分析の図である。パネルA) C末端hisタグV2IgAFcをNi-IMAC精製し、1μgの組換えタンパク質を、PNGaseFによって処置し(右側レーン)、又は処置しなかった(左側レーン)。パネルB) コマガタエッラ・ファッフィが産生するV2IgAFcの粗製上澄みを、PNGaseFによって処置し(右側レーン)、又は処置しなかった(左側レーン)。PNGase Fによって処置すると、分子量は、約38kDaに大幅に低下するが、これは、グリコシル化されていない分子の理論分子量に対応する。単一のN-グリコシル化部位に存在するハイパーマンノシル構造は、タンパク質の分子量に、30kDa超を追加する。
図6】V2IgAFc分子が、コマガタエッラ・ファッフィにおいて、メタノール誘導性AOXIプロモーター(メタノール上の培養物)ではなく構成的GAPプロモーター(グリコース上の培養物)から産生されたときにグリコシル化レベルが上昇する、図である。GAPプロモーター産生タンパク質の平均MWは、約70kDaであるが、グリコシル化されていないV2IgAFcタンパク質の予想MWは、38.4kDaである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、特定の実施形態を参照しつつ、特定の図面も参照しながら記述されるが、本発明は、これらの実施形態及び図面に限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲におけるあらゆる参照符号は、その範囲を限定するものとして解釈すべきでない。当然ながら、必ずしもすべての態様又は利点が、本発明の任意の特定の実施形態によって達成され得るとは限らないことを理解すべきである。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書において教示された一利点又は一群の利点を達成又は最適化する方式で実現又は実施されることが可能であり、必ずしも本明細書において教示又は示唆され得る他の態様又は利点を達成するとは限らないことを認識されよう。
【0038】
本発明は、構成と動作方法との両方に関して、下記の詳細な記述を参照により、添付の図面も併せて読めば、本発明の特徴及び利点と一緒に最も深く理解することができる。本発明の態様及び利点は、本明細書において後述される実施形態(複数可)への参照によって明らかになり、明確化される。本明細書を通して、「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態との関連で記述された特定の特徴、構造又は特質が、少なくとも1つの本発明の実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所における「一実施形態において」又は「ある実施形態において」という語句の出現は、必ずしも、すべてが同じ実施形態を指すとは限らないが、すべてが同じ実施形態を指すことも可能である。同様に、本発明の例示的な実施形態に関する記述において、本発明の様々な特徴は時に、単一の実施形態、図面、又は、本開示を的確化し、様々な本発明の態様のうちの1種以上の理解を促すことを目的とした当該実施形態若しくは図面に関する記述において、一緒にしてグループ化されることもあることを理解すべきである。しかしながら、本開示の方法は、特許請求された本発明が、各クレームにおいて明示的に記載されたより多くの特徴を必要とするという意図を反映したものとして、解釈すべきでない。逆に、下記の特許請求の範囲が提示するように、本発明の態様は、先に開示された単一の実施形態に関するすべての特徴より少ないものである。
【0039】
単数名詞に言及するときに不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合、例えば、「一(a)」又は「ある(an)」、「当該(the)」は、そうではないことが明示的に記載されていない限り、この名詞の複数形を含む。「含む」という用語が本明細書及び特許請求の範囲において使用されている場合、他の要素又はステップを排除するものではない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2及び第3等という用語は、類似した要素どうしを区別するために使用されており、必ずしも、連続的又は経時的な順番を記述するために使用されているとは限らない。このようにして使用される用語は、適切な状況下においては、相互変換可能であること、及び、本明細書において記述された本発明の実施形態は、本明細書において記述又は例示されてもの以外の配列中での動作が可能であることを理解すべきである。下記の用語又は規定は、本発明の理解を促すためにのみ提供されている。本明細書において明示的に規定されていない限り、本明細書において使用されているすべての用語は、本発明の技術分野における当業者にとっての意味と同じ意味を有する。当技術分野の規定及び用語に関しては、実践者は、Sambrook et al.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley&Sons,New York(2016)を特に対象とする。本明細書において提供された規定は、当業者によって理解されるものより狭い範囲を有するように解釈すべきでない。
【0040】
量及び時間的な持続期間等の測定可能な値に言及するときに本明細書において使用されている「約」は、そのようなバラつきが本開示の方法を実施するために適切であるとき、指定の値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%のバラつきを包含することを意味する。
【0041】
本明細書において使用されている「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」、「DNAエレメント(複数可)」又は「核酸分子(複数可)」は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドである、任意の長さヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語は、二本鎖及び一本鎖DNA並びにRNAを含む。これらの用語は、既知の種類の修飾も含み、例えば、メチル化、アナログによる天然のヌクレオチドのうちの1種以上の「キャップ」置換も含む。「コーディング配列」は、適切な調節配列の制御下で配置されたときにmRNAに転写され、及び/又はポリペプチドに翻訳される、ヌクレオチド配列である。コーディング配列の境界は、5’-末端にある翻訳開始コドン及び3’-末端にある翻訳停止コドンによって決定される。「コーディング配列」は、限定するわけではないが、mRNA、cDNA、組換えヌクレオチド配列又はゲノムDNAを含み得るが、特定の状況下においてはイントロンも存在し得る。「オルソログ」は、種分化を経て生み出されており、やはり、一般的な祖先遺伝子に由来する、異なる生物の遺伝子である。
【0042】
「調節エレメント」、「制御配列」及び「プロモーター」又は「遺伝子のプロモーター領域」という用語はすべて、相互変換可能に使用されており、幅広い文脈の中で、機能的DNA配列単位が連結された配列の発現を実施することが可能な機能的DNA配列単位である、調節核酸配列を指すように解すべきである。「プロモーター」という用語は一般的に、遺伝子の転写開始から上流側に配置された、又は、コーディング配列に動作可能に結合した、核酸制御配列であって、おそらくは適切な誘導条件下に置かれたときに、配列の認識及びRNAポリメラーゼと他のタンパク質との結合によって前記コーディング配列の転写を促進するために十分である、核酸制御配列を指す。古典的な真核生物ゲノム遺伝子(CCAATボックス配列の有無にかかわらず、高精度の転写開始のために必要とされるTATAボックスを含む)及び発生的刺激及び/又は外的刺激に応じて又は組織特異的な方式で遺伝子発現を変化させるさらなる調節エレメント(すなわち、上流活性化配列、エンハンサー及びサイレンサー)に由来した転写調節配列は、上記「プロモーター」という用語によって包含される。古典的な原核生物遺伝子の転写調節配列もまた、上記「プロモーター」という用語に含まれるが、この場合、上記「プロモーター」という用語は、-35ボックス配列及び/又は-10ボックス転写調節配列を含み売る。「調節エレメント」という用語は、細胞、組織又は器官における核酸分子の発現をもたらし、活性化させ、又は向上する、合成融合分子又は誘導体も包含する。
【0043】
さらに、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基のポリマー並びに当該ポリマーのバリアント及び合成アナログを指すように、相互変換可能に使用されている。したがって、これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の化学的アナログ等、天然ではない合成アミノ酸である、アミノ酸ポリマーに適用され、さらには、天然アミノ酸ポリマーにも適用される。この用語は、グリコシル化、リン酸化及びアセチル化等のポリペプチドの翻訳後修飾も含む。「組換えポリペプチド」は、組換え技法を使用して、すなわち、組換え又は合成ポリヌクレオチドの発現によって製造された、ポリペプチドを意味する。「発現」又は「遺伝子発現」という用語は、特異的な1個の遺伝子若しくは特異的な複数の遺伝子、又は特異的な遺伝的構造の転写を意味する。「発現」又は「遺伝子発現」という用語は特に、後で当該構造的RNA又はmRNAをタンパク質に翻訳するか否かにかかわらず、1個の遺伝子若しくは複数の遺伝子又は遺伝子構築体を、構造的RNA(rRNA、tRNA)又はmRNAに転写することを意味する。この過程は、DNAの転写及び得られたmRNA生成物の処理を含む。本明細書において使用されている「組換え宿主細胞」、「改変細胞」、「発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」又は単に「宿主細胞」という用語は、組換えベクター及び/又はキメラ遺伝子構築体が導入された細胞を指すように意図されている。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も指すよう意図されていることを理解すべきである。特定の修飾は、突然変異又は環境の影響により、後続の世代においても生じ得るため、このような後代は、実際には、親細胞と同一でないこともあり得るが、依然として、本明細書において使用されている「宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。組換え宿主細胞は、単離された細胞であってもよいし、又は培養物中で増殖した細胞株であってもよく、細胞は、原核細胞、動物細胞、植物細胞、糸状菌等の真菌細胞等の真核細胞であってよく、好ましくは、細胞は、組換え酵母細胞である。
【0044】
本明細書において使用されている「内因性」という用語は、ある生物、組織又は細胞の内部に由来した物質(例えば、遺伝子)を指す。同様に、本明細書において使用されている「外因性」は、ある生物、組織又は細胞の外部に由来するが、当該生物、組織又は細胞に存在する(一般的には、活性な状態になることが可能である)、任意の物質である。
【0045】
胃腸(GI)管は、栄養素を分解し、病原体を不活性化するように進化的に最適化されているため、ポリペプチドにとって厳しい環境である。胃における酸性度が高いpHにより、タンパク質のプロトン化及びアンフォールディングが起き、これにより、タンパク質分解酵素によって認識されるより多くのモチーフをむき出しにする。胃(ペプシン)における酵素、小腸(例えば、キモトリプシン、アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼ)における酵素、並びに、膵臓及び胆汁によって産生された酵素は、タンパク質を開裂して、より小さなフラグメント及び単一単位に変える。治療的に活性なポリペプチド(例えば、ワクチン成分に属する予防用の治療用物質)もこれらの工程によって影響されるため、これらの分解工程を生き残った画分は、特に食品の存在下において、一般に少なく、変わりやすいものである。さらに、ポリペプチド型薬物は、全身的コンパートメントに到達するためには、食物及び細菌抗原の進入を防止するように設計された複数の障壁を克服する必要がある。上皮細胞層に接触するためには、ポリペプチドは最初に、腸管上皮を覆っている粘液層中に拡散する必要がある。この上皮は、上皮細胞を封止するタイトジャンクションが、傍細胞輸送(すなわち、細胞間の通路)を600Daよち小さい小さな分子及びイオンに制限しているため、別の重要なバリアである。さらに、細胞を横断する経路は、管腔内で発現したエンドサイトーシスリセプター(例えば、ビタミンB12リセプター、トランスフェリンリセプター)によって媒介され、したがって、薬物送達において活用するためには、各リガンドへの共役を必要とする。全身的コンパートメントに至るさらに別の接触箇所は、管腔抗原をサンプリングし、低マイクロメートル範囲で特定の基質を取り込むことができる、パイエル板の貪食性M細胞である。しかしながら、消化器官の上皮中におけるM細胞の比率は低く、種ごとに大きく変化し、これにより、動物データに基づいて人間における吸収の予測が複雑化する。略述した上記の障害を考えれば、局所送達される2種のペプチド及び全身的に送達される2種のペプチド、局所送達される1種の非ペプチド型大環状化合物、及び、局所送達される1種のタンパク質混合物という、わずか6種の生体高分子のみが、経口送達用としてthe Food and Drug Administration投与(FDA)によって承認されていることは、驚くべきことではない(Moroz E.et al(2016)Advanced Drug Delivery Reviews 101,108-121)。しかしながら、経口施用されるいくつかのタンパク質、ペプチド及び核酸の配合物は現在、臨床学的な評価中である。しばしば、これらの配合物は、高分子の傍細胞輸送を可能にするという目的で薬物分解向上剤及び薬物浸透向上剤を防止するためのエンテリックコーティング及び/又はプロテアーゼ阻害剤という、賦形剤のうちの少なくとも1つを含有する。機構的には、吸収の向上は、タイトジャンクション又はプラズマメンブレンを機械的に乱し、粘液の粘度を低下させ、タイトジャンクション調節シグナリング経路を調節することによって、達成することができる。臨床において開発されている生体高分子の経口送達のためのさらなる戦略は、キャリア媒介トランスサイトーシス及びGIターゲットへの局所送達を利用した口腔送達を含む。現在承認されている経口薬物及び臨床学的候補物質のうちの圧倒的な大部分は、1000Da未満の分子量を示す。この閾値より高い場合、生物学的利用能を向上する賦形剤に関する低い生物学的利用能、個体間及び個体内における可変性、食品に関する効果、並びに、長期的な安全性上の懸念は、ほぼ90年間の試行錯誤を経で知識は明確に進歩したにもかかわらず、経口送達に関する重要な難点のままである。
【0046】
本発明は、現在における治療用タンパク質の経口送達に関する欠点に対して、明確な解決法を提供する。本発明において、驚くべきことに、本発明者らは、培地中に治療用タンパク質を分泌させる組換え酵母の5kDaより大きい複数の高分子を含む培地を乾燥させることによって得られた乾燥配合物が、乾燥配合物の経口送達のために使用され得ることを見出した。驚くべきことに、この配合物は、胃腸管の中でタンパク質分解及び分解によって保護されているだけでなく、乾燥配合物中に治療用タンパク質もまた、やはり驚くべきことに、生物活性である。本発明を特定の機構又は作用に限定しなければならないわけではないが、少なくとも1種の機構は、酵母細胞外培地が、消化器官における治療用タンパク質のタンパク質分解を防止する(又は減速させる)治療用タンパク質の周囲で、保護されたフィルムとして作用するというものであると、本発明者らは考えている。これは、治療用タンパク質が植物種子中で発現し、乾燥済みの種子マトリックスが分解から治療用タンパク質を保護する状況とは異なる(WO2014033313を参照されたい。)。さらに別の可能な機構は、グリコシル化治療用タンパク質が、(高)マンノース糖構造のみからなる(組換え酵母宿主中で当該グリコシル化治療用タンパク質を発現させる性質によるもの)という点である。これらのかさ高い高マンノース構造は、やはり、消化器官におけるタンパク質分解から治療用ペプチドを保護し得る。図5は、ピキア・パストリス中で産生されたV2A-IgAFc融合物に存在するかさ高い高マンノースグリコシル化を表しており、この組換えタンパク質が、本例において使用されている。本発明者らの発見の主要な利点は、治療用タンパク質の精製が必要ではないという点であり、これは、培地をそのままの状態で含む配合物、又は、培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子(酵母が自力で産生したタンパク質を含む)及び培地中に存在する治療用タンパク質を含む乾燥配合物が、経口医薬製品として使用され得ることを意味する。これらの利点は、下記の実施形態において略述されている。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、組換え宿主細胞の培地を含む、乾燥配合物であって、前記宿主細胞が、前記組換え宿主細胞の増殖培地(又は培地)中に分泌される外因性タンパク質を産生する、乾燥配合物を提供する。組換え宿主細胞は、原核宿主(例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)、バチルス(Bacillus)及び他の細菌宿主)、植物細胞、動物細胞、真菌細胞、特に糸状菌細胞及び酵母細胞等の真核生物宿主であってよい。ポリペプチドは、治療用ペプチド、予防用ペプチド、又は、ワクチン組成物中に使用され得るペプチドであってよい。
【0048】
別の特定の実施形態において、本発明は、組換え酵母の培地を含む乾燥配合物であって、前記酵母が、培地中に分泌される外因性タンパク質を産生する、乾燥配合物を提供する。「培地」は、酵母細胞を不含の発酵ブロス(一般的には、高密度の酵母発酵ブロスから得たもの)を意味する。「培地」は、当技術分野において、「増殖培地」としても知られている。発酵ブロスから酵母細胞を分離するための下流処理(発酵ブロス清澄化法としても知られている)においては、例えば遠心分離した後で深層ろ過を行うこと、遠心分離後にフィルターの支援によって強化された深層ろ過を行うこと、及び、精密ろ過法等、いくつかの選択肢が存在する。
【0049】
発酵ブロスが非常に複雑なスープ又は溶液であることは、明らかである。基本的には、発酵ブロスは、酵母が増殖し、複製し、さらには、治療的に関連するポリペプチドを分泌する、栄養素の海である。発酵ブロスは一般的に、酵母ペプトン(酵母抽出物を含む)、酵母自己溶解物及び不活性酵母等の発酵栄養素成分を含有する。これらの生成物の含量は、ビタミンB、ヌクレオチド、ミネラル、α-アミノ窒素含量及び他の生物活性な化合物に関して、異なる。
【0050】
可溶性透過物状成分の濃度を低下させ、保持された化合物(ここでは、対象とする組換えポリペプチド)の濃度をさらに上昇させるために使用することができる、(異なるメンブレン細孔経を用いる)いくつかの膜分離工程が、当業者に知られている。逆浸透又は過剰ろ過は、圧力勾配によって駆動される膜分離工程であり、メンブレンが、溶液の他の成分から溶媒を分離する。メンブレン構成は通常、クロスフローである。逆浸透を用いた場合、メンブレン細孔経は非常に小さく、これにより、非常に少量の非常に低い分子量の溶質(例えば、100の分画分子量)のみがメンブレンを通過できるようになる。限外ろ過は、圧力勾配によって駆動される別の膜分離工程であり、メンブレンが、溶媒和済みのサイズ及び構造の画分として、溶解及び分散された液体の成分を分画する。メンブレン構成は通常、クロスフローである。限外ろ過において、メンブレン細孔経は、逆浸透工程の場合より大きく、この結果、一部の成分は、水と一緒に細孔を通過することができる。限外ろ過は、10,000の分画分子量を用いる、分離/分画工程である。透析ろ過は、微小分子の浸透が可能な型のフィルターの使用によって分子サイズに基づいて、溶液の成分(塩、小タンパク質、溶媒等のような浸透可能な分子)を除去又は分離するものである、別の種類の限外ろ過である。タンパク質の精製及び分画の過程で一般的に使用されるさらに別の工程は、高塩濃縮物を増殖培地に添加することである。タンパク質は、高いイオン強度において、可溶度が顕著に異なり、したがって、「塩析」は、増殖培地中に存在するタンパク質の精製及び濃縮を支援するための非常に有用な手順である。硫酸アンモニウムは、水溶液中でアンモニウム及びスルフェートに解離する、高い可溶度を有する無機塩である。硫酸アンモニウムは、非常に可溶性であり、タンパク質構造を安定化させ、比較的低い密度を有し、比較的安価なものであるため、沈殿剤として特に有用である。
【0051】
したがって、さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0052】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌の培地中に存在する10kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0053】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌の培地中に存在する15kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0054】
特定の実施形態において、乾燥配合物中のFcドメインは、IgAFcドメインである。
【0055】
特定の実施形態において、乾燥配合物中の外因性ペプチドが、予防用又は治療用ペプチドであり、又は前記外因性ペプチドが、ワクチンであり、又はワクチンの部分を形成する。
【0056】
技術的及び構造的特徴の観点から本発明の乾燥配合物を規定することが難しいため、本発明者らは、これらの配合物が、特許請求の範囲において、「によって得ることができる」配合物として、より適切に規定されていると考えている。したがって、別の実施形態において、本発明は、タンパク質を組換え酵母の培地中に分泌させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた酵母に対して外因性のタンパク質を含む、乾燥配合物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、治療用タンパク質を組換え酵母の培地中に分泌させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた酵母に対して外因性の治療用タンパク質を含む、乾燥配合物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、予防用タンパク質を組換え酵母の培地中に分泌させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた酵母に対して外因性の予防用タンパク質を含む、乾燥配合物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、タンパク質を組換え酵母の培地中に分泌させ、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られた酵母に対して外因性のワクチンの部分を形成するタンパク質を含む、乾燥配合物を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、糸状真菌又は酵母細胞等の組換え真菌宿主の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を、経口投与可能なマトリックスに添加し、続いて、得られた混合物を乾燥させることによって得られた、乾燥配合物であって、前記培地が、前記組換え宿主に対して外因性の分泌ポリペプチドを含む、乾燥配合物を提供する。
【0057】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え宿主の培地と経口投与可能なマトリックスとの混合物を含む、乾燥配合物であって、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物を提供する。
【0058】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え宿主の培地と経口投与可能なマトリックスとの混合物を含む、乾燥配合物であって、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生し、前記配合物の含水量が、前記培地を濃縮した後で前記配合物を調製することによって低減される、乾燥配合物を提供する。
【0059】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え宿主の培地と経口投与可能なマトリックスとの混合物を含む、乾燥配合物であって、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生し、前記配合物の含水量が、前記配合物を調製する前に前記培地を乾燥させることによって低減される、乾燥配合物を提供する。
【0060】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え宿主の培地と経口投与可能なマトリックスとの混合物を含む、乾燥配合物であって、前記宿主が、前記培地中に分泌される外因性ポリペプチドを産生し、前記配合物の含水量が、前記配合物を乾燥させることによって低減される、乾燥配合物を提供する。
【0061】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え宿主に対して外因性である分泌ポリペプチドを含む組換え宿主の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を、経口投与可能なマトリックスに添加し、続いて、得られた混合物を混合させることによって得られた、乾燥配合物を提供する。
【0062】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌細胞に対して外因性の分泌ポリペプチドを含む組換え糸状宿主又は組換え酵母細胞等の組換え真菌細胞の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を、経口投与可能なマトリックスに添加し、続いて、得られた混合物を乾燥させることによって得られた、乾燥配合物を提供する。
【0063】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌細胞に対して外因性の分泌ポリペプチドを含む組換え糸状宿主又は組換え酵母細胞等の組換え真菌細胞の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を、経口投与可能なマトリックスに添加し、得られた混合物を乾燥させることによって得られた、乾燥配合物であって、前記乾燥させることが、噴霧乾燥によって実施される、乾燥配合物を提供する。
【0064】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え真菌細胞に対して外因性の分泌ポリペプチドを含む組換え糸状宿主又は組換え酵母細胞等の前記組換え真菌細胞の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子、及び経口投与可能なマトリックスを添加し、続いて、得られた混合物を乾燥させることによって得られた、乾燥配合物であって、前記乾燥させることが、凍結乾燥によって実施される、乾燥配合物を提供する。
【0065】
本明細書において規定された「経口投与可能なマトリックス」は、食品産業において、例えばデンプン、マルトデキストリン、豆乳タンパク質、セルロース、ペクチン及びグアーガム等のキャリアとして使用されている、製品である。特定の実施形態において、経口投与可能なマトリックスは、可食型マトリックスである。別の特定の実施形態において、経口投与可能なマトリックスは、可溶性食品グレード栄養素又は可溶性食品グレードマトリックス又は可溶性食品グレード物質である。
【0066】
<乾燥配合物>
大抵の場合、乾燥タンパク質は、カプセル、錠剤及び薄膜への変換を容易にする粉末形態にすることが、有利である。タンパク質溶液を乾燥粉末形態に変換するためのいくつかの乾燥法が、当技術分野において利用可能である。大部分の乾燥法は、フリーズドライ等の昇華、若しくは噴霧乾燥及び流動層乾燥等の蒸発、又は超臨界流体技術等の沈殿によって、溶媒を蒸発させるものである。これらの方法の中でも、噴霧乾燥及びフリーズドライは、真に最も一般的に使用されている、タンパク質溶液を乾燥させる工業的な方法である。凍結乾燥(等価な用語は、フリーズドライである。)は、バイオ医薬品から水分を除去するための処理法の1つであり、これらの製品の安定性、温度許容度及びシェルフライフを高めることができる。凍結乾燥は、工業的には十分に確立されているが、製造施設内でかなり大きなスペースを占める高価な設備を必要とする。凍結乾燥は、やはり、完了までに日数がかかる可能性があり、粉末状製品を必要とする製造業者は、この凍結乾燥という工程に造粒ステップを組み込まなければならない。したがって、凍結乾燥は、組換え酵母を除去した後に酵母発酵ブロスを凍結乾燥させることによって乾燥配合物を得るために、使用することができる。
【0067】
したがって、さらに別の実施形態において、本発明は、タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を製造するための方法であって、凍結乾燥によって前記培地を乾燥させることを含む、方法を提供する。
【0068】
噴霧乾燥は、バイオ医薬品を保存するための代替法であり、単一のステップで液体製剤を乾燥粉末に変換する工程である。この噴霧乾燥という工程は一般的に、最初に溶液を噴霧して微細な液滴に変え、次いで、これらの微細な液滴を、大きなチャンバの中で温かい気体の使用によって素早く乾燥させることによって、実施される。得られた乾燥粒子は、サイクロンを用いて収集される。噴霧乾燥は、噴霧ステップ中にバイオ医薬品をせん断応力に晒すが、これにより、タンパク質等の変化しやすいバイオ医薬品型化合物を不安定化する可能性がある。複雑な生物学的分子は、高いせん断応力に影響されやすいため、噴霧乾燥がより難しい。受けるせん断応力の量は、使用される噴霧装置の種類及び噴霧圧力に依存する。20psig未満の比較的低い圧力で動作することが可能であり、せん断応力を最小化し、複雑なバイオ医薬品を処理することができる、超音波ノズルが、好都合に使用される。噴霧乾燥は、タンパク質、酵素、抗体、ウイルス及び細菌等の多種多様なバイオ医薬品を対象にして実施されてきた。この噴霧乾燥という工程は水を除去し、バイオ医薬品の移動度を制限し、この結果、分解速度が著しく低下する。したがって、噴霧乾燥は、組換え酵母の除去後に酵母発酵ブロスを噴霧乾燥によって乾燥配合物を得るために使用され得る。
【0069】
したがって、さらに別の実施形態において、本発明は、タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を、前記培地中に産生するための方法であって、噴霧乾燥によって前記培地を乾燥させることを含む、方法を提供する。
【0070】
特定の実施形態において、噴霧乾燥の実施前に、二糖又は界面活性剤が培地に添加される。二糖及び界面活性剤は、凝集(Broadhead J.et al(1993)J.Pharm.Pharmacol.46(6)458-467)を防止し、さらには、タンパク質担持粉末の貯蔵容量を改善する(Adler M and Lee G(1999)J.Pharm.Sci.88,199-208)ことが、記述されている。
【0071】
さらに別の実施形態において、噴霧乾燥の実施前に、トレハロース及び/又はソルビトールが培地に添加されてもよい。30重量%ソルビトールの存在が、噴霧乾燥中の医薬用タンパク質の凝集を大幅に低減し、さらには、乾燥貯蔵安定性も改善されることが記述されおり(Maury M.et al.(2005)Eur.J.of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 59,251-261)、類似した効果が、トレハロースに関しても記述されている。
【0072】
したがって、特定の実施形態において、噴霧乾燥工程の実施前に、超音波による粘度低下が実施される。超音波による粘度の低下により、溶液により多くの粒子を詰め込むことができ、これにより、蒸発させなければならない液体の体積が低減される。超音波による粘度低下により、エネルギー消費が低減され、処理量が高められる。
【0073】
噴霧乾燥は、設備、施設及び実用品に関しては、より低いコストでよりスケーラブルなものである。さらに、噴霧乾燥に関するサイクル時間は、日数ではなく時間であり、したがって、作業コストは、凍結乾燥の作業コストより低いことが可能である。
【0074】
<食品製品>
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書において先述された乾燥配合物を含む、食品製品を提供する。
【0075】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書において先述された乾燥配合物を含む、食品製品であって、機能性食品製品である、食品製品を提供する。
【0076】
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書において先述された乾燥配合物を含む、食品製品であって、薬用食品製品である、食品製品を提供する。
【0077】
いくつかの食品製品は、本発明によって調製することができる。食品製品の非限定的なリストは、食事代替品、スープ、麺類、アイスクリーム、ソース、ドレッシング、スプレッド、スナック、シリアル、飲料、パン、ビスケット、他のベーカリー製品、スイーツ、バー型食品、チョコレート、チューインガム、乳製品及びダイエット製品を含む。後に挙げた製品及びどのようにしてそれらの製品を調製できるかについての論述は、US8105592(20頁、62行目~23頁、35行目)において提供されている。
【0078】
さらに別の実施形態において、本発明は、真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、IgAFcタンパク質と融合したタンパク質が、予防用又は治療用タンパク質又はワクチン成分である、経口医薬組成物を提供する。
【0079】
さらに別の実施形態において、本発明は、真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、IgAFcと融合したタンパク質が、免疫グロブリン単一可変ドメインである、経口医薬組成物を提供する。
【0080】
さらに別の実施形態において、本発明は、真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、IgAFcと融合したタンパク質が、VHHドメインである、経口医薬組成物を提供する。
【0081】
さらに別の実施形態において、本発明は、真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、IgAFcと融合したタンパク質が、VHHドメインであり、VHHドメインが、人為的に導入されたN-グリコシル化部位を含有する、経口医薬組成物を提供する。
【0082】
さらに別の実施形態において、本発明は、N-グリカン及び/又はO-グリカンによって修飾された真菌産生タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、糖タンパク質の分子量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又はそれより多くが、前記N-又はO-グリカンによって占められる、経口医薬組成物を提供する。
【0083】
さらに別の実施形態において、本発明は、N-グリカン及び/又はO-グリカンによって修飾された真菌産生IgAFc融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、糖タンパク質の分子量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又はそれより多くが、前記N-又はO-グリカンによって占められる、経口医薬組成物を提供する。
【0084】
さらに別の実施形態において、本発明は、N-グリカン及び/又はO-グリカンによって修飾された真菌産生IgAFc-融合タンパク質を含む、経口医薬組成物であって、糖タンパク質の分子量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又はそれより多くが、前記N-又はO-グリカンによって占められ、IgAFcと融合したタンパク質が、免疫グロブリン単一可変ドメインである、経口医薬組成物を提供する。
【0085】
注目すべきことに、ハイパーマンノシル構造から主になるN-グリコシル化構造は、酵母中で組換え産生されたIgAFc融合タンパク質に、分子量の50%超を加える。これは、図5において見受けられる(グリコシル化されたV2A-IgAFc融合物と、脱グリコシル化されたV2A-IgAFc融合タンパク質との差異を参照されたい。)。IgAFc融合タンパク質が酵母中の構成的GAPプロモーターの制御下で産生される場合、そのハイパーグリコシル化は、IgAFc融合タンパク質がメタノールオキシダーゼ誘導性プロモーター(AOXプロモーター)の制御下で産生される場合に比べてさらにより豊富であることにも、注目すべきである(図6を参照されたい。)。
【0086】
さらに別の実施形態において、本発明は、経口投与による使用のための、真菌産生IgAFc融合タンパク質を提供する。
【0087】
さらに別の実施形態において、本発明は、経口投与による使用のための、真菌産生IgAFc融合タンパク質であって、IgAFcと融合したタンパク質が、免疫グロブリン単一可変ドメインである、真菌産生IgAFc融合タンパク質を提供する。
【0088】
さらに別の実施形態において、本発明は、経口投与による使用のための、真菌産生IgAFc融合タンパク質であって、IgAFcと融合したタンパク質が、VHHドメインである、真菌産生IgAFc融合タンパク質を提供する。
【0089】
さらに別の実施形態において、本発明は、経口投与による使用のための、真菌産生IgAFc融合タンパク質であって、IgAFcと融合したタンパク質が、VHHドメインであり、VHHドメインが、人為的に導入されたN-グリコシル化部位を含有する、真菌産生IgAFc融合タンパク質を提供する。
【0090】
さらに別の実施形態において、本発明は、N-グリカン及び/又はO-グリカンによって修飾された、経口投与による使用のための、真菌産生タンパク質であって、糖タンパク質の分子量の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又はそれより多くが、前記N-又はO-グリカンによって占められる、真菌産生タンパク質を提供する。
【0091】
本発明を特定の機構に限定するわけではないが、本発明者らは、組換え(融合)タンパク質において真菌細胞によって生成されたハイパーマンノシル化グリカン構造が、このハイパーマンノシル化組換えタンパク質が経口送達に適するように、消化器官において組換えタンパク質を保護すると考えている。
【0092】
「単一可変ドメイン」という用語に等価である「免疫グロブリン単一可変ドメイン(immunoglobulin single variable domain)」(「ISVD」と略す)という用語は、抗原結合部位が存在し、単一の免疫グロブリンドメインによって形成される、分子を規定している。これにより、免疫グロブリン単一可変ドメインが、「従来の」免疫グロブリン又はそのフラグメントから引き離され、2個の免疫グロブリンドメイン、特に2個の可変ドメインが相互作用して、抗原結合部位を形成する。一般的に、従来の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とが相互作用して、抗原結合部位を形成する。この場合、VHとVLとの両方の相補性決定領域(CDR)が、抗原結合部位に寄与し、すなわち、合計で6個のCDRが、抗原結合部位形成に関与する。
【0093】
上記規定を考慮すると、従来の4本鎖抗体(IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE分子等。当技術分野において既知のもの)、又は、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド結合型Fv若しくはscFvフラグメント等のFvフラグメント、又は、このような従来の4本鎖抗体に由来したダイアボディ(diabody)(すべて当技術分野において既知のもの)の抗原結合ドメインは通常、免疫グロブリン単一可変ドメインであると考えられず、理由としては、この場合においては、抗原の各エピトープへの結合は通常、1個の(単一の)免疫グロブリンドメインによって起きるのではなく、軽鎖及び重鎖可変ドメイン等の1組の(関連する)免疫グロブリンドメインによって起き、すなわち、各抗原のエピトープに一体的に結合する免疫グロブリンドメインのVH-VL組によって起きるという点がある。
【0094】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、さらなる免疫グロブリン可変ドメインと組を形成することなく抗原のエピトープに特異的に結合することができる。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のVH/VHH又はVLドメインによって形成される。したがって免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、3個以下のCDRによって形成される。
【0095】
したがって、単一可変ドメインは、単一可変ドメインが、単一抗原結合単位(すなわち、単一抗原結合ドメインが別の可変ドメインと相互作用して、機能的抗原結合単位を形成する必要がないような、単一可変ドメインから本質的になる機能的抗原結合単位)を形成できる限り、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)若しくは適切なそのフラグメントであってもよいし、又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列又はVHH配列)若しくは適切なそのフラグメントであってもよい。
【0096】
本発明の一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)であり;より詳細には、免疫グロブリン単一可変ドメインは、従来の4本鎖抗体に由来した重鎖可変ドメイン配列であってもよいし、又は重鎖抗体に由来した重鎖可変ドメイン配列であってもよい。
【0097】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、1つの(単一の)ドメイン抗体(又は、1つの(単一の)ドメイン抗体としての使用に適したアミノ酸配列)、「dAb」若しくはdAb(又は、dAbとしての使用に適したアミノ酸配列)、若しくはNanobody(本明細書において規定されたもので、限定されるわけではないが、VHHを含む);他の単一可変ドメイン、又は、それらのいずれか1つの任意の適切なフラグメントであってよい。
【0098】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(本明細書において規定された)Nanobody(R)であってもよいし、又は適切なそのフラグメントであってもよい。[注記:Nanobody(R)、Nanobodies(R)及びNanoclone(R)は、Ablynx N.V.の登録商標である。]。Nanobodiesの概説に関しては、下記のさらなる記述、及び、例えばWO08/020079(16頁)において記述されたもの等、下記のさらなる記述の中で引用された従来技術を参照する。
【0099】
VHH、VHドメイン、VHH抗体フラグメント及びVHH抗体としても知られた「VHHドメイン」は元々、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を欠いた抗体」。Hamers-Casterman et al(1993)Nature 363:446-448)の抗原も結合する免疫グロブリン(可変)ドメインとして記述されてきた。「VHHドメイン」という用語は、これらの可変ドメインを、従来の4本鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書において「Vドメイン」又は「VHドメイン」と呼ばれる)及び従来の4本鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書において「Vドメイン」又は「VLドメイン」と呼ばれる)から区別するために選択されている。VHH及びNanobodiesのさらなる記述に関しては、Muyldermans(Reviews in Molecular Biotechnology 74:277-302,2001)による総説論文を参照し、さらには、the Vrije Universiteit BrusselのWO94/04678、WO95/04079及びWO96/34103;UnileverのWO94/25591、WO99/37681、WO00/40968、WO00/43507、WO00/65057、WO01/40310、WO01/44301、EP1134231及びWO02/48193;the Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)のWO97/49805、WO01/21817、WO03/035694、WO03/054016及びWO03/055527;Algonomics N.V.及びAblynxN.V.のWO03/050531;the National Research Council of CanadaのWO01/90190;the Institute of AntibodiesのWO03/025020(=EP1433793);並びに、AblynxN.V.のWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787及びWO06/122825並びにAblynxN.V.のさらなる公開特許出願という、概括的な背景技術として言及される特許出願も参照する。これらの出願において言及されたさらなる従来技術も同様に参照し、特に、国際特許出願WO06/040153の41~43頁で言及された参考文献のリストも同様に参照し、これらのリスト及び参考文献は、参照により本明細書に組み込む。これらの参考文献において記述されているように、Nanobodies(特に、VHH配列及び部分的にヒト化されたNanobodies)は特に、フレームワーク配列のうちの1個以上に含まれる1個以上の「ホールマーク残基(Hallmark residue)」の存在によって特徴付けることができる。Nanobodiesのヒト化及び/又はラクダ化、並びに、他の修飾、部分若しくはフラグメント、誘導体又は「Nanobody融合物」、多価構築体(リンカー配列に関するいくつかの非限定的な例を含む)及びNanobodiesの半減期を延長するための異なる修飾並びにこれらの調製を含む、Nanobodiesのさらなる記述は、例えばWO08/101985及びWO08/142164において見出すことができる。Nanobodiesのさらなる概説に関しては、例えばWO08/020079(16頁)において記述されたもの等、本明細書において引用された従来技術を参照する。
【0100】
「Dab」、「ドメイン抗体」及び「dAb」(「ドメイン抗体」及び「dAb」という用語は、GlaxoSmithKline group of companiesの商標として使用されている。)としても知られている「ドメイン抗体」は、例えばEP0368684、Ward et al.(Nature341:544-546、1989)、Holt et al.(Tends in Biotechnology 21:484-490,2003)及びWO03/002609において記述されており、さらには、例えばWO04/068820、WO06/030220、WO06/003388及びDomantis Ltd.の他の公開特許出願においても記述されてきた。ドメイン抗体は、ラクダではないほ乳類のVH又はVLドメイン、特にヒト4本鎖抗体に本質的に対応する。単一の抗原結合ドメインとしてエピトープを結合させるため、すなわち、それぞれVL又はVHドメインと組を形成することなくエピトープを結合させるため、このような抗原結合特性に対する特異的な選択が、例えばヒト単一VH又はVLドメイン配列のライブラリーの使用によって、必要とされる。ドメイン抗体は、VHHと同様に、約13~約16kDaの分子量を有しており、完全ヒト配列に由来する場合、例えば人間における治療目的に使用ためにヒト化を必要としない。
【0101】
単一可変ドメインは、特定のサメの種に由来し得ることにも留意すべきである(例えば、いわゆる「IgNARドメイン」。例えば、WO05/18629を参照されたい。)。
【0102】
したがって、本発明の意味において、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「単一可変ドメイン」という用語は、非ヒト型の供給源、好ましくはラクダ、好ましくはラクダ重鎖抗体に由来したポリペプチドを含む。これらのポリペプチドは、先述のとおり、ヒト化されていてもよい。さらに、これらの「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「単一可変ドメイン」という用語は、例えばDavies及びRiechmann(FEBS 339:285-290,1994;Biotechnol.13:475-479, 1995;Prot.Eng.9:531-537,1996)並びにRiechmann及びMuyldermans(J.Immunol. Methods 231:25-38,1999)において記述されたような、非ラクダ型の供給源、例えば、マウス又はヒトに由来しており、「ラクダ化」された、ポリペプチドを含む。
【0103】
さらに別の実施形態において、本発明は、タンパク質が存在する組換え酵母の培地を乾燥配合物を前記培地の中に産生するための方法であって、
i) タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記タンパク質を培地中に分泌させること、
ii) 培地から組換え酵母細胞を分離すること、
iii) 膜分離工程において前記培地を濃縮すること、及び、
iv) 前記濃縮された培地を乾燥させること
を含む、方法を提供する。
【0104】
組換え酵母を作製するための方法は、当技術分野において周知である。簡単に言うと、組換えタンパク質をコードするキメラ遺伝子を含む発現ベクターが、組換え酵母中に存在する。発現ベクターは、ゲノムに一体化されてもよいし、又は、組換え酵母中で自己複製することも可能である。宿主クロモサムに一体化するベクターは、選択がない場合における有糸分裂安定性のため、最も幅広く使用されている。しかしながら、エピソーム発現ベクターが、一部の酵母系には存在する。発現ベクターは一般的に、強力な酵母プロモーター/ターミネーター及び酵母選択マーカーカセットを含有する。大部分の酵母ベクターは、クローニングを容易にするために、E.コリ(E.coli)中で繁殖及び増幅することが可能であり、したがって、やはり、E.コリの複製に由来したアンピシリン選択マーカーが含有する。最後に、数多くの酵母発現ベクターは、細胞から分泌される状態になるように不均一タンパク質を効率的に仕向ける効率的な分泌リーダー(例えば、接合因子又はOst1配列のリーダー(Fitzgerald I&Glick BS(2014)Microbial cell factories 13,1))の下流側において、任意選択により遺伝子をクローニングする能力を備える。キメラ遺伝子は、有用なポリペプチドをコードする組換え遺伝子に動作可能に連結されたシグナル配列をコードする、核酸配列に動作可能に連結された、プロモーターを含む。プロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターであってよい。
【0105】
さらに別の実施形態において、本発明は、タンパク質が存在する組換え酵母の発酵ブロスを含む乾燥配合物を前記培地の中に産生するための方法であって、
i) タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記治療用タンパク質を培地中に分泌させることと、
ii) (組換え酵母及び培地)を含む前記発酵ブロスを乾燥させることと
を含む、方法を提供する
【0106】
さらに別の実施形態において、本発明は、酵母細胞をさらに含む、本発明の乾燥配合物を提供する。
【0107】
さらに別の実施形態において、本発明は、非組換え酵母細胞をさらに含む、本発明の乾燥配合物を提供する。
【0108】
さらに別の実施形態において、本発明は、外因性タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を、前記培地及び非組換え酵母細胞の中に産生するための方法であって、
i) 外因性タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記タンパク質を培地中に分泌させることと、
ii) 培地から組換え酵母細胞を分離すること、
iii) 膜分離工程において前記培地を濃縮することと、
iv) 非組換え酵母細胞を培地に添加することと、
v) 前記培地を乾燥させることと
を含む、方法を提供する。
【0109】
さらに別の実施形態において、本発明は、外因性タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を、前記培地及び非組換え酵母細胞の中に産生するための方法であって、
i) 外因性タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記外因性タンパク質を培地中に分泌させることと、
ii) 培地から組換え酵母細胞を分離することと、
iii) 前記培地を乾燥させることと、
iv) 非組換え酵母細胞の乾燥配合物を、ステップiii)において得られた乾燥済みの培地に添加することと、
を含む、方法を提供する。
【0110】
さらに別の実施形態において、本発明は、酵母発酵ブロス中に存在するタンパク質とは異なるタンパク質に富んだ配合物をさらに含む、本発明の乾燥配合物を提供する。
【0111】
さらに別の実施形態において、本発明は、外因性タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を、前記培地、及び、酵母発酵ブロス中に存在するタンパク質とは異なるタンパク質に富んだ配合物の中に産生するための方法であって、
i) 外因性タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記タンパク質を培地中に分泌させることと、
ii) 培地から組換え酵母細胞を分離することと、
iii) タンパク質に富んだ配合物を培地に添加することと、
iv) 前記培地を乾燥させることと
を含む、方法を提供する。
【0112】
さらに別の実施形態において、本発明は、治療用タンパク質が存在する組換え酵母の培地を含む乾燥配合物を、前記培地及び非組換え酵母細胞の中に産生するための方法であって、
i) 治療用タンパク質を含む組換え酵母を培養し、前記治療用タンパク質を培地中に分泌させることと、
ii) 培地から組換え酵母細胞を分離することと、
iii) 前記培地を乾燥させることと、
iv) タンパク質に富んだ配合物の乾燥配合物を、ステップiii)において得られた乾燥済みの培地に添加することと
を含む、方法を提供する。
【0113】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え酵母の培地を含む乾燥配合物であって、前記酵母が、培地中に分泌される外因性Fc融合タンパク質を産生する、乾燥配合物を提供する。
【0114】
さらに別の実施形態において、本発明は、組換え酵母の培地を含む乾燥配合物であって、前記酵母が、培地中に分泌される外因性Fc融合タンパク質を産生し、前記Fcドメインが、IgAFcドメインである、乾燥配合物を提供する。
【0115】
技術的特徴の観点から本発明の乾燥配合物を構造的に記述することが難しいため、「によって得ることができる」というクレームの表現形式によって乾燥配合物を規定することの方が、より適切である。したがって、別の実施形態において、本発明は、前記外因性タンパク質を組換え酵母の培地中に分泌し、続いて、前記培地を乾燥させることによって得られたFcドメインとポリペプチドとの外因性融合タンパク質を含む、乾燥配合物を提供する。
【0116】
<Fc融合タンパク質>
Fc領域(結晶形成可能フラグメント領域)は、Fcリセプターと呼ばれる細胞表面リセプター及び補体系の一部のタンパク質と相互作用する、免疫グロブリンのテール領域である。特に想定される実施形態によれば、Fc融合タンパク質中のFc領域は、免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプに由来のFc領域である。これは、IgGサブクラス(人間では、IgG1、2、3、4)のいずれであってもよい。IgGの場合、IgA及びIgDアイソタイプと同様に、Fc領域は、抗体の2本の重鎖にある第2及び第3の定常ドメインに由来した、2個の同一のタンパク質フラグメントから構成される。別の実施形態において、融合タンパク質中のFc部分は、IgA抗体に由来する。本明細書において使用されている「Fc融合タンパク質」は、Fc領域がタンパク質又はペプチドに融合した、融合タンパク質である。特定のクラスのFc含有タンパク質は、抗原を拘束することができる、Fc含有タンパク質である。例は、抗体であり、又は、Fc領域が結合形成作用のある部分(例えば、nanobody、Fab領域、F(ab’)領域)に結合している、融合タンパク質である。さらに、本発明は、ヒト配列に限定されない。例えば、Fc領域が、マウスのFc領域であり、又は、ラクダ、アカゲザル、イヌ、ウシ、モルモット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、ラット、ウサギ、ネコ又は任意の他のほ乳類のFc領域であることも、可能である。Fc領域が、ほ乳類ではない動物(例えば、ニワトリ)のものであることさえも、可能である。具体例において、結合形成作用のある部分は、非抗体型足場であってよい。非抗体型足場は、広義には、2種の構造的クラスに属し、すなわち、ドメインサイズ化合物(6~20kDaの分子量)及び拘束性ペプチド(2~4kDa)に属する。ドメインサイズの足場には、Affibodies、Affilins、Anticalins、Atrimers、DARPins、FN3足場(例えば、Adnectins及びCentyrins)、Fynomers、Kunitzドメイン、Pronectins及びOBodiesが挙げられるが、Avimers、二環式ペプチド及びCys―knotsは、ペプチド同族である(包括的な総説に関しては、Vazquez-Lombardi R et al(2015)Drug Discovery Today 20,10,1271を参照されたい。)。
【0117】
<医薬配合物>
特定の実施形態において、本発明の乾燥配合物は、エンテリックコーティング又は遅延放出性コーティングをさらに含んでもよい固体状経口医薬剤形をもたらすために、利用可能な任意の軟質又は硬質カプセル技術を用いてカプセル封入されていてもよい。
【0118】
さらに別の態様において、乾燥配合物を液体中に溶解させて、エマルションを得ることができる(Moreira TC et al(2016)Colloids Surf B.Biointerface 143:399-405を参照されたい。)。したがって、特定の態様において、医薬配合物は、液体である。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、10%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、9%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、8%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、7%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、6%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、5%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、4%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、3%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は、液体であり、2%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、1%(w/w)未満の水を含む。一態様において、本発明による医薬配合物は液体であり、0%(w/w)未満の水を含む。
【0119】
本発明の特定の態様において、医薬配合物は、医薬配合物において一般的に見受けられるさらなる賦形剤を含んでもよく、このような賦形剤の例には、限定されるわけではないが、抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定剤、保存料、風味剤、甘味料、及び、参照により本明細書に組み込むHandbook of Pharmaceutical Excipients,Rowe et al.,Eds.,7th Edition,Pharmaceutical Press(2012)において記述されたような他の成分が挙げられる。
【0120】
これらのさらなる賦形剤は、合計での医薬配合物に対して約0.05~5重量%の量であってよい。抗酸化剤、抗菌剤、酵素阻害剤、安定剤又は保存料は一般的に、合計での医薬配合物のうち、最大で約0.05~1重量%を占める。甘味料又は香味剤は一般的に、合計での医薬配合物のうち最大で約2.5重量%又は5重量%を占める。
【0121】
本発明による経口医薬配合物は、固体剤形として配合されてもよい。
【0122】
本発明による経口医薬配合物は、固体剤形として配合されてもよく、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、丸剤、ロゼンジ、散剤及び顆粒剤からなる群より選択することができる。
【0123】
本発明による経口医薬配合物は、多粒子型剤形として配合されてもよい。
【0124】
本発明による経口医薬配合物は、多粒子型剤形として配合されてもよく、ペレット、微粒子、ナノ粒子、軟質又は硬質カプセルに入った液体又は半固体充填型配合物、エンテリックコーティングされた軟質-硬質カプセルからなる群より選択することができる。
【0125】
一態様において、経口医薬配合物は、エンテリックコーティング等の1種以上のコーティングを有するように調製することもできるし、又は、当技術分野において周知の方法による遅延放出性配合物として配合することもできる。
【0126】
一態様において、本発明による医薬配合物は、医薬品の調製のために使用される。
【0127】
本明細書において使用されている「界面活性剤」という用語は、表面、及び、限定されるわけではないが液体と空気との界面、液体と液体との界面、液体と容器との界面又は液体と任意の固体との界面等、界面に吸着することができる、任意の物質、特に清浄剤を指す。
【0128】
本明細書において使用されているときの「薬物」、「治療用」、「医薬品」又は「薬」という用語は、予防用途、治療用途又はワクチン用途のために使用され得る医薬配合物中に使用された活性成分を指し、したがって、本特許出願において「高分子型治療用」又は「治療用高分子」又は「予防用高分子」又は「ワクチン高分子」として規定されたものも指す。
【0129】
<予防用/治療/ワクチン>
ポリペプチドを含む本発明の乾燥配合物は、明白ながらペプチドの性質に応じて、種々の疾患のために使用され得る。例えば、ペプチドが治療用ペプチドである場合、いくつかの疾患には、限定されるわけではないが、神経変性性障害、がん、血液障害、免疫障害、心臓障害、肝臓障害、呼吸器障害、吸収不良障害、糖尿病、ウイルス感染、真菌感染、細菌感染、眼病、希少代謝障害及び高血圧が挙げられる。
【0130】
特定の実施形態において、本発明は、胃腸障害の処置における使用のための、本発明の乾燥配合物を提供する。胃腸障害の非限定的な例は、過敏性腸症候群、便秘、痔核(例えば、内痔核)、肛門裂創、憩室症、結腸ポリープ、結腸がん、感染性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性大腸炎、放射線大腸炎及び腸管粘膜炎を含む。
【0131】
さらに別の特定の実施形態において、本発明は、口唇ヘルペス、口内炎、鵞口瘡、白板症、口内乾燥症、歯肉、口臭、虫歯、歯周疾患(例えば、歯肉炎)、口腔カンジダ症、口腔タンジュンヘルペスウイルス感染、口腔ヒトパピローマウイルス感染、再発性アフタ性潰瘍、口腔咽頭がん及び口腔粘膜炎等の口腔(又は口唇)障害の治療における使用のための、本発明の乾燥配合物を提供する。
【0132】
本発明の乾燥配合物中に存在する治療用タンパク質は、モノクローナル抗体、成長因子及びインターロイキン等を含む。別の態様において、外因性ポリペプチドは、ワクチンを目的として使用され得る。特に、外因性ポリペプチドは、ワクチンとして単独で使用することもできるし、又は、ワクチン組成物の部分を形成することもできる。
【0133】
<組換え酵母>
特定の実施形態において、本発明の乾燥配合物を調製するために使用される組換え酵母は、GRASステータスを獲得した酵母種である。GRASは、一般に安全と認められる(Generally Regarded as Safe)ことを意味する。GRASステータスを有する酵母には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及びクルイウェロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)等の酵母が挙げられる。組換え酵母中における治療用タンパク質の産生は、当業者に周知である。酵母ピキア・パストリスに関しては、例えば、Julien C(2006)BioProcess International,January,p.22-31の総説が存在しており、サッカロマイセス・セレビシエに関しては、例えば、Nielsen J(2013)Bioengineered 4:4,207-211の総説が存在しており、ハンセヌラ・ポリモルファに関しては、Cox H.et al(2000)Yeast,Volume 16,13,pp.1191-1203の総説が存在しており、クルイウェロマイセス・ラクチスに関しては、van Ooyen AJJ et al(2006)FEM Yeast Res 6,381-392の総説が存在しており、ヤロウィア・リポリティカに関しては、Madzak C et al(2004)J.Biotechnol.109(1-2):63-81の総説が存在する。
【0134】
本明細書においては特定の実施形態、特定の構成並びに材料及び/又は分子が、改変組換え酵母細胞及び本発明による方法に関して論述されてきたが、形態及び詳細に関する様々な変更又は修正が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなされ得ることを理解すべきである。下記の例は、特定の実施形態をより良く説明するために提供されており、本出願を限定するものとして考えるべきでない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0135】
<1.経口送達されるピキア産生モノマー型VHH-IgAFc融合物は、子ブタにおけるF4-ETEC感染の予防において有効である>
事前に作製され、アラビドプシス種子において評価されたものである(Virdi et al(2013)110、29、11809-11814を参照されたい。)、V2A及びV3Aと呼ばれるモノマー型VHH-IgAFc融合物を、ここで、やはり酵母ピキア・パストリス及びダイズ種子において産生した。簡単に言うと、重鎖のみのラマ抗体(VHH)を、F4ETEC線毛に対するように作製した。選択されたF4 ETEC VHHを、ブタIgAのコドン最適化部分にグラフト化した。得られたVHH-IgAFc融合物は、V2A及びV3Aと呼ぶ。F4-ETEC先端接着抗原-FaeGコーティングされたウェルを用いるELISAを使用して、機能的VHH-IgAFc融合物の発現レベルを評価し、ホースラディッシュペルオキシダーゼに共役したanti-pig IgAによって検出した。図1は、ピキアクローン(図1Aを参照されたい。)又はダイズ種子ストック(図1Bを参照されたい。)のスクリーニングの典型例を示している。20個の個々のコロニーを、ピキア産生抗体V2A及びV3Aのそれぞれについてスクリーニングした。同様に、10~12個の種子を、形質転換ダイズ事象のそれぞれからスクリーニングした。このような5つの事象を、V2A及びV3Aのそれぞれについてスクリーニングした。高発現種子ストックを保持しておき、これらのストックの一部を、やはり、T3ホモ接合型種子ストックを産生するために使用した。ダイズ産生V2A及びV3Aの発生レベルは、種子重量に対して約0.2%であると計算されたが、これは、アラビドプシス種子における発現レベルに類似していた。分泌されたピキアV2A及びV3Aの発現レベルは、100mg/Lの高さだった(クマシーブルーによって染色されたSDS-PAGEゲルを対象にして分析した)。しかしながら、ELISAに基づいた機能的分析により、1mlのピキア上澄みが、1mlのダイズ又はアラビドプシス種子抽出物(5mgの種子)に等価だったことが示された(図2を参照されたい。)。おそらくは、このELISA構成においては、ピキアグリカンによる遮へいのため、ピキア産生VHH-IgAFcの定量化が妨害されたのだと思われる。実際、ピキア上澄み(図2Cを参照されたい。)及びダイズ種子抽出物(図1Dを参照されたい。)の免疫ブロット法分析は、差次的なグリコシル化の明確なホールマークを示している。ピキアVHH-IgAFcは、50k Daより高く(約52kDa)移動しているが、ダイズ産生VHH-IgAFcは、50kDa未満(約48kDa)である(図1C及び図1Dを参照されたい。)
【0136】
<ピキア及びダイズ産生VHH-IgAFc融合物は、子ブタにおけるETEC感染を予防する>
V2A及びV3A(用量 1日当たりブタ1匹ごとに5mg)のピキア及びダイズ種子産生VHH-IgAFc抗体混合品のインビボ有効性を、子ブタ飼料-チャレンジ実験において評価した。事前に作製したアラビドプシス産生モノマー型VHH-IgAFc(Virdi et al.,2013を参照されたい。)PNAS110、29、11809-11814)は、基準物質(アラビドプシス群)として作用したが、抗体を含有しない飼料(亜麻飼料、図3A)は、陰性対照として作用した。これら群のそれぞれに存在する、F4-ETECに対して血清反応陰性であり、F4リセプター(F4R)遺伝子型陽性である、6匹の子ブタは、10日の期間にわたって実験用飼料を受容した。3日目に、すべての子ブタには、連続する2日間(0日目及び1日目)にわたって、1010個のF4-ETEC細菌をチャレンジし、得られた感染の効果は、チャレンジ用の株の毎日のシェディングを14日目まで分析することによってモニタリングした(図3B)。子ブタは、14日目に安楽死させ、この時点で、空腸、回腸及び盲腸の内容物中のF4-ETEC細菌も測定した(表1)。
【0137】
【表1】
【0138】
特記事項:検視観察により、アラビドプシス群に属する子ブタ-18は、小腸の極度の絞扼の結果、詰まりやすい経路が生じることにより、臍ヘルニアを有していたことが明らかにされた。したがって、子ブタ-18のデータは、シェディングのグラフ(図3B)又は統計学的分析(データは、表1に報告されている。)の中に含まれていない。
【0139】
安楽死の後にはやはり、腸管絨毛エンテロサイトを使用して実施されたF4-ETEC接着アッセイが、細胞表面250μm当たり41~85個の細菌が結合していることが示されており、多数のF4リセプター(F4R)の形質発現が二重に確認されている。したがって、子ブタ-18を除いて、すべての子ブタから得たデータを使用して、モノマー型VHH-IgAFcの有効性を評価した。
【0140】
シェディングのデータにより、ピキア、アラビドプシス種子又はダイズ種子において産生された1日当たりブタ1匹ごとに5mgの用量のモノマー型VHH-IgAFc V2A及びV3A混合物は、ETEC感染をうまく予防したことが明らかにされた。VHH-IgAFc受容群は、有意に減じたシェディングを有していた(図3B、表1を参照されたい。)。これらの3つの群における最も高い平均シェディングを2日目に記録したが、ダイズ群、ピキア群及びアラビドプシス群のそれぞれに関しては、糞便1グラム当たり4.5(log10)、3.7(log10)及び4(log10)個の細菌だった。これらの3つの群において、後続する日では、シェディングがlog基準で低下した。5日目における平均シェディングを、ダイズ群、ピキア群及びアラビドプシス群のそれぞれにおいて、糞便1グラム当たり2.6(log10)、2(log10)及び2,7(log10)個の細菌に到達させる。その後も、これらの群におけるシェディングは低いままであり、これらの3つの群の子ブタの一部に関しては、しばしば、検出可能なレベル(糞便1グラム当たり2(log10)個の細菌)を下回っていた(表1を参照されたい。)。対照的に、飼料に取り込まれた状態の抗体を受容していない群(対照群)の子ブタは、チャレンジ済みの細菌の力価が高く、3日目から6日目までで、平均で、糞便1グラム当たり6.3(Log10)個の細菌より高い、長期のシェディングを有しており、その後は、7日目(糞便1グラム当たり5.3(log10)個の細菌)及び8日目(糞便1グラム当たり3.3(log10)個の細菌)に低下し、9日目までに検出レベルを下回った。長期的な高いシェディングにより、チャレンジ済みの菌株は、確実な感染を効果的に行うことができ、対照群における小腸にうまくコロニー形成することが可能であったことが、指し示されている。一方、アラビドプシス群、ピキア群及びダイズ群における飼料に取り込まれた状態のVHH-IgAFc抗体を受容した子ブタはすべて、チャレンジ直後にF4-ETECの素早い低下を示した。これにより、これらの飼料中のモノマー型VHH-IgAFcは、F4-ETECがエンテロサイトに付着し、コロニー形成し、感染を確実にすることがないようにしたことを示している。これは、抗F4-ETECセロコンバージョンによってさらに裏付けられている(図3Cを参照されたい。)。ピキア群、ダイズ群及びアラビドプシス群に属する子ブタの大部分は、免疫系へのF4-ETEC病原体の曝露が限定的であるため、より小さい免疫反応を開始したが、対照群の抗F4-ETEC血清IgG、IgM及びIgAレベルの平均力価は、7日目まで着実に増加し、14日目まで上昇が続いた。
【0141】
シェディング及びセロコンバージョンの結果は、アラビドプシス、ダイズ又はピキア中で産生されたものである等しい比率のVHH-IgAFc抗体V2A及びV3Aから構成された、F4-ETECに対する5mgの用量のモノマー型VHH-IgAFc配合物を、飼料に取り込ませた状態で送達することが有効であることを、明確に実証している。さらに、ピキア産生抗体の場合、インビボ有効性の結果により、分泌VHH-IgAFcを保有する培地の処理及び配合は、胃部適応症のための飼料に基づいたピキア産生分子の安定的な組み込み及び経口送達に適することが、十分に確認されている。
【0142】
<実施例1の材料及び方法>
VHH-IgAFcの発現
アラビドプシス:以前から公になっていたモノマー型V2A-IgAFc及びV3A-IgAFc融合物を発現するアラビドプシス系統(Virdi et al.(2013)PNAS110、29、11809-11814)を、温室内で増やし、V2A-IgAFc及びV3A-IgAFcを産生する約100グラムの種子を産生させて、チャレンジ実験におけるアラビドプシス群のための抗体含有飼料を配合した。
【0143】
ダイズ:それぞれ抗体V2A及びV3AのためのVHH-IgAFc融合遺伝子を保有するプラスミドpEV2A及びpEV3A(Virdi et al.(2013)PNAS 110,29,11809-11814)を、Gateway(R)クローニングの取扱い説明書(Invitrogen)に従って除草剤Basta(R)を使用して、形質転換体の選択のためのホスフィノトリシン耐性を付与する遺伝子を保有するpGW43 multisite gatewayカセット(Karimi et al.(2002)Trends Plant Sci 7,193-195)中に組み換えた。得られた発現ベクターはpMXV2A及びpMXV3Aと名付けた後、ダイズ植物(栽培品種Williams82)の形質転換のために、the Plant Transformation Facility of Iowa State UniversityのPaz MM et al.(2006)Plant Cell Rep.25,206-213)によって記述された方法に従って外植片として子葉を使用して、アグロバクテリウム菌株EHA101に導入した。抗原-FaeGac(F4-ETECの先端接着)コーティングされたウェル(Virdi et al(2013)PNAS 110,29,11809-11814)を用いるELISAによって、形質転換事象のT2種子において、VHH-IgAFc抗体の発現を評価し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(AbD Serotech;AA140P)に共役したポリクローナルanti-pig IgAによって検出した。多量の抗体を発現する事象からの10~20個の種子は、T2植物を成長させるために保持されたが、残りの種子は、子ブタに対する飼料によるチャレンジの評価を目的としたダイズ産生VHH-IgAFcを保有する食事を配合するために使用した。
【0144】
ピキア: VHH-IgAFc V2A及びV3AのためのVHH-IgAFc融合遺伝子は、プライマーセットα-V2(CTCTCTCGAGAAGAGAGAGGCCGAAGCTCAGGTGCAGCTGC)及びIgA-NotI(CCTCTTGAGCGGCCGCCCTTTAGTAGCATATGCCTTCTG)を使用してPCR増幅したが、De Meyer T.et al.(2015)Plant Biotechnol J 13,938-947)によってVHH-IgGに関して先述されたように、これらのプライマーは、制限部位AvaI及びNotIを保有し、これにより、抗体遺伝子は、pPpT4_Alpha_S発現ベクター中において、α-接合因子によってインフレームでクローニングされた(Naatsaari L.et al.,(2012)PLoS ONE 7,e39720)。酵素PmeIを使用して各発現ベクターを直線化し、エレクトロポレーション(Jacobs PP et al.(2009)Nat Protoc.4,58-70)によってピキア・パストリス中に導入した。陽性ピキアコロニーを、100μg/mlのZeocin(R)及び300μg/mlのブラストサイジンを蒔いたYPD寒天上で選抜した。20個の個々のコロニーの発現を、24ウェル系において、2mlのBMGY(1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム、1.34%YNB、1%グリセロール、pH6.0)液体培養物中で分析した。増殖から48時間後には、液体培地をBMMY(1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム、1.34%YNB、pH5.7)によって置き換え、約12時間ごとに1%メタノールによってスパイクした。分泌VHH-IgAFc抗体を含有する培地は一般的に、BMMY培地における誘導の48時間後に回収された。FaeGコーティングされたウェルを用いるELISAによって、発現レベルを評価した。高発現のクローンを識別し、グリセロールストックを作製した。
【0145】
<子ブタチャレンジ実験>
子ブタチャレンジ実験は、Animal Care and Ethics Committee of the Faculty of Veterinary Medicine at Ghent University、Belgium(倫理関係書類番号EC2015/47)の承認を受けて、動物福祉に関するベルギーの法律に従って実施した。ピキア及びダイズ産生モノマー型IgAを用いた実験の場合は、ワクチン接種していない雌ブタの子ブタ(ベルギーランドレース種×イングランドランドレース種)を、the Institute for Agricultural and Fisheries Research (ILVO),Melle,Belgium)の農場から連れて行った。2~3週齢の子ブタから血液試料を収集して、血清中の抗ETEC抗体のレベルをモニタリングした(ILVOの施設倫理委員会によって承認済み。関係書類番号2016/267)。F4-ETECに対して血液反応陰性であり、MUC―13PCR(Goetstouwers et al(2014)PLoS One 9,e105013)によって判定したときに、F4-ETECリセプター(F4R)の存在を相関するMUC―13遺伝子(顕性ホモ接合型及び顕性ヘテロ接合型)に対して陽性である、子ブタを選択した。各実験群は、6匹の子ブタからなっていた。ウィーニング後、子ブタは、学部にある家畜小屋に連れて行き、子ブタのリター、遺伝子型及び重量に基づいて給餌群に対して適切にランダム化した。各群の開始時点における平均重量は、7.2kgだった。チャレンジは、先述のようにして(Virdi et al(2013)Proc Nat Acad Sci USA.110,29,11809-11814)実施した。簡単に言うと、子ブタには、重炭酸バッファーによって胃内pHを30分中和した後で、鎮静下における胃内挿管により、1010個のF4-ETEC細菌(菌株GIS26Rstrep)を連続日にチャレンジした。チャレンジの最初の日は、予定表の中では、0日目として勘定に入れられている。抗体含有飼料は、チャレンジ前の3日間から開始して、10日の期間にわたって投与した(図3A)。チャレンジの日から12日目まで及び安楽死の日に、糞便試料を収集して、ストレプトマイシン選択(1mg/ml)によって血液寒天プレート上において、F4-ETECチャレンジ済みの菌株GIS26Rstrepのシェディングをモニタリングした。1日目、7日目及び14日目に血液試料を採取して、F4-ETEC特異的なIgG、IgA及びIgM力価をモニタリングした。動物を用いる特異的な修飾、試料の収集及び操作が、図3Aに概略的に示されている。
【0146】
<飼料調製>
種子産生抗体の場合、厳密に秤量した各種子(ダイズ又はアラビドプシス)を砕いた後、徹底的な均一性を確保するという目的で、最初に小さな体積のブタ用基礎飼料と混合して、濃縮プレミックスを生じさせ、続いて、より多くのブタ用飼料によって希釈して、実験用飼料を調製するという2段階でブタ用基礎飼料と混合した(表2)。ナイフミル(Retsch Grindomix GM200)を使用して種子を粉砕した後、ドライアイスを使用して種子及び粉砕処理用チャンバを冷やした。各実験を通してすべての群において比例的な栄養を維持するために、亜麻種子を使用して、アラビドプシス種子を置き変えた(表2)。同様に、さらなるダイズタンパク質を構成するために、野生型ダイズ種を、IgA産生するダイズ種子に対して等しい比率で、ダイズ-IgA群以外の群に添加した(表2)。
【0147】
【表2】
【0148】
<ピキア>
ELISAに基づいた同等性検定(図2)によれば、1mlのピキア抽出物は、1mlの抽出バッファー中に可溶化されたVHH-IgAFcを産生する5mgのアラビドプシス種子粉末に等価だった。この比率に基づいて、10日間にわたって5mgのピキア産生VHH-IgAFcを6匹の子ブタに投与するために、30Lの必要量のピキア培地を製造した。30Lのピキア培養物は、上記のような標準的な発現プロトコル(BMGY培地中で48時間増殖させ、続いて、BMMY培地中で48時間誘導させる)に従って、7.5Lの毎週1回実施の4つのバッチとして製造された。各実施の終了時に、培地を遠心分離によって回収し、細胞不含の上澄みを透析ろ過によって2~1.5Lに濃縮し、続いて、5kDa Omega(商標)centramateフィルターカセットを装着したCentramate(商標)500Sタンジェントフローろ過システム(Pall Life Science)を使用して、18.75mM NaClを含有のリン酸ナトリウムバッファー(pH6)によってバッファー交換した。4つのバッチの終了時に得られたものである、ピキア産生VHH-IgAFcを含有する得られた約2~1.5Lのタンパク質溶液には、等しい重量の市販用ブタ用飼料を添加し、いかなる発泡もないように手持ち式パドルを用いて混合し、スラリーを、フリーズドライ(Epsilon2-10 D LSC-Martin-Christ)を用いて47時間凍結乾燥させた。ピキアプレミックスと呼ぶ、得られた合計で4つのバッチの乾燥粉末は、5.368Kgだったが、これを次いで、ブタ用飼料と混合して、ピキア産生VHH-IgAFcを保有する18Kgの最終的な飼料を生じさせた(表2)。
【0149】
<統計学的分析>
線形混合モデルを使用して、1日目から10日目まで毎日測定したlog10変換済みの細菌数を、SAS(Windows7 64ビット用のSAS Systemのバージョン9.4。コピーライト(C)2002-2012 SAS Institute Inc.Cary,NC,USA,www.sas.com)の複合式の手順を用いてモデル化した。細菌シェディングを判定するための検出限界が糞便1グラム当たり2(Log10)だったため、欠測データは、細菌が検出されなかった場合における1.9(log10)の値によって補完した。残渣の分散共分散行列に関するいくつかの構造は、飽和平均モデルに基づいて(すなわち、すべての独立変数をカテゴリー変数であると考え、すべての相互作用効果を含めて)試験した。非構造化、複合対称性、自己回帰及び帯テプリッツ行列といった、いくつかの構造を試験した。最も良い構造を、AIC値に基づいて選択した。モデルの固定効果は、飼料群及び日数並びにこれらの交互作用項に関する主要な効果を含んでいた。固定効果の検定に関する分母自由度を算定するためのKenward-Roger近似法は、SASにおいて実装されているようにして、適用した。plm手順を使用して、部分的F検定を1日ごとに計算した。5%有意水準において部分的F検定が有意だった日に、一対比較を実施した。統計学的有意性は、Wald検定によって計算し、複数回の比較のために、Tukey法を使用して1日ごとに調節された。残渣の診断は、慎重に検査した。
【0150】
<2.ピキア・パストリスにおいて産生されたヒトIL-22とのIgAFc融合物の評価>
<材料>
組換えMurine TNF(mTNF)が、屋内でE.コリ中に生成されたが、9.46×107IU/mgの特異的活性を有していた)。
【0151】
<動物>
A20コンディショナルノックアウトマウス(A20IEC-KO)を、Prof Geert van Looから得た。A20IEC-KOマウスは、腸管上皮細胞(IEC)においてA20を欠損している(Vereecke,L.et al.(2010)J.of Experimental Medicine 207,1513-1523)。実験には、8~12週齢の雌マウスのみを使用した。マウスは、特定の病原体が存在しない施設にあるthe VIB Inflammation Research Center(IRC)において、個別に換気されているケージに収容した。すべてのマウス実験は、学会、国家及び欧州の動物に関する規制に従って実施された。動物プロトコルは、Ghent Universityの倫理委員会によって承認された。
【0152】
<飼料>
標準的な粉末状マウス用飼料(ssniff(R)R/M―H Complete feed-Maintenance)を、Bio-Service(The Netherlands)から購入した。IL-22含有飼料を調製するために、それぞれが各IL-22フォーマットを含有する培養物上澄みを、透析ろ過によって濃縮し、続いて、5kDa Omega(商標)centramateフィルターカセットを装着したCentramate(商標)500Sタンジェントフローろ過システム(Pall Life Science)を使用して、18.75mM NaClを含有のリン酸ナトリウムバッファー(pH6)によってバッファー交換した。各フォーマットに関しては、生物活性を濃縮物において測定し、各フォーマットの体積は、濃縮物1ml当たりある等しい量の生物活性が得られるように設定した。飼料と混合するために、等しい重量の標準的な粉末状げっ歯類用飼料を、IL-22含有濃縮物に添加し、混合した。続いて、スラリーを、フリーズドライ(Epsilon2-10D LSC-Martin-Christ、Germany)によって47時間凍結乾燥させた。得られた乾燥粉末は以降、ピキアげっ歯類用プレミックスと呼ぶ。
【0153】
<インビトロ試験>
産生培地中における異なるIL-22フォーマットの生物活性を試験するために、培地をサンプリングし、培地を無菌PBS中に希釈した後、バイオアッセイを実施した。乾燥済みの飼料における異なるIL-22フォーマットの生物活性の保持を試験するために、飼料を1:1(v/v)PBSに溶解させた。次いで、スラリーを13.000gで遠心分離した。上側水性相を新たなチューブに移し、低タンパク質結合型0.22μmシリンジフィルター(Millipore)を使用してろ過滅菌した。次いで、ろ液を無菌PBS中に希釈した後、バイオアッセイを実施した。
【0154】
ヒトColo-205結腸癌細胞をthe American Type Culture Collection(ATCC)に注文し、データシートに提供されたガイドラインに従って培養した。簡単に言うと、細胞株は、37℃、5%COにおいて、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したRPMI1640(Gibco)中で、半接着細胞として培養した。継代のために、懸濁状態で増殖している細胞を収集し、接着細胞を、標準的な組織培養物手順に従ってトリプシン処理した。
【0155】
Colo-205アッセイを使用してIL-22の生物活性を判定するために、3.0×10個の細胞/mL(100μl/ウェル)として細胞を96ウェル丸底プレートに播種した。細胞を24時間順応させた後、ある希釈系列のIL-22含有画分によって細胞を刺激した。すべてのシミュレーションを、終夜進行させた。対照として、ある希釈系列の市販の組換えhIL-22(キャリア不含)によって産生されたE.コリ(BioLegend)を使用した。翌日、プレートを400gにおいて10分間4℃で遠心分離し、上澄みを収集した。hIL-10 DuoSet ELISA(R&D systems)を使用して、上澄みをIL-10についてアッセイした。GraphPad Prism6によって、データを分析した。特異的活性は、用量応答曲線に基づいて判定されており、用量応答曲線は、EC50を判定するために使用した。
【0156】
<実験モデル>
IL-22の保護効果を試験するという目的で、C57BL/6 A20IEC-KOマウス(1群当たりn=8)には、20μg、10μg、5μg、1μgに等価な各IL-22フォーマットを含有する10ml/kgの液体状食事(200μlに等価)、又は、対照としてのIL-22を不含の等価な飼料を強制飼養した。
【0157】
実験的な大腸炎を誘導するために、強制飼養の1時間後、マウスに、250μg/kgの亜致死用量のmTNFを腹腔内(i.p.)投与した。対照マウス(Mock)には、ある等価な体積の0.9%NaClをi.p.注射した。体温及び生存を、1時間ごとにモニタリングした。並列実験において、マウスは、組織学的分析及びカスパーゼ活性アッセイのために4時間後に安楽死させた。
【0158】
<組織学>
検死。盲腸から肛門までの結腸全体を取り除き、炎症のマーカーとして、結腸の長さを測定した。測定後、腸管から出た部分を取り除き、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に固定した。パラフィン包埋及び薄片化の後、組織学的検査のためにヘマトキシリン/エオシンによって組織を染色した。TUNEL染色のためのインサイチュー細胞死検出キット(Roche)を使用して、蛍光顕微鏡法によってアポトーシスを分析した。
【0159】
<血清分析>
血清炎症誘発性サイトカインIL-6及びMCP-1を、それぞれマウスIL-6 DuoSet ELISAキット(R&D Systems)及びマウスCCL2/JE/MCP-1 DuoSet ELISAキット(R&D Systems)を使用して血清中で測定した。アラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)及びアスパルテートアミノトランスフェラーゼ活性(AST)を、Hitachi747分析装置(Diagnostica、Boehringer Mannheim)により、通例の光度測定試験によって分析した。
【0160】
<結果>
mock処置済みのA20IEC-KOマウスは、苦痛に関する表現型の徴候を全く示していない。対照的に、TNF注射を受けたマウスは、注射から2時間経つとすぐに、低体温症及び重度の下痢を含むTNF毒性の明確な症状を示している。さらに、TNFの注射から5時間後~9時間後の間に、マウスが死亡し始めた。IL-22含有飼料(IL-22 IgAFc又はIL-22)による胃内処置を受けたマウスのみが、体温の軽度の低下を示し、下痢を発症しなかった。さらに、IL-22フォーマットのいずれかによって処置されたマウスのいずれもが、TNFチャレンジ後に死亡しなかった。
【0161】
組織学的には、TNFによってのみ処置されたがIL-22を受容していないマウスは、はなはだしい上皮損傷及び陰窩-絨毛構造のほぼ完全な喪失を特徴とする、回腸及び空腸の重度の損傷を受けている。対照的に、IL-22フォーマットのいずれかを受容したマウスは、いかなる損傷の徴候も示しておらず、バリアの完全性を明確に維持している。細胞レベルにおいては、TUNEL染色は、IL-22処置後にはないが、TNFのみによって処置されたマウスにおいては、アポトーシス細胞は、すでに脱離していて腸管腔に見受けられる細胞に加えて、絨毛の上皮内層においても、非常に豊富である。
【0162】
さらに、本発明者らは、炎症誘発性サイトカインIL-6及びMCP-1の測定によって、全身的効果を査定している。IL-6のレベルとMCP-1レベルのレベルは両方とも、対照マウスの場合と、IL-22フォーマットを受容したマウスの場合とでは同等であるが、TNFのみによって処置されたがIL-22を受容していないマウスは、Il-6及びMCP-1レベルを上昇させた。さらに、TNFも肝臓の生理機能に影響すると報告されているため、本発明者らは、肝臓アミノ基転移酵素レベル(AST及びALT)も査定している。実際、TNFによって処置されたマウスは、血清中におけるAST及びALTのレベルが上昇しているが、IL-22治療済みのマウスは、この上昇を示していない。
【0163】
<実施例2の材料及び方法>
<菌株、培地及び試薬>
エスケリキア・コリ(Escherichia coli)(E.コリ)MC1061又はDH5αを、標準的な分子生物学的操作のために使用した。プラスミド繁殖のために、適切な抗生物質、すなわち、50μg/mLのカルベニシリン(Duchefa Biochemie)、50μg/mLのカナマイシン(Sigma Aldrich)、50μg/mLのハイグロマイシンB(Duchefa Biochemie)又は50μg/mLのZeocin(R)(Life Technologies)を添加したLBブロス(0.5%酵母抽出物、1%トリプトン及び0.5%NaCl)中でE.コリを培養した。すべてのPCR反応は、Phusion高フィデリティーポリメラーゼ(NEB)を使用して実施された。dNTP等のPCR試薬及びプライマーは、それぞれPromega及びIDTに注文した。
【0164】
ピキア・パストリスNRRL―Y11430菌株(同義語コマガテラ・ファッフィ(Komagataella phaffi))は、A.Glieder(Technische Universitat Graz、Austria)によって提供された。この菌株は、野生型と呼ばれる。酵母培養物は、液体状YPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、1%D-グリコース)中又は固体状YPD-寒天(1%酵母抽出物、2%ペプトン、1%D-グリコース、2%寒天)上において増殖させ、100μg/mLのZeocin(R)、500μg/mLのジェネティシン/G418(Life Technologies)又は300μg/mLのハイグロマイシンBという適切な抗生物質の使用によって選択した。Bacto酵母抽出物、Bactoトリプトン、Bactoペプトン、Bacto寒天及び酵母窒素塩基(YNB)は、Difco(Beckton Dickinson)から購入した。
【0165】
タンパク質発現のために、振とうインキュベーター(28℃、225rpm)内で、BMGY(1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mM KHPO/KHPO、1.34%YNB、1%グリセロール、pH5.5)中で培養物を増殖させた。タンパク質発現の誘導のために、細胞は、1%MeOHを含有するBMMY(1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mM KHPO/KHPO、1.34%YNB、pH5.5)に切り替えた。誘導を維持するため、及び蒸発を補償するために、8~12時間ごとに1%MeOHによって培養物をスパイクした。誘導の終了時に、遠心分離(1.500g、4℃で10分)によって培養物を回収した。試料を、すぐに分析し、又は、液体窒素中で急速凍結した後、-20℃で貯蔵した。
【0166】
<hIL-22発現ベクターの構築>
Genscriptの独自開発アルゴリズムを使用して、成熟ヒトインターロイキン-22(hIL-22、UniProtKB登録番号Q9GZX6、残基34~179)のオープンリーディングフレームを、P.パストリス(P.pastoris)における発現を対象にしてコドン最適化し、合成により秩序化した。hIL-22をコードする配列を、pKai61EA-yEGFP発現ベクター中にあるがEA反復体を含まないS.セレビシエ(S.cerevisiae)α-接合因子によって、インフレームでクローニングした(Schoonooghe S et al(2009)BMC Biotechnology 9,70)。最終的な発現ベクターpKai-hIL22は、強力なメタノール誘導性AOX1プロモーターの制御下にあるhIL-22導入遺伝子を含有し、細菌と酵母との両方の選択のためのZeocin(R)耐性マーカーを有している。
【0167】
代替的な分泌シグナルとして、S.セレビシエOst1配列(Fitzgerald I and Glick BS(2014)Microbial cell factories 13,1)を、プライマーOst1SaccharopAOX1Fw及びOst1SaccharoRvを使用してS.セレビシエゲノムDNAからPCR増幅した。
【0168】
<hIL-22-hIgA_Fc―6xHis発現ベクターの構築>
すべての構築体は、モジュール式クローニング戦略(MoClo)を使用してクローニングされた。この系は、S.セレビシエ(Lee ME et al(2015)ACS Synth Biol 4,975-986)のために開発されていたが、ピキアにおける使用のために屋内で順応させた。要するに、MoClo系は、標準化されたエントリーベクターを用いて、望ましい構築に属する各「部分」をサブクローニングする。これらのベクター内の各部分には、別個のII型制限酵素部位が隣接する。単一反応でエントリーベクターをプール化し、連続する制限酵素消化及びT4ライゲーション反応を実施することによって、適合する末端を有する部分どうしが、環状プラスミドの中に入るように集合及び連結して、最終的な発現ベクターを生じさせる。すべてのエントリーベクターは、等モル量(約20フェムトモル)である増幅されたフラグメントとMoCloエントリーベクターpYTK001との両方、又は、合成物であるが同一のベクターpPTK081をプール化することによって、作製した。標準的なモジュール式クローニング(「MoClo」)プロトコルが使用されており、II型制限酵素BsmBI(1U;NEB)、T4リガーゼ(1U;NEB)及び10xT4リガーゼバッファー(NEB)をプール化配列に添加することを特徴とする。42℃で2分と16℃で5分の24回のサイクルを、PCRサイクラーにおいて実施し、続いて、最後の消化ステップを50℃で10分を行い、熱変性ステップを80℃でさらに10分行った後、12℃で無期限に保持した。得られたベクターをE.コリMC1061コンピテント細胞中に導入し、次いでをLBクロラムフェニコール培地に蒔いた。pYTK001/pPTK081レシピエントエントリーベクターがGFPドロップアウトカセットを特徴とするため、緑色-白色方式のスクリーニングにより、(適正な)プラスミドを含有するコロニーを、緑色の偽陽性クローンから区別することができた。プラスミド単離し、対象とする配列を、プライマーPP001及びPP002を使用してサンガーシーケンシングによって確かめる。
【0169】
IgA(PAOX1-hIL-22-hIgA_Fc-6xHis)の不変ドメインを有するhIL-22融合構築体を改変するために、α-MF/Ost1/pre-hIL-22配列を、MoClo系と適合するプライマーを用いるPCRによって増幅した。hIgA配列へのhIL-22配列のN末端融合物を作製するために、完全なα-MF-hIL-22CDS、Ost1-hIL-22CDS及びpre-hIL-22CDSは、MoClo系におけるN末端タグ又は3a部分であると考えた。同様に、IgA(ヒト、マウス及びブタ)の不変ドメインは、目的遺伝子又は3b部分として考えた。
【0170】
α-MF-hIL-22、Ost1-hIL-22又はpre-hIL-22を保有するMoCloエントリーベクターはすべて、テンプレートとして上記pPpT4_Alpha_S発現ベクターを使用する初期のPCR増幅によって作製した。α-MF-hIL-22とpre-hIL-22配列とは両方とも、プライマーIL-22forentryfw及びIL-22forentryrvによって増幅したが、Ost1-hIL-22配列は、プライマーIL-22ost1forentryfw及びIL-22forentryrvによって増幅した。次いで、PCRフラグメントを、BsmBI制限消化及びT4ライゲーションによってpYTK001/pPTK081に導入した。
【0171】
ヒトIgA(ホモサピエンス、UniproKB:P01877)及びマウスIgA(ムス・ムスクルス(Mus musculus)、UniprotKB:P01878)のFc領域の配列を、P.パストリスにおける発現を対象にしてコドン最適化し、IDTのgBlocksとして合成により秩序化した。次いで、ヒト及びマウスIgA gBlocksを、モジュール式クローニングを可能にするために、プライマーIgAforentryfw及びIgAforentryrv又はIgAmouseforentryfw及びIgAmouseforentryrvによって増幅した。ブタIgA(スス・スクロファ、UniprotKB:K7ZRK0)のFc領域を、プライマーIgApigforentryfwcorrect及びIgApigforentryrvnewによって事前に作製した((Virdi V et al(2013)PNAS 110,11809)EV2Aベクターから増幅した。すべてのIgA配列は、MoClo系中の「部分3b」として、pYTK001/pPTK081ベクター中にクローニングした。
【0172】
次いで、エントリーベクターを使用して、MoClo系を用いて発現ベクターを作製した。各発現ベクターは、等モル量(約20フェムトモル)の下記部分(Addgeneから入手可能である又は将来入手可能になる)をプール化することによって、作製した。
【0173】
部分1 集合体連結部 CONLS
部分2 プロモーター PAOX1/PCAT1
部分3a N末端タグ α-MF-prepro/α-MF-pre/Ost1-hIL-22
部分3b 目的遺伝子 hIgA/mIgA/pIgA
部分4a C末端タグ 6xHis/6xHis-HDEL
部分4b ターミネーター AOX1TT
部分5 集合体連結部 CONRE
部分6 酵母マーカー スタッファー(ゼオシン耐性が、細菌と真菌との両方において機能するため。)
部分7 種々雑多 スタッファー
部分8 E.コリマーカー+ORI ZeoR+ColE1
【0174】
【表3】
【0175】
<3.ピキア産生VHH-IgA-Fc融合物の異なる乾燥工程から得た可食型配合物のインビボ有効性の比較>
経口及び胃内安定性は、胃腸管において有用であるべきVHH-IgAFcのような生物学的治療薬にとって、最も重要なことである。(分子レベルで)抗体を取り囲むマトリックス及び乾燥工程は、VHH-IgAFc抗体を保護して、消化器官において消化されて無効なものになることがないようにするときに、重要な役割を担う可能性が非常に高い。ここで、本発明者らは、F4-ETEC感染を明確化するときに、飼料マトリックスと一緒にフリーズドライし(実施例1を参照されたい。)、又は飼料マトリックスなしでフリーズドライした、差次的に乾燥させたピキア産生VHH-IgAFcのインビボ有効性に対する効果を評価することについて説明する。さらに、本発明者らは、熱を伴う代替的な原理に基づいた噴霧乾燥工程も評価しており、このとき、マルトデキストリン(matodextrin)をマトリックス/キャリアとして使用した。差次的に処理された3種のピキア産生抗F4-ETECVHH-IgAFc(V2A及びV3A)の飼料配合物を、1日当たり子ブタ1匹ごとに0.5Lの発酵物又は5mg VHH-IgAFc/日/子ブタに等価である同じ用量から構成した。飼料中のVHH-IgAFc抗体を受容しなかった第4の群は、陰性対照として働いた。F4-ETECへの感染しやすさに相関するものである、F4-ETECに対して血清反応陰性でmuc-13遺伝子試験において陽性の24匹の子ブタを選択し、ウィーニングし、それぞれ6匹の子ブタから構成される4つの群に収容した。これらの子ブタは、固体食品に対して順応させ、その後、群特異的な実験用飼料に導入した(図4Aを参照されたい。)。実験用飼料は、10日分として用意したが、この10日間の3日目において、すべての子ブタには、連続する2日間(0日目及び1日目)で、1010個のF4-ETEC細菌をチャレンジした。飼料配合物に応じて得られた感染の効果は、糞便中における12日目(図4B及び表3を参照されたい。)まで毎日シェディングされたチャレンジ用の株のコロニー形成単位(CFU)を分析することによって、モニタリングした。
【0176】
【表4】
【0177】
注記:log(10)CFU検出限界は、2であり、ダッシュ(―)は、細菌が検出されなかったことを表す
注記:子ブタ2及び子ブタ9は、それぞれ5日目及び2日目に死亡しており、理由は、検死調査中に発見された大きな胃潰瘍だった。
【0178】
陰性対照群に属するすべての子ブタは、1日目及び2日目において、F4-ETECの高いCFUをシェディングしており、シェディングは、少なくとも、3日目までは子ブタの半分において維持された。抗体受容群における総合的なシェディングは、低かった。図4Bは、各群における平均シェディング及び6日目までの平均(SEM)の標準誤差を示しており、これらは、F4-ETEC感染の予防における、これらの3種のピキアによって産生された差次的な処理済みのVHH-IgA-Fc融合物を含有する食事の有効な傾向を反映している。これらのデータにより、フリーズドライ工程におけるブタ用飼料の状態又は噴霧乾燥におけるマルトデキストリンの状態であるマットリックスは、インビボにおけるより高い有効性に帰結することが示されている。血清抗ETEC IgG(図4Cを参照されたい。)及びIgA(図4D)レベルは、飼料マトリックス配合物にフリーズドライを受けた群において最も低く、このことは、シェディング結果を裏付けている。総合的には、相違点は、セロコンバージョンを示す群に含まれる個別の子ブタを観察したことである(図4C及び図4D中のエラーバーは、平均の標準誤差を表す。)。
【0179】
<実施例3の材料及び方法>
<ピキア産生VHH-IgA-Fcを主体とした飼料配合物>
チャレンジ実験である実施例1において施用されたような有効用量の抗ETEC VHH-IgAFcは、約5mgのVHH-IgAFcであり、又はより適切には、1日当たり子ブタごとに0.5Lの振とうフラスコ内で増殖した培養物から得た乾燥産生物を保有する飼料配合物だった。この用量は、等しい部の2種の抗F4-ETEC VHH-IgAFc、すなわち、V2A及びV3Aから構成された(Virdi et al(2013)110、29、11809-11814を参照されたい。)。ピキア産生VHH-IgAFcを受容した18匹の子ブタ(3つの群のそれぞれにおいて、6匹の動物)のために類似した用量を調製するという目的で、それぞれ45LのV2A及びV3A(合計で90L)を発現したピキア培養物を、振とうフラスコ内で増殖した。これは、下記の表5にまとめられているように、6つのバッチとして製造した(5日間かかる工程において、実施例1の場合と同様に、BMGY培地中で48時間増殖させ、続いて、BMMY培地中で48時間誘導させた)。したがって、毎週1回、15Lの培養物バッチを製造した。各実施の終了時に、培地を遠心分離によって回収し、細胞不含の上澄みを透析ろ過によって1Lに濃縮し、続いて、5kDa Omega(商標)centramateフィルターカセットを装着したCentramate(商標)500Sタンジェントフローろ過システム(Pall Life Science)を使用して、リン酸ナトリウムバッファー(20mM NaHPO、18.75mM NaCl、pH6)によってバッファー交換した。6つのバッチのそれぞれの終了時に得られたものである、ピキア産生VHH-IgAFcと呼ばれる保持液を含有する得られた1Lの保持液タンパク質溶液(表4)を、下記のような3種の特定の方法によって乾燥させた。
【0180】
【表5】
【0181】
方式1:マトリックスによって凍結乾燥させる(実施例1に類似):VHH-IgAFc V2A(バッチ1、表5)又はV3A(バッチ2、表4)を保有する1リットルの保持液を、手持ち式パドルを用いて、いかなる発泡もないように1キログラムの市販用子ブタ飼料(供給業者:Van Huffel、9850Poesele(Nevele)Belgium)と混合し、スラリーを、フリーズドライ装置(Epsilon2-10D LSC-Martin-Christ、Germany)を使用して47時間凍結乾燥させた。次いで、それぞれVHH-IgA-Fc V2A及びV3Aを含有する2つのフリーズドライ用バッチ(それぞれが約1Kg)から構成される得られた乾燥粉末を、ブタ用飼料と混合して、ピキアによって産生されたマトリックスにフリーズドライ済みのVHH-IgAFcを保有する18Kgの最終的な飼料を生じさせた(表4)。
【0182】
方式2:マトリックスなしでフリーズドライさせる:VHH-IgAFc V2A(バッチ3)又はV3A(バッチ4)を保有する1リットルの保持液を、フリーズドライ装置(Epsilon2-10D LSC-Martin-Christ、Germany)を使用して47時間凍結乾燥させた。次いで、それぞれVHH-IgAFc V2A及びV3Aを含有する2つのフリーズドライ用バッチ(それぞれが約30グラム)から構成される得られた乾燥粉末を、ブタ用飼料と混合して、ピキアによって産生されたマトリックスなしでフリーズドライ済みのVHH-IgAFcを保有する18Kgの最終的な飼料を生じさせた(表4)。
【0183】
方式3:噴霧乾燥させる:VHH-IgAFc V3Aを保有する1リットルの保持液(バッチ5、表4)、及び、VHH-IgAFc V2Aを保有する別の1リットルの保持液(バッチ6、表5)を、2.5Kgのマルトデキストリンを含有する23Lのリン酸ナトリウムバッファー(20mM NaHPO、18.75mM NaCl、pH6)と混合した。合計25Lの液体を、工業用ブレンダーを使用して5~7分徹底的に混合した後、給餌用液体の45℃における予備加熱及び170℃の入口空気温度にパラメータが設定された噴霧乾燥機に供給した。乾燥工程中、平均出口空気温度は、約80℃であり、一定の液体圧送速度を維持した。乾燥済みのV2A及びV3Aを保有する約2.3kgの粉末を回収し、ブタ用飼料と混合して、ピキアによって産生された噴霧乾燥済みのVHH-IgAFcを保有する18Kgの最終的な飼料を生じさせた(表4)。
【0184】
リン酸緩衝生理食塩水中に可溶化してELISAにおいて評価した場合において、飼料にフリーズドライされたもの(V2Aバッチ1、V3Aバッチ2)、マトリックスなしでフリーズドライされたもの(V2Aバッチ3、V3Aバッチ4)及びマルトデキストリンによって乾燥させたもの(V3A+V2A、バッチ5及びバッチ6を含みあわせたもの)である、差次的な乾燥工程の実施のそれぞれ(表5を参照されたい。)から得た乾燥済みのVHH-IgAFcは、固定化F4-FaeG抗原への結合として機能的に活性であることが観察された。
【0185】
対照飼料は、いかなる抗体も不含の18kgの基礎飼料を含んでいた。18Kgの飼料配合物のそれぞれを、一群当たりの1日分飼料許容量としてそれぞれが1.8Kgである、10個のバッグに分割したが、これは、3日目から7日目まで、子ブタのための給餌用の大桶の中に用意した(図4A)。
【0186】
<子ブタチャレンジ実験>
子ブタチャレンジ実験は、Animal Care and Ethics Committee of the Faculty of Veterinary Medicine at Ghent University,Belgiumの承認(倫理関係書類番号EC2017/122)を受けて、動物福祉に関するベルギーの法律に従って実施した。子ブタ(品種:交配種)を、the Institute for Agricultural and Fisheries Research(ILVO),Melle,Belgium(倫理関係書類番号2017/306)の農場から連れて行った。5匹の初産雌ブタには、F4-ETECに対するブースターワクチンをやめさせて、低い乳汁免疫を確保した。これらの雌ブタが生んだ子ブタには、誕生してから1日おきに抗生物質(子ブタ1匹当たりDuphamox0.1ml)を3回投与して、F4-ETEC感染から保護した。さらに、抗F4-ETEC血清の力価、及び、F4-ETECリセプターの存在と相関するMUC13遺伝子タイピングアッセイ(Goetstouwers et al(2014)PLoS One 9,e105013)を評価するために、これらの子ブタから誕生15日目に血液をサンプリングした。MUC13F4-ETEC感受性遺伝子型に対して血清反応陰性でホモ接合型の24匹を選択し、ウィーニングし、チャレンジ実験のためにGent Universityの獣医学部の家畜小屋に輸送した。子ブタは、子ブタのリター、遺伝子型及び重量に基づいて、給餌群に対して適切にランダム化した。各群の開始時点における平均重量は、8.5kgだった。子ブタには、12日目及び11日目に、抗生物質Duphamox(子ブタ1匹当たり0.6ml)を筋肉内投与したが、Baytril(子ブタ1匹当たり0.25ml)を、輸送後に偶発的に細菌感染が起きる事態を予防するために、8日目、7日目及び6日目に投与した。チャレンジは、先述のようにして(Virdietal(2013)Proc Nat Acad Sci USA.110、29、11809-11814)、実施した。簡単に言うと、子ブタには、60mlの重炭酸バッファー(蒸留水中の1.4%NaHCOw/v)によって胃内pHを中和した後で、鎮静(1mlのアザペロン、Stressnill(R)Janssen Animal Health)下における胃内挿管により、1010個のF4-ETEC細菌(菌株GIS26Rstrep)を連続日にチャレンジした。チャレンジの最初の日は、予定表の中では、0日目として勘定に入れられている(図4A)。抗体含有飼料は、チャレンジ前の3日間開始して、10日間の期間にわたって投与した(図4A)。チャレンジの日から12日目までで糞便試料を収集して、ストレプトマイシンへの選択(1mg/ml)によって血液寒天プレート上において、F4-ETECチャレンジ済みの菌株GIS26Rstrepのシェディングをモニタリングした。血液試料を採取して、15日目(ウィーニング日)、4日目、7日目に、F4-ETEC特異的なIgG及びIgA力価をモニタリングした。動物を用いる特異的な試料の収集及び操作が、図4Aに概略的に示されている。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6
【配列表】
2022166151000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え真菌の培地中に存在する5kDaより大きい複数の高分子を含む、乾燥配合物であって、前記真菌が、前記培地中に分泌されるFcドメインに融合した外因性ポリペプチドを産生する、乾燥配合物。
【外国語明細書】