(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166152
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電気車両における生分解性炭化水素流体の使用
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C09K5/10 E ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127768
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019521688の分割
【原出願日】2017-10-26
(31)【優先権主張番号】16196121.4
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ チャイナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の電気モーターを冷却および/または潤滑するための流体の使用を提供する。
【解決手段】本発明は、電気車両において、200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の使用であり、流体は、95重量%超えのイソパラフィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量とを含み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む、前記使用を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両またはハイブリッド車両における、200℃~400℃の範囲の沸点および8
0℃未満の沸点範囲を有する流体の使用であって、前記流体は、95%重量を超えるイソ
パラフィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有
量とを含み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む、使用。
【請求項2】
電気車両における、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
モーターを冷却するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
モーターのパワーエレクトロニクスおよび/またはローターおよび/またはステーター
を冷却するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
電池を冷却するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
モーターを潤滑するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
モーターのローターとステーターとの間の軸受および/または減速機を潤滑するための
、請求項1または2に記載の使用。
【請求項8】
トランスミッションを潤滑するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
モーターを冷却および潤滑するための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項10】
モーターを冷却し、かつトランスミッションを潤滑するための、請求項1または2に記
載の使用。
【請求項11】
前記流体が、220℃~340℃、好ましくは250℃~340℃の範囲の沸点を有す
る、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記沸点範囲が、240℃~275℃、または250℃~295℃、または285℃~
335℃である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記流体が、80~180℃の温度、50~160barの圧力、0.2~5時-1の
液空間速度および200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で、95重量%を超
える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含む供給原料、または95質量%を
超える合成ガス由来原料を含む供給原料を接触水素化するステップを含むプロセスによっ
て得られる、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記供給原料が、98重量%を超える、好ましくは99重量%を超える水素化脱酸素化
異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは、水素化脱酸素化異性化炭化水素
バイオマス原料からなり、特に前記バイオマスが、植物油、そのエステルまたはそのトリ
グリセリドであり、前記供給原料は、より好ましくは、HVO供給原料であるか、または
前記供給原料は、合成ガス、より好ましくは再生可能な合成ガスに由来する原料を98重
量%超、好ましくは99重量%超含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記水素化ステップの前、または前記水素化ステップの後、またはその両方で分留ステ
ップを行う、請求項13または14に記載の使用
【請求項16】
前記流体が、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の芳香族化合物を含
む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記流体が、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には50ppm未満の
ナフテンを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記流体が、5ppm未満、さらに3ppm未満、さらに好ましくは0.5ppm未満
の硫黄を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
OECD 306規格に従って測定したとき、前記流体が、28日で少なくとも60%
、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有利には少なくとも
80%の生分解性を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両のモーター並びに種々の部品、特に動く部品を冷却および/潤滑す
るための特定の生分解性流体の使用に関する。本発明はまた、これらの部品を潤滑するた
めの使用ならびに車両のトランスミッションに関する。
【0002】
本発明は電池にも適用される。
【0003】
本発明は電気車両およびハイブリッド車両に適用される。
【背景技術】
【0004】
CO2排出量削減に関する国際基準は、自動車エンジンの燃費に関しても、自動車建設
業者に燃焼エンジンの代替ソリューションを開発することを推奨している。
【0005】
CO2排出量削減のための研究は、多くの自動車会社によるハイブリッド車と電気自動
車の開発につながる。本発明において「電気車両」とは、独自の推進モードとして電気モ
ーターを備える車両を意味する。本発明において「ハイブリッド車両」とは、推進モード
として他の動力源と組み合わせて電気モーターを備える車両を意味する。本発明において
「車両の電気モーター」とは、電気車両またはハイブリッド車両の電気モーターを意味す
る。
【0006】
電気モーターは作動すると熱を発生する。発生した熱の量が、自然に環境に放散される
量よりも大きい場合は、何らかの形の能動的な冷却が必要である。典型的には、能動的冷
却は、危険な温度が回避されるように、モーターの1つ以上の発熱部分および/または感
熱部分に適用される。
【0007】
伝統的に、空気によって、一般に強制対流によって電気モーターを冷却することが知ら
れている。空冷方法は、有利なことに、何らかの特別な冷却剤を準備する必要がない。し
かしながら、特に、より高い電力効率を有するモーターの小型化に関して、空気が大きな
冷却能力を提供する可能性は低いため、この冷却方法は不向きである。
【0008】
今日では、電気モーターを冷却するために水を使用することも知られている。水は高い
比熱を示すが、水の導電性のために水との直接接触による冷却を考慮することはできない
。そのため、冷却管を配置する必要があり、これによって冷却装置が大型化するという問
題がある。
【0009】
オイルスプレーを用いた電気モーターの冷却方法も既に提案されている。
【0010】
電気自動車では、ハイブリッド自動車と比較して、電気自動車のモーターはより多くの
約定を受けるため、冷却特性が改善されたオイルに対する特別な要求がある。
【0011】
電気モーターは電池によって供給される。リチウムイオン電池は電気車両の分野で最も
一般的な電池である。同じまたは改善された効率を有する電池の小型化は、熱管理の問題
につながる。リチウムイオン電池の温度が高すぎると、電池が発火する危険性があり、さ
らには爆発の危険性がある。一方、温度が低くなりすぎると、電池を早くに処分するおそ
れがある。
【0012】
欧州特許第2520637号明細書には、電気モーターを冷却し、車両内のギアを潤滑
するための、少なくともエステルまたはエーテルを含む潤滑組成物が記載されている。し
かしながら、エステルは酸化に対して安定ではないことが知られている。さらに、エステ
ルは、ワニスおよびジョイントとの相溶性の問題があり、それらの劣化を引き起こす。特
に、電気モーターの巻線はワニスで被覆されている。冷却流体は巻線と直接接触している
ので、このワニスに関して流体が不活性であることが不可欠である。
【0013】
日本国特開第2012-184360号には、電気モーターを冷却するための少なくと
も1つの合成基油とフッ素化合物とを含む潤滑組成物が記載されている。しかしながら、
ヒドロクロロフルオロカーボンなどのフッ素化合物は、オゾン層に悪影響を与える有機ガ
スであり、それらはまた、温室効果を高める可能性がCO2よりもはるかに高い温室効果
ガスである。それ故、これらの化合物はそれらの使用を強く制限するいくつかの規制を受
ける。
【0014】
従来技術の解決法のいずれも、電気モーターを冷却および/または潤滑するための生分
解性流体を提供していない。したがって、車両の電気モーターを冷却および/または潤滑
することができ、かつ従来技術の欠点を克服する流体を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、車両の電気モーターを冷却および/または潤滑するため
の流体を提供することである。
【0016】
特に、本発明の目的は、パワーエレクトロニクス部品および/またはステーターおよび
/またはローターを冷却し、かつ車両の電気モーターの減速機を潤滑するための流体を提
供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、電気車両の電池を冷却するための流体を提供することであ
る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電気車両またはハイブリッド車両における、200℃~400℃の範囲の沸
点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の使用を提供し、前記流体は、95%を超え
るイソパラフィンと、3重量%未満のナフテン、少なくとも95重量%のバイオカーボン
含有量を含み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む。
【0019】
当業者にはよく理解されているように、80℃未満の沸点範囲は、終点と初留点との差
が80℃未満であることを意味する。
【0020】
一実施形態によれば、本発明の使用は電気車両におけるものである。
【0021】
様々な実施形態によれば、本発明は以下の使用に関する:
-モーターを冷却するため。
-モーターのパワーエレクトロニクスおよび/またはローターおよび/またはステータ
ーを冷却するため。
-電池を冷却するため。
-モーターを潤滑するため。
-モーターのローターとステーターの間の軸受および/または減速機を潤滑するため。
-トランスミッションを潤滑するため。
-モーターを冷却および潤滑するため。
-モーターを冷却し、かつトランスミッションを潤滑するため。
【0022】
一実施形態によれば、流体は、220℃~340℃、好ましくは250℃~340℃の
範囲の沸点を有する。
【0023】
一実施形態によれば、沸点範囲は、240℃~275℃または250℃~295℃また
は285℃~335℃である。
【0024】
一実施形態によれば、流体は、80~180℃の温度、50~160barの圧力、0
.2~5時-1の液空間速度および200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で
、95重量%を超える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含む供給原料、ま
たは95質量%を超える合成ガス由来原料を含む原料を接触水素化するステップを含むプ
ロセスによって得られ;好ましくは、供給原料は、98%を超える、好ましくは99%を
超える水素化脱酸素化異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは、水素化脱
酸素化異性化炭化水素バイオマス原料からなり、特にバイオマスが植物油、そのエステル
またはトリグリセリドである場合が好ましく、供給原料は、より好ましくは、HVO供給
原料、特にNEXBTLであり、または供給原料は、合成ガス、より好ましくは再生可能
な合成ガスに由来する原料を98%超、好ましくは99%超含む。
【0025】
一変形形態によれば、前の実施形態では、水素化ステップの前、または水素化ステップ
の後、またはその両方で分留ステップが行われる。
【0026】
一実施形態によれば、流体は、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の
芳香族化合物を含む。
【0027】
一実施形態によれば、流体は、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には
50ppm未満のナフテンを含む。
【0028】
一実施形態によれば、流体は、5ppm未満、さらに3ppm未満、さらに好ましくは
0.5ppm未満の硫黄を含む。
【0029】
一実施形態によれば、流体は、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で
少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有
利には少なくとも80%の生分解性を有する。
【0030】
冷却と潤滑という二重の性質による改良された流体は、電気車両、特に自動車の多くの
場所で異なる用途を見出すであろう。車両、特に自動車は、完全電気式またはハイブリッ
ド式であり得る。
【0031】
使用では、本発明の改良された流体はまた、以下に開示されるように当該分野で公知の
任意の添加剤を含み得る。
【0032】
本発明による改良された流体は、当業界で知られている任意の方法による冷却のために
使用することができる。冷却方法の例として、加圧下で直接噴霧することによって、また
は重力によって噴霧することによって、または特にローターおよび/またはステーターの
巻線上に、改良された流体からミストを形成することによって、冷却することができる。
【0033】
改良された液体は健康と環境に利益をもたらす。改良された流体はまた、モーター内に
存在するシールおよびワニスの劣化の危険性を低くし、水と、モーターまたは巻線などの
その部品との間のいかなる接触も回避することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、電動パワートレインの概略図である。
【
図2】
図2は、40kWの電流および6barのオイルジェット圧力で、流体の熱伝達率を測定する試験の結果を表すグラフである。
【
図3】
図3は、40kWの電流および10barのオイルジェット圧力で、流体の熱伝達率を測定する試験の結果を表すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0035】
・本発明で使用される改良された流体を製造するためのプロセス。
本発明は、200~400℃の範囲の沸点を有し、95%を超えるイソパラフィンを含
み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含む、改良された流体を利用する。それは、
80~180℃の温度、50~160barの圧力、液空間速度0.2~5時-1および
200Nm3/トン以下の供給原料の水素処理速度で、95重量%を超える水素化脱酸素
化異性化炭化水素バイオマス供給原料または95重量%を超える合成ガス由来原料を含む
供給原料を、接触水素化するステップを含むプロセスによって得られる。
【0036】
第1の変形によれば、供給原料は、98%超え、好ましくは99%超えの水素化脱酸素
化異性化炭化水素バイオマス原料を含み、より好ましくは水素化脱酸素化異性化炭化水素
バイオマス原料からなる。一実施形態によれば、バイオマスは植物油、それらのエステル
またはそれらのトリグリセリドである。一実施形態によれば、供給原料は、NEXBTL
供給原料である。
【0037】
第二の変形によれば、供給原料は、98%超え、好ましくは99%超えの合成ガス由来
原料を含む。一実施形態によれば、原料は再生可能な合成ガスに由来する。
【0038】
一実施形態によれば、プロセスの水素化条件は以下の通りである:
-圧力:80~150bar、好ましくは90~120bar;
-温度:120~160℃、好ましくは150~160℃;
-液空間速度(LHSV):0.4~3、好ましくは0.5~0.8時-1;
-水素処理量は、供給原料200Nm3/トン以下。
【0039】
一実施形態によれば、分留ステップは、水素化ステップの前、または水素化ステップの
後、またはその両方で行われる;一実施形態によれば、プロセスは、3つの水素化段階を
含み、好ましくは3つの別々の反応器中である。
【0040】
したがって、本発明は、200~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を
有する流体を開示し、前記流体は、95重量%超えのイソパラフィンおよび3重量%未満
のナフテンを含み、OECD 306規格に従って測定しとき、28日で少なくとも60
%の生分解性であり、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量であり、100重量
ppm未満の芳香族化合物を含み、好ましくはCH3 satとして表される炭素を30
%未満含む。
【0041】
一実施形態によれば、流体は、220~340℃、有利には240℃を超えて340℃
以下の範囲の沸点を有する。
【0042】
沸点は、当業者に周知の方法に従って測定することができる。一例として、沸点は、A
STM D86規格に従って測定することができる。
【0043】
一実施形態によれば、流体は、80℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは3
5~50℃、有利には40~50℃の沸点範囲を有する。
【0044】
一実施形態によれば、流体は、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満の
芳香族化合物を含む。
【0045】
一実施形態によれば、流体は、1重量%未満、好ましくは500ppm未満、有利には
50ppm未満のナフテンを含む。
【0046】
一実施形態によれば、流体は、5ppm未満、さらに3ppm未満、好ましくは0.5
ppm未満の硫黄を含む。
【0047】
一実施形態によれば、流体は、98重量%を超えるイソパラフィンを含む。
【0048】
一実施形態によれば、流体は、少なくとも20:1のイソパラフィン対n-パラフィン
の比を有する。
【0049】
一実施形態によれば、流体は、95重量%超えのイソパラフィンとしての炭素原子数1
4~18の分子を含み、好ましくは60~95重量%、より好ましくは80~98重量%
の、C15イソパラフィン、C16イソパラフィン、C17イソパラフィン、C18イソ
パラフィン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群より選択されるイソパラフィン
を含む。
【0050】
一実施形態によれば、流体は以下を含む。
-合計量80~98%のC15イソパラフィンおよびC16イソパラフィン;または
-合計量80~98%のC16イソパラフィン、C17イソパラフィンおよびC18イ
ソパラフィン;または
-合計量80~98%のC17イソパラフィンおよびC18イソパラフィン。
【0051】
一実施形態によれば、流体は、以下の特徴のうちの1つ以上、好ましくはすべてを示す
:
-流体は、3%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは約0%の、Cquatとし
て表される炭素を含む;
-流体は、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは15%未満のCH s
atとして表される炭素を含む;
-流体は、40%超え、好ましくは50%超え、さらに好ましくは60%超えのCH2
satとして表される炭素を含む;
-流体は、30%未満、好ましくは28%未満、より好ましくは25%未満のCH3
satとして表される炭素を含む;
-流体は、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは15%未満のCH3長
鎖として表される炭素を含む;
-流体は、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満のCH3短鎖
として表される炭素を含む。
【0052】
イソパラフィン、ナフテンおよび/または芳香族化合物の量は、当業者にとって既知の
方法に従って決定することができる。これらの方法のうち、ガスクロマトグラフィーを挙
げることができる。
【0053】
一実施形態によれば、流体は、OECD 306規格に従って測定したとき、28日で
少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有
利には少なくとも80%の生分解性を有する。
【0054】
一実施形態によれば、流体は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97%、
より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは約100%のバイオカーボン含
有量を有する。
【0055】
原料が最初に開示され、次いで水素化ステップおよび関連する分留ステップ、そして最
後に、改良された流体が開示される。
【0056】
・原料
第一の変形によれば、供給原料または単に原料は、バイオマスで実施されるように、水
素化脱酸素化およびそれに続く異性化(以後「HDO/ISO」)のプロセスの結果であ
る供給原料であり得る。
【0057】
このHDO/ISOプロセスは、植物油、動物性脂肪、魚油、およびそれらの混合物か
らなる群から選択される生物学的材料、バイオマス、好ましくは植物油に適用される。適
切な植物原料としては、菜種油、キャノーラ油、菜種油、トール油、ヒマワリ油、大豆油
、大麻油、オリーブ油、亜麻仁油、カラシ油、パーム油、ラッカセイ油、ヒマシ油、ココ
ナッツ油、スエット、獣脂、脂身、リサイクルされた消化脂肪などの動物性油脂、遺伝子
工学によって作られた出発原料、そして藻類およびバクテリアなどの微生物によって作ら
れた生物学的な出発原料が挙げられる。縮合生成物、エステル、または生物学的原料から
得られる他の誘導体も出発材料として使用することができる。特に好ましい植物原料はエ
ステルまたはトリグリセリド誘導体である。この材料は、生物学的エステルまたはトリグ
リセリド成分の構造を分解し、そして酸素、リンおよび硫黄(の一部)化合物を除去し、
同時にオレフィン結合を水素化するための水素化脱酸素(HDO)ステップにかけられ、
次いで得られた生成物の異性化によって、炭化水素鎖を分岐させ、こうして得られた原料
の低温特性を改善する。
【0058】
HDOステップでは、水素ガスおよび生物学的成分は、向流式または並流式のいずれか
でHDO触媒床に送られる。HDOステップでは、圧力および温度範囲は、典型的にはそ
れぞれ20~150bar、および200~500℃である。HDOステップでは、公知
の水素化脱酸素触媒を使用することができる。HDOステップの前に、二重結合の副反応
を回避するために、任意に生物学的原料をより穏やかな条件下で予備水素化することがで
きる。HDOステップの後、生成物は、異性化ステップに送られ、そこで水素ガスおよび
水素化される生物学的成分、および任意にn-パラフィン混合物が異性化触媒床に並流式
または向流式で送られる。異性化ステップでは、圧力および温度範囲は、典型的にはそれ
ぞれ20~150bar、および200~500℃である。異性化ステップでは、公知の
異性化触媒を通常使用することができる。
【0059】
二次プロセスステップ(中間プーリング、捕捉トラップなど)も存在し得る。
【0060】
HDO/ISOステップから出た生成物は、例えば、所望の留分を得るために分留する
ことができる。
【0061】
様々なHDO/ISOプロセスが文献に開示されている。国際公開第2014/033
762号は、予備水素化ステップ、水素化脱酸素ステップ(HDO)、および向流原理を
用いて機能する異性化ステップを含むプロセスを開示している。欧州特許第172884
4号は、植物または動物由来の混合物からの炭化水素成分の製造プロセスを記載している
。このプロセスは、例えば、アルカリ金属塩などの汚染物質を除去するための植物由来の
混合物の前処理ステップと、それに続く水素化脱酸素(HDO)ステップおよび異性化ス
テップとを含む。欧州特許第2084245号には、脂肪酸エステルを含有する生物由来
と、場合によっては、例えば、ひまわり油、菜種油、キャノーラ油、パーム油などの植物
油、または松の木のパルプに含まれる脂肪油(トール油)などの遊離脂肪酸のアリコート
との混合物の水素化脱酸素、続いて特定の触媒上での水素異性化による、ディーゼル燃料
またはディーゼル成分として使用可能な炭化水素混合物の製造プロセスが記載されている
。欧州特許第2368967号は、そのようなプロセスおよびそのようにして得られた生
成物を開示している。
【0062】
Neste Oy社は特定のHDO/ISOプロセスを開発し、現在NexBTL(登
録商標)(ディーゼル、航空燃料、ナフサ、イソアルカン)の商品名でこのようにして得
られた製品を販売している。このNexBTL(登録商標)は、本発明における使用のた
めの適切な供給原料である。NEXBTL供給原料については、http://en.w
ikipedia.org/wiki/NEXBTLおよび/またはNeste Oy社
のWebサイトでさらに説明されている。
【0063】
第2の変形によれば、供給原料または単に原料は、原料としてのさらなる処理に適した
、合成ガスの炭化水素への変換プロセスの結果である供給原料であってもよい。合成ガス
は、典型的には、水素と一酸化炭素と、場合により少量の、二酸化炭素のような他の成分
とを含む。本発明で使用される好ましい合成ガスは、再生可能な合成ガス、すなわち再生
可能資源(再生可能エネルギー源を含む)からの合成ガスである。
【0064】
可能な合成ガス系の原料の代表例は、ガス液化(GTL)原料、バイオマス液化(BT
L)原料、再生可能メタノール液化(MTL)原料、再生可能水蒸気改質、および廃棄物
からエネルギーガス化、ならびに再生可能エネルギー(太陽エネルギー、風力エネルギー
)を使用して二酸化炭素と水素を合成ガスに変換する最近の方法である。この後者のプロ
セスの例は、アウディ(登録商標)e-ディーゼル原料プロセスである。用語合成ガスは
、メタンリッチガスなど(リッチガスを中間体として使用することができる)、フィッシ
ャー トロプシュ法で使用することができるあらゆる材料源にも及ぶ。
【0065】
合成ガスの液化(STL)プロセスは、ガス状炭化水素を、ガソリンまたはディーゼル
燃料などのより長鎖の炭化水素に変換する精製プロセスである。再生可能なメタンリッチ
ガスは、例えば、フィッシャー トロプシュ法、メタノール-ガソリン法(MTG)また
は合成ガス-ガソリンプラス法(STG+)を使用して、直接変換を経てまたは中間体と
しての合成ガスを経て、液体合成燃料に変換される。フィッシャー トロプシュ法の場合
、生成する流出物はフィッシャートロプシュ誘導体である。
【0066】
「フィッシャートロプシュ誘導体」とは、炭化水素組成物が、フィッシャートロプシュ
縮合プロセスの合成生成物であるか、またはそれから誘導されることを意味する。フィッ
シャートロプシュ反応は、一酸化炭素と水素(合成ガス)をより長い鎖、通常はパラフィ
ン系炭化水素に変換する。全体的な反応方程式は、適切な触媒の存在下でそして典型的に
は高温(例えば、125~300℃、好ましくは175~250℃)および/または圧力
(例えば、5~100bar、好ましくは12~50bar)で、単純である(しかし機
械的複雑さは省略):
n(CO+2H2)=(-CH2-)n+nH2O+熱
必要ならば、2:1以外の水素:一酸化炭素比を用いてもよい。一酸化炭素および水素は
、それ自体有機または無機、天然または合成の供給源から、典型的には天然ガスまたは有
機的に誘導されたメタンのいずれかから誘導することができる。例えば、それはバイオマ
スまたは石炭からも誘導することができる。
【0067】
上記のような連続的なイソパラフィンシリーズを含有する回収された炭化水素組成物は
、好ましくはパラフィンワックスの水素化異性化、続いて好ましくは溶媒または触媒脱ロ
ウなどの脱ロウによって得られる。パラフィンワックスは、好ましくはフィッシャートロ
プシュ誘導体ワックスである。
【0068】
炭化水素留分は、フィッシャー トロプシュ反応から直接的に、または例えば、フィッ
シャートロプシュ合成生成物または好ましくは水素化処理されたフィッシャートロプシュ
合成生成物の分留によって間接的に得ることができる。
【0069】
水素化処理は、好ましくは、沸点範囲を調整するための水素化分解(例えば、英国特許
第2077289号および欧州特許出願公開第0147873号参照)および/または、
分岐パラフィンの割合を増やすことによって低温流動性を改善することができる水素化異
性化を含む。欧州特許出願公開第0583836号明細書には、二段階水素化処理法が記
載されており、そこではフィッシャートロプシュ合成生成物は、それが異性化または水素
化分解を実質的に受けないような条件下でまず水素化転化に付され(これはオレフィンと
酸素含有成分を水素化する)、次いで、得られた生成物の少なくとも一部は、水素化分解
および異性化が起こり実質的にパラフィン系炭化水素燃料を生じるような条件下で水素化
転化される。異性化プロセスを調整して、必要な炭素分布を有する主にイソパラフィンを
得ることが可能である。合成ガス系の原料は、それが90%を超えるイソパラフィンを含
有するので、本質的にイソパラフィン系である。
【0070】
例えば、米国特許第4125566号および米国特許第4478955号に記載されて
いるように、重合、アルキル化、蒸留、分解-脱カルボキシル化、異性化および水素化改
質などの他の合成後処理を用いてフィッシャートロプシュ縮合生成物の性質を変性するこ
とができる。例えば、上記のフィッシャートロプシュ誘導体回収炭化水素組成物を調製す
るために使用することができるフィッシャー トロプシュ法の例は、Sasolのいわゆ
る市販のスラリー相蒸留技術、シェル中間留分合成プロセス(Shell Middle
Distillate Synthesis Process)および「AGC-21
」エクソンモービルプロセスである。これらおよび他の方法は、例えば、欧州特許出願公
開第776959号、欧州特許出願公開第668342号、米国特許第4943672号
、米国特許第5059299号、国際公開第9934917号および国際公開第9920
720号にさらに詳細に記載されている。
【0071】
所望の留分は、続いて、例えば、蒸留によって単離することができる。
【0072】
原料は、典型的には、EN ISO 20846に従って測定したとき、15ppm未
満、好ましくは8ppm未満、より好ましくは5ppm未満、特に1ppm未満の硫黄を
含む。典型的には、原料は、バイオ由来産物として硫黄を含まない。
【0073】
水素化装置に入る前に、予備分留ステップを行うことができる。装置に入る際により狭
い沸点範囲を有することによって、出口においてより狭い沸点範囲を有することが可能に
なる。実際、予備分留留分の典型的な沸点は、220~330℃の範囲にあり、一方、予
備分留ステップを伴わない留分は、典型的には150℃~360℃の範囲の沸点を有する
。
【0074】
・水素化ステップ
HDO/ISOまたは合成ガスから出た原料は、次いで水素化される。その原料は任意
に予備分留することができる。
【0075】
水素化装置で使用される水素は、典型的には高純度の水素、例えば、99%超えの純度
を有する水素であるが、他のグレードも使用できる。
【0076】
水素化は1つ以上の反応器中で起こる。その反応器は1つ以上の触媒床を含み得る。触
媒床は、通常、固定床である。
【0077】
水素化は触媒を用いて行われる。典型的な水素化触媒としては、これらに限定されない
が、ニッケル、白金、パラジウム、レニウム、ロジウム、タングステン酸ニッケル、モリ
ブデンニッケル、モリブデン、モリブデン酸コバルト、シリカ上のモリブデン酸ニッケル
、および/またはアルミナ担体またはゼオライトが挙げられる。好ましい触媒は、Ni系
であり、アルミナ担体上に担持されており、100~200m2/gの触媒の比表面積を
有する。
【0078】
水素化条件は典型的には以下である:
-圧力:50~160bar、好ましくは80~150bar、そして最も好ましくは
90~120barまたは100~150bar;
-温度:80~180℃、好ましくは120~160℃、そして最も好ましくは150
~160℃;
-液空間速度(LHSV):0.2~5時-1、好ましくは0.4~3時-1、最も好
ましくは0.5~0.8時-1;
-水素処理量:上記の条件に適合し、最大200Nm3/トンの原料。
【0079】
反応器内の温度は、典型的には約150~160℃とすることができ、そして圧力は、
典型的には約100barとすることができるが、一方、液体時空間速度は、典型的には
約0.6時-1とすることができ、そして処理速度は、原料品質と最初のプロセスパラメ
ーターに応じて適合される。
【0080】
本発明の水素化プロセスはいくつかの段階で実施することができる。2段階または3段
階、好ましくは3段階、好ましくは3つの別々の反応器中であってもよい。第1段階は、
硫黄捕捉、実質的に全ての不飽和化合物の水素化、および芳香族化合物の約90%以下の
水素化を行う。第1の反応器から出る流れは実質的に硫黄を含まない。第2段階では、芳
香族化合物の水素化が続き、芳香族化合物の99%以下が水素化される。第3段階は仕上
げ段階であり、100重量ppm以下の低さの芳香族含有量を可能にし、または高沸点生
成物であっても、50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の芳香族含有量を可能
にする。
【0081】
触媒は反応器毎に様々な量または実質的に等しい量で存在することができ、例えば、3
つの反応器について重量で、0.05~0.5/0.10~0.70/0.25~0.8
5、好ましくは0.07~0.25/0.15~0.35/0.4~0.78、最も好ま
しくは0.10~0.20/0.20~0.32/0.48~0.70である。
【0082】
3個の代わりに、1個または2個の水素化反応器を用いてもよい。
【0083】
第1の反応器が、交互に揺動モードで運転されるツイン反応器で作られることも可能で
ある。これは触媒の装填と排出に有用であり得る:なぜなら、第1の反応器が最初に作用
が阻害される触媒を含むので(実質的に全ての硫黄がその触媒内および/または触媒上に
捕捉される)、それをたびたび交換したほうがよいからである。
【0084】
2つ、3つまたはそれ以上の触媒床が設置されている1つの反応器を使用することがで
きる。
【0085】
反応温度およびその結果としての水素化反応の水熱平衡を制御するために、反応器また
は触媒床の間の流出物を冷却するための再循環にクエンチを挿入することが必要なことも
ある。好ましい実施形態では、そのような中間冷却またはクエンチはない。
【0086】
プロセスが2つまたは3つの反応器を利用する場合、第1の反応器は硫黄トラップとし
て作用するであろう。したがって、この第1の反応器は実質的に全ての硫黄を捕捉するで
あろう。したがって、触媒は非常に急速に飽和し、時折更新され得る。そのような飽和触
媒について再生または復活が可能でない場合、第1の反応器は、サイズおよび触媒含有量
の両方が触媒更新頻度に依存する犠牲的反応器と考えられる。
【0087】
一実施形態では、得られた生成物および/または分離されたガスは、少なくとも部分的
に水素化段階の入口に再循環される。この希釈は、もしこれが必要とされる場合、特に第
1段階で、反応の発熱性を管理限界内に維持するのを助ける。リサイクルはまた、反応前
の熱交換および温度のより良好な制御も可能にする。
【0088】
水素化装置を出る流れは、水素化生成物および水素を含む。フラッシュ分離器は、流出
物をガス(主に残留水素)と液体(主に水素化炭化水素)とに分離するのに使用される。
このプロセスは、3つのフラッシュ分離器、1つは高圧のもの、1つは中圧のもの、そし
て1つは大気圧に非常に近い、低圧のものを使用して実施することができる。
【0089】
フラッシュ分離器の頂部に集められた水素ガスは、水素化装置の入口に、または異なる
レベルで反応器間の水素化装置内に再循環することができる。
【0090】
最終分離生成物はほぼ大気圧であるので、分留段階に直接供給することが可能であり、
それは好ましくは約10~50mbar、好ましくは約30mbarの真空圧力下で行わ
れる。
【0091】
分留段階は、種々の炭化水素流体を分留塔から同時に抜き出すことができるように操作
することができ、そしてその沸点範囲は予め定めることができる。
【0092】
したがって、分留は、水素化前、水素化後、またはその両方で行うことができる。
【0093】
したがって、水素化反応器、分離器および分留装置は、中間タンクを使用する必要なし
に直接接続することができる。供給物、特に供給物の初留点および終点を適合させること
によって、中間貯蔵タンクなしで、所望の初留点および終点を有する最終生成物を直接製
造することが可能である。さらに、水素化と分留のこの統合は、少ない装置数と省エネル
ギーで最適化された熱統合を可能にする。
【0094】
・本発明で用いる流体
本発明で用いる流体、以下、単に「改良された流体」は、卓越した特性、分子量、蒸気
圧、粘度、乾燥が重要である系での規定の蒸発条件、および規定の表面張力を有する。
【0095】
改良された流体は、主としてイソパラフィンであり、95%超え、好ましくは98%超
えのイソパラフィンを含む。
【0096】
改良された流体は、典型的には3重量%未満、好ましくは1重量%未満、有利には50
0重量ppm未満、さらには50重量ppm未満のナフテンを含む。
【0097】
典型的には、改良された流体は、6~30、好ましくは8~24、最も好ましくは9~
20の炭素原子数を含む。流体は、イソパラフィンとして、14~18個の炭素原子を有
する分子を大部分、すなわち90重量%超えを特に含む。好ましい改良された流体は、C
15イソパラフィン、C16イソパラフィン、C17イソパラフィン、C18イソパラフ
ィンおよびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択されるイソパラフィンを60~
95重量%、好ましくは80~98重量%含む。
【0098】
好ましい改良された流体は以下を含む:
-合計量80~98%のC15イソパラフィンおよびC16イソパラフィン;または
-合計量80~98%のC16イソパラフィン、C17イソパラフィンおよびC18イ
ソパラフィン;または
-合計量80~98%のC17イソパラフィンおよびC18イソパラフィン。
【0099】
好ましい改良された流体の例は、以下を含むものである:
- 30~70%のC15イソパラフィンおよび30~70%のC16イソパラフィン
、好ましくは40~60%のC15イソパラフィンおよび35~55%のC16イソパラ
フィン;
- 5~25%のC15イソパラフィン、30~70%のC16イソパラフィンおよび
10~40%のC17イソパラフィン、好ましくは8~15%のC15イソパラフィン、
40~60%のC16イソパラフィンおよび15~25%のC17イソパラフィン;
- 5~30%のC17イソパラフィンおよび70~95%のC18イソパラフィン、
好ましくは10~25%のC17イソパラフィンおよび70~90%のC18イソパラフ
ィン。
【0100】
改良された流体は特定の分岐分布を示す。
【0101】
イソパラフィンの分岐割合および炭素分布は、NMR法(ならびにGC-MS)および
各タイプの炭素の決定(水素なし、1、2または3個の水素を有する)を用いて決定され
る。Cquat satは、飽和四級炭素を表し、CH satは、1個の水素を有する
飽和炭素を表し、CH2 satは、2個の水素を有する飽和炭素を表し、CH3 sa
tは、3個の水素を有する飽和炭素を表し、CH3長鎖とCH3短鎖は、それぞれ、長鎖
と短鎖上のCH3基を表し、ここで、短鎖は、1個のメチル基のみであり、長鎖は、少な
くとも2個の炭素を有する鎖である。CH3長鎖とCH3短鎖の合計はCH3 satで
ある。
【0102】
改良された流体は、典型的には、3%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは約0
%のCquatとして表される炭素を含む。
【0103】
改良された流体は、典型的には、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは
15%未満のCH satとして表される炭素を含む。
【0104】
改良された流体は、典型的には、40%超え、好ましくは50%超え、より好ましくは
60%超えのCH2 satとして表される炭素を含む。
【0105】
改良された流体は、典型的には、30%未満、好ましくは28%未満、より好ましくは
25%未満のCH3 satとして表される炭素を含む。
【0106】
改良された流体は、典型的には、20%未満、好ましくは18%未満、より好ましくは
15%未満のCH3長鎖として表される炭素を含む。
【0107】
改良された流体は、典型的には、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは
9%未満のCH3短鎖として表される炭素を含む。
【0108】
改良された流体は、200~400℃の範囲の沸点を有し、また非常に低い芳香族化合
物含有量のため、高い安全性を示す。
【0109】
改良された流体は、典型的には、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、
有利には20ppm未満の芳香族化合物(UV法を使用して測定される)を含む。これは
それらを電気車両流体での使用に適したものにする。これは、高温沸騰生成物、典型的に
は300~400℃、好ましくは320~380℃の範囲の沸点を有する生成物に特に有
用である。
【0110】
改良された流体の沸点範囲は、好ましくは80℃以下、好ましくは70℃以下、より好
ましくは60℃以下、さらにより好ましくは35~50℃、有利には40~50℃である
。
【0111】
改良された流体はまた、低すぎて通常の低硫黄分析計によって検出できないレベルで、
典型的には5ppm未満、さらには3ppm未満、そして好ましくは0.5ppm未満の
、極端に低い硫黄含有量を有する。
【0112】
初留点(IBP)から終点(FBP)までの範囲は、具体的な用途および組成に従って
選択される。初留点が250℃を超えると、指令2004/42/CEに従って、VOC
(揮発性有機化合物)フリーと分類できる。
【0113】
有機化学物質の生分解とは、微生物の代謝活性による化学物質の複雑さの減少を意味す
る。好気的条件下で、微生物は、有機物を二酸化炭素、水、バイオマスに変換する。OE
CD 306法は、海水中の個々の物質の生分解性の評価に利用可能である。OECD法
306は、シェイク フラスコ法またはクローズド ボトル法のいずれかとして実施する
ことができ、添加される唯一の微生物は、試験物質が添加される試験海水中の微生物であ
る。海水中の生物分解を評価するために、生分解性を海水中で測定することを可能にする
生分解性試験を実施した。生分解性は、OECD 306試験ガイドラインに従って行っ
たクローズド ボトル試験で決定した。改良された流体の生分解性は、OECD法306
に従って測定される。
【0114】
OECD方法306は以下のとおりである:
【0115】
クローズド ボトル法は、予め決定した量の試験物質を試験媒体中に通常2~10mg
/lの濃度で溶解することからなり、1つ以上の濃度を任意に使用する。その溶液を、恒
温槽または15~20℃の範囲内に制御された囲いの中で、暗闇の中で、充填された密閉
ボトルの中に保持する。28日間にわたる酸素分析によって、分解を追跡する。24本の
ボトルを使用する(試験物質用に8本、基準物質用に8本、海水と栄養分用に8本)。全
ての分析を対のボトルで行う。化学的または電気化学的方法を使用して、少なくとも4つ
(0、5、15および28日目)の溶存酸素の測定を行う。
【0116】
したがって、結果は28日での%分解性で表される。改良された流体は、28日で、O
ECD 306規格に従って測定したとき、少なくとも60%、好ましくは少なくとも7
0重量%、より好ましくは少なくとも75%、そして有利には少なくとも80%の生分解
性を有する。
【0117】
本発明は天然起源の生成物のような出発物質を使用する。生体材料の炭素は、植物の光
合成、したがって大気中のCO2に由来する。したがって、大気中に放出される炭素が増
えないので、これらのCO2材料の分解(分解による、寿命の終わりでの燃焼/焼却もま
た理解されるであろう)は温暖化に寄与しない。したがって、生体材料のCO2評価は明
らかに優れており、得られる生成物のプリント炭素を減らすのに役立つ(製造のためのエ
ネルギーのみを考慮に入れる)。一方、分解されてCO2を出す起源の化石物質は、CO
2率の上昇、ひいては気候温暖化の一因となるだろう。したがって、本発明による改良さ
れた流体は、化石源から出発して得られる化合物のプリント炭素よりも優れたプリント炭
素を有するであろう。
【0118】
したがって、本発明は改良された流体の製造中の生態学的評価も改良する。用語「バイ
オカーボン」は、炭素が天然由来であり、以下に示されるように生体材料に由来すること
を示す。バイオカーボンの含有量と生体材料の含有量は同じ値を示す表現である。
【0119】
源の再生可能な材料または生体材料は、大気から始まる光合成によって(人間の規模で
)最近固定されたCO2から炭素が生じる有機材料である。地上では、このCO2は植物
によって収集または固定される。海では、CO2は、光合成を行う微視的な細菌、植物、
または藻類によって収集または固定される。生体材料(天然起源炭素100%)は10-
12より高い同位体比14C/12C、典型的には約1.2×10-12を示すが、化石
材料はゼロの比を有する。実際、同位体14Cは、大気中で形成され、次いで最大で数十
年の時間スケールで光合成によって統合される。14Cの半減期は、5730年である。
したがって、光合成から生じる物質、すなわち一般的な植物は、必然的に最大含有量の同
位体14Cを有する。
【0120】
生体材料の含有量またはバイオカーボンの含有量の決定は、規格ASTM D 686
6-12、方法B(ASTM D 6866-06)およびASTM D 7026(A
STM D 7026-04)に従って行われる。規格ASTM D 6866は、「放
射性炭素および同位体比質量分析を用いた天然範囲物質のバイオベース含有量の決定」に
関し、一方、規格ASTM D 7026は、「炭素同位体分析による物質のバイオベー
ス含有量決定のためのサンプリングおよび結果の報告」に関する。2番目の規格では、最
初の段落で最初の規格について言及している。
【0121】
一つ目の規格は、試料の比14C/12Cの測定試験を記載し、それを再生可能起源1
00%の基準試料の比14C/12Cと比較して、試料中の再生可能由来Cの相対百分率
を得る。この規格は14Cでの年代測定と同じ概念に基づいているが、年代測定の方程式
を適用しない。このようにして計算された比率は、「pMC」(percent Mod
ern Carbon)として示される。分析される材料が生体材料と化石材料(放射性
同位体を含まない)の混合物である場合、得られるpMCの値は試料中に存在する生体材
料の量と直接相関する。14C年代測定に使用される基準値は1950年からの年代測定
値である。この年の後の大気中に大量の同位体を導入した大気中の核実験の存在のため、
この年が選択された。参照番号1950は100のpMC値に対応する。熱核試験を考慮
に入れると、保持される現在の値は約107.5である(これは0.93の補正係数に対
応する)。現在の植物の放射性炭素への識別特性は、従って107.5である。したがっ
て、54pMCおよび99pMCの識別特性は、それぞれ50%および93%の試料中の
生体材料の量に対応する。
【0122】
本発明による化合物は、少なくとも部分的に生体材料に由来し、したがって少なくとも
95%の生体材料の含有量を示す。この含有量は有利にはさらに高く、特に98%超え、
より好ましくは99%超え、そして有利には約100%である。したがって、本発明によ
る化合物は、100%生体起源のバイオカーボンであり得るか、またはそれとは反対に、
化石起源との混合物から生じる。一実施形態によれば、同位体比14C/12Cは、1.
15~1.2×10-12である。
【0123】
特に断らない限り、百分率およびppmはすべて重量基準である。単数形および複数形
は、流体を示すために互換的に使用される。
【0124】
・潤滑組成物
潤滑剤として使用するとき、改良された流体は、潤滑組成物中にあり、これは組成物の
全重量に対して1~100重量%を占めることができる。好ましい実施形態では、潤滑組
成物は、組成物の全重量に対して、50~99重量%、好ましくは70~99重量%、好
ましくは80~99重量%を占める;この実施形態は、潤滑組成物中の大部分または単独
の基油としての本発明の流体の使用に対応し得る。
【0125】
他の実施形態では、潤滑組成物は、潤滑組成物の全重量に対して1~40重量%、好ま
しくは5~30重量%、より好ましくは10~30重量%を占めることができる;この実
施形態は、潤滑組成物中の追加の基油(または補助基油)としての本発明の流体の使用に
対応し得る。主な基油は標準的なものであり、特にAPI分類によるグループI~Vの基
油の中から選択される、鉱物起源または再生可能起源のものであり得る。
【0126】
別の実施形態では、改良された流体は、他の潤滑組成物と組み合わせて使用することが
できる。
【0127】
本発明による潤滑組成物は、選択された摩擦調整剤、清浄剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、
粘度改良剤指数、分散剤、酸化防止剤、流動点改良剤、消泡剤、増粘剤およびそれらの混
合物から選択される添加剤をさらに含み得る。
【0128】
耐摩耗剤および極圧添加剤は、これらの表面に吸着された保護膜の表面を擦ることによ
って形成を保護する。
【0129】
多種多様な耐摩耗剤がある。好ましくは、耐摩耗剤は、アルキルチオリン酸金属塩、特
にアルキルチオリン酸亜鉛、より具体的にはジアルキルジチオリン酸亜鉛またはZnDT
Pなどの、ホスホ硫化添加剤から選択される。好ましい化合物は、式Zn((SP(S)
(OR2)(OR3))2のものであり、式中、R2およびR3は同一または異なり、独
立してアルキル基、好ましくは1~18個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0130】
ホスフェートアミンも本発明の潤滑組成物に使用できる耐摩耗剤である。しかしながら
、これらの添加剤は灰の発生剤であるため、これらの添加剤によって提供されるリンは、
自動車の触媒系に有害となり得る。例えば、硫化オレフィンを含め、ポリスルフィドなど
、リン酸をもたらさない添加剤でアミンホスフェートを部分的に置換することによってこ
れらの影響を最小限に抑えることができる。
【0131】
有利には、本発明による潤滑組成物は、全潤滑剤組成物質量に対して0.01~6重量
%、好ましくは0.05~4質量%、より好ましくは0.1~2重量%の耐摩耗剤および
極圧添加剤を含むことができる。
【0132】
有利には、本発明による潤滑組成物は、少なくとも1種の摩擦調整剤を含み得る。摩擦
調整剤は、金属元素を供給する化合物および無灰化合物から選択することができる。金属
元素を提供する化合物のうち、一部は、その配位子が酸素、窒素、硫黄またはリンを含む
炭化水素化合物であり得る、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどの遷移金属錯体が
挙げられる。無灰摩擦調整剤は、通常有機物由来であり、脂肪酸のモノエステルおよびポ
リオールのモノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪アミン、脂肪エポ
キシド、ホウ酸化脂肪エポキシド;脂肪アミンまたは脂肪酸グリセロールエステルから選
択することができる。本発明によれば、脂肪化合物は10~24個の炭素原子を有する少
なくとも1つの炭化水素基を含む。
【0133】
有利には、本発明の潤滑組成物は、潤滑組成物の全重量に基づいて、0.01~2重量
%、または0.01~5重量%、好ましくは0.1~1.5質量%、または0.1~2重
量%の摩擦調整剤を含み得る。
【0134】
有利には、本発明による潤滑組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤を含み得る。
【0135】
使用中の潤滑組成物の劣化を遅らせるために、一般に酸化防止剤が使われる。この劣化
は、特に堆積物の形成、スラッジの存在、または潤滑組成物の粘度増加をもたらし得る。
【0136】
酸化防止剤を含む添加剤は、フリーラジカル抑制剤または分解性ヒドロペルオキシドと
して作用する。一般的に使用される添加剤のうち、酸化防止剤としては、フェノール系酸
化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスホロ硫黄酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸
化防止剤の一部、例えば、ホスホロ硫黄酸化防止剤は、灰発生剤であり得る。フェノール
系酸化防止剤は、無灰でもよいし、または中性もしくは塩基性金属塩の形でもよい。酸化
防止剤は、立体障害フェノール、立体障害フェノールエステル、およびチオエーテル架橋
を含む立体障害フェノール、ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン少なくとも1つの
アルキル基C1~C12、N、N’-ジアルキル-アリールジアミンおよびそれらの混合
物から選択され得る。
【0137】
好ましくは、本発明によれば、立体障害フェノールは、少なくとも1個のC1~C10
アルキル基、好ましくはアルキル基C1~C6、好ましくはC4アルキル基、好ましくは
tert-ブチル基によって、置換されたアルコール官能基を有する少なくとも1個の隣
接炭素原子を有するフェノール基を含む化合物から選択される。
【0138】
アミン化合物は、任意にフェノール系酸化防止剤と組み合わせて使用することができる
他のクラスの酸化防止剤である。アミノ化合物の例は、芳香族アミン、例えば、式NR4
R5R6の芳香族アミンであり、
式中、R4は、任意に置換された、脂肪族基または芳香族基を表し、R5は、任意に置換
された芳香族基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基または式R7S(O
)zR8の基を表し、式中、R7は、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、R8は
、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、zは、0、1または2を表す。
【0139】
硫化アルキルフェノールまたはそれらのアルカリおよびアルカリ土類金属塩も、酸化防
止剤として使用することができる。
【0140】
他の酸化防止剤クラスは、銅化合物のもの、例えば、銅のチオ-またはジチオ-ホスフ
ェート、銅塩およびカルボン酸のチオ-またはジチオ-ホスフェート、ジチオカルバメー
ト、スルホネート、フェネート、銅アセチルアセトネートである。銅塩IおよびII、酸
塩または無水コハク酸もまた使用できる。
【0141】
本発明による潤滑組成物は、当業者に公知の全てのタイプの酸化防止剤を含むことがで
きる。
【0142】
有利には、潤滑組成物は、少なくとも一つの酸化防止無灰添加剤を含む。
【0143】
また有利には、本発明による潤滑組成物は、組成物の全重量に対して0.5~2重量%
の少なくとも1つの酸化防止剤を含む。
【0144】
本発明による潤滑組成物は、少なくとも1つの清浄剤をさらに含み得る。
【0145】
清浄剤は、二次酸化生成物および燃焼生成物の溶解によって金属部品の表面上の堆積物
の形成を通常減少させる。
【0146】
本発明による潤滑組成物に使用される清浄剤は、一般に当業者に公知である。清浄剤は
、親油性の長い炭化水素鎖と親水性の頭部とを含むアニオン性化合物であり得る。その会
合カチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0147】
清浄剤は、好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、スルホ
ネート、サリチレート、ナフテネート、フェネートおよび塩から選択される。アルカリ金
属およびアルカリ土類金属は、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたは
バリウムである。
【0148】
これらの金属塩は通常、化学量論量または過剰量、すなわち化学量論量より多い量の金
属を含む。添加剤は、過塩基性清浄剤であり;過塩基性清浄剤に特性を与える過剰の金属
は、通常、油中の不溶性金属塩の形態、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩
、グルタミン酸塩、好ましくは炭酸塩である。
【0149】
有利には、本発明の潤滑組成物は、潤滑組成物の全重量に基づいて2~4重量%の清浄
剤を含み得る。
【0150】
本発明の潤滑組成物はまた、少なくとも流動点降下剤を含んでいてもよいが、改良され
た流体の流動点を考えるとこれは通常必要とされない。
【0151】
ワックス結晶の形成を遅くすることによって、流動点降下剤は一般に本発明による潤滑
組成物の温度挙動を改善する。
【0152】
流動点降下剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリア
リールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキル化ポリスチ
レンが挙げられる。
【0153】
有利には、本発明による潤滑組成物は、少なくとも一つの分散剤も含み得る。
【0154】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミドおよびそれらの誘導体から選択することが
できる。
【0155】
また有利には、本発明による潤滑組成物は、潤滑組成物の全重量に対して0.2~10
重量%の分散剤を含み得る。
【0156】
本発明の潤滑組成物は、粘度指数を向上させる少なくとも一つの添加剤をさらに含み得
る。粘度指数を向上させる添加剤の例としては、記載したエステルポリマー、ホモポリマ
ーまたはコポリマー、水素化または非水素化、スチレン、ブタジエンおよびイソプレン、
ポリアクリレート、ポリメタクリレート(PMA)またはオレフィンコポリマー、特にエ
チレン/プロピレンコポリマーが挙げられる。
【0157】
本発明の潤滑組成物は様々な形態であり得る。本発明による潤滑組成物は、特にエマル
ションではなくてもよく、より好ましくは無水組成物である。
【0158】
・電気車両の電気モーターと部品
図1は、電気またはハイブリッド車両における電動化の概略図を示す。
【0159】
電気車両およびハイブリッド車両の電気モーター(1)は、ステーター(13)および
ローター(14)に接続された、パワーエレクトロニクス(11)を含む。ローターの回
転速度は非常に速く、これは電気モーター(1)のローターと自動車の車輪の間に減速機
(3)を追加することを意味する。
【0160】
ステーターは異なる巻線、特に銅巻線を含み、これらには交互に電流が供給される。こ
れは回転磁界を誘導する。ローターはそれ自体が巻線、永久磁石などを含み、したがって
回転磁界は、ローターの回転をもたらす。
【0161】
パワーエレクトロニクス、電気モーターのステーターおよびローターは、典型的にはそ
のすべてが動作中にかなりの量の熱を発生する、複雑な表面および構造である。これが、
上記のような改良された流体が電気モーターのパワーエレクトロニクスおよび/またはロ
ーターおよび/またはステーターを冷却するために特に使用される理由である。
【0162】
好ましい実施形態では、本発明は、電気モーターのパワーエレクトロニクス、ローター
およびステーターを冷却するための上記で定義されたような改良された流体の使用に関す
る。
【0163】
軸受(12)もローターとステーターとの間に設けられ、回転軸を維持することを可能
にする。これらの軸受は、高い摩擦剪断および上昇摩耗の問題および短寿命の問題にさら
されている。これが、上記のような改良された流体が電気モーターの軸受を潤滑するため
に特に使用される理由である。
【0164】
好ましい実施形態では、本発明は、車両の電気モーターのローターとステーターとの間
に配置された軸受を潤滑するための、上で定義されたような流体の使用に関する。
【0165】
減速機(3)は、電気モーター出力での回転速度を減速し、したがって車輪に伝達され
る回転速度を適合させることを目的とし、それによって車両速度を調整することができる
。減速機は高い摩擦拘束を受け、損傷を避けるために適切な潤滑を必要とする。これが、
上記のような改良された流体がトランスミッション、特に電気車両の減速機を潤滑するた
めに特に使用される理由である。
【0166】
本発明はまた、パワーエレクトロニクスおよび/またはローターおよび/またはステー
ターを冷却するため、および電気車両の減速機および/またはモーターのローターとステ
ーターとの間に配置された軸受を潤滑するための、上記で定義した改良された流体の使用
に関する。
【0167】
電気モーターは、電池(2)によって供給される。リチウムイオン電池は、電気車両の
分野で最も一般的である。ますます強力になり、サイズがますます小さくなる電池の開発
は、電池の冷却に関する問題を引き起こしている。実際、温度が約50~55℃を超える
と、発火またはさらには爆発の重大な危険性が生ずる。逆に、これらの電池の温度が約2
0~25℃を下回ると、電池を早くに処分する危険性がある。したがって、電池の温度を
許容可能な温度レベルに維持する必要がある。
【0168】
本発明はまた、車両の電池および/または車両の電気モーターを冷却するための、上記
で定義されたような改良された流体の使用に関する。
【0169】
車両は、純粋に電気的でもよいし、またはハイブリッドでもよいし、本発明は両方に等
しく適用される。
【0170】
本発明はまた、車両の電気モーターを冷却するための方法に関し、それは、モーターの
機械的部分を上記で定義したような流体と接触させるステップを少なくとも含む。
【0171】
本発明はまた、車両のパワーエレクトロニクスおよび/またはローターおよび/または
ステーターを冷却する方法に関し、それは、パワーエレクトロニクスおよび/またはロー
ターおよび/またはステーターを上記で定義された改良された流体と接触させるステップ
を少なくとも含む。
【0172】
本発明はまた、車両の電気モーターを潤滑するための方法に関し、それは、モーターの
機械的部分を上記で定義されたような流体と接触させるステップを少なくとも含む。
【0173】
本発明はまた、車両のローターとステーターとの間に配置された軸受を潤滑する方法に
関し、それは、上記軸受の機械的部分を上記で定義したような改良された流体と接触させ
るステップを少なくとも含む。
【0174】
本発明はまた、車両の電気モーターを冷却および潤滑するための方法に関し、それは、
モーターの機械的部分を上記で定義したような流体と接触させるステップを少なくとも含
む。
【0175】
本発明はまた、車両の電気モーターを冷却し、かつトランスミッションを潤滑する方法
に関し、それは、電気モーターの機械的部分およびトランスミッションの機械的部分を上
記で定義したような流体と接触させるステップを少なくとも含む。
【0176】
本発明はまた、車両のパワーエレクトロニクスおよび/またはステーターおよび/また
はローターを冷却し、かつ車両の減速機および/または電気モーターのローターとステー
ターとの間に配置された軸受を潤滑する方法に関し、それは、パワーエレクトロニクスの
一部および/またはステーターおよび/またはローターおよび減速機の一部および/また
は軸受を上記で定義されたような改良された流体と接触させるステップを少なくとも含む
。
【0177】
本発明はまた、電池を冷却するための方法にも関し、それは、電池を上記で定義したよ
うな流体と接触させるステップを少なくとも含む。
【0178】
本発明はまた、電池および電気モーターを冷却する方法に関し、それは、電池および電
気モーターの機械的部分を上記で定義した流体と接触させるステップを少なくとも含む。
【0179】
以下の実施例は本発明を限定することなく説明するものである。
【実施例0180】
・例証1
本発明のプロセスでは、NEXBTL原料(イソアルカン)である原料が使用される。
以下の水素化条件が使用される:
反応器内の温度は、約150~160℃であり;圧力は、約100barであり、液空
間速度は、0.6時-1であり;処理速度は適応される。使用される触媒は、アルミナ上
のニッケルである。
【0181】
本発明で使用される3つの流体を準備するために分留が行われる。
【0182】
得られた生成物は以下の特性を有して得られた。
【0183】
以下の規格を、以下の特性を決定するために使用した:
引火点 EN ISO 2719
流動点 EN ISO 3016
15℃での密度 EN ISO 1185
40℃での粘度 EN ISO 3104
アニリン点 EN ISO 2977
HFRR EN ISO 12156
EPテスター API”の推奨指針-API RP 13
熱伝導率1 内部フラッシュ法
比熱2 熱量測定による方法
【0184】
1.アルミニウム製の2つの管、1つの内側管と1つの外側管とを含む特定の装置が使
用される。測定される流体は2つの管の間の環状空間内に配置される。内側管にエネルギ
ーパルス(ディラック型)を適用し、外側管で温度を測定することにより、サーモグラム
が得られる。
【0185】
アルミニウムの2つの管の2つの層の熱拡散率、密度および比熱を温度の関数として知
ること、および分析される流体の密度および比熱を知ることによって、流体の熱伝導率ラ
ムダを温度の関数として導き出すことができる。
【0186】
装置の較正
装置は、まず、異なる温度で基準試料、SERIOLA 1510(熱伝達媒体)を用
いて較正される。異なる熱特性は、以前に別に測定した。
【0187】
試料調製
試料を混合し、(シリンジを用いて)2つの管の間の環状空間に入れる。次に、装填さ
れた装置を温度が調節されたチャンバー内に置く。
【0188】
測定手順
各温度測定について、以下の手順に従う。試料を所定の温度で安定化する。次に、内側
管の内面に閃光を当て、外側管の外面の温度上昇を経時的に記録する。
各所定温度での少なくとも3つの測定で得られた平均値に基づいて、熱伝導率を計算す
る。
【0189】
2.比熱は、DSC熱量計(DSC NETZSCH 204フェニックス)を使用し
て測定し、それは、規格ISO 113587、ASTM E1269、ASTM E9
68、ASTM E793、ASTM D3895、ASTM D3417、ASTM
D3418、DIN51004およびDIN51007およびDIN53765に準拠す
る。
【0190】
【0191】
流体は無色、無臭であり、食品等級用途に適した欧州薬局方による純度を有し、CEN
/TS 16766による溶媒クラスAである。
【0192】
これらの結果は、本発明に記載の改良された流体が改良された潤滑性を有することを示
している。
【0193】
熱伝導率の値は、同じ粘度で標準の鉱油のものより優れる熱伝導性を示している(最大
7%)。比熱は、標準の鉱油のものよりも優れている(最大11%)。
【0194】
・例証2
本発明で使用した流体(実施例3)および比較組成物(比較例4)の熱伝達率を測定す
るために行った実験について以下に説明する。前記比較組成物は、電気車両およびハイブ
リッド車両の冷却流体として有用な化石由来のポリ-アルファ-オレフィン(PAO1お
よびPAO2)である。
【0195】
流体の熱伝達率は、前記流体の熱的性質を測定する。高い熱伝達率を有する流体は、よ
り良い冷却効率を有する。
【0196】
測定手順
この実験は、誘導によって加熱された金属プレート上に垂直にスプレーノズルを通して
流体ジェットを向けることからなる。加熱されたプレートの上に配置されたサーマルカメ
ラが、流体の噴霧中の温度プロファイルを記録する。プレート上の温度変動を測定するこ
とで、組成物の熱伝達率が得られる。
【0197】
実験のいくつかのパラメーター、特にプレートの温度(電流を変えることによって)、
スプレーノズルのサイズ、およびオイルジェットの圧力を変えることができる。温度は、
金属板上のオイルジェットの衝突点からいくつかの距離でそしていくつかの方向で測定す
る。実験条件を以下の表に記載する。
【0198】
【0199】
所定の距離の衝撃点での温度の値は、衝撃点を中心とする所定の半径の円のいくつかの
点で測定された温度の平均である。
【0200】
【0201】
図2および
図3では、Y軸は、金属プレート上で測定された温度を表し;X軸は、半径
、すなわち温度が測定される点と金属プレート上のオイルジェットの衝突点との間の距離
を表す。
【0202】
図2は、実施例3の流体を用いて40kWの電流および6barのオイルジェット圧力
で得られた結果(-・-)を、ポリ-アルファ-オレフィンを用いて得られた結果(黒い
ひし形;黒い四角)と比較して表す。
【0203】
図3は、実施例3の流体を用いて40kWの電流および10barのオイルジェット圧
力で得られた結果(-・-)を、ポリ-アルファ-オレフィンを用いて得られた結果(黒
いひし形;黒い四角)と比較して表す。
【0204】
両方の図は、本発明に有用な実施例3の流体が噴霧されたときに、0.01mより大き
い半径で金属プレート上で測定された温度(-・-)が、ポリ-アルファ-オレフィンの
比較組成物を噴霧したときに金属プレート上の同じ半径で測定された温度(黒いひし形;
黒い四角)と比較して、はるかに低い(それぞれ10℃および20℃低い)ことを示す。
【0205】
これは、本発明に有用な流体が、ポリ-アルファ-オレフィンの比較組成物と比較して
、加熱された金属プレートのより効率的な冷却を提供することを意味する。
【0206】
結果として、前記流体は、電気車両またはハイブリッド車両のモーターを冷却するのに
有用である。
電気車両またはハイブリッド車両における、200℃~400℃の範囲の沸点および80℃未満の沸点範囲を有する流体の使用であって、前記流体は、95%重量を超えるイソパラフィンと、3重量%未満のナフテンと、少なくとも95重量%のバイオカーボン含有量とを含み、100重量ppm未満の芳香族化合物を含み、
前記流体は、
モーターを冷却するために、または
モーターのパワーエレクトロニクスおよび/またはローターおよび/またはステーターを冷却するために、または
電池を冷却するために、または
モーターを冷却および潤滑するために、または
モーターを冷却し、かつトランスミッションを潤滑するために
使用される、使用。