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特開2022-166155肝臓において目的のタンパク質を発現するためのプラットフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166155
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】肝臓において目的のタンパク質を発現するためのプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221025BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20221025BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/863 Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127829
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019569246の分割
【原出願日】2018-06-15
(31)【優先権主張番号】62/520,103
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/662,907
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516355531
【氏名又は名称】ツールゲン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOOLGEN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソクジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ドン ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン-ギ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肝臓を人工的に操作することによって目的のタンパク質を発現するためのプラットフォームを提供する。
【解決手段】異常に機能または発現する疾病遺伝子の代わりに、正常に機能または発現できる導入遺伝子(例えば治療用遺伝子)を高発現分泌遺伝子に挿入することにより発現を誘導することによって遺伝性疾患を緩和もしくは治療するための、または、身体機能を改善するためのプラットフォームを提供する。高発現分泌遺伝子はHPまたはAPOC3遺伝子を含む。導入遺伝子は、肝細胞ゲノムにおけるプロモーターを使用して高発現されて細胞から分泌されるものを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞のゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現させることにより、目的のタンパク質を産生する肝細胞であって、
前記導入遺伝子は、前記肝細胞の前記ゲノムに存在するHP遺伝子の領域に挿入され、
挿入された前記導入遺伝子は、前記肝細胞において、HP遺伝子の内在性プロモータによって発現され、それにより、前記肝細胞は挿入された前記導入遺伝子を高発現して、目的の前記タンパク質を産生することができる、
肝細胞。
【請求項2】
前記導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン領域に挿入される、請求項1に記載の肝細胞。
【請求項3】
前記導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン1領域に挿入される、請求項1に記載の肝細胞。
【請求項4】
前記導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン領域に挿入される、請求項1に記載の肝細胞。
【請求項5】
前記導入遺伝子はF9遺伝子、GFP遺伝子、F8遺伝子、またはGBA遺伝子である、請求項1から4のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項6】
前記導入遺伝子は挿入前と比較してより高発現されるか、または前記導入遺伝子は前記肝細胞において新たに発現される、請求項1から5のいずれか一項に記載の肝細胞。
【請求項7】
目的のタンパク質を産生するために、導入遺伝子を肝細胞のゲノムのHP遺伝子の領域に人工的に挿入するための組成物であって、前記組成物は、
Casタンパク質または前記Casタンパク質をコードする核酸と、
ガイドRNA、または前記ガイドRNAをコードする核酸であって、
前記ガイドRNAは、前記肝細胞の前記ゲノムに存在するHP遺伝子の前記領域に位置する標的配列に対応するガイドドメインを含み、
前記ガイドドメインは、18~25ntであり、前記標的配列とミスマッチする0~5ヌクレオチドを含み、
前記ガイドRNAは、前記Casタンパク質と複合体を形成する能力がある、
ガイドRNA、または前記ガイドRNAをコードする核酸と、
ドナー、または前記ドナーをコードする核酸であって、
前記ドナーは前記導入遺伝子を含む、
ドナー、または前記ドナーをコードする核酸と
を備える、
組成物。
【請求項8】
前記標的配列は、HP遺伝子のイントロン領域に位置する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記標的配列は、HP遺伝子のイントロン1領域に位置する、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記標的配列は、HP遺伝子のエクソン領域に位置する、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記導入遺伝子は、前記導入遺伝子が前記肝細胞の前記ゲノムに挿入された後、HP遺伝子の内在性プロモータによって発現される、請求項7から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ドナーは、前記導入遺伝子を発現するための外因性プロモータを含まない、請求項7から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記Casタンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、およびCpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項7から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記標的配列は、5'-TCCAGGAAAGAGAAACCTCCC-3', 5'-CATTCAGGAAAGTACATTGGC-3'、および配列識別番号1~153から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項7から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、
(a)前記標的配列が5'-TCCAGGAAAGAGAAACCTCCC-3', 5'-CATTCAGGAAAGTACATTGGC-3'、および配列識別番号1~40から成る群から選択されるとき、前記Casタンパク質はカンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質であり、
(b)前記標的配列が配列識別番号41~134から成る群から選択されるとき、前記Casタンパク質はストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質であり、または、
(c)前記標的配列が配列識別番号135~153から成る群から選択されるとき、前記Casタンパク質はスタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、
を含む、請求項7から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記導入遺伝子はF9遺伝子、GFP遺伝子、F8遺伝子、またはGBA遺伝子である、請求項7から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記Casタンパク質、前記ガイドRNA、および前記ドナーは、ヌクレオチド配列の形態で、少なくとも1つのベクターにおいてそれぞれコードされる、請求項7から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される少なくとも1つのウイルスベクターである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記Casタンパク質、前記Casタンパク質をコードする前記核酸、
前記ガイドRNA、または前記ガイドRNAをコードする前記核酸、
および、
前記ドナー、または前記ドナーをコードする核酸は、それぞれ独立して、または一緒に、ナノ粒子の形態により前記肝細胞に導入される、請求項7から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
in vitrоまたはex vivоで、肝細胞のゲノムにおけるHP遺伝子の領域に導入遺伝子を挿入することによって、肝細胞において目的のタンパク質を産生するための方法であって、前記方法は、
a)前記肝細胞に、請求項9から19のいずれか一項に記載の組成物を導入するステップを備える、方法。
【請求項21】
b)前記導入遺伝子を発現させて、前記肝細胞において目的のタンパク質を産生し、前記導入遺伝子は、HP遺伝子の内在性プロモータによって発現されるステップをさらに備える、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓を人工的に操作または改変することによって、目的のタンパク質を発現するためのプラットフォームに関する。より具体的には、本発明は、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質を使用して、異常に機能または発現し得る疾病遺伝子の代わりに、通常に機能または発現し得る導入遺伝子(例えば、治療用遺伝子)の発現を誘導することによって、遺伝性疾患を緩和または治療する、または、身体機能を改善するためのプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、人間工学の新時代において、非常に大きい可能性を有する。遺伝子療法は、遺伝子破壊、遺伝子改変、および、融合された特定の外因性プロモーター、または、ゲノム挿入部位に見つかる内在性プロモーターによって調節できる導入遺伝子の挿入などのゲノム編集技法を含む。
【0003】
今日、難治性の血友病、または、リソソーム蓄積症には、好適な治療剤が無く、酵素またはタンパク質の代替物を使用する代替的な治療法が主に治療のために使用されているが、根本的な治療法ではない。加えて、AAVを使用して治療用遺伝子を発現するための方法が臨床試験において行われているが、これらの方法はまた、AAVが発現している間のみ効果的であると予想され得て、したがって、それらは、根本的かつ長期的な治療方法になり得ない。
【0004】
したがって、より長く、より効果的な治療のために、患者のゲノムに実際の治療用遺伝子を挿入することによる恒久的な発現を可能にする治療用プラットフォームの必要性がある。そのような治療用プラットフォームは、治療剤の一時的、および、反復的な投与を用いる既存の治療方法とは異なる。効率的な治療用プラットフォームは、遺伝子修正に効果的な標的特異的プログラム可能ヌクレアーゼを使用して治療用遺伝子を患者のゲノムに挿入することによって開発できる。
【0005】
この理由から、発明者は、標的特異的プログラム可能ヌクレアーゼを使用して、目的の遺伝子を持続的に発現可能な治療用プラットフォームを開発することを目指している。特に、高い効率のために、臓器または組織(例えば肝臓)において高発現する遺伝子の部位を目的の遺伝子の挿入の部位として決定することによって、効果的プラットフォームが開発された。
【0006】
[開示]
[技術的課題]
本発明は、CRISPR‐Casシステムを使用して、肝細胞において目的のタンパク質を発現するプラットフォームを提供することに関する。
【0007】
また、本発明は、目的のタンパク質、または、それをコードする配列、および、CRISPR‐Casシステムの使用を含む、目的のタンパク質を発現するための組成物、ならびに、その様々な使用を提供することに関する。
【0008】
本発明はまた、CRISPR‐Casシステムを使用して、目的のタンパク質を発現する細胞、および、それを調製する方法を提供することに関する。
【0009】
また、本発明は、CRISPR‐Casシステムを使用して、肝細胞において目的のタンパク質を発現する方法を提供することに関する。
【0010】
本発明はまた、肝細胞において目的のタンパク質を発現するための組成物を、治療の対象に投与する段階を備える、遺伝性疾患を治療する方法を提供することに関する。
【0011】
本発明はまたは、肝細胞において目的のタンパク質を発現するために対応する標的遺伝子の操作において使用可能なガイド核酸およびエディタータンパク質を提供することに関する。
【0012】
[技術的解決策]
上述の課題を解決するべく、本発明は、肝細胞において目的のタンパク質を発現するプラットフォームを提供する。より具体的には、本発明は、高いレベルでタンパク質を持続的に発現し、人工的に改変された細胞、臓器または組織を提供するために、CRISPR‐Casシステムを使用して、目的のタンパク質をコードする遺伝子を標的遺伝子に挿入することによって、身体機能を改善し、遺伝性疾患を治療するためのプラットフォームを提供する。
【0013】
ここで使用される「肝臓生体工場プラットフォーム」とは、特定の導入遺伝子を肝細胞に挿入することによって、目的のタンパク質を持続的に発現可能なシステムであり、それらに直接的または間接的に関与する、すべての組成物、方法、および、使用を含む。
【0014】
例において、人工的に挿入される導入遺伝子は、肝細胞において高発現分泌遺伝子に組み込まれ得る。
【0015】
高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムに存在するALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACT遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、および、F9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つである。 導入遺伝子は、挿入前と比較して、高発現する、または、導入遺伝子は、肝細胞において、新たに発現する。
【0016】
加えて、ここで開示される開示は、肝細胞において目的のタンパク質を発現するための標的特異的プログラム可能ヌクレアーゼを含む組成物に関し、特に、導入遺伝子を高発現分泌遺伝子に挿入するためのプログラム可能ヌクレアーゼを含み、高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子である遺伝子を操作するための組成物に関する。
【0017】
一例において、本発明は、肝臓において発現される高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列に対応するガイド核酸と、エディタータンパク質をコードするエディタータンパク質または核酸と、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むドナーとを含む目的のタンパク質を発現するための組成物を提供する。
【0018】
「高発現分泌遺伝子」は、発現産物が肝細胞の外へ分泌されるように、肝細胞において高発現する、予め定められたレベル以上で肝細胞において発現する遺伝子を指す。高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムにおいて高いレベルで持続的に発現できる部位に存在し、セーフハーバー部位の機能を有し得る。
【0019】
高発現分泌遺伝子は、ALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子、HPRT遺伝子およびCCR5遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0020】
高発現分泌遺伝子は、好ましくは、HP遺伝子またはAPOC3遺伝子であり得る。
【0021】
プログラム可能ヌクレアーゼは、例において、人工的に設計されたヌクレアーゼを意味する。プログラム可能ヌクレアーゼは、Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)から成る群から選択される少なくとも1つである。
【0022】
ヌクレオチド配列における改変は、CRISPR‐Casシステムを使用することによって、無制限に、および、人工的に操作され得る。
【0023】
「CRISPR‐Casシステム」は、目的の遺伝子の配列を認識して、それに結合するガイド核酸と、標的遺伝子を切断するエディタータンパク質との間の相互作用によって形成されるシステムを指し、CRISPR‐Casシステムは、ガイド核酸およびエディタータンパク質を含む。
【0024】
CRISPR‐Casシステムは標的を改変し得る。標的は、標的核酸、遺伝子、染色体またはタンパク質であり得る。
【0025】
エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のタンパク質、または、それらをコードする核酸である。例として、エディターは、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質またはカンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質であり得る。
【0026】
標的配列は、高発現分泌遺伝子配列のエクソン領域に位置する連続の10bp~25bpのヌクレオチド配列であり得る。
【0027】
標的配列は、高発現分泌遺伝子配列のイントロン領域に位置する連続の10bp~25bpのヌクレオチド配列であり得る。
【0028】
標的配列は、配列識別番号1~348から成る群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0029】
ガイド核酸は、高発現分泌遺伝子の群から選択される少なくとも1つの遺伝子のヌクレオチド配列の一部と相補結合を形成し得る。ガイド核酸は、標的配列とミスマッチする0~5、0~4、0~3、または、0~2ヌクレオチドを含み得る。
【0030】
一実施形態において、ここで開示される開示は、ALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子、HPRT遺伝子およびCCR5遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つである、高発現分泌遺伝子のためのガイド核酸を含む。
【0031】
例において、HP遺伝子配列の配列識別番号1~153から成る群から選択される標的配列のためのガイド核酸、APOC3遺伝子配列の配列識別番号168~348から成る群から選択される標的配列のためのガイド核酸の群から選択される1または複数のガイド核酸が提供され得る。実施形態において、遺伝子を改変するための組成物は、配列識別番号1‐40、および、154~167から成る群から選択される標的配列に対応するガイド核酸を提供する。組成物は更に、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、または、Cas9タンパク質をコードする核酸を含む。
【0032】
別の実施形態において、遺伝子を改変するための組成物は、配列識別番号41~134および168~332から成る群から選択される標的配列に対応するガイド核酸を提供する。組成物は更に、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、または、Cas9タンパク質をコードする核酸を含む。
【0033】
ガイド核酸は、これらに限定されないが、18~25bp、18~24bp、18~23bp、19~23bp、および、20~23bpのヌクレオチド配列のいずれか1つであり得る。
【0034】
ガイドRNA(gRNA)は、crRNAおよびtracrRNAを含むデュアルRNA、または、単一ガイドRNA(sgRNA)の形態で存在し得る。
【0035】
ここで開示される開示は、目的のタンパク質をコードする遺伝子導入遺伝子を含む。
【0036】
目的のタンパク質の発現は、既存のタンパク質を置換するように、または、新しいタンパク質を提供するように機能し得る。代替的に、身体において欠乏している、または、不存在であるタンパク質が発現され、それにより、タンパク質の欠乏または不存在によって引き起こされる疾患を治療する、または、対応するタンパク質の機能を強化する。
【0037】
例えば、目的のタンパク質は、既存のタンパク質とは異なる特性(例えば、血清半減期の増加など)を有するタンパク質であり得る。
【0038】
例えば、目的のタンパク質は、特定の疾患の治療用遺伝子であり得る。治療用遺伝子は、遺伝性疾患に関与する病因遺伝子の発現および機能に影響する遺伝子であり得る。治療用遺伝子は、遺伝性疾患に関与する病因遺伝子(正常遺伝子の変異型)の正常型遺伝子の一部(例えば機能ドメイン)であり得る。
【0039】
疾患は、抗体によって治療できる疾患であり得る。
【0040】
疾患は、様々な遺伝子における変異によって引き起こされ得る。例えば、疾患は、「遺伝性代謝異常」に関連する疾患であり得る。例えば、疾患は血友病であり得る。
【0041】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、FVII、FVIII、FIX、および、異なる凝固因子から成る群から選択され得る。
【0042】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、IDUA、I2S、SGSH、NAGLU、HGSNAT、GNS、GALNS、GLB1、ARSB、GUSB、HYAL、NEU、GNPTABおよびMCOLN1から成る群から選択され得る。
【0043】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、SAH1、GALC、CTSA、GLA、NAGA、ベータガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、GBA、SMPD1、ARSA、SUMFから成る群から選択され得る。
【0044】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、NPC、PPT、TPP1、CLN3、CLN6、PPT1、DNAJC5、CTSF、CLN7、CLN8およびCTSDから成る群から選択され得る。
【0045】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型はGAAまたはLAMP2であり得る。
【0046】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、CTNS、CTSK、または、SLC17A5であり得る。
【0047】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、MAN2B、MAN2C、MANBA、AGA、FUCA1およびLALから成る群から選択され得る。
【0048】
治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、メチルマロン酸尿症CbIA型(MMAA)タンパク質、メチルマロン酸尿症CbIB型(MMAB)タンパク質、メチルマロン酸尿症CbIC型(MMADHC)タンパク質、5‐メチルテトラヒドロ葉酸‐ホモシステインメチルトランスフェラーゼレダクターゼ(MTRR)タンパク質、リソソーム膜タンパク質ドメイン(LMBRD1)タンパク質、5‐メチルテトラヒドロ葉酸‐ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)タンパク質、プロピオニルCoAタンパク質、グルコース‐6‐リン酸トランスポーター(G6PT)タンパク質、グルコース‐6‐ホスファターゼ(G6Pase)タンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質、低密度リポタンパク質受容体アダプタータンパク質1(LDLRAP‐1タンパク質)、N‐アセチルグルタミン酸シンセターゼ(NAGS)タンパク質、カルバモイルリン酸シンセターゼ1(CPS1)タンパク質、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)タンパク質、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)タンパク質、アルギナーゼ(ARG1)タンパク質、溶質キャリアファミリー25タンパク質、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー、ポリペプチドA1(UGT1A1)タンパク質、フマリルアセト酢酸加水分解酵素(FAH)、アラニングリオキシレートアミノトランスフェラーゼ(AGXT)タンパク質、グリオキシル酸レダクターゼ/ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(GRHPR)タンパク質、APTase Cu(2+)輸送ベータ(ATP7B)タンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)タンパク質、リポタンパク質リアーゼ(LPL)タンパク質から成る群から選択されるタンパク質をコードする遺伝子であり得る。
【0049】
治療用遺伝子は、抗体をコードする遺伝子であり得る。すなわち、治療用遺伝子は、抗体によって疾患の原因に関与する特定の因子またはシグナル経路を阻害するタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子であり得る。
【0050】
治療用遺伝子は、血液脳関門(BBB)など、特定の組織に浸透できる特定のペプチド、または、治療用遺伝子の治療効果を改善可能な機能性ペプチドと融合され得る。
【0051】
加えて、明細書は、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質を使用して、導入遺伝子が挿入された、人工的に改変された細胞、組織または臓器を提供する。
【0052】
改変された細胞、組織または臓器は、CRISPR‐Casシステムを使用して、目的のゲノム遺伝子における標的配列に導入遺伝子を挿入することによって、目的のタンパク質が発現された臓器または組織である。人工的に改変された細胞、組織または臓器において、目的のタンパク質は、肝臓細胞における高発現分泌遺伝子位置に挿入されることによって、特定のレベル以上で持続的に高発現される。
【0053】
ここで開示される開示の例示的な一実施形態において、高発現分泌遺伝子は、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、F9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つであり得る。導入遺伝子は高発現分泌遺伝子に人工的に挿入される。肝細胞は、導入遺伝子から発現される目的のタンパク質を含む。
【0054】
一例において、高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子またはAPOC3遺伝子であり得る。
【0055】
導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子のエクソンまたはイントロンに含まれ得る。
【0056】
導入遺伝子は、肝細胞ゲノムに元々存在するプロモーターによって発現される。
【0057】
肝細胞は無制限に操作される座位(例えば、高発現分泌遺伝子座位)を含む肝臓幹細胞であり得る。本明細書の方法および組成物と共に使用できる特定の幹細胞の種類には、成人幹細胞、胚性幹細胞(ESC)、誘導多能性幹細胞(iPSC)が含まれる。
【0058】
ここで開示される開示の別の例示的な実施形態において、導入遺伝子を肝細胞ゲノムに人工的に挿入することによって目的のタンパク質を発現するように肝細胞を人工的に操作する方法として、当該方法は、肝細胞ゲノムに存在する高発現分泌遺伝子を操作するためのプログラム可能ヌクレアーゼ、および、導入遺伝子を含むドナー配列を肝細胞に導入する段階を含み、導入遺伝子は、肝細胞ゲノムに存在する高発現分泌遺伝子に挿入され、高発現分泌遺伝子は、FTL、FTH1、ACTB、HP、APOC3、SOD2、ORM1、F9から選択される1または複数の遺伝子である。
【0059】
ガイド核酸、エディタータンパク質およびドナーを肝細胞へ導入することは、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子またはタンパク質移行ドメイン(PTD)融合タンパク質から選択される1または複数の手段によって実行され得る。
【0060】
ガイド核酸、エディタータンパク質およびドナーは、核酸配列の形態で少なくとも1つのベクターにおいてそれぞれコードされ得る。
【0061】
ベクターはウイルスベクターシステムであり得る。ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0062】
また、プログラム可能ヌクレアーゼおよびドナーを肝細胞に導入することがin vivoで実行される。
【0063】
対象内送達法は、全身または局所適用であり得る。全身投与は静脈内投与であり得る。
【0064】
また、プログラム可能ヌクレアーゼおよびドナーを肝細胞へ導入することはex vivoで実行される。対象内送達法はエレクトロポレーションであり得る。
【0065】
ここで開示される開示の更に別の例示的な実施形態において、特定の疾患を治療するために、特定のレベル以上で肝細胞において目的のタンパク質を持続的に発現するための組成物を投与する段階を含む、特定の疾患を治療する方法が提供される。
【0066】
特定の疾患は、特定のタンパク質の欠乏または不存在によって引き起こされる疾患であり得る。
【0067】
治療方法は、活性成分として、肝細胞ゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するために遺伝子を操作するための組成物を含む組成物を治療対象に投与する段階を含む。
【0068】
遺伝子を改変するための組成物は、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、または、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0069】
例えば、血友病を治療する方法として、導入遺伝子F9を肝細胞におけるHPまたはAPOC3遺伝子配列に挿入するために遺伝子を操作するための組成物を投与する段階を含む、血友病を治療する方法が開示される。
【0070】
治療の対象は、ヒトおよびサルなどの霊長動物を含む哺乳動物、ならびに、マウスおよびラットなどの齧歯動物のうち、いずれか1つであり得る。
【0071】
ここで開示される開示の更に別の例示的な実施形態において、特定の疾患に対する治療用途のすべての態様が提供される。
【0072】
[発明の有利な効果]
ここで開示されるように、肝細胞において目的のタンパク質を発現するためのプラットフォーム、高いレベルで持続的に発現できる目的のタンパク質、および、身体機能を改善し遺伝性疾患を治療するための基本的な治療剤が提供され得る。
【0073】
例えば、特定のタンパク質の欠乏または不存在によって引き起こされる遺伝性疾患は、本明細書において説明される組成物によって、欠乏または欠失したタンパク質を発現するために、治療用タンパク質を生成することによって、または、異なる特性(例えば、半減期の増加)を有する新しいタンパク質を提供することによって、防止または治療できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】高発現分泌遺伝子を選択するためのRNAシーケンシングの結果を示すグラフである。
【0075】
図2】高発現分泌遺伝子の人工的操作によって形成される肝臓生体工場プラットフォームの図である。
【0076】
図3】ハプトグロビン(HP)を標的化するgRNAの活性を確認するためのT7E1アッセイの結果を示す。
【0077】
図4】Digenome‐seqを使用してオフターゲット部位を確認するグラフの組である。
【0078】
図5】ヒト細胞株、すなわちHEK293細胞において、NGSを使用して、標的化されたディープシーケンシングを通してオフターゲット活性を確認するグラフの組である。
【0079】
図6】デュアルAAVにおけるCRISPR‐SpCas9またはCRISPR‐CjCas9、および、F9遺伝子のパッケージングを示す図である。
【0080】
図7】pAAV‐CMV‐CjCas9‐U6‐sgRNAおよびpAAV‐hF9‐ドナーがトランスフェクトされたHEK293細胞株のゲノムDNAにおいてF9治療用遺伝子のノックインが生じることを確認する、サンガーシーケンシングによって取得されるhHP遺伝子へのF9遺伝子のHDR媒介ノックインを確認するためのプライマー設計を示す。
【0081】
図8】ホモロジーアームの左アームとhHP遺伝子との間のF9挿入(左グラフ)、および、ホモロジーアームの右アームとhHP遺伝子との間のF9挿入(右グラフ)を示すグラフの組である。
【0082】
図9】AV6‐EFS‐SpCas9(5x1011μg)およびAAV6‐hF9‐donor‐APOC3‐Sp(5x1011μg)のデュアルAAVがヒト初代培養肝細胞に導入されたときの、ゲノムDNAを使用するオンターゲット活性(図9のA)、および、上清試料を使用してノックインによって取得されるhF9の分泌量(図9のB)を示すグラフの組である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
特別の定めのない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明の当業者によって一般に理解される意味と同一である。本明細書に記載されるものと同様または同一の方法および材料が本発明の実践または試験において使用され得るが、適切な方法および材料は下に記載される。本明細書において言及されるすべての公報、特許出願、特許、および、他の参考文献は、参照によって全体として引用される。加えて、物質、方法、例は、説明を目的とするものに過ぎず、これらに限定されることを意図するものではない。
【0084】
ここで開示される開示は、肝臓において目的のタンパク質を発現するためのプラットフォームに関する。
【0085】
より具体的には、ここで開示される開示は、CRISPR‐Casシステムを使用して高発現分泌遺伝子を人工的に操作することによって目的のタンパク質を発現するための組成物と、目的のタンパク質を発現するために人工的に操作された細胞、臓器または組織と、特定の遺伝性疾患を治療、防止または軽減する、または、身体機能を改善するための、組成物、細胞、臓器または組織の使用とを含む。
【0086】
[肝臓生体工場プラットフォーム(LBP)]
ここで開示される例示的な一実施形態は、「目的のタンパク質を発現するためのプラットフォーム」に関する。目的のタンパク質を発現するためのプラットフォームは、野性型ゲノムに導入遺伝子を人工的に挿入することによって、特定の臓器または組織において、大量の目的のタンパク質を持続的に生成(発現)できるシステムの総称であり、組成物、使用、および、方法の態様を含む。
【0087】
加えて、プラットフォームは、生成(発現)される目的のタンパク質を細胞の外へ分泌するためのシステムを含む。したがって、生成された目的のタンパク質は、導入遺伝子が挿入された臓器または組織だけでなく、タンパク質が分泌された臓器または組織においても機能し得る。
【0088】
例示的な一実施形態において、プラットフォームは、特定のレベル以上で、目的のタンパク質を十分に生成し得る。
【0089】
別の例示的な実施形態において、プラットフォームは、生成された目的のタンパク質を細胞の外へ十分に分泌し得て、異なる臓器または組織においても作用できる。
【0090】
本明細書において、目的のタンパク質を発現するためのプラットフォームを実現する特定の臓器または組織は、肝臓または肝臓組織である。
【0091】
肝臓は、身体において発生するすべての出来事に関与する人体の化学工場と呼ばれる臓器であり、天然の種類の酵素を通して、栄養素の代謝、解毒、および、免疫機能を担う。特に、人体は、好適な機能に必要な様々な物質を生成および保存し、その後、肝静脈を通して、当該物質を全身に送達することができる。
【0092】
例えば、大量の特定のタンパク質が、肝臓において特定の遺伝子を高発現することによって生成され得て、生成されたタンパク質を全身へ分泌することによって、対応するタンパク質が、必要な臓器へ提供され得る。
【0093】
以降、肝臓生体工場プラットフォーム(以降、「LBP」と呼ぶ)を説明する。
【0094】
ここで開示される一態様において、LBPは、肝臓組織において目的のタンパク質を持続的に生成するためのシステムであり、当該システムは、生成されたタンパク質を細胞の外へ分泌することに直接的または間接的に関与するすべての物質、組成物、方法および使用を含む。
【0095】
LBPは、肝細胞、例えば、肝細胞におけるゲノムを人工的に操作することによって、肝細胞において目的のタンパク質を生成するシステムを含む。
【0096】
例えば、LBPは、肝細胞ゲノム配列の人工的改変を含む。
【0097】
例示的な一実施形態において、LBPは、肝細胞ゲノムの特定の遺伝子の部分的配列の切断を含む。
【0098】
別の例示的な実施形態において、LBPは、目的のタンパク質をコードする導入遺伝子を、肝細胞ゲノムの切断された配列に挿入することを含む。
【0099】
ここで開示される開示において、LBPは、様々な種類の肝臓由来細胞を使用し得る。
【0100】
例えば、LBPは、肝細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)または異なる種類の幹細胞(胚性幹細胞、造血性幹細胞、または、間葉系幹細胞)を含み得るが、本発明はこれに限定されない。
【0101】
LBPは、肝臓において目的のタンパク質を高発現するために、肝細胞ゲノムにおける特定の領域を利用し得る。
【0102】
一例において、導入遺伝子が肝細胞のゲノムにおけるセーフハーバー部位に挿入され得る。
【0103】
「セーフハーバー部位」は、外来遺伝子が挿入されても、例えば癌などの深刻な副作用が無い、ゲノムにおける特定の領域であり、特定の領域に挿入された外来遺伝子は、高いレベルで恒久的かつ安全に発現できる。
【0104】
別の例において、導入遺伝子は、肝細胞のゲノムにおける遺伝子発現調節領域を使用可能な領域に挿入され得る。
【0105】
「遺伝子調節領域」とは、肝細胞ゲノムに存在する遺伝子発現の調節のために重要な役割を果たす領域であり、例えば、遺伝情報を含む配列に隣接するプロモーターおよび/または調節因子(エンハンサー、転写促進因子など)を含む領域の総称である。プロモーターおよび/または調節因子を使用して挿入される外来遺伝子は、高い効率で高発現され得る。
【0106】
LBPは、肝細胞においてゲノムの特定の部位を使用して、高いレベルで導入遺伝子を持続的に発現することにより、目的のタンパク質を大量に生成し得る。
【0107】
高発現分泌遺伝子
ここで開示される開示において、導入遺伝子が肝細胞ゲノムに挿入される特定の部位は、「高発現分泌遺伝子」の配列の一部に含まれ得る。明細書において、高発現分泌遺伝子はまた、肝細胞ゲノムにおける人工的操作を実現する標的遺伝子と称される。
【0108】
「高発現分泌遺伝子」は、肝細胞において持続的に高発現し、細胞の外へ発現産物を分泌し得る遺伝子を指す。
【0109】
例えば、高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムにおけるセーフハーバー部位のいずれか1つに含まれ得る。
【0110】
例えば、高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムにおいて持続的に遺伝子を高発現し得るプロモーターおよび調節因子を含み得る。
【0111】
高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムに存在する野性型遺伝子であり得る。
【0112】
「野性型」という用語は、天然において最も一般に示される遺伝子、または、正常として指定される対立遺伝子を意味する。例えば、野性型は、特定の疾患を示さない正常な状態の遺伝子の種類であり得る。
【0113】
加えて、高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムにおいて通常に機能しない遺伝子であり得る。
【0114】
ここで、高発現分泌遺伝子は、野性型と比較して、1または複数の特定のヌクレオチドが改変された遺伝子であり得る。例えば、改変は、1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、および/または挿入を含む。改変された高発現分泌遺伝子は、全体的に、または、部分的に発現され得る、または、まったく発現されないことがあり得る。
【0115】
ここで開示される開示において、所望のタンパク質を発現可能な導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子配列に組み込まれる。
【0116】
ここで、対応する高発現分泌遺伝子は、全体的に、または、部分的に発現され得る。すなわち、導入遺伝子および高発現分泌遺伝子は共に発現し得る。
【0117】
代替的に、対応する高発現分泌遺伝子は、肝細胞において発現されて血液内に分泌され得る。
【0118】
代替的に、対応する高発現分泌遺伝子は、まったく発現されないことがあり得る。
【0119】
高発現分泌遺伝子は、例えば、ALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子またはHPRT遺伝子であり得る。別の例において、高発現分泌遺伝子は、IDUA遺伝子、IDS遺伝子、GLA遺伝子またはGBA遺伝子であり得る。
【0120】
例において、高発現分泌遺伝子はHP遺伝子であり得る。
【0121】
HP遺伝子は、ハプトグロビンをコードする遺伝子を意味する。一例において、HP遺伝子は、ヒトHPをコードする遺伝子(例えば、NCBIアクセッション番号NP_001119574、NP_001305067、NP_005134)またはマウスHP(NP_001316894、NP_059066)、例えば、NCBIアクセッション番号NM_001126102、NM_005143またはNM_001318138によって発現されるHP遺伝子などの遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子であり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0122】
別の実施形態において、高発現分泌遺伝子はAPOC3遺伝子であり得る。
【0123】
アポリポタンパク質C3(APOC3)遺伝子は、超低比重リポタンパク質(VLDL)のコンポーネントであるアポリポタンパク質C‐IIIをコードする遺伝子を意味する。APOC3遺伝子は、ヒトAPOC3をコードする遺伝子(例えば、NCBIアクセッション番号NP_000031)、例えば、NCBIアクセッション番号NM_000040によって発現されるAPOC3遺伝子などの遺伝子から成る群から選択される1または複数の遺伝子であり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0124】
ここで開示される開示の一例において、肝細胞ゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するLBPシステムが提供される。 導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子に組み込まれる。
【0125】
高発現分泌遺伝子は、ALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子およびF9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0126】
LBPシステムでは、導入遺伝子は、挿入前と比較して、より高発現される、または、導入遺伝子は、肝細胞において新しく発現される。
【0127】
[目的のタンパク質を発現するための組成物]
ここで開示される開示の例示的な一実施形態は、「目的のタンパク質を発現するためのプラットフォーム」を実現できる組成物に関する。組成物は、肝細胞ゲノムに人工的に挿入される導入遺伝子を発現するLBPシステムを実現可能な組成物を含む。
【0128】
例示的な一実施形態において、高発現分泌遺伝子を人工的に操作するための組成物が提供される。
【0129】
高発現分泌遺伝子を人工的に操作するための組成物は、高発現分泌遺伝子における任意の領域を改変し得る。
【0130】
「人工的に操作された」という用語は、天然状態で生じるそのままの状態ではなく、人工的改変が適用された状態を意味する。例えば、遺伝子の一部のヌクレオチドは、欠失または置換され得て、遺伝子は、外来ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを挿入することによって改変され得る。
【0131】
高発現分泌遺伝子を人工的に操作するための組成物はプログラム可能ヌクレアーゼを含む。
【0132】
「プログラム可能ヌクレアーゼ」は、ゲノムを切断するために目的の染色体における特定の部位を認識するすべての種類のヌクレアーゼを含む。特に、プログラム可能ヌクレアーゼは、染色体上の特定の標的配列を認識するドメインであるclustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、植物病原性遺伝子に由来するtranscription activator‐like(TAL)エフェクタードメインおよび切断ドメインが融合された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、RNA‐guided engineered nuclease(RGEN)、Cpf1、FokIエンドヌクレアーゼ、または、それらの組み合わせであり得るが、本発明はそれらに限定されない。
【0133】
プログラム可能ヌクレアーゼは好ましくはCRISPR‐Casシステムであるが、本発明はこれに限定されない。
【0134】
[CRISPR‐Casシステム]
ここで開示される別の例示的な実施形態は、高発現分泌遺伝子を人工的に操作するためにCRISPR‐Casシステムを使用することを含む組成物に関する。
【0135】
CRISPR‐Casシステムは、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質から成り得る。
【0136】
ここで開示される例示的な一実施形態において、高発現分泌遺伝子を操作するための組成物は、高発現分泌遺伝子を操作するためのガイド核酸を含み得る。
【0137】
「ガイド核酸」という用語は、標的核酸、遺伝子または染色体を認識してエディタータンパク質と相互作用できるヌクレオチド配列を意味する。ここで、ガイド核酸は、標的核酸、遺伝子または染色体における一部のヌクレオチドと相補結合を形成し得る。
【0138】
ガイド核酸は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成し、ガイド核酸‐エディター複合体を、標的核酸、遺伝子または染色体の標的領域に配置することを可能にするように機能し得る。
【0139】
ガイド核酸は、標的DNA特異的gRNA、gRNAをコードするDNA、または、DNA/RNA混合物であり得る。
【0140】
ガイド核酸はgRNAであり得る。
【0141】
「ガイドRNA(gRNA)」はin vitroで転写され得て、特に、オリゴヌクレオチド二本鎖またはプラスミド鋳型から転写され得るが、本発明はこれに限定されない。
【0142】
ガイド核酸は1つの連続核酸配列であり得る。
【0143】
例えば、1つの連続する核酸配列は、(N)であり得て、NはA、T、CまたはG、または、A、U、CまたはGであり、mは1~150の整数である。
【0144】
ガイド核酸は2つ以上の連続核酸配列であり得る。
【0145】
例えば、2つ以上の連続する核酸配列は、(N)および(N)であり得て、NはA、T、CまたはG、または、A、U、CまたはGを表し得て、mおよびoは、1~150の整数であり、同一または互いに異なり得る。
【0146】
ガイド核酸は1または複数のドメインを含み得る。
【0147】
ドメインは、ガイドドメイン、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメイン、または、尾部ドメインなどの機能ドメインであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0148】
ここで、1つのガイド核酸は2以上の機能ドメインを有し得る。ここで、2以上の機能ドメインは、互いに異なり得る。代替的に、1つのガイド核酸に含まれる2以上の機能ドメインは同一であり得る。例えば、1つのガイド核酸は、2つ以上の近位ドメインを有し得て、別の例として、1つのガイド核酸は2つ以上の尾部ドメインを有し得る。しかしながら、「1つのガイド核酸に含まれる機能ドメインが同一である」という表現は、2つの機能ドメインの配列が同一であることを意味するものではなく、配列が異なっていても、これらのドメインが機能的に同一の機能を実行するとき、それらは同一のドメインであると見なすことができる。
【0149】
ドメインは以下で説明される。
【0150】
[i)ガイドドメイン]
「ガイドドメイン」という用語は、標的遺伝子または核酸上の標的配列と相補結合を形成可能な相補的ガイド配列を有するドメインであり、標的遺伝子または核酸と特異的に相互作用するように機能する。例えば、ガイドドメインは、標的遺伝子または核酸の特定のヌクレオチド配列を有する場所にガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を誘導する機能を実行し得る。
【0151】
ガイドドメインは、10~35塩基の配列であり得る。例において、ガイドドメインは、10~35、15~35、20~35、25~35、30~35塩基の配列であり得る。
【0152】
別の例において、ガイドドメインは、15~20、20~25、25~30、30~35塩基の配列であり得る。
【0153】
ガイドドメインはガイド配列を有し得る。
【0154】
ガイド配列は、例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する、標的遺伝子または核酸上の標的配列と相補的な核酸配列であり得る。
【0155】
ガイド配列は、10~25塩基配列であり得る。
【0156】
例において、ガイド配列は、10~25、15~25、20~25、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、または45~50塩基配列であり得る。
【0157】
別の例において、ガイド配列は、10~15、15~20、20~25塩基配列であり得る。
【0158】
加えて、ガイドドメインは、追加の塩基配列を含み得る。
【0159】
追加の塩基配列は、ガイドドメインの機能を改善または低減するために利用され得る。
【0160】
追加の塩基配列は、ガイド配列の機能を改善または低減するために利用され得る。
【0161】
追加の塩基配列は、1~10塩基配列であり得る。
【0162】
一例において、追加の塩基配列は、2~10、4~10、6~10、8~10塩基配列であり得る。
【0163】
別の例において、追加の塩基配列は、1~3、3~6、7~10塩基配列であり得る。
【0164】
具体例として、追加の塩基配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10塩基配列であり得る。
【0165】
一例において、追加的ヌクレオチド配列は、1塩基配列G(グアニン)または2塩基配列GGであり得る。
【0166】
追加の塩基配列は、ガイド配列の5'末端に位置し得る。
【0167】
追加の塩基配列は、ガイド配列の3'末端に位置し得る。
【0168】
[II)第1相補ドメイン]
「第1相補ドメイン」という用語は、第2相補ドメインと相補的な核酸配列を含む核酸配列であり、十分な相補性を有するので、第2相補ドメインと二本鎖を形成する。一例において、第1相補ドメインは、例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する第2相補ドメインと相補的な核酸配列であり得る。第1相補ドメインは、第2相補ドメインとの相補結合によって二本鎖を形成し得る。ここで、形成された二本鎖は、エディタータンパク質の一部のアミノ酸との相互作用によって、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成するように機能し得る。
【0169】
第1相補ドメインは、5~35塩基配列であり得る。
【0170】
例において、第1相補ドメインは、5~35、10~35、15~35、20~35、25~35または30~35塩基配列であり得る。
【0171】
別の例において、第1相補ドメインは、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30または30~35塩基配列であり得る。
【0172】
[iii)リンカードメイン]
「リンカードメイン」という用語は、2つ以上の同一または異なるドメインである2つ以上のドメインを接続する核酸配列である。リンカードメインは、共有結合または非共有結合によって2つ以上のドメインに接続され得るか、または、共有結合または非共有結合によって2つ以上のドメインを接続し得る。
【0173】
リンカードメインは1~30の塩基配列であり得る。
【0174】
一例において、リンカードメインは、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25または25~30塩基配列であり得る。
【0175】
別の例において、リンカードメインは、1~30、5~30、10~30、15~30、20~30または25~30塩基配列であり得る。
【0176】
[iv)第2相補ドメイン]
「第2相補ドメイン」という用語は、第1相補ドメインと相補的な核酸配列を含む核酸配列のことであり、十分な相補性を有するので、第1相補ドメインと二本鎖を形成する。
【0177】
一例において、第2相補ドメインは、例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相補性または完全相補性を有する第1相補ドメインに相補的な核酸配列であり得る。
【0178】
第2相補ドメインは、第1相補ドメインとの相補結合によって二本鎖を形成し得る。ここで、形成された二本鎖は、エディタータンパク質の一部のアミノ酸との相互作用によって、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成するように機能し得る。
【0179】
第2相補ドメインは第1相補ドメインと相補的な塩基配列、および、第1相補ドメインと相補性を有しない塩基配列、例えば、第1相補ドメインと二本鎖を形成しない塩基配列を有し得るので、第1相補ドメインより長い塩基配列を有し得る。
【0180】
第2相補ドメインは5~35塩基配列を有し得る。
【0181】
例において、第2相補ドメインは、1~35、5~35、10~35、15~35、20~35、25~35または30~35塩基配列であり得る。
【0182】
別の例において、第2相補ドメインは、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30または30~35塩基配列であり得る。
【0183】
[v)近位ドメイン]
「近位ドメイン」という用語は、第2相補ドメインに隣接して配置される核酸配列である。
【0184】
近位ドメインは、その中に相補的塩基配列を有し得て、相補的塩基配列に起因して二本鎖に形成され得る。
【0185】
近位ドメインは、1~20塩基配列であり得る。
【0186】
一例において、近位ドメインは、1~20、5~20、10~20、または、15~20塩基配列であり得る。
【0187】
別の例において、近位ドメインは、1~5、5~10、10~15、または15~20塩基配列であり得る。
【0188】
[vi)尾部ドメイン]
「尾部ドメイン」という用語は、ガイド核酸の両端のうち1または複数の末端に位置する核酸配列である。
【0189】
尾部ドメインは、その中に相補的塩基配列を有し得て、相補的塩基配列に起因して、二本鎖に形成され得る。
【0190】
尾部ドメインは、1~50塩基配列であり得る。
【0191】
例において、尾部ドメインは、5~50、10~50、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、または、45~50塩基配列であり得る。
【0192】
別の例において、尾部ドメインは、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、または、45~50塩基配列であり得る。
【0193】
一方、ドメインに含まれる核酸配列、すなわち、ガイドドメイン、第1相補ドメイン、リンカードメイン、第2相補ドメイン、近位ドメインおよび尾部ドメインの一部または全部は、選択的に、または、追加的に化学修飾を含み得る。
【0194】
化学修飾は、これらに限定されないが、メチル化、アセチル化、リン酸化、ホスホロチオエート結合、架橋型核酸(LNA)、2'‐O‐メチル3'ホスホロチオエート(MS)、または、2'‐O‐メチル3'thioPACE(MSP)であり得る。
【0195】
ガイド核酸は1または複数のドメインを含む。
【0196】
ガイド核酸はガイドドメインを含み得る。
【0197】
ガイド核酸は、第1相補ドメインを含み得る。
【0198】
ガイド核酸はリンカードメインを含み得る。
【0199】
ガイド核酸は第2相補ドメインを含み得る。
【0200】
ガイド核酸は近位ドメインを含み得る。
【0201】
ガイド核酸は尾部ドメインを含み得る。
【0202】
ここで、1、2、3、4、5、6以上のドメインがあり得る。
【0203】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くのガイドドメインを含み得る。
【0204】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くの第1相補ドメインを含み得る。
【0205】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くのリンカードメインを含み得る。
【0206】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くの第2相補ドメインを含み得る。
【0207】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くの近位ドメインを含み得る。
【0208】
ガイド核酸は、1、2、3、4、5、6またはより多くの尾部ドメインを含み得る。
【0209】
ここで、ガイド核酸において、1つの種類のドメインが重複し得る。
【0210】
ガイド核酸は、重複を有する、または、有しないいくつかのドメインを含み得る。
【0211】
ガイド核酸は、同一の種類のドメインを含み得る。ここで、同一の種類のドメインは、同一の核酸配列または異なる核酸配列を有し得る。
【0212】
ガイド核酸は2種類のドメインを含み得る。ここで、2つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0213】
ガイド核酸は、3種類のドメインを含み得る。ここで、3つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0214】
ガイド核酸は、4種類のドメインを含み得る。ここで、4つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0215】
ガイド核酸は、5種類のドメインを含み得る。ここで、5つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0216】
ガイド核酸は、6種類のドメインを含み得る。ここで、6つの異なる種類のドメインは、異なる核酸配列または同一の核酸配列を有し得る。
【0217】
例えば、ガイド核酸は、[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]から成り得る。ここで、2つのガイドドメインは、異なる、または、同一の標的に対するガイド配列を含み得て、2つの第1相補ドメインおよび2つの第2相補ドメインは、同一または異なるヌクレオチド配列を有し得る。ガイドドメインが、異なる標的に対するガイド配列を含むとき、ガイド核酸は、2つの異なる標的に特異的に結合し得て、ここでは、特異的結合は、同時または順次に実行され得る。加えて、リンカードメインは、特定の酵素によって切断され得て、ガイド核酸は、特定の酵素の存在下で、2または3つの部分に分割され得る。
【0218】
ここで開示される例示的な一実施形態において、高発現分泌遺伝子を操作するためのガイド核酸は、高発現分泌遺伝子を操作するためのgRNAであり得る。
【0219】
gRNAはin vitroで転写され得て、特に、オリゴヌクレオチド二本鎖またはプラスミド鋳型から転写され得るが、本発明はこれに限定されない。
【0220】
ここで使用される「gRNA」という用語は、Casタンパク質と複合体を形成してCasタンパク質を標的DNAへ誘導できる標的DNA特異的RNAを指す。
【0221】
gRNAは複数のドメインを含み得る。各ドメインは、gRNAの3次元形態または活性型の鎖内または鎖間の相互作用を有し得る。
【0222】
例示的な一実施形態において、一本鎖gRNAは、5'から3'方向にガイドドメイン、例えば、標的遺伝子または核酸と相補結合を形成できるガイド配列を有するドメイン;第1相補ドメイン;リンカードメイン:第1相補ドメインの配列と相補的な配列を有するので第1相補ドメインと二本鎖核酸を形成可能なドメインである第2相補ドメイン;近位ドメイン;および選択的に尾部ドメインを含み得る。
【0223】
別の例示的な実施形態において、デュアルgRNAは、5'から3'の方向にガイドドメイン、例えば、標的遺伝子または核酸と相補結合を形成できるガイド配列を有するドメインおよび第1相補ドメインを含む第1鎖、ならびに、第1相補ドメイン、近位ドメイン、および、選択的に尾部ドメインの配列に相補的な配列を有する第1相補ドメインと二本鎖核酸を形成可能なドメインである第2相補ドメインを含む第2鎖を含み得る。
【0224】
ここで、第1鎖はcrRNAと称され得て、第2鎖はtracrRNAと称され得る。crRNAは、ガイドドメインおよび第1相補ドメインを含み得て、tracrRNAは、第2相補ドメイン、近位ドメイン、選択的に尾部ドメインを含み得る。
【0225】
更に、別の例示的な実施形態において、一本鎖gRNAは、5'から3'方向においてガイドドメイン、例えば、標的遺伝子または核酸との相補結合を形成できるガイド配列を有するドメイン;第1相補ドメイン;ならびに、第1相補ドメインの配列に相補的な配列を有するので第1相補ドメインと二本鎖核酸を形成可能なドメインである第2相補ドメインを含み得る。
【0226】
ここで、第1相補ドメインは、天然に発生する第1相補ドメインとの相同性を有し得る、または、天然に発生する第1相補ドメインに由来し得る。加えて、第1相補ドメインは、天然に存在する種に応じて、第1相補ドメインのヌクレオチド配列の差異を有し得て、天然に存在する種を含む第1相補ドメインに由来し得る、または、天然に存在する種を含む第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0227】
例示的な一実施形態において、第1相補ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの第1相補ドメイン、または、それらに由来する第1相補ドメインとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0228】
例えば、第1相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、もしくは、完全相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐GUUUUAGAGCUA(X)n‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、塩基の数を表し得て、5~15の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGであり得る。別の実施形態において、第1相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上、または、完全相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)nを含み得て、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU(X)n‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、塩基の数を表し得て、5~15の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0229】
別の実施形態において、第1相補ドメインは、パルクバクテリア・バクテリウム(GWC2011_GWC2_44_17)、ラクノスピラバクテリウム(MC2017)、ブチリビブリオ・プロテオクラスチクス、ペレグリニバクテリア・バクテリウム(GW2011_GWA_33_10)、アシダミノコッカス属(BV3L6)、ポルフィロモナス・マカカエ、ラクノスピラバクテリウム(ND2006)、ポルフィロモナス・クレビオリカニ、プレボテラ・ディシエンス、モラクセラ・ボーボクリ(237)、スミセラ属(SC_KO8D17)、レプトスピラ・イナダイ、ラクノスピラバクテリウム(MA2020)、フランシセラノビサイダ(U112)、カンディダツス・メタノプラズマ・テルミタム、もしくは、ユウバクテリウム・エリゲンスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインと部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。例えば、第1相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第1相補ドメイン、または、それに由来する第1相補ドメインであるとき、第1相補ドメインは、5'‐UUUGUAGAU‐3'であり得る、または、5'‐UUUGUAGAU‐3'と部分的な、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、第1相補ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐(X)nUUUGUAGAU‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、塩基の数を表し得て、1~5の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0230】
ここで、リンカードメインは、第1相補ドメインを第2相補ドメインに連結するように機能するヌクレオチド配列であり得る。
【0231】
リンカードメインは、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインの各々と共有結合または非共有結合し得る。
【0232】
リンカードメインは、共有結合または非共有結合で第1相補ドメインを第2相補ドメインに連結し得る。
【0233】
リンカードメインは、一本鎖gRNA分子における使用について好適であり、デュアルgRNAの第1鎖および第2鎖との共有または非共有結合を形成し得る、または、第1鎖と第2鎖との間の共有または非共有連結によって、一本鎖gRNAを生成するために使用され得る。
【0234】
リンカードメインは、デュアルgRNAのcrRNAおよびtracrRNAと共有または非共有結合を形成し得る、または、crRNAとtracrRNAとの間の共有または非共有連結によって一本鎖gRNAを生成するために使用され得る。
【0235】
ここで、第2相補ドメインは、天然に発生する第2相補ドメインとの相同性を有し得る、または、天然に発生する第2相補ドメインに由来し得る。加えて、第2相補ドメインは、天然に存在する種に応じて、第2相補ドメインのヌクレオチド配列の差異を有し得る、または、天然に存在する種に含まれる第2相補ドメインに由来し得る、または、天然に存在する種に含まれる第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0236】
例示的な実施形態において、第2相補ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有する第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインを有し得る。例えば、第2相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'と部分的な、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X) UAGCAAGUUAAAAU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1~15の整数であり得て、mは、1~6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、混在したm個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0237】
別の例において、第2相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X)nAAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU(X)m‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1~15の整数であり得て、mは1~6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、混在したm個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0238】
別の実施形態において、第2相補ドメインは、パルクバクテリア・バクテリウム(GWC2011_GWC2_44_17)、ラクノスピラバクテリウム(MC2017)、ブチリビブリオ・プロテオクラスチクス、ペレグリニバクテリア・バクテリウム(GW2011_GWA_33_10)、アシダミノコッカス属(BV3L6)、ポルフィロモナス・マカカエ、ラクノスピラバクテリウム(ND2006)、ポルフィロモナス・クレビオリカニ、プレボテラ・ディシエンス、モラクセラ・ボーボクリ(237)、スミセラ属(SC_KO8D17)、レプトスピラ・イナダイ、ラクノスピラバクテリウム(MA2020)、フランシセラノビサイダ(U112)、カンディダツス・メタノプラズマ・テルミタム、もしくは、ユウバクテリウム・エリゲンスの第1相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインと部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0239】
例えば、第2相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインであるとき、第2相補ドメインは、5'‐AAAUUUCUACU‐3'であり得る、または、5'‐AAAUUUCUACU‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る(第1相補ドメインと共に二本鎖を形成する塩基配列を下線で示す)。ここで、第2相補ドメインは更に、(X)および/または(X)を含み得て、5'‐(X) AAAUUUCUACU(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nおよびmの各々は、塩基の数を表し得て、nは1~10の整数であり得て、mは1~6の整数であり得る。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。加えて、(X)は、同一の塩基のm回反復、または、混在したm個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0240】
ここで、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインは相補的に結合し得る。
【0241】
第1相補ドメインおよび第2相補ドメインは、相補的結合によって二本鎖を形成し得る。
【0242】
形成された二本鎖は、CRISPR酵素と相互作用し得る。
【0243】
選択的に、第1相補ドメインは、第2鎖の第2相補ドメインと相補結合を形成しない追加的ヌクレオチド配列を含み得る。
【0244】
ここで、追加的ヌクレオチド配列は、1~15ヌクレオチドの配列であり得る。例えば、追加的ヌクレオチド配列は、1~5ヌクレオチド、5~10ヌクレオチド、または、10~15ヌクレオチドの配列であり得る。
【0245】
ここで、近位ドメインは、第2相補ドメインの3'末端方向に位置し得る。
【0246】
加えて、近位ドメインは、天然近位ドメインとの相同性を有し得る、または、天然近位ドメインに由来し得る。加えて、近位ドメインは、天然に存在する種に従って、塩基配列において差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる近位ドメインに由来し得て、または、天然に存在する種に含まれる近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る。
【0247】
例示的な実施形態において、近位ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの近位ドメイン、または、それらに由来する近位ドメインとの部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。
【0248】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインであるとき、近位ドメインは、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'との部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、近位ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐AAGGCUAGUCCG(X)‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは塩基の数を表し得て、1~15の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0249】
更なる別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインであるとき、近位ドメインは、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'であり得る、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、近位ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐AAAGAGUUUGC(X)n‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは、塩基の数を表し得て、1~40の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。
【0250】
ここで、尾部ドメインは、一本鎖gRNAの3'末端、または、デュアルgRNAの第1もしくは第2鎖に選択的に追加され得る。
【0251】
加えて、尾部ドメインは、天然尾部ドメインと相同性を有し得る、または、天然尾部ドメインに由来し得る。加えて、尾部ドメインは、天然に存在する種に応じて、塩基配列において差異を有し得て、天然に存在する種に含まれる尾部ドメインに由来し得て、または、天然に存在する種に含まれる尾部ドメインと部分的相同性または完全相同性を有し得る。例示的な一実施形態において、尾部ドメインは、ストレプトコッカス・ピオゲネス、カンピロバクター・ジェジュニ、ストレプトコッカス・サーモフィラス、スタフィロコッカス・アウレウスまたはナイセリア・メニンジティディスの尾部ドメイン、または、それらに由来する尾部ドメインと部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性、または、完全相同性を有し得る。例えば、尾部ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインであるとき、尾部ドメインは、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'であり得る、または、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、尾部ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(X)n‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは塩基の数を表し得て、1~15の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、A、T、UおよびGなどの混在したn個の塩基を表し得る。別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインであるとき、尾部ドメインは、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'であり得る、または、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'と部分的、すなわち、少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。ここで、尾部ドメインは更に、(X)を含み得て、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU(X)n‐3'となる。Xは、塩基A、T、UおよびGから成る群から選択され得て、nは塩基の数を表し得て、1~15の整数である。ここで、(X)は、同一の塩基のn回反復、または、混在したn個の塩基A、T、UおよびGを表し得る。別の実施形態において、尾部ドメインは、3'末端において、in vitroまたはin vivo転写法に関与する1~10塩基配列を含み得る。
【0252】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意の塩基配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインはいくつかのウラシル塩基または代替的な塩基を含み得る。gRNAは、上記の複数のドメインを含み得て、したがって、ヌクレオチド配列の長さは、gRNAに含まれるドメインに従って調節され得て、各ドメインに起因して、gRNAの3次元構造または活性型の鎖において、または、これらの鎖の間で相互作用が生じ得る。
【0253】
gRNAは、一本鎖gRNA(単一のRNA分子)、または、デュアルgRNA(1つより多くの、一般的には2つの別個のRNA分子を含む)と称され得る。
【0254】
[デュアルgRNA]
デュアルgRNAは、第1鎖および第2鎖から成る。
【0255】
ここで、第1鎖は、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐3'から成り得て、第2鎖は、5'‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐3'、または、5'‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐[尾部ドメイン]‐3'から成り得る。
【0256】
ここで、第1鎖はcrRNAと称され得て、第2鎖はtracrRNAと称され得る。
【0257】
加えて、第1鎖および第2鎖は任意で、追加の塩基配列を含み得る。
【0258】
例示的な一実施形態において、第1鎖は、5'‐(Ntarget)‐(Q)‐3'または5'‐(X)‐(Ntarget)‐(X)‐(Q)‐(X)‐3'であり得る。
【0259】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または核酸上の標的配列との相補結合を形成可能な塩基配列であり、標的遺伝子または核酸上の標的配列に従って変化し得る塩基配列領域である。ここで、(Q)は、第2鎖の第2相補ドメインとの相補結合を形成可能な第1相補ドメインを含む塩基配列である。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインの塩基配列は、由来の種に従って変化し得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mは塩基の数であり得て、5~35の整数である。例えば、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスの第1相補ドメイン、または、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。別の例において、第1相補ドメインが、カンピロバクター・ジェジュニの第1相補ドメイン、または、カンピロバクター・ジェジュニ由来の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0260】
更に別の例において、第1相補ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの第1相補ドメイン、または、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。加えて、(X)、(X)、(X)の各々は、選択的に、追加の塩基配列であり、Xは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され、a、b、cの各々は塩基の数であり得て、0または1~20の整数であり得る。
【0261】
例示的な一実施形態において、第2鎖は、5'‐(Z)‐(P)k‐3'、または、5'‐(X)d‐(Z)‐(X)e‐(P)k‐(X)f‐3'であり得る。
【0262】
別の実施形態において、第2鎖は、5'‐(Z)‐(P)k‐(F)i‐3'、または、5'‐(X)d‐(Z)‐(X)e‐(P)k‐(X)f‐(F)i‐3'であり得る。
【0263】
ここで、(Z)は、第1鎖の第1相補ドメインとの相補結合を形成可能な第2相補ドメインを含む塩基配列である。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインの塩基配列は、由来の種に従って改変され得る。Zは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、hは塩基の数であり得て、5~50の整数である。
【0264】
例えば、第2相補ドメインが、ストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0265】
別の例において、第2相補ドメインが、カンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'との少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0266】
更に別の例において、第2相補ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの第2相補ドメイン、または、それに由来する第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0267】
(P)kは天然に存在する種の近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し得る近位ドメインを含む塩基配列であり、近位ドメインの塩基配列は由来の種に従って改変され得る。Pは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、kは塩基の数であり得て、1~20の整数である。
【0268】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0269】
別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'であり得る、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0270】
更に別の例において、近位ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの近位ドメイン、または、それに由来する近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'であり得る、または、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0271】
(F)iは、尾部ドメインを含む塩基配列であり得て、天然に存在する種の尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有し、尾部ドメインの塩基配列は、由来の種に従って改変され得る。Fは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、iは塩基の数であり得て、1~50の整数である。
【0272】
例えば、尾部ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'であり得る、または、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0273】
別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインと部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'であり得る、または、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0274】
更に別の例において、尾部ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの尾部ドメイン、または、それに由来する尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'であり得る、または、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'と少なくとも50%以上の相同性を有する塩基配列であり得る。
【0275】
加えて、(F)iは3'末端において、in vitroまたはin vivo転写法に関与する1~10塩基の配列を含み得る。
【0276】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意の塩基配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写において使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインはいくつかのウラシル塩基または代替的な塩基を含み得る。
【0277】
加えて、(X)d、(X)eおよび(X)fは、選択的に追加される塩基配列であり得て、Xは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、d、e、fの各々は、塩基の数であり得て、0または1~20の整数である。
【0278】
[一本鎖gRNA]
一本鎖gRNAは、第1の一本鎖gRNAおよび第2の一本鎖gRNAの2種類に分類され得る。
【0279】
[第1の一本鎖gRNA]
まず、デュアルgRNAの第1鎖または第2鎖がリンカードメインによって連結されている第1の一本鎖gRNAがある。
【0280】
具体的には、一本鎖gRNAは、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐3'、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐3'、または、5'‐[ガイドドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第2相補ドメイン]‐[近位ドメイン]‐[尾部ドメイン]‐3'から成り得る。第1の一本鎖gRNAは、選択的に、追加的ヌクレオチド配列を含み得る。
【0281】
例示的な一実施形態において第1の一本鎖gRNAは、5'‐(Ntarget)‐(Q)‐(L)‐(Z)‐3'、5'‐(Ntarget)‐(Q)‐(L)‐(Z)‐(P)‐3'、または、5'‐(Ntarget)‐(Q)‐(L)‐(Z)‐(P)‐(F)i‐3'であり得る。
【0282】
別の例示的な実施形態において、一本鎖gRNAは、5'‐(X)‐(Ntarget)‐(X)‐(Q)‐(X)‐(L)‐(X)‐(Z)‐(X)‐3'、5'‐(X)‐(Ntarget)‐(X)‐(Q)‐(X)‐(L)‐(X)‐(Z)‐(X)‐(P)‐(X)‐3'、または、5'‐(X)‐(Ntarget)‐(X)‐(Q)‐(X)‐(L)‐(X)‐(Z)‐(X)‐(P)‐(X)‐(F)‐3'であり得る。
【0283】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または核酸の二本鎖のうち、いずれかの一本鎖の部分的配列に相補的なヌクレオチド配列であり、Ntargetは、標的遺伝子または核酸の標的配列に従って変化し得るヌクレオチド配列部位である。
【0284】
(Q)は、第1相補ドメインを含むヌクレオチド配列であり、第2相補ドメインとの相補結合を形成できるヌクレオチド配列を含む。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインのヌクレオチド配列は、由来の種に従って変化し得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mはヌクレオチドの数であり得て、5~35の整数である。
【0285】
例えば、第1相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第1相補ドメインである、または、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'であり得る、または、5'‐GUUUUAGAGCUA‐3'との少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0286】
別の例において、第1相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第1相補ドメイン、または、カンピロバクター・ジェジュニ由来第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'、5'‐GUUUUAGUCCCUU‐3'、または、5'‐GUUUUAGUCCCUUUUUAAAUUUCUU‐3'もしくは5'‐GUUUUAGUCCCUU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0287】
更に別の例において、第1相補ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの第1相補ドメインである、または、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来第1相補ドメインと部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'、または、5'‐GUUUUAGAGCUGUGUUGUUUCG‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0288】
加えて、(L)は、リンカードメインを含むヌクレオチド配列、ならびに、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインの連結を通して一本鎖gRNAを生成できるヌクレオチド配列である。ここで、Lは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、jはヌクレオチドの数であり得て、1~30の整数である。
【0289】
(Z)は、第2相補ドメインを含むヌクレオチド配列であり、第1相補ドメインと相補結合を形成できるヌクレオチド配列を含む。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインのヌクレオチド配列は、由来の種に応じて変化し得る。Zは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、hは、5~50の整数であるヌクレオチドの数であり得る。
【0290】
例えば、第2相補ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの第2相補ドメインである、または、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'であり得る、または、5'‐UAGCAAGUUAAAAU‐3'との少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0291】
別の例において、第2相補ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの第2相補ドメインである、または、カンピロバクター・ジェジュニ由来第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'、5'‐AAGGGACUAAAAU‐3'、または、5'‐AAGAAAUUUAAAAAGGGACUAAAAU‐3'もしくは5'‐AAGGGACUAAAAU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0292】
更に、別の例において、第2相補ドメインがストレプトコッカス・サーモフィラスの第2相補ドメインである、または、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'、または、5'‐CGAAACAACACAGCGAGUUAAAAU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0293】
(P)kは、近位ドメインを含むヌクレオチド配列、および、天然に存在する種の近位ドメインと部分的相同性または完全相同性を有する配列、および、由来の種に応じて変化し得る近位ドメインのヌクレオチド配列であり得る。Pは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、kは、1~20の整数であるヌクレオチドの数であり得る。
【0294】
例えば、近位ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの近位ドメインである、または、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'、または、5'‐AAGGCUAGUCCG‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0295】
別の例において、近位ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの近位ドメインである、または、カンピロバクター・ジェジュニ由来近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'、または、5'‐AAAGAGUUUGC‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0296】
更に別の例において、近位ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの近位ドメインである、または、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来近位ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(P)kは、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'、または、5'‐AAGGCUUAGUCCG‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0297】
(F)iは、尾部ドメインを含むヌクレオチド配列、および、天然に存在する種の尾部ドメインと部分的相同性または完全相同性を有する配列、および、由来の種に応じて変化し得る尾部ドメインのヌクレオチド配列であり得る。Fは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、iはヌクレオチドの数であり得て、1~50の整数である。
【0298】
例えば、尾部ドメインがストレプトコッカス・ピオゲネスの尾部ドメインである、または、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'、または、5'‐UUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0299】
別の例において、尾部ドメインがカンピロバクター・ジェジュニの尾部ドメインである、または、カンピロバクター・ジェジュニ由来尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'、または、5'‐GGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0300】
更に別の例において、尾部ドメインが、ストレプトコッカス・サーモフィラスの尾部ドメインである、または、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来尾部ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(F)iは、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'、または、5'‐UACUCAACUUGAAAAGGUGGCACCGAUUCGGUGUUUUU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0301】
加えて、(F)iは、in vitroまたはin vivo転写法に関与する3'末端に1~10ヌクレオチド配列を含み得る。
【0302】
例えば、gRNAのin vitro転写においてT7プロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、DNA鋳型の3'末端に存在する任意のヌクレオチド配列であり得る。加えて、U6プロモーターがin vivo転写に使用されるとき、尾部ドメインはUUUUUUであり得て、H1プロモーターが転写に使用されるとき、尾部ドメインはUUUUであり得て、pol‐IIIプロモーターが使用されるとき、尾部ドメインは、いくつかのウラシルヌクレオチドから成り得る、または、代替形態であり得るヌクレオチドを含み得る。
【0303】
加えて、(X)、(X)、(X)、(X)、(X)および(X)は、選択的に追加され得るヌクレオチド配列であり、Xは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、a、b、c、d、e、fは、0、または、1~20の整数であり得るヌクレオチドの数である。
【0304】
[第2の一本鎖gRNA]
第2の一本鎖gRNAは、ガイドドメイン、第1相補ドメインおよび第2相補ドメインから成る一本鎖gRNAであり得る。
【0305】
ここで、第2の一本鎖gRNAは、上記のように5'‐[第2相補ドメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[ガイドドメイン]‐3'、または、5'‐[第2相補ドメイン]‐[リンカードメイン]‐[第1相補ドメイン]‐[ガイドドメイン]‐3'から成り得る。
【0306】
第2の一本鎖gRNAは選択的に、追加的ヌクレオチド配列を含み得る。
【0307】
例示的な一実施形態において、第2の一本鎖gRNAは、5'‐(Z)‐(Q)‐(Ntarget)‐3'、または、5'‐(X)‐(Z)‐(X)‐(Q)‐(X)‐(Ntarget)‐3'であり得る。
【0308】
別の例示的な実施形態において、一本鎖gRNAは、5'‐(Z)‐(L)‐(Q)‐(Ntarget)‐3'、または、5'‐(X)‐(Z)‐(L)‐(Q)‐(X)‐(Ntarget)‐3'であり得る。
【0309】
ここで、Ntargetは、標的遺伝子または核酸の二本鎖のうち、いずれかの一本鎖の部分的配列に相補的なヌクレオチド配列であり、Ntargetは、標的遺伝子または核酸の標的配列に従って変化し得るヌクレオチド配列部位である。
【0310】
(Q)は、第1相補ドメインを含むヌクレオチド配列であり、第2相補ドメインとの相補結合を形成できるヌクレオチド配列を含む。(Q)は、天然に存在する種の第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第1相補ドメインのヌクレオチド配列は、由来の種に従って変化し得る。Qは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、mはヌクレオチドの数であり得て、5~35の整数である。
【0311】
例えば、第1相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第1相補ドメインである、または、パルクバクテリア・バクテリウム由来第1相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Q)は、5'‐UUUGUAGAU‐3'、または、5'‐UUUGUAGAU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0312】
(Z)は、第2相補ドメインを含むヌクレオチド配列であり、第1相補ドメインと相補結合を形成できるヌクレオチド配列を含む。(Z)は、天然に存在する種の第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有する配列であり得て、第2相補ドメインのヌクレオチド配列は、由来の種に応じて変化し得る。Zは、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、hは、5~50の整数であるヌクレオチドの数であり得る。
【0313】
例えば、第2相補ドメインがパルクバクテリア・バクテリウムの第2相補ドメインである、または、パルクバクテリア・バクテリウム由来第2相補ドメインとの部分的相同性または完全相同性を有するとき、(Z)は、5'‐AAAUUUCUACU‐3'、または、5'‐AAAUUUCUACU‐3'と少なくとも50%の相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0314】
加えて、(L)は、リンカードメインを有するヌクレオチド配列、および、第1相補ドメインと第2相補ドメインとを連結するヌクレオチド配列である。ここで、Lは各々独立に、A、U、CおよびGから成る群から選択され得て、jはヌクレオチドの数であり得て、1~30の整数である。
【0315】
加えて、(X)、(X)および(X)は、選択的に追加され得るヌクレオチド配列を表し、A、U、CおよびGから成る群から各々独立に選択され得て、a、b、cは、ヌクレオチドの数であり得て、その各々は0または1~20の整数であり得る。
【0316】
ここで開示される開示の態様として、ガイド核酸は、高発現分泌遺伝子の標的配列に相補的に結合できるgRNAである。
【0317】
高発現分泌遺伝子は、上に記載したものと同一である。
【0318】
gRNAは、分泌細胞における高発現分泌遺伝子から選択される任意の配列に結合できるgRNAである。
【0319】
高発現分泌遺伝子は、ガイド核酸によって認識され、標的遺伝子または標的配列は、エディタータンパク質によって切断される。
【0320】
「標的配列」は、標的遺伝子または核酸に存在するヌクレオチド配列を指し、具体的には、標的遺伝子または核酸におけるヌクレオチド配列の部分的な標的領域を指す。ここで、「標的領域」は、標的遺伝子または核酸におけるガイド核酸‐エディタータンパク質によって改変できる部位である。
【0321】
以降、標的配列は、両方のヌクレオチド配列についての情報の用語として使用され得る。例えば、標的遺伝子の場合、標的配列は、標的遺伝子DNAの転写鎖の配列情報、または、非転写鎖の配列情報のヌクレオチドを意味し得る。本明細書において、2つの態様を含む標的配列を使用するガイド核酸は、「標的配列のガイド核酸」と称される。例えば、標的配列は、標的遺伝子Aの標的領域における部分的なヌクレオチド配列(転写鎖)である5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'、または、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'(非転写鎖)と相補的なヌクレオチド配列である5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'を意味し得る。
【0322】
標的配列は、5~50のヌクレオチドの配列であり得る。
【0323】
実施形態において、標的配列は、16ヌクレオチド配列、17ヌクレオチド配列、18ヌクレオチド配列、19ヌクレオチド配列、20ヌクレオチド配列、21ヌクレオチド配列、22ヌクレオチド配列、23ヌクレオチド配列、24ヌクレオチド配列、または、25ヌクレオチド配列であり得る。
【0324】
標的配列は、ガイド核酸の結合配列または非結合配列を含む。
【0325】
ガイド核酸の「結合配列」は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列との部分的または完全相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的に結合し得る。標的配列およびガイド核酸結合配列は、標的遺伝子または核酸に従って変化し得るヌクレオチド配列、すなわち、遺伝子操作または修正の対象であり、標的遺伝子または核酸に応じて、様々な種類で設計され得る。
【0326】
ガイド核酸の「非結合配列」は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列との部分的相同性または完全相同性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的に結合しないことがあり得る。加えて、非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列との相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイド核酸結合配列に相補的に結合し得る。
【0327】
ガイド核酸結合配列は、標的配列の部分的なヌクレオチド配列、および、標的配列の2つの異なる配列順序を有するヌクレオチド配列のうち1つのヌクレオチド配列、すなわち、互いに相補的に結合できる2つのヌクレオチド配列であり得る。ここで、非ガイド核酸結合配列は、標的配列のガイド核酸結合配列以外のヌクレオチド配列であり得る。
【0328】
例えば、標的遺伝子Aの標的領域における部分的なヌクレオチド配列である5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'に相補的なヌクレオチド配列である5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'が標的配列として使用されるとき、ガイド核酸結合配列は、2つの標的配列、すなわち、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'または5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'のうち1つであり得る。ここで、非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列が5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'であるとき、5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'であり得る、または、ガイド核酸結合配列が5'‐CGAACTAGTCTGCCAATGAT‐3'であるとき、5'‐ATCATTGGCAGACTAGTTCG‐3'であり得る。
【0329】
ガイド核酸結合配列は、標的配列と同一のヌクレオチド配列、すなわち転写鎖、および、非転写鎖と同一のヌクレオチド配列から選択される1つのヌクレオチド配列であり得る。ここで、非ガイド核酸結合配列は、標的配列のガイド核酸結合配列と同一のヌクレオチド配列、すなわち、転写鎖、および、非転写鎖と同一のヌクレオチド配列から選択される1つのヌクレオチド配列以外のヌクレオチド配列であり得る。
【0330】
結合配列は標的配列と同一の長さであり得る。
【0331】
非結合配列は、標的配列または結合配列と同一の長さであり得る。
【0332】
結合配列は、5~50ヌクレオチド配列であり得る。
【0333】
実施形態において、結合配列は、16ヌクレオチド配列、17ヌクレオチド配列、18ヌクレオチド配列、19ヌクレオチド配列、20ヌクレオチド配列、21ヌクレオチド配列、22ヌクレオチド配列、23ヌクレオチド配列、24ヌクレオチド配列、または、25ヌクレオチド配列であり得る。
【0334】
非結合配列は、5~50ヌクレオチド配列であり得る。
【0335】
実施形態において、非結合配列は、16ヌクレオチド配列、17ヌクレオチド配列、18ヌクレオチド配列、19ヌクレオチド配列、20ヌクレオチド配列、21ヌクレオチド配列、22ヌクレオチド配列、23ヌクレオチド配列、24ヌクレオチド配列、または、25ヌクレオチド配列であり得る。
【0336】
ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に部分的または完全に相補的に結合し得て、ガイド核酸結合配列の長さは、ガイド配列と同一であり得る。
【0337】
ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%相補的な、または、完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0338】
一例において、ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的でない1~8ヌクレオチドの配列を有する、または、含み得る。
【0339】
非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列との部分的相同性または完全相同性を有し得て、非ガイド核酸結合配列の長さは、ガイド配列と同一であり得る。
【0340】
非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列との相同性を有するヌクレオチド配列、例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%または95%以上の相同性または完全相同性を有するヌクレオチド配列であり得る。
【0341】
一例において、非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸のガイドドメインに含まれるガイド配列との相同性を有しない1~8ヌクレオチドの配列を有する、または、含み得る。
【0342】
非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列と相補的に結合し得て、非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列と同一の長さを有し得る。
【0343】
非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列に相補的なヌクレオチド配列、例えば、少なくとも90%、または、95%相補的な、または、完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0344】
一例において、非ガイド核酸結合配列は、ガイド核酸結合配列に相補的でない1または2つのヌクレオチド配列を有する、または、含み得る。
【0345】
加えて、ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識できるヌクレオチド配列に隣接する場所に位置するヌクレオチド配列であり得る。
【0346】
一例において、ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識できるヌクレオチド配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5~50ヌクレオチドの配列であり得る。
【0347】
加えて、非ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識できるヌクレオチド配列に隣接するヌクレオチド配列であり得る。
【0348】
一例において、非ガイド核酸結合配列は、エディタータンパク質によって認識できるヌクレオチド配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の5~50ヌクレオチドの配列であり得る。
【0349】
実施形態において、標的配列は、高発現分泌遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0350】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0351】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0352】
例において、標的配列は、HP遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。 別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のプロモーター領域に位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0353】
別の例において、標的配列は、高発現分泌遺伝子のイントロンのプロモーター領域に位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0354】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または30~35ヌクレオチド配列であり得る。 標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0355】
例において、標的配列は、HP遺伝子のイントロンに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0356】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のイントロンに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。 例において、標的配列は、高発現分泌遺伝子のエクソンに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0357】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0358】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0359】
例において、標的配列は、HP遺伝子のエクソンに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0360】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のエクソンに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0361】
例において、標的配列は、高発現分泌遺伝子のエンハンサーに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0362】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0363】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0364】
例において、標的配列は、HP遺伝子のエンハンサーに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0365】
例において、標的配列は、APOC3遺伝子のエンハンサーに位置する連続の10~25ヌクレオチド配列であり得る。
【0366】
ここで開示される標的配列は、高発現分泌遺伝子のコード部分、非コード部分、または、混在部分に位置する連続の10~35ヌクレオチドの配列であり得る。
【0367】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0368】
代替的に、標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0369】
一例において、標的配列は、HP遺伝子のコード部分、非コード部分、または、混在部分に位置する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0370】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のコード部分、非コード部分、または、混在部分に位置する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0371】
ここで開示される標的配列は、高発現分泌遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTR、ポリA尾部、または、それらの混在部分に位置する連続の10~35ヌクレオチドの配列であり得る。
【0372】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0373】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0374】
一例において、標的配列は、HP遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTR、または、ポリA尾部に位置する連続の10~25ヌクレオチド、または、それらの混在部分の配列であり得る。
【0375】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のプロモーター、エンハンサー、3'UTR、または、ポリA尾部に位置する連続の10~25ヌクレオチド、または、それらの混在部分の配列であり得る。
【0376】
ここで開示される標的配列は、高発現分泌遺伝子のエクソンまたはイントロンに位置する連続の10~35ヌクレオチド、または、それらの混在部分の配列であり得る。
【0377】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0378】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0379】
一例において、標的配列は、HP遺伝子のエクソンまたはイントロンに位置する連続の10~25ヌクレオチド、または、それらの混在部分の配列であり得る。
【0380】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のエクソンまたはイントロンに位置する連続の10~25ヌクレオチド、または、それらの混在部分の配列であり得る。
【0381】
ここで開示される標的配列は、高発現分泌遺伝子の変異部分(例えば、野性型遺伝子とは異なる部分)を含む、または、それに隣接する連続の10~35ヌクレオチドの配列であり得る。
【0382】
標的配列は、10~35ヌクレオチド配列、15~35ヌクレオチド配列、20~35ヌクレオチド配列、25~35ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0383】
標的配列は、10~15ヌクレオチド配列、15~20ヌクレオチド配列、20~25ヌクレオチド配列、25~30ヌクレオチド配列、または、30~35ヌクレオチド配列であり得る。
【0384】
一例において、標的配列は、HP遺伝子の変異部分を含む、または、それに隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る(例えば、野性型遺伝子とは異なる部分)。
【0385】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子の変異部分を含む、または、それに隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る(例えば、野性型遺伝子とは異なる部分)。
【0386】
ここで開示される標的配列は、高発現分泌遺伝子のヌクレオチド配列におけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~35ヌクレオチドの配列であり得る。
【0387】
「プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列」は、エディタータンパク質によって認識されるヌクレオチド配列である。ここで、PAM配列は、エディタータンパク質の種類、および、由来の種に応じて、ヌクレオチド配列に差異を有し得る。
【0388】
PAM配列は、例えば、以下の配列(5'から3'の方向に記載される)のうち1または複数であり得る。
NGG(NはA、T、CまたはG)
NNNNRYAC(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGであり、YはCまたはTである)
NNAGAAW(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、WはAまたはTである)
NNNNGATT(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGである)
NNGRR(T)(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGである)
TTN(NはA、T、CまたはGである)
【0389】
例において、標的配列は、10~35、15~35、20~35、25~35、30~35塩基配列であり得る。
【0390】
例において、標的配列は、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35塩基配列であり得る。
【0391】
一例において、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列におけるPAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0392】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'および/または5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子ヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0393】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0394】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0395】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0396】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0397】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0398】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0399】
別の例において、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列におけるPAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0400】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'および/または5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子ヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0401】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0402】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0403】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0404】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0405】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0406】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質によって認識されるPAM配列が5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列であり得る。
【0407】
以降、ここで開示される例示的な一実施形態において使用できる標的配列の例を以下のテーブルにまとめる。以下のテーブルにおいて示される標的配列は、非ガイド核酸結合配列であり、開示された配列から、相補的配列、すなわちガイド核酸結合配列を予想できる。
【0408】
テーブル1.HP遺伝子およびAPOC3遺伝子の標的配列
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
別の例において、高発現分泌遺伝子を改変するための組成物は、ガイド核酸およびエディタータンパク質を含み得る。
【0409】
例えば、組成物は、肝臓において発現する高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列のガイド核酸、および、エディタータンパク質をコードするエディタータンパク質または核酸を含み得る。
【0410】
高発現分泌遺伝子に関連する説明は、上に記載したものと同一である。
【0411】
(1)エディタータンパク質
「エディタータンパク質」という用語は、直接的な結合の有無に関わらず、核酸と直接的に結合または相互作用可能なペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。エディタータンパク質はまた、「人工的改変ヌクレアーゼ」またはGEN(RNA誘導エンドヌクレアーゼ)と概念的に称される。エディタータンパク質は酵素であり得る。
【0412】
「酵素」という用語は、核酸、遺伝子、染色体またはタンパク質を切断可能なドメインを含むタンパク質を指す。酵素は、ヌクレアーゼまたは制限酵素であり得る。
【0413】
エディタータンパク質は完全活性酵素を含み得る。
【0414】
ここで、「完全活性酵素」とは、野性型酵素の機能と同一の機能を有する酵素を指し、例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素は、DNAの二本鎖を全体的に切断する完全な酵素活性を有する。更に別の例において、アミノ酸配列の部分的配列が、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素の人工的操作によって欠失または置換されるとき、人工的に操作された酵素バリアントが野性型酵素のようにDNAの二本鎖を切断する場合、人工的に操作された酵素バリアントは、完全活性酵素であり得る。
【0415】
加えて、完全活性酵素は、野性型酵素の機能と比較して改善された機能を有する酵素を含み、例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素の、特定の改変または操作された種類は、野性型酵素と比較して改善された完全な酵素活性、すなわち、DNAの二本鎖を切断する活性を有する。
【0416】
エディタータンパク質は、不完全または部分的な活性酵素を含み得る。
【0417】
ここで、「不完全または部分的活性酵素」は、核酸、遺伝子または染色体を切断する元の野性型酵素の機能の一部を有する酵素を意味する。例えば、DNAの二本鎖を切断する野性型酵素の特異的に改変または操作された種類は、第1機能を有する種類、または、第2機能を有する種類であり得る。ここで、第1機能は、DNAの二本鎖のうち第1鎖を切断する機能であり得て、第2機能は、DNAの二本鎖のうち第2鎖を切断する機能であり得る。ここで、第1機能を有する酵素、または、第2機能を有する酵素は、不完全または部分的活性酵素であり得る。
【0418】
エディタータンパク質は、不活性酵素を含み得る。
【0419】
ここで、「不活性酵素」は、野性型酵素の機能が完全に不活性化された酵素を指す。例えば、野性型酵素の特異的に改変または操作された種類は、第1および第2機能の両方が失われた種類、すなわち、DNAの二本鎖のうち第1鎖を切断する第1機能、および、DNAの二本鎖のうち第2鎖を切断する第2機能の両方が失われた種類であり得る。ここで、第1および第2機能の両方を失う酵素は、不活性酵素であり得る。
【0420】
エディタータンパク質は融合タンパク質であり得る。
【0421】
ここで、融合タンパク質とは、酵素を追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と融合させることによって生成されるタンパク質を指す。
【0422】
追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、酵素と同一または異なる機能を有する機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。融合タンパク質は、酵素のN末端またはその近位、酵素のC末端またはその近位、酵素の中央領域、および、それらの組み合わせのうちの1または複数に、追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。ここで、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性もしくは核酸結合活性を有するドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、または、タンパク質(ペプチドを含む)の単離および精製のためのタグもしくはレポーター遺伝子であり得るが、本発明はこれに限定されない。機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質はデアミナーゼであり得る。
【0423】
タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV‐Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含み、レポーター遺伝子は、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、自家蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む)を含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0424】
加えて、機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、核局在配列もしくはシグナル(NLS)、または、核外搬出配列もしくはシグナル(NES)であり得る。
【0425】
NLSは、アミノ酸配列PKKKRKVを有する、SV40ウイルスのラージT抗原のNLS、ヌクレオプラスミンに由来するNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有するヌクレオプラスミン双節型NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLDまたはRQRRNELKRSPを有するc‐myc NLS、または、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンα由来IBBドメイン配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV、筋腫Tタンパク質配列VSRKRPRPおよびPPKKARED、ヒトp53配列POPKKKPL、マウスc‐abl IV配列SALIKKKKKMAP、インフルエンザウイルスNS1配列DRLRRおよびPKQKKRK、D型肝炎ウイルス抗原配列RKLKKKIKKL、マウスMx1タンパク質配列REKKKFLKRR、ヒトポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK、または、ステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイド配列RKCLQAGMNLEARKTKKであり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0426】
追加のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、特定の機能を示さない非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。ここで、非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、酵素機能に影響しないドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0427】
融合タンパク質は、非機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が酵素のアミノ末端またはその付近、酵素のカルボキシル末端またはその付近、酵素の中央部分、または、それらの組み合わせのうち1または複数に追加された種類であり得る。
【0428】
エディタータンパク質は、天然酵素または融合タンパク質であり得る。
【0429】
エディタータンパク質は、部分的に改変された天然酵素または融合タンパク質の形態として存在し得る。
【0430】
エディタータンパク質は、天然に存在しない人工的に生成された酵素または融合タンパク質であり得る。エディタータンパク質は、天然に存在しない、部分的に改変された人工酵素または融合タンパク質の形態で存在し得る。
【0431】
ここで、改変は、エディタータンパク質に含まれるアミノ酸の置換、除去、追加、または、それらの組み合わせであり得る。
【0432】
加えて、改変は、エディタータンパク質をコードする塩基配列におけるいくつかの塩基の置換、除去、追加、または、それらの組み合わせであり得る。
【0433】
ガイド核酸およびエディタータンパク質は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体を形成し得る。
【0434】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、in vitroで形成され得る。
【0435】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、細胞における細胞質において形成され得る。
【0436】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、細胞における核において形成され得る。
【0437】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体において、エディタータンパク質は、標的遺伝子またはヌクレオチド配列に存在するPAMを認識し得る。
【0438】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体において、ガイド核酸は、標的遺伝子またはヌクレオチド配列に相補的に結合し得る。
【0439】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体が標的遺伝子またはヌクレオチド配列に結合するとき、標的遺伝子またはヌクレオチド配列は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体のエディタータンパク質によって切断または改変され得る。
【0440】
ここで開示される開示の一態様において、エディタータンパク質はCRISPR酵素であり得る。
【0441】
例えば、組成物は、肝臓において発現する高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列のgRNA、および、CRISPR酵素またはCRISPR酵素をコードする核酸を含み得る。
【0442】
gRNAの説明は上記と同一である。
【0443】
CRISPR酵素は、標的遺伝子または核酸の二本鎖を切断する機能を有するヌクレアーゼまたは制限酵素であり得る。
【0444】
「CRISPR酵素」は、CRISPR‐Casシステムの主要なタンパク質コンポーネントであり、gRNAと混合される、または、標的配列を認識してDNAを切断する複合体を形成するヌクレアーゼを指す。
【0445】
「CRISPR‐Casシステム」は、外部から侵入した病原性微生物の遺伝情報を保存してから遺伝情報を切断する獲得免疫系に由来し、所望の標的配列を認識するよう遺伝情報を人工的に操作するgRNAと、DNAを認識するCasタンパク質とから成る、遺伝子機能を除去または調節する遺伝子修正システムを指す。
【0446】
Casタンパク質は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と複合体を形成し得て、それにより、その活性を示す。
【0447】
ここで、Casタンパク質は、gRNAと協働することによって活性化されるエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼとして機能するすべてのバリアント、および天然タンパク質を含む概念として使用される。活性化されたエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼは、標的DNA切断、および、それを使用する遺伝子修正を引き起こし得る。加えて、不活性化バリアントは、それを使用して、所望のDNAの転写調節または単離を引き起こし得る。
【0448】
Casタンパク質は、完全な活性を有するCRISPR酵素であり得る。
【0449】
「完全活性CRISPR酵素」は、核酸、遺伝子または染色体を切断する元の野性型酵素機能と同一の機能を有する酵素を指す。すなわち、完全活性CRISPR酵素は、DNAの二本鎖のうち第1鎖を切断する機能と、DNAの二本鎖のうち第2鎖を切断する第2機能との両方を有する状態を指す。
【0450】
人工的に操作されたCRISPR酵素バリアントが、野性型酵素のように、DNAの二本鎖を切断する酵素であるとき、人工的に操作されたCRISPR酵素はまた、完全活性酵素に含まれ得る。
【0451】
人工的に操作されたCRISPR酵素は、ヌクレオチド配列の一部が欠失、置換または追加された酵素であり得る。
【0452】
人工的に操作されたCRISPR酵素は、アミノ酸配列のうち1または複数のアミノ酸が欠失、置換または追加された酵素であり得る。
【0453】
アミノ酸の追加された改変は、野性型酵素のN末端および/またはC末端、または、これの隣接領域であり得る。加えて、改変はそれらの組み合わせであり得る。
【0454】
CRISPR酵素バリアントは、野性型CRISPR酵素と比較して改善された機能を有する完全活性酵素であり得る。
【0455】
例えば、野性型CRISPR酵素の特異的に改変または操作された種類、すなわちCRISPR酵素バリアントは、切断されるべきDNA二本鎖の特定の距離の付近において、または、DNA二本鎖との特異的結合を形成しながら、DNA二本鎖を切断し得る。ここで、特異的結合は、酵素の特異的位置におけるアミノ酸の切断位置におけるDNAヌクレオチド配列との結合であり得る。この場合、改変または操作された種類は、野性型CRISPR酵素と比較して機能的活性が低下した完全活性CRISPR酵素であり得る。
【0456】
CRISPR酵素は、不完全または部分的活性CRISPR酵素であり得る。
【0457】
「不完全または部分的活性」とは、野性型CRISPR酵素の機能、すなわち、DNA二本鎖の第1鎖を切断する第1機能、および、DNA二本鎖の第2鎖を切断する第2機能から選択される1つを有する状態を意味する。この状態におけるCRISPR酵素は、不完全または部分的活性CRISPR酵素と称され得る。加えて、不完全または部分的活性CRISPR酵素は、ニッカーゼと称され得る。
【0458】
「ニッカーゼ」は、標的遺伝子または核酸の二本鎖のうち一本鎖のみを切断するように操作または改変されたCRISPR酵素を指し、ニッカーゼは、一本鎖、例えば、標的遺伝子または核酸のgRNAとの非相補鎖または相補鎖を切断するヌクレアーゼ活性を有する。したがって、二本鎖を切断するには、2つのニッカーゼのヌクレアーゼ活性が必要である。
【0459】
例えば、ニッカーゼは、RuvCドメインによって引き起こされるヌクレアーゼ活性を有し得る。すなわち、ニッカーゼは、HNHドメインによって引き起こされるヌクレアーゼ活性を有しないことがあり得て、したがって、HNHドメインは操作または改変され得る。
【0460】
CRISPR酵素は、ヘリカーゼ活性、すなわち、上述のヌクレアーゼ活性以外に、二本鎖核酸のらせん構造を解く機能を有し得る。
【0461】
加えて、CRISPR酵素は、CRISPR酵素のヘリカーゼ活性が完全活性、不完全もしくは部分的活性、または不活性になるように改変され得る。
【0462】
CRISPR酵素は、CRISPR酵素をコードする配列を有する核酸またはポリペプチド(またはタンパク質)であり得て、代表的には、II型CRISPR酵素である。
【0463】
II型CRISPR酵素の結晶構造は、2種類以上の天然の微生物II型CRISPR酵素分子に関する研究(Jinek et al.,Science, 343(6176):1247997, 2014)、および、gRNAと複合化されたストレプトコッカス・ピオゲネスCas9(SpCas9)に関する研究(Nishimasu et al., Cell, 156:935‐949, 2014;Anders et al., Nature,2014, doi: 10.1038/nature13579)に従って決定された。II型CRISPR酵素は、Cas9であり得る。
【0464】
「Cas9」は、gRNAと結合して、標的遺伝子または核酸における標的配列または位置を切断または改変する酵素であり、gRNAに結合する相補的な核酸鎖を切断可能なHNHドメインと、gRNAへの非相補的結合を有する核酸鎖を切断可能なRuvCドメインと、標的を認識可能なRECドメインと、PAMを認識可能なPIドメインとから成り得る。Cas9の具体的な構造的特徴については、Hiroshi Nishimasu et al. (2014) Cell 156:935‐949を参照されたい。
【0465】
ここで、RuvCドメインは、II型CRISPR酵素を有する、天然に存在する微生物ファミリーのメンバーと構造類似性を共有し、例えば、標的遺伝子または核酸の非相補鎖、すなわち、gRNAとの相補結合を形成しない鎖などの一本鎖を切断する。RuvCドメインは、当技術分野において、RuvCIドメイン、RuvCIIドメイン、または、RuvCIIIドメインと称され、一般に、RuvCI、RuvCIIまたはRuvCIIIと呼ばれる。HNHドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと構造類似性を共有し、例えば、標的核酸分子の相補鎖、すなわち、gRNAとの相補結合を形成する鎖など、一本鎖を切断する。HNHドメインは、RuvC IIとIIIモチーフとの間に位置する。
【0466】
Cas9は、完全活性Cas9、または、不活性Cas9であり得る。
【0467】
不活性Cas9は、完全不活性化Cas9、および、部分的不活性化Cas9(例えばニッカーゼ)を含み得る。
【0468】
当該Cas9は、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカスsp.、スタフィロコッカス・アウレウス 、ノカルジオプシス‐ダッソンビエイ、ストレプトマイセス・プリスチナエスピラリス、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネ、ストレプトスポランジウム・ロゼウム、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス、バチルス・シュードミコイデス、バチルス・セレニティレドセンス、エクシグオバクテリウム・シビリカム、ラクトバチルス・デルブルエッキイー、ラクトバチルス・サリバリウス、マイクロシーラ・マリナ、バークホルデリア・バクテリウム、ポラロモナス・ナフタレニボランス、ポラロモナスsp.、クロコスファエラ・ワトソニー、クロコスファエラsp.、ミクロキスティス・エルギノーサ、シネココッカスsp.、アセトハロビウム・アラビティカム、アンモニフェックス・デゲンシ、カルディセルロシルプター・ベスシー、カンジダ・デスルフォルディス、クロストリジウム・ボツリナム、クロストリジウム・ディフィシル、フィネゴルディア・マグナ、ナトラナエロビウス・サーモフィルス、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム、アシジチオバシラス・カルダス、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アロクロマチウム・ビノスム、マリノバクターsp.、ニトロソコッカス・ハロフィラス、ニトロソコッカス・ワトソニイ、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス、クテドノバクター・ラセミファー、メタノハロビウム・エベスチガタム、アナベナ・バリアビリス、ノジュラリア・スプミゲナ、ノストックsp.、アルスロスピラ・マキシマ、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラsp.、リングビアsp.、ミクロコレウス・クソノプラステス、オシキラトリアsp.、ペトロトガ・モビリス、サーモシフォ・アフリカヌス、または、アカリオクロリス・マリナなどの様々な微生物に由来し得るCas9である。
【0469】
Cas9は、天然状態に存在する、または、組み換えもしくは合成方法によって非天然に生成された微生物から単離され得る。
【0470】
加えて、CRISPR酵素はV型CRISPR酵素であり得る。 V型CRISPR酵素は、II型CRISPR酵素のRuvCドメインに対応する同様のRuvCドメインを含み、II型CRISPR酵素のHNHドメインの代わりにNucドメインと、標的を認識するRECおよびWEDドメインと、PAMを認識するPIドメインとから成り得る。V型CRISPR酵素の具体的な構造特性については、Takashi Yamano et al. (2016) Cell 165:949‐962を参照されたい。
【0471】
V型CRISPR酵素は、gRNAと相互作用し得て、それにより、gRNA‐CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を形成し、gRNAと協働して、PAM配列を含む標的配列にガイド配列が接近することを可能にし得る。ここで、標的遺伝子または核酸との相互作用のためのV型CRISPR酵素の能力は、PAM配列に依存する。PAM配列は、標的遺伝子または核酸に存在する配列であり、V型CRISPR酵素のPIドメインによって認識され得る。PAM配列は、V型CRISPR酵素の由来に従って変動し得る。すなわち、種に応じて特異的に認識されることが可能な異なるPAM配列がある。一例において、Cpf1によって認識されるPAM配列は、5'‐TTN‐3'(NはA、T、CまたはG)であり得る。
【0472】
しかしながら、上述の酵素の由来に応じてPAMが決定されることが一般的に理解されているが、進行している対応する起源に由来する酵素の変異体についての研究の結果に従って、PAMは変動し得る。
【0473】
V型CRISPR酵素はCpf1であり得る。当該Cpf1は、ストレプトコッカス、カンピロバクター、ニトラチフラクター、スタフィロコッカス、パルビバクラム、ローズブリア、ナイセリア、グルコアセトバクター、アゾスピリラム、スフェロケタ、ラクトバシラス、ユーバクテリウム、コリネバクター、カルノバクテリウム、ロドバクター、リステリア、パルディバクター、クロストリジウム、ラクノスピラ、クロストリジウム、レプトトリキア、フランシセラ、レジオネラ、アリシクロバチルス、メタノメチオフィラス、ポルフィロモナス、プレボテラ、バクテロイデス、ヘルココッカス、レトスピラ、デススルホビブリオ、デスルフォナトロナム、オピトゥトゥス、チュベリバチルス、バチルス、ブレビバチルス、メチロバクテリウムまたはアシダミノコッカスに由来し得る。
【0474】
Cpf1は、Cas9のRuvCドメインと同様の対応するRuvCドメイン、Cas9のHNHドメイン無しのNucドメイン、標的を認識するRECドメイン、WEDドメイン、および、PAMを認識するPIドメインから成り得る。Cpf1の具体的な構造特性については、Takashi Yamano et al. (2016) Cell 165:949‐962を参照されたい。
【0475】
Cpf1は完全活性Cpf1または不活性Cpf1であり得る。
【0476】
不活性Cpf1は、完全不活性化Cpf1および部分不活性化Cpf1(例えばニッカーゼ)を含み得る。
【0477】
Cpf1酵素において、RuvC、Nuc、WED、RECおよび/またはPIドメインに存在するアミノ酸の1、2、またはより多くのアミノ酸が変異し得る。
【0478】
Cpf1酵素は、FnCpf1のアミノ酸のうちD917、E1006またはD1255;AsCpf1のアミノ酸のうちD908、E993またはD1263;LbCpf1のアミノ酸のうちD832、E925、D947またはD1180;または、異なる各Cpf1オーソログに対応するアミノ酸のグループにおける1、2、またはより多くのアミノ酸の変異を含み得る。
【0479】
Cas9またはCpf1タンパク質のCRISPR酵素は、天然に存在する微生物から単離され得る、または、組み換えまたは合成方法によって非天然に生成され得る。
【0480】
Casタンパク質、または、それをコードする核酸は、核において機能し得る。
【0481】
加えて、単離されたCasタンパク質は、容易に細胞へ導入され得る。例として、Casタンパク質は、細胞膜透過ペプチドまたはタンパク質形質導入ドメインに連結され得る。タンパク質形質導入ドメインは、ポリアルギニンまたはHIV由来TATタンパク質であり得るが、本発明はこれに限定されない。上記の種類以外に、様々な種類の細胞膜透過ペプチドまたはタンパク質形質導入ドメインが当技術分野において知られているので、限定されないが、当業者によって、様々な例が明細書に適用され得る。
【0482】
CRISPR酵素は、野性型CRISPR酵素を人工的に操作または改変することによって調製されたCRISPR酵素バリアントであり得る。
【0483】
一例において、CRISPR酵素バリアントは、野性型CRISPR酵素のアミノ酸配列のうち少なくとも1つのアミノ酸を置換、欠失および/または追加することによって調製され得る。
【0484】
CRISPR酵素バリアントは、野性型CRISPR酵素の機能、すなわち、DNAの二本鎖のうち第1鎖を切断する第1機能、および、DNAの二本鎖のうち第2鎖を切断する第2機能を改変するべく人工的に操作または改変されたCRISPR酵素バリアントであり得る。
【0485】
加えて、CRISPR酵素変異体は更に、CRISPR酵素の先天的特性に加え、機能ドメインを任意で含み得て、そのようなCRISPR酵素変異体は、先天的特性に加えて追加的特性を有し得る。ここで、機能ドメインは、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写終結因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、または、核酸結合活性を有するドメイン、または、タンパク質(ペプチドを含む)を単離および精製するためのタグまたはレポーター遺伝子であり得るが、本発明はこれらに限定されない。タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV‐Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含み、レポーター遺伝子は、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)βガラクトシダーゼ、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、自家蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む)を含むが、本発明はこれらに限定されない。
【0486】
機能ドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、デアミナーゼであり得る。
【0487】
例えば、不完全または部分的なCRISPR酵素は、機能ドメインとしてシチジンデアミナーゼを追加的に含み得る。例示的な一実施形態において、シチジンデアミナーゼ、例えば、アポリポタンパク質B編集複合体1(APOBEC1)は、SpCas9ニッカーゼに追加され得て、それにより、融合タンパク質を生成する。それにより形成される[SpCas9ニッカーゼ]‐[APOBEC1]は、塩基修復、または、CをTもしくはUにする編集、または、GをAにする編集において使用され得る。
【0488】
別の例において、アデノシンデアミナーゼは更に、機能ドメインとして、不完全または部分的CRISPR酵素に含まれ得る。例示的な実施形態として、融合タンパク質は、例えば、TadAバリアント、ADAR2バリアント、ADAT2バリアントなどのアデノシンデアミナーゼをSpCas9ニッカーゼに追加することによって生成され得る。上に記載されるように調製される[SpCas9ニッカーゼ]‐[TadAバリアント]‐[SpCas9ニッカーゼ]‐[ADAR2バリアント]または[SpCas9ニッカーゼ]‐[ADAT2バリアント]において、ヌクレオチドAは、イノシンに改変され、改変されたイノシンは、ポリメラーゼによって、ヌクレオチドGとして認識される。それにより、ヌクレオチドAをGへのヌクレオチド修正または編集を実質的に実行する効果が発揮され、改変されたイノシンは、ヌクレオチドAのGへのヌクレオチド修正または編集において、または、ヌクレオチドTのCへのヌクレオチド修正または編集において使用され得る。
【0489】
加えて、機能ドメインは、核局在配列もしくはシグナル(NLS)、または、核外搬出配列もしくはシグナル(NES)であり得る。
【0490】
一例において、CRISPR酵素は1または複数のNLSを含み得る。ここで、1または複数のNLSは、CRISPR酵素のN末端もしくはその近位、酵素のC末端もしくはその近位、または、それらの組み合わせに含まれ得る。NLSは、以下のNLS、すなわち、アミノ酸配列PKKKRKVを有するSV40ウイルスのラージT抗原のNLS、ヌクレオプラスミンからのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有するヌクレオプラスミン双節型NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLDもしくはRQRRNELKRSPを有するc‐myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンαのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV、筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRPおよびPPKKARED、ヒトp53の配列POPKKKPL、マウスc‐abl IVの配列SALIKKKKKMAP、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRRおよびPKQKKRK、D型肝炎ウイルス抗原の配列RKLKKKIKKL、マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR、ヒトポリ(ADPリボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK、または、ステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列に由来するNLS配列RKCLQAGMNLEARKTKKに由来するNLS配列であり得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0491】
本発明において説明されるCRISPR酵素またはCRISPR酵素変異体は、ポリペプチド、タンパク質、または、それをコードする配列を有する核酸であり得て、CRISPR酵素またはCRISPR酵素変異体を導入するべく対象に対してコドン最適化され得る。
【0492】
「コドン最適化」という用語は、宿主細胞における発現を改善するように、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンと置換しながら、天然アミノ酸配列を維持することによってヌクレオチド配列を改変するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸の特定のコドンへの特定のバイアスを有し、コドンバイアス(生物間におけるコドン使用率の差異)は、翻訳されるコドンの特徴、および、特定のtRNA分子の入手可能性に依存すると考えられる、mRNAの翻訳の効率と頻繁に相関する。細胞において選択されるtRNAの優位性(dominance)は一般的に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンを反映する。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現によりカスタマイズされ得る。
【0493】
gRNAおよびCRISPR酵素は、gRNA‐CIRSPR酵素複合体を形成し得る。
【0494】
「gRNA‐CRISPR酵素複合体」は、gRNAとCIRSPR酵素との間の相互作用によって形成された複合体を指す。
【0495】
gRNA‐CRISPR酵素複合体は、in vitroで形成され得る。
【0496】
gRNA‐CRISPR酵素複合体は、細胞における細胞質において形成され得る。
【0497】
gRNA‐CRISPR酵素複合体は、細胞における核において形成され得る。
【0498】
gRNA‐CRISPR酵素複合体において、CRISPR酵素は、標的遺伝子またはヌクレオチド配列に存在するPAMを認識し得る。
【0499】
gRNA‐CRISPR酵素複合体において、gRNAは、標的遺伝子またはヌクレオチド配列に相補的に結合し得る。
【0500】
gRNA‐CRISPR酵素複合体が標的遺伝子またはヌクレオチド配列に結合するとき、gRNA‐CRISPR酵素複合体のCRISPR酵素によって標的化される遺伝子またはヌクレオチド配列は切断または改変され得る。
【0501】
別の例示的な実施形態において、CRISPR‐Casシステムは、gRNAおよびCRISPR酵素の複合体を形成するリボ核タンパク質(RNP)の形態で存在し得る。
【0502】
ここで開示される開示の例示的な一実施形態において、目的のタンパク質は、高発現分泌遺伝子を操作することによって発現され得る。
【0503】
目的のタンパク質を発現するために、高発現分泌遺伝子を操作するための組成物は、gRNAおよびCRISPR酵素に加えて、ドナーを更に含み得る。
【0504】
例えば、組成物は、肝臓において発現される高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子の標的配列のガイド核酸と、エディタータンパク質をコードするエディタータンパク質または核酸と、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むドナーとを含み得る。「ドナー」とは、導入遺伝子を対象に挿入する必要がある配列を含む外因性ヌクレオチドを指す。ドナーは、導入遺伝子だけでなく、遺伝子転写および発現に影響する組み換え、および、配列に必要な配列も含む分子である。
【0505】
ドナー分子は、核酸の一種、すなわち、DNAまたはRNAであり得る。
【0506】
ドナー分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの場合において、ドナー分子は、一本鎖オリゴヌクレオチドDNA鋳型(ssODT)であり得る。
【0507】
ドナー分子は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の形態であり得る。
【0508】
ドナー分子は、線状、分岐状、または、環状であり得て、任意の長さを有し得る。
【0509】
ここで、線状ドナー分子が導入されるとき、ドナー配列の末端は、当業者に知られている方法によって保護され得る。例えば、1または複数のジデオキシヌクレオチド残基が、形成された分子の3'末端に追加され得て、自己相補性オリゴヌクレオチドが1つの端または両端に結合し得る。
【0510】
特定の例示的な実施形態において、ドナー分子の分解を保護するべく、追加的に、末端アミノ基の追加、および、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、O‐メチルリボースまたはデオキシリボースヌクレオチド間連結の使用が含まれ得るが、本発明はこれに限定されない。
【0511】
ドナー分子は、デュプレックスを形成し、また、トリプレックス形成核酸を含み得る。
【0512】
ドナー配列は、任意の長さ、例えば、10bp~20kb(または、10bpから20kbの間、または、20kb以上の任意の整数)、好ましくは、約100bp~10kb(または、100bpから10kbの間の任意の整数)、より好ましくは、約200bp~5kbを有し得る。
【0513】
ドナーは、導入される対象に応じてコドン最適化され得る。例えば、対象がヒトであるとき、ヒトコドンによって最適化された配列を有するドナーであり得る。
【0514】
ここで開示される開示の例示的な一実施形態において、目的のタンパク質を発現するべく、導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子を操作するための組成物に含まれるドナーに含まれ得る。
【0515】
「導入遺伝子」という用語は、高発現分泌遺伝子に挿入される外因性ヌクレオチドを指す。例えば、導入遺伝子は、エディタータンパク質およびガイド核酸を使用して、切断された肝細胞におけるゲノム切断部位に挿入され得る。
【0516】
導入遺伝子は、DNAまたはRNAであり得る。
【0517】
導入遺伝子は、野性型肝細胞において生成されるタンパク質をコードする外因性ヌクレオチドであり得る。
【0518】
導入遺伝子は、野性型肝細胞を除く細胞において生成されるタンパク質をコードする外因性ヌクレオチドであり得る。
【0519】
導入遺伝子は、対象とは異なる種に由来し得る。
【0520】
導入遺伝子は野性型遺伝子であり得る。例えば、対象においてタンパク質の欠乏または欠如があるとき、対応するタンパク質をコードする正常遺伝子と同一である配列を有する導入遺伝子、すなわち野性型遺伝子がドナーに含まれ得る。
【0521】
導入遺伝子は、変異体遺伝子であり得る。ここで、変異は、野性型遺伝子の1または複数のヌクレオチドの欠失、置換、または追加であり得る。
【0522】
導入遺伝子は融合タンパク質であり得る。
【0523】
一例において、導入遺伝子と融合するタンパク質は、外因性遺伝子に由来し得る。
【0524】
別の例において、導入遺伝子と融合されたタンパク質は内在性遺伝子に由来し得る。
【0525】
例えば、導入遺伝子と融合されるタンパク質は、高発現分泌遺伝子に由来し得る。
【0526】
導入遺伝子と融合されるタンパク質は、外因性タンパク質のアミノ(N)末端またはその付近に存在し得る。
【0527】
導入遺伝子と融合されるタンパク質は、外因性タンパク質のカルボキシル(C)末端またはその付近に存在し得る。
【0528】
導入遺伝子に融合されたタンパク質は、外因性タンパク質のアミノ(N)末端およびカルボキシル(C)末端の両方、または、それらの付近に、または、それらの混合形態で存在し得る。
【0529】
導入遺伝子は、所望の特定の機能を強化または改善するための機能性遺伝子であり得る。
【0530】
一例において、導入遺伝子は、肝細胞における内在性遺伝子の機能を増強し得る。
【0531】
別の例において、導入遺伝子は、野性型遺伝子の発現を増加させるように機能し得る。例えば、導入遺伝子が、肝細胞におけるタンパク質欠乏をコードする遺伝子であるとき、欠乏タンパク質は、肝細胞において生成され得て、対応するタンパク質の機能は正常に作用し得る、または、対応する疾患が治療され得る。
【0532】
一例において、導入遺伝子は、変異遺伝子を修正するように機能し得る。
【0533】
別の例において、導入遺伝子は、標的遺伝子におけるゲノム配列の発現を調節するように機能し得る。
【0534】
一例において、導入遺伝子は、既存のタンパク質を置換する、または、新規タンパク質を発現するように機能し得る。
【0535】
加えて、1または複数の標的配列を部分的または完全に不活性化するために、導入遺伝子は高発現分泌遺伝子に挿入され得る。
【0536】
導入遺伝子は、目的のタンパク質をコードする遺伝子であり得る。
【0537】
目的のタンパク質は、身体における機能を強化するためのタンパク質であり得る。例えば、目的のタンパク質は、代謝作用の機能を増強し得る。
【0538】
目的のタンパク質は、疾患を防止するためのタンパク質であり得る。
【0539】
目的のタンパク質は、疾患を緩和するためのタンパク質であり得る。
【0540】
目的のタンパク質は、疾患を治療するためのタンパク質であり得る。
【0541】
ここで開示される開示の例示的な実施形態は、肝細胞を人工的に操作することによって、目的のタンパク質を発現することによって、疾患を治療するためのものである。
【0542】
明細書において、輸血、規則的な間隔でのタンパク質投与、および、対応する疾患に関与する因子を抑制するための抗体に基づく治療法などの、既存の代替的な治療法と比較して、疾患を治療するべく、治療用遺伝子を高発現分泌遺伝子に挿入することによって、対応する遺伝子を高いレベルで持続的に発現することによって、疾患が恒久的かつ徹底的に治療され得る。
【0543】
疾患の種類は以下の通りである。
【0544】
疾患は、抗体によって予防または治療できる疾患であり得る。抗体をコードする遺伝子を高発現分泌遺伝子に挿入して遺伝子を発現することによって、例えば、HIV、アルツハイマー病、または、筋萎縮性側索硬化症などの疾患が治療され得る。
【0545】
疾患は、特定の遺伝子の発現の減少に起因して発生する疾患であり得る。例えば、分泌遺伝子産物の欠如によって引き起こされる疾患は、欠乏遺伝子を高発現分泌遺伝子に挿入して遺伝子を発現することによって治療され得る。
【0546】
疾患は、特定の遺伝子の変異に起因する正常機能の阻害によって発生する遺伝性疾患であり得る。一例において、単一遺伝子の様々な変異によって引き起こされる疾患は、野性型遺伝子を高発現分泌遺伝子に挿入し、遺伝子を発現することによって治療され得る。例えば、そのような遺伝性疾患は血友病であり得る。
【0547】
疾患は、遺伝性代謝異常に関連する疾患であり得る。
【0548】
「遺伝性代謝異常」は、身体の生化学的代謝経路を担う酵素または補酵素の欠乏に起因して生じる疾患である。遺伝性代謝異常は、最終的な産物が正常に生成されないことがあり得るので欠乏が生じ、不必要な前駆体が様々な主要臓器(脳、心臓、肝臓、腎臓など)に蓄積され、結果として知的障害などの過剰症状が生じる状態を指す。
【0549】
遺伝性代謝異常の例には、免疫不全、高コレステロール血症、血友病、肺気腫、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、シトルリン血症、メチルマロン酸血症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症、ハーラー症候群、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、および、テイサックス病を含み得る。
【0550】
遺伝性代謝異常の他の例には、血友病A、血友病B、血友病Cが含まれる。
【0551】
例えば、血友病Aは、X染色体に位置するF8遺伝子の変異によって引き起こされ、血友病Bは、F8遺伝子の近くに位置するF9遺伝子の変異によって引き起こされ、血友病Cは、F11遺伝子の変異によって引き起こされる。
【0552】
疾患はリソソーム蓄積症であり得る。
【0553】
リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症、リソソーム酸性リパーゼ欠乏症、グリコーゲン貯蔵病、ガラクトース血症、鎌状赤血球貧血、嚢胞性線維症、テイサックス病、フェニルケトン尿症、白皮症、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症、ファーバー病、クラッベ病、ガラクトシアリドーシス、ガングリオシドーシス、アルファガラクトシダーゼ、ファブリー病、シンドラー病、サンドホフ病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、スルファチドシス、異染性白質ジストロフィー、複数のスルファターゼ欠乏症、ハーラー症候群、シェーイ症候群、ハーラー・シェーイ症候群、ハンター症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオ症候群、マロトーラミー症候群、スライ症候群、ヒアルロニダーゼ欠損症、ムコリピドーシス、シアリドーシス、I細胞疾患、疑似ハーラー多発性ジストロフィー、ムコリピジン1欠乏症、リピドーシス、サンタブオリ・ハルティア病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、バッテン・スピルマイヤー・ヴォッグ病、クフ病、ウォルマン病、アルファマンノシドーシス、ベータマンノシドーシス、アスパルチルグルコサミヌリア、フコシドーシス、シスチン症、ピクノディスストーシス、サラ病、乳児遊離シアル酸蓄積症、ポンペ病、ダノン病、またはコレステロールエステル蓄積症であり得る。
【0554】
ここで開示される開示の例示的な実施形態として、ドナーに含まれる導入遺伝子は、遺伝性疾患を治療するための治療用遺伝子であり得る。
【0555】
治療用遺伝子は、特定の遺伝性疾患の治療剤として使用可能なタンパク質をコードし得る。
【0556】
治療用遺伝子は、特定の遺伝性疾患に関与する疾病遺伝子(正常遺伝子の変異型)の野性型遺伝子(正常遺伝子型)、または、野性型遺伝子の一部(例えば機能ドメイン)を含み得る。
【0557】
例示的な実施形態において、治療用遺伝子は、IDUA、I2S、SGSH、NAGLU、HGSNAT、GNS、GALNS、GLB1、ARSB、GUSB、HYAL、NEU、GNPTABおよびMCOLN1から成る群から選択され得る。
【0558】
別の例示的な実施形態において、治療用遺伝子は、SAH1、GALC、CTSA、GLA、NAGA、ベータガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、GBA、SMPD1、ARSA、SUMFから成る群から選択され得る。
【0559】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、NPC、PPT、TPP1、CLN3、CLN6、PPT1、DNAJC5、CTSF、CLN7、CLN8およびCTSDから成る群から選択され得る。
【0560】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、GAAまたはLAMP2であり得る。
【0561】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、CTNS、CTSKまたはSLC17A5であり得る。
【0562】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型が、MAN2B、MAN2C、MANBA、AGA、FUCA1およびLALから成る群から選択され得る。
【0563】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、メチルマロン酸尿症CbIA型(MMAA)タンパク質、メチルマロン酸尿症CbIB型(MMAB)タンパク質、メチルマロン酸尿症CbIC型(MMADHC)タンパク質、5‐メチルテトラヒドロ葉酸‐ホモシステインメチルトランスフェラーゼレダクターゼ(MTRR)タンパク質、リソソーム膜タンパク質ドメイン(LMBRD1)タンパク質、5‐メチルテトラヒドロ葉酸‐ホモシステインメチルトランスフェラーゼ(MTR)タンパク質、プロピオニルCoAタンパク質、グルコース‐6‐リン酸トランスポーター(G6PT)タンパク質、グルコース‐6‐ホスファターゼ(G6Pase)タンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質、低密度リポタンパク質受容体アダプタータンパク質1(LDLRAP‐1タンパク質)、N‐アセチルグルタミン酸シンセターゼ(NAGS)タンパク質、カルバモイルリン酸シンセターゼ1(CPS1)タンパク質、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS)タンパク質、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)タンパク質、アルギナーゼ(ARG1)タンパク質、溶質キャリアファミリー25タンパク質、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ1ファミリー、ポリペプチドA1(UGT1A1)タンパク質、フマリルアセト酢酸加水分解酵素(FAH)、アラニングリオキシレートアミノトランスフェラーゼ(AGXT)タンパク質、グリオキシル酸レダクターゼ/ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(GRHPR )タンパク質、APTase Cu(2+)輸送ベータ(ATP7B)タンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)タンパク質、リポタンパク質リアーゼ(LPL)タンパク質から成る群から選択されるタンパク質をコードする遺伝子であり得る。
【0564】
更に別の例において、治療用遺伝子、すなわち、病因遺伝子の正常型は、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII、および、他の凝固因子から成る群から選択され得る。
【0565】
例えば、血友病の場合、導入遺伝子をコードする遺伝子は、内在性APOC3遺伝子の座位に挿入され得て、APOC3遺伝子の調節因子の発現により、高いタンパク質発現を有する。ここで、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXIIを高いレベルで発現する、または、凝固因子の発現を助ける任意のペプチドまたはタンパク質は高発現し得る。
【0566】
例示的な一実施形態において、治療用遺伝子は、抗体をコードする遺伝子であり得る。
【0567】
治療用遺伝子は、抗体によって、疾患の発生に関与する特定の因子またはシグナル経路を阻害するタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子である。
【0568】
例えば、治療用遺伝子は、アルツハイマー病を治療するためにベータアミロイドと結合する抗体をコードする遺伝子であり得る。
【0569】
例えば、HIVを治療するために、治療用遺伝子は、ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤(NRTI)のうち、ジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddl)、ザルシタビン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)、アバカビル(TDF)、もしくは、エムトリシタビン(FTC)をコードする遺伝子、または、非ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤(NNRTI)のうち、ネビラピン(NVP)もしくはエファビレンツ(EFV)をコードする遺伝子、または、プロテアーゼ阻害剤のうち、サンキナビル(SQV)、リトナビル(RTV)、インディナビル(IDV)、ネルフィナビル(NFV)、ロピナビル(LPV)、アタザナビル(ATV)またはアンプレナビル(APV)をコードする遺伝子であり得る。
【0570】
別の例示的な実施形態において、治療用遺伝子は、野性型遺伝子の発現を調節する因子を挿入することによって、野性型遺伝子の発現を増加または減少させることによって、遺伝性疾患を治療し得る。
【0571】
更に別の例示的な実施形態において、治療用遺伝子は、野性型遺伝子の部分的配列を欠失、追加、または、置換することによって、改善された、または、新しい機能を有するタンパク質を生成することによって、遺伝性疾患を治療し得る。
【0572】
例えば、治療用遺伝子は、血液脳関門(BBB)などの特定の組織に浸透できる特定のペプチド、または、治療用遺伝子の治療効果を改善可能な機能性ペプチドと融合され得る。
【0573】
ここで開示された開示の例示的な一実施形態において、ドナーは、標的ゲノムにおいて導入遺伝子を挿入および/または合成するための遺伝子を更に含み得る。
【0574】
標的ゲノムにおける導入遺伝子の挿入および/または合成は、相同組換え(HDR)または非相同組換え(非相同末端結合;NHEJ)によって引き起こされ得る。
【0575】
「組み換え」という用語は、非相同組換え(NHEJ)および相同組換え(HDR)によって挿入される導入遺伝子を含む、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報を交換するプロセスを指す。
【0576】
ここで開示される「非相同組換え(NHEJ)」は、配列相同性を共有しない、または、部位特異的な組み換え配列において示されないDNA配列の間で生じる交換の特殊な形態を指す。
【0577】
ここで、導入遺伝子は、非相同組換えによって高発現分泌遺伝子に挿入され得る。
【0578】
例えば、導入遺伝子の部分的配列、および、標的遺伝子の部分的配列が同一であるとき、同一の部分的配列は、同一の部位特異的なヌクレアーゼによって切断され得て、導入遺伝子は、非相同組換えに起因して、標的遺伝子欠失配列またはそれに隣接する部位に挿入され得る。
【0579】
ここで開示される「相同組換え(HDR)」は、例えば、相同組換え修復機構を通して、細胞における二本鎖切断修復中に生じる交換の特殊な形態を指す。
【0580】
ドナー配列は、導入遺伝子の相同組換えのためのホモロジーアームを含み得る。
【0581】
ホモロジーアームは、標的配列またはそれに隣接する配列と同一または相補的である配列を含み得る。
【0582】
ホモロジーアームは、標的配列またはそれに隣接する配列と相同であるが同一でない配列、または、標的配列と相同であるが完全に相同でない配列を含み得る。
【0583】
高発現分泌遺伝子と相同または同一の配列を有するホモロジーアームは、高発現分泌遺伝子の配列に対する、少なくとも1つのヌクレオチドのミスマッチを含み得る。
【0584】
特定の例示的な実施形態において、標的配列と相同のドナー配列の大部分は、置換されるゲノム配列に関して、約80~99%(または、80~90%の間の任意の値)の配列同一性を示す。
【0585】
ホモロジーアームは、標的配列と同一でない配列、すなわち導入遺伝子が標的配列に挿入される相同組換えを可能にし得る。
【0586】
例えば、ガイド核酸およびエディタータンパク質によって二本鎖が破壊される領域において、ドナー配列と相同の配列があるとき、導入遺伝子は、相同組換えによって、相同配列の隣の導入遺伝子配列に挿入され得る。
【0587】
ドナー分子は、高発現分泌遺伝子と相同であるいくつかの非連続領域を含み得る。
【0588】
ドナー配列に含まれるホモロジーアームは、高発現分泌遺伝子の切断部位における一方向(例えば上流)のヌクレオチド配列との相同性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0589】
ドナー配列に含まれるホモロジーアームは、高発現分泌遺伝子の切断部位における異なる方向(例えば下流)のヌクレオチド配列との相同性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0590】
ドナー配列に含まれるホモロジーアームは、高発現分泌遺伝子の切断部位の上流および下流のヌクレオチド配列の各々との相同性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0591】
例えば、導入遺伝子が標的配列における切断部位の両側から30bp以上離れた部位に挿入されるとき、ドナー配列における導入遺伝子の両端は、切断部位から30bp離れた位置に存在する遺伝子配列と相同性を有する、または同一である配列を有するホモロジーアームを含む。
【0592】
ホモロジーアームの各々は、少なくとも15bp~約3kbの長さ(例えば、約800、850、900、950、1000、1100、1200b、またはbp長)を有する。
【0593】
一例において、ホモロジーアームはそれぞれ、500~1500bp長であり得る。好ましくは、ホモロジーアームはそれぞれ、800~1200bp長であり得る。
【0594】
一般的に、ホモロジーアームは、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドとして提供され得る。鋳型である例示的な一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドは、800、850、900、950、1000、150、1100、1150、1200bもしくはbp、または、少なくとも約800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250bpもしくは1300bpの長さを有し得る。
【0595】
加えて、ここで開示される開示の例示的な一実施形態において、ドナーは更に、導入遺伝子に加えて、転写および発現を調節する遺伝子を含み得る。
【0596】
ドナーは、1または複数の遺伝子またはcDNA分子を含み得て、コード領域または非コード領域を含み得る。
【0597】
ドナーは、遺伝子転写および発現を制御する調節配列、すなわち、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナル、または、プロモーターをコードする配列を含み得る。
【0598】
加えて、ドナーは更に、レポーター遺伝子(例えばGFP)または選択マーカーを含み得る。
【0599】
ドナー配列による高発現分泌遺伝子への導入遺伝子の挿入は、ドナーにおける配列と、標的配列における標的配列との間の相同性領域の存在、および、その使用によって決定される。
【0600】
[送達および送達方法]
ここで開示される開示の例示的な一実施形態において、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、それをコードする配列を含むベクター、非ベクター、またはそれらの組み合わせによって、対象に送達または導入され得る。
【0601】
ガイド核酸は、DNA、RNAの形態、または、その混合物の形態で対象に送達または導入され得る。
【0602】
エディタータンパク質は、DNA、RNA、DNA/RNA混合物、ペプチド、エディタータンパク質をコードするポリペプチド、または、タンパク質の形態で対象に送達または導入され得る。
【0603】
ドナーは、DNA、RNA、または、一本鎖オリゴヌクレオチドDNA鋳型(ssODT)の形態で対象に送達または導入され得る。
【0604】
例えば、ドナーが対象に送達または導入されるとき、導入遺伝子の全部または一部は、組み換えを通して、標的遺伝子に挿入され得る。
【0605】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、様々な方法によって対象に送達され得る。
【0606】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、ベクターを使用することによって送達され得る。
【0607】
ここで、ベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであり得る。
【0608】
ガイド核酸、エディタータンパク質、および/またはドナーは、非ベクターを使用することによって送達され得る。
【0609】
ベクター
ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクター(例えばプラスミド)であり得る。
【0610】
「ベクター」という用語は、遺伝子配列を細胞に送達し得る。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、および、「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現に関連し得て、遺伝子配列を標的細胞へ送達可能な任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、すべてのクローニングおよび発現ビヒクルおよびベクターを含む。
【0611】
ベクターは、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0612】
ここで、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、DNA、RNAまたはそれらの混合物であり得る。
【0613】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、同一または異なるベクターを使用することによって送達され得る。例えば、ドナーは、プラスミドによって送達され得るが、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質は、1または複数のウイルスベクターによって送達され得る。
【0614】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、1または複数のベクターを使用することによって送達または導入され得る。
【0615】
一例において、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、同一のベクターを使用することによって送達または導入され得る。
【0616】
別の例において、ガイド核酸およびエディタータンパク質の両方は、ヌクレオチド配列の形態で1つのベクターを含み得て、ドナーは、異なるベクターを使用することによって送達または導入され得る。
【0617】
一例において、ガイド核酸およびドナーポリヌクレオチドの両方は、1つのベクターに含まれ得て、エディタータンパク質は、ヌクレオチド配列の形態で、異なるベクターを使用することによって送達または導入され得る。
【0618】
別の例において、エディタータンパク質およびドナーの両方は、ヌクレオチド配列の形態で、1つのベクターに含まれ得て、ガイド核酸は、異なるベクターを使用することによって送達または導入され得る。
【0619】
例えば、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーは、それぞれ、異なるベクターに含まれ得る。
【0620】
ガイド核酸に含まれるすべてのドメインは、1つのベクターに含まれ得る、または、各ドメインは、異なるベクターに含まれ得る。
【0621】
エディタータンパク質の場合、エディタータンパク質をコードするヌクレオチド配列は、1つのベクターに含まれ得る、または、分割され、次いで、いくつかのベクターに含まれ得る。
【0622】
ベクターは、1または複数の調節/制御コンポーネントを含み得る。
【0623】
ここで、調節/制御成分は、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、スプライシングアクセプターおよび/または2A配列を含み得る。
【0624】
加えて、ベクターは更に、レポーター遺伝子(例えばGFP)またはベクターを含む宿主細胞を選択するための選択マーカーを含み得て、複製可能ベクターは更に、複製起点を含み得る。
【0625】
ベクターは、導入遺伝子の左側および右側、または、それに隣接するスプライシングアクセプター(SA)配列を含み得る。
【0626】
プロモーターは、標的領域における内在性プロモーターまたは外因性プロモーターであり得る。
【0627】
プロモーターは、RNAポリメラーゼIIまたはIIIによって認識されるプロモーターであり得る。
【0628】
プロモーターは、構成的プロモーターであり得る。
【0629】
プロモーターは、誘導性プロモーターであり得る。
【0630】
プロモーターは、標的特異的プロモーターであり得る。
【0631】
プロモーターは、ウイルスまたは非ウイルスプロモーターであり得る。
【0632】
プロモーターとして、好適なプロモーターは、制御領域(すなわち、ガイド核酸、エディタータンパク質、または導入遺伝子)に応じて使用され得る。例えば、ガイド核酸に有用なプロモーターは、H1、EF‐1a、tRNAまたはU6プロモーターであり得る。
【0633】
例えば、エディタータンパク質に有用なプロモーターは、CMV、EF‐1a、EFS、MSCV、PGK、または、CAGプロモーターであり得る。例えば、導入遺伝子に有用なプロモーターは、APOC3またはHPプロモーターであり得る。
【0634】
ベクターは、ウイルスベクターまたは組み換えウイルスベクターであり得る。ウイルスはDNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。
【0635】
ここで、DNAウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。
【0636】
ここで、RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0637】
ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、フォックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス、ワクチニアウイルス、または、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得るが、本発明は、これに限定されない。
【0638】
ウイルスを使用して、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子が標的生物に導入されるとき、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、対象において一時的に発現され得る。代替的に、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、長時間にわたり持続的に発現し得る。例えば、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、1、2もしくは3週間、1、2、3、4、5もしくは6ヶ月、1もしくは2年にわたって、または恒久的に発現し得る。
【0639】
ウイルスのパッケージング能力は、ウイルスの種類に従って、少なくとも2kbから50kbまで変動し得る。そのようなパッケージング能力によれば、ガイド核酸を含むウイルスベクター、または、単独のエディタータンパク質を設計すること、または、ガイド核酸およびエディタータンパク質の両方を含むウイルスベクターを設計することが可能である。代替的に、ガイド核酸、エディタータンパク質、および、追加の成分を含むウイルスベクターが設計され得る。
【0640】
例えば、レトロウイルスベクターは、最大で6~10kbの外来配列のパッケージング能力を有し、cis‐長末端反復(LTR)から成る。そのようなレトロウイルスベクターは、治療用遺伝子を細胞に挿入し、恒久的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。
【0641】
別の例において、AAVベクターは、細胞分裂に関係なく、様々な細胞(筋肉、脳、肝臓、肺、網膜、耳、心臓、血管など)における非常に高い形質導入効率に起因して、反復的に投与することができ、病原性が無く、ウイルスゲノムの大部分を治療用遺伝子と置換できるので免疫反応を誘発しない。加えて、AAVが標的細胞の染色体に挿入され、治療用タンパク質は長時間にわたって安定的に発現する。例えば、それは、以前はin vitroで生成されてきた核酸およびペプチドを、細胞の標的核酸へin vivoおよびin vitroで形質導入するのに有用である。しかしながら、AAVはサイズが小さく、4.5kb以下のパッケージング能力を有する。
【0642】
一例において、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列が、組み換えレンチウイルスによって、対象に送達または導入され得る。
【0643】
別の例において、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列は、組み換えアデノウイルスによって送達または導入され得る。
【0644】
一例において、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列が、組み換えAAVによって送達または導入され得る。
【0645】
ベクターは、核酸、架橋型核酸(LNA)、2'‐O‐メチル3'ホスホロチオエート(MS)、または、2'‐O‐メチル3'thioPACE(MSP)のホスホロチオエート結合などの改変を含み得る。
【0646】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列は、非ウイルスベクターによって送達または導入され得る。
【0647】
非ウイルスベクターは、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0648】
例えば、非ウイルスベクターは、プラスミドであり得て、追加的に、レポーター遺伝子、核酸標的配列を含み得る。これら以外に、他の添加剤が含まれ得る。
【0649】
(2)非ベクター
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、非ベクターを使用することによって、対象に送達または導入され得る。
【0650】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子をコードするヌクレオチド配列が、非ベクターを使用することによって、対象に送達または導入され得る。
【0651】
非ベクターは、ネイキッドDNA、DNA複合体、mRNAまたはそれらの混合物であり得る。
【0652】
非ベクターは、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ウイロゾーム、リポソーム、免疫リポゾーム、脂質媒介トランスフェクション、またはそれらの組み合わせによって対象に送達または導入され得る。
【0653】
一例において、非ベクターは、正電荷リポソーム法によって、対象に移入され得る。DPOEは、正電荷の両親媒性分子、および、中性のヘルパー脂質から成るので、この方法は、安定的なリポソームを形成するために使用される。ここで、リポソームDNA複合体は正電荷なので、負電荷の細胞表面に結合して、エンドサイトーシスを通じて細胞に導入され得る。
【0654】
別の例において、DNAは、金粒子で被覆され、細胞に注入され得る。
【0655】
追加的に、EnGeneIC delivery vehicle(EDV)に送達される核酸は、パッケージングされてから、送達または導入され得る。具体的には、EDVは、その二重特異性抗体を使用することによって標的組織に送達され、抗体の一方のアームは、標的組織に対する特異性を有し、他方のアームは、EDVに対する特異性を有する。抗体は、標的細胞の表面にEDVを運搬し、次に、EDVは、エンドサイトーシスによって細胞に入り得る。
【0656】
ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体は、核酸およびタンパク質の混合物の形態で対象に送達または導入されるように形成され得る。
【0657】
ガイド核酸およびエディタータンパク質は、核酸タンパク質混合物の形態で対象に送達または導入され得る。
【0658】
代替的に、ガイド核酸およびエディタータンパク質は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体の形態で、対象に送達または導入され得る。
【0659】
ガイド核酸は、DNA、RNA、または、それらの混合物であり得る。加えて、エディタータンパク質は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の形態であり得る。
【0660】
例示的な一実施形態において、RNA型ガイド核酸およびタンパク質型エディタータンパク質は、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体、すなわち、リボ核タンパク質(RNP)の形態で対象に送達または導入され得る。
【0661】
(3)送達方法
in vivo送達方法
ガイド核酸およびエディタータンパク質は、ガイド核酸およびエディタータンパク質、または、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体(リボ核タンパク質(RNP))をコードする核酸を含むベクターまたは非ベクターの形態で対象に直接投与され得る。
【0662】
加えて、ドナー分子は、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質の両方または各々をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは非ベクターの形態で対象に直接投与され得る。
【0663】
注射は、全身投与または局所適用を通じて、対象への送達または導入によって実行され得る。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0664】
全身投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、または、皮下注射であり得る。好ましくは静脈内全身投与が使用される。
【0665】
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子が2つ以上の異なるベクターに含まれるとき、それらは、異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、および/または腹腔内注射)を介して投与され得る。
【0666】
加えて、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子が2つ以上の異なるベクターに含まれるとき、それらは、同時に、または、ランダムで順次に送達され得る。
【0667】
ex vivoまたはin vitro送達方法
ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子は、対象個人から体外移植された細胞、または、多能性造血幹細胞に送達され得て、次に、細胞は対象に再移植され得る。
【0668】
当該送達方法は、i)ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナー分子を細胞に接触させ、ii)接触した細胞を対象に直接投与することによって、対象に送達するのに使用され得る。
【0669】
具体的には、細胞内で接触させる段階において、ガイド核酸およびエディタータンパク質は、ガイド核酸または/およびエディタータンパク質、または、ガイド核酸‐エディタータンパク質複合体(リボ核タンパク質(RNP))をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは非ベクターの形態で細胞に導入され得る。代替的に、ドナー分子は、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質の両方または各々をコードするヌクレオチド配列を含むベクターまたは非ベクターの形態で細胞に導入され得る。
【0670】
例えば、ガイド核酸およびエディタータンパク質がベクターの形態で細胞に導入されるとき、接触させる段階(i)は、エレクトロポレーション、リポソーム、ナノ粒子、および、タンパク質移行ドメイン(PTD)融合タンパク質法から選択される1または複数の方法によって実行され得る。
【0671】
別の例において、ガイド核酸およびエディタータンパク質がベクターの形態で細胞に導入されるとき、接触させる段階(i)は、プラスミドである非ウイルスベクター、および、ウイルスベクターから成る群から選択される1または複数によって実行され得る。
【0672】
段階iiは、段階iにおいて取得された、接触させた細胞を対象に直接投与するためのものであり、細胞は、全身投与または局所適用によって対象に送達または導入され得る。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0673】
全身投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内または皮下内注射であり得る。好ましくは、静脈内全身投与が使用される。
【0674】
ここで開示される開示は、ガイド核酸、エディタータンパク質および/またはドナーを対象に導入または送達することによって改変された対象を含む。
【0675】
改変された対象は、導入遺伝子を肝細胞ゲノムに挿入することによって取得され得る。
【0676】
改変された対象の1つの具体例は、人工的に操作された肝細胞である。
【0677】
改変された肝細胞は、人工的に操作された高発現分泌遺伝子を含む肝細胞であり得る。
【0678】
人工的に操作された高発現分泌遺伝子は、導入遺伝子が高発現分泌遺伝子に挿入された遺伝子であり得る。
【0679】
人工的に操作された遺伝子は、高発現分泌遺伝子のコード領域に導入された導入遺伝子を有し得る。
【0680】
一例において、導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子のエクソン領域にあり得る。
【0681】
例えば、高発現分泌遺伝子のうち、APOC3遺伝子のコード配列には、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4があり得る。
【0682】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のエクソン1に位置し得る。
【0683】
導入遺伝子は、APOC遺伝子のエクソン2に位置し得る。
【0684】
導入遺伝子は、APOC遺伝子のエクソン3であり得る。
【0685】
導入遺伝子は、APOC遺伝子のエクソン4に位置し得る。
【0686】
別の例において、高発現分泌遺伝子のうち、HP遺伝子のコード配列には、エクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、および、エクソン5があり得る。
【0687】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン1に位置し得る。
【0688】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン2に位置し得る。
【0689】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン3に位置し得る。
【0690】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン4に位置し得る。
【0691】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン5に位置し得る。
【0692】
加えて、人工的に操作された遺伝子は、導入遺伝子が高発現分泌遺伝子の非コード配列に挿入される形態であり得る。
【0693】
導入遺伝子は、プロモーター、エンハンサー、イントロン、3'UTR、ポリA尾部、または、それらの混成に位置する領域に導入され得る。
【0694】
一例において、導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子のイントロン領域に挿入され得る。
【0695】
例えば、高発現分泌遺伝子のうちAPOC3遺伝子のコード配列に位置するイントロン1、イントロン2、および、イントロン3など、3つのイントロンがあり得る。
【0696】
ここで、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン1に位置し得る。
【0697】
ここで、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン2に位置し得る。
【0698】
ここで、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン3に位置し得る。
【0699】
別の例において、イントロン1、イントロン2、イントロン3およびイントロン4は、高発現分泌遺伝子のうち、HP遺伝子のコード配列に位置し得る。
【0700】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン1に位置し得る。
【0701】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン2に位置し得る。
【0702】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン3に位置し得る。
【0703】
ここで、導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン4に位置し得る。
【0704】
導入遺伝子は、エクソン、イントロン、または、それら両方に挿入され得る。
【0705】
一例において、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のエクソンおよびイントロン領域の両方に位置し得る。
【0706】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のエクソン1およびイントロン1領域の両方に位置し得る。
【0707】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン1およびエクソン2領域の両方に位置し得る。
【0708】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のエクソン2およびイントロン2領域の両方に位置し得る。
【0709】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン2およびエクソン3領域の両方に位置し得る。
【0710】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のエクソン3およびイントロン3領域の両方に位置し得る。
【0711】
導入遺伝子は、APOC3遺伝子のイントロン3およびエクソン4領域の両方に位置し得る。
【0712】
別の例において、導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソンおよびイントロン領域の両方に位置し得る。
【0713】
導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン1およびイントロン1領域の両方に位置し得る。
【0714】
導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン1およびエクソン2領域の両方に位置し得る。
【0715】
導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン2およびイントロン2領域の両方に位置し得る。
【0716】
導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン2およびエクソン3領域の両方に位置し得る。
【0717】
導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン3およびイントロン3領域の両方に位置し得る。
【0718】
導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン3およびエクソン4領域の両方に位置し得る。
【0719】
導入遺伝子は、HP遺伝子のエクソン4およびイントロン4領域の両方に位置し得る。
【0720】
導入遺伝子は、HP遺伝子のイントロン4およびエクソン5領域の両方に位置し得る。
【0721】
加えて、導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子の変異部分(例えば、野性型遺伝子とは異なる部分)を含む領域に挿入され得る。
【0722】
加えて、導入遺伝子は、高発現分泌遺伝子のヌクレオチド配列におけるPAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~35ヌクレオチドの配列に挿入され得る。
【0723】
ここで、PAM配列は、例えば、以下の配列(5'から3'の方向に記載される)のうち1または複数であり得る。
【0724】
NGG(NはA、T、CまたはG)
NNNNRYAC(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGであり、YはCまたはTである)
NNAGAAW(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、WはAまたはTである)
NNNNGATT(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGである)
NNGRR(T)(Nの各々は、独立して、A、T、CまたはGであり、RはAまたはGであり、YはCまたはTである)
TTN(NはA、T、CまたはGである)
【0725】
ここで、導入遺伝子は、10~35ヌクレオチド、15~35ヌクレオチド、20~35ヌクレオチド、25~35ヌクレオチド、または、30~35ヌクレオチドの配列にあり得る。
【0726】
代替的に、導入遺伝子は、10~15ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、20~25ヌクレオチド、25~30ヌクレオチド、または、30~35ヌクレオチドの配列にあり得る。
【0727】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0728】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0729】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0730】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する10~25の連続ヌクレオチドに位置し得る。
【0731】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0732】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3' (R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0733】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、HP遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0734】
別の例において、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列におけるPAM配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドの配列にあり得る。
【0735】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGG‐3'、5'‐NAG‐3'、および/または、5'‐NGA‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0736】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NGGNG‐3'および/または5'‐NNAGAAW‐3'(W=AまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0737】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNNGATT‐3'および/または5'‐NNNGCTT‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0738】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNNVRYAC‐3'(V=G、CまたはA;R=AまたはG、Y=CまたはT、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する10~25の連続ヌクレオチドに位置し得る。
【0739】
別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、導入遺伝子は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NAAR‐3'(R=AまたはG、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドに位置し得る。
【0740】
更に別の例示的な実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3'(R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐NNGRR‐3'、5'‐NNGRRT‐3'、および/または、5'‐NNGRRV‐3' (R=AまたはG、V=G、CまたはA、N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドにおいて導入遺伝子を有し得る。
【0741】
例示的な一実施形態において、エディタータンパク質を認識するPAM配列が5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)であるとき、標的配列は、APOC3遺伝子のヌクレオチド配列における5'‐TTN‐3'(N=A、T、GまたはC;または、A、U、GまたはC)配列の5'末端および/または3'末端に隣接する連続の10~25ヌクレオチドにおいて導入遺伝子を有し得る。
【0742】
改変された肝細胞は、人工的に操作された高発現分泌遺伝子によって発現されるタンパク質(以降、「人工発現タンパク質」と称される)を含む肝細胞であり得る。
【0743】
人工発現タンパク質において、高発現分泌遺伝子および/または導入遺伝子が発現される。
【0744】
一例において、肝細胞は、導入遺伝子を発現することによって生成されるタンパク質を含み得る。
【0745】
別の例において、肝細胞は、導入遺伝子を発現することによって生成されるタンパク質、および、人工的に操作された高発現分泌遺伝子を発現することによって生成されるタンパク質の両方を含み得る。
【0746】
加えて、高発現分泌遺伝子の発現量は、人工的操作によって調節され得る。
【0747】
一例において、高発現分泌遺伝子の発現量は、高発現分泌遺伝子が人工的に操作される前より高いことがあり得る。
【0748】
別の例において、高発現分泌遺伝子の発現量は、高発現分泌遺伝子が人工的に操作される前より低いことがあり得る。
【0749】
加えて、目的の発現タンパク質は、肝細胞に存在する遺伝子の野性型タンパク質であり得る。
【0750】
一例において、予め定められたレベル以下で肝細胞において発現するタンパク質は、目的のタンパク質の発現による、発現量の増加を示し得る。
【0751】
別の例において、肝細胞に存在する遺伝子が変異し、異常機能を有するとき、野性型遺伝子が発現し得て、それにより、正常機能を有し得る。この場合、肝細胞には、変異タンパク質および野性型タンパク質の両方があり得る。代替的に、肝細胞における変異タンパク質は、発現されないことがあり得るが、野性型タンパク質は発現され得る。
【0752】
代替的に、目的の発現タンパク質は、肝細胞において発現されない新しいタンパク質であり得る。
【0753】
一例において、目的の発現タンパク質は治療用タンパク質であり得る。ここで、治療用タンパク質は、肝細胞において天然に発現されないタンパク質であり、遺伝性疾患を含む疾患を治療、軽減または防止するために使用され得る。
【0754】
目的の発現タンパク質は、(野性型タンパク質を部分的に改変することによって生成される)変異タンパク質であり得る。
【0755】
一例において、目的の発現タンパク質は、いくつかの野性型遺伝子のヌクレオチドを部分的に改変することによって発現されるタンパク質であり得る。
【0756】
例えば、野性型タンパク質と比較して、変異タンパク質のいくつかの機能が強化され得る。
【0757】
目的の発現タンパク質は、融合タイプのタンパク質であり得る。
【0758】
一例において、目的のタンパク質は、対象における内在性遺伝子を外来遺伝子と結合することによって発現される融合タンパク質であり得る。
【0759】
別の例において、目的のタンパク質は、外来遺伝子を共に結合することによって発現される融合タンパク質であり得る。
【0760】
例えば、目的のタンパク質は、異なる内在性遺伝子を結合することによって発現される融合タンパク質であり得る。
【0761】
したがって、ここで開示される開示は、人工的に操作された高発現分泌遺伝子によって改変される肝細胞を含む。
【0762】
加えて、ここで開示される開示は、改変された肝細胞によって改変される肝臓組織を含む。
【0763】
加えて、ここで開示される開示は、改変された肝臓組織によって改変される肝臓を含む。
【0764】
ここで、肝臓は、部分的または全体的に改変され得る。
【0765】
[目的のタンパク質を発現する方法]
ここで開示される開示の例示的な一実施形態は、肝臓における目的のタンパク質を発現する方法に関連する。
【0766】
当該方法は、in vivo、ex vivoまたはin vitroで実行される。
【0767】
いくつかの実施形態において、方法は、i)プログラム可能ヌクレアーゼおよび導入遺伝子を臓器、組織または細胞に導入する段階を含む。
【0768】
例示的な一実施形態において、方法は、段階iとして、(a)高発現分泌遺伝子の群から選択される1または複数の遺伝子のヌクレオチド配列と同一の配列と相補結合を形成する、または、それを含むガイド核酸と、(b)エディタータンパク質またはそれをコードする核酸と、(c)導入遺伝子を含むドナーとを対象に導入する段階を含み得る。
【0769】
1または複数の遺伝子は、FTL、FTH1、ACTB、HP、APOC3、SOD2、ORM1、F9などの高発現分泌遺伝子から選択され得る。好ましくは、遺伝子は、APOC3またはHP遺伝子であり得る。
【0770】
ガイド核酸(a)は、配列識別番号1~348の標的配列と同一の配列を有し得る、または、それと相補結合を形成し得るガイド核酸を含み得る。 エディタータンパク質(b)は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される1または複数のエディタータンパク質を含み得る。 導入遺伝子(c)は、目的のタンパク質をコードする遺伝子であり得る。例えば、導入遺伝子は治療用遺伝子であり得る。
【0771】
治療用遺伝子の説明は上に記載した通りである。
【0772】
遺伝子を操作するための組成物の説明は、上に記載の通りである。
【0773】
導入段階はin vivoで実行され得る。
【0774】
ここで、(a)、(b)および(c)は、ベクターまたは非ベクターによって送達され得る。
【0775】
ベクター、非ベクターおよび送達方法の説明は、上記と同一である。
【0776】
肝臓において目的のタンパク質を発現する方法は更に、段階i)によって改変された臓器、組織または細胞における導入遺伝子発現を確認する段階を含み得る。
【0777】
ここで、段階ii)において、段階iにおいて改変された臓器または組織は、導入遺伝子が天然状態の臓器または組織ゲノムに挿入された臓器または組織であり得る。
【0778】
段階i)において改変された臓器または組織は導入遺伝子を含み得る。
【0779】
ここで、改変された臓器または組織に含まれる導入遺伝子は、改変された臓器または組織において発現され得る。
【0780】
改変された臓器または組織における導入遺伝子の発現は、導入遺伝子のmRNAまたはタンパク質発現によって確認され得る。
【0781】
導入遺伝子のmRNA発現を確認する方法として、PCRが使用され得る。
【0782】
導入遺伝子のタンパク質発現を確認する方法として、ウエスタンブロット、ELISAまたはIPが使用され得る。
【0783】
別の例において、方法は、ex vivoまたはin vitroによって実行され得る。ここで、目的のタンパク質を発現させるために、人工的に操作された肝細胞を調製する方法が使用され得る。
【0784】
例示的な一実施形態において、方法は、目的のタンパク質を発現する、操作された動物細胞を調製する方法であり得て、(a)動物細胞と、(b)ALB、FTL、FTH1、ACTB、HP、APOC3、SOD2、ORM1、F9など、高発現分泌遺伝子から選択される1または複数の遺伝子に導入遺伝子を人工的に挿入するために遺伝子を操作するための組成物とを接触させる段階を含み得る。
【0785】
ここで、動物細胞(a)は、ヒト由来体細胞または幹細胞であり得る。
【0786】
具体的には、ヒト由来体細胞は、肝細胞であり得る。
【0787】
遺伝子(b)を操作するための組成物は以下の通りである。
【0788】
接触させる段階は、遺伝子(b)を操作するための組成物を動物細胞(a)に導入する段階を含み得る。
【0789】
この方法において使用される動物細胞は、ヒトおよびサルなどの霊長動物を含む哺乳動物、ならびに、マウスおよびラットなどの齧歯動物に由来する動物細胞であり得る。
【0790】
[使用]
ここで開示される開示の例は治療用途を含む。
【0791】
例えば、治療用途は、対象、または、導入遺伝子が挿入された肝細胞の肝細胞ゲノムに導入遺伝子を挿入するための組成物の投与を含み得る。
【0792】
治療される対象は、哺乳動物、例えば、ヒトまたはサルなどの霊長動物、および、マウスまたはラットなどの齧歯動物であり得る。
【0793】
1)医薬組成物
本明細書の例示的な一実施形態は、治療用遺伝子を高発現することによって疾患を治療するために使用される組成物、および、それを調製する方法を含む。
【0794】
例えば、組成物は、導入遺伝子を肝細胞ゲノムおよび治療用遺伝子に人工的に挿入するために人工的に操作されるヌクレアーゼを含む組成物であり得る。組成物は、治療用組成物または医薬組成物と称され得る。
【0795】
例示的な実施形態において、組成物はプログラム可能ヌクレアーゼを含み得る。
【0796】
プログラム可能ヌクレアーゼは、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)のうち1つであり得る。
【0797】
例示的な実施形態において、組成物は治療用遺伝子を含み得る。
【0798】
治療用遺伝子は、身体における欠乏タンパク質または酵素をコードする遺伝子であり得る。
【0799】
例えば、治療用遺伝子はF9であり得る。ここで、組成物は、血友病を治療するための組成物であり得る。
【0800】
組成物は更に、プログラム可能ヌクレアーゼおよび治療用遺伝子に加えて、薬学的に許容される賦形剤、および/または、当技術分野において知られている他の化合物を含み得る。例えば、組成物は、水、塩類、デキストロース、グリセロール、エタノール、および、それらの組み合わせを含み得る。
【0801】
追加的に、少量の添加剤として、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、または、医薬組成物の有効性を増強する別の試薬が含まれ得る。
【0802】
2)治療方法
明細書において説明される例示的な一実施形態は、組成物を必要とする患者に上述の組成物の有効量を投与する段階を含む特定の疾患を治療する方法である。
【0803】
例えば、抗体によって治療できる疾患を治療する方法が含まれる。
【0804】
例えば、遺伝子の変異によって引き起こされる疾患を治療する方法が含まれる。
【0805】
例えば、遺伝性代謝異常を治療する方法が含まれる。
【0806】
例えば、特定のタンパク質の欠乏または不存在によって引き起こされる疾患を治療する方法が含まれる。
【0807】
例えば、疾患は、治療用組成物を患者の身体に注射することにより、治療用遺伝子を恒久的に発現させることによって治療できる疾患であり得る。
【0808】
治療方法は、全身投与を通じて治療用組成物を患者に送達する方法によって実行され得る。
【0809】
治療方法は、患者の特定の身体部分に治療用組成物を注射することによって実行され得る。ここで、特定の身体部分は、細胞外に分泌される治療用遺伝子を高発現できる細胞を含む臓器であり得る。
【0810】
例えば、細胞は肝細胞であり得る。
【0811】
例えば、細胞は幹細胞であり得る。
【0812】
治療方法は、プログラム可能ヌクレアーゼを使用して、遺伝子を直接操作することによって、動物細胞の遺伝子発現に影響する治療方法であり得る。そのような治療方法は、生体の身体における遺伝子を操作するためのプログラム可能ヌクレアーゼを含む、遺伝子を操作するための組成物、および、治療用遺伝子を身体に直接注射することによって実行され得る。
【0813】
プログラム可能ヌクレアーゼは、ガイド核酸および/またはエディタータンパク質であり得る。
【0814】
治療用遺伝子はF9であり得る。
【0815】
遺伝子を操作するための組成物は上に記載した通りである。
【0816】
組成物が投与される対象は、ヒト、サルなどの霊長動物、および、マウス、ラットなどの齧歯動物を含む哺乳動物のいずれか1つであり得る。
【0817】
組成物の投与は、注射、輸血、インプラント、または、移植などの便利ないずれかの方法によって実行され得る。組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内、リンパ管内、または腹腔内投与され得る。
【0818】
好ましくは、組成物は静脈内全身投与を通じて投与される。
【0819】
別の例において、投与は、治療対象の腎臓;胃、膵臓、十二指腸、回腸および/または結腸を含む消化器系;心臓;肺;脳、特に、神経細胞および/または一般的に中枢神経系;網膜組織を含む目;内耳を含む耳;皮膚;筋肉;骨および/または肝臓から選択される、いずれかの1または複数の臓器に投与され得る。
【0820】
好ましくは、臓器は肝臓である。
【0821】
例示的な一実施形態において、組成物の用量(所望の効果を得るための薬学的有効量)は、AAVを使用する人体への送達中にmLあたり約1×10~1×1018の機能性AAVを含む約0.01~10mLの生理食塩水であり得る。明細書の例示的な一実施形態において、AAV含有量は一般的に、約1×10~1×1050ゲノムAAV、約1×10~1×1020ゲノムAAV、約1×1010~1×1016ゲノムAAV、または、約1×1011~1×1016ゲノムAAVの濃度範囲である。そのような濃度のAAVは、約0.001~100mL、約0.01~50mL、または約0.05~10mLの担体溶液で送達され得る。しかしながら、組成物の用量は、投与対象の年齢、健康および体重、同時に受ける治療の種類、治療の頻度、ならびに、所望の効果の特徴を考慮して、好適に処方され得るが、本発明はこれらに限定されない。
【0822】
例示的な一実施形態において、治療方法は、血友病を治療する方法であり得る。
【0823】
治療方法は、in vivoで実行され得る。
【0824】
治療方法は、対象を治療するために活性成分として肝細胞ゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するために遺伝子を操作するための組成物を含む組成物を投与する段階を含み、遺伝子を操作するための組成物は、clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)のいずれか1つのプログラム可能ヌクレアーゼを含み、人工的に挿入された導入遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子の1または複数の遺伝子配列に位置し、導入遺伝子はF9である。
【0825】
血友病は、プログラム可能ヌクレアーゼを使用する遺伝子編集治療によって、恒久的に治療され得る。
【0826】
明細書において説明される方法および組成物を使用して導入遺伝子を肝細胞ゲノムに挿入し、遺伝子を高発現することによって、欠乏タンパク質の発現が増加され得て、最終的な遺伝子産物は、生化学的代謝経路の正常な機能によって生成され得て、身体機能が改善され得る。
【0827】
[実施例]
以降、実施例を参照しつつ明細書について更に詳細に記載する。これらの実施例は、明細書を例示するために提供されるに過ぎず、実施例によって明細書の範囲が限定されるものと解釈されるべきではない。
【0828】
実施例1:RNAシーケンシング
ウイリアムス培地を含む24ウェルプレートにおいて、ヒト初代培養細胞を2日間にわたって培養してから、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用してRNAを単離した。
【0829】
Agilent 2100 BioAnalyzerを使用して、RNA Integrity Number (RIN)が7以上の試料を選択し、1μgのRNA、および、オリゴdTを有する磁気ビードを使用して、mRNA濃縮にかけ、続いて、短い断片化、および、逆転写を通じて、cDNAライブラリを構築した。
【0830】
その後、TrueSeq RNA sample prep kit(Illumina、カリフォルニア州)を使用してシーケンシングアダプタを取り付け、電気泳動およびAgilent High Sensitivity DNA kit(Agilent Technology、カリフォルニア州)を使用して、cDNAライブラリサイズ(350~450bp)および品質をチェックしてから、Illumina HiSeq2500(Illumina、カリフォルニア州)を使用してシーケンシングを実行した。
【0831】
その後、Tophatプログラムを使用して、(「N」と示される)10%以上のスキップされた塩基に対応する低品質リード、および、20未満の品質スコアをフィルタリングするリードをヒト基準ゲノムにマッピングし、Cufflinks v2.1.1プログラムを使用して各転写産物のFPKM値を計算した。
【0832】
分泌タンパク質をコードするハプトグロビンおよびAPOC3、ならびに、疾患ごとの治療用遺伝子に対応するF9、IDUA、IDS、GLA、および、GBAの転写活性をFPKM結果から確認した。
【0833】
図1に示されるように、ハプトグロビンおよびAPOC3遺伝子は、他の治療用遺伝子より、約170倍以上の転写活性を発揮する。
【0834】
例2:sgRNAの設計
ヒトHP1およびAPOC3遺伝子のCRISPR/Cas9標的部位は、CRISPR RGEN Tools(Institute for Basic Science、韓国)を使用して識別した。各遺伝子の標的部位は、CRISPR酵素の種類に従って変動し得て、CjCas9およびSpCas9についてのHP遺伝子の標的配列は、テーブル2および3にまとめられている。CjCas9およびSpCas9についてのAPOC3遺伝子の標的配列は、テーブル4および5にまとめられている。
【0835】
[テーブル2]
【表12】
[テーブル3]
【表13】
[テーブル4]
【表14】
[テーブル5]
【表15】
例3:gRNAの活性の検証およびオフターゲット解析
3.1 T7E1アッセイ
gRNA配列がそれぞれクローニングされた、sgRNAを発現するための250ngのベクター、および、Cas9を発現するための750ngのベクターを、リポフェクタミン(登録商標)2000で、または、エレクトロポレーションによって、HEK293細胞株にトランスフェクトした。加えて、1μgのin vitro転写されたsgRNAおよび4μgのCas9を、RNP複合体の形態で混合し、エレクトロポレーションによって、ジャーカット細胞株にトランスフェクトした。
【0836】
約2~3日後、ゲノムDNAを抽出し、オンターゲット部位を増幅するためにPCRにかけ、続いて、T7E1アッセイを通じて活性を確認した、または、Next‐Generation Sequencingのためのシーケンシングプライマーに特定のアダプタ、および、TruSeq HTダブルインデックスプライマーを取り付けた追加なPCRを実行した。gRNAの活性は、T7E1によって切断されたバンドでチェックした。
【0837】
図3に示すように、HP遺伝子の、テーブル2に示される標的配列#1~11について、CjCas9を用いてgRNA活性を調査し、標的配列#8、9、10、11においてT7E1活性が示された。
【0838】
3.2 標的配列のインデル率(%)の確認
その後、ゲノム上のオンターゲット部位における挿入または欠失(インデル)を検出することによって、対になったシーケンシングによって取得されたリードを解析し、gRNAの活性を評価した。結果をテーブル2、3、4および5に示す。
【0839】
テーブル2および4において示すように、すべてのインデルが、HP遺伝子の対応する標的配列において生じることが確認された。インデル率(%)は最大86.4%であり、高い遺伝子編集効率が確認された。
【0840】
また、テーブル3および5において示すように、すべてのインデルが、APOC3遺伝子の対応する標的配列において生じることが確認された。インデル率(%)は最大96.2%であり、高い遺伝子編集効率が確認された。
【0841】
それぞれの遺伝子を標的化するgRNAのうち、Cas9の種類に従って、高い活性を有するもののDNA標的部位を太字で示す。
【0842】
[3.3 オフターゲット解析]
選択されたgRNAのオフターゲット解析のために、第1に、CRISPR RGEN ToolのCas‐Offinderを使用するin‐silicoの方法によって、3塩基ミスマッチを有するオフターゲットのリストを選択し、標的化ディープシーケンシングによって、ヒト細胞株HEK293において、各オフターゲットに対応するゲノムにおける特定の部位の変異を検証した。
【0843】
第2に、gRNAおよびCas9タンパク質を用いて37℃で一晩処理した全ヒトゲノムDNAを、全ゲノムシーケンシングにかけ、次に、Digenome‐seqによって潜在的なリストを確保した。その後、標的化ディープシーケンシングによって、ヒト細胞株HEK293から、各オフターゲット候補のゲノムにおける特定の部位の変異を検証した。
【0844】
図4および図5に示されるように、HP1‐Cjについての10個のオフターゲット、および、APOC3‐Cjについての6個のオフターゲットを検出するディープシーケンシングの結果として、重要なオフターゲットは無く、高効率でインデル変異が生じたことが確認された。
【0845】
例4:ベクターおよびドナーの構築
SpCas9の適用のために、AAV2の逆向き反復配列(ITR)間に、哺乳動物における発現のためのプロモーターであるEFS、CまたはN末端にNLSおよびHAタグを有するヒトコドン最適化SpCas9、BGHAを含むベクター(pAAV‐EFS‐SpCas9)と、U6プロモーター、sgRNA配列、および、ヒトコドン最適化F9ドナーを含むベクター(pAAV‐hF9‐donor‐U6‐sgRNA)とを個々に合成して構築した。
【0846】
CjCas9の適用のために、哺乳動物における発現のためのプロモーターであるCMV、CまたはN末端にNLSおよびHAタグを有するヒトコドン最適化CjCas9、BGHA、U6プロモーター、およびsgRNA配列を含むベクター(pAAV‐CMV‐CjCas9‐U6‐sgRNA)と、ヒトコドン最適化F9ドナーを含むベクター(pAAV‐hF9‐donor)とを個々に合成して、AAV2 ITRの間に構築した。すなわち、CjCas9については、AAVパッケージング能力を考慮して、U6およびsgRNAがCas9発現配列で送達され得る。
【0847】
各ベクターに導入されたドナーは、ホモロジーアーム間のスプライシングアクセプター(SA)ヒトコドン最適化F9‐bGHAから成り、各々は800~1200bp長であり、ヒトHP1またはAPOC3ゲノム(図6)において、Cas9によって生成された二本鎖切断の両側に存在する。
【0848】
[例5:ヒト細胞株のHDRの確認]
リポフェクタミン(登録商標)2000で、ヒトHP1ゲノムを標的化する500ngのpAAV‐CMV‐CjCas9‐U6‐sgRNA、および、500ngのpAAV‐hF9‐donorをHEK293細胞株にトランスフェクトした。
【0849】
3日後、ゲノムDNAを抽出し、HP1標的部位のホモロジーアームの外側領域、および、HDRによってノックインされた領域から、それぞれプライマーでPCRバンドを取得し、TAベクターにクローニングした。
【0850】
その後、生成されたコロニーからプラスミドを抽出し、サンガーシーケンシングにかけ、両側のノックインされたジャンクションの配列を確認した。
【0851】
図8は、左アームおよび右アームのジャンクションにおけるノックイン、ならびに、正確に二本鎖切断の領域における、F9配列の改変無しで生じるノックインを確認する結果が両方のアームで確認されたことを示す。gRNA配列は、Cj9:5'‐TCCAGGAAAGAGAAACCTCCC‐3'、および、Cj10:5'‐CATTCAGGAAAGTACATTGGC‐3'であった。
【0852】
[例6:AAVの構築]
AAVを生成するべく、疑似タイプAAVカプシドのベクター、構築されたpAAV‐EFS‐SpCas9、pAAV‐hF9‐donor‐U6‐sgRNA、pAAV‐CMV‐CjCas9‐U6‐sgRNAまたはpAAV‐hF9‐donor、およびpHelperベクターを、1:1:1のモル比でHEK293細胞に同時にトランスフェクトした。
【0853】
72時間後、細胞融合によって取得されたウイルス粒子を、step‐gradient超遠心機を使用してイオジキサノール(Sigma‐Aldrich)で単離および精製し、qPCRを使用した滴定を通じてAAVの定量的解析を実行した。
【0854】
[例7:肝細胞からのインデルおよびKI(ノックイン)遺伝子の高発現の確認]
24ウェルプレートにおいて、6×10個の肝細胞を維持し、次に、5×1011μgのAAV6‐EFS‐SpCas9、および、5×1011μgのAAV6‐hF9‐donor‐APOC3‐Spで感染させた。
【0855】
APOC3‐Sp標的の配列として、5'‐CCTAAGCCTGAAGAATGAGG‐3'を使用した。感染の翌日(2D)に培地を変更し、5D、8D、最終的に10Dに培養上清試料を調製し、最後の10Dに、ゲノムDNAを肝細胞から抽出した。
【0856】
プライマーセット(フォワード:5'‐ACGGAAAATATCAAGAAGTA‐3'、リバース:5'‐CAGCAAGCCCTGTCCTGCTGG‐3')を使用して、APOC3‐Spのオンターゲットのアンプリコンを取得し、プライマー特異的アダプタおよびTruSeq HT Dual Indexプライマーを付着する追加のPCRが実行された。
【0857】
次に、オンターゲットゲノム位置のインデルの検出によってCRISPR活性を評価するべく、対になったシーケンシングを通じて取得されたリードを解析した。
【0858】
ノックインされたヒトF9の高発現は、因子IXヒトELISAキット(Abcam)を使用して、肝細胞培養上清から分泌されるF9タンパク質について、ELISAによって検出した。
【0859】
図9のAに示すように、非AAV治療対照群およびドナーだけの群(D‐only‐hAPOC3‐Sp)と比較して、デュアルAAV処理群(hAPOC3‐Sp)は、平均9.6%のインデルを示した。
【0860】
加えて、図9のBに示すように、hF9の分泌量は、対照群において、平均で42.5ng/ml、ドナーだけの群において、74.1ng/ml、デュアルAAV処理群において、378.2ng/mlである。
【0861】
統計解析のために、スチューデントのt検定を使用した。有意については、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す。
【0862】
(項目1)
肝細胞のゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するための肝臓生体工場プラットフォーム(LBP)システムであって、
上記導入遺伝子は、上記高発現分泌遺伝子の配列に位置し、
上記高発現分泌遺伝子は、肝細胞のゲノムに存在するALB遺伝子、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACT遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、F9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つであり、
上記導入遺伝子は挿入前と比較して高発現される、または、上記導入遺伝子は上記肝細胞において新たに発現される、
LBPシステム。
(項目2)
上記高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子のうち少なくとも1つである、項目1に記載のLBPシステム。
(項目3)
上記導入遺伝子は、上記高発現分泌遺伝子のイントロンおよびエクソンの一部のうち少なくとも1つに挿入される、項目1に記載のLBPシステム。
(項目4)
上記導入遺伝子は、肝細胞のゲノムに元々存在するプロモーターによって発現される、項目1に記載のLBPシステム。
(項目5)
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、項目1に記載のLBPシステム。
(項目6)
上記導入遺伝子の発現によって生成されるタンパク質は肝細胞の外に分泌される、項目1に記載のLBPシステム。
(項目7)
肝細胞のゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するように遺伝子を改変するための組成物であって、
上記導入遺伝子を高発現分泌遺伝子に組み込むためのプログラム可能ヌクレアーゼを含み、
上記高発現分泌遺伝子は、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子、F9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つである、
組成物。
(項目8)
上記プログラム可能ヌクレアーゼは、Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)‐CRISPR関連タンパク質(Cas)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)から成る群から選択される少なくとも1つである、項目7に記載の組成物。
(項目9)
上記高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子のうち少なくとも1つである、項目7に記載の組成物。
(項目10)
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、項目7に記載の組成物。
(項目11)
肝細胞のゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するように遺伝子を改変するための組成物であって、
肝細胞のゲノムに存在する高発現分泌遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の標的配列のガイド核酸と、
エディタータンパク質、または、上記エディタータンパク質をコードする核酸と、
上記導入遺伝子を含むドナーと
を備える組成物。
(項目12)
上記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つである、項目11に記載の組成物。
(項目13)
上記標的配列は、上記高発現分泌遺伝子の配列における、エクソン、イントロン、5'‐UTR、3'‐UTR、および、エンハンサーの一部のうち少なくとも1つに位置する、項目11に記載の組成物。
(項目14)
上記標的配列は、上記高発現分泌遺伝子の配列におけるエクソンおよびイントロンの一部のうち少なくとも1つに位置する、項目11に記載の組成物。
(項目15)
上記標的配列は、配列識別番号1~348から成る群から選択される少なくとも1つである、項目11に記載の組成物。
(項目16)
上記高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子のうち少なくとも1つである、項目11に記載の組成物。
(項目17)
上記ガイド核酸は、上記高発現分泌遺伝子に位置する標的配列に対応するガイドドメインを含み、
上記ガイドドメインは、上記標的配列とミスマッチする0~5ヌクレオチドである、
項目11に記載の組成物。
(項目18)
上記ガイド核酸は、HPまたはAPOC3遺伝子のヌクレオチド配列における配列識別番号1~348から成る群から選択される、項目11に記載の組成物。
(項目19)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~11、37~51、154~167、168~182から成る群から選択される標的配列に対応する、項目11に記載の組成物。
(項目20)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~40、および、154~167から成る群から選択される標的配列に対応し、
上記組成物は更に、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、または、上記Cas9タンパク質をコードする核酸を含む、
項目11に記載の組成物。
(項目21)
上記ガイド核酸は、配列識別番号41~134、および、168~332から成る群から選択される標的配列に対応し、
上記組成物は更に、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、または、上記Cas9タンパク質をコードする核酸を含む、
項目11に記載の組成物。
(項目22)
上記ガイド核酸は、配列識別番号135~153、および、333~348から成る群から選択される標的配列に対応し、
上記組成物は更に、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、または、上記Cas9タンパク質をコードする核酸を含む、
項目11に記載の組成物。
(項目23)
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、項目11に記載の組成物。
(項目24)
上記ガイド核酸、上記エディタータンパク質、および上記ドナーはそれぞれ、ヌクレオチド配列の形態で、少なくとも1つのベクターにおいてコードされる、項目11に記載の組成物。
(項目25)
上記ベクターはウイルスベクターシステムである、項目11に記載の組成物。
(項目26)
上記ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、および、レンチウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、項目25に記載の組成物。
(項目27)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~348から成る群から選択される標的配列に対応するガイド核酸。
(項目28)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~12、37~51、154~167、および、168~182から成る群から選択される標的配列に対応する、項目27に記載のガイド核酸。
(項目29)
上記ガイド核酸は、18~25bpのヌクレオチド配列である、項目27に記載のガイド核酸。
(項目30)
上記肝細胞のゲノムに人工的に挿入される導入遺伝子を発現する肝細胞であって、
上記導入遺伝子は高発現分泌遺伝子に挿入され、
上記高発現分泌遺伝子は、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子およびF9遺伝子から成る群から選択される少なくとも1つである、
ことを含む幹細胞。
(項目31)
上記高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子のうち少なくとも1つである、項目30に記載の肝細胞。
(項目32)
上記導入遺伝子は、上記高発現分泌遺伝子の上記エクソンまたは上記イントロンに位置する、項目30に記載の肝細胞。
(項目33)
上記導入遺伝子は、上記肝細胞ゲノムにおいて元々存在するプロモーターによって発現される、項目30に記載の肝細胞。
(項目34)
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、項目30に記載の肝細胞。
(項目35)
肝細胞のゲノムにおける高発現分泌遺伝子に導入遺伝子を挿入することによって、目的のタンパク質を発現するように肝細胞のゲノムを改変するための方法であって、
プログラム可能ヌクレアーゼおよびドナーを上記肝細胞に導入する段階を含み、
上記プログラム可能は、FTL遺伝子、FTH1遺伝子、ACTB遺伝子、HP遺伝子、APOC3遺伝子、SOD2遺伝子、ORM1遺伝子およびF9遺伝子から成る群から選択される上記高発現分泌遺伝子のうち少なくとも1つを操作または改変するためのものであり、
上記ドナーは上記導入遺伝子を含む、
方法。
(項目36)
上記高発現分泌遺伝子は、HP遺伝子およびAPOC3遺伝子のうち少なくとも1つである、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、項目35に記載の方法。
(項目38)
上記プログラム可能ヌクレアーゼはCRISPR/Casシステムであり、
上記CRISPR/Casシステムは、
(i)肝細胞のゲノムにおける上記高発現分泌遺伝子に存在する標的配列に対応するガイド核酸と、
(ii)エディタータンパク質と
を含む、項目35に記載の方法。
(項目39)
上記標的配列は、上記高発現分泌遺伝子配列の配列におけるエクソン、イントロン、5'‐UTR、3'UTR、および、エンハンサーの一部のうち少なくとも1つに位置する、項目38に記載の方法。
(項目40)
上記標的配列は、上記高発現分泌遺伝子の配列におけるエクソンおよびイントロンの一部のうち少なくとも1つに位置する、項目38に記載の方法。
(項目41)
上記ガイド核酸は、上記高発現分泌遺伝子の上記ヌクレオチド配列における配列識別番号1~348から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列に対応する、項目38に記載の方法。
(項目42)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~15、37~51、154~167、および、168~182から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列に対応する、項目38に記載の方法。
(項目43)
上記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つである、項目38に記載の方法。
(項目44)
上記ガイド核酸、上記エディタータンパク質および上記ドナーはそれぞれ、ヌクレオチド配列の形態で少なくとも1つのベクターにおいてコードされる、項目35または38に記載の方法。
(項目45)
上記ベクターはウイルスベクターシステムである、項目44に記載の方法。
(項目46)
上記ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、および、レンチウイルスから成る群から選択される少なくとも1つである、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記ベクターは、全身または局所投与によって上記肝細胞に導入される、項目44に記載の方法。
(項目48)
上記全身投与は静脈内投与である、項目47に記載の方法。
(項目49)
上記プログラム可能ヌクレアーゼおよび上記ドナーを上記第1肝細胞に導入することは、in vivoまたはex vivoで実行される、項目35に記載の方法。
(項目50)
血友病を治療する方法であって、
肝細胞のゲノムに人工的に挿入された導入遺伝子を発現するために対象に組成物を導入する段階を含み、
上記組成物は、CRISPR‐Casシステム、ZFNおよびTALENから選択されるプログラム可能ヌクレアーゼを含み、
ドナー配列に含まれる上記導入遺伝子は、上記HP遺伝子およびAPOC3遺伝子配列のうち少なくとも1つに人工的に挿入され、
上記導入遺伝子はF9遺伝子である、
方法。
(項目51)
上記組成物はCRISPR‐Casシステムであり、
上記CRISPR‐Casシステムは、
(i)肝細胞のゲノムに存在する高発現分泌遺伝子の群から選択される少なくとも1つの標的配列に対応するガイド核酸と、
(ii)エディタータンパク質、または上記エディタータンパク質をコードする核酸と
を含み、上記エディタータンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来Cas9タンパク質、カンピロバクター・ジェジュニ由来Cas9タンパク質、ストレプトコッカス・サーモフィラス由来Cas9タンパク質、スタフィロコッカス・アウレウス由来Cas9タンパク質、ナイセリア・メニンジティディス由来Cas9タンパク質およびCpf1タンパク質から成る群から選択される少なくとも1つである、
項目50に記載の方法。
(項目52)
上記ガイド核酸は、HPまたはAPOC3遺伝子のヌクレオチド配列における配列識別番号1~348から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列に対応する、項目51に記載の方法。
(項目53)
上記ガイド核酸は、配列識別番号1~11、37~51、154~167、168~182から成る群から選択される少なくとも1つの標的配列に対応する、項目51に記載の方法。
(項目54)
上記ガイド核酸、上記エディタータンパク質および上記ドナーは、ヌクレオチド配列の形態で少なくとも1つのベクターにおいてそれぞれコードされる、項目50または51に記載の方法。
(項目55)
上記ベクターはウイルスベクターである、項目54に記載の方法。
(項目56)
上記組成物は、全身投与によって対象に導入される、項目50に記載に方法。
(項目57)
上記全身投与は静脈内投与である、項目56に記載に方法。
【0863】
[配列表フリーテキスト]
配列識別番号1~配列識別番号15は、HP遺伝子の標的配列表を表す。配列識別番号154~配列識別番号348は、APOC3遺伝子の標的配列表を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【外国語明細書】