(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166157
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】心疾患の処置のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20221025BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221025BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221025BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/585 20060101ALI20221025BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20221025BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20221025BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20221025BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20221025BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20221025BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221025BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
A61P9/04 ZNA
A61K31/7105
A61K35/76
A61K48/00
A61K45/00
A61K31/122
A61K31/585
A61K31/198
A61K38/22
A61P43/00 107
A61P21/00
A61P21/04
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127899
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020129422の分割
【原出願日】2017-07-17
(31)【優先権主張番号】62/419,852
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/363,512
(32)【優先日】2016-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519018853
【氏名又は名称】ジャーン バイオセラピューティクス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】JAAN BIOTHERAPEUTICS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214259
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 睦也
(72)【発明者】
【氏名】バワニット カウル ブラル
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジー マーカッソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象における心筋再生を促進するための、又は心疾患を治療するための方法を提供する。
【解決手段】特定のヌクレオチド配列を含むクローニング又は発現ベクター、および、心筋再生を促進することを、又は心疾患を治療することを必要とする対象に、前記のクローニング又は発現ベクターを含む薬学的組成物を投与することを含む、対象における心筋再生を促進するための、又は心疾患を治療するための、方法とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であって、前記複数のmiRアンタゴニストが、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストを含む、組成物。
【請求項2】
以下の、
a.前記1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含むこと、
b.前記1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含むこと、
c.前記1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含むこと、
d.前記1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含むこと、のうちの1つ以上が適用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
以下の、
a.前記1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含むこと、
b.前記1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含むこと、
c.前記1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含むこと、
d.前記1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含むこと、のうちの1つ以上が適用される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗miRのうちの少なくとも1つが、修飾ヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチド、及び修飾糖部分、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化学修飾を含む、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の化学修飾が、修飾ヌクレオシド間連結を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記修飾ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエート、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記修飾ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つが、修飾ヌクレオチドを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)化学修飾、ペプチド核酸(PNA)、アラビノ核酸(FANA)、これらの類似体、誘導体、又は組み合わせを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)を含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ロックド核酸(LNA)が、前記修飾抗miRの一端又は両端において組み込まれている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つが、修飾糖部分を含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記修飾糖部分が、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分、2’-メトキシ修飾糖部分、2’-O-アルキル修飾糖部分、二環式糖部分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記修飾糖部分が、2’-O-メチル糖部分を含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、薬学的組成物である、請求項83~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む、発現カセット。
【請求項17】
以下の、
a.前記1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含むこと、
b.前記1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含むこと、
c.前記1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配
列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含むこと、
d.前記1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含むこと、のうちの1つ以上が適用される、請求項16に記載の発現カセット。
【請求項18】
以下の、
a.前記1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含むこと、
b.前記1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含むこと、
c.前記1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含むこと、
d.前記1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つが、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含むこと、のうちの1つ以上が適用される、請求項16又は17に記載の発現カセット。
【請求項19】
前記抗miRのうちの少なくとも1つが、修飾ヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチド、及び修飾糖部分、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化学修飾を含む、請求項17又は18に記載の発現カセット。
【請求項20】
前記1つ以上の化学修飾が、修飾ヌクレオシド間連結を含む、請求項19に記載の発現カセット。
【請求項21】
前記修飾ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエート、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の発現カセット。
【請求項22】
前記修飾ヌクレオシド間連結が、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項20又は21に記載の発現カセット。
【請求項23】
前記1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つが、修飾ヌクレオチドを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の発現カセット。
【請求項24】
前記修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)化学修飾、ペプチド核酸(PNA)、アラビノ核酸(FANA)、これらの類似体、誘導体、又は組み合わせを含む、請求項23に記載の発現カセット。
【請求項25】
前記修飾ヌクレオチドが、ロックド核酸(LNA)を含む、請求項23又は24に記載
の発現カセット。
【請求項26】
前記ロックド核酸(LNA)が、前記修飾抗miRの一端又は両端において組み込まれている、請求項25に記載の発現カセット。
【請求項27】
前記1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つが、修飾糖部分を含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の発現カセット。
【請求項28】
前記修飾糖部分が、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分、2’-メトキシ修飾糖部分、2’-O-アルキル修飾糖部分、二環式糖部分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の発現カセット。
【請求項29】
前記修飾糖部分が、2’-O-メチル糖部分を含む、請求項27又は28に記載の発現カセット。
【請求項30】
請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項31】
前記クローニングベクター又は発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項30に記載のクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項32】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項31に記載のクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項33】
前記クローニングベクター又は発現ベクターが、
i.配列番号59~64に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、
ii.配列番号86~89に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、又は
iii.a)及びb)に示した配列番号に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列、を含む、請求項30~32のいずれか一項に記載のクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項34】
前記クローニングベクター又は発現ベクターが、配列番号85に記載のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項30~33のいずれか一項に記載のクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項35】
有効量の少なくとも1つの治療剤と、
a)請求項1~15のいずれか一項に記載の複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物、
b)請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセット、及び
c)請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター又は発現ベクター、のうちの1つ以上と、を含む、治療用組成物。
【請求項36】
前記少なくとも1つの治療剤が、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO
044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の治療用組成物。
【請求項37】
前記治療用組成物が、薬学的組成物である、請求項35又は36に記載の治療用組成物。
【請求項38】
対象における心疾患を処置するための方法であって、前記心疾患の治療に適した治療用組成物を前記対象に投与又は提供することを含み、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含む、方法。
【請求項39】
対象における心筋再生を促進するための方法であって、治療用組成物を前記対象に投与又は提供することを含み、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含む、方法。
【請求項40】
心疾患を有するか又はそれを有する疑いがある前記対象を同定又は選択することを更に含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記心疾患が、心筋梗塞、虚血性心疾患、拡張型心筋症、心不全(例えば、鬱血性心不全)、虚血性心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、アルコール性心筋症、ウイルス性心筋症、頻脈誘発性心筋症、ストレス誘起性心筋症、アミロイド心筋症、不整脈源性右室異形成、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁逆流症、三尖弁狭窄症、三尖弁逆流症、先天性障害、遺伝的障害、又はこれらの組み合わせである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖を調節する方法であって、
1)心筋細胞に治療用組成物を導入することであって、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含む、導入することと、
2)工程(1)から得た前記心筋細胞を分割させ、それにより前記心筋細胞又は筋細胞の増殖を調節することと、を含む、方法。
【請求項43】
前記導入することが、前記心筋細胞及び/又は筋細胞を、前記複数のmiRアンタゴニストをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセット又は少なくとも1つのウイルスベクターでトランスフェクトすることを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記心筋細胞及び/又は金細胞の増殖を測定することを更に含む、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖が、前記複数のmiRアンタゴニストをコードする前記核酸配列を欠失している対照心筋細胞に比べて増加する、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記心筋細胞及び/又は筋肉が、インビボである、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記心筋細胞及び/又は筋肉が、エクスビボである、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記心筋細胞及び/又は筋肉が、ヒト対象におけるものである、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒト対象が、心疾患に罹患している、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記複数のmiRアンタゴニストが、同じ発現カセット又は発現ベクターによってコードされている、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記複数のmiRアンタゴニストが、異なる発現カセット又は発現ベクターによってコードされている、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項38~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
併用療法のために、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は少なくとも1つの追加の治療薬を前記対象に投与することを更に含む、請求項38~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集、機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを目的とした任意の遺伝子送達治療薬、エクソンスキッピング治療薬、ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、細胞ベースの治療薬、ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、抗炎症薬/抗酸化剤、機械補助装置、筋ジストロフィーのための任意の標準的治療薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、生物学的製剤を含む、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、遺伝子治療薬又は治療用遺伝子調節剤を含む、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項58】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の各々が、別の製剤で投与される、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、逐次投与される、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、同時投与される、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、輪番で投与される、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、単一製剤で一緒に投与される、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
筋ジストロフィー(MD)障害を処置するための方法であって、治療用組成物を対象に投与又は提供することを含み、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含み、
前記治療用組成物の前記投与が、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて行われて、併用療法を提供する、方法。
【請求項64】
前記筋ジストロフィー障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、先天性筋ジストロフィー(CMD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)、遺伝性及び内分泌性ミオパチー、筋肉の代謝疾患、ミトコンドリアミオパチー(MM)、筋強直性ジストロフィー(MMD)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、又はこれらの組み合わせに関連する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
心臓細胞の増殖を増加させ、かつ/又は筋肉構造及び/若しくは機能及び/若しくは再生に関与するタンパク質の発現及び/若しくは活性を増加させるための方法であって、前記心臓細胞に、(1)治療用組成物であって、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含む、治療用組成物と、
(2)少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬と、の組み合わせを接触させるか又は提供することを含む、方法。
【請求項66】
標的マイクロRNA(miR)の発現を阻害又は減少させるための方法であって、心臓細胞に、治療用組成物であって、
(a)前記治療用組成物が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物であり、
(b)前記治療用組成物が、請求項16~29のいずれか一項に記載の発現カセットを含み、かつ/又は
(c)前記治療用組成物が、請求項30~34のいずれか一項に記載のクローニングベクター若しくは発現ベクターを含む、治療用組成物と、
少なくとも1つの追加の治療薬又は治療薬と、の組み合わせを接触させるか又は提供することを含む、方法。
【請求項67】
前記心臓細胞が、心臓線維芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び血管平滑筋細胞(VSMC)からなる群から選択される、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記心臓細胞が、心筋細胞及び骨格筋細胞からなる群から選択される、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現調節、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集、機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを目的とした任意の遺伝子送達治療薬、エクソンスキッピング治療薬、ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、細胞ベースの治療薬、ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、抗炎症薬/抗酸化剤、機械補助装置、筋ジストロフィーのための任意の標準的治療薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項63~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、生物学的製剤である、請求項63~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、遺伝子治療薬又は治療用遺伝子調節剤を含む、請求項63~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の各々が、別の製剤で投与される、請求項63~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、逐次投与される、請求項63~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、同時投与される、請求項63~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、輪番で投与される、請求項63~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記治療用組成物及び前記少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、単一製剤で投与される、請求項63~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
マイクロRNA(miR)アンタゴニストであって、
(a)配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択されるヌクレオ
チド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、
(b)配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択されるヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、又は
(C)配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、又は
(d)配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、を含む、マイクロRNA(miR)アンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年7月18日に出願された米国仮特許出願第62/363,512号及び2016年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/419,852号に対する優先権の利益を主張する。上記参照出願の開示は、それらの全体が、任意の図面を含む本明細書に参照により明確に組み込まれる。
【連邦政府支援による研究開発に関する陳述】
【0002】
本出願は、一部は、アメリカ国立衛生研究所の国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, And Blood Institute)によって授与された認可番号R41HL134387及び
認可番号12233027下での政府支援によりなされたものである。政府は、本発明にある特定の権利を有する。
【配列表の参照】
【0003】
本出願は、電子形式の配列表とともに出願される。配列表は、2017年7月5日作成された、約59KBのサイズの「配列表JAANB001WO(Sequence_Listing_JAANB001WO)」との表題のファイルとして提供する。電子形式の配列表情報は、その全体が
参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【技術分野】
【0004】
本出願の態様は、生化学及び医薬の分野に関する。より詳細には、新規なマイクロRNAアンタゴニスト、1つ以上のそのようなマイクロRNAアンタゴニストを含む治療用組成物、並びにそのようなマイクロRNAアンタゴニストを用いて心疾患及び/又は筋ジストロフィー障害を処置及び/又は改善する方法が、本明細書に開示される。本明細書に開示される治療用組成物及び追加の治療剤を、心筋の再生が必要である心疾患及び/又は筋ジストロフィー障害を有するか又は疑われる対象に付与する、併用療法も含まれる。
【背景技術】
【0005】
心疾患は、心筋の再生が必要である、心筋症、心筋梗塞、及び虚血性心疾患を含むがこれらの限定されない障害のファミリーを包含する。虚血性心疾患は、先進工業社会での罹患及び死亡の主な原因である。心疾患範囲内の障害は、心筋細胞などの異なる細胞型の病理変化から、一連の複雑な生化学的経路の変更を介して生じると理解される。例えば、心疾患と関連するある特定の病理変化は、心筋細胞肥大を引き起こす心筋細胞遺伝子発現の変更、並びに心筋細胞の生存及び収縮が損なわれることが原因であり得る。したがって、心疾患処置の開発における継続中の課題は、例えば、心臓内の内因性心筋細胞の分裂を促して損傷した心筋を修復することにより、様々な種類の心疾患に好適な効果的な治療薬を同定することである。
【0006】
筋ジストロフィー(muscular dystrophies、MD)は、30を超える遺伝子疾患群であり、運動を制御する骨格筋の進行性の筋力低下及び変性によって特徴付けられる。MDのいくつかの形態は幼少期又は小児期で見られるが、他の形態は中年以降まで現れないこともあり得る。この障害は、筋力低下の分布と程度(MDのいくつかの形態はまた、心筋に影響を及ぼす)、発症年齢、進行度、及び遺伝形式の点で相違がある。
【0007】
特に、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy、DMD)は
、最も広く行き渡った遺伝性の神経筋障害のうちの1つである。DMDは、ジストロフィン遺伝子の突然変異によって引き起こされ、骨格及び心筋の変性をもたらし、その後に線維化を伴う、ジストロフィンタンパク質の欠損に起因する進行性の筋力低下及び筋消耗に
よって特徴付けられる。DMDである人の一般的な死因は、心筋症及び心不全である。現在利用可能な処置を行わなくても、DMD患者の筋変性を予防する安全かつ有効な治療が必要とされている。ヒト成人筋細胞が再生できないことが、DMDにおける主要な臨床的問題となっている。これは、心筋再生を首尾よく刺激するために投与することができる薬理学的な又は細胞性の補助処置を欠くと、より悪化する。現在、ヒトジストロフィンタンパク質を完全に回復するDMDのための治療は存在しない。早死となる予後不良を有する患者では、新たな処置手法を開発することについて、深刻なまだ満たされていない医療ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
この項目は、本開示の一般的な概要を提供し、本開示の全範囲又はその特徴の全てを包括するものではない。
【0009】
本開示は一般的に、心疾患及び/又は筋ジストロフィー疾患を処置するための組成物及び方法に関する。本開示のいくつかの実施形態は、miR-9a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p、Let-7c-5pを含む、関心のあるいくつかのマイクロRNAを特異的に標的化するアンタゴニストの治療及び送達システムの設計に関する。一態様において、本明細書に開示される組成物及び方法は、心筋の再生、及び心筋再生が必要である、例えば心筋梗塞又は任意の心外傷などの心疾患の処置を可能にする。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、損傷した心筋細胞の再生により、心臓発作後に心筋の虚血傷害の逆転が起こり得ると考えられる。
【0010】
一態様において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストを含む、複数のマイクロRNA(microRNA、miR)アンタゴニストを含む組成物の実施形態を本明細書に開示する。本発明のこの態様及び他の態様に従った組成物の実施形態の実施は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53及び55からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52及び54からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-9
9aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53及び55からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0013】
本明細書で開示される組成物の様々な実施形態において、抗miRのうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチド、及び修飾糖部分、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾は、修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(locked nucleic acid、LNA)化学修飾、ペプチド
核酸(peptide nucleic acid、PNA)、アラビノ核酸(arabino-nucleic acid、FANA)、それらの類似体、誘導体又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)を含む。いくつかの実施形態において、ロックド核酸(LNA)は、修飾抗miRの一端又は両端において組み込まれている。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つは、修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分、2’-メトキシ修飾糖部分、2’-O-アルキル修飾糖部分、二環式糖部分又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メチル糖部分を含む。本明細書で開示される組成物のいくつかの実施形態において、本組成物は、更に薬学的製剤に製剤化される。
【0014】
一態様において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットの実施形態が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52及び54からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53及び55からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつ
かの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0015】
本明細書に開示される発現カセットの様々な実施形態において、以下のうちの1つ以上が適用される。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52及び54からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53及び55からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0016】
本明細書に開示される発現カセットの様々な実施形態において、以下のうちの1つ以上が適用される。いくつかの実施形態において、抗miRのうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチド、及び修飾糖部分、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾は、修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)化学修飾、ペプチド核酸(PNA)、アラビノ核酸(FANA)、それらの類似体、誘導体又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)を含む。いくつかの実施形態において、ロックド核酸(LNA)は、修飾抗miRの一端又は両端において組み込まれている。いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つは、修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分、2’-メトキシ修飾糖部分、2’-O-アルキル修飾糖部分、二環式糖部分又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メチル糖部分を含む。いくつかの実施形態において、本態様に従う組成物は、薬学的組成物である。
【0017】
一態様において、本出願のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような発現カセットを含むクローニングベクター又は発現ベクターに関する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターは、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-
5pアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral、AAV)ベクターである。いくつかの実
施形態において、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号59~64に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、配列番号86~89に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、あるいはa)及びb)に示される配列番号に記載のヌクレオチド配列の各々と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号85のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0018】
一態様において、有効量の少なくとも1つの治療剤、並びに以下の(a)本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニスト、(b)本明細書に開示される発現カセット、及び(c)本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターのうちの1つ以上を含む、治療用組成物の実施形態が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、治療用組成物は、更に薬学的製剤に製剤化される。
【0019】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの治療剤が、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療役(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この態様に従う治療用組成物は、薬学的組成物である。
【0020】
一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、対象における心疾患を処置するための方法に関する。この方法は、心疾患の処置に好適な治療用組成物を対象に投与又は付与することを含み、(a)治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、心疾患を有するか又は疑われる対象を同定することを更に含む。いくつかの実施形態において、心疾患は、心筋梗塞、虚血性心疾患、拡張型心筋症、心不全(例えば、鬱血性心不全)、虚血性心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、アルコール性心筋症、ウイルス性心筋症、頻脈誘発性心筋症、ストレス誘起性心筋症、アミロイド心筋症、不整脈源性右室異形成、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁逆流症、三尖弁狭窄症、三尖弁逆流症、先天性障害、遺伝的障害又はそれらの組み合わせである。
【0021】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、対象における心筋再生を促進する方法に関する。この方法は、治療用組成物を対象に投与又は付与することを含み、(a)
治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、心疾患を有するか又は疑われる対象を同定又は選択することを更に含む。いくつかの実施形態において、心疾患は、心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全(例えば、鬱血性心不全)、虚血性心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、アルコール性心筋症、ウイルス性心筋症、頻脈誘発性心筋症、ストレス誘起性心筋症、アミロイド心筋症、不整脈源性右室異形成、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁逆流症、三尖弁狭窄症、三尖弁逆流症、先天性障害、遺伝的障害又はそれらの組み合わせである。いくつかの他のある特定の実施形態において、心疾患は、心筋再生が必要である、虚血性心疾患である。
【0022】
更に別の態様において、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖を調節する方法に関する。この方法は、(1)治療用組成物を心筋細胞に導入することと、ここで、(a)治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含み、(2)(1)から得られる心筋細胞の分裂を可能にし、それにより心筋細胞又は筋細胞の増殖を調節することと、を含む。いくつかの実施形態において、心筋細胞への治療用組成物の導入は、心筋細胞及び/又は筋細胞を、複数のmiRアンタゴニストをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセット又は少なくとも1つのウイルスベクターでトランスフェクトすることを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖を測定することを更に含む。いくつかの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖は、複数のmiRアンタゴニストをコードする核酸配列を欠失している対照心筋細胞に比べて増加する。いくつかの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋肉は、インビボである。いくつかの他の実施形態において、心筋細胞及び/又は筋肉は、エクスビボである。いくつかの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋肉は、ヒト対象のものである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、心疾患に罹患している。
【0023】
本明細書に開示される方法の実施形態の実施は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、同じ発現カセット又は発現ベクターによってコードされる。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、異なる発現カセット又は発現ベクターによってコードされる。いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0024】
いくつかの実施形態において、この方法は、併用療法のために、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は少なくとも1つの追加の治療薬を対象に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集、機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを
目的とした任意の遺伝子送達治療薬、エクソンスキッピング治療薬、ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、細胞ベースの治療薬、ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、抗炎症薬/抗酸化剤、機械補助装置、筋ジストロフィーのための任意の標準的治療薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、生物学的製剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、遺伝子治療薬又は治療用遺伝子調節剤を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の各々は、別の製剤で投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、逐次投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、同時投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、輪番で(in rotation)投与される。いくつかの治療用組成物及び少なくとも1つ
の追加の治療剤又は治療薬は、単一製剤で一緒に投与される。
【0026】
一態様において、筋ジストロフィー(MD)障害を治療するための方法の実施形態が本明細書に開示される。この方法は、治療用組成物を対象に投与又は付与することを含み、(a)治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含み、治療用組成物の投与を、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は少なくとも1つの追加治療薬と組み合わせて行い、併用療法を提供する。いくつかの実施形態において、筋ジストロフィー障害は、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis、ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth Disease、CMT)、先天性筋ジストロフィー(Congenital Muscular Dystrophy、CMD
)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(Emery-Dreifuss Muscular Dystrophy、EDMD)、遺伝性及び内分泌性ミオパチ
ー、筋肉の代謝疾患、ミトコンドリアミオパチー(Mitochondrial Myopathies、MM)、筋強直性ジストロフィー(Myotonic Muscular Dystrophy、MMD)、球脊髄性筋萎縮症
(Spinal-Bulbar Muscular Atrophy、SBMA)又はこれらの組み合わせに関連する。
【0027】
心臓細胞の増殖を増加させるための、並びに/又は筋肉構造及び/若しくは機能及び/若しくは再生に関与するタンパク質の発現及び/若しくは活性を増加させるための方法の実施形態がまた、本明細書に開示され、この方法は、(1)治療用組成物と、ここで、(a)治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む、(2)少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬と、の組み合わせを心臓細胞に接触させるか又は投与することを含む。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心臓線維芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び血管平滑筋細胞(vascular smooth muscle cells、VSMC)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心筋細胞及び骨格筋細胞からなる群から選択される。
【0028】
標的マイクロRNA(miR)の発現を阻害又は低減するための方法の実施形態がまた、本明細書に開示され、この方法は、(1)治療用組成物と、ここで、(a)治療用組成物が、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であるか、(b)治療用組成物が、本明細書に開示される発現カセットを含むか、あるいは(c)治療用組成物が、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む、(2)少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬と、の組み合わせを心臓細胞
に接触させるか又は投与することを含む。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心臓線維芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び血管平滑筋細胞(VSMC)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心筋細胞及び骨格筋細胞からなる群から選択される。
【0029】
本開示の上記の態様に従った方法の実施形態の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translama、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現調節剤、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集、機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを目的とした任意の遺伝子送達治療薬、エクソンスキッピング治療薬、ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、細胞ベースの治療薬、ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、抗炎症薬/抗酸化剤、機械補助装置、筋ジストロフィーのための任意の標準的治療薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、生物学的製剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、遺伝子治療薬又は治療用遺伝子調節剤を含む。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の各々は、別の製剤で投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、逐次投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、同時投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、輪番で投与される。いくつかの治療用組成物及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、単一製剤で一緒に投与される。
【0030】
本明細書の開示は、マイクロRNA(miR)アンタゴニストを更に含む。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、(a)配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、(b)配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、(c)配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、又は(d)配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0031】
上記の概要は単なる例示であって、決して限定することを意図するものではない。本明細書に記載の例示的実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び発明の詳細説明並びに特許請求の範囲から十分に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】H1プロモーター及びU6プロモーターの制御下でLet-7a-5p及びmiR-99a-5p阻害配列をそれぞれ発現する修飾ヘアピンZip構築物をコードするヌクレオチド配列を含む、非限定的で例示的なクローニングベクター設計の略図である。この例示的な実施形態において、ベクターはまた、H1プロモーター及びU6プロモーターの制御下でLet-7c-5p及びmiR-100-5p阻害配列をそれぞれ発現するヌクレオチド配列を含む。
【
図2A】心臓MRI画像化実験の結果の概要を写真で示し、ここでは、対照GFPウイルス(
図2A)対JBT-miR1(
図2B)の心臓MRI画像により、GFPを発現するウイルスと比較した場合、JBT-miR1の心臓内注射の3週間後において、永久LAD結紮を有するCd1のマウスの左室(Left Ventricle、LV)の遅延ガドリニウム造影が低減することが観察された。
【
図2B】心臓MRI画像化実験の結果の概要を写真で示し、ここでは、対照GFPウイルス(
図2A)対JBT-miR1(
図2B)の心臓MRI画像により、GFPを発現するウイルスと比較した場合、JBT-miR1の心臓内注射の3週間後において、永久LAD結紮を有するCd1のマウスの左室(Left Ventricle、LV)の遅延ガドリニウム造影が低減することが観察された。
【
図3】非限定的で例示的な、ホタルレポーター遺伝子を含有するpMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼmiRNA発現レポーターベクターを図示する。
【
図4】非限定的で例示的な、β-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を含むpMIR-REPORT(商標)miRNA β-ガラクトシダーゼ発現レポーターベクターを図示する。
【
図5】Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、Hela細胞内の内因性miR(Let-7a-5p、miR-99a、miR-100-5p、miR-Let-7c5p、miR-Let-7a-5p)が、以下の実施例5に記載されるそれぞれのLUCレポーター構築物に結合し、ルシフェラーゼ活性を抑制することができることを実証している。
【
図6】Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0111、JRX0112、JRX0114、JRX0116、JRX0118 miR-99a(miR-99)抗miRが、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR-REPORT(商標)Luciferase、pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-99aに相補的なmiR結合部位を含む、ルシフェラーゼ構築物1(Luciferase Construct 1、LUC1、miR-99a)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが見出されたことを示している。
【
図7】Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0110、JRX0113、JRX0115、JRX0117、JRX0119 miR-100-5p抗miRが、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-100-5pに相補的なmiR結合部位を含む、ルシフェラーゼ構築物2(Luciferase Construct 2 LUC2、miR-100-5p)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。
【
図8A】Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物3(Luciferase Construct 3、LUC3、let-7a)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが見出されたことを実証している。LUC3は、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-Let-7a-5pに相補的なmiR結合配列を含んでいた。
【
図8B】Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物3(Luciferase Construct 3、LUC3、let-7a)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが見出されたことを実証している。LUC3は、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-Let-7a-5pに相補的なmiR結合配列を含んでいた。
【
図9A】は、Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物4(Luciferase Construct 4、LUC4、let-7c)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。LUC4は、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-Let-7c5pに相補的なmiR結合配列を含んでいた。
【
図9B】は、Hela細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物4(Luciferase Construct 4、LUC4、let-7c)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。LUC4は、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼ(pMIR)の多重クローニング部位にクローン化されたmiR-Let-7c5pに相補的なmiR結合配列を含んでいた。
【
図10】新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0111、JRX0112、JRX0114、JRX0116、JRX0118 miR-99a抗miRが、ルシフェラーゼ構築物1(LUC1、miR-99)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。
【
図11】新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0110、JRX0113、JRX0115、JRX0117、JRX0119 miR-100-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物2(LUC2、miR-100)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。
【
図12A】新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物3(LUC3、let-7a)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが見出されたことを実証している。
【
図12B】新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物3(LUC3、let-7a)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが見出されたことを実証している。
【
図13A】は、新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物4(LUC4、let-7c)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。
【
図13B】は、新生仔ラット心室心筋細胞で行われた実験結果の概略を図示し、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物4(LUC4、let-7c)活性を用量依存的に(ログ-10M)増加することが観察されたことを実証している。
【0033】
本開示の上記の他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明及び付随する特許
請求の範囲からより十分に明らかになるであろう。これらの図面は本開示に従ったほんのいくつかの実施形態を示しているだけであり、本開示の範囲を限定するとみなすものではないと理解する。本開示は、添付の図面の使用による更なる特定及び詳細を伴って記載される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、一般に、新規なマイクロRNAアンタゴニスト、1つ以上のそのようなマイクロRNAアンタゴニストを含む治療用組成物、並びにそこのようなマイクロRNAアンタゴニストを用いて心疾患及び/又は筋ジストロフィー障害を処置及び/又は改善する方法に関する。本明細書で開示される治療用組成物及び追加の治療剤が、心疾患及び/又は筋ジストロフィー障害を有するか又は疑われる対象に付与される、併用療法も含まれる。特に、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、合成オリゴヌクレオチドであるmiR-99A-5P、miR-100-5P、Let-7a-5p、及びLet-7c-5pアンタゴニスト及び/若しくはウイルス送達されるmiR-99A-5P、miR-100-5P、Let-7a-5p、及びLet-7c-5pアンタゴニスト、化学療法剤、並びに心疾患及び/又は筋ジストロフィー疾患処置のための生物学的薬剤の様々な組み合わせの使用に関する。例えば、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、2つのアデノウイルスAAV2/9送達システム(本明細書中では、JBT-miR1及びJBT-miR2と称する)、及びそれぞれの標的マイクロRNAを阻害することができるmiR-99a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p、Let-7c-5pアンタゴニストについてのいくつかのバリアントを有する対応する発現ベクターを記載する。本明細書では、miR-99a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p、及びLet-7cを特異的に標的化するように設計されたいくつかの合成オリゴヌクレオチドアンタゴニストが、個別に又は組み合わせて更に提供される。
【0035】
以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付の図面を参照する。詳細な説明、図面、特許請求の範囲に記載されている例示的な実施形態は限定されることを何ら意味するものではない。本明細書で提供される主題の真意又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いてもよいし、他の変形がなされもよい。本明細書で一般的に記載され、図面によって例示される、本開示の実施形態は、非常に様々な異なる構成で調整し、置き換えし、組み合わせ、設計することができ、その全てが明確に企図されて本開示の一部をなすことは容易に理解されるであろう。
いくつかの定義
【0036】
他に定義がなければ、本明細書で使用される全ての技術用語、表記、及び他の科学用語又は専門用語は、本開示に照らして読み取った際に本開示に属する当業者に一般的に理解される意味を有することを意図する。いくつかの場合において、一般的に理解される意味の用語は、明確性のため及び/又は参照を容易にするために本明細書中で定義し、本明細書にそのような定義を含めることは、当該技術分野で一般的に理解されるものと実質的に異なるものを表していると必ずしも解釈すべきではない。本明細書で記載又は参照される技術及び手順の多くは、十分に理解されており、当業者によって従来の方法を用いて一般的に使用される。(例えば、Singleton et al.,Dictionary
of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,N.Y.1989)を参照のこと。
【0037】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、複数の参照を含む。例えば、「分子」との用語は、混合物を含む1つ以上の分子を含む
。本開示及び付随する特許請求の範囲に使用する場合、「及び/又は」との用語は、単独的又は包括的であることができる。例えば、「A及び/又はB」は、本明細書において、以下の代替物「A」、「B」、「A及びB」の全てを含むように使用される。
【0038】
「約」との用語は、本明細書で使用する場合、その通常の意味である、おおよそを意味する。おおよその程度が文脈から別に明確ではないとき、「約」は、与えられた値からプラス又はマイナス「10%」内のいずれか、あるいは四捨五入して最も近い有効数字にすることを意味し、全ての場合において、与えられた値を含む。範囲が与えられている場合、境界値を含む。
【0039】
「投与」とは、薬剤又は組成物を対象に提供することを意味し、医療専門家による投与及び自分での投与によって投与することを含むが、これらに限定されない。
【0040】
「非経口投与」とは、注射又は輸液によって投与することを意味する。非経口投与は、限定するものではないが、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、及び頭蓋内投与を意味する。「皮下投与」とは、皮膚の直下に投与することを意味する。「静脈内投与」とは、静脈内に投与することを意味する。「動脈内投与」とは、動脈内に投与することを意味する。
【0041】
「アミノ酸」との用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるもの、及び後で修飾されるそれらのアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、y-カルボキシグルタメート、及び0-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物を指し、例えば、炭素が、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合され、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムがある。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。「天然に存在しないアミノ酸」及び「非天然アミノ酸」との用語は、天然では見出されない、アミノ酸類似体、合成アミノ酸、及びアミノ酸模倣体を指す。
【0042】
アミノ酸は、本明細書において、一般的に知られている3文字記号又はIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字記号のいずれかによって参照される場合がある。同様に、ヌクレオチドは、一般的に認められた1文字コードによって参照される場合がある。
【0043】
「アンチセンス化合物」とは、標的核酸へのハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する化合物を意味する。ある特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、標的核酸に相補的な核酸塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。
【0044】
「相補的な」又は「相補性」との用語は、第2のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成するポリヌクレオチド中の核酸の能力を指す。例えば、配列A-G-Tは、配列T-C-Aと相補的である。相補性は、一部であってもよいし(この場合、一部の核酸のみが塩基対形成に従って一致する)、完全であってもよい(この場合、全ての核酸が塩基対形成に従って一致する)。「タンパク質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」との用語は、互換的に使用され、アミノ酸ポリマー又は相互作用する又は結合した2つ以上のアミノ酸ポリマーの組を示す。これらの用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸並びに天然に存在するアミノ酸ポリマ
ー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーの人工化学的模倣体である、アミノ酸ポリマーを含む。
【0045】
「保存的に改変された(conservatively modified)バリアント」との句は、アミノ酸
及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変されたバリアントは、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合、本質的に同一のヌクレオチド配列を指す。遺伝子コードの縮重により、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードすることができる。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される任意の位置において、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンを上記の対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸のバリエーションは、「サイレントバリエーション」であり、これは、保存的に改変されたバリエーションの一種である。本明細書に記載されたポリペプチドをコードする任意の1つの核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレントバリエーションを記載している。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG及び通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を生じさせることができることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の全てのサイレントバリエーションは、実際のプローブ配列に関してではなく、その発現産物に対して記載された配列の各々に潜在している。更に又はあるいは、バリアントは、参照ポリヌクレオチドと比較して、5’末端、3’末端及び/又は1つ以上の内部位置において1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、付加を含むことができる。バリアントと参照ポリヌクレオチドとの間の配列の類似性及び/又は差異は、当該技術分野で知られている従来技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及びハイブリダイゼーション技
術を用いて検出することができる。バリアントポリヌクレオチドはまた、例えば部位特異的突然変異誘発を使用して生成されるものなど、合成的に誘導化されるポリヌクレオチドを含む。一般的に、miRNAを含むがこれに限定するものではない本明細書に開示される特定のポリヌクレオチドのバリアントは、当業者に既知の配列アラメントプログラムにより決定されるように、参照ポリヌクレオチドと少なくとも50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%以上の配列同一性を有する。
【0046】
「同一である」又は「パーセント同一性」との用語は、2つ以上の核酸又はタンパク質の文脈において、2つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸が、以下に記載されるデフォルトパラメータによるBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて、あるいは手動によるアラインメント及び視覚検査により測定したとき、同じであるか、あるいは特定のパーセンテージの同じヌクレオチド又はアミノ酸(例えば、比較ウインド又は設計領域での最大限の対応について比較及びアラインメントしたときに、特定の領域に対して約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有することを指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのwebサイトを参照のこと。そのような配列は、その結果、「実質的に同一である」と言う。この定義はまた、試験配列の相補体を指し、あるいは試験配列の相補体に適用されてもよい。この定義はまた、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列を含む。配列同一性は、典型的には、少なくとも約50個のアミノ酸又はヌクレオチド長さの領域にわたり、若しくは50~100個のアミノ酸又はヌクレオチド長さの領域にわたり、又は所与の配列の全長にわたり存在する。
【0047】
本明細書で用いる場合、「構築物」との用語は、任意の供給源に由来し、ゲノムの組み
込み又は自律複製を可能にし、1つ以上の核酸配列が機能的に操作可能な(functionally
operative)形式で連結されている(例えば、作動可能に連結されている(operably linked))核酸分子を含む、発現カセット、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポ
リヌクレオチド分子、ファージ、又は線状若しくは環状の一本鎖若しくは二本鎖DNA若しくはRNAポリヌクレオチド分子などの、任意の組換え核酸分子を意味することを意図する。
【0048】
「トランスフェクション(transfection)」又は「トランスフェクトする(transfecting)」との用語は、非ウイルス又はウイルスベースの方法を用いて、細胞に核酸分子を導入するプロセスとして定義される。核酸分子は、完全なタンパク質又はその機能性部分をコードする配列であることができる。典型的には、核酸ベクターは、タンパク質発現に必要な要素(例えば、プロモーター、転写開始部位など)を含む。非ウイルストランスフェクション法には、細胞内に核酸分子を導入するための送達系として、ウイルスDNA又はウイルス粒子を使用しない任意の適切なトランスフェクション法を含む。例示的な非ウイルストランスフェクション法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、熱ショックによるトランスフェクション、マグネトフェクション、及びエレクトロポレーションが含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベースの方法については、当該技術分野で既知の有用なウイルスベクターのうちの任意のものを、本明細書に記載された方法において使用することができる。ウイルスベクターの例には、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、レトロウイルスベクターを用い、当該技術分野で既知の標準的手順に従って、核酸分子を細胞に導入する。
【0049】
「異種」との用語は、核酸又はタンパク質の部分に関して使用する場合、核酸又はタンパク質が天然で互いに同じ関係で見出されない2つ以上の配列を含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には組換えにより生成され、ある供給源由来のプロモーター及び別の供給源由来のコード領域などの、新しい機能性核酸を作製するために配列された関連のない遺伝子由来の2つ以上の配列を有する。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然において互いに同じ関係で見出されない2つ以上の部分配列(subsequence)を含むことを
示す(例えば、融合タンパク質)。
【0050】
「遺伝子」との用語は、タンパク質をコードする又は機能性RNAに転写され得る核酸分子の任意のセグメントを指すために、幅広く使用することができる。遺伝子は、転写されるが最終、成熟、及び/又は機能性RNA転写物の一部ではない配列を含むことができ、タンパク質をコードする遺伝子は、転写されるが翻訳されない遺伝子、例えば、5’非翻訳領域(5’untranslated regions、5’-UTR)、3’非翻訳領域(3’untranslated regions、3’-UTR)、イントロンなどを更に含むことができる。更に、遺伝子は、その発現に必要な調節配列を任意選択で更に含むことができ、そのような配列は、例えば、転写されるが翻訳されない遺伝子であることができる。遺伝子は、関心のある供給源からクローン化すること又は既知若しくは予測配列情報から合成することを含む、様々な供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含むことができる。
【0051】
「ヌクレオシド間連鎖」との用語は、隣接するヌクレオシド間の共有結合を意味する。
【0052】
「核酸塩基」との用語は、他の核酸塩基と非共有結合により対形成することが可能である複素環式部分を意味する。
【0053】
「ヌクレオシド」とは、糖に連結された核酸塩基を意味する。「連結ヌクレオシド」と
は、共有結合によって連結されたヌクレオシドを意味する。「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基を有するヌクレオシドである。
【0054】
「miRアンタゴニスト」とは、miRNAの活性に干渉する又はそれを阻害するように設計された作用剤(agent)を意味する。ある特定の実施形態において、miRアンタ
ゴニストは、miRNAを標的化するアンチセンス化合物を含む。ある特定の実施形態において、miRアンタゴニストは、miRNAの核酸塩基配列又はその前駆体に相補的な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、miRアンタゴニストは、miRNAの活性に干渉する又はそれを阻害する小分子などを含む。
【0055】
「miR-9a-5pアンタゴニスト」とは、miR-9a-5pの活性に干渉する又はそれを阻害するように設計された作用剤を意味する。「miR-100-5pアンタゴニスト」とは、miR-100-5pの活性を妨害又は阻害するように設計された作用剤を意味する。「Let-7a-5pアンタゴニスト」とは、Let-7a-5pの活性を妨害又は阻害するように設計された作用剤を意味する。「Let-7c-5pアンタゴニスト」とは、Let-7c-5pの活性を妨害又は阻害するように設計された作用剤を意味する。
【0056】
「修飾オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する末端、糖、核酸塩基、及び/又はヌクレオシド間連結に関連する1つ以上の化学修飾を有するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0057】
「修飾ヌクレオシド間連結」とは、天然に存在するヌクレオシド間連結からの任意の変化を意味する。
【0058】
「ホスホロチオエートヌクレオシド間連結」とは、非架橋原子のうちの1つが硫黄原子である、ヌクレオシド間の連結を意味する。
【0059】
「修飾糖」とは、天然糖からの置換及び/又は任意の変化を意味する。
【0060】
「修飾核酸塩基」とは、天然の核酸塩基からの任意の置換及び/又は変化を意味する。
【0061】
「5-メチルシトシン」とは、5’位に結合されたメチル基により修飾されたシトシンである。
【0062】
「2’-O-メチル糖」又は「2’-OMe糖」とは、2’位にO-メチル修飾を有する糖を意味する。
【0063】
「2’-O-メトキシエチル糖」又は「2’-MOE糖」とは、2’位にO-メトキシエチル修飾を有する糖を意味する。
【0064】
「2’-O-フルオロ糖」又は「2’-F糖」とは、2’位にフルオロ修飾を有する糖を意味する。
【0065】
「二環式糖部分」とは、2つの非ジェミナル環原子の架橋により修飾された糖を意味する。
【0066】
「2’-O-メトキシエチルヌクレオシド」とは、2’-O-メトキシエチル糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0067】
「2’-フルオロヌクレオシド」とは、2’-フルオロ糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0068】
「2’-O-メチルヌクレオシド」とは、2’-O-メチル糖修飾を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0069】
「二環式ヌクレオシド」とは、二環式糖部分を有する2’-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0070】
本明細書で使用する場合、「miR」、「mir」、「miRNA」は、互換的に使用され、コードRNAとハイブリダイズし、このコードRNAの発現を調節することができる小さなRNA分子類であるマイクロRNAを指す。ある特定の実施形態において、miRNAは、酵素ダイサー(Dicer)によるプレ-miRNAの切断の産物である。本明細
書で提供されるこれらの用語は、遺伝子又は標的遺伝子と同じ細胞中で発現したときに遺伝子又は標的遺伝子の発現を低減又は阻害する能力を有する二本鎖RNAを形成する核酸を指す。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成する核酸の相補部分は、典型的には実質的又は完全な同一性を有する。一実施形態において、「マイクロRNA」とは、標的遺伝子と実質的又は完全な同一性を有し、二本鎖miRNAを形成する核酸を指す。いくつかの実施形態において、本開示のmiRNAは、相補的細胞mRNAと相互作用し、それにより相補的mRNAの発現に干渉することにより、遺伝子発現を阻害する。いくつかの実施形態において、本開示の二本鎖miRNAは、少なくとも約15~50のヌクレオチド長である(例えば、二本鎖miRNAの各相補配列は、15~50のヌクレオチド長であり、二本鎖miRNAは、約15~50の塩基対長さである)。いくつかの実施形態において、長さは、20~30塩基のヌクレオチドであり、好ましくは約20~25又は約24~29のヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30のヌクレオチド長である。本開示のいくつかの実施形態において、マイクロRNAは、miR-9a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p、及びLet-7c-5pからなる群から選択されるマイクロRNAから選択されるか、又はこれらと実質的に類似する。
【0071】
本明細書で使用する場合、「抗miRNA」との用語は、「抗miR」との用語と互換的に使用され、1つ以上の標的マイクロRNAの1つ以上の活性に干渉する又はそれを阻害することができるオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、抗miRNAは、化学合成されたオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、抗miRNAは、小分子である。いくつかの実施形態において、抗miRNAは、miRアンチセンス分子である。「シード領域」とは、成熟miRNA配列の5’末端から2~6又は2~7のヌクレオチドを意味する。
【0072】
「miRNA前駆体」との用語は、ゲノムDNAに由来し、かつ1つ以上のmiRNAを含む非コード構造化(structured)RNAを含む、転写物を意味する。例えば、ある特定の実施形態において、miRNA前駆体は、プレ-miRNAである。ある特定の実施形態において、miRNA前駆体は、プリ-miRNAである。
【0073】
「プレ-miRNA」又は「プレ-miR」とは、miRNAを含む、ヘアピン構造を有する非コードRNAを意味する。ある特定の実施形態において、プレ-miRNAは、ドローシャ(Drosha)として知られる二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼによる、プリ-miRNAの切断の産物である。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、細胞質中で、プレ-miRNAヘアピンがRNaseIII酵素ダイサーによって切断されると考えられる。このエンドリボヌクレアーゼは、ヘアピンの5’及び3’末端と相互
作用し、3’及び5’アームを繋いでいるループを切り取り、不完全miRNAである約22ヌクレオチド長のmiRNA二重鎖(duplex)を生じさせる。二重鎖のいずれかの鎖は機能性miRNAとして潜在的に作用し得るが、一本鎖のみが、miRNA及びそのmRNA標的が相互作用するRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に通常は組み込まれると考えられる。残った鎖(センス鎖)は分解される。RNA誘導サイレンシング複合体又はRISCは、多タンパク質複合体、特に、マイクロRNA(miRNA)などの一本鎖RNA(single-stranded RNA、ssRNA)断片又は二本鎖小分子干渉RNA(double-stranded small interfering RNA、siRNA)の一方の鎖を組み込んだ、リボ核タンパク質である。
【0074】
「調節」とは、機能又は活性の摂動(perturbation)を意味する。特定の実施形態において、調節とは、遺伝子発現の増加を意味する。ある特定の実施形態において、調節とは、遺伝子発現の低下を意味する。本明細書で使用する「マイクロRNAモジュレーター」との用語は、マイクロRNA(例えば、let-7a、let-7c、miR-100、miR-99)の発現レベルを調節することができる作用剤を指す。いくつかの実施形態において、マイクロRNAモジュレーターは核酸によってコードされる。他の実施形態において、マイクロRNAモジュレーターは、小分子(例えば、化学化合物又は合成マイクロRNA分子)である。いくつかの実施形態において、マイクロRNAモジュレーターは、マイクロRNAモジュレーター不存在下での発現レベルに比べて、マイクロRNAの発現レベルを低下させる。マイクロRNAモジュレーターが、モジュレーター不存在の場合に対してマイクロRNAの発現レベルを低下させる場合、マイクロRNAモジュレーターは、マイクロRNAのアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、マイクロRNAモジュレーターは、マイクロRNAモジュレーター不存在下での発現レベルと比べて、マイクロRNAの発現レベルを増加させる。マイクロRNAモジュレーターが、モジュレーター不存在の場合に対してマイクロRNAの発現レベルを増加させる場合、マイクロRNAモジュレーターは、マイクロRNAのアゴニストである。
【0075】
本明細書で使用する場合、「心筋細胞」との用語は、ヒト心筋などの心筋から得られるか若しくはそこに存在する任意の細胞、並びに/又は心筋と物理的及び/若しくは機能的に関連する任意の細胞を含む。本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、心筋の細胞(myocardial cell)は、心筋細胞(cardiomyocyte)である。
【0076】
「ヌクレオチド」との用語は、天然に存在するヌクレオチド及び天然に存在しないヌクレオチドを包含する。したがって、「ヌクレオチド」は、既知のプリン及びピリミジン複素環含有分子だけでなく、複素環類似体及びその互変異性体も含む。他の種類のヌクレオチドの非限定的な例には、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル、プリン、キサンチン、ジアミノプリン、8-オキソ-N6-メチルアデニン、7-デアザキサンチン、7-デアザグアニン、N4,N4-エタノシトシン、N6,N6-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-メチルシトシン、5-(C3~C6)-アルキニルシトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、プソイドイソシトシン(pseudoisocytosine)
、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシン、及び米国特許第5,432,272号に記載された「天然に存在しない」ヌクレオチドを含有する分子が含まれる。「ヌクレオチド」との用語は、これらの例のどれも及び全て、並びにそれらの類似体及び互変異性体を包含することを意図する。
【0077】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」との用語は、本明細書では互換的に使用され、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかのデオキシリリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマー、並びにそれらの相補体を指す。「ポリヌクレオチド」との用語は、ヌクレオチドの直鎖状配列を含む。「ヌクレオチド」との用語は、典型的には、ポリヌクレオチドの単一ユニット、例えば単量体を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキ
シリボヌクレオチド又はそれらの修飾型であることができる。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例には、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA(siRNAを含む)、並びに一本鎖及び二本鎖DNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が含まれる。この用語はまた、合成の、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照の核酸と同様の結合性を有し、かつ参照のヌクレオチドと同様の様式で代謝される、既知のヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基若しくは連結を含有する核酸を包含する。そのような類似体の例には、限定するものではないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート及び2’-O-メチルリボヌクレオチドが含まれる。したがって、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」との用語は、ホスホジエステル連結又は修飾された連結、例えば、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロアミデート、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート又はスルトン連結、及びそれらの連結の組み合わせ含む核酸を包含する。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」との用語はまた、5つの生物学的に存在する塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン及びウラシル)以外の塩基からなる核酸を特に含む。
【0078】
「作動可能に連結される」との用語は、本明細書で使用する場合、2つ以上の配列間の連結を表す。例えば、関心のあるポリヌクレオチドと調節配列(例えば、プロモーター)との間の作動可能な連結は、関心のあるポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的な結合である。この意味で、「作動可能に連結される」との用語とは、調節領域が関心のあるコード配列の転写又は翻訳の調節に効果的であるように、調節領域及び転写されるコード配列が配置されることを指す。本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、「作動可能に連結される」との用語は、制御配列がポリペプチドをコードするmRNA、ポリペプチド、及び/又は機能性RNAの発現若しくは細胞局在化を指向若しくは調節するように、調節配列がポリペプチド又は機能性RNAをコードする配列に対して適切な位置に配置された構成を表す。したがって、プロモーターは、これが核酸配列の転写を仲介することができる場合、核酸配列と作動可能に連結されている。作動可能に連結された要素は、連続又は非連続であることができる。
【0079】
「プロモーター」、「プロモーター領域」、又は「プロモーター配列」との用語は、本明細書では互換的に使用され、RNAポリメラーゼを結合し、5’から3’(「下流」)方向に遺伝子転写を開始することができる核酸配列を指す。プロモーターの特異的配列が、典型的にはプロモーターの強さを決定する。例えば、強力なプロモーターにより、高効率の転写開始が引き起こされる。プロモーターへのRNAポリメラーゼの結合が遺伝子転写の主な原因である場合、この遺伝子はプロモーター「の制御下で」又はプロモーター「によって制御される」。プロモーター又はプロモーター領域は、典型的には、RNAポリメラーゼの認識部位及び適切な転写開始に必要な他の要因を提供する。プロモーターは、遺伝子のゲノムコピーの5’未翻訳領域(5’UTR)から単離することができる。あるいは、プロモーターは、既知のDNA要素を変更することによって合成的に作製又は設計することができる。あるプロモーター配列を別のプロモーター配列と組み合わせたキメラプロモーターも考慮される。プロモーターは、作動可能に連結されたポリヌクレオチド分子、例えば、ポリペプチドのコード配列又は機能性RNA配列などの発現を調節するための調節要素として用いることができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼによって認識される配列に加えて、好ましくは、他の転写因子、シス要素などの調節配列要素、又は作動可能に連結された遺伝子の転写に影響を及ぼすエンハンサードメインを含有することができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは「構成的」であることができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、特異的な組織型における作動可能に連結されたコード領域の転写にのみ活性であるように、「組織特異的」又は「組織優先的(
tissue-preferred)」に調節することができる。いくつかの実施形態において、治療目
的のために、プロモーターは、心臓及び骨格筋細胞における転写を支援する組織特異的プロモーターであることができる。この点に関する更なる情報は、例えば、国際公開第2004/041177(A2)号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、「天然に存在する」又は「合成的に」構築された核酸配列を含むことができる。
【0080】
トランスフェクトされた遺伝子の発現は、宿主細胞において過渡的(transiently)又
は安定的に起こり得る。「過渡的発現」の間、トランスフェクトされた核酸は、宿主細胞ゲノムに組み込まれず、細胞分裂時に娘細胞には移入されない。その発現はトランスフェクトされた細胞に制限されるので、遺伝子発現は時間経過によって失われ得る。対照的に、トランスフェクトされた遺伝子の安定な発現は、この遺伝子が、トランスフェクトされた細胞に選択的利点を与える別の遺伝子とともに共トランスフェクトされた(co-transfected)ときに生じ得る。そのような選択的利点は、細胞に提示されるある特定の毒素に
対して抵抗性であり得る。トランスフェクトされた遺伝子の発現は、宿主ゲノムへのトランスポゾン媒介性の挿入によって更に達成され得る。トランスポゾン媒介性の挿入の際、この遺伝子は、宿主ゲノムへの挿入及びその後の切除を可能にする、2つのトランスポゾンリンカー配列の間で予測可能な様式で位置決めされる。
【0081】
「阻害剤」、「抑制因子」、若しくは「アンタゴニスト」又は「ダウンレギュレーター(downregulator)」との用語は、本明細書で互換的に使用され、対照と比較して、標的
遺伝子の検出可能的に低い(detectably lower)発現又は活性レベルをもたらす物質、作用剤、又は分子を指す。阻害される発現又は活性は、対照のものより10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以下であることができる。いくつかの実施形態において、阻害は、対照と比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、又は10倍以上である。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは抗miRである。
【0082】
本明細書で使用する場合、「処置」とは、患者に顕在化した又は患者がかかりやすい可能性がある疾患、障害、又は生理的状態に応答して行われる臨床的介入を指す。処置の目的には、症状の緩和若しくは予防、疾患、障害若しくは状態の進行若しくは悪化の遅延又は停止、及び/又は疾患、障害若しくは状態の回復が含まれるが、これらに限定するものではない。「処置」とは、治療的処置及び予防又は予防的手段の一方又は両方を指す。処置を必要とする対象には、疾患若しくは障害又は望ましくない生理学的状態に既に罹患している対象、及び疾患若しくは障害又は望ましくない生理学的状態が予防される対象とが含まれる。本開示のいくつかの実施形態において、「処置」、「治療」及び「改善」との用語は、症状、例えば、神経変性障害又は神経傷害の重篤度の任意の低下を指す。本明細書で使用する場合、「処置する」及び「予防する」との用語は、絶対的な用語であることを意図していない。処置は、任意の発症遅延、症状の改善、及び患者生存の改善、生存時間若しくは生存率の増加など、又はそれらの組み合わせを指すことができる。処置の効果は、処置を受けていない個体若しくは個体プール、又は処置前若しくは処置中の異なる時点の同じ患者と比較することができる。いくつかの実施形態において、個体における疾患又は障害の重篤度は、例えば投与前の個体又は処置を受けてない対照個体と比較して少なくとも10%低減させることができる。いくつかの実施形態において、個体における疾患又は障害の重篤度は、少なくとも25%、50%、75%、80%、又は90%低減し、あるいは、いくつかの実施形態において、標準的な診断技術を用いてもはや検出できない。
【0083】
本明細書で使用する場合、「有効量」又は「治療有効量」との用語は、有益な又は所望の生物学的及び/又は臨床結果をもたらすのに十分な量を指す。いくつかの実施形態にお
いて、この用語は、所与の障害又は症状を改善するのに十分な治療剤の量を指す。例えば、所与のパラメータについて、治療有効量は、対照と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増減を示すことができる。治療の効力はまた、「~倍」の増減として表すことができる。例えば、治療上有効量は、対照と比較して、少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又は5倍以上の効果を有することができる。
【0084】
「対象」、「患者」、「処置を必要とする個体」との用語及び類似の用語は、互換的に使用され、指示された場合を除き、処置、観察、又は実験の目的物である哺乳動物対象を指す。本明細書で使用する場合、「哺乳動物」とは、哺乳綱に属する対象を指し、ヒト、家畜及び農用動物、動物園の動物、スポーツ動物並びにペット動物を含むが、これらに限定されない。哺乳動物の非限定例には、ヒト、及び非ヒト霊長類、マウス、ラット、ヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、並びにその他の哺乳動物種が含まれる。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。しかしながら、いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトではない。この用語は、対象が特定の疾患又は障害を有すると診断されていることを必ずしも示さないが、典型的には、医療監視下の対象を指す。「有することが疑われる対象」とは、疾患又は状態の1つ以上の臨床指標を示す対象を意味する。ある特定の実施形態において、疾患又は状態は筋ジストロフィー(MD)障害である。
【0085】
「標的核酸」、「標的RNA」、「標的RNA転写」及び「核酸標的」は全て、アンタゴニストによって標的化され得る核酸を意味する。「標的化」とは、標的核酸にハイブリダイズし、所望の効果を誘発する核酸塩基配列の設計及び選択プロセスを意味する。「を標的化する」とは、標的核酸にハイブリダイズし、所望の効果を誘発することが可能である核酸塩基配列を有することを意味する。ある特定の実施形態において、所望の効果は標的核酸の減少である。
【0086】
本明細書で使用する場合、「バリアント」との用語は、参照ポリヌクレオチド(又はポリペプチド)と実質的に類似の配列を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)を指す。ポリヌクレオチドの場合、バリアントは、参照ポリヌクレオチドと比較して、5’末端、3’末端、及び/又は1つ以上の内部部位において1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換、付加を有することができる。バリアントと参照ポリヌクレオチドとの間の配列の類似性及び/又は差異は、当該技術分野で既知の従来技術、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びハイブリダイゼーション技術を用いて検出することができる。バリアントポリヌクレオチドはまた、例えば、部位特的突然変異誘発を用いて生成されるものなど、合成的に誘導されるポリヌクレオチドを含む。一般に、DNAを含むが限定されないポリヌクレオチドのバリアントは、当業者に既知の配列アラインメントプログラムによって決定されるように、参照ポリヌクレオチドと少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%以上の配列同一性を有することができる。ポリペプチドの場合、バリアントは、参照ポリペプチドと比較して、1つ以上のアミノ酸の欠失、置換、付加を有することができる。バリアントと参照ポリペプチドとの間の配列の類似性及び/又は差異は、当該技術分野で既知の従来技術、例えばウエスタンブロットを用いて検出することができる。一般に、ポリヌクレオチドのバリアントは、当業者に既知の配列アラインメントプログラムによって決定されるように、参照ポリペプチドと少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%,又は約99%以上の配列同一性を有することができる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含
有する」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包含的又は開放的であり(open
-ended)、追加の未引用の要素又は方法工程を排除しない。本明細書で使用する場合、
「からなる」とは、特許請求の範囲に記載の組成物又は方法で特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除く。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」とは、特許請求の範囲に記載の組成物又は方法の基本の及び新規な特性に実質的に影響を与えない材料又は工程を除くものではない。特に、組成物の成分の記載又は方法の工程の記載における、「からなる」との用語の本明細書中での任意の引用は、引用した成分又は工程から本質的になる及びそれらからなる組成物及び方法を包含すると理解する。
【0088】
本明細書に記載の方法又はプロセスのいくつかの実施形態において、工程は、時間又は操作シ-ケンスが明示的に挙げられる場合を除いて、任意の順序で行うことができる。更に、いくつかの実施形態において、特定の工程は、別々に行われることを特許請求の範囲の記載が明示的に述べていない限り、同時に行うことができる。例えば、いくつかの実施形態において、請求項に記載のXを実施する工程及び請求項に記載のYを実行する工程を、単一操作内で同時に行うことができ、得られる方法は、特許請求の範囲に記載の方法の文言上の範囲内である。
【0089】
項目の見出し、例えば、(a)、(b)、(i)などは、本明細書及び特許請求の範囲を単に読みやすくするために提示しているだけであり、したがって構成目的のために本明細書で使用され、記載された主題を限定すると解釈するものではない。本明細書及び特許請求の範囲に見出しを使用することは、工程又は要素がアルファベット順若しくは数値順又はそれらの提示順で行われることを必要とするものではない。特許、特許出願、論文、書籍、手引書、及び学術論文を含むが限定するものではない、本出願で引用される全ての文書又は文書の部分は、それらの全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0090】
当業者によって理解されるように、明細書を提供する点からなどの任意及び全ての目的のために、本明細書に記載される全ての範囲は、任意及び全ての可能な下位範囲及びその下位範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙される範囲は、同一の範囲が少なくとも等分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分けることできることを十分に記載し、容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書中で議論される各々の範囲は、下部の3分の1、中間の3分の1、上部の3分の1などに分けることができる。また当業者に理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、及び「より少ない」などの全ての文言は、引用された数字を含み、上記のように、続いて下位範囲に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲には、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4、又は5個の物品を有する群を指し、その他同様である。
I.心疾患及びマイクロリボ核酸(Micro-Ribonucleic acid、miRNA)
【0091】
心臓疾患又は心疾患は、いくつかの類又は型が存在する疾患であり(例えば、虚血性心筋症(Ischemic Cardiomyopathy、ICM)、拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy、
DCM)、大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis、AS))、多くは固有の処置戦略を必要
とする。したがって、心疾患は、単一の疾患ではなく、むしろ異なる細胞型(例えば、心筋の細胞)から異なる病原性機構によって生じる障害のファミリーである。心疾患処置の課題は、特定の心疾患型に対する特異的治療薬を標的とし、効力を最大化し、毒性を最小化することとしてきた。したがって、心疾患の分類(類別)の改善が、心疾患処置向上の中心となっている。本明細書で使用する場合、心臓疾患は、以下の非限定的な例を包含する:心不全(例えば、鬱血性心不全)、虚血性心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、アルコール性心筋症、ウイルス性心筋症、頻脈誘発性心筋症、ストレス誘起性心筋症、アミロイド心筋症、不整脈源性右室異形成、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症、
肺動脈弁逆流症、三尖弁狭窄症、三尖弁逆流症、先天性障害、遺伝的障害又はそれらの組み合わせ。
【0092】
心臓細胞再生:20世紀の間、ヒト心臓は、最終分化した有糸分裂後器官であり、傷害後は回復することができないと考えられた。このことは、心筋細胞での有糸分裂が心筋梗塞後に明らかになった2001年で課題とされた。他者の研究から、成体哺乳動物の心臓は、傷害時に初生の再生応答を起こすことができ、成熟分化した単核哺乳動物心筋細胞は、特定のシグナル伝達経路を標的化する化学化合物を適用したときに、細胞周期に再び入ることが確認された。
【0093】
miRNA(miRとも称する)は、植物、動物及びいくつかのウイルスに保存された小さな非コードRNA分子であり、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能する。miRNAは、1993年に同定され、生命に必要である進化的な遺伝子調節要素である。miRNAは、mRNA分子内の塩基対形成及びサイレンシング相補配列を介して機能し、それによって標的タンパク質発現及び下流のシグナル伝達経路を調節する。ヒトゲノムには1000の既知のmiRがあり、これはヒト遺伝子の60%を標的化することができる。動物において、miRNAは、2つのRNAseIII酵素ドローシャ及びダイサーにより、約60bpのヘアピン前駆体(プレ-miRNA又はプレ-miR)を介して、より大きな一次転写産物(プリ-miRNA又はプリ-miR)から成熟型(miRNA)にプロセシングされる。成熟miRNAは、50のリボ核タンパク質複合体(ribonucleoprotein complex、RISC)に充填され、これは典型的には、塩
基対相互作用により標的mRNAのダウンレギュレーションを導く。プリ-miRNAは、RNAポリメラーゼIIによって転写され、転写因子によって誘導的に調節されると予測される。いくつかのmiRNAは、偏在的な発現を示す一方、他のものは、限定的な発達段階特異的若しくは組織特異的又は細胞型特異的な発現パターンのみを示す。
【0094】
以下により詳細に記載するように、心筋組織において以前に行われた測定により、miRNAは、心筋の成長、線維化、及びリモデリングにおける調節的役割を行うことが示唆されている。特に、リボ核酸干渉(ribonucleic acid interference、RNAi)技術は
、新たな心疾患治療の開発の熱心な研究領域であり、研究では、インビボでオリゴヌクレオチドを送達するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)の有用性が実証されている。マイクロRNA(miR)let-7a/let-c及びmiR-99/100のアンタゴニストを発現する2つの別々のAAV2/9ウイルスは、単回注射後3ヶ月間まで、虚血性マウス心臓における心筋細胞の増殖を誘導することができる。ウイルス送達されたmiRアンタゴニストで処置したマウス心臓細胞及び組織のトランスクリプトーム及び翻訳解析により、心臓の発達、増殖、並びに筋肉の構造及び機能に関与する遺伝子及びタンパク質の発現における差異が示され、このことは、同様の再生効果が、これらのmiRの標的化を介して、ヒト心筋細胞及びDMDモデルにおいて生じている可能性があることを意味している。
【0095】
RNAi技術は多くの形態を取ることができるが、典型的には、塩基対短鎖ヘアピン(short hairpin、sh)RNA(shRNA)の形態で細胞内で行われ、これは内因性m
iR経路を介して約20塩基対の小分子干渉RNAにプロセシングされる。miRに相補的な配列のウイルス送達は、一般的な手法である。AAVベクターは、心血管筋遺伝子送達に最適であるが、その理由は、AAVベクターが、a)免疫応答を刺激するためにウイルスタンパク質コード配列を含まず、b)発現のために活発な細胞分裂が起こることを必要とせず、c)インビボ筋細胞における組換え遺伝子の安定した長期発現により、アデノウイルスベクターよりも有意な利点を有するからである。遺伝子のウイルス送達は、DMD処置のために開発中であり、LGMD治療薬としてのAAV1-ガンマ-サルコグリカンベクター、ミニジストロフィン送達のための組換え(r)AAV2.5ベクター、及び
rAAV、アカゲザル血清型74を含む。
【0096】
本明細書に記載される場合、miRNAアンタゴニストが標的miRNAの活性を阻害するように機能する機構は、何ら制限されない。例えば、核酸ベースのアンタゴニストは、いくつかの実施形態において、標的miRNA配列と二重鎖を形成し、前駆体からの成熟miRNA産物の適切なプロセシングを妨げることができ、あるいは成熟miRNAがその標的遺伝子に結合することを妨げることができ、あるいはプリ-miRNA、プレ-miRNA又は成熟miRNAの分解を引き起こすことができ、あるいはいくつかのその他の機構を介して作用することができる。
【0097】
Let-7a/c及びmiR-100/99:ゼブラフィッシュ及び新生仔マウスにおける心臓再生機構の研究により、科学者らは、心臓再生が、成熟心筋細胞の脱分化、その後の増殖、及び更なる再分化によって生じる一次心筋媒介プロセスであることを見出した。エピジェネティックなリモデング及び細胞周期制御は、この再生プロセスを制御する2つの重要な工程である。Aguirreら(Cell Stem Cell.2014;15(5):589~604)は、非常に関連する研究を報告し、心臓再生の基礎的機構を詳細に調べ、ゼブラフィッシュの心臓再生に強く関与する一連のmiRを同定した。配列及び3’UTR結合部位の両方において、有意な発現の変化を与え、脊椎動物にわたって保存されたそれらのmiRに対して焦点を当てることにより、2つの明確に定義されたゲノム位置において群をなす2つのmiRファミリー(miR-99/100、let-7a/c)が同定された。この発見は、脊椎動物の心筋形成の調節におけるmiR-99a/Let-7c-5p群の共通の役割によって支持された。MIRANDAに基づくmiR-UTR結合予測により、miR-99/100と、ゼブラフィッシュFNTβ(ファルネシルトランスフェラーゼのβサブユニット)及びSMARCA5(SWI/SNF関連性、マトリクス関連性、クロマチンのアクチン依存性調節因子、サブファミリーa、メンバー5)と、の強い相互作用が示され、この作用が、miRファミリーを心筋細胞での細胞周期及びエピジェネティックな制御と繋げている。興味深いことに、miR-99/100及びlet-7a/cレベルは、哺乳動物の初期の心臓発達時には低く、迅速な心臓重量増大を促すが、後期の発達時には指数関数的に増加し、FNTβ及びSMARCA5タンパク質レベルが対応して低減し、更に心筋細胞増殖を阻害する。損傷したヒト心臓組織の死後解析により、これらのmiRが、成人における心臓再生に対する保存された障害となることが示唆される。Let-7a/c及びmiR-99/100に対する2つのアンタゴニスト(ウイルス送達される)が形質導された新生仔マウス心筋細胞についてのRNA-seqトランスクリプトーム解析により、エピジェネティックなリモデリング、脱メチル化、心臓発達、増殖、及び予想外に代謝経路、並びに筋肉構造及び機能に関与する遺伝子の差異が明らかになった。実際に、miR-let7a/c及びmiR-99/100阻害は、1072及び47遺伝子をそれぞれ標的化する。
【0098】
筋肉構造及び機能に関与するいくつかの選択的遺伝子には、アクチン/ミオシン、Ras様2と相互作用するNFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、及び筋ジストロフィーの現在の治療標的であるIGF-1(以下の表1を参照のこと)が含まれる。表2に示すように、阻害剤で処置したマウス心臓の臓器培養における半定量的質量分析により、代謝及びミトコンドリアプロセスが重要な主体であると同定された一方、細胞骨格及び筋肉収縮に関与するタンパク質の変化も重視した。
【表1】
【表2】
II.筋ジストロフィー
【0099】
筋ジストロフィー(MD)は、30を超える遺伝子疾患群であり、運動を制御する骨格筋の進行性の筋力低下及び変性によって特徴付けられる。MDのいくつかの形態は幼少期又は小児期で見られるが、他の形態は中年以降まで現れないこともあり得る。この障害は、筋力低下の分布と程度(MDのいくつかの形態はまた、心筋に影響を及ぼす)、発症年齢、進行度、及び遺伝形式の点で差異がある。
【0100】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、進行性の、X連鎖性劣性遺伝の筋消耗性疾患であり、深刻な障害及び早死に至る。DMDは、X染色体短腕の21.2バンドのうちの1つの突然変異により引き起こされ、遺伝的欠失を有する母親の男児の半分が発症する。この遺伝子は、細胞膜を通して周囲の細胞外マトリックスに筋繊維の細胞骨格を接続する、タンパク質複合体の必須部分である、細胞質ヒトジストロフィンタンパク質の生成をもたらす。ジストロフィンがないと、筋肉は変性する。この疾患の一次症状は、病巣の線維化によって引き起こされる筋肉低下、呼吸障害、及び早期拡張機能障害であり、拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy、DCM)へと進行し、殆どの患者で心不全及び不整脈を併発する。DMDの現在の処置は、有症候性(symptomatic)だけである。以下の
表3は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー処置の現在の標準的手法の非限定例を列挙したものである。
【表3】
【0101】
200を超えるDMD研究及び選択的介入研究が結果とともにある。以下の表4は、これまでに報告されている介入DMD試験のための選択的臨床試験治療薬の非限定例の列挙を提供する。臨床開発における現在のDMD治療の手法は、1)機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを目的とした遺伝子送達治療、2)エクソンスキッピング、3)ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、4)細胞ベース療法、5)ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現、6)承認された商用製品及び7)抗炎症薬/抗酸化剤を含む。
【表4】
【0102】
有効な処置を見出す主な問題点は、体における異なる筋肉を標的化する必要性、長期効果の必要性、線維化の問題、及び異なる突然変異に対処するための様々なタイプの薬物の必要性があることである。遺伝子治療薬を用いて長期発現が可能であるが、ウイルスベクターが担持することができない大きいサイズのジストロフィンcDNAにより、ジストロフィンタンパク質発現の回復が複雑となる。この問題に対処するために、より小さい型のジストロフィン(ミニ及びマイクロジストロフィン)が開発された。肢帯型筋ジストロフィー2D型(LGMD)について、臨床試験は有望な結果を示した。CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集は、前臨床マウスモデルでは望みを与える発見を実証した
が、ヒトではまだ可能ではない。
【0103】
いくつかの試験的治療にもかかわらず、ジストロフィンタンパク質の完全な回復は達成できていない。DMD患者における代償的な(compensatory)遺伝子及びタンパク質の発現を増加し、内因性心筋の両方を再生する代替の治療戦略を発見することが、早急に必要とされている。
【0104】
興味深いことに、心臓発作後に病理学的リモデリングを行わない心臓再生脊椎動物(新生仔マウスを含む)は、心筋の脱分化及び増殖によって治癒され、2つの重要な事実:1)心筋細胞は、幹細胞よりも大きくて効率的な再生前駆体のプールを現し、及び2)再生は哺乳動物心臓の生来の特性であり、成体において、非効率的にも関わらず、機能的回復をもたらし得ることを示している。
III.本開示の組成物
マイクロRNAアンタゴニスト
【0105】
本明細書に開示には、複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物の実施形態が含まれる。本明細書で使用される場合、「miRアンタゴニスト」は、miRNAの活性に干渉する又はそれを阻害するように設計された薬剤である。ある特定の実施形態において、miRアンタゴニストは、miRNAに標的化されるアンチセンス化合物を含む。ある特定の実施形態において、miRアンタゴニストは、miRNAのヌクレオチド配列又はその前駆体に相補的なヌクレオチド配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。他の実施形態において、miRアンタゴニストは、miRNAの活性に干渉する又はそれを阻害する小分子などを含む。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、miR-99aアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、miR-100-5pアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、miR-Let-7a-5pアンタゴニストである。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、miR-Let-7c-5pアンタゴニストである。本明細書に開示されるmiRアンタゴニストは、例えば、心筋(例えば心筋組織、心筋細胞)における標的遺伝子発現を予防、阻害、又は低減するための組成物及び方法の提供に有用である。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、心不全を含む心疾患を評価及び治療するための方法における本開示のmiRアンタゴニストの使用に関する。
【0106】
本開示のこの態様及び他の態様に従う組成物の実施形態の実施は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50のmiRアンタゴニスト、又は上記の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内のいくつかのアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、複数のmiRは、miR-99aアンタゴニスト、miR-100-5pアンタゴニスト、miR-Let-7a-5pアンタゴニスト-、miR-Let-7c-5pアンタゴニスト、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、各miRアンタゴニスト群の数は、複数のmiRアンタゴニストにおいて同じである。いくつかの実施形態において、各miRアンタゴニスト群の数は、複数のmiRアンタゴニストにおいて同じではない。
【0107】
したがって、いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストと、85%、90%、91%、92%、9
3%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのmiRアンタゴニストを含む。例えば、いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストと、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それからなる。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストと、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それからなる。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストと、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それからなる。
【0108】
いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、若しくは約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択される配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、若しくは約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、若しくは約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38及び40~45からなる群から選択される配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、若しくは約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0109】
本明細書で開示される組成物のいくつかの実施形態において、以下のうちの1つ以上が適用される。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52及び54からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗
miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53及び55からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38、及び40~45からなる群から選択される配列に関して1つ以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストのヌクレオチド配列に関して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのmiRアンタゴニストを含む。例えば、いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストのヌクレオチド配列に関して、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、又は少なくとも約5以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、miRアンタゴニストは、本明細書に開示される1つ以上のmiRアンタゴニストのヌクレオチド配列に関して、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、又は少なくとも約10以上のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-99aアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号47、48、50、52、及び54からなる群から選択されるヌクレオチド配列に関して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-99aを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号46、49、51、53、及び55からなる群から選択されるヌクレオチド配列に関して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-100-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7a-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号37、39、及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列に関して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7a-5pを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のLet-7c-5pアンタゴニストのうちの少なくとも1つは、配列番号36、38及び40~45からなる群から選択されるヌクレオチド配列に関して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲のミスマッチの核酸塩基を有するヌクレオチド配列を含む抗miR-Let-7c-5pを含む。
【0112】
本明細書で開示される組成物の様々な実施形態において、抗miRのうちの少なくとも
1つは、本明細書に記載される1つ以上の化学修飾を含む。好適な化学修飾には、核酸塩基、糖、及び/又はヌクレオシド間連結への修飾が含まれるが、これらに限定されない。修飾された核酸塩基、糖及び/又はヌクレオシド間連結は、未修飾の形態よりも、例えば、細胞取り込みの向上、他のオリゴヌクレオチド又は核酸標的に対する親和性の向上、及びヌクレアーゼ存在下での安定性の増加などの所望の性質により、選択され得る。したがって、本明細書で開示される組成物のいくつかの実施形態において、抗miRのうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチド、及び修飾糖部分、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化学修飾を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾は、修飾ヌクレオシド間連結を含む。一般に、修飾ヌクレオシド間連結は、当該技術分野で既知の任意の修飾ヌクレオシド間連結であることができる。好適な修飾ヌクレオシド間連結の非限定例には、ホスホロチオエート、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-フルオロ、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル及びそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、リン原子を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオシド間連結は、リン原子を含まない。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、短鎖アルキルヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、シクロアルキルヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、ヘテロ原子及びアルキル混合のヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、ヘテロ原子及びシクロアルキル混合のヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、1つ以上の短鎖ヘテロ原子ヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、1つ以上の複素環ヌクレオシド間連結によって形成される。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、アミド骨格を有する。そのようなある特定の実施形態において、ヌクレオシド間連結は、混合されたN、O、S及びCHc2構成要素を有する。いくつかの実施形態において、抗miRのうちの少なくとも1つは、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である修飾ヌクレオシド間連結を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾のうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、一般に、任意の修飾ヌクレオチドであることができ、例えば、ロックド核酸(LNA)化学修飾、ペプチド核酸(PNA)、アラビノ核酸(FANA)、それらの類似体、誘導体又はそれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、5-メチルシトシンを含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、5-ヒドロキシメチルシトシン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニンから選択される。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンから選択される。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン並びにN-2,N-6及びO-6置換プリンから選択され、2アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンが含まれる。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、多環式複素環を含む。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、三環式複素環を含む。ある特定の実施形態において、修飾したヌクレオチドは、フェノキサジン誘導体を含む。ある特定の実施形態において、フェノキサジンを更に修飾して、当該技術分野でG-クランプとして既知の核酸塩基を形成することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドはロックド核酸(LNA)を含む。い
くつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾は、作用の効力、特異性及び持続時間を向上させ、オリゴヌクレオチドの投与経路を広げるために少なくとも1つのロックド核酸(LNA)化学修飾を含む。これは、塩基ヌクレオチド配列中の核酸塩基のいくつかをLNA核酸塩基で置換することにより達成することができる。LNA修飾ヌクレオチド配列は、親核酸塩基と同様のサイズを有することができ、あるいはより大きくすることができ、あるいは好ましくは小さくすることができる。いくつかの実施形態において、LNA修飾ヌクレオチド配列は、約70%未満、約65%未満、より好ましくは約60%未満、約55%未満、最も好ましくは約50%未満、約45%未満のLNA核酸塩基を含み、そのサイズは、約5~25ヌクレオチド、より好ましくは約12~20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ロックド核酸(LNA)は、修飾抗miRの一端又は両端において組み込まれる。
【0116】
いくつかの実施形態において、1つ以上の化学修飾は、少なくとも1つの修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、2’-修飾ヌクレオシドであり、この糖環は天然リボース又は2’-デオキシリボース由来の2’炭素で修飾されている。いくつかの実施形態において、2’-修飾ヌクレオシドは、二環式糖部分を有する。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、アルファ立体配置のD糖である。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、D糖ベータ立体配置のD糖である。あるような実施形態において、二環式糖部分は、アルファ立体配置のL糖である。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、ベータ立体配置のL糖である。
【0117】
いくつかの実施形態において、二環式糖部分は、2’及び4’炭素原子の間に架橋基を含む。ある特定の実施形態において、架橋基は、1~8個の連結されたビラジカル(biradical)基を含む。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、1~4個の連結され
たビラジカル基を含む。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、2又は3個の連結されたビラジカル基を含む。ある特定の実施形態において、二環式糖部分は、2個の連結されたビラジカル基を含む。ある特定の実施形態において、連結されたビラジカル基は、-O-、-S-、-N(R1)-、-C(R1)(R2)-、-C(R1)=C(R1)-、-C(R1)=N-、-C(=NR1)-、-Si(R1)(R2)-、-S(=O)2-、-S(=O)-、-C(=O)-及び-C(=S)-から選択され、ここで、各R1及びR2は、独立して、水素、ヒドロキシル、C1~C12アルキル、置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル、置換C2~C12アルキニル、C5~C20アリール、置換C5~C20アリール、複素環基(radical)、置換複素環基、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、
C5~C7脂環式基、置換C5~C7脂環式基、水素、置換オキシ(-O-)、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシル、置換カルボキシル、アシル、置換アシル、CN、チオール、置換チオール、スルホニル(S(=O)2-H)若しくは置換スルホニル、スルホキシル(S(=O)-H)又は置換スルホキシルであり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C1~C12アルキル、置換C1~C12アルキル、C2~C12アルケニル、置換C2~C12アルケニル、C2~C12アルキニル、置換C2~C32アルキニル、アンモ、置換アンモ、アシル、置換アシル、C1~C12アミノアルキル、C1~C12アミノアルコキシ、置換C1~C12アミノアルキル、置換C1~C12アミノアルコキシ又は保護基である。
【0118】
いくつかの実施形態において、二環式糖部分は、2’及び4’炭素原子の間で、-O-(CH2)p-、-O-CH2-、-O-CH2CH2-、-O-CH(アルキル)-、-NH-(CH2)p-、-N(アルキル)-(CH2)p-、-O-CH(アルキル)-、-(CH(アルキル))-(CH2)p-、-NH-O-(CH2)p-、-N(アルキル)-O-(CH2)p-、又は-O-N(アルキル)-(CH2)p-から選択さ
れるビラジカル基と架橋され、pは、1、2、3、4又は5であり、各アルキル基は、更に置換することができる。ある特定の実施形態において、pは、1、2又は3である。
【0119】
いくつかの実施形態において、2’-修飾ヌクレオシドは、ハロ、アリル、アミノ、アジド、SH、CN、OCN、CF3、OCF3、O-、S-、又はN(Rm)-アルキル、O-、S-、若しくはN(Rm)-アルケニル、O-、S-若しくはN(Rm)-アルキニル、O-アルケニル-O-アルキル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール、O-アラルキル、O(CH2)2SCH3、O-(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)又はO-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)から選択される2’-置換基を含み、各Rm及びRnは、独立して、H、アミノ保護基、又は置換若しくは非置換C1~C10アルキルである。これらの2’-置換基は、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ(NO2)、チオール、チオアルコキシ(S-アルキル)、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルから独立して選択される1つ以上の置換基で更に置換することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、2’-修飾ヌクレオシドは、F、NH2、N3、OCF3、O-CH3、O(CH2)3NH2、CH2-CH=CH2、O-CH2-CH=CH2、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2SCH3、O-(CH2)2-O-N(Rm)(Rn)、-O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2、及びN-置換アセトアミド(O-CH2-C(=O)-N(Rm)(Rn)から選択される2’-置換基を含み、各Rm及びRnは、独立して、H、アミノ保護基、又は置換若しくは非置換C1~C10アルキルである。
【0121】
いくつかの実施形態において、2’-修飾ヌクレオシドは、F、OCF3、O-CH3、OCH2CH2OCH3、2’-O(CH2)2SCH3、O-(CH2)2-O-N(CH3)2、O(CH2)2O(CH2)2N-(CH3)2、及びO-CH2-C(=O)-N(H)CH3から選択される2’-置換基を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、2’-修飾ヌクレオシドは、F、O-CH3、及びOCH2CH2OCH3から選択される2’-置換基を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、4’-チオ修飾ヌクレオシドである。ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、4’-チオ-2’-修飾ヌクレオシドである。4’-チオ修飾ヌクレオシドは、4’-Oが4’-Sで置換されたβ-D-リボヌクレオシドを有する。4’-チオ2’-修飾ヌクレオシドは、2’-Oが2’置換基で置換された4’-チオ修飾ヌクレオシドである。好適な2’-置換基は、2’-OCH3、2’-O-(CH2)2-OCH3、及び2’-Fを含む。
【0124】
したがって、本開示のいくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分、2’-メトキシ修飾糖部分、2’-O-アルキル修飾糖部分、二環式糖部分、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、修飾糖部分は、2’-O-メチル糖部分を含む。
発現カセット
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のmiRアンタゴニストのうちの1つ以上は、発現カセットによってコードされ、この発現カセットから発現される。したがって、一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の1つ以上のmiRアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットに関する。本明細書で使用する場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドの遺伝子情報が転写によってRNAに変換され、典型的には、RNAポリメラーゼ酵素によって、リボソーム上のmRNAの翻訳
を介して、このRNAがポリペプチドをコードする場合にはタンパク質へと触媒され、コードされたタンパク質が産生されるプロセスを指す。「発現カセット」との用語は、本明細書で使用する場合、プロモーターなどの発現制御要素と、任意選択により、転写ターミネーター、リボソーム結合部位、スプライス部位若しくはスプライシング認識配列、イントロン、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、及び内部リボソーム進入部位などのこれらに限定されない、遺伝子の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列のいずれか又は組合せと、に作動可能に連結された、遺伝子、タンパク質、又は機能性RNAをコードする核酸構築を指す。
クローニングベクター及び発現ベクター
【0126】
関連する態様において、本明細書に記載のmiRアンタゴニストのうちの1つ以上は、クローニングベクター若しくは発現ベクターによってコードされ得、及び/又はクローニングベクター若しくは発現ベクターから発現され得る。したがって、本出願のいくつかの実施形態は、本明細書に開示される発現カセットを含むクローニングベクター又は発現ベクターを指向する。本明細書で使用する場合、「ベクター」との用語は、宿主細胞に遺伝物質を伝達するために使用される核酸構築物、典型的にはプラスミド又はウイルスを指す。ベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミド又はファージであることができる。本明細書で使用する場合のベクターは、DNA又はRNAのいずれかからなることができる。いくつかの実施形態において、ベクターはDNAからなる。いくつかの実施形態において、ベクターはRNAからなる。「ベクター」との用語は、クローニングベクター及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組み込み型ベクターを含む。「発現ベクター」は、適切な環境に存在するときに、遺伝子の発現、又はベクターが担持する1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指示することが可能なベクターである。ベクターは、自律複製できることが好ましい。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、及び転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下に置き、この遺伝子はプロモーターに「作動可能に連結される」と言う。
【0127】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターは、本明細書に記載される1つ以上のmiRアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される発現ベクター又は発現カセットは、1つ以上のmiR-99aアンタゴニスト、1つ以上のmiR-100-5pアンタゴニスト、1つ以上のmiR-Let-7a-5pアンタゴニスト、及び1つ以上のmiR-Let-7c-5pアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、ウイルスベクターである。本明細書で使用する場合、「ウイルスベクター」は、別の核酸を細胞内に輸送することができるウイルス由来の核酸分子である。ウイルスベクターは、適切な環境に存在するときに、遺伝子の発現、又はベクターが担持する1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指示することが可能である。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
したがって、いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又は任意の血清型である。本明細書で使用する場合、「血清型(serotype)」又は「血清型(serovar)」との用語は、細菌
若しくはウイルスの種内における又は異なる個体の免疫細胞の間の異なるバリエーションである。これらの微生物、ウイルス、又は細胞は、それらの細胞表面抗原に基づいて一緒に分類され、生物を亜種レベルに疫学的に分類することを可能にする。一般に、AAVベクターは、任意の既存のAAVベクターであることができ、例えば、血清型1、2、3、
4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選択されるAAVベクター又はそれらに由来するキメラAAVであることができ、これらは関心のある組織における高効率の形質導入に更により好適なものとなるであろう。トランスフェクションの際、AAVは、宿主中で些細な免疫反応(もしあれば)しか誘導しない。したがって、AAVベクターは、遺伝子治療手法に非常に適している。マウスでの形質導入のためには、AAV血清型6及びAAV血清型9が特に好適であることが報告されている。ヒトへの遺伝子導入のためには、AAV血清型1、6、8及び9が一般的には好ましい。治療用遺伝子をパッケージングするためのAAVの容量は約4.9kbに制限されるが、より長い配列はAAV粒子の切断をもたらすと想定される。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、AAV2/9ベクターであり、例えば、AAV2逆方向末端反復(inverted terminal repeat、ITR)配列をAAVカプシドにクロスパッケージングしたもの(cross-packaged)であ
る。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の1つ以上のベクターと、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するクローニングベクター又は発現ベクターが本明細書に開示される。例えば、いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、JBT-miR1の全配列(配列番号85)と、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、このベクターは、JBT-miR2のヌクレオチド配列と、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、このベクターは、JBT-miR1の全配列(配列番号85)又はJBT-miR2と、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。
【0131】
いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号59~64に記載のヌクレオチド配列の各々と、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号86~89に記載のヌクレオチド配列の各々と、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号59~64及び86~89に記載のヌクレオチド配列の各々と、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。いくつかの実施形態において、クローニングベクター又は発現ベクターは、配列番号8に記載のヌクレオチド配列と、85%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、若しくは約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、それらからなる。
治療用組成物及び薬学的製剤
【0132】
別の態様において、有効量の少なくとも1つの治療剤と、以下のa)本明細書で開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物、b)本明細書に開示される発現カセット、及び本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターのうちの1つ以上と、を含む、治療用組成物の実施形態が、本明細書で開示される。
【0133】
この作用剤を原料物質として投与することが可能であるが、その効力を考慮して、これらを薬学的製剤として付与することが好ましい。したがって、本明細書で開示される組成物のいくつかの実施形態において、組成物は、薬学的製剤に更に製剤化される。「薬学的製剤」とは、本明細書で使用する場合、薬剤を含む、個体に投与するのに好適な組成物を指す。例えば、本開示のいくつかの態様及び実施形態に従う薬学的製剤は、本明細書に開示される抗miRアンタゴニスト及び無菌水溶液を含むことができる。例えば、ヒトでの使用のための本開示の薬学的製剤は、作用剤を1つ以上の許容されるその担体及び任意選択で他の治療成分と一緒に含む。担体は、製剤の他の成分と相溶性であり、その受容者に有害ではないか、あるいは活性剤の阻害機能に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。望ましくは、薬学的製剤は、作用剤と非相溶性であることが知られている酸化剤及び他の物質を含むべきではない。
【0134】
したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に記載の治療用組成物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤に関する。製剤はまた、希釈剤、安定化剤、賦形剤、及びアジュバントなどの追加の成分を含むことができる。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、又は安定化剤は、使用される投薬量及び濃度において暴露される細胞又は対象に対して非毒性(好ましくは不活性)であるか、あるいは熟練した専門家によって決定される許容される毒性レベルを有するものである。
【0135】
緩衝剤をまた、薬学的製剤に含めて製剤に好適なpH値を提供することができる。好適なそのような材料には、リン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムが含まれる。塩化ナトリウム又はグリセリンを用いて、血液と等張な製剤を提供することができる。所望する場合、製剤は、窒素などの不活性雰囲気下で容器内に充填するか、あるいは抗酸化剤を含有することができ、例えば密封したアンプル中において単位用量又は複数用量(multi-dose)
形態で好都合に提供することができる。
【0136】
担体、希釈剤及びアジュバントは、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(例えば、約10残基未満)、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール類、ナトリウムなどの塩を形成する対イオンをする、及び/又はTween(商標)、Pluronics(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。
【0137】
一般的に、本明細書に開示される薬学的製剤は、当該技術分野で既知の方法及び技術のうちの任意のものによって調製することができる。例えば、固体剤形は、湿式造粒、乾式
造粒、直接圧縮などによって調製することができる。いくつかの実施形態において、本開示の固体剤形は、持続作用の利点が得られる剤形を提供するようにコーティングするか、さもなくば配合する(compounded)ことができる。例えば、錠剤又は丸剤は、内部投薬成分(inner dosage component)及び外部投薬成分(outer dosage component)を含むことができ、後者は、前者を包む外皮の形態にある。いくつかの実施形態において、2つの成分を腸溶性層により分離することができ、この腸溶性層は胃での消化に耐え、内部成分を無傷で十二指腸まで通過させるか、あるいは放出を遅延させるように作用する。これらの例において、様々な材料をそのような腸溶性層又はコーティングに使用することができ、そのような材料には、いくつかの高分子酸及び高分子酸とシェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの材料との混合物が含まれる。
【0138】
投与される発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストのうちの1つ以上の力価は、例えば、特定の発現ベクター、投与形式、処置目的、個人、及び標的の細胞型に応じて変化し、当該技術分野における標準的な方法によって決定することができる。
【0139】
当業者に容易に理解されるように、投与される発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストのうちの1つ以上の有用なインビボ投与、及び特定の投与形式は、年齢、体重、苦痛の重篤度、及び処置される動物種、使用される特定の発現ベクター、並びに発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストのうちの1つ以上が使用される特定の用途に応じて変化するであろう。所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルである有効な投薬量レベルの決定は、ルーチンの薬理学的方法を用いて当業者によって達成することができる。典型的には、製品のヒトへの臨床適用はより低い投薬量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増加する。あるいは、許容されるインビトロ研究を用いて、確立した薬理学的方法を使用して本方法によって同定される組成物の有用な用量及び投与経路を確立することができる。
【0140】
例えば、最適な所望の応答を提供するように、投薬計画を調整することができる。例えば、単回用量を投与してもよいし、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよいし、あるいは治療状況の緊急性による適応があれば用量を比例的に増減してもよい。容易な投与及び均一な投薬量のための単位剤形で非経口組成物及び製剤を投与することが、特に有利である。単位剤形とは、本明細書で使用する場合、処置される哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形の特定は、(a)治療剤の固有の特徴及び達成される特定の治療又は予防効果と、(b)個体における感受性(sensitivity)の処置のためのそのような活性化合物の配合の
当該技術分野での固有の制限と、によって決定され、かつそれらに直接的に依存する。
【0141】
したがって、当業者は、本明細書に開示された開示に基づき、治療技術分野で周知の方法に従って用量及び投与計画が調整されることを理解するであろう。すなわち、最大許容用量は容易に定めることができ、患者に検出可能な治療利益を提供する有効量はまた、各薬剤を投与して患者に検出可能な治療利益を提供する時間的要件に応じて決定することができる。したがって、ある特定の用量及び投与計画を本明細書で例示するが、これらの例は、本開示を実施する際に患者に提供され得る用量及び投与計画を何ら限定するものではない。
【0142】
投薬量値は、緩和される状態のタイプ及び重篤度に応じて変えることができ、単回又は複数回用量を含むことができることに注意されたい。任意の特定の対象について、特定の投薬計画は、個々の必要性、及び組成物を投与する人又は組成物を投与することを指導する人の専門的判断に応じて経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載の投薬量範囲は、単なる例示的であって、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲又は実施の限定を意図
するものではないことを更に理解されたい。例えば、用量は、毒性効果及び/又は実験値などの臨床効果を含み得る薬物動態又は薬力学的パラメータに基づいて調整することができる。したがって、本開示は、当業者によって決定される患者内用量漸増(dose-escalation)を包含する。治療剤の適切な投薬量及び投与計画の決定は、関連技術分野において周知であり、本明細書で開示される教示が一度提供されると当業者は包含することを理解するであろう。
【0143】
本明細書に開示される発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストは、投与の必要がある対象(例えば、ヒト)に投与することができる。投与経路は特に限定されない。例えば、治療上有効量の組換えウイルスは、当該技術分野で標準的な経路により対象に投与することができる。経路の非限定例には、筋肉内、膣内、静脈内、腹腔内、皮下、経皮、皮内、直腸、眼内、肺、頭蓋内、骨内、経口、口腔内、又は経鼻が含まれる。いくつかの実施形態において、組換えウイルスは、筋肉内注射により対象に投与される。いくつかの実施形態において、組換えウイルスは、膣内注入により対象に投与される。いくつかの実施形態において、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストは、非経口経路(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下注射など)、若しくは表面の乱切(surface scarification)、又は対象の体腔内への接種により、対象に投与される。いくつかの実施形態にお
いて、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストは、心筋の細胞などの筋細胞に投与される。
【0144】
これらの低分子miRオリゴヌクレオチドアンタゴニスを注射により投与する場合、持続注入又は単回若しくは複数回ボーラスにより投与することができる。投与されるmiRアンタゴニストの投薬量は、患者の年齢、体重、性別、一般的な医学的状態、及びこれまでの病歴などの要因に依存して変化するであろう。典型的には、受容者に約1pg/kg~10mg/kg(薬剤の量/患者の体重)の範囲の分子の投薬量を付与することが望ましいが、より低い又はより高い投薬量もまた投与することができる。
【0145】
いくつかの実施形態において、他の臓器への治療薬の送達を制限しながら、心臓への治療薬の送達を標的化することが望ましい可能性がある。これは、当該技術分野で既知のいくつかの方法のうちの任意の1つによって達成することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療用組成物又は薬学的製剤の心臓への送達は、冠動脈注入を含む。ある特定の実施形態において、冠動脈注入は、大腿動脈を通してカテーテルを挿入し、大動脈を通して冠動脈の先端へとカテーテルを通過させることを含む。更にいくつかの他の実施形態において、心臓への治療薬の標的化送達は、従前に記載されたもの(Song E et al.,Nature Biotechnology,2005)などの抗体-プロタミン融合タンパク質を用いて、本明細書に開示された低分子miRアンタゴニストを送達することを含む。
【0146】
発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストの実際の投与は、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを対象の標的組織内に輸送する任意の物理的方法を用いることによって達成することができる。例えば、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストは、筋肉、血流、及び/又は直接肝臓に注入することができる。薬学的製剤は、経皮的輸送によって筋肉に送達するための注射用製剤又は局所製剤として調製することができる。
【0147】
筋肉内注射のために、胡麻油若しくは落花生油などのアジュバント又は水性プロピレングリコールの溶液、並びに滅菌水溶液を用いることができる。所望の場合、そのような水溶液を緩衝化することができ、液体希釈剤をまず食塩水又はグルコースと等張にすることができる。遊離酸(DNAは酸性リン酸塩を含有する)としての発現ベクター及び/若しくはmiRNAアンタゴニスト又は薬理学的に許容される塩の溶液は、ヒドロキシプロピ
ルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合した水中で調製することができる。発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストの分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中で調製することができる。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含有する。
【0148】
使用する発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストは、(凍結乾燥プロセス中にウイルスを保護するための1つ以上の好適な防腐剤及び/又は保護剤と組み合わせて)液体又は凍結乾燥形態で利用することができる。(例えば、特定の遺伝子産物によって改善することができる神経学的障害の)遺伝子治療のために、治療用タンパク質を発現する組換えウイルスの治療上有効用量をそのような処置を必要とする宿主に投与する。宿主内で免疫を誘導する又は遺伝子治療薬を宿主に付与するための薬剤の製造における、本明細書に開示される発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストの使用は、本出願の範囲内である。
【0149】
発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストに対するヒト用投薬量が少なくともいくつかの状態に対して確立されている例において、その同じ投薬量又は確立されたヒト用投薬量の約0.1%~約500%、より好ましくは約25%~約250%の投薬量を用いることができる。新たに発見された薬学的製剤の場合のようなヒト用投薬量が確立していない場合、好適なヒト用投薬量は、動物における毒性の研究及び効力の研究から定量化される、ED50若しくはID50値又はインビトロ若しくはインビボにおける研究から得られる他の適切な値から推測することができる。
【0150】
治療上有効量の発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、様々な時点で対象に投与することができる。例えば、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、ウイルスの感染前、感染中、又は感染後に対象に投与することができる。発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストをまた、疾患(例えば、癌)の発生前、発生中、又は発生後に対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、癌寛解中に対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、免疫予防のためのウイルス感染前に対象に投与することができる。
【0151】
あるいは又は更に、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストの投与頻度を変えることができる。例えば、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、毎週約1回、2週間毎に約1回、1ヶ月毎に約1回、6ヶ月毎に約1回、1年毎に約1回、2年毎に約1回、3年毎に約1回、4年毎に約1回、5年毎に約1回、6年毎に約1回、7年毎に約1回、8年毎に約1回、9年毎に約1回、10年毎に約1回、又は15年毎に約1回、対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、発現ベクター及び/又はmiRNAアンタゴニストを、毎週最大約1回、2週間毎に最大約1回、1ヶ月毎に最大約1回、6ヶ月毎に最大約1回、1年毎に最大約1回、2年毎に最大約1回、3年毎に最大約1回、4年毎に最大約1回、5年毎に最大約1回、6年毎に最大約1回、7年毎に最大約1回、8年毎に最大約1回、9年毎に最大約1回、10年毎に最大約1回、又は15年毎に最大約1回、対象に投与することができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、上記の治療用組成物及び薬学的製剤のいずれかと、(a)製剤が、例えば心筋細胞などの心筋の細胞において心疾患に関連する遺伝子の機能を阻害するのに有用であることを示す書面情報、及び/又は(b)薬学的製剤の投与についての指針を提供する書面情報と、を含む、薬学的キットを提供する。
IV.開示方法
【0153】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、対象における心臓疾患を処置するための方法に関する。本方法は、心臓疾患の処置に好適な治療用組成物を対象に投与又は付与することを含み、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示される発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む。
【0154】
本開示のいくつかの実施形態は、対象における心筋再生を促進する方法に関する。本方法は、治療用組成物を対象に投与又は付与することを含み、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示される発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される対象における心臓疾患を処置するため又は心筋の再生を促進するための方法は、心臓疾患を有するか又は疑いがある対象を同定又は選択するプロセスを任意選択で含む。いくつかの実施形態において、同定又は選択プロセスは、全ての治療用組成物及び治療剤又は治療薬の投与前に行われる。いくつかの実施形態において、同定又は選択プロセスは、治療用組成物及び治療剤又は治療薬のうちの少なくとも1つの投与前に行われる。
【0156】
いくつかの実施形態において、心臓疾患は、心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全(例えば、鬱血性心不全)、虚血性心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、アルコール性心筋症、ウイルス性心筋症、頻脈誘発性心筋症、ストレス誘起性心筋症、アミロイド心筋症、不整脈源性右室異形成、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁逆流症、僧帽弁狭窄症、僧帽弁逆流症、僧帽弁逸脱症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁逆流症、三尖弁狭窄症、三尖弁逆流症、先天性障害、遺伝的障害又はそれらの組み合わせである。いくつかのある特定の実施形態において、心疾患は、心筋梗塞である。いくつかの他のある特定の実施形態において、心疾患は、心筋再生が必要である、虚血性心疾患である。更にいくつかの他のある特定の実施形態において、心疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
【0157】
別の態様において、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖を調節するための方法の実施形態が、本明細書に開示される。本方法は、(1)治療用組成物を心筋細胞に導入することと、ここで、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示される発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含み、(2)(1)から得られる心筋細胞を分裂させ、それにより心筋細胞又は筋細胞の増殖を調節することを可能にすることと、を含む。いくつかの実施形態において、心筋細胞への治療用組成物の導入は、心筋細胞及び/又は筋細胞を、複数のmiRアンタゴニストをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの発現カセット又は少なくとも1つのウイルスベクターでトランスフェクトすることを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖を測定することを更に含む。いくつかの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋細胞の増殖は、複数のmiR-アンタゴニストをコードする核酸配列を欠損している対照の心筋細胞及び/又は筋細胞と比較して増加する。
【0158】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、投与工程は、細胞培養における細胞(すなわち、エクスビボ)又は生体中の細胞に対して行うことができる。したがって、いくつかの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋細胞は、インビボである。いくつかの他の実施形態において、心筋細胞及び/又は筋肉は、エクスビボである。いくつ
かの実施形態において、心筋細胞及び/又は筋細胞は、ヒト対象のものである。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、心疾患に罹患しているとして選択又は同定される。
【0159】
治療的組成物又は薬学的製剤が、本明細書に開示される複数のmiR-アンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセット又は発現ベクターを含む、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、複数のmiR-アンタゴニストは、1つ以上の発現カセット又は発現ベクターによってコードされることができる。いくつかの実施形態において、複数のmiR-アンタゴニストは、単一の発現カセット又は発現ベクターによってコードされる。いくつかの実施形態において、複数のmiR-アンタゴニストは、2、3、4、5、又は6以上の発現カセット又は発現ベクターによってコードされる。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、同じタイプの発現カセット又は発現ベクターによってコードすることができる。いくつかの実施形態において、複数のmiRアンタゴニストは、異なるタイプの発現カセット又は発現ベクターによってコードすることができる。
【0160】
治療的組成物又は薬学的製剤が、クローニングベクター又は発現ベクターを含む、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、ファージ、又はそれらの任意の組み合わせに由来することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、組み込み型ベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターはAAV2/9ベクターである。
【0161】
一態様において、心臓細胞の増殖を増加させる、並びに/又は筋肉の構造及び/若しくは機能及び/若しくは再生に関与するタンパク質の発現及び/若しくは活性を増加させる方法の実施形態が、本明細書において開示される。この方法は、心臓細胞に、(1)治療用組成物(ここで、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示される発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む)、及び(2)少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬との組み合わせを接触させる又は提供することを含む。関連する態様において、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、標的マイクロRNA(miR)の発現を阻害又は減少するための方法に関する。この方法は、心臓細胞に、(1)治療用組成物(ここで、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示される発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含む)、及び(2)少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の組み合わせを接触させる又は提供することを含む。上記の態様に従った方法において、心臓細胞は、一般的に、任意の心臓細胞であることができる。本明細書に開示される方法に好適な心臓細胞の非限定例には、心臓線維芽細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び血管平滑筋細胞(VSMC)が含まれる。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心筋細胞又は骨格筋細胞である。いくつかの実施形態において、心臓細胞は、心筋細胞である。いくつかの実施形態において、(miR)標的遺伝子は、心疾患に関連する遺伝子である。
【0162】
更に別の態様において、筋ジストロフィー(MD)障害を処置するための方法の実施形態が本明細書において開示され、この方法は、治療用組成物を対象に接触させる又は付与することを含み、(a)治療用組成物は、本明細書に開示される複数のマイクロRNA(miR)アンタゴニストを含む組成物であり、(b)治療用組成物は、本明細書に開示さ
れる発現カセットを含み、あるいは(c)治療用組成物は、本明細書に開示されるクローニングベクター又は発現ベクターを含み、治療用組成物の投与が、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤又は少なくとも1つの追加の治療と組み合わせて行われて、併用療法を提供する。いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーは、筋ジストロフィー障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、先天性筋ジストロフィー(CMD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)、遺伝性及び内分泌性ミオパチー、筋肉の代謝疾患、ミトコンドリアミオパチー(MM)、筋強直性ジストロフィー(MMD)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)又はこれらの組み合わせに関連する。
V.併用療法
【0163】
いくつかの実施形態において、配列表に提供されているマイクロRNAアンタゴニストなどの本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストを含む治療的組成物若しくは薬学的製剤、若しくは本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストの組み合わせを含む治療的組成物若しくは薬学的製剤、若しくは本明細書中に開示される1つ以上のマイクロRNAアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセット、又はそのような発現カセットのうちの1つ以上を含むベクターを、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態において、配列表に提供されているマイクロRNAアンタゴニストなどの本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストを含む治療的組成物若しくは薬学的製剤、若しくは本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストの組み合わせを含む治療的組成物若しくは薬学的製剤、若しくは本明細書中に開示される1つ以上のマイクロRNAアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセット、又はそのような発現カセットのうちの1つ以上を含むベクターを、1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0164】
一般的に、筋ジストロフィーのための薬理学的又は非薬理学的な任意の治療手法は、本明細書で開示される方法において追加の治療剤及び治療薬として好適に使用できる。本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストと組み合わせて使用することができる追加の治療剤及び治療薬、若しくは本明細書に開示されるマイクロRNAアンタゴニストの組み合わせを含む組成物若しくは製剤、若しくは本明細書に開示の1つ以上のマイクロRNAアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセット、又はそのような発現カセットのうちの1つ以上を含むベクターの例には、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)を含むMD用の任意の治療薬、ガレクチン1-治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)発現、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集、機能性組換え型のヒトジストロフィン遺伝子を再導入することを目的とした任意の遺伝子送達治療薬、エクソンスキッピング治療薬、ナンセンス突然変異に対するリードスルー戦略、細胞ベースの治療薬、ユートロフィンアップレギュレーション、ミオスタチン阻害、抗炎症薬/抗酸化剤、機械補助装置、筋ジストロフィーのための任意の標準的治療薬、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
本開示の方法に有用な追加の治療剤にはまた、抗血小板治療薬、血栓溶解薬、一次血管形成剤(primary angioplasty)、ヘパリン、硫酸マグネシウム、インスリン、アスピリ
ン、コレステロール低下薬、アンジオテンシン受容体遮断薬(angiotensin-receptor blocker、ARB)及びアンギオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme、AC
E)阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。特に、ACE阻害剤は、慢性心不全及
び高危険度の急性心筋梗塞を有する患者を処置するために使用される場合に明確な利点を有する。これは、可能性として、ACE阻害剤が、アンジオテンシンIIによる炎症性サイトカインの生成を阻害するからである。追加の治療剤及び治療薬の非限定的な列挙には、ACE阻害剤、例えば、カプトプリル、エナラプリル、リジノプリル、若しくはキナプリル;アンジオテンシンII受容体遮断薬、例えば、バルサルタン;β遮断薬、例えば、カルベジロール、メトプロロール、及びビソプロロール;血管拡張薬(一酸化窒素を介する)、例えば、ヒドララジン、硝酸イソソルビド、及び一硝酸イソソルビド;スタチン、例えば、シンバスタチン、アトロバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン若しくはプラバスタチン;抗凝固薬、例えば、アスピリン、ワルファリン若しくはヘパリン;又は変力薬、例えば、ドブタミン、ドーパミン、ミルリノン、アムリノン、ニトロプルシド、ニトログリセリン、若しくはネシリチド;強心配糖体、例えば、ジゴキシン;抗不整脈薬、例えば、ベラパミル及びジルチアゼムなどのカルシウムチャネル遮断薬、又はアミオダロン、ソタロール若しくはドフェチリドなどのクラスIII抗不整脈薬;利尿薬、例えば、フロセミド、ブメタニド、若しくはトルセミドなどのループ利尿薬、ヒドロクロロチアジドなどのチアジド利尿剤、スピノロラクトン若しくはエプレレノンなどのアルドステロン拮抗薬が含まれる。あるいは又は更に、心疾患の他の処置、例えば、ペースメーカー、除細動器、カウンタパルセイションデバイス(大動脈内バルーンポンプ又は非侵襲性カウンタパルセイション)などの機械的循環補助、心肺補助装置、又は左心室補助装置もまた好適である。手術、例えば、心臓移植、心肺移植、若しくは心臓腎移植、又は免疫抑制剤、例えば、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、シクロスポリン、シロリムス、タクロリムス、コルチコステロイド、サイモグロブリン若しくはATGAMなどの抗胸腺細胞グロブリン、OKT3、バシリキシマブ又はダクリズマブなどのIL-2受容体抗体もまた好適である。
【0166】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤又は治療薬のうちの少なくとも1つは、生物学的薬物を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、遺伝子治療薬又は治療用遺伝子調節剤を含む。本明細書で使用する場合、治療用遺伝子調節とは、病気のいくつかの形態を緩和する目的で様々な段階で遺伝子の発現を変化させるプラクティスを指す。遺伝子調節は、例えば新規な調節タンパク質をコードする遺伝子の導入により内因性遺伝子の発現の変化を得ようとするが、遺伝子治療薬は、遺伝子産物が受容者を直接的に救済する遺伝子の導入に関する点で、遺伝子調節は遺伝子治療薬とは異なる。遺伝子発現の調節は、例えば人工転写因子、小分子、又は合成オリゴヌクレオチドであり得るDNA結合剤により、転写のレベルで媒介され得る。あるいは又は更に、それは、RNA干渉により転写後に媒介され得る。
【0167】
本明細書に開示される治療用組成物、薬学的製剤、及び追加の治療剤又は治療薬を、特定の意図する用途に好適な最終的な薬学的調製物に更に製剤化することができる。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び追加の治療剤又は治療薬は、単一の製剤で投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び追加の治療剤又は治療薬の各々は、別々の製剤で投与される。本明細書で開示される方法のいくつかの実施形態において、治療用組成物及び/又は追加の治療剤若しくは治療薬は、単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び/又は追加の治療剤若しくは治療薬は、複数回投薬量で対象に投与される。いくつかの実施形態において、投薬量は互いに等しい。いくつかの実施形態において、投薬量は互いに異なる。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び/又は追加の治療剤若しくは治療薬は、経時的に投薬量を徐々に増加させて対象に投与される。いくつかの実施形態において、治療用組成物及び/又は追加の治療剤若しくは治療薬は、経時的に投薬量を徐々に減少させて対象に投与される。
【0168】
治療用組成物及び薬学的製剤、並びに1つ以上の追加の治療剤又は治療薬の投与の順序は、変えてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示され治療的組成物又は
薬学的製剤は、全ての追加の治療剤又は治療薬を投与する前に投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤は、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬を投与する前に投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤は、1つ以上の追加の治療剤又は治療薬と同時に投与することができる。更に他の実施形態において、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤は、少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬の投与後に投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤は、全ての追加の治療剤又は治療薬の投与後に投与することができる。更にいくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤、及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬は、輪番(例えば、サイクリング療法(cycling therapy))で投与される。例えば、いくつかの実施形態において
、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤、及び少なくとも1つの追加の治療剤又は治療薬が、対象に循環的に投与される。サイクリング療法は、ある期間の第1の活性剤又は治療薬の投与に続く、ある期間の第2の活性剤又は治療薬の投与、及びこの逐次投与の繰り返しを伴う。サイクリング療法は、1つ以上の治療薬に対するに抵抗性の発達を低減させ、1つ以上の治療薬の副作用を回避若しくは低減させ、及び/又は処置の効力を改善させることができる。
【0169】
いくつかの実施形態において、間欠療法は、持続療法の代替物である。例えば、間欠療法を6ヶ月間使用した後、6ヶ月間空けることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の治療剤又は治療薬を1ヶ月間使用した後、1ヶ月間空けることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の治療剤又は治療薬を3ヶ月間使用した後、3ヶ月間空けることができる。したがって、本明細書に開示される治療用組成物又は薬学的製剤のうちの1つ以上は、上記の1つ以上の治療剤又は治療薬の投与前、投与中、及び/又は投与後に付与することができる。
【0170】
本明細書で記載されている全ての公開物及び特許出願は、各々の公開物又は特許出願が具体的に個々に示されて参照により組み込まれているのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
本明細書で引用される任意の参照物が従来技術を構成すると認めるものではない。参照物の議論はその著者が主張する事項を述べており、本出願人は引用する文書の正確性及び妥当性に異議を唱える権利を留保する。雑誌論文、特許文書、及び教科書を含む多くの情報源を本明細書で参照するが、この参照により、これらの文書のうちの任意のものが当該技術分野における一般知識の一部をなすことを認めるものではないことは明確に理解されるであろう。
【0172】
本明細書で提供される一般的な方法の議論は、例示目的のためだけであることが意図される。他の代替方法及び代替物は、本開示を検討した際に当業者に明らかとなり、本出願の趣旨及び範囲内に含まれる。
【実施例0173】
更なる実施形態は、以下の実施例において更に詳細に開示され、この実施例は、本開示の範囲又は特許請求の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
実施例1
特定のマイクロRNAのための阻害オリゴヌクレオチドの設計
【0174】
この実施例は、miR-99a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p、及びLet-7c-5pのアンタゴニストとして用いることができる合成オリゴヌクレオチドの設計及び組成物について示す。
【0175】
下記のヒトマイクロRNAのヌクレオチド配列を分析した:miR-99a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p及びLet-7c-5p。これらのマイクロRNAの配列及び相補的なアンタゴニスト配列を以下の表5に示す。太字で強調した塩基は、let-7a-5p及びlet-7c-5pの間の差又はmiR-99a-5p及びmiR-100-5pの間の塩基の差に対応する。全てのマイクロRNAのシード配列は、5’末端から始まる塩基2~8であると一般的に考えられる。任意の特定の理論により拘束されることを望むことなく、マイクロRNAのシード配列内の核酸塩基は、どのmRNAがマイクロRNAによって標的化されることかの決定に最大の寄与をする塩基であると考えられる。下記の表5に列挙された配列において、シードの配列には下線を引いてある。
【表5】
【0176】
異なる哺乳動物種由来の対応するマイクロRNA同族体の配列保存の更なる評価も検査した。下記式6に示されるように、異なる哺乳動物種由来のmiR-99a-5p、miR-100-5p、Let-7a-5p及びLet-7c-5pのヌクレオチド配列は、高い配列相同性を示すことが観察された。Let-7a-5pのヌクレオチド配列は、分析した全ての種にわたって100%相同である。Let-7c-5pのヌクレオチド配列はまた、分析した全ての種にわたって100%相同である。イヌ由来のmiR-99a-5pの配列は、核酸塩基#を欠失しており、その他の点では、全ての他の配列は相同である。イヌはmiR-100miRNAがなく、その他の点では、全ての他の配列は相同である。
【表6】
【0177】
合計で20個(20)の抗miRオリゴヌクレオチド化合物を設計し、let-7a-5p/let-7c-5pファミリーについて10個及びmiR-99a-5p/miR-100-5pファミリーについて10個を含んだ。Let-7c-5pを標的化する2つの抗miR設計は、JRX0100、JRX0102であり、それらを使用してLet-7a-5pを阻害することができた。Let-7a-5pを標的化する2つの抗miR設計は、JRX0101及びJRX0103であり、それらを使用してLet-7a-5pを阻害することができた。Let-7a-5p及びLet-7c-5pの両方を標的化する6つの抗miR設計は、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、及びJRX0109である。miR-100aを標的化する5つの抗miR設計は、JRX0110、JRX0113、JRX0115、JRX0117、及びJRX0119である。miR-99aを標的化する5つの抗miR設計は、JRX0111、JRX0112、JRX0114、JRX0116、及びJRX0118である。この実験では、設計では、ロックド核酸(LNA)化学修飾(+)が使用され、ここで、2’-O-酸素がメチレンリンカーを介して4’位に架橋されて剛性の二環(
bicycle)を形成し、C3’末端(RNA)糖構造にロックされ、これにより、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性及びその相補的RNA塩基に対する非常に高い親和性が可能となる。これらの修飾は、エクソヌクレアーゼ抵抗性を向上することなどによる安定性のために、表7の配列中の(+)によって指定される分子の各端部において、及び標的化されたmiRに対する親和性を増加させることで、マイクロRNA阻害剤としての効力を増加するために、シードに相補的な領域において、特に組み込まれる。抗miRの骨格は、ホスホロチオエートであり(下記の表7の*によって示される)、これは動物での広い分布を可能にする。この型の骨格は、RISC複合体における特定のマイクロRNAの立体障害(steric blockade)により機能する。抗miRオリゴヌクレオチド化合物は、ヘ
テロ二本鎖が形成される可能性を回避するために比較的短い状態を注意して保ったが、血漿タンパク質を効率的に結合し、この血漿タンパク質が腎臓における循環から除去されないようにすることで、その生体内分布特性を改善するのに十分な長さを有していた。20個の抗miR設計及びそれぞれの標的マイクロRNAの概要を下記の表7に示す。
【0178】
表7に示すように、いくつかのmiR-7ファミリーの抗miRは、関心のあるlet-7c-5p及びcアイソフォームの両方と100%相同であり、両方のメンバーを阻害するであろう。対照的に、miR-99a-5p及びmiR-100ファミリーの抗miRは各々、これらのmiRにおいて1塩基の位置が異なることにより、ファミリーメンバーうちの1つと100%相同のみとなる。しかしながら、実際には、2つのファミリーの各々について設計された抗miRの全てが、関心のあるファミリーメンバーの両方を阻害することができるが、その理由は、標的認識と同様に、シード領域(塩基2~8)が、抗miR活性の決定に最も重要な領域だからである。
【表7】
【0179】
以下に更に詳細に記載するように、これらの合成抗miRの阻害活性を、商業的なレポ
ーターベクターシステムである、Applied Biosystems(登録商標)により入手可能なpMIR-REPORT(商標)miRNA発現レポーターベクターシステム(部品番号AM5795、Applied Biosystems)(例えば、
図3を参照のこと)を用いて、続いて評価することができる。このシステムでは、関心のあるマイクロRNA結合部位が、レポータールシフェラーゼのコード配列の下流に位置する多重クローニング部位に挿入される。
例2
アデノウイルスベクターJBT-miR1の設計
【0180】
この実施例は、RNAi技術を用いて、修飾されたヘアピンZip構築物、並びにマイクロRNA miR-99a、miR-100-5p、miR-Let-7a-5p、及びmiR-Let-7c-5pの阻害配列を発現するベクターの設計を例示する実験結果の概要を示す。本発明の実験において、RNAi技術は、標的細胞内において塩基対単鎖ヘアピン(sh)RNA(shRNA)の形態で行い、これは、内因性miR経路を介して約20塩基対低分子干渉RNAにプロセシングされる。低分子ヘアピンRNA又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、一般的に、RNA干渉(RNAi)により標的遺伝子の発現をサイレンシングする(silence)のに使用することができる、密接なヘアピンタ
ーンを有する人工RNA分子として定義される。マウス(murine)心臓において心筋を再生するための抗miR-99/100及び抗Let-7a/cの潜在的な治療用途を評価するために、Let-7a/c及びmiR-99/100に相補的な阻害配列を発現する2つの組換えウイルスを、AAV2逆方向末端反復(ITR)配列をAAV9キャプシド(AAV2/9)にクロスパッケージングすることによって作製した。AAV2/9血清型は、明確な心臓親和性を有する。miRに相補的な配列のウイルス送達は、一般的な手法である。この実験において、AAVベクターは、心臓血管遺伝子治療において最適であるとして選択されたが、その理由は、AAVベクターが、a)免疫応答を刺激するためのウイルスタンパク質をコードする配列を含有せず、b)発現のために活発な細胞分裂が起こることを必要とせず、c)インビボでの心筋細胞における組換え遺伝子の安定的な長期発現により、アデノウイルスベクターよりも有意な利点を有するからである。
【0181】
この実験において、修飾ヘアピンZip構築物は、(1)Hlプロモーター及びU6プロモーター下で、それぞれ、Let-7a-5p及びmiR-99a-5p阻害配列を発現する、(2)Hlプロモーター及びU6プロモーターの調節下で、それぞれ、Let-7c-5p及びmiR-100-5p阻害配列を発現する。ウイルスベクターJBT-miR1を作製するためにpAV-4inlshRNA-GFPベクターに挿入される抗miRアンタゴニスト及びループ配列のヌクレオチド配列の概要を、以下の表8に示した。この実験において、上記のアンタゴニストをコードするヌクレオチド配列をpAV-4inlshRNA-GFP中でクローン化した(
図1)。4つのmiR阻害配列に対応するヌクレオチド配列は、ベクターのITR部位の間、具体的にはBamH1及びHindIIIクローニング部位の間でpAV-4inlshRNA-GFPに挿入され、ループ配列TGTGCTT(配列番号56)によって分離された。得られたベクターにおいて、各阻害配列の発現を、miR-99a-5p、100、Let-7a-5p及びLet-7cに対する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)の発現を駆動する代替ヒトU6プロモーター又はHlプロモーターによって調節した。
【0182】
図1に示すように、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein、GFP)レポ
ーターの発現を駆動するCMVプロモーター(これは次いで、前臨床研究のために様々な組織での検出を可能にする)、続いてシミアンウイルス40(Simian virus 40、SV4
0)配列(これは、複製起点においてDNA複製を開始するポリオーマウイルス結合部位であり、SV40ラージTを発現する哺乳動物細胞における発現を可能にする)をまた、ベクターに挿入する。しかしながら、これらの配列はまた、ヒト薬物の使用のために設計
されたベクターから好適に除去し得ることが企図される。
【0183】
AAV2ITR配列を有するベクターゲノムを、AAV-293細胞のトリプルトランスフェクションによりAAV9キャプシドにクロスパッケージングし(J.Fraser
Wright,Human Gene Therapy,20:698~706,July 2009)、次いでイオジキサノール勾配遠心分離により精製した。次いで、ウイルスゲノム(vg)/mLとして定義されるAAVベクターの力価を、qPCRベースのアッセイによって決定した。この実験において、以下のプライマーを使用して、マウスU6プロモーターを増幅させた:5’-TCGCACAGACTTGTGGGAGAA-3’(配列番号57)(順方向)及び5’CGCACATTAAGCCTCTATAGTTACTAGG-3’(配列番号58)(逆方向)。
【0184】
対応する発現カセットを担持する、既知のコピー数のプラスミドを使用して、定量化のための標準曲線を構築した。ウイルスは、Vigene Biosciences Inc.(Rockville,MD)により、製造者推奨の安全遵守事項及び手順を用いて作製及び配列決定されたものである。
【表8】
【0185】
JBT-miR1ウイルスベクター設計物のヌクレオチド配列は、配列表の配列番号85に記載される。
【0186】
実施例1で記載したように、合計で20個(20)の抗miRオリゴヌクレオチド化合物を設計した。これらの抗miRオリゴヌクレオチド化合物の配列を以下の表9に示す。以下の表9に記載の抗miRオリゴヌクレオチド化合物の配列の任意の組み合わせを、pAV-4in1shRNA-GFPベクターのBamH1及びHindIIIクローニング部位に挿入し、miR-99a、miR-100-5p,Let-7a-5p及びLet-7c-5p阻害のための他のウイルス送達システムを作製することができる。
【表9】
【0187】
JBT-miR1ウイルスベクター設計物のヌクレオチド配列は、配列表の配列番号85に記載される。
実施例3
インビボでの心筋におけるJBT-miR1ウイルスベクターの阻害活性
【0188】
この実施例は、実施例2で記載したようにして構築されたウイルスベクターJBT-miR1が、CD1マウスにおけるLVの遅延ガドリニウム造影を減少させることができることを実証する実験結果の概要を示す。
【0189】
この実験において、CD1マスウをケタミン(100mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔し、圧換気装置(pressure ventilator)(Kent Scien
tific,CT)を用いて挿管した。手順の全体を通して、動物は気管を通して挿管され、室内空気で機械的に換気した(呼吸数55~65呼吸/分、一回換気量2.5mL)(モデル687-Harvard Apparatus)。皮膚切開を胸骨中線から左脇下に向かって行い、胸骨の左側に沿って1cm横方向に切断して胸を切開し、第3及び第4の肋骨の間を切断してLVを露出させた。次いで、上昇大動脈及び主肺動脈を同定し、左心室及び右心室(right ventricle、RV)の間に位置するLADを同定した。PE-
10の部分上で8-0のPROLENE(登録商標)縫合結紮を結ぶことにより、LAD閉塞(occlusion)を行った。肢誘導心電図(EKG)誘導での急なST部分上昇を伴う
、LAD灌流領域のブランチング(blanching)、及びLVの白化(whitening)は、血管閉塞を証明するものであろう。
【0190】
次いで、JBT-miR1又は対照ウイルスを、30ゲージ針を組み込んだインスリン注射器を用いて、60piの生理食塩水中で希釈した6x1011vg/マウスの用量で、梗塞領域に面した心筋内に心臓内注射することにより投与した。マウスを3週間放置した後、心臓MRIに供した。表10に示すように、JBT-miR1で形質転換したマウスは、JBT-miR1の心臓内注射の3週間後において、GFPを発現するウイルスと比較して、永久LAD結紮を伴うCD1マウスにおけるLVの遅延ガドリニウム造影を低
減させることが見出されることが観察された。
【表10】
【0191】
図2A~2Bは、心臓MRI画像化実験の結果の概要を写真で示し、ここで、対照GFPウイルスの心臓MRI画像(
図2A)対JBT-miR1の心臓MRI画像(
図2B)により、JBT-miR1ベクターの心臓内注射の3週間後では、GFPを発現するウイルスと比較して、永久LAD結紮を伴うCD1マウスにおけるLVの遅延ガドリニウム造影を低減することが実証された。この雄モデルにおいて、体重30~40グラムのCD1マウス(8~12週齢)を、上記のように永久虚血に供した。この実験において、horizontal Bruker Biospec(登録商標)7T/20MRIシステム(Bruker,Germany)で、麻酔したマウス(SA Instruments,NY)について、MRIを行った。拡張末期(end-diastolic、ED)及び収縮末期(end-systolic、ES)の画像について、区画領域及びスライス厚(1mm)の積から体積
データを決定した。全てのスライス及び得られた得られたEFの総和から、LVED及びES体積(EDV及びESV)を計算した。EDVと心筋比重γ(1.055g/cm3)とを掛け合わせ、LV質量を算出する。MIサイズ:各スライスのED画像を、瘢痕描写のために選択した。MR画像における造影増強領域のサイズを、TTC染色から得られた対応する領域に対してプロットした。梗塞サイズを、LV質量の%として表した。
【0192】
表11に示されるように、2次元(2D)心エコー分析により、JBT-miR1ベクターの心臓内注射の3週間後には、GFPを発現するウイルスと比較して、永久LAD結紮を伴ったCD1マウスの心拍出量の有意な増加が示された。この実験では、5日目、14日目及び21日目に、Hewlett-Packard/Phillips5500機器及び15-MHz変換器を用いて、麻酔したマウスについて2Dエコーを行った。
【表11】
実施例4
ウイルスベクターJBT-miR2の設計
【0193】
この実施例は、zips(JBT-miR1)よりも優れ得るtough decoy(TuDとしても知られる)(Takeshi et al.2009)を発現する、JBT-miR2と命名した別のウイルスベクターの設計を図示する実験結果の概要を示す。要するに、4つの120塩基のオリゴヌクレオチド配列をベクターのITR部位の間及びBamH1及びHindIIIクローニング部位に挿入して、TuDを作成し、これはウイルス送達システムに挿入されたときにlet-7及びmiR-99a-5pファミリーを阻害することができる。以下に示す上記オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列において、太字はそれぞれのmiR結合部位に対応している。
let-7a-5p
[01]
Let-7a-5p逆相補体
[02]
miR-99a-5p
[03]
miR-99a-5p逆相補体
[04]
【0194】
いくつかの実験において、制限部位をオリゴヌクレオチドに付加することにより、適切なベクターへのサブクローニングを容易にした。これらの配列の5’末端をプロモーター配列(例えば、U6プロモーター)に隣接してクローン化し、3’末端をPolII末端配列(例えば、TTTTT)に対してクローン化した。
実施例5
抗miRオリゴヌクレオチドのインビトロ生物活性
【0195】
この実施例は、pMIR-REPORT(商標)miRNA発現レポーターベクターシステム(部品番号AM5795、Applied Biosystems(登録商標))を用いて、新生仔ラットの心室筋細胞及びHela細胞でのエクソビボにおいて、let-7a/c及びmiR-99/100に対するマイクロRNA(miR)アンタゴニスト(抗miR)の活性を評価するために行った実験結果の概要を示す。pMIR-REPORT(商標)miRNA発現レポーターベクターシステムは、実験用ホタルルシフェラーゼレポーターベクター及び関連のP-galレポーター対照プラスミドからなる。予測されるmiRNA標的配列を、レポーターのコード配列の下流に位置する多重クローニング部位に挿入することにより、これらのベクターは、miRNA機能の正確な定量的評価を行うのにしばしば使用される。このシステムはまた、siRNA標的部位を評価し、遺伝子発現に対する3’UTR配列の影響を分析するためにしばしば使用される。
【0196】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、未修飾pMIR-REPORT(商標)は、Hela細胞又は新生仔ラット心室心筋細胞にトランスフェクトされたときに、最大のルシフェラーゼ活性を有するべきであると考えられる。別言すれば、miR-99(シフェラーゼレポーター1、LUC1)、miR-100(シフェラーゼレポーター2、LUC2)、及びLet-7a-5p(シフェラーゼレポーター3、LUC3)並びにLet-7c-5p(シフェラーゼレポーター4、LUC4)についての予測miRNA標的配列をpMIR-REPORT(商標)の多重クローニング部位に挿入することにより、得られるベクター(LUC1、LUC2、LUC3及びLUC4)のルシフェラーゼ活性が、pMIR-REPORT(商標)単独よりも有意に低くなるであろう。
【0197】
上記のように構築された修飾ルシフェラーゼmiRNA発現レポーターベクター、すなわち、pMIR-REPORT LUC1、LUC2、LUC3及びLUC4を使用して、miRNA機能の正確な定量的評価を行うことができ、Hela細胞及び心筋細胞における内因性miRメンバーの阻害により、LUC1、LUC2、LUC3及びLUC4ベクターのみと比較して、ルシフェラーゼ活性の用量依存性の増加がもたらされるであろう。
方法
【0198】
マイクロRNA miR-99、miR-100、Let-7a-5p及びLet-7c-5pに相補的な配列を設計し、pMIR-REPORT(商標)miRNA発現レポーターベクターシステムの多重クローニング部位にクローン化した。得られたベクターは、それぞれLUC1、LUC2、LUC3及びLUC4発現ベクターと命名した。Hela細胞を96ウェル組織培養プレートで培養し、リポフェクタミン(登録商標)2000試薬(Life Technologies)を用いて、5時間まで抗miRの濃度を増加させながら(0
~50nM)、50ng/ウェルの修飾LUCベクター(すなわち、LUC1、LUC2、LUC3、又はLUC4ベクター)の精製DNA、及び10ng/ウェルのβ-タガラ
クトシダーゼ(β-gal)レポータープラスミドを共トランスフェクトした。同様に、新生仔ラット心室心筋細胞を24ウェル組織培養プレートで培養し、500ng/ウェルのLUC1、LUC2、LUC3、及びLUC4DNA並びに100ng/ウェルのβ-galレポータープラスミドを共トランスフェクトし、トランスフェクション効率を確認した。トランスフェクションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞を採集し、細胞溶解物をルシフェラーゼ活性及びβ-gal活性についてアッセイした。ルシフェラーゼ活性をβ-galに対して標準化し、LUC1、LUC2、LUC3、及びLUC4プラスミド単独に対する活性化倍数(fold activation)として表した。
【0199】
図3は、pMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼmiRNA発現レポーターベクターを図示し、このベクターは、カリフラワーウイルス(CMV)プロモーター/ターミネーションシステムの制御下のホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む。ルシフェラーゼ遺伝子の3’UTRは、予測miRNA結合標的又は他のヌクレオチド配列を挿入するための多重クローニング部位を含む。予測miRNA標的配列をpMIR-REPORTベクターの多重クローニング部位に挿入することにより、ルシフェラーゼレポーターを次にmiRNA標的を模した調節に供することができる。
【0200】
図4は、レポーター遺伝子β-ガラクトシダーゼを担持したpMIR-REPORT(商標)miRNAβ-ガラクトシダーゼ発現レポーターベクターを図示し、これは、トランスフェクションの標準化のために設計されている。典型的には、この制御プラスミド由来のP-gal発現を用いて、細胞生存能力及びトランスフェクション効率の差異に起因する変動を標準化することができる。
【0201】
miR-99、miR-100、Let-7a-5p及びlet-7cについてのpMIR-REPORT(商標)ベクターの構築:
【0202】
以下のオリゴヌクレオチド(太字)は、Integrated DNA Technologies(IDT),San Diegoから購入した。miRNAに相補的な配列に対応するmiRNA結合部位には下線を引き、これは、その後にルシフェラーゼ遺伝子のコード配列の下流に挿入した。
>hsa-miR-99a-5p MIMAT0000097
[05]
99a順方向プライマー:
[06]
99a逆方向プライマー:
[07]
>hsa-miR-100-5p MIMAT0000098
[08]
100順方向プライマー:
[09]
100逆方向プライマー:
[10]
>hsa-let-7a-5p MIMAT0000062
[11]
LET7A順方向プライマー:
[12]
LET7A逆方向プライマー:
[13]
>hsa-let-7c-5p MIMAT0000064
[14]
LET7C順方向プライマー:
[15]
LET7C逆方向プライマー:
[16]
【0203】
ベクターは、次の順序化された要素:5’ルシフェラーゼ多重クローニング部位(Multiple Cloning Site、MCS)を含み、これは、所望のmiRNA結合部位に対応するヌ
クレオチド配列をその3’UTRに挿入することを可能にする。MCSは、次の順序化された制限部位:5’-SpeI-HindIIIを含む。SpeI(ACTAGT)及びHindIII(AAGCTT)は、その両方が同じ緩衝液(NEB2)中で良好に機能するとの理由から、制限酵素として選択した。オリゴヌクレオチドは、次の順番の要素:5’-AACA-SpeI部位-(miRNA結合部位)-HindIII部位-GTT-3’を含む。ヌクレオチドAAC(及びGTT)は、制限酵素がより効果的に結合することを可能にする追加的なヌクレオチドである。
【0204】
miR-99、miR-100、Let-7a-5p及びLet-7c-5pについてのpMIR-REPORT(商標)ルシフェラーゼベクターのヌクレオチド配列(それぞれ、LUC1、LUC2、LUC3、及びLUC4)は、配列表の106~109に記載されている。
【0205】
HELA細胞トランスフェクション:Hela細胞を、2mML-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1nM非必須アミノ酸、及び10%FBS(PAA)並びにペニ
シリンストレプトマイシンを補充した、アール平衡塩類溶液(HyClone(商標))を含む最小必須培地で培養した。細胞を、トランスフェクション前の24時間、96ウェルプレート(1×104細胞/ウェル)中の抗生物質を含まない血清含有培地でプレーティングし、トランスフェクション時には30~70%コンフルエントであった。
【0206】
次いで、細胞を、200μl/ウェルの最終体積でのOpti-MEM(登録商標)培地及び通常の増殖培地を用いて、製造者の指示書に従ってリポフェクタミン2000(Life Technologies、カタログ番号11668-019)を用い、0.1、1、10又は50ナノモル/L(nM)で、2時間、50ng/ウェルのLUCレポータープラスミド及び10ng/ウェルのβ-galレポータープラスミドをトランスフェクトした。レポータープラスミド(pMIR-REPORT(商標)又はLUCプラスミド)を単独でトランスフェクトした。
【0207】
2×96ウェル中のHela細胞のために設定した典型的なプレートを以下に示し、各プレートのカラム6は、トランスフェクションに使用するためのLUCベクターと同定する。
【表12】
【表13】
【0208】
心筋細胞トランスフェクション:新生仔ラット心筋細胞を単離し、ウェルあたり80,000個の細胞密度(24ウェル)で、Primaria(商標)でコーティングしたプレートでプレーティングした。細胞のプレーティングの24時間後、細胞を、600pl/ウェルの最終体積でのOpti-MEM(登録商標)培地及び通常の増殖培地を用いて、製造者の指示書に従ってリポフェクタミン2000(Life Technologies,カタログ番号11668-019)を用い、0.1、1、3、10又は50ナノモル/L(nM)で、5時間、500ng/ウェルのLUCレポータープラスミド及び100ng/ウェルのβ-galレポータープラスミドでトランスフェクトした。レポーター
プラスミド(pMIR-REPORT(商標)又はLUCプラスミド)を単独でトランスフェクトした。
【0209】
心筋細胞のために設定した典型的なプレートを以下に示す。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0210】
以上の実験を繰り返した。
プロモーター活性アッセイ
【0211】
細胞を37℃で増殖させ、ONE-Glo(商標)Luc(Promega(商標)番号E6110)、Beta-Gio(登録商標)Luc(Promega(商標)番号E4720)及びGioLysis Buffer (Promega(商標)番号E2661)を用いた通常の増殖培地でのルシフェラーゼ及びβ-galアッセイのために、トランスフェクションの48時間後に採集した。BioTek Synergy(商標)HTを用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。プロモーター活性をルシフェラーゼ1、2、3又は4プラスミド単独に対する倍率で表し、β-gal活性レベルに対して標準化した。
統計的分析
【0212】
ルシフェラーゼ活性をβ-galに対して標準化し、データをそれぞれのLUCベクター単独に対する活性化倍率(fold activation)として表した。Hela細胞実験の倍率
データは、単一の実験を表している。実験を繰り返し、結果を確認した。細胞を培養し、同じ日にトランスフェクトしたので、2つの別個の心筋細胞実験から得られた倍率データを組み合わせた。平均標準偏差でデータを提示する。抗miR(y軸)のログ-10M濃度に対するルシフェラーゼ活性(x軸)の標準化された倍率の増加とともに、GraphPad Prism7ソフトウェアを用いてグラフを描いた。
結果
【0213】
ルシフェラーゼ構築物についての試験実験を行い、ルシフェラーゼ構築物1(LUC1、miR-99)、ルシフェラーゼ構築物2(LUC2、miR-100)、ルシフェラーゼ構築物3(LUC3、let-7a)、及びルシフェラーゼ構築物4(LUC4、let-7c)が、未修飾pMIR-REPORTベクターと比較して、有意に低いルシフェラーゼ活性を有することを確認したが、このことは、Hela細胞内の内因性miR(Let-7a-5pmiR-99a、miR-100-5p、miR-Let-7c5p、miR-Let-7a-5p)がそれぞれのLUC構築物と結合し、ルシフェラーゼ活性を抑制することができることを示している。この実験において、Hela細胞をLUC構築物の各々をトランスフェクトし、次いで対応する抗miRで処置した。抗miRは、Hela細胞において、その対応する内因性マイクロRNAと競合するであろうことが企図された。未修飾pMIR-REPORT(商標)は、Hela細胞又はラット新生仔心室心筋細胞においてトランスフェクトした場合に、最大のルシフェラーゼ活性を示すことが観察された。miR-99(ルシフェラーゼレポーター1、LUC1)、miR-100(ルシフェラーゼレポーター2、LUC2)及びLet-7a-5p(ルシフェラーゼレポーター3、LUC3)及びLet-7c-5p(ルシフェラーゼレポーター4、LUC4)のための多重クローニング部位に予測miRNA標的配列を挿入したことにより、ルシフェラーゼ活性は、pMIR-REPORT(商標)単独よりも有意に低かった。修飾pMIR-REPORT LUC1、LUC2、LUC3及びLUC4ルシフェラーゼmiRNA発現レポーターベクターを用いて、miRNA機能の正確な定量的評価を行うことができ、Hela細胞又は心筋細胞における内因性miRメンバーの阻害によって、LUC1、LUC2、LUC3及びLUC4ベクター単独と比較して、ルシフェラーゼ活性の用量依存性の増加がもたらされるであろう。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、抗miRは、RISC複合体における特定のマイクロRNAの立体障害を介して作用し、対応するルシフェラーゼプロモーター活性を増加すると考えられた。この試験結果を
図5に図示して概要を示す。
【0214】
Hela細胞を用いて行ったその後の実験では、JRX0111、JRX0112、JRX0114、JRX0116、JRX0118、miR-99a抗miRが、ルシフェラーゼ構築物1(LUC1、miR-99)活性を用量依存的に増加させることが観察された(
図6)。
【0215】
同様に、
図7に示すように、JRX0110、JRX0113、JRX0115、JRX0117、JRX0119 miR-100-5p抗miRが、Hela細胞におけるルシフェラーゼ構築物2(LUC2、miR-100)活性を用量依存的に増加させることが観察された。
【0216】
同様に、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRがまた、Hela細胞におけるルシフェラーゼ構築物3(LUC3、let-7a)活性を用量依存的に増加させることが見出され(
図8A~
図8B)、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、Hela細胞におけるルシフェラーゼ構築物4(LUC4、let-7c)活性を用量依存的に増加させることが観察された(
図9A~
図9B)。
【0217】
新生仔ラット心室心筋細胞を用いて行った様々な実験において、JRX0111、JRX0112、JRX0114、JRX0116、JRX0118 miR-99a抗miRが、ルシフェラーゼ構築物1(LUC1、miR-99)活性を用量依存的に増加させ
ることが観察され(
図10)、JRX0110、JRX0113、JRX0115、JRX0117、JRX0119 miR-100-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物2(LUC2、miR-100)活性を用量依存的に増加させることが観察され(
図11)、JRX0101、JRX0103、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7a-5p miR-Let-7a-5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物3(LUC3、let-7a)活性を用量依存的に増加させることが観察され(
図12A~
図12B)、JRX0100、JRX0102、JRX0104、JRX0105、JRX0106、JRX0107、JRX0108、JRX0109 Let-7c-5p miR-Let-7c5p抗miRが、ルシフェラーゼ構築物4(LUC4、let-7c)活性を用量依存的に増加させることが見出された(
図13A~
図13B)。
結論
【0218】
総合すれば、上記で提示された実験データにより、特定の抗miRの効力、特異性及び活性を確認することができる。修飾プラスミドLUC1、LUC2、LUC3及びLUC4は、pMIR-REPORT(商標)空(empty)プラスミドと比較して、有意に低い
ルシフェラーゼ活性を示すことが見出された。対応するmiRファミリー由来の各アンタゴニストが、それぞれのLUCレポータープラスミドを用量依存的に活性化することが更に観察された。更に、以下のマイクロRNA miR-99、miR-100、Let-7a-5p、及びLet-7c-5pを阻害するように設計された抗miRが、試験された両方の細胞型において、効率を変えて特定の標的mRNAに結合したようであった。
【0219】
雑誌論文、教科書、特許及び特許出願を含むが、これらに限定されない、本明細書で開示される参考資料の全てを、本明細書で議論した主題及びそれらの全体について参照により本明細書に組み込む。本開示の全体を通して、様々な情報源が参照され、参照により組み込まれる。情報源には、例えば、雑誌論文、特許文書、教科書、及びワールド・ワイド・ウェブブラウザ-非アクティブなページアドレスが含まれる。そのような情報源の参照は、単に、出願時の一般的技術水準の指標を提供する目的のためである。情報源の各々及びいずれの1つの内容及び教示を当業者が依拠し、使用して、本明細書に開示される実施形態を作製し、使用することができるが、特定の情報源における任意の議論及び論評は、そのような論評が当該分野における一般の意見として広く受け入れられているとみなすものでは決してない。
対象における心筋再生を促進するための、又は心疾患を治療するための、方法、ここで、前記方法は、心筋再生を促進することを、又は心疾患を治療することを必要とする対象に、請求項1に記載のクローニング又は発現ベクターを含む薬学的組成物を、投与することを含む。
請求項3に記載の方法、ここで、前記方法は、前記対象に、少なくとも1種の追加の治療薬剤を投与することを更に含む、ここで、前記少なくとも1種の追加の治療薬剤は、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン-1治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、及びそれらの組み合わせ、からなる群より選択される。
請求項3に記載の方法、ここで、前記方法は、前記対象において、心臓細胞の増殖を増加させること、並びに/又は筋肉の構造及び/若しくは機能及び/若しくは再生に関与するタンパク質の発現並びに/若しくは活性を増加させること、を含む。
請求項3に記載の方法、ここで、前記方法は、前記対象に、少なくとも1種の追加の治療薬剤を投与することを更に含む、ここで、前記少なくとも1種の追加の治療薬剤は、イデベノン、エプレレノン、VECTTOR、AVI-4658、アタルレン/PTC124/Translarna、BMN044/PRO044、CAT-1004、マイクロジストロフィンAAV遺伝子治療薬(SGT-001)、ガレクチン-1治療薬(SB-002)、LTBB4(SB-001)、rAAV2.5-CMV-ミニジストロフィン、グルタミン、NFKB阻害剤、サルコグリカン、デルタ(35kDaジストロフィン関連糖タンパク質)、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、及びそれらの組み合わせ、からなる群より選択される。
対象における心筋再生を促進するための、又は心疾患を治療するための、方法、ここで、前記方法は、心筋再生を促進することを、又は心疾患を治療することを必要とする対象に、請求項12に記載のクローニング又は発現ベクターを含む薬学的組成物を、投与することを含む。
対象における心筋再生を促進するための、又は心疾患を治療するための、方法、ここで、前記方法は、心筋再生を促進することを、又は心疾患を治療することを必要とする対象に、請求項13に記載のクローニング又は発現ベクターを含む薬学的組成物を、投与することを含む。